説明

清浄用シート及びそれを用いた清浄方法

【課題】スクリーン版などの裏側に残留、堆積したペーストなどの除去対象物を、それに含まれる溶剤の種類に関係なく効果的に除去することができる清浄用シートを提供すること。
【解決手段】被清浄体に擦りつけて除去対象物を除去する清浄用シートであって、当該シートは、支持層1と、支持層1に積層されかつ厚み方向に貫通する開口をもつネット状材料層2とを有する、清浄用シート。本発明の清浄用シートは、上記ネット状材料層2の代わりに、支持層1上に積層された複数の短冊状のシート状物を有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被清浄体に付着したペーストやインキ等の除去対象物を清浄(被清浄体から除去)するために使用される清浄用シートであって、特にプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)に組み込まれる蛍光体層の製造などにおいて、スクリーン印刷版の対物面に裏回りしたペーストを拭き取るための清浄用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PDP(特に、カラーPDP)は、より大画面化されかつより高精細化され、その蛍光体層におけるRGB蛍光体の配置パターンも、より微細かつ高密度になってきている。
蛍光体層の形成工程では、図8(a)に模式的な断面図として示すように、RGB3原色の各蛍光体が、高精細なストライプを描くように基板100上に配置される。その配置パターンは、(R、G、B)の3列を1組とするストライプが繰り返されたパターンである。各蛍光体の帯同士の間には、隔壁110が存在している。即ち、蛍光体は、基板100の板面にストライプ状に形成された溝内にそれぞれ配置されることになる。
【0003】
各蛍光体を上記のような高精細なパターンにて基板上に配置するための手法として、図8(b)に示すように、スクリーン印刷が用いられる。
図8(b)は、図8(a)に示した蛍光体層の1つの溝を拡大して示したものであり、可撓性を有するフィルムであるスクリーン印刷版Sが基板100に重ねられ、開口(貫通孔)S20から蛍光体ペースト200が溝内に送り込まれる状態を示している。
スクリーン印刷版の内部に描かれた太い波線は、高分子材料や金属材料からなる線材で織った、所謂「スクリーン」を示唆している。図9に示すように、スクリーン印刷版の版面を見たとき、このスクリーンS10は開口内に露出し、その網目を通して蛍光体ペーストが対象物の面に印刷される。
【0004】
蛍光体をストライプ状に印刷する際は、隣の蛍光体ペーストの浸入を抑制し、各色の蛍光体ペーストを純粋な状態で溝内に配置することが理想とされる。隣り合った蛍光体同士が局所的にでも混ざり合うと、その部分のみ正確な画面表示ができなくなる。従って、特に高級品として販売される製品では、蛍光体の配置には厳しい品質が求められる。
【0005】
しかし、スクリーン印刷では、一定の印刷回数を経ると、図8(b)に示すように、スクリーン印刷版Sの対象物側の面S1に(特に開口S20の周囲に)、蛍光体ペースト201が残留・堆積する。このような蛍光体ペーストの残留・堆積は、「蛍光体ペーストの裏回り」などと呼ばれ、その残留物が隔壁の上部に付着し、正確で美麗な蛍光体配置ができない原因となる。
【0006】
従来、上記のようなPDPの製造におけるスクリーン印刷時の裏回りによる品質トラブルを防止するために、裏回りした蛍光体ペーストを粘着シートを用いて除去する方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。
これらの文献に記載された粘着シートは、いずれもペースト中の溶剤を適度に吸収しながら蛍光体ペーストを吸い取ることを意図するものである。
【0007】
しかしながら、粘着シートはペースト毎にペースト中の溶剤のSP値にあわせて、粘着剤の組成を設計する必要がある(例えば、特許文献4)。また、スクリーン印刷版用清浄用シートにあっては溶剤吸収量と粘着力のバランスをとって粘着剤を設計する必要がある。また、これらの粘着シートを使用した場合においては、粘着シートを被清浄体に貼って剥がすという工程を要するため、少なくとも被清浄面積と同等の粘着シートを消費しなければならない。
【0008】
