説明

温度測定用ウエハ

【課題】 処理液を使用する基板処理装置においても、ワイヤレス方式でウエハの温度を測定することが可能な温度測定用ウエハを提供する。
【解決手段】 シリコンウエハから成るベース基板11の下面に、3個の水晶振動子1a、1b、1cと、これらの水晶振動子1a、1b、1cに各々連結するアンテナ2a、2b、2cとが配設されたプリント基板3と、フッ素樹脂製の薄板21をこの順に積層した構成を有する。ベース基板11とフッ素樹脂製の薄板21とは、その周縁において、例えば摂氏200度程度の温度で加圧加熱溶着されることにより、液密な構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理装置において処理されるウエハの温度を測定するための温度測定用ウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスを製造するための半導体基板や液晶デバイスを製造するためのガラス基板などのウエハに対して、フォトレジストを塗布するコータや、フォトレジストの現像処理を行うデベロッパにおいては、処理されるウエハの温度を測定する必要がある。また、ウエハに塗布されるフォトレジストや現像液等の処理液の温度を、ウエハの温度を介して測定する必要がある場合もある。このようなウエハの温度測定を行う場合、実際に処理を実行中のウエハの温度を測定することは困難である。このため、一般的には、白金抵抗体や熱電対等の温度検知部材を使用した温度センサや、水晶振動子の共振周波数を利用した温度センサをダミーウエハとしての温度測定用ウエハに埋め込み、この温度測定用ウエハを熱処理装置等の基板処理装置の処理部に設置して、この温度測定用ウエハの温度を測定することにより、実際にデバイスの製造のために基板処理装置により処理されるウエハの温度を推定するようにしている。
【0003】
特許文献1には、水晶振動子が安定に発振を行う固有振動数を持ち、かつ、その固有振動数が温度変化と特定の相関を持つ特性を有することを利用し、導線を使用することなく、精度良くウエハの温度を測定できるようにした基板の温度測定方法が開示されている。この基板の温度測定方法においては、温度測定用ウエハに、水晶振動子とコイルとを接続して形成される検温素子を配設し、水晶振動子の固有振動数に相当する周波数の送信波を検温素子に発信する。そして、チャンバー内の上蓋に検温素子からの電磁波を受信するセンサーコイルを設け、送信波を停止した後に、水晶振動子が共振後の減衰振動により放出する温度測定用ウエハの温度に応じた電磁波を受信し、検温素子からの電磁波の周波数に基づいて温度測定用ウエハの温度を測定する。
【0004】
また、特許文献2には、配線数の増加を抑制することができる基板熱処理装置が開示されている。この基板熱処理装置においては、水晶振動子にコイルを接続して形成された検温素子が温度測定用ウエハの複数箇所に設置される。また、チャンバー内の上蓋に中継アンテナが取り付けられるとともに、搬送ロボットの保持アームに送受信アンテナが設置される。各水晶振動子の固有振動数に相当する周波数の送信波を送受信アンテナから中継アンテナを経由して送信することによって対応する水晶振動子を共振させ、この水晶振動子から放出された電磁波を中継アンテナを経由して送受信アンテナにて受信し、その受信した電磁波の周波数および送信波の周波数に基づいて温度測定用ウエハの温度測定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−140167号公報
【特許文献2】特開2007−19155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載された温度測定方法は、ワイヤレス形式でウエハの温度を測定しうる優れたものではあるが、処理液を使用する基板処理装置での利用については考慮されていないものであった。すなわち、特許文献1および特許文献2に記載された温度測定方法は、ウエハを熱処理する熱処理装置に使用する場合においては利用できるが、処理液を使用する基板処理装置に使用した場合には、銅、アルミニュウム、クロム、鉛等が使用された水晶振動子やコイル部分が処理液と接触することにより、それらが腐食され、温度測定が実行し得ないという問題が生ずる。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、処理液を使用する基板処理装置においても、ワイヤレス方式でウエハの温度を測定することが可能な温度測定用ウエハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ベース基板と、水晶振動子と、前記水晶振動子に接続されたアンテナとを備え、送受信アンテナとの間でデータを送受信する温度測定用ウエハにおいて、前記ベース基板とフッ素樹脂を加圧加熱溶着させることにより、前記水晶振動子と前記アンテナとを、前記ベース基板または前記フッ素樹脂により液密な状態で囲ったことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