説明

温度上昇抑制システム

【課題】従来とは異なり、屋上やバルコニー等の床面に散水管を配管せずとも容易に、かつ床面全体に給水できる温度上昇抑制システムを提供することを目的とする。
【解決手段】建物1の屋上やバルコニー2等の床面2aに設けられることによって周囲の温度上昇を抑制するものであり、床面2aには、この床面2aの建物側端部から外部側端部に向かって低くなる水勾配が設けられており、床面2a上には、複数の貯水部10,10が床面2aの勾配方向に沿って並設されており、これら複数の貯水部10,10には、保水性能・浸透性能を有するブロック材14が複数敷き詰められており、床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10の近傍には、この貯水部10に水を供給するための給水手段15が設けられている温度上昇抑制システム。これにより、床面の温度の上昇を抑制したり、温度を低下させたりすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋上やバルコニー等の床面に設けられることによって周囲の温度上昇を抑制する温度上昇抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートアイランド現象を抑制することを目的として、建物の屋上やバルコニー等の床面に多孔質セラミックスを敷設し、この多孔質セラミックスが保水した水分の気化熱によって建物の温度上昇を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−105883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の温度上昇抑制システムでは、屋上やバルコニー等の床面全体に散水管が張り巡らされており、床面に敷設された多孔質セラミックスに対して広域に給水を行えるようになっているが、散水管を床面全体に張り巡らすとなると、配管施工の手間とコストがかかることになる。
【0005】
本発明の課題は、従来とは異なり、屋上やバルコニー等の床面に散水管を配管せずとも容易に、かつ床面全体に給水できる温度上昇抑制システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図8に示すように、建物1の屋上やバルコニー2等の床面2aに設けられることによって周囲の温度上昇を抑制する温度上昇抑制システムにおいて、
前記床面2aには、この床面2aの建物側端部から外部側端部に向かって低くなる水勾配が設けられており、
前記床面2a上には、この床面2aの勾配方向に沿って、かつ、この床面2aの勾配方向と直交する方向に所定の間隔をあけて所定長さの側壁部材11を複数配置するとともに、これら複数の側壁部材11,11間に、これら複数の側壁部材11,11の長さ方向に沿って所定の間隔をあけて複数並設される所定高さの仕切り部材12を架設し、さらに、前記複数の側壁部材11,11と、これら複数の側壁部材11,11の長さ方向両端部間にそれぞれ架設される仕切り部材12,12とで囲まれる部分に防水シート13を敷設することによって、複数の貯水部10,10が前記床面2aの勾配方向に沿って並設されており、
これら複数の貯水部10,10には、保水性能・浸透性能を有するブロック材14が複数敷き詰められており、
前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10の近傍には、この貯水部10に水を供給するための給水手段15が設けられており、
前記床面2aの勾配方向の下方には、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10から溢れる水を外部に排出する排水孔16が設けられていることを特徴とする。
【0007】
なお、前記ブロック材14としては、例えば砂を混入することなく、かつ強度を補う添加剤を添加することなく、粒度3〜20mmの軽石(乾燥比重が0.4)50〜62重量%とポルトランドセメント50〜38重量%との配合物に、水40〜50重量%を散布して混練した状態の生コンクリートを型枠に入れて固めたものが挙げられる。
また、その他にも、例えばヤシ等の天然繊維、不織布、グラスウールやロックウールを成形したもの等を用いてもよい。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、前記側壁部材11を前記床面2aに複数配置するとともに、これら複数の側壁部材11,11間に前記仕切り部材12を複数架設し、さらに、前記複数の側壁部材11,11と、これら複数の側壁部材11,11の長さ方向両端部間にそれぞれ架設される仕切り部材12,12とで囲まれる部分に防水シート13を敷設することによって、前記床面2a上に、前記複数の貯水部10,10が前記床面2aの勾配方向に沿って並設されているので、これら複数の貯水部10,10は、前記床面2aに対して広域に設けられることとなる。さらに、水は蒸発するに際して所定の熱量を周囲から奪う性質を備えていることから、前記床面2aに対して広域に設けられる複数の貯水部10,10に前記ブロック材14が複数敷き詰められていることによって、このブロック材14に浸透して保持された水が蒸発する際に、このブロック材14の周囲の熱を奪いながら蒸発するので、従来とは異なり、前記床面2aに散水管を配管せずとも、前記床面2aに対して広い範囲で、前記床面2aの温度の上昇を抑制したり、温度を低下させたりすることができる。これによって、前記バルコニー2の温度の上昇を抑制したり、温度を低下させたりでき、延いては、建物1の温度上昇をも抑制することができるので、快適な居住環境を形成することが可能となる。
また、前記床面2aに、この床面2aの建物側端部から外部側端部に向かって低くなる水勾配が設けられるとともに、前記複数の貯水部10,10が前記床面2aの勾配方向に沿って並設されているので、前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10の近傍に設けられる給水手段15から水を供給するだけで、前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10から、下方に位置する貯水部10へと容易に水を行き渡らせることができ、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10から溢れた水は前記排水孔16から確実に排出することができる。さらに、前記仕切り部材12の高さを低く設定することによって、前記複数の貯水部10に貯留される水の深さを浅くすることができるので、前記給水手段15から前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10に供給した水を、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10へと、より容易に行き渡らせやすくなるとともに、水が滞留することによって生じる悪臭や雑菌・虫の発生を確実に防ぐことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図2および図6に示すように、請求項1に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記複数のブロック材14,14のうち、少なくとも一つのブロック材14の上面に芝14aが植栽されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記複数のブロック材14,14のうち、少なくとも一つのブロック材14の上面に芝14aが植栽されていることから、この芝14aによって前記ブロック材14の上面を覆うことができるので、このブロック材14が設けられる床面2aの周囲の温度上昇を抑制できる。
