説明

減衰装置

【課題】減衰力を損なうような変形を抑制することができる間柱型の減衰装置を提供する。
【解決手段】減衰装置100は、上梁12aと下梁12bとの間に設けられる。この減衰装置100は、外力が作用した際に移動する上梁12aと下梁12bの、水平方向への相対移動を減衰させるために設けられている。減衰装置100は、下梁12bに取り付けられた下方固定板120と、直列に接続された粘弾性ダンパーユニット300及び摩擦ダンパーユニット400とを備える。粘弾性ダンパーユニット300は、上梁12aに取り付けられた上方部材連動板310と、上方部材連動板310に対向する第1粘弾性体保持部材320とを備える。粘弾性ダンパーユニット300においては、上方部材連動板310と第1粘弾性体保持部材320との間に、粘弾性体331が設けられている。摩擦ダンパーユニット400においては、下方固定板120と第1粘弾性体保持部材320との間に、摩擦板410が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰装置に関し、特に、上方部材と下方部材との間に設けられ、当該上方部材及び下方部材の相対移動を減衰させるための減衰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の主構造は、建築物の鉛直方向に沿って配設された柱と、水平方向に沿って配設された梁である。梁は、建築物の各階の上部と下部とに配置され、上方の梁と下方の梁とは、柱によって互いにつながっている。
【0003】
ここで、建築物に外力が作用した結果、建築物に振動が生じると、上方の梁と下方の梁は、互いに相対移動する。そのため、建築物には、振動を減衰させるための減衰装置が設けられている。減衰装置には、風などによって建築物に生じる小さな振動を減衰させるための粘弾性ダンパーや、地震などによって建築物に生じる大きな振動を減衰させるための摩擦ダンパーがある。
【0004】
減衰装置は、例えば、上方の梁と、下方の梁と、柱とで囲まれる架構面において斜めに配設される(ブレース型の減衰装置)。このブレース型の減衰装置には、上記相対移動により生じた剪断力が作用するが、減衰装置は、この剪断力に対して、斜め方向(減衰装置の軸方向)の減衰力で対抗することが可能である。
【0005】
また、上記ブレース型の減衰装置の例とは異なり、減衰装置を、上方の梁と下方の梁との間の架構面内で鉛直方向上下に配設することも可能である(間柱型の減衰装置)。間柱型の減衰装置では、作用した剪断力に対して、水平方向(梁に平行な方向)の減衰力で対抗する。
【0006】
上記間柱型の減衰装置として、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとを架構面内で直列に接続したものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。ここで、特許文献1に記載の間柱型の減衰装置では、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとが、1つの鉛直面内で水平方向(梁に平行な方向)の左右に配設された状態で、直列に接続されている(図17(a)参照)。特許文献2に記載の間柱型の減衰装置では、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとが、1つの鉛直面内で鉛直方向の上下に配設された状態で、直列に接続されている(図17(b)参照)。
【特許文献1】特開平09−268802号公報(図1)
【特許文献2】特開2004−300912号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的に、間柱型の減衰装置は、ブレース型の減衰装置よりも、建築物に生じた剪断力に対して対抗することが難しい。
【0008】
この理由は、間柱型の減衰装置の場合、減衰装置に作用した剪断力のために、1つの鉛直面に配設されている摩擦ダンパーと粘弾性ダンパーの間の接続部分に、負荷がかかりやすいためである。そして、このように、接続部分に負荷がかかると、減衰装置に変形が起こりやすくなる。結果的に減衰装置が変形してしまうと、所望の減衰力が得られなくなる。
【0009】
具体的には、特許文献1に記載の間柱型の減衰装置の場合、剪断力が減衰装置をその両端側から押すように作用したときに、接続部分を圧縮するような負荷が生じる(図17(a)の矢印参照)。これは、粘弾性ダンパー側から接続部分にかかる力の方向と、摩擦ダンパー側から接続部分にかかる力の方向とが向き合うためである。そして、このような負荷がかかると、減衰装置は、座屈しやすくなる。
【0010】
一方、特許文献2に記載の間柱型の減衰装置の場合、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとが鉛直方向上下に配設されているために、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の距離が長い。このため、このような減衰装置に剪断力が作用すると、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の接続部分に作用する曲げモーメントが大きい。
【0011】
ここで、曲げモーメントの大きさMは、減衰装置に作用する剪断力の大きさQと、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の距離Dの積で表される(つまり、M=Q×D)。例えば、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の距離Dが1mである場合において、1000kNの剪断力Qが減衰装置に作用したときには、接続部分に作用する曲げモーメントの大きさMは、1000kNmにも達する。このように大きな曲げモーメントがかかると、減衰装置は損壊に至る可能性が高い。また、損壊に至らないまでも、減衰装置には、接続部分から変形が生じ、その結果、十分な減衰力を確保できなくなる。
【0012】
本発明の目的は、減衰力を損なうような変形を抑制することができる間柱型の減衰装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、外力が作用した際に互いに水平方向に相対移動する上方部材と下方部材との間に設けられ、前記相対移動を減衰させるための減衰装置であって、前記上方部材に取り付けられた第1の板材と、前記下方部材に取り付けられた第2の板材と、前記第1の板材と前記第2の板材との間に設けられた第3の板材とを備え、前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの一方と、前記第3の板材の一方の面との間に、粘弾性ダンパーが設けられており、前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの他方と、前記第3の板材の他方の面との間に、摩擦ダンパーが設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の減衰装置によれば、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとが設けられている。このため、相対移動を効率的に減衰させることができる。
また、この減衰装置によれば、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとは、第3の板材の異なる面に設けられている。これにより、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間にある接続部分が圧縮されるような負荷が生じにくい。これにより、減衰装置の変形を防止することができる。
さらに、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の距離(水平方向及び鉛直方向における距離)は、第3の板材の厚み程度であるので、短い。このため、接続部分に生じる曲げモーメントも小さい。その結果、減衰装置の変形を抑制することができる。また、第3の板材が板状であるため、曲げモーメントに対する剛性を高めることができる。
