渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサ
【課題】例えばOPGWのように鋼線などの磁性体部材とアルミニウム管などの非磁性体部材とを束ねてなる管状の検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことを可能とする。
【解決手段】磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物10の外側に、検査対象物10の周方向に巻き回された出力コイル4と検査対象物10の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に巻き回された検波コイル5とを有し、これら出力コイル4と検波コイル5とを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物10についての電気信号の測定を行うようにした。
【解決手段】磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物10の外側に、検査対象物10の周方向に巻き回された出力コイル4と検査対象物10の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に巻き回された検波コイル5とを有し、これら出力コイル4と検波コイル5とを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物10についての電気信号の測定を行うようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサに関する。さらに詳述すると、本発明は、管状の検査対象物であって磁性体部材と非磁性体部材とからなる検査対象物におけるき裂等の損傷の検出に用いて好適な渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ複合架空地線(以下、OPGWと表記する)においては、敷設からの時間経過に伴い、例えば強風振動による疲労、腐食、あるいは凍結によって、OPGWを構成する部材であるアルミニウム管のき裂、貫通孔あるいは割れ等の損傷が発生する場合がある。ここで、例えばOPGWにおいては通信障害発生の主要因はアルミニウム管の損傷であるところアルミニウム管は撚り線の内部に在って外観からは状態を把握することができないため、OPGW内部における障害起因箇所の事前特定・検知に有効な新しい技術が望まれている。
【0003】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の損傷を電磁誘導による渦電流を利用して検出する従来の非接触型渦電流探傷方法としては、例えば、図16に示すように、軸心方向の貫通孔101aが設けられた円筒状のボビン101を有する渦電流探傷センサ100を用い、管状の検査対象物104の外側に、当該検査対象物104の周方向に出力コイル(励磁用コイルとも呼ばれる)102と検波コイル(検出用コイルとも呼ばれる)103とを巻き回すと共にこれら出力コイル102と検波コイル103とを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物104についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号に基づいて検査対象物104の損傷の検出を行うものがある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小崎明郎:OPGWアルミ管診断への渦電流法の適用性, 平成20年電気学会 電子・情報・システム部門大会 講演予稿集, 社団法人日本電気学会,GS3-2,pp.674-679, 平成20年8月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1の渦電流探傷センサ100を用いた渦電流探傷方法では、検査対象物104の軸心方向の損傷は非常に高い精度で検出することができる一方で、検査対象物104の軸心方向に対して傾斜する方向、具体的には軸心方向から±30度の範囲を超えて傾斜する方向の損傷を検出することは困難であり、特に、軸心方向から90度傾斜する方向即ち検査対象物の周方向若しくは周方向に近い方向の損傷を検出することはできないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、例えばOPGWのように鋼線などの磁性体部材とアルミニウム管などの非磁性体部材とを束ねてなる管状の検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことができる渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、非接触型の渦電流探傷センサによる管状の検査対象物における損傷の検出精度の向上の検討を行う中で、管状の検査対象物の軸心方向に対して傾斜した軸の周方向に巻き回した検波コイルを備えるようにすることによって検査対象物の軸心方向の損傷の検出に加えて周方向を含む軸心方向に対して傾斜する方向の損傷の検出も可能になることを突き止めた。
【0008】
請求項1記載の渦電流探傷方法は、前記の発明者独自の新たな知見に基づくものであり、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、検査対象物の周方向に出力コイルを巻き回すと共に検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に検波コイルを巻き回し、これら出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象(具体的には、電磁誘導に伴って生じる渦電流の性質)を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号の変動に基づいて少なくとも非磁性体部材の損傷を検出するようにしている。
【0009】
なお、本発明で利用している電磁誘導現象、具体的には電磁誘導に伴って生じる渦電流の性質は、より具体的には、出力コイルに交流正弦波を与えると検査対象物の軸心方向に生じた磁界を打ち消す起電力が検波コイルに生じるところ、検査対象物に傷のような不連続部が存在する場合には磁束並びに渦電流が変化して検波コイルに生じる起電力に影響を及ぼすことになり、検波コイルにおけるこの起電力の変化を検出することによって検査対象物の損傷を検出することができる。なお、出力側と検波側とで周波数は変化しないが、検査対象物の傷の有無や検査対象物の金属材質に依存して振幅や位相(即ち位相角)は変化する。
【0010】
また、請求項2記載の渦電流探傷方法は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の複数の軸の周方向に出力コイルと検波コイルとを別々に巻き回すと共に当該出力コイルと検波コイルとを検査対象物の周方向に並べて配置し、これら出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号の変動に基づいて少なくとも非磁性体部材の損傷を検出するようにしている。
【0011】
また、請求項4記載の渦電流探傷センサは、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、検査対象物の周方向に巻き回された出力コイルと検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に巻き回された検波コイルとを有し、これら出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行うようにしている。
【0012】
また、請求項5記載の渦電流探傷センサは、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の複数の軸の周方向に別々に巻き回されると共に検査対象物の周方向に並べて配置された出力コイルと検波コイルとを有し、これら出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行うようにしている。
【0013】
したがって、この渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサによると、少なくとも検波コイルを検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に巻き回すようにしているので、検査対象物の軸心方向の損傷の検出に加えて軸心方向に対して傾斜する方向の損傷の検出もすることができる。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の渦電流探傷方法において、検波コイルとして、軸の方向が相互に異なる複数のコイルを用いるようにしている。さらに、請求項6記載の発明は、請求項4または5に記載の渦電流探傷センサにおいて、検波コイルとして、軸の方向が相互に異なる複数のコイルを有するようにしている。この場合には、検査対象物のあらゆる方向の損傷を更に確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検査対象物の軸心方向の損傷を検出することに加えて軸心方向に対して傾斜する方向の損傷を検出することも可能であるので、例えばOPGWのような管状の検査対象物であって磁性体部材と非磁性体部材とからなる検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことができ、損傷発生有無の検査の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の渦電流探傷センサの実施形態の一例の正面図である。
【図2】実施形態の渦電流探傷センサの底面図である。
【図3】実施形態の渦電流探傷センサの側面図である。
【図4】実施形態の渦電流探傷センサの各ボビンの溝にコイルを巻いた状態の底面図である。
【図5】本発明の渦電流探傷センサの他の実施形態の一例の底面図である。
【図6】本発明の渦電流探傷センサの更に他の実施形態の一例の側面図である。
【図7】本発明の渦電流探傷センサのまた更に他の実施形態の一例の底面図である。
【図8】実施例において検査対象物として用いたOPGWの断面図である。
【図9】実施例の従来センサによる損傷の検出結果を示す図である。