、その中央部に前記水晶振動子と前記アンテナとを収納可能な凹部が形成され、その周縁部分において前記ベース基板に加圧加熱溶着されるフッ素樹脂製の薄板を有する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記水晶振動子と前記アンテナとを前記ベース基板との間に収納した状態で前記ベース基板と加圧加熱溶着されるフッ素樹脂製のシート部材を有する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、第1のベース基板および第2のベース基板の間に形成された空間内に前記水晶振動子と前記アンテナとを収納するとともに、前記第1のベース基板と前記第2のベース基板とをそれらの周縁部分においてフッ素樹脂により加圧加熱溶着した。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記水晶振動子による温度測定面とは逆側の面に、温度測定面とは逆側の面であることを認識可能な表示が形成される。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記水晶振動子と前記アンテナとが装着されたプリント基板の複数個を前記ベース基板および前記フッ素樹脂により液密な状態で囲われる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明において、前記水晶振動子と当接する前記ベース基板の面に、前記水晶振動子の一部を収納する凹部が形成される。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明において、前記ベース基板はシリコンウエハであり、前記フッ素樹脂は、4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレンである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、処理液を使用する基板処理装置においても、ワイヤレス方式でウエハの温度を測定することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、ベース基板とフッ素樹脂の薄板内に水晶振動子とアンテナとを封入することにより、温度測定用ウエハの形状を実際にデバイス製造で使用するウエハと類似または同様の形状とすることで、より正確な温度測定が可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、簡易な構成でありながら液密性を確保することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、温度測定用ウエハの外観を実際にデバイス製造で使用するウエハと類似または同様の形状とすることで、より正確な温度測定が可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、温度測定面を容易に認識することが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、水晶振動子とアンテナとをプリント基板によりユニット化することで、複数箇所において温度測定を行う場合の製造コストを削減することが可能となる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、水晶振動子をベース基板の表面に近づけることにより、温度の測定精度を向上させることが可能となる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、ベース基板とフッ素樹脂を容易かつ確実に溶着させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明に係る温度測定用ウエハWを使用する基板処理装置の斜視図である。
【図2】基板処理装置および温度測定用ウエハWの主要な制御系を示すブロック図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。
【図4】水晶振動子1aとアンテナ2aとの関係を模式的に示す説明図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。
【図6】この発明の第3実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。
【図7】この発明の第4実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。
【図8】この発明の第4実施形態に係る温度測定用ウエハWの外観図である。
【図9】この発明の第5実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。
【図10】この発明の第6実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。