また、このように前記ブロック材14の上面を前記芝14aで覆うことができるので、この芝14aが植栽されたブロック材14が敷き詰められた部分を緑化することができ、外観性に優れる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば図2および図7に示すように、請求項1または2に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記複数のブロック材14,14のうち、少なくとも一つのブロック材14の上面にセラミックタイル14bが取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記セラミックタイル14bは多孔質体であるから、前記ブロック材14の上面にセラミックタイル14bが取り付けられていても、前記ブロック材14に浸透して保持された水は、このセラミックタイル14bを通じて確実に蒸発することができる。
また、前記複数のブロック材14,14のうち、少なくとも一つのブロック材14の上面にセラミックタイル14bが取り付けられているので、前記ブロック材14の上面を趣のある仕上げにすることができ、外観性に優れる。さらに、このセラミックタイル14bが取り付けられたブロック材14と、前記芝14aが設けられたブロック材14とを並設することによって、より外観性を向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図1および図2,図5〜図7に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記ブロック材14は、このブロック材14の上面を、下面よりも面積が広くなるように設定することによって、このブロック材14の上部が下部よりもオーバーハングするように形成されており、
このブロック材14,14同士を隣り合わせた際に、これら隣り合うブロック材14,14の対向する側部間に形成される空洞14cは、前記仕切り部材12を収容するための収容スペースとされていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記ブロック材14は、このブロック材14の上面を、下面よりも面積が広くなるように設定することによって、このブロック材14の上部が下部よりもオーバーハングするように形成されているので、このブロック材14,14同士を隣り合わせることによって、隣り合うブロック材14,14の上部同士は当接して、下部同士は離間する状態となり、隣り合うブロック材14,14の対向する側部間に前記空洞14cを形成できることとなる。
また、この空洞14cは、前記仕切り部材12を収容するための収容スペースとされているので、この収容スペースに前記仕切り部材12を収容した状態で前記ブロック材14を前記複数の貯水部10,10に隙間なく敷き詰めることができる。
さらに、前記空洞14cは、前記隣り合うブロック材14,14の対向する側部間に形成されるので、前記貯水部10内において縦横に通じることとなる。これによって、この空洞14c内を水の流路として利用できるので、従来とは異なり、前記床面2aに散水管を配管せずとも、前記複数の貯水部10,10内に、容易に水を行き渡らせることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば図9に示すように、請求項4に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記空洞14cに、前記給水手段15と接続され、前記貯水部10に水を注ぐ灌水パイプ17が配設されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、例えば前記貯水部10の面積が広大であったとしても、前記空洞14cに、前記給水手段15と接続された灌水パイプ17を配設しておけるので、前記給水手段15から供給される水を前記貯水部10に迅速かつ確実に貯めることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、例えば図4,図5および図8に示すように、請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記床面2aの勾配は1/50程度に設定されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、前記床面2aの勾配は1/50程度に設定されているので、前記床面2aは、比較的緩やかに傾斜した状態となっている。これによって、前記複数の貯水部10,10に貯留される水の深さを確実に浅くすることができるので、前記給水手段15から前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10に供給した水を、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10へと、さらに容易に行き渡らせやすくなるとともに、水が滞留することによって生じる悪臭や雑菌・虫の発生を、より確実に防ぐことができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、例えば図10〜図15に示すように、請求項4〜6のいずれか一項に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記ブロック材14は、樹脂製のケース20内に一体的に固着収納されており、
前記ケース20は、このケース20内と外部とを連通する複数の孔部21a,21a…を有する底板部21と、この底板部21の周縁部から前記ブロック材14の側面に沿って立ち上がる側板部22とを備えていることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、前記ブロック材14は、樹脂製のケース20内に一体的に固着収納されているので、このブロック材14を前記ケース20内に収納しない場合に比して、このブロック材14の厚みを薄くすることができる。これによって、前記ブロック材14の使用量や重量、また、前記ブロック材14の製造に係る手間やコストを軽減できる。さらに、前記ブロック材14の厚みを薄くしたとしても、該ブロック材14は前記ケース20内に固着収納されているので、強度を確保することが可能となる。
また、前記ケース20は樹脂製であることから、成形しやすく、厚みを薄く形成することができるので好ましい。
また、前記ブロック材14の底面および側面を、前記ケース20の底板部21および側板部22によって覆い、前記ブロック材14の上面を露出させることができるので、前記ブロック材14を、このブロック材14を前記ケース20内に収納しない場合と同様に利用することができる。
さらに、前記底板部21は、前記ケース20内と外部とを連通する複数の孔部21a,21a…を有しているので、これら複数の孔部21a,21a…を通じて、前記貯水部10に供給された水を前記ブロック材14に確実に浸透・保水させることができるとともに、前記ケース20内の水を前記貯水部10へと確実に排水することができる。すなわち、前記ケース20内と貯水部10との間で確実に水を循環させることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、例えば図10、図11および図15に示すように、請求項7に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記底板部21は四角形状に形成されており、前記側板部22は、この底板部21の四方の縁部から前記ブロック材14の側面に沿って立ち上がることによって4つの側面部分23,24,25,26を有しており、