【図10】実施例のコアなしセンサによる損傷の検出結果を示す図である。
【図11】実施例のフェライトコアセンサによる損傷の検出結果を示す図である。
【図12】実施例のフェライトコアセンサによって検出されたアルミニウム管に軸心方向の線状き裂を有するOPGWの渦電流の電気信号の軌跡を示す図である。
【図13】実施例のフェライトコアセンサによって検出されたアルミニウム管に軸心方向の線状き裂を有するOPGWの渦電流のX又はY信号を示す図である。(A)はY信号を示す図である。(B)はX信号を示す図である。
【図14】実施例のフェライトコアセンサによって検出されたアルミニウム管に周方向の線状き裂を有するOPGWの渦電流の電気信号の軌跡を示す図である。
【図15】実施例のフェライトコアセンサによって検出されたアルミニウム管に周方向の線状き裂を有するOPGWの渦電流のX又はY信号を示す図である。(A)はY信号を示す図である。(B)はX信号を示す図である。
【図16】従来の渦電流探傷センサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1から図4に、本発明の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサの実施形態の一例を示す。この渦電流探傷方法は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物10の外側に、検査対象物10の周方向に出力コイル4を巻き回すと共に検査対象物10の軸心方向に対して直交する方向の軸の周方向に検波コイル5を巻き回し、これら出力コイル4と検波コイル5とを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物10についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号の変動に基づいて少なくとも非磁性体部材の損傷を検出するものである。
【0019】
また、本実施形態の渦電流探傷センサ1は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物10の外側に、検査対象物10の周方向に巻き回された出力コイル4と検査対象物10の軸心方向に対して直交する方向の軸の周方向に巻き回された検波コイル5とを有し、これら出力コイル4と検波コイル5とを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物10についての電気信号の測定を行うものである。なお、本実施形態の渦電流探傷センサ1は、接続端子固定基板6と基板固定部材7とを有する。
【0020】
本発明の渦電流探傷方法の測定原理は電磁誘導現象(具体的には、電磁誘導に伴って生じる渦電流の性質)を利用しており、交流を通じた出力コイルを接近させて検査対象物に渦電流を生じさせて電圧の変化を電気信号(以下においては検出信号とも呼ぶ)を読み取って検査対象物の傷検査等を行う方法である。
【0021】
この電気信号とは、具体的には、ベクトル式の渦電流探傷装置は相互に位相が90度異なる二つの同期検波器を一般的に有しており、一方の同期検波器(同期検波器Xと呼ぶ)による同期検波出力である電気信号(X信号と呼ぶ)と他方の同期検波器(同期検波器Yと呼ぶ)による同期検波出力である電気信号(Y信号と呼ぶ)とのことである。なお、実際の測定においては、渦電流の微弱な変化を捉えるために傷のない位置では電気信号がゼロになるように相殺する信号を加える。
【0022】
渦電流のX信号とY信号とは振幅のX,Y成分であり、数式1で定義される。
(数1) X信号〔V〕=振幅〔V〕×cosθ,Y信号〔V〕=振幅〔V〕×sinθ
ここで、θ:位相角〔度〕を表す。
【0023】
なお、上述の渦電流探傷方法についての原理自体は一般的なものであって周知のものであるので(例えば、社団法人日本非破壊検査協会・星川洋編:非破壊検査技術シリーズ 渦流探傷試験1,pp.41-49,2007年3月.)、更に詳細な説明はここでは省略する。
【0024】
ここで、本発明の渦電流探傷方法の測定原理は表面き裂の検出に用いられるいわゆる直接接触法とは異なる。直接接触法は鉄心の周りにコイルを巻いた渦電流センサの鉄心先端部を検査対象物に接触させた状態でセンサを移動させながら微小な表面欠陥を検出する方法であるのに対し、本発明の渦電流探傷方法は円筒状の空芯コイルの中に検査対象物を挿入して非接触で検出する方法である。なお、非接触法である本発明の渦電流探傷方法によると検査対象物内部の非磁性体部材の損傷を検出することができる。
【0025】
平行ボビン2は、管状の検査対象物10を貫通させる貫通孔2aを軸中心位置に有する円筒状に形成される。すなわち、平行ボビン2の軸心の方向と検査対象物10の軸心の方向とは平行になる。なお、貫通孔2aの直径は、渦電流探傷センサ1が電気信号の測定を行う管状の検査対象物10の外径に合わせて調整される。また、平行ボビン2は例えばポリアセタール等の合成樹脂などの非導電性材料によって形成される。
【0026】
平行ボビン2は、周壁の外周面に、周方向に一回りする環状の溝2bを有する。そして、当該溝2bに出力コイル4(図1及び図2においては図示省略)が巻き回される。なお、出力コイル4は平行ボビン2の周方向の溝2bに巻き回されるので検査対象物10の外側に周方向に巻き回されることになる。また、出力コイル4と検査対象物10とは接触しない。
【0027】
また、渦電流探傷センサ1は、それぞれの軸心の方向が平行ボビン2の軸心の方向即ち検査対象物10の軸心の方向と直交する二つの直交ボビン3A,3Bを有する。本実施形態では、具体的には、渦電流探傷センサ1は第一の直交ボビン3Aと第二の直交ボビン3Bとを有し、これら直交ボビン3A,3Bはそれぞれの軸心が一直線上に位置すると共に平行ボビン2を挟んで対向するように配置され、平行ボビン2の周壁の外周側に設けられた凹部2cに取り付けられる。なお、本実施形態では、前述のとおり一直線上に位置する両直交ボビン3A,3Bの軸心の方向は平行ボビン2の軸心の方向と直交する。
【0028】
両直交ボビン3A,3Bは、周壁の外周面に、周方向に一回りする環状の溝3bをそれぞれ有する。そして、これら直交ボビン3A,3Bの溝3bには検波コイル5(図2及び図3においては図示省略)が巻き回される。なお、一本の導線が両直交ボビン3A,3Bの溝3bに亘って巻き回されて検波コイル5を形成する。
【0029】
さらに、本実施形態では、両直交ボビン3A,3Bの軸心位置に貫通孔3aがそれぞれ形成され、当該貫通孔3aに円柱形状のコア15が嵌め合わされる。コア15は例えばフェライトや軟鉄などの磁性材料で形成される。なお、コア15の形状は円柱形状に限られるものではなく、円筒形状などであっても構わない。
【0030】
渦電流探傷センサ1は出力コイル4と検波コイル5とによって渦電流探傷を行う。このため、出力コイル4と検波コイル5との位置関係即ち溝2bと溝3bとの位置関係は、二つのコイル4,5が相互に渦電流探傷センサとしての出力コイル及び検波コイルとして作動可能な範囲内で設定される。
【0031】
また、本発明の渦電流探傷センサ1においては、検査対象物10の外周面と溝2bに巻き回した際の出力コイル4との間の間隔並びに検査対象物10の外周面と溝3bに巻き回した際の検波コイル5との間の間隔は狭い方が好ましい。具体的には例えば、検査対象物10の外周面とコイル4,5との間の間隔は10mm未満とすることが好ましく、より好ましくは5mm未満とすることであり、さらに、検査対象物10の外周面と出力コイル4との間の間隔については2mm未満とすることが最も好ましい。ただし、本発明においては、検査対象物10と出力コイル4及び検波コイル5とは接触しない。
【0032】
接続端子固定基板6は、本実施形態では、平行ボビン2の軸心方向長さよりも短い長方形の板状に形成され、長手方向が平行ボビン2の軸心方向と平行になるように配置される。
【0033】
基板固定部材7は、平行ボビン2の両側端部寄りの位置のそれぞれに取り付けられる。基板固定部材7は二個のΩ形の部材からなり、Ω形の凹部7aが半円の曲面に形成され、当該凹部7aの半円の曲面は平行ボビン2の外周面の形状に合わせて形成される。そして、二個で一組のΩ形の部材で平行ボビン2を挟み込むようにして基板固定部材7は平行ボビン2の外周面に取り付けられる。
【0034】
基板固定部材7は、また、Ω形の凹部7aの両側方の端部7bに貫通孔7cを有する。そして、対になる基板固定部材7の凹部7aを向かい合わせて平行ボビン2を挟むと共に、向かい合った端部7bの双方の貫通孔7cを貫通するボルト8aとナット8bとによって端部7bを締め付けることによって基板固定部材7は平行ボビン2に固定される。
【0035】
接続端子固定基板6は、長方形の長手方向の両側に貫通孔6cを有する。そして、接続端子固定基板6は、基板固定部材7の端部7bを締め付けるボルト8aを貫通孔6cを貫通させて基板固定部材7の端部に固定される。すなわち、二個の基板固定部材7を向かい合わせて平行ボビン2を挟む際に、向かい合う両基板固定部材7の端部7bの貫通孔7cと接続端子固定基板6の貫通孔6cとの位置を合わせて両基板固定部材7の間に接続端子固定基板6を挟み、向かい合う基板固定部材7と接続端子固定基板6とが束ねられて固定される。
【0036】
接続端子固定基板6には、出力コイル4の両端と電気的に接続される接続端子9a及び検波コイル5の両端と電気的に接続される接続端子9bが取り付けられる。そして、出力コイル4と接続端子9a、並びに、検波コイル5と接続端子9bとを電気的に接続させるため、接続端子固定基板6には、さらに、出力コイル4の両端を結び付けるための二つで一組の接続孔6a及び検波コイル5の両端を結び付けるための二つで一組の接続孔6bが設けられると共に、接続孔6aと接続端子9aとの間、並びに、接続孔6bと接続端子9bとの間にリード6dが設けられる。
【0037】
そして、出力コイル4の両端と電気的に接続される接続端子9aにはX信号とY信号との表示角度の設定(具体的には、X信号−Y信号の2次元座標軸上で原点中心に所定の角度を回転させて表示する機能のことである。移相器の設定角度ともいう。)が可能な単周波数型渦流探傷装置からの出力側のケーブル(図示省略)が接続され、当該接続端子9aを介して出力コイル4に対して交流電圧が供給される。
【0038】
