説明

温度応答性膜を用いた膜ろ過システム

【課題】処理水量を多くしてシステム稼働率を高くするとともに、薬品洗浄や膜交換に要する費用を低減させ、トータルのランニングコストを低減させる。
【解決手段】温度応答性膜を平面状または円筒状に成型し、容器に充填して一体化して成り、供給された原水を膜ろ過し、処理水として排出する温度応答性膜モジュールを備える膜ろ過システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水、地下水、湖沼水などの淡水、雨水貯水、産業廃水、下水などの汚水、バラスト水などの海水、などの水処理に適した温度応答性膜、温度応答性膜モジュール、およびそれを用いた膜ろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理分野において、原水(河川水・地下水・湖沼水などの淡水、雨水貯水・産業廃水・下水などの汚水、バラスト水などの海水など)をろ過して、生活用水、工業用水、農業用水を得る方法として、例えば、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などの膜が用いられている。
【0003】
膜は、原水中の微生物、藻類、粘土などの固形分に対して高い分離性能を有しており、近年では、膜の素材として親水性材料を用いるのが一般的である。また、疎水性材料を用いる場合でも膜面を重クロム酸カリの硫酸溶液等で親水化処理することで、ろ過性能を向上させることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、膜は、継続的に原水を通水することによって、膜面や膜の内部に原水中の固形分が堆積してろ過抵抗が増加し、運転時間の経過とともに、(1)膜自身の変質(膜の圧密化や損傷などの物理的劣化、加水分解・酸化などによる化学的劣化、微生物により膜が資化される生物的劣化、など)や、(2)微粒子・懸濁物質の膜表面への蓄積などの外的要因によってろ過性能が低下することがある。この場合、必要な処理水量を得ために膜差圧が高くなり、膜ろ過システムの運転に要するエネルギーが増大する恐れがある。
【0005】
そこで、このような膜ろ過システムでは、予め設定された周期、あるいは膜が所定の差圧上昇を示した時点で、ろ過した処理水を処理水側から流す、原水側から圧縮空気を送るなどの物理洗浄を行い、膜表面あるいは膜内部の付着物のうち、可逆的なものを取り除いている。
【0006】
一方、膜表面や内部には、このような物理洗浄で除去できない付着物が徐々に蓄積するため、膜差圧が予め設定されている上限値を越えた時点で、膜ろ過処理を停止して薬品洗浄を行い、物理洗浄で除去できなかった付着物を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−23553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような膜ろ過システムでは、物理洗浄を繰り返しながら、膜差圧がある設定値より高くなったときに薬品洗浄を実施するという洗浄サイクルを繰り返し、同じろ過膜をできるだけ長く使用するようにしている。そして、薬品洗浄を行っても、膜表面や内部などの付着物が取り除けなくなり、膜差圧の回復が認められなくなった場合、あるいは、膜の使用期間がある一定期間を超えた場合には、膜が寿命に達したと判断して交換を行っている。この際、薬品洗浄、ろ過膜の交換などを行なうごとに、膜ろ過処理を停止しなければならないことから、薬品洗浄の頻度やろ過膜の交換頻度をなるべく少なくし、膜ろ過システムの稼働率を高くするとともに、薬品洗浄や膜交換に要するコストを低減する必要がある。
【0009】
本発明は上記の課題を踏まえ、処理水量を多くしてシステム稼働率を高くするとともに、薬品洗浄や膜交換に要する費用を低減させ、トータルのランニングコストを低減することができる膜ろ過システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に温度応答性膜は、高分子材料からなる膜基体と、前記膜基体の外表面側に所定の温度で可逆的に膨張/収縮する高分子材料を付加した孔径調整材とから成り、前記膜基体に形成される孔は、25〜60℃における最大孔径が100μm以下であり、かつ前記高分子材料は、少なくとも以下の(1)〜(7)の中から選択された一の材料から成ることを特徴としている。
【0011】
(1)N−イソプロピルアクリルアミドに、アクリル酸、2-カルボキシイソプロピルアクリルアミド、3-カルボキシ-n-プロピルアクリルアミドを共重合した高分子、(2)N−ビニルイソ酪酸アミド系重合体、(3)ポリ−N−アルキルアクリルアミド誘導体、(4)ポリイソプロピルアクリルアミドに代表されるポリアクリルアミド誘導体とポリビニル誘導体との共重合体、(5)N−ビニルイソ酪酸アミドなどのN−ビニルC3−9アシルアミドと、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルC1−3アシルアミドとの共重合体、(6)ポリアクリルアミド誘導体及びポリ−N−ビニルアシルアミド、(7)N−イソプロピルアクリルアミドで構成された単量体の重合体、及びN−ビニルイソ酪酸アミドで構成された単量体の重合体。
【0012】
また、本発明の温度応答性膜モジュールは、請求項2に記載のように、請求項1に記載の温度応答性膜を平面状または円筒状に成型し、容器に充填して一体化したことを特徴としている。
【0013】
また、本発明の温度応答性膜モジュールは、請求項3に記載のように、請求項1に記載の温度応答性膜を複数、平面状または円筒状に成型し、原水が流入している槽に浸漬させることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の膜ろ過システムは、請求項4に記載のように、請求項1に記載の温度応答性膜を平面状または円筒状に成型し、容器に充填して一体化して成り、供給された原水を膜ろ過し、処理水として排出する温度応答性膜モジュールを備えたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の膜ろ過システムは、請求項5に記載のように、請求項1に記載の温度応答性膜を複数、平面状または円筒状に成型し、原水が流入している槽に浸漬させて成り、供給された原水を膜ろ過し、処理水として排出する温度応答性膜モジュールを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、膜の洗浄効果が高く、長期間にわたり膜面の差圧上昇を抑制することができるため、薬品洗浄の頻度と膜の交換頻度を低減することで、膜ろ過システムの稼働率を高くするとともに薬品洗浄や膜交換に要するコストを低減し、トータルのランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る温度応答性膜の断面構成を示す模式図。
