説明

温度センサーによるケーキ焼成制御機構

【課題】本発明は、複数の温度センサーによってケーキ生地内の温度を測定し、ケーキ内の空隙部分の温度測定を外した状態での平均温度を測定することができる温度センサーによるケーキ焼成制御機構を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、温度制御機構により釜本体7内の温度が自在に制御可能とされるオーブンにおいて、前記釜本体7内に配置されるケーキ生地焼成容器9内のケーキ生地内に挿し込んで、3個所以上の温度を検知する温度センサー6が配置された温度センサー部1と、前記3個以上の温度センサー6により測定される温度のうち、測定温度が5℃以上の差があるものに対しては、温度が高い方の温度が除かれ、残りの測定温度の平均値に基づいて温度を調整する温度制御部13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサーによるケーキ焼成制御機構に関する。詳しくは複数の温度センサーによって焼成中のカステラやスポンジケーキ内温度を測定しながら焼成制御する温度センサーによるケーキ焼成制御機構に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりカステラの場合には銅板上に載せた木枠内、あるいはスポンジケーキの場合には円筒形の金属容器内に、例えば卵、小麦粉、砂糖等を泡立てた生地を流し込み、そのままデッキオーブンの中に入れて焼き上げることになる。このデッキオーブンは熱源として電熱又はガスによって焼成室の底板と天板を加熱し、容器の上下より時間をかけて熱することによってケーキ生地はふっくらした状態で焼き上げることになる。
【0003】
この場合の焼成には、ケーキ生地の焼き上がり温度のタイミングをつかみとるところが、技術と経験による“感”とされており、経験の浅い菓子職人では焼きムラが生じたり、ケーキ生地内部が十分に焼き上がらないために焼成室より取り出したときに陥没するなどの問題あった。
【0004】
そこで本願出願人は前記課題を解決すべく、温度センサーによるケーキ焼成制御機構を発明した。この温度制御機構は図6に示すように、釜本体内に載置される焼成中のケーキ生地焼成容器内のケーキ生地内温度を、温度センサー部101によって数ヶ所測定し、演算回路102によって、その平均値を測定して温度制御103により焼成温度のケーキ生地の焼き具合を調整するものである(特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−13125号公報(要約書、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらカステラやスポンジケーキは、焼成状態が進むにつれ、液体状から固定状に変化していくが、液体の時に含まれていた空気の泡が膨張することで、膨らんだカステラやスポンジケーキができる。その際に温度センサーが挿すのであるが、場合によっては、その膨らんだ空気の層に温度センサー部が入ってしまい、生地自体の温度を計測することができず、他の温度センサー部により測定温度との差が大きくなり、その平均値を演算することにより、生地自体の正確な温度を測定することができずに焼成に失敗するという問題があった。例えば、ケーキ内の空隙部分の温度は焼成炉内の温度に近いために、生地との温度差が生じ、その平均温度が高めに演算されることにより十分に焼き上がらない前に焼成完了検知となることで焼成に失敗することになる。
【0007】
本発明は、以上に点に鑑みて創案されたものであって、複数の温度センサーによってケーキ生地内の温度を測定し、ケーキ内の空隙部分の温度測定を外した状態での平均温度を測定することができる温度センサーによるケーキ焼成制御機構を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る温度センサーによるケーキ焼成制御機構は、温度制御機構により釜本体内の温度が自在に制御可能とされるオーブンにおいて、前記釜本体内に配置されるケーキ生地焼成容器内のケーキ生地内に挿し込んで、3個所以上の温度を検知する温度センサーが配置された温度センサー部と、前記3個以上の温度センサーにより測定される温度のうち、測定温度が5℃以上の差があるものに対しては、温度が高い方の温度が除かれ、残りの測定温度の平均値に基づいて温度を調整する温度制御部を備える。
【0009】
ここで、焼成中のケーキ生地焼成容器内のケーキ生地内温度を、温度センサーによって3個所以上を測定し、気泡部分とケーキ生地との温度差が5℃以上となった場合には、気泡部分の測定温度が除かれた状態での平均値が演算されることでより正確なケーキ生地温度による温度制御が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上述べて来た如く本発明によれば、焼成時のスポンジケーキ生地やカステラ生地の芯温を複数の温度センサーで測定し、気泡の温度測定により生地温度との差が5℃以上となった場合には気泡の温度を外した状態での平均温度を演算することにより正確な温度測定を可能とする。
【0011】
また、生地自体の正確な温度データに基づいての温度制御機構によって失敗のない、安定したスポンジケーキ生地やカステラ生地の焼成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1に、本発明の温度センサーによるスポンジケーキの焼成制御機構の一例を示す説明図である。
【0013】
ここで示す温度センサー部1は、先端が略直角状に折曲された針状の温度検知部2と、この温度検知部2を一定高さにて架設するスタンド式の温度センサー支持部3と、検知情報を制御回路に送るソケット4が先端に設けられるコード5とから構成される。
さらに、温度検知部2の先端部の3個所に温度センサー6が所定間隔ごとに設けられている。
【0014】