また、検波コイル5の両端と電気的に接続される接続端子9bには前記渦流探傷装置からの配線(図示省略)が接続され、出力コイル4に供給される交流電圧によって検査対象物10に誘起されて検波コイル5によって検知される誘導電圧が当該接続端子9bを介して前記渦流探傷装置に検出信号(X信号とY信号)として入力される。なお、本発明における渦流探傷装置としては、一般的な渦流探傷に用いられる装置を用いることができる。また、検出信号は具体的には電圧である(一般的な渦流探傷装置自体は周知のものであるので更に詳細な説明はここでは省略する。例えば、社団法人日本非破壊検査協会・星川洋編:非破壊検査技術シリーズ 渦流探傷試験1,pp.41-49,2007年3月.を参照)。
【0039】
なお、本発明を用いての検出作業にあたっては、検査対象物10の内部にある非磁性体部材の損傷部から発生する微弱な信号を周りの磁性体部材からの強い信号により埋もれてしまうことなく分離して検出できるようにするために、検査対象物10の非磁性体部材に損傷を予め付与した試験片を渦電流探傷センサ1の平行ボビン2の貫通孔2aに挿入して損傷のない位置で信号をバランスさせた後(すなわち、センサと検査対象物との組み合わせ毎のゼロ設定を行った後)、検査対象物の軸心方向に沿って渦電流探傷センサ1を移動させて損傷に伴う電気信号を得るようにする。
【0040】
具体的には、まず、X信号−Y信号の2次元座標軸上で非磁性体部材の損傷に伴う検出信号がほぼY軸方向にくるように原点を中心として回転すべき表示角度(即ち移相器の設定角度)を求めておく。装置に移相器の表示機能がない場合には、損傷部の検出信号として得られる振幅と位相角とを用いて三角形の底辺(振幅〔V〕×cosθ,θ:位相角〔度〕)をX信号の値(単位はV)とし、高さ(振幅〔V〕×sinθ,θ:位相角〔度〕)をY信号の値(単位はV)とする角度θを90度(即ちY軸の角度)から差し引くことによって回転すべき表示角度が求まる。
【0041】
次に、上述のようにして求めた回転すべき表示角度(即ち移相器の設定角度)に設定を行って、さらに、渦電流探傷センサ1の平行ボビン2の貫通孔2aに管状の検査対象物10を貫通させた状態で損傷のない位置でバランス(即ち0点設定)させた後、渦電流探傷センサ1を検査対象物10の軸心方向に移動させながら出力コイル4に供給される交流電圧によって検査対象物10に誘起される誘導電圧を検波コイル5によって検出する。
【0042】
そして、鋼等の磁性体部材とアルミ等の非磁性体部材とは位相角が約90度ずれているので、本発明においては、出力コイル4に供給される交流電圧によって検査対象物10に誘起されて検波コイル5によって検出される誘導電圧のX信号の変動に基づいて検査対象物10を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物10を構成する非磁性体部材の損傷を検出する。
【0043】
具体的には、渦電流探傷センサ1を用いた測定によって得られる電気信号について、X信号に変動が認められる場合には鋼管などの磁性体部材に損傷が発生していると判断され、Y信号に変動が認められる場合にはアルミニウム管などの非磁性体部材に損傷が発生していると判断される。
【0044】
なお、検査対象物に損傷が発生していると判断するためのX信号の変動の程度は特定の基準に限定されるものではなく、作業者が適宜設定すれば良い。具体的には例えば、検波コイルによって検出される渦電流の電圧が出力コイルに供給する交流電圧の2割を超える変動をした場合には検査対象物に損傷が発生していると判断することなどが考えられる。
【0045】
以上のように構成された本発明の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサによれば、検査対象物の軸心方向の損傷を検出することに加えて軸心方向に対して傾斜する方向の損傷を検出することも可能であるので、例えばOPGWのような管状の検査対象物であって磁性体部材と非磁性体部材とからなる検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことができ、損傷発生有無の検査の信頼性の向上を図ることができる。
【0046】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、渦流探傷装置に備わっている表示角度(即ち移相器の設定角度)を変えて磁性体部材の損傷をY信号で評価すると共に非磁性体部材の損傷をX信号で評価するようにしても良い。
【0047】
また、磁性体部材の損傷は検出・評価対象としないで非磁性体部材の損傷のみを検出・評価対象とすれば良い場合においては、X信号の値やY信号の値としてではなく振幅のみで評価するようにしても良い。なお、振幅は数式2によって定義される。すなわち、振幅は、X信号−Y信号の図において原点からの距離を示している。そして、X信号が0である場合には、振幅はY信号の高さを示している。
(数2) 振幅〔V〕={(X信号の値〔V〕)2+(Y信号の値〔V〕)2}1/2
【0048】
また、本実施形態では、両直交ボビン3A,3Bの軸心位置に貫通孔3aを形成すると共に当該貫通孔3aに磁性材料で形成されたコア15が嵌め合わされるようにしているが、直交ボビン3A,3Bに磁性を有するコア15を嵌め合わせることは本発明において必須の要件ではない。磁性を有するコアを直交ボビンに嵌め合わせることによってこれに巻き回される検波コイルの誘導電圧の検知能力を向上させることが期待できるものの、コアが嵌め合わされていないとしても検波コイルは誘導電圧を検知することが可能である。
【0049】
また、本実施形態では、二つの直交ボビン3A,3Bは平行ボビン2を挟んで即ち検査対象物10を挟んで正対するように配置されるようにしているが、これに限られず、二つの直交ボビン3A,3Bは、検査対象物10の周方向に並べられて配置されていれば良く、検査対象物10を挟んで正対する位置関係になくても良い。
【0050】
また、本実施形態では、第一の直交ボビン3Aも第二の直交ボビン3Bも軸心の方向が平行ボビン2の軸心方向即ち検査対象物10の軸心方向と直交するように配置されるようにしているが、これに限られず、二つの直交ボビン3A,3B並びにこれらボビンに巻き回される検波コイルのうちのどちらか一方若しくは両方の軸心方向が検査対象物10の軸心方向と直交する方向からずれているようにしても良い(図5。なお、図5〜7においては、接続端子固定基板6と基板固定部材7とを図示していない。)。なお、検波コイルを巻き回すボビンを一つだけ設けるようにする場合も、当該ボビンの軸心方向が検査対象物10の軸心方向に対して直交している必要はない。また、図5に示す形態では直交ボビン3Bに巻き回された検波コイル5の軸心方向が検査対象物10の軸心方向に沿って傾斜するようにしているが、検波コイルの軸心方向の傾斜はこれに限られるものではなく、図6に示すように、検査対象物10の周方向に沿って傾斜するようにしても良い。尚更に言えば、検波コイルの軸心方向の傾斜は、検査対象物10の軸心方向や周方向に沿うものである必要はなく、検査対象物10の軸心方向に対していずれかの方向に傾斜しているものであれば良い。
【0051】
また、本実施形態では、管状の検査対象物10の軸心の周方向に巻き回されることになる出力コイル4が巻き回される溝2bを有する平行ボビン2に加え、検査対象物10の軸心方向と直交する方向の軸の周方向に巻き回されることになる検波コイル5が巻き回される溝3bをそれぞれ有する二つのボビンであって平行ボビン2を挟んで対向して配置される第一の直交ボビン3Aと第二の直交ボビン3Bとを有するようにしているが、これに限られず、検波コイル5を巻き回すボビンは一つだけでも良いし、三つ以上でも良い。そして、検波コイル5を巻き回すボビンを三つ以上設けるようにする場合には、これらボビン及びこれに巻き回される検波コイルの軸心方向を検査対象物10の軸心方向に対して傾斜させる角度を全て異なるようにすることが望ましい。検波コイルの軸心方向の傾斜角度を全て異なるようにすることにより、検査対象物10のあらゆる方向の損傷を検出することができるようになる。なお、検波コイルを巻き回すボビンを三つ以上設けるようにする場合には、これらボビンが検査対象物10の周方向に並べられて配置されるようにすることが望ましい。
【0052】
また、本実施形態では、出力コイル4を管状の検査対象物10の軸心の周方向に巻き回すと共に、検波コイル5を検査対象物10の軸心方向と直交する方向の軸の周方向に巻き回すようにしているが、これに限られず、出力コイル4と検波コイル5との両方を検査対象物10の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に巻き回すようにしても良い。具体的には例えば、図7に示すように、本実施形態における平行ボビン2の溝2bにはコイルを巻かずに、直交ボビン3A,3Bのどちらか一方に出力コイル4を巻き回すと共に他方に検波コイル5を巻き回すようにしても良い。
【実施例1】
【0053】
本発明の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサを実際のOPGWの損傷の検出に適用した実施例を図8から図15を用いて説明する。
【0054】
本実施例において検査対象物として用いたOPGWの断面を図8に示す。このOPGW10は、中心部の光ファイバ収納アルミニウム管11とこの光ファイバ収納アルミニウム管11を取り囲む八本のアルミ覆鋼線14とからなる。まお、本実施例で用いたOPGW10は、線種の規格としてはOPGW−60(60は避雷用地線としての公称面積60mm2を表しており、図8の八本のアルミ覆鋼線14の総面積に該当する)であり、全体外径は11.4mmであると共にアルミニウム管11aの外径は5mmである。
【0055】
光ファイバ収納アルミニウム管11は、外周壁であるアルミニウム管11aと、アルミニウム管11a内部に配設される三本の光ファイバユニット12と、これら三本の光ファイバユニット12のアルミニウム管11a内部での位置を固定するための三つの溝13aを有する溝付きアルミスペーサ13とからなる。
【0056】
なお、本実施例の光ファイバユニット12は、中央の光ファイバとその周囲の六本の光ファイバとを束ねてなるものである。また、アルミ覆鋼線14は鋼線の周りにアルミを被覆させたものである。
【0057】
以上のように、本実施例において検査対象物として用いるOPGW10は、磁性体部材と非磁性体部材とからなるものであり、本発明を適用するのに好適なものである。なお、実際のOPGWの保守点検においては外部からは明確に視認することができない中心部のアルミニウム管11aの損傷が特に問題になるので、本発明によればOPGW10のアルミニウム管11aの損傷の検出を適確に行うことが可能になることは実際のOPGWの保守点検に対して非常に有益である。
