説明

減速装置

【課題】 ハウジングと遮蔽板との間をシールするシール部材の交換時の作業性を高め、ハウジング内へのグリース等の侵入を抑える。
【解決手段】 下側ハウジング13を構成する円筒部13Bの外周側と下面側とのコーナ部に、遮蔽板25に対面する上壁面26Aと、この上壁面26Aの内径側を遮蔽板25に向けて軸方向に延びる周壁面26Bとを有する切欠溝26を設け、この切欠溝26と遮蔽板25との間に、ウレタンゴムを用いて環状に形成されたシール部材27を設ける構成とする。これにより、切欠溝26の周壁面26Bに、その外周側からシール部材27を装着することができるので、シール部材27の摩耗状態を外部から容易に確認することができる。また、シール部材27を交換する場合に、減速装置11を分解してシール部材27を着脱する必要がなく、シール部材27を交換するときの作業性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーンの旋回装置等に好適に用いられる減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とにより大略構成されている。そして、下部走行体と上部旋回体との間には、上部旋回体を下部走行体上で旋回させる旋回装置が設けられ、該旋回装置には、油圧モータ等からなる回転源の回転を減速してトルクを増大させる減速装置が設けられている。
【0003】
この種の従来技術による減速装置は、通常、上端側に回転源が設けられたハウジングと、該ハウジング内に設けられ回転源の回転を減速する減速機構と、ハウジング内を上,下方向に延びて設けられ該減速機構により減速された回転を出力する出力軸と、該出力軸の下端側に設けられ歯車に噛合するピニオンと、ハウジングと出力軸との間に上,下方向に離間して設けられ出力軸を回転可能に支持する上側軸受および下側軸受と、これら上,下の軸受間に位置してハウジングと出力軸との間に設けられハウジング内に潤滑油を封止するオイルシールと、下側軸受とピニオンとの間に設けられた円板状の遮蔽板とにより大略構成されている。
【0004】
ここで、遮蔽板は、内周側が下側軸受とピニオンとの間に挟持され、外周側がハウジングの下端部まで延在している。そして、出力軸に設けられたピニオンと歯車との噛合部を潤滑するグリースが、ピニオンと歯車とが噛合するときのポンプ作用によってハウジングに向けて噴出したときに、このグリースがハウジング内に侵入するのを遮蔽板によって阻止することができる構成となっている。
【0005】
また、遮蔽板とハウジングとの間にはシール部材が設けられ、該シール部材は、下側軸受を潤滑するための潤滑油をハウジング内に封止すると共に、ピニオンと歯車との噛合部から噴出したグリース、グリース内に混入した異物等がハウジング内に侵入するのを阻止するものである(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
【特許文献1】実公昭63−44573号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第19603007号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献1による減速装置においては、下側軸受の内輪と出力軸のピニオンとの間に挟込んだ遮蔽板の外周側にシール部材を固着する構成となっている。このため、遮蔽板に摺接することによって摩耗したシール部材を交換する場合には、下側軸受とピニオンとの間に配設した遮蔽板を取外すために減速装置全体を分解する必要があり、シール部材を交換するときの作業性が低下してしまうという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2による減速装置においては、ハウジングの下面に環状溝を形成し、この環状溝と遮蔽板との間にシール部材を設ける構成となっている。このため、遮蔽板に摺接することによってシール部材が摩耗したとしても、このシールの摩耗状態を外部から確認することができないという問題がある。また、シール部材を交換する場合には、下側軸受とピニオンとの間に配設した遮蔽板を取外すために減速装置全体を分解する必要があり、シール部材を交換するときの作業性が低下してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、ハウジングと遮蔽板との間をシールするシール部材を交換するときの作業性を高め、ハウジング内へのグリース等の侵入を長期に亘って抑えることができるようにした減速装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、上端側に回転源が設けられたハウジングと、該ハウジング内に設けられ前記回転源の回転を減速する減速機構と、前記ハウジング内を上,下方向に延びて設けられ該減速機構により減速された回転を出力する出力軸と、該出力軸の下端側に設けられ歯車に噛合するピニオンと、前記ハウジングと前記出力軸との間に上,下方向に離間して設けられ前記出力軸を回転可能に支持する上側軸受および下側軸受と、これら上,下の軸受間に位置して前記ハウジングと前記出力軸との間に設けられ前記ハウジング内に前記減速機構を潤滑する潤滑油を封止するオイルシールと、内周側が前記下側軸受と前記ピニオンとの間に挟持されると共に外周側が前記ハウジングの下端部まで延在し前記ピニオンと前記歯車との噛合部を潤滑するグリースが前記ハウジング内に侵入するのを遮断する円板状の遮蔽板とを備えてなる減速装置に適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明の特徴は、前記ハウジングの下端部には、前記ハウジングの外周側と下面側とのコーナ部に開口した状態で全周に亘って切欠かれ、前記遮蔽板と上,下方向で対面する上壁面と、該上壁面の内径側を軸方向に延びる環状の周壁面とを有する切欠溝を設け、該切欠溝と前記遮蔽板との間には環状のシール部材を設け、該シール部材は、前記切欠溝の周壁面にその外周側から緊縛力をもって装着される本体部と、該本体部から突出し前記切欠溝の上壁面に当接すると共に前記遮蔽板に摺接する突起状リップ部により構成したことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記シール部材の前記突起状リップ部は、前記本体部の上面側および下面側から突出した断面三角形状をなす三角形リップ部により構成したことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記シール部材の前記突起状リップ部は、前記本体部の上面側および下面側にそれぞれ2個以上設ける構成としたことにある。
