説明

減圧弁

【課題】弁機構が減圧室の圧力に応じて作動するダイヤフラムに弁体を連動、連結させてボディに収容される減圧弁において、自然な状態では板厚を一定とした円板状のダイヤフラムを用いることでコスト低減を図りつつ、ダイヤフラムの位置決めを確実とし、ダイヤフラムの弾発力低下によるシール性能および抜け止め性能の低下を防止する。
【解決手段】自然な状態では少なくとも内周縁部の板厚を一定として円板状に形成されるダイヤフラム28の一面内周縁部に当接する鍔状の第1リテーナ92を一体に有する金属製のダイヤフラムロッド91がダイヤフラム28の中心孔90に挿通され、ダイヤフラムロッド91の一端をかしめて形成される係合部91aおよびダイヤフラム28の他面内周縁部間に、第1リテーナ92との間にダイヤフラム28の内周縁部だけを挟む金属製の第2リテーナ93が少なくとも挟持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧通路に通じる弁室に臨む弁座に着座することを可能として前記弁室に収容される弁体を有する弁機構が、前記弁座の中央部に開口する弁孔に通じる減圧室の圧力に応じて作動するダイヤフラムに前記弁体を連動、連結させてボディに収容される減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤフラムロッドを挿通、連結せしめる円筒状の内周シール部が、他の部分よりも厚肉に形成されてダイヤフラムの中央部に設けられるようにした減圧弁が、特許文献1で知られているが、このような減圧弁では、ダイヤフラムの成形コストの増大を招く。そこで本願の出願人は、自然な状態では板厚を一定とした円板状のダイヤフラムの内周縁部を、ダイヤフラムの中央部を貫通するダイヤフラムロッドに螺合するナットの締め付けによって金属製の第1および第2リテーナ間に挟むとともに、第1および第2リテーナ間に金属製のワッシャを介在させるようにした減圧弁を、特願2007−222417号で既に提案しており、この先願技術によれば、熱等の影響によってダイヤフラムが劣化し、ダイヤフラムの弾発力が低下しても第1および第2リテーナ間の間隔が変化してナットが緩むことを防止することができる。また第1および第2リテーナ間の間隔をワッシャで規制するようにして第1および第2リテーナによるダイヤフラムの圧縮代を精度良く設定することができ、ダイヤフラムの劣化による弾発力低下が生じても、ダイヤフラムと第1および第2リテーナとの間のシール性および抜け止め性を保持することが可能であり、自然な状態では板厚を一定とした円板状のダイヤフラムを用いることでコスト低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−181208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記先願技術では、ダイヤフラムロッドが一体に有する環状の段部に、第1リテーナ、ワッシャ、ダイヤフラムおよび第2リテーナを積み上げる際に、ダイヤフラムの内周縁部の一部がワッシャに乗り上げてしまい、その乗り上げ部がワッシャおよび第2リテーナ間に挟まれてしまい、ダイヤフラムの圧縮代を所望の値とすることができない可能性がある。この場合、ダイヤフラムの中央部に設けられる中心孔を大径化し、ワッシャの外周との間の間隔を大きくすることも考えられるが、そのようにすると、ダイヤフラムロッドに対するダイヤフラムの半径方向位置が定まらなくなり、第1および第2リテーナ間でのダイヤフラムの充填率が低下し、耐抜け荷重が低下してしまうことになる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、自然な状態では板厚を一定とした円板状のダイヤフラムを用いることでコスト低減を図りつつ、ダイヤフラムの位置決めを確実とし、ダイヤフラムの弾発力低下によるシール性能および抜け止め性能の低下を防止することができるようにした減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、高圧通路に通じる弁室に臨む弁座に着座することを可能として前記弁室に収容される弁体を有する弁機構が、前記弁座の中央部に開口する弁孔に通じる減圧室の圧力に応じて作動するダイヤフラムに前記弁体を連動、連結させてボディに収容される減圧弁において、中央部に中心孔を有する前記ダイヤフラムが自然な状態では少なくとも内周縁部の板厚を一定として円板状に形成され、前記ダイヤフラムの一面内周縁部に当接する鍔状の第1リテーナを一体に有して前記弁体に連動、連結される金属製のダイヤフラムロッドが前記ダイヤフラムの中心孔に挿通され、前記ダイヤフラムロッドの一端をかしめて形成される係合部および前記ダイヤフラムの他面内周縁部間に、前記第1リテーナとの間に前記ダイヤフラムの内周縁部だけを挟む金属製の第2リテーナが少なくとも挟持され、前記ダイヤフラムロッドの少なくとも前記第1リテーナから前記第2リテーナの前記係合部側端面までの外周面が、前記ダイヤフラムの半径方向に沿う前記中心孔および前記第2リテーナの位置を定めるべく同一に設定され、前記ダイヤフラムだけで規制される第1および第2リテーナ間の間隔のうち最小間隔となる部分が最大間隔となる部分よりも半径方向外方に位置するように設定されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記第2リテーナの少なくとも内周部に、前記ダイヤフラムロッド側に近接するにつれて第1リテーナから離反するように傾斜した傾斜部が設けられることを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は、第2の特徴の構成に加えて、前記第2リテーナの前記ダイヤフラムとは反対側の面に、前記ダイヤフラムを付勢するダイヤフラムばねを受けるばね座面が形成され、そのばね座面の半開方向内方側に前記傾斜部が配置されることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、自然な状態では少なくとも内周縁部の板厚を一定として円板状に形成されるダイヤフラムを用いることでコストの低減を図ることが可能であり、またダイヤフラムの一面内周縁部に当接する鍔状の第1リテーナを一体に有する金属製のダイヤフラムロッドの一端をかしめて形成される係合部およびダイヤフラムの他面内周縁部間に、第1リテーナとの間にダイヤフラムの内周縁部だけを挟む金属製の第2リテーナが少なくとも挟まれるので、ナットを用いたねじ締め構造に比べると量産性が高く、ねじ緩みを考慮する必要がなく、ダイヤフラムの内周縁部を第1および第2リテーナで挟持する構造の信頼性を高めることができる。