渦電流探傷プローブ
【課題】曲管部を有する配管であっても、良好な通過性を維持しながら、探傷検出感度を向上可能な渦電流探傷プローブを実現する。
【解決手段】マルチコイルセンサ100に配置しているコイル130を覆うように弾性体101が配置され、弾性体101の反センサ側に板ばね102が配置される。ばね支持部材107とばね103とはマルチコイルセンサ100を被計測面側に押圧する。センサ100と連結する部材104及びセンサ100のX方向両側に配置した車輪106と部材104を連結する部材105はマルチコイルセンサ100を管内面に正対させる。部材107の反センサ側には車輪108が配置される。
【解決手段】マルチコイルセンサ100に配置しているコイル130を覆うように弾性体101が配置され、弾性体101の反センサ側に板ばね102が配置される。ばね支持部材107とばね103とはマルチコイルセンサ100を被計測面側に押圧する。センサ100と連結する部材104及びセンサ100のX方向両側に配置した車輪106と部材104を連結する部材105はマルチコイルセンサ100を管内面に正対させる。部材107の反センサ側には車輪108が配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体を非破壊で検査する渦電流探傷に用いられる渦電流プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
渦電流探傷の原理は、導電性の被検査体を対象としてコイルにより発生する交流磁場により、被試験体に渦電流を誘起させ、欠陥による渦電流の乱れに起因するコイルのインピーダンス変化から欠陥の有無を評価する手法である。
【0003】
配管の内面に渦電流探傷プローブを挿入する渦電流探傷法は、従来から知られており、特に伝熱管等への適用に関しては、広く実用化されている。伝熱管は、直線的な管(直管部)と曲がり部(曲管部)を有するU字型の管が広く利用されている。
【0004】
この伝熱管の非破壊検査では、曲管部を有する場合、直管部を検査する場合に比較して、渦電流探傷プローブの径を小さくした曲管部専用プローブが利用されている。
【0005】
伝熱管は曲管部が多く、渦電流探傷プローブを伝熱管内に挿入して、検査を行う場合には、通過性が良好であることが必要である。
【0006】
特許文献1には、検出コイルユニットと、この検出回路ユニットからの信号を処理する複数の電子回路ユニットとを備え、これら検出コイルユニットと、複数の電子回路ユニットとが、フレキシブルチューブにより互いにに直列に接続されている渦電流探傷プローブが開示されている。
【0007】
上記特許文献1に記載された構成により、伝熱管内部の曲管部における通過性が向上されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−83810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1に記載の技術にあっては、伝熱管内部の曲管部における通過性を向上することはできるが、渦電流探傷プローブと伝熱管の内面との距離の短縮化については、考慮されていない。
【0010】
つまり、従来技術における曲管部専用プローブは、プローブの径が小さいため、曲管部における管内面と渦電流探傷プローブとの距離(リフトオフ)が、長くなり、欠陥及び減肉の検出感度が低下する課題がある。これは、曲管部の曲率半径が小さい部分では特に検出感度が低下している。
【0011】
本発明の目的は、曲管部を有する配管であっても、良好な通過性を維持しながら、探傷検出感度を向上可能な渦電流探傷プローブを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、次のように構成される。
【0013】
渦電流探傷プローブにおいて、複数のコイルが配列され、可撓性を有するマルチコイルセンサと、このマルチコイルセンサを支持する弾性体と、この記弾性体を介して上記マルチコイルセンサを配管内面に押圧する手段と、上記マルチコイルセンサを配管内面に正対させる手段とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、曲管部を有する配管であっても、良好な通過性を維持しながら、探傷検出感度を向上可能な渦電流探傷プローブを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図2】図1のA−A’線に沿った断面を方向Pから見た図である。
【図3】本発明の第2の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図4】第1及び第2の実施例の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を示す図である。
【図5】第1及び第2の実施例の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を示す図である。
【図6】本発明の渦電流探傷プローブにプローブ案内部を接続した例の説明図である。
【図7】本発明の渦電流探傷プローブを伝熱管内の曲管部分に配置した際の説明図である。
【図8】本発明の渦電流探傷プローブを複数個互いに連結する場合の例を説明する図である。
【図9】本発明の第3の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図10】図9のB−B’線に沿った断面を方向Qから見た図である。
【図11】本発明の第4の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図12】第3及び第4の実施例の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を示す図である。
【図13】第3及び第4の実施例の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を示す図である。
【図14】本発明の渦電流探傷プローブにプローブ案内部を接続した例の説明図である。
【図15】本発明の渦電流探傷プローブを伝熱管内の曲管部分に配置した際の説明図である。
【図16】本発明の渦電流探傷プローブを複数個互いに連結する場合の例を説明する図である。
【図17】案内部に複数の円盤状または球状の部材を取り付けた場合の例を説明する図である。
【図18】本発明の渦電流探傷プローブを伝熱管内面に配置した際の説明図である。
【図19】本発明の第5の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図20】本発明の第5の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図21】本発明の第5の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図22】本発明の第6の実施例の説明図である。
【図23】本発明の第6の実施例の説明図である。
【図24】本発明の第6の実施例の説明図である。
【図25】本発明の第6の実施例の説明図である。
【図26】本発明の第7の実施例の構造説明図である。
【図27】本発明の第7の実施例の構造説明図である。
【図28】本発明の第7の実施例の構造説明図である。
【図29】本発明の第7の実施例におけるプローブ案内機構の変形例の説明図である。
【図30】本発明の第7の実施例におけるプローブ案内機構の他の変形例の説明図である。
【図31】本発明の第7の実施例におけるプローブ案内機構の他の変形例の説明図である。
【図32】本発明の第7の実施例におけるプローブ案内機構の他の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0017】
(第1の実施例)
図1及び図2は、本発明の第1の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。図1は、渦電流探傷プローブを一方向から見た図であり、渦電流探傷プローブは、図示したX−Y方向のうち、伝熱管内部をX方向に進行する。図2は、図1のA−A’線に沿った断面を方向Pから見た図である。
【0018】
なお、配管内部に挿入され、探傷を行うプローブは、一般的に、内挿式プローブと呼ばれている。
【0019】
図1、図2において、本発明の第1の実施例である渦電流探傷プローブは、複数のコイル130を規則的に配列し、フレキシブルに曲がる(可撓性を有する)マルチコイルセンサ100と、マルチコイルセンサ100の反検査面側(検査対象である管の内面に対向する側とは反対側)に配置した弾性体101と、マルチコイルセンサ100を押圧する手段(ばね103、ばね支持部材107)と、マルチコイルセンサ100を管内面に正対させる手段(センサ部支持部材104、車輪支持部材105、車輪106)とを備える。
【0020】
図1、図2に示すように、マルチコイルセンサ100は長方形状であり、マルチコイルセンサ100に配置しているコイル130を覆うように弾性体101が配置され、弾性体101の反センサ側に板ばね102が配置されている。マルチコイルセンサ100を被計測面側に押圧する手段は、ばね支持部材107とばね103とを備える。
【0021】
マルチコイルセンサ100を管内面に正対させる手段は、センサ100と連結する部材104及びセンサ100のX方向両側に配置した車輪106と部材104を連結する部材105を備える。この正対させる手段は、ばね支持部材107を軸として稼動する。図2に示すように、センサ部支持部材104は内部に円柱状の空間が形成され、この空間内にばね支持部材107が往復運動可能なように支持されている。ばね103の伸び力を部材104で受けることにより、センサ100は図1のY軸方向へ移動することができる。
【0022】
部材107の反センサ側には車輪108が配置されている。本発明の第1実施例における渦電流探傷プローブは、X軸と伝熱管の軸方向とが一致するように伝熱管に挿入する。伝熱管内部では、車輪106、108及びセンサ100が伝熱管の内面に接触することになる。マルチコイルセンサ100の長手方向は、伝熱管の円周方向とほぼ同一となっている。
