説明

渦強化ろ過装置

【課題】テーラー渦を利用した有利かつ改善された濾過装置及び濾過方法を提供する。
【解決手段】本発明に従う濾過装置は、濾過膜の少なくとも一側面にテーラー渦を生じさせる構成の少なくとも1のロータ203を備えることによって、濾過膜を横切る物質移動を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2010年1月21日に出願された米国仮出願第61/297,250に関する優先権を主張するものである。この出願はまた、米国特許第7,425,265号(Schoendorfer)、米国特許第7,220,354号(McLaughlin及び Schoendorfer)、米国特許第7,374,677号(McLaughlin及び Schoendorfer)及び、米国特許第7,531,094号全体に関するものであり、これら特許の全ては、その全体が本願中に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
本発明の態様は、少なくともフィルタの片側にテーラー渦を生じさせる装置に関し、これによって、物質移動を改善するとともに、濃度分極を最小化する。本発明の実施形態は、特に、発酵ブロスからセル状材料(例えば、酵母のような微生物)を分離するのに役立つ。
(関連技術の説明)
【0003】
様々なタイプの濾過工程についての取組みの1つは、“濃度分極”として科学的に説明される濾過閉塞である。濾過膜における選択的な透過性特性の結果として、濾過膜を通過しないで濾過した材料は、濾過膜の表面上に集中することになる。この現象は、コーヒーフィルタのようなデッドエンド型の濾過の場合について明らかに例証されている。濾過工程の進行中、濾過した材料(コーヒーの出し殻)がフィルタ上に蓄積されるとともに、濾液に流体抵抗を生じさせ、液体(コーヒー)はフィルタを通して取り出される。従って、濾液の流れが減少するとともに、濾過性能が減少する。
【0004】
濃度分極の問題に対する様々な解決方法が提案されている。これらは、以下のものを含んでいる。すなわち、流体の速度及び/又は圧力を増加させること(例えば、1980年 Merinらによる“J Food Proc. Pres. 4(3)”第183〜198頁参照);供給チャネルに乱流を生じさせること(例えば、Blattらによる“Membrane Science and Technology, Plenum Press, New York, 1970”第47〜97頁参照);フィルタ上の供給流れを脈動させること(例えば、1974年 Kenndyらによる“Chem. Eng Sci. 29”第1927〜1931頁参照);タンジェンシャルフロー及び/又はディーン渦を生じさせるために流路を設計すること(1993年 Chungらによる“J. Memb. Sci. 81”第151〜第162頁);及び、テーラー渦を生じさせるための回転濾過を使用すること(例えば、2001年 Lee及び Lueptowによる“J. Memb. Sci. 192”第129〜143頁、並びに、米国特許第5,194,145号、米国特許第4,675,106号、米国特許第4,735,729号、米国特許第4,816,151号、米国特許第5,034,135号、米国特許第4,740,331号、米国特許第4,670,176号及び、米国特許第5,738,792号等であり、これら特許の全ては、その全体が本願中の参照技術として組み入れられる。米国特許第5,034,135号では、Fischelは、血液分離を促進するためにテーラー渦を生じさせることを開示している。Fischelは、回転スピナーとシリンダハウジングとの間の隙間の幅に関するバリエーションを述べているが、円周断面周りでの幅について教示するものではない。
【0005】
テーラー渦は、同軸配置されたシリンダメンバの間の隙間において、アウターメンバに対してインナーメンバを回転させることによって引き起こすことができる。テーラークエット型濾過装置は、遠心性の流れ不安定性(“テーラー不安定性”)の結果として強力な渦を生じさせ、この遠心性の流れ不安定性は、フィルタの裏に沿って堆積した濾過した材料を、処理される流体に混合させるために利用される。一般に、円筒フィルタは、静止したアウターハウジング内を回転する。濃度分極のために、膜の詰まりがデッドエンド又はタンジェンシャルフロー濾過に比べて非常に遅くなることが観察された。実際に、濾過性能は、約100倍に改善することができる。
【0006】
回転濾過装置でのテーラー渦の使用は、全血からの血漿の分離に応用されている。こうした応用に対し、分離器は、患者に対する1回使用のために、安価で使い切りでなければならなかった。さらに、こうした分離器は、比較的短い時間周期(例えば、約45分)で動作させなければならなかった。さらに、分離器は、確実にドナーから集めることができる血液の流量(例えば、約100ml/min)を受け入れるための大きさであった。この技術は、血液処理業界に顕著な改善を提供した。回転濾過システム(テーラー渦)で見られる有利かつ改善された濾過性能は、発酵製品(例えば、ワイン、ビール、バイオ発酵)の濾過を含む商業的な他の濾過分野まで検討されていない。