しかも第1および第2リテーナ間にはダイヤフラムだけが挟持され、ダイヤフラムロッドの少なくとも第1リテーナから第2リテーナの係合部側端面までの外周面がダイヤフラムの半径方向に沿う中心孔および第2リテーナの位置を定めるべく同一に設定されるので、組付け時にダイヤフラムの内周縁部の一部が第1および第2リテーナ以外の他の部材に乗り上げてしまうことがなく、ダイヤフラムの圧縮代を所望の値とすることができる。さらに第1および第2リテーナ間の間隔のうち最小間隔となる部分が最大間隔となる部分よりも半径方向外方に位置しており、最小間隔となる部分でダイヤフラムが第1および第2リテーナ間に比較的大きな荷重で圧縮されることになって第1および第2リテーナとダイヤフラムとの間にシール性を高めることができ、第1および第2リテーナの間隔のうち最小間隔部位よりも内方側の部分が最小間隔部位を通過するには圧縮されることが必要であり、しかも第1および第2リテーナの内周側にダイヤフラムロッドの一端のかしめによって形成される係合部からの荷重が作用することによって第2リテーナは第1および第2リテーナの外周側間の間隔を小さくする側に弾発力を発揮するように撓むので、ダイヤフラムの劣化による弾発力低下が生じても耐抜け荷重の向上を図ることができる。
【0010】
また本発明の第2の特徴によれば、第2リテーナの少なくとも内周部にダイヤフラムロッド側に近接するにつれて第1リテーナから離反するように傾斜した傾斜部が設けられるので、第2リテーナからダイヤフラムに作用する弾発力をより効果的に発生することができ、ダイヤフラムの劣化による弾発力低下が生じても耐抜け荷重の向上をより効果的に高めることができる。
【0011】
さらに本発明の第3の特徴によれば、ダイヤフラムばねを受けるばね座面の半径方向内方側に傾斜部が配置されるので、第2リテーナに傾斜部が設けられていても、ダイヤフラムばねのダイヤフラム側端部を安定して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のガス用減圧弁の縦断面図である。
【図2】図1の2矢示部拡大図である。
【図3】図1の3矢示部拡大図である。
【図4】図2の4−4線拡大断面図である。
【図5】図1の5矢示部拡大図である。
【図6】図1の6−6線断面図である。
【図7】第1および第2ボディの分解斜視図である。
【図8】被取付け部を示すための第1ボディ部材の斜視図である。
【図9】実施例2を示すものであって図3に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜図8を参照しながら本発明の実施例1について説明すると、先ず図1において、このガス用減圧弁は、燃料ガスである圧縮天然ガスを減圧してエンジン(図示せず)に供給するためのものであり、第1および第2ボディ部材18,19が相互に結合されて成るボディ16と、薄肉金属のプレス成形により形成されて前記ボディ16に結合されるダイヤフラムカバー17とを備え、前記ボディ16には、弁機構20が収容されるとともにリリーフ弁21が配設される。
【0015】
ボディ16は、第1および第2ボディ部材18,19が上下に重なりつつ複数個所で締結されて成るものである。第1ボディ部材18の中央部には、半径方向内方に張り出す内向き鍔22を上端に有して上下に延びる収容孔23が設けられる。この収容孔23は、前記内向き鍔22側から順に、小径孔23aと、該小径孔23aよりも大径のねじ孔23bと、該ねじ孔23bよりも大径の大径孔23cとが同軸に連なって成り、大径孔23cの下端は第1ボディ部材18の下端面で下方に開放される。
【0016】
第1ボディ部材18の下部側面には、減圧前の圧縮天然ガスを導入するためのガス入口24が設けられ、そのガス入口24に同軸に連なる高圧通路25が第1ボディ部材18に設けられる。
【0017】
図2を併せて参照して、弁機構20は、ダイヤフラム28によって駆動されるものであり、前記収容孔23の小径孔23aに気密に嵌合、固定される金属製のガイド部材30と、該ガイド部材30との間に弁室32を形成して前記ガイド部材30に結合されるとともに弁孔33を中央部に開口させて前記弁室32に臨む弁座34が設けられる弁座部材31と、前記弁孔33を緩く貫通しつつ前記ガイド部材30に摺動可能に嵌合される弁軸35と、前記弁座34に着座することを可能として前記弁室32内で前記弁軸35の外周に嵌装される合成樹脂製の弁体36とを有するものであり、該弁機構20は、前記弁室32に通じる高圧室37ならびに前記弁孔33に通じる減圧室38間に介在するようにしてボディ16に収容されるようにして第1ボディ部材18に取付けられ、前記高圧室37には前記高圧通路25が連通される。
【0018】
前記ガイド部材30の前記弁座部材31側の端部外周には前記弁座部材31側に延びる円筒部30aが一体に設けられており、この円筒部30aの先端部は、その先端を前記弁座部材31に当接せしめるようにして該弁座部材31に圧入される。また弁座部材31の前記内向き鍔22側の面には、前記弁孔33を囲む環状の第1シール部材39が内向き鍔22に密接するようにして装着され、前記弁室32は、前記円筒部30aで外周が規定されるようにして弁座部材31およびガイド部材30間に形成される。
【0019】
前記弁座部材31の外周ならびに前記ガイド部材30の弁座部材31側の端部外周と、前記収容孔23における小径孔23aの内周との間に環状の前記高圧室37が形成され、前記ガイド部材30の外周には、前記小径孔23aの内周に弾発的に接触する環状の第2シール部材40が装着される。
【0020】
また前記ガイド部材30および前記弁座部材31間には、前記高圧室37および前記弁室32間に介在する円筒状のフィルタ41が、前記ガイド部材30の前記円筒部30aを囲繞するようにして挟持され、前記円筒部30aには、前記高圧室37から前記フィルタ41を通過した高圧ガスを前記弁室32に導入するための複数の連通孔42…が設けられる。
【0021】
前記弁軸35は、弁体装着軸部35aと、該弁体装着軸部35aよりも小径に形成されて弁体装着軸部35aの一端に同軸に連なる連結軸部35bと、前記弁体装着軸35aよりもわずかに大径に形成されて弁体装着軸部35aの他端に同軸に連なるガイド軸部35cとを一体に有し、連結軸部35bが前記弁孔33を緩く貫通してダイヤフラム28側に連結され、ガイド軸部35cが前記ガイド部材30に摺動可能に嵌合される。