【0023】
2つの車輪106が管内面に接触することで、これら2つの車輪106間に配置されたセンサ100と管内面とを正対させることができる。なお、検査時にはマルチコイルセンサ100と伝熱管は接触して走査されるため、耐久性を向上するために、摩擦抵抗の低減手段を設けるように構成してもよい。
【0024】
以上のように、本発明の第1の実施例によれば、管内面を移動するための複数の車輪と、弾性体101に支持された複数のセンサからなるマルチコイルセンサ100を板ばね102で支持する共に、押圧手段(103、104、107)によりマルチコイルセンサ100を管内面に押圧するように構成したので、曲管部を有する配管であっても、良好な通過性を維持しながら、探傷検出感度を向上可能な渦電流探傷プローブを実現することができる。
【0025】
(第2の実施例)
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
【0026】
図3は、本発明の第2の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。この第2の実施例における構造は、プローブを伝熱管内部で走査中に伝熱管の軸方向とプローブの走行方向であるX方向とが互いにずれた場合にも対応可能な例である。
【0027】
車輪支持部材121は、2つの車輪106を支持する。そして、車輪支持部材121は、センサ部支持部材122(図1の例のセンサ部支持部材104に対応する)に形成された軸120に回動可能なように支持されている。つまり、車輪支持部材121は、図3のX方向及びY方向に直交するZ方向に延びる軸120を中心として、回動可能な構造を有する。
【0028】
本発明の実施例2においても、実施例1と同様な効果を得ることができる。さらに、実施例2においては、伝熱管の軸方向とプローブの走行方向であるX方向とが互いにずれた場合であっても、高感度の探傷検出を実行することができる。
【0029】
実施例2の他の構成は、実施例1と同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、実施例1、2において、弾性体101は多孔質のスポンジ材、板ばね102、部材104、105、107、120、121、122、車輪106はセンサに反応しない材質であることが必要であり、例えば、プラスチックや樹脂等の絶縁材が望ましい。
【0030】
上記した第1及び第2の実施例の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を図4、図5に示す。探傷プローブが挿入される伝熱管の曲管部は、扁平した断面形状を有し、図4に曲率が大きな部分、図5に曲率が小さな部分の曲管部に対してマルチコイルセンサ100を押付けた様子を示している。
【0031】
図4、図5に示すように、探傷プローブを伝熱管の内面に押圧することで、車輪106(図4、図5には示さず)と車輪108とが伝熱管110の内面に接触し、マルチコイルセンサ100を伝熱管110の内面に押圧することができる。また、押圧部直下のみでなく、板ばね102及び弾性体101の作用でマルチコイルセンサ100の全面を伝熱管110の内面に押付けることが可能となる。
【0032】
ここで、理想的には図4、図5に示すように探傷プローブは曲率半径の大きな部分、及び曲率半径の小さい部分に押付けることが望ましい。そこで、図6に示すように、プローブ案内部111を部材104又は122に接続し、このプローブ案内部111を引張りながらプローブ走査させることで、曲率半径の大きな部分、及び曲率半径の小さい部分にセンサ100を押付けるように姿勢を調整することができる。
【0033】
プローブ案内部111は、短い部材を連結部材により多数連結した構造とすることで一方向にのみに曲がる特性を有するように構成することができる。
【0034】
プローブ案内部111を引張りながら探傷プローブを走査し、直管部から曲管部に差し掛かる部分では案内部111の先端が徐々に曲管部形状に倣い探傷プローブの方向は目的の方向に回転し、目的の位置へ探傷プローブを配置することができる。このようにして、曲管部に達した探傷プローブを図7に示すように目的に方向にマルチコイルセンサ100を押圧することができる。
【0035】
なお、図7の(A)は、伝熱管110の曲率半径の大きな曲管部分にセンサ100を押圧した状態を示し、図7の(B)は、伝熱管110の曲率半径の小さな曲管部分にセンサ100を押圧した状態を示す。
【0036】
また、図8に示すように、伝熱管の軸方向に対して、互いに90度毎に回転した状態で探傷プローブを複数個直列に接続することで1度のプローブ走査で伝熱管の内面全体を検査することができる。
【0037】
(第3の実施例)
次に、本発明の第3の実施例について説明する。
【0038】
図9、図10は、本発明の第3の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。図9は、渦電流探傷プローブを一方向から見た図であり、渦電流探傷プローブは、図示したX−Y方向のうち、伝熱管内部をX方向に進行する。図10は、図9のB−B’線に沿った断面を方向Qから見た図である。
【0039】
本発明の第3の実施例における渦電流探傷プローブは、2つのマルチコイルセンサ100を備えた構造である。第3の実施例は、第1の実施例と同様に、複数のコイルを規則的に配列したフレキシブルに曲がるマルチコイルセンサ100と、マルチコイルセンサ100の反検査面側に配置した弾性体101と、マルチコイルセンサ100を押圧する手段(ばね103、部材107)と、マルチコイルセンサ100を管内面に正対させる手段(センサ部支持部材104、105、車輪106)を備える。
【0040】
図9及び図10に示すように、マルチコイルセンサ100に配置しているコイル130を覆うように弾性体101が配置され、弾性体101の反センサ側に板ばね102が配置されている。マルチコイルセンサ100を被計測面側に押圧する手段は、部材107とばね103とを備える。
【0041】
マルチコイルセンサ100を管内面に正対させる手段は、センサ100と連結する部材104及びセンサ100のX方向両側に配置した車輪106と部材104を連結する車輪支持部材105を備える。この正対させる手段は、部材107を軸として稼動する。ばね103の伸び力を中央部材140、支持部材104で受けることにより、センサ100は図1のY軸方向へ移動することができる。
【0042】
上述した構成と同様の構成が中央部材140を間にして一対となって探傷プローブを構成している。
【0043】
本発明の第3実施例における渦電流探傷プローブは、X軸と伝熱管の軸方向とが一致するように伝熱管に挿入する。伝熱管内部では、4つの車輪106及び2つのマルチコイルセンサ100が伝熱管の内面に接触することになる。
【0044】
それぞれのマルチコイルセンサ100の両側に設けた2つの車輪106が管内面に接触することで、マルチコイルセンサ100と管内面とを正対させることができる。
【0045】
検査時には、マルチコイルセンサ100と伝熱管とは互いに接触して走査されるため、耐久性を向上するために摩擦抵抗の低減手段を設けてもよい。これはマルチコイルセンサ100の試験面側に複数の突部を設けることで可能となる。なお、部材107はセンサに反応しない材質であることが必要である、プラスチックや樹脂等の絶縁材が望ましい。
【0046】
本発明の第3の実施例においても、実施例1と同様な効果を得ることができる。さらに、実施例3においては、2つのマルチコイルセンサ100を配置するように構成したので、一回の走査で広い領域の被検査面を探傷することができる。
【0047】
(第4の実施例)
次に、本発明の第4の実施例について説明する。
【0048】
図11は、本発明の第4の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。この第4の実施例における構造は、プローブを伝熱管内部で走査中に伝熱管の軸方向とプローブの走行方向であるX方向とが互いにずれた場合にも対応可能な例である。
【0049】
車輪支持部材121は、2つの車輪106を支持する。そして、部材121は、センサ部部材122に形成された軸120に回動可能なように支持されている。つまり、部材121は、図3のX方向及びY方向に直交するZ方向に延びる軸120を中心として、回動可能な構造を有する。実施例4の他の構成は、実施例3と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
本発明の実施例4においても、実施例3と同様な効果を得ることができる。さらに、実施例4においては、伝熱管の軸方向とプローブの走行方向であるX方向とが互いにずれた場合であっても、高感度の探傷検出を実行することができる。
【0051】
上記した第3及び第4の発明実施の形態の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を図12、図13に示す。探傷プローブが挿入される伝熱管の曲管部は扁平した断面形状を有し、図12に曲率が大きな部分、図13に曲率が小さな部分の曲管部に対してマルチコイルセンサ100を押付けた様子を示している。
【0052】
図12、図13に示すように、部材107、122を押圧することで、車輪106(図12、図13には示さず)が伝熱管110の内面に接触し、2つのマルチコイルセンサ100を伝熱管110の内面に押圧することができる。また、押圧部直下のみでなく、板ばね102及び弾性体101の作用でマルチコイルセンサ100の全面を伝熱管110の内面に押付けることが可能となる。
【0053】
ここで、理想的には図12、図13に示すように、探傷プローブは曲率半径の大きな部分、及び曲率半径の小さい部分に押付けることが望ましい。そこで、図14に示すように、部材140にプローブ案内部111を接続し、このプローブ案内部111を引張りながらプローブを走査させることで曲率半径の大きな部分、及び曲率半径の小さい部分にセンサ100を押付けるように姿勢を調整することができる。この構造は、図6に示した例と同様である。
【0054】
