説明

温度検出装置及びバッテリパック

【課題】バッテリパック内の温度を検出するにあたり、サーミスタ等の専用の温度検出素子を用いた方法とは別の温度検出方法にて温度を検出できるようにする。
【解決手段】バッテリパックのマイコンは、電圧検出ICからのリセットパルスのパルス幅Wpを測定し(S110)、そのリセットパルス幅WpからIC温度Tcを演算する(S120)。続いて、サーミスタ3からのサーミスタ検出電圧Vtを取得し(S130)、そのサーミスタ検出電圧Vtからサーミスタ検出温度Ttを演算する(S140)。そして、IC温度Tcに基づいて、サーミスタ検出温度Ttとして想定される温度範囲の最大値Tt_max及び最小値Tt_minをそれぞれ演算し(S150)、サーミスタ検出温度Ttが最大値Tt_max以上か(S160:NO)、又は最小値Tt_min以下ならば(S170:NO)、サーミスタ3が異常と判断する(S190)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパック内の温度を検出する温度検出装置、及びその温度検出装置を搭載したバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばリチウムイオン二次電池などの繰り返し充電可能なバッテリを用いた電動工具用バッテリパック(以下単に「バッテリパック」という)としては、バッテリパック内の温度を検出する必要性から、サーミスタ等の温度検出素子を備えたものが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
バッテリパック内における主たる温度検出対象はバッテリであるが、例えばバッテリの充放電を制御する制御回路の温度など、バッテリ以外の温度を検出する必要性も考えられる。また、特許文献2に記載されているように、バッテリの温度を検出するために複数のサーミスタを用いるケースも考えられる。つまり、バッテリパックの構成や機能によっては、バッテリパック内に複数のサーミスタを備えるようにすることも十分に考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−278878号公報
【特許文献2】特開2001−211559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、サーミスタは電子部品(素子)であるため、それ自体である程度の物理的大きさを有し、また当然ながらサーミスタと制御回路とを接続するためのリード線も必要となる。そのため、サーミスタを用いると、その分、バッテリパックの大型化やコストアップは避けられず、サーミスタの数が多いほどその影響は大きくなる。
【0006】
そのため、サーミスタ等の温度検出素子による温度検出方法とは異なる、より簡素且つ安価な方法にて、バッテリパック内の温度を検出できるようにすることで、サーミスタの使用を最小限に留める(或いはサーミスタを不要とする)ことが望まれている。
【0007】
具体的には、例えばバッテリ温度を検出する場合においては、サーミスタに代えてより簡素且つ安価な方法でバッテリ温度を検出することで、バッテリパック全体の構成簡素化・コストダウンを図りたいという要望がある。
【0008】
また、例えば、バッテリの温度と制御回路の温度をそれぞれ個別に検出したい場合や、複数ブロックからなるバッテリ温度をブロックごとに個別に検出したい場合などのように、温度検出を複数箇所で個別に行う必要がある場合においては、それら複数箇所のうち一部又は全てを、サーミスタに代えてより簡素且つ安価な方法でバッテリ温度を検出することで、バッテリパック全体の構成簡素化・コストダウンを図りたいという要望もある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、バッテリパック内の温度を検出するにあたり、サーミスタ等の専用の温度検出素子を用いた方法とは別の温度検出方法にて温度を検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1の局面は、電動工具本体に電力を供給するバッテリパック内に設けられてそのバッテリパック内の温度を検出する温度検出装置であって、所定のタイミングで出力レベルが変化するような出力信号を出力する機能を有し、自身の温度に応じて上記タイミングが変化するよう構成された信号出力回路と、その信号出力回路からの出力信号の状態に基づいてバッテリパック内の温度を検出する第1温度検出手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された温度検出装置は、出力信号を出力する信号出力回路を備え、その出力信号は所定のタイミングで出力レベルが変化する。しかし、その出力レベルの変化タイミングは常に一定ではなく、信号出力回路の構成に起因して、温度に応じて変化する。
【0012】
そこで本発明では、温度に応じて出力レベル変化タイミングが変化するという出力信号の性質を利用して、第1温度検出手段が、その出力信号の状態に基づいてバッテリパック内の温度を検出する。
【0013】
従って、上記構成の温度検出装置によれば、サーミスタ等の専用の温度検出素子を用いた方法とは別の温度検出方法にて、バッテリパック内の温度を検出することができる。
バッテリパック内において複数箇所(例えば2箇所)で温度を検出する必要がある場合、上述した温度検出装置を複数(例えば2つ)個別に設けてそれぞれ温度を検出するようにしてもよいが、温度検出対象の数に対して信号出力回路の数が少なかったり、また信号出力回路を温度検出対象箇所の近傍に配置するのが困難であったりするなど、実際上は温度検出装置を複数設けることが困難な場合が想定される。
【0014】
そこで、本発明の温度検出装置は、第1温度検出手段に加えてさらに第2温度検出手段を備えたものとして構成するとよい。第2温度検出手段は、第1温度検出手段とは異なり、温度に応じた検出信号を出力する温度検出素子を有し、その温度検出素子からの検出信号に基づいてバッテリパック内の温度を検出するものである。
【0015】
このように構成された温度検出装置によれば、信号出力回路の特性(温度特性)を利用して温度を検出する第1温度検出手段、及び温度検出素子からの検出信号に基づいて温度を検出する第2温度検出手段の2つの温度検出手段を兼ね備えているため、バッテリパック全体の大型化・コストアップを抑えつつ、バッテリパック内の複数箇所の温度を検出することができる。
【0016】
第1温度検出手段により検出された温度である第1検出温度、及び第2温度検出手段により検出された温度である第2検出温度を具体的にどのように利用するかは種々考えられるが、例えば、各検出温度のうち少なくとも一方が、所定の温度上限値以上となったか、又はその温度上限値よりも低い所定の温度下限値以下となった場合に、バッテリパックに異常が生じていると判断する第1の異常判断手段を備えるようにするとよい。
【0017】
このように構成することで、例えばバッテリ温度が定格温度範囲を超えたり逆に下回ったりした場合にそれを検出して異常と判断したり、或いはバッテリ以外の他の回路等(上記信号出力回路等)の過熱を検出して異常と判断したりすることが可能となる。つまり、各検出温度に基づいてバッテリパック内の各部の異常を検出することが可能となる。
【0018】
また例えば、各検出温度の変化率のうち少なくとも一方が所定の変化率上限値以上となった場合に、バッテリパックに異常が生じていると判断する第2の異常判断手段を備えるようにしてもよい。
【0019】
温度の変化率が変化率上限値以上であるということは、何らかの異常によって温度が急激に上昇していることが予想される。そこで、温度が急上昇している場合にはそれを検出して異常と判断することで、バッテリパックを過熱から保護することが可能となる。
【0020】
第1温度検出手段及び第2温度検出手段を備えた温度検出装置においては、何らかの要因で、何れか一方の温度検出手段が正常に温度を検出できなくなるおそれがある。そこで、各検出温度に基づいて各温度検出手段の異常を検出できるようにしてもよい。具体的には、第1検出温度と第2検出温度とを比較して、両者の差が所定の検出温度差閾値以上の場合に、各温度検出手段のうち少なくとも一方に異常が生じていると判断する第3の異常判断手段を備えるようにする。
【0021】
このように構成された温度検出装置によれば、各温度検出手段の異常を、それぞれが検出する各検出温度の比較に基づいて容易且つ的確に判断することができる。
第3の異常判断手段による異常判断の具体的方法は種々考えられるが、例えば、第1検出温度と第2検出温度との差が検出温度差閾値以上の場合、第2温度検出手段に異常が生じていると判断するようにすることができる。
【0022】