【0022】
前記弁体36は、前記弁軸35の弁体装着軸部35aの外周に装着、固定されるようにして円筒状に形成されており、この弁体36の一端に、前記弁座34に着座可能なテーパ状のシール面36aが形成されるとともに、前記弁体装着軸部35aの一端外周に設けられる環状の係止溝43に弾発的に係合する環状突部36bが設けられる。
【0023】
前記ガイド部材30には、前記弁軸35の弁体装着軸部35aに装着された前記弁体36の一部が挿入される挿入孔44と、前記弁軸35のガイド軸部35cを摺動可能に嵌合せしめるようにして前記挿入孔44よりも小径に形成されるガイド孔45とが同軸に連なって設けれられる。
【0024】
前記挿入孔44は、弁室32側から順に、大径孔44aと、大径孔44aよりも小径である中径孔44bと、中径孔44bよりも小径である小径孔44cとが同軸に連なって成るものであり、前記中径孔44bには、前記弁体36の外周に弾発的に摺接する環状の第3シール部材46が挿入され、前記大径孔44aには、第3シール部材46の中径孔44bからの離脱を阻止するリング板状の押さえ板47が圧入される。すなわちガイド部材30には、弁体36の外周に弾発的に摺接する第3シール部材46が装着される。
【0025】
また前記ガイド孔45は、前記挿入孔44の小径孔44cよりも小径であって、第3シール部材46が摺接している弁体36の外周直径よりも小径に形成されており、第3シール部材46による弁体36のシール径D1よりもガイド孔45の直径であるガイド径D2が小径に設定される。
【0026】
再び図1において、前記収容孔23のねじ孔23bには、前記ガイド部材30に当接してガイド部材30および弁座部材31を前記内向き鍔22との間に挟持するリング状の押さえ部材48が螺合される。この押さえ部材48には、前記弁軸35のガイド軸部35cよりも大径であるねじ孔49が、前記ガイド軸部35cの端部を挿入するようにして該弁軸35と同軸に設けられる。しかも押さえ部材48の前記ガイド部材30とは反対側の端面には、前記ねじ孔23bに螺合すべく前記押さえ部材48を回転操作するための工具(図示せず)を係脱可能に係合するための有底の係合孔50が設けられる。
【0027】
前記収容孔23の下端開口部は調節部材51で気密に閉じられる。この調節部材51は、前記収容孔23における大径孔23cの内面に弾発的に接触する環状の第4シール部材52が外周に装着されて前記大径孔23cに嵌合される大径部51aと、該大径部51aよりも小径に形成されるとともに前記押さえ部材48のねじ孔49に螺合する雄ねじ53が外周に刻設されるようにして前記大径部51aに同軸にかつ一体に連設される小径部51bとを有し、大径部51aの外端には、図示しない工具を係合するための有底の係合孔54が設けられる。而して雄ねじ53を押さえ部材48のねじ孔49に螺合した状態で係合孔54に工具を係合して回転操作することにより、前記調節部材51は、弁軸35と同軸の軸線に沿う方向の進退が可能となる。
【0028】
また前記調節部材51には、前記弁軸35側に開放した有底の収容凹部55が弁軸35と同軸に設けられており、弁軸35におけるガイド軸部35cの端部に当接されたばね受け部材56と、前記収容凹部55の閉塞端との間に背面コイルばね57が縮設される。而して前記調節部材51の軸方向に沿う進退位置を該調節部材51の回転操作によって調節することにより、前記背面コイルばね57のばね荷重を調節することができる。
【0029】
図3を併せて参照して、第2ボディ部材19には、前記第1ボディ部材18側に配設される弁機構20の軸線に沿う中間部に位置して前記弁機構20の軸線に直交する平面に沿う壁部58が設けられ、その壁部58よりも第1ボディ部材18側で第2ボディ部材19には、壁部58側から順に減圧室形成孔59と、該減圧室形成孔59よりも大径である嵌合孔60とが、第1ボディ部材18に設けられる収容孔23と同軸にして相互に連なるように設けられ、前記壁部58に関して第1ボディ部材18とは反対側で前記第2ボディ部材19には、圧力作用室形成孔61が、前記減圧室形成孔59および前記嵌合孔60と同軸に設けられる。
【0030】
一方、第1ボディ部材18には、図1で示すように、前記収容孔23と同軸である横断面円形の嵌合突部18aが一体に突設されており、この嵌合突部18aは前記嵌合孔60に嵌合される。而して嵌合突部18aの外周には嵌合孔60の内周に弾発的に接触する環状の第5シール部材62が装着されており、嵌合突部18aは嵌合孔60に気密に嵌合されることになる。
【0031】
前記嵌合突部18aを嵌合孔60に嵌合した状態で、第1および第2ボディ部材18,19は、嵌合突部18aを囲繞して第1ボディ部材18に装着された環状の第6シール部材63を相互間に介在せしめるようにして結合されるものであり、第1および第2ボディ部材18,19の結合状態では、嵌合突部18aの先端および壁部58間には、前記減圧室形成孔59で外周が規定される減圧室38が形成されることになり、この減圧室38は前記弁機構20の弁孔33に連通する。
【0032】
ところで調節部材51で開口端が気密に閉じられた前記収容孔23内には、前記弁機構20の弁軸35におけるガイド軸部35cの端部を臨ませる背圧室65が形成されており、この背圧室65は、ガイド部材30の外周に装着される第2シール部材40が収容孔23における小径孔23aの内面に弾発的に接触し、またガイド部材30に装着された第3シール部材46が弁体36の外周に弾発的に接触していることにより、前記小径孔23a内でガイド部材30および弁座部材31と第1ボディ部材18との間に形成されている環状の高圧室37とは気密に隔絶されている。
【0033】
前記背圧室65は、背圧導入路66を介して前記減圧室38に通じるものであり、この背圧導入路66は、前記弁孔33と、前記弁体36および弁軸35の弁体装着軸部35a間に形成される第1通路部67と、第1通路部67および背圧室65間を結ぶようにして弁軸35のガイド軸部35cおよびガイド部材30間に形成される第2通路部68とから成る。
【0034】
第1通路部67は、前記弁体36の内周および前記弁軸35の弁体装着軸部35aの外周の少なくとも一方、この実施例1では弁体装着軸部35aの外周に、軸方向に延びる平坦な第1切欠き69が設けられることによって形成されるものであり、弁体36は、減圧室38から背圧室65への流体の流通を弁軸35との間に形成するようにして弁軸35の弁体装着軸部35aに嵌装されることになり、弁体装着軸部35aは、その一端の係止溝43を除く軸方向全長にわたって同一の横断面形状を有するように形成される。