例えば、曲管部110の断面で曲率半径の大きな部分にマルチコイルセンサ100を押圧する場合、この案内部の曲がり方向(面)をXY平面と一致するようにプローブに固定する。曲管110の断面で曲率半径が小さな部分にマルチコイルセンサ100を押圧する場合、この案内部の曲がり方向(面)をXY平面と直交するようにプローブに固定する。
【0055】
案内部111を引張りながらプローブを走査し、直管部から曲管部に差し掛かる部分では案内部111の先端が徐々に曲管部形状に倣いプローブの方向は目的の方向に回転し、目的の位置へプローブを配置することができる。このようにして曲管部に達したプローブを図15に示すように、目的方向にマルチコイルセンサ100を押圧することとで、一度の走査で広領域を検査できる。
【0056】
また、図16に示すように、伝熱管の軸方向に対して、互いに90度回転した状態の複数の探傷センサを案内部111で接続することで一度のプローブ走査で伝熱管の内面全体を検査することができる。
【0057】
図6、14に示す案内部111に関して、図17に示すように、1つ又は複数個の円盤状または球状の部材112を案内部111に設けることも可能である。このように構成することより、図18に示すように、伝熱管110の曲管部においても伝熱管の軸方向に近くプローブを走査できる。このため、プローブの走査性を向上することができる。
【0058】
(第5の実施例)
次に、本発明の第5の実施例について説明する。
【0059】
図19は、本発明の第5の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。この第5の実施例は、図11に示した第4の実施例の変形例である。
【0060】
図19において、複数のコイル130を規則的に配列し、フレキシブルに曲がるマルチコイルセンサ100と、マルチコイルセンサ100の反検査面側に配置した弾性体101と、弾性体101の反センサ側に配置された板ばね102とを備えている。車輪支持部材121は、マルチコイルセンサ100、弾性体101、板ばね102を支持すると共に、2つの車輪106を支持する。
【0061】
ただし、この第5の実施例においては、第4の実施例のような軸120は形成されていない。
【0062】
上述した構成と同様の構成が弾性部材150を間にして一対となって探傷プローブを構成している。
【0063】
本発明の第5の実施例である渦電流探傷プローブを配管内に挿入すると、両端部に配置されたマルチコイルセンサ100は、弾性部材150、板ばね102に押圧されて、配管内面に押圧される。
【0064】
ここで、検査時にはマルチコイルセンサ100と、検査対象である伝熱管とは接触して走査されるため、耐久性の向上と摩擦抵抗の低減のための手段を設けている。
【0065】
また、マルチコイルセンサ100の反検査面側に配置する弾性体101に取り付ける板ばね102として、図20に示すように、予め曲げた形状としても良い。このようなセンサ100を検査対象である管110の内部に挿入した場合を図21に示す。図21に示すように、管110は曲がり管部で偏平している状態を示している。
【0066】
この第5の実施例においても、第4の実施例と同様な効果を得ることができる。さらに、この第5の実施例によれば、第4の実施例と比較して構成が簡単であり、小型軽量化が可能である。
【0067】
また、図21に示した例において、マルチコイルセンサ100の管110における断面周方向に接触する面積を拡大し、上下に配置されたマルチコイルセンサ100が、管内面の全周に接触できるように構成することも可能である。
【0068】
この場合、センサ100を螺旋状に回転させること無く、管内面の全域に亘って確実に探傷を行うことができ、検査の正確性を向上することができると共に検査時間を短縮することが可能である。
【0069】
(第6の実施例)
次に、本発明の第6の実施例について説明する。
【0070】
上述した本発明の第5の実施例によるマルチコイルセンサは、検査対象である管内面で、2つのセンサ部が互いに正対する方向に押付けられることから、各々のセンサの干渉を防ぐため、管内面との接触領域は円周方向の角度で90度から180度以内とする必要がある場合がある。
【0071】
そこで、本発明の第6に実施例においては、図22に示すように、マルチコイルセンサを備え、検査対象である管の軸方向の前後に車輪を設けた2つの車輪支持部材121を弾性体150で連結したプローブ200の2つを、検査対象管の軸方向に、互いに90度異なる角度で回転させて連結する構造とする。その他の構成は第5の実施例と同様である。
【0072】
このような構造により、2つのプローブ200を検査対象管の内部に挿入し、複数のマルチコイルセンサ100を利用して、管内面を360度に渡り接触させことができる。
【0073】
また、プローブ200のマルチコイルセンサ100を伝熱管の曲がり部での偏平断面において、この偏平断面の短軸、長軸、又は短軸、長軸の双方に配置するためのプローブ案内機構151を図22に示している。このプローブ案内機構151は、2つのプローブ200に連結されたプローブ案内機構であり、一平面上に曲がる構造を有し、かつ、その先端は検査対象管の軸を中心とする方向に回動する構造を有する。
【0074】
一平面上に曲がる構造Qは、図23に示すように、複数の球状の部品212を互いに連結する連結用腕220を有し、この連結用腕220の先には軸穴221が形成されている。また、連結用腕220を接続するための溝222と、連結棒224を挿入するための軸穴223が形成されている。
【0075】
一つの球状部品212の連結用腕220を、隣接する他の球状部品212の溝222に挿入して連結用の軸穴221、223に連結棒24を挿入する。この構造で一軸のみの曲がり構造となり、一平面方向に曲がる構造Qとなる。
【0076】
また、構造Qに続いて連結される回転機構Rも、機構Qと同様に、図24に示すように、複数の球状の部品213を互いに連結する連結用の腕230を有し、この連結用の腕230の先には軸穴231が形成されている。また、連結用腕230を接続するための溝232と、連結棒234を挿入するための軸穴233が形成されている。
【0077】
そして、球状部材231どうしが、連結用の腕230の延長線を軸として互いに回動可能なように、連結用腕230の厚みL1より溝232の幅L2が大きくなるように設計する。
【0078】
また、軸穴231、233の径が、連結軸234の太さ寸法より大きくなるように設計する。軸穴231、233の径を、連結軸234の太さ寸法よりどの程度大とするかは、プローブ案内機構151の構造Qに対して構造Rが回動可能であって、許容回転角度が90度以内となるように設計する。つまり、複数の球状部材213の個々の許容回転角度の合計が90度以内となるように設計する。
【0079】
このマルチコイルセンサ100を有するプローブ200を、検査対象である伝熱管の曲がり部での偏平断面部位に対して、この偏平断面の短軸、長軸、又は双方に配置するためのプローブ案内機構151を利用することで、一平面方向に曲がる構造であり、かつ検査対象管の円周方向にも回動する構造であることから、直管から曲がり管部に至る変化部でも、スムーズにプローブ200を案内することが出来る。よって、図25に示すように、検査対象である管の曲がり部の偏平断面に対して、管の短軸、長軸、又は双方にプローブ200を押圧することが可能となる。
【0080】
なお、弾性体101は、多孔質のスポンジ材を使用することが可能であり、板ばね102、車輪支持部材121、弾性部材150、車輪106はセンサ100に反応しない材質であることが必要であり、絶縁材が望ましい。
【0081】
本発明の第6の実施例によれば、センサ100を螺旋状に回転させること無く、管内面の全域に亘って確実に探傷を行うことができ、検査の正確性を向上することができると共に検査時間を短縮することが可能である。
【0082】
(第7の実施例)
次に、本発明の第7の実施例について説明する。
【0083】
図26は、本発明の第7の実施例の概略構成図である。
【0084】
図26において、プローブ200は、複数のコイル130を規則的に配列したフレキシブルに曲がるマルチコイルセンサ100と、マルチコイルセンサ100の反検査面側に配置した弾性体101と、マルチコイルセンサ100を押圧する弾性部材150とを備える。
【0085】
図26に示すように、弾性体101、弾性体101の反センサ側に板ばね102を配置する。板バネ102と連結する部材は、図26に示すX方向両側に車輪106が配置された台車121である。弾性部材150を間にして、2つの台車121が互いに対称となるように配置され、弾性部材150により連結されているが、図26の下方部に示された台車121には、マルチコイルセンサ100は配置されていない。
【0086】
弾性部材150は、板ばね又はスプリングで形成される。本発明の第7の実施例におけるプローブ200は、図26に示すX軸と検査対象である伝熱管の軸方向とが一致するように挿入され、伝熱管内部では車輪106及びセンサ100が伝熱管内面に接触することになる。
【0087】
2つの車輪106が、伝熱管内面に接触することで、2つの車輪106の間に配置されたセンサ100と管内面とを正対させることができる。なお、検査時にはマルチコイルセンサ100と伝熱管は接触して走査されるため、耐久性を向上するために摩擦抵抗の低減対策を講じている。
【0088】
このプローブ200を検査対象である管内部に挿入した場合を図27に示す。図27に示した管110は曲がり管部で偏平している状態を示している。第7の実施例におけるマルチコイルセンサ100は、管内面と正対する方向に押付けられ、管内面との接触領域は、円周方向の角度で180から360度以内である。
【0089】
管内面との接触領域を360度とすれば、管内面との接触領域を管の周方向の全域とすることができる。
【0090】
管内面との接触領域が、円周方向の角度で180から360度未満の場合は、一つのプローブのみで、管内面全領域を探傷するためにはプローブを回転させる必要がある。
【0091】
そこで、図28に示すように、互いに180度回転した状態の2つのマルチコイルセンサ100を有するプローブ200を互いに連結する構造とする。