【図11】この発明の第7実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、この発明に係る温度測定用ウエハWを使用する基板処理装置の構成について説明する。図1は、この発明に係る温度測定用ウエハWを使用する基板処理装置の斜視図である。
【0026】
この基板処理装置は、シリコンウエハ等の半導体ウエハに対して処理液を塗布または供給してその処理を行うものであり、この発明に係る温度測定用ウエハWを載置して回転するスピンチャック61と、スピンチャックに61により回転する温度測定用ウエハWに対して処理液を吐出するノズル64と、飛散防止用カップ62と、送受信アンテナ63とを備える。この基板処理装置においては、温度測定用ウエハWにおける水晶振動子1a、1b、1cの振動に関するデータを、温度測定用ウエハW内に配設されたアンテナと送受信用アンテナ63との間で送受信することにより、ワイヤレス方式で温度測定用ウエハWの温度を測定するものである。なお、図1においては、本来、温度測定用ウエハWの内部に配設されている水晶振動子1a、1b、1cを温度測定用ウエハWの表面に図示している。なお、具体的な基板処理装置は、半導体ウエハに対して、レジスト液を塗布するコーターや、現像液で処理するデベロッパや、洗浄液で処理する洗浄装置や、残余のレジストを剥離するため剥離液で処理する剥離装置などである。
【0027】
図2は、上述した基板処理装置および温度測定用ウエハWの主要な制御系を示すブロック図である。
【0028】
温度測定用ウエハWは、円形状であって、3個の水晶振動子1a、1b、1cと、これらの水晶振動子1a、1b、1cに各々接続されたアンテナ2a、2b、2cとを備える。水晶振動子1a、1b、1cに使用される水晶は、その結晶から切り出す角度により固有振動数が異なるとともに多種多様の温度特性を有し、それらのうちのいわゆるYsカットのものが温度に対する送受信周波数の変化率が大きい。このため、水晶振動子1a、1b、1cにその固有振動数に相当する周波数の送信波を送信し、送信停止後に水晶振動子1から受信した電磁波の周波数を測定すれば、予め測定した送受信周波数の変化率と温度との相関に基づいて温度測定用ウエハWの温度を算定することができる。なお、これら3個の水晶振動子1a、1b、1cとしては、固有振動数が互いに異なるものが使用される。
【0029】
一方、基板処理装置は、各水晶振動子1a、1b、1cの固有周波数に相当する周波数の送信波を、送受信アンテナ63を介してアンテナ2a、2b、2cに送信するための送信機71と、アンテナ2a、2b、2cから送受信アンテナ63を介して水晶振動子1a、1b、1cの減衰振動に対応した電気信号を受信するための受信機73と、周波数分別器72と、周波数カウンタ74と、温度測定器75と、切替スイッチ76とを備える。
【0030】
この基板処理装置においては、最初に、切替スイッチ76を送信機71側に切り替え、送信機71より3個の水晶振動子1a、1b、1cの固有振動数に相当する周波数(f1、f2、f3)の送信波を順次発信する。この送信波は、送受信アンテナ63から、アンテナ2a、2b、2cを介して3個の水晶振動子1a、1b、1cに送信される。これにより、各水晶振動子1a、1b、1cが、各々の固有振動数で共振する。
【0031】
続いて、送信機71からの送信波の発信を停止するとともに、切替スイッチ76を周波数分別器72側に切り替える。送信波が停止した後、各水晶振動子1a、1b、1cは、温度測定用ウエハWの温度に応じた周波数で減衰振動する。この減衰振動に対応した電気信号がアンテナ2a、2b、2cから送受信アンテナ63に送信される。そして、減衰振動に対応した電気信号は、送受信アンテナ63から周波数分別器72に送られる。周波数分別器72および受信機73においては、減衰振動に対応する周波数を中心とした所定帯域の信号を順次受信する。そして、周波数カウンタ74において、この信号の周波数を各水晶振動子1a、1b、1c毎に計数する。一方、温度測定器75においては、周波数カウンタで計数した周波数と、予め測定しておいた各水晶振動子の周波数対温度特性とを比較することにより、温度測定用ウエハWにおける各水晶振動子1a、1b、1cに対応する位置の温度を求める。
【0032】
次に、この発明に係る温度測定用ウエハWの構成について説明する。図3は、この発明の第1実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。なお、図3(a)は温度測定用ウエハWの平面を示す概要図であるが、ベース基板11の下面側に配置された水晶振動子1a、1b、1cやアンテナ2a、2b、2cをも図示している。また、図3(b)は、温度測定用ウエハW断面を示す概要図である。
【0033】
