説明

減速機、減速機付モータおよび出力ギヤ

【課題】出力ギヤの強度を向上する技術を提供する。
【解決手段】出力ギヤ22は、出力ギヤの回転軸方向の一端側に形成され、被駆動部材と噛み合って被駆動部材を駆動する歯部22aと、出力ギヤの回転軸方向の他端側に形成され、ウォームホイールの回転を出力ギヤに伝達する伝達機構の一部に固定されるフランジ部22bと、ウォームホイールを回転自在に支持する支持軸が貫通する貫通孔22cと、を備える。フランジ部22bは、該フランジ部の外周部に、周方向に交互に並ぶとともに軸方向に延びている山部22d1と谷部22d2とからなるセレーション部22dを有する。セレーション部22dは、該セレーション部の谷径が歯部の歯底径よりも大きくなるように形成されており、フランジ部22bは、軸方向から見たフランジ部の投影面の面積が、軸方向から見た歯部の投影面の面積より大きくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機に用いられる出力ギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両のパワーウィンドウ装置に用いられる減速機付モータが知られている。例えば、特許文献1には、被駆動部材と噛み合う出力ギヤが固定軸に支持されているとともに、その出力ギヤの下部を従動プレートの係合孔に係合させて固定した減速機付モータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−91009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、減速機付モータをパワーウィンドウ装置に用いる場合、ドアウィンドウの位置によっては、過大な力が出力ギヤにかかることがある。しかしながら、前述の減速機付モータが備える出力ギヤは、ウォームホイールを備える伝達機構と係合する長手方向一端側から被駆動部材と噛み合う長手方向他端側までが同一形状である。そのため、出力ギヤの被駆動部材と噛み合う部分の強度に改善の余地がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、出力ギヤの強度を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の減速機は、モータの回転が伝達されるウォームと、ウォームと噛み合うウォームホイールと、被駆動部材と噛み合って該被駆動部材を駆動する出力ギヤと、ウォームホイールの回転を出力ギヤに伝達する伝達機構と、ウォームホイールを収容する筐体と、を備える。出力ギヤは、出力ギヤの回転軸方向の一端側に形成され、被駆動部材と噛み合って該被駆動部材を駆動する歯部と、出力ギヤの回転軸方向の他端側に形成され、伝達機構の一部に固定されたフランジ部と、ウォームホイールおよび伝達機構を回転自在に支持する支持軸が貫通する貫通孔と、を有する。フランジ部は、該フランジ部の外周部に、周方向に交互に並ぶとともに軸方向に延びている山部と谷部とからなるセレーション部を有する。セレーション部は、該セレーション部の谷径が歯部の歯底径よりも大きくなるように形成されており、フランジ部は、軸方向から見た該フランジ部の投影面の面積が、軸方向から見た歯部の投影面の面積より大きくなるように構成されている。
【0007】
この態様によると、フランジ部によって出力ギヤの強度が向上する。また、伝達機構の一部に固定されたフランジ部は、セレーション部によって周方向への回転が防止される。
【0008】
フランジ部は、軸方向から見た該フランジ部の投影面が、軸方向から見た歯部の投影面全体を含むように構成されていてもよい。これにより、出力ギヤを型で製造することが容易となる。
【0009】
セレーション部は、山部の数が、歯部の歯数の整数倍であってもよい。これにより、出力ギヤが固定される伝達機構の一部に働く応力を緩和できる。
【0010】
伝達機構は、出力ギヤのフランジ部が嵌るように該フランジ部と同様の形状の係合凹部が形成された固定部を有してもよい。固定部は、出力ギヤが固定された状態でフランジ部の歯部側の端面の周縁部を被覆し、出力ギヤを係止する係止部を有してもよい。これにより、固定部から出力ギヤが軸方向へ更に抜けにくくなる。