【0092】
これにより、連結した2つプローブ200を管内部に挿入することで、複数のマルチコイルセンサ100を利用して、管内面を360度に渡り接触させことができる。また、図28に示すマルチコイルセンサ100を伝熱管曲がり部での偏平断面に対して、短軸、長軸、又は双方に配置する手段は、実施例6と同様となっており、図22で説明した配置部品151と同様な構成となっている。
【0093】
図29は、上述したプローブ案内機構151の変形例を示す図である。図29において、球状の部品212、213は検査対象である管の内面と接触するため磨耗対策することが望ましい。そこで、球状部品212、213の管の内面に接触する部分205をエンジニアリングプラスチック、樹脂系の耐磨耗性に優れた材質を利用する。球状部品212、213のその他の部分は、例えば、アルミニウム、ステンレス等の磁性体ではない材質を使用することができる。
【0094】
図30〜図32は、上述した配置部品151の、他の変形例を示す図である。
【0095】
プローブ200には、マルチコイルセンサ100からの出力信号を伝送するための配線235が接続されている。図30〜図32に示した例は、球状部品212に配線235が挿入される配線用孔236が形成されている。
【0096】
配線235は、検査対象管の長さ寸法以上の長さを有するため、管内部で予期せぬ方向に移動し、プローブ200の速やかな移動を妨害することも考えられる。このため、図30、図31に示すように、配線235を配線用孔236に挿入しておけば、管内部で予期せぬ方向に移動することを抑制することができる。
【0097】
配線235は、フレキシブルなプリント基板で構成される場合が多く、このようなプリント基板が管内で予期せぬ方向に移動した場合は、プローブ200の速やかな移動を困難とする可能性がある。よって、配線235にプリント基板を使用する場合は、配線用孔236に配線を挿入しておけば、配線が管内部で予期せぬ方向に移動することを抑制することができる。
【0098】
また、図示した例では、球状部品212の径の方が球状部品213の径より大となっているが、球状部品212の径と球状部品213の径とを同一とすることも可能である。
【0099】
本発明の第7の実施例によれば、センサ100を螺旋状に回転させること無く、管内面の全域に亘って確実に探傷を行うことができ、検査の正確性を向上することができると共に検査時間を短縮することが可能である。
【0100】
以上説明したように、本発明によれば、複数のコイルを規則的に配列したフレキシブルに曲がるマルチコイルセンサを管内面に押付けることで、伝熱管の曲管部でのリフトオフの発生を抑制することができることから、曲管部に対しても欠陥や減肉に対する検出感度を低下させることなく検査することが可能となる。
【0101】
また、複数のセンサの組み合わせ又は複数のプローブ200の組み合わせにより、管の内面360度を検査可能なように構成しているので、プローブを管の軸方向に沿って一方方向に移動すればよいので、検査時間の長期化を防止することができる。複数のセンサ又はプローブを使用しない場合は、プローブを管の周方向に回転させながら、管の軸方向に移動させて、管内部を螺旋状に走査させる必要があり、この場合は、検査に長時間が必要となるからである。
【符号の説明】
【0102】
100・・・マルチコイルセンサ、101・・・弾性体、102・・・板ばね、103・・・ばね、104、122・・・センサ部支持部材、105、121・・・車輪支持部材、106、108・・・車輪、107・・・ばね支持部材、110・・・伝熱管、111・・・プローブ案内部、120・・・軸、130・・・コイル、140・・・中央部材、150・・・弾性部材、151・・・プローブ案内機構、200・・・プローブ、212、213・・・球状部品、220、222・・・溝、221、223、231、233・・・穴、230・・・連結用腕、224、234・・・連結棒、235・・・配線、236・・・配線用孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体を非破壊で検査する渦電流探傷に用いられる渦電流プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
渦電流探傷の原理は、導電性の被検査体を対象としてコイルにより発生する交流磁場により、被試験体に渦電流を誘起させ、欠陥による渦電流の乱れに起因するコイルのインピーダンス変化から欠陥の有無を評価する手法である。
【0003】
配管の内面に渦電流探傷プローブを挿入する渦電流探傷法は、従来から知られており、特に伝熱管等への適用に関しては、広く実用化されている。伝熱管は、直線的な管(直管部)と曲がり部(曲管部)を有するU字型の管が広く利用されている。
【0004】
この伝熱管の非破壊検査では、曲管部を有する場合、直管部を検査する場合に比較して、渦電流探傷プローブの径を小さくした曲管部専用プローブが利用されている。
【0005】
伝熱管は曲管部が多く、渦電流探傷プローブを伝熱管内に挿入して、検査を行う場合には、通過性が良好であることが必要である。
【0006】
特許文献1には、検出コイルユニットと、この検出回路ユニットからの信号を処理する複数の電子回路ユニットとを備え、これら検出コイルユニットと、複数の電子回路ユニットとが、フレキシブルチューブにより互いにに直列に接続されている渦電流探傷プローブが開示されている。
【0007】
上記特許文献1に記載された構成により、伝熱管内部の曲管部における通過性が向上されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−83810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1に記載の技術にあっては、伝熱管内部の曲管部における通過性を向上することはできるが、渦電流探傷プローブと伝熱管の内面との距離の短縮化については、考慮されていない。
【0010】
つまり、従来技術における曲管部専用プローブは、プローブの径が小さいため、曲管部における管内面と渦電流探傷プローブとの距離(リフトオフ)が、長くなり、欠陥及び減肉の検出感度が低下する課題がある。これは、曲管部の曲率半径が小さい部分では特に検出感度が低下している。
【0011】
本発明の目的は、曲管部を有する配管であっても、良好な通過性を維持しながら、探傷検出感度を向上可能な渦電流探傷プローブを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、次のように構成される。
【0013】
渦電流探傷プローブにおいて、複数のコイルが配列され、可撓性を有するマルチコイルセンサと、このマルチコイルセンサを支持する弾性体と、この記弾性体を介して上記マルチコイルセンサを配管内面に押圧する手段と、上記マルチコイルセンサを配管内面に正対させる手段とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、曲管部を有する配管であっても、良好な通過性を維持しながら、探傷検出感度を向上可能な渦電流探傷プローブを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図2】図1のA−A’線に沿った断面を方向Pから見た図である。
【図3】本発明の第2の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図4】第1及び第2の実施例の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を示す図である。
【図5】第1及び第2の実施例の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を示す図である。
【図6】本発明の渦電流探傷プローブにプローブ案内部を接続した例の説明図である。
【図7】本発明の渦電流探傷プローブを伝熱管内の曲管部分に配置した際の説明図である。
【図8】本発明の渦電流探傷プローブを複数個互いに連結する場合の例を説明する図である。
【図9】本発明の第3の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図10】図9のB−B’線に沿った断面を方向Qから見た図である。
【図11】本発明の第4の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図12】第3及び第4の実施例の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を示す図である。
【図13】第3及び第4の実施例の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を示す図である。
【図14】本発明の渦電流探傷プローブにプローブ案内部を接続した例の説明図である。
【図15】本発明の渦電流探傷プローブを伝熱管内の曲管部分に配置した際の説明図である。
【図16】本発明の渦電流探傷プローブを複数個互いに連結する場合の例を説明する図である。
【図17】案内部に複数の円盤状または球状の部材を取り付けた場合の例を説明する図である。
【図18】本発明の渦電流探傷プローブを伝熱管内面に配置した際の説明図である。
【図19】本発明の第5の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図20】本発明の第5の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図21】本発明の第5の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。
【図22】本発明の第6の実施例の説明図である。
【図23】本発明の第6の実施例の説明図である。
【図24】本発明の第6の実施例の説明図である。
【図25】本発明の第6の実施例の説明図である。
【図26】本発明の第7の実施例の構造説明図である。
【図27】本発明の第7の実施例の構造説明図である。
【図28】本発明の第7の実施例の構造説明図である。
