説明

清浄機

【課題】オゾンガスと光触媒との相互作用をうまく利用した空気清浄機を提供する。
【解決手段】清浄対象の空気に混合されるオゾンガスを発生させるオゾンガス発生器14と、前記オゾンガス発生器で発生されたオゾンガスと前記空気との混合ガスを受ける光食媒含有フィルタ16と、光食媒含有フィルタ16に光触媒作用を付与する光源18とを備え、光食媒含有フィルタ16は、扁平形状の結晶粒子と立体形状の結晶粒子とが結合した光触媒を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄機又は浄水器などの浄水機及び清浄方法に関し、特に、光触媒体を用いた浄水機及び清浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気清浄機は、オゾンガス、光触媒、マイナスイオンなど、種々の媒体を用いて空気の清浄処理を行っている。特許文献1には、オゾンガス、光触媒、マイナスイオンの3つの媒体を用いて車内空間の空気を清浄処理する車両用空気清浄器が開示されている。この車両用空気清浄器は、シート状または板状の通気性支持体に二酸化チタン粉末を分散状に固着して形成した光触媒フィルタを用いている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−253662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている光触媒フィルタは、二酸化チタン粉末を分散状に固着する際に、バインダーが用いられる。この結果、光触媒フィルタの表面には、バインダーが不可避的に現れるので、その分だけ光触媒性が低下する。これでは、オゾンガスと光触媒との相互作用をうまく利用することができない。
【0005】
特に、空気清浄機は、清浄対象の空気を、空気清浄機内を通過させる際に清浄するので、空気の清浄効率を高めるためには、清浄対象の空気と光触媒体との接触機会を増大させることが必須である。
【0006】
そこで、本発明は、オゾンガスと光触媒との相互作用をうまく利用した空気清浄機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の空気清浄機は、
清浄対象の空気に混合されるオゾンガスを発生させるオゾンガス発生器と、
前記オゾンガス発生器で発生されたオゾンガスと前記空気との混合ガスを受ける光食媒体と、
前記光食媒体に光触媒作用を付与する光源とを備え、
前記光食媒体は、扁平形状の結晶粒子と立体形状の結晶粒子とが結合していることを特徴とする。
【0008】
前記各結晶粒子が結合していると、バインダーを用いることなく、光触媒を塗布(噴霧)対象に塗布(噴霧)することができる。
【0009】
前記各粒子のいずれかは、可視光線及び紫外線のいずれを受けた場合であっても光触媒活性が得られるように、バンドギャップを狭めるべく、例えば、結晶状態の構造欠陥を生じさせるとよい。
【0010】
前記扁平形状の結晶粒子の平均サイズを、前記立体的形状の結晶粒子の平均サイズ以上とすると、光触媒含有体を塗布乾燥させたときに、光触媒膜の気孔率低下に寄与するため好ましい。
【0011】
具体的には、塗布乾燥後の光触媒の気孔率が50%以下であるとよい。光媒体の単位容積あたりの結晶数が増加して、再結合速度を遅くする等に貢献するためである。
【0012】
本発明の空気清浄機は、設置位置を問わず、室内、車内など任意の場所に設置できる。また、本発明は、空気清浄機に対して、空気の除湿機能、空気の加湿機能、空気のヒーター機能、空気の冷蔵機能等を備える空気清浄システムとすることもできる。具体的には、例えば、空気調節機能を備える場合には、空気の吸込口から吸い込まれた空気を、空気調節機能を構成する冷凍サイクルに直接向かう相対的に流速がない空気と、空気清浄機に向かう相対的に流速が有る空気とに分岐するとよい。
【発明の実施の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(構成の説明)
