説明

渦電流探傷試験方法及び渦電流探傷試験装置

【課題】渦電流探傷試験法に特有の物理現象を利用することで長さ評価精度と汎用性が高い渦電流探傷試験方法及び渦電流探傷試験装置を提供する。
【解決手段】本発明は、中心軸方向と被検査面の法線方向が一致している第1のコイル12と、中心軸方向と被検査面の法線方向が一致しており、第1のコイル12と所定の中心間距離d1で配置される第2のコイル13とを有するプローブ11を用いて被検査面の欠陥15を検出し当該欠陥長さLを評価する渦電流探傷試験方法において、プローブ11を走査し被検査面の欠陥に起因する出力電圧分布を取得し、出力電圧分布に現れる二つの極大値を検出し、検出された二つの極大値間の長さd2を算出し、算出された極大値間の長さd2と第1のコイル12及び第2のコイル13の中心間距離d1を加算した結果を被検査面の欠陥長さLと評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流探傷試験に係り、特に、汎用的で長さ評価精度の高い渦電流探傷試験方法及び渦電流探傷試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属表面あるいは表面近傍の金属内部に存在する欠陥を検出する手法として渦電流探傷試験が知られている。渦電流探傷試験装置は、金属表面に設置された励磁コイルにより磁場を発生させ、この磁場により金属表面及び金属内部に渦電流を誘起する。金属表面あるいは表面近傍の金属内部に欠陥が存在する場合、金属表面及び金属内部に誘起された渦電流の流れが変化するので、渦電流がつくる磁場分布も変化する。この渦電流がつくる磁場分布変化を金属表面に設置された検出コイルにおいて検出することで、渦電流探傷試験装置は欠陥の有無を検知することができる。
【0003】
また、この装置を用いて欠陥の長さを評価する場合がある。特許文献1は、渦電流探傷試験装置で得られた欠陥による出力電圧分布を用いて欠陥長さを評価する方法及び装置の例である。本文献では、例えば、無欠陥領域の出力電圧を基準とし、その基準と出力電圧の最大値の1/2以下の任意の閾値で切った出力電圧分布の断面あるいは線から欠陥長さを評価している。なお、特許文献1に記されている励磁コイルと検出コイルの構成は、例えば、非特許文献1及び非特許文献2にも明示されている。
【特許文献1】特開2008−8806号公報
【非特許文献1】SICE Annual Conference in Sapporo, August 4−6, 2004
【非特許文献2】NDT&E International 38 (2005) 623−626
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の渦電流探傷試験装置及び欠陥長さ評価方法においては、ある一定の物理現象を利用した欠陥長さ評価方法ではなく、蓄積データ、すなわち経験値を基にした評価方法であるため、長さ評価精度に限界があり、汎用性が低かった。また、装置構成は、シングルチャンネル式が一般的であるため、長さ評価を行うための探傷時間が長くなることが課題であった。
【0005】
本発明では、渦電流探傷試験法に特有な物理現象を利用して、長さ評価精度と汎用性が高く、また、長さ評価を行うための探傷時間を従来よりも短縮可能な渦電流探傷試験方法及び渦電流探傷試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る渦電流探傷試験方法は、上述した課題を解決するため、特許請求の範囲に記載したように、コイル中心軸の方向と被検査面の法線方向が一致している第1のコイルと、コイル中心軸の方向と被検査面の法線方向が一致しており、第1のコイルと所定の中心間距離で配置される第2のコイルとを有するプローブを用いて被検査面の欠陥を検出し当該欠陥長さを評価する渦電流探傷試験方法において、前記プローブを走査して前記被検査面の欠陥に起因する出力電圧分布を取得する出力電圧分布取得ステップと、前記出力電圧分布に現れる二つの極大値を検出する極大値検出ステップと、前記極大値検出ステップで検出された二つの極大値間の長さを算出することによって測定する極大値間長さ測定ステップと、前記極大値間長さ測定ステップで算出された極大値間の長さと前記第1のコイル及び第2のコイルの中心間距離とを加算し、得られた極大値間の長さと前記第1のコイル及び第2のコイルの中心間距離との和を前記被検査面の欠陥の長さとして評価する欠陥長さ評価ステップと、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る渦電流探傷試験装置は、上述した課題を解決するため、特許請求の範囲に記載したように、コイル中心軸の方向と被検査面の法線方向が一致している第1のコイルと、コイル中心軸の方向と被検査面の法線方向が一致しており、第1のコイルと所定の中心間距離で配置される第2のコイルとを有するプローブを用いて被検査面の欠陥を検出し当該欠陥長さを評価する渦電流探傷試験装置において、前記プローブを走査して取得される前記被検査面の欠陥に起因する出力電圧分布に現れる二つの極大値を検出する出力電圧分布極大値検出部と、前記出力電圧分布極大値検出部が検出した二つの極大値間の長さを算出することによって測定する極大値間長さ測定部と、前記極大値間長さ測定部が測定した極大値間の長さと前記第1のコイル及び第2のコイルの中心間距離とを加算し、得られた極大値間の長さと前記第1のコイル及び第2のコイルの中心間距離との和を前記被検査面の欠陥の長さとして評価する欠陥長さ評価部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、渦電流探傷試験法による欠陥検出における特有な物理現象に基づいて欠陥長さを評価するので、欠陥長さ評価精度と汎用性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る渦電流探傷試験方法及び渦電流探傷試験装置について、添付の図面を参照して説明する。
【0010】
本発明の各実施形態に係る渦電流探傷試験方法及び渦電流探傷試験装置を説明するのに先立ち、本発明の実施形態に係る渦電流探傷試験方法の原理について説明する。
【0011】
[本発明の実施形態に係る渦電流探傷試験方法の原理]