【0058】
本実施例では、OPGW10に形成された線状き裂のOPGW10の軸心方向に対する傾斜角度の違いによる探傷性能の比較を行った。具体的には、供試材として約1mの長さに切断したOPGW10内部のアルミニウム管11aを取り出し、当該アルミニウム管11aに管軸方向(軸心方向と同義)或いは管軸方向に対して10度,45度,70度,90度のいずれかの角度で傾斜した方向の線状き裂を人工的に形成した後にOPGW10内部に戻すことによって損傷としての線状き裂を内部に有するOPGW10を作成した。なお、管軸方向に対して90度傾斜した方向とは即ちアルミニウム管11aの周方向である。
【0059】
線状き裂の幅は約0.2mm〜2mmで長さは約5mm〜50mmであった。また、アルミニウム管11a毎に一つの損傷を人工的に形成し、当該人工的に形成された検出対象の損傷の他には損傷のないことを確認したOPGW10を用いて測定を行った。
【0060】
そして、本実施例では、図1〜図4に示す本発明の渦電流探傷センサ1であって検波コイル5が巻き回される両直交ボビン3A,3Bの貫通孔3aにコア15が挿入されていないセンサ(即ち、貫通孔3a内は空。以下、コアなしセンサと呼ぶ)と、貫通孔3aにコア15として円柱形状のフェライトが挿入されたセンサ(以下、フェライトコアセンサと呼ぶ)と、これら本発明に係るセンサとの比較例として図16に示す従来の渦電流探傷センサ(以下、従来センサと呼ぶ)とのそれぞれについて同一条件においてOPGW10毎のアルミニウム管11aの損傷の検出を行った。なお、渦電流探傷センサ1(若しくは100)の平行ボビン2(若しくは101)の貫通孔2a(若しくは101a)の直径はOPGW10の全体外径に合わせて13mmに形成された。
【0061】
さらに、本実施例では、渦電流探傷センサ1と接続端子9a,9bを介して電気的に接続して損傷検出のための測定を行う渦流探傷装置としてユニ電子工業株式会社製・単周波渦流探傷装置[EddyStation SW2]を用い、コンピュータ(PC)上で作動する同装置付属の計測・データ表示ソフトを用いた。
【0062】
測定にあたっては、まず、渦電流探傷センサ1(若しくは100)の貫通孔2a(若しくは101a)にOPGW10を挿入して損傷のない位置で電気信号のバランス(即ちゼロ設定)を行った後、OPGW10の軸心方向に沿って渦電流探傷センサ1(若しくは100)を移動させ、損傷に伴う検出信号(X信号とY信号)を得た。
【0063】
そして、渦流探傷装置を介してコンピュータのモニタに表示される検出信号の変化(具体的には、損傷が存在する場合は上に凸形即ちピーク状が出現する)を目視で観察し、その結果を、i)検出可能,ii)判定困難,iii)検出不可、の3種類に分類した。なお、得られた信号が欠陥によるものかノイズによるものか判別し難い場合に判定困難とした。
【0064】
なお、本実施例では、測定周波数は70kHzとした。また、増幅器の電圧比即ちゲインは、30dBを基本とし、30dBで検出不能の場合は検出可能なレベルまでdB値を40,50,60と順次上げて測定した。
【0065】
そして、従来センサを用いて損傷の検出を行い、図9に示す結果が得られた。なお、図9〜11においては、上述のi)検出可能を記号○で、ii)判定困難を記号△で、iii)検出不可を記号×でそれぞれ表している。この結果から、従来センサの場合には、検査対象物10の管軸方向及び管軸方向に対して10度の角度で傾斜した方向の損傷は幅が狭くても検出することができる一方で、検査対象物10の管軸方向に対して大きく傾斜する方向及び周方向の損傷は検出することができないことが確認された。
【0066】
また、コアなしセンサを用いて損傷の検出を行い、図10に示す結果が得られた。この結果から、コアなしセンサの場合には、従来センサの場合と同様に検査対象物10の管軸方向及び管軸方向に近い方向の損傷に加えて、検査対象物10の管軸方向に対して傾斜する方向及び周方向の損傷も幅が狭くても概ね検出することが可能であることが確認された。なお、管軸方向に対して45度の角度で傾斜する方向の損傷は検出することができなかった。なお、図1〜図4に示す渦電流探傷センサ1によっては管軸方向に対して45度の角度で傾斜する方向の損傷を検出することができないという点については、二つの直交ボビン3A,3Bのうちのどちらか一方の軸心方向を平行ボビン2の軸心方向と直交する方向からずれるように配置することによって解消され得る(図5,図6参照)。
【0067】
さらに、フェライトコアセンサを用いて損傷の検出を行い、図11に示す結果が得られた。この結果から、フェライトコアセンサの場合には、コアなしセンサの場合と同様に検査対象物10の軸心方向から周方向まで方向に拘わらず損傷を殆ど検出することができ、加えて、コアなしセンサを用いた場合よりも幅の狭い損傷を検出することができることが確認された。
【0068】
なお、フェライトコアセンサを用いた損傷の検出の場合における、OPGW10の管軸方向で幅1mm・長さ10mmの線状き裂を検出した際の検出信号の軌跡として図12に示す結果が得られ、OPGW10の周方向で幅1mmの線状き裂を検出した際の検出信号の軌跡として図14に示す結果が得られた。なお、検出信号の軌跡とはセンサの検波コイルによって検出されて渦流探傷装置を介してコンピュータのモニタに表示されるX信号−Y信号の2次元座標平面における電圧値の変化の軌跡であり、図12,14において横軸は電気信号のX信号の値(単位はV)であり縦軸はY信号の値(単位はV)である。横軸及び縦軸ともに一目盛りは2〔V〕である。
【0069】
また、渦流探傷装置を介してコンピュータのモニタに表示されたデータを、横軸を時間軸にすると共に縦軸をY信号の値にして表示することにより、OPGW10の管軸方向の損傷の検出について図13(A)に示す結果が得られ、周方向の損傷の検出について図15(A)に示す結果が得られた。また、横軸を時間軸にすると共に縦軸をX信号の値にして表示することにより、OPGW10の管軸方向の損傷の検出について図13(B)に示す結果が得られ、周方向の損傷の検出について図15(B)に示す結果が得られた。なお、図13,15において、縦軸は一目盛りが1〔V〕であり、横軸は一目盛りが0.5〔sec〕である。
【0070】
図13及び図15に示す結果から、Y信号の値の変動が大きいので非磁性体であるアルミニウム管11aに損傷が発生していると判断され、一方で、X信号の値の変動は大きいとは言えないので磁性体である鋼線14には損傷は発生していないと判断された。
【0071】
これらの結果から、本発明の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサによれば、検査対象物の軸心方向の損傷に限らず、軸心方向に対して傾斜した方向の損傷であっても、さらに、検査対象物の軸心の周方向の損傷であっても、損傷の検出を適確に高い精度で行うことが可能であることが確認された。
【0072】
なお、本実施例では、図8に示す断面を有するOPGW10を検査対象物として用いているが、本発明の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサの適用に適したOPGWの断面構成はこれに限られるものではなく、更に言えば、本発明の適用に適した検査対象物はOPGWに限られるものではない。
【符号の説明】
【0073】
1 渦電流探傷センサ
2 平行ボビン
2a 貫通孔
2b 溝
2c 凹部
3A 第一の直交ボビン
3B 第二の直交ボビン
3a 貫通孔
3b 溝
4 出力コイル
5 検波コイル
6 接続端子固定基板
6a 接続孔
6b 接続孔
6c 貫通孔
6d リード
7 基板固定部材
7a 凹部
7b 端部
7c 貫通孔
8a ボルト
8b ナット
9a 接続端子
9b 接続端子
10 検査対象物(OPGW)
11 光ファイバ収納アルミニウム管
11a アルミニウム管
12 光ファイバユニット
13 溝付きアルミスペーサ
13a 溝
14 アルミ覆鋼線
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサに関する。さらに詳述すると、本発明は、管状の検査対象物であって磁性体部材と非磁性体部材とからなる検査対象物におけるき裂等の損傷の検出に用いて好適な渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ複合架空地線(以下、OPGWと表記する)においては、敷設からの時間経過に伴い、例えば強風振動による疲労、腐食、あるいは凍結によって、OPGWを構成する部材であるアルミニウム管のき裂、貫通孔あるいは割れ等の損傷が発生する場合がある。ここで、例えばOPGWにおいては通信障害発生の主要因はアルミニウム管の損傷であるところアルミニウム管は撚り線の内部に在って外観からは状態を把握することができないため、OPGW内部における障害起因箇所の事前特定・検知に有効な新しい技術が望まれている。
【0003】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の損傷を電磁誘導による渦電流を利用して検出する従来の非接触型渦電流探傷方法としては、例えば、図16に示すように、軸心方向の貫通孔101aが設けられた円筒状のボビン101を有する渦電流探傷センサ100を用い、管状の検査対象物104の外側に、当該検査対象物104の周方向に出力コイル(励磁用コイルとも呼ばれる)102と検波コイル(検出用コイルとも呼ばれる)103とを巻き回すと共にこれら出力コイル102と検波コイル103とを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物104についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号に基づいて検査対象物104の損傷の検出を行うものがある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小崎明郎:OPGWアルミ管診断への渦電流法の適用性, 平成20年電気学会 電子・情報・システム部門大会 講演予稿集, 社団法人日本電気学会,GS3-2,pp.674-679, 平成20年8月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1の渦電流探傷センサ100を用いた渦電流探傷方法では、検査対象物104の軸心方向の損傷は非常に高い精度で検出することができる一方で、検査対象物104の軸心方向に対して傾斜する方向、具体的には軸心方向から±30度の範囲を超えて傾斜する方向の損傷を検出することは困難であり、特に、軸心方向から90度傾斜する方向即ち検査対象物の周方向若しくは周方向に近い方向の損傷を検出することはできないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、例えばOPGWのように鋼線などの磁性体部材とアルミニウム管などの非磁性体部材とを束ねてなる管状の検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことができる渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、非接触型の渦電流探傷センサによる管状の検査対象物における損傷の検出精度の向上の検討を行う中で、管状の検査対象物の軸心方向に対して傾斜した軸の周方向に巻き回した検波コイルを備えるようにすることによって検査対象物の軸心方向の損傷の検出に加えて周方向を含む軸心方向に対して傾斜する方向の損傷の検出も可能になることを突き止めた。