このように構成された温度検出装置によれば、第2温度検出手段の異常を容易且つ的確に判断することができる。そのため、例えば、第1検出温度よりも第2検出温度の方がより重要性が高かったり、或いは、基本的には第2温度検出手段のみ備えれば十分であるもののその異常を検出する必要があるような場合に、特に有用である。
【0023】
上述した異常判断手段(第1〜第3の各異常判断手段の少なくとも一つ)を備えている温度検出装置においては、更に、バッテリパックを保護するための保護指令出力手段を備えるようにするとよい。保護指令出力手段は、上記異常検出手段により異常が生じていると判断された場合に、バッテリパックから放電が行われているならばその放電を制限又は停止させることによってバッテリパックを保護するための、バッテリパックへの充電が行われているならばその充電を制限又は停止させることによってバッテリパックを保護するための、保護指令を出力する。
【0024】
このように構成された温度検出装置によれば、放電中又は充電中に温度異常が生じた場合には放電又は充電を制限又は停止させるため、放電又は充電に伴う異常発生からバッテリパックを保護することが可能となる。
【0025】
第1温度検出手段が具体的にどのように温度を検出するかについては、信号出力回路からの出力信号に応じて適宜決めることができるが、例えば、信号出力回路が、出力信号として少なくとも所定のパルス信号を出力し、そのパルス信号のパルス幅が自身の温度に応じて変化するよう構成されている場合には、第1温度検出手段は、そのパルス信号のパルス幅に基づいてバッテリパック内の温度を検出するようにするとよい。
【0026】
このように構成された温度検出装置によれば、第1温度検出手段は、パルス信号のパルス幅に基づいて容易且つ確実に第1検出温度を検出することができる。
信号出力回路の具体的構成も種々考えられるが、例えば、所定周波数のクロック信号を出力するものであってそのクロック信号の周波数が温度に応じて変化するよう構成されたクロック生成回路を備え、そのクロック生成回路からのクロック信号に同期したタイミングで上記パルス信号を出力するよう構成することができる。
【0027】
クロック信号の周波数が温度に応じて変化すると、それによって上記パルス信号のレベル変化タイミング(即ちパルス幅)も温度に応じて変化する。そのため、クロック生成回路が上記のように温度に応じてクロック信号の周波数が変化するような構成である場合には、それを有効利用してバッテリパック内の温度を検出することができる。
【0028】
次に、本発明の第2の局面は、電動工具本体に電力を供給するバッテリパックであって、少なくとも一つのバッテリセルを有するバッテリと、上述した本発明の温度検出装置とを備えていることを特徴とする。
【0029】
このように構成されたバッテリパックによれば、内部に異常が生じてそれが温度の異常として現れた場合に、その異常を容易且つ的確に判断することができる。そのため、その判断結果に基づいて種々の保護動作を行うようにすることが可能となり、信頼性の高いバッテリパックを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態のバッテリパックを表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のAA断面図である。
【図2】実施形態のバッテリパックが電動工具本体に装着されてなる電動工具全体の電気的構成の概略を表す回路図である。
【図3】実施形態のバッテリパックが充電器に装着されてなる充電システム全体の電気的構成の概略を表す回路図である。
【図4】バッテリパック内の電圧検出ICが出力するバッテリ電圧検出信号に関し、その出力状態(パルス幅等)が温度に応じて変化することを説明するための説明図である。
【図5】(a)はリセットパルス幅温度特性を表す説明図、(b)はサーミスタ電圧温度特性を表す説明図である。
【図6】バッテリパックのマイコンが数値(AD値)として認識するダイオード電圧Vfが電源電圧Vddにより異なることを説明するための説明図である。
【図7】バッテリパック内のマイコンが実行するサーミスタ異常判定処理を表すフローチャートである。
【図8】IC温度Tcに基づいてサーミスタ検出温度Tcの許容範囲(最大値Tt_max及び最小値Tt_min)が設定されることを説明するための説明図である。
【図9】バッテリパック内のマイコンが実行するバッテリ温度異常判断処理を表すフローチャートである。
【図10】ダイオード電圧Vfの温度依存性を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明が適用された実施形態のバッテリパック1を表す図である。
本実施形態のバッテリパック1は、電動工具本体(以下単に「本体」ともいう)40(図1では図示略。図2参照。)に着脱可能であって、本体40に装着された状態で本体40へその動作用の直流電力を供給できるよう構成されている。また、バッテリパック1は、充電器50(図1では図示略。図3参照。)にも着脱可能であって、充電器50に装着された状態で充電器50による充電が可能に構成されている。
【0032】
バッテリパック1は、図1に示すように、その内部にバッテリ2及び制御基板10が設けられている。
バッテリ2は、複数(本実施形態では10個)のバッテリセル(以下単に「セル」という)21〜30により構成されている。具体的には、図2の回路図に示すように、2つのセルが並列接続されてなる一組のセル群が5つ直列に接続された、5直列2並列の構成となっている。各セル21〜30は、本実施形態では、単体で3.6Vの直流電圧を発生するリチウムイオン二次電池にて構成される。そのため、バッテリ2は、全体として18Vの直流電圧を発生する。
【0033】
制御基板10は、バッテリ2の上方に配置され、主にその表面側(バッテリ2に対向する面とは反対側)にバッテリ制御回路4(図2参照)が形成されている。そのため、制御基板10の表面側には、バッテリ制御回路4を構成するマイコン5や電圧検出IC6が搭載されている。
【0034】
更に、バッテリパック1は、サーミスタ3を備えている。本例では、サーミスタ3は、図1(b)に示すように、セル27の側面に接触した状態で配置されており、フレキシブル基板20を介して制御基板10と接続されている。そのため、サーミスタ3と制御基板10(バッテリ制御回路4)とを電気的に接続するための配線も、フレキシブル基板20内に形成されている。
【0035】
また、バッテリパック1は、その上部に、本体40や充電器50と電気的に接続するための、コネクタ部15が形成されている。このコネクタ部15には、バッテリパック1内のバッテリ2や制御基板10と接続するための電源端子部(正極側端子11、負極側端子12)及び接続端子部13が設けられている。
【0036】
このように構成されたバッテリパック1は、本体40に装着されることで、正極側端子11,負極側端子12,及び接続端子部13を介して、本体40の内部回路と電気的に接続され、本体40に直流電源を供給したり各種信号を送受したりすることができるようになる(図2参照)。また、バッテリパック1は、充電器50に装着されることで、正極側端子11,負極側端子12,及び接続端子部13を介して、充電器50の内部回路と電気的に接続され、充電器50から充電用の直流電力の供給を受けたり各種信号を送受したりすることができるようになる(図3参照)。
【0037】
バッテリパック1が本体40に接続されると、図2に示すように、双方が電気的にも接続される。図2に基づき、本体40の電気的構成及びバッテリパック1の電気的構成についてより具体的に説明する。
【0038】
まず、本体40の電気的構成について説明する。本実施形態の本体40は、いわゆるドライバドリルとして構成されたものであり、駆動モータM1によって図示しないドリルチャックが回転駆動される。
【0039】
本体40には、バッテリパック1の正極側端子11に接続される正極側端子31と、バッテリパック1の負極側端子12に接続される負極側端子32と、バッテリパック1の接続端子部13における信号端子13Aに接続される信号端子33とが備えられている。
【0040】
正極側端子31は、メインスイッチ36及び正極側電源ラインL2Aを介して、駆動モータM1の一端に接続されており、負極側端子32は、駆動モータM1への通電制御用のトランジスタQ3及び負極側電源ラインL2Bを介して、駆動モータM1の他端に接続されている。そして、メインスイッチ36がオン状態であるときに、トランジスタQ3がバッテリパック1からの入力信号によってオンされると、バッテリパック1から駆動モータM1への通電(直流電力供給)が行われて駆動モータM1が回転する。
【0041】
尚、駆動モータM1には、トランジスタQ3のターンオフ時に負極側電源ラインL2Bに発生した高電圧を正極側電源ラインL2Aに戻すためのダイオード(所謂フライホイールダイオード)D1が接続されている。また、トランジスタQ3には、Nチャネル型MOSFETが用いられている。