この側板部22は、これら4つの側面部分23,24,25,26のうちの、2つの側面部分23,24の幅方向中央部からそれぞれ突出して設けられる凸部23a,24aと、残りの2つの側面部分25,26の幅方向中央部にそれぞれ設けられる凹部25a,26aとを有しており、
前記ケース20を隣り合わせて並べる際に、互いに隣り合うケース20,20のうち、一方のケース20の凸部23a(24a)が、他方のケース20の凹部25a(26a)に嵌合可能となっていることを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、前記側板部22は、これら4つの側面部分23,24,25,26のうちの、2つの側面部分23,24の幅方向中央部からそれぞれ突出して設けられる凸部23a,24aと、残りの2つの側面部分25,26の幅方向中央部にそれぞれ設けられる凹部25a,26aとを有しており、前記ケース20を隣り合わせて並べる際に、互いに隣り合うケース20,20のうち、一方のケース20の凸部23a(24a)が、他方のケース20の凹部25a(26a)に嵌合可能となっているので、前記互いに隣り合うケース20,20のジョイントが容易かつ正確に行うことができ、これによって、前記複数のブロック材14を前記貯水部10に容易かつ正確に敷き詰めることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、例えば図15に示すように、請求項7または8に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記ケース20の側板部22の4つの側面部分23,24,25,26のうち、少なくとも前記床面2aの勾配方向の下方側に位置する側面部分23(24,25,26)に、該ケース20内と外部とを連通する複数の孔部27,27…が形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、前記貯水部10は、前記床面2aの勾配方向下方が水位が高くなるため、少なくとも前記床面2aの勾配方向の下方側に位置する側面部分23(24,25,26)に、該ケース20内と外部とを連通する複数の孔部27,27…が形成されていることで、これら複数の孔部27,27…を通じて、前記貯水部10に供給された水を前記ブロック材14に、より確実に浸透・保水させることができるとともに、前記ケース20内の水を前記貯水部10へと、より確実に排水することができる。すなわち、前記ケース20内と貯水部10との間で、より確実に水を循環させることができる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、例えば図1,図3〜図5に示すように、請求項1〜9のいずれか一項に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記仕切り部材12は三角柱状に形成されており、
この仕切り部材12の底面から頂角部までの高さが5mm〜20mmに設定されていることを特徴とする。
【0026】
請求項10に記載の発明によれば、前記仕切り部材12は三角柱状に形成されているので、例えば四角柱状の仕切り部材に比して、この仕切り部材12上に敷設される防水シート13の敷設面積を減らすことができる。
また、この仕切り部材12の底面から頂角部までの高さが5mm〜20mmに設定されているので、前記複数の貯水部10,10に貯留される水の深さをより確実に浅くすることができる。これによって、前記給水手段15から前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10に供給した水を、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10へと、より一層容易に行き渡らせやすくなるとともに、水が滞留することによって生じる悪臭や雑菌・虫の発生を、さらに確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、建物の屋上やバルコニー等の床面の勾配方向に沿って、かつ、この床面の勾配方向と直交する方向に所定の間隔をあけて所定長さの側壁部材を複数配置するとともに、これら複数の側壁部材間に、これら複数の側壁部材の長さ方向に沿って所定の間隔をあけて複数並設される所定高さの仕切り部材を架設し、さらに、複数の側壁部材と、これら複数の側壁部材の長さ方向両端部間にそれぞれ架設される仕切り部材とで囲まれる部分に防水シートを敷設することによって、複数の貯水部が床面の勾配方向に沿って並設されているので、これら複数の貯水部は、床面に対して広域に設けられることとなる。さらに、水は蒸発するに際して所定の熱量を周囲から奪う性質を備えていることから、床面に対して広域に設けられる複数の貯水部にブロック材が複数敷き詰められていることによって、このブロック材に浸透して保持された水が蒸発する際に、このブロック材の周囲の熱を奪いながら蒸発するので、従来とは異なり、屋上やバルコニー等の床面に散水管を配管せずとも、床面に対して広い範囲で、床面の温度の上昇を抑制したり、温度を低下させたりすることができる。これによって、バルコニーの温度の上昇を抑制したり、温度を低下させたりでき、延いては、建物の温度上昇をも抑制することができるので、快適な居住環境を形成することが可能となる。
また、床面に、この床面の建物側端部から外部側端部に向かって低くなる水勾配が設けられるとともに、複数の貯水部が床面の勾配方向に沿って並設されているので、床面の勾配方向の上方に位置する貯水部の近傍に設けられる給水手段から水を供給するだけで、床面の勾配方向の上方に位置する貯水部から、下方に位置する貯水部へと容易に水を行き渡らせることができ、床面の勾配方向の下方に位置する貯水部から溢れた水は排水孔から確実に排出することができる。さらに、仕切り部材の高さを低く設定することによって、複数の貯水部に貯留される水の深さを浅くすることができるので、給水手段から床面の勾配方向の上方に位置する貯水部に供給した水を、床面の勾配方向の下方に位置する貯水部へと、より容易に行き渡らせやすくなるとともに、水が滞留することによって生じる悪臭や雑菌・虫の発生を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の温度上昇抑制システムが設けられる建物のバルコニーを示す斜視図である。
【図2】本発明の温度上昇抑制システムが設けられる建物のバルコニーを示す斜視図である。
【図3】貯水部の一部を示す斜視図である。
【図4】防水シートを敷設する形態を示す側断面図である。
【図5】貯水部にブロック材を敷き詰めた状態を示す側断面図である。
【図6】ブロック材の一例を示す正面図である。
【図7】ブロック材の一例を示す正面図である。
【図8】給水源として風呂水を利用する際の形態を示す概略図である。
【図9】空洞に灌水パイプを配設した状態を示す側断面図である。
【図10】ブロック材を収納するケースを示す部分拡大平面図である。
【図11】ブロック材が収納されたケースを配設した状態を示す斜視図である。
【図12】ブロック材が収納されたケースと、仕切り部材との配設状態の一例を示す側断面図である。
【図13】ブロック材が収納されたケースと、仕切り部材との配設状態の一例を示す側断面図である。