図1(図1(A)及び図1(B))は、本発明の実施形態に係る渦電流探傷試験方法の原理を説明する説明図であり、(A)は渦電流探傷試験方法を概略的に示す図、(B)は検出された電圧分布と、極大値A及び極大値Bを検出する時のプローブ(励磁コイル及び検出コイル)位置を示した図である。尚、図1(A)に示される符号11は渦電流探傷試験装置10(10A,10B,10C,10D)のプローブ、符号12はプローブ11の励磁コイル、符号13はプローブ11の検出コイル、符号14は渦電流探傷試験の被検査対象物、符号15は欠陥、符号Lは欠陥15の長さ、d1は励磁コイル12及び検出コイル13間の距離、矢印はプローブ11(励磁コイル12及び検出コイル13)の走査方向を示す。
【0012】
図1(A)に示されるように、プローブ11を図中の矢印方向に走査した結果、被検査対象物14の表面に走査方向に長さLの欠陥15を検出したとする。この場合、図1(B)に示されるような電圧分布が出力(表示)される。
【0013】
渦電流探傷試験の結果、得られる出力電圧分布は、通常、図1(B)に示されるように二つの極大値A,Bを有する波形となる。出力電圧分布中の極大値A,Bは、励磁コイル12及び検出コイル13が所定の位置関係にある場合に現れる。より詳細には、極大値Aは、励磁コイル12が欠陥15の左端部上に存在し、且つ、検出コイル13が欠陥15上に存在する場合に現れる。また、極大値Bは、検出コイル13が欠陥15の右端部上に存在し、且つ、励磁コイル12が欠陥15上に存在する場合に現れる。これは渦電流探傷試験における特有の物理現象である。
【0014】
上記位置関係を考慮すれば、図1(B)に示される極大値A,B間の長さd2は、励磁コイル12及び検出コイル13の走査距離に相当することから、欠陥長さLは、励磁コイル12と検出コイル13間の距離を示すd1及び極大値A,B間の長さd2を用いて以下の式(1)のように表すことができる。
[数1]
L=d1+d2 ・・・(1)
【0015】
本発明の実施形態に係る渦電流探傷試験方法において適用される上記式(1)は、渦電流探傷試験特有の物理現象に基づいて導出された式であり、本発明はこの式(1)に基づいて欠陥長さLの評価を行うものである。
【0016】
[第1の実施形態]
図2は、本発明の第1の実施形態に係る渦電流探傷試験装置の一実施例である渦電流探傷試験装置(以下、「第1の渦電流探傷試験装置」と称する)10Aの構成を概略的に示した概略図である。
【0017】
図2に示されるように、第1の渦電流探傷試験装置10Aは、プローブ11と、探傷部21と、駆動部22と、記憶部23と、入力部24と、表示部25と、制御部26Aと、出力電圧分布における両端の極大値を検出する出力電圧分布極大値検出部31と、出力電圧分布極大値検出部31が検出した両端の二つの極大値間の長さを測定する極大値間長さ測定部32と、被検査対象14の表面にある欠陥15の長さを算出する欠陥長さ評価部33Aと、を具備する。
【0018】
第1の渦電流探傷試験装置10Aのプローブ11は、発生させた磁場によって被検査対象14に渦電流を誘起する励磁コイル12と、被検査対象14に誘起された渦電流によって生じる磁場の変化を当該磁場によって誘起される出力電圧の変化として検出する検出コイル13を有する。プローブ11の励磁コイル12と検出コイル13とは中心間の距離(コイル間距離)がd1で配列されている。
【0019】
探傷部21は、励磁コイル12を励磁する励磁回路34と検出コイル13に誘起された電圧を検出する検出回路(検波回路)35とを有し、被検査対象14の表面にある欠陥15を検出する。探傷部21の励磁回路34及び検出回路35は、制御部26によって制御される。検出回路35が検出した検出コイル13の出力電圧分布(検出コイル13に誘起された電圧)の情報は、出力電圧分布極大値検出部31へ送られる。
【0020】
駆動部22は、プローブ11(励磁コイル12及び検出コイル13)を駆動させる。駆動部22は、制御部26Aによって探傷部21での磁場の変化(出力電圧)の検出とプローブ11の駆動(走査)が同期するように制御される。
【0021】
記憶部23は、情報を記憶する機能を有し、渦電流探傷試験装置10では、被検査対象14の表面に存在する欠陥の長さLを算出するために利用される情報として、プローブ11の励磁コイル12と検出コイル13とは中心間の距離(コイル間距離)d1と、上述した式(1)の情報(以下、「欠陥評価用情報」と称する)36が格納される。
【0022】
入力部24は、ユーザが渦電流探傷試験装置10に対して入力操作を行うマン・マシンインターフェイスである。入力部24は、例えば、試験開始の指示や記憶部23に格納する情報の登録、更新、又は消去の指示等のユーザの入力操作を受け付け、渦電流探傷試験装置10の制御部26Aに受け付けたユーザの指示内容を伝える。
【0023】
表示部25は、渦電流探傷試験の結果、すなわち、探傷部21で検出された検出コイル13の出力電圧分布及び欠陥長さ評価部33Aで算出された欠陥長さを表示する機能を有する。
【0024】
制御部26Aは、探傷部21、駆動部22、記憶部23、入力部24及び表示部25と接続されており、探傷部21、駆動部22、記憶部23、入力部24及び表示部25を制御することで、渦電流探傷試験装置10Aを全体的に制御する。
【0025】
出力電圧分布極大値検出部31は、探傷部21が取得した検出コイル13からの出力電圧の情報に基づいて、当該出力電圧分布における両端の極大値を検出する。上述した図1(B)に示される出力電圧分布の場合、出力電圧分布極大値検出部31は、出力電圧分布の値に基づいて極大値Aと極大値Bを検出し、当該極大値A,Bとなった測定位置、すなわち、X座標を特定する。極大値Aと極大値Bの位置情報としてのX座標の情報は、出力電圧分布極大値検出部31から極大値間長さ測定部32へ送られる。
【0026】
極大値間長さ測定部32は、出力電圧分布極大値検出部31が検出した両端の二つの極大値間の長さ(図1(B)に示されるd2)を測定する。具体的には、出力電圧分布極大値検出部31から送られる二つの極大値の各X座標の差を算出することによって、両極大値間の長さは測定される。この測定結果d2は、極大値間長さ測定部32から欠陥長さ評価部33Aへ送られる。
【0027】