また、例えば、磁気カード対応の読取機器といった物品の表面の汚れをクリーニングするためのシートとして、粘着剤層上に網などのポーラス層(多孔質層)を積層したクリーニングテープもしくはシートが知られている(特許文献3)。特許文献3のクリーニングテープもしくはシートでは、被クリーニング物が十分な接触圧で接触すると、粘着剤層がポーラス部から表出して、粘着剤層露出表面が被クリーニング物に接触することを利用して(「0017」段落)、被クリーニング物を清浄化している。
【特許文献1】特開2000−177110号公報
【特許文献2】特開2001−348541号公報
【特許文献3】特開平11−224414号公報
【特許文献4】特許第3280367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、例えばスクリーン印刷時にスクリーン版の裏側に残留、堆積したペーストなどの除去対象物を、それに含まれる溶剤の種類に関係なく効果的に除去することができる清浄用シートおよびそれを用いた清浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、ネット状材料層を支持層に積層することによって、上記ネット状材料層でワイパーのごとく擦り取った除去対象物だけがネット状材料層の開口部に溜まり、簡単な構造でありながら好ましいクリーニングが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)被清浄体に擦りつけて除去対象物を除去する清浄用シートであって、
当該シートは、支持層と、支持層に積層されかつ厚み方向に貫通する開口をもつネット状材料層とを有する、清浄用シート。
(2)ネット状材料層が、厚み方向に貫通する開口をもつシート状物からなる(1)記載の清浄用シート。
(3)シート状物の厚さが0.010〜5.0mmである(2)記載の清浄用シート。
(4)ネット状材料層が編地構造体を含む(1)記載の清浄用シート。
(5)編地構造体が、太さ0.010〜1.0mmの糸状物を編んでなるものである(4)記載の清浄用シート。
(6)被清浄体に擦りつけて除去対象物を除去する清浄用シートであって、
当該シートは、略長方形の平面をもつ支持層と、支持層上に積層された複数の短冊状のシート状物とを有し、各々のシート状物の長尺方向と支持層の長手方向とのなす角θ1は30°〜90°であり、上記複数のシート状物は支持層の長手方向に間隔をおいて並んでいる、清浄用シート。
(7)スクリーン印刷版の清浄のために使用される(1)〜(6)のいずれかに記載の清浄用シート。
(8)被清浄体がフラットパネルディスプレイの蛍光体層を形成するためのスクリーン印刷版であり、除去対象物が蛍光体ペーストである、(1)〜(6)のいずれかに記載の清浄用シート。
(9)被清浄体に付着した除去対象物を、(1)〜(6)のいずれかに記載の清浄用シートを使用して除去する清浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の清浄用シートでは、例えばスクリーン印刷版に裏回りした印刷用ペーストだけを効果的に除去することができる。
このような構成のシートを、例えば、図2に示すように、スクリーン印刷版Sの版面S1に擦りつければ、裏回りペースト201だけをネット状材料層2で除去することができ、除去されたペーストは202で示すようにネットの開口部に溜まる。
すなわち、該シートはスクリーン版の裏側を物理的に擦り取るため、ペースト中の溶剤の種類に関係なく、クリーニングが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の清浄用シートの構造を模式的に表した図である。図1(a)は本発明の清浄用シートの一形態の平面図であり、そのI−I断面図が図1(b)である。図1(c)は本発明の清浄用シートの別の形態の平面図であり、そのII−II断面図が図1(d)である。本発明によれば、清浄用シートは、支持層1と該支持層1に積層されたネット状材料層2とを有する。「ネット状」とは、層の厚み方向に貫通する開口を有することをさし、好ましくは、一般的な網のように、小さな開口を多数有している。本発明の清浄用シートは、その両面のうち、ネット状材料層2を積層した面を、被清浄体に擦りつけられるべき対物面として用いる。
【0013】