【0035】
第2通路部68は、弁軸35のガイド軸部35cの外周およびガイド部材30の内周の少なくとも一方、この実施例1では、図4で示すように、ガイド軸部35cの外周に平坦な第2切欠き70が軸方向に延びるようにして設けられて成り、第1および第2切欠き69,70は面一な平坦面として連なって形成される。
【0036】
図5に注目して、前記リリーフ弁21は、減圧室38内の圧力が設定圧以上となるのに応じて開弁するものであり、ホースを接続可能として円筒状に形成されるとともにホースの抜け止めを果たす抜け止め部74aが外周に形成されるようにして前記ボディ16の第2ボディ部材19に一体に設けられる円筒状の継手部74と、該継手部74が同軸に有する摺動孔75に摺動可能に嵌合されるリリーフ弁体76と、前記摺動孔75の外端部に嵌合、固定されるキャップ77と、前記リリーフ弁体76および前記キャップ77間に設けられるコイルばね78とを備える。
【0037】
前記リリーフ弁体76は、前記摺動孔75に摺動可能に嵌合される円筒状の摺動筒部76aと、該摺動筒部76aよりも小径に形成されて摺動筒部76aの一端に同軸に連なる円筒状の連結筒部76bと、連結筒部76bの一端を閉じるとともに連結筒部76bの外周よりも半径方向外方に外周を張り出す円板部76cとを一体に有し、連結筒部76bには複数の透孔79…が設けられる。
【0038】
前記摺動孔75の内端には、前記減圧室38に通じるリリーフ弁孔80を中央部に開口させた環状のリリーフ弁座81が設けられており、たとえばゴムから成る環状のシート部材82が、前記リリーフ弁座81に着座してリリーフ弁孔80を閉鎖することを可能として前記リリーフ弁体76における内端の円板部76cに貼着される。
【0039】
前記キャップ77は、前記摺動孔75の外端にたとえば圧入することで継手部74に固定されており、前記減圧室38の圧力が所定圧以上となったときに前記リリーフ弁体76が前記リリーフ弁座81から離座して前記リリーフ弁孔80が開放されるのに応じて、前記減圧室38の圧力を外部に解放するための解放孔83が設けられる。
【0040】
図1に注目して、前記ダイヤフラム28は、少なくとも内周縁部の板厚を自然な状態では一定とした円板状のゴム板から成るものであり、この実施例ではダイヤフラム28の全体が自然な状態では板厚を一定とした円板状に形成される。該ダイヤフラム28の周縁部は、前記ボディ16における第2ボディ部材19と、第2ボディ部材19に固定されるダイヤフラムカバー17との間に挟持されるものであり、第2ボディ部材19およびダイヤフラム28間には、第2ボディ部材19の圧力作用室形成孔61で外周が規定される圧力作用室86がダイヤフラム28の一面を臨ませるようにして形成され、ダイヤフラム28およびダイヤフラムカバー17間にはダイヤフラム28の他面を臨ませるばね室87が形成され、該ばね室87に収容されるコイル状のダイヤフラムばね88がダイヤフラムカバー17およびダイヤフラム28間に縮設される。
【0041】
またダイヤフラムカバー17には、ばね室87に通じる負圧導入管89が接続されており、この負圧導入管89はエンジンに接続され、前記ばね室87にはエンジンの吸気負圧が導入される。
【0042】
再び図3において、前記ダイヤフラム28の中央部には中心孔90が設けられており、前記弁機構20の弁体36に連動、連結される金属製のダイヤフラムロッド91がその一端側を前記ばね室87側に突出させるようにして前記圧力作用室86側から前記中心孔90に挿通され、このダイヤフラムロッド91の他端には、前記ダイヤフラム28の圧力作用室86側の一面に当接する鍔状の第1リテーナ92が一体に設けられる。またダイヤフラムロッド91は、その一端に円筒部を一体に有しており、該円筒部はかしめることで外側方に屈曲した係合部91aを形成することになる。前記係合部91aおよび前記ダイヤフラム28の前記ばね室87側の他面間には、第1リテーナ92との間に前記ダイヤフラム28の内周縁部だけを挟む金属製の第2リテーナ93が少なくとも挟持され、この実施例1では、前記係合部91aが第2リテーナ93に直接係合される。また第2リテーナ93にはダイヤフラムばね88の一端が当接される。
【0043】
しかもダイヤフラムロッド91の少なくとも第1リテーナ92から第2リテーナ93の前記係合部91a側端面までの外周面の直径D3は、ダイヤフラム28の半径方向に沿う前記中心孔90および第2リテーナ93の位置を定めるべく同一に設定される。
【0044】
ところで第1および第2リテーナ92,93間の間隔は、第1および第2リテーナ92,93間に挟まれるダイヤフラム28だけで規制されるのであるが、その間隔は半径方向外方に向かうにつれて小さくなるように設定される。すなわち第1および第2リテーナ92,93間の間隔のうち半径方向内端側の間隔が最大間隔Cdmaxであり、第1および第2リテーナ92,93間の間隔のうち半径方向外端側の間隔が最小間隔Cdminとなり、最小間隔Cdminである部分が最大間隔Cdmaxである部分よりもダイヤフラム28の半径方向外方に位置するように、第1および第2リテー92,93間の間隔が設定される。
【0045】
このような第1および第2リテーナ92,93間の間隔設定のために、第1リテーナ92のダイヤフラム28に臨む面は、半径方向外方に向かうにつれて第2リテーナ93に近接するように傾斜して形成される。
【0046】
しかも第1リテーナ92のダイヤフラム28側の面および第2リテーナ93のダイヤフラム28側の面の少なくとも一方、この実施例では第1リテーナ92のダイヤフラム28側の面に、縦断面形状を略V字形とした複数の溝100…,101…が、ダイヤフラム28の一部を食い込ませるようにして形成される。而して前記溝100…は、第1および第2リテーナ92,93間の間隔のうち最小間隔Cdminとなる部分でたとえば同心三重円状となるようにして第1リテーナ92に形成され、また前記溝101…は、第1および第2リテーナ92,93間の間隔のうち最大間隔Cdmaxとなる部分でたとえば同心三重円状となるようにして第1リテーナ92に形成される。
【0047】
一方、弁機構20の弁軸35における連結軸部35bには連結軸94が連結されるものであり、この連結軸94は、第1リテーナ92に一端部を当接せしめる大径軸部94aと、前記ダイヤフラムロッド91に設けられた挿通孔95に挿通されるようにして大径軸部94aの一端に同軸に連なる小径軸部94bと、大径軸部94aよりも小径に形成されて大径軸部94aの他端に同軸に連なる中径軸部94cとを一体に有する。