欠陥長さ評価部33Aは、記憶部23に格納される欠陥評価用情報36から励磁コイル12と検出コイル13との間の距離d1及び式(1)の情報を読み出すと共に、出力電圧分布における両極大値間の長さd2を極大値間長さ測定部32から受け取る。そして、d1及びd2を式(1)に代入して欠陥の長さLを算出する。算出された欠陥の長さLは、表示部25に出力される。
【0028】
尚、図2に一例として示される渦電流探傷試験装置10Aでは、表示部25を具備する構成であるが、必ずしも表示部25を具備していなくても良く、渦電流探傷試験装置10とは別の独立した表示装置として表示部25が構成される場合もある。また、プローブ11を手動で動かして走査する場合必ずしも、駆動部22を具備していなくても良い。
【0029】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る渦電流探傷試験方法(以下、「第1の渦電流探傷試験方法」と称する)の手順(ステップS1〜ステップS6)を示したフロー図である。この図3を参照して第1の渦電流探傷試験方法について説明する。
【0030】
第1の渦電流探傷試験方法は、例えば、第1の渦電流探傷試験装置10Aが図3に示される各ステップを順次行うことで実施される。
【0031】
第1の渦電流探傷試験方法では、第1の渦電流探傷試験の準備段階として、第1の渦電流探傷試験装置10Aを起動する。すなわち、プローブ11を被検査対象14の表面に置き、プローブ11の励磁コイル12に電流を流す。これにより、励磁コイル12は磁場を発生させ、この磁場が被検査対象14の表面及び内部に渦電流を誘起する。そして、誘起された渦電流が被検査対象14の表面及び内部に磁場を発生させる(START)。
【0032】
ステップS1では、制御部26Aが駆動部22を制御して、励磁コイル12と検出コイル13間の長さ(コイル間距離)d1を一定に保ちつつ、図1に示される矢印の方向(走査方向)に走査する。
【0033】
続いて、ステップS2では、探傷部21が検出コイル13から既述の図1(B)に示されるような出力電圧分布を取得し、取得した出力電圧分布の情報を表示部25及び出力電圧分布極大値検出部31へ送る。ステップS1において、励磁コイル12と検出コイル13が欠陥15上を通過するように走査した場合、各走査位置で検出コイル13から電圧が出力され、例えば、既述の図1(B)に示されるような出力電圧分布が探傷部21で取得される。探傷部21は出力電圧分布を取得すると、出力電圧分布の情報を表示部25及び出力電圧分布極大値検出部31へ送る。
【0034】
続いて、ステップS3では、出力電圧分布極大値検出部31が、探傷部21から取得した検出コイル13の出力電圧分布における両端の極大値、すなわち、上述した図1(B)に示される出力電圧分布の場合、極大値Aと極大値Bが検出され、当該極大値A,Bとなった測定位置(X座標)が特定される。極大値Aと極大値Bの位置情報(X座標の情報)は、出力電圧分布極大値検出部31から極大値間長さ測定部32へ送られる(極大値検出ステップ)。
【0035】
続いて、ステップS4では、極大値間長さ測定部32が、出力電圧分布極大値検出部31が検出した両端の二つの極大値間の長さ(図1(B)に示されるd2)を測定する。具体的には、出力電圧分布極大値検出部31から送られる二つの極大値の各X座標の差を算出することによって、両極大値間の長さは測定される。この測定結果d2は、極大値間長さ測定部32から欠陥長さ評価部33Aへ送られる(極大値間長さ測定ステップ)。
【0036】
続いて、ステップS5では、欠陥長さ評価部33Aが、記憶部23に格納される欠陥評価用情報36から励磁コイル12と検出コイル13との間の距離d1及び式(1)の情報を読み出すと共に、出力電圧分布における両極大値間の長さd2を極大値間長さ測定部32から受け取る。そして、d1及びd2を式(1)に代入して欠陥の長さLを算出し、計算結果を表示部25へ送る(欠陥長さ評価ステップ)。
【0037】
続いて、ステップS6では、表示部25がステップS2で取得された出力電圧分布及び欠陥長さ評価部33Aが算出した欠陥15の長さLを欠陥長さ評価結果として画面に表示する。欠陥長さ評価結果が表示部25に表示されると、第1の渦電流探傷試験方法は全ステップを完了する(END)。
【0038】
第1の渦電流探傷試験方法及び第1の渦電流探傷試験装置10Aによれば、励磁コイル12、検出コイル13及び欠陥15の位置関係が特定の関係にある場合に、出力電圧が極大となるという渦電流探傷試験法による欠陥検出における特有の物理現象を利用しているため、欠陥長さ評価精度及び汎用性を高めることができる。
【0039】
また、出力電圧の極大値を利用するため、出力電圧波形の低電圧側に出現するノイズに埋もれにくく、欠陥の長さを測定する際に必要となる上記極大値を検出する際にも上記ノイズの影響は小さい。その結果、欠陥長さ評価精度を高めることができる。
【0040】
尚、本実施形態の説明では、第1の渦電流探傷試験方法(図3に示されるステップS1〜ステップS6)を実施する際に第1の渦電流探傷試験装置10Aを用いて自動で行っているが、これらの各ステップの一部又は全部を手動で行っても良い。
【0041】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る渦電流探傷試験方法(以下、「第2の渦電流探傷試験方法」と称する)は、第1の渦電流探傷試験方法と異なり、プローブ11の二つのコイルの位置を電気的に切り替えて又は手動的に配置を変えて第1の渦電流探傷試験方法を実施する。このように渦電流探傷試験を行うと、励磁コイル12と検出コイル13との間の距離d1及び式(1)の情報を用いることなく欠陥長さの評価を行うことができる点で第1の渦電流探傷試験方法よりも有利である。
【0042】
図4は、探傷部21が取得する出力電圧分布と極大値となる場合の励磁コイル12及び検出コイル13の位置関係を表した説明図である。
【0043】
第2の渦電流探傷試験方法では、励磁コイル12と検出コイル13の位置を入れ替えて第1の渦電流探傷試験方法を実施している。そのため、図4に示されるように、検出コイル13からの出力電圧分布は励磁コイル12と検出コイル13とを切り替える前(以下、「第1の走査モード」と称する)に検出コイル13から出力される電圧分布(以下、「第1の出力電圧分布」と称する)と、切り替えた後(以下、「第2の走査モード」と称する)に検出コイル13から出力される電圧分布の二つの電圧分布(以下、「第2の出力電圧分布」と称する)が探傷部21で取得される。