図1は、本発明の実施形態の空気清浄機100の模式的な内部構成を示す断面図である。本実施形態の空気清浄機100は、図1に示すように、以下説明する、吸込口10と、ファン12と、オゾンガス発生器14と、光触媒含有フィルタ16と、光源18と、排出口20と、光触媒溶液噴霧器22と、制御部24と、筐体30と、を備える。
【0014】
吸込口10は、筐体30の第1面に形成されており、空気清浄機100の設置位置周辺の空気を吸い込む部分である。吸込口10には、濾過フィルタ、静電式フィルタなどを設けている。これらのフィルタには、後述する光触媒を含有させておくとよい。なお、吸込口10から吸い込まれる空気とは、単に、地球を包む大気圏の下層部分を構成する無色透明な混合気体という意味だけではなく、細かい粒子(花粉やハウスダスト等)や臭い(ペットや調理時等の臭い等)が含まれているものをいう。
【0015】
ファン12は、筐体30の吸込口10近傍に設けられている。ファン12は、吸込口10から空気を吸い込み、排出口20から清浄空気を排出するためのものである。もっとも、ファン12は、筐体30内であれば、例えば、排出口20付近に設けられていてもよい。
【0016】
オゾンガス発生器14は、ファン12を駆動させることによって筐体30内に吸い込まれる空気に混合されるオゾンガスを発生させるものである。オゾンガス発生器14は、光触媒含有フィルタ16よりも、気体流路の上流に設けられることが必須である。なお、オゾンガス発生器14の近傍には、オゾン濃度を測定するためのオゾンセンサが設けられていて、制御部24が、オゾンセンサの検知結果に基づいてオゾン発生量を制御する。
【0017】
光触媒含有フィルタ16は、オゾンガス発生器14によって発生されたオゾンガスと吸込口10から吸い込まれた空気との混合ガスの流路に設けられている。図1には、2つの光触媒含有フィルタ16を設けている例を示しているが、この数は例示であり、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、光触媒含有フィルタ16に代えて、光触媒含有シートを用いてもよい。さらには、光触媒含有フィルタ16を用いることに代えて、筐体30の全体又は少なくとも内壁に光触媒を混入又は塗布することで、筐体30内のスペース効率を向上させてもよい。なお、筐体30は、製造段階で光触媒を混入すると、筺体30の内壁及び外壁表面にも光触媒が現れる。この場合、筺体30の外壁に接触した空気も、光触媒作用により清浄されるという効果を奏する。なお、光触媒の性質、製造方法等については、後述する。
【0018】
光源18は、光触媒含有フィルタ16を照明するものである。光源18は、紫外光、可視光など、光触媒含有フィルタ16の光触媒に対して、光触媒作用を付与するものであればよい。光源18は、図面の手前奥方向に延びている。光源18の数も例示であり、図示している数に限定されるものではない。なお、後述するように、光触媒をいわゆる可視光応答型とし、かつ、筐体30の少なくとも一部をスケルトンタイプとする場合には、光源18を筐体30内に設けることは必ずしも必須ではない。
【0019】
排出口20は、光触媒含有フィルタを通過した清浄空気が、筺体30外に排出される部分である。排出口20は、筐体30の第1面の裏面である第2面に設けられている。
【0020】
光触媒溶液噴霧器22は、定期的に或いは所定の使用期間経過ごとに、光触媒含有フィルタ16に対して光触媒溶液を噴霧するものである。図示しない光触媒溶液の容器及び光触媒含有フィルタ16は、筺体30に対して着脱可能としており、適宜交換可能に構成している。
【0021】