【0042】
本体40には、電動工具の使用者が駆動モータM1を駆動/停止させるためのトリガスイッチ(図示略)が設けられており、メインスイッチ36は、そのトリガスイッチと連動してオン・オフ状態が切り換えられる。即ち、トリガスイッチが引かれるとメインスイッチ36がオンし、トリガスイッチが放されるとメインスイッチ36がオフする。
【0043】
尚、本体40のグランドには、負極側端子32が接続されており、本体40にバッテリパック1が装着された際には、この負極側端子32を介して、バッテリパック1の負極側電源ラインL1B(延いてはバッテリ2の負極側端子2B)に接続される。また、メインスイッチ36がオン状態であるとき、正極側電源ラインL2Aには、正極側端子31を介して、バッテリパック1の正極側電源ラインL1A(延いてはバッテリ2の正極側端子2A)に接続される。
【0044】
また、本体40には、内部回路駆動用の電源電圧を生成する制御用電源回路34と、バッテリパック1との間で信号を入出力する入出力回路35とが備えられている。
制御用電源回路34は、メインスイッチ36がオンされているときに、正極側電源ラインL2Aから入力されたバッテリ電圧(本例では直流18V)を所定の一定電圧(例えば直流5V)に降圧し、それを本体40の内部回路を動作させるための電源電圧Vccとして、各種内部回路に供給する。
【0045】
入出力回路35は、トランジスタQ4と、抵抗R6,R7,R8,R9とを備える。トランジスタQ4は、NPN型バイポーラトランジスタにて構成されており、そのベースは、抵抗R7を介して、信号端子33に接続されるとともに、抵抗R8を介して、グランドに接地されている。
【0046】
信号端子33には、抵抗R6を介して電源電圧Vccが印加され、トランジスタQ4のコレクタにも、抵抗R9を介して電源電圧Vccが印加されている。また、トランジスタQ4のコレクタは、トランジスタQ3のゲートにも接続されており、トランジスタQ4のエミッタは、グランドに接地されている。
【0047】
抵抗R6,R7,R8の抵抗値は、メインスイッチ36がオンされてから電源電圧Vccが所定電圧に達したときにトランジスタQ4がオンし、信号端子33の電位が電源電圧Vcc近傍のハイレベルになるように設定されている。
【0048】
そして、トランジスタQ4がオン状態であるときには、トランジスタQ3のゲートがトランジスタQ4を介してグランドに接地されることから、トランジスタQ3はオフ状態となって、駆動モータM1への通電経路を遮断する。
【0049】
また、バッテリパック1内のバッテリ制御回路4の動作(詳しくは後述するトランジスタQ2のオン)により、信号端子33がグランドに接地されると、トランジスタQ4はオフ状態となる。そして、この状態では、抵抗R9を介してトランジスタQ3のゲートに電源電圧Vccが印加されることから、トランジスタQ3はオン状態となって、駆動モータM1への通電経路を形成する。
【0050】
次に、バッテリパック1の電気的構成について説明する。バッテリパック1には、既述の正極側端子11及び負極側端子12と、接続端子部13に設けられた4つの信号端子13A,13B,13C,13Dと、バッテリ2と、サーミスタ3と、バッテリ制御回路4とが備えられている。
【0051】
正極側端子11には、正極側電源ラインL1Aを介してバッテリ2の正極側端子2Aが接続され、負極側端子12には、負極側電源ラインL1Bを介してバッテリ2の負極側端子2Bが接続されている。
【0052】
尚、信号端子13B,13C,13Dは、バッテリパック1を充電器50に装着した際、充電器50の信号端子53A,53B,53Cに接続するためのものであり、バッテリパック1を本体40に装着した際には開放状態となる。
【0053】
バッテリ制御回路4は、主に、マイコン5と、電圧検出IC6と、電流測定回路7と、スイッチ操作検出回路8と、充電器検出回路9と、トランジスタQ2と、制御用電源回路16と、シャットダウンスイッチ17と、電圧検出用ダイオードD2を備えている。
【0054】
電流測定回路7は、正極側電源ラインL1A若しくは負極側電源ラインL1Bに流れる電流を検出するためのものであり、その電流に応じた電圧値を有する電流検出信号をマイコン5に出力する。
【0055】
電圧検出IC6は、バッテリ2を構成する5つのセル群の電圧V1,V2,V3,V4,V5を順番に測定し、その測定結果を含む所定のフォーマットのバッテリ電圧検出信号をマイコン5に周期的に出力する。電圧検出IC6にはバッテリ2のバッテリ電圧が入力され、その入力されたバッテリ電圧が内部のレギュレータ(図示略)により所定の電源電圧に降圧される。電圧検出IC6は、その降圧された電源電圧を電源として動作する。但し、このようにバッテリ電圧を内部レギュレータにて降圧して電源電圧を生成するという電源構成はあくまでも一例である。図4に、電圧検出IC6からマイコン5へ出力されるバッテリ電圧検出信号の波形を示す。
【0056】
図4に示すように、バッテリ電圧検出信号は、所定のパルス幅(リセットパルス幅Wp)のリセットパルスPと、そのリセットパルスPの出力後の所定タイミングで順次出力されるセル電圧信号とにより構成される。
【0057】
電圧検出IC6からマイコン5に対しては、通常時(信号非出力時)はHレベル(ハイレベル。例えば電圧3.3V。)の電圧が出力される。そして、リセットパルスPは、リセットパルス幅Wpの間にLレベル(ローレベル。例えば電圧0V。)となるような二値信号である。一方、セル電圧信号は、二値信号ではなく、セル群毎にその電圧に対応したアナログの電圧信号であり、本例では、測定されたセル群の電圧値の1/2の電圧値をセル電圧信号として出力する。セル電圧信号は、セル21,22からなるセル群の電圧である第1セル電圧V1、セル23,24からなるセル群の電圧である第2セル電圧V2、セル25,26からなるセル群の電圧である第3セル電圧V3、セル27,28からなるセル群の電圧である第4セル電圧V4、セル29,30からなるセル群の電圧である第5セル電圧V5、という順番で順次出力される。
【0058】
また、電圧検出IC6は、クロック信号CKを生成する発振器18を備えており、バッテリ電圧検出信号の出力タイミング(リセットパルスPの立ち上がりタイミング、セル電圧信号の出力開始タイミングなど)は、そのクロック信号CKに同期して行われる。
【0059】
即ち、リセットパルス幅Wpは、本実施形態では、158クロック分(クロック信号CKの158周期分)に設定されている。また、リセットパルスPが出力されてからセル電圧信号が出力開始されるまでの時間間隔や、セル電圧信号を構成する各セル電圧V1〜V5の出力間隔も、クロック信号CKの数(クロック数)によって規定されている。そのため、クロック信号CKの周波数(クロック周波数)が仮に一定であるならば、リセットパルス幅Wpや、セル電圧信号の出力タイミング、各セル電圧V1〜V5の出力間隔は、常に一定となる。
【0060】
しかし、本実施形態の発振器18は、抵抗及びコンデンサを用いたいわゆるCR発振器として構成されているため、温度依存性が高く、バッテリパック1内の温度(具体的には電圧検出IC6の温度であり、より具体的には発振器18の温度)に応じてクロック周波数も変化する。具体的には、例えば温度が20℃のときはクロック周波数が10KHzであるが、温度が20℃よりも高くなるほどクロック周波数は大きくなり、逆に20℃より低くなるほどクロック周波数は小さくなる。
【0061】
そのため、図4に示すように、電圧検出IC6からマイコン5へ出力されるバッテリ電圧検出信号の波形も、温度が高いほど、全体として短い波形となる。例えばリセットパルスPに着目すると、本例では、温度が20℃と中程度のときは、図4(b)に示すようにリセットパルス幅Wpは約15.8msecである。これに対し、温度が例えば80℃と高温になると、クロック周波数の増大により、リセットパルス幅Wpは約13msecと短くなる。逆に、温度が例えば−30℃と低温になると、クロック周波数の減少により、リセットパルス幅Wpは約19msecと長くなる。
【0062】
リセットパルス幅Wpと温度との関係を示すリセットパルス幅温度特性の一例を、図5(a)に示す。図5(a)に示すように、温度上昇に対してリセットパルス幅Wpは略線形的に減少していく。
【0063】
そこで本実施形態では、マイコン5が、後述するように、電圧検出IC6からのリセットパルスPのリセットパルス幅Wpに基づいて温度を検出する。リセットパルス幅Wpに基づいて検出される温度は、直接的には発振器18の温度を示すものであると言え、より広く捉えれば電圧検出IC6の温度を示すものであるとも言え、更に広く捉えればバッテリパック1内の温度を示すものであるとも言える。そこで以下の説明では、リセットパルス幅Wpに基づいてマイコン5により検出される温度を、IC温度Tcと称する。