(発明の概要)
【0007】
一実施形態では、濾過装置は、シリンダハウジング、当該シリンダハウジング内に同軸配置されたフィルタエレメント、当該フィルタエレメント内に同軸配置された円筒ロータ及び、ロータとハウジングとの間に同軸に、濾過エレメントを支持するために構成されたフィルタサポートを備え、ロータとフィルタエレメントとの間に隙間が配置されている。
【0008】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間が、動作中にテーラー渦を生成する大きさである。
【0009】
濾過装置の一実施形態では、ロータと、回転しない隔壁の両者が、濾過エレメントを構成する。
【0010】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約100〜約60000のテーラー数を与えるように設定されている。
【0011】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約200〜約10000のテーラー数を与えるように設定されている。
【0012】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約400〜約4000のテーラー数を与えるように設定されている。
【0013】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約500〜約3000のテーラー数を与えるように設定されている。
【0014】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約600〜約1000のテーラー数を与えるように設定されている。
【0015】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約1270〜約152400(sec-1)のせん断速度を与えるように設定されている。
【0016】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約3810〜約76200(sec-1)のせん断速度を与えるように設定されている。
【0017】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約5080〜約38100(sec-1)のせん断速度を与えるように設定されている。
【0018】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約6350〜約20320(sec-1)のせん断速度を与えるように設定されている。
【0019】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約7620〜約12700(sec-1)のせん断速度を与えるように設定されている。
【0020】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約0.02〜約15(sec)の、せん断速度に対するテーラー数の割合を与えるように設定されている。
【0021】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約0.04〜約8(sec)の、せん断速度に対するテーラー数の割合を与えるように設定されている。
【0022】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、動作中に約0.08〜約1(sec)の、せん断速度に対するテーラー数の割合を与えるように設定されている。
【0023】
濾過装置の一実施形態では、前記隙間の大きさ、及び/又は、ロータの回転速度が、約100〜約60000、又は、約200〜約10000、又は、約400〜約4000、又は、約500〜約3000、又は、約600〜約1000のテーラー数、約1270〜約152400(sec-1)、又は、約3810〜約76200(sec-1)、又は、約5080〜約38100(sec-1)、又は、約6350〜約20320(sec-1) 又は、約7620〜約12700(sec-1)のせん断速度、及び、約0.02〜約15(sec)、又は、約0.04〜約8(sec)、又は、約0.08〜約1(sec)の、せん断速度に対するテーラー数の割合の少なくとも1つを与えるように設定されている。
【0024】
濾過装置の一実施形態では、各濾過エレメントは、約50〜50000(cm2)の間の総濾過面積を有する。
【0025】
濾過装置の一実施形態では、各濾過エレメントは、約100〜25000(cm2)の間の総濾過面積を有する。