【0011】
固定部は、係合凹部の内周壁に、長手方向が軸方向と略平行な突条部が形成されていてもよい。これにより、出力ギヤを固定部に挿入する際に突条部が変形もしくは削られることで、出力ギヤは固定部に圧入され固定される。なお、固定部は、係止部および突条部の両方を有していてもよいし、いずれか一方を有してもよい。
【0012】
固定部および係止部は、樹脂材料で構成されており、係止部は、固定部の一部が溶融した部分であってもよい。これにより、係止部を容易に形成できる。
【0013】
出力ギヤは、焼結金属からなってもよい。これにより、強度の高い出力ギヤを型により製造できる。
【0014】
本発明の別の態様は、減速機付モータである。この減速機付モータは、モータと、モータのシャフトと連結されている減速機と、を備える。
【0015】
この態様によると、出力ギヤの強度が高い減速機付モータを提供できる。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、出力ギヤである。この出力ギヤは、パワーウィンドウ用の減速機付モータに用いられる出力ギヤであって、出力ギヤの回転軸方向の一端側に形成され、被駆動部材と噛み合って該被駆動部材を駆動する歯部と、出力ギヤの回転軸方向の他端側に形成され、ウォームホイールの回転を出力ギヤに伝達する伝達機構の一部に固定されるフランジ部と、ウォームホイールを回転自在に支持する支持軸が貫通する貫通孔と、を備える。フランジ部は、該フランジ部の外周部に、周方向に交互に並ぶとともに軸方向に延びている山部と谷部とからなるセレーション部を有する。セレーション部は、該セレーション部の谷径が歯部の歯底径よりも大きくなるように形成されており、フランジ部は、軸方向から見た該フランジ部の投影面の面積が、軸方向から見た歯部の投影面の面積より大きくなるように構成されている。
【0017】
この態様によると、フランジ部によって出力ギヤの強度が向上する。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、出力ギヤの強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係る減速機付モータの出力ギヤ側の正面図である。
【図2】本実施の形態に係る減速機の分解斜視図である。
【図3】図1に示す減速機付モータのA−A断面図である。
【図4】出力プレート近傍の分解斜視図である。
【図5】本実施の形態に係る出力ギヤの上面図である。
【図6】図5に示すB−B断面図である。
【図7】本実施の形態に係る出力プレートの斜視図である。
【図8】図7に示す領域Dの拡大図である。
【図9】出力ギヤの抜け止めをC形止め輪で実現する構成を説明するための斜視図である。
【図10】図9に示す支持軸を備える減速機の概略断面図である。
【図11】出力プレートに出力ギヤを圧入した状態を示す上面図である。
【図12】図11におけるF−F断面図である。
【図13】図12におけるG領域の拡大図である。
【図14】図14(a)〜図14(c)は、本実施の形態に係る出力ギヤの製造工程の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0022】
(減速機付モータ)
本実施の形態に係る減速機付モータは、例えば、車両のパワーウィンドウシステムに好適なものである。図1は、本実施の形態に係る減速機付モータの出力ギヤ側の正面図である。減速機付モータ100は、モータ部10と、モータ部10のシャフトに連結されている減速機12とを備える。
【0023】
図2は、本実施の形態に係る減速機12の分解斜視図である。図3は、図1に示す減速機付モータのA−A断面図である。図4は、出力プレート近傍の分解斜視図である。本実施の形態に係る減速機12は、ギヤボックス14と、ヘリカルギヤ16と、緩衝ラバー18と、出力プレート20と、出力ギヤ22と、カバー24とを備える。ギヤボックス14は、ヘリカルギヤ16と緩衝ラバー18と出力プレート20とを収容する有底円筒状のギヤ収容部26と、モータ部10のシャフト28に固定されているウォーム30を収容するウォーム収容部32とを有する。本実施の形態に係るギヤ収容部26は、ウォームホイールを収容する筐体として機能する。