【0064】
サーミスタ3は、バッテリパック1内の温度のうち、特にバッテリ2の温度を検出するものであり、既述の通りバッテリ2内(詳しくはセル27の側面)に設けられている。サーミスタ3の一端はバッテリ制御回路4内においてグランドに接地され、サーミスタ3の他端はバッテリ制御回路4内のマイコンに接続されると共に抵抗R1を介して電源電圧Vddに接続されている。
【0065】
そのため、電源電圧Vddは、サーミスタ3と抵抗R1によって分圧され、その分圧値がサーミスタ検出電圧Vtとしてマイコン5へ入力される。サーミスタ3は、温度によって抵抗値が変化する周知の温度検出素子であり、本実施形態では、温度上昇に対して抵抗値が略線形的に減少するNTC(Negative Temperature Coefficient)タイプのものである。
【0066】
サーミスタ3からのサーミスタ検出電圧Vtと温度との関係を示すサーミスタ電圧温度特性の一例を、図5(b)に示す。マイコン5は、このサーミスタ電圧温度特性に基づき、サーミスタ検出電圧Vtに対応した温度を、サーミスタ検出温度Ttとして演算する。
【0067】
サーミスタ3により検出されるサーミスタ検出温度Ttは、直接的にはバッテリ2の温度を示すものであるが、より広く捉えればバッテリ2近傍の制御基板10の温度を間接的に示すものであるとも言え、更に広く捉えればバッテリパック1内の温度を示すものであるとも言える。
【0068】
スイッチ操作検出回路8は、本体40に設けられた図示しないトリガスイッチが使用者によって操作されたことを検出するためのものであり、トランジスタQ1と、抵抗R2,R3,R4とを備えている。トランジスタQ1は、NPN型バイポーラトランジスタにて構成されており、そのベースは、抵抗R2を介して、信号端子13Aに接続されるとともに、抵抗R3を介して、バッテリパック1におけるグランドに接地されている。また、トランジスタQ1のエミッタは、グランドに接地されている。
【0069】
なお、バッテリパック1のグランドは、負極側電源ラインL1Bに接続されている。このため、バッテリパック1が本体40に装着された際には、バッテリパック1と本体40のグランドが同電位となり、これら各グランドはバッテリ2の負極とも同電位になる。
【0070】
また、トランジスタQ1のコレクタは、マイコン5に接続されると共に、抵抗R4を介して、制御用電源回路16からの電源電圧Vddの出力経路に接続されている。
制御用電源回路16は、バッテリ2からのバッテリ電圧(18V)の供給又は充電器50からの電源電圧Vee(例えば、直流5V)の供給を受けて一定の電源電圧Vdd(例えば、直流3.3V)を生成し、バッテリ制御回路4を含む、バッテリパック1内の各種電子回路に電源供給を行うものであり、例えば、スイッチング電源回路等で構成されている。
【0071】
バッテリ2から制御用電源回路16への電源供給は、シャットダウンスイッチ17及び逆流防止用のダイオードD3を介して行われ、充電器50から制御用電源回路16への電源供給は、信号端子13C及び逆流防止用のダイオードD4を介して行われる。
【0072】
制御用電源回路16は、充電器50が接続されていないとき、即ち信号端子13Cを介して充電器50からの電源電圧Veeの供給が行われていないときは、バッテリ2の電圧を降圧して電源電圧Vddを生成する。一方、充電器50が接続されて充電器50から電源電圧Veeが供給されている間は、その電源電圧Veeを降圧して電源電圧Vddを生成する。
【0073】
シャットダウンスイッチ17は、通常はオンされている。そして、このシャットダウンスイッチ17がオフされるのは、バッテリ2の電圧が所定レベルよりも低下した過放電状態となったときである。
【0074】
即ち、バッテリ制御回路4では、マイコン5が、電圧検出IC6からのバッテリ電圧検出信号に基づいて、バッテリ2を構成する各セル群の電圧V1〜V5やバッテリ2全体の電圧を監視している。そして、各セル群の電圧V1〜V5のうち、電圧が所定のセル電圧閾値以下となったものが1つでもある場合、又はバッテリ2全体の電圧が所定のバッテリ電圧閾値以下となった場合に、過放電状態であると判断し、シャットダウンスイッチ17をオフさせる。
【0075】
シャットダウンスイッチ17がオフされると、バッテリ2からの電力が制御用電源回路16に供給されなくなり、これにより、制御用電源回路からの電源電圧Vddの出力が停止され、延いてはバッテリ制御回路4の動作が停止する。尚、一旦オフされたシャットダウンスイッチ17は、後述するようにバッテリパック1が充電器50に接続されることによって再びオンされる。
【0076】
トランジスタQ2は、Nチャネル型MOSFETにて構成されており、そのドレインは信号端子13Aに接続され、ソースはグランドに接地され、ゲートはマイコン5に接続されている。
【0077】
このため、トランジスタQ2は、マイコン5からの出力信号(後述する放電制御信号)にてオン・オフされ、トランジスタQ2のオフ時には、信号端子13Aが開放状態となる。
【0078】
従って、バッテリパック1が本体40に装着されて、トリガスイッチが操作された際(メインスイッチ36:オン)、トランジスタQ2がオフ状態であれば、本体40の信号端子33からバッテリパック1の信号端子13Aに、本体40内の電源電圧Vccに対応したハイレベルの信号が入力され、スイッチ操作検出回路8内のトランジスタQ1がオン状態となって、スイッチ操作検出回路8からマイコン5への入力信号はローレベルとなる。
【0079】
また、バッテリパック1が本体40に装着されても、トリガスイッチが操作されなければ(メインスイッチ36:オフ)、本体40の信号端子33はローレベル(グランド電位)となるため、スイッチ操作検出回路8内のトランジスタQ1はオフ状態となって、スイッチ操作検出回路8からマイコン5への入力信号はハイレベルとなる。
【0080】
充電器検出回路9は、バッテリパック1が充電器50に装着されて、充電器50から信号端子13Cにハイレベルの信号(本例では直流5Vの電源電圧Vee)が入力されたときに、その旨を表す検出信号を入力するものであり、スイッチ操作検出回路8と同様に構成されている。
【0081】
つまり、充電器検出回路9は、信号端子13Cが開放状態にあるときには、プルアップ抵抗(図示略)を介して、電源電圧Vddに対応したハイレベルの信号をマイコン5に入力し、充電器50から信号端子13Cにハイレベルの信号が入力されると、マイコン5への信号経路に接続されたトランジスタ(図示略)がオン状態となって、信号経路をグランドに接地し、マイコン5への出力をローレベルにする。
【0082】
このため、マイコン5側では、スイッチ操作検出回路8からの入力信号に基づき、バッテリパック1が装着された本体40側でトリガスイッチが操作されたことを検知でき、充電器検出回路9からの入力信号に基づき、バッテリパック1が充電器50に装着されたことを検知できる。 電圧検出用ダイオードD2は、アノードがマイコン5に接続され、カソードが信号端子13Dに接続されている。また、電圧検出用ダイオードD2のアノードは、プルアップ用の抵抗R5を介して電源電圧Vddにも接続されている。また、バッテリパック1が充電器50に接続されたとき、電圧検出用ダイオードD2のカソードは、図3に示すように、信号端子13D及び充電器50の信号端子53Cを介して、充電器50内のグランドに接地される。そのため、マイコン5には、電圧検出用ダイオードD2の順方向電圧(以下「ダイオード電圧」という)Vfが入力されることとなる。尚、バッテリパック1のグランドと充電器50のグランドとは、双方の負極側端子12,52を介して電気的に導通している。
【0083】
バッテリパック1が充電器50に接続されると、図3に示すように、双方が電気的にも接続される。充電器50は、図3に示すように、バッテリパック1の正極側端子11及び負極側端子12に接続するための正極側端子51及び負極側端子52と、バッテリパック1の信号端子13B,13Cに接続するための信号端子53A及び53Bを備えている。また、充電器50は、整流回路55、充電用スイッチング電源回路56、主制御ユニット(MCU)57、及び、制御用スイッチング電源回路58を備えている。
【0084】
整流回路55は、商用電源等の交流電源から供給される交流電圧を整流するものであり、その整流出力は、充電用スイッチング電源回路56及び制御用スイッチング電源回路58に出力される。
【0085】
充電用スイッチング電源回路56は、整流回路55からの出力に基づきバッテリ2への充電を行うスイッチング回路であり、MCU57により駆動制御される。
