説明

温度調節セルロース系繊維及びその用途

増強した可逆的熱特性を有するセルロース系繊維及びかかるセルロース系繊維の利用について記述されている。1つの実施形態においては、セルロース系繊維は、セルロース系材料及びその中に分散したマイクロカプセルのセットを含む繊維本体を含んでいる。該マイクロカプセルのセットは、少なくとも40J/gの潜熱及び0℃〜100℃の範囲内の転移温度を有する相変化材料を封じ込め、相変化材料は転移温度における潜熱の吸収及び放出のうちの少なくとも1つに基づく熱調節を提供する。セルロース系繊維は、溶液紡糸プロセスを介して形成され得、熱調節特性が望まれるさまざまな製品において使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願のクロスリファレンス〕
本出願は、2001年9月21日付けの「増強した可逆的熱特性を有する多成分繊維」という題のMagillらの米国特許出願第09/960,591号の一部継続出願である2002年1月15日付けの「増強した可逆的熱特性を有する多成分繊維及びその製造方法」という題のMagillらの米国特許出願第10/052,232号の一部継続出願である2003年8月7日付けの「増強した可逆的熱特性を有するセルロース系繊維及びその形成方法」という題のHartmannらの米国特許出願第10/638,290号の一部継続出願である2006年7月27日付け米国特許出願第11/495,156号の利益を請求するものである。上述の各出願の開示は、その全体が本明細書に参考により組み入れられている。
【0002】
本発明は、増強した可逆的熱特性をもつ繊維に関する。例えば、増強した可逆的熱特性を有するセルロース系繊維及びかかるセルロース系繊維の用途が記述される。
【背景技術】
【0003】
天然に発生する重合体から数多くの繊維が形成されている。これらの重合体を繊維に変換させるにはさまざまな加工作業が必要となる可能性がある。ある場合においては、結果として得られる繊維を再生繊維と呼ぶことができる。
【0004】
再生繊維の1つの重要な種類として、セルロースから形成される繊維がある。セルロースは、例えば葉、木材、樹皮及び綿といったような植物の有意な成分である。従来、セルロースから繊維を形成させるためには、溶液紡糸プロセスが使用されている。レーヨン繊維及びリヨセル繊維を形成させるためには従来湿式溶液紡糸プロセスが用いられ、一方アセテート繊維を形成させるためには従来乾式溶液紡糸プロセスが用いられる。レーヨン繊維及びリヨセル繊維は、天然に発生するセルロースと同じ又は類似の化学構造をもつセルロースを含むことが多い。しかし、これらの繊維の中に含まれているセルロースは、往々にして天然に発生するセルロースに比べ短い分子鎖長を有する。例えば、レーヨン繊維は、セルロース中のヒドロキシ基の水素の約15パーセント以下しか置換基で置換されていないセルロースを含むことが多い。レーヨン繊維の例としてはビスコースレーヨン繊維及び銅アンモニアレーヨン繊維が含まれる。アセテート繊維は、さまざまなヒドロキシ基がアセチル基により置換されている化学的に修飾された形態のセルロースを含むことが多い。
【0005】
セルロースから形成された繊維には数多くの用途がある。例えば、衣料品又は履き物といったような製品の中に取込むことのできるニット布又は織布を形成するためにこれらの繊維を使用することができる。これらの繊維から形成された布帛は、その吸湿性及びその低い体熱保持性に起因して、快適な布帛として一般に認められている。これらの特性のため、この布帛は、装用者に清涼感を与えることで温暖気候の中では望ましいものとなっている。しかしながら、これらの同じ特性自体が、寒冷気候においてこれらの布帛を望ましくないものにする可能性がある。低温多湿気候においては、これらの布帛は、湿っている場合に体温を急速に奪うため、特に望ましくないものとなり得る。もう1つの例としては、セルロースから形成された繊維は、個人的衛生用品又は医療用品といったような製品内に取り込むことのできる不織布を形成するために使用可能である。これらの繊維から形成された不織布は一般に、その吸湿性のため望ましいものと認められている。しかしながら上述のものと同様の理由で、不織布は一般に、特に変化する環境条件下では望ましい快適性レベルを提供できない。