【図2】本発明に係る温度応答性膜の孔径伸縮率と液温との関係を示す説明図。
【図3】温度応答性膜モジュールの種別を示す説明図。
【図4】本発明に係る温度応答性膜モジュールの一例であるケーシング収納型・円筒状膜モジュールの概略構成図。
【図5】本発明に係る温度応答性膜モジュールの一例である平膜モジュールの概略構成図。
【図6】本発明に係る膜ろ過システムの実施形態を示す構成図。
【図7】本発明に係る膜ろ過システムの他の実施形態を示す構成図。
【図8】本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示す構成図。
【図9】本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示す構成図。
【図10】本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示す構成図。
【図11】本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示す構成図。
【図12】本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示す構成図。
【図13】本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示す構成図。
【図14】本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示す構成図。
【図15】本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示す構成図。
【図16】本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<温度応答性膜の実施形態>
図1は、本発明に係る温度応答性膜の実施形態を示している。
【0019】
本発明に係る温度応答性膜10は、高分子材料からなる膜基体1と、膜基体1の外表面側に所定の温度で可逆的に膨張/収縮する高分子材料を付加した孔径調整材2とで構成される。孔径調整材2の一例としては、N−イソプロピルアクリルアミドがある。N−イソプロピルアクリルアミドは単独では温度応答性を有していないが、これを重合した高分子は温度応答性を有する。
【0020】
図1(A)に示すように、固形分3を含む原水(河川水・地下水・湖沼水などの淡水、雨水貯水・産業廃水・下水などの汚水、バラスト水などの海水、など)、100μm以下の細孔をもつ温度応答性膜10のふるい作用により細孔よりも大きな物質は膜面および孔径調整材2に捕捉される。原水中に含まれる固形分3としては、例えば、シリカコロイド、ベントナイト、粘土などの無機物のほか、大腸菌などのバクテリア、クリプトスポリジウム、ジアルジアなどの原虫、プランクトンが挙げられる。これら固形分3は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基などを有している。
【0021】
本実施形態では、温度変化に対応した高分子鎖の膨張/収縮の変化を利用して、ろ過及び逆洗を行う。すなわち、温度応答性膜10を用いて、原水を膜面上方から下方に通水して上面側に原水中の固形分3を捕捉する。
【0022】
逆洗時においては、図1(B)に示すように、膜面下方から上方に逆洗する際に、膜面上方に滞留している原水、あるいは膜面下方から供給される逆洗浄水を25〜60℃に加温して高分子材料を膨張/収縮させる。
【0023】
上述したように、N−イソプロピルアクリルアミドは、単独では温度応答性を有していないが、これを重合した高分子は温度応答性を有する。
【0024】
このような温度変化に対応したN−イソプロピルアクリルアミドの高分子鎖の膨張/収縮の変化を利用して、ろ過及び逆洗を行うようにする。すなわち、本発明の温度応答性中空糸膜を用いて、原水を該中空糸膜外表面側から内表面側に通水して外表面側に原水中の固形分を捕捉する。この後、該中空糸膜内表面側から外表面側に逆洗する際に、該中空糸膜の外表面側に滞留している原水を25〜60℃に加温してN−イソプロピルアクリルアミドの高分子鎖を収縮させる。このとき、該高分子鎖の脱水和による収縮にともなって、温度応答性膜10の孔径が拡張(開口)する。
【0025】
N−イソプロピルアクリルアミドの孔径調整材2はその側鎖にアミド基を持ち、図2に示すように、約25℃以下において水和して膨張するが、25℃を超えると脱水和して収縮し、40℃付近では収縮もほぼ飽和状態となる。従って、逆洗浄水は25〜60℃の範囲で加温して高分子材料を収縮させるのが良い。
【0026】
また、このときの膜差圧は通常5〜30kPa程度であるが、(財)水道技術研究センターの「小規模水道における膜ろ過施設導入ガイドライン」によると、「精密ろ過膜の場合は最大150kPa、限外ろ過膜の場合は300kPa以下であること」とされていることから同程度以下であることが望ましい。
【0027】
以上説明したように、従来の膜では、カルボキシル基、アミノ基、水酸基などを有している固形分3が水素結合により膜面に付着するため、単に逆洗するだけでは除去し難い。このため、逆洗時に、固形分3を捕捉した膜面側の原水および処理水を25〜60℃に加温することで、上記効果に加えて、固形分3と膜表面との結合力を弱めて剥離しやすくすることができる。
【0028】