【0026】
濾過装置の一実施形態では、濾過エレメントは、約300〜20000(cm2)の間の総濾過面積を有する。
【0027】
濾過装置の一実施形態では、各濾過エレメントは、約800〜12000(cm2)の間の総濾過面積を有する。
【0028】
濾過装置の一実施形態では、濾過エレメントサポートは、複数のエレメントサポートセクションを備え、各セクションは、実質的に濾過エレメントの異なる部分を支持する。
【0029】
濾過装置の一実施形態では、濾過エレメントサポートが複数のエレメントサポートセクションを備え、各セクションは、実質的に濾過エレメントの異なる部分を支持するとともに、複数の濾過エレメントセクションはそれぞれ、濾過エレメントから分離させることができる。
【0030】
他の実施形態では、濾過方法が開示されている。当該方法は、上記濾過装置を提供すること;回転駆動手段を動作させることによってロータを回転させること;濾過される溶液又は懸濁液であって、透明な液体と混入物質で構成された溶液又は懸濁液を濾過装置の供給ポート内に導入すること;少なくとも1つの濾過ポートから、実質的に混入物質を含まない澄んだ濾液を回収すること;濃縮ポートから混入物質を構成する濃縮物を回収すること;濾過される溶液又は懸濁液は、ビールの発酵ブロス(麦汁)、ワイン、シードルの発酵ブロス、蒸留酒の発酵ブロス、未分離(全)発酵ブロス、分離された発酵ブロス、抽出物、植物流及びフルーツジュースからなるグループから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】複数分割型のテーラー濾過装置を示す。
【図2】本発明の一実施形態である、回転濾過装置の断面図である。
【図3】図2の回転濾過装置のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
濾過は、約100から約60000のテーラー数を生成するテーラー渦を生み出す条件の下、発酵ブロス、農業プロセス流れ、及び、化学的な廃棄流れを含む様々な流れに存在する成分を分離するために利用することができる。濾過は、約1270から約152400(sec-1)のせん断速度を有する条件の下、又は、約0.02から約15(sec)の、せん断速度に対するテーラー数の割合を有する条件の下、又は、これらの条件の組合せを与える条件の下、様々な流れに存在する成分を分離するために利用することができる。
【0033】
テーラー渦、さもなくば、本明細書中にて、テーラー渦度として参照されるものは、フィルタを通した物質移動を1桁又は2桁の大きさで増加させることができることが知られている。これは、流体の成分をサイズセパレーションによって供給流体から除去することが望ましい場合に有益である。他の濾過プロセスでは、供給流体の成分は、後述の濃度勾配によって除去される。
【0034】
上述のように、濃度分極は、膜の供給側及び濾過側で問題となる可能性がある。本発明の好適な実施形態では、濾過膜の両側での濃度分極の問題は、膜の両側にテーラー渦を生じさせることによって、若しくは、膜の両側のせん断特性を修正することによって、又は、その両方によって解決することができる。
【0035】
一実施形態では、テーラー渦を利用した濾過装置は、図1に示す装置のように、複数分割型のサポートを有する濾過面を利用することができる。図1にて、ハウジング201は、ロータ203を取り囲むフィルタエレメント202を含む。ロータ203は、ベアリング面、磁気サスペンション、流体サスペンション、又は、少なくとも1つのメカニカルシャフト210の利用を通して使用可能に位置決めすることができ、ロータとフィルタエレメントとの間には、濾過した材料が供給ポート204からロータ203とフィルタエレメント202の間を通って、濃縮ポート206に取り出される隙間を備える。フィルタハウジング201とフィルタエレメント202の間には第2の隙間を設けることができ、この隙間によって、フィルタエレメント202から少なくとも1つの濾過ポート205への濾過の流れが可能になる。フィルタエレメント202は、ハウジング201及び/又は少なくとも1つのカバー208に封止させることができ、実質的には、供給材料がフィルタエレメント202を迂回して濾過ポート205に入ることを防止する。ある実施形態では、フィルタサポート207は、少なくとも部分的にフィルタエレメント202を取り囲むことができ、フィルタエレメントの強度及び圧力性能を高める。ある実施形態では、フィルタサポート207は、通路、溝、細孔、穴等のような、表面特性を有することができ、濾液のための流路を供給して濃縮ポート205に通じさせる。フィルタサポート207の表面特性は、内面、外面、又は、その両方にもたせることができる。
【0036】