本発明において支持層1は、単層構造でも多層構造でもよい。また、支持層1の材質は特に限定されず、ポリマー材料、金属材料、紙材料や繊維材料等が例示される。また、支持層1として粘着剤層を用いることもできる。支持層1として粘着剤層を使用した場合、ネット状材料層2を粘着剤層の接着機能で支持層1に積層固定することができる。より好ましい支持層1の構成としては、基材と粘着剤層から構成される2層構造であり、粘着剤層の表面にネット状材料層2を積層することができる。支持層1がポリマー材料、金属材料、紙材料や繊維材料等から構成される場合、ネット状材料層2は、接着剤や熱融着等の各種の接着手段を用いて支持層1に固定積層することができる。
【0014】
支持層の厚さは、好ましくは0.01〜1.0mmであり、より好ましくは0.020〜0.5mmであり、さらに好ましくは0.050〜0.2mmである。
【0015】
また、本発明の清浄用シートの好ましい使用状態として、図2に示すように、ローラーRを用いて大きく湾曲させながらネット状材料層2をスクリーン印刷版面に擦りつけるという状態が挙げられるため、上記ポリマー材料は、本発明の清浄用シートに適度な可撓性と機械的強度とを与えるものであることが好ましい。
また、上記ネット状材料層2は、被清浄体の清浄面に損傷を与えないような適度な硬さと、該清浄面に接触する際に適当に変形しながら清浄面に隙間なく密着し得るような適度な弾性とを、当該シートに与えるものであることが好ましい。この観点から、支持層1やネット状材料層2はポリマー材料から構成されていることが好ましい。
【0016】
ポリマー材料としては、各種プラスチックであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、セロハン、ポリエステルなどが例示され、これらを単独で、もしくは2種以上を混合するなどして用いることができる。これらの中でも特に生産性やコスト等を考慮すれば、ポリエチレンをはじめとする各種のポリオレフィン系樹脂が好ましい材料である。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体など)やポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレンなど)や、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。なお、これらの樹脂中に顔料、充填剤、酸化防止剤や滑剤などといった公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0017】
当該シートが除去すべき除去対象物は特に限定されず、溶剤を含有して湿った状態にある半固形物、例えば、各種ペースト、インキ、糊、接着剤、塗料などが挙げられる。なお、除去対象物としては、必ずしも溶剤を含有していなくてもよく、溶剤を含有していなくてもそれ自体が湿った状態にある半固形物となっている材料であってもよい。なかでも、背景技術の説明において述べたとおり、PDPの蛍光体層を形成するためのスクリーン印刷には高精細化に伴なう問題が存在する。従って、除去対象物がPDPの蛍光層を形成するための蛍光体ペーストである場合に、本発明の清浄用シートの有用性は特に顕著となる。
【0018】
除去対象物が溶剤を含有する場合、その溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、テトラリン、ジペンテンなどの芳香族炭化水素;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、トリデシルアルコールなどのアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロンなどのケトン;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール;ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル;ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル;水などが挙げられる。
除去対象物がスクリーン印刷インキの場合には、中沸点溶剤(沸点:約120〜230℃)や高沸点溶剤(沸点:約230〜320℃)が多く用いられる。
さらに、PDPの蛍光体ペーストに含まれる溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート/ジエチレングリコールモノブチルエーテル[9/1(重量比)]などの高沸点溶剤(沸点:約230〜320℃)などが挙げられる。
【0019】
本発明において、ネット状材料層2の構造上の特徴として、厚み方向に開口を有していることが挙げられる。
