説明

温度制御装置および画像形成装置

【課題】電圧変動特性、雑音端子電圧特性および高調波電流特性のすべてにおいて良好な特性を得ることができる温度制御装置および該装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】温度制御信号発生部11からの制御信号によって、ヒータ6の通電初期のエネルギー供給は予め充電されたキャパシタ5のエネルギーを使用し、ヒータ6が十分温まった状態でAC商用電源9からのエネルギー供給に切換えるように制御する。これにより、電圧変動特性、雑音端子電圧特性および高調波電流特性などにおいて良好な特性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱源としてのヒータの温度制御を行う温度制御装置および該装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AC商用電源をエネルギー源としたニクロム線ヒータやハロゲンヒータ等の加熱源の温度制御を行う温度制御装置では、被加熱体(加熱物)の温度情報に応じて、AC商用電源のエネルギーを投入する方式がとられていた。
【0003】
このような温度制御方式によると、通電初期におけるヒータの発熱素子の電気抵抗が小さいために過大電流がヒータラインに流れて、この影響によるAC商用電源ラインでの電圧降下(フリッカ特性悪化)が生じてしまう欠点がある。また、ヒータに過大な突入電流が流れることでヒータの寿命を短くするという欠点もある。
【0004】
その対策技術としては、ヒータ点灯初期に位相制御を実施して、徐々に実効電流を増加させつつヒータの発熱素子の温度を上げて突入電流を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。いわゆるソフトスタートである。このような技術によって、通電初期にヒータの発熱素子の電気抵抗が低いことに起因する電圧変動を抑制し、温度制御装置が及ぼす電圧変動特性を改善することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ソフトスタート技術によっても、突入電流の影響を完全に排除することは困難である。また、突入電流の抑制効果を大きく得ようとすると、非常に緩やかなソフトスタートを実施する必要があるため、ソフトスタート時間が非常に長くなってしまう。その結果、温度制御装置の応答性が悪化したり、目標温度までの到達時間が長くなったり、温度リップルが大きくなったりと、温度制御装置としての基本的特性が犠牲になってしまう。
【0006】
また、ソフトスタートを実施すると、AC電圧がヒータに印加されている状態でトライアック等のスイッチング素子をONして位相制御を実施するので、スイッチング素子のOFFからONへの切換え時にヒータ両端電圧やスイッチング素子の両端電圧が急激に変化して、温度制御装置の雑音端子電圧特性が悪化する。また、このとき電流波形は正弦波の一部分が削除された形となって、温度制御装置の高調波電流特性も悪化する。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電圧変動特性、雑音端子電圧特性、高調波電流特性などにおいて良好な特性を得ることができる温度制御装置および該装置を備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる温度制御装置は、加熱物を加熱するヒータと、前記ヒータへの電力供給源の切換えを行うヒータ入力電力切換手段と、AC商用電源から前記ヒータ入力電力切換手段への出力を制御するヒータAC電力投入制御回路と、AC商用電源から蓄電手段への充電を制御する蓄電手段充電制御回路と、前記蓄電手段から前記ヒータ入力電力切換手段への出力を制御するヒータ蓄電手段電力投入制御回路と、前記加熱物の温度を検知して温度情報を出力する温度検知手段と、前記温度情報に基づいて、前記ヒータ入力電力切換手段と前記ヒータAC電力投入制御回路と前記蓄電手段充電制御回路と前記ヒータ蓄電手段電力投入制御回路とを制御する温度制御信号発生部と、を備え、前記温度制御信号発生部は、前記ヒータの非通電時に前記温度情報に基づいて前記ヒータの通電が必要と判断した場合は、予め充電された前記蓄電手段のエネルギーの一部あるいは全部を前記ヒータに与えた後に続いてAC商用電源から前記ヒータへの電力供給を行い、前記ヒータの通電時に前記温度情報に基づいて前記ヒータの通電遮断が必要と判断した場合は、前記ヒータへのエネルギー供給を停止させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる画像形成装置は、本発明にかかる温度制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒータ通電初期のエネルギー供給は予め充電された蓄電手段のエネルギーを使用し、ヒータが十分温まった状態でAC商用電源からのエネルギー供給に切換えるようにしているので、電圧変動特性、雑音端子電圧特性および高調波電流特性などにおいて良好な特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、温度制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2−1】図2−1は、温度制御装置による制御の一例を説明するタイミングチャートである。
【図2−2】図2−2は、温度制御装置による制御の他の例を説明するタイミングチャートである。
【図3−1】図3−1は、単純なON/OFF制御をゼロクロススイッチングで行った場合の制御例を説明するタイミングチャートである。
【図3−2】図3−2は、ON/OFF制御をゼロクロススイッチングで行い、且つ、通電初期に位相制御を実施した場合の制御例を説明するタイミングチャートである。
【図4】図4は、温度制御装置における一連の処理の具体例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、温度制御装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す模式図である。