【図14】底板部にリブが形成されたケースを示す部分側断面図である。
【図15】側板部に複数の孔部が形成されたケースを示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
本実施の形態の温度上昇抑制システムは、図1〜図8に示すように、建物1の屋上やバルコニー2等の床面2aに設けられることによって周囲の温度上昇を抑制するものであり、前記床面2aには、この床面2aの建物側端部から外部側端部に向かって低くなる水勾配が設けられており、前記床面2a上には、複数の貯水部10,10が前記床面2aの勾配方向に沿って並設されており、これら複数の貯水部10,10には、保水性能・浸透性能を有するブロック材14が複数敷き詰められており、前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10の近傍には、この貯水部10に水を供給するための給水手段15が設けられており、前記床面2aの勾配方向の下方には、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10から溢れる水を外部に排出する排水孔16が設けられている。
【0031】
ここで、本実施の形態の温度上昇抑制システムは、前記建物1のバルコニー2の床面2aに設けられるものとするが、これに限られるものではなく、建物の屋上に設けてもよいものとする。建物の屋上に温度上昇抑制システムを設ける場合の建物の屋根は陸屋根の形態とする。なお、このように温度上昇抑制システムを前記バルコニー2に設ける場合、このバルコニー2は耐荷重性の高いルーフバルコニーであることが望ましい。
また、前記建物1には、図1および図2,図8に示すように、この建物1の内部と前記バルコニー2とを行き来するための出入り口1aが、前記バルコニー2に面して設けられている。
【0032】
また、前記床面2aの勾配は1/50程度に設定されており、前記床面2aは、比較的緩やかに傾斜した状態となっている。これによって、前記複数の貯水部10,10に貯留される水の深さを浅めに設定することができる。
すなわち、前記床面2aの水勾配をどの程度に設定するかによって、前記複数の貯水部10,10に貯留される水の深さを設定できることとなる。例えば、前記床面2aが1/100程度の水勾配であれば、1/50の場合に比して水深を浅くすることができ、前記床面2aが1/20程度の水勾配であれば、1/50の場合に比して水深を深くすることができる。
【0033】
一方、前記複数の貯水部10,10は、前記床面2aの勾配方向に沿って、かつ、この床面2aの勾配方向と直交する方向に所定の間隔をあけて所定長さの側壁部材11を複数配置するとともに、これら複数の側壁部材11,11間に、これら複数の側壁部材11,11の長さ方向に沿って所定の間隔をあけて複数並設される所定高さの仕切り部材12を架設し、さらに、前記複数の側壁部材11,11と、これら複数の側壁部材11,11の長さ方向両端部間にそれぞれ架設される仕切り部材12,12とで囲まれる部分に防水シート13を敷設することによって、前記床面2a上に並設されている。
なお、この貯水部10に貯留される水の深さは、この貯水部10が設けられる床面2a自体が建物側端部から外部側端部に向かって低くなるように傾斜しているので、各貯水部10の建物側端部ほど浅く、外部側端部ほど深くなる。
【0034】
また、前記側壁部材11は、図1〜図3に示すように、前記床面2aの勾配方向に沿って長尺なアングル材が用いられており、このアングル材の底部が前記床面2aに固定され、立ち上がり部が前記貯水部10の側壁部分となる。
【0035】
また、前記仕切り部材12は、図1に示すように、前記床面2aの勾配方向と直交する方向に配置されるものであり、上述のように、前記複数の側壁部材11,11間に、これら複数の側壁部材11,11の長さ方向に沿って所定の間隔をあけて複数並設されるようにして架設されるものである。したがって、前記複数の側壁部材11,11同士の間隔は、この仕切り部材12の長さと略等しい。
【0036】
また、この仕切り部材12は、図3〜図5に示すように、三角柱状に形成されている。すなわち、底面が前記床面2a上に設けられ、他の2面のうち少なくとも一面が前記貯水部10を構成する面となっており、さらに、これら3面が前記床面2aの勾配方向と直交する方向に沿って長尺である。
そして、このように前記仕切り部材12が三角柱状に形成されているので、例えば四角柱状の仕切り部材に比して、この仕切り部材12上に敷設される防水シート13の敷設面積を減らすことができる。
また、このように仕切り部材12が三角柱状に形成されていれば、この仕切り部材12の頂角部を前記貯水部10の端部として認識できる。
さらに、このように仕切り部材12が三角柱状であれば、この仕切り部材12を板状に形成した場合に比して、構造的な強度が高くなるので好ましい。
【0037】
また、本実施の形態の仕切り部材12の底面から頂角部までの高さが5mm〜20mmに設定されている。これによって、前記複数の貯水部10,10に貯留される水の深さをより確実に浅くすることができるので、前記給水手段15から前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10に供給した水を、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10へと、より一層容易に行き渡らせやすくなる。
このように前記貯水部10の水深を浅くするとともに、水を複数の貯水部10,10に行き渡らせることによって、水が貯水部10内に滞留することによって生じる悪臭や雑菌・虫の発生を確実に防ぐことができる。
【0038】
さらに、この仕切り部材12の高さの異なるものを使用することによって、前記複数の貯水部10,10の水深を調節できることとなる。
なお、本実施の形態においては、前記仕切り部材12の底面から頂角部までの高さが5mm〜20mmに設定されることで、建物側端部ほど浅く外部側端部ほど深くなっている各貯水部10の水深が、平均して1cm程度の水深となるようにそれぞれ設定されている。また、このように各貯水部の水深が平均して1cm程度の水深となるように設定することができれば、前記仕切り部材12の底面から頂角部までの高さを6mm〜18mmと設定してもよい。
ここで、上述のように、前記各貯水部10に貯水される水の量を、平均して1cm程度の水深となるように設定するとしたが、この平均1cm程度の水深とは、例えば夏季等において、各貯水部10に貯水された水が蒸発するのにかかる所要日数が1日〜3日程度となるような数値設定である。すなわち、上記のように、前記仕切り部材12の底面から頂角部までの高さを5mm〜20mm、より具体的には6mm〜18mmに設定することによって、前記各貯水部10に貯水される水の水深が1cm程度となるように設定することができる。
なお、このように前記仕切り部材12の底面から頂角部までの高さを5mm〜20mmまたは6mm〜18mmに設定するとともに、前記各貯水部10の水深を1cm程度に設定する際は、前記床面2aの水勾配が1/50程度、または、1/50よりも急勾配または緩勾配に設定されているものとする。
【0039】
また、前記防水シート13は、上述のように、前記複数の側壁部材11,11と、これら複数の側壁部材11,11の長さ方向両端部間にそれぞれ架設される仕切り部材12,12とで囲まれる部分に敷設されるものである。
この防水シート13の前記側壁部材11に接する部分は、図3に示すように、この側壁部材11に対して溶着または接着されており、前記仕切り部材12に接する部分は、図4に示すように、両面テープ13aによって前記仕切り部材12に取り付けられている。