【0020】
ネット状材料層2の開口は、除去すべき除去対象物が溜まるよう意図されており、その目的を達する限り、開口の数、大きさや配列は特に限定ない。除去対象物を効率よく除去すること、ネット状材料層の強度を確保すること、用時に被清浄体に支持層1が接触することを防ぐことをより確実にすることを考慮すると、ネット状材料層2の開口一つ当たりの開口面積は、好ましくは0.001〜1000000.0mmであり、より好ましくは0.01〜100000mmであり、最も好ましくは0.05〜10000.0mmである。
【0021】
開口をもつネット状材料層の具体的な態様は特に限定はない。一例として、図1(a)および図1(b)に示すような、厚み方向に開口をもつシート状物2が挙げられる。このようなシート状物を得るためには、原料となるポリマー材料をフィルムへと加工する際に開口部が備えられるように型などを用いてもよいし、最初に開口のないシート状物を形成した後に開口を形成してもよい。シート状物は、典型的には、厚み方向に貫通する開口が設けられたポリマーフィルムである。厚み方向に開口をもつシート状物の製造においては、公知のフィルム加工方法を適宜援用することができる。このようなシート状物は、開口の形状、数等の設計が容易であるという利点がある。
【0022】
ネット状材料層をシート状物で構成する場合、除去対象物の効率的な除去、清浄用シート全体の可撓性や強度の確保などを考慮すると、該フィルムの厚さhは、好ましくは0.01〜5.0mmであり、より好ましくは0.020〜1.0mmである。
【0023】
ネット状材料層をシート状物で構成する場合、シート状物は好ましくはポリマー材料からなる。ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどといったポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、塩化ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、セロハンなどが例示され、これらを単独で、もしくは2種以上を混合するなどして用いることができる。これらの中でも特に生産性やコスト、凹凸面の加工性等を考慮すれば、ポリエチレンをはじめとする各種のポリオレフィン系樹脂が好ましい材料である。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体など)やポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレンなど)や、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。なお、これらの樹脂中に顔料、充填剤、酸化防止剤や滑剤などといった公知の添加剤が含まれていてもよい。
また、シート状物は単層であっても多層(積層)構造であってもよい。
【0024】
開口をもつネット状材料層の別の一例として、図1(c)および図(d)に示すような、編地構造体2を含む層を挙げることができる。該編地構造体2は、好ましくはポリマー材料からなる1本または数本の糸状物21がループを作り、そのループに次の糸状物21を引っ掛けて新しいループを作ることを繰り返して作ることができる、シート状の構造物であり、ポリマー材料からなる編物であると表現することもできる。編地構造体2に存在する糸状物21のループが形作る空間部が、ネット状材料層の開口の役割を果たす。ポリマー材料から糸状物21を形成する方法や、編目の数や大きさや存在比率などの調節に関しては、公知の繊維加工技術などを適宜援用することができる。例えば、糸状物21は、1本の所定の太さのポリマー材料から構成されてもよいし、ポリマー材料からなるより細い繊維を撚り合わせて形成されていてもよい。編地構造体2には、連続したループからなる構造に加えて、さらに任意の方向に延びて互いに絡みあう糸状物が存在していてもよい。
【0025】
除去対象物の効率的な除去、清浄用シート全体の可撓性や強度の確保などを考慮すると、編地構造体2を構成する糸状物21の太さtは、好ましくは0.01〜1.00mmであり、より好ましくは0.015〜0.8mmである。糸状物21の太さtは、糸状物21の長手方向に垂直な断面の面積と等しい面積の円の直径として定義される。
【0026】
ネット状材料層をポリマー材料からなる編地構造体で構成する場合、特に好ましいポリマー材料は、ナイロンなどのポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、またはこれらの混合物等である。