【0014】
請求項4の発明は、前記シール部材の前記突起状リップ部は、前記本体部の上面側と下面側とで等しい直径をもって同心円状に配置する構成としたことにある。
【0015】
請求項5の発明は、前記シール部材の前記突起状リップ部は、前記本体部から異なる突出長さをもって突出した断面三角形状をなす複数種類の三角形リップ部により構成したことにある。
【0016】
請求項6の発明は、前記シール部材は、ウレタンゴムを用いて形成したことにある。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、ハウジングの下端部に設けられた切欠溝の周壁面に、シール部材の本体部を緊縛力をもって装着すると、この本体部から突出した突起状リップ部は、切欠溝の上壁面に当接すると共に遮蔽板に摺接する。そして、遮蔽板に摺接した突起状リップ部は、遮蔽板がピニオンと一緒に回転することにより早期に摩耗し、遮蔽板に適度な面圧をもって摺接する状態で安定する。このように、シール部材と遮蔽板との摺接面が早期になじむように、シール部材を積極的に摩耗させることにより、シール部材の良好なシール機能を長期に亘って維持することができる。
【0018】
しかも、切欠溝はハウジングの外周側と下面側とのコーナ部に全周に亘って開口した状態で形成され、シール部材は、切欠溝の周壁面にその外周側から装着することができるので、シール部材の摩耗状態を外部から容易に確認することができる。また、シール部材を交換するために減速装置を分解する必要がないので、摩耗したシール部材を交換するときの作業性を高めることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、シール部材の突起状リップ部を三角形リップ部によって構成することにより、この三角形リップ部の先端を切欠溝の上壁面に確実に当接させると共に、遮蔽板に確実に摺接させることができる。これにより、遮蔽板に摺接する三角形リップ部の面圧を高め、初期的な摩耗を促進することができるので、早期に三角形リップ部を適度な面圧をもって遮蔽板に摺接させることができる。この結果、ハウジングと遮蔽板との間をシール部材によって確実にシールすることができ、下側軸受を潤滑するための潤滑油をハウジング内に封止すると共に、ピニオンと歯車との噛合部から噴出したグリースや異物等がハウジング内に侵入するのを阻止できるので、減速装置の信頼性を高めることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、本体部の上面側に設けた2個以上の突起状リップ部がそれぞれ切欠溝の上壁面に当接し、本体部の下面側に設けた2個以上の突起状リップ部がそれぞれ遮蔽板に摺接することにより、切欠溝と遮蔽板との間にシール部材を組付けた状態で、シール部材の姿勢を安定させることができ、安定したシール性を保つことができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、本体部の上面側に設けられた突起状リップ部と下面側に設けられた突起状リップ部とを、互いに等しい位置に配置することができる。このため、切欠溝と遮蔽板との間にシール部材を組付けるときに、シール部材の上面側と下面側とを区別する必要がなく、シール部材の誤組付けをなくすことができるので、シール部材の組付時の作業性を高めることができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、シール部材の突起状リップ部を、本体部からの突出長さが異なる複数種類の三角形リップ部によって構成することにより、例えば突出長さが最も大きな三角形リップ部が遮蔽板との摺接によって大きく摩耗したとしても、突出長さが小さい他の三角形リップ部が遮蔽板に適度な面圧をもって摺接することができる。これにより、シール部材の寿命を延ばすことができ、1個のシール部材によってハウジングと遮蔽板との間を長期に亘って確実にシールすることができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、ウレタンゴムを用いてシール部材を形成することにより、シール部材の弾性を確保しつつ、耐摩耗性を高めることができる。従って、切欠溝の周壁面に対して適度な緊縛力(締め代)をもってシール部材を装着することができ、かつ、シール部材の寿命を延ばし、ハウジングと遮蔽板との間のシール性を長期に亘って適正に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る減速装置の実施の形態を、油圧ショベルの旋回装置に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
まず、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は油圧ショベルの下部走行体(いずれも図示せず)に設けられた丸胴を示し、2は油圧ショベルの上部旋回体(図示せず)を構成する旋回フレームを示している。
【0026】
