説明

減衰装置及び減衰方法

【課題】通常の地震波に対して高い免震効果を発揮し、かつ、長周期地震動による共振を抑制する減衰装置を提供すること。
【解決手段】免震対象物を載置するテーブル12と固定体11とにそれぞれ係合して上記テーブルと固定体との間に配置され、上記テーブルと上記固定体との相対的な移動に伴い相互に接触して相対的に少なくとも一方向に移動する可動部材40と可動支持部材30とを備える。そして、上記可動部材40と上記可動支持部材30とは、相対的に移動して相互に摺動することにより、上記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定の摩擦力を発生し、上記原点位置から上記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、上記一定の摩擦力よりも大きく、かつ、上記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなる摩擦力を発生するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰装置及び減衰方法にかかり、特に、摩擦力を利用した減衰装置及び減衰方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精密機器、美術工芸品などの免震対象物を地震などによる振動や転倒から守るために、種々のタイプの水平免震装置(テーブル)が検討されている。水平免震装置としては、例えば、コイルばね、積層ゴム、転がり支承などのばね要素と、減衰要素とを用いた免震装置がある。
【0003】
ここで、通常の地震波の卓越成分の周期は、0.2〜1秒程度のものが多い。従って、免震テーブルの固有周期を2〜3秒程度に設計し、また、減衰比を0.1〜0.3程度に設定することで、免震装置の加速度は地震加速度の1/3〜1/10程度に低減し、大きな免震効果が得られる。
【0004】
ところが、上述した通常の地震波とは異なり、2〜3秒の長周期に卓越成分を含む長周期地震波が発生する場合がある。このような地震に対しては、上記免震装置は許容変位を超えて大きく共振してしまう恐れがある。従って、通常の地震波に対して高い免震効果を与えつつ、かつ、長周期地震波に対しては免震装置の共振を抑制することが要求されている。
【0005】
そして、下記特許文献1には、通常周期の地震動に対しては小さな減衰を発生し、長周期の地震動を受けて免震対象物が大きく揺れようとするときには大きな減衰を発生して、地震波の長周期成分にも対応可能な構造の免震装置が開示されている。つまり、地震によって変位する免震テーブルの相対変位が小さい時には抵抗力(減衰力)が小さく、相対変位が大きくなると抵抗力(減衰力)が大きくなる、というように、変位に応じて抵抗力(減衰力)が変化する構成を採っている。これにより、通常の地震時には高い免震効果を発揮し、かつ、長周期地震時には免震対象物の共振を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−177864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示の免震装置では、免震テーブルの相対変位と抵抗力とが比例するよう構成されているため、相対変位が小さいときに抵抗力が過大である場合が生じる。すると、長周期地震動が作用したときの共振を抑制する効果は大きいが、通常の短周期の地震時には大きな免震効果(加速度低減効果)を発揮できない、という問題が生じる。
【0008】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、通常の地震波に対して高い免震効果を発揮することができると共に、長周期地震動による免震装置の共振を抑制して信頼性の高い減衰装置及び減衰方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本発明の一形態である減衰装置は、
免震対象物を載置するテーブルと固定体とにそれぞれ係合して上記テーブルと上記固定体との間に配置され、上記テーブルと上記固定体との相対的な移動に伴い相互に接触して相対的に少なくとも一方向に移動する可動部材と可動支持部材とを備えると共に、
上記可動部材が上記可動支持部材に対して相対的に移動したときに、上記可動支持部材上における予め設定された原点位置に上記可動部材を復帰させる復元力を上記可動部材に付勢する復元力付勢手段を備えている。
そして、上記可動部材と上記可動支持部材とは、相対的に移動して相互に摺動することにより、上記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定の摩擦力を発生し、上記原点位置から上記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、上記一定の摩擦力よりも大きく、かつ、上記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなる摩擦力を発生するよう構成されている。
【0010】
上記発明によると、まず、地震などにより振動が生じると、固定体が振動し、この固定体に対して相対的に免震対象物が移動する。具体的には、免震対象物が載置されたテーブルと固定体とにそれぞれ係合して相互に接触する可動部材と可動支持部材とが、相対的に一方向に移動する。すると、可動部材と可動支持部材とが相対的に移動することで相互に摺動して、これらの間に摩擦力が生じ、相対的な移動に対する減衰力が生じる。また、復元力付勢手段が、可動支持部材に対して移動した可動部材を原点位置に復帰させるよう復元力を付勢するため、可動部材が原点位置に移動し、その際にも可動部材と可動支持部材とが摺動して、摩擦力つまり減衰力が生じる。
【0011】
そして、特に、上記構成によると、短周期に卓越成分を含む振動に対しては、可動部材と可動支持部材とが相対的に移動したときに比較的小さい一定の摩擦力が生じ、振動による加速度を適切に低減することができる。また、免震装置の固有周期とほぼ同じ長周期卓越成分を含む振動に対しては、可動部材と可動支持部材とが相対的に大きく移動したときにかかる移動量に応じた大きさの摩擦力が生じ、このような振動が発生した場合であっても相対変位を適切に低減することができる。そして、減衰力が大きくなるに伴い、共振を抑制することができる。その結果、通常の地震波に対しては高い免震効果を発揮しつつ、長周期地震波に対しては免震装置の共振を抑制する効果を発揮する、高性能な減衰装置を提供することができる。
【0012】
また、上記減衰装置では、
上記可動部材は、上記可動支持部材に対して所定の押圧力にて押圧されて接触しており、
上記押圧力は、上記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定であり、上記原点位置から上記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、上記一定の押圧力よりも大きく、かつ、上記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなるよう設定されている、
という構成を採る。
【0013】
これにより、短周期に卓越成分を含む振動を受けて免震装置が共振する場合には、可動部材と可動支持部材とが相互に比較的小さい一定の押圧力で押圧されることで、小さい一定の摩擦力つまり減衰力が生じる。一方、長周期に卓越成分を含む振動の場合には、可動部材が可動支持部材に対して大きく移動することで、移動量に応じて可動部材の押圧力が大きくなり、相互間に大きな摩擦力が生じ、このような振動が発生した場合であっても相対変位を適切に低減することができると共に、共振を抑制することができる。
【0014】
また、上記減衰装置では、
上記可動支持部材は、上記可動部材が相対的に移動する際に当該可動部材が接触して摺動する軌跡である摺動部を有し、
上記摺動部は、上記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、平坦であり、上記原点位置から上記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、上記原点位置から離れるにつれて徐々に上り傾斜して形成されている、
という構成を採る。
【0015】
これにより、短周期に卓越成分を含む振動の場合には、可動部材と可動支持部材とが摺動する箇所が平坦であるため、比較的小さい一定の摩擦力つまり減衰力が生じる。一方、免震装置の固有周期とほぼ同じ長周期卓越成分を含む振動の場合には、可動部材が可動支持部材に対して大きく移動し、かかる範囲では可動支持部材が可動部材側に傾斜しているため、移動量に応じて相互間に大きな摩擦力が生じる。このため、このような振動が発生した場合であっても相対変位を適切に低減することができると共に、共振を抑制することができる。
【0016】
また、上記減衰装置では、
上記可動支持部材は、相対的に移動する上記可動部材の移動方向に沿って延びる軸部材であると共に、上記軸部材の径は、上記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定であり、上記原点位置から上記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、上記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなるよう形成されており、
上記可動部材は、上記軸部材を挟むよう形成されており、上記軸部材の外周と少なくとも上記原点位置から上記所定の距離よりもさらに離れた範囲で接触する挟持部材である、という構成を採る。なお、上記挟持部材は、上記軸部材の外周と常に接触するよう構成されてもよい。
【0017】
また、上記減衰装置は、
上記可動部材である上記挟持部材は、上記軸部材を挟む各挟持片が相互に連結して形成されると共に、上記各挟持片間の距離が所定値以上の大きさの外力にて変化するよう所定の剛性を有する。
【0018】
これにより、上記可動支持部材と可動部材とを、軸部材と、当該軸部材を挟持する挟持部材と、を用いた簡易な構成で実現することができる。従って、上述したように通常の地震波に対しては高い免震効果を発揮しつつ長周期地震動による共振を抑制することができる減衰装置を、低コストにて製造することができる。
【0019】
また、上記減衰装置では、
上記可動部材と上記可動支持部材とは、点、線又は面で相互に接触している、
という構成を採る。
【0020】
これにより、減衰力となる適切な摩擦力を発生させることができると共に、過度の減衰を抑制することができ、減衰動作がスムーズとなる。また、搭載重量が大きくなり、大きな減衰力を必要とする場合には、断面が長方形、正方形またはコの字形の軸部材を用いてもよい。