なお、高分子材料としては、(1)N−イソプロピルアクリルアミドに、アクリル酸、2-カルボキシイソプロピルアクリルアミド、3-カルボキシ-n-プロピルアクリルアミドを共重合した高分子、(2)N−ビニルイソ酪酸アミド系重合体、(3)ポリ−N−アルキルアクリルアミド誘導体、(4)ポリイソプロピルアクリルアミドに代表されるポリアクリルアミド誘導体とポリビニル誘導体との共重合体、(5)N−ビニルイソ酪酸アミドなどのN−ビニルC3−9アシルアミドと、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルC1−3アシルアミドとの共重合体、(6)ポリアクリルアミド誘導体及びポリ−N−ビニルアシルアミド、(7)N−イソプロピルアクリルアミドで構成された単量体の重合体、及びN−ビニルイソ酪酸アミドで構成された単量体の重合体、などが考えられる。なお、温度応答性膜としては、これらの高分子に限定されるものではなく、所定の温度で可逆的に膨張/収縮する高分子材料であれば良い。
【0029】
<温度応答性膜モジュールの実施形態>
次に、本発明に係る温度応答性膜モジュールの実施形態を説明する。
【0030】
膜の形状とモジュール形状を系統化すると図3に示すように分類できる。なお、この分類は、(財)水道技術研究センター、「水道用膜ろ過技術の新しい展開」より引用したものである。
【0031】
図3に示すように、膜モジュールの形状は、ケーシング収納型と槽浸漬型に大別される。さらに、各膜モジュールに装填されるモジュール形状は円筒状膜と平膜とに分けられる。ケーシング収納型の円筒状膜は中空糸型、管状型、モノリス型に分けられ、平膜はスパイラル型、プレードアンドフレーム型、振動式円盤型、プリーツ型に分けられる。槽浸漬型の円筒状膜は、中空糸型、管状型に分かられ、平膜はプレートアンドフレーム型、回転式円盤型に分けられる。
【0032】
<温度応答性膜モジュールの第1実施形態>
図4は、本発明に係る温度応答性膜モジュールの第1実施形態を示している。
【0033】
同図に示すように、円筒状のケーシング内には、円筒軸方向に多数の温度応答性膜が装填されている。原水がこの温度応答性膜を通過する間にろ過され、膜ろ過水(処理水)と濃縮水(排水)とに分離される。
【0034】
この場合、固形分3(図1参照)を含む原水(河川水・地下水・湖沼水などの淡水、雨水貯水・産業廃水・下水などの汚水、バラスト水などの海水、など)は、100μm以下の細孔をもつ温度応答性膜のふるい作用により細孔よりも大きな物質は膜面および孔径調整材2に捕捉される。容器に一体化した場合は、原水を膜面に沿って流し、処理水が原水とは直角方向に流れ、原水の一部が循環するクロスフローろ過方式か、原水を循環させることなく全量ろ過する全量ろ過方式によってろ過を行うことが可能となる。
【0035】
<温度応答性膜モジュールの第2実施形態>
図5は、本発明に係る温度応答性膜モジュールの第2実施形態を示している。
【0036】
同図に示すように、この温度応答性膜モジュールは、平面状に形成された温度応答性膜モジュールを複数積層して構成したものであり、同図(A)に示すように、原水が平板面からモジュール内に流入すると、同図(B)に示すように、膜内を通過して膜ろ過水(処理水)となる。この温度応答性膜モジュールは、原水が流入している槽(開放型または密閉型)に浸漬させた状態で使用することができる。
【0037】
このように、温度応答性膜モジュールの第1、第2実施形態によれば、温度応答性膜を円筒状または平面状に成形し、容器と充填一体化することによって、膜ろ過面積を増大させることができる。また、円筒状または平面状に成形し、温度応答性膜を原水が流入している槽(開放型または密閉型)に浸漬させることによって、システムが簡素で膜の交換が容易となり、膜供給水の濁度が高くても安定して運転することができる。
【0038】
なお、本発明では、温度応答性膜が平面状または円筒状に成形し、容器に充填一体化するようにしたが、これに限定されるものではない。一体化した形状の例としては、中空糸型、管状型、モノリス型、スパイラル型、プレートアンドフレーム型、振動円盤型、プリーツ型等、種々のものがあり、更にこれらの形状に限定されるものでもない。
【0039】
また、本発明では、温度応答性膜が平面状または円筒状に成形され、原水が流入している槽(開放型または密閉型)に浸漬されている。形状の例としては、中空糸型、管状型、プレートアンドフレーム型、回転式円盤型があるがこれらの形状に限定されるものではない。
【0040】
<膜ろ過システムの実施形態>
図6は本発明に係る膜ろ過システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【0041】
この膜ろ過システム100は、2基の温度応答性膜モジュールが並列配置された例を示しており、原水を導く導水ポンプ11と、導水ポンプ11によって導かれた原水を一時貯水する原水タンク12と、原水タンク12内の原水を各別も温度応答性膜モジュールに供給する原水ポンプ13−1,13−2と、各原水ポンプ13−1,13−2から導かれる原水の流量を測定する各別の流量計14−1,14−2と、原水ポンプ13−1,13−2によって導かれた原水を膜ろ過する温度応答性膜モジュール15−1,15−2と、温度応答性膜モジュール15−1,15−2で膜ろ過された処理水を貯水する処理水タンク16とを備えている。また、膜ろ過後の処理水の濁度を測定する濁度計17と、温度応答性膜モジュール15−1,15−2に各別に設けられ各温度応答性膜モジュールにおける流入側と排出側との差圧を測定する差圧計18−1,18−2とを備えている。さらに、原水タンク12の原水温度を測定する温度計19と、原水タンク12内の原水を所定温度に加熱するための加熱器20とを備えている。さらに、処理水タンク16内に貯水された処理水の一部を逆洗水として導入した貯水する逆洗水タンク21と、この逆洗水タンク21内の逆洗水の温度を測定する温度計26と、逆洗水タンク21内に貯水された逆洗水を所定温度に加熱する加熱器22と、逆洗水タンク21内の逆洗水を温度応答性膜モジュール15−1,15−2に供給する逆洗水ポンプと、温度応答性膜モジュール15−1,15−2に供給される逆洗水の流量を測定する流量計24とを備えている。加えて、洗浄時に加圧空気を供給するコンプレッサ25も備えている。なお、図中V1〜V22は各配管に設けられた弁を示す。