【0006】
本明細書で記述されているセルロース系繊維を開発するニーズが生まれたのはこのような背景に基づいている。
【発明の概要】
【0007】
1つの革新的態様において、本発明はセルロース系繊維に関する。1つの実施形態において、セルロース系繊維には、セルロース系材料とその中に分散したマイクロカプセルのセットを含む繊維本体が含まれる。マイクロカプセルのセットは、少なくとも40J/gの潜熱及び0℃〜100℃の範囲内の転移温度を有する相変化材料を封じ込め、相変化材料は、転移温度での潜熱の吸収及び放出のうちの少なくとも1つに基づく熱調節を提供する。
【0008】
もう1つの革新的態様においては、本発明は布帛に関する。1つの実施形態では、この布帛は、配合されたセルロース系繊維のセットを含む。セルロース系繊維のセットには、増強した可逆的熱特性を有し延長部材を含む繊維本体を含むセルロース系繊維が含まれる。この延長部材には、セルロース系材料及びその内部に分散した温度調節材料が含まれ、この温度調節材料は、0℃〜50℃の範囲内の転移温度を有する相変化材料を含んでいる。
【0009】
本発明のその他の態様及び実施形態も同様に企図されている。例えば本発明のその他の態様は、セルロース系繊維を形成する方法、布帛を形成する方法、セルロース系繊維を用いて熱調節を提供する方法及び布帛を用いて熱調節を提供する方法に関する。上述の要約及び以下の詳細な説明は、本発明をいずれかの特定の実施形態に制限するように意図されておらず、ただ単に本発明のいくつかの実施形態を記述するよう意図されているにすぎないものである。
【0010】
本発明のさまざまな実施形態の内容及び目的をより良く理解するために、添付図面と合わせて以下の詳細な記述を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の1実施形態に従ったセルロース系繊維の3次元図を例示する。
【図2】本発明の1実施形態に従ったもう1つのセルロース系繊維の3次元図を例示する。
【図3】本発明の1実施形態に従ったさまざまなセルロース系繊維の断面図を例示する。
【図4】本発明の1実施形態に従った付加的なセルロース系繊維の断面図を例示する。
【図5】本発明の1実施形態に従ったコア・シース構成を有するセルロース系繊維の3次元図を例示する。
【図6】本発明の1実施形態に従ったコア・シース構成を有するもう1つのセルロース系繊維の3次元図を例示する。
【図7】本発明の1実施形態に従ったアイランド・イン・シー構成をもつセルロース系繊維の三次元図を例示している。
【0012】
〔詳細な説明〕
本発明の実施形態は、増強した可逆的熱特性を有する繊維及びかかる繊維の用途に関する。特に、本発明のさまざまな実施形態が、相変化材料を含むセルロース系繊維に関する。本発明のさまざまな実施形態に従ったセルロース系繊維は、異なる環境条件下で熱エネルギーを吸収しそして放出する能力を有する。さらに、セルロース系繊維は、加工性の改善(例えばセルロース系繊維又はそれから作られる製品の形成中)、より低いコスト(例えばセルロース系繊維又はそれから作られる製品の形成中)、機械的特性の改善、セルロース系繊維内への相変化材料の封じ込めの改善、及び相変化材料のより高い負荷レベルを示す可能性がある。
【0013】
本発明のさまざまな実施形態に従ったセルロース系繊維は、例えば、衣料品、履き物、個人的衛生用品及び医療用品といったような製品の中に取り込まれた時に、快適性レベルの改善を提供できる。特に、セルロース系繊維は異なる環境条件下でこのような快適性レベルの改善を提供することができる。相変化材料を使用することで、セルロース系繊維は「静的」保温力ではなくむしろ「動的」保温力を示すことができる。保温力というのは通常、1つの材料の熱(例えば体温)の保持能力を意味する。温暖な気候においては低い保温レベルが望まれることが多く、一方、寒冷気候では、高い保温レベルが望まれることが多い。セルロースから形成された従来の繊維とは異なり、本発明のさまざまな実施形態に従ったセルロース系繊維は、変化する環境条件下で異なる保温レベルを示し得る。例えば、セルロース系繊維は、温暖な気候においては低い保温レベルを、そして寒冷気候においては高い保温レベルを示し、かくして、変化する気候条件下で所望の快適性レベルを維持することができる。