【0024】
モータ部10の回転は、シャフト28を介してウォーム30に伝達される。ウォームホイールとして機能するヘリカルギヤ16は、ウォーム30と噛み合う歯部16aが外周部に形成されている。また、ヘリカルギヤ16は、ギヤ収容部26の底部に固定されている支持軸34に回転可能に支持されている。ヘリカルギヤ16の回転は伝達機構を介して出力ギヤ22に伝達される。本実施の形態に係る伝達機構は、緩衝ラバー18と出力プレート20とで構成されている。
【0025】
ギヤ収容部26は、ウォーム収容部32に隣接し、ウォーム収容部32と一体に形成されている。ギヤ収容部26のウォーム収容部32側には、ギヤ収容部26とウォーム収容部32とを連通する連通孔36が形成されている。ウォーム収容部32に収容されるウォーム30と、ギヤ収容部26に収容されるヘリカルギヤ16の歯部16aとはこの連通孔36を介して噛み合う。このように、ヘリカルギヤ16およびウォーム30を備える減速機12により、モータ部10での回転が所定の速度にまで減速され、高出力化された回転駆動が出力される。
【0026】
ヘリカルギヤ16の回転は、緩衝ラバー18と出力プレート20とで構成されている伝達機構および出力ギヤ22を介して被駆動部材に伝達される。被駆動部材は、例えば、パワーウィンドウシステムのレギュレータなどが挙げられる。
【0027】
ヘリカルギヤ16は、歯部16aが形成された外周部とボス部16bが形成された径方向中心部との間に位置して、ギヤ収容部26の開口側に向けて開口する環状の凹部38が形成されている。図2に示すように、ヘリカルギヤ16は、凹部38内に突出する3つの突起部40を備えている。各突起部40は、ヘリカルギヤ16の周方向(回転方向)に等間隔に設けられており、凹部38を周方向に等間隔に区画している。凹部38には緩衝ラバー18が装着されている。
【0028】
緩衝ラバー18は、弾性体からなるリング状の部材であり、ヘリカルギヤ16側の端面に形成された3つの第1凹部18aと、出力プレート20側の端面に形成された3つの第2凹部18bとを有する。第1凹部18aは、緩衝ラバー18の周方向に約120°間隔で形成されており、第2凹部18bは、緩衝ラバー18の周方向に約120°間隔で形成されている。また、各第1凹部18aは、各第2凹部18bに対して、緩衝ラバー18の周方向に60°ずれた位置に形成されている。
【0029】
緩衝ラバー18をヘリカルギヤ16に装着すると、ヘリカルギヤ16の突起部40が緩衝ラバー18の第1凹部18aに入り込み、緩衝ラバー18がヘリカルギヤ16に対して位置決めされる。
【0030】
図4は、伝達機構の一部である出力プレート20および出力ギヤ22の斜視図である。出力プレート20は、図4に示す下端側が開口した円筒状の部材であり、上面に出力ギヤ22を固定するための係合凹部20aが形成されているとともに、下面に緩衝ラバー18が入り込む凹部20b(図3参照)が形成されている。凹部20bには、リブ20c(図3参照)が3か所形成されている。出力プレート20は、各リブ20cが緩衝ラバー18の上面に形成された各第2凹部18bに入り込むことで、緩衝ラバー18に支持される。また、出力プレート20は、貫通孔20i(図3参照)に支持軸34が挿通されており、支持軸34によりギヤ収容部26内に回転可能に支持されている。
【0031】
これにより、ヘリカルギヤ16の回転は、ヘリカルギヤ16の突起部40から緩衝ラバー18の第1凹部18aを介して出力プレート20のリブ20cに伝達される。また、出力プレート20は、ヘリカルギヤ16に対して緩衝ラバー18が弾性変形する範囲内において相対回転可能となっている。このように、出力プレート20がヘリカルギヤ16に対して相対回転して緩衝ラバー18が弾性変形されることにより、ウィンドウレギュレータから出力ギヤ22に伝達される衝撃を緩和できる。
【0032】
出力プレート20の係合凹部20aに固定されている出力ギヤ22は、出力プレート20と一体に回転するとともに、被駆動部材としてのウィンドウレギュレータ(不図示)の駆動ギヤと噛み合ってウィンドウレギュレータを駆動する。