【0042】
(ろ過時)
図6に示す膜ろ過システム100において、原水は導水ポンプ11によって原水タンク12へ導かれている。各原水ポンプ13−1,13−2によってそれぞれの温度応答性膜モジュール15−1,15−2へ原水が導入され、温度応答性膜モジュール15−1,15−2を透過した処理水は処理水タンク16へ流入される。
【0043】
(洗浄時)
このような膜ろ過システム100では、継続的に原水を通水することによって、膜面などに原水中の固形分3が堆積してろ過抵抗が増加し、膜差圧が高くなるため、予め設定された周期、あるいは膜が所定の差圧上昇を示した時点で、ろ過された処理水を処理水側から流す、あるいはコンプレッサ25による圧縮空気を原水側から送る物理洗浄を行い、膜表面あるいは膜内部の付着物のうち、可逆的なものを取り除く。
【0044】
さらに、膜表面や内部には、このような物理洗浄で除去できない付着物が徐々に蓄積するため、膜差圧が予め設定されている上限値を越えた時点で、膜ろ過処理を停止して薬品洗浄を行い、物理洗浄で除去できなかった付着物を除去する。
【0045】
本発明では、このような物理洗浄や薬品洗浄に加え、加熱した原水および処理水により温水洗浄を行うものである。
【0046】
温水洗浄は、物理洗浄および薬品洗浄と同様にあらかじめ設定した周期、あるいは、あらかじめ設定した膜差圧に達した時点で実施する。
【0047】
原水および処理水を加熱する方法としては、原水タンク12や処理水タンク16に加熱器20,22を設置して行っている。加熱器20では、原水を25〜60℃に加温して温度応答性膜モジュール15−1,15−2に供給する。
【0048】
一方、温度応答性膜モジュール15−1,15−2の逆洗時には処理水を加熱器22によって25〜60℃に加温して温度応答性膜モジュール15−1,15−2に供給する。洗浄後の水は系外に排出される。
【0049】
この際、温度計19によって原水の温度が測定され、流量計14−1,14−2によって温度応答性膜モジュール15−1,15−2に供給される原水の流量が測定される。また、差圧計18−1,18−2によって温度応答性膜モジュール15−1,15−2の差圧が測定され、また濁度計17によって処理水の濁度が測定される。
【0050】
この実施形態によれば、物理洗浄、薬品洗浄の間隔を長くすることで、物理洗浄、薬品洗浄、膜交換にかかる費用を抑制することができる。また、薬品洗浄を実施した際の廃液処理が縮小できるため、費用面だけでなく環境負荷の低減も図ることができる。
【0051】
なお、この実施形態では、逆洗水タンク21に加熱器22を設置して洗浄に必要な量だけを加熱することができるように構成している。加熱器22は、逆洗水タンク21以外にも処理水タンク20に設置しても良い。このように処理水タンク20または逆洗水タンク21に加熱器22を設置する場合は、後述する物理洗浄と同じ作用により実施することができ、頻度は膜面の汚れ具合により決定する。
【0052】
また、原水または処理水を加熱する方法としては、例えば、複数の温度応答性膜から構成された膜束を容器内に配置した温度応答性膜モジュール15−1,15−2と、温度応答性膜モジュール15−1,15−2の原水側と原水循環管を介して連結された加熱器とを備える構成でも良い。具体的な構成を図16に示す。なお、温度応答性膜モジュール15−1と温度応答性膜モジュール15−2は同一構成であり、またその作用・効果も同じであるため、以下、図16の説明においては、温度応答性膜モジュール15−1を中心に説明する。
【0053】
図16に示す膜ろ過システム100では、温度応答性膜モジュール15−1(15−2)が容器101−1(101−2)内に配置された構成となっている。温度応答性膜モジュール15−1(15−2)は、複数の温度応答性膜を束ねて成る温度応答性膜束102で構成されており、温度応答性膜モジュール15−1(15−2)の後述する原水側103−1(103−2)と原水循環管104−1(104−2)を介して連結された加熱器105−1(105−2)を備えている。
【0054】
また、この図に示す温度応答性膜モジュール15−1(15−2)は、ポッティング剤から成る固定部材106−1(106−2)によって、各膜の外表面側と接し且つ原水を供給する原水口を有する原水側103−1(103−2)と、各中空糸膜の内表面側とそれぞれの開口端を介して連通し且つ処理水を取り出す処理水口を有する処理水側107−1(107−2)とに区分けされており、原水側103−1(103−2)と処理水側107−1(107−2)との間での物質移動は温度応答性膜の膜面のみを介して行われる。なお、原水側103−1(103−2)には、その下方にコンプレッサ25と連通し圧縮空気を放出する空気放出管108−1(108−2)(第1空気供給系統)が設けられている。
【0055】
温度応答性膜束102は、複数の温度応答性膜をU字状に折り曲げて一方の側(図16では上方側)に各端部を集束させるように束ねたものであり、各温度応答性膜の内表面側と連通する開口端は固定部材106−1(106−2)により支持固定されている。なお、この温度応答性膜の固定方法は、特に限定されるものではない。
【0056】
加熱器105−1(105−2)は、原水側103−1(103−2)と連結するように設けられており、温度応答性膜モジュール15−1(15−2)内の膜外表面側と接する原水を25〜60℃に加温する。すなわち、加熱器105−1(105−2)には、第2空気配管109(第2空気供給系統)を介してコンプレッサ25から圧縮空気が送られている。これによって、原水循環管104−1(104−2)を介して送られた温度応答性膜モジュール15−1(15−2)内の原水を加熱器105−1(105−2)で25〜60℃に加温し、矢印で示す方向に循環させて該モジュール15−1(15−2)の原水を25〜60℃に制御する。
【0057】
なお、加熱器に供給された余剰な圧縮空気は、空気排出ライン116−1(116−2)へ排出される。
【0058】
次に、本実施形態における温度応答性膜モジュールを用いた膜ろ過システム100の使用方法の一例を示す。
【0059】