【0014】
「動的」保温力を示すことと合わせて、本発明のさまざまな実施形態に従ったセルロース系繊維は、高い吸湿率を示すことができる。吸湿率というのは通常、材料の水分を吸収する又は吸い上げる能力を意味する。ある場合においては、材料の吸湿率は、特定の環境条件(例えば21℃及び65パーセント相対湿度)下での材料の湿分不含重量との関係における吸収された水分の結果としての重量増加百分率として表現され得る。本発明のさまざまな実施形態に従ったセルロース系繊維は、少なくとも5パーセント、例えば約6パーセント〜約15パーセント、約6パーセントから約13パーセント又は約11パーセントから約13パーセントの吸湿率を示すことができる。高い吸湿レベルは、汗などによる皮膚の水分量を低減させるのに役立ち得る。個人的衛生製品の場合、この高い吸湿率レベルは同様に皮膚から水分を引き出し、その水分を捕捉し、かくして皮膚のかぶれ又は汗疹を低減又は予防するためにも役立つ。さらに、セルロース系繊維により吸収された水分は、セルロース系繊維の熱伝導率を増強させることができる。かくして、例えば、衣料品又は履物の中に取込まれた場合、セルロース系繊維は皮膚の水分量を減少させると共に皮膚の温度を低下させ、かくして温暖気候下でより高い快適性レベルを提供する。セルロース系繊維内への相変化材料の使用は、快適な皮膚の温度を維持するべく温度エネルギーを吸収又は放出することにより、快適性レベルをさらに増強させる。
【0015】
さらに、本発明のさまざまな実施形態に従ったセルロース系繊維はその他の所望の特性を示し得る。例えば、不織布の中に取込まれた場合、セルロース系繊維は次の特性のうちの1つ以上のものを有することができる。すなわち(1)約2秒〜約60秒、例えば約3秒〜約20秒又は約4秒から約10秒のシンク時間;(2)約13cN/tex〜約40cN/tex、例えば約16cN/tex〜約30cN/tex又は約18cN/tex〜約25cN/texの引張り強度;(3)約10パーセント〜約40パーセント、例えば約14パーセント〜約30パーセント又は約17パーセント〜約22パーセントといった破断点伸び及び(4)約0パーセントから約6パーセント、例えば約0パーセント〜約4パーセント又は約0パーセント〜約3パーセントの沸とう水中収縮率。
【0016】
本発明のある実施形態に従ったセルロース系繊維は、延長部材のセットを内含し得る。ここで使用する「セット」という用語は、1つ以上の物体の集合物を意味する。ある例においては、セルロース系繊維は延長部材のセットで形成された繊維本体を含み得る。繊維本体は標準的に長く、その直径の数倍か(例えば100倍以上)の長さを有し得る。ある場合においては、繊維本体の繊維長は、約0.3mm〜約100mm、例えば約4mm〜約75mm又は約20mm〜約50mmであり得る。繊維本体は、さまざまな規則的又は不規則的な断面形状、例えば円形、C字形、入り組んだ形、花弁形、多肢形(multi-lumbed)又は多裂片形(multi-lobal)、八角形、楕円形、五角形、矩形、輪形、鋸歯形、方形、星形、台形状、三角形、くさび形などのいずれかの形状を有することができる。延長部材のセットのうちのさまざまな延長部材を互いに連結(例えば接着、組合せ、接合又は一体化)させて単一の繊維本体を形成することができる。
【0017】
本発明のある実施形態に従うと、セルロース系繊維を、温度調節材料を含む少なくとも1つの延長部材で形成させることができる。通常、この温度調節材料は、増強した可逆的熱特性をもつセルロース系繊維を提供するように1つ以上の相変化材料を含む。或る種の用途のためには、セルロース系繊維は、同じセルロース系材料又は異なるセルロース材料を含み得るさまざまな延長部材で形成され得、少なくとも1つの延長部材がその中に分散した状態で温度調節材料を有する。1つ以上の延長部材をさまざまなその他のタイプの重合体材料から形成できるということが考えられる。通常、温度調節材料は、少なくとも1つの延長部材の中に実質的に均等に分散させられている。しかしながら、セルロース系繊維に望まれる特定の特性に応じて、温度調節材料の分散を1つ以上の延長部材内で変化させることが可能である。さまざまな延長部材は、同じ温度調節材料又は異なる温度調節材料を含み得る。