【0044】
ここで、図4に示される第1の出力電圧分布(実線)と第2の出力電圧分布(破線)との位相差、すなわち、極大値A−C間又は極大値B−D間の長さは、図4に示される励磁コイル12及び検出コイル13の位置関係からもわかるように、励磁コイル12と検出コイル13との間の距離d1に対応する。この時、図4に示される最長の極大値間長さ(極大値A−D間長さ)d3は、極大値A−B間長さd2+極大値B−D間長さd1であり、上述した式(1)を考慮すれば、L=d3の関係が導出される。本発明の第2の実施形態に係る渦電流探傷試験装置は、上記手法によって、被検査対象14の欠陥15の長さLを評価する渦電流探傷試験装置である。
【0045】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る渦電流探傷試験装置の一実施例である渦電流探傷試験装置(以下、「第2の渦電流探傷試験装置」と称する)10Bの構成を概略的に示した概略図である。
【0046】
図5に示される第2の渦電流探傷試験装置10Bは、図2に示される第1の渦電流探傷試験装置10Aに対して、制御部26A及び欠陥長さ評価部33Aの代わりに制御部26B及び欠陥長さ評価部33Bを具備する点と、コイル切替部38をさらに具備する点で相違するが、その他の点では実質的に相違しない。そこで、第2の渦電流探傷試験装置10Bの説明では、制御部26B、欠陥長さ評価部33B及びコイル切替部38を中心に説明し、第1の渦電流探傷試験装置10Aの構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
第2の渦電流探傷試験装置10Bは、図5に示されるように、プローブ11と、探傷部21と、駆動部22と、記憶部23と、入力部24と、表示部25と、制御部26Bと、出力電圧分布極大値検出部31と、極大値間長さ測定部32と、極大値間長さ測定部32が測定した極大値間長さから欠陥長さLを求める欠陥長さ評価部33Bと、プローブ11の励磁コイル12及び検出コイル13を電気的に切り替えて、コイル切替部38をさらに具備する。
【0048】
制御部26Bは、第1の渦電流探傷試験装置10Aには具備されていないコイル切替部38を制御するため、探傷部21、駆動部22、記憶部23、入力部24及び表示部25に加えさらにコイル切替部38とも接続されており、制御部26Aに対してコイル切替部38を制御する機能が付加される。その他の機能については制御部26Aと実質的に同じである。
【0049】
欠陥長さ評価部33Bは、第1の渦電流探傷試験方法と異なる渦電流探傷方法(第2の渦電流探傷試験方法)で試験を行うため、欠陥15の長さの算出の仕方が異なるが、被検査対象14の欠陥15の長さを算出し、算出結果を表示部25へ表示する点で欠陥長さ評価部33Aと共通する。
【0050】
コイル切替部38は、プローブ11の二つのコイル(第1のコイル及び第2のコイル)を電気的に切り替える。例えば、切替操作前において、第1のコイルが励磁コイル12、第2のコイルが検出コイル13として機能している場合、第1のコイルを検出コイル13として、第2のコイルを励磁コイル12として機能するように切り替える。すなわち、コイル切替部38は、切替操作によって、励磁コイル12を検出コイル13とする一方で検出コイル13を励磁コイル12とする。この切替操作は、被検査対象14を一度走査した後に行われる場合もあるし、一度の走査の途中に連続的に切り替えられる場合もある。
【0051】
このように構成される第2の渦電流探傷試験装置10Bでは、コイル切替部38が励磁コイル12と検出コイル13を電気的に切り替えつつ、第1の走査モードで取得された第1の出力電圧分布(図4に示される実線)と第2の走査モードで取得された第2の出力電圧分布(図4に示される破線)とを取得し、取得した二つの出力電圧分布からそれぞれ二つずつ計四つの極大値A,B,C,Dを抽出し、そのうちの両端の極大値A−D間の距離d3を算出することで、被検査対象14の表面にある欠陥15の長さLを算出することができる。
【0052】
尚、図5に一例として示される第2の渦電流探傷試験装置10Bでは、コイル切替部38を具備しているが、電気的にコイル12,13を入れ替えない場合には具備していなくても良い。すなわち、コイル切替部38は任意の構成要素であり、例えば、手作業でプローブ11の方向を変えることで励磁コイル12と検査コイル13の位置を入れ替えて渦電流探傷試験を行う場合には不要である。
【0053】
図6は、第2の渦電流探傷試験方法の手順(ステップS11〜ステップS6)を示したフロー図である。この図6を参照して第2の渦電流探傷試験方法について説明する。
【0054】
第2の渦電流探傷試験方法は、例えば、第2の渦電流探傷試験装置10Bが図6に示される各ステップを順次行うことで実施される。
【0055】
まず、第2の渦電流探傷試験方法では、第1の渦電流探傷試験と同様に、準備段階として、第2の渦電流探傷試験装置10Bを起動し、被検査対象14の表面及び内部に磁場を発生させる(START)。そして、続くステップS11で、コイル切替部38が励磁コイル12と検出コイル13を電気的に切り替えつつ、駆動部22がプローブ11を走査させる。
【0056】
続いて、ステップS12では、探傷部21が第1の走査モードで取得された第1の出力電圧分布(図4に示される実線)と第2の走査モードで取得された第2の出力電圧分布(図4に示される破線)とを取得し、取得した出力電圧分布の情報を表示部25及び出力電圧分布極大値検出部31へ送る。
【0057】
続いて、ステップS13では、出力電圧分布極大値検出部31が、探傷部21が第1の走査モードで取得された第1の出力電圧分布(図4に示される実線)と第2の走査モードで取得された第2の出力電圧分布(図4に示される破線)とを取得するため、第1の出力電圧分布及び第2の出力電圧分布のそれぞれに対して極大値が検出される。すなわち、上述した図4に示される第1の出力電圧分布及び第2の出力電圧分布の場合、極大値Aと極大値B及び極大値Cと極大値Dが検出され、当該極大値A,B,C,Dとなった測定位置(X座標)が特定される。極大値A,B,C,Dの位置情報(X座標の情報)は、出力電圧分布極大値検出部31から極大値間長さ測定部32へ送られる。
【0058】