【0021】
また、上記減衰装置では、
上記復元力付勢手段は、上記原点位置に対する上記可動部材の移動に伴って伸縮するバネ部材であり、上記バネ部材は上記可動部材の上記原点位置からの移動量が大きいほど大きな復元力を付勢するよう配設されている、
という構成を採るとよい。
【0022】
例えば、上記バネ部材は、上記可動部材の移動方向に沿って伸縮するよう配設されており、上記可動部材の上記原点位置に対して少なくとも一方の移動側に配設された上記バネ部材は、それぞれ異なるバネ定数を有する複数のバネ部材が直列に連結されて構成されている。
【0023】
また、上記バネ部材は、上記可動部材の移動方向に沿って伸縮するよう配設されており、上記可動部材の上記原点位置に対して少なくとも一方の移動側に配設された上記バネ部材は、複数のバネ部材が相互に平行に配設されて構成されていると共に、そのうちの少なくとも1つのバネ部材が上記原点位置よりも所定の距離だけ離間した位置に配設されている。
【0024】
また、上記バネ部材は、上記可動部材の移動方向に沿って伸縮するよう配設されており、上記可動部材の上記原点位置に対して少なくとも一方の移動側に配設された上記バネ部材は、バネ定数が部分的に異なるバネ部材にて構成されている。
【0025】
上記構成にすることにより、可動部材が可動支持部材に沿って移動すると、復元力付勢手段であるバネ部材が伸縮する。このとき、可動部材の移動量が大きいほど、バネ部材の伸縮による復元力が大きく発生する。例えば、複数のバネ部材を組み合わせて構成したり、バネ定数が部分的に異なるバネ部材にて構成することができる。従って、可動部材が原点位置から離れるにつれて復元力を大きく発生させることができ、より効果的に減衰力を発生させることができる。
【0026】
また、本発明の他の形態である免震装置は、
振動源からの振動が伝達される固定体と、免震対象物を載置するテーブルと、
上記固定体と上記テーブルとにそれぞれ係合して上記テーブルと上記固定体との間に配置され、上記テーブルと上記固定体との相対的な移動に伴い相互に接触して相対的に少なくとも一方向に移動する可動部材と可動支持部材とを備えると共に、
上記可動部材が上記可動支持部材に対して相対的に移動したときに、上記可動支持部材上における予め設定された原点位置に上記可動部材を復帰させる復元力を上記可動部材に付勢する復元力付勢手段を備えている。
そして、上記可動部材と上記可動支持部材とは、相対的に移動して相互に摺動することにより、上記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定の摩擦力を発生し、上記原点位置から上記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、上記一定の摩擦力よりも大きく、かつ、上記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなる摩擦力を発生するよう構成されている。
【0027】
また、本発明の他の形態である減衰方法は、
免震対象物を載置するテーブルと固定体とにそれぞれ係合して上記テーブルと上記固定体との間に配置され、上記免震対象物と上記固定体との相対的な移動に伴い相互に接触して相対的に少なくとも一方向に移動する可動部材と可動支持部材とを備えると共に、
上記可動部材が上記可動支持部材に対して相対的に移動したときに、上記可動支持部材上における予め設定された原点位置に上記可動部材を復帰させる復元力を上記可動部材に付勢する復元力付勢手段を備えた減衰装置による方法である。
【0028】
そして、本発明の他の形態である減衰方法は、
上記可動部材と上記可動支持部材とが、相対的に移動して相互に摺動するときに、上記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定の摩擦力を発生し、上記原点位置から上記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、上記一定の摩擦力よりも大きく、かつ、上記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなる摩擦力を発生する。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、以上のように構成されることにより、通常の地震波に対しては高い免震効果を発揮しつつ、長周期地震波に対しては免震テーブルの共振を抑制する効果を発揮する、高性能な減衰装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1における免震装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に開示した免震装置の構成を示す上面図及び断面図である。
【図3】図1に開示した免震装置の一部の構成を示す斜視図である。
【図4】図3に開示した免震装置の一部の構成の正面図、上面図、断面図である。
【図5】図1に開示した免震装置におけるコイルばねを除いた摩擦機構の変位と抵抗力との関係を示す図である。
【図6】相互に直交する二方向の振動に対応可能なよう構成した免震装置の構成を示す斜視図である。
【図7】相互に直交する二方向の振動に対応可能なよう構成した免震装置の構成を示す斜視図である。
【図8】実施形態1の免震装置における入力加速度に対する応答加速度を示す実験データである。
【図9】実施形態2における免震装置の構成を示す斜視図である。
【図10】図9に開示した免震装置の一部の構成を示す拡大図である。
【図11】図9に開示した免震装置の一部の構成を示す正面図である。
【図12】実施形態3における免震装置の構成を示す上面図及び断面図である。
【図13】図12に開示した免震装置の一部の構成を示す拡大図である。
【図14】実施形態4における免震装置の構成を示す斜視図及び上面図である。
【図15】実施形態4における免震装置の変形例の構成を示す斜視図及び側面図である。
【図16】実施形態4における免震装置の変形例の構成を示す斜視図及び側面図である。
【図17】実施形態4における免震装置の変形例の構成を示す斜視図及び上方からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図8を参照して説明する。図1は、免震装置の構成を示す斜視図であり、図2は、その上面図と断面図である。図3は、免震装置の一部の構成を示す斜視図であり、図4は、その正面図、上面図、断面図である。図5は、免震装置における変位と抵抗力との関係を示す図である。図6乃至図7は、直交する二方向の振動に対応可能なよう構成した免震装置の構成を示す斜視図である。図8は、加速度を入力した場合における応答加速度を示す実験データである。
【0032】
[構成]
図1に示すように、本実施形態における免震装置1は、地震などの振動源からの振動が伝達され地面に連動して振動する固定台(固定体)11と、この固定台11の上方に配置され免震対象物(図示せず)を載置するテーブル12と、固定台11とテーブル12との間に配置される減衰装置(符号30,40,51,52等)と、を備えている。以下、各構成について詳述する。
【0033】
上記固定台11は、板状に形成されており、地面に固定された建物の床面などに、所定の部材を介して固定されている。従って、固定台11は、地震が生じたときに、その振動が伝達されて振動する。そして、固定台11の表面は水平であり、その上方には、後述する減衰装置を介して、所定の厚みを有する矩形のテーブル12が配置される。なお、テーブル12の上面も水平であり、その上にさらに免震対象物が載置される。あるいは、テーブル12の上面に必要に応じてさらに別のテーブルを配置し、その上に免震対象物が載置される。
【0034】
また、固定台11とテーブル12とは、これらの間に装備された減衰装置により、相対的に少なくとも一方向に移動可能である。例えば、本実施形態では、図2の矢印Y1方向に、固定台11に対してテーブル12が往復移動可能なよう構成されている。
【0035】
そして、上記固定台11上には、減衰装置を構成する2本のガイドレール21,22を備えており、これらガイドレール21,22は、相互に平行に配置されている。また、これらガイドレール21,22上には、テーブル12の4隅に配置された4つの可動片23,24が装備される。これにより、ガイドレール21,22上を可動片23,24が移動することで、固定台11とテーブル12とを、ガイドレール21,22の長手方向に沿って(図2の矢印Y1方向)、相対的に移動させることができる。なお、ガイドレール21,22と可動片23,24とは、相対的に移動したときに発生する摩擦力が低くなるよう係合しており、円滑に移動するよう構成されている。
【0036】
また、減衰装置は、図1,2に示すように、固定台11上に固定された支持部31,32にて両端が固定された所定の長さの軸部材30(可動支持部材)を備えている。この軸部材30は、上記ガイドレール21,22と平行、つまり、固定台11に対してテーブル12が移動する方向(図2の矢印Y1方向)に沿って配置されている。
【0037】
さらに、減衰装置は、上述した軸部材30を挟持しつつ、当該軸部材30と接した状態のまま軸部材30に沿って移動する挟持部材40(可動部材)を備えている。この挟持部材40は、図1,3,4に示すように、ガイドレール21,22上を移動し、かつテーブル12に装備された可動片23,24に連結具44を介して固定装備されている。従って、挟持部材40は、固定台11に対して移動するテーブル12と共に、軸部材30に沿って移動可能なよう配置されている。
【0038】
ここで、上述した軸部材30と挟持部材40とについて、図3及び図4を参照して説明する。図3は、軸部材30と挟持部材40の構成を示しており、図4(A)はその上面図、図4(B)は正面図、図4(C)は図4(A)におけるA−A線断面図である。
【0039】
まず、軸部材30は、断面が円形であり、両端側付近で各端部に向かうにつれて、断面積つまり直径が大きくなるよう形成されている。具体的には、図3に示すように、長手方向のほぼ中心が原点位置Cとして設定されており、かかる原点位置から左右に距離L1,L2までの範囲Lでは、直径が一定である。原点位置Cから範囲Lを越えて遠ざかる方向(各端部に向かう方向)に離れた範囲M1,M2では、原点位置Cから離れるにつれて直径が徐々に大きくなるよう、軸部材30は形成されている。換言すると、軸部材30は、長手方向の中央付近の範囲L(長手方向の中心(原点位置C)を挟んだ所定の範囲L)では、その直径が一定であり、この直径が一定である領域Lの端から、さらに軸部材30の各端部側の範囲M1,M2では、当該各端部に向かうにつれて直径が大きくなるようテーパー状に形成されている。なお、軸部材30の表面は、挟持部材40が接触して摺動することで、摩擦力が生じるよう形成されている。