【0018】
特定の用途に応じて、セルロース系繊維を形成する延長部材のセットを、さまざまな構成のうちの1つの構成で配置することができる。例えば、延長部材のセットはコア・シース構成又はアイランド・イン・シー構成に配置されたさまざまな延長部材を含み得る。これらの延長部材は、例えばマトリクス又は市松格子構成、セグメント化パイ構成、サイドバイサイド構成、ストライプ構成などといったその他の構成で配置することができる。ある場合では、延長部材を束状に配置することができ、この場合、延長部材は一般に互いに平行である。1つ以上の延長部材は、ある長さの繊維本体の少なくとも一部分を通って延びることができ、また、ある場合には、延長部材は長手方向に同じ広がりを有し得る。例えば、セルロース系繊維は、セルロース系繊維の長さを通して延び、温度調節材料を含む内部部材を含み得る。内部部材がセルロース系繊維を通って延びる程度は、例えばセルロース系繊維についての所望の熱調節特性によって左右され得る。さらに、その他の要因(例えば所望の機械的特性又はセルロース系繊維形成方法)も、この程度を決定する上で1つの役割を果たし得る。かくして、ある場合では、内部部材は、所望の熱調節特性を提供するべくセルロース系繊維の長さのほぼ半分から全長に至るまで延在することができる。外部部材がこの内部部材をとり囲んで、セルロース系繊維の外部を形成し得る。
【0019】
本発明のある実施形態に従うと、セルロース系繊維は約0.1〜約1000デニール又は約0.1〜約100デニールであり得る。標準的には、本発明のある実施形態に従ったセルロース系繊維は約0.5〜約15デニール、例えば約1〜約15デニール又は約0.5〜約10デニールである。当業者であれば理解できるように、デニールは標準的には1本の繊維の単位長あたりの重量の尺度を意味し、ファイバー9000メートルあたりのグラム数を表わす。本発明のその他の実施形態に従うと、セルロース系繊維は、約0.1デシテックス〜約60デシテックス、例えば約1デシテックス〜約5デシテックス又は約1.3デシテックス〜約3.6デシテックスであり得る。当業者であればわかるように、デシテックスは標準的に、繊維の単位長あたりの重量のもう1つの尺度であり、繊維10,000メートルあたりのグラム数を表わす。
【0020】
望ましい場合、本発明のある実施形態に従ったセルロース系繊維をさらに加工してデニール数のさらに小さい1つ以上の繊維を形成することが可能である。例えば、セルロース系繊維を形成する延長部材を分割するのか又は、フィブリル化して2つ以上のさらに小さいデニール数の繊維を形成させることができ、各々のデニール数のより小さい繊維は1つ以上の延長部材を含み得る。セルロース系繊維を形成する1つ以上の延長部材(又はその1つ以上の部分)を機械的に分離させるか、空気圧で分離させるか、溶解させるか、融解させるか又はさもなければ除去して、デニール数のさらに小さい1つ以上の繊維を生成することができるということが企図されている。標準的には、少なくとも1つの結果として得られたデニール数のさらに小さい繊維は、所望の熱調節特性を提供するべく温度調節材料を含む。
【0021】
特定の用途に応じて、セルロース系繊維は1つ以上の添加剤を含むこともできる。セルロース系繊維を形成する1つ以上の延長部材内に添加剤を分散させることができる。