【0008】
請求項1記載の渦電流探傷方法は、前記の発明者独自の新たな知見に基づくものであり、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、検査対象物の周方向に出力コイルを巻き回すと共に検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に検波コイルを巻き回し、これら出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象(具体的には、電磁誘導に伴って生じる渦電流の性質)を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号の変動に基づいて少なくとも非磁性体部材の損傷を検出するようにしている。
【0009】
なお、本発明で利用している電磁誘導現象、具体的には電磁誘導に伴って生じる渦電流の性質は、より具体的には、出力コイルに交流正弦波を与えると検査対象物の軸心方向に生じた磁界を打ち消す起電力が検波コイルに生じるところ、検査対象物に傷のような不連続部が存在する場合には磁束並びに渦電流が変化して検波コイルに生じる起電力に影響を及ぼすことになり、検波コイルにおけるこの起電力の変化を検出することによって検査対象物の損傷を検出することができる。なお、出力側と検波側とで周波数は変化しないが、検査対象物の傷の有無や検査対象物の金属材質に依存して振幅や位相(即ち位相角)は変化する。
【0010】
また、請求項2記載の渦電流探傷方法は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の複数の軸の周方向に出力コイルと検波コイルとを別々に巻き回すと共に当該出力コイルと検波コイルとを検査対象物の周方向に並べて配置し、これら出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号の変動に基づいて少なくとも非磁性体部材の損傷を検出するようにしている。
【0011】
また、請求項4記載の渦電流探傷センサは、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、検査対象物の周方向に巻き回された出力コイルと検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に巻き回された検波コイルとを有し、これら出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行うようにしている。
【0012】
また、請求項5記載の渦電流探傷センサは、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の複数の軸の周方向に別々に巻き回されると共に検査対象物の周方向に並べて配置された出力コイルと検波コイルとを有し、これら出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行うようにしている。
【0013】
したがって、この渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサによると、少なくとも検波コイルを検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に巻き回すようにしているので、検査対象物の軸心方向の損傷の検出に加えて軸心方向に対して傾斜する方向の損傷の検出もすることができる。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の渦電流探傷方法において、検波コイルとして、軸の方向が相互に異なる複数のコイルを用いるようにしている。さらに、請求項6記載の発明は、請求項4または5に記載の渦電流探傷センサにおいて、検波コイルとして、軸の方向が相互に異なる複数のコイルを有するようにしている。この場合には、検査対象物のあらゆる方向の損傷を更に確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検査対象物の軸心方向の損傷を検出することに加えて軸心方向に対して傾斜する方向の損傷を検出することも可能であるので、例えばOPGWのような管状の検査対象物であって磁性体部材と非磁性体部材とからなる検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことができ、損傷発生有無の検査の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の渦電流探傷センサの実施形態の一例の正面図である。
【図2】実施形態の渦電流探傷センサの底面図である。
【図3】実施形態の渦電流探傷センサの側面図である。
【図4】実施形態の渦電流探傷センサの各ボビンの溝にコイルを巻いた状態の底面図である。
【図5】本発明の渦電流探傷センサの他の実施形態の一例の底面図である。
【図6】本発明の渦電流探傷センサの更に他の実施形態の一例の側面図である。
【図7】本発明の渦電流探傷センサのまた更に他の実施形態の一例の底面図である。
【図8】実施例において検査対象物として用いたOPGWの断面図である。
【図9】実施例の従来センサによる損傷の検出結果を示す図である。
【図10】実施例のコアなしセンサによる損傷の検出結果を示す図である。
【図11】実施例のフェライトコアセンサによる損傷の検出結果を示す図である。
【図12】実施例のフェライトコアセンサによって検出されたアルミニウム管に軸心方向の線状き裂を有するOPGWの渦電流の電気信号の軌跡を示す図である。
【図13】実施例のフェライトコアセンサによって検出されたアルミニウム管に軸心方向の線状き裂を有するOPGWの渦電流のX又はY信号を示す図である。(A)はY信号を示す図である。(B)はX信号を示す図である。
【図14】実施例のフェライトコアセンサによって検出されたアルミニウム管に周方向の線状き裂を有するOPGWの渦電流の電気信号の軌跡を示す図である。
【図15】実施例のフェライトコアセンサによって検出されたアルミニウム管に周方向の線状き裂を有するOPGWの渦電流のX又はY信号を示す図である。(A)はY信号を示す図である。(B)はX信号を示す図である。
【図16】従来の渦電流探傷センサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1から図4に、本発明の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサの実施形態の一例を示す。この渦電流探傷方法は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物10の外側に、検査対象物10の周方向に出力コイル4を巻き回すと共に検査対象物10の軸心方向に対して直交する方向の軸の周方向に検波コイル5を巻き回し、これら出力コイル4と検波コイル5とを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物10についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号の変動に基づいて少なくとも非磁性体部材の損傷を検出するものである。
【0019】
また、本実施形態の渦電流探傷センサ1は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物10の外側に、検査対象物10の周方向に巻き回された出力コイル4と検査対象物10の軸心方向に対して直交する方向の軸の周方向に巻き回された検波コイル5とを有し、これら出力コイル4と検波コイル5とを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物10についての電気信号の測定を行うものである。なお、本実施形態の渦電流探傷センサ1は、接続端子固定基板6と基板固定部材7とを有する。
【0020】
本発明の渦電流探傷方法の測定原理は電磁誘導現象(具体的には、電磁誘導に伴って生じる渦電流の性質)を利用しており、交流を通じた出力コイルを接近させて検査対象物に渦電流を生じさせて電圧の変化を電気信号(以下においては検出信号とも呼ぶ)を読み取って検査対象物の傷検査等を行う方法である。
【0021】
この電気信号とは、具体的には、ベクトル式の渦電流探傷装置は相互に位相が90度異なる二つの同期検波器を一般的に有しており、一方の同期検波器(同期検波器Xと呼ぶ)による同期検波出力である電気信号(X信号と呼ぶ)と他方の同期検波器(同期検波器Yと呼ぶ)による同期検波出力である電気信号(Y信号と呼ぶ)とのことである。なお、実際の測定においては、渦電流の微弱な変化を捉えるために傷のない位置では電気信号がゼロになるように相殺する信号を加える。
【0022】
渦電流のX信号とY信号とは振幅のX,Y成分であり、数式1で定義される。
(数1) X信号〔V〕=振幅〔V〕×cosθ,Y信号〔V〕=振幅〔V〕×sinθ
ここで、θ:位相角〔度〕を表す。
【0023】
なお、上述の渦電流探傷方法についての原理自体は一般的なものであって周知のものであるので(例えば、社団法人日本非破壊検査協会・星川洋編:非破壊検査技術シリーズ 渦流探傷試験1,pp.41-49,2007年3月.)、更に詳細な説明はここでは省略する。
【0024】