MCU57は、バッテリパック1内のマイコン5と同様、マイクロコンピュータにて構成されており、バッテリ制御回路4内のマイコン5から信号端子13B、53Aを介して制御信号(アナログの電圧信号)を取り込み、その制御信号に従って充電用スイッチング電源回路56を駆動制御することで、バッテリ2への充電パターン(充電電流、充電電圧等)を制御する。
【0086】
制御用スイッチング電源回路58は、MCU57等の内部回路を動作させるための電源電圧Vee(本例では既述の通り直流5V)を生成するものである。
充電器50のグランドは、負極側端子52、及び、バッテリパック1の負極側端子12を介して、バッテリ2の負極側端子2Bに接続され、充電用スイッチング電源回路56にて生成された充電電圧は、正極側端子51、及び、バッテリパック1の正極側端子11を介して、バッテリ2の正極側端子2Aに印加される。また、充電器50の信号端子53Bには、制御用スイッチング電源回路58にて生成された電源電圧Veeが印加される。
【0087】
このため、バッテリパック1が充電器50に装着されて、制御用スイッチング電源回路58にて電源電圧Veeが生成されると、バッテリパック1側では、この電源電圧Veeに対応したハイレベルの信号が、信号端子53B、13Cを介して、充電器検出回路9に入力され、充電器検出回路9からマイコン5に入力される検出信号の信号レベルが、ハイレベルからローレベルに変化することになる。
【0088】
次に、バッテリパック1内のマイコン5の動作について説明する。
マイコン5は、スイッチ操作検出回路8若しくは充電器検出回路9からの検出信号を監視する。そして、例えばバッテリパック1が本体40に装着されている場合に、本体40のトリガスイッチが操作されることによりスイッチ操作検出回路8からの検出信号がLレベルになった場合には、マイコン5は、放電制御信号をハイレベルにしてトランジスタQ2をオンさせることにより、バッテリ2から駆動モータM1への放電を許可する。つまり、トランジスタQ2がオン状態になると、本体40の入出力回路35内のトランジスタQ4がオフ状態となり、駆動モータM1への通電経路に設けられたトランジスタQ3がオン状態となるので、駆動モータM1に電流が流れ、駆動モータM1が回転する。
【0089】
また、このように放電制御信号をハイレベルにしてバッテリ2から駆動モータM1への放電を許可しているとき(つまりバッテリ2からの放電時)には、マイコン5は、バッテリ2を監視して過放電等から保護するための各種保護処理を実行する。
【0090】
本実施形態では、各種保護処理として、電圧検出IC6、電流測定回路7、及び、サーミスタ3による検出結果に基づいてバッテリ2から駆動モータM1への放電を制限する、放電電流制限処理、過放電制限処理、及びバッテリ温度制限処理が実行される。
【0091】
ここで、放電電流制限処理は、放電時に電流測定回路7にて検出された放電電流に基づいて過電流が流れているか否か、過電流が流れている場合にはどの程度のレベルの過電流であるか、などを周期的且つ累積的に検出して、その検出結果に応じて放電を許可或いは停止等させるなどの各種制限を行うものである。
【0092】
また、過放電制限処理は、放電時に電圧検出IC6にて検出されたバッテリ電圧に基づき、各セル群のうち電圧が所定のセル電圧閾値以下となったものが1つでもある場合、又はバッテリ2の電圧が所定のバッテリ電圧閾値以下となった場合に、バッテリ2が過放電状態であると判断して、放電制御信号をローレベルにし、バッテリ2から駆動モータM1への放電を停止させる処理である。またこの過放電制限処理では、過放電状態であると判断した場合には、既述の通りシャットダウンスイッチ17をオフさせる処理も行われる。
【0093】
尚、電圧検出IC6から出力されるバッテリ電圧検出信号の出力状態(レベル変化タイミング等)は、上述したように温度に応じて変化する。そのため、マイコン5は、電圧検出IC6からバッテリ電圧検出信号が入力される度に、リセットパルスPのリセットパルス幅Wpを計測して、その計測結果に基づいてバッテリ電圧検出信号を補正して、各セル群の各セル電圧V1〜V5を取得する。
【0094】
また、バッテリ温度制限処理は、放電時にサーミスタ3にて検出されたバッテリ温度(サーミスタ検出温度Tt)が予め設定された閾値を越えたときに、バッテリ2が過熱状態にあると判定して、放電制御信号をローレベルにし、バッテリ2から駆動モータM1への放電を停止させる処理である。
【0095】
尚、マイコン5は、上述した制限処理により過電流等の異常を判定しなければ、放電制御信号(ハイレベル)の出力を継続するため、スイッチ操作検出回路8を介して、メインスイッチ36のオフ状態(換言すればトリガスイッチの操作停止)を検出することができない。
【0096】
そこで本実施形態では、放電制御信号がハイレベル状態である間は、マイコン5が、この放電制御信号を周期的にごく短時間ローレベルにし、そのローレベルにしたときのスイッチ操作検出回路8からの検出信号をみて、メインスイッチ36の操作状態を判断するようにしている。
【0097】
また、例えばバッテリパック1が充電器50に装着されることによって、充電器検出回路9からの検出信号がLレベルになった場合は、マイコン5は、バッテリ2の状態(バッテリ電圧、バッテリ容量等)を表す各種情報を、信号端子13B、53Aを介して充電器50のMCU57に出力し、その後、充電器50からバッテリ2への充電が開始されると、バッテリ保護のための充電制御処理を実行する。
【0098】
尚、シャットダウンスイッチ17がオフされると、マイコン5には電源電圧Vddが供給されなくなってその動作が停止されるが、充電器50が接続されると、充電器50内の電源電圧Veeがバッテリパック1内に供給され、これを元にマイコン5の電源電圧Vddが生成されてマイコン5が再び動作を開始する。そして、マイコン5は、電源電圧Vddの供給によりその動作を開始すると、シャットダウンスイッチ17を再びオンさせる。
【0099】
バッテリパック1のマイコン5が実行する充電制御処理は、電圧検出IC6、電流測定回路7、及び、サーミスタ3による検出結果に基づき、バッテリ2への過充電やバッテリ2の過熱等の異常が生じていないか否かを判定して、異常判定時には、信号端子13B、53Aを介して、充電器50に、充電停止若しくは充電電流を低減させる指令信号を送信するといった手順で実行される。
【0100】
また、マイコン5は、電圧検出用ダイオードD2により検出されるダイオード電圧Vfに基づいて、次に述べる2つの機能を実現する。その2つの機能のうち1つは、制御用電源回路16の出力異常を検出する機能である。
【0101】
制御用電源回路16は、既述の通り、バッテリパック1が充電器50に接続されているときには充電器50からの5Vの電源電圧Veeを3.3Vの電源電圧Vddに降圧する。しかし、例えば制御用電源回路16の内部回路の短絡などの何らかの要因で、充電器50からの5Vの電源電圧Veeが降圧されずにそのまま電源電圧Vddとして制御用電源回路16から出力されてしまう故障が生じるおそれがある。つまり、電源電圧Vddが、正常時は3.3Vであるものの異常時には5Vになってしまうおそれがある。
【0102】
本実施形態のマイコン5は、各セル電圧V1〜V5について、電圧検出IC6から入力されたセル電圧のAD値(AD変換した値)を電源電圧VddのAD値で除算し、その除算結果をセル電圧として認識している。尚、本実施形態では、例えば8ビット(0〜255)のAD変換器にてAD変換が行われる
そのため、仮に電源電圧Vddが5Vとなる異常が生じると、マイコン5は、セル電圧を実際の値よりも低い値として誤認してしまうことになる。セル電圧が過電圧になるのは好ましくないため、上述した制御用電源回路16の故障を検出することは重要であり、その故障検出のために電圧検出用ダイオードD2が用いられている。
【0103】
電圧検出用ダイオードD2は、電源電圧Vddが3.3Vでも5Vでも、その順方向の電圧(ダイオード電圧)Vfは、約0.6Vである。そのため、制御用電源回路16からの電源電圧Vddが3.3Vと正常である場合は、マイコン5に入力されるダイオード電圧Vf(0.6V)は、マイコン5において、「47」という数値として認識される。この数値は、次式(1)の演算により得られるものである。
【0104】
(0.6/3.3)*256=47 ・・・(1)
マイコン5は、ダイオード電圧Vfを数値「47」として認識した場合には、故障等はなく電源電圧Vddは正常であるものと判断する。
【0105】
一方、制御用電源回路16の故障等によって電源電圧Vddからの出力が5Vとなってしまうと、マイコン5に入力されるダイオード電圧Vf(0.6V)は、マイコン5において、「31」という数値として認識される。この数値は、次式(2)の演算により得られるものである。
【0106】
(0.6/5.0)*256=31 ・・・(2)