【図29】本発明の第7の実施例におけるプローブ案内機構の変形例の説明図である。
【図30】本発明の第7の実施例におけるプローブ案内機構の他の変形例の説明図である。
【図31】本発明の第7の実施例におけるプローブ案内機構の他の変形例の説明図である。
【図32】本発明の第7の実施例におけるプローブ案内機構の他の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0017】
(第1の実施例)
図1及び図2は、本発明の第1の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。図1は、渦電流探傷プローブを一方向から見た図であり、渦電流探傷プローブは、図示したX−Y方向のうち、伝熱管内部をX方向に進行する。図2は、図1のA−A’線に沿った断面を方向Pから見た図である。
【0018】
なお、配管内部に挿入され、探傷を行うプローブは、一般的に、内挿式プローブと呼ばれている。
【0019】
図1、図2において、本発明の第1の実施例である渦電流探傷プローブは、複数のコイル130を規則的に配列し、フレキシブルに曲がる(可撓性を有する)マルチコイルセンサ100と、マルチコイルセンサ100の反検査面側(検査対象である管の内面に対向する側とは反対側)に配置した弾性体101と、マルチコイルセンサ100を押圧する手段(ばね103、ばね支持部材107)と、マルチコイルセンサ100を管内面に正対させる手段(センサ部支持部材104、車輪支持部材105、車輪106)とを備える。
【0020】
図1、図2に示すように、マルチコイルセンサ100は長方形状であり、マルチコイルセンサ100に配置しているコイル130を覆うように弾性体101が配置され、弾性体101の反センサ側に板ばね102が配置されている。マルチコイルセンサ100を被計測面側に押圧する手段は、ばね支持部材107とばね103とを備える。
【0021】
マルチコイルセンサ100を管内面に正対させる手段は、センサ100と連結する部材104及びセンサ100のX方向両側に配置した車輪106と部材104を連結する部材105を備える。この正対させる手段は、ばね支持部材107を軸として稼動する。図2に示すように、センサ部支持部材104は内部に円柱状の空間が形成され、この空間内にばね支持部材107が往復運動可能なように支持されている。ばね103の伸び力を部材104で受けることにより、センサ100は図1のY軸方向へ移動することができる。
【0022】
部材107の反センサ側には車輪108が配置されている。本発明の第1実施例における渦電流探傷プローブは、X軸と伝熱管の軸方向とが一致するように伝熱管に挿入する。伝熱管内部では、車輪106、108及びセンサ100が伝熱管の内面に接触することになる。マルチコイルセンサ100の長手方向は、伝熱管の円周方向とほぼ同一となっている。
【0023】
2つの車輪106が管内面に接触することで、これら2つの車輪106間に配置されたセンサ100と管内面とを正対させることができる。なお、検査時にはマルチコイルセンサ100と伝熱管は接触して走査されるため、耐久性を向上するために、摩擦抵抗の低減手段を設けるように構成してもよい。
【0024】
以上のように、本発明の第1の実施例によれば、管内面を移動するための複数の車輪と、弾性体101に支持された複数のセンサからなるマルチコイルセンサ100を板ばね102で支持する共に、押圧手段(103、104、107)によりマルチコイルセンサ100を管内面に押圧するように構成したので、曲管部を有する配管であっても、良好な通過性を維持しながら、探傷検出感度を向上可能な渦電流探傷プローブを実現することができる。
【0025】
(第2の実施例)
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
【0026】
図3は、本発明の第2の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。この第2の実施例における構造は、プローブを伝熱管内部で走査中に伝熱管の軸方向とプローブの走行方向であるX方向とが互いにずれた場合にも対応可能な例である。
【0027】
車輪支持部材121は、2つの車輪106を支持する。そして、車輪支持部材121は、センサ部支持部材122(図1の例のセンサ部支持部材104に対応する)に形成された軸120に回動可能なように支持されている。つまり、車輪支持部材121は、図3のX方向及びY方向に直交するZ方向に延びる軸120を中心として、回動可能な構造を有する。
【0028】
本発明の実施例2においても、実施例1と同様な効果を得ることができる。さらに、実施例2においては、伝熱管の軸方向とプローブの走行方向であるX方向とが互いにずれた場合であっても、高感度の探傷検出を実行することができる。
【0029】
実施例2の他の構成は、実施例1と同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、実施例1、2において、弾性体101は多孔質のスポンジ材、板ばね102、部材104、105、107、120、121、122、車輪106はセンサに反応しない材質であることが必要であり、例えば、プラスチックや樹脂等の絶縁材が望ましい。
【0030】
上記した第1及び第2の実施例の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を図4、図5に示す。探傷プローブが挿入される伝熱管の曲管部は、扁平した断面形状を有し、図4に曲率が大きな部分、図5に曲率が小さな部分の曲管部に対してマルチコイルセンサ100を押付けた様子を示している。
【0031】
図4、図5に示すように、探傷プローブを伝熱管の内面に押圧することで、車輪106(図4、図5には示さず)と車輪108とが伝熱管110の内面に接触し、マルチコイルセンサ100を伝熱管110の内面に押圧することができる。また、押圧部直下のみでなく、板ばね102及び弾性体101の作用でマルチコイルセンサ100の全面を伝熱管110の内面に押付けることが可能となる。
【0032】
ここで、理想的には図4、図5に示すように探傷プローブは曲率半径の大きな部分、及び曲率半径の小さい部分に押付けることが望ましい。そこで、図6に示すように、プローブ案内部111を部材104又は122に接続し、このプローブ案内部111を引張りながらプローブ走査させることで、曲率半径の大きな部分、及び曲率半径の小さい部分にセンサ100を押付けるように姿勢を調整することができる。
【0033】
プローブ案内部111は、短い部材を連結部材により多数連結した構造とすることで一方向にのみに曲がる特性を有するように構成することができる。
【0034】
プローブ案内部111を引張りながら探傷プローブを走査し、直管部から曲管部に差し掛かる部分では案内部111の先端が徐々に曲管部形状に倣い探傷プローブの方向は目的の方向に回転し、目的の位置へ探傷プローブを配置することができる。このようにして、曲管部に達した探傷プローブを図7に示すように目的に方向にマルチコイルセンサ100を押圧することができる。
【0035】
なお、図7の(A)は、伝熱管110の曲率半径の大きな曲管部分にセンサ100を押圧した状態を示し、図7の(B)は、伝熱管110の曲率半径の小さな曲管部分にセンサ100を押圧した状態を示す。
【0036】
また、図8に示すように、伝熱管の軸方向に対して、互いに90度毎に回転した状態で探傷プローブを複数個直列に接続することで1度のプローブ走査で伝熱管の内面全体を検査することができる。
【0037】
(第3の実施例)
次に、本発明の第3の実施例について説明する。
【0038】
図9、図10は、本発明の第3の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。図9は、渦電流探傷プローブを一方向から見た図であり、渦電流探傷プローブは、図示したX−Y方向のうち、伝熱管内部をX方向に進行する。図10は、図9のB−B’線に沿った断面を方向Qから見た図である。
【0039】
本発明の第3の実施例における渦電流探傷プローブは、2つのマルチコイルセンサ100を備えた構造である。第3の実施例は、第1の実施例と同様に、複数のコイルを規則的に配列したフレキシブルに曲がるマルチコイルセンサ100と、マルチコイルセンサ100の反検査面側に配置した弾性体101と、マルチコイルセンサ100を押圧する手段(ばね103、部材107)と、マルチコイルセンサ100を管内面に正対させる手段(センサ部支持部材104、105、車輪106)を備える。
【0040】
図9及び図10に示すように、マルチコイルセンサ100に配置しているコイル130を覆うように弾性体101が配置され、弾性体101の反センサ側に板ばね102が配置されている。マルチコイルセンサ100を被計測面側に押圧する手段は、部材107とばね103とを備える。
【0041】
マルチコイルセンサ100を管内面に正対させる手段は、センサ100と連結する部材104及びセンサ100のX方向両側に配置した車輪106と部材104を連結する車輪支持部材105を備える。この正対させる手段は、部材107を軸として稼動する。ばね103の伸び力を中央部材140、支持部材104で受けることにより、センサ100は図1のY軸方向へ移動することができる。
【0042】
上述した構成と同様の構成が中央部材140を間にして一対となって探傷プローブを構成している。
【0043】
本発明の第3実施例における渦電流探傷プローブは、X軸と伝熱管の軸方向とが一致するように伝熱管に挿入する。伝熱管内部では、4つの車輪106及び2つのマルチコイルセンサ100が伝熱管の内面に接触することになる。
【0044】
それぞれのマルチコイルセンサ100の両側に設けた2つの車輪106が管内面に接触することで、マルチコイルセンサ100と管内面とを正対させることができる。
【0045】
検査時には、マルチコイルセンサ100と伝熱管とは互いに接触して走査されるため、耐久性を向上するために摩擦抵抗の低減手段を設けてもよい。これはマルチコイルセンサ100の試験面側に複数の突部を設けることで可能となる。なお、部材107はセンサに反応しない材質であることが必要である、プラスチックや樹脂等の絶縁材が望ましい。