【0033】
また、図2や図3に示すように、ギヤ収容部26の開口側は円板形状のカバー24で覆われている。カバー24は、中央に円形の開口部24aが形成されており、その開口部24aから、出力ギヤ22および出力ギヤ22を回転可能に軸支する支持軸34がギヤ収容部26の外側に向かって突き出している。出力ギヤ22の上面にはブシュ42が装着されている。出力ギヤ22は、図3や図4に示すように、支持軸34に支持されている状態で支持軸34にブシュ42が圧入されることで軸方向への抜け止めが実現されている。
【0034】
ギヤ収容部26の開口部側の外周縁部にはパッキン44が装着されている。パッキン44は、ギヤ収容部26とカバー24とにより挟持されている。また、出力プレート20の上面にはOリング46が装着されている。Oリング46は、出力プレート20とカバー24とにより挾持されている。また、ヘリカルギヤ16のボス部16bの上端にもOリング48が装着されている。Oリング48は、出力プレート20とヘリカルギヤ16との隙間を封止している。このように、パッキン44、Oリング46およびOリング46の働きにより、外部から異物や水分がギヤ収容部26の内部に侵入することが防止される。
【0035】
(出力ギヤ)
次に、出力ギヤについて更に詳述する。図5は、本実施の形態に係る出力ギヤの上面図である。図6は、図5に示すB−B断面図である。
【0036】
出力ギヤ22は、出力ギヤの回転軸方向Cの一端側に形成され、被駆動部材と噛み合って被駆動部材を駆動する歯部22aと、出力ギヤの回転軸方向Cの他端側に形成され、伝達機構の一部である出力プレート20に固定されるフランジ部22bと、ヘリカルギヤ16および伝達機構を回転自在に支持する支持軸34が貫通する貫通孔22cと、を有する。
【0037】
フランジ部22bは、フランジ部の外周部に、周方向に交互に並ぶとともに軸方向に延びている山部22d1と谷部22d2とからなるセレーション部22dを有する。出力ギヤ22の中心から山部22d1までの外径をds1、中心から谷部22d2までの谷径をds2、中心から歯部22aの頂点までの外径をdg1、中心から歯部22aの歯底までの歯底径をdg2とすると、セレーション部22dは、セレーション部22dの谷径ds2が歯部22aの歯底径dg2よりも大きくなるように形成されている。
【0038】
また、本実施の形態に係る出力ギヤ22は、セレーション部22dの外径ds1と谷径ds2との差dsが、歯部22aの外径dg1と歯底径dg2との差dgより小さい。つまり、フランジ部22bは、回転軸方向Cから見たフランジ部の投影面の面積が、軸方向から見た歯部22aの投影面の面積より大きくなるように構成されている。また、本実施の形態に係る出力ギヤ22のフランジ部22bは、図5に示すように、軸方向から見たフランジ部22bの投影面S1が、軸方向から見た歯部22aの投影面S2全体を含むように構成されている。このように構成されたフランジ部22bにより、出力ギヤ22の強度が向上する。具体的には、出力ギヤ22は、歯部22aの一つの歯に対する折損トルクが向上する。
【0039】
また、出力ギヤ22は、支持軸34が挿入される貫通孔22cが設けられている。そのため、出力ギヤ22において、被駆動部材であるレギュレータとの減速比を大きくするために歯部22aの歯数を少なくすると、歯底径dg2が小さくなり、貫通孔22cの内径との肉厚が薄くなる。しかしながら、本実施の形態に係る出力ギヤ22は、フランジ部22bを有しているため、所望の強度を満たしつつ歯数を少なくし、被駆動部材との減速比を大きくすることができる。
【0040】
また、出力ギヤ22は、出力プレート20に固定されたフランジ部22bのセレーション部22dにより、出力プレート20の周方向への回転が防止される。なお、フランジ部22bの円形の底面22b1の周縁部には、底面22b1に対して傾斜した面を有する環状の傾斜部22b2が形成されている。
【0041】
また、本実施の形態に係るセレーション部22dは、山部22d1の数が歯部22aの歯数の整数倍になっている。具体的には、山部22d1の数は14個、歯部22aの歯数は7個である。このように、出力ギヤ22の歯部22aやフランジ部22bを対称性の高い形状とすることで、出力ギヤ22が固定される出力プレート20の一部に働く応力を緩和できる。