そして、丸胴1と旋回フレーム2との間には、丸胴1に対して旋回フレーム2を旋回可能に支持する旋回輪3が設けられ、該旋回輪3は、丸胴1上に固定された内輪3Aと、旋回フレーム2の下面側に固定された外輪3Bと、内輪3Aと外輪3Bとの間に配設された複数の鋼球3C(1個のみ図示)とにより構成されている。
【0027】
また、内輪3Aの内周側には、後述のピニオン20が噛合する歯車としての内歯車3Dが全周に亘って形成され、この内歯車3Dの下側には、ピニオン20と内歯車3Dとの噛合部を潤滑するグリースを収容したグリースバス4が設けられている。
【0028】
5は丸胴1に固定された旋回輪3の内輪3Aと旋回フレーム2との間に設けられた旋回装置で、該旋回装置5は、丸胴1上で旋回フレーム2を旋回させるものである。ここで、旋回装置5は、回転源としての油圧モータ6と、該油圧モータ6のモータ軸6Aの回転を減速し、旋回輪3に大きな回転力(トルク)を伝達する後述の減速装置11とにより大略構成されている。
【0029】
11は油圧モータ6の回転を減速する減速装置で、該減速装置11は、後述のハウジング12、遊星歯車減速機構17,18、出力軸19、ピニオン20、上側軸受21、下側軸受22、遮蔽板25、シール部材27等により構成されている。
【0030】
12は減速装置11の外殻をなす筒状のハウジングで、該ハウジング12は、旋回フレーム2の上面側に固着された下側ハウジング13と、該下側ハウジング13の上端側に固着された上側ハウジング14とにより大略構成されている。
【0031】
ここで、下側ハウジング13の下部側には、下方に向けて徐々に拡径する下フランジ部13Aと、該下フランジ部13Aの径方向内側から下方に突出した円筒部13Bとが設けられ、該円筒部13Bの下端部13Cには後述の切欠溝26が形成されている。また、下側ハウジング13の内周側には、後述の上側軸受21を取付ける上側軸受取付部13Dと、後述の下側軸受22を取付ける下側軸受取付部13Eとが、上,下方向に離間して設けられている。また、下側ハウジング13の下フランジ部13Aは、複数のボルト15を用いて旋回フレーム2に固定され、下側ハウジング13の上端側には複数のボルト16を用いて上側ハウジング14の下フランジ部14Aが固定されている。
【0032】
そして、上側ハウジング14の上端側には、回転源としての油圧モータ6が固定されている。また、上側ハウジング14の内周側には、上,下方向に離間する2つの内歯車14B,14Cが、それぞれ全周に亘って形成されている。
【0033】
17は油圧モータ6の下方に位置してハウジング12内に設けられた減速機構としての1段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構17は、油圧モータ6の回転を減速するものである。ここで、遊星歯車減速機構17は、油圧モータ6のモータ軸6Aにスプライン結合された太陽歯車17Aと、該太陽歯車17Aと上側ハウジング14の内歯車14Bとに噛合し、太陽歯車17Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車17B(1個のみ図示)と、該各遊星歯車17Bを回転可能に支持するキャリア17Cとにより構成されている。
【0034】
18は遊星歯車減速機構17の下方に位置してハウジング12内に設けられた減速機構としての2段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構18は、1段目の遊星歯車減速機構17によって減速された油圧モータ6の回転を、さらに減速するものである。ここで、遊星歯車減速機構18は、1段目の遊星歯車減速機構17のキャリア17Cにスプライン結合された太陽歯車18Aと、該太陽歯車18Aと上側ハウジング14の内歯車14Cとに噛合し、太陽歯車18Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車18B(1個のみ図示)と、該各遊星歯車18Bを回転可能に支持するキャリア18Cとにより構成されている。そして、遊星歯車減速機構18のキャリア18Cは、後述する出力軸19の上端側にスプライン結合される構成となっている。
【0035】
19はハウジング12内に回転可能に設けられた出力軸で、該出力軸19は、ハウジング12内を上,下方向(軸方向)に延び、後述の上側軸受21、下側軸受22によって回転可能に支持されている。
【0036】
ここで、出力軸19の上端側には雄スプライン19Aが形成され、該雄スプライン19Aは、遊星歯車減速機構18のキャリア18Cにスプライン結合されている。これにより、油圧モータ6の回転は、遊星歯車減速機構17,18によって2段減速された状態で出力軸19に伝達され、出力軸19は、大きな回転力(トルク)をもって低速で回転する構成となっている。また、雄スプライン19Aの下側には、後述のナット部材23が螺着される雄ねじ部19Bが形成されている。
【0037】
20は出力軸19の下端側に一体に設けられたピニオンで、該ピニオン20は、下側ハウジング13を構成する円筒部13Bの下端部から下方に突出し、旋回輪3の内輪3Aに設けられた内歯車3Dに噛合するものである。そして、ピニオン20は、出力軸19の回転を、旋回輪3の内輪3Aに伝達するものである。
【0038】
21はハウジング12と出力軸19との間に設けられた上側軸受で、該上側軸受21は、下側ハウジング13の上側軸受取付部13Dに嵌合した外輪21Aと、出力軸19の上端側に嵌合した内輪21Bと、外輪21Aと内輪21Bとの間に設けられた複数の転動体21Cとにより構成されている。
【0039】
22は上側軸受21の下側に位置してハウジング12と出力軸19との間に設けられた下側軸受で、該下側軸受22は、下側ハウジング13の下側軸受取付部13Eに嵌合した外輪22Aと、出力軸19の上端側に嵌合した内輪22Bと、外輪22Aと内輪22Bとの間に設けられた複数の転動体22Cとにより構成されている。
【0040】