続いて、ステップS14では、極大値間長さ測定部32が極大値間の長さを測定する。第2の渦電流探傷試験方法では、ステップS13で四つの極大値A,B,C,Dが検出されるため、四つの極大値A,B,C,Dから二つの極大値を選択する全組み合わせに対して、各極大値A,B,C,DのX座標(位置)の差の絶対値を算出する。ここでは、極大値A−B間の長さ、極大値A−C間の長さ、極大値A−D間の長さ、極大値B−C間の長さ、極大値B−D間の長さ、極大値C−D間の長さの計6通りの数値が算出される。
【0059】
続いて、ステップS15では、欠陥長さ評価部33Bが、ステップS14で算出された六つの数値のうち最大となる数値、すなわち、図4に示される極大値A−D間の長さd3(=d1+d2=L)を選択して、当該数値を欠陥長さLとして表示部25へ出力する。ステップS15以降のステップについては、第2の渦電流探傷試験方法と同様である。
【0060】
尚、第2の渦電流探傷試験方法(図6に示されるステップS11〜ステップS6)を実施する際に第2の渦電流探傷試験装置10Bを用いて自動で行っているが、これらの各ステップの一部又は全部を手動で行っても良い。
【0061】
また、第2の渦電流探傷試験方法は、第1の渦電流探傷試験装置10Aを用いて一部手動で行うことも可能である。具体的な一例としては、第1の渦電流探傷試験装置10Aを用いて第1の渦電流探傷試験のステップS1〜ステップS2までの処理ステップを実行して第1の出力電圧分布を取得後に、検査員がプローブ11の方向を逆にして(走査方向に対して前後を入れ替えて)、再び第1の渦電流探傷試験のステップS1〜ステップS2までの処理ステップを実行して第2の出力電圧分布を取得する。上記処理ステップの実行により、図6に示されるステップS11〜ステップS12までの処理ステップが実行されたのと実質的に同じになる。以降の処理ステップは、図6に示されるステップS13〜ステップS15,ステップS6を実行すれば良い。
【0062】
さらに、他の具体例として、第1の渦電流探傷試験のステップS1〜ステップS3までの処理ステップを実行して、検査員がプローブ11の方向を逆にして、第1の渦電流探傷試験のステップS1〜ステップS3までの処理ステップを実行する。その後、図6に示されるステップS14、ステップS15及びステップS6を実行しても良い。
【0063】
さらにまた、ステップS14で四つの極大値A,B,C,Dから二つの極大値を選択する全組み合わせに対して、各極大値A,B,C,DのX座標(位置)の差の絶対値を算出している場合を説明したが、先に各極大値A,B,C,DのX座標の最大値及び最小値を選択(特定)して当該組み合わせとなる極大値A−D間の長さを測定し、続くステップS15で、欠陥長さ評価部33Bが、ステップS14で算出された極大値A−D間の長さを欠陥長さLとして表示部25へ出力しても良い。
【0064】
第2の渦電流探傷試験方法及び第2の渦電流探傷試験装置10Bによれば、第1の渦電流探傷試験方法及び第1の渦電流探傷試験装置10Aによる効果に加えて、励磁コイル12及び検査コイル13間の長さd1及び式(1)の情報を読み出すことなく直接的に欠陥長さLを測定することができる点で有益である。
【0065】
[第3の実施形態]
図7は、本発明の第3の実施形態に係る渦電流探傷試験方法(以下、「第3の渦電流探傷試験方法」と称する)及び後述する本発明の第4の実施形態に係る渦電流探傷試験方法(以下、「第4の渦電流探傷試験方法」と称する)において適用される被検査対象14の欠陥15の欠陥長さLを測定する方法について説明する説明図である。
【0066】
図7に示されるように、第3の渦電流探傷試験方法及び第4の渦電流探傷試験方法では、励磁コイル12と検査コイル13のコイル対が一対のプローブ(シングルプローブ)11の代わりに、励磁コイル12と検査コイル13のコイル対が複数あるマルチプローブ51を用いて被検査対象14の欠陥15の欠陥長さLを測定する。
【0067】
第3の渦電流探傷試験方法は、図7に示される走査方向(Y方向)にマルチプローブ51を走査させることによって、同じ時刻の各コイル対で測定される出力電圧を取得して、図1(B)に示される出力電圧分布(X方向)を得ることができる。従って、第3の渦電流探傷試験方法では、マルチプローブ51で走査した後は、第1の渦電流探傷試験方法と同様にして被検査対象14の欠陥15の欠陥長さLの長さを測定することができる。
【0068】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る渦電流探傷試験装置の一実施例である渦電流探傷試験装置(以下、「第3の渦電流探傷試験装置」と称する)10Cの構成を概略的に示した概略図である。
【0069】
図8に示される第3の渦電流探傷試験装置10Cは、図2に示される第1の渦電流探傷試験装置10Aに対して、プローブ11及び制御部26Aの代わりにそれぞれマルチプローブ51及び制御部26Cを具備する点で相違するが、その他の点では実質的に相違しない。そこで、第3の渦電流探傷試験装置10Cの説明では、マルチプローブ51及び制御部26Cを中心に説明し、第1の渦電流探傷試験装置10Aの構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
第3の渦電流探傷試験装置10Cは、図8に示されるように、励磁コイル12及び検出コイル13のコイル対を複数有するマルチプローブ51と、探傷部21と、駆動部22と、記憶部23と、入力部24と、表示部25と、制御部26Cと、出力電圧分布極大値検出部31と、出力電圧分布極大値検出部31が検出した極大値間の長さを測定する極大値間長さ測定部32と、欠陥長さ評価部33Aとを具備する。
【0071】
マルチプローブ51は、励磁コイル12及び検出コイル13のコイル対を複数有する。各コイル対における励磁コイル12から見た検出コイル13の方向は同一であり、各コイル対における励磁コイル12と検出コイル13との間の長さ(コイル間距離)d1は同一である。尚、各コイル対の動作はプローブ11と実質的に同様である。
【0072】
制御部26Cは、探傷部21、駆動部22、記憶部23、入力部24及び表示部25と接続されており、探傷部21、駆動部22、記憶部23、入力部24及び表示部25を制御することで、渦電流探傷試験装置10Cを全体的に制御する。制御部26Cは、多チャンネルに対応したマルチプローブ51と接続される探傷部21を制御する点で制御部26Aと相違するが、その他の点は実質的に相違しない。すなわち、マルチプローブ51の各検出コイル13から出力された電圧値に基づいて図1(B)に示されるような出力電圧分布(X方向)を得ることができる。