マイコン5は、ダイオード電圧Vfを数値「31」として認識した場合には、制御用電源回路16の故障等によって電源電圧Vddが異常な値になっているものと判断する。
【0107】
尚、電圧検出用ダイオードD2のダイオード電圧Vfは、標準的には0.6Vであるが、素子の個体差や周囲温度等の種々の要因によってばらつきが生じる。そして、例えば0.5V〜0.7Vの範囲内でばらつきが生じ得るとすると、マイコン5により数値認識される値も、図6に例示するようにばらつくこととなる。即ち、電源電圧Vddが正常(3.3V)の場合は、マイコン5にて認識されるダイオード電圧Vfの数値は39〜54の範囲内でばらつき、電源電圧Vddが異常(例えば5V)の場合は、マイコン5にて認識されるダイオード電圧Vfの数値は26〜36の範囲内でばらつく。
【0108】
そのため、マイコン5は、ダイオード電圧Vfとして認識した数値が39〜54の範囲内にあるならば、電源電圧Vddが正常であるものと判断し、その39〜54の範囲を外れているならば、電源電圧Vddが異常で何らかの故障等が発生しているものと判断する。尚、マイコン5によるダイオード電圧Vfの数値認識及びその認識した数値に基づく故障有無判断は、例えば、バッテリパック1が充電器50に接続された時(接続されたことがマイコン5にて認識された時)に行われる。
【0109】
マイコン5による、電圧検出用ダイオードD2を用いた機能のもう一つは、充電時にマイコン5が充電器50へ出力するアナログの制御信号を補正する機能である。バッテリパック1が充電器50に接続されると、図3に示すように、バッテリパック1のマイコン5と充電器50のマイコン(MCU)57とが、各々の信号端子13B,53Bを介して接続される。そして、バッテリパック1のマイコン5は、充電器50が接続されている間、充電器50をコントロールするための制御信号を信号端子13Bを介して充電器50のMCU57へ出力する。
【0110】
しかし、充電器50からバッテリパック1へ充電電流が流れている場合、例えば各負極側端子12,52の接触抵抗などの種々の要因で、バッテリパック1のマイコン5のグランド電位が、充電器50のMCU57のグランド電位よりも高くなる。そうなると、MCU57は、そのグランド電位の相違の影響を受けて、バッテリパック1のマイコン5から出力された制御信号の値を、バッテリパック1のマイコン5が出力した電圧値とは異なる値として認識してしまう。つまり、充電電流が流れていることによって例えばバッテリパック1のグランド電位に対して充電器50のグランド電位が0.1Vだけ低くなっている場合に、バッテリパック1のマイコン5が制御信号として例えば3Vの電圧を出力したとすると、充電器50のMCU57では、その制御信号が3.1Vとして認識されてしまうことになる。そのため、バッテリパック1のマイコン5は、充電器5を正常にコントロールできなくなってしまう。
【0111】
また、マイコン5は、既述の通り、電圧検出IC6からのバッテリ電圧検出信号に基づいて(詳しくはリセットパルス幅Wpに基づいて)IC温度Tcを検出するが、更に、その検出したIC温度Tcに基づいてサーミスタ3の故障の有無を判断する、サーミスタ異常判定処理も実行する。
【0112】
図1に示したように、サーミスタ3はバッテリ2に設けられ、電圧検出IC6は、バッテリ2の上部の制御基板10上に配置されている。そのため、サーミスタ3により検出されるサーミスタ検出温度Ttと、電圧検出IC6からのリセットパルス幅Wpに基づいて検出されるIC温度Tcとは、完全には一致しないとしても、大きく異なることはなく、比較的近い値になることが予想される。
【0113】
そのため、仮に、サーミスタ検出温度TtがIC温度Ttと大きく異なっている場合には、サーミスタ検出温度Ttが異常であること、即ち、サーミスタ3が何らかの異常状態になっていることが考えられる。
【0114】
そこで本実施形態では、マイコン5が、IC温度Tcに基づいて、サーミスタ検出温度Ttが正常な範囲内にあるか否かを判断(延いてはサーミスタ3が正常であるか否かを判断)し、サーミスタ3が異常である場合には、充放電を制限又は停止させるようにしている。尚、ここでいうサーミスタ3の異常とは、サーミスタ3自体の異常のみを意味するものではなく、例えばサーミスタ3と制御基板10を繋ぐ配線の切断や短絡、サーミスタ3からマイコン5への配線に異物等が付着することによって正常な検出信号が得られなくなるなど、結果としてサーミスタ3から温度に応じた正常なサーミスタ検出電圧が入力されなくなるようなあらゆる異常状態を意味している。
【0115】
図7に、マイコン5が実行するサーミスタ異常判定処理を示す。マイコン5は、電圧検出IC6からリセットパルスPが入力される度に、その入力をトリガとして図7のサーミスタ異常判定処理を実行する。
【0116】
マイコン5は、サーミスタ異常判定処理を開始すると、まずリセットパルスPのリセットパルス幅Wpを測定する(S110)。そして、図5(a)に例示したリセットパルス幅温度特性に基づき、その測定したリセットパルス幅Wpに対するIC温度Tcを演算する(S120)。
【0117】
続いて、サーミスタ3からのサーミスタ検出電圧Vtを取得し(S130)、図5(b)に例示したサーミスタ電圧温度特性に基づき、その取得したサーミスタ検出電圧Vtに対するサーミスタ検出温度Ttを演算する(S140)。
【0118】
このようにしてIC温度Tc及びサーミスタ検出温度Ttをそれぞれ演算した後、IC温度Tcに基づいて、サーミスタ検出温度Ttとして想定される温度範囲の最大値Tt_maxと、サーミスタ検出温度Ttとして想定される温度範囲の最小値Tt_minを、それぞれ演算(推測)する(S150)。
【0119】
具体的には、図8に示すように、IC温度Tcの特性に対して、想定されるサーミスタ検出温度Ttの最大値Tt_max及び最小値Tt_minの特性が予めマップ化されている。例えばリセットパルス幅WpがWp1でその場合のIC温度TcがTc1である場合、そのIC温度Tc1に対する最大値Tt_max及び最小値Tt_minは、マップに基づいてそれぞれTt_max1、Tt_min1として演算される。このように、マイコン5は、マップを用いて、IC温度Tcに対する最大値Tt_max及び最小値Tt_minを演算する。但し、マップを用いて演算するのはあくまでも一例であり、その他の方法(例えば数値演算等)によって最大値Tt_max及び最小値Tt_minを演算するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0120】
このようにして最大値Tt_max及び最小値Tt_minを演算した後は、サーミスタ検出温度Ttがその両者の範囲内(Tt_min〜Tt_max内)にあるか否かを判断することによって、サーミスタ3の異常の有無を判断する。
【0121】
具体的には、まず、サーミスタ検出温度Ttが最大値Tt_maxより小さいか否かを判断する(S160)。このとき、サーミスタ検出温度Ttが最大値Tt_maxより小さいならば、続いて最小値Tt_minより大きいか否かを判断する(S170)。そして、最小値Tt_minより大きい場合には、サーミスタ3は異常なし(正常)であるものと判断して(S180)、このサーミスタ異常判定処理を終了する。
【0122】
一方、サーミスタ検出温度Ttが最大値Tt_max以上であった場合(S160:NO)、又はサーミスタ検出温度Ttが最小値Tt_min以下であった場合は(S170:NO)、サーミスタ3に何らかの異常があるものと判断する(S190)。
【0123】
そして、そのとき放電中であるか充電中であるかを判断し(S200)、放電中ならば、その放電を停止(又は制限)させるための指令を出力する(S210)。具体的には、上述したように、トランジスタQ2を完全にオフさせたり断続的にオン・オフさせること等によって実現される。
【0124】
一方、充電中ならば、その充電を停止(又は制限)させるための指令を出力する(S220)。具体的には、上述したように、信号端子13Bを介して充電器50へ充電停止若しくは充電電流を低減させる指令信号を送信することによって実現される。
【0125】
以上説明したように、本実施形態のバッテリパック1では、マイコン5が、電圧検出IC6から出力されるバッテリ電圧検出信号の温度依存性(具体的にはリセットパルス幅Wpの温度依存性)を利用して、IC温度Tcを検出する。そして、マイコン5は、その検出したIC温度Tcに基づいて、サーミスタ3の異常の有無を検出する。そのため、サーミスタ3の異常の有無を検出可能な、信頼性のより高いバッテリパック1を提供することが可能となる。
【0126】
しかも、IC温度Tcは、サーミスタのような独立した温度検出素子を用いて検出されるのではなく、バッテリパック1がもともと備えている電圧検出IC6を利用して検出される。つまり、IC温度Tcを検出するために(延いてはサーミスタ3の異常有無を検出するために)別途温度検出素子を設ける必要はなく、既存の構成を有効利用して検出している。更に、IC温度Tcの検出は、電圧検出IC6からのリセットパルス幅Wpに基づく簡易的な方法にて行われる。