まず温度応答性膜を装填した温度応答性膜モジュール15−1(15−2)を用いて、原水をろ過処理する。原水の供給は、原水移送ポンプ110を駆動源としている。この原水移送ポンプ110によって原水を原水管111を介して圧送し、温度応答性膜の外表面側から内表面側に流すことにより、原水中の固形分が温度応答性膜の外表面側で捕捉される。温度応答性膜で処理された処理水は処理水管112へ送られる。温度応答性膜の膜面差圧が初期圧より、例えば50kPa程度上昇した時点で、ろ過処理を停止する。
【0060】
なお、図16に示す膜ろ過システム100においては、以下の手順により、膜面に捕捉され堆積した固形分の洗浄除去を行う。第2空気配管109を介してコンプレッサ25から送られた圧縮空気を加熱器105−1(105−2)に供給することによって、原水循環管104−1(104−2)を介して原水側103−1(103−2)から供給された原水を加熱器105−1(105−2)で25〜60℃に温めた後、原水側103−1(103−2)に送る。これを繰り返し行い、原水を加熱循環させて水温を25〜60℃に制御する。
【0061】
次に、第1空気配管113を介して空気放出管108−1(108−2)から圧縮空気を放出し、温度応答性膜の外表面に堆積、付着している固形分を振動剥離する。これと同時に、逆圧洗浄手段として第3空気配管114を介してコンプレッサ25から供給される圧縮空気(例えば300kPa)によって、処理水側103−1(103−2)に滞留する処理水をろ過運転時とは逆方向の原水側107−1(107−2)に流し込み、各温度応答性膜の内表面側から外表面側に逆洗する。処理水側107−1(107−2)の処理水が、原水側103−1(103−2)に混入するため一時液温が25℃未満に低下するが、第2空気配管109を介して圧縮空気を加熱器105−1(105−2)に供給し、原水側103−1(103−2)を加熱循環させることで25〜60℃まで上昇させる。なお、逆洗時に供給された余剰な圧縮空気は、空気排出ライン115−1(115−2)へ排出される。
【0062】
ここで、主として水道用の膜ろ過システム100で実施する温度応答性膜モジュール15−1,15−2の物理洗浄と薬品洗浄について補足説明する。
【0063】
[膜モジュールの物理洗浄]
運転時間の経過とともに膜に付着した物質は、下記のいずれか、および併用による物理洗浄により除去することができる。
【0064】
逆圧洗浄、逆圧空気洗浄、エアスクラビング、原水または空気フラッシュ洗浄、機械的振動、機械的回転、超音波洗浄、熱水洗浄、スポンジボール洗浄、薬品注入洗浄、オゾン注入洗浄。原水水質に応じて10〜120分に一回定期的に実施する。洗浄時間は、逆圧水洗浄が1分以内、エアスクラビングが数分以内、逆圧空気洗浄は数秒である。
【0065】
[膜モジュールの薬品洗浄]
物理洗浄で除去できない膜への付着物質は、下記のいずれか、および併用による薬品洗浄により除去することができる。次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、アルカリ洗剤や酸洗剤等の界面活性剤、塩酸や硫酸等の無機酸、シュウ酸やクエン酸等の有機酸。洗浄方式は、膜モジュールをシステムから切り離すことなく洗浄を行うオンライン方式と、システムから切り離して洗浄を行うオフライン方式がある。薬品洗浄は、定流量制御の場合は膜差圧(100〜200kpa)が、定圧制御の場合はろ過流束が所定の値になった時点で実施し、概ね1〜数ヶ月の頻度で行う。
【0066】
<膜ろ過システムの他の実施形態>
図7は本発明に係る膜ろ過システムの他の実施形態を示している。
【0067】
この実施形態では、原水タンク12と温度応答性膜モジュール15−1,15−2の間に前処理設備31を設けたことを特徴としている。前処理設備31は、夾雑物除去設備、凝集剤注入設備、凝集沈殿設備、凝集砂ろ過設備、凝集沈殿砂ろ過設備、塩素注入設備、エアレーション設備、生物処理設備、粉末活性炭設備、粒状活性炭設備、オゾン発生設備およびこれらの併用により温度応答性膜モジュール15−1,15−2への供給する原水を前処理することができる。
【0068】
前処理設備31における共通の効果は、温度応答性膜モジュール15−1,15−2の性能を水量および水質の両面において、最も効率よく、かつ安定して発揮させることができるとともに、膜供給水中の懸濁物質による膜の損傷や閉塞等のトラブルを防止することができる。
【0069】
<膜ろ過システムの更に他の実施形態>
図8は本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示している。
【0070】
この実施形態では、膜ろ過システム100と同一系内もしくは系外に、排水処理設備32を備えることを特徴としている。
【0071】
排水処理設備32は、凝集剤注入設備、凝集沈殿設備、凝集砂ろ過設備、凝集沈殿砂ろ過設備、濃縮設備、脱水設備、乾燥設備、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、UV照射設備、pH調整設備、嫌気性消化設備、およびこれらの併用により構成されるが、これらのうち、たとえば乾燥設備や嫌気性消化設備から排出される熱を利用して、原水および処理水の加熱を行う。
【0072】
この実施形態によれば、膜ろ過システム100内外にある熱源を有効利用することによって、原水および処理水を加温するためのエネルギーを削減することができる。
【0073】
<膜ろ過システムの更に他の実施形態>
図9は本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示している。
【0074】
この実施形態では、膜ろ過システム100から排出される洗浄水を冷却する熱交換器33を備えたことを特徴としている。
【0075】
地方自治体の条例では、水質汚濁防止法に基づく上乗せ基準を設定することがある。たとえば東京都環境局では、公共用水域に排出される水は40℃以下と規定されている。こうした基準を遵守するため、温水で洗浄した後の洗浄水を熱交換器33で冷却するとともに、回収した熱により原水および処理水を加温する。
【0076】
この実施形態によれば、膜ろ過システム100内外にある熱源を有効利用することによって、原水および処理水を加温するためのエネルギーを削減することができる。
【0077】