そして、これら上側軸受21と下側軸受22とは、後述のナット部材23によって軸方向に適度に与圧された状態で、出力軸19をハウジング12に対して回転可能に支持するものである。また、上側軸受21は、後述のオイルシール24によってハウジング12内に封止された潤滑油により潤滑され、下側軸受22は、後述のオイルシール24とシール部材27とによって下側ハウジング13内に封止されたグリースにより潤滑される構成となっている。
【0041】
23は遊星歯車減速機構18と上側軸受21との間に位置して出力軸19の雄ねじ部19Bに螺着されたナット部材で、該ナット部材23は、全体として円板状をなし、出力軸19の雄ねじ部19Bに螺着されることにより、その下面が上側軸受21の内輪21Bに当接するものである。そして、ナット部材23を締込むことにより、上側軸受21と下側軸受22とを軸方向に与圧することができる構成となっている。
【0042】
24は上側軸受21と下側軸受22との間に位置してハウジング12と出力軸19との間に設けられた環状のオイルシールで、該オイルシール24は、外周側が下側ハウジング13の内周面に嵌合し、内周側が出力軸19の外周面に適度な弾性をもって摺接している。そして、オイルシール24は、各遊星歯車減速機構17,18、上側軸受21等を潤滑するための潤滑油をハウジング12内に封止するものである。
【0043】
25はピニオン20と下側軸受22との間に設けられた遮蔽板で、該遮蔽板25は、下側軸受22の外輪22Aよりも大きな外径寸法を有する円板状に形成されている。そして、遮蔽板25の内周側は、出力軸19に挿通された状態でピニオン20の上面と下側軸受22の内輪22Bとの間に挟持され、遮蔽板25の外周側は、下側ハウジング13を構成する円筒部13Bの下端部13Cまで延在し、該下端部13Cと上,下方向の僅かな隙間をもって対面する構成となっている。
【0044】
これにより、遮蔽板25は、下側ハウジング13の下側軸受取付部13Eと下側軸受22とを全周に亘って下側から覆った状態でピニオン20と一体に回転し、旋回輪3の内歯車3Dとピニオン20との噛合部を潤滑するグリースが、当該噛合部から上向きに噴出したときに、このグリースが下側軸受22の外輪22Aと内輪22Bとの間の隙間を通じてハウジング12内に侵入するのを遮断するものである。
【0045】
26は下側ハウジング13を構成する円筒部13Bの下端部13Cに設けられた切欠溝で、該切欠溝26は、後述のシール部材27が装着されるものである。ここで、切欠溝26は、図2等に示すように、下側ハウジング13を構成する円筒部13Bの外周側と下面側とのコーナ部を、全周に亘って径方向内側に凹陥するように切欠くことにより、円筒部13Bの外周側と下面側とに開口した状態で全周に亘って環状に形成されている。そして、切欠溝26は、遮蔽板25の上面25Aと上,下方向で対面する上壁面26Aと、該上壁面26Aの内径側を遮蔽板25に向けて軸方向に延びる環状の周壁面26Bとにより構成されている。
【0046】
27は切欠溝26と遮蔽板25との間に装着された環状のシール部材で、該シール部材27は、下側軸受22を潤滑するためのグリースを下側ハウジング13内に封止すると共に、旋回輪3の内歯車3Dとピニオン20との噛合部から噴出したグリース、当該グリースに混入した異物等が下側ハウジング13内に侵入するのを阻止するものである。
【0047】
ここで、シール部材27は、図2ないし図5に示すように、切欠溝26の周壁面26Bにその外周側から装着される環状の本体部27Aと、本体部27Aの上面側から切欠溝26の上壁面26Aに向けて突出する突起状リップ部としての上側三角形リップ部27B,27Cと、本体部27Aの下面側から遮蔽板25の上面25Aに向けて突出する突起状リップ部としての下側三角形リップ部27D,27Eとにより構成されている。そして、シール部材27は、適度な弾性を有し、硬度が高く、耐摩耗性に優れたゴム材料、例えばウレタンゴムを用いて形成されている。
【0048】
この場合、図2及び図3に示すように、切欠溝26の周壁面26Bの外径寸法をDとし、シール部材27の本体部27Aの内径寸法をdとすると、これら外径寸法Dと内径寸法dとは、下記数1の関係に設定されている。
【0049】
【数1】

【0050】
ここで、ウレタンゴムを用いて形成されたシール部材27は、例えば図2中に二点鎖線で示すように、一部を切欠溝26の周壁面26Bに引っ掛けた状態で径方向への引張力を与えることにより拡径(弾性変形)する。これにより、シール部材27は、拡径した状態でピニオン20の下側から遮蔽板25を通過した後、引張力を解除することにより縮径し、図2中に実線で示すように、切欠溝26の周壁面26Bにその外周側から適度な緊縛力をもって装着される構成となっている。
【0051】
この場合、切欠溝26は、下側ハウジング13を構成する円筒部13Bの外周側と下面側とに開口した状態で形成され、シール部材27は、切欠溝26の周壁面26Bに外周側から装着されている。従って、切欠溝26に装着したシール部材27を外部から目視することができ、当該シール部材27の組付けが適正に行われているか否かを容易に確認することができる構成となっている。
【0052】
次に、上側三角形リップ部27B,27Cは、それぞれ二等辺三角形の断面形状をもって本体部27Aの上面側に突設された環状体からなり、一方の上側三角形リップ部27Bは、他方の上側三角形リップ部27Cよりも大径に形成されている。そして、上側三角形リップ部27B,27Cの先端部は、切欠溝26の上壁面26Aに適度な弾性をもって当接するものである。
【0053】
一方、下側三角形リップ部27D,27Eは、それぞれ二等辺三角形の断面形状をもって本体部27Aの下面側に突設された環状体からなり、一方の下側三角形リップ部27Dは、他方の下側三角形リップ部27Eよりも大径に形成されている。そして、下側三角形リップ部27D,27Eの先端部は、遮蔽板25の上面25Aに適度な弾性をもって摺接するものである。