【図6】図6は、画像形成装置が備える定着装置の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる温度制御装置および画像形成装置の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一適用例を例示的に示したものであり、本発明の概念を逸脱しない範囲で、種々の変更や変形が可能であることは言うまでもない。
【0013】
図1は、本実施形態にかかる温度制御装置の構成を示すブロック図である。この温度制御装置は、加熱源としてのヒータ6に対して、AC商用電源9から蓄電手段に充電した電力を供給するか、あるいはAC商用電源9から蓄電手段を介さずに入力される電力を供給するかをヒータ入力電圧切換手段によって切換えることが可能な構成であり、蓄電手段としてキャパシタ5、ヒータ入力電力切換手段として2回路のON接点およびOFF接点を有するリレー4を用いている。なお、本実施形態にかかる温度制御装置では、蓄電手段の一例としてキャパシタ5を用いているが、キャパシタ5以外の蓄電手段を用いてもよい。
【0014】
AC商用電源9の両ラインは、リレー10に接続されている。図1に示す例では、リレー10は2回路リレーとして構成され、AC商用電源9の両ラインは、リレー10の各ON接点回路の片側の端子にそれぞれ接続されている。リレー10は、後述する温度制御信号発生部11から出力されるAC商用電源通電制御信号によって制御される。なお、リレー10は、温度制御中はAC商用電源9を通電し、温度制御中以外や温度制御が異常状態のとき、AC商用電源9の異常状態のときにAC商用電源9を遮断するための部品であるが、同部品の有無に関わらず本発明は実現可能である。
【0015】
リレー10の各ON接点回路の反対側の端子(AC商用電源9が接続されている端子とは逆側の端子)は、ヒータAC電力投入制御回路1とキャパシタ充電制御回路(蓄電手段充電制御回路の一例)2とに並列で接続されている。したがって、AC商用電源9から入力される電力は、リレー10を介して、ヒータAC電力投入制御回路1およびキャパシタ充電制御回路2に入力されることになる。
【0016】
ヒータAC電力投入制御回路1の出力はリレー(ヒータ入力電力切換手段の一例)4に入力される。このヒータAC電力投入制御回路1は、後述する温度制御信号発生部11からのヒータAC電力投入制御信号にしたがって、リレー4への出力を制御する。リレー4は、図1に示す例では、2回路のON接点およびOFF接点を有するリレーとして構成されており、ヒータAC電力投入制御回路1の出力の両ラインが、リレー4の各ON接点回路の片側の端子にそれぞれ接続されている。
【0017】
キャパシタ充電制御回路2の出力の両ラインは、キャパシタ(蓄電手段の一例)5の両端に接続され、さらに、並列接続でヒータキャパシタ電力投入制御回路(ヒータ蓄電手段電力投入制御回路の一例)3に接続されている。したがって、キャパシタ充電制御回路2の出力はキャパシタ5およびヒータキャパシタ電力投入制御回路3に入力される。また、キャパシタ充電制御回路2は、後述する温度制御信号発生部11からのキャパシタ充電制御信号にしたがって、AC商用電源9からキャパシタ5への充電を制御する。
【0018】
キャパシタ5は、キャパシタ充電制御回路2からの充電電流をエネルギーとしてその内部に蓄えることができると同時に、必要時に、ヒータキャパシタ電力投入制御回路3を通じて放電(エネルギーを放出)することができる。ここで、本実施形態にかかる温度制御装置では、ヒータ6へのエネルギー投入の際、まずキャパシタ5の放電による電力をヒータ6に投入し、続いて、AC商用電源9からの電力をヒータ6に投入するようにしている。このとき、キャパシタ5の出力電圧は、概ねAC商用電源9の実効値電圧あるいはそれ以上とすることが望ましい。これにより、ヒータ6にAC商用電源9からの電力が投入される前にヒータ6に充分なエネルギーを投入でき、ヒータ6をAC商用電源9の連続通電時とほぼ同等あるいはそれ以上の温度とすることができるので、ヒータ6への電力投入をAC商用電源9に切換えたときの突入電流を有効に抑制することが可能となる。
【0019】
ヒータキャパシタ電力投入制御回路3は、後述する温度制御信号発生部11からのヒータキャパシタ電力投入制御信号にしたがって、キャパシタ5の放電電流の出力を制御する。ヒータキャパシタ電力投入制御回路3の出力の両ラインは、前記リレー4の各OFF接点回路の片側の端子にそれぞれ接続されている。
【0020】
2回路のON接点およびOFF接点を有するリレー4は、前記ヒータAC電力投入制御回路1およびヒータキャパシタ電力投入制御回路3からの入力接点に各々の回路のスイッチとして対応する出力ON接点およびOFF接点を共通接点として使用してヒータ6に接続されており、形成される回路にしたがって、ヒータ6への電力供給源を選択することができる。このリレー4は、後述する温度制御信号発生部11からのヒータ入力電力切換制御信号にしたがって、回路の切換えを行う。
【0021】
ヒータ6には、ニクロム線ヒータやハロゲンヒータ等が使用される。このヒータ6への通電によって、加熱物7に熱を与え加熱物7の温度を上昇させることができる。
【0022】
加熱物7には、該加熱物7の温度を検知する温度センサ(温度検知手段の一例)8が備えられている。温度センサ8の出力信号(温度情報)は、温度制御信号発生部11に入力される。
【0023】
温度制御信号発生部11は、温度センサ8からの温度情報の入力を受け、ヒータAC電力投入制御回路1、キャパシタ充電制御回路2、ヒータキャパシタ電力投入制御回路3、リレー4に対して制御信号を出力することで、これら各部の動作を制御することができる。すなわち、温度制御信号発生部11からヒータAC電力投入制御回路1に対してヒータAC電力投入制御信号が供給されることで、AC商用電源9からリレー4への通電が制御される。また、温度制御信号発生部11からキャパシタ充電制御回路2に対してキャパシタ充電制御信号が供給されることで、AC商用電源9からキャパシタ5への充電が制御される。また、温度制御信号発生部11からヒータキャパシタ電力投入制御回路3に対してヒータキャパシタ電力投入制御信号が供給されることで、キャパシタ5からヒータ4への放電電流の出力が制御される。また、温度制御信号発生部11からリレー4に対してヒータ入力電力切換制御信号が供給されることで、ヒータ6への電力供給源の切換えが制御される。さらに、温度制御信号発生部11からリレー10に対してAC商用電源通電制御信号が供給されることで、AC商用電源9の通電と遮断の切換えが制御される。