【0073】
第3の渦電流探傷試験方法及び第3の渦電流探傷試験装置10Cによれば、第1の渦電流探傷試験方法及び第1の渦電流探傷試験装置10Aによる効果に加えて、複数のコイル対を有するマルチプローブ51を用いて欠陥長さLを測定しているため、欠陥長さを評価するための探傷時間をより短くすることができる。
【0074】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る渦電流探傷試験方法(第4の渦電流探傷試験方法)は、上述した第3の渦電流探傷試験方法と同様に、マルチプローブ51を用いて被検査対象14の欠陥15の欠陥長さLを測定する方法であり、図7に示される走査方向(Y方向)にマルチプローブ51を走査させることによって、同じ時刻の各コイル対で測定される出力電圧を取得する。
【0075】
第4の渦電流探傷試験方法が第3の渦電流探傷試験方法と相違する点は、プローブ51の二種類のコイル(励磁コイル12及び検出コイル13)の位置を電気的に切り替えて又は手動的に配置を変えて同じ時刻の各コイル対で測定される出力電圧を取得する点である。すなわち、第4の渦電流探傷試験方法は、図4に示される出力電圧分布(X方向)を得る点で図1(B)に示される出力電圧分布(X方向)を得る第3の渦電流探傷試験方法と相違する。
【0076】
第4の渦電流探傷試験方法では、マルチプローブ51で走査した後は、第2の渦電流探傷試験方法と同様にして被検査対象14の欠陥15の欠陥長さLの長さを測定することができる。
【0077】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る渦電流探傷試験装置の一実施例である渦電流探傷試験装置(以下、「第4の渦電流探傷試験装置」と称する)10Dの構成を概略的に示した概略図である。
【0078】
図9に示される第4の渦電流探傷試験装置10Dは、図5に示される第2の渦電流探傷試験装置10Bに対して、プローブ11及び制御部26Bの代わりにそれぞれマルチプローブ51及び制御部26Dを具備する点で相違するが、その他の点では実質的に相違しない。また、マルチプローブ51については、図8に示される第3の渦電流探傷試験装置10Cに具備されるものと実質的に相違しない構成要素である。そこで、第4の渦電流探傷試験装置10Dの説明では、制御部26Dを中心に説明し、第2の渦電流探傷試験装置10B,第3の渦電流探傷試験装置10Cの構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0079】
第4の渦電流探傷試験装置10Dは、図9に示されるように、励磁コイル12及び検出コイル13のコイル対を複数有するマルチプローブ51と、探傷部21と、駆動部22と、記憶部23と、入力部24と、表示部25と、制御部26Dと、出力電圧分布極大値検出部31と、出力電圧分布極大値検出部31が検出した極大値間の長さを測定する極大値間長さ測定部32と、欠陥長さ評価部33Bとを具備する。
【0080】
制御部26Dは、探傷部21、駆動部22、記憶部23、入力部24、表示部25及びコイル切替部38と接続されており、探傷部21、駆動部22、記憶部23、入力部24、表示部25及びコイル切替部38を制御することで、渦電流探傷試験装置10Dを全体的に制御する。制御部26Dは、多チャンネルに対応したマルチプローブ51と接続される探傷部21を制御する点で制御部26Bと相違するが、その他の点は実質的に相違しない。すなわち、マルチプローブ51の各検出コイル13から出力された電圧値に基づいて図4に示されるような出力電圧分布(X方向)を得ることができる。
【0081】
第4の渦電流探傷試験方法及び第4の渦電流探傷試験装置10Dによれば、第1の渦電流探傷試験方法及び第1の渦電流探傷試験装置10Aによる効果に加えて、複数のコイル対を有するマルチプローブ51を用いて欠陥長さLを測定しているため、欠陥長さを評価するための探傷時間をより短くすることができる。また、励磁コイル12及び検査コイル13間の長さd1及び式(1)の情報を読み出すことなく直接的に欠陥長さLを測定することができる点で有益である。
【0082】
上述したように、本発明によれば、励磁コイル12、検出コイル13及び欠陥15の位置関係が特定の関係にある場合に、出力電圧が極大となるという渦電流探傷試験法による欠陥検出における特有の物理現象を利用しているため、欠陥長さ評価精度及び汎用性を高めることができる。また、マルチプローブ51による渦電流探傷試験にも適用でき、欠陥長さを評価するための探傷時間をシングルプローブ11による渦電流探傷試験実施時よりも短くすることができる。
【0083】
尚、本発明は上記の各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化しても良い。
【0084】
また、上記の各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除したり、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせたりしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態に係る渦電流探傷試験方法の原理を説明する説明図であって、(A)は渦電流探傷試験方法を概略的に示す図、(B)は検出された電圧分布と、極大値A及び極大値Bを検出する時のプローブ(励磁コイル及び検出コイル)の位置を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る渦電流探傷試験装置の構成を示す概略図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る渦電流探傷試験方法の手順を示すフロー図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る渦電流探傷試験装置において取得される出力電圧分布と出力電圧分布が極大値となる場合の励磁コイル及び検出コイルの位置関係を表した説明図