【0027】
本発明によれば、清浄用シートの支持層1は、ネット状材料層2を積層固定することができる層であればよい。通常は、適当な支持体(図示せず)上に粘着剤層が形成されて、さらにその上にネット状材料層2が貼り付けられる。粘着剤層の材料としては、公知の粘着剤材料を適宜選択することができ、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。粘着剤層の形成方法は特に限定なく、従来公知の技術を適宜取り入れてよい。
【0028】
本発明によれば、用時において粘着剤層がネット状材料層2の開口から表出しにくい。よって、粘着剤層の材料は、スクリーン印刷用ペースト等の除去対象物中の溶剤を実質的に吸収してもよいし、しなくてもよい。好適には、粘着剤層の材料は、スクリーン印刷用ペースト中の溶剤を実質的に吸収し、そのことによる利点として、除去した溶剤含有物の溶剤を吸収して除去対象物を固形化して流出を防ぐということが挙げられる。
【0029】
本発明によれば、ネット状材料層2を被清浄体に擦りつける際に、粘着剤層がネット状材料層2の開口を経て表出しないよう構成されている。そのような構成は、粘着剤層の流動性を下げたり、粘着剤層を薄くして粘着剤層に含まれる粘着剤材料を少なくしたり、ネット状材料層2の開口の数や大きさを上記のようにすることなどを適宜組合わせることによって達成することができる。
【0030】
本発明の別の実施態様として、ネット状材料層の代わりに複数の短冊状のシート状物を有する清浄用シートを挙げることができる。図3は、複数の短冊状のシート状物3を有する清浄用シートの模式図である。複数の短冊状のシート状物3は、略長方形の平面をもつ支持層1上に積層されている。図3(a)に示すように、各々のシート状物の長尺方向と支持層の長手方向とのなす角θ1が90°(直角)であってもよいし、図3(c)に示すように、直角以外の角度であってもよい。θ1が採り得る範囲としては30°〜90°を挙げることができる。θ1(鋭角側)は、特に45°〜90°が好ましい。
【0031】
短冊状のシート状物3の材質は特に限定されず、各種のポリマーフィルム等を用いることができる。短冊状のシート状物3の長手方向に垂直に切断したときの断面形状(以下、単に「断面形状」という)は、除去すべき除去対象物の粘度や当該シートを構成する材料の機械的特性に応じて適宜決定してよい。例えば、台形状、ノコギリ歯状、三角波状、円形状などが好ましい断面形状として挙げられる。
【0032】
図3(b)に示すように、短冊状のシート状物3の断面形状が矩形波状である場合、短冊状のシート状物3の幅Eは、好ましくは10〜2000μmである。高さFにもよるが、幅Eがこの範囲より狭くなると、撓みなどの変形が大きくなり、ブレードとして機能し難くなる。一方、幅Eを上記範囲より広くしても、短冊状のシート状物3の上面は除去対象物の除去や保持に寄与しないため無駄である。幅Eは、より好ましくは50〜2000μmであり、特に好ましくは100〜1000μmである。このような範囲であれば、PDPの蛍光体ペーストの除去に優れる。短冊状のシート状物3の高さ(図3のF)は、該シート状物3の変形の度合いに影響するだけでなく、除去対象物を溜める際の容量にも影響するので、当該シートを用いる際の送り量を考慮して決定することが好ましい。好ましい高さFは、断面形状によっても異なるが、断面形状が矩形波状の場合、10〜1000μm程度が好ましく、より好ましくは20〜800μmであり、特に30〜500μmがPDPの蛍光体ペーストの除去には有効でありかつ無駄がない。
【0033】
複数の短冊状のシート状物3は、支持層1の長手方向に並んでいる。短冊状のシート状物3の配置間隔(図3のG)は、高さFとともに、除去対象物を溜める際の容量に影響する。好ましい配置間隔Gは、断面形状によっても異なるが、シート状物3の断面形状が矩形波状の場合は、100〜3000μm程度が好ましい。高さFにもよるが、配置間隔Gがこれより狭くなると、掻き取った除去対象物を保持するスペースが小さくなり過ぎて、除去しようとする除去対象物の量を下回り、完全に除去できなくなる。一方、配置間隔Gを前記範囲より広くすると、シート状物3の密度が粗になり過ぎて除去対象物の除去性が低下する。配置間隔Gは、より好ましくは200〜3000μmであり、特に300〜2000μmであるとPDPの蛍光体ペーストの除去には有効である。