添加剤の例としては、水、界面活性剤、分散剤、消泡剤(例えばシリコーン含有化合物及びフッ素含有化合物)、酸化防止剤(例えばヒンダードフェノール及びホスフィット)、熱安定剤(例えばホスフィット、有機リン化合物、有機カルボン酸の金属塩、及びフェノール化合物)、光及びUV安定剤(例えばヒドロキシベンゾエート、ヒンダードヒドロキシベンゾエート及びヒンダードアミン)、マイクロ波吸収添加剤(例えば多官能第1級アルコール、グリセリン及び炭素)、強化用繊維(例えば炭素繊維、アラミド繊維及びガラス繊維)、伝導性繊維又は粒子(例えば黒鉛又は活性炭繊維又は粒子)、潤滑剤、加工助剤(例えば脂肪酸の金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、脂肪酸アミド、スルフォンアミド、ポリシロキサン、有機リン化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物及びフェノールポリエーテル)、難燃剤(例えばハロゲン化合物、リン化合物、有機ホスフェート、有機臭化物、アルミナ三水和物、メラミン誘導体、水酸化マグネシウム、アンチモン化合物、酸化アンチモン及びホウ素化合物)、ブロッキング防止剤(例えばシリカ、タルク、ゼオライト、金属炭酸塩及び有機重合体)、防曇剤(例えば非イオン界面活性剤、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル、ソルビタンエステル及びそれらのエトキシレート、ノニルフェニルエトキシレート及びアルコールエチオキシレート)、帯電防止剤(例えば非イオン系例えば、脂肪酸エステル、エトキシル化アルキルアミン、ジエタノールアミド及びエトキシル化アルコール;アニオン系例えばアルキルスルホネート及びアルキルホスフェート;カチオン系例えば塩化物、メトスルフェート又はニトレートの金属塩及び第4アンモニウム化合物;及び両性系例えばアルキルベタイン)、抗菌剤(例えばヒ素化合物、硫黄、銅化合物、イソチアゾリンフタルアミド、カルバメート、銀系無機剤、銀亜鉛ゼオライト、銀銅ゼオライト、銀ゼオライト、金属酸化物及びシリケート)、架橋剤又は制御分解剤(例えば過酸化物、アゾ化合物、シラン、イソシアネート及びエポキシ)、着色剤、顔料、染料、艶消し剤(例えば酸化チタン又はTiO2)、蛍光増白剤又はオプティカルブライトナー(例えばビス−ベンゾオキサゾール、フェニルクマリン及びビス−(スチリル)ビフェニル)、充填剤(例えば天然鉱物及び金属、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩及びケイ酸塩;タルク;粘土;珪灰石;黒鉛;カーボンブラック;炭素繊維;ガラス繊維及びビーズ;セラミック繊維及びビーズ;金属繊維及びビーズ;フラワー(粉);及び天然又は合成由来の繊維例えば木質繊維、でんぷん又はセルロース粉末)、カップリング剤(例えばシラン、チタン酸塩、ジルコン酸塩、脂肪酸塩、無水物、エポキシ及び不飽和ポリマー酸)、強化剤、結晶化又は核形成剤(例えば重合体の結晶化度を増大又は改善させて例えば結晶成長の速度又は動態、成長した結晶の数又は成長した結晶のタイプを改善させるあらゆる材料)など、が含まれる。
【0022】
本発明のある実施形態に従うと、耐汚染性、撥水性、より柔軟な感触、及び水分管理特性といったような改善された特性を付与するべく、セルロース系繊維(又は結果として得られる布帛)に対して又はその内部に、或る種の添加剤、処理剤、仕上げ剤、結合剤又はコーティングを塗布するか又は取込むことができる。例えば、親水性又は極性材料、例えば酸、酸塩、ヒドロキシル基(例えば天然ヒドロキシル含有材料)、エーテル、エステル、アミン、アミン塩、アミド、イミン、ウレタン、スルフォン、スルフィド、ポリ第4級化合物、グリコール、ポリエチレングリコール、天然サッカリド、セルロース、糖、タンパク質、重合体又は1つ以上の官能基を含む高分子量分子を含めた材料、及び同じものであるか又は異なるものである2つ以上の官能基を含む材料を塗布又は取込むことによって、改善された吸湿率を達成することができる。これらの材料は、繊維製造プロセス中に添加されるか又はセルロース系繊維に対し仕上げ剤として塗布されるか又は布帛製造又は仕上げプロセスの間に塗布され得る。有利には、これらの材料のうちのいくつか、例えばグリコール、ポリエチレングリコール及びエーテルは、以下でさらに論述される通り、相変化材料としても役立つことができる。処置及びコーティングのその他の例としては、Epic(Nextec Applications Inc., Vista、カリフォルニア州より入手可)、Intera(Intera Technologies, Inc., Chattanooga、テネシー州より入手可)、Zonyl Fabric Protectors(Dupont Inc., Wilmington、デラウェア州より入手可)、Scotchgard(3M Co., Maplewood、ミネソタ州より入手可)などがある。