制御部24は、ファン12、オゾンガス発生器14、光源18、及び、光触媒溶液噴霧器22の動作を制御するものである。制御部24は、本体の電源がオンされてからオフされるまでファン12を例えば5秒間で1回転するように制御する。制御部24は、ファン12の駆動に付帯してオゾンガス発生器14から2〜8g/H程度でオゾンガスが発生するように制御する。制御部24は、ファン12の駆動に付帯して光源18を点灯させる。制御部24は、光触媒溶液噴霧器22に対して、本体の電源が例えば1000時間オンされる度に、数ml程度噴霧するように制御する。
【0022】
筐体30は、吸込口10及び排出口20が形成されている。筐体30の材料は、限定されるものではなく、プラスチック、アルミニウムなど適宜選択すればよい。ただし、筐体30の少なくとも一部を透明プラスチックなどのように透光性を有する材料を用いてスケルトンタイプとした場合には、筐体30を通じて入射される光によっても、光触媒含有フィルタ16の触媒作用が得られるため好ましい。なお、必要に応じて、混合ガスの濃度を均一にして空気清浄の効率化を図るために、例えば、気体の流路であって、オゾンガス発生器14と光触媒含有フィルタ16との間に、空気とオゾンガスとを撹拌する撹拌部を設けてもよい。更には、筐体30内であって光触媒含有フィルタ16に対する気体流路の下流にマイナスイオン発生器を設けてもよい。なお、筐体30の形状、構成比率等は例示であり、図示しているものに限定されない。
【0023】
(動作の説明)
まず、空気清浄機100の電源がオンされると、制御部24は、ファン12を駆動する。これにより、ファン12が回転すると、吸込口10から周辺空気が筺体30内に吸い込まれる。また、制御部24は、オゾンガス発生器14を駆動する。これにより、オゾンガス発生器14からオゾンガスが発生される。この結果、オゾンガス発生器14を通過する空気は、オゾンガスとの混合ガスとなる。この際、上記空気は、オゾンガスの抗菌・殺菌効果により一部抗菌・殺菌される。
【0024】
また、混合ガスは、ファン12が回転しているので、光触媒含有フィルタ16に到達する。制御部24は、光源18を点灯させているため、光触媒含有フィルタ16が照明されることになる。光触媒含有フィルタ16では、光源18からの光を受けて光触媒作用が得られている、光触媒含有フィルタ16付近に到達した混合ガスは抗菌・殺菌され始め、光触媒含有フィルタ16を通過した混合ガスは抗菌・殺菌が完了する。
【0025】
(光触媒の説明)
図2は、図1に示す光触媒含有フィルタ16に含有される光触媒溶液の製造工程の概要説明図である。なお、この光触媒溶液は、光触媒溶液噴霧器22によって噴霧される光触媒溶液でもある。
【0026】
この光触媒溶液は、2種類の光触媒の結合体である。まず、2種類の光触媒の一方となる光触媒原液を製造する(ステップS1)。
【0027】
光触媒原液を製造するために、まず、水酸化チタン或いは酸化チタン等の超微粒子の分散液、又は水酸化チタンゲルを用意する(ステップS11)。つづいて、上記分散液等に対して、水酸化ナトリウム等の沈殿物生成剤を加える(ステップS12)。これにより、上記分散液等に水酸化チタンの沈殿物が生成される。
【0028】
具体的には、四塩化チタンの約50〜70重量%水溶液10mlを、蒸留水で1000mlに希釈したもの上記分散液として用意した。また、上記分散液に対して、2.0〜2.5重量%アンモニア水を10ml程度滴下して、水酸化チタンの沈殿物を生成した。
【0029】
つぎに、上記分散液の中から沈殿物を遠心分離や濾別等によって抽出して、その後、水酸化チタンゲル自体を、不純物除去のために、純水、イオン交換水、蒸留水などで水洗する(ステップS13)。水酸化チタンゲルに純水、イオン交換水、又は蒸留水を加えて100〜500mlとした水酸化チタン懸濁液を製造する(ステップS14)。
【0030】
つぎに、水酸化チタン懸濁液に30重量%過酸化水素水を10〜20ml加えて攪拌してから(ステップS15)、例えば2〜15時間、65〜400℃の温度で加熱する(ステップS16)。こうして、5nm〜30nmのアナターゼ結晶の酸化チタンを含む光触媒原液を得る。なお、この光触媒原液には、5nm以下の結晶化が不完全な酸化チタンも残存している。
【0031】