【0040】
また、この防水シート13の端部などは、コーキング材等によって防水処理を行うようにしてもよい。また、防水シート13の重なり合う端部同士は、図4に示すように、互いに重ね合わせてから溶着または接着されて防水性を保持している。
【0041】
一方、本実施の形態のブロック材14としては、例えば砂を混入することなく、かつ強度を補う添加剤を添加することなく、粒度3〜20mmの軽石(乾燥比重が0.4)50〜62重量%とポルトランドセメント50〜38重量%との配合物に、水40〜50重量%を散布して混練した状態の生コンクリートを型枠に入れて固めたものが挙げられる。なお、軽石は産地により乾燥比重が多少ばらつくが、大きな相違はない。
【0042】
また、配合比を容積で表すと、軽石(乾燥比重が0.4)70〜85容積%と、ポルトランドセメント30〜15容積%との配合物に対して水20〜30容積%を散布して混練するものである。
さらに、このように軽石を骨材とするコンクリートの含水比重は、セメントと砕石等の天然骨材とポルトランドセメントのみを使用したコンクリートの約60%であり、乾燥比重は、約50%である。
【0043】
保水性能については、軽石を骨材として使用したブロック材14の含水比重は約1200kg/mであり、およそ300kg/m以上の水分を保水できる。また、浸透性能については、軽石で保水しきれなくなった水分を透過させるので、天然骨材を使用したコンクリートと同等の性能を得ることができる。
すなわち、このような軽石を骨材とするブロック材14を、例えば舗装面の舗装材として用いた場合、例えばブロック材14を50mmの厚みで舗装すると、含水重量は60kg/mであり、乾燥比重は45kg/mであるから15リットルの水を保水することが可能となり、優れた性能を有している。
なお、本実施の形態のブロック材14として、その他にも、例えばヤシ等の天然繊維、不織布、グラスウールやロックウールを成形したもの等を用いてもよいものとする。
【0044】
また、このブロック材14は、図2に示すように、前記側壁部材11の立ち上がり部よりも若干高くなるように設定されるとともに、図5に示すように、前記仕切る部材12よりも高くなるように設定されている。
さらに、このブロック材14は、図5〜図7に示すように、このブロック材14の上面を、下面よりも面積が広くなるように設定することによって、このブロック材14の上部が下部よりもオーバーハングするように形成されている。すなわち、本実施の形態においては、このブロック材14の側壁部分が上部が下部よりも外方に位置するように傾斜する逆角錐台形状に形成されている。
そして、このブロック材14,14同士を隣り合わせることによって、隣り合うブロック材14,14の上部同士は当接して、下部同士は離間する状態となるので、隣り合うブロック材14,14の対向する側部間に前記空洞14cを形成できることとなる。
【0045】
また、本実施の形態において、前記空洞14cは、図5に示すように、前記仕切り部材12を収容するための収容スペースとされている。したがって、この収容スペースに前記仕切り部材12を収容した状態で前記ブロック材14を前記複数の貯水部10,10に隙間なく敷き詰めることができる。つまり、外観から前記空洞14cを視認しにくくなっている。
さらに、前記空洞14cは、前記隣り合うブロック材14,14の対向する側部間に形成されるので、前記貯水部10内において縦横に通じることとなる。これによって、この空洞14c内を水の流路として利用できるので、例えば前記床面2aに散水管を配管せずとも、前記貯水部10内に容易に水を行き渡らせることができる。
また、散水管を配管せずとも、としたが、例えば図9に示すように、前記空洞14cに、前記給水手段15と接続された灌水パイプ17を配設してもよいものとする。これによって、例えば前記貯水部10の面積が広大であったとしても、前記灌水パイプ17によって、前記給水手段15から供給される水を前記貯水部10に注ぎ、この貯水部10に水を迅速かつ確実に貯めることができる。
【0046】
なお、前記仕切り部材12が、例えば角柱状のものであった場合は、例えば図13に示すように、前記ブロック材14の上部が下部よりも外側に張り出すような形状となるように、このブロック材14の側壁部分を凹状に切り欠きくようにして前記空洞14cを形成できるように構成することが好ましい。すなわち、前記仕切り部材12が角柱状の場合のブロック材14を側面視した際は、このブロック材14は略T字型となる。
【0047】
また、本実施の形態のブロック材14は、図6および図7に示すように、このブロック材14の上面に芝14aが植栽されたものや、セラミックタイル14bが取り付けられたものが用いられている。
【0048】
前記芝14aが上面に植栽されたブロック材14によれば、この芝14aによって前記ブロック材14の上面を覆うことができるので、このブロック材14が設けられる床面2aの周囲の温度上昇を抑制できる。
また、このように前記前記ブロック材14の上面を前記芝14aで覆うことができるので、この芝14aが植栽されたブロック材14が敷き詰められた部分を緑化することができ、外観性に優れる。
なお、前記ブロック材14の上面に芝14aを植栽する際は、前記防水シート13に防根性能を付与したものを用いることが望ましい。
【0049】
前記セラミックタイル14bが上面に取り付けられたブロック材14によれば、前記セラミックタイル14bは多孔質体であるから、このようなセラミックタイル14bが前記ブロック材14の上面に取り付けられていたとしても、前記ブロック材14に浸透して保持された水は、このセラミックタイル14bを通じて確実に蒸発することとなる。
また、前記ブロック材14の上面にセラミックタイル14bが取り付けられているので、前記ブロック材14の上面を趣のある仕上げにすることができ、外観性に優れる。
さらに、このセラミックタイル14bが取り付けられたブロック材14と、前記芝14aが設けられたブロック材14とを並設することによって、より外観性を向上させることができる。
【0050】
一方、前記給水手段15は、図1および図2に示すように、前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10の近傍に設けられており、給水源に接続されるとともに水が吐出される吐出部15aと、この吐出部15aに接続されるとともに、先端が前記隣り合うブロック材14,14間の空洞14cから差し込まれて前記貯水部10に設けられるホース15bとを備えている。
なお、前記給水源としては、例えば図8に示す風呂15c、雨水等を貯留する貯留タンク等であり、適宜選択される。
【0051】
ここで、前記貯水部10に水を供給する際に、上水道を給水源としてしまうとコストの上昇等の問題が生じる場合があった。そこで、雨水や、風呂15cや台所等からの生活排水を前記給水源として利用する。
なお、本実施の形態においては、例えば、前記風呂15cを給水源として利用するものとして説明する。
【0052】
また、このように風呂水を利用する際は、この風呂水を濾過する浄化手段15eによって浄化することが望ましい。
前記浄化手段15eは、例えば風呂15cと連結して設けられる給湯装置15dに内蔵されている。この給湯装置15dは、前記風呂15c内の水を循環させるとともに温度管理を行いつつ、前記浄化手段15eによって浄化できるようになっている。
【0053】
また、前記浄化手段15eの近傍には、この浄化手段15eによって浄化された風呂水を前記吐出口15aへと送水するポンプ15fが設けられている。