【0024】
そして、特に本実施形態にかかる温度制御装置では、この温度制御信号発生部11が、ヒータ6の非通電時に温度センサ8からの温度情報に基づいてヒータ6の通電が必要と判断した場合に、まず予め充電されたキャパシタ5のエネルギーの一部あるいは全部をヒータ6に与えた後、続いてAC商用電源9からヒータ6への電力供給を開始し、ヒータ6の通電時に温度センサ8からの温度情報に基づいてヒータ6の通電遮断が必要と判断した場合は、ヒータ6へのエネルギー供給を停止する、といった制御を実施するようにしている。
【0025】
以上、本実施形態にかかる温度制御装置の構成について説明したが、次に、図2−1および図2−2を参照して、本実施形態にかかる温度制御装置の動作について具体的に説明する。なお、図2−1および図2−2においては、制御信号の波形や電流波形について具体的に時間軸や電流の大小関係等も記載しているが、これらの図で示す波形はあくまで一例であり、ここで例示する具体的な時間や電流値等によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0026】
図2−1および図2−2では、下記の(1)〜(9)の波形図が示されている。まず、(1)〜(9)のそれぞれの波形について簡単に説明する。
【0027】
(1)加熱物の温度状態波形
加熱物の温度状態波形は、加熱物7の温度状態を示す波形であり、ハイレベルは加熱物7の温度が目標温度以上であることを示し、ローレベルは加熱物7の温度が目標温度未満であることを示している。
【0028】
(2)ヒータ入力電力切換制御信号波形
ヒータ入力電力切換制御信号波形は、リレー4で形成される回路にしたがって、ヒータ6への電力供給源としてキャパシタ5の入力とAC商用電源9の入力とのどちらが選択されているかを示す波形であり、ハイレベルはキャパシタ5の入力が選択されていることを示し、ローレベルはAC商用電源9の入力が選択されていることを示している。
【0029】
(3)キャパシタ電力投入制御信号波形
キャパシタ電力投入制御信号波形は、キャパシタ5を放電可能な状態としてキャパシタ5に充電されたエネルギーをリレー4への入力として伝達するか否かを示す波形であり、ハイレベルはキャパシタ5に充電されたエネルギーをリレー4に伝達する状態であることを示し、ローレベルはキャパシタ5を放電させずにキャパシタ5に充電されたエネルギーをリレー4に伝達しない状態であることを示している。
【0030】
(4)ヒータAC電力投入制御信号波形
ヒータAC電力投入制御信号波形は、AC商用電源9のエネルギーをリレー4の入力として伝達する否かを示す波形であり、ハイレベルはAC商用電源9のエネルギーをリレー4に伝達する状態であることを示し、ローレベルはAC商用電源9のエネルギーをリレー4に伝達しない状態であることを示している。
【0031】
(5)充電制御信号波形
充電制御信号波形は、キャパシタ充電制御回路2によりキャパシタ5の充電動作を行っている状態とキャパシタ5の充電動作を行っていない状態を示す波形であり、ハイレベルはキャパシタ5の充電動作中であることを示し、ローレベルはキャパシタ5の充電動作が停止中であることを示している。
【0032】
(6)キャパシタ供給ヒータ電流波形
キャパシタ供給ヒータ電流波形は、キャパシタ5の放電によってヒータ6に流れる電流の波形を示している。
【0033】
(7)AC商用電源供給ヒータ電流波形
AC商用電源供給ヒータ電流波形は、AC商用電源9の出力によってヒータ6に流れる電流の波形を示している。
【0034】
(8)キャパシタ充電入力電流波形
キャパシタ充電入力電流波形は、キャパシタ充電制御回路2で消費されるAC商用電源9からの入力電流の波形を示している。
【0035】
(9)入力総電流波形
入力総電流波形は、AC商用電源9で消費される入力総電流の波形(上記(7)の電流波形と上記(8)の電流波形の和)を示している。
【0036】
次に、図2−1を参照して、本実施形態にかかる温度制御装置における制御の一例について説明する。制御の判断は前記温度制御信号発生部11でなされ、温度制御信号発生部11から各部へ出力される制御信号によって以下の制御が実現される。なお、ここでは、本発明と直接関係のないAC商用電源通電制御信号については説明を割愛する。
【0037】
初期状態(時間=0)は、加熱物7の温度が目標温度以上となっており、ヒータ入力電力切換はキャパシタ入力の状態であり、ヒータ6への電力供給は停止している状態で、キャパシタ5への充電動作を行っているものとする。
【0038】
図2−1に示す例において、時間=0.16秒で加熱物7の温度が目標温度未満になると(波形(1)参照)、温度制御信号発生部11は、加熱物7への加熱が必要であると判断し、まず、キャパシタ電力投入制御信号をハイレベルとして(波形(3)参照)、キャパシタ5からヒータ6への放電を開始させる。キャパシタ5からヒータ6に流れる電流はキャパシタ供給ヒータ電流(放電電流)として波形(6)に示される。放電初期はヒータ6の温度が低く、ヒータ6の発熱素子の電気抵抗が小さいので、大きな電流が突入電流となって流れることになる。本波形図では、キャパシタ5の出力電圧は、AC商用電源9の実効値電圧として示している。
【0039】
次に、温度制御信号発生部11は、時間=0.25秒で、キャパシタ電力投入制御信号をローレベルとして(波形(3)参照)、キャパシタ5からヒータ6への放電を停止させる。これにより、波形(6)に示すように、キャパシタ5からヒータ6への電流は流れなくなる。
【0040】