【0054】
また、上側三角形リップ部27Bと下側三角形リップ部27Dとは、互いに等しい直径をもって同心円状に配置され、上側三角形リップ部27Cと下側三角形リップ部27Eとは、互いに等しい直径をもって同心円状に配置されている。これにより、上側三角形リップ部27Bと下側三角形リップ部27D、及び上側三角形リップ部27Cと下側三角形リップ部27Eを、それぞれ本体部27Aの上面側と下面側とで等しい位置に配置することができる。このため、切欠溝26と遮蔽板25との間にシール部材27を組付けるときに、シール部材27の上面側と下面側とを区別する必要がなく、シール部材27の誤組付けをなくすことができる構成となっている。
【0055】
ここで、図4及び図5に示すように、切欠溝26の上壁面26Aと遮蔽板25の上面25Aとの間の軸方向寸法をA1とし、シール部材27の上側三角形リップ部27B,27Cと下側三角形リップ部27D,27Eとの間の軸方向寸法をA2とすると、これら軸方向寸法A1と軸方向寸法A2とは、下記数2の関係に設定されている。
【0056】
【数2】

【0057】
従って、図5に示すように、切欠溝26と遮蔽板25との間にシール部材27を装着した状態では、上側三角形リップ部27B,27Cは、軸方向に弾性変形しつつ切欠溝26の上壁面26Aに押圧力をもって当接し、下側三角形リップ部27D,27Eは、軸方向に弾性変形しつつ遮蔽板25の上面25Aに押圧力をもって摺接する構成となっている。
【0058】
これにより、遮蔽板25がピニオン20と一緒に回転すると、シール部材27の下側三角形リップ部27D,27Eは、遮蔽板25の上面25Aに大きな面圧をもって摺接することにより早期に摩耗し、図6に示すように、遮蔽板25の上面25Aに適度な面圧をもって摺接する状態で安定する。このように、シール部材27の下側三角形リップ部27D,27Eを積極的に摩耗させ、シール部材27と遮蔽板25との摺接面を早期になじませることにより、シール部材27による良好なシール機能を長期に亘って維持することができる構成となっている。
【0059】
また、本体部27Aの上面側に設けた上側三角形リップ部27B,27Cと、下面側に設けた下側三角形リップ部27D,27Eとは、それぞれ二等辺三角形の断面形状をもって形成されている。これにより、各リップ部27B,27C,27D,27Eは、下側軸受22を潤滑するグリースを下側ハウジング13内に封止する場合と、旋回輪3の内歯車3Dとピニオン20との噛合部から噴出すグリースが下側ハウジング13内に侵入するのを阻止する場合とで、ほぼ同等な剛性を有する構成となっている。
【0060】
また、本体部27Aの上面側に設けた2個の上側三角形リップ部27B,27Cが、それぞれ切欠溝26の上壁面26Aに当接し、本体部27Aの下面側に設けた2個の下側三角形リップ部27D,27Eが、それぞれ遮蔽板25の上面25Aに摺接することにより、切欠溝26と遮蔽板25との間にシール部材27を組付けた状態で、シール部材27の姿勢を安定させることができ、安定したシール性を保つことができる構成となっている。
【0061】
本実施の形態による減速装置11は上述の如き構成を有するもので、油圧モータ6のモータ軸6Aが回転すると、このモータ軸6Aの回転が遊星歯車減速機構17,18によって2段減速された後に出力軸19に伝わり、ピニオン20は大きな回転力(トルク)をもって回転する。
【0062】
そして、ピニオン20は、旋回輪3の内輪3Aに設けた内歯車3Dと噛合しつつ内輪3Aに沿って公転し、このピニオン20の公転力がハウジング12を介して旋回フレーム2に伝わることにより、旋回フレーム2が丸胴1上で旋回動作を行う。
【0063】
このとき、図5に示すように、シール部材27の上側三角形リップ部27B,27Cは、軸方向に弾性変形した状態で切欠溝26の上壁面26Aに押圧力をもって当接し、下側三角形リップ部27D,27Eは、軸方向に弾性変形した状態で遮蔽板25の上面25Aに押圧力をもって摺接する。
【0064】
従って、遮蔽板25がピニオン20と一緒に回転すると、シール部材27の下側三角形リップ部27D,27Eは、遮蔽板25の上面25Aに大きな面圧をもって摺接することにより早期に摩耗する。このため、切欠溝26の上壁面26Aに当接した上側三角形リップ部27B,27Cの弾性により、下側三角形リップ部27D,27Eが摩耗した分だけ本体部27Aが下方(遮蔽板25側)へと変位し、図6に示すように、下側三角形リップ部27D,27Eは、遮蔽板25の上面25Aに適度な面圧をもって摺接した状態で安定する。
【0065】
これにより、シール部材27の下側三角形リップ部27D,27Eを積極的に摩耗させ、シール部材27と遮蔽板25との摺接面を早期になじませることができ、シール部材27による良好なシール機能を長期に亘って維持することができる。この結果、シール部材27によって、下側軸受22を潤滑するグリースを下側ハウジング13内に封止すると共に、旋回輪3の内歯車3Dとピニオン20との噛合部から噴出すグリース、当該グリースに混入した異物等が下側ハウジング13内に侵入するのを阻止することができ、減速装置11の信頼性を高めることができる。
【0066】
この場合、切欠溝26は、下側ハウジング13を構成する円筒部13Bの外周側と下面側とに開口した状態で形成され、シール部材27は、切欠溝26の周壁面26Bに外周側から装着されているので、例えば図1に示すボルト15を取外して旋回フレーム2から旋回装置5を取外した状態では、減速装置11を分解して遮蔽板25を取外すことなく、シール部材27の摩耗状態を外部から確認することができ、シール部材27を交換するか否かを的確に判断することができる。
【0067】