【0048】
前記連結軸94の大径軸部94aおよび第1リテーナ92間には小径軸部94bを囲繞する環状の第7シール部材96が介装される。また小径軸部94bの少なくともダイヤフラムロッド91からばね室87側に突出する部分の外周には雄ねじ97が刻設されており、前記ダイヤフラムロッド91との間にワッシャ98を介在させたナット99を前記雄ねじ97に螺合して締め付けることにより、連結軸94が、第1リテーナ92を一体に有するダイヤフラムロッド91および第2リテーナ93を介して、ダイヤフラム28の中心部に連結される。
【0049】
前記連結軸94は、第2ボディ部材19における壁部58の中央部を軸方向移動可能に貫通するものであり、該連結軸94の軸方向移動を案内する合成樹脂製のガイド部材104が前記壁部58に装着される。
【0050】
前記ガイド部材104は、前記連結軸94の大径軸部94aを摺動自在に嵌合せしめるガイド孔106を形成して円筒状に形成されるガイド部104aと、該ガイド部104aから半径方向外方に延出される延出部104bと、前記ガイド部104aから離隔した位置で前記延出部104bから突出する係合部104c…とを一体に有するものであり、前記ガイド部104aの一端側を第2ボディ部材19における前記壁部58の中央部に設けられる貫通孔105に嵌入するとともに、前記係合部104c…をボディ16の前記壁部58に弾発係合せしめるようにして前記壁部58に装着される。
【0051】
前記延出部104bは、圧力作用室86側から前記壁部58に対向するようにして前記ガイド部104aの軸方向中間部の外周全周から半径方向外方に張り出すとともに前記壁部58への対向面を平坦面として鍔状に形成される。
【0052】
前記係合部104c…は、前記ガイド部104aを囲むようにして周方向に等間隔をあけた複数個所たとえば3個所で前記延出部104bに一体に突設されるものであり、前記壁部58に設けられた係合孔107…に該壁部58の一面側から撓みつつ挿通されるとともに前記壁部58の他面に弾発係合するように形成される。
【0053】
前記ガイド部材104には、前記減圧室38および前記圧力作用室86間を連通するアスピレータ通路108が、前記壁部58を貫通するようにして形成されるものであり、このアスピレータ通路108は、前記延出部104bに一端が一体に連設されるアスピレータチューブ109内に形成される。而して前記壁部58には、アスピレータチューブ109を嵌入せしめるアスピレータ孔110が設けられており、前記ガイド部材104が前記壁部58に装着された状態で前記アスピレータチューブ109の他端は前記減圧室38内に突入される。
【0054】
前記ガイド部材104には、前記ガイド部104aの前記ダイヤフラム28側の端部から半径方向外方に張り出すストッパ部104dが、前記圧力作用室86の容積を縮小する側への前記ダイヤフラム28の変位を規制するようにして一体に設けられる。
【0055】
前記連結軸94の大径軸部94aは、前記ガイド部材104のガイド孔106に摺動可能に嵌合され、大径軸部94aの外周にはガイド孔106の内周に摺接する環状の第8シール部材111が装着される。また前記連結軸94における中径軸部94cはガイド孔106から減圧室38に突入されるものであり、減圧室38内で前記中径軸部94cに前記弁機構20における弁軸35の一端部が連結される。
【0056】
前記連結軸94における中径軸部94cには、該連結軸94の軸線と直交する平面に沿うとともに連結軸94の側面に開口する係合溝112が設けられるとともに、前記中径軸部94cの前記弁機構20側の端面および前記係合溝112間にわたるスリット113が前記係合溝112と同方向で前記中径軸部94cの側面に開口するようにして設けられる。
【0057】
一方、弁体36が固設された前記弁軸35における連結軸部35bの先端には拡径係合部35dが設けられており、この拡径係合部35dを前記係合溝112に係合せしめるようにして前記連結軸部35bが前記スリット113に挿通されることにより、弁機構20の弁軸35が連結軸94の一端部に連結される。すなわち連結軸94は弁軸35を介して弁体36に連接される。
【0058】
このようなガス用減圧弁においては、ダイヤフラム28が、圧力作用室86の圧力によりダイヤフラムばね88のばね力に抗してばね室87側に撓むと、弁機構20は閉弁し、また前記圧力作用室86の圧力低下によってダイヤフラム28が圧力作用室86側に撓むと、弁機構20は開弁し、このような弁機構20の開閉が繰り返されることにより、高圧の圧縮天然ガスが減圧されてガス出口114から出力される。
【0059】
而してガス出口114は、前記リリーフ弁21と同軸上で減圧室形成孔59の内面に内端を開口させるようにして第2ボディ部材19に設けられる。すなわちガス出口114は減圧室38に通じるものであり、ガス出口114を形成する接続管部115が第2ボディ部材19から側方に突出するようにして第2ボディ部材19に一体に設けられる。
【0060】
図6および図7を併せて参照して、第1および第2ボディ部材18,19の結合状態で、加熱媒体たとえばエンジン冷却水を流通させる加熱媒体通路118が、第1および第2ボディ部材18,19の結合面間に形成され、加熱媒体通路118を外方から囲む環状の弾性シール部材である第6シール部材63が第1および第2ボディ部材18,19間に挟まれる。
【0061】
この加熱媒体通路118は、弁機構20における弁軸35の軸線に沿う方向で見て弁体36および弁座34を囲む円弧状に形成されるとともに、前記弁軸35の軸線に沿う方向で前記弁座34と略同一位置に配置されるものであり、第1および第2ボディ部材18,19の結合面の少なくとも一方、この実施例1では第2ボディ19の第1ボディ部材18への結合面に前記加熱媒体通路118を形成するための円形の溝119が設けられ、この溝119の周方向1箇所が隔壁120で分断されることで円弧状の前記加熱媒体通路118が形成される。
【0062】
ところで第1ボディ部材18には、前記加熱媒体通路118の周方向一端に通じる媒体入口通路121と、前記加熱媒体通路118の周方向他端に通じる媒体出口通路122とが、前記弁機構20における弁軸35の軸線と平行に延びるようにして設けられる。
【0063】