【0015】
まとめると、本発明の減衰装置によれば、減衰力を損なうような変形を抑制することができる。さらに、本発明の減衰装置によれば、第1の板材及び第2の板材を備えているので、減衰装置を上方部材及び下方部材の間に設けるのが容易である。
【0016】
また、かかる減衰装置において、前記粘弾性ダンパーが前記相対移動を減衰させる際の減衰力の作用線と、前記摩擦ダンパーが前記相対移動を減衰させる際の減衰力の作用線とが、鉛直方向において互いに同じ高さとなるように設計されていること、が好ましい。
この減衰装置によれば、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の距離が短くなり、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の接続部分にかかる曲げモーメントが小さくなる。このため、減衰力を損なうような変形をより確実に抑制することができる。
【0017】
また、かかる減衰装置において、前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの前記他方と、前記第3の板材とをつなげるリンク材であって、前記摩擦ダンパーを貫通するように配置されたリンク材を備え、前記リンク材は、外力が作用した際に水平方向に移動した前記第3の板材が当接することで移動すること、が好ましい。
この減衰装置によれば、リンク材を備えるので、上方部材及び下方部材の相対移動を起こす要因となった振動のエネルギーは、第1の板材及び第2の板材のうちの一方から第3の板材を介して他方へと伝播しやすくなる。ここで、まず、第1の板材及び第2の板材のうちの一方から第3の板材に伝播しようする振動のエネルギーは、粘弾性ダンパーにより減衰される。その後、第3の板材を介して第1の板材及び第2の板材のうちの他方に伝播しようとする振動は、摩擦ダンパーにより減衰される。このため、振動をより確実に減衰させることができる。
【0018】
又は、かかる減衰装置において、外力が作用した際に水平方向に移動した前記第3の板材が当接する当接部材と、前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの前記他方と、前記第3の板材とをつなげるリンク材であって、前記摩擦ダンパーを貫通するように配置されたリンク材とを備え、前記当接部材は、前記第3の板材が当接したときに前記リンク材を移動させること、が好ましい。
この減衰装置によれば、上記同様に、リンク材を備えるので、振動を確実に減衰させることができる。ここで、当接部材を設けることにより、第3の板材に伝播した振動のエネルギーをリンク材に確実に伝播させることができる。
【0019】
さらに、かかる減衰装置において、前記当接部材を前記第3の板材とともに挟む第4の板材を備え、前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの前記一方と、前記第4の板材との間に、他の粘弾性ダンパーが設けられていること、がより好ましい。
この場合、上記当接部材は、粘弾性ダンパーや他の粘弾性ダンパーがつぶされるのを防止するためのスペーサーとしても機能することになる。また、このようにして、粘弾性ダンパーの設置面積を広くすることができる。これにより、振動をさらに効率的に減衰させることができる。
【0020】
また、かかる減衰装置において、前記リンク材は、前記摩擦ダンパーに設けられた或る貫通孔を通るとともに、前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの前記他方に設けられた、前記或る貫通孔よりも広い他の貫通孔を通るように、配置されていること、がより好ましい。
これにより、上記リンク材と摩擦ダンパーは連動しやすくなり、リンク材と第1の板材及び第2の板材のうちの他方とは連動しにくくなる。これにより、リンク材が摩擦ダンパーを貫通していても、摩擦ダンパーが有する摩擦面の滑動が許容される。これにより、摩擦ダンパーの減衰力を確実に確保することができる。
【0021】
また、かかる減衰装置において、前記リンク材は、前記第1の板材が移動する方向において、前記粘弾性ダンパーの両側に配置されていること、がより好ましい。
これにより、第3の板材がどちらに移動しても、リンク材を介して伝播される振動のエネルギーを確実に減衰させることができる。
【0022】
また、かかる減衰装置において、前記第3の板材は、当該第3の板材を短冊状に分割した複数の板材片で構成されており、前記板材片の各々には、前記粘弾性ダンパーを構成する粘弾性体が前記第3の板材の前記他方の面に固定されていること、が好ましい。
これにより、粘弾性体の固定(特には粘弾性体の均一な厚みでの配置)を容易に行うことができる。このため、粘弾性ダンパーを設置する領域が広い場合であっても、粘弾性体が均一の厚みで配置された第3の板材を容易に準備することができる。
【0023】
さらに、かかる減衰装置において、前記粘弾性ダンパーは、前記相対移動を減衰させる際の減衰力の作用線を含む水平面を中心にして鉛直方向上下に対称となるように配置されており、且つ、前記摩擦ダンパーは、前記水平面を中心にして鉛直方向上下に対称となるように配置されていること、がより好ましい。
この場合、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとを容易に設置することができる。
【0024】
又は、かかる減衰装置において、該減衰装置が前記摩擦ダンパーを前記板材片の数と同じ数有し、1つの前記板材片と1つの前記摩擦ダンパーとの組であって、互いに隣接する2組は、前記摩擦ダンパーの位置が隣接しないように配置されていること、がより好ましい。
このような配置が可能であるので、粘弾性ダンパー及び摩擦ダンパーの配置の自由度を高くすることができる。
【0025】
また、かかる減衰装置において、前記第1の板材と前記第2の板材は、鉛直方向に並ぶように配置されていること、が好ましい。
これにより、第3の板材を、鉛直方向及び水平方向において第1の板材及び第2の板材に近付けることができる。これにより、減衰装置の水平方向のサイズを小型化させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の減衰装置によれば、減衰力を損なうような変形を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1(a),図1(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る減衰装置が設置された建築物の概略的な構成を示す図であり、図1(a)は、建築物の主構造と減衰装置の関係を示す図であり、図1(b)は、図1(a)の線I(b)−I(b)に沿う断面図である。なお、図1(a)には建築物の床部分を示していない。
【0028】
図1(a),図1(b)に示す建築物1の主構造は、柱11と梁12である。柱11と梁12は、架構面を形成している。図1(a),図1(b)に示すように、建築物1の各階において、上方の梁(以下、「上梁」という)12aと、下方の梁(以下、「下梁」という)12bとの間の架構面には、間柱型の減衰装置100が設けられている。
【0029】
減衰装置100の上部と下部には、それぞれ、ベースプレート101,102があり、これらにより、減衰装置100は、上梁12a,下梁12b間に固定される。また、上下に連続する2つの階において、下の階にあるベースプレート101と、上の階にあるベースプレート102とは、梁12及び床部分(図1(b)参照)を介して、例えばアンカーボルト(図示せず)で固定される。これにより、複数の減衰装置100は、建築物1において、鉛直方向に並ぶように配設される。
【0030】
各減衰装置100は、建築物1に外力が作用した際に移動する上梁12aと下梁12bの、水平方向への相対移動を減衰させるために設けられている。本実施の形態では、上梁12aと下梁12bの相対移動の方向は、梁12a,12bに平行な方向(図に示す平行方向)について考えることとする。以下、このような減衰装置100の外観や構成などについて、詳細に説明する。