次に、摩耗が進行したシール部材27を交換する場合には、減速装置11を分解することなく、例えば切欠溝26と遮蔽板25との間にドライバ等の工具を挿入し、この工具をシール部材27に引っ掛けて切欠溝26の外部に引出す。そして、シール部材27の一部を切断することにより、摩耗したシール部材27を切欠溝26から容易に取外すことができる。
【0068】
そして、図2に示すように、新しいシール部材27の一部を切欠溝26の周壁面26Bに引掛け、反対側を径方向に引張る。これにより、シール部材27は二点鎖線で示す如く拡径(弾性変形)するので、このシール部材27を拡径させたままピニオン20の下側から遮蔽板25の外周側を通過させた後、引張力を解除することによりシール部材27を自然な状態に縮径させる。この結果、図2中に実線で示すように、新しいシール部材27を、切欠溝26の周壁面26Bにその外周側から適度な緊縛力をもって容易に装着することができる。
【0069】
この場合、切欠溝26は、下側ハウジング13を構成する円筒部13Bの外周側と下面側とに開口した状態で形成され、シール部材27は、切欠溝26の周壁面26Bに外周側から装着することができる。従って、切欠溝26に装着したシール部材27を外部から目視し、当該シール部材27の組付けが適正に行われているか否かを容易に確認することができるので、シール部材27の誤組付けを防止することができる。
【0070】
かくして、本実施の形態によれば、下側ハウジング13を構成する円筒部13Bの下端部13Cに、円筒部13Bの外周側と下面側とに開口し、遮蔽板25に対面する上壁面26Aとこの上壁面26Aから遮蔽板25に向けて軸方向に延びる周壁面26Bとを有する切欠溝26を設け、この切欠溝26と遮蔽板25との間に、ウレタンゴムを用いて環状に形成されたシール部材27を設ける構成としている。
【0071】
このため、シール部材27を、切欠溝26の周壁面26Bにその外周側から装着することができるので、シール部材27の摩耗状態を外部から容易に確認することができ、シール部材27を交換するか否かを的確に判断することができる。また、シール部材27を交換する場合に、減速装置11を分解してシール部材27を着脱する必要がないので、このシール部材27を交換するときの作業性を高めることができる。
【0072】
また、シール部材27の本体部27Aの上面側に設けた2個の上側三角形リップ部27B,27Cが、それぞれ切欠溝26の上壁面26Aに当接し、本体部27Aの下面側に設けた2個の下側三角形リップ部27D,27Eが、それぞれ遮蔽板25の上面25Aに摺接することにより、切欠溝26と遮蔽板25との間にシール部材27を組付けた状態で、シール部材27の姿勢を安定させることができ、長期に亘って良好なシール性を維持することができる。
【0073】
また、シール部材27の上側三角形リップ部27Bと下側三角形リップ部27Dとを、互いに等しい直径をもって同心円状に配置し、上側三角形リップ部27Cと下側三角形リップ部27Eとを、互いに等しい直径をもって同心円状に配置したので、上側三角形リップ部27B,27Cと下側三角形リップ部27D,27Eとを、本体部27Aの上面側と下面側とで等しい位置に配置することができる。このため、切欠溝26と遮蔽板25との間にシール部材27を組付けるときに、シール部材27の上面側と下面側とを区別する必要がなく、シール部材27の誤組付けをなくすことができるので、シール部材27の交換時の作業性を一層高めることができる。
【0074】
次に、図7ないし図11は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、シール部材の上面側と下面側とに、本体部から異なる突出長さをもって突出した複数種類の三角形リップ部を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0075】
図中、31は切欠溝26と遮蔽板25との間に装着された環状のシール部材で、該シール部材31は、下側軸受22を潤滑するためのグリースを下側ハウジング13内に封止すると共に、図1に示す旋回輪3の内歯車3Dとピニオン20との噛合部から噴出したグリース等が下側ハウジング13内に侵入するのを阻止するものである。そして、シール部材31は、上述した第1の実施の形態によるシール部材27に代えて本実施の形態に用いたものである。
【0076】
ここで、シール部材31は、切欠溝26の周壁面26Bに装着される環状の本体部31Aと、本体部31Aの上面側に設けられた後述の上側三角形リップ部32と、本体部31Aの下面側に設けられた後述の下側三角形リップ部33とにより構成され、例えばウレタンゴムを用いて形成されている。
【0077】
この場合、本体部31Aの内径寸法は、第1の実施の形態によるシール部材27の本体部27Aと同様に、切欠溝26の周壁面26Bの外径寸法Dよりも小さく設定されている。これにより、シール部材31は、切欠溝26の周壁面26Bにその外周側から適度な緊縛力をもって装着することができる構成となっている。
【0078】
32は本体部31Aの上面側に設けられた突起状リップ部としての上側三角形リップ部で、該上側三角形リップ部32は、図8に示すように、二等辺三角形の断面形状をもって本体部31Aの上面側に環状に突設された2個の上側大三角形リップ部32A,32Bと、これら2個の上側大三角形リップ部32A,32B間に位置し、上側大三角形リップ部32A,32Bよりも小さい二等辺三角形の断面形状をもって本体部31Aの上面側に環状に突設された上側中三角形リップ部32C、上側小三角形リップ部32Dとにより、複数種類のリップ部の集合体として構成されている。
【0079】
この場合、本体部31Aからの上側中三角形リップ部32Cの突出長さは、上側大三角形リップ部32A,32Bの突出長さよりも小さく設定されている。また、本体部31Aからの上側小三角形リップ部32Dの突出長さは、上側中三角形リップ部32Cの突出長さよりも小さく設定されている。
【0080】