【0034】
本発明の清浄用シートの使用例として、図2に、該シートを使用する装置の一例を概略的に説明する。
スクリーン印刷版Sの版面(PDPの蛍光体層形成用基板に接する面)S1には、既に裏回りペースト201が堆積している。支持層1の上にネット状材料層2を貼り付けることによって、本発明の清浄用シートAが構成されている。上述したように、ネット状材料層2に代えて、複数の短冊状のシート状物が設けられていてもよい。ローラーRによって支持層1を背後から押し付けることによって、スクリーン印刷版Sの版面S1に対して、ネット状材料層2が接触している。本発明の清浄用シートAは、細い矢印で示すように、図の左下方の巻出し装置(図示せず)から送り出され、ローラーRを越えて、右下方の巻取り装置(図示せず)へと進んでいく。ローラーRはシートの送りを助けるために送りと同期して回転することが好ましいが、動力源を伴なった能動的な回転であっても、フィルムに従動するだけのプーリーとしての回転であってもよい。このローラーRは、本発明のシートAをスクリーン印刷版の版面に押し付けながら、自体は図の右側へと平行移動する。
この動作によって、本発明の清浄用シートAのネット状材料層2に形成された開口に裏回りしたペースト201が溜まり、シートAは、版面S1に接しながら右方へと進み、同時に、常に新しいシートが供給される状態となる。
【0035】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0036】
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、塗布乾燥後の厚みが20μmであるアクリル系粘着剤層を設け、この粘着剤層の表面にシート状のネット(ポリエチレン製)を貼り合わせて清浄用シートを製造した。図4(a)はこのネットの平面図であり、図4(b)はこのネットのIV−IV断面図である。本実施例で用いたネットは、横糸22と縦糸23とからなり、図中の寸法は以下のとおりである;A=130μm、B=50μm、C=800μm、D=200μm。この清浄用シートを用いて後述のペースト除去の評価を行った結果、ペーストをきれいに除去できることが分かった。
【実施例2】
【0037】
粘着剤層の表面に貼り合せるシート状のネットの寸法(図4)を、A=300μm、B=90μm、C=1000μm、D=450μmに代えたことの他は実施例1と同様にして清浄用シートを製造した。この清浄用シートを用いて後述のペースト除去の評価を行った結果、ペーストをきれいに除去できることが分かった。
【実施例3】
【0038】
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、塗布乾燥後の厚みが30μmであるアクリル系粘着剤層を設け、この粘着剤層の表面に図1(C)に示すような線径100μmのナイロン糸からなる編物を貼り合わせて清浄用シートを製造した。図5は、この清浄用シートの顕微鏡観察象である。この清浄用シートを用いて後述のペースト除去の評価を行った結果、ペーストをきれいに除去できることが分かった。
【実施例4】
【0039】
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、塗布乾燥後の厚みが30μmであるアクリル系粘着剤層を設け、この粘着剤層の表面に短冊状のシート状物(ポリエステル製)を図3(a)のように貼り合わせて清浄用シートを製造した。図中の寸法は以下のとおりである;E=1000μm、F=75μm、G=2000μm。この清浄用シートを用いて後述のペースト除去の評価を行った結果、ペーストをきれいに除去できることが分かった。
【0040】
〔評価方法〕
(イ)図6(a)に示すように、厚さ75μmのPETフィルム20上に、スクリーン印刷版30を配置し、インクとしての蛍光体ペースト31をスキージ32によってスクリーン越しに擦り付け、図6(b)に示すように、幅40mm以上、長さ100mmの方形の印刷領域となるように、蛍光体ペーストを塗布する。総塗布量は、約25g/mとする。
(ロ)図6(d)に示すように、直径80mm、幅40mm、重さ1kgのローラー芯Rの外周に、ポリエチレンテレフタレートフィルムとは反対側の面が外側となるように実施例品のシートAを貼り付け、清浄用ローラーとする。ローラー芯は、モーターの回転軸に接続されており、回転数、回転方向は制御可能である。図6(c)に示すように、前記清浄用ローラー全体を、塗布された蛍光体ペースト上を速度1m/分で移動させながら、同時に該ローラーを、図6(d)に示すように、図に示す反時計方向に50mmの長さだけ等速で自転させる。これによって。清浄用シートは進行方向へ移動しかつ、ペーストを掻き上げながら除去していくことになる。