【0040】
さらに、上述した軸部材30の形状について換言すると、軸部材30の外周の最上端部分と最下端部分とは、それぞれ後述する挟持部材40が接触して摺動する直線状の軌跡である摺動部として機能する。そして、この直線状の摺動部は、上述したように原点位置から左右に距離L1,L2までの範囲Lでは、平ら(平坦)である。そして、原点位置Cから距離L1,L2だけ離れた位置から、さらに原点位置Cから遠ざかる方向に離れた範囲M1,M2では、原点位置Cから離れるにつれて外側に向かって傾斜し、徐々に直径が太くなるように形成されている。なお、上記例のように軸部材30の断面が円形ではなく、例えば、楕円形であってもよく、所定範囲L、各端部側の範囲M1、M2における軸部材30の厚さの関係は、上記円形の軸部材30の直径の大小関係と同様にすればよい。
【0041】
また、挟持部材40は、図3及び図4(C)に示すように、一方向が開口した略U字状に形成されている。そして、挟持部材40は、相互に対向して開口部分を形成する一対の挟持片41,42を有しており、挟持部材40は略U字状であることから、各挟持片41,42は相互に連結部43を介して連結して形成されている。なお、本実施形態の場合は一体的に形成されている。さらに、挟持部材40の一対の挟持片41,42は、上記軸部材30の中央付近の直径よりもやや小さい距離を設けて、連結部43にて連結され形成されている。さらに、挟持部材40は、所定の外力つまり各挟持片41,42を離間させる方向に容易に変形しないよう、連結部43にて連結されており、本実施形態では、所定の剛性を有する材料で一体的に形成されている。逆に言うと、挟持部材40は、一対の挟持片41,42間を開くような所定値以上の外力が印加された場合には、各挟持片41,42の距離が離間するよう変形するが、挟持部材40の剛性により、元の形状に戻る力が発生する。
【0042】
そして、上記挟持部材40は、図3に示すように、各挟持片41,42間の開口部分に軸部材30を挟んで配置される。このとき、上述したように、挟持部材40の各挟持片41,42間は軸部材30の直径よりも狭く形成されているため、各挟持片41,42間を開いて軸部材30を介挿する。すると、挟持部材40は、各挟持片41,42がやや開かれた状態となるため、当該各挟持片41,42は元の形状に戻る力が生じ、これにより各挟持片41,42が軸部材30を挟持した状態となる。換言すると、挟持部材40の各挟持片41,42は、その内面で軸部材30の外周と接触し、当該軸部材30を挟持する力で押圧した状態となる。そして、挟持部材40は、直径が徐々に大きくなる軸部材30の両端側に移動すればするほど、各挟持片41,42がさらに徐々に開かれた状態となるため、軸部材30を挟持する力が徐々に強くなる。
【0043】
そして、上記挟持部材40が軸部材30を挟持した状態で当該軸部材30に沿ってM1又はM2側へ移動すると、挟持部材40の挟持片41,42の内面と軸部材30の表面とが接触して、所定の押圧力で押圧された状態で摺動されるため、この摺動動作で摩擦力が生じる。このとき、軸部材30の中央付近である直径が一定の範囲Lを移動する場合には、摩擦力は一定である。一方で、軸部材30の直径が一定の範囲Lからさらに両端側に移動すると、原点位置Cから離れれば離れるほど摩擦力は大きくなる。ここで、図5は、横軸に、原点位置Cを中心とした挟持部材40の変位uを表し、縦軸に、挟持部材40と軸部材30との間で生じる摩擦力を含む抵抗力Fを表した図である。この図に示すように、原点位置C(変位0)から直径が一定の距離L1,L2までは、一定の抵抗力foが発生し、さらに変位uが大きくなるにつれて徐々に大きくなる抵抗力が発生する。なお、抵抗力は、挟持部材41、42の剛性力(ばね力)のために、図5に示すように、u軸に関して行きと戻りで非対称な形となる。
【0044】
また、挟持部材40の内表面、つまり、各挟持片41,42による挟持面は、平面にて形成されている。従って、挟持部材40と円柱状の軸部材30との接触部分は、線形状となる。これにより、挟持部材40と軸部材30との接触によって適度な摩擦力を発生させることができると共に、過度の接触を抑制して過大な減衰力の発生を抑制し、減衰動作の円滑化を図ることができる。但し、挟持部材40と軸部材30とは、線で接触することに限定されない。例えば、挟持部材40の挟持片の幅を細く形成することで、軸部材30と点で接するようにしてもよい。このようにしても、適度な摩擦力を発生させることができると共に、過度の接触を抑制して過大な減衰力の発生を抑制し、減衰動作の円滑化を図ることができる。なお、挟持部材40の軸部材30との接触面を曲面に形成して、面で接するよう構成してもよい。さらには、テーブル12自体や当該テーブル12上に搭載する免震対象物を含めた総搭載重量が大きくなり、大きな減衰力を必要とする場合には、断面が長方形、正方形またはコの字形の軸部材30を用いて、当該軸部材30と挟持部材40とが面で接するよう構成してもよい。
【0045】
また、挟持部材40は、初期状態では、軸部材30の中央付近に位置する直径が一定の範囲Lに配置される。また、挟持部材40の軸部材30を挟持する内表面は、当該軸部材30と接触して摺動することで、摩擦力が生じるよう形成されている。
【0046】
また、減衰装置は、テーブル12と固定台11とを連結する2本のコイルばね51,52(復元力付勢手段)を備えている。これらコイルばね51,52は、図2に示すように、ガイドレール21,22に沿った固定台11の一対の各辺のほぼ中央付近と、同じくガイドレール21,22に沿ったテーブル12の一対の各辺のほぼ中央付近と、をそれぞれ連結している。そして、テーブル12がガイドレール21,22のほぼ中央に位置するときに、各コイルばね51,52の長手方向が、ガイドレール21,22の長手方向に対してほぼ垂直となり、その長さが自然長または予引張りを与えた状態となるよう設定されている。このとき、さらに、上述した挟持部材40が、軸部材30の原点位置Cに位置するよう設定されている。
【0047】
従って、後述するように、固定台11に対してテーブル12がガイドレール21,22に沿って移動すると、コイルばね51,52が伸び、当該コイルばね51,52が元の長さに戻ろうとする復元力が発生する。つまり、テーブル12が移動すると、これに伴い挟持部材40が原点位置Cから離間して移動するが、当該原点位置Cから離れるにつれてコイルばね51,52の伸びは大きくなるため、挟持部材40が原点位置Cに復帰する方向の力が当該挟持部材40に付勢される。このとき、コイルばね51,52がテーブル12つまり挟持部材40に付勢する復元力は、当該挟持部材40が原点位置Cから離れるに従って大きくなる。つまり、上述したようにコイルばね51,52を配設することで、テーブル12の原点位置Cからの移動量が大きくなるほど大きな復元力が発生するため、長周期地震波に対して共振を抑制するなど、より有効に機能しうる。
【0048】
[動作]
次に、上記構成の免震装置1の動作を説明する。まず、免震装置1を設置する際に、固定台11を建物の床などに固定し、テーブル12上に免震対象物を載置する。その後、地震などにより振動が生じると、固定台11が振動するため、当該固定台11に対して相対的にテーブル12が移動することとなる。なお、ここでは、ガイドレール21,22の長手方向に沿った振動が生じることとする。また、以下では、短周期に卓越成分を含む振動と、長周期に卓越成分を含む振動とが、それぞれ発生した場合を説明する。
【0049】
まず、短周期に卓越成分を含む振動が生じた場合には、固定台11に対して相対的にテーブル12が移動する距離が短い。そのため、テーブル12に装備された挟持部材40は、軸部材30の原点位置Cから短い距離L1,L2に位置する直径が一定の範囲Lを移動する。すると、挟持部材40が軸部材30の直径が一定の範囲Lで摺動すると、当該挟持部材40は軸部材30を一定の力で押圧した状態で摺動することとなり、挟持部材40と軸部材30との間に、軸部材30のテーパー領域M1,M2上を移動するときと比べて小さい一定の摩擦力が発生する。そして、この摩擦力が、挟持部材40と軸部材30との間における振動の減衰力となり、固定台11に対するテーブル12の相対変位を適切に低減することができる。これは、短周期成分が卓越した地震波を受けたときは、減衰力をあまり大きくしない方が免震効果は大きくなることを示している。
【0050】
また、上述したように固定台11に対して相対的にテーブル12が移動すると、コイルばね51,52が伸び、テーブル12が元の位置に戻るよう当該テーブル12に対して復元力が付勢される。この復元力により、テーブル12が逆方向に移動することとなり、この際にもテーブル12に固定された挟持部材40が、固定台11に固定された軸部材30を挟持した状態で摺動するため、上述したように、減衰力が生じ、振動による相対変位を適切に低減することができる。
【0051】
一方、長周期に卓越成分を含む振動が生じた場合、特に卓越成分が免震装置の固有周期にほぼ一致するような振動が生じた場合には、固定台11に対して相対的にテーブル12が移動する距離が長くなる。そのため、テーブル12に装備された挟持部材40は、軸部材30の原点位置Cから距離L1,L2を超えてさらに当該原点位置Cから離れた領域M1,M2まで移動する。すると、挟持部材40が、軸部材30の直径が徐々に大きくなるテーパー状の範囲まで摺動し、当該挟持部材40は軸部材30を直径が大きくなるに従って大きくなる押圧力で押圧した状態で摺動することとなる。このため、挟持部材40と軸部材30との間に、軸部材30の直径が一定の領域Lで移動するときと比べて大きい摩擦力が発生し、特に、原点距離Cから離れれば離れるほど大きい摩擦力が発生する。そして、この摩擦力が、挟持部材40と軸部材30との間における振動の減衰力となり、固定台11に対するテーブル12の相対変位を適切に低減することができる。
【0052】
また、上述したように固定台11に対して相対的にテーブル12が移動すると、コイルばね51,52が伸び、テーブル12が元の位置に戻るよう当該テーブル12に対して復元力が付勢される。この復元力により、テーブル12が逆方向に移動することとなり、この際にもテーブル12に固定された挟持部材40が、固定台11に固定された軸部材30を挟持した状態で摺動するため、上述したように、減衰力が生じ、振動による相対変位を適切に低減することができる。
【0053】