【0023】
以上の論述は、本発明のある実施形態の総括を提供するものである。ここで図1に注意を向けると、ここには、本発明の1実施形態に従ったセルロース系繊維の3次元図が例示されている。
【0024】
図1に例示されている通り、セルロース系繊維1は、単一の延長部材2を含む単成分繊維である。延長部材2は一般的に筒形であり、セルロース系材料3及びそのセルロース系材料3の内部に分散した温度調節材料4を含む。例示された実施形態においては、温度調節材料4は、相変化材料を封じ込めるさまざまなマイクロカプセルを含むことができ、マイクロカプセルは延長部材2全体を通して実質的に均一に分散し得る。延長部材2の内部に均一にマイクロカプセルを分散させることが望ましいかもしれないものの、かかる構成が全ての用途で必要であるわけではない。セルロース系繊維1は、さまざまな重量百分率のセルロース系材料3及び温度調節材料4を含んで、所望の熱調節特性、機械的特性(例えば延性、引張り強度及び硬度)及び吸湿率を提供することができる。
【0025】
図2は、本発明の1実施形態に従ったもう1つのセルロース系繊維5の三次元図を例示している。セルロース系繊維1について論述された通り、セルロース系繊維5は、単一の延長部材6を含む単成分繊維である。延長部材6は一般に筒形であり、セルロース系材料7及びそのセルロース系繊維7の内部に分散した温度調節材料8を含む。例示した実施形態においては、温度調節材料8は、未加工形態の相変化材料(例えば相変化材料はカプセル化されていない、すなわちマイクロカプセル化又はマイクロカプセル化されていない)を含むことができ、相変化材料は、延長部材6を通して実質的に均一分散され得る。延長部材6内部で相変化材料を均一分散させることが望ましいかもしれないものの、かかる構成は全ての用途において必要であるわけではない。図2に例示されているように、相変化材料は、延長部材6の内部で分散した全く異なるドメインを形成し得る。セルロース系繊維5は、さまざまな重量パーセントのセルロース系繊維7及び温度調節材料8を含んで、所望の熱調節特性、機械的特性及び吸湿率を提供することができる。
【0026】
図3は、本発明の1実施形態に従ったさまざまなセルロース系繊維90、93、96及び99の断面図を例示している。図3で例示されている通り、各々のセルロース系繊維(例えばセルロース系繊維90)は、多肢状又は多裂片状である横断面を有する単成分繊維である。かかる多肢形状は、結果としての布帛内部により大きい「自由」容積を提供することができ、より高い吸湿率レベルを提供することができる。かかる多肢形状は同様に、皮膚からの水分の移動及びウィッキングのための流路と共に、増強した及びより迅速な吸湿率のためのより広い表面積をも提供できる。
【0027】
図3に例示されている通り、セルロース系繊維90は、全体にX字形をした横断面を有し、セルロース系材料91及びそのセルロース系繊維90の内部に分散した温度調節材料92を含む。セルロース系繊維93は全体にY字形をした横断面を有し、セルロース系材料94及びそのセルロース系繊維94の内部に分散した温度調節材料95を含む。図3に例示されている通り、セルロース系繊維96は、全体にT字形をした横断面を有し、セルロース系材料97及びそのセルロース系繊維97の内部に分散した温度調節材料98を含む。そしてセルロース系繊維99は全体にH字形をした横断面を有し、セルロース系材料100及びそのセルロース系繊維100の内部に分散した温度調節材料101を含む。
【0028】
望まれる場合、セルロース系繊維90、93、96、及び99の中に含まれる肢部の長さ対幅比は、機械的特性と吸湿率の間の所望の均衡を提供するように調整可能である。例えば、セルロース系繊維90の場合、各肢部(例えば肢部102)のL対Wの比は約1〜約15、例えば約2〜約10、約2〜約7又は約3〜約5であり得る。
【0029】