【0127】
そのため、バッテリパック1の大型化・コストアップを抑えつつ、サーミスタ3の異常の有無を容易且つ的確に判断することができる。
尚、IC温度Tcは、リセットパルス幅Wpに基づく演算により得られるものであるため、サーミスタ3により得られるサーミスタ検出温度Ttに比べて、検出温度の精度は劣る可能性がある。しかし、マイコン5は、仮にサーミスタ3が異常状態になったとしても、サーミスタ3からの検出信号(サーミスタ検出電圧Vt)によってはその異常を検出することはできない。一方、電圧検出IC6については、マイコン5は、入力されるバッテリ電圧検出信号の状態に基づいて(例えばリセットパルスが周期的に入力されるか否かに基づいて)、電圧検出IC6が正常であるか否かを判断することができる。言い換えれば、電圧検出IC6からバッテリ電圧検出信号が正常に入力されている限り、電圧検出IC6は正常であって、リセットパルス幅Wpに基づくIC温度Tcも信頼性のある値として扱える。そのため、電圧検出IC6が正常に動作している限り、IC温度Tcに基づいてサーミスタ3の異常有無を確実に判断することができる。
【0128】
また、充放電動作中にサーミスタ3の異常が検出された場合には、その充放電動作を制限又は停止させるようにしている。そのため、サーミスタ3の異常によって生じるおそれのあるバッテリパック1内の各種異常動作を確実に防ぐことができる。
【0129】
尚、本実施形態において、電圧検出IC6は本発明の信号出力回路の一例に相当し、発振器18は本発明のクロック生成回路の一例に相当し、サーミスタ3は本発明の温度検出素子の一例に相当し、制御基板10は本発明の回路基板の一例に相当し、最大値Tt_maxとIC温度Tcとの差、及び最小値Tt_minとIC温度Tcとの差は、いずれも本発明の検出温度差閾値の一例に相当する。また、図7のサーミスタ異常判定処理において、S120の処理は本発明の第1温度検出手段が実行する処理の一例に相当し、S140の処理は本発明の第2温度検出手段が実行する処理の一例に相当し、S190の処理は本発明の第3の異常判断手段が実行する処理の一例に相当し、S200〜S220の処理は本発明の保護指令出力手段が実行する処理の一例に相当する。
【0130】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0131】
例えば、上記実施形態では、マイコン5は、サーミスタ3による検出温度に基づいて各種保護動作等を行い、IC温度Tcについては単にサーミスタ3の異常有無の判断に用いるだけであったが、IC温度Tcに基づいて各種保護動作等を行うようにしてもよい。
【0132】
つまり、IC温度Tcとサーミスタ検出温度Ttの2箇所の温度を適宜用いて各種の制御処理を行うようにしてもよい。また、2箇所に限らず、バッテリパック1内の複数箇所の温度を検出する必要がある場合には、その複数箇所のうち少なくとも一箇所は、サーミスタを用いず、上述した電圧検出IC6のような、温度に応じて出力信号の状態が変化するような回路等を利用するとよい。そのようにすることで、バッテリパック1全体の大型化・コストアップを抑えつつ、バッテリパック1内の複数箇所の温度を検出することができる。
【0133】
また、IC温度Tcとサーミスタ検出温度Ttを相互に比較して両者の差が所定の検出温度差閾値以上の場合には各温度のうち少なくとも一方が異常である(即ち電圧検出IC6及びサーミスタ3のうち少なくとも一方が異常である)と判断するようにしてもよい。
【0134】
また、サーミスタ3を用いず(つまりサーミスタ3に代えて)、IC温度Tcに基づいて、バッテリパック1内の温度を監視し、そのIC温度Tcに基づく各種保護動作等を行うようにしてもよい。
【0135】
また、サーミスタ検出温度Tt及びIC温度Tcは、それぞれ、次のように利用することもできる。例えば、サーミスタ検出温度Tt及びIC温度Tcのうち少なくとも一方が、所定の温度上限値以上となったか、又はその温度上限値よりも低い所定の温度下限値以下となった場合に、バッテリパック1に異常が生じていると判断する、温度異常判断機能を備えるようにしてもよい。
【0136】
また、上記の温度異常判断機能に加えて(あるいはそれに代えて)、サーミスタ検出温度Ttの変化率ΔTt及びIC温度Tcの変化率ΔTcをそれぞれ演算し、各変化率のうち少なくとも一方が所定の変化率上限値以上となった場合に、バッテリパック1に異常が生じていると判断する、温度変化率異常判断機能を備えるようにしてもよい。
【0137】
図9は、温度異常判断機能および温度変化率異常判断機能を兼ね備えたバッテリパックにおいてマイコンが実行するバッテリ温度異常判断処理の一例である。バッテリパックのマイコンは、例えば、図7に示したサーミスタ異常判定処理と並行して、周期的にこのバッテリ温度異常判断処理を実行することができる。
【0138】
バッテリパックのマイコンが図9のバッテリ温度異常判断処理を開始すると、まず、サーミスタ検出温度Tt及びIC温度Tcを取得する(S310)。具体的には、例えば図7のサーミスタ異常判定処理におけるS110〜S140と同様の手順で演算等することにより取得することができる。
【0139】
そして、マイコン5は、取得したサーミスタ検出温度Ttについて、所定の温度上限値より小さいか否かの判断(S320)、及び所定の温度下限値より大きいか否かの判断(S330)を行う。このとき、サーミスタ検出温度Ttが温度上限値以上であるか(S320:NO)又は温度下限値以下である(S330:NO)場合は、第1温度異常フラグをセットする(S340)。
【0140】
S320及びS330の判断でともに肯定判定された場合、又はS340で第1温度異常フラグをセットした後は、マイコン5は、取得したIC温度Tcについて、所定の温度上限値より小さいか否かの判断(S350)、及び所定の温度下限値より大きいか否かの判断(S360)を行う。このとき、IC温度Tcが温度上限値以上であるか(S350:NO)又は温度下限値以下である(S360:NO)場合は、第2温度異常フラグをセットする(S370)。
【0141】
S350及びS360の判断でともに肯定判定された場合、又はS370で第2温度異常フラグをセットした後は、マイコン5は、サーミスタ検出温度Ttの変化率ΔTtの演算(S380)及びIC温度Tcの変化率ΔTcの演算(S390)を行う。これら各変化率ΔTt,ΔTcの演算は、例えば、前回のこのバッテリ温度異常判断処理の実行時にS310で取得した各温度Tt、Tcに対する、今回取得したTt、Tcの変化量(偏差)を演算することにより行うことができる。
【0142】
そして、マイコン5は、サーミスタ検出温度Ttの変化量ΔTtが所定の変化量上限値より小さいか否か判断し(S400)、変化量上限値以上だった場合は(S400:NO)、第3温度異常フラグをセットする(S410)。
【0143】
S400の判断で肯定判定された場合、又はS410で第3温度異常フラグをセットした後は、マイコン5は、IC温度Tcの変化量ΔTcが所定の変化量上限値より小さいか否か判断する(S420)。そして、変化量ΔTcが変化量上限値以上だった場合は(S420:NO)、第4温度異常フラグをセットする(S430)。
【0144】
そして、マイコン5は、上述した4種類の異常フラグのうち何れか1つでもセットされているか否か判断する(S440)。何れの異常フラグもセットされていない場合は(S440:NO)、マイコン5は、このバッテリ温度異常判断処理を終了する。一方、何れかの異常フラグがセットされている場合は、マイコン5は、S450以降の処理に進み、充電中か放電中かに応じてそれぞれその動作を停止又は制限させるための処理を行う。このS450以降の処理は、図7のサーミスタ異常判定処理におけるS200以降の処理と同じである。
【0145】
このように、マイコン5が図9のバッテリ温度異常判断処理を行うことで、例えばバッテリ2の温度が定格温度範囲を超えたり逆に下回ったりした場合にそれを検出して異常と判断したり、或いはバッテリ2以外の他の回路等(バッテリ制御回路4等)の過熱を検出して異常と判断したりすることが可能となる。そして、異常と判断した場合に、放電中又は充電中であるならば、その充放電動作を停止又は制限するようにするとよい。
【0146】
また、各温度の変化率が変化率上限値以上であるということは、何らかの異常によって温度が急激に上昇していることが予想される。そこで、温度が急上昇している場合にはそれを検出して異常と判断することで、バッテリパック1を過熱から保護することが可能となる。
【0147】