以上のように、本発明における免震装置1によると、通常の短周期地震波に対しては高い免震効果を発揮しつつ、長周期地震波に対しては減衰力が大きくなるため免震装置の共振を抑制できる。従って、高性能な免震装置及び減衰装置を提供することができる。特に、上述した機能を有する免震装置を簡易な構成で実現することができるため、高性能な免震装置を低コストにて製造することができる。
【0054】
上記では、一方向の振動に対して減衰効果を有する免震装置を開示したが、実際には、上述した減衰装置をもう1つ設けて、二方向つまり相互に直交する方向の振動をそれぞれ減衰するよう構成するのが好適である(後述の実施形態2〜5においても同様)。二方向の振動に対応可能なよう構成した免震装置の構成の一例を、図6及び図7に示す。なお、図7は、図6に示す免震装置に、免震対象物を載置する他のテーブル12’を搭載した図である。また、ここでは、図7に示すように、相互に直交するX方向とY方向との振動を減衰するよう構成されている場合を説明する。
【0055】
図6に示す免震装置1’は、まず、上述したように、固定台11上にガイドレール21,22、軸部材30、挟持部材40などからなる一方の減衰装置を搭載している。そして、一方の減衰装置上に、さらに、他方の減衰装置が搭載されている。具体的に、他方の減衰装置は、一方の減衰装置上に搭載され、固定台11に対してガイドレール21,22に沿ってX方向に移動するテーブル12上に、当該ガイドレール21,22の長手方向に対して垂直方向であるY方向に延びる他のガイドレール21’,22’と他の軸部材30’とを有する。このとき、他のガイドレール21’,22’上を移動する4つの他の可動片23’,24’は、上述した一方の減衰装置上に搭載されたテーブル12に固定されている。また、他の減衰装置を構成する他の挟持部材40’は、上記テーブル12に固定装備され、他の軸部材30’を挟んで配置されている。
【0056】
そして、上記ガイドレール21’,22’と、軸部材30’の両端を支持する支持部31’,32’とは、図7に示すように、これらのさらに上方に配置される他のテーブル12’に固定される。つまり、他方の減衰装置は、一方の減衰装置に対して逆さの状態で搭載されることとなる。すると、他方の減衰装置においては、最上段に搭載される他のテーブル12’に対して、当該他のテーブル12’に固定された他のガイドレール21’,22’に沿って、テーブル12がY方向に移動可能となる。換言すると、他のテーブル12’は、テーブル12つまり固定台11に対して、相対的に矢印Y方向に移動可能となる。なお、テーブル12と他のテーブル12’とに両端が固定された各コイルばね51’,52’が設けられており、これにより、他のテーブル12’に対してテーブル12が他のガイドレール21’,22’に沿って移動したときに、当該テーブル12に復元力が付勢される。
【0057】
そして、図7に示すY方向に直交するX方向については、上述したように、固定台11に対してテーブル12が移動可能である。このため、他のテーブル12’も固定台11に対してX方向に移動可能となる。従って、免震対象物を載置し、最上段に位置する他のテーブル12’は、固定台11に対して相互に直交するX,Y方向の二方向に可動し、水平方向の振動に対する免震装置を構成することができる。
【0058】
ここで、上述した免震装置を用いて所定の加速度を入力したときの応答を測定した実験結果を、図8に示す。図8は、兵庫県南部地震(1995)のときの神戸海洋気象台のNS,及びEW成分相当の振動を同時入力した時における、免震装置の他のテーブル12’上の最大応答加速度を測定したものであり、図8(A)はNS方向(X方向)の加速度を示し、図8(B)はEW方向(Y方向)の加速度を示している。なお、入力加速度は、最大値を約1,2,3,4,6m/s、及び、最大波形に変えて測定している。そして、各図において各入力加速度毎に2本のグラフを記載しているが、上段が入力加速度であり、下段が応答加速度を示している。すると、図示するように、いずれの入力加速度に対しても大幅に応答加速度が減少しており、相互に直交する二方向において適切な減衰効果を発揮することが分かる。
【0059】
[変形例]
次に、上述した免震装置の変形例を説明する。上記では、挟持部材40と軸部材30とが常に接触した状態、つまり、挟持部材40の一対の挟持片41,42間の距離が、軸部材30の中央付近(範囲L)の一定である直径よりもやや小さく形成されている場合を説明したが、本発明は、かかる構成に限定されない。例えば、挟持部材40の一対の挟持片41,42間の距離が、軸部材30の中央付近(範囲L)の一定である直径と等しいか、あるいは、一定である直径よりもやや大きく形成されていてもよい。この場合には、軸部材30の中央付近の直径が一定である範囲Lでは、挟持部材40の各挟持片41,42が軸部材30に対して押圧されずに接触しているか、あるいは、相互に接触していない状態となる。すると、軸部材30の中央付近の直径が一定である範囲Lでは、挟持部材40の各挟持片41,42と軸部材30との間のみには、摩擦力が発生しにくい。
【0060】
一方で、固定台11とテーブル12とが相互に移動すると、ガイドレール21,22上を可動片23,24が移動することとなるが、本変形例では、ガイドレール21,22と可動片23,24とは、相対的に移動したときに一定の摩擦力が発生するよう構成されている。具体的に、可動片23,24は、テーブル12や免震対象物の重さによってガイドレール21,22に対して押圧された状態で移動することとなり、かかる状態でガイドレール21,22と可動片23,24とが摺動することで、相互間に摩擦力が生じる。すると、この摩擦力がガイドレール21,22と可動片23,24との相対移動に対する減衰力となる。従って、軸部材30の中央付近の直径が一定である範囲Lを挟持部材40が移動する際には、一定の減衰力が発生することとなる。
【0061】
なお、上記構成が有効となるのは、テーブル12や上記テーブル12に載置された免震対象物の重さによってガイドレール21,22と可動片23,24との間に一定の摩擦力が発生し、当該発生した一定の摩擦力が、免震効果を得るために十分な場合である。
【0062】
また、挟持部材40が軸部材30の直径が一定の範囲Lからさらに両端側(範囲M1,M2)にそれぞれ移動した場合には、上述同様に、軸部材30の直径が徐々に太くなるため、挟持部材40の各挟持片41,42が所定の押圧力で挟持した状態となる。従って、原点位置Cから離れれば離れるほど摩擦力は大きくなる。
【0063】
以上のように、本変形例における構成によると、軸部材30及び挟持部材40の他に、ガイドレール21,22及び可動片23,24が、相対的に移動して相互に摺動することにより摩擦力を発生させる機能を発揮することとなる。具体的には、軸部材30の中央付近の直径が一定である範囲Lでは、ガイドレール21,22と可動片23,24とが一定の摩擦力を発生する。そして、挟持部材40が軸部材30の直径が一定の範囲Lからさらに両端側(範囲M1,M2)では、ガイドレール21,22及び可動片23,24により発生する一定の摩擦力と、軸部材30と挟持部材40とにより発生する摩擦力と、の合力によって、原点位置Cから離れるにつれて徐々に大きくなる摩擦力を発生するよう構成される。
【0064】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、図9乃至図11を参照して説明する。図9は、免震装置の構成を示す斜視図であり、図10は、その構成の一部を示す拡大図である。図11は、免震装置の一部の他の構成例を示す正面図である。
【0065】
まず、本実施形態における免震装置100は、上述した実施形態1におけるものと同様に、固定台11と、テーブル12と、固定台11とテーブル12との間に配置される減衰装置(符号30,140,151,152等)と、を備えている。そして、固定台11上には、2本のガイドレール21,22が備えられており、当該ガイドレール21,22上には、テーブル12の4隅に配置された4つの可動片24が装備される。これにより、ガイドレール21,22上を可動片24が移動することで、固定台11とテーブル12とを、ガイドレール21,22の長手方向に沿って(図9の矢印Y2方向)、相対的に移動させることができる。
【0066】
そして、本実施形態における免震装置100は、固定台11とテーブル12との間に装備される減衰装置の構成が実施形態1とは異なる。以下、減衰装置について詳述する。なお、以下では、実施形態1で説明した構成と同一のものについての説明は省略する。
【0067】
まず、本実施形態における軸部材30は、実施形態1で説明したものと同一の構造であるため、その説明は省略する。一方、本実施形態では、テーブル12に装着され、軸部材30を挟持して当該軸部材30に対して摺動する挟持部材140の構成が異なる。具体的に、本実施形態では、テーブル12の下面側つまり固定台11との間に、略H型のテーブル補助部材110を固定装備している。このテーブル補助部材110は、略矩形であるテーブル12の中心を通る板状のリブ120を備えており、このリブ120は、軸部材30の軸方向に対して直交するよう配置されている。さらに、リブ120には、軸部材30が挿通される挿通孔が形成されており、上述した軸部材30が挿通された状態となっている。
【0068】
また、上記リブ120の挿通孔内面には、挟持部材140が設けられている。この挟持部材140は、図10の拡大図に示すように、まず、挿通孔に挿通する軸部材30を囲むよう、挟持部材140には軸部材30の上端と下端とに接する各挟持片141,142が設けられている。これら各挟持片141,142は、軸部材30の外周の接線に沿って、挟持部材140の内面から突出し、当該挟持部材140を構成する突出壁部と一体的に構成されている。
【0069】
そして、挟持部材140の各挟持片141,142の相互間の距離は、上記軸部材30の中央付近の直径よりもやや小さい距離を設けて形成されている。さらに、挟持部材140は、全体的に一体、つまり、各挟持片141,142と突出壁部とが一体的に構成されており、所定の外力で各挟持片141,142が離間する方向に変形しないよう、所定の剛性を有する材料で形成されている。逆に言うと、挟持部材140は、所定値以上の外力が印加された場合には、各挟持片141,142の距離が離間するよう変形するが、挟持部材140の剛性により、元の形状に戻る力が発生する。
【0070】
そして、上記挟持部材140は、図10に示すように、各挟持片141,142間に軸部材30を挟んで配置される。つまり、上述したように、挟持部材140の各挟持片141,142間は軸部材30の直径よりも狭いため、軸部材30の外周と接触し、当該軸部材30を挟持する力で押圧した状態となる。そして、挟持部材140は、直径が徐々に大きくなる軸部材30の両端側に移動すればするほど、当該軸部材30を挟持する力が強くなる。
【0071】