また、このポンプ15fは、例えば部屋内に設けられた制御手段15gによって制御可能となっており、浄化された風呂水を適切に利用できるようになっている。また、このような制御手段15gによって、前記ポンプ15fとともに、前記吐出口15aからの吐出量や時間設定等を行えるようにしてもよい。
【0054】
このように前記風呂水は、この風呂水を濾過する浄化手段15eによって浄化されているので、この風呂水に含まれる塵芥・毛髪・雑菌等を除去できる。これによって、前記吐出口15aや配水管の詰まりや、前記ブロック材14の汚れ等を防ぐことができる。
そして、以上のように前記貯水部10に供給される水として、風呂水等の生活排水が利用されていることから、上水道のみを給水源とした場合に比して水の利用量を低減できるので、コストの低減を図ることができる。また、風呂水と合わせて雨水を利用してもよく、これによって、さらに水の利用量を低減できる。この時、雨水も殺菌・消毒することが好ましい。
【0055】
さらに、前記貯水部10に供給される水として、以上のように風呂水を使用した場合に、この風呂水が温かいうちであれば効率良く蒸発させることができるので、前記ブロック材14の周囲の温度の上昇を、効率良く抑制したり、低下させたりすることができる。
なお、冬場などの寒冷な時期において、前記貯水部10に供給する前に風呂水が冷めてしまうような場合は、例えばラジエーター等を用いて水を再度温めるようにしてもよい。
【0056】
なお、前記吐出口15aからの吐出量等や前記ポンプ15fは、前記制御手段15gによって制御されているものとしたが、この他にも、例えば前記吐出口15aにタイマーを設け、このタイマーによって水の吐出時間の管理を行うようにしてもよい。ここで、風呂15cを給水源とする際は、このタイマーと前記ポンプ15fとを連動して制御する必要があるが、上水道を給水源とする際は、タイマーだけで吐出時間(量)の管理を行うことができる。
また、高気温時に前記複数の貯水部10,10に水が滞留していると、悪臭や雑菌・虫の発生を促進してしまう場合があるため、前記給水手段15から前記複数の貯水部10,10への水の供給は、夏季や、春季・秋季において高気温日が連続する際に行うことが望ましい。
【0057】
また、給水源として雨水を利用する際は、雨水を貯留タンクに一旦貯留してから使用してもよいが、上空から降り注がれる雨を前記貯水部10に単に貯留するだけでもよい。
すなわち、前記貯水部10に水を貯留する際は、図8に示すように風呂水を利用したり、雨水を貯留タンクに貯留したり、雨水を直に貯水部10に貯留するなどして、節水・省エネを図ることが望ましい。つまり、例えばスプリンクラーや従来の散水管では、水を広い範囲に散布したり、管の末端まで水を行き渡らせたりする際に過剰な水圧が必要となるが、本実施の形態においては、前記貯水部10に単に水を貯留するだけでよい。
【0058】
一方、前記排水孔16は、図1に示すように、前記床面2aの勾配方向の下端部に設けられている。なお、前記床面2aの勾配方向の下端部は、前記床面2aの勾配方向と直交する方向に長尺な排水帯16aとされており、この排水帯16aの一部に前記排水孔16が設けられている。この排水帯16aは、前記排水孔16に向かって傾斜するように構成されており、前記貯水部10から溢れた水だけでなく、前記貯水部10の周囲を流れる雨水等も排水しやすい。また、この排水帯16aは前記床面2aよりも一段低い溝状にしてもよいものとする。
【0059】
また、前記排水孔16には、図2に示すように、この排水孔16を隠すとともに、外部からのゴミによる詰まりを防ぐためのカバー16bが被せられている。
さらに、このカバー16bの上面までの高さは、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10に敷き詰められたブロック材14の上面と略等しくなるように設定されている。そして、このカバー16bを除く、前記複数の貯水部10,10周囲の床面2aに、砂利(図示せず)等を敷くなどして、前記複数の貯水部10,10と前記バルコニー2の周壁2bとの間の溝を埋めるようにする。この時、この溝に敷かれる砂利を、前記排水孔16のカバー16bや、前記複数の貯水部10,10に敷き詰められたブロック材14と略等しい高さにすることで、前記バルコニー2内の段差を少なくできるので、安全性および外観性に優れる。
【0060】
次に、前記給水手段15から供給される水が蒸発することによって前記バルコニー2周囲の温度上昇を抑制するまでの態様について説明する。
なお、前記床面2上には、予め複数の貯水部10,10が形成されて並設されているとともに、これら複数の貯水部10,10には、前記ブロック材14が複数敷き詰められているものとする。つまり、図2に示すような状態のバルコニー2となっている。
【0061】
まず、前記供給手段15から供給される水は、前記ホース15bを通じて前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10(上段)へと注がれる。水は、前記複数の貯水部10,10の全てを満たすまで供給されるものとする。
前記貯水部10へと注がれた水は、この貯水部10内に敷き詰められた複数のブロック材14,14間の空洞14cを通じて、この貯水部10内に行き渡る。
【0062】
前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10内に行き渡った水は、この貯水部10の前記床面2aの勾配方向の下方に位置する仕切り部材12の頂角部から溢れ出し、前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10よりも一段低い貯水部10(中段)へと注がれることとなる。
【0063】
また、この中段の貯水部10へと注がれた水は、この貯水部10内に行き渡り、さらに、この貯水部10内に行き渡った水は、この貯水部10の前記床面2aの勾配方向の下方に位置する仕切り部材12の頂角部から溢れ出し、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10(下段)へと注がれることとなる。
そして、この下段の貯水部10に行き渡った水は、この貯水部10の前記床面2aの勾配方向の下方に位置する仕切り部材12の頂角部から溢れ出し、この溢れた水は、前記排水孔16へと流れていくこととなる。
【0064】
また、このように各貯水部10,10へと水が注がれると同時に、この水は、これら各貯水部10,10に敷き詰められた複数のブロック材14,14に浸透して、これら複数のブロック材14,14に保水されているものとする。
そして、前記給水手段15から供給された水が、前記複数の貯水部10,10へと注がれるとともに、前記複数のブロック材14,14へと保水され、余剰な水が前記排水孔16へと流れた時点で、前記給水手段15からの水の供給を止めるようにする。
【0065】
そして、前記複数のブロック材14,14に保水された水は蒸発をはじめる。水は、上述のように、蒸発するに際して所定の熱量を周囲から奪う性質を備えていることから、水は、前記保水された複数のブロック材14,14の周囲の熱を奪いながら蒸発することとなり、延いては、これら複数のブロック材14,14が設けられた複数の貯水部10,10、またはバルコニー2の温度の上昇を抑制したり、温度を低下させたりできるようになっている。したがって、このバルコニー2の温度上昇を抑制することによって、前記建物1の温度上昇をも抑制することが可能となる。
【0066】
水の蒸発が進み、前記複数の貯水部10,10内の水が少なくなってきたら、前記給水手段15から水を供給して、再度、前記複数の貯水部10,10内に水を満たすようにする。以上のような動作を繰り返して、建物1の温度上昇を抑制するものとする。