この光触媒原液は、酸化チタンの長手方向の平均サイズが約10nmであった。酸化チタンの表面には、ペルオキソ基が修飾されることになる。このため、光触媒原液中では、ペルオキソ基の分極によって粒子間の電気的斥力が働き、酸化チタンが相互に反発しあうので凝集することない。なお、光触媒原液中におけるアンモニウムイオンなども上記分散に寄与している。このため、光触媒原液は、酸化チタンが均一に分散した液体となる。また、こうして製造した酸化チタンは、1個以上のOH基を有することになる。
【0032】
表1は、図2のステップS1において製造された光触媒原液を、透過型電子顕微鏡を介して撮影した図面代用写真である。表1に示すように、光触媒原液に含まれる酸化チタンの結晶粒子は、略鏃型をしている(以下、「鏃型酸化チタン」と称する。)。略鏃型となるのは、ステップS14の加熱によって、酸化チタンの結晶が、アモルファスからアナタース型結晶となったことを意味する。なお、酸化チタンは、略鏃型とするためには、アンモニウムイオン以外の不純物を極力少なくする必要がある。
【0033】
【表1】

【0034】
もっとも、光触媒原液に含まれる鏃型酸化チタンの形状は制御可能であり、略鏃型以外にも、例えば、ステップS14,S15間に、光触媒原液に対してホウ素などを添加することによって、長手方向に沿った断面が、略四角形、略五角形、略八角形などの扁平な種々の幾何学形状とすることも可能である。本実施形態では、光触媒原液の酸化チタンの結晶粒子が、扁平形状であればよい。
【0035】
すなわち、本明細書における「扁平形状」とは、面方向に相対的に広く、かつ、厚み方向の相対的に薄い形状の総称と定義する。面は平滑面のみでなく、多少の凹凸状、曲面状のものも含む。面の形状も限定されず、円、楕円、六角形、四角形等の多角形など何でもよい。扁平形状の光触媒粒子の大きさは、板面方向には、おおよそ3nm〜40nm程度の範囲に収まり、平均では10nm〜20nm程度である。扁平形状の光触媒粒子の厚みは、おおよそ0.3nm〜5nm程度の範囲に収まり、平均では1nm〜3nm程度である。
【0036】
化学式1は、表1に示す鏃型酸化チタンの化学構造式である。化学式1に示すように、表1に示す鏃型酸化チタンは、一対のチタン(Ti)が5つの酸素(O)を通じて結合されていて、かつ、各チタンは2つのOH基と結合されている。
【化1】

【0037】
つぎに、光触媒原体を製造する(ステップS2)。
【0038】
まず、酸化鉄及び酸化チタンが主成分であるイルメナイト鉱石と硫酸とを反応させることによって硫酸塩を製造する(ステップS21)。つぎに、硫酸塩から不純物を除去する(ステップS22)。その後、その硫酸塩を加水分解して(ステップS23)、不溶性の白色含水酸化チタンを沈澱させる。この際、一つ以上のOH基が形成される。
【0039】
その後、これを中和洗浄し、乾燥又は焼成して、平均サイズが6nm程度で大きさにばらつきが少ない略球型となるまで微粒子化することによって、光触媒原体を得る。このように製造した酸化チタンは、1個以上のOH基を有することになる。
【0040】
なお、上記製造方法は、いわゆる硫酸法と称されている手法であるが、これに限定されず、塩素法、フッ酸法塩化チタンカリ法、四塩化チタン水溶液法、アルコキシド加水分解法など他の製造方法を用いてもよい。
【0041】
また、可視光照射によって光触媒作用が得られるように、可視光域の吸収が可能なバンドギャップとすべく、酸化チタンに対する各種ドーパントの導入、酸化チタンの高温還元、酸化チタンに対するX線などの高エネルギー照射などを行ってもよい。
【0042】
表2は、図2のステップS2において製造された光触媒原体を、透過型電子顕微鏡を介して撮影した図面代用写真である。表2に示すように、光触媒原体に含まれる酸化チタンの結晶粒子は、立体形状であるところの球型をしている(以下、「球型酸化チタン」と称する。)。
【表2】

【0043】