また第1ボディ部材18の第2ボディ部材19への結合面には、第6シール部材63を装着するための環状のシール装着溝123が設けられており、前記媒体入口通路121および前記媒体出口通路122間に対応する位置で前記シール装着溝123から半径方向内方に延びる隔壁装着溝124が、第1ボディ部材18に設けられる。
【0064】
前記隔壁120は、第6シール部材63の周方向1箇所から半径方向内方に延びるようにして第6シール部材63に一体に連設されるものであり、第6シール部材63をシール装着溝123に装着したときに前記隔壁装着溝124に隔壁120が装着される。これにより、第1および第2ボディ部材18,19のうち前記媒体入口通路121および前記媒体出口通路122が設けられる第1ボディ部材18側に隔壁120が位置決め固定されることになる。
【0065】
而して第1ボディ部材18側に位置決め固定される隔壁120は、第1および第2ボディ部材18,19の結合時に第2ボディ部材19側の溝119に嵌合して、前記媒体入口通路121および前記媒体出口通路122間に対応する部分で前記溝119の周方向に沿う1箇所を分断して円弧状の前記加熱媒体通路118を形成することになる。
【0066】
ところで、第1ボディ部材18の周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば4箇所にはボルト挿通孔125…が設けられ、第2ボディ19には、前記ボルト挿通孔125…に個別に対応したねじ孔126…が設けられており、ボルト挿通孔125…に挿通されるボルト127を前記ねじ孔126…に螺合して締め付けることにより、第1および第2ボディ部材18,19が相互に結合される。したがって第1および第2ボディ部材18,19は、周方向相対位置を変化させた複数の相対姿勢、この実施例1では周方向相対位置を変化させた4つの相対姿勢をとることを可能として結合される。
【0067】
また前記溝119は、複数たとえば4つの浅溝部119a,119a…と、それらの浅溝部119a,119a…間に配置される複数たとえば4つの深溝部119b,119b…とから成るものであり、この実施例1では第1および第2ボディ部材18,19の周方向に等間隔をあけた4箇所に相互に対応するボルト挿通孔125…,126…がそれぞれ設けられているのに対応して、4つの前記浅溝部119a,119a…は周方向等間隔をあけて配置され、前記隔壁120は、それらの浅溝部119a,119a…の1つに選択的に嵌合される。
【0068】
図8において、第1ボディ部材18の側面には、車両搭載時に固定の支持体である車体に取付けられるべき平坦な被取付け部128が設けられており、この被取付け部128には、複数たとえば3つのボルト孔129…が設けられる。
【0069】
次にこの実施例1の作用について説明すると、弁機構20が備える金属製の弁軸35の外周に、弁室32および背圧室65間の流体の流通を前記弁軸35との間で許容するようにして合成樹脂製の弁体36が嵌装され、弁軸35の軸方向移動をガイドするようにしてボディ16の第1ボディ部材18に固定されるガイド部材30および弁体36の外周間に、弁室32および背圧室65間に介在する環状の第3シール部材46が介装されるので、弁軸35および弁体36間に弁室32および減圧室38間をシールするシール部材を介装することが不要となり、部品点数を低減して、コストの低減を図ることができる。しかも弁体36および弁軸35間にはシール部材が介装されないので、弁軸35の外周および弁体36の内周形状を単純化することが可能となる。
【0070】
しかも第3シール部材46が、弁体36の外周に弾発的に摺接するようにしてガイド部材30に装着されているので、弁体36側にシール部材装着用の溝等を設けることを不要として、弁体36の形状をより単純化することができる。
【0071】
また金属から成る弁軸35の一部に、弁体36を係合せしめる係止溝43を一端部外周に有する弁体装着軸部35aが弁体36を嵌装せしめるようにして設けられ、この弁体装着軸部35aが、係止溝43の部分を除く軸方向全長にわたって同一の横断面形状を有するように形成されるので、金属基材の削り出し加工によって弁軸35を作成する際に、削り出しによって削除される部分を少なくし、加工コストおよび材料コストの低減を図ることができる。
【0072】
また弁体36の内周および弁軸35の外周の少なくとも一方、この実施例1では弁軸35の外周に、減圧室38および背圧室65間を結ぶ背圧導入路66の一部である第1通路部67を弁体36および弁軸35間に形成する第1切欠き69が軸方向に延びて設けられるので、簡単かつ安価に背圧導入路66を形成することができ、第1ボディ部材18側に背圧導入路を形成するためのスペースを確保することを不要とし、ボディ16の小型化を図ることができる。
【0073】
また弁軸35は、ガイド部材30に設けられるガイド孔45に摺動可能に嵌合されるガイド軸部35cを一体に有し、該ガイド軸部35cの外周およびガイド孔45の内周の少なくとも一方、この実施例1ではガイド軸部35cの外周に、背圧導入路66の一部を構成するとともに第1通路部67および背圧室65間を結ぶ第2通路部68を前記ガイド部材30および弁軸35間に形成する第2切欠き70が、軸方向に延びて設けられるので、第1通路部67と合わせて背圧導入路66を簡単に構成することができる。
【0074】
またガイド孔45が、第3シール部材46による弁体36のシール径D1よりも小径に形成されるので、弁体36および弁軸35をガイドするガイド孔45の直径であるガイド径D2と、弁軸35の摺動部の長さとの比(摺動部の長さ/ガイド径)を確保して弁軸35および弁体36の倒れおよびかじりが生じないようにしても、摺動部の長さを短く設定することができ、減圧弁の小型化を図ることができる。すなわち弁軸35および弁体36の倒れおよびかじりが生じないようにするためには、摺動部の長さ/ガイド径は、ある一定の値以上とすることが一般的であり、ガイド径が小さいことによって摺動部の長さを小さくすることができるのである。またガイド径D2およびシール径D1が異なっていても、弁軸35および弁体36間、ならびに弁軸35およびガイド部材30間に背圧導入路66を形成するので、簡単な構成で弁軸35および弁体36のダイヤフラム28とは反対側の端面全面に背圧を作用せしめることができる。
【0075】
しかも弁体36が合成樹脂から成るものであるので、高圧に対する弁体36の耐久性およびシート性を確保することができ、さらに弁機構20は圧縮天然ガスを減圧するので、合成樹脂製の弁体36を最適に用いることができる。
【0076】