【0046】
本発明の第3の実施例においても、実施例1と同様な効果を得ることができる。さらに、実施例3においては、2つのマルチコイルセンサ100を配置するように構成したので、一回の走査で広い領域の被検査面を探傷することができる。
【0047】
(第4の実施例)
次に、本発明の第4の実施例について説明する。
【0048】
図11は、本発明の第4の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。この第4の実施例における構造は、プローブを伝熱管内部で走査中に伝熱管の軸方向とプローブの走行方向であるX方向とが互いにずれた場合にも対応可能な例である。
【0049】
車輪支持部材121は、2つの車輪106を支持する。そして、部材121は、センサ部部材122に形成された軸120に回動可能なように支持されている。つまり、部材121は、図3のX方向及びY方向に直交するZ方向に延びる軸120を中心として、回動可能な構造を有する。実施例4の他の構成は、実施例3と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
本発明の実施例4においても、実施例3と同様な効果を得ることができる。さらに、実施例4においては、伝熱管の軸方向とプローブの走行方向であるX方向とが互いにずれた場合であっても、高感度の探傷検出を実行することができる。
【0051】
上記した第3及び第4の発明実施の形態の探傷プローブを伝熱管内部に配置した際の形状を図12、図13に示す。探傷プローブが挿入される伝熱管の曲管部は扁平した断面形状を有し、図12に曲率が大きな部分、図13に曲率が小さな部分の曲管部に対してマルチコイルセンサ100を押付けた様子を示している。
【0052】
図12、図13に示すように、部材107、122を押圧することで、車輪106(図12、図13には示さず)が伝熱管110の内面に接触し、2つのマルチコイルセンサ100を伝熱管110の内面に押圧することができる。また、押圧部直下のみでなく、板ばね102及び弾性体101の作用でマルチコイルセンサ100の全面を伝熱管110の内面に押付けることが可能となる。
【0053】
ここで、理想的には図12、図13に示すように、探傷プローブは曲率半径の大きな部分、及び曲率半径の小さい部分に押付けることが望ましい。そこで、図14に示すように、部材140にプローブ案内部111を接続し、このプローブ案内部111を引張りながらプローブを走査させることで曲率半径の大きな部分、及び曲率半径の小さい部分にセンサ100を押付けるように姿勢を調整することができる。この構造は、図6に示した例と同様である。
【0054】
例えば、曲管部110の断面で曲率半径の大きな部分にマルチコイルセンサ100を押圧する場合、この案内部の曲がり方向(面)をXY平面と一致するようにプローブに固定する。曲管110の断面で曲率半径が小さな部分にマルチコイルセンサ100を押圧する場合、この案内部の曲がり方向(面)をXY平面と直交するようにプローブに固定する。
【0055】
案内部111を引張りながらプローブを走査し、直管部から曲管部に差し掛かる部分では案内部111の先端が徐々に曲管部形状に倣いプローブの方向は目的の方向に回転し、目的の位置へプローブを配置することができる。このようにして曲管部に達したプローブを図15に示すように、目的方向にマルチコイルセンサ100を押圧することとで、一度の走査で広領域を検査できる。
【0056】
また、図16に示すように、伝熱管の軸方向に対して、互いに90度回転した状態の複数の探傷センサを案内部111で接続することで一度のプローブ走査で伝熱管の内面全体を検査することができる。
【0057】
図6、14に示す案内部111に関して、図17に示すように、1つ又は複数個の円盤状または球状の部材112を案内部111に設けることも可能である。このように構成することより、図18に示すように、伝熱管110の曲管部においても伝熱管の軸方向に近くプローブを走査できる。このため、プローブの走査性を向上することができる。
【0058】
(第5の実施例)
次に、本発明の第5の実施例について説明する。
【0059】
図19は、本発明の第5の実施例である渦電流探傷プローブの構造説明図である。この第5の実施例は、図11に示した第4の実施例の変形例である。
【0060】
図19において、複数のコイル130を規則的に配列し、フレキシブルに曲がるマルチコイルセンサ100と、マルチコイルセンサ100の反検査面側に配置した弾性体101と、弾性体101の反センサ側に配置された板ばね102とを備えている。車輪支持部材121は、マルチコイルセンサ100、弾性体101、板ばね102を支持すると共に、2つの車輪106を支持する。
【0061】
ただし、この第5の実施例においては、第4の実施例のような軸120は形成されていない。
【0062】
上述した構成と同様の構成が弾性部材150を間にして一対となって探傷プローブを構成している。
【0063】
本発明の第5の実施例である渦電流探傷プローブを配管内に挿入すると、両端部に配置されたマルチコイルセンサ100は、弾性部材150、板ばね102に押圧されて、配管内面に押圧される。
【0064】
ここで、検査時にはマルチコイルセンサ100と、検査対象である伝熱管とは接触して走査されるため、耐久性の向上と摩擦抵抗の低減のための手段を設けている。
【0065】
また、マルチコイルセンサ100の反検査面側に配置する弾性体101に取り付ける板ばね102として、図20に示すように、予め曲げた形状としても良い。このようなセンサ100を検査対象である管110の内部に挿入した場合を図21に示す。図21に示すように、管110は曲がり管部で偏平している状態を示している。
【0066】
この第5の実施例においても、第4の実施例と同様な効果を得ることができる。さらに、この第5の実施例によれば、第4の実施例と比較して構成が簡単であり、小型軽量化が可能である。
【0067】
また、図21に示した例において、マルチコイルセンサ100の管110における断面周方向に接触する面積を拡大し、上下に配置されたマルチコイルセンサ100が、管内面の全周に接触できるように構成することも可能である。
【0068】
この場合、センサ100を螺旋状に回転させること無く、管内面の全域に亘って確実に探傷を行うことができ、検査の正確性を向上することができると共に検査時間を短縮することが可能である。
【0069】
(第6の実施例)
次に、本発明の第6の実施例について説明する。
【0070】
上述した本発明の第5の実施例によるマルチコイルセンサは、検査対象である管内面で、2つのセンサ部が互いに正対する方向に押付けられることから、各々のセンサの干渉を防ぐため、管内面との接触領域は円周方向の角度で90度から180度以内とする必要がある場合がある。
【0071】
そこで、本発明の第6に実施例においては、図22に示すように、マルチコイルセンサを備え、検査対象である管の軸方向の前後に車輪を設けた2つの車輪支持部材121を弾性体150で連結したプローブ200の2つを、検査対象管の軸方向に、互いに90度異なる角度で回転させて連結する構造とする。その他の構成は第5の実施例と同様である。
【0072】
このような構造により、2つのプローブ200を検査対象管の内部に挿入し、複数のマルチコイルセンサ100を利用して、管内面を360度に渡り接触させことができる。
【0073】
また、プローブ200のマルチコイルセンサ100を伝熱管の曲がり部での偏平断面において、この偏平断面の短軸、長軸、又は短軸、長軸の双方に配置するためのプローブ案内機構151を図22に示している。このプローブ案内機構151は、2つのプローブ200に連結されたプローブ案内機構であり、一平面上に曲がる構造を有し、かつ、その先端は検査対象管の軸を中心とする方向に回動する構造を有する。
【0074】
一平面上に曲がる構造Qは、図23に示すように、複数の球状の部品212を互いに連結する連結用腕220を有し、この連結用腕220の先には軸穴221が形成されている。また、連結用腕220を接続するための溝222と、連結棒224を挿入するための軸穴223が形成されている。
【0075】
一つの球状部品212の連結用腕220を、隣接する他の球状部品212の溝222に挿入して連結用の軸穴221、223に連結棒24を挿入する。この構造で一軸のみの曲がり構造となり、一平面方向に曲がる構造Qとなる。
【0076】
また、構造Qに続いて連結される回転機構Rも、機構Qと同様に、図24に示すように、複数の球状の部品213を互いに連結する連結用の腕230を有し、この連結用の腕230の先には軸穴231が形成されている。また、連結用腕230を接続するための溝232と、連結棒234を挿入するための軸穴233が形成されている。
【0077】
そして、球状部材231どうしが、連結用の腕230の延長線を軸として互いに回動可能なように、連結用腕230の厚みL1より溝232の幅L2が大きくなるように設計する。
【0078】
また、軸穴231、233の径が、連結軸234の太さ寸法より大きくなるように設計する。軸穴231、233の径を、連結軸234の太さ寸法よりどの程度大とするかは、プローブ案内機構151の構造Qに対して構造Rが回動可能であって、許容回転角度が90度以内となるように設計する。つまり、複数の球状部材213の個々の許容回転角度の合計が90度以内となるように設計する。
【0079】
このマルチコイルセンサ100を有するプローブ200を、検査対象である伝熱管の曲がり部での偏平断面部位に対して、この偏平断面の短軸、長軸、又は双方に配置するためのプローブ案内機構151を利用することで、一平面方向に曲がる構造であり、かつ検査対象管の円周方向にも回動する構造であることから、直管から曲がり管部に至る変化部でも、スムーズにプローブ200を案内することが出来る。よって、図25に示すように、検査対象である管の曲がり部の偏平断面に対して、管の短軸、長軸、又は双方にプローブ200を押圧することが可能となる。
【0080】