<膜ろ過システムの更に他の実施形態>
図10は本発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示している。
【0078】
この実施形態では、膜ろ過システム100の膜差圧、水量(原水、処理水、洗浄水)、水温、濁度を連続的に監視制御する監視制御装置41と、膜の完全性を確認する膜破断検知装置42とを備えたことを特徴としている。特に、濁度計17で検出される濁度は、特にクリプトスポリジウムやジアルジア等の原虫類を監視するための重要な指標であり、レーザー濁度計、透過光式濁度計により常時監視することが望ましい。
【0079】
本実施形態における膜ろ過システム100は、運転時間の経過とともに原水中の微粒子・濁質によって膜の閉塞が進行するので、膜差圧や水量を監視する必要がある。監視制御装置41は、膜ろ過システム100の機器を制御するための設備であり、膜差圧、水量(原水、処理水、洗浄水)、水温、濁度に関する計測信号が入力されると、入力された計測信号に基づき機器を制御するための制御信号を出力する。また、破断検知装置42は、温度応答性膜モジュール15−1,15−2が破断したことを検知し、破断が検知された温度応答性膜モジュール15−1,15−2の運転を一時的に停止する。膜の破断はレーザー濁度計、透過光式濁度計により、処理水の濁度を常時監視することで検出するとともに、より高感度の検出方法である拡散空気方式によって1日1回実施することが望ましい。
【0080】
この実施形態によれば、膜ろ過システム100を連続的に監視制御することによって、機器を効率的に運転するとともに、膜の破断による病原性微生物等の漏洩リスクを低減することができる。
【0081】
<膜ろ過システムの更に他の実施形態>
原水および処理水を加温する方法は、図11、図12、図13の形態を用いて実施することもできる。
【0082】
図11に示す実施形態では、原水は温度応答性膜モジュール15−1,15−2に導入される直前の配管で加温するための加熱器50−1,50−2と、処理水を温度応答性膜モジュール15−1,15−2に導入される直前の配管で加温するための加熱器51−1,51−2を備えている。
【0083】
加熱器50−1,50−2によって原水を加温しながら温度応答性膜モジュール15−1,15−2内に導入し、温度応答性膜モジュール15−1,15−2内の温度が25〜60℃になった時点で原水ポンプ13−1,13−2を停止する。次に、逆洗水ポンプ23により加熱器51−1,51−2で加温した処理水を温度応答性膜モジュール15−1,15−2に導入することによって洗浄を行う。
【0084】
なお、原水側の加熱器50−1,50−2か、処理水側の加熱器51−1,51−2のどちらか一方を省略することもできる。原水側の加熱器50−1,50−2を省略した場合の作用・効果は図6に示した実施形態と同様である。一方、処理水側の加熱器51−1,51−2を省略した場合には、逆洗時に、常温の処理水を温度応答性膜モジュール15−1,15−2内に導入することによって、温度応答性膜モジュール15−1,15−2内の温度が25℃以下に低下した時点で洗浄効果が低下するが、設備が簡素化し、コスト面で有利な構成となる。
【0085】
図12に示す実施形態では、膜ろ過システム100は、原水ポンプ13−1,13−2の前段に洗浄水タンク60と、タンク60内の洗浄水を加温する加熱器61とを備えることを特徴としている。
【0086】
原水を加温する際には、原水タンク12の出口のバルブV3を閉め、原水ポンプ13−1,13−2により温度応答性膜モジュール15−1,15−2内に加温した洗浄水を導入し、温度応答性膜モジュール15−1,15−2と洗浄水タンク60の間で温水を循環させる。温度応答性膜モジュール15−1,15−2内の温度が25〜60℃になった時点で導水ポンプ11を停止する。次に逆洗水ポンプ23からの水により加熱器22で加温した処理水を温度応答性膜モジュール15−1,15−2に導入することによって逆洗を行う。原水側の加熱器61か処理水側の加熱器22のどちらか一方を省略することもできる。原水側の加熱器22を省略した場合の作用・効果は図6と同様である。処理水側の加熱器22を省略した場合には、逆洗時に、常温の処理水を温度応答性膜モジュール15−1,15−2内に導入することによって、温度応答性膜モジュール15−1,15−2内の温度が25℃以下に低下した時点で洗浄効果が低下するが、設備が簡素化し、コスト面で有利な構成となる。
【0087】
図13に示す実施形態では、原水ポンプ13−1,13−2と温度応答性膜モジュール15−1,15−2の間に洗浄水タンク70を備えたことを特徴としている。
【0088】
この場合、原水ポンプ13−1,13−2を停止せず、60〜100℃に加温した洗浄水を温水ポンプ72で押し込みながら温度応答性膜モジュール15−1,15−2に原水を供給することで温度応答性膜モジュール15−1,15−2内を25〜60℃に加温する。洗浄水タンク70からの洗浄水の導入位置は、原水ポンプ13−1,13−2の前段であってもかまわない。原水側の加熱器71か処理水側の加熱器22のどちらか一方を省略することもできる。原水側の加熱器71を省略した場合の作用・効果は図6と同様である。一方、処理水側の加熱器22を省略した場合には、逆洗時に、常温の処理水を温度応答性膜モジュール15−1,15−2内に導入することによって、温度応答性膜モジュール15−1,15−2内の温度が25℃以下に低下した時点で洗浄効果が低下するが、設備が簡素化し、コスト面で有利な構成となる。
【0089】
なお、上述した各実施形態では、2基の温度応答性膜モジュール15−1,15−2を使用する構成であるが、3基以上のモジュールを直列または並列に配置する構成であっても良い。
【0090】
このように構成することにより、より大きなろ過処理量に対応することができる。
【0091】
<膜ろ過システムの更に他の実施形態>
図14は発明に係る膜ろ過システムの更に他の実施形態を示している。
【0092】
この実施形態では、温度応答性膜を原水が流入している槽(開放型または密閉型)に浸漬させた構成を示している。
【0093】