もっとも、球型酸化チタンの結晶粒子の形状は、制御可能であり、球型以外にも、例えば、断面が略楕円型、円型、角型、これらの折れ線型などの立体的な種々の形状とすることが可能である。本実施形態では、光触媒原体の酸化チタンの結晶粒子が、立体的な形状であればよい。
【0044】
すなわち、本明細書における「立体形状」とは、「扁平形状」とは異なり、面方向と厚み方向との相対差が小さい形状の総称と定義する。
【0045】
ここで、本実施形態では、鏃型酸化チタンの結晶粒子の平均サイズを、球型酸化チタンの結晶粒子の平均サイズ以上としている。こうすると、鏃型酸化チタンの隙間に、球型酸化チタンが入りこむことになり、しかも、後述するように両酸化チタンは相互に混合される。このため、光触媒含有液を被塗布体に対して塗布乾燥させた場合、光触媒の気孔率の低下が実現する。
【0046】
つぎに、光触媒含有液を製造する(ステップS3)。
【0047】
まず、ステップS1で製造した光触媒原液に対して、ステップS2で製造した光触媒原体を混ぜて(ステップS31)、必要に応じて、この光触媒原液を攪拌して、鏃型酸化チタンと球型酸化チタンとを結合させる(ステップS32)。この際、光触媒原液を加熱等する処理は不要であるであるし、攪拌スピード、攪拌時間などの攪拌条件は特段限定されるものではない。
【0048】
ここで、既述のように、光触媒原液内の酸化チタンは、ペルオキソ基で修飾されているので、光触媒原液中で分散しているので、この状態を維持しながら光触媒原液に対して光触媒原体を添加するとよい。
【0049】
このためには、ペルオキソ基の減少を回避する、又は、光触媒原液中における上記分散に寄与するアンモニウイオン濃度などの不純物の減少を回避するとよい。具体的には、ペルオキソチタン酸の濃度が例えば5w%以下とならないようにする、又は、アンモニウムイオンなど不純物が例えば100ppm以下とならないようする。
【0050】
また、既述のように、光触媒原液内の酸化チタンと光触媒原体の酸化チタンとの双方ともに、1個以上のOH基を有している。このため、両酸化チタンは、互いのOH基部分で水素結合がなされる。つまり、OH基が置換基となる。もっとも、置換基は、OH基に限定されるものではない点に留意されたい。
【0051】
ところで、一般的な球型酸化チタンは非水系で製造され、鏃型酸化チタンは水系で製造されている。したがって、これらは、理論的には結合しない。そこで、本発明者は、これらを結合させるべく、例えばOH基を含む球型酸化チタンを選択した。この結果、上記のように、球型酸化チタンと鏃型酸化チタンとを、OH基を通じて相互に結合することが可能となる。
【0052】
表3は、図2のステップS3において製造された光触媒含有液を、透過型電子顕微鏡を介して撮影した図面代用写真である。球型酸化チタンの大半は、光触媒原液中の鏃型酸化チタンと結合される。なお、所要の振動等を光触媒原液に加えても、球型酸化チタンと鏃型酸化チタンとの分離は、確認されなかった。
【表3】

【0053】
表4は、球型の光触媒溶液を塗布乾燥させた光触媒膜表面の電子・正孔の再結合速度と、本実施形態の光触媒含有液を塗布乾燥させた光触媒膜表面の電子・正孔の再結合速度との測定結果を示すものである。この測定は、フェムト秒レーザーパルスの拡散反射スペクトル(PP−DRS)法を採用している。表4の縦軸はΔオプティカルデンシティ、横軸は時間(ピコセコンド)を示している。
【0054】
表4に示すように、球型の光触媒側では20ピコセコンド経過時にほとんどの電子・正孔の再結合が完了している(b)。一方、本実施形態に係る光触媒側では20ピコセコンド経過時にも半分以上の電子・正孔の再結合が完了していない(a)。これは、本実施形態に係る光触媒側では、電子・正孔の再結合速度が遅いことを意味している。
【表4】

【0055】
表4に示す測定結果と以下の数式(1)とを用いて、電子濃度を算出した。
【0056】
電子濃度=時間ゼロでの電子濃度/1+時刻ゼロでの電子濃度×電子・正孔の再結合の二次速度定数×時間+ベースライン (1)