この温度測定用ウエハWは、デバイス製造のために使用する円形状の半導体ウエハと同じか若しくはそれを研磨することにより薄型化された、例えばシリコンウエハから成るベース基板11の下面に、3個の水晶振動子1a、1b、1cと、これらの水晶振動子1a、1b、1cに各々連結するアンテナ2a、2b、2cとが配設されたプリント基板3と、フッ素樹脂製の薄板21とをこの順に積層した構成を有する。ベース基板11とフッ素樹脂製の薄板21とは、その全周の接触部分の周縁において、フッ素樹脂の融点かそれより数度から数十度高い温度(使用するフッ素樹脂により異なるが、摂氏210度から350度)で加圧加熱溶着されることにより、液密な状態で水晶振動子1a、1b、1cとアンテナ2a、2b、2cとを囲った構成となっている。水晶振動子1a、1b、1cは、ウエハの温度を測定したい箇所に設置される。
【0034】
ここで、「液密」とは、液体を通過させない状態で封止(シール)することを意味する。液密な状態で水晶振動子1a、1b、1cとアンテナ2a、2b、2cとを囲うとは、温度測定用ウエハWに処理液が供給された場合に、その処理液が温度測定用ウエハWの外部から水晶振動子1a、1b、1cおよびアンテナ2a、2b、2c側に浸入しないようにその周囲を囲むことを意味する。
【0035】
図4は、水晶振動子1aとアンテナ2aとの関係を模式的に示す説明図である。
【0036】
水晶振動子1aに接続されたアンテナ2aは、導線を数ターン巻回した円形コイル状の形状を有する。このような構成は、他のアンテナ2b、2cについても、円の直径が異なる点を除き、同様である。
【0037】
再度、図3を参照して、フッ素樹脂製の薄板21は、4フッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン)または3フッ化塩化エチレン(ポリクロロトリフルオロエチレン)から成る0.5mm〜3mm程度の薄板に対し、水晶振動子1a、1b、1c、アンテナ2a、2b、2cおよびプリント基板3を収納可能な凹部を形成したものである。このため、ベース基板11とフッ素樹脂製の薄板21とをその全周の接触部分の周縁において溶着することにより、半導体デバイスを製造するために用いられる通常のシリコンウエハとほぼ類似する形状の温度測定用ウエハWを作成することが可能となる。なお、ベース基板11の厚みを薄くすることにより、薄板21を積層した温度測定用ウエハWの厚みを、実際にデバイス製造のために利用されるウエハの厚みとほぼ同じにすることが望ましい。
【0038】
また、シリコンウエハから成るベース基板11には、サンドブラスト加工等により、水晶振動子1a、1b、1cの一部を収納する凹部が形成されている。このため、水晶振動子1a、1b、1cとベース基板11の表面との距離を小さくすることができ、水晶振動子1a、1b、1cをベース基板11の表面に近づけることで温度の測定精度を向上させることが可能となる。
【0039】
このとき、シリコンウエハとフッ素樹脂としての4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレンとは、加圧加熱によるその溶着性が極めて良好であり、液密構造を容易に構成することができる。また、4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレン等のフッ素樹脂は、耐薬性に優れた材質であるため、シリコン基板の処理装置で処理液が接触する部品に通常使用される材質であり、また、接着剤を用いることなく接着できるので、不純物などが半導体デバイス付着する等の所謂コンタミネーション(contamination)が発生することを防止できる。このため、シリコンウエハから成るベース基板11と4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレン等のフッ素樹脂から成る薄板21を使用することにより、処理液を使用する基板処理装置においても好適な温度測定用ウエハWを作成することが可能となる。
【0040】
次に、この発明に係る温度測定用ウエハWの他の実施形態について説明する。図5は、この発明の第2実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。なお、図5(a)は温度測定用ウエハWの平面を示す概要図であるが、ベース基板11の下面側に配置された水晶振動子1a、1b、1cやアンテナ2a、2b、2cをも図示している。また、図5(b)は、温度測定用ウエハW断面を示す概要図である。
【0041】
この第2実施形態に係る温度測定用ウエハWは、第1実施形態に係る温度測定用ウエハWにおけるフッ素樹脂製の薄板21のかわりに、フッ素樹脂製のシート部材22を採用した構成を有する。すなわち、この温度測定用ウエハWは、シリコンウエハから成るベース基板11の下面に、3個の水晶振動子1a、1b、1cと、これらの水晶振動子1a、1b、1cに各々連結するアンテナ2a、2b、2cとが配設されたプリント基板3と、フッ素樹脂製のシート部材22とをこの順に積層した構成を有する。ベース基板11とフッ素樹脂製のシート部材22とは、それの全周の接触部分の周縁において、フッ素樹脂の融点と同じかそれより高い温度で加圧加熱溶着されることにより、液密な状態で水晶振動子1a、1b、1cとアンテナ2a、2b、2cとを囲った構成となっている。なお、図5(b)における符号31は、スペーサを示している。