33は本体部31Aの下面側に設けられた突起状リップ部としての下側三角形リップ部で、該下側三角形リップ部33は、二等辺三角形の断面形状をもって本体部31Aの下面側に環状に突設された2個の下側大三角形リップ部33A,33Bと、これら2個の下側大三角形リップ部33A,33B間に位置し、下側大三角形リップ部33A,33Bよりも小さい二等辺三角形の断面形状をもって本体部31Aの下面側に環状に突設された下側中三角形リップ部33C、及び下側小三角形リップ部33Dとにより、複数種類のリップ部の集合体として構成されている。
【0081】
この場合、本体部31Aからの下側中三角形リップ部33Cの突出長さは、下側大三角形リップ部33A,33Bの突出長さよりも小さく設定されている。また、本体部31Aからの下側小三角形リップ部33Dの突出長さは、下側中三角形リップ部33Cの突出長さよりも小さく設定されている。
【0082】
また、上側大三角形リップ部32Aと下側大三角形リップ部33Aとは、互いに等しい直径をもって同心円状に配置され、上側大三角形リップ部32Bと下側大三角形リップ部33Bとは、互いに等しい直径をもって同心円状に配置されている。また、上側中三角形リップ部32Cと下側中三角形リップ部33Cとは、互いに等しい直径をもって同心円状に配置され、上側小三角形リップ部32Dと下側小三角形リップ部33Dとは、互いに等しい直径をもって同心円状に配置されている。これにより、上側三角形リップ部32と下側三角形リップ部33とは、本体部31Aの上面側と下面側とで等しい位置に配置することができる。このため、切欠溝26と遮蔽板25との間にシール部材31を組付けるときに、シール部材31の上面側と下面側とを区別する必要がなく、シール部材31の誤組付けをなくすことができる構成となっている。
【0083】
ここで、図8及び図9に示すように、切欠溝26の上壁面26Aと遮蔽板25の上面25Aとの間の軸方向寸法をB1とし、シール部材31の上側大三角形リップ部32A,32Bと下側大三角形リップ部33A,33Bとの間の軸方向寸法をB2とすると、これら軸方向寸法B1と軸方向寸法B2とは、下記数3の関係に設定されている。
【0084】
【数3】

【0085】
また、シール部材31の上側中三角形リップ部32Cと下側中三角形リップ部33Cとの間の軸方向寸法をB3とすると、この軸方向寸法B3と上述の軸方向寸法B1とは、下記数4の関係に設定されている。
【0086】
【数4】

【0087】
さらに、シール部材31の上側小三角形リップ部32Dと下側小三角形リップ部33Dとの間の軸方向寸法をB4とすると、この軸方向寸法B4と上述の軸方向寸法B3とは、下記数5の関係に設定されている。
【0088】
【数5】

【0089】
従って、図9に示すように、切欠溝26と遮蔽板25との間にシール部材31を装着した状態では、上側大三角形リップ部32A,32Bが、軸方向に弾性変形しつつ切欠溝26の上壁面26Aに押圧力をもって当接し、下側大三角形リップ部33A,33Bが、軸方向に弾性変形しつつ遮蔽板25の上面25Aに押圧力をもって摺接する構成となっている。
【0090】
そして、図10に示すように、下側大三角形リップ部33A,33Bが、遮蔽板25との摺接によって大きく摩耗したときには、切欠溝26の上壁面26Aに当接した上側大三角形リップ部32A,32Bの弾性によって本体部31Aが下方(遮蔽板25側)へと変位し、下側中三角形リップ部33Cが、遮蔽板25の上面25Aに適度な押圧力をもって摺接する構成となっている。
【0091】
さらに、図11に示すように、下側大三角形リップ部33A,33Bと下側中三角形リップ部33Cとが、遮蔽板25との摺接によって大きく摩耗したときには、上側大三角形リップ部32A,32Bの弾性によって本体部31Aがさらに下方へと変位し、下側小三角形リップ部33Dが、遮蔽板25の上面25Aに適度な押圧力をもって摺接する構成となっている。
【0092】
本実施の形態による減速装置は上述の如きシール部材31を有するもので、本実施の形態においても、シール部材31を切欠溝26の周壁面26Bにその外周側から装着することにより、シール部材31の摩耗状態を外部から容易に確認することができ、かつ、シール部材31を交換するときの作業性を高めることができる。
【0093】
しかも、本実施の形態によれば、シール部材31の上面側に設けられる上側三角形リップ部32を、本体部31Aからの突出長さが異なる上側大三角形リップ部32A,32Bと、上側中三角形リップ部32Cと、上側小三角形リップ部32Dとにより構成し、シール部材31の下面側に設けられる下側三角形リップ部33を、本体部31Aからの突出長さが異なる下側大三角形リップ部33A,33Bと、下側中三角形リップ部33Cと、下側小三角形リップ部33Dとにより構成している。
【0094】
これにより、シール部材31を切欠溝26と遮蔽板25との間に装着した状態で、遮蔽板25との摺接によって下側大三角形リップ部33A,33Bが大きく摩耗したときには、下側中三角形リップ部33Cを適度な面圧をもって遮蔽板25に摺接させることができ、下側中三角形リップ部33Cが大きく摩耗したときには、下側小三角形リップ部33Dを適度な面圧をもって遮蔽板25に摺接させることができる。この結果、シール部材31の寿命を延ばすことができ、1個のシール部材31によって下側ハウジング13と遮蔽板25との間を長期に亘って確実にシールすることができる。
【0095】
また、シール部材31の下面側には、突出長さが異なる下側大三角形リップ部33A,33B、下側中三角形リップ部33C、下側小三角形リップ部33Dからなる3種類のリップ部を設ける構成としている。これにより、例えばシール部材31の加工精度のばらつきがある場合でも、突出長さが異なる3種類のリップ部のいずれかを、遮蔽板25に適正な面圧をもって摺接させることができ、シール部材31と遮蔽板25との間を確実にシールすることができる。
【0096】