また、前記バルコニー2に面して前記出入り口1aが設けられているので、温度の上昇が抑制されたバルコニー2を通過する外気を、この出入り口1aから建物1の内部へと流入させることができる。これによって、特に夏場などの温暖な時期において、比較的温度の低い外気をバルコニー2から建物1の内部に効率良く取り入れることができるので、快適な居住環境を形成することが可能となる。
【0067】
また、前記ブロック材14は、図10〜図15に示すように、樹脂製のケース20内に一体的に固着収納して用いるようにしてもよい。このように、前記ケース20内に一体的に固着収納されていれば、このブロック材14を前記ケース20内に収納しない場合に比して、このブロック材14の厚みを薄くすることができる。これによって、前記ブロック材14の使用量や重量、また、前記ブロック材14の製造に係る手間やコストを軽減できる。さらに、前記ブロック材14の厚みを薄くしたとしても、該ブロック材14は前記ケース20内に固着収納されているので、強度を確保することが可能となる。すなわち、前記ブロック材が折れたり、欠けたりすることを防ぐことができる。
また、前記ケース20は樹脂製であることから、成形しやすく、厚みを薄く形成することができるので好ましい。
【0068】
なお、このような樹脂製のケース20は、四角形状に形成されるとともに、該ケース20内と外部とを連通する複数の孔部21a,21a…を有する底板部21と、この底板部21の四方の縁部から前記ブロック材14の側面に沿って立ち上がる側板部22とを備えている。
このようなケース20の底板部21および側板部22によって、前記ブロック材14の底面および側面を覆うことができるので、前記ブロック材14の上面を露出させることができ、前記ブロック材14を、このブロック材14を前記ケース20内に収納しない場合と同様に利用することができる。
【0069】
また、前記底板部21の複数の孔部21a,21a…は、例えば1cm四方の正方形状に形成されている。このように、前記底板部21は複数の孔部21a,21a…を有しているので、これら複数の孔部21a,21a…を通じて、前記貯水部10に供給された水を前記ブロック材14に確実に浸透・保水させることができるとともに、前記ケース20内の水を前記貯水部10へと確実に排水することができる。すなわち、前記ケース20内と貯水部10との間で確実に水を循環させることができる。
なお、このように複数の孔部21a,21a…が前記底板部21に形成されていても、前記ケース20内に投入される前段階(すなわち、固化する前の段階)の前記ブロック材14は適当な粘度を有しているため、これら複数の孔部21a,21a…から零れ落ちないようになっている。
【0070】
また、前記側板部22は、この底板部21の四方の縁部から前記ブロック材14の側面に沿って立ち上がることによって4つの側面部分23,24,25,26を有している。
そして、この側板部22は、これら4つの側面部分23,24,25,26のうちの、2つの側面部分23,24の幅方向中央部からそれぞれ突出して設けられる凸部23a,24aと、残りの2つの側面部分25,26の幅方向中央部にそれぞれ設けられる凹部25a,26aとを有している。
したがって、前記ケース20を隣り合わせて並べる際に、互いに隣り合うケース20,20のうち、一方のケース20の凸部23a(24a)が、他方のケース20の凹部25a(26a)に嵌合可能となっている。
【0071】
なお、前記側板部22は、前記底板部21の四方の縁部から斜め上方に立ち上がる傾斜部22aと、この傾斜部22aの上端部から水平方向に延出する水平部22bと、この水平部22bの延出端部から上方に立ち上がる立ち上がり部22cとを備えている。
そして、本実施の形態において、前記側面部分23,24,25,26とは、図10,図11および図15に示すように、前記側板部21の上部に位置する前記立ち上がり部22cの四方の側面を指している。
【0072】
なお、前記側板部22は以上のように形成されているので、複数のケース20を並べることによって、図12に示すように、隣り合うケース20,20の間に収容スペースである空洞14cを形成することができる。したがって、これら隣り合うケース20,20は、前記仕切り部材12を収容スペースである空洞14cに収容した状態で、前記立ち上がり部22c同士が当接するようにして並べられるようになっている。
また、図13に示すように、四角柱状の仕切り部材12Aを用いる場合は、前記ケース20とは形状の異なるケース20Aを用いることが好ましい。すなわち、このケース20Aは、側面視において略T字型となっており、これらケース20A,20A間に形成される空洞14cに、前記仕切り部材12Aを収容できるようになっている。
【0073】
一方、前記凸部23a,24aは、図10,図11および図15に示すように、平面視において、前記側面部分23,24から外側に突出する略三角形状に形成されたものであり、前記凹部25a,26aは、平面視において、前記側面部分25,26から前記ケース20の内側に向かって突出する略三角形状に形成されたものである。また、前記凸部23a,24aは、前記凹部25a,26aに合致する大きさに形成されており、これによって、これら凸部23a,24aと凹部25a,26aとが互いに嵌合できるようになっている。
【0074】
このように、前記側板部22は、これら4つの側面部分23,24,25,26のうちの、2つの側面部分23,24の幅方向中央部からそれぞれ突出して設けられる凸部23a,24aと、残りの2つの側面部分25,26の幅方向中央部にそれぞれ設けられる凹部25a,26aとを有することによって、互いに隣り合うケース20,20のジョイントが容易かつ正確に行うことができるので、前記複数のブロック材14を前記貯水部10に容易かつ正確に敷き詰めることができる。
【0075】
また、前記ケース20の強度をより向上させるために、図14に示すように、前記底板部21に複数のリブ21bを形成してもよい。これら複数のリブ21b,21b…は、隣り合う孔部21a,21a間に設けられており、前記底板部21の面方向に沿って長尺に形成されている。すなわち、前記側板部22の側面部分23側から側面部分25側まで形成されていても良いし、前記側板部22の側面部分24側から側面部分26側まで形成されていても良い。また、前記複数の孔部21a,21aを避けるようにして略網目状に形成されていても良いものとする。
【0076】
また、図15に示すように、前記ケース20の側板部22の4つの側面部分23,24,25,26のうち、少なくとも前記床面2aの勾配方向の下方側に位置する側面部分23に、該ケース20内と外部とを連通する複数の孔部27,27…が形成されていてもよい。
すなわち、前記貯水部10に水を入れると、水位は、前記床面2aの勾配方向下方側の方が高くなる。このため、少なくとも前記床面2aの勾配方向の下方側に位置する側面部分23に、該ケース20内と外部とを連通する複数の孔部27,27…が形成されていれば、これら複数の孔部27,27…を通じて、前記貯水部10に供給された水を前記ブロック材14に、より確実に浸透・保水させることができるとともに、前記ケース20内の水を前記貯水部10へと、より確実に排水することができる。すなわち、前記ケース20内と貯水部10との間で、より確実に水を循環させることができるという利点がある。
【0077】