【0042】
なお、この実施形態においても、シリコンウエハから成るベース基板11には、サンドブラスト加工等により、水晶振動子1a、1b、1cの一部を収納する凹部が形成されている。また、この実施形態においては、水晶振動子1a、1b、1cやアンテナ2a、2b、2cとベース基板11との間にも、フッ素樹脂製のシート部材23を介在させている。これらのシート部材22、23の材質としては、4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレンが使用される。
【0043】
次に、この発明に係る温度測定用ウエハWのさらに他の実施形態について説明する。図6は、この発明の第3実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。なお、図6(a)は温度測定用ウエハWの平面を示す概要図であるが、フッ素樹脂製のシート部材24を取り外して見た状態を図示している。また、図6(b)は、温度測定用ウエハW断面を示す概要図である。
【0044】
この第3実施形態に係る温度測定用ウエハWは、第2実施形態に係る温度測定用ウエハWに対して、水晶振動子1a、1b、1cとアンテナ2a、2b、2cとが配設されたプリント基板3の配置を上下逆にした構成を有する。すなわち、この温度測定用ウエハWは、シリコンウエハから成るベース基板11の上面に、3個の水晶振動子1a、1b、1cと、これらの水晶振動子1a、1b、1cに各々連結するアンテナ2a、2b、2cとが配設されたプリント基板3と、フッ素樹脂製のシート部材24とをこの順に積層した構成を有する。ベース基板11とフッ素樹脂製のシート部材24とは、それらの全周の接触部分の周縁において、フッ素樹脂の融点と同じかそれより高い温度で加圧加熱溶着されることにより、液密な状態で水晶振動子1a、1b、1cとアンテナ2a、2b、2cとを囲った構成となっている。このシート部材24の材質としては、4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレンが使用される。
【0045】
次に、この発明に係る温度測定用ウエハWのさらに他の実施形態について説明する。図7は、この発明の第4実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。なお、図7(a)は温度測定用ウエハWの平面を示す概要図であるが、第1のベース基板12を取り外して見た状態を図示している。また、図7(b)は、温度測定用ウエハW断面を示す概要図である。
【0046】
この第4実施形態に係る温度測定用ウエハWは、それぞれがシリコンウエハから成る第1のベース基板12と第2のベース基板13とを有する。第2のベース基板13には、サンドブラスト加工等により凹部が形成されており、この凹部による第1のベース基板12および第2のベース基板13との間に形成された空間内には、3個の水晶振動子1a、1b、1cと、これらの水晶振動子1a、1b、1cに各々連結するアンテナ2a、2b、2cとが配設されたプリント基板3とが収納されている。そして、第1のベース基板12と第2のベース基板13とは、その全周の周縁部分において、フッ素樹脂からなるシート部材25を利用して、フッ素樹脂の融点と同じかそれより高い温度で加圧加熱溶着されることにより、液密な状態で水晶振動子1a、1b、1cとアンテナ2a、2b、2cとを囲った構成となっている。このシート部材25の材質としては、4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレンが使用される。なお、図7における符号32は、スペーサを示している。
【0047】
図8は、この発明の第4実施形態に係る温度測定用ウエハWの外観図である。ここで、図8(a)は、温度測定用ウエハWの斜視図であり、図8(b)は、その裏面図である。
【0048】
この第4実施形態に係る温度測定用ウエハWは、シリコンウエハから成る第1のベース基板12と第2のベース基板13とによりその表面全域が覆われている。このため、外観上からは表裏の認識が不可能である。一方、温度測定用ウエハWは、水晶振動子1a、1b、1cの向きに応じて、その主面の一方は温度を測定するための温度測定面となっており、温度測定面とは逆側の面では正確な温度測定を行うことはできない。この実施形態の場合においては、第1のベース基板12の表面が温度測定面となっており、プリント基板3が配置される側である第2のベース基板13の表面は温度測定面とはなっていない。
【0049】
このため、この第4実施形態に係る温度測定用ウエハWにおいては、水晶振動子1a、1b、1cによる温度測定面とは逆側の面に、温度測定面とは逆側の面であることを認識可能な「BACK」という表示10が、刻印により形成されている。この表示10により、この温度測定用ウエハWを使用して温度測定を実行するときに、その表裏を間違えて設置することを有効に防止することが可能となる。
【0050】