ところで前記ボディ16の第2ボディ部材19には、減圧室38の圧力が所定圧以上となるのに応じて開弁して前記減圧室38の圧力を外部に解放するリリーフ弁21が配設されるのであるが、このリリーフ弁21は、ホースを接続可能として円筒状に形成されるとともにホースの抜け止めを果たす抜け止め部74aが外周に形成されるようにして前記ボディ16の第2ボディ部材19に一体に設けられる円筒状の継手部74と、該継手部74が同軸に有する摺動孔75に摺動可能に嵌合されるリリーフ弁体76と、摺動孔75の外端部に嵌合、固定されるキャップ77と、リリーフ弁体76およびキャップ77間に設けられるコイルばね78とを備え、コイルばね78で弾発付勢されたリリーフ弁体76を着座させることを可能とした環状のリリーフ弁座81が、減圧室38に通じるリリーフ弁孔80を中央部に開口させて前記摺動孔75の内端に形成され、前記キャップ77に、リリーフ弁体76がリリーフ弁座81から離座してリリーフ弁孔80が開放されるのに応じて、減圧室38の圧力を外部に解放するための解放孔83が設けられている。
【0077】
したがって弁ハウジングを圧入等でボディに組付けるようにしていたリリーフ弁と比べて、部品点数および組付工数を低減することができ、また継手部74が、ホースを接続可能として円筒状に形成され、継手部74の外周には抜け止め部74aが形成されるので、別体の継手部材を接続するものに比べて、部品点数および組付工数を低減することができ、コストの低減を図ることができる。しかも継手部74にホースを接続することで、リリーフ弁21の開弁に伴って排出されるガスの排出位置をホースによって任意に設定することができる。
【0078】
またダイヤフラム28は、その中央部に中心孔90を有するとともに、自然な状態では少なくとも内周縁部の板厚を一定として円板状に形成され、ダイヤフラム28の一面内周縁部に当接する鍔状の第1リテーナ92を一体に有して前記弁機構20の弁体36に連動、連結される金属製のダイヤフラムロッド91がダイヤフラム28の中心孔90に挿通され、ダイヤフラムロッド91の一端をかしめて形成される係合部91aおよびダイヤフラム28の他面内周縁部間に、第1リテーナ92との間にダイヤフラム28の内周縁部だけを挟む金属製の第2リテーナ93が少なくとも挟持され、この実施例1では、前記係合部91aが第2リテーナ93に直接係合されている。
【0079】
したがって自然な状態では少なくとも内周縁部の板厚を一定として円板状に形成されるダイヤフラム28を用いることでコストの低減を図ることが可能であり、またナットを用いたねじ締め構造に比べると量産性が高く、ねじ緩みを考慮する必要がなく、ダイヤフラム28の内周縁部を第1および第2リテーナ92,93で挟持する構造の信頼性を高めることができる。
【0080】
しかもダイヤフラムロッド91の少なくとも第1リテーナ92から第2リテーナ93の前記係合部91a側端面までの外周面直径D3が、ダイヤフラム28の半径方向に沿う前記中心孔90および第2リテーナ93の位置を定めるべく同一に設定されるので、組付け時にダイヤフラム28の内周縁部の一部が第1および第2リテーナ92,93以外の他の部材に乗り上げてしまうことがなく、ダイヤフラム28の圧縮代を所望の値とすることができる。しかも前記ダイヤフラム28だけで規制される第1および第2リテーナ92,93間の間隔のうち最小間隔Cdminとなる部分が最大間隔Cdmaxとなる部分よりも半径方向外方に位置しており、最小間隔Cdminとなる部分でダイヤフラム28が第1および第2リテーナ92,93間に比較的大きな荷重で圧縮されることによって第1および第2リテーナ92,93とダイヤフラム28との間にシール性を高めることができ、第1および第2リテーナ92,93の間隔のうち最小間隔Cdminの部位よりも内方側の部分が最小間隔Cdminの部位を通過するには圧縮されることが必要であり、また第1および第2リテーナ92,93の内周側にダイヤフラムロッド91の一端のかしめによって形成される係合部91aからの荷重が作用することによって第2リテーナ93は第1および第2リテーナ91,92の外周側間の間隔を小さくする側に弾発力を発揮するように撓むので、ダイヤフラム28の劣化による弾発力低下が生じても耐抜け荷重の向上を図ることができる。
【0081】
ところでボディ16を構成する第1および第2ボディ部材18,19の結合面間には加熱媒体を流通させる円弧状の加熱媒体通路118が、弁機構20における弁体36の軸線に沿う方向で見て該弁体36および弁座34を囲むようにして形成され、その加熱媒体通路118を形成するための円形の溝119が第1および第2ボディ部材18,19の結合面の少なくとも一方、この実施例1では第2ボディ部材19の第1ボディ部材18への結合面に設けられ、第1ボディ部材18に加熱媒体通路118の両端部に通じる媒体入口通路121および媒体出口通路122が設けられるのであるが、第1ボディ部材18に、円形である溝119を媒体入口通路121および媒体出口通路122間で分断する隔壁120が位置決め固定される。
【0082】
したがって両ボディ部材18,19の周方向相対位置を変化させても、媒体入口通路121および媒体出口通路122に対する隔壁120の位置を一定に定め、円弧状である加熱媒体通路118の両端位置に媒体入口通路121および媒体出口通路122の位置を定めることになり、加熱媒体を有効に流通させることが可能であり、隔壁の位置を異ならせた複数種類のボディ部材を準備することを不要としてコスト低減を図ることができ、また誤組が生じる可能性も排除することができる。
【0083】
また第1および第2ボディ部材18,19の一方である第1ボディ部材18に、ボディ16を車体等の固定の支持体に取付けるための被取付け部128が設けられており、第1および第2ボディ18,19の他方である第2ボディ部材19に、減圧室38に通じるガス出口114が設けられるので、ボディ16を車体等に取付けた時のガス出口114の開口方向を所望の向きに変更することができる。
【0084】
また第1および第2ボディ部材18,19の結合面間に挟持されて前記加熱媒体通路118を外方からシールする環状の第6シール部材63に前記隔壁120が一体に設けられるので、隔壁120を設けることによって、ボディに成形するコストおよび部品点数が増加することを回避して、簡易かつ低コストで隔壁120を構成することができ、隔壁120を溝119に嵌合して加熱媒体通路118の両端間を確実にシールすることが可能となる。
【0085】