そして、上記挟持部材140が軸部材30を挟持した状態で当該軸部材30に沿って移動すると、挟持部材140の各挟持片141,142の内面と軸部材30の表面とが接触して、所定の押圧力で押圧された状態で摺動されるため、この摺動動作で摩擦力が生じる。すると、実施形態1の場合と同様に、軸部材30の中央付近である直径が一定の範囲Lを移動する場合には、摩擦力は一定である。一方で、軸部材30の直径が一定の範囲Lからさらに両端側の領域M1,M2に移動すると、原点位置Cから離れれば離れるほど、摩擦力は大きくなる。
【0072】
なお、上述した挟持部材140に軸部材30を挿通させるために、例えば、挟持部材140を、図11に示す符号140’の形状に形成するとよい。この挟持部材140’は、基本的な構成としては上述した符号140と同一であり、内部の中空領域に突出する、一対の挟持片141’,142’を有する。そして、挟持部材140’の中心付近における各挟持片141’,142’の相互間の距離は、上記軸部材30の中央付近の直径よりもやや小さい距離を設けて形成されている。なお、図11では、軸部材30の中央付近の直径を、符号30Aで図示している。
【0073】
一方、挟持部材140’の内部の中空領域の中央から外れた端付近では、上記軸部材30の中央付近の直径30Aよりも大きい直径の部材が挿通可能な空間が形成されており、特に、軸部材30の両端部付近の直径が挿通可能である。なお、図11では、軸部材30の両端部付近の直径を、符号30Bで図示している。
【0074】
以上のように挟持部材140’を構成することで、まず、当該挟持部材140’の内部の中空領域の広幅部に、軸部材30を端部側から挿通し(図11の符号30B参照)、その後、軸部材30の中央付近を、一対の挟持片141’,142’間に配置するよう移動して(図11の符号30A参照)、挟持部材140’に軸部材30を挿通させることができる。
【0075】
但し、上述した挟持部材140’に軸部材30を挿通させるために、挟持部材140’を上述した形状に形成することに限定されない。例えば、挟持部材140’を円板状に形成せず、一部が開口した略コ字状に形成して、この開口部分から各挟持片141’,142’間に軸部材30を介挿してもよい。このとき、さらに、軸部材30の断面形状を、略円形、扁平状としてもよい。そして、上述した挟持部材140の開口部分に、各挟持片141,142に対して平坦面が対向するよう軸部材30を挿通し、その後、軸部材30を90度回転させて、当該軸部材30の切除されていない円弧状の部分を、各挟持片141,142に接触させてもよい。
【0076】
また、本実施形態におけるテーブル12と固定台11とを連結する2本のコイルばね151,152(復元力付勢手段)は、軸部材30と平行であり、かつ、2本が直列に配置されている。そして、各コイルばね151,152は、それぞれの一端が、図9に示すように、固定台11の一対の各辺のほぼ中央付近で支持固定されており、それぞれの他端が、テーブル12に固定されたテーブル補助部材110に形成されたリブ120の表裏面にそれぞれ支持固定されている。これにより、図9の矢印Y2に示すように、固定台11に対してガイドレール21,22に沿ってテーブル12が移動すると、一方のコイルばね151が縮むと共に他方のコイルばね152が伸び、一方のコイルばね151がリブ120を押すと共に、他方のコイルばね152がリブ120を引っ張り、テーブル12を元の位置に移動するよう復元力を付勢する。
【0077】
なお、上記コイルばね151,152に、軸部材30を挿通して配置してもよい。これにより、軸部材30と同一位置にコイルばね151,152を配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【0078】
以上のように構成しても、まず、短周期に卓越成分を含む振動が生じた場合には、挟持部材140は、軸部材30の原点位置Cから短い距離L1,L2に位置する直径が一定の範囲Lを移動する。すると、各挟持片141,142が軸部材30を一定の力で押圧した状態で摺動することで、各挟持片141,142と軸部材30との間に、軸部材30のテーパー領域M1,M2上を移動するときと比べて小さい一定の摩擦力が発生する。そして、この摩擦力が、挟持部材40と軸部材30との間における振動の減衰力となり、固定台11に対するテーブル12の加速度を適切に低減することができる。
【0079】
そしてさらに、上述したように固定台11に対して相対的にテーブル12が移動すると、一方のコイルばね151が縮み、他方のコイルばね152が伸びる(あるいは、その逆の動作)ため、テーブル12が元の位置に戻るよう当該テーブル12に対して復元力が付勢される。この復元力により、テーブル12が逆方向に移動することとなり、この際にもテーブル12に固定された挟持部材140が、固定台11に固定された軸部材30を挟持した状態で摺動するため、上述したように、減衰力が生じ、振動による加速度を適切に低減することができる。
【0080】
一方、長周期に卓越成分を含む振動が生じて共振が生じた場合には、固定台11に対して相対的にテーブル12が移動する距離が長くなる。そのため、テーブル12に装備された挟持部材140は、軸部材30の原点位置Cから距離L1,L2を超えてさらに当該原点位置Cから離れた領域M1,M2まで移動する。すると、挟持部材140の各挟持片141,142が、軸部材30の直径が徐々に大きくなるテーパー状の範囲で摺動し、当該各挟持片141,142は軸部材30の直径が大きくなるに従って大きくなる押圧力で押圧した状態で摺動することとなる。このため、挟持部材140と軸部材30との間に、軸部材30の直径が一定の領域Lで移動するときと比べて大きい摩擦力が発生し、特に、原点距離Cからの距離が長くなればなるほど大きい摩擦力が発生する。そして、この摩擦力が、挟持部材140と軸部材30との間における振動の減衰力となり、固定台11に対するテーブル12の相対変位を適切に低減することができる。
【0081】
また、上述したように固定台11に対して相対的にテーブル12が移動すると、一方のコイルばね151が縮み、他方のコイルばね152が伸びる(あるいは、その逆の動作)ため、テーブル12が元の位置に戻るよう当該テーブル12に対して復元力が付勢される。この復元力により、テーブル12が逆方向に移動することとなり、この際にもテーブル12に固定された挟持部材140が、固定台11に固定された軸部材30を挟持した状態で摺動するため、上述したように、減衰力が生じ、振動による加速度あるいは相対変位を適切に低減することができる。
【0082】
以上のように、本発明における免震装置100によると、通常の短周期地震波に対しては高い免震効果を発揮しつつ、長周期地震波に対しては免震テーブルの共振を抑制する効果を発揮することができる。従って、高性能な免震装置及び減衰装置を提供することができる。特に、上述した機能を有する免震装置を簡易な構成で実現することができるため、高性能な免震装置を低コストにて製造することができる。
【0083】
[変形例]
ここで、上記では、挟持部材140の一対の挟持片141,142間の距離が、軸部材30の中央付近(範囲L)の一定である直径よりもやや小さく形成されている場合を説明したが、本発明は、かかる構成に限定されない。例えば、上記実施形態1の変形例と同様に、挟持部材140の一対の挟持片141,142間の距離が、軸部材130の中央付近(範囲L)の一定である直径と等しいか、あるいは、一定である直径よりもやや大きく形成されていてもよい。この場合には、軸部材30の中央付近の直径が一定である範囲Lでは、挟持部材140の各挟持片141,142と軸部材30との間のみには、摩擦力が発生しにくいが、ガイドレール21,22上を可動片23,24が相対的に移動することにより、一定の摩擦力が発生する。
【0084】
なお、上記構成が有効となるのは、テーブル12や当該テーブル12に載置された免震対象物の重さによってガイドレール21,22と可動片23,24との間に一定の摩擦力が発生し、当該発生した一定の摩擦力が、免震効果を得るために十分な場合である。
【0085】
また、挟持部材140が軸部材30の直径が一定の範囲Lからさらに両端側(範囲M1,M2)に移動した場合には、上述同様に、軸部材30の直径が徐々に太くなるため、挟持部材140の各挟持片141,142が所定の押圧力で挟持した状態となる。従って、原点位置Cから離れれば離れるほど大きな摩擦力が発生する。
【0086】
<実施形態3>
次に、本発明の第3の実施形態を、図12乃至図13を参照して説明する。図12は、免震装置の構成を示す上面図と断面図であり、図13は、その構成の一部を示す拡大図である。
【0087】
まず、本実施形態における免震装置200は、上述した実施形態1におけるものと同様に、固定台11と、テーブル12と、固定台11とテーブル12との間に配置される減衰装置(符号231,232,240,51,52等)と、を備えている。そして、固定台11上には、2本のガイドレール21,22が備えられており、当該ガイドレール21,22上には、テーブル12の4隅に配置された4つの可動片(図示せず)が装備される。これにより、ガイドレール21,22上を可動片が移動することで、固定台11とテーブル12とを、ガイドレール21,22の長手方向に沿って(図12の矢印Y3方向)、相対的に移動させることができる。
【0088】
そして、本実施形態における免震装置200は、固定台11とテーブル12との間に装備される減衰装置の構成が実施形態1や2と異なる。以下、減衰装置について詳述する。なお、以下では、実施形態1で説明した構成と同一のものについての説明は省略する。
【0089】
まず、本実施形態における減衰装置は、固定台11の表面に固定配置された2本の帯状部材231,232(可動支持部材)と、略正方形状のテーブル12の固定台11と対向する裏面側に固定装着された可動部材240と、を備えている。なお、図13は、帯状部材231,232と可動部材240とを拡大して図示したものである。
【0090】
そして、上記帯状部材231,232は、固定台11の中央、つまりガイドレール21,22間の中央に、当該ガイドレール21,22と平行、かつ、所定の距離をあけて同一直線上に配置されている。ここで、各帯状部材231,232間の中心を、上述した原点位置Cとする。
【0091】