次に、温度制御信号発生部11は、時間=0.26秒まで待ってから、ヒータ入力電力切換制御信号をローレベルとして(波形(2)参照)、ヒータ6への電力供給入力をAC商用電源9からの入力とする。この例では、前記のキャパシタ電力投入制御信号をローレベルにしてから0.01秒後にヒータ入力電力切換制御信号をローレベルにしているが、キャパシタ電力投入制御信号をローレベルにしてからヒータ入力電力切換制御信号をローレベルにするまでの時間をより短時間にしても構わない。リレー4の接点動作時間を考慮するとほぼ同時でも所望のシーケンスとなる場合もある。ここで大事なのは、リレー4の接点が切換わる動作中は、必ずキャパシタ電力投入制御信号およびヒータAC電力投入制御信号がローレベルでヒータ6に電流が流れていない状態とすることである。このように制御することによって、リレー接点が離れる場合のキャパシタ5からの電流によるスパーク発生や接点溶着を防止でき、また接点がチャタリングを経て接触する時のAC商用電源9からのスパーク発生や接点溶着を防止でき、リレー4の寿命を長くすることが可能となる。
【0041】
但し、ヒータ6の電流停止時間が温度制御装置に温度リップル増加や立ち上がり時間増加等に影響を与える可能性があり、これらの特性を改善したい場合には、リレー4として耐久性の高いリレーを選択して用い、必ずキャパシタ電力投入制御信号およびヒータAC電力投入制御信号をハイレベルのまま、リレー4をAC商用電源9からの入力へ切換えるようにしてもよい。また、前記リレー4をAC商用電源9からの入力へ切換えることと、キャパシタ電力投入制御信号をローレベルにすることと、ヒータAC電力投入制御信号をハイレベルにすることを同時に実行するようにしてもよい。温度制御装置の様々な条件に対応させて上記のような種々の変形を加えることは、当業者であれば容易である。
【0042】
次に、温度制御信号発生部11は、ヒータ入力電力切換制御信号をローレベルにした後に0.04秒ほどリレー4の接点メーク期間として待ってから、時間=0.3秒で、ヒータAC電力投入制御信号をハイレベルとして(波形(4)参照)、AC商用電源9からヒータ6への電力供給を開始させる。AC商用電源9からヒータ6に流れる電流はAC商用電源供給ヒータ電流として波形(7)に示される。本実施形態では、AC商用電源9の周波数が50Hzである場合を例示しており、時間=0.3秒のポイントがちょうど商用電源9のゼロクロスポイントとなっているが、ヒータAC電力投入制御信号をハイレベルにするタイミングは、温度制御装置に求められる電圧変動特性や雑音端子電圧特性、高調波電流特性の観点から、本実施形態で例示するようなAC商用電源9のゼロクロスポイントとすることが好ましい。したがって、ヒータ入力電力切換制御信号をローレベルにしてからヒータAC電力投入制御信号をハイレベルにするまでの時間(本実施形態では0.04秒)は時間管理しなくても、キャパシタ電力投入制御信号をローレベルとしてから5個目のゼロクロスポイント(この場合、リレー4の接点メーク用の待ち時間は、AC商用電源9の周波数が50Hzの場合は40〜50msec、AC商用電源9の周波数が60Hzの場合は33.3〜41.7msec)のタイミングで、ヒータAC電力投入制御信号をハイレベルに変更するようにしてもよい。また、温度制御信号発生部11は、AC商用電源9からヒータ6への電力供給を開始させると同時に、充電制御信号をローレベルとして(波形(5)参照)、キャパシタ5への充電動作を停止する。
【0043】
上述したように、キャパシタ5の出力電圧をAC商用電源9の実効値電圧としているため、キャパシタ5からヒータ6への放電を停止した直後(時間=0.25秒)は、ヒータ6の温度はAC商用電源9を連続通電した場合と同等となっているが、本実施形態のようにヒータ6の通電を0.04秒ほど停止させるとヒータ6の発熱素子はいくらか冷えるため、若干の突入電流が流れていることを、波形(7)は示している。この突入電流を改善するには、リレー4の切換え時間におけるヒータ6の冷却を考慮して、キャパシタ5の出力電圧をAC商用電源9の実効値電圧より大きくするとよい。
【0044】
AC商用電源9からヒータ6への電力供給は、加熱物7の温度状態が目標温度以上になるまで継続される。その後、時間=0.6秒で加熱物7の温度状態が目標温度以上になると、温度制御信号発生部11は、加熱物7への加熱は不要であると判断し、まず、ヒータAC電力投入制御信号をローレベルとして(波形(4)参照)、AC商用電源9からヒータ6への電力供給を停止させる。これにより、波形(7)に示すように、AC商用電源9からヒータ6への電流は流れなくなる。このとき、ヒータAC電力投入制御回路1のヒータ通電スイッチング素子がトライアックであると、ヒータ6への電流はヒータAC電力投入制御信号のローレベルへの切換えと同時には遮断されず、AC商用電源9の次のゼロクロスポイントまで電流は流れることになる。AC商用電源9が50/60Hzの周波数であれば、50Hz時に最大で10msec後にヒータ6への電流が停止される。
【0045】
また、温度制御信号発生部11は、AC商用電源9からヒータ6への電力供給を停止させると同時に充電制御信号をハイレベルとして(波形(5)参照)、キャパシタ充電制御回路2によるキャパシタ5への充電動作を開始するとよい。キャパシタ5への充電動作をAC商用電源9からヒータ6への電力供給と反対に同期させることで、AC商用電源9の総電流の平準化を図ることができ、最大電力の有効利用や電圧変動特性の改善が期待できる。この場合、簡易的な制御としては、ヒータAC電力投入制御信号と充電制御信号とを反転させる制御でよいが、さらに好適な制御としては、AC商用電源9からヒータ6への電力供給停止から所定時間経過後にキャパシタ5への充電動作を開始させるようにするとよい。具体的には、後述するヒータ入力電力切換制御信号をハイレベルにする(波形(2)参照)のと同時に、充電制御信号もハイレベルにするとよい。なお、図2−1および図2−2の波形図では簡易的な制御の例を示しているが、後述する図4のフローチャートでは、前記の好適な制御の例を示している。
【0046】