さらに溝119が、複数の浅溝部119a…と、それらの浅溝部119a間に配置される複数の深溝部119b…とを有し、隔壁120が浅溝部119a…の1つに選択的に嵌合することで溝119が分断されて円弧状の加熱媒体通路118が形成されるので、隔壁120が弾性を有することで、剛性が低く、倒れ易いにもかかわらず、溝119の浅溝部119aに嵌合することで、隔壁120の剛性を維持し易くし、隔壁120の締め代管理が容易となる。
【実施例2】
【0086】
本発明の実施例2について図9を参照しながら説明するが、実施例1に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0087】
金属製のダイヤフラムロッド91がその一端側をばね室87側に突出させるようにして圧力作用室86側からダイヤフラム28の中心孔90に挿通され、このダイヤフラムロッド91の他端には、前記ダイヤフラム28の圧力作用室86側の一面に当接する鍔状の第1リテーナ92が一体に設けられる。またダイヤフラムロッド91の一端をかしめて形成される係合部91aおよび前記ダイヤフラム28の前記ばね室87側の他面間には、第1リテーナ92との間に前記ダイヤフラム28の内周縁部だけを挟む金属製の第2リテーナ130が少なくとも挟持され、この実施例2では、前記係合部91aが第2リテーナ130に直接係合される。
【0088】
第2リテーナ130の少なくとも内周部には、ダイヤフラムロッド91側に近接するにつれて第1リテーナ92から離反するように傾斜した傾斜部130aが設けられており、第2リテーナ130のダイヤフラム28とは反対側の面には、ダイヤフラムばね88を受けるばね座面130bが形成され、そのばね座面130bの半径方向内方側に前記傾斜部130aが配置される。
【0089】
第1および第2リテーナ92,130間の間隔は、第1および第2リテーナ92,130間に挟まれるダイヤフラム28だけで規制されるのであるが、その間隔は半径方向外方に向かうにつれて小さくなるように設定される。すなわち第1および第2リテーナ92,130間の間隔のうち半径方向内端側の間隔が最大間隔Cdmaxであり、第1および第2リテーナ92,130間の間隔のうち半径方向外端側の間隔が最小間隔Cdminとなり、最小間隔Cdminである部分が最大間隔Cdmaxである部分よりもダイヤフラム28の半径方向外方に位置するように、第1および第2リテー92,130間の間隔が設定される。
【0090】
この実施例2によれば、上記実施例1と同様の効果を奏することができる上に、第2リテーナ130の少なくとも内周部に、ダイヤフラムロッド91側に近接するにつれて第1リテーナ92から離反するように傾斜した傾斜部130aが設けられるので、第2リテーナ130からダイヤフラム28に作用する弾発力をより効果的に発生することができ、ダイヤフラム28の劣化による弾発力低下が生じても耐抜け荷重の向上をより効果的に高めることができる。またダイヤフラムばね88を受けるばね座面130bの半径方向内方側に傾斜部130aが配置されるので、第2リテーナ130に傾斜部130aが設けられていてもダイヤフラムばね88のダイヤフラム28側端部を安定して支持することができる。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0092】
16・・・ボディ
20・・・弁機構
25・・・高圧通路
28・・・ダイヤフラム
32・・・弁室
33・・・弁孔
34・・・弁座
36・・・弁体
38・・・減圧室
88・・・ダイヤフラムばね
90・・・中心孔
91・・・ダイヤフラムロッド
91a・・・係合部
92・・・第1リテーナ
93,130・・・第2リテーナ
130a・・・傾斜部
130b・・・ばね座面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧通路(25)に通じる弁室(32)に臨む弁座(34)に着座することを可能として前記弁室(32)に収容される弁体(36)を有する弁機構(20)が、前記弁座(34)の中央部に開口する弁孔(33)に通じる減圧室(38)の圧力に応じて作動するダイヤフラム(28)に前記弁体(36)を連動、連結させてボディ(16)に収容される減圧弁において、中央部に中心孔(90)を有する前記ダイヤフラム(28)が自然な状態では少なくとも内周縁部の板厚を一定として円板状に形成され、前記ダイヤフラム(28)の一面内周縁部に当接する鍔状の第1リテーナ(92)を一体に有して前記弁体(36)に連動、連結される金属製のダイヤフラムロッド(91)が前記ダイヤフラム(28)の中心孔(90)に挿通され、前記ダイヤフラムロッド(91)の一端をかしめて形成される係合部(91a)および前記ダイヤフラム(28)の他面内周縁部間に、前記第1リテーナ(92)との間に前記ダイヤフラム(28)の内周縁部だけを挟む金属製の第2リテーナ(93,130)が少なくとも挟持され、前記ダイヤフラムロッド(91)の少なくとも前記第1リテーナ(92)から前記第2リテーナ(93,130)の前記係合部(91a)側端面までの外周面直径が、前記ダイヤフラム(28)の半径方向に沿う前記中心孔(90)および前記第2リテーナ(93,130)の位置を定めるべく同一に設定され、前記ダイヤフラム(28)だけで規制される第1および第2リテーナ(92,93;92,130)間の間隔のうち最小間隔となる部分が最大間隔となる部分よりも半径方向外方に位置するように設定されることを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
前記第2リテーナ(130)の少なくとも内周部に、前記ダイヤフラムロッド(91)側に近接するにつれて第1リテーナ(92)から離反するように傾斜した傾斜部(130a)が設けられることを特徴とする請求項1記載の減圧弁。
【請求項3】
前記第2リテーナ(130)の前記ダイヤフラム(28)とは反対側の面に、前記ダイヤフラム(28)を付勢するダイヤフラムばね(88)を受けるばね座面(130b)が形成され、そのばね座面(130b)の半径方向内方側に前記傾斜部(130a)が配置されることを特徴とする請求項2記載の減圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−237861(P2010−237861A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83508(P2009−83508)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】