ここで、本発明の渦電流探傷方法の測定原理は表面き裂の検出に用いられるいわゆる直接接触法とは異なる。直接接触法は鉄心の周りにコイルを巻いた渦電流センサの鉄心先端部を検査対象物に接触させた状態でセンサを移動させながら微小な表面欠陥を検出する方法であるのに対し、本発明の渦電流探傷方法は円筒状の空芯コイルの中に検査対象物を挿入して非接触で検出する方法である。なお、非接触法である本発明の渦電流探傷方法によると検査対象物内部の非磁性体部材の損傷を検出することができる。
【0025】
平行ボビン2は、管状の検査対象物10を貫通させる貫通孔2aを軸中心位置に有する円筒状に形成される。すなわち、平行ボビン2の軸心の方向と検査対象物10の軸心の方向とは平行になる。なお、貫通孔2aの直径は、渦電流探傷センサ1が電気信号の測定を行う管状の検査対象物10の外径に合わせて調整される。また、平行ボビン2は例えばポリアセタール等の合成樹脂などの非導電性材料によって形成される。
【0026】
平行ボビン2は、周壁の外周面に、周方向に一回りする環状の溝2bを有する。そして、当該溝2bに出力コイル4(図1及び図2においては図示省略)が巻き回される。なお、出力コイル4は平行ボビン2の周方向の溝2bに巻き回されるので検査対象物10の外側に周方向に巻き回されることになる。また、出力コイル4と検査対象物10とは接触しない。
【0027】
また、渦電流探傷センサ1は、それぞれの軸心の方向が平行ボビン2の軸心の方向即ち検査対象物10の軸心の方向と直交する二つの直交ボビン3A,3Bを有する。本実施形態では、具体的には、渦電流探傷センサ1は第一の直交ボビン3Aと第二の直交ボビン3Bとを有し、これら直交ボビン3A,3Bはそれぞれの軸心が一直線上に位置すると共に平行ボビン2を挟んで対向するように配置され、平行ボビン2の周壁の外周側に設けられた凹部2cに取り付けられる。なお、本実施形態では、前述のとおり一直線上に位置する両直交ボビン3A,3Bの軸心の方向は平行ボビン2の軸心の方向と直交する。
【0028】
両直交ボビン3A,3Bは、周壁の外周面に、周方向に一回りする環状の溝3bをそれぞれ有する。そして、これら直交ボビン3A,3Bの溝3bには検波コイル5(図2及び図3においては図示省略)が巻き回される。なお、一本の導線が両直交ボビン3A,3Bの溝3bに亘って巻き回されて検波コイル5を形成する。
【0029】
さらに、本実施形態では、両直交ボビン3A,3Bの軸心位置に貫通孔3aがそれぞれ形成され、当該貫通孔3aに円柱形状のコア15が嵌め合わされる。コア15は例えばフェライトや軟鉄などの磁性材料で形成される。なお、コア15の形状は円柱形状に限られるものではなく、円筒形状などであっても構わない。
【0030】
渦電流探傷センサ1は出力コイル4と検波コイル5とによって渦電流探傷を行う。このため、出力コイル4と検波コイル5との位置関係即ち溝2bと溝3bとの位置関係は、二つのコイル4,5が相互に渦電流探傷センサとしての出力コイル及び検波コイルとして作動可能な範囲内で設定される。
【0031】
また、本発明の渦電流探傷センサ1においては、検査対象物10の外周面と溝2bに巻き回した際の出力コイル4との間の間隔並びに検査対象物10の外周面と溝3bに巻き回した際の検波コイル5との間の間隔は狭い方が好ましい。具体的には例えば、検査対象物10の外周面とコイル4,5との間の間隔は10mm未満とすることが好ましく、より好ましくは5mm未満とすることであり、さらに、検査対象物10の外周面と出力コイル4との間の間隔については2mm未満とすることが最も好ましい。ただし、本発明においては、検査対象物10と出力コイル4及び検波コイル5とは接触しない。
【0032】
接続端子固定基板6は、本実施形態では、平行ボビン2の軸心方向長さよりも短い長方形の板状に形成され、長手方向が平行ボビン2の軸心方向と平行になるように配置される。
【0033】
基板固定部材7は、平行ボビン2の両側端部寄りの位置のそれぞれに取り付けられる。基板固定部材7は二個のΩ形の部材からなり、Ω形の凹部7aが半円の曲面に形成され、当該凹部7aの半円の曲面は平行ボビン2の外周面の形状に合わせて形成される。そして、二個で一組のΩ形の部材で平行ボビン2を挟み込むようにして基板固定部材7は平行ボビン2の外周面に取り付けられる。
【0034】
基板固定部材7は、また、Ω形の凹部7aの両側方の端部7bに貫通孔7cを有する。そして、対になる基板固定部材7の凹部7aを向かい合わせて平行ボビン2を挟むと共に、向かい合った端部7bの双方の貫通孔7cを貫通するボルト8aとナット8bとによって端部7bを締め付けることによって基板固定部材7は平行ボビン2に固定される。
【0035】
接続端子固定基板6は、長方形の長手方向の両側に貫通孔6cを有する。そして、接続端子固定基板6は、基板固定部材7の端部7bを締め付けるボルト8aを貫通孔6cを貫通させて基板固定部材7の端部に固定される。すなわち、二個の基板固定部材7を向かい合わせて平行ボビン2を挟む際に、向かい合う両基板固定部材7の端部7bの貫通孔7cと接続端子固定基板6の貫通孔6cとの位置を合わせて両基板固定部材7の間に接続端子固定基板6を挟み、向かい合う基板固定部材7と接続端子固定基板6とが束ねられて固定される。
【0036】
接続端子固定基板6には、出力コイル4の両端と電気的に接続される接続端子9a及び検波コイル5の両端と電気的に接続される接続端子9bが取り付けられる。そして、出力コイル4と接続端子9a、並びに、検波コイル5と接続端子9bとを電気的に接続させるため、接続端子固定基板6には、さらに、出力コイル4の両端を結び付けるための二つで一組の接続孔6a及び検波コイル5の両端を結び付けるための二つで一組の接続孔6bが設けられると共に、接続孔6aと接続端子9aとの間、並びに、接続孔6bと接続端子9bとの間にリード6dが設けられる。
【0037】
そして、出力コイル4の両端と電気的に接続される接続端子9aにはX信号とY信号との表示角度の設定(具体的には、X信号−Y信号の2次元座標軸上で原点中心に所定の角度を回転させて表示する機能のことである。移相器の設定角度ともいう。)が可能な単周波数型渦流探傷装置からの出力側のケーブル(図示省略)が接続され、当該接続端子9aを介して出力コイル4に対して交流電圧が供給される。
【0038】
また、検波コイル5の両端と電気的に接続される接続端子9bには前記渦流探傷装置からの配線(図示省略)が接続され、出力コイル4に供給される交流電圧によって検査対象物10に誘起されて検波コイル5によって検知される誘導電圧が当該接続端子9bを介して前記渦流探傷装置に検出信号(X信号とY信号)として入力される。なお、本発明における渦流探傷装置としては、一般的な渦流探傷に用いられる装置を用いることができる。また、検出信号は具体的には電圧である(一般的な渦流探傷装置自体は周知のものであるので更に詳細な説明はここでは省略する。例えば、社団法人日本非破壊検査協会・星川洋編:非破壊検査技術シリーズ 渦流探傷試験1,pp.41-49,2007年3月.を参照)。
【0039】
なお、本発明を用いての検出作業にあたっては、検査対象物10の内部にある非磁性体部材の損傷部から発生する微弱な信号を周りの磁性体部材からの強い信号により埋もれてしまうことなく分離して検出できるようにするために、検査対象物10の非磁性体部材に損傷を予め付与した試験片を渦電流探傷センサ1の平行ボビン2の貫通孔2aに挿入して損傷のない位置で信号をバランスさせた後(すなわち、センサと検査対象物との組み合わせ毎のゼロ設定を行った後)、検査対象物の軸心方向に沿って渦電流探傷センサ1を移動させて損傷に伴う電気信号を得るようにする。
【0040】
具体的には、まず、X信号−Y信号の2次元座標軸上で非磁性体部材の損傷に伴う検出信号がほぼY軸方向にくるように原点を中心として回転すべき表示角度(即ち移相器の設定角度)を求めておく。装置に移相器の表示機能がない場合には、損傷部の検出信号として得られる振幅と位相角とを用いて三角形の底辺(振幅〔V〕×cosθ,θ:位相角〔度〕)をX信号の値(単位はV)とし、高さ(振幅〔V〕×sinθ,θ:位相角〔度〕)をY信号の値(単位はV)とする角度θを90度(即ちY軸の角度)から差し引くことによって回転すべき表示角度が求まる。
【0041】
次に、上述のようにして求めた回転すべき表示角度(即ち移相器の設定角度)に設定を行って、さらに、渦電流探傷センサ1の平行ボビン2の貫通孔2aに管状の検査対象物10を貫通させた状態で損傷のない位置でバランス(即ち0点設定)させた後、渦電流探傷センサ1を検査対象物10の軸心方向に移動させながら出力コイル4に供給される交流電圧によって検査対象物10に誘起される誘導電圧を検波コイル5によって検出する。
【0042】
そして、鋼等の磁性体部材とアルミ等の非磁性体部材とは位相角が約90度ずれているので、本発明においては、出力コイル4に供給される交流電圧によって検査対象物10に誘起されて検波コイル5によって検出される誘導電圧のX信号の変動に基づいて検査対象物10を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物10を構成する非磁性体部材の損傷を検出する。
【0043】
具体的には、渦電流探傷センサ1を用いた測定によって得られる電気信号について、X信号に変動が認められる場合には鋼管などの磁性体部材に損傷が発生していると判断され、Y信号に変動が認められる場合にはアルミニウム管などの非磁性体部材に損傷が発生していると判断される。
【0044】
なお、検査対象物に損傷が発生していると判断するためのX信号の変動の程度は特定の基準に限定されるものではなく、作業者が適宜設定すれば良い。具体的には例えば、検波コイルによって検出される渦電流の電圧が出力コイルに供給する交流電圧の2割を超える変動をした場合には検査対象物に損傷が発生していると判断することなどが考えられる。
【0045】
以上のように構成された本発明の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサによれば、検査対象物の軸心方向の損傷を検出することに加えて軸心方向に対して傾斜する方向の損傷を検出することも可能であるので、例えばOPGWのような管状の検査対象物であって磁性体部材と非磁性体部材とからなる検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことができ、損傷発生有無の検査の信頼性の向上を図ることができる。
【0046】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、渦流探傷装置に備わっている表示角度(即ち移相器の設定角度)を変えて磁性体部材の損傷をY信号で評価すると共に非磁性体部材の損傷をX信号で評価するようにしても良い。