【0042】
次に、出力ギヤ22と出力プレート20とのガタを防止する構造について説明する。図7は、本実施の形態に係る出力プレートの斜視図である。図8は、図7に示す領域Dの拡大図である。図7に示すように、出力プレート20の係合凹部20aの内周壁20dは、出力ギヤ22のセレーション部22dの形状に応じて谷部20d1と山部20d2とが交互に設けられている。各谷部20d1には、長手方向が軸方向と平行な突条部20eが形成されている。各突条部20eは、内周壁20dにおいて、谷部20d1の底と山部20d2の頂点との間であって、谷部20d1から山部20d2に時計回り(矢印R)に向かう領域Eに形成されている。
【0043】
出力ギヤ22のセレーション部22dと出力プレート20の係合凹部20aの寸法は、寸法公差内でばらつきが生じる。そこで、本実施の形態に係る出力ギヤ22および出力プレート20によれば、出力ギヤ22を出力プレート20に挿入する際に、出力ギヤ22の傾斜部22b2により出力プレート20の突条部20eが削られる。これにより、出力ギヤ22は、出力プレート20に圧入され、出力プレート20に固定される。その結果、出力ギヤ22のセレーション部22dと出力プレート20の内周壁20dとは隙間がゼロとなり、出力ギヤ22の出力プレート20に対する円周方向のガタをなくすことができる。
【0044】
次に、出力ギヤ22が出力プレート20から抜け出ることを防止する抜け止め構造の第1の変形例について説明する。図9は、出力ギヤ22の抜け止めをC形止め輪で実現する構成を説明するための斜視図である。図10は、図9に示す支持軸を備える減速機の概略断面図である。なお、図10に示す減速機の説明において、前述の減速機12と同じ部分については説明を省略する。
【0045】
変形例に係る減速機50は、出力プレート20および出力ギヤ22の中心を貫通するように設けられている支持軸52を備えている。支持軸52は、出力ギヤ22の上端面22eよりわずかに先端側に、周方向に形成された溝52aを有する。溝52aには、C形止め輪54が装着されている。これにより、出力ギヤ22は、支持軸52に支持されている状態で軸方向への抜け止めが実現されている。
【0046】
次に、出力ギヤ22が出力プレートから抜け出ることを防止する抜け止め構造の第2の変形例について説明する。図11は、出力プレートに出力ギヤを圧入した状態を示す上面図である。図12は、図11におけるF−F断面図である。図13は、図12におけるG領域の拡大図である。
【0047】
本実施の形態に係る伝達機構は、出力ギヤ22のフランジ部22bが嵌るようにフランジ部と同様の形状の係合凹部20aが形成された出力プレート20を有している。出力プレート20は、出力ギヤ22が固定された状態でフランジ部22bの歯部22a側の端面22b3の周縁部22b4を被覆し、出力ギヤ22を係止する係止部20fを有する。これにより、出力プレート20から出力ギヤ22が回転軸方向へ更に抜けにくくなる。
【0048】
出力プレート20および係止部20fは、樹脂材料で構成されている。本実施の形態に係る係止部20fは、出力プレート20の係合凹部20aの周囲の円筒部20gの一部が溶融して形成された部分である。詳述すると、係止部20fは、円筒部20gの環状の上端面20hの内縁部20h1が溶融して形成された部分である。これにより、係止部20fを容易に形成できる。また、係止部20fを設けることで、前述のブシュ42やC形止め輪54が不要となるとともに、支持軸にC形止め輪用の溝を加工することが不要となる。その結果、減速機の製造コストが低減される。
【0049】
なお、出力ギヤ22の抜け止め構造としては、前述の突条部20e、係止部20f、ブシュ42、C型止め輪54などを単独で、または複数の構成を適宜組み合わせて採用してもよい。例えば、突条部20eのみを用いて出力プレート20に対する出力ギヤ22の抜け止め(固定)を実現してもよいし、突条部20eに加えてブシュ42を用いて出力プレート20に対する出力ギヤ22の抜け止め(固定)を実現してもよい。