【0031】
図2(a)〜図2(d)は、図1(a),図1(b)に示す減衰装置100の外観を示す図であり、図2(a)は、正面図であり、図2(b)は、右側面図であり、図2(c)は、正面図(上面図)であり、図2(d)は、底面図である。図3は、図2(b)に示す減衰装置の分解図である。図4(a)〜図4(c)は、減衰装置の断面図であり、図4(a)は、中央部の横断面図であり、図4(b)は、図4(a)の線IV(b)−IV(b)に沿う縦断面図であり、図4(c)は、図4(a)の線IV(c)−IV(c)に沿う縦断面図である。なお、図2(c)、図2(d)、図3、及び図4(a)などには、ベースプレート101,102を示していない。ところで、減衰装置100の背面図は正面図とほぼ同一に現れ、また、減衰装置100の左側面図は右側面図と同一に現れる。
【0032】
図2(a)〜図4(c)に示すように、減衰装置100は、上方固定部材110と、下方固定板120と、2つの減衰機構200,200とを備える。上方固定部材110及び下方固定板120は、鉛直方向に並ぶように配置されている。また、減衰装置100は、下方固定板120と減衰機構200とをつなげるリンク材130を備える(図3参照)。ここで、上方固定部材110は、上梁12aにベースプレート101を介して取り付けられており、また、下方固定板120は、下梁12bにベースプレート102を介して取り付けられている。このようにして、減衰装置100は、上梁12aと下梁12bとの間に設けられている。
【0033】
上方固定部材110は、ベースプレート101に吊持される上方固定板111と、上方固定板111の下部に取り付けられる上方スペーサー(フィラープレート)112と、上方固定板111と及び減衰機構200を結合する結合部材113とから構成されている。本実施の形態では、結合部材113として、ボルト113aと、該ボルト113aに螺合するナット113bとを用いている。なお、上方固定板111とベースプレート101とは、一体的に構成された縦断面T字形の部材であってもよい。
【0034】
下方固定板120の下部は、ベースプレート102に取り付けられる。したがって、下方固定板120は、ベースプレート102を介して下梁12bに取り付けられた板材(第2の板材)である。下方固定板120の上部は、梁12a,12bに平行な方向における寸法が下部よりも大きくなっている。下方固定板120の上部の両端部には、複数の長孔121(図3,図9(a)などを参照)が形成されている。この長孔121は、貫通孔であり、リンク材130を通すために形成されたものである。なお、下方固定板120とベースプレート102とは、一体的に構成された縦断面T字形の部材であってもよい。
【0035】
リンク材130は、本実施の形態では、下方固定板120及び2つの減衰機構200,200を貫通するボルト131と、該ボルト131に螺合するナット132と、ボルト131の頭部と1つの減衰機構200との間に介装される皿ばね135とから構成されている。
【0036】
減衰機構200は、図2(a),図2(b)に示すように、上方固定部材110と下方固定板120との間に設けられている。ここで、上方固定部材110及び下方固定板120が鉛直方向に並ぶように配置されているので、減衰機構200は、鉛直方向及び水平方向において、上方固定部材110及び下方固定板120の近くに配置される。このように配置することで、減衰装置100の小型化が図られている。
【0037】
また、減衰機構200は、図3〜図4(c)に示すように、粘弾性ダンパーユニット300と、摩擦ダンパーユニット400とから構成されている。粘弾性ダンパーユニット300は、上方固定部材110に取り付けられている。摩擦ダンパーユニット400は、粘弾性ダンパーユニット300と下方固定板120との間に設けられている。粘弾性ダンパーユニット300と、摩擦ダンパーユニット400とは、リンク材130が双方を貫通することによってつながっている。
【0038】
2つの減衰機構200,200は、ボルト131の頭部及びナット132によって挟まれることで、締め付けられている。この減衰機構200の締め付けにより、各減衰機構200は、ボルト131の一端側(頭部側)及び他端側(ナット132側)から押圧された状態となる。また、押圧をより確実に行うために、皿ばね135によって、減衰機構200の締め付けを付勢している。
【0039】
続いて、減衰機構200の構成について詳細に説明する。2つの減衰機構200,200の構成は互いに同じであるので、主に、1つの減衰機構200について説明する。
図5は、図2(a)などに示す1つの減衰機構200が有する粘弾性ダンパーユニット300の構成を示す分解斜視図である。
【0040】
減衰機構200が有する粘弾性ダンパーユニット300は、図5や図4(a)〜図4(c)などに示すように、上方部材連動板310と、第1粘弾性体保持部材320とを備え、さらに、第2粘弾性体保持部材330と、スペーサー(フィラープレート)340とを備える。
【0041】
上方部材連動板310の上部は、上方固定部材110の結合部材113によって取り付けられる(図3参照)。したがって、上方部材連動板310は、上方固定部材110及びベースプレート101を介して上梁12aに取り付けられた板材(第1の板材)である。これにより、上方部材連動板310は、上梁12a、ベースプレート101、及び上方固定部材110などの上方部材が移動したときに連動する。また、上方部材連動板310の中央部から下部にかけては、第1粘弾性体保持部材320と第2粘弾性体保持部材330との間に配置される。
【0042】
第1粘弾性体保持部材320は、上方部材連動板310と下方固定板120との間であって、上方部材連動板310と摩擦ダンパーユニット400との間に設けられた板材(第3の板材)である。第1粘弾性体保持部材320は、図5などに示すように、これを短冊状に分割した複数枚の板材片320’で構成されている。図5に示す例では、第1粘弾性体保持部材320は、鉛直方向に並ぶ3枚の板材片320’で構成されている。各板材片320’には、リンク材130を通すための貫通孔が形成されている。また、各板材片320’の表面のうち、上方部材連動板310に対向する表面(例えば表面積5400cm2)には、第1の粘弾性体(viscoelastic material)321が均一な厚み(例えば3mm)で配置(固定)されている。つまり、第1の粘弾性体321は、上方部材連動板310と、第1粘弾性体保持部材320の摩擦ダンパーユニット400とは反対側の面との間に設けられている。
【0043】
第2粘弾性体保持部材330は、第1粘弾性体保持部材320に対向するように設けられた板材(第4の板材)である。本実施の形態では、第2粘弾性体保持部材330は、第1粘弾性体保持部材320とサイズが同じである。第2粘弾性体保持部材330は、図5などに示すように、これを短冊状に分割した複数枚の板材片330’で構成されている。図5に示す例では、第2粘弾性体保持部材330は、鉛直方向に並ぶ3枚の板材片330’で構成されている。各板材片330’には、リンク材130を通すための貫通孔が形成されている。また、各板材片330’の表面のうち、上方部材連動板310に対向する表面(例えば表面積5400cm2)には、第2の粘弾性体331が均一な厚み(例えば3mm)で配置(固定)されている。
【0044】
スペーサー340は、第1粘弾性体保持部材320と第2粘弾性体保持部材330との間に介装される板状部材である。スペーサー340には、貫通孔341が形成されており、この貫通孔341に上記リンク材130が通ることにより、スペーサー340はリンク材130に接触するか又は接触可能になっている。このように配置することにより、スペーサー340が梁12a,12bに平行な方向に移動すると、対応するリンク材130も移動するようになっている(後述)。本実施の形態では、スペーサー340の数は2つであり、第1粘弾性体保持部材320の長手方向及び第2粘弾性体保持部材330の長手方向の両側に設けられている。そして、2つのスペーサー340,340間に上方部材連動板310が配置される。つまり、スペーサー340は、上方部材連動板310が移動し得る方向の下流側に配置されている。