次に、温度制御信号発生部11は、AC商用電源9によるヒータ6への電流が確実にゼロになる時間を考慮して、ヒータAC電力投入制御信号をローレベルにしてから0.01秒後の時間=0.61秒で、しかる後に加熱物7の温度が目標温度未満となる場合に備えて、ヒータ入力電力切換制御信号をハイレベルとして(波形(2)参照)、ヒータへの電力供給入力をキャパシタ5からの入力とする。
【0047】
以上の動作を経て、温度制御装置の状態は最初に説明した初期状態(時間=0)と同じ状態になる。その後は、しかる後に加熱物7の温度が目標温度未満となると、上記と同一動作を繰り返すことになる。図2−1に示す例では、時間=1.16秒で加熱物7の温度が再び目標温度未満になり、上記と同一の動作が繰り返されている。
【0048】
次に、図2−2を参照して、本実施形態にかかる温度制御装置における制御の他の例について説明する。この図2−2に示す制御例は、AC商用電源9によるヒータ6加熱前のキャパシタ5による通電をデューティ制御してエネルギー供給している点が、図2−1に示した制御例とは異なるものである。したがって、図2−2では、キャパシタ電力投入制御信号波形(波形(3))とキャパシタ供給ヒータ電流波形(波形(6))とが、図2−1とは異なることになる。なお、その他は図2−1に示した制御例と同様であるため、以下では、図2−2に示す制御例に特徴的な部分について説明し、図2−1と同様の制御については説明を省略する。
【0049】
図2−2に示す例において、時間=0.1秒で加熱物7の温度が目標温度未満になると(波形(1)参照)、温度制御信号発生部11は、加熱物7への加熱が必要であると判断し、まず、1msecの間キャパシタ電力投入制御信号をハイレベルにするパルス信号を発生し(波形(3)参照)、キャパシタ5からヒータ6へ1msecの間だけ放電させる。そして、時間=0.11秒では2msec放電させる同パルス信号、時間=0.12msecでは3msec放電させる同パルス信号、・・・・・・、時間=0.18秒では9msec放電させる同パルス信号を発生し、キャパシタ5からヒータ6へそれぞれのパルス幅分の時間だけ放電させる。そして、時間=0.19秒からは、キャパシタ電力投入制御信号をハイレベルに固定して(波形(3)参照)、キャパシタ5からヒータ6への放電を持続させる。
【0050】
このような制御によるキャパシタ5からヒータ6への放電電流(キャパシタ供給ヒータ電流)は、波形(6)に示される。放電初期は、図2−1に示した例と同様に突入電流が流れるが、電流停止期間が設けられているので、ヒータ6の発熱素子やスイッチング素子の局部的な急激な温度上昇を防止することがでる。また、このような通電制御によると、時間=0.1〜0.19秒まではパルス制御を実施しているので、この間の平均電流としては、図2−1の波形(6)のような電流を流しつづける場合よりも格段に小さくなる。このことによって、ヒータ6やスイッチング素子の部品の長寿命化に貢献することができる。
【0051】
次に、温度制御信号発生部11は、図2−1に示した例と同様に、時間=0.25秒で、キャパシタ電力投入制御信号をローレベルとして(波形(3)参照)、キャパシタ5からヒータ6への放電を停止させる。以降の動作は、図2−1に示した例と同一であるため説明を省略する。
【0052】
図2−1および図2−2において、波形(9)は温度制御装置の入力総電流を示し、波形(7)と波形(8)の総和である。すなわち、波形(9)は温度制御装置の消費電流を示している。本実施形態では、どちらの図の波形も同一波形として示されている。この電流波形が、温度制御装置における電圧変動特性、雑音端子電圧特性、高調波電流特性に影響を与える。以下、これらの特性について簡単に説明する。
【0053】
(A)電圧変動特性
電圧変動特性は、電流値が急激に大きく変化する場合にAC商用電源9のラインで電圧降下に変化が生じて他に接続されている機器に入力電圧変動を及ぼすことを示す特性である。本実施形態にかかる温度制御装置では、図2−1および図2−2に示した波形(9)によると、キャパシタ5による充電電流は一定であり、AC商用電源9によるヒータ6への入力電流の部分は初期の部分で僅かに定常状態より大きな電流となっているが、ほぼ定常電流とみなせる範囲となっており、電圧変動特性が良好であることが分かる。
【0054】
(B)雑音端子電圧特性
雑音端子電圧特性は、機器内で急激な電流変動や電圧変動が生じてAC商用電源9のラインに影響を及ぼすことを示す特性である。特に、AC電流の位相制御を実施すると同特性が悪化するが、本実施形態にかかる温度制御装置の場合、AC商用電源9によるヒータ6への電流制御で位相制御は実施しないので、良好な雑音端子電圧特性が得られることになる。
【0055】
(C)高調波電流特性
高調波電流特性は、機器がAC商用電源9で消費する電流が正弦波から偏った電流が流れていないかの特性である。AC電流の位相制御を実施すると同特性が悪化するが、本実施形態にかかる温度制御装置の場合、AC商用電源9によるヒータ6への電流制御で位相制御は実施しないので、良好な雑音端子電圧特性が得られることになる。
【0056】
本実施形態にかかる温度制御装置における上記の(A)電圧変動特性、(B)雑音端子電圧特性、(C)高調波電流特性を従来技術と比較するため、単純なON/OFF制御をゼロクロススイッチングで行った場合の例を図3−1に示した。この図3−1に示す制御例は、加熱物7の温度が目標温度未満になるとAC商用電源9からヒータ6に電力供給し、加熱物7の温度が目標値以上になるとAC商用電源9からヒータ6への電力供給を停止するON/OFF制御の例であるため、図3−1では、波形(1)および波形(4)と波形(7)(=波形(9))のみが示されている。
【0057】
図3−1に示す制御例では、位相制御は実施していないので、(B)雑音端子電圧特性や(C)高調波電流特性はさほど悪くないが、ヒータ6の通電初期における突入電流が定常電流の4.4倍も流れていて、大きな電圧変動を発生させてしまう。図2−1および図2−2における波形(9)では同突入電流は1.4倍であり、増加分で比較すると8倍以上も差がある。また、前述したが、本実施形態にかかる温度制御装置では、キャパシタ5の出力電圧や蓄積エネルギーを調整すれば、突入電流をゼロにすることも可能である。