【0050】
次に、出力ギヤの材質および製造方法の好適な例について説明する。本実施の形態に係る出力ギヤ22は、焼結金属からなっている。焼結金属は、焼結合金、金属焼結体と言い換えることもできる。このような焼結金属は、例えば、何種類かの金属微粉末を混合し圧縮成型し融点以下の高温で金属粒子の拡散結合を行ったものである。添加される材料には、主原料となる鉄粉・合金鋼粉・銅粉等が挙げられる。また、超硬合金用の材料としては、炭化タングステン、鉄、コバルト、ニッケル粉等が、また、高耐食性を目的とする材料には、チタン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン粉等が使用される。このような材料を採用することで、強度の高い出力ギヤ22を型により製造できるため、出力ギヤ22の製造コストを低減できる。
【0051】
また、出力ギヤ22が焼結金属からなることで、前述の係止部20fを高周波加熱(加熱溶融)によって形成することができる。具体的には、出力プレート20の円筒部20gの外周部にコイルを配置し通電する。つまり、高周波加熱により加熱された金属製の出力ギヤ22は、接している出力プレート20の一部(円筒部20g)を溶かすことで、フランジ部22bが係止部20fで係止され、抜け止めが実現される。
【0052】
図14(a)〜図14(c)は、本実施の形態に係る出力ギヤの製造工程の一例を模式的に示した図である。なお、説明の便宜上、部品の形状は簡略化されている。本実施の形態に係る出力ギヤ22のフランジ部22bは、図5に示すように、軸方向から見たフランジ部22bの投影面S1が、軸方向から見た歯部22aの投影面S2全体を含むように構成されている。そのため、図14(a)〜図14(c)に示すように、焼結プレスを行う際の金型の構造を簡易にできる。
【0053】
はじめに、図14(a)に示すように、コアロッド60が挿入されている下パンチ62は、ダイ64の下面に形成されている下側開口部64aに装着される。その状態で、ダイ64内の空間に原料粉末66を充填する。そして、図14(b)に示すように、ダイ64の上面に形成されている上側開口部64bから上パンチ68で圧縮することで、圧粉体70が形成される。圧粉体70は、下パンチ62をダイ64の内部へ更に押し込むことで外部へ抜き出される(図14(c))。また、図14(a)〜図14(c)に示すように、工程中に調整部分が少なく、圧粉体70(出力ギヤ)のクラックの発生が抑制される。このように、本実施の形態に係る出力ギヤ22は、型で製造することが容易である。
【0054】
なお、本実施の形態に係る出力ギヤ22は、セレーション部22dの外径ds1と谷径ds2との差dsが、歯部22aの外径dg1と歯底径dg2との差dgより小さい。つまり、セレーション部22dが圧入される出力プレート20の円筒部20gは、周方向における内周壁20dと外周面20kとの肉厚変化差が小さくなる。そのため、出力プレート20を型により製造する際に、円筒部20gの肉厚変化に起因するヒケの差を考慮した変形防止穴を型に設ける必要がなくなり、型のコストが低減される。
【0055】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0056】
10 モータ部、 12 減速機、 14 ギヤボックス、 16 ヘリカルギヤ、 18 緩衝ラバー、 20 出力プレート、 20a 係合凹部、 20b 凹部、 20c リブ、 20d 内周壁、 20f 係止部、 22 出力ギヤ、 22a 歯部、 22b フランジ部、 22c 貫通孔、 22d セレーション部、 22e 上端面、 26 ギヤ収容部、 28 シャフト、 30 ウォーム、 32 ウォーム収容部、 34 支持軸、 100 減速機付モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転が伝達されるウォームと、
前記ウォームと噛み合うウォームホイールと、
被駆動部材と噛み合って該被駆動部材を駆動する出力ギヤと、
前記ウォームホイールの回転を前記出力ギヤに伝達する伝達機構と、
前記ウォームホイールを収容する筐体と、を備え、
前記出力ギヤは、