また、上記帯状部材231,232の表面(摺動部)は、一部が水平に形成されており、残りの部分が傾斜して形成されている。具体的には、図13に示すように、一方の帯状部材232の表面は、他方の帯状部材231側の端部付近の領域L10が、端部から徐々に固定台11の表面とは反対側である上方に向かって傾斜して形成されている。また、この領域L10から自身の長手方向の中央あたりまでの領域L11が、平坦に形成されており、さらに、自身の長手方向の中心あたりから他端までの領域L12が、固定台11の表面とは反対側である上方に向かって徐々に傾斜して形成されている。また、他方の帯状部材231も同様に形成されている。換言すると、各帯状部材231,232の表面は、まず、平行に配置されたガイドレール21,22の中央側に位置する端部付近の領域L10では、ガイドレール21,22の長手方向の各端部側に向かうにつれて、徐々に高さが高くなるよう傾斜している。そして、各帯状部材231,232の中央付近の領域L11では、平坦である。さらに、ガイドレール21,22の長手方向の両端部側の領域L12では、当該ガイドレール21,22の長手方向の各端部側に向かうにつれて、徐々に高さが高くなるよう傾斜している。
【0092】
また、上記可動部材240は、テーブル12に固定装備され、当該テーブル12の裏面のほぼ中心に設けられた長板部材であり、その長手方向がテーブル12の移動方向であるガイドレール21,22に沿って配置されている。そして、可動部材240の長手方向の両端には、下方に突出する先端が尖った2つの摺動片241,242が設けられている。これら2つの摺動片241,242は、その先端が上記帯状部材231,232の領域L11,L12の表面に接触し、長手方向に沿って移動する。つまり、固定台11に対してテーブル12が相対的に移動することで、可動部材240の摺動片241,242が帯状部材231,232の一部の範囲(領域L11,L12)に接触したまま摺動する。
【0093】
このとき、可動部材240つまり摺動片241,242は、テーブル12の自重や他の機構により下方に所定の荷重が掛けられているため、接触している帯状部材231,232を押圧したまま摺動される。すると、摺動片241,242が帯状部材231,232を押圧する押圧力により、これらの間に摩擦力が発生し、上述同様に減衰効果を得ることができる。なお、帯状部材231,232の範囲L10の傾斜した表面は、可動部材240の摺動部241,242と常に接触せず、後述するように、当該可動部材240の摺動部241,242が帯状部材231,232の範囲L11の平坦部分に円滑に接触するよう導くガイドとして機能する。
【0094】
そして、まず、短周期に卓越成分を含む振動が生じた場合には、テーブル12の移動距離が短く、可動部材240は、テーブル12の原点位置C近辺を移動することとなる。このとき、摺動片241,242の一方は、各帯状部材231,232間の中央の原点位置Cから短い距離に位置する一方の帯状部材231,232の領域L10の傾斜面に導かれて平坦な領域L11上に移動し、当該領域L11の表面に接触する。すると、各摺動片241,242が帯状部材231,232を一定の力で押圧した状態で摺動することで、各摺動片241,242と帯状部材231,232との間に、各摺動片241,242が帯状部材231,232のテーパー領域L12上を移動するときと比べて小さい一定の摩擦力が発生する。そして、この摩擦力が、可動部材240と帯状部材231,232との間における振動の減衰力となり、固定台11に対するテーブル12の加速度を適切に低減することができる。
【0095】
そして、本実施形態においては、実施形態1と同様の構成のコイルばね51,52が装備されている。従って、上述したように固定台11に対して相対的に移動したテーブル12を、コイルばね51,52によって生じた復元力にて、上述したように逆方向に移動させることができ、最終的には、原点位置Cに復帰させることができる。
【0096】
一方、長周期に卓越成分を含む振動が生じて共振した場合には、テーブル12の移動距離が長く、可動部材240の摺動片241,242は、テーブル12の原点位置Cからさらに離れて位置する帯状部材231,232のテーパー領域L12上に接触する。このときには、固定台11とテーブル12との距離が一定に保たれているため、摺動片241,242はさらに大きな押圧力で帯状部材231,232を押圧することとなる。
【0097】
すると、可動部材240の各摺動片241,242が、帯状部材231,232に対してガイドレール21,22の端に向かうにつれて大きくなる押圧力で押圧した状態で摺動することとなる。このため、可動部材240と帯状部材231,232との間に、摺動片241,242が帯状部材231,232の表面が平坦な領域L11で移動するときと比べて大きい摩擦力が発生し、特に、原点距離Cからの距離が長くなればなるほど大きい摩擦力が発生する。そして、この摩擦力が、可動部材240と帯状部材231,232との間における振動の減衰力となり、固定台11に対するテーブル12の相対変位を適切に低減することができる。
【0098】
また、上述したように固定台11に対して相対的にテーブル12が移動すると、コイルばね51,52が伸び、テーブル12が元の位置に戻るよう当該テーブル12に対して復元力が付勢される。この復元力により、テーブル12が逆方向に移動することとなり、この際にもテーブル12に固定された可動部材240が、固定台11に固定された帯状部材231,232を押圧した状態で摺動するため、上述したように、減衰力が生じ、振動による加速度あるいは相対変位を適切に低減することができる。
【0099】
以上のように、本発明における免震装置200によると、通常の短周期地震波に対しては高い免震効果を発揮しつつ、長周期地震波に対しては免震テーブルの共振を抑制する効果を発揮することができる。従って、高性能な免震装置及び減衰装置を提供することができる。特に、上述した機能を有する免震装置を簡易な構成で実現することができるため、高性能な免震装置を低コストにて製造することができる。
【0100】
[変形例]
次に、上述した免震装置の変形例を説明する。上記では、帯状部材231,232の表面に傾斜部分(領域L10,L12)と平坦部分(L11)とがある場合を例示したが、当該帯状部材231,232は、上述した形状に限定されない。上記帯状部材231,232の表面は、平行に配置されるガイドレール21,22の中央側(原点位置C側)に位置する各端部から、当該ガイドレール21,22の各端部に向けて、例えば、一定の角度で一様に傾斜して形成されていてもよい。
【0101】
これに対応して、各帯状部材231,232の自身の中央付近まで、例えば、図13の領域L10,L11では、可動部材240の摺動片241,242が接触しないよう構成されるとよい。すると、短周期に卓越成分を含む振動が生じた場合には、テーブル12の移動距離が短く、可動部材240の摺動片241,242の一方は、一方の帯状部材231,232の表面の領域L10,L11上を接触せずに移動することとなり、これらの間に摩擦力は発生しない。このとき、ガイドレール21,22と可動片23,24とは、相対的に移動したときに一定の摩擦力が発生するよう構成されているため、この摩擦力がガイドレール21,22と可動片23,24との相対移動に対する減衰力となる。
【0102】
なお、上記構成が有効となるのは、テーブル12や当該テーブル12に載置された免震対象物の重さによってガイドレール21,22と可動片23,24との間に一定の摩擦力が発生し、当該発生した一定の摩擦力が、免震効果を得るために十分な場合である。
【0103】
また、長周期に卓越成分を含む振動が生じて共振した場合には、テーブル12の移動距離が長く、可動部材240の摺動片241,242は、帯状部材231,232の自身の中央付近からガイドレール21,22の端部側に位置する領域L12上に位置し、当該領域L12の表面に接触する。すると、上述したように、可動部材240の各摺動片241,242のうち一方が、一方の帯状部材231,232に対して、ガイドレール21,22の端に向かう方向になるにつれて大きくなる押圧力で押圧した状態で摺動することとなり、原点距離Cから離れれば離れるほど大きい摩擦力が発生する。
【0104】
以上のように、この変形例では、帯状部材231,232及び可動部材240の他に、ガイドレール21,22と可動片24とが、相対的に移動して相互に摺動することにより摩擦力を発生させる可動支持部材と可動部材として機能することとなる。
【0105】
<実施形態4>
次に、本発明の第4の実施形態を、図14乃至図17を参照して説明する。図14乃至図17は、本実施形態における免震装置の構成を示す斜視図や断面図などを表している。なお、本実施形態では、上述した免震装置に装備される減衰力付勢手段として機能するコイルばね(図1の符号51,52参照)の変形例を説明する。従って、本実施形態における免震装置の構成は、コイルばね以外は上述した実施形態1,2,3と同様であるため、それらの説明は省略して説明する。特に、図14乃至図17では、減衰力を付勢する図1に示すような軸部材30や挟持部材40を図示していないが、実施形態1,2,3で説明した軸部材30や挟持部材40などの構成は備えていることとする。
【0106】
[変形例1]
図14(A)の斜視図及び図14(B)の上面図に示す免震装置300は、固定台11と、テーブル12と、固定台11とテーブル12との間に配置される減衰装置と、を備えている。そして、固定台11上には、2本のガイドレール21,22が備えられており、当該ガイドレール21,22上には、上記テーブル12に配置された複数の可動片が装備されることで、固定台11とテーブル12とを、ガイドレール21,22の長手方向に沿って、相対的に移動させることができる。
【0107】
そして、本実施形態における免震装置300に装備された減衰装置は、図示しないが、図2に開示したような軸部材(符号30参照)と、当該軸部材と接した状態のまま当該軸部材に沿って移動する挟持部材(符号40参照)と、を備えている。さらに、本実施形態における減衰装置は、テーブル12と固定台11とを連結する2組のコイルばね351,352(復元力付勢手段)を備えている。
【0108】
ここで、1組のコイルばね351について、その構成を説明する。コイルばね351は、図14(B)に示すように、2つのコイルばね部材351a,351cが、防振ゴム351bを介して直列に連結されて構成されている。そして、コイルばね351を構成するコイルばね部材351a,351cのうち、一方のコイルばね部材351aの一端が、ガイドレール21,22に沿った固定台11の一辺のほぼ中央付近に連結し、他方のコイルばね部材351cの一端が、同じくガイドレール21,22に沿ったテーブル12の一辺のほぼ中央付近に連結している。そして、もう1組のコイルばね352も同様に、2つのコイルばね部材352a,352cが、防振ゴム351bを介して連結されて構成されている。
【0109】