【0045】
スペーサー340の厚みは、上方部材連動板310の厚みよりも大きい。具体的には、スペーサー340の厚みは、上方部材連動板310の厚み(例えば19mm)と、第1の粘弾性体321の厚みと、第2の粘弾性体331の厚みの総和とほぼ等しくなるように設計されている。このため、スペーサー340は、第1粘弾性体保持部材320と第2粘弾性体保持部材330との間の距離を保つ役割を果たしている。これにより、スペーサー340は、粘弾性体321,331がリンク材130の締め付け力によって押しつぶされないように粘弾性体321,331を保護している。
【0046】
また、スペーサー340と上方部材連動板310との間には、図4(a)などに示すように、クリアランスが設けられている。クリアランスの大きさは、粘弾性体321,331の最大変形量以内に設定されている。なお、粘弾性体321,331の最大変形量は、梁12a,12bに平行な方向に1cm程度である。ここで、各スペーサー340は、移動した上方部材連動板310が当接する当接部材としても機能する(後述)。
【0047】
上述したように構成された粘弾性ダンパーユニット300では、上方部材連動板310が第1粘弾性体保持部材320と第2粘弾性体保持部材330との間に挟まれることで、上方部材連動板310が粘弾性体321,331に接触した状態が維持されている。そして、第1粘弾性体保持部材320と第2粘弾性体保持部材330との間にスペーサー340を設けることで、上方部材連動板310の移動が許容されている。ここで、上梁12aなどの上方部材の移動に伴って上方部材連動板310が移動しようとすると、その移動は、粘弾性体321,331によって減衰(規制)される。このようにして、粘弾性ダンパーユニット300は、粘弾性ダンパーとして機能する。
【0048】
ところで、図5において、第1粘弾性体保持部材320の近傍に示す第1重心作用レベルは、第1の粘弾性体321の中心線うち水平方向に沿う中心線を示している。そして、この中心線に沿って、第1の粘弾性体321が上方部材の移動を減衰させる際の減衰力の作用線が配置されることになる。同様に、第2粘弾性体保持部材330の近傍に示す第2重心作用レベルは、第2の粘弾性体331の中心線うち水平方向に沿う中心線を示している。そして、この中心線に沿って、第2の粘弾性体331が上方部材の移動を減衰させる際の減衰力の作用線が配置されることになる。ここで、本実施の形態では、第1粘弾性体保持部材320と第2粘弾性体保持部材330とは、サイズが互いに同じであり、鉛直方向において同じ位置で互いに対向するように配置されている。したがって、減衰装置100は、第1の粘弾性体321の重心作用レベルと第2の粘弾性体331の重心作用レベルが、同じ水平面にあるように、つまり、鉛直方向において同じ高さとなるように、設計されていると云える。
【0049】
図6は、1つの減衰機構200が有する摩擦ダンパーユニット400の構成を示す分解斜視図である。なお、図6には、粘弾性ダンパーユニット300の第1粘弾性体保持部材320も示されている。
【0050】
減衰機構200が有する摩擦ダンパーユニット400は、図6や図4(a)〜図4(c)などに示すように、摩擦板410と、押し当て板420とを備える。図6に示す例では、摩擦板410と押し当て板420の組は、2組あり、下方固定板120の上部表面においてその長手方向の両側に設けられている。摩擦ダンパーユニット400は、これを貫通するリンク材130によって脱落が防止されている。
【0051】
摩擦板410は、下方固定板120の上部の表面に固定されている(図6参照)。摩擦板410には、複数の貫通孔411が形成されている。貫通孔411は、下方固定板120に形成された長孔121に連通する。摩擦板410は、摩擦係数の大きい材料で構成されており、厚みは、例えば3mmである。
【0052】
押し当て板420は、摩擦板410と同じサイズであり、摩擦板410と対向する。押し当て板420には、摩擦板410に形成された貫通孔411及び下方固定板120の長孔121よりも狭い貫通孔421が形成されている。貫通孔421は、貫通孔411を介して長孔121に連通する。押し当て板420は、ステンレスなどの金属で構成されており、摩擦板410に当接する側の表面(摩擦面)が研磨されている。押し当て板420の厚みは、例えば1.5mmである。
【0053】
上述したように構成された摩擦ダンパーユニット400は、リンク材130によって押圧された第1粘弾性体保持部材320と下方固定板120とによって押圧されている。これにより、摩擦板410と押し当て板420とが互いに接触した状態が維持されている。このような押圧によって、第1粘弾性体保持部材320や下方固定板120が移動しようとすると、摩擦板410と押し当て板420との間で摩擦力が生じる。この結果、摩擦ダンパーユニット400は、摩擦ダンパーとして機能する。
【0054】
ここで、摩擦ダンパーユニット400では、摩擦板410の貫通孔411(下方固定板120の長孔121)が押し当て板420の貫通孔421よりも広く形成されており、これらを貫通するようにリンク材130が配置されている。これにより、リンク材130と摩擦ダンパーユニット400の押し当て板420は連動しやすくなり、リンク材130と下方固定板120とは連動しにくくなっている。これにより、リンク材130が摩擦ダンパーユニット400を貫通していても、摩擦ダンパーユニット400が有する摩擦面の滑動が許容される。これにより、摩擦ダンパーの減衰力を確実に確保することができる。なお、摩擦面の滑動距離は、架構面に平行な方向における長孔121の寸法に応じて決まる。
【0055】
ところで、図6において、摩擦板410の近傍に示す第3重心作用レベルは、摩擦板410と押し当て板420の当接面(摩擦面)の中心線のうち水平方向に沿う中心線を示している。そして、この中心線に沿って、摩擦ダンパーが上方部材の移動を減衰させる際の減衰力の作用線が配置されることになる。図6に示す第4重心作用レベルも同様に、もう一方の摩擦ダンパーの減衰力の作用線が配置される、摩擦面の中心線である。ここで、2つの摩擦ダンパーは下方固定板120において鉛直方向に同じ高さとなるように固定されるため、第3の重心作用レベルと第4の重心作用レベルは、互いに一致しており、鉛直方向において同じ高さである。さらに、本実施の形態では、1つの粘弾性ダンパーユニット300が備える粘弾性体321,331の重心作用レベルと、摩擦ダンパーの重心作用レベルとが、互いに同じ水平面に含まれるように、つまり、鉛直方向において同じ高さとなるように、設計されている。
【0056】
以上の説明から分かるように、1つの減衰機構200は、2つの粘弾性ダンパーと、2つで1組の摩擦ダンパーとを備えており、2つの粘弾性ダンパーと一方の摩擦ダンパーは、リンク材130によってつながっている。言い換えると、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとは直列に接続されている。そして、減衰装置100は、上述したような減衰機構200を2つ備えている。これにより、建築物1に生じた振動を効率的に減衰させることができる(後述)。
【0057】
また、上述したような減衰装置100によれば、粘弾性ダンパー(粘弾性体321,331)と摩擦ダンパー(摩擦ダンパーユニット400)とが、第1粘弾性体保持部材320の異なる面に設けられている。このため、それらを鉛直方向上下に配置する必要がない。これにより、減衰装置100を小型化させることができる。
【0058】
さらには、1つの減衰機構200において、2つの粘弾性ダンパーによる重心作用レベルと、2つで1組の摩擦ダンパーユニットによる重心作用レベルとが、鉛直方向において同じ高さとなるように設計されている。これにより、後述する曲げモーメントを小さくすることができる(後述)。本実施の形態では、重心作用レベルが鉛直方向において同じ高さとなるようにするために、粘弾性ダンパーを或る水平面(例えば、第1粘弾性体保持部材320の水平方向の中心線を含む水平面)を中心にして鉛直方向上下に対称となるように配置し、且つ、その或る水平面を中心にして、鉛直方向上下に対称となるように摩擦ダンパーを配置している。このように配置すると、粘弾性ダンパー及び摩擦ダンパーの設置が容易であるとともに、それらの重心作用レベルを容易に同じにすることができる。