【0058】
以上のことから、(A)電圧変動特性については、本実施形態にかかる温度制御装置の方が、単純なON/OFF制御をAC商用電源9のゼロクロススイッチングで行った従来技術よりも大幅に改善できることが分かる。
【0059】
また、単純なON/OFF制御に加え、通電初期に位相制御を実施した場合の例を図3−2に示した。
【0060】
図3−2に示す制御例では、通電初期に位相制御を実施しているため、突入電流は定常電流の2.8倍となり、図3−1に示す制御例に比べると改善されているが、本実施形態にかかる温度制御装置のレベル(定常電流の1.4倍)には及ばない。上記と同様に増加分で比較すると4.5倍程の差がある。また、図3−2に示す制御例では、位相制御を実施していることで、(B)雑音端子電圧特性や(C)高調波電流特性も悪化しており、本実施形態にかかる温度制御装置より劣る特性になっている。
【0061】
以上のことから、本発明にかかる温度制御装置は、単純なON/OFF制御に加えて通電初期に位相制御を実施した従来技術よりも、(A)電圧変動特性、(B)雑音端子電圧特性、(C)高調波電流特性のいずれについても優れた特性を得られることが分かる。
【0062】
次に、本実施形態にかかる温度制御装置における一連の処理の具体例について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。なお、この図4のフローチャートで示す一連の処理は、温度制御信号発生部11がAC商用電源9のゼロクロスポイントを検知して、ゼロクロスポイントごとに実施するものである。
【0063】
図4のフローチャートがスタートすると、温度制御信号発生部11は、ステップS1において温度センサ8からの温度情報に基づいて加熱物7の温度が目標温度以上であるかどうかを確認し、加熱物7の温度が目標温度以上であればステップS2〜ステップS7の処理(ヒータ7をOFFする処理)を行い、加熱物7の温度が目標温度未満であればステップS8〜ステップS17,ステップS51の処理(ヒータ7をOFFする処理)を行う。なお、本実施形態においては、本発明の本質を分かりやすくするため、ステップS1の判断は単純な目標温度とヒータ7の現在温度との比較としているが、PID制御を適用してヒータ7をON/OFFする処理としてもよいし、目標温度にある幅を持たせて上限目標温度以上ならヒータ7をOFFし、下限目標温度以下ならヒータをONするヒステリス温度制御を適用する等、種々の変形が可能である。
【0064】
まず、加熱物7の温度が目標温度以上でステップS2〜ステップS7の処理を実施する場合について説明する。この場合、温度制御信号発生部11は、まず、ステップS2,ステップS4,ステップS6で現状の制御状態を確認する。すなわち、ステップS2ではヒータ6へキャパシタ5から通電中であるか否か、ステップS4ではヒータ6への通電停止中であるか否か、ステップS6ではヒータ6へAC商用電源9から通電中であるか否かをそれぞれ判定することによって、現状の制御状態を確認する。そして、それぞれの判定結果に応じた処理として、以下の処理を順番に実行する。
【0065】
すなわち、温度制御信号発生部11は、ステップS2でヒータ6へキャパシタ5から通電中であると判定した場合には、ステップS3において、キャパシタ5のデューティ制御通電タイマを停止し、キャパシタ電力投入制御信号をOFF(ローレベル)にする。
【0066】
また、温度制御信号発生部11は、ステップS4でヒータ6への通電停止中であると判定した場合には、ステップS5において、ヒータ入力電力切換制御信号をキャパシタ5からの入力(ハイレベル)に設定し、キャパシタ5の充電制御信号をON(ハイレベル)にする。
【0067】
また、温度制御信号発生部11は、ステップS6でヒータ6へAC商用電源9から通電中であると判定した場合は、ステップS7において、ヒータAC電力投入制御信号をOFF(ローレベル)にする。
【0068】
ステップS7の処理に関しては、同処理の後処理としてステップS5の処理が必要となるが、好適な制御とするためには、ヒータ6へAC商用電源9から通電が確実に停止した次回のゼロクロスポイント以降での処理が望ましいので、通常は次回の制御(AC商用電源9の周波数が50Hzの場合は10msec後)でステップS4の判断がなされてステップS5が実行される。ここで、仮に次回の制御において、ステップS1の判定で加熱物7の温度が目標温度未満であると判断した場合は、ステップS8において前回の制御でステップS7の処理を実行したか否かを判断し、ステップS51においてステップS5と同一処理を実行する。このとき、その他のステップS9〜ステップS17の処理は実施しない。
【0069】
次に、加熱物7の温度が目標温度未満でステップS9〜ステップS17の処理を実施する場合について説明する。この場合、温度制御信号発生部11は、まず、ステップS9,ステップS12,ステップS14で現状の制御状態を確認する。すなわち、ステップS9ではヒータ6への通電停止中(高温のためヒータ6へAC商用電源9からの通電が停止)であるか否か、ステップS12ではヒータ6へキャパシタ5からデューティ制御通電中であるか否か、ステップS14ではヒータ6への通電停止中(ヒータ6への電力供給源をキャパシタ5からAC商用電源9に切換中)であるか否かをそれぞれ判定することによって、現状の制御状態を確認する。そして、それぞれの判定結果に応じた処理として、以下の処理を順番に実行する。
【0070】
すなわち、温度制御信号発生部11は、ステップS9でヒータ6への通電停止中であると判定した場合には、ステップS10において、ステップS5やステップS51でヒータ入力電力切換制御信号をキャパシタ入力(ハイレベル)に設定してから、リレー4の接点メーク時間が経過したかどうか確認する。そして、同時間が経過するまでは毎回この判断を実施してその後の他の処理は実行しない。一方、同時間の経過を確認したら、次のステップS11において、キャパシタ5のデューティ制御通電タイマに初期値を設定して動作させ、キャパシタ電力投入制御信号をON(ハイレベル)にする。このタイマは、タイマ時間になるとキャパシタ電力投入制御信号を自動的にOFF(ローレベル)にするようになっている。したがって、特にキャパシタ5からのデューティ制御通電を行わない連続通電の場合では、ゼロクロス間隔以上の大きなタイマ値を設定すればよい。デューティ制御通電を行う場合はゼロクロス間隔未満のタイマ値を設定する。