(ハ)PETフィルム上にペーストが残っているかどうかを目視にて判定する。図7(a)に示すように、除去性が良好であれば、清浄用ローラーが通過した跡にはペーストは残っていない。逆に、図7(c)に示すように、ペーストが凹部からあふれ出した状態となれば、図7(b)に示すように、清浄用ローラーが通過した跡は、途中からペーストが完全に除去されず残ってしまう。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によって、被清浄体に付着したペーストやインキ等の各種の除去対象物を清浄(除去)するための、特に、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)に代表される各種のフラットパネルディスプレイに組み込まれる蛍光体層の製造などにおいて、スクリーン印刷版の対物面に裏回りしたペーストを拭き取るための清浄用シートおよびそれを用いる清浄方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の清浄用シートの構造を模式的に表した図である。
【図2】本発明による清浄用シートの使用状態を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明による清浄用シートの構造を模式的に表した図である。
【図4】実施例の清浄用シートに用いたネットを模式的に表した図である。
【図5】実施例の清浄用シートの顕微鏡観察象である。
【図6】実施例の清浄用シートを評価するための手順を説明する図である。
【図7】実施例の清浄用シートを評価方法を説明する図である。
【図8】PDPの蛍光体層の製造過程における蛍光体の配置構造およびその製造方法を模式的に示す断面図である。各蛍光体R、G、Bは、紙面に垂直に延びる溝内に配置される。
【図9】PDPの蛍光体層の製造に用いられるスクリーン印刷版の版面を部分的に示した模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 支持層
2 ネット状材料層
21 糸状物
22 横糸
23 縦糸
3 シート状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被清浄体に擦りつけて除去対象物を除去する清浄用シートであって、
当該シートは、支持層と、支持層に積層されかつ厚み方向に貫通する開口をもつネット状材料層とを有する、清浄用シート。
【請求項2】
ネット状材料層が、厚み方向に貫通する開口をもつシート状物からなる、請求項1記載の清浄用シート。
【請求項3】
シート状物の厚さが0.010〜5.0mmである、請求項2記載の清浄用シート。
【請求項4】
ネット状材料層が編地構造体を含む、請求項1記載の清浄用シート。
【請求項5】
編地構造体が、太さ0.010〜1.0mmの糸状物を編んでなるものである、請求項4記載の清浄用シート。
【請求項6】
被清浄体に擦りつけて除去対象物を除去する清浄用シートであって、
当該シートは、略長方形の平面をもつ支持層と、支持層上に積層された複数の短冊状のシート状物とを有し、各々のシート状物の長尺方向と支持層の長手方向とのなす角θ1は30°〜90°であり、上記複数のシート状物は支持層の長手方向に間隔をおいて並んでいる、清浄用シート。
【請求項7】
スクリーン印刷版の清浄のために使用される請求項1〜6のいずれかに記載の清浄用シート。
【請求項8】
被清浄体がフラットパネルディスプレイの蛍光体層を形成するためのスクリーン印刷版であり、除去対象物が蛍光体ペーストである、請求項1〜6のいずれかに記載の清浄用シート。
【請求項9】
被清浄体に付着した除去対象物を、請求項1〜6のいずれかに記載の清浄用シートを使用して除去する清浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−61282(P2007−61282A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249482(P2005−249482)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】