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る渦電流探傷試験装置の構成を示す概略図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る渦電流探傷試験方法の手順を示すフロー図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る渦電流探傷試験方法及び本発明の第4の実施形態に係る渦電流探傷試験方法において適用される被検査対象の欠陥長さLの測定方法について説明する説明図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る渦電流探傷試験装置の構成を示す概略図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る渦電流探傷試験装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0086】
10A,10B,10C,10D 渦電流探傷試験装置
11 (シングル)プローブ
12 励磁コイル
13 検出コイル
14 被検査対象
15 欠陥
21 探傷部
22 駆動部
23 記憶部
24 入力部
25 表示部
26A,26B,26C,26D 制御部
31 出力電圧分布極大値検出部
32 極大値間長さ測定部
33A,33B 欠陥長さ評価部
34 励磁回路
35 検出(検波)回路
36 欠陥評価用情報
38 コイル切替部
51 マルチプローブ
d1 励磁コイルと検出コイルとの間の距離
d2,d3 出力電圧分布における極大値間の長さ
L 欠陥長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル中心軸の方向と被検査面の法線方向が一致している第1のコイルと、コイル中心軸の方向と被検査面の法線方向が一致しており、第1のコイルと所定の中心間距離で配置される第2のコイルとを有するプローブを用いて被検査面の欠陥を検出し当該欠陥長さを評価する渦電流探傷試験方法において、
前記プローブを走査して前記被検査面の欠陥に起因する出力電圧分布を取得する出力電圧分布取得ステップと、
前記出力電圧分布に現れる二つの極大値を検出する極大値検出ステップと、
前記極大値検出ステップで検出された二つの極大値間の長さを算出することによって測定する極大値間長さ測定ステップと、
前記極大値間長さ測定ステップで算出された極大値間の長さと前記第1のコイル及び第2のコイルの中心間距離とを加算し、得られた極大値間の長さと前記第1のコイル及び第2のコイルの中心間距離との和を前記被検査面の欠陥の長さとして評価する欠陥長さ評価ステップと、を有することを特徴とする渦電流探傷試験方法。
【請求項2】
前記出力電圧分布取得ステップは、前記プローブの第1のコイル及び第2のコイルをそれぞれ前記被検査対象に渦電流を誘起する励磁コイル及び前記渦電流によって生じる磁場によって電圧が誘起される検出コイルとして機能している状況下で前記プローブを走査して前記被検査面の欠陥に起因する第1の出力電圧分布を取得する第1の出力電圧分布取得ステップと、前記第1の出力電圧分布取得時の励磁コイル及び検出コイルの位置を入れ替えた状況下で、前記プローブを走査して前記被検査面の欠陥に起因する第2の出力電圧分布を取得する第2の出力電圧分布取得ステップと、を有し、
前記極大値検出ステップは、前記第1の出力電圧分布取得ステップで取得された前記第1の出力電圧分布に現れる二つの極大値を検出する第1の出力電圧分布極大値検出ステップと、前記第2の出力電圧分布取得ステップで取得された前記第2の出力電圧分布に現れる二つの極大値を検出する第2の出力電圧分布極大値検出ステップと、を有しており、
前記極大値間長さ測定ステップは、前記第1の出力電圧分布極大値検出ステップ及び第2の出力電圧分布極大値検出ステップで検出された計四つの極大値から任意の二つを選択した全組み合わせに対して極大値間の長さを算出し、
前記欠陥長さ評価ステップは、前記極大値間長さ測定ステップで算出された極大値間の長さのうち、最長となる極大値間の長さを選択し、当該長さを前記被検査面の欠陥の長さとして評価することを特徴とする請求項1記載の渦電流探傷試験方法。
【請求項3】
前記出力電圧分布取得ステップは、前記プローブの第1のコイル及び第2のコイルをそれぞれ前記被検査対象に渦電流を誘起する励磁コイル及び前記渦電流によって生じる磁場によって電圧が誘起される検出コイルとして機能している状況下で前記プローブを走査して前記被検査面の欠陥に起因する第1の出力電圧分布を取得する第1の出力電圧分布取得ステップと、前記第1の出力電圧分布取得時の励磁コイル及び検出コイルの位置を入れ替えた状況下で、前記プローブを走査して前記被検査面の欠陥に起因する第2の出力電圧分布を取得する第2の出力電圧分布取得ステップと、を有し、
前記極大値検出ステップは、前記第1の出力電圧分布取得ステップで取得された前記第1の出力電圧分布に現れる二つの極大値を検出する第1の出力電圧分布極大値検出ステップと、前記第2の出力電圧分布取得ステップで取得された前記第2の出力電圧分布に現れる二つの極大値を検出する第2の出力電圧分布極大値検出ステップと、を有しており、
前記極大値間長さ測定ステップは、前記第1の出力電圧分布極大値検出ステップ及び第2の出力電圧分布極大値検出ステップで検出された計四つの極大値の位置座標の最小値及び最大値に基づいて極大値間の長さが最長となる二つの極大値を選択して当該極大値間の長さを算出し、
前記欠陥長さ評価ステップは、前記極大値間長さ測定ステップで算出された極大値間の長さを前記被検査面の欠陥の長さとして評価することを特徴とする請求項1記載の渦電流探傷試験方法。
【請求項4】
前記出力電圧分布取得ステップの励磁コイル及び検出コイルの位置の入れ替えは、前記第1の出力電圧分布取得ステップの完了後に手動で前記プローブの走査方向に対する前後の向きを入れ替えることによって行われることを特徴とする請求項2又は3記載の渦電流探傷試験方法。
【請求項5】
前記プローブの第1のコイル及び第2のコイルの一方を前記被検査対象に渦電流を誘起する励磁コイルとし、他方を前記渦電流によって生じる磁場によって電圧が誘起される検出コイルとして機能するように電気的に交互に切り替えるコイル切替ステップをさらに有し、