【0047】
また、磁性体部材の損傷は検出・評価対象としないで非磁性体部材の損傷のみを検出・評価対象とすれば良い場合においては、X信号の値やY信号の値としてではなく振幅のみで評価するようにしても良い。なお、振幅は数式2によって定義される。すなわち、振幅は、X信号−Y信号の図において原点からの距離を示している。そして、X信号が0である場合には、振幅はY信号の高さを示している。
(数2) 振幅〔V〕={(X信号の値〔V〕)2+(Y信号の値〔V〕)2}1/2
【0048】
また、本実施形態では、両直交ボビン3A,3Bの軸心位置に貫通孔3aを形成すると共に当該貫通孔3aに磁性材料で形成されたコア15が嵌め合わされるようにしているが、直交ボビン3A,3Bに磁性を有するコア15を嵌め合わせることは本発明において必須の要件ではない。磁性を有するコアを直交ボビンに嵌め合わせることによってこれに巻き回される検波コイルの誘導電圧の検知能力を向上させることが期待できるものの、コアが嵌め合わされていないとしても検波コイルは誘導電圧を検知することが可能である。
【0049】
また、本実施形態では、二つの直交ボビン3A,3Bは平行ボビン2を挟んで即ち検査対象物10を挟んで正対するように配置されるようにしているが、これに限られず、二つの直交ボビン3A,3Bは、検査対象物10の周方向に並べられて配置されていれば良く、検査対象物10を挟んで正対する位置関係になくても良い。
【0050】
また、本実施形態では、第一の直交ボビン3Aも第二の直交ボビン3Bも軸心の方向が平行ボビン2の軸心方向即ち検査対象物10の軸心方向と直交するように配置されるようにしているが、これに限られず、二つの直交ボビン3A,3B並びにこれらボビンに巻き回される検波コイルのうちのどちらか一方若しくは両方の軸心方向が検査対象物10の軸心方向と直交する方向からずれているようにしても良い(図5。なお、図5〜7においては、接続端子固定基板6と基板固定部材7とを図示していない。)。なお、検波コイルを巻き回すボビンを一つだけ設けるようにする場合も、当該ボビンの軸心方向が検査対象物10の軸心方向に対して直交している必要はない。また、図5に示す形態では直交ボビン3Bに巻き回された検波コイル5の軸心方向が検査対象物10の軸心方向に沿って傾斜するようにしているが、検波コイルの軸心方向の傾斜はこれに限られるものではなく、図6に示すように、検査対象物10の周方向に沿って傾斜するようにしても良い。尚更に言えば、検波コイルの軸心方向の傾斜は、検査対象物10の軸心方向や周方向に沿うものである必要はなく、検査対象物10の軸心方向に対していずれかの方向に傾斜しているものであれば良い。
【0051】
また、本実施形態では、管状の検査対象物10の軸心の周方向に巻き回されることになる出力コイル4が巻き回される溝2bを有する平行ボビン2に加え、検査対象物10の軸心方向と直交する方向の軸の周方向に巻き回されることになる検波コイル5が巻き回される溝3bをそれぞれ有する二つのボビンであって平行ボビン2を挟んで対向して配置される第一の直交ボビン3Aと第二の直交ボビン3Bとを有するようにしているが、これに限られず、検波コイル5を巻き回すボビンは一つだけでも良いし、三つ以上でも良い。そして、検波コイル5を巻き回すボビンを三つ以上設けるようにする場合には、これらボビン及びこれに巻き回される検波コイルの軸心方向を検査対象物10の軸心方向に対して傾斜させる角度を全て異なるようにすることが望ましい。検波コイルの軸心方向の傾斜角度を全て異なるようにすることにより、検査対象物10のあらゆる方向の損傷を検出することができるようになる。なお、検波コイルを巻き回すボビンを三つ以上設けるようにする場合には、これらボビンが検査対象物10の周方向に並べられて配置されるようにすることが望ましい。
【0052】
また、本実施形態では、出力コイル4を管状の検査対象物10の軸心の周方向に巻き回すと共に、検波コイル5を検査対象物10の軸心方向と直交する方向の軸の周方向に巻き回すようにしているが、これに限られず、出力コイル4と検波コイル5との両方を検査対象物10の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に巻き回すようにしても良い。具体的には例えば、図7に示すように、本実施形態における平行ボビン2の溝2bにはコイルを巻かずに、直交ボビン3A,3Bのどちらか一方に出力コイル4を巻き回すと共に他方に検波コイル5を巻き回すようにしても良い。
【実施例1】
【0053】
本発明の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサを実際のOPGWの損傷の検出に適用した実施例を図8から図15を用いて説明する。
【0054】
本実施例において検査対象物として用いたOPGWの断面を図8に示す。このOPGW10は、中心部の光ファイバ収納アルミニウム管11とこの光ファイバ収納アルミニウム管11を取り囲む八本のアルミ覆鋼線14とからなる。まお、本実施例で用いたOPGW10は、線種の規格としてはOPGW−60(60は避雷用地線としての公称面積60mm2を表しており、図8の八本のアルミ覆鋼線14の総面積に該当する)であり、全体外径は11.4mmであると共にアルミニウム管11aの外径は5mmである。
【0055】
光ファイバ収納アルミニウム管11は、外周壁であるアルミニウム管11aと、アルミニウム管11a内部に配設される三本の光ファイバユニット12と、これら三本の光ファイバユニット12のアルミニウム管11a内部での位置を固定するための三つの溝13aを有する溝付きアルミスペーサ13とからなる。
【0056】
なお、本実施例の光ファイバユニット12は、中央の光ファイバとその周囲の六本の光ファイバとを束ねてなるものである。また、アルミ覆鋼線14は鋼線の周りにアルミを被覆させたものである。
【0057】
以上のように、本実施例において検査対象物として用いるOPGW10は、磁性体部材と非磁性体部材とからなるものであり、本発明を適用するのに好適なものである。なお、実際のOPGWの保守点検においては外部からは明確に視認することができない中心部のアルミニウム管11aの損傷が特に問題になるので、本発明によればOPGW10のアルミニウム管11aの損傷の検出を適確に行うことが可能になることは実際のOPGWの保守点検に対して非常に有益である。
【0058】
本実施例では、OPGW10に形成された線状き裂のOPGW10の軸心方向に対する傾斜角度の違いによる探傷性能の比較を行った。具体的には、供試材として約1mの長さに切断したOPGW10内部のアルミニウム管11aを取り出し、当該アルミニウム管11aに管軸方向(軸心方向と同義)或いは管軸方向に対して10度,45度,70度,90度のいずれかの角度で傾斜した方向の線状き裂を人工的に形成した後にOPGW10内部に戻すことによって損傷としての線状き裂を内部に有するOPGW10を作成した。なお、管軸方向に対して90度傾斜した方向とは即ちアルミニウム管11aの周方向である。
【0059】
線状き裂の幅は約0.2mm〜2mmで長さは約5mm〜50mmであった。また、アルミニウム管11a毎に一つの損傷を人工的に形成し、当該人工的に形成された検出対象の損傷の他には損傷のないことを確認したOPGW10を用いて測定を行った。
【0060】
そして、本実施例では、図1〜図4に示す本発明の渦電流探傷センサ1であって検波コイル5が巻き回される両直交ボビン3A,3Bの貫通孔3aにコア15が挿入されていないセンサ(即ち、貫通孔3a内は空。以下、コアなしセンサと呼ぶ)と、貫通孔3aにコア15として円柱形状のフェライトが挿入されたセンサ(以下、フェライトコアセンサと呼ぶ)と、これら本発明に係るセンサとの比較例として図16に示す従来の渦電流探傷センサ(以下、従来センサと呼ぶ)とのそれぞれについて同一条件においてOPGW10毎のアルミニウム管11aの損傷の検出を行った。なお、渦電流探傷センサ1(若しくは100)の平行ボビン2(若しくは101)の貫通孔2a(若しくは101a)の直径はOPGW10の全体外径に合わせて13mmに形成された。
【0061】
さらに、本実施例では、渦電流探傷センサ1と接続端子9a,9bを介して電気的に接続して損傷検出のための測定を行う渦流探傷装置としてユニ電子工業株式会社製・単周波渦流探傷装置[EddyStation SW2]を用い、コンピュータ(PC)上で作動する同装置付属の計測・データ表示ソフトを用いた。
【0062】
測定にあたっては、まず、渦電流探傷センサ1(若しくは100)の貫通孔2a(若しくは101a)にOPGW10を挿入して損傷のない位置で電気信号のバランス(即ちゼロ設定)を行った後、OPGW10の軸心方向に沿って渦電流探傷センサ1(若しくは100)を移動させ、損傷に伴う検出信号(X信号とY信号)を得た。
【0063】
そして、渦流探傷装置を介してコンピュータのモニタに表示される検出信号の変化(具体的には、損傷が存在する場合は上に凸形即ちピーク状が出現する)を目視で観察し、その結果を、i)検出可能,ii)判定困難,iii)検出不可、の3種類に分類した。なお、得られた信号が欠陥によるものかノイズによるものか判別し難い場合に判定困難とした。
【0064】
なお、本実施例では、測定周波数は70kHzとした。また、増幅器の電圧比即ちゲインは、30dBを基本とし、30dBで検出不能の場合は検出可能なレベルまでdB値を40,50,60と順次上げて測定した。
【0065】
そして、従来センサを用いて損傷の検出を行い、図9に示す結果が得られた。なお、図9〜11においては、上述のi)検出可能を記号○で、ii)判定困難を記号△で、iii)検出不可を記号×でそれぞれ表している。この結果から、従来センサの場合には、検査対象物10の管軸方向及び管軸方向に対して10度の角度で傾斜した方向の損傷は幅が狭くても検出することができる一方で、検査対象物10の管軸方向に対して大きく傾斜する方向及び周方向の損傷は検出することができないことが確認された。
【0066】
また、コアなしセンサを用いて損傷の検出を行い、図10に示す結果が得られた。この結果から、コアなしセンサの場合には、従来センサの場合と同様に検査対象物10の管軸方向及び管軸方向に近い方向の損傷に加えて、検査対象物10の管軸方向に対して傾斜する方向及び周方向の損傷も幅が狭くても概ね検出することが可能であることが確認された。なお、管軸方向に対して45度の角度で傾斜する方向の損傷は検出することができなかった。なお、図1〜図4に示す渦電流探傷センサ1によっては管軸方向に対して45度の角度で傾斜する方向の損傷を検出することができないという点については、二つの直交ボビン3A,3Bのうちのどちらか一方の軸心方向を平行ボビン2の軸心方向と直交する方向からずれるように配置することによって解消され得る(図5,図6参照)。