なお、弾性体101は、多孔質のスポンジ材を使用することが可能であり、板ばね102、車輪支持部材121、弾性部材150、車輪106はセンサ100に反応しない材質であることが必要であり、絶縁材が望ましい。
【0081】
本発明の第6の実施例によれば、センサ100を螺旋状に回転させること無く、管内面の全域に亘って確実に探傷を行うことができ、検査の正確性を向上することができると共に検査時間を短縮することが可能である。
【0082】
(第7の実施例)
次に、本発明の第7の実施例について説明する。
【0083】
図26は、本発明の第7の実施例の概略構成図である。
【0084】
図26において、プローブ200は、複数のコイル130を規則的に配列したフレキシブルに曲がるマルチコイルセンサ100と、マルチコイルセンサ100の反検査面側に配置した弾性体101と、マルチコイルセンサ100を押圧する弾性部材150とを備える。
【0085】
図26に示すように、弾性体101、弾性体101の反センサ側に板ばね102を配置する。板バネ102と連結する部材は、図26に示すX方向両側に車輪106が配置された台車121である。弾性部材150を間にして、2つの台車121が互いに対称となるように配置され、弾性部材150により連結されているが、図26の下方部に示された台車121には、マルチコイルセンサ100は配置されていない。
【0086】
弾性部材150は、板ばね又はスプリングで形成される。本発明の第7の実施例におけるプローブ200は、図26に示すX軸と検査対象である伝熱管の軸方向とが一致するように挿入され、伝熱管内部では車輪106及びセンサ100が伝熱管内面に接触することになる。
【0087】
2つの車輪106が、伝熱管内面に接触することで、2つの車輪106の間に配置されたセンサ100と管内面とを正対させることができる。なお、検査時にはマルチコイルセンサ100と伝熱管は接触して走査されるため、耐久性を向上するために摩擦抵抗の低減対策を講じている。
【0088】
このプローブ200を検査対象である管内部に挿入した場合を図27に示す。図27に示した管110は曲がり管部で偏平している状態を示している。第7の実施例におけるマルチコイルセンサ100は、管内面と正対する方向に押付けられ、管内面との接触領域は、円周方向の角度で180から360度以内である。
【0089】
管内面との接触領域を360度とすれば、管内面との接触領域を管の周方向の全域とすることができる。
【0090】
管内面との接触領域が、円周方向の角度で180から360度未満の場合は、一つのプローブのみで、管内面全領域を探傷するためにはプローブを回転させる必要がある。
【0091】
そこで、図28に示すように、互いに180度回転した状態の2つのマルチコイルセンサ100を有するプローブ200を互いに連結する構造とする。
【0092】
これにより、連結した2つプローブ200を管内部に挿入することで、複数のマルチコイルセンサ100を利用して、管内面を360度に渡り接触させことができる。また、図28に示すマルチコイルセンサ100を伝熱管曲がり部での偏平断面に対して、短軸、長軸、又は双方に配置する手段は、実施例6と同様となっており、図22で説明した配置部品151と同様な構成となっている。
【0093】
図29は、上述したプローブ案内機構151の変形例を示す図である。図29において、球状の部品212、213は検査対象である管の内面と接触するため磨耗対策することが望ましい。そこで、球状部品212、213の管の内面に接触する部分205をエンジニアリングプラスチック、樹脂系の耐磨耗性に優れた材質を利用する。球状部品212、213のその他の部分は、例えば、アルミニウム、ステンレス等の磁性体ではない材質を使用することができる。
【0094】
図30〜図32は、上述した配置部品151の、他の変形例を示す図である。
【0095】
プローブ200には、マルチコイルセンサ100からの出力信号を伝送するための配線235が接続されている。図30〜図32に示した例は、球状部品212に配線235が挿入される配線用孔236が形成されている。
【0096】
配線235は、検査対象管の長さ寸法以上の長さを有するため、管内部で予期せぬ方向に移動し、プローブ200の速やかな移動を妨害することも考えられる。このため、図30、図31に示すように、配線235を配線用孔236に挿入しておけば、管内部で予期せぬ方向に移動することを抑制することができる。
【0097】
配線235は、フレキシブルなプリント基板で構成される場合が多く、このようなプリント基板が管内で予期せぬ方向に移動した場合は、プローブ200の速やかな移動を困難とする可能性がある。よって、配線235にプリント基板を使用する場合は、配線用孔236に配線を挿入しておけば、配線が管内部で予期せぬ方向に移動することを抑制することができる。
【0098】
また、図示した例では、球状部品212の径の方が球状部品213の径より大となっているが、球状部品212の径と球状部品213の径とを同一とすることも可能である。
【0099】
本発明の第7の実施例によれば、センサ100を螺旋状に回転させること無く、管内面の全域に亘って確実に探傷を行うことができ、検査の正確性を向上することができると共に検査時間を短縮することが可能である。
【0100】
以上説明したように、本発明によれば、複数のコイルを規則的に配列したフレキシブルに曲がるマルチコイルセンサを管内面に押付けることで、伝熱管の曲管部でのリフトオフの発生を抑制することができることから、曲管部に対しても欠陥や減肉に対する検出感度を低下させることなく検査することが可能となる。
【0101】
また、複数のセンサの組み合わせ又は複数のプローブ200の組み合わせにより、管の内面360度を検査可能なように構成しているので、プローブを管の軸方向に沿って一方方向に移動すればよいので、検査時間の長期化を防止することができる。複数のセンサ又はプローブを使用しない場合は、プローブを管の周方向に回転させながら、管の軸方向に移動させて、管内部を螺旋状に走査させる必要があり、この場合は、検査に長時間が必要となるからである。
【符号の説明】
【0102】
100・・・マルチコイルセンサ、101・・・弾性体、102・・・板ばね、103・・・ばね、104、122・・・センサ部支持部材、105、121・・・車輪支持部材、106、108・・・車輪、107・・・ばね支持部材、110・・・伝熱管、111・・・プローブ案内部、120・・・軸、130・・・コイル、140・・・中央部材、150・・・弾性部材、151・・・プローブ案内機構、200・・・プローブ、212、213・・・球状部品、220、222・・・溝、221、223、231、233・・・穴、230・・・連結用腕、224、234・・・連結棒、235・・・配線、236・・・配線用孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の内部に挿入され、配管内面を探傷する渦電流探傷プローブにおいて、
配管の欠陥を検出するための複数のコイルが配列され、可撓性を有するマルチコイルセンサと、
上記マルチコイルセンサを支持する弾性体と、
上記弾性体を介して上記マルチコイルセンサを配管内面に押圧する手段と、
上記マルチコイルセンサを配管内面に正対させる手段と、
を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサは長方形状であり、上記複数のコイルは、上記マルチコイルセンサの長手方向に規則的に配列されていることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項3】
請求項2に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記弾性体は、上記マルチコイルセンサの全領域と接することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項4】
請求項3に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサを配管内面に正対させる手段は、上記マルチコイルセンサを間にして配置され、渦電流探傷プローブを配管内で走行させるための、配管内面に接する一対の車輪を有することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項5】
請求項4に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサの長手方向は、上記一対の車輪の走行方向にほぼ直交する方向であることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項6】
請求項5に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記正対させる手段は、上記一対の車輪を支持する車輪支持部材と、この車輪支持部材を回動可能に上記押圧する手段に支持する軸部材とを有することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項7】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサと、上記弾性体と、上記押圧する手段と、上記正対させる手段とを、それぞれ2つ有し、2つのマルチコイルセンサが両端部に位置するように、上記2つの押圧手段が互いに接続されることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項8】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
可撓性を有し、配管内に配置された渦電流探傷プローブの配管内における走行を案内するためのプローブ案内部材を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項9】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
複数の渦電流探傷プローブを互いに直列に接続するプローブ案内部材を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項10】