【0059】
また、この減衰装置100によれば、上方固定部材110及び上方部材連動板310、並びに下方固定板120を備えているので、減衰装置100を上梁12a及び下梁12bの間に設けるのが容易である。
【0060】
次に、減衰装置100の動作について、詳細に説明する。
建築物1に、風や地震などによって外力が作用して、振動が発生すると、上梁12a及び下梁12bは、互いに水平方向に相対移動する。このとき、上方部材連動板310も、梁12aの移動に伴って同じ方向に移動しようとする。しかし、上方部材連動板310の移動は、粘弾性ダンパーユニット300が有する粘弾性体321,331の減衰力によって規制されている。これにより、建築物1に発生した振動を減衰させることができる。具体的には、梁12a,12bの、それらに平行な方向への相対移動を減衰させることができる。
【0061】
ここで、振動が非常に大きい場合には、上方部材連動板310は、その移動方向の下流側にあるスペーサー340との間にあるクリアランスの大きさ以上に移動し、最終的には、そのスペーサー340に当接する。ここで、1つの減衰機構200が備える2つのスペーサー340は、上方部材連動板310の移動方向において粘弾性ダンパーの両側に配置されているので、上方部材連動板310は梁12a,12bに平行な方向に移動すると、一方のスペーサー340に当接するようになっている。
【0062】
そして、上方部材連動板310は、スペーサー340に当接すると、その移動を停止する。このとき、そのスペーサー340には、上方部材連動板310から、振動のエネルギーが伝播される。このため、スペーサー340は、その貫通孔341を通るリンク材130を上方部材連動板310が移動した方向と同じ方向に向かって移動させることになる。このとき、上方部材連動板310が当接したスペーサー340の貫通孔341を通っていない他のリンク材130も連動する。すなわち、全てのリンク材130が移動する。このため、リンク材130及び摩擦ダンパーユニット400も、スペーサー340と同様に、上方部材連動板310が移動する方向において、粘弾性体321,331の両側に配置されている。これにより、上方部材連動板310が梁12a,12bに平行な方向のどちらに移動しても、摩擦ダンパーユニット400は、リンク材130を介して伝播される振動のエネルギーを確実に減衰させることができる。
【0063】
リンク材130は、下方固定板120の長孔121に当接するまで、摩擦ダンパーユニット400の押し当て板420を移動させる。このとき、押し当て板420と摩擦板410との間で摩擦力が発生し、この摩擦力によって、建築物1に発生した振動が減衰される。
【0064】
このようにして、建築物1に発生した振動は、粘弾性ダンパーや摩擦ダンパーによって効率的に減衰される。本実施の形態では、粘弾性ダンパーが減衰させることができなかった振動(地震などによる大きな振動)が摩擦ダンパーによって減衰されるので、粘弾性ダンパーの粘弾性体321,331が過度に変形するのを防止することができる。このため、粘弾性ダンパーの長寿命化を図ることができる。
【0065】
ここで、減衰装置100に生じ得る変形について検討する。
図7(a),図7(b)は、減衰装置100と、上梁12a及び下梁12bとの関係を模式的に示す図(モデル)であり、図7(a)は、上梁12a及び下梁12bが相対移動する前の状態を示しており、図7(b)は、上梁12a及び下梁12bが相対移動したときの状態を示している。
【0066】
本実施の形態の減衰装置100は、簡略的には、図7(a)に示すように、上梁12aに取り付けられた2つの粘弾性ダンパーと、下梁12bに取り付けられた1組の摩擦ダンパーとが直列に接続されたもの(減衰機構200)を2組備えている。2つの粘弾性ダンパーと1組の摩擦ダンパーとは、双方とも、上梁12aと下梁12bとの間に配置されているが、それぞれ、上方固定部材110及び下方固定板120を含む1つの鉛直面に垂直な方向(面外方向)に配置されている。したがって、粘弾性ダンパーを含む鉛直面と、摩擦ダンパーを含む鉛直面とは互いに異なっている。なお、これは、粘弾性体321と摩擦ダンパーユニット400とを第1粘弾性体保持部材320の異なる面に設けることで実現されている(図3などを参照)。
【0067】
そして、建築物1に外力が作用すると、架構面には剪断力が作用する。その結果、例えば、上梁12aは、図7(b)に示す矢印A方向に移動し、下梁12bは矢印B方向に移動する。
【0068】
このとき、粘弾性ダンパーは、上梁12aの移動に伴って矢印A方向に移動しようとし、摩擦ダンパーは、下梁12bの移動に伴って矢印B方向に移動しようとする。このため、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーの間にある接続部分には、曲げモーメントが発生する。
【0069】
しかし、本実施の形態では、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の距離Dは、両者を鉛直方向上下に配設した場合に比較して、非常に短い。これは、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとを第1粘弾性体保持部材320の異なる面に配置することで、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとを、第1粘弾性体保持部材320に垂直な方向において、また、梁12a,12bに平行な方向において、互いに近づけているためである。さらに、第1粘弾性体保持部材320に垂直な方向に関していうと、上述したように第1〜第4重心作用レベルを鉛直方向において同じ高さとなるようにすることで、実質的に、上記距離Dは、第1粘弾性体保持部材320に垂直な方向における距離とみなすことができる。すなわち、上記距離Dは、第1粘弾性体保持部材320の厚み程度(例えば30mm)である。
【0070】
また、本実施の形態では、減衰機構200が1つにつき、粘弾性ダンパーが2つ設けられているので、架構面に作用する剪断力の大きさをQとすると、1つの粘弾性ダンパーに作用する剪断力の大きさは、Q/2である。
【0071】
具体例を挙げると、上記距離Dを30mmとした場合において、1000kNの剪断力Qが架構面に作用したときは、2つの粘弾性ダンパーと1組の摩擦ダンパーとの間の接続部分にかかる曲げモーメントの大きさM(=D×Q/2)は、15kNmである。15kNmという曲げモーメントは非常に小さい。
【0072】
したがって、本実施の形態では、減衰装置100に生じ得る変形の変形量は非常に小さい。つまり、本実施の形態のように、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとを第1粘弾性体保持部材320の異なる面に配置することで、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の距離Dを小さくすると、減衰装置100の変形を抑制することができる。また、本実施の形態では、第1粘弾性体保持部材320を板状にすることで、曲げモーメントに対する剛性を高めている。
【0073】
また、本実施の形態では、剪断力が減衰装置100にどのように作用しても(つまり、上梁12aと下梁12bがどのように相対移動しても)、接続部分を圧縮するような負荷が生じにくい構造となっている。これにより、減衰装置100の座屈を防止することができる。
【0074】
次に、図1(a),図1(b)に示した減衰装置100の設置方法について説明する。
図8は、減衰装置100の設置手順を示すフローチャート(工程図)である。
【0075】
まず、ステップS10では、上梁12aに設置されているベースプレート101に上方固定部材110を取り付ける。このとき設置される上方スペーサー112の厚みは、摩擦ダンパーユニット400の厚みと、第1粘弾性体保持部材320の厚みと、第1粘弾性体保持部材320の表面に配置される第1の粘弾性体321の厚みの総和に等しくなるように予め設計されている。また、このとき、上方スペーサー112は、結合部材113で結合されず、図9(a),図9(b)に示すように、ピンなどの仮留め部材によって仮留めされる。