【0071】
また、温度制御信号発生部11は、ステップS12でヒータ6へキャパシタ5からデューティ制御通電中であると判定した場合には、ステップS13において、キャパシタ5のデューティ制御通電タイマの設定を更新して、キャパシタ電力投入制御信号をON(ハイレベル)にする。なお、デューティ制御通電を行っている場合はゼロクロス間隔未満のタイマ値が設定されているので、本フローの制御毎にはキャパシタ電力投入制御信号はOFFになっている。デューティ制御通電後の連続通電は、最後にゼロクロス間隔より大きなタイマ値を設定する。
【0072】
また、温度制御信号発生部11は、これまでのステップS13の処理で最終に設定されたタイマ値が動作して、キャパシタ電力投入制御信号がOFF(ローレベル)になったら、まず、ステップS15において、ヒータ入力電力切換制御信号をAC商用電源9の入力(ローレベル)に設定する。なお、このステップS15の処理は、前回の制御でステップS14の判定を実施しなかったときのみ実行するようにしてもよい。そして、温度制御信号発生部11は、次のステップS16において、ステップS15でヒータ入力電力切換制御信号をAC商用電源9の入力(ローレベル)に設定してから、リレー4の接点メーク時間が経過したかどうか確認する。そして、同時間が経過するまでは毎回この判断を実施してその後の他の処理は実行しない。一方、同時間の経過を確認したら、次のステップS17において、ヒータAC電力投入制御信号をON(ハイレベル)にして、キャパシタ5の充電制御信号をOFF(ローレベル)にする。
【0073】
以上説明した本実施形態にかかる温度制御装置は、例えば、画像形成装置における定着ローラの加熱状態を制御する用途で有効に利用可能である。図5は、本実施形態にかかる温度制御装置を備えた画像形成装置100の概略構成を示す図である。この画像形成装置100は、画像を読み取るためのスキャナ部110と、スキャナ部110で読み取った画像についての所定の処理を施し、処理を施した後の画像に応じたトナー像を転写紙に転写するエンジン部120と、転写紙を格納するための給紙トレイ130と、エンジン部120で転写紙に転写されたトナー像を定着させるための定着装置150とを備えている。
【0074】
スキャナ部110では、原稿をスキャン露光することで、原稿にかかる文書情報を画像信号に変換し、当該画像信号をエンジン部120に出力する。
【0075】
スキャナ部110から画像信号が出力されると、エンジン部120では、スキャナ部110から出力された画像信号に対して、色変換、階調補正などの画像処理を施す。そして、エンジン部120では、画像処理を施した画像に応じて静電潜像を図示しない像担持体に作像し、作像した静電潜像にトナーを付着してトナー像を形成し、形成したトナー像を給紙トレイ130から搬送路140を介して搬送された転写紙に転写し、当該転写紙を定着装置150に向けて送り出す。
【0076】
トナー像が転写された転写紙がエンジン部120から搬送路140を介して定着装置150に送り出されると、定着装置150では、円筒状の定着ローラ151による熱と加圧ローラ152による圧力により、転写紙に転写されているトナー像を定着させ、排紙トレイに向けて排紙する。
【0077】
図6は、画像形成装置100が備える定着装置150の要部構成を示す図である。定着装置150は上述した加熱物7となる定着ローラ151を備え、この定着ローラ151に、上述したヒータ6が内蔵されている。ヒータ6にはリレー4を介してヒータAC電力投入制御回路1とヒータキャパシタ電力投入制御回路3が接続され、ヒータキャパシタ電力制御回路3にはキャパシタ5が接続され、キャパシタ5にはキャパシタ充電制御回路2が接続され、キャパシタ充電制御回路2とヒータAC電力投入制御回路1がリレー10を介してAC商用電源9に接続されていることは、上述した通りである。なお、この定着装置150は、蓄電手段としてキャパシタ5を備えている。また、温度制御信号発生部11は、例えば、画像形成装置100の動作を制御するマイクロコンピュータなどを用いた制御装置の一機能として実現される。
【0078】
以上のように構成される画像形成装置100では、本実施形態にかかる温度制御装置によって定着ローラ151に内蔵されたヒータ6の温度制御が実行され、定着ローラ151の温度が適切に制御される。
【0079】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態にかかる温度制御装置によれば、温度制御信号発生部11からの制御信号によって、ヒータ6の通電初期のエネルギー供給は予め充電されたキャパシタ5のエネルギーを使用し、ヒータ6が十分温まった状態でAC商用電源9からのエネルギー供給に切換えるように制御されるので、(A)電圧変動特性、(B)雑音端子電圧特性、(C)高調波電流特性などにおいて、良好な特性を得ることができる。
【0080】
また、本実施形態にかかる温度制御装置によれば、キャパシタ5の出力電圧は概ねAC商用電源9の実効値電圧あるいはそれ以上となるように制御され、ヒータ6の通電初期にヒータ温度をAC商用電源9から通電した場合と同等あるいはそれ以上とすることができるので、その後のAC商用電源9からのエネルギー供給に切換えた場合の突入電流を抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態にかかる温度制御装置によれば、ヒータ6の非通電時の温度情報からヒータ6の通電が必要と判断した場合は、初期のヒータ6へのエネルギー供給は、予め充電されたキャパシタ5のエネルギーの一部あるいは全部を通電デューティを小さくして、あるいは通電デューティを小さい状態から徐々に大きくなるように変化させるようにすることで、ヒータ6やスイッチング素子の寿命を向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態にかかる温度制御装置によれば、ヒータ6への電力供給源の切換えを行うヒータ入力電力切換手段として、2回路のON接点およびOFF接点を有するリレー4を用いるようにしているので、省スペースや低コストや部品点数の面で優れた温度制御装置を実現することができる。