また、上記実施形態では、サーミスタ3の異常の有無を、IC温度Tcに基づいて検出するようにしたが、これに加えて(又はこれに代えて)、電圧検出用ダイオードD2の温度に基づいて検出するようにしてもよい。
【0148】
電圧検出用ダイオードD2のダイオード電圧(順方向電圧)Vfは、上述したリセットパルス幅Wpと同様、温度依存性があり、図10(a)に例示するように、自身の温度(ダイオード温度)に応じて略線形的に変化する。即ち、ダイオード温度が高くなるほどダイオード電圧Vfは小さくなる。そのため、マイコン5により認識されるダイオード電圧Vfの数値(AD値)も、図10(b)に例示するようにダイオード温度に応じて変化する。
【0149】
そこで、そのダイオード電圧Vfの温度依存性を利用して、そのダイオード電圧Vfからダイオード温度を推定し、その推定したダイオード温度に基づいてサーミスタの異常を検出することができる。
【0150】
具体的には、まず、上述した、ダイオード電圧Vfに基づく制御用電源回路16の出力電圧(電源電圧Vdd)の異常検出機能を実行する。そして、電源電圧Vddが正常であると判断された場合に、そのときのダイオード電圧Vfに基づいてダイオード温度を推定する。そして、その推定したダイオード温度とサーミスタ検出温度Ttとを比較し、両者の差が所定の範囲内にあればサーミスタ3は正常と判断でき、両者の差が所定の範囲を超えていればサーミスタ3は異常と判断できる。
【0151】
このダイオード電圧Vfに基づくサーミスタ3の異常検出も、リセットパルス幅Wpに基づく異常検出と同様、バッテリパック1がもともと備えている回路等、即ちもともと備えている電圧検出用ダイオードD2を利用して行うことができる。そのため、バッテリパック1の大型化・コストアップを抑えつつ、サーミスタ3の異常の有無を容易且つ的確に判断することができ、バッテリパック1のさらなる高機能化が可能となる。
【0152】
また、上記実施形態では、バッテリ2がリチウムイオン二次電池であるものとして説明したが、これはあくまでも一例であり、例えばニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム蓄電池など、他の二次電池であってもよい。
【0153】
また、上記実施形態では、バッテリパック1が接続される電動工具本体40として、ドライバドリルを例に挙げて説明したが、ドライバドリル以外の電動工具に本願発明を適用してもよい。
【0154】
また、上記実施形態の電動工具本体40では、ブラシ付き直流モータが駆動モータM1として用いられていたが、ブラシレス直流モータや交流モータが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0155】
1…バッテリパック、2…バッテリ、2A,11,31,51…正極側端子、2B,12,32,52…負極側端子、3…サーミスタ、4…バッテリ制御回路、5…マイコン、6…電圧検出IC、7…電流測定回路、8…スイッチ操作検出回路、9…充電器検出回路、10…制御基板、13…接続端子部、13A,13B,13C,13D,33,53A,53B,53C…信号端子、15…コネクタ部、16…制御用電源回路、17…シャットダウンスイッチ、18…発振器、20…フレキシブル基板、21〜30…セル、34…制御用電源回路、35…入出力回路、36…メインスイッチ、40…電動工具本体、50…充電器、55…整流回路、56…充電用スイッチング電源回路、57…MCU、58…制御用スイッチング電源回路、M1…駆動モータ、MOSFET…Nチャネル型、P…リセットパルス、Q1,Q2,Q3,Q4…トランジスタ、R1〜R9…抵抗、D1,D3,D4…ダイオード、D2…電圧検出用ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具本体に電力を供給するバッテリパック内に設けられてそのバッテリパック内の温度を検出する温度検出装置であって、
所定のタイミングで出力レベルが変化するような出力信号を出力する機能を有し、自身の温度に応じて前記タイミングが変化するよう構成された信号出力回路と、
前記信号出力回路からの前記出力信号の状態に基づいて前記バッテリパック内の温度を検出する第1温度検出手段と、
を備えていることを特徴とする温度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度検出装置であって、
温度に応じた検出信号を出力する温度検出素子を有し、その温度検出素子からの検出信号に基づいて前記バッテリパック内の温度を検出する第2温度検出手段を備えている
ことを特徴とする温度検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の温度検出装置であって、
前記第1温度検出手段により検出された温度である第1検出温度及び前記第2温度検出手段により検出された温度である第2検出温度のうち少なくとも一方が、所定の温度上限値以上となったか、又は前記温度上限値よりも低い所定の温度下限値以下となった場合に、前記バッテリパックに異常が生じていると判断する第1の異常判断手段を備えている
ことを特徴とする温度検出装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の温度検出装置であって、
前記第1温度検出手段により検出された温度である第1検出温度の変化率及び前記第2温度検出手段により検出された温度である第2検出温度の変化率うち少なくとも一方が所定の変化率上限値以上となった場合に、前記バッテリパックに異常が生じていると判断する第2の異常判断手段を備えている
ことを特徴とする温度検出装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の温度検出装置であって、
前記第1温度検出手段により検出された温度である第1検出温度と前記第2温度検出手段により検出された温度である第2検出温度とを比較して、両者の差が所定の検出温度差閾値以上の場合に、前記各温度検出手段のうち少なくとも一方に異常が生じていると判断する第3の異常判断手段を備えている
ことを特徴とする温度検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の温度検出装置であって、
前記第3の異常判断手段は、前記第1検出温度と前記第2検出温度との差が前記検出温度差閾値以上の場合、前記第2温度検出手段に異常が生じていると判断する
ことを特徴とする温度検出装置。
【請求項7】
請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の温度検出装置であって、
前記異常検出手段により前記異常が生じていると判断された場合に、前記バッテリパックから放電が行われているならばその放電を制限又は停止させることによって前記バッテリパックを保護するための、前記バッテリパックへの充電が行われているならばその充電を制限又は停止させることによって前記バッテリパックを保護するための、保護指令を出力する保護指令出力手段を備えている
ことを特徴とする温度検出装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の温度検出装置であって、
前記信号出力回路は、前記出力信号として少なくとも所定のパルス信号を出力し、そのパルス信号のパルス幅が自身の温度に応じて変化するよう構成されており、
前記第1温度検出手段は、前記パルス信号のパルス幅に基づいて前記バッテリパック内の温度を検出する
ことを特徴とする温度検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の温度検出装置であって、
前記信号出力回路は、所定周波数のクロック信号を出力するクロック生成回路を備え、前記クロック生成回路からの前記クロック信号に同期したタイミングで前記パルス信号を出力するよう構成されており、
前記クロック生成回路は、前記クロック信号の周波数が自身の温度に応じて変化するよう構成されている
ことを特徴とする温度検出装置。
【請求項10】
電動工具本体に電力を供給するバッテリパックであって、
少なくとも一つのバッテリセルを有するバッテリと、
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の温度検出装置と、
を備えていることを特徴とするバッテリパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97901(P2013−97901A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237270(P2011−237270)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】