同図に示すように、原水ポンプ81によって導水された原水をろ過する膜浸漬槽82と、この膜浸漬槽82内に浸漬された温度応答性膜モジュール83とを備え、膜ろ過後の処理水は、槽外に配置された吸引ポンプ84によって処理水タンク16内に吸引される。この場合、原水は、水位差方式または吸引方式、およびこれらの併用により生じる膜差圧により、温度応答性膜を透過する。
【0094】
また、膜浸漬槽82内の原水を加熱する加熱器85と、膜浸漬槽82に導入される原水自体を加熱する加熱器20,87と、逆洗時に逆洗水を加熱する加熱器22、86、88とを備えている。
【0095】
そして、洗浄時には、加熱器20,85,87のいずれか、またはそれらの組み合わせによって膜浸漬槽82内の原水温度を加温した後、逆洗水ポンプ23から供給される逆洗水を加熱器22,86,88のいずれかまたはそれらの組み合わせで25〜60℃に加温して温度応答性膜モジュール83に供給して洗浄処理を実行する。すなわち、原水側での加熱は、加熱器20,87,85のいずれかあるいはそれらの組み合わせで行い、処理水側での加熱は加熱器22,86,88のいずれかあるいはそれらの組み合わせで行う。
【0096】
このように、温度応答性膜から構成された温度応答性膜モジュール83を原水が流入している膜浸漬槽82に浸漬させることによって、簡素なシステムを構成でき、また膜の交換が容易となり、膜供給水の濁度が高い場合にあっても安定した運転を実行することができる。
【0097】
なお、図14においては、原水側での加熱は、加熱器20,87,85で構成し、処理水側での加熱は加熱器22,86,88で構成するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、原水側では原水タンク12内の原水を加熱する加熱器20、原水タンク12から膜浸漬槽82に供給される原水を加熱する加熱器87、または膜浸漬槽内の原水を加熱する加熱器85の少なくともいずれかを備える構成であれば良い。また、処理水側では、逆洗水タンク22内の処理水を加熱する加熱器22、処理水タンク16内の処理水を加熱する加熱器86、または膜浸漬槽82に供給される処理水を加熱する加熱器88の少なくともいずれかを備える構成であれば良い。
【0098】
<膜ろ過システムの更に他の実施形態>
図15は、温度制御装置を備えた膜ろ過システムの構成を示している。
【0099】
この実施形態では、温度制御装置90を設け、原水の温度に応じて加熱器22の温度を制御するようにしたものである。
【0100】
温度制御装置90は、温度測定値と温度目標値とから今回温度目標値を演算する温度演算部91と、演算された今回目標値に基づいて加熱器22の温度制御を実行する温度制御部92とを備えている。また、原水タンク12の原水温度を測定する温度計93と、逆洗水の温度を測定する温度計94とを備えている。
【0101】
上記の構成において、温度計93により原水タンク12内の原水の温度が計測され、その温度計測値Tが温度演算部91に供給されている。一方、逆洗時において、温度計94により配管を流れる逆洗水の温度が計測され、その温度計測値Tが温度演算部91に供給されている。温度演算部91は、温度目標値TSVと、温度計測値T,TとからT<Tとなるように今回操作量TMVを演算する。
【0102】
具体的には、温度制御装置90は、下記に示したPID制御によって、加熱器22を制御して逆洗水タンク21内の温度を調節する。
【0103】
〔数1〕
<T
MV=TMV(n−1)+ΔTMV
ΔTMV=Kp{(e−en−1)+eΔt/Ti
+Td(e−2en−1−en−2)/Δt}
=TSV−T(n)
ここで、TSV:温度目標値
MV:今回操作量
MV(n−1):前回操作量
ΔTMV:今回操作量差分
(n):今回制御周期の逆洗水の温度
:今回制御周期の入力偏差
n−1:前回制御周期の入力偏差
n−2:前々回制御周期の入力偏差
Kp:比例ゲイン
Ti:積分時間
Td:微分時間
このように、この実施形態では、温度制御装置90によって加熱器22の温度制御を実行することで、緻密な温度管理の下で逆洗処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0104】
1…膜基体
2…孔径調整材
3…固形分
11…導水ポンプ
12…原水タンク
13−1,13−2…原水ポンプ
14−1,14−2…流量計
15−1,15−2…温度応答性膜モジュール
16…処理水タンク
17…濁度計
18−1, 18−2…差圧計
19,26…温度計
20…加熱器
21…逆洗水タンク
22…加熱器
23…逆洗水ポンプ
24…流量計
25…コンプレッサ
31…前処理設備
32…排水処理設備
33…熱交換器
41…監視制御装置
42…膜破断検知装置
50−1,50−2,51−1,51−2…加熱器
60…洗浄水タンク
61…加熱器
70…洗浄水タンク
71…加熱器
72…温水ポンプ
81…原水ポンプ
82…膜浸漬槽
83…温度応答性膜モジュール
84…吸引ポンプ
85,86,87,88…加熱器
90…温度制御装置
91…温度演算部
92…温度制御部
93,94…温度計
100…膜ろ過システム
V1〜V21,V31〜V40…弁
101−1,101−2…容器
102−1,102−2…温度応答性膜束
103−1,103−2…原水口を有する原水側
104−1,104−2…原水循環管
105−1,105−2…加熱器
106−1,106−2…固定部材
107−1,107−2…処理水口を有する処理水側
108−1,108−2…空気放出管
109…第2空気配管
110…原水移送ポンプ
111…原水管
112…処理水管
113…第1空気配管
114…第3空気配管
115−1, 115−2…空気排出ライン
116−1, 116−2…空気排出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料からなる膜基体と、
前記膜基体の外表面側に所定の温度で可逆的に膨張/収縮する高分子材料を付加した孔径調整材とから成り、
前記膜基体に形成される孔は、25〜60℃における最大孔径が100μm以下であり、かつ
前記高分子材料は、少なくとも以下の(1)〜(7)の中から選択された一の材料から成ることを特徴とする温度応答性膜。
(1)N−イソプロピルアクリルアミドに、アクリル酸、2-カルボキシイソプロピルアクリルアミド、3-カルボキシ-n-プロピルアクリルアミドを共重合した高分子、