請求項9に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
互いに隣接する渦電流探傷プローブは、上記プローブ案内部材を基準にして互いに90度だけ回転した位置で上記プローブ案内部材に接続されていることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項11】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサと、上記弾性体と、上記正対させる手段とを、それぞれ2つ有し、2つのマルチコイルセンサが両端部に位置するように、上記押圧手段を介して2つのが上記正対させる手段が互いに接続されることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項12】
配管の内部に挿入され、配管内面を探傷する渦電流探傷プローブにおいて、
配管の欠陥を検出するための複数のコイルが配列され、可撓性を有し、上記配管内面の周方向の全領域に対向するマルチコイルセンサと、
上記マルチコイルセンサを支持する弾性体と、
上記弾性体を介して上記マルチコイルセンサを配管内面に押圧する部材と、
を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項13】
請求項12に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサを配管内面に押圧する部材は、2つ以上の車輪が上記配管の軸方向に配列され、これら車輪の間に上記マルチコイルセンサが配置され、互いに対向する2つ台車と、これら2つの台車を互いに結合する弾性体とを有することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項14】
請求項12に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサを配管内面に押圧する部材は、2つ以上の車輪が上記配管の軸方向に配列され、これら車輪の間に上記マルチコイルセンサが配置された一つの台車と、2つ以上の車輪が上記配管の軸方向に配列され、上記一つの台車と対向する他の台車と、上記一つの台車と他の台車とを互いに結合する弾性体とを有することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項15】
請求項12に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサを配管内に案内するプローブ案内機構を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項16】
請求項15に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記プローブ案内機構は、互いに連結された複数の球状部品であり、これら球状部品のそれぞれは、互いに異なる方向への平行移動及び回転移動することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項1】
配管の内部に挿入され、配管内面を探傷する渦電流探傷プローブにおいて、
配管の欠陥を検出するための複数のコイルが配列され、可撓性を有するマルチコイルセンサと、
上記マルチコイルセンサを支持する弾性体と、
上記弾性体を介して上記マルチコイルセンサを配管内面に押圧する手段と、
上記マルチコイルセンサを配管内面に正対させる手段と、
を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサは長方形状であり、上記複数のコイルは、上記マルチコイルセンサの長手方向に規則的に配列されていることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項3】
請求項2に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記弾性体は、上記マルチコイルセンサの全領域と接することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項4】
請求項3に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサを配管内面に正対させる手段は、上記マルチコイルセンサを間にして配置され、渦電流探傷プローブを配管内で走行させるための、配管内面に接する一対の車輪を有することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項5】
請求項4に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサの長手方向は、上記一対の車輪の走行方向にほぼ直交する方向であることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項6】
請求項5に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記正対させる手段は、上記一対の車輪を支持する車輪支持部材と、この車輪支持部材を回動可能に上記押圧する手段に支持する軸部材とを有することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項7】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサと、上記弾性体と、上記押圧する手段と、上記正対させる手段とを、それぞれ2つ有し、2つのマルチコイルセンサが両端部に位置するように、上記2つの押圧手段が互いに接続されることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項8】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
可撓性を有し、配管内に配置された渦電流探傷プローブの配管内における走行を案内するためのプローブ案内部材を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項9】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
複数の渦電流探傷プローブを互いに直列に接続するプローブ案内部材を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項10】
請求項9に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
互いに隣接する渦電流探傷プローブは、上記プローブ案内部材を基準にして互いに90度だけ回転した位置で上記プローブ案内部材に接続されていることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項11】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサと、上記弾性体と、上記正対させる手段とを、それぞれ2つ有し、2つのマルチコイルセンサが両端部に位置するように、上記押圧手段を介して2つのが上記正対させる手段が互いに接続されることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項12】
配管の内部に挿入され、配管内面を探傷する渦電流探傷プローブにおいて、
配管の欠陥を検出するための複数のコイルが配列され、可撓性を有し、上記配管内面の周方向の全領域に対向するマルチコイルセンサと、
上記マルチコイルセンサを支持する弾性体と、
上記弾性体を介して上記マルチコイルセンサを配管内面に押圧する部材と、
を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項13】
請求項12に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサを配管内面に押圧する部材は、2つ以上の車輪が上記配管の軸方向に配列され、これら車輪の間に上記マルチコイルセンサが配置され、互いに対向する2つ台車と、これら2つの台車を互いに結合する弾性体とを有することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項14】
請求項12に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサを配管内面に押圧する部材は、2つ以上の車輪が上記配管の軸方向に配列され、これら車輪の間に上記マルチコイルセンサが配置された一つの台車と、2つ以上の車輪が上記配管の軸方向に配列され、上記一つの台車と対向する他の台車と、上記一つの台車と他の台車とを互いに結合する弾性体とを有することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項15】
請求項12に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記マルチコイルセンサを配管内に案内するプローブ案内機構を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項16】
請求項15に記載の渦電流探傷プローブにおいて、
上記プローブ案内機構は、互いに連結された複数の球状部品であり、これら球状部品のそれぞれは、互いに異なる方向への平行移動及び回転移動することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2013−15514(P2013−15514A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128243(P2012−128243)
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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