上述した構成のコイルばね351,352を用いることで、各コイルばね351,352に印加される振動を防振ゴム351b,352bにて静振することができる。そして、上述同様に、固定台11に対してテーブル12がガイドレール21,22に沿って移動してその移動量が大きくなるにつれて、徐々に各コイルばね351と352が硬くなり、固有振動数が変化することとなる。その結果、テーブル12の移動量が大きくなるに従い、当該テーブル12の原点位置Cへの復元力が大きく付勢されることとなる。このため、長周期地震波に対して共振を抑制するなど、より有効に機能しうる。
【0110】
[変形例2]
図15(A)の斜視図及び図15(B)のA−A線から見た側面図に示す免震装置400は、固定台11と、テーブル12と、固定台11とテーブル12との間に配置される減衰装置と、を備えている。そして、固定台11上には、2本のガイドレール21,22が備えられており、当該ガイドレール21,22上には、上記テーブル12に配置された複数の可動片が装備されることで、固定台11とテーブル12とを、ガイドレール21,22の長手方向に沿って、相対的に移動させることができる。
【0111】
そして、本実施形態における免震装置400に装備された減衰装置は、図示しないが、図2に開示したような軸部材(符号30参照)と、当該軸部材と接した状態のまま当該軸部材に沿って移動する挟持部材(符号40参照)と、を備えている。さらに、減衰装置は、テーブル12と固定台11とを連結する2つのコイルばね451,452(復元力付勢手段)を備えている。
【0112】
そして、本実施形態におけるコイルばね451,452は、図示しない軸部材と平行であり、かつ、2本が直列に配置されている。各コイルばね451,452は、それぞれの一端が、図15(A)に示すように、固定台11の一対の各辺のほぼ中央付近で支持固定されており、それぞれの他端が、図15(B)に示すように、テーブル12の裏面側に形成されたリブ420の両面にそれぞれ支持固定されている。
【0113】
さらに、本実施形態における各コイルばね451,452は、リブ420から離れるにつれて、コイルの径が徐々に大きくなる円錐形状にそれぞれ形成されている。具体的に、円錐形状の各コイルばね451,452は、例えば、圧縮されることにより復元力を発生させる圧縮バネであり、径が大きくなるにつれてバネ定数が小さくなり、径が小さくなるにつれてバネ定数が大きくなるよう形成されている。
【0114】
これにより、固定台11に対してガイドレール21,22に沿ってテーブル12が移動すると、移動方向に沿って、当該移動方向側に位置する一方のコイルばね451が縮むと共に、他方のコイルばね452が伸びる。そしてこのとき、圧縮された一方のコイルばね451は、まず、主に径が大きい部分が徐々に圧縮され、一定以上の応力がかかり圧縮されると、その後は径の小さい部分が圧縮される。従って、圧縮されるほどバネ定数が大きくなり、テーブル12の移動量が大きくなるほど、徐々にバネ定数の増大に起因する大きな復元力が発生することとなる。このため、長周期地震波に対して共振を抑制するなど、より有効に機能しうる。
【0115】
なお、上記コイルばね451,452は、図示しない軸部材と並行に配置されたガイド軸453が挿通されて配置されてもよく、あるいは、図示しない軸部材自体に挿通して配置してもよい。また、上記円錐形状の各コイルばねにおける、大径部と小径部の配置関係は、図15の例示に限らず、反対向きであっても同様に作用する。
【0116】
[変形例3]
図16(A)の斜視図及び図16(B)のA−A線から見た側面図に示す免震装置500は、固定台11と、テーブル12と、固定台11とテーブル12との間に配置される減衰装置と、を備えている。そして、固定台11上には、2本のガイドレール21,22が備えられており、当該ガイドレール21,22上には、上記テーブル12に配置された複数の可動片が装備されることで、固定台11とテーブル12とを、ガイドレール21,22の長手方向に沿って、相対的に移動させることができる。
【0117】
そして、本実施形態における免震装置500に装備された減衰装置は、図示しないが、図2に開示したような軸部材(符号30参照)と、当該軸部材と接した状態のまま当該軸部材に沿って移動する挟持部材(符号40参照)と、を備えている。さらに、減衰装置は、テーブル12の中心を挟んで、当該テーブル12と固定台11とを連結する2組のコイルばね551,552(復元力付勢手段)を備えている。
【0118】
そして、本実施形態におけるコイルばね551,552は、図示しない軸部材と平行であり、かつ、2本が連結されて1組を構成する2組のコイルばね551,552が直列に配置されて構成されている。各組のコイルばね551,552は、それぞれの一端が、図16(A)に示すように、固定台11の一対の各辺のほぼ中央付近で支持固定されており、それぞれの他端が、図16(B)に示すように、テーブル12の裏面側に形成されたリブ520にそれぞれ支持固定されている。
【0119】
ここで、本実施形態における各組のコイルばね551,552について、一方の組のコイルばね551を例に挙げて、その構成を詳述する。コイルばね551は、バネ定数が異なる2本のコイルばね部材551a,551bが直列に連結して構成されている。そして、コイルばね部材551と552が対峙する側には、バネ定数が小さなコイルばね部材551bが配置され、他端側には、バネ定数が大きなコイルばね部材551aが配置されている。なお、テーブル12のリブ520を挟んで反対側に位置するコイルばね552も同様に、バネ定数の異なる2本のコイルばね部材552a,552bが直列に連結して構成されている。
【0120】
これにより、固定台11に対してガイドレール21,22に沿ってテーブル12がコイルばね551側に移動すると、当該移動方向に沿って、コイルばね551が縮む。このとき、コイルばね551は、まず、主にバネ定数の小さいコイルばね部材551bが徐々に圧縮され、一定以上の応力がかかり圧縮されると、その後はバネ定数の大きいコイルばね部材551aが圧縮される。従って、テーブル12の移動量が大きくなり、バネ定数の小さいコイルばね部材551bが完全に圧縮される。その後、バネ定数の大きいコイルばね部材551aによる大きな復元力が付勢されることとなる。
【0121】
なお、上記コイルばね551,552は、図示しない軸部材と並行に配置されたガイド軸553が挿通されて配置されてもよく、あるいは、軸部材自体に挿通されて配置されてもよい。また、上記では、テーブル12が移動する両側に、それぞれ2本のコイルばねが連結されて構成された2組のコイルばね551,552をそれぞれ配設したが、各組のコイルばねは、3本以上のコイルばねが直列に連結されて構成されていてもよい。また、バネ定数の大きなバネと小さなバネとを並べる順番は上記に限定されない。
【0122】
[変形例4]
図17(A)の斜視図及び図17(B)の上方から見た断面図に示す免震装置600は、固定台11と、テーブル12と、固定台11とテーブル12との間に配置される減衰装置と、を備えている。そして、固定台11上には、2本のガイドレール21,22が備えられており、当該ガイドレール21,22上には、上記テーブル12に配置された複数の可動片が装備されることで、固定台11とテーブル12とを、ガイドレール21,22の長手方向に沿って、相対的に移動させることができる。
【0123】
そして、本実施形態における免震装置600に装備された減衰装置は、図示しないが、図2に開示したような軸部材(符号30参照)と、当該軸部材と接した状態のまま当該軸部材に沿って移動する挟持部材(符号40参照)と、を備えている。さらに、減衰装置は、テーブル12と固定台11とを連結する2本の第一コイルばね651,652(復元力付勢手段)と、当該2本の第一コイルばね651,652に平行なさらに2本の第二コイルばね651a,652aと、を備えている。なお、第一コイルばね651,652と第二コイルばね651a,652aとは、それぞれバネ定数が同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0124】
本実施形態における第一コイルばね651,652は、上述した実施形態2の図9で説明したものとほぼ同様の構成を取っている。つまり、第一コイルばね651,652は、図示しない軸部材と平行であり、かつ、テーブル12のリブ620を挟んだ2本のコイルばねが直列に配置されて構成されている。具体的に、第一コイルばね651,652は、それぞれの一端が、図17(B)に示すように、固定台11の一対の各辺のほぼ中央付近で固定されており、それぞれの他端が、テーブル12の裏面側に形成されたリブ620の両面にそれぞれ支持固定されている。
【0125】
また、上記第一コイルばね651,652と平行に設けられた2本の第二コイルばね651a,652aは、それらの一端を固定台11の一対の各辺の中心付近で支持固定し、他端を対峙離間して支持固定されている。具体的に、2本の第二コイルばね651a,652aは、第一コイルばね651,652よりも長さが短く形成されている。そして、第二コイルばね651a,652aのそれぞれの一端は、第一コイルばね651,652と同様に、ガイドレール21,22の両端側付近に固定されるものの、それぞれの他端は、ガイドレール21,22の長さの中央付近、つまり、ガイドレール21,22の中央から離れた箇所に位置している。このとき、第二コイルばね651a,652aは、ガイド軸653aが挿通されて配置されている。
【0126】
以上のように、第二コイルばね651a,652aは、テーブル12の移動量が所定値以上に大きくなったときに、はじめて圧縮されるよう配置されている。つまり、テーブル12の中央に設けられたリブ620が、第二コイルばね651a,652aの他端に位置するまで移動したときにようやく圧縮されることとなる。
【0127】
これにより、固定台11に対してガイドレール21,22に沿ってテーブル12が移動すると、当該移動方向に沿って、まずは一方の第一コイルばね651が縮むと共に他方の第一コイルばね652が伸びるため、この間は、第一コイルばね651,652による復元力のみが発生する。その後、テーブル12のリブ620の位置が一方の第二コイルばね651aの端部に達するまで移動すると、第一コイルばね651と共に第二コイルばね651aも徐々に圧縮されることとなり、これ以降は第一コイルばね651,652と第二コイルばね651aとによる復元力が発生することとなる。従って、テーブル12の移動量が大きくなるほど、復元力を発生するバネの数の増加に起因する大きな復元力が徐々に付勢されることとなる。
【0128】