なお、球型の光触媒側の電子濃度は約10×1012cm/s、本実施形態の光触媒側の電子濃度は約1×1012cm/sであった。このように、約10倍程度の電子濃度の相違が確認された。これは、実施形態に係る光触媒含有フィルタ16の光触媒性が、球状の光触媒粒子しか用いていないフィルタの光触媒性に比して10倍優れていることを意味する。
【0057】
すなわち、電子と正孔との「再結合速度」が遅いことは、光触媒性が優れていることと同義である。「再結合速度」を決定するパラメータは、「B. Ohtani, S.-W. Zhang, S.-i. Nishimoto and T. Kagiya, J. Photochem. Photobiol.,A: Chem., 64, 223 (1992)」、「B. Ohtani and S.-i. Nishimoto, J. Phys. Chem., 97, 920 (1993)」に記載されているように、光触媒粒子の結晶性、及び、光触媒粒子の径(表面積)である。
【0058】
アモルファス状態の光触媒の高結晶化を実現しようとする場合には、その阻害要因となる不純物をゼロに近くし、かつ、結晶化のための十分な時間を確保することが必要である。このため、本願発明の場合には、既述のように、不純物除去のために、純水、イオン交換水、蒸留水などで水洗し、例えば2〜15時間、65〜400℃の温度で加熱している。すなわち、「扁平形状」の光触媒粒子を用いると、「再結合速度」に寄与する、光触媒の高結晶化を実現できる。
【0059】
ここで、光触媒粒子の径が小さいほど光触媒粒子の表面積が大きくなり、その結果、光触媒粒子の表面に吸着可能な分子数が増加し、触媒活性が高くなる。その一方で、「J. Phys. Chem., 99,16655(1995)」に記載されているように、光触媒粒子の粒径が2nm以下になると、電子と正孔との対再結合が生じやすくなるので触媒活性が低下するとも言われている。
【0060】
本実施形態の光触媒含有フィルタ16は、その光触媒における「扁平形状」の光触媒粒子の大きさが5nm〜30nmとばらついている。ただし、この光触媒粒子には、5nm以下の結晶化が不完全なものもある。この結果、2nm以下の大きさの光触媒粒子、上記対再結合を生じさせて、触媒活性が低下する場合がある。
【0061】
このデメリットは、「立体形状」の光触媒粒子を用いることで解消することができる。すなわち、「立体的形状」の光触媒粒子は、径の平均的な大きさが6nmであり、しかも径の大きさのばらつきが少ない。このため、「立体形状」の光触媒粒子と「扁平形状」の光触媒粒子とが結合された光触媒体は、相対的に、2nm以下の大きさの光触媒粒子が少なくなる。すなわち、各々の径の大きさが6nmの光触媒体を、5nm〜30nmの大きさの光触媒粒子とともに用いることで、対再結合の発生原因である2nm以下の大きさの光触媒粒子の割合を少なくし、デメリットを低下させている。
【0062】
(比較例)
1.光触媒原液のみを基板に塗布して乾燥させた後に、当該基板表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、表面に付着した酸化チタンには、平均的に約60%の気孔率が確認された。
【0063】
2.球型酸化チタンを蒸留水に混ぜてから、基板に塗布して乾燥させた後に、当該基板表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、表面に付着した酸化チタンには、平均的に約70%の気孔率が確認された。
【0064】
3.本実施形態に係る光触媒含有液を基板に塗布して乾燥させた後に、当該基板表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、表面に付着した酸化チタンには、平均的に約30%の気孔率が確認された。気孔率が50%を超える部分は確認されなかった。
【0065】