濾過サポート207の好適なデザインでは、1、2、3、4又はそれ以上のセクション又はピースで構成するものを含むことができる。ある実施形態では、個々のセクション又はピースは、リングやスリーブのようなフィルタエレメント202にスライドするように、円形にすることができる。ある実施形態では、個々のセクションは、図1に示すこれらに関するデザインを含み、フィルタエレメント202の周囲の一部分だけに跨って伸ばすことができる。
【0037】
フィルタサポートセクションの間には、必須ではないが、シーリングを設けることができ、このシーリングは、個々のセクションにおける互いの、或いは、他の部分の精密公差、セクションにおける互いの、或いは、他の部分の変形、ガスケット、Oリング、溶接、接着、コーキング又は他の任意の好適な手段によって達成させることができる。フィルタサポート207における個々のピース又はセクションは、所定位置に、アタッチメントによって、フィルタエレメント202の端部にそれぞれ、固定することができ、バンド、ストラップ、ロックリング、タブ、接着など、ハウジング201及び/又はフィルタエレメント202にインターフェースで結び付けられる。
【0038】
ある実施形態では、カバー又は着脱カバー208は、フィルタハウジング201の一端又は両端に配置することができる。カバー208とハウジング201との取り付けは、ねじ、フランジ、クランプ又は他の好適な手段によって可能であり、ガスケット、Oリング等を含む、任意の適切なシーリング装置を含めることができる。フィルタエレメントは、ハウジング201、カバー208又はその両方に封止することができる。
【0039】
ある実施形態では、シャフト210は、ロータ203からカバー208又はハウジングの閉鎖端に伸ばすことができ、カバー208の表面又はハウジング201の閉鎖端に隣接させることができる。代わりに、シャフト210は、カバー208又は閉鎖端を貫通させることができる。ベアリングは、カバー208の内側又は外側、若しくは、ハウジング端に配置することができ、メカニカルシール、ラビリンスシール、リップシール又はパッキングランドのようなシールを、ハウジング又はカバー208に設け、シャフト210に沿った漏れを減少させることができる。
【0040】
ある実施形態では、第2シャフトは、第1シャフト210からフィルタエレメント及びハウジングの反対端に配置することができる。
【0041】
ある実施形態では、流体経路は、ハウジングの外部にシャフトの真ん中を通して設けることができる。こうしたシャフト210を通る流路は、例えば、ロータ203にフィルタエレメントを配置することと協同して利用することができ、濾過は、濾液がシャフト210から流路を通って出ることによって、ロータを通して起きる。ある実施形態では、シャフト210を通る流路は、濾過した材料の少なくとも一部がロータに入ることによって、濃縮のための排出地点として利用することができ、供給ポートからの末端地点として、ロータを介して通って、それから、シャフト210の流路を通って取り出される。
【0042】
様々な実施形態では、フィルタエレメントを備えるロータは、ハウジング201とロータ203との間に配置されたフィルタエレメントと協同して利用することができ、このようにして、1つのハウジング内に複数の濾過面を提供することができる。ある実施形態では、複数の濾過面の濾過特性は、同一にすることができる。ある実施形態では、複数の濾過面の濾過特性は、相違させることができる。複数の濾過特性の間で同一又は相違させることができる様々な特性には、穴径、構成材料、表面処理、イオン特性などを含む。
【0043】
動作中、供給流は、供給ポート204を通して流入させることができ、そして、当該流体は、ロータ203とフィルタエレメント202の間を通すことができ、そして、濃縮ポート206で取り出すことができる。濾液物質は、フィルタエレメント202を通って、少なくとも1つの濾過ポート205から放出される。同時に、ロータが回転できることで、テーラー渦度の形成を促進し、及び/又は、流体が受けるせん断速度を増加させる。
【0044】
ロータ203の回転速度と、ハウジング201及び当該ハウジング内の様々なパーツ(例えば、ロータ203とフィルタエレメント202)の寸法は、異なる量の濾過面積を与えるだけでなく、異なるせん断速度と、異なるテーラー流れ/テーラー渦特性を与えるために変更することができる。既知の任意の様々な回転駆動手段を、ロータの所望する回転速度を達成するために使用することができる。これらには、例えば、モータ、電気モータ、タービン(以下に記載)などが含まれる。
【0045】
せん断速度とテーラー数の決定は、同技術分野において既知である。例えば、Hermann Schlichtingの“境界層理論(Boundary Layer Theory)”(McGraw-Hill 1968年 Springerから入手可能なアップデートされたバージョン)を参照のこと。
【0046】
【数1】

ここに、
s = 速度
h = 表面の間の距離 である。
【0047】