【0076】
次に、ステップS20では、下梁12bに設置されているベースプレート102に下方固定板120を取り付ける(図9(a),図9(b)参照)。続いて、摩擦ダンパーユニット400を取り付ける(ステップS30)。具体的には、まず、摩擦板410をベースプレート102に固定する。貼り付けてもよい。このとき、摩擦板410の貫通孔411の位置は、下方固定板120の長孔121の位置に揃えられる。次に、押し当て板420の貫通孔421と、摩擦板410の貫通孔411や下方固定板120の長孔121に仮留め部材を通すことで、押し当て板420の仮留めを行う。図10(a),図10(b)には、2つで1組の摩擦ダンパーユニット400が2組取り付けられた状態が示されている。なお、ステップS20〜S30において、予め摩擦板410が固定された下方固定板120を用いてもよい。
【0077】
続くステップS40では、粘弾性ダンパーユニット300を取り付ける。
この取り付けに先立って、図11(a)〜図11(c)に示すような粘弾性ダンパーユニット300aを工場などで製造しておく。この粘弾性ダンパーユニット300aは、粘弾性ダンパーユニット300を構成する上方部材連動板310、第1粘弾性体保持部材320、第2粘弾性体保持部材330、及びスペーサー340を準備し、準備した第1粘弾性体保持部材320と第2粘弾性体保持部材330との間に、上方部材連動板310を配置し、上方部材連動板310、第1粘弾性体保持部材320、及びスペーサー340を仮留め部材で仮留めすることで製造される。
【0078】
ここで、第1粘弾性体保持部材320及び第2粘弾性体保持部材330は、それぞれ、複数の板材片320’,330’で構成されているので、互いに対向する一対の板材片320’,330’が仮留め部材で仮留めされる。このようにすることで、粘弾性体321,331の設置面積が広い場合であっても、均一な厚みで粘弾性体321,331を配置することができる。つまり、粘弾性体321,331の固定が容易である。このため、粘弾性体321,331が均一の厚みで配置された第1粘弾性体保持部材320や第2粘弾性体保持部材330を容易に準備することができる。
【0079】
そして、上記粘弾性ダンパーユニット300aを、上方スペーサー112の貫通孔に通されている仮留め部材と、押し当て板420の貫通孔421に通されている仮留め部材にひっかけることで、粘弾性ダンパーユニット300の仮留めを行う。このとき、粘弾性ダンパーユニット300aの仮留め部材は、押し当て板420の貫通孔421に通される。これらにより、粘弾性ダンパーユニット300aの脱落が防止される。このため、より安全に仮留めを行うことができる。なお、仮留め部材の位置が重複したときは、一方の仮留め部材を撤去すればよい。また、全ての孔に仮留め部材を通す必要はない。図12(a),図12(b)には、2つの粘弾性ダンパーユニット300a,300aが仮留めされた後の状態が示されている。
【0080】
最後に、減衰装置100の本固定を行う(ステップS50)。具体的には、まず、仮留め部材が通されていない上方スペーサー112の孔に、結合部材113のボルト113aを通して、ナット113bで締め付ける。これにより、上方部材連動板310の脱落が確実に防止される。続いて、皿ばね135と、仮留め部材が通されていない下方固定板120の長孔121に、リンク材130のボルト131を通して、ナット132で締め付ける。その後、仮留め部材を撤去しながら、対応する結合部材113やリンク材130を取り付ける。このようにして、本固定を終了する。
【0081】
以上のような手順で、減衰装置100は設置される。設置された状態は、図1(a)や図1(b)に示した通りである。このように、減衰装置100は、分解した状態から、順次設置することが可能であるため、設置が容易である。
【0082】
なお、上述した第1の実施の形態では、粘弾性ダンパーユニット300を構成する第2粘弾性体保持部材330は、第1粘弾性体保持部材320とサイズが同じであるとしたが、同じでなくてもよい。図13には、第2粘弾性体保持部材330の一部を切り欠いた第2粘弾性体保持部材330aを備える減衰装置100aの一例が上面図として示されている。図13に示す第2粘弾性体保持部材330aでは、第2粘弾性体保持部材330の長手方向両端部がスペーサー340の端縁部の近くまで切り欠かれている。このため、対応するリンク材130のボルト131の軸部の長さも短くしている。これらのようにすることで、省スペース化(つまり、減衰装置100の小型化)を図ることが可能である。
【0083】
また、第1の実施の形態では、スペーサー340を設けたが、設けなくてもよい。この場合には、上方部材連動板310は、移動したときに、リンク材130に直接当接して、リンク材130を移動させることになる。しかし、スペーサー340を設けることにより、上方部材連動板310を確実に停止させることができると共に、振動のエネルギーを伝播させやすくすることができるので、スペーサー340を設けることが好ましい。
【0084】
次に、本発明の第2の実施の形態及び第3の実施の形態について説明する。
第2,第3の実施の形態に係る減衰装置も、間柱型のものであり、上述した第1の実施の形態と同様に、直列に接続された、粘弾性ダンパーユニットと摩擦ダンパーユニットとを備える。第2,第3の実施の形態では、粘弾性ダンパーユニットの配置や摩擦ダンパーユニットの配置が第1の実施の形態と異なるので、異なる点を中心に説明する。また、同様の構成については、同様の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0085】
図14は、第2の実施の形態に係る減衰装置の構成の一部を示す分解斜視図である。
図14に示す減衰装置100bは、減衰機構200bを2つ備えているが、図14では、1つの減衰機構200bの図示が省略されている。各減衰機構200bは、第1の実施の形態で示したような第2粘弾性体保持部材330を備えておらず、このため、上方部材連動板310bの一方の面は露出している。しかし、上方部材連動板310bの他方の面は、第1の実施の形態と同様に、粘弾性ダンパーユニット300bの第1の粘弾性体321bに接触している。
【0086】
第1の粘弾性体321bは、第1の実施の形態の場合と同様に、第1粘弾性体保持部材320’が上方部材連動板310bに対向する面積に合わせて配設されている。図14に示す例では、第1の粘弾性体321bの設置面積は、9000cm2であり、第1粘弾性体保持部材320bは、これを短冊状に分割した5枚の板材片320b’で構成されている。
【0087】
また、図14に示す減衰装置100bにおいて、摩擦ダンパーユニット400bは、上方部材連動板310がリンク材に当接することで、作動する。ここで、本実施の形態では、第1の実施の形態で示したような第2粘弾性体保持部材330を備えていないため、リンク材(図示せず)は、第1の粘弾性体321bを貫通しない位置に配置される。このため、第1の実施の形態で示したようなスペーサー340を設ける必要をなくすことができる。これによっても、減衰装置100bの小型化を図ることができる。
【0088】
また、本実施の形態でも、粘弾性ダンパーの重心作用レベルと、摩擦ダンパーの重心作用レベルは、鉛直方向において同じ高さとされている。さらに、第1の実施の形態と同様に、第1の粘弾性体321bや2つで1組の摩擦ダンパーユニット400b,400bは、それぞれ、対応する重心作用レベルを含む水平面を中心にして鉛直方向上下に対称となるように配置されている。このようにすることにより、第1の実施の形態と同様に、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の距離が短くされている。
【0089】
本実施の形態によっても、上梁12a及び下梁12bの相対移動を、第1の粘弾性体321bの設置面積や摩擦ダンパーユニット400bの設置面積に応じて、減衰させることができる。
【0090】