また、本実施形態に係る光触媒含有液を基板に塗布して乾燥させた光触媒膜での光触媒結晶の配向性が高いことが確認された。さらに、光触媒膜の強度が優れていることも確認できた。
【0066】
なお、本実施形態に係る光触媒含有液内における、2種類の形状の酸化チタンの混合割合を、約3:7,約5:5,約7:3など種々変更しても、気孔率に大差はなかった。
【0067】
ちなみに、光触媒含有液における球状の酸化チタンの含有割合が高まるに連れて、鑓状の酸化チタンと球状の酸化チタンとが結合状態にある酸化チタンが重くなり、これが光触媒含有液中に沈殿することになった。結局のところ、鑓状の酸化チタンと球状の酸化チタンとの割合は、約3:7乃至約7:3が好ましく、約5:5が最良であることがわかった。
【0068】
なお、本実施形態では、主として、光触媒含有体として酸化チタン含有液を例に説明したが、液状に限定されず、ゲル状、ゾル状のものであってもよい。また、光触媒活性物質は、酸化チタン(TiO)のみならず、Fe、CuO、In、WO、FeTiO、PbO、V、FeTiO、Bi、Nb、SrTiO、ZnO、BaTiO、CaTiO、KTaO、SnO、ZrO、Si、GaAs、CdSe、GaP、CdS、ZnSなどとしてもよい。
【0069】
本実施形態の光触媒含有フィルタ16は、この光触媒が製造段階でフィルタ内に混入される。また、光触媒溶液噴霧器22によって、この光触媒溶液が噴霧されることによって、光触媒含有フィルタ16の抗菌効果も高められる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態の空気清浄機100の模式的な内部構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す光触媒含有フィルタ16に含有される光触媒溶液の製造工程の概要説明図である。
【符号の説明】
【0071】
10 吸込口
12 ファン
14 オゾンガス発生器
16 光触媒含有フィルタ
18 光源
20 排出口
22 光触媒溶液噴霧器
24 制御部
30 筐体
100 空気清浄機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄対象体に混合されるオゾンガスを発生させるオゾンガス発生器と、
前記オゾンガス発生器で発生されたオゾンガスと前記清浄対象体との混合体を受ける光食媒体と、を備え、
前記光食媒体は、扁平形状の結晶粒子と立体形状の結晶粒子とが結合していることを特徴とする清浄機。
【請求項2】
空気清浄機本体の筐体は透光性を有しており、
前記光触媒体は、当該筐体を通じて得られる光を用いて触媒作用が得られる、請求項1記載の清浄機。
【請求項3】
前記光触媒体は、浄機本体の筐体を兼用する、請求項1又は2記載の清浄機。
【請求項4】
前記光触媒体は、扁平形状の結晶粒子と立体形状の結晶粒子とが結合した光触媒溶液を用いて製造される、請求項1から3のいずれか記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記光触媒体に扁平形状の結晶粒子と立体形状の結晶粒子とが結合した光触媒溶液を噴霧する噴霧器を備える、請求項1から4のいずれか記載の清浄機。
【請求項6】
清浄対象体に混合されるオゾンガスを発生させ、
前記オゾンガスと前記清浄対象体との混合体を扁平形状の結晶粒子と立体形状の結晶粒子とが結合している光食媒体で受ける清浄方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−11664(P2009−11664A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178816(P2007−178816)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(503343543)株式会社鯤コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】