ω rpmで回転している半径Rの円筒ロータに対し、当該ロータと隣接壁(構成に応じてフィルタハウジング又はフィルタエレメント)との間の隙間d(d及びRは、不変単位)によって、式は、以下のようになる。:
【0048】
【数2】

【0049】
同様のジオメトリに対しては、テーラー数は、以下のとおりである。:
【0050】
【数3】

ここに、
ν は、cm/secの単位の動粘度である。
【0051】
【数4】

【0052】
フィルタ及びロータの速度の好適な構成には、テーラー数が、約100から約60000の範囲内、又は、約200から約10000の範囲内、又は、約400から約4000の範囲内、又は、約500から約3000の範囲内、又は、約600から約1000の範囲内にあるものを含む。好適な構成及び速度は、波形渦流が存在するとともに、スパイラル渦流が存在するものを含む。
【0053】
好適なフィルタ及びロータ速度の構成は、せん断速度が、約1270〜約152400(sec-1)、又は、約3810〜約76200(sec-1)、又は、約5080〜約38100(sec-1)、又は、約6350〜約20320(sec-1)、又は、約7620〜約12700(sec-1)のものを含む。
【0054】
フィルタ及びロータ速度の好適な構成は、せん断速度に対するテーラー数の割合が、約0.02〜約15(sec)、又は、約0.04〜約8(sec)、又は、約0.08〜約1(sec)のものを含む。
【0055】
ある実施形態では、テーラー数が、約100〜約60000、又は、約200〜約10000、又は、約400〜約4000、又は、約500〜約3000、又は、約600〜約1000の範囲内にあるとともに、せん断速度が、約1270〜約152400(sec-1)、又は、約3810〜約76200(sec-1)、又は、約5080〜約38100(sec-1)、又は、約6350〜約20320(sec-1)、又は、約7620〜約12700(sec-1)の範囲内にあるものを含む。ある実施形態では、テーラー数が、約100〜約60000、又は、約200〜約10000、又は、約400〜約4000、又は、約500〜約3000、又は、約600〜約1000の範囲内にあるとともに、せん断速度に対するテーラー数の割合が、約0.02〜約15(sec)、又は、約0.04〜約8(sec)、又は、約0.08〜約1(sec)の範囲内にあるものを含む。ある実施形態では、せん断速度が、約1270〜約152400(sec-1)、又は、約3810〜約76200(sec-1)、又は、約5080〜約38100(sec-1)、又は、約6350〜約20320(sec-1)、又は、約7620〜約12700(sec-1)の範囲内にあるとともに、せん断速度に対するテーラー数の割合が、約0.02〜約15(sec)、又は、約0.04〜約8(sec)、又は、約0.08〜約1(sec)の範囲内にあるものを含む。ある実施形態では、フィルタを通しての流れは、波形渦流れが存在するとともに、螺旋渦流れ特性及びせん断速度が約1270〜約152400(sec-1)、又は、約3810〜約76200(sec-1)、又は、約5080〜約38100(sec-1)、又は、約6350〜約20320(sec-1)、又は、約7620〜約12700(sec-1)であるとともに、せん断速度に対するテーラー数の割合が、約0.02〜約15(sec)、又は、約0.04〜約8(sec)、又は、約0.08〜約1(sec)であるものを含む。
【0056】
好適なフィルタは、約10、20、40又は60cm2の濾過面積のように、比較的小さな膜面積を有するフィルタを含む。好適なフィルタはまた、約3000、6000、9000、10000、11000cm2又はそれ以上の表面積を有するフィルタを含み、約1m2、約2m2、約4m2、約10 m2又はそれ以上の面積を有するフィルタを含む。表面積の量を増やすとき、フィルタエレメントの直径、フィルタエレメントの長さは、ロータとフィルタエレメントとの間の隙間、又は、回転するフィルタエレメント及びハウジングの間の隙間、又は、2つの濾過エレメントが存在するところでの調整で増加させることができ、回転フィルタエレメントと静止フィルタエレメントとの間の隙間を調整することができ、回転部分の速度が、テーラー数の許容数値、せん断速度、せん断速度に対するテーラー数の割合、又は、これら数値の許容できる任意の組み合わせを与えるために調整される。ある実施形態では、2以上の濾過装置を、並列、直列、又は、並列及び直列の組み合わせで配置することができる。
【0057】
好適な構成は、表1に示す構成を含む。
【表1】

【0058】