前記出力ギヤの回転軸方向の一端側に形成され、被駆動部材と噛み合って該被駆動部材を駆動する歯部と、
前記出力ギヤの回転軸方向の他端側に形成され、前記伝達機構の一部に固定されたフランジ部と、
前記ウォームホイールおよび前記伝達機構を回転自在に支持する支持軸が貫通する貫通孔と、を有し、
前記フランジ部は、該フランジ部の外周部に、周方向に交互に並ぶとともに軸方向に延びている山部と谷部とからなるセレーション部を有し、
前記セレーション部は、該セレーション部の谷径が前記歯部の歯底径よりも大きくなるように形成されており、
前記フランジ部は、軸方向から見た該フランジ部の投影面の面積が、軸方向から見た前記歯部の投影面の面積より大きくなるように構成されている、
ことを特徴とする減速機。
【請求項2】
前記フランジ部は、軸方向から見た該フランジ部の投影面が、軸方向から見た前記歯部の投影面全体を含むように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の減速機。
【請求項3】
前記セレーション部は、前記山部の数が、前記歯部の歯数の整数倍であることを特徴とする請求項1または2に記載の減速機。
【請求項4】
前記伝達機構は、
前記出力ギヤのフランジ部が嵌るように該フランジ部と同様の形状の係合凹部が形成された固定部を有し、
前記固定部は、前記出力ギヤが固定された状態で前記フランジ部の前記歯部側の端面の周縁部を被覆し、前記出力ギヤを係止する係止部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の減速機。
【請求項5】
前記固定部は、前記係合凹部の内周壁に、長手方向が軸方向と略平行な突条部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の減速機。
【請求項6】
前記固定部および前記係止部は、樹脂材料で構成されており、
前記係止部は、前記固定部の一部が溶融した部分であることを特徴とする請求項4または5に記載の減速機。
【請求項7】
前記伝達機構は、
前記出力ギヤのフランジ部が嵌るように該フランジ部と同様の形状の係合凹部が形成された固定部を有し、
前記固定部は、前記係合凹部の内周壁に、長手方向が軸方向と略平行な突条部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の減速機。
【請求項8】
前記出力ギヤは、焼結金属からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の減速機。
【請求項9】
モータと、
前記モータのシャフトと連結されている請求項1乃至8のいずれか1項に記載の減速機と、を備えることを特徴とする減速機付モータ。
【請求項10】
パワーウィンドウ用の減速機付モータに用いられる出力ギヤであって、
前記出力ギヤの回転軸方向の一端側に形成され、被駆動部材と噛み合って該被駆動部材を駆動する歯部と、
前記出力ギヤの回転軸方向の他端側に形成され、ウォームホイールの回転を出力ギヤに伝達する伝達機構の一部に固定されるフランジ部と、
前記ウォームホイールを回転自在に支持する支持軸が貫通する貫通孔と、を備え、
前記フランジ部は、該フランジ部の外周部に、周方向に交互に並ぶとともに軸方向に延びている山部と谷部とからなるセレーション部を有し、
前記セレーション部は、該セレーション部の谷径が前記歯部の歯底径よりも大きくなるように形成されており、
前記フランジ部は、軸方向から見た該フランジ部の投影面の面積が、軸方向から見た前記歯部の投影面の面積より大きくなるように構成されている、
ことを特徴とする出力ギヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−229724(P2012−229724A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97584(P2011−97584)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000113791)マブチモーター株式会社 (69)
【Fターム(参考)】