図15は、第3の実施の形態に係る減衰装置の構成の一部を示す分解斜視図である。本実施の形態に係る減衰装置は、第2の実施の形態に係る減衰装置(図14の減衰装置100b)において、摩擦ダンパーユニット400bの配置を変更した例に相当する。具体的には、摩擦ダンパーは、その重心作用レベルを含む水平面を中心にして鉛直方向上下に対称となるように配置されていない。
【0091】
図15に示すように、本実施の形態に係る減衰装置100cは、摩擦ダンパーユニット400cが、複数の小型の摩擦ダンパーユニット400c’(小型の摩擦板410c’及び小型の押し当て板420c’)で構成されており、図15に示すように、小型の摩擦ダンパーユニット400c’は、個別に配置されている。図15に示す例では、小型の摩擦ダンパーユニット400c’の数は10個である。なお、10個分の小型の摩擦ダンパーユニット400c’の設置面積(総面積)は、第2の実施の形態と同等である。
【0092】
また、この減衰装置100cは、小型の摩擦ダンパーユニット400c’を個別に配置したことに応じて、図15に示すように、粘弾性ダンパーユニット300cの配置や構成も変更されている。具体的には、粘弾性ダンパーユニット300cは、小型の摩擦ダンパーユニット400c’の数と同じ数(10枚)の板材片320c’で構成されており、鉛直方向に2列に並ぶように配置されている。なお、第1の粘弾性体321cの設置面積(総面積)は、第2の実施の形態と同等である。
【0093】
粘弾性ダンパー及び摩擦ダンパーは、より具体的には、1つの小型の摩擦ダンパーユニット400c’と、1つの板材片320c’とを1組として、互いに隣接する2組が、小型の摩擦ダンパーユニット400c’の位置が隣接しないように、配置されている。このように、1つの小型の摩擦ダンパーユニット400c’と、1つの板材片320c’とを1組として考えて、粘弾性ダンパー及び摩擦ダンパーを配置することができるので、配置の自由度が高い。また、粘弾性ダンパー及び摩擦ダンパーの設置を個別に行うことができるので、減衰装置100cが大型であっても設置が容易である。また、本実施の形態では、図15に示すように粘弾性ダンパー及び摩擦ダンパーを配置しても、粘弾性ダンパーの重心作用レベルと摩擦ダンパーの重心作用レベルは、鉛直方向において同じ高さにしている。これにより、第1の実施の形態や第2の実施の形態と同様に、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとの間の距離を短くしている。
【0094】
また、図15に示す例では、上方部材連動板310c及び第1粘弾性体保持部材320cに、それぞれ、長孔315,325が形成されている。長孔315,325は、小型の摩擦ダンパーユニット400c’を貫通するリンク材の皿ばね(図示せず)が梁12a,12bに平行な方向に移動できるようにするために形成されたものである。また、図15には示していないが、他方の減衰機構200cにおいては、リンク材のナット(図示せず)が梁12a,12bに平行な方向に移動可能するための長孔が上方部材連動板310c及び第1粘弾性体保持部材320cに形成されている。本実施の形態では、上方部材連動板310cがリンク材の皿ばねやボルトの軸部を移動させることで、摩擦ダンパーを機能させている。また、長孔315,325を形成することにより、リンク材の締め付け力によって、粘弾性体321cが押しつぶされるのを防止することができる。
【0095】
本実施の形態によれば、粘弾性ダンパーユニット300cの設置面積及び第1の粘弾性体321cの設置面積が第2の実施の形態と同じであるので、第2の実施の形態と同等の効果を奏することができる。つまり、上梁12a及び下梁12bの相対移動を、第1の粘弾性体321cの設置面積や摩擦ダンパーユニット400cの設置面積に応じて、減衰させることができる。
【0096】
ところで、第3の実施の形態では、摩擦ダンパーを機能させるために、長孔315,325を形成し、上方部材連動板310cに、リンク材の皿ばねなどを移動させている。この考え方を利用すると、摩擦ダンパーを、粘弾性ダンパーがリンク材の締め付け力によって押しつぶされることがないように、粘弾性ダンパーの鉛直方向上下に配置することが可能となる。言い換えると、第1実施の形態(図16(a)参照)のように、第1の粘弾性体321と摩擦ダンパーユニット400とが第1粘弾性体保持板320の長手方向(梁12a,12bの移動方向)の左右に並ぶように配置する必要はなく、図16(b)に示すように、第1粘弾性体保持板320dの鉛直方向上下に、第1の粘弾性体321dと摩擦ダンパーユニット400dとが並ぶように配置してもよい。
【0097】
なお、上述した第1〜第3の実施の形態では、減衰装置100が2つの減衰機構200,200を備えるとしたが、減衰装置が備える減衰機構の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0098】
また、上述した各実施の形態では、粘弾性体を第1粘弾性体保持板や第2粘弾性体保持板に固定したが、これに代えて、粘弾性体を上方部材連動板に固定してもよい。
【0099】
また、上述した各実施の形態では、摩擦板に貫通孔を形成しているが、貫通孔を形成せずに、複数枚の摩擦板を下方固定板120の長孔121の周囲に配置してもよい。また、摩擦板を第1粘弾性体保持板側に配置し、且つ、押し付け板を下方固定板側に配置することに代えて、摩擦板を第1粘弾性体保持板側に配置し、且つ、押し付け板を下方固定板側に配置してもよい。
【0100】
また、上述した各実施の形態では、粘弾性ダンパーを、上方部材連動板(第1の板材)と第1粘弾性体保持板(第3の板材)の一方の面との間に設け、且つ、摩擦ダンパーを、下方板固定板(第2の板材)と第1粘弾性体保持板の他方の面との間に設けている。しかし、これに代えて、粘弾性ダンパーを、下方板固定板と第1粘弾性体保持板の上記他方の面との間に設け、摩擦ダンパーを、上方部材連動板と第1粘弾性体保持板の上記一方の面との間に設けてもよい。
【0101】
また、上述した各実施の形態において、リンク材の皿ばねを省略してもよい。この場合、摩擦ダンパーユニットは、ボルト及びナットの締め付け力によって摩擦ダンパーとして機能することになる。また、結合部材113として、ボルト113a及びナット113bを用いるとしたが、他の部材を用いてもよい。又は、結合部材113を用いることに代えて、上方部材連動板と上方固定部材とを溶接してもよい。
【0102】
建築物1は、鉄骨(S)造であっても、鉄筋コンクリート(RC)造であっても、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造であってもよい。ただし、S造の建築物では、ブレース型の減衰装置の設置が容易であるため、上述したような、本実施の形態に係る間柱型の減衰装置は、RC造やSRC造の建築物への設置に適していると云える。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る減衰装置が設置された建築物の概略的な構成を示す図であり、(a)は、建築物の主構造と減衰装置の関係を示す図であり、(b)は、図1(a)の線I(b)−I(b)に沿う断面図である。
【図2】減衰装置の外観を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、右側面図であり、(c)は、正面図(上面図)であり、(d)は、底面図である。
【図3】図2(b)に示す減衰装置の分解図である。
【図4】減衰装置の断面図であり、(a)は、中央部の鉛直方向に沿う横断面図であり、(b)は、図4(a)の線IV(b)−IV(b)に沿う縦断面図であり、(c)は、図4(a)の線IV(c)−IV(c)に沿う縦断面図である。
【図5】1つの減衰機構が有する粘弾性ダンパーユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図6】1つの減衰機構が有する摩擦ダンパーユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図7】減衰装置と、上梁及び下梁との関係を模式的に示す図(モデル)であり、(a)は、上梁及び下梁が相対移動する前の状態を示しており、(b)は、上梁及び下梁が相対移動したときの状態を示している。