本実施の形態によれば、前記側壁部材11を前記床面2aに複数配置するとともに、これら複数の側壁部材11,11間に前記仕切り部材12を複数架設し、さらに、前記複数の側壁部材11,11と、これら複数の側壁部材11,11の長さ方向両端部間にそれぞれ架設される仕切り部材12,12とで囲まれる部分に防水シート13を敷設することによって、前記床面2a上に、前記複数の貯水部10,10が前記床面2aの勾配方向に沿って並設されているので、これら複数の貯水部10,10は、前記床面2aに対して広域に設けられることとなる。さらに、水は蒸発するに際して所定の熱量を周囲から奪う性質を備えていることから、前記床面2aに対して広域に設けられる複数の貯水部10,10に前記ブロック材14が複数敷き詰められていることによって、このブロック材14に浸透して保持された水が蒸発する際に、このブロック材14の周囲の熱を奪いながら蒸発するので、前記床面2aに対して広い範囲で、前記床面2aの温度の上昇を抑制したり、温度を低下させたりすることができる。これによって、前記バルコニー2の温度の上昇を抑制したり、温度を低下させたりでき、延いては、建物1の温度上昇をも抑制することができるので、快適な居住環境を形成することが可能となる。
また、前記床面2aに、この床面2aの建物側端部から外部側端部に向かって低くなる水勾配が設けられるとともに、前記複数の貯水部10,10が前記床面2aの勾配方向に沿って並設されているので、前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10の近傍に設けられる給水手段15から水を供給するだけで、前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10から、下方に位置する貯水部10へと容易に水を行き渡らせることができ、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10から溢れた水は前記排水孔16から確実に排出することができる。さらに、前記仕切り部材12の高さを低く設定することによって、前記複数の貯水部10に貯留される水の深さを浅くすることができるので、前記給水手段15から前記床面2aの勾配方向の上方に位置する貯水部10に供給した水を、前記床面2aの勾配方向の下方に位置する貯水部10へと、より容易に行き渡らせやすくなるとともに、水が滞留することによって生じる悪臭や雑菌・虫の発生を確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0078】
1 建物
2 バルコニー
2a 床面
10 貯水部
11 側壁部材
12 仕切り部材
13 防水シート
14 ブロック材
15 給水手段
16 排水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋上やバルコニー等の床面に設けられることによって周囲の温度上昇を抑制する温度上昇抑制システムにおいて、
前記床面には、この床面の建物側端部から外部側端部に向かって低くなる水勾配が設けられており、
前記床面上には、この床面の勾配方向に沿って、かつ、この床面の勾配方向と直交する方向に所定の間隔をあけて所定長さの側壁部材を複数配置するとともに、これら複数の側壁部材間に、これら複数の側壁部材の長さ方向に沿って所定の間隔をあけて複数並設される所定高さの仕切り部材を架設し、さらに、前記複数の側壁部材と、これら複数の側壁部材の長さ方向両端部間にそれぞれ架設される仕切り部材とで囲まれる部分に防水シートを敷設することによって、複数の貯水部が前記床面の勾配方向に沿って並設されており、
これら複数の貯水部には、保水性能・浸透性能を有するブロック材が複数敷き詰められており、
前記床面の勾配方向の上方に位置する貯水部の近傍には、この貯水部に水を供給するための給水手段が設けられており、
前記床面の勾配方向の下方には、前記床面の勾配方向の下方に位置する貯水部から溢れる水を外部に排出する排水孔が設けられていることを特徴とする温度上昇抑制システム。
【請求項2】
請求項1に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記複数のブロック材のうち、少なくとも一つのブロック材の上面に芝が植栽されていることを特徴とする温度上昇抑制システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記複数のブロック材のうち、少なくとも一つのブロック材の上面にセラミックタイルが取り付けられていることを特徴とする温度上昇抑制システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記ブロック材は、このブロック材の上面を、下面よりも面積が広くなるように設定することによって、このブロック材の上部が下部よりもオーバーハングするように形成されており、
このブロック材同士を隣り合わせた際に、これら隣り合うブロック材の対向する側部間に形成される空洞は、前記仕切り部材を収容するための収容スペースとされていることを特徴とする温度上昇抑制システム。
【請求項5】
請求項4に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記空洞に、前記給水手段と接続され、前記貯水部に水を注ぐ灌水パイプが配設されていることを特徴とする温度上昇抑制システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記床面の勾配は1/50程度に設定されていることを特徴とする温度上昇抑制システム。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記ブロック材は、樹脂製のケース内に一体的に固着収納されており、
前記ケースは、このケース内と外部とを連通する複数の孔部を有する底板部と、この底板部の周縁部から前記ブロック材の側面に沿って立ち上がる側板部とを備えていることを特徴とする温度上昇抑制システム。
【請求項8】
請求項7に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記底板部は四角形状に形成されており、前記側板部は、この底板部の四方の縁部から前記ブロック材の側面に沿って立ち上がることによって4つの側面部分を有しており、
この側板部は、これら4つの側面部分のうちの、2つの側面部分の幅方向中央部からそれぞれ突出して設けられる凸部と、残りの2つの側面部分の幅方向中央部にそれぞれ設けられる凹部とを有しており、
前記ケースを隣り合わせて並べる際に、互いに隣り合うケースのうち、一方のケースの凸部が、他方のケースの凹部に嵌合可能となっていることを特徴とする温度上昇抑制システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記ケースの側板部の4つの側面部分のうち、少なくとも前記床面の勾配方向の下方側に位置する側面部分に、該ケース内と外部とを連通する複数の孔部が形成されていることを特徴とする温度上昇抑制システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の温度上昇抑制システムにおいて、
前記仕切り部材は三角柱状に形成されており、
この仕切り部材の底面から頂角部までの高さが5mm〜20mmに設定されていることを特徴とする温度上昇抑制システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−84506(P2010−84506A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42373(P2009−42373)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】