なお、上記第一コイルばね651,652は、図示しない軸部材と並行に配置されたガイド軸653が挿通されて配置されてもよく、あるいは、軸部材自体に挿通して配置してもよい。また、上記では、第一コイルばねに平行な第二コイルばね651a,652aとして1本のコイルばねを用いた場合を例示したが、さらに第一コイルばねに平行に複数本のコイルばねを設けてもよい。例えば、原点位置から離れるにつれて第二コイルばね651a,652aの本数を増やして設けてもよい。また、上記それぞれの第二コイルばね651a,652aが支持固定される位置は、図17(B)に示すようなガイドレール21,22と垂直方向に位置する固定台11の一対の各辺のほぼ中央付近であってもよく、テーブル12の裏面側に形成されたリブ620の両面であってもよい。
【0129】
また、上記では、一方向の振動に対して減衰効果を有する免震装置を開示したが、実際には、上述した減衰装置をもう1つ設けて、二方向つまり相互に直交する方向の振動をそれぞれ減衰するよう構成するのが好適である。つまり、上述した図6及び図7を参照して説明したように、上述したテーブル12上に、さらに直交する方向の振動を減衰する減衰装置を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、精密機器や美術工芸品などの免震対象物を振動から保護すべく載置する免震装置に利用可能な減衰装置であって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0131】
1,100,200,300,400,500,600 免震装置
11 固定台
12 テーブル
21,22 ガイドレール
23,24 可動片
30 軸部材
40 挟持部材
41,42 挟持片
51,52,151,152,351,352,451,452,551,552 コイルばね
110 テーブル補助部材
120,420,520,620 リブ
140 挟持部材
141,142 挟持片
231,232 帯状部材
240 可動部材
241,242 摺動片
351a,351c,352a,352c,551a,551b,552a,552b コイルばね部材
351b,352b 防振ゴム
453,553,653,653a ガイド軸
651,652 第一コイルばね
651a,652a 第二コイルばね


【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震対象物を載置するテーブルと固定体とにそれぞれ係合して前記テーブルと前記固定体との間に配置され、前記テーブルと前記固定体との相対的な移動に伴い相互に接触して相対的に少なくとも一方向に移動する可動部材と可動支持部材とを備えると共に、
前記可動部材が前記可動支持部材に対して相対的に移動したときに、前記可動支持部材上における予め設定された原点位置に前記可動部材を復帰させる復元力を前記可動部材に付勢する復元力付勢手段を備え、
前記可動部材と前記可動支持部材とは、相対的に移動して相互に摺動することにより、前記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定の摩擦力を発生し、前記原点位置から前記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、前記一定の摩擦力よりも大きく、かつ、前記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなる摩擦力を発生するよう構成されている、
減衰装置。
【請求項2】
請求項1に記載の減衰装置であって、
前記可動部材は、前記可動支持部材に対して所定の押圧力にて押圧されて接触しており、
前記押圧力は、前記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定であり、前記原点位置から前記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、前記一定の押圧力よりも大きく、かつ、前記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなるよう設定されている、
減衰装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の減衰装置であって、
前記可動支持部材は、前記可動部材が相対的に移動する際に前記可動部材が接触して摺動する軌跡である摺動部を有し、
前記摺動部は、前記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、平坦であり、前記原点位置から前記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、前記原点位置から離れるにつれて徐々に上り傾斜して形成されている、
減衰装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の減衰装置であって、
前記可動支持部材は、相対的に移動する前記可動部材の移動方向に沿って延びる軸部材であると共に、前記軸部材の径は、前記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定であり、前記原点位置から前記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、前記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなるよう形成されており、
前記可動部材は、前記軸部材を挟むよう形成されており、前記軸部材の外周と少なくとも前記原点位置から前記所定の距離よりもさらに離れた範囲で接触する挟持部材である、
減衰装置。
【請求項5】
請求項4に記載の減衰装置であって、
前記可動部材である前記挟持部材は、前記軸部材の外周と常に接触する、
減衰装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の減衰装置であって、
前記可動部材である前記挟持部材は、前記軸部材を挟む各挟持片が相互に連結して形成されると共に、前記各挟持片間の距離が所定値以上の大きさの外力にて変化するよう所定の剛性を有する、
減衰装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の減衰装置であって、
前記可動部材と前記可動支持部材とは、点、線又は面で相互に接触している、
減衰装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の減衰装置であって、
前記復元力付勢手段は、前記原点位置に対する前記可動部材の移動に伴って伸縮するバネ部材であり、前記バネ部材は前記可動部材の前記原点位置からの移動量が大きいほど大きな復元力を付勢するよう配設されている、
減衰装置。
【請求項9】
請求項8に記載の減衰装置であって、
前記バネ部材は、前記可動部材の移動方向に沿って伸縮するよう配設されており、前記可動部材の前記原点位置に対して少なくとも一方の移動側に配設された前記バネ部材は、それぞれ異なるバネ定数を有する複数のバネ部材が直列に連結されて構成されている、
減衰装置。
【請求項10】
請求項8に記載の減衰装置であって、
前記バネ部材は、前記可動部材の移動方向に沿って伸縮するよう配設されており、前記可動部材の前記原点位置に対して少なくとも一方の移動側に配設された前記バネ部材は、複数のバネ部材が相互に平行に配設されて構成されていると共に、そのうちの少なくとも1つのバネ部材が前記原点位置よりも所定の距離だけ離間した位置に配設されている、
減衰装置。
【請求項11】
請求項8に記載の減衰装置であって、
前記バネ部材は、前記可動部材の移動方向に沿って伸縮するよう配設されており、前記可動部材の前記原点位置に対して少なくとも一方の移動側に配設された前記バネ部材は、バネ定数が部分的に異なるバネ部材にて構成されている、
減衰装置。
【請求項12】
振動源からの振動が伝達される固定体と、免震対象物を載置するテーブルと、
前記固定体と前記テーブルとにそれぞれ係合して前記テーブルと前記固定体との間に配置され、前記テーブルと前記固定体との相対的な移動に伴い相互に接触して相対的に少なくとも一方向に移動する可動部材と可動支持部材とを備えると共に、
前記可動部材が前記可動支持部材に対して相対的に移動したときに、前記可動支持部材上における予め設定された原点位置に前記可動部材を復帰させる復元力を前記可動部材に付勢する復元力付勢手段を備え、
前記可動部材と前記可動支持部材とは、相対的に移動して相互に摺動することにより、前記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定の摩擦力を発生し、前記原点位置から前記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、前記一定の摩擦力よりも大きく、かつ、前記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなる摩擦力を発生するよう構成されている、
免震装置。
【請求項13】
免震対象物を載置するテーブルと固定体とにそれぞれ係合して前記テーブルと前記固定体との間に配置され、前記テーブルと前記固定体との相対的な移動に伴い相互に接触して相対的に少なくとも一方向に移動する可動部材と可動支持部材とを備えると共に、
前記可動部材が前記可動支持部材に対して相対的に移動したときに、前記可動支持部材上における予め設定された原点位置に前記可動部材を復帰させる復元力を前記可動部材に付勢する復元力付勢手段を備えた減衰装置による減衰方法であって、
前記可動部材と前記可動支持部材とが、相対的に移動して相互に摺動するときに、前記原点位置から予め設定された所定の距離までの範囲では、一定の摩擦力を発生し、前記原点位置から前記所定の距離よりもさらに離れた範囲では、前記一定の摩擦力よりも大きく、かつ、前記原点位置から離れるにつれて徐々に大きくなる摩擦力を発生する、
減衰方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−47514(P2011−47514A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106220(P2010−106220)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名 日本機械学会 関東支部 第15期 総会講演会 講演論文集 発行日 平成21年3月5日 発行所 社団法人 日本機械学会関東支部 該当ページ 第301ページ、第302ページ 公開者 齋藤 宏和、 出水 正之、 若林 信宏、 大亦 絢一郎 公開のタイトル 「あそびのある漸硬型摩擦ダンパの研究」
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【出願人】(591159815)有限会社堀端製作所 (1)
【Fターム(参考)】