様々な実施形態では、濾過エレメントは、膜濾過面を構成することができ、逆浸透圧法、限外濾過、ナノ濾過、又は、精密濾過に利用することができる。濾過エレメントは、非対称な穴構成を利用することができ、供給側に最も近い表面は、供給側から最も遠い表面よりも小さな開口を有する。濾過エレメントは、ポリマー、セラミック及び金属を含む、任意の好適な材料で構成することができ、焼結又は鋳造又はフィルム技術によって作られる材料を含むことができる。ある実施形態では、濾過エレメント及びサポートは、約10から約1000(psi)若しくはそれ以上の圧力差、又は、約10及び600(psi)の間、又は、約20及び400(psi)の間、又は、約30及び150(psi)の間、又は、約50及び100(psi)の間の圧力差を維持することができる。ある実施形態では、濾過エレメントは、仮にサポートを利用しない場合、裂けたり、破れたり、又は、漏れたりするであろう。
【0059】
ある実施形態では、本明細書中の濾過装置は、発酵ブロス、前処理された発酵ブロス、植物流若しくは動物流、又は、前処理された植物流若しくは動物流の分離を実行するために利用することができ、全発酵ブロス、分離発酵ブロス、抽出物、反応ブロス、副流、廃液流などを含む。適応可能な発酵ブロスには、ビール、ワイン、シードル又は蒸留酒を対象とした飲料業で利用されるものが含まれ、;同様に、エタノール若しくは他のアルコール、トリグリセリド、一部グリセリド、ハイドロカーボン、ホスホリピド、一部ホスホリピド、バイオディーゼルなどを対象とした燃料業;薬及びバイオ製品を対象とした製薬業;キサンタンガム、ゲランガム、栄養油、菌類又は微細藻類に由来するこれらを含むもの;酵母及びたんぱく質ブロス;を対象とした食品業で使用されるものが含まれる。適応可能な植物性流又は動物性流は、全抽出物及び加水分解物質、分離した抽出物及び加水分解物質、反応した抽出物及び加水分解物質、副流、廃液流などを含んだ、ジュース(例えば、オレンジ、リンゴ、梨、ザクロ、パイナップルなど)、たんぱく質生成流(大豆、牛肉、鳥肉、ブロス)、油又は脂質生成流、炭水化物生成流などを含む。
【0060】
ある実施形態では、タービン又は他の回転誘導装置は、ロータを回転させる流体運動を利用するために、フィルタのデザインに組み入れることができる。図2には、本発明の一実施形態である、回転濾過装置300の断面図が示されている。断面図は、回転濾過装置のハウジング350を線分A-A'に沿って二分割するとともに、ロータ310をそのままの状態で示す。回転濾過装置300は、ハウジング350の空洞内に、同軸に配置されたロータ310を備える。図示の実施形態では、ロータ310と空洞はともに円筒形である。ある実施形態では、ロータ310は、回転濾過装置300の中心軸302に沿ってハウジング350内の2つの支柱352に取り付けられている。これらの支柱は、ロータ310の軸方向移動及び径方向移動の両方を制限する。ロータ310のアウターウォール312と、ハウジング350のインナーウォール354の間には、隙間304が存在する。隙間304は、ロータ310の周りを均等に拡大する。他の実施形態では、支柱352を使用しないで、ロータ310は、隙間304を通るプロセス流体の流れによってハウジング350内に支持される。
【0061】
ハウジング350は、入口ポート356と、少なくとも1つの濾過ポート358を備える。プロセス流体は、回転濾過装置300内に入口ポート356を経て流入する。濾液(濾過したプロセス流体)は、回転濾過装置300から濾過ポート358を経て流出する。加えて、ハウジング350は、出口ポート(図示せず)を備え、プロセス流体は、回転濾過装置300から出口ポートを通って流出する。出口ポートは、回転濾過装置300を通るプロセス流体の流れが、回転濾過装置300からの濾液の流れよりも大きな速度になることを可能にする。各ポートの数は、プロセス流体の流れを変更するために調整することができる。
【0062】
ロータ310は、少なくとも部分的にプロセス流体の流路内に配置された回転駆動手段314を備え、ロータ310の回転を御する。図示の実施形態では、回転駆動手段314は、複数のタービン羽根を備える。これらタービン羽根は、入口ポート356に配置されているとともに、入口ポート356を経て回転濾過装置300内に流入するプロセス流体の流れは、ロータ310の回転を御する。回転駆動手段314の配置には他にも、出口ポートの近く、ロータのいずれか一端から伸びるシャフト上、入口ポートと出口ポートの間のロータに沿った中間位置、又は、これらの位置との任意の組み合わせ位置を含む。
【0063】
フィルタ306は、隙間304内に配置される。図示の実施形態では、フィルタ306は、ハウジング350のインナーウォール354に取り付けられる。他の実施形態では、フィルタ304は、ロータ310のアウターウォール312に取り付けることができる。この実施形態に対し、入口ポート356は、ロータ310のアウターウォール312に対するフィルタ306の取付に対応するため、再配置させることで、プロセス流体の流れがロータ310の内部に直接流入する。
【0064】