【0067】
さらに、フェライトコアセンサを用いて損傷の検出を行い、図11に示す結果が得られた。この結果から、フェライトコアセンサの場合には、コアなしセンサの場合と同様に検査対象物10の軸心方向から周方向まで方向に拘わらず損傷を殆ど検出することができ、加えて、コアなしセンサを用いた場合よりも幅の狭い損傷を検出することができることが確認された。
【0068】
なお、フェライトコアセンサを用いた損傷の検出の場合における、OPGW10の管軸方向で幅1mm・長さ10mmの線状き裂を検出した際の検出信号の軌跡として図12に示す結果が得られ、OPGW10の周方向で幅1mmの線状き裂を検出した際の検出信号の軌跡として図14に示す結果が得られた。なお、検出信号の軌跡とはセンサの検波コイルによって検出されて渦流探傷装置を介してコンピュータのモニタに表示されるX信号−Y信号の2次元座標平面における電圧値の変化の軌跡であり、図12,14において横軸は電気信号のX信号の値(単位はV)であり縦軸はY信号の値(単位はV)である。横軸及び縦軸ともに一目盛りは2〔V〕である。
【0069】
また、渦流探傷装置を介してコンピュータのモニタに表示されたデータを、横軸を時間軸にすると共に縦軸をY信号の値にして表示することにより、OPGW10の管軸方向の損傷の検出について図13(A)に示す結果が得られ、周方向の損傷の検出について図15(A)に示す結果が得られた。また、横軸を時間軸にすると共に縦軸をX信号の値にして表示することにより、OPGW10の管軸方向の損傷の検出について図13(B)に示す結果が得られ、周方向の損傷の検出について図15(B)に示す結果が得られた。なお、図13,15において、縦軸は一目盛りが1〔V〕であり、横軸は一目盛りが0.5〔sec〕である。
【0070】
図13及び図15に示す結果から、Y信号の値の変動が大きいので非磁性体であるアルミニウム管11aに損傷が発生していると判断され、一方で、X信号の値の変動は大きいとは言えないので磁性体である鋼線14には損傷は発生していないと判断された。
【0071】
これらの結果から、本発明の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサによれば、検査対象物の軸心方向の損傷に限らず、軸心方向に対して傾斜した方向の損傷であっても、さらに、検査対象物の軸心の周方向の損傷であっても、損傷の検出を適確に高い精度で行うことが可能であることが確認された。
【0072】
なお、本実施例では、図8に示す断面を有するOPGW10を検査対象物として用いているが、本発明の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサの適用に適したOPGWの断面構成はこれに限られるものではなく、更に言えば、本発明の適用に適した検査対象物はOPGWに限られるものではない。
【符号の説明】
【0073】
1 渦電流探傷センサ
2 平行ボビン
2a 貫通孔
2b 溝
2c 凹部
3A 第一の直交ボビン
3B 第二の直交ボビン
3a 貫通孔
3b 溝
4 出力コイル
5 検波コイル
6 接続端子固定基板
6a 接続孔
6b 接続孔
6c 貫通孔
6d リード
7 基板固定部材
7a 凹部
7b 端部
7c 貫通孔
8a ボルト
8b ナット
9a 接続端子
9b 接続端子
10 検査対象物(OPGW)
11 光ファイバ収納アルミニウム管
11a アルミニウム管
12 光ファイバユニット
13 溝付きアルミスペーサ
13a 溝
14 アルミ覆鋼線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、前記検査対象物の周方向に出力コイルを巻き回すと共に前記検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に検波コイルを巻き回し、前記出力コイルと前記検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号の変動に基づいて少なくとも前記非磁性体部材の損傷を検出することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項2】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、前記検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の複数の軸の周方向に出力コイルと検波コイルとを別々に巻き回すと共に当該出力コイルと検波コイルとを前記検査対象物の周方向に並べて配置し、前記出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号の変動に基づいて少なくとも前記非磁性体部材の損傷を検出することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項3】
前記検波コイルとして、前記軸の方向が相互に異なる複数のコイルを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の渦電流探傷方法。
【請求項4】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、前記検査対象物の周方向に巻き回された出力コイルと前記検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に巻き回された検波コイルとを有し、前記出力コイルと前記検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行うことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項5】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、前記検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の複数の軸の周方向に別々に巻き回されると共に前記検査対象物の周方向に並べて配置された出力コイルと検波コイルとを有し、当該出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行うことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項6】
前記検波コイルとして、前記軸の方向が相互に異なる複数のコイルを有することを特徴とする請求項4または5に記載の渦電流探傷センサ。
【請求項1】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、前記検査対象物の周方向に出力コイルを巻き回すと共に前記検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に検波コイルを巻き回し、前記出力コイルと前記検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号の変動に基づいて少なくとも前記非磁性体部材の損傷を検出することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項2】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、前記検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の複数の軸の周方向に出力コイルと検波コイルとを別々に巻き回すと共に当該出力コイルと検波コイルとを前記検査対象物の周方向に並べて配置し、前記出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる電気信号の変動に基づいて少なくとも前記非磁性体部材の損傷を検出することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項3】
前記検波コイルとして、前記軸の方向が相互に異なる複数のコイルを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の渦電流探傷方法。
【請求項4】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、前記検査対象物の周方向に巻き回された出力コイルと前記検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の軸の周方向に巻き回された検波コイルとを有し、前記出力コイルと前記検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行うことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項5】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に、前記検査対象物の軸心方向に対して傾斜する方向の複数の軸の周方向に別々に巻き回されると共に前記検査対象物の周方向に並べて配置された出力コイルと検波コイルとを有し、当該出力コイルと検波コイルとを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行うことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項6】
前記検波コイルとして、前記軸の方向が相互に異なる複数のコイルを有することを特徴とする請求項4または5に記載の渦電流探傷センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−236928(P2010−236928A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83060(P2009−83060)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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