【0083】
また、本実施形態にかかる温度制御装置によれば、リレー4の切換え時は、ヒータAC電力投入制御回路1やキャパシタ充電制御回路2の通電を遮断してからリレー4の切換えを実行するようにしているので、リレー接点のスパーク発生や溶着を防止でき、リレー4の寿命を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態にかかる温度制御装置によれば、リレー4の切換え直後は、ヒータAC電力投入制御回路1あるいはキャパシタ充電制御回路2のうちヒータ6に接続される制御回路の通電を、一定時間あるいは一定回数のAC商用電源9のゼロクロスを確認する間の遮断状態を経てから通電させるようにしているので、確実にリレー接点の回路が構成されてから(つまり、接点移動時間やチャタリング時間が経過した後に)通電を開始することができる。その結果、リレー接点のスパーク発生や溶着を防止でき、リレー4の寿命を向上させることができる。また、ゼロクロススイッチングすれば、(B)雑音端子電圧特性や(C)高調波電流特性により優れた温度制御装置を実現できる。
【0085】
また、本実施形態にかかる温度制御装置によれば、蓄電手段としてキャパシタ5を用いるようにしているので、ヒータ投入電力量や省スペースや低コストの面で優れた温度制御装置を実現することができる。
【0086】
また、本実施形態にかかる温度制御装置を画像形成装置に適用することによって、(A)電圧変動特性、(B)雑音端子電圧特性、(C)高調波電流特性などにおいて優れた特性を有する画像形成装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 ヒータAC電力投入制御回路
2 キャパシタ充電制御回路
3 ヒータキャパシタ電力投入制御回路
4 リレー
5 キャパシタ
6 ヒータ
7 加熱物
8 温度センサ
9 AC商用電源
11 温度制御信号発生部
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【特許文献1】特開2008−70686号公報
【特許文献2】特開2008−281993号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱物を加熱するヒータと、
前記ヒータへの電力供給源の切換えを行うヒータ入力電力切換手段と、
AC商用電源から前記ヒータ入力電力切換手段への出力を制御するヒータAC電力投入制御回路と、
AC商用電源から蓄電手段への充電を制御する蓄電手段充電制御回路と、
前記蓄電手段から前記ヒータ入力電力切換手段への出力を制御するヒータ蓄電手段電力投入制御回路と、
前記加熱物の温度を検知して温度情報を出力する温度検知手段と、
前記温度情報に基づいて、前記ヒータ入力電力切換手段と前記ヒータAC電力投入制御回路と前記蓄電手段充電制御回路と前記ヒータ蓄電手段電力投入制御回路とを制御する温度制御信号発生部と、を備え、
前記温度制御信号発生部は、前記ヒータの非通電時に前記温度情報に基づいて前記ヒータの通電が必要と判断した場合は、予め充電された前記蓄電手段のエネルギーの一部あるいは全部を前記ヒータに与えた後に続いてAC商用電源から前記ヒータへの電力供給を行い、前記ヒータの通電時に前記温度情報に基づいて前記ヒータの通電遮断が必要と判断した場合は、前記ヒータへのエネルギー供給を停止させることを特徴とする温度制御装置。
【請求項2】
前記ヒータ蓄電手段電力投入制御回路は、前記蓄電手段から前記ヒータ入力電力切換手段への出力電圧が概ねAC商用電源の実効値電圧あるいはそれ以上となるように、前記蓄電手段から前記ヒータ入力電力切換手段への出力を制御することを特徴とする請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記温度制御信号発生部は、前記ヒータの非通電時に前記温度情報に基づいて前記ヒータの通電が必要と判断した場合は、予め充電された前記蓄電手段のエネルギーの一部あるいは全部を通電デューティを小さくして、あるいは通電デューティを小さい状態から徐々に大きくなるように変化させて前記ヒータに与えた後に続いてAC商用電源から前記ヒータへの電力供給を行うように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記ヒータ入力電力切換手段は、2回路のON接点およびOFF接点を有するリレーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項5】
前記ヒータ入力電力切換手段の前記リレーの切換え時は、前記ヒータAC電力投入制御回路および前記蓄電手段充電制御回路との通電を遮断して前記リレーの切換えを実行することを特徴とする請求項4に記載の温度制御装置。
【請求項6】
前記ヒータ入力電力切換え手段の前記リレーの切換え直後は、前記ヒータAC電力投入制御回路あるいは前記蓄電手段充電制御回路のうち前記ヒータに接続される制御回路の通電を、一定時間あるいは一定回数のAC商用電源のゼロクロスを確認する間の遮断状態を経てから通電させることを特徴とする請求項4または5に記載の温度制御装置。
【請求項7】
前記蓄電手段としてキャパシタが用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の温度制御装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−186059(P2011−186059A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49353(P2010−49353)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】