このとき、温度測定面側に温度測定面であることを認識可能な表示を形成することも可能ではあるが、温度測定面における測定精度を低下させないためには、温度測定面側に温度測定面であることを認識可能な表示を形成するよりも、温度測定面とは逆側の面に、温度測定面とは逆側の面であることを認識可能な表示を形成することが好ましい。
【0051】
次に、この発明に係る温度測定用ウエハWのさらに他の実施形態について説明する。図9は、この発明の第5実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。なお、図9(a)は温度測定用ウエハWの平面を示す概要図であるが、第1のベース基板12を取り外して見た状態を図示している。また、図9(b)は、温度測定用ウエハW断面を示す概要図である。
【0052】
上述した各実施形態においては、各水晶振動子1a、1b、1cに各々連結するアンテナ2a、2b、2cを同心円状に配置し、3個の水晶振動子1a、1b、1cと3個のアンテナ2a、2b、2cとを単一のプリント基板3上に配設している。これに対して、この第5実施形態に係る温度測定用ウエハWにおいては、まず、水晶振動子1aとアンテナ2aとを一つずつプリント基板3上に配設してユニット化した温度測定ユニット41a、同様に、水晶振動子1bとアンテナ2b、あるいは、水晶振動子1cとアンテナ2cも、それぞれ、別々のプリント基板3上に配設した温度測定ユニット41b、41cを製作する。
【0053】
そして、これら3個の温度測定ユニット41a、41b、41cは、シリコンウエハから成る第2のベース基板13にサンドブラスト加工等により形成された凹部内に配置される。一方、シリコンウエハから成る第1のベース基板12には、サンドブラスト加工等により、水晶振動子1a、1b、1cの一部を収納する凹部が形成されている。このため、第1のベース基板12と第2のベース基板13とを、フッ素樹脂からなるシート部材25を利用して、例えば、摂氏200度程度の温度で加圧加熱溶着されることにより、第5実施例の場合と同様、通常のシリコンウエハと類似または同様の形状を有する液密な温度測定用ウエハWを構成することが可能となる。なお、温度測定部分をユニット化することにより、製造コストを削減するこができる。
【0054】
なお、このシート部材25の材質としても、4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレンが使用される。また、この第5実施形態に係る温度測定用ウエハWにおいても、第4実施形態の場合と同様、図8に示すような、水晶振動子1a、1b、1cによる温度測定面とは逆側の面に、温度測定面とは逆側の面であることを認識可能な「BACK」という表示10が形成されている。
【0055】
次に、この発明に係る温度測定用ウエハWのさらに他の実施形態について説明する。図10は、この発明の第6実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。なお、図10(a)は温度測定用ウエハWの平面を示す概要図であるが、シート部材26を取り外して見た状態を図示している。また、図10(b)は、温度測定用ウエハW断面を示す概要図である。
【0056】
この第6実施形態においては、第5実施形態においてユニット化した温度測定ユニット外周部全域を、フッ素樹脂からなるシート部材26により覆った温度測定ユニット42a、42b、42cで構成される。シート部材26により覆われた3個の温度測定ユニット42a、42b、42cは、シリコンウエハから成るベース基板14にサンドブラスト加工等により形成された凹部内に配置され、凹部内において、例えば、摂氏200度程度の温度で加圧加熱溶着される。なお、このシート部材26の材質としても、4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレンが使用される。
【0057】
次に、この発明に係る温度測定用ウエハWのさらに他の実施形態について説明する。図11は、この発明の第7実施形態に係る温度測定用ウエハWの概要図である。なお、図11(a)は温度測定用ウエハWの平面を示す概要図であるが、ベース基板15の下面側に配置された水晶振動子1a、1b、1cやアンテナ2a、2b、2cをも図示している。また、図11(b)は、温度測定用ウエハW断面を示す概要図である。
【0058】
この第7実施形態においては、第5実施形態と同様の3個の温度測定ユニット41a、41b、41cを、シリコンウエハから成るベース基板15の下面側に配置し、その外周部をフッ素樹脂からなるシート部材27により覆った構成を有する。ベース基板15とシート部材27とは、フッ素樹脂の融点と同じかそれより高い温度で加圧加熱溶着される。
【0059】
なお、この実施形態においても、シリコンウエハから成るベース基板15には、サンドブラスト加工等により、水晶振動子1a、1b、1cの一部を収納する凹部が形成されている。また、この実施形態においても、水晶振動子1a、1b、1cやアンテナ2a、2b、2cとベース基板15との間にも、フッ素樹脂製のシート部材28を介在させている。この実施形態においても、シート部材27、28の材質としては、4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレンが使用される。