(2)N−ビニルイソ酪酸アミド系重合体、
(3)ポリ−N−アルキルアクリルアミド誘導体、
(4)ポリイソプロピルアクリルアミドに代表されるポリアクリルアミド誘導体とポリビニル誘導体との共重合体、
(5)N−ビニルイソ酪酸アミドなどのN−ビニルC3−9アシルアミドと、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルC1−3アシルアミドとの共重合体、
(6)ポリアクリルアミド誘導体及びポリ−N−ビニルアシルアミド、
(7)N−イソプロピルアクリルアミドで構成された単量体の重合体、及びN−ビニルイソ酪酸アミドで構成された単量体の重合体。
【請求項2】
請求項1に記載の温度応答性膜を平面状または円筒状に成型し、容器に充填して一体化したことを特徴とする温度応答性膜モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の温度応答性膜を複数、平面状または円筒状に成型し、原水が流入している槽に浸漬させることを特徴とする温度応答性膜モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の温度応答性膜を平面状または円筒状に成型し、容器に充填して一体化して成り、供給された原水を膜ろ過し、処理水として排出する温度応答性膜モジュールを備えたことを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項5】
請求項1に記載の温度応答性膜を複数、平面状または円筒状に成型し、原水が流入している槽に浸漬させて成り、供給された原水を膜ろ過し、処理水として排出する温度応答性膜モジュールを備えたことを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の膜ろ過システムにおいて、
前記温度応答性膜モジュールを複数台、直列または並列に備えることを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の膜ろ過システムにおいて、
前記原水または処理水の全部または一部を温度応答性膜モジュールに供給して洗浄処理を実行する洗浄手段を備えたことを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項8】
前記洗浄手段は、物理洗浄、薬品洗浄、または温水による洗浄の少なくとも何れか、若しくはこれらを組合せて行われることを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項9】
請求項4乃至8のいずれか1項に記載の膜ろ過システムにおいて、
前記原水を25〜60℃に加温する第1の加熱手段を設け、膜洗浄時において、加温された原水による温水洗浄を行うことを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項10】
請求項4乃至9のいずれか1項に記載の膜ろ過システムにおいて、
前記処理水を25〜60℃に加温する第2の加熱手段を設け、膜洗浄時において、加温された処理水による温水洗浄を行うことを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項11】
請求項9または10に記載の膜ろ過システムにおいて、
前記第1の加熱手段または第2の加熱手段における加熱には、同一系内もしくは系外に設けられた排水処理設備の熱源を利用することを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項12】
請求項4乃至11のいずれか1項に記載の膜ろ過システムにおいて、
前記温度応答性膜モジュールの前段に前処理設備を具備することを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項13】
請求項12に記載の膜ろ過システムにおいて、
前処理設備は、夾雑物除去設備、凝集剤注入設備、凝集沈殿設備、凝集砂ろ過設備、凝集沈殿砂ろ過設備、塩素注入設備、エアレーション設備、浮上分離設備、生物処理設備、粉末活性炭設備、オゾン発生設備、粒状活性炭設備のいずれか、またはこれら設備の併用により原水に対する前処理を実行することを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項14】
請求項4乃至13のいずれか1項に記載の膜ろ過システムにおいて、
前記温度応答性膜モジュールから排出される温排水を冷却する熱交換器を備えたことを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項15】
請求項5乃至14のいずれか1項に記載の膜ろ過システムにおいて、
膜差圧、水量(原水、処理水、洗浄水)、水温、濁度、を連続的に監視制御する圧力計、流量計、水温計、濁度計を具備するとともに、膜の完全性を確認する膜破断検知手段を備えたことを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項16】
請求項4乃至14のいずれか1項に記載の膜ろ過システムにおいて、
原水の温度を測定する原水温度測定手段と、
逆洗水の温度を測定する逆洗水温度測定手段と、
原水の温度計測値と、逆洗水の温度計測値を入力し、原水の温度よりも逆洗水の温度の方が大きくなるように、逆洗水の温度目標値を演算する温度演算手段と、
演算された温度目標値に基づいて前記第2の加熱手段の加温制御を実行する温度制御手段と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−152544(P2011−152544A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102801(P2011−102801)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2005−324151(P2005−324151)の分割
【原出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】