ある実施形態によれば、フィルタは、マイクロ膜、マクロ膜、ナノ膜、濾過膜及び逆浸透膜を含むグループから選択される濾過膜で構成される。
【0065】
図3は、図2の回転濾過装置300のA-A'断面図である。図2を参照して上述したように、ロータ310は、回転駆動手段314を備え、この回転駆動手段314を少なくとも部分的にプロセス流体の流路内に配置することで、ロータ310の回転を御する。回転駆動手段314は、複数のタービン羽根316を備える。これらのタービン羽根316は、入口ポート356に配置されるとともに、回転濾過装置300に入口ポート356を経て流入したプロセス流体を捕らえるために形作られて、ロータ310の回転を御する。好ましくは、プロセス流体は、ロータに所望の回転速度を生じさせるために、十分に高い流量及び圧力で圧送される。
【0066】
当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、本発明の好適な実施形態を実現するため、様々な変更及び修正を行うことができる。それゆえ、同等の機能を実現するために、特許請求の範囲内において様々な変更を行うことができる。
【実施例】
【0067】
(発酵ブロスの濾過)
ワイン製造から生じる発酵ブロスは、発酵液と、懸濁コロイド状の溶解した粒子状の混入物の両方を含有し、この混入物は、酵母、浮遊物及びコロイド状のヘイズ粒子などを含み、透明な液体にするために濾過される。
【0068】
濾過を実行する方法は、上述のような濾過装置を提供することを含む。ある実施形態では、ワイン醸造中に生成される発酵ブロスは、濾過装置の供給ポートを通して導入される。ロータは回転駆動手段を作動させることによって回転し、テーラー渦の形成を促進し、及び/又は、発酵ブロスが受けるせん断速度を増加させる。好ましくは、ワインに対して、テーラー数は、約639であり、せん断速度は、7983/secである。液体ワインは、装置のフィルタエレメントを通過して、濾過ポートから回収される。混入物は、装置の濃縮ポートを通して取り出される。
【0069】
上述の表1は、濾過装置に対する構成及び回転速度の範囲を示す。表1の上段は、50mL/minの濾過速度で、ヒト全血液から血漿を分離するために一般的に使用される構成を示す。隙間とrpm(毎分回転数)は、ヒトの血液細胞に与えるダメージを最小限に抑えながら、濾過速度を最大にするために選択された。
【0070】
商業的かつ実用的に適応させた濾過には、はるかに大きい供給速度が求められる。表1は、血液分離のために最適化された従来と同じテーラー数及びせん断速度が提供されるまで、大きさ、隙間及びRPMをどのくらい調整できるかを示す。例えば、表1の最後の段は、80cmのケース長さを有する42cmのロータが、0.106cmの隙間で、385RPMで回転したとき、テーラー数(637)及びせん断速度(7983/sec)に非常に近いテーラー数及びせん断速度を、上述の血液分離のために使用される濾過装置に提供することを示す。しかしながら、この構造は、174倍の表面積(10550cm2/60.8cm2)が求められる。濾過速度は、膜の表面積に対してほぼ線形であるので、この構造は、約8700mL/min (50 mL/min x 174)、又は、約8.7L/min、又は、約2ガロン/minの濾過流量を生じさせる。80cmから160cmまでの長さを倍にすれば、濾過速度を約4ガロン/minに倍増させる。
【0071】
血液のために開発された操作パラメータは単に、例としてのみ提供される。制約はそこに、供給溶液(全血)が約40%の細胞(ある意味で固形分40%)であり、極めてせん断に敏感である事実を含む。商業的に適応させた多くの場合、供給溶液中の固形分の割合がかなり少なく、せん断に対する供給溶液の感度はかなり低い。例えば、ワインをボトル詰めする前の最終的な浄化/濾過工程では、固形物割合を1%未満にでき、せん断感度は、著しい摩擦熱を防止すること以外、全くなくすことができる。これらのケースでは、濾過流量は、ヒトの全血の濾過で得られるよりも数倍高くなっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給ポート、濾過ポート及び濃縮ポートを有するシリンダハウジング;
当該ハウジング内に同軸配置されたフィルタエレメント;
当該フィルタエレメント内に同軸配置された円筒ロータ;及び、
当該ロータと前記ハウジングとの間に同軸に、前記フィルタエレメントを支持するために構成されたフィルタサポート;
を備え、
ロータとフィルタエレメントとの間に隙間が配置された濾過装置。
【請求項2】