前記コイル切替ステップは、前記第1の出力電圧分布取得ステップ及び第2の出力電圧分布取得ステップの前記プローブ走査時に行われ、前記出力電圧分布取得ステップの励磁コイル及び検出コイルの位置の入れ替えを交互に行いながら前記第1の出力電圧分布取得ステップ及び第2の出力電圧分布取得ステップの前記プローブの走査を行うことを特徴とする請求項2又は3記載の渦電流探傷試験方法。
【請求項6】
前記プローブは、前記第1のコイル及び第2のコイルを一つの対としたコイル対を複数対有し、各コイル対において、一方のコイルから他方のコイルの方向が同一であり、かつ、前記第1のコイル及び第2のコイル間の長さが同一であることを特徴とする請求項1−5の何れか1項に記載の渦電流探傷試験方法。
【請求項7】
コイル中心軸の方向と被検査面の法線方向が一致している第1のコイルと、コイル中心軸の方向と被検査面の法線方向が一致しており、第1のコイルと所定の中心間距離で配置される第2のコイルとを有するプローブを用いて被検査面の欠陥を検出し当該欠陥長さを評価する渦電流探傷試験装置において、
前記プローブを走査して取得される前記被検査面の欠陥に起因する出力電圧分布に現れる二つの極大値を検出する出力電圧分布極大値検出部と、
前記出力電圧分布極大値検出部が検出した二つの極大値間の長さを算出することによって測定する極大値間長さ測定部と、
前記極大値間長さ測定部が測定した極大値間の長さと前記第1のコイル及び第2のコイルの中心間距離とを加算し、得られた極大値間の長さと前記第1のコイル及び第2のコイルの中心間距離との和を前記被検査面の欠陥の長さとして評価する欠陥長さ評価部と、を具備することを特徴とする渦電流探傷試験装置。
【請求項8】
前記出力電圧分布極大値検出部は、前記プローブの第1のコイル及び第2のコイルをそれぞれ前記被検査対象に渦電流を誘起する励磁コイル及び前記渦電流によって生じる磁場によって電圧が誘起される検出コイルとして機能している状況下で前記プローブを走査して取得される前記被検査面の欠陥に起因する第1の出力電圧分布と、前記第1の出力電圧分布取得時の励磁コイル及び検出コイルの位置を入れ替えた状況下で、前記プローブを走査して取得される前記被検査面の欠陥に起因する第2の出力電圧分布にそれぞれ現れる二つの極大値を出力電圧分布毎に検出するように構成され、
前記極大値間長さ測定部は、前記出力電圧分布極大値検出部が前記第1の出力電圧分布に現れる二つの極大値と前記第2の出力電圧分布に現れる二つの極大値の計四つの極大値から任意の二つを選択した全組み合わせに対して極大値間の長さを算出するように構成され、
前記欠陥長さ評価部は、前記極大値間長さ測定部が測定した極大値間の長さのうち、最長となる極大値間の長さを選択し、当該長さを前記被検査面の欠陥の長さとして評価するように構成されることを特徴とする請求項7記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項9】
前記プローブの第1のコイル及び第2のコイルの一方を前記被検査対象に渦電流を誘起する励磁コイルとし、他方を前記渦電流によって生じる磁場によって電圧が誘起される検出コイルとして機能するように電気的に交互に切り替えるコイル切替部をさらに具備し、
前記出力電圧分布極大値検出部は、前記コイル切替部が前記第1のコイル及び第2のコイルの電気的な切替操作によって取得される第1の出力電圧分布及び第2の出力電圧分布にそれぞれ現れる二つの極大値を出力電圧分布毎に検出するように構成されることを特徴とする請求項8記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項10】
前記出力電圧分布極大値検出部は、前記プローブの第1のコイル及び第2のコイルをそれぞれ前記被検査対象に渦電流を誘起する励磁コイル及び前記渦電流によって生じる磁場によって電圧が誘起される検出コイルとして機能している状況下で前記プローブを走査して取得される前記被検査面の欠陥に起因する第1の出力電圧分布と、前記第1の出力電圧分布取得時の励磁コイル及び検出コイルの位置を入れ替えた状況下で、前記プローブを走査して取得される前記被検査面の欠陥に起因する第2の出力電圧分布にそれぞれ現れる二つの極大値を出力電圧分布毎に検出するように構成され、
前記極大値間長さ測定部は、前記出力電圧分布極大値検出部が前記第1の出力電圧分布に現れる二つの極大値と前記第2の出力電圧分布に現れる二つの極大値の計四つの極大値の位置座標の最小値及び最大値に基づいて極大値間の長さが最長となる二つの極大値を選択して当該極大値間の長さを算出するように構成され、
前記欠陥長さ評価部は、前記極大値間長さ測定部が測定した極大値間の長さを前記被検査面の欠陥の長さとして評価するように構成されることを特徴とする請求項7記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項11】
前記プローブの第1のコイル及び第2のコイルの一方を前記被検査対象に渦電流を誘起する励磁コイルとし、他方を前記渦電流によって生じる磁場によって電圧が誘起される検出コイルとして機能するように電気的に交互に切り替えるコイル切替部をさらに具備し、
前記出力電圧分布極大値検出部は、前記コイル切替部が前記第1のコイル及び第2のコイルの電気的な切替操作によって取得される第1の出力電圧分布及び第2の出力電圧分布にそれぞれ現れる二つの極大値を出力電圧分布毎に検出するように構成されることを特徴とする請求項10記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項12】
前記プローブは、前記励磁コイル及び検出コイルを一つの対としたコイル対を複数対有し、各コイル対において、一方のコイルから他方のコイルの方向が同一であり、かつ、前記励磁コイル及び検出コイル間の長さが同一であることを特徴とする請求項7−11のうち何れか1項に記載の渦電流探傷試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−101824(P2010−101824A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275340(P2008−275340)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】