【0060】
なお、上述したいずれの実施形態の温度測定用ウエハにおいても、半導体デバイスを製造するために利用する基板(ウエハ)と形状、厚み、材質など可能な限り類似させることが望ましい。例えば、上述した実施形態においては、いずれも、ベース基板11、12、13、14、15として、シリコンウエハを使用しているが、半導体デバイスや液晶デバイスを製造するために利用するウエハや基板と同じ材質を使用することが望ましい。また、上述した実施形態においては、いずれも、3個の水晶振動子1a、1b、1cと3個のアンテナ2a、2b、2cを使用しているが、水晶振動子とアンテナの数は、単一でもよく、また、3個以上であってもよい。また、ベース基板に対してフッ素樹脂を加圧加熱溶着する加熱温度については、3フッ化樹脂PTCFE(ポリクロロフルオロエチレン)の場合、その融点が210度から220度であるため、210度から約240度の温度が適切であり、また、4フッ化樹脂PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の場合、その融点327度のため、327度から347度程度が適切である。加圧力については、1平方センチメートルあたり1〜20gが適切である。なお、これらの加熱温度は、加圧力や加圧加熱時間により調整される。また、シート部材22乃至27の厚みは、0.1mmから1mmである。
【符号の説明】
【0061】
1a 水晶振動子
1b 水晶振動子
1c 水晶振動子
2a アンテナ
2b アンテナ
2c アンテナ
3 プリント基板
10 表示
11 ベース基板
12 第1のベース基板
13 第2のベース基板
14 ベース基板
15 ベース基板
21 薄板
22 シート部材
23 シート部材
24 シート部材
25 シート部材
26 シート部材
27 シート部材
31 スペーサ
32 スペーサ
63 送受信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、水晶振動子と、前記水晶振動子に接続されたアンテナとを備え、送受信アンテナとの間でデータを送受信する温度測定用ウエハにおいて、
前記ベース基板とフッ素樹脂を加圧加熱溶着させることにより、前記水晶振動子と前記アンテナとを、前記ベース基板または前記フッ素樹脂により液密な状態で囲ったことを特徴とする温度測定用ウエハ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度測定用ウエハにおいて、
その中央部に前記水晶振動子と前記アンテナとを収納可能な凹部が形成され、その周縁部分において前記ベース基板に加圧加熱溶着されるフッ素樹脂製の薄板を有する温度測定用ウエハ。
【請求項3】
請求項1に記載の温度測定用ウエハにおいて、
前記水晶振動子と前記アンテナとを前記ベース基板との間に収納した状態で前記ベース基板と加圧加熱溶着されるフッ素樹脂製のシート部材を有する温度測定用ウエハ。
【請求項4】
請求項1に記載の温度測定用ウエハにおいて、
第1のベース基板および第2のベース基板の間に形成された空間内に前記水晶振動子と前記アンテナとを収納するとともに、前記第1のベース基板と前記第2のベース基板とをそれらの周縁部分においてフッ素樹脂により加圧加熱溶着した温度測定用ウエハ。
【請求項5】
請求項4に記載の温度測定用ウエハにおいて、
前記水晶振動子による温度測定面とは逆側の面に、温度測定面とは逆側の面であることを認識可能な表示が形成される温度測定用ウエハ。
【請求項6】
請求項1に記載の温度測定用ウエハにおいて、
前記水晶振動子と前記アンテナとが装着されたプリント基板の複数個を前記ベース基板および前記フッ素樹脂により液密な状態で囲った温度測定用ウエハ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の温度測定用ウエハにおいて、
前記水晶振動子と当接する前記ベース基板の面に、前記水晶振動子の一部を収納する凹部が形成される温度測定用ウエハ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の温度測定用ウエハにおいて、
前記ベース基板はシリコンウエハであり、
前記フッ素樹脂は、4フッ化エチレンまたは3フッ化塩化エチレンである温度測定用ウエハ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−55099(P2013−55099A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190336(P2011−190336)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(307039857)株式会社SEBACS (4)
【Fターム(参考)】