前記隙間が、動作中にテーラー渦を生成する大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記隙間が、動作中に約100〜約60000のテーラー数を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記隙間が、動作中に約200〜約10000のテーラー数を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記隙間が、動作中に約400〜約4000のテーラー数を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記隙間が、動作中に約500〜約3000のテーラー数を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項7】
前記隙間が、動作中に約600〜約1000のテーラー数を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項8】
前記隙間が、動作中に約1270〜約152400(sec-1)のせん断速度を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項9】
前記隙間が、動作中に約3810〜約76200(sec-1)のせん断速度を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項10】
前記隙間が、動作中に約5080〜約38100(sec-1)のせん断速度を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項11】
前記隙間が、動作中に約6350〜約20320(sec-1)のせん断速度を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項12】
前記隙間が、動作中に約7620〜約12700(sec-1)のせん断速度を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項13】
前記隙間が、動作中にせん断速度に対するテーラー数の割合として、約0.02〜約15(sec)を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項14】
前記隙間が、動作中にせん断速度に対するテーラー数の割合として、約0.04〜約8(sec)を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項15】
前記隙間が、動作中にせん断速度に対するテーラー数の割合として、約0.08〜約1(sec)を与える大きさである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項16】
各濾過エレメントは、約50〜50000(cm2)の間の、総濾過面積を有する請求項1に記載の濾過装置。
【請求項17】
各濾過エレメントは、約100〜25000(cm2)の間の、総濾過面積を有する請求項1に記載の濾過装置。
【請求項18】
各濾過エレメントは、約300〜20000(cm2)の間の、総濾過面積を有する請求項1に記載の濾過装置。
【請求項19】
各濾過エレメントは、約800〜12000(cm2)の間の、総濾過面積を有する請求項1に記載の濾過装置。
【請求項20】
濾過エレメントサポートは、複数のエレメントサポートセクションを備え、各セクションは、実質的に濾過エレメントの異なる部分を支持する請求項1に記載の濾過装置。
【請求項21】
複数の濾過エレメントサポートセクションはそれぞれ、濾過エレメントから分離させることができる請求項1に記載の濾過装置。
【請求項22】
請求項1の濾過装置を提供すること;
回転駆動手段を動作させることによってロータを回転させること;
濾過される溶液又は懸濁液であって、透明な液体と混入物質で構成された溶液又は懸濁液を濾過装置の供給ポート内に導入すること;
少なくとも1つの濾過ポートから、実質的に混入物質を含まない澄んだ濾液を回収すること;
濃縮ポートから混入物質を構成する濃縮物を回収すること;
を含む濾過方法。
【請求項23】
濾過される溶液又は懸濁液は、ビールの発酵ブロス(麦汁)、ワイン、シードルの発酵ブロス、蒸留酒の発酵ブロス、未分離(全)発酵ブロス、分離された発酵ブロス、抽出物、植物流及びフルーツジュースからなるグループから選択される請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−517928(P2013−517928A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550163(P2012−550163)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022097
【国際公開番号】WO2011/091281
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(504438015)ケイケイジェイ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】