なお、上述した第1の実施の形態では、シール部材27の上側三角形リップ部27Bと下側三角形リップ部27D、及び上側三角形リップ部27Cと下側三角形リップ部27Eを、それぞれ本体部27Aの上面側と下面側とで等しい位置に配置した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図12に示す変形例のシール部材27′のように構成してもよい。即ち、シール部材27′の上側三角形リップ部27B′と下側三角形リップ部27D′、及び上側三角形リップ部27C′と下側三角形リップ部27E′を、それぞれ本体部27A′の上面側と下面側とで異なる位置に配置する構成としてもよい。
【0097】
また、上述した実施の形態では、ハウジング12内に2段の遊星歯車減速機構17,18を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば1段、または3段以上の遊星歯車減速機構を設ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施の形態による減速装置が適用された旋回装置を示す断面図である。
【図2】下側ハウジング、ピニオン、遮蔽板、切欠溝、シール部材等を示す断面図である。
【図3】シール部材を単体で示す一部破断の斜視図である。
【図4】シール部材の本体部、上側三角形リップ部、下側三角形リップ部を示す拡大断面図である。
【図5】切欠溝と遮蔽板との間にシール部材を装着した状態を示す拡大断面図である。
【図6】下側三角形リップ部が摩耗した状態を示す図5と同様な拡大断面図である。
【図7】第2の実施の形態によるシール部材を、下側ハウジング、ピニオン、遮蔽板、切欠溝等と共に示す図2と同様な断面図である。
【図8】第2の実施の形態によるシール部材の本体部、上側三角形リップ部、下側三角形リップ部を示す図4と同様な拡大断面図である。
【図9】第2の実施の形態によるシール部材を切欠溝と遮蔽板との間に装着した状態を示す拡大断面図である。
【図10】下側中三角形リップ部が遮蔽板に摺接した状態を示す図9と同様な拡大断面図である。
【図11】下側小三角形リップ部が遮蔽板に摺接した状態を示す図9と同様な拡大断面図である。
【図12】シール部材の変形例を示す図4と同様な拡大断面図である。
【符号の説明】
【0099】
3 旋回輪
3D 内歯車(歯車)
6 油圧モータ(回転源)
11 減速装置
12 ハウジング
13 下側ハウジング
13C 下端部
17,18 遊星歯車減速機構(減速機構)
19 出力軸
20 ピニオン
21 上側軸受
22 下側軸受
24 オイルシール
25 遮蔽板
26 切欠溝
26A 上壁面
26B 周壁面
27,27′,31 シール部材
27A,27A′,31A 本体部
27B,27C,27B′,27C′,32 上側三角形リップ部(突起状リップ部)
27D,27E,27D′,27E′,33 下側三角形リップ部(突起状リップ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端側に回転源が設けられたハウジングと、該ハウジング内に設けられ前記回転源の回転を減速する減速機構と、前記ハウジング内を上,下方向に延びて設けられ該減速機構により減速された回転を出力する出力軸と、該出力軸の下端側に設けられ歯車に噛合するピニオンと、前記ハウジングと前記出力軸との間に上,下方向に離間して設けられ前記出力軸を回転可能に支持する上側軸受および下側軸受と、これら上,下の軸受間に位置して前記ハウジングと前記出力軸との間に設けられ前記ハウジング内に前記減速機構を潤滑する潤滑油を封止するオイルシールと、内周側が前記下側軸受と前記ピニオンとの間に挟持されると共に外周側が前記ハウジングの下端部まで延在し前記ピニオンと前記歯車との噛合部を潤滑するグリースが前記ハウジング内に侵入するのを遮断する円板状の遮蔽板とを備えてなる減速装置において、
前記ハウジングの下端部には、前記ハウジングの外周側と下面側とのコーナ部に開口した状態で全周に亘って切欠かれ、前記遮蔽板と上,下方向で対面する上壁面と、該上壁面の内径側を軸方向に延びる環状の周壁面とを有する切欠溝を設け、
該切欠溝と前記遮蔽板との間には環状のシール部材を設け、
該シール部材は、前記切欠溝の周壁面にその外周側から緊縛力をもって装着される本体部と、該本体部から突出し前記切欠溝の上壁面に当接すると共に前記遮蔽板に摺接する突起状リップ部により構成したことを特徴とする減速装置。
【請求項2】
前記シール部材の前記突起状リップ部は、前記本体部の上面側および下面側から突出した断面三角形状をなす三角形リップ部により構成してなる請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記シール部材の前記突起状リップ部は、前記本体部の上面側および下面側にそれぞれ2個以上設ける構成としてなる請求項1または2に記載の減速装置。
【請求項4】
前記シール部材の前記突起状リップ部は、前記本体部の上面側と下面側とで等しい直径をもって同心円状に配置する構成としてなる請求項1,2または3に記載の減速装置。
【請求項5】
前記シール部材の前記突起状リップ部は、前記本体部から異なる突出長さをもって突出した断面三角形状をなす複数種類の三角形リップ部により構成してなる請求項1,2,3または4に記載の減速装置。
【請求項6】
前記シール部材は、ウレタンゴムを用いて形成してなる請求項1,2,3,4または5に記載の減速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−150475(P2009−150475A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328633(P2007−328633)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】