【図8】減衰装置の設置手順を示すフローチャート(工程図)である。
【図9】図8のステップS10〜S20において、上方固定部材の上方スペーサーが仮留めされた状態を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は、右側面図である。
【図10】ステップS30において、摩擦ダンパーが仮留めされた状態を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、右側面図である。
【図11】ステップS40において取り付けられる粘弾性ダンパーを示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、右側面図であり、(c)は、底面図である。
【図12】ステップS40において、粘弾性ダンパーが仮留めされた状態を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、右側面図である。
【図13】図5に示す第2粘弾性体保持板の変形例を備える減衰装置の外観を示す上面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る減衰装置の構成の一部を示す分解斜視図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る減衰装置の構成の一部を示す分解斜視図である。
【図16】粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーの配置例を説明するための図であり、(a)は、第1粘弾性体保持板の長手方向左右に並べた場合を、(b)は、第1粘弾性体保持板の鉛直方向上下に並べた場合を示している。
【図17】従来の減衰装置と上方部材及び下方部材との関係を模式的に示す図(モデル)であり、(a)は、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとを架構面内で上方部材及び下方部材に平行な方向の左右に配設した例を示しており、(b)は、粘弾性ダンパーと摩擦ダンパーとを架構面内で鉛直方向の上下に配設した例を示している。
【符号の説明】
【0104】
1 建築物
11 柱
12,12a,12b 梁
100,100a,100b,100c 減衰装置
101,102 ベースプレート
110,110b,110c 上方固定部材
120,120b,120c 下方固定板(第2の板材)
121,315,325 長孔
130 リンク材
200,200b,200c 減衰機構
300,300a,300b,300c 粘弾性ダンパーユニット
310,310b,310c 上方部材連動板(第1の板材)
320,320b,320c,320d 第1粘弾性体保持部材(第3の板材)
321,321b,321c,331 粘弾性体
320’,320b’,320c’,330’ 板材片
330,330a 第2粘弾性体保持部材(第4の板材)
340 スペーサー(フィラープレート)
400,400b,400c,400c’,400d 摩擦ダンパーユニット
410,410b,410c’ 摩擦板
420,420b,420c’ 押し当て板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力が作用した際に互いに水平方向に相対移動する上方部材と下方部材との間に設けられ、前記相対移動を減衰させるための減衰装置であって、
前記上方部材に取り付けられた第1の板材と、
前記下方部材に取り付けられた第2の板材と、
前記第1の板材と前記第2の板材との間に設けられた第3の板材とを備え、
前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの一方と、前記第3の板材の一方の面との間に、粘弾性ダンパーが設けられており、
前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの他方と、前記第3の板材の他方の面との間に、摩擦ダンパーが設けられていることを特徴とする減衰装置。
【請求項2】
前記粘弾性ダンパーが前記相対移動を減衰させる際の減衰力の作用線と、前記摩擦ダンパーが前記相対移動を減衰させる際の減衰力の作用線とが、鉛直方向において互いに同じ高さとなるように設計されていることを特徴とする請求項1に記載の減衰装置。
【請求項3】
前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの前記他方と、前記第3の板材とをつなげるリンク材であって、前記摩擦ダンパーを貫通するように配置されたリンク材を備え、
前記リンク材は、外力が作用した際に水平方向に移動した前記第3の板材が当接することで移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の減衰装置。
【請求項4】
外力が作用した際に水平方向に移動した前記第3の板材が当接する当接部材と、
前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの前記他方と、前記第3の板材とをつなげるリンク材であって、前記摩擦ダンパーを貫通するように配置されたリンク材とを備え、
前記当接部材は、前記第3の板材が当接したときに前記リンク材を移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の減衰装置。
【請求項5】
前記当接部材を前記第3の板材とともに挟む第4の板材を備え、
前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの前記一方と、前記第4の板材との間に、他の粘弾性ダンパーが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の減衰装置。
【請求項6】
前記リンク材は、前記摩擦ダンパーに設けられた或る貫通孔を通るとともに、前記第1の板材及び前記第2の板材のうちの前記他方に設けられた、前記或る貫通孔よりも広い他の貫通孔を通るように、配置されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の減衰装置。
【請求項7】
前記リンク材は、前記第1の板材が移動する方向において、前記粘弾性ダンパーの両側に配置されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の減衰装置。
【請求項8】
前記第3の板材は、当該第3の板材を短冊状に分割した複数の板材片で構成されており、前記板材片の各々には、前記粘弾性ダンパーを構成する粘弾性体が前記第3の板材の前記他方の面に固定されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の減衰装置。
【請求項9】
前記粘弾性ダンパーは、前記相対移動を減衰させる際の減衰力の作用線を含む水平面を中心にして鉛直方向上下対称となるように配置されており、且つ、前記摩擦ダンパーは、前記水平面を中心にして鉛直方向上下対称となるように配置されていることを特徴とする請求項8に記載の減衰装置。
【請求項10】
前記摩擦ダンパーを前記板材片の数と同じ数有し、
1つの前記板材片と1つの前記摩擦ダンパーとの組であって、互いに隣接する2組は、前記摩擦ダンパーの位置が隣接しないように配置されていることを特徴とする請求項8に記載の減衰装置。
【請求項11】
前記第1の板材と前記第2の板材は、鉛直方向に並ぶように配置されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の減衰装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−228834(P2009−228834A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76453(P2008−76453)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】