また、釜本体7は、上下壁面を電熱によって加熱することで釜本体7内の温度管理を行うものである。そこで釜本体7の壁面にはコンセント8が設けられ、このコンセント8に前記温度センサー部1のソケット4が自在に接続可能な構成とされるものである。
【0015】
従って図2に示すように、ケーキ生地焼成容器9に対して温度センサー支持部3によって温度検知部2高さが前記ケーキ生地焼成容器9高さを超える位置とし、先端が略直角に折曲形成され、温度センサー6が配置される部分をケーキ生地焼成容器9の中央付近に位置させることで、ケーキ生地焼成容器9内に充填されるケーキ生地の芯温が測定できる構成とするものである。
【0016】
次に図3は、本発明の温度センサーによるカステラの焼成制御機構の一例を示す説明図である。
ここで示す温度センサー部1は、直線状の温度検知部2の先端側に温度センサー6が所定間隔ごとに3個所設けられている。そして温度検知部2の基端にはコード5およびソケット4が接続された構成とされるものである。
【0017】
そこでカステラの場合では正方形状に組んだ木枠10の一辺の略中央に前記温度検知部2が挿通可能な挿通穴11を設け、この挿通穴11に対して温度検知部2を、その先端が木枠10内の中心付近となるまで挿通することによって木枠10内に充填されるカステラ生地の芯温が測定できる構成とするものである。
【0018】
次に図4に示すように、温度検知部2に配置された3個の温度センサー6によってカステラ生地内の3個所の温度が測定される。これらの温度は演算回路12に入力される。そしてこれらの温度センサー6による測定温度のうち、測定温度が5℃以上の差があるものに対しては、温度が高い方の温度が除かれて、残りの2個の温度センサー6による温度の平均値が演算される。
【0019】
このように本発明では、ケーキ生地焼成容器9、または木枠10内に充填されるスポンジケーキ生地、あるいはカステラ生地は初期の段階では液状であり、釜本体内で焼成が進むにつれて、スポンジケーキ生地、あるいはカステラ生地内で気泡が発生し、この状態で温度検知部2を生地内に挿し込んだ場合に、温度検知部2の温度センサー6が気泡に接触する可能性がある。
【0020】
例えば、図5に示すように、カステラ生地Aに挿し込まれた温度検知部2に配置される3個の温度センサー6の一個がカステラ生地の気泡Bに位置して測定温度が98℃となり、他の温度センサー6によりカステラ生地Aの測定温度が90℃と92℃で測定された場合には、他の測定温度との差が5℃以上となるために気泡Bの測定温度が除かれて、他の温度90℃と92℃との平均値として91℃が演算され、この91℃に基いて温度制御部13による温度制御が行われる。
【0021】
それに対して前記3個の温度センサー6の測定温度98℃、90℃および92℃による平均値を求めた場合には95.3℃となり本発明による温度検出91℃との差が4.3℃となり温度制御に誤差が生じることになる。
【0022】
このように本発明では、3個所の測定温度のうち、他の測定温度のいずれかと5℃以上の温度差がある場合には、5℃以上の差がある測定温度を除去した状態で残りの平均値を演算することにより、より正確な生地温度の測定が可能となり、この平均値を基にして釜本体内の温度制御を行うことによりスポンジケーキ生地、あるいはカステラ生地の焼き上がり温度のタイミングを正確につかみとることができる。
【0023】
なお、温度センサーは必ずしも3個配置する必要性は無く、ケーキ生地焼成容器の容量に応じて、4個、5個であっても構わなく、多い方が正確な温度測定が可能となるが、温度検知部の長さおよび太さを考慮して3個配置するのが望ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の温度センサーによるスポンジケーキの焼成制御機構の一例を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した温度センサーによるケーキ焼成制御機構とケーキ生地焼成容器との使用状態の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の温度センサーによるカステラの焼成制御機構の一例を示す説明図である。
【図4】本発明を適用した温度センサーによるケーキ焼成制御機構の温度制御回路の一例を示すブロック説明図である。
【図5】本発明を適用した温度センサーによるケーキ焼成制御機構の作用説明図である。
【図6】従来の温度制御機構の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 温度センサー部
2 温度検知部
3 温度センサー支持部
4 ソケット
5 コード
6 温度センサー
7 釜本体
8 コンセント
9 ケーキ生地焼成容器
10 木枠
11 挿通穴
12 演算回路
13 温度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度制御機構により釜本体内の温度が自在に制御可能とされるオーブンにおいて、
前記釜本体内に配置されるケーキ生地焼成容器内のケーキ生地内に挿し込んで、3個所以上の温度を検知する温度センサーが配置された温度センサー部と、
前記3個以上の温度センサーにより測定される温度のうち、測定温度が5℃以上の差があるものに対しては、温度が高い方の温度が除かれ、残りの測定温度の平均値に基づいて温度を調整する温度制御部を備える
ことを特徴とする温度センサーによるケーキ焼成制御機構。
【請求項2】
前記温度センサー部が釜本体内より着脱自在とされる
ことを特徴とする請求項1記載の温度センサーによるケーキ焼成制御機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−202470(P2007−202470A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25231(P2006−25231)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(595099225)株式会社七洋製作所 (10)
【Fターム(参考)】