次に図4を見ると、本発明の1実施形態に従って、さまざまなセルロース系繊維12、13、14、21、22、23、24、26、27、28、29及び34の横断面図が例示されている。図4に例示されている通り、各々のセルロース系繊維(例えばセルロース系繊維21)は、さまざまな全く異なる横断面領域を含む多成分繊維である。これらの横断面領域は、各セルロース系繊維を形成するさまざまな延長部材(例えば延長部材39及び40)に対応する。
【0030】
例示された実施形態においては、各々のセルロース系繊維は第1の延長部材のセット(図4に斜線入りで示されている)及び第2の延長部材のセット(図4で斜線無しで示されている)を含んでいる。ここでは、第1の延長部材のセットは、内部に温度調節材料が分散しているセルロース系材料で形成され得る。第2の延長部材のセットは、同じセルロース系材料か又は幾分か異なる特性をもつもう1つのセルロース系材料で形成され得る。一般に第1の延長部材のセットのさまざまな延長部材を、同じセルロース系材料又は異なるセルロース系材料で形成させることができる。同様にして、第2の延長部材のセットのさまざまな延長部材を、同じセルロース系材料又は異なるセルロース系材料で形成させることができる。1つ以上の延長部材をさまざまなその他のタイプの重合体材料で形成できるものと考えられる。
【0031】
或る用途については、温度調節材料を第2の延長部材のセットの内部に分散させることができる。異なる温度調節材料を同じ延長部材又は異なる延長部材の内部に分散させることが可能である。例えば、第1の温度調節材料を第1の延長部材のセット内に分散させ、幾分か異なる特性をもつ第2の温度調節材料を第2の延長部材のセット内に分散させることができる。1つのセルロース系材料又はその他の重合体材料の内部で分散させる必要のない温度調節材料から1つ以上の延長部材を形成させることができるものと考えられる。例えば、温度調節材料は、増強した可逆的熱特性を提供しかつ第1の延長部材のセットを形成するために使用できる重合体相変化材料を含むことができる。この場合、第2の延長部材のセットが第1の延長部材のセットをとり囲んで温度調節材料の損失又は漏洩を低減させるか又は防止することが望ましいかもしれないが、必ずしも必要ではない。同じ重合体相変化材料又は異なる重合体相変化材料からさまざまな延長部材を形成させることができる。
【0032】
例示された実施形態においては、各々のセルロース系繊維は、温度調節材料を含む第1の延長部材のセットを、第2の延長部材のセットとの関係においてさまざまな重量百分率で含むことができる。例えば、セルロース系繊維の熱調節特性が1つの制御考慮事項である場合には、より大きい割合のセルロース系繊維が、温度調節材料を含む第1の延長部材を含むことができる。その一方で、セルロース系繊維の機械的特性及び吸湿率が制御考慮事項である場合には、より大きな割合のセルロース系繊維が、温度調節材料を含む必要のない第2の延長部材のセットを含むことができる。代替的には、セルロース系繊維の熱調節特性とその他の特性の平衡させる場合、第2の延長部材のセットが同じ又は異なる温度調節材料を含むことが望ましいことがある。
【0033】
例えば、例示されている実施形態内のセルロース系繊維は、約1重量パーセント〜約99重量パーセントの第1の延長部材のセットを含み得る。標準的には、セルロース系繊維は約10重量パーセント〜約90重量パーセントの第1の延長部材のセットを含む。一例としては、セルロース系繊維は、90重量パーセントの第1の延長部材と10重量パーセントの第2の延長部材を含むことができる。この例については、第1の延長部材は60重量パーセントの温度調節材料を含むことができ、かくしてセルロース系繊維は54重量パーセントの温度調節材料を含むことになる。もう1つの例としては、セルロース系繊維は、第1の延長部材を最高約50重量パーセントまで含むことができ、この第1の延長部材自体最高約50重量パーセントの温度調節材料を含むことができる。このような重量百分率は、最高約25重量パーセントの温度調節材料を伴うセルロース系繊維を提供し、温度調節材料について有効な熱調節特性、機械的特性及び吸湿率を提供する。延長部材の断面積を調整することによってか又はセルロース系繊維の長さを通って延長部材が延びる程度を調整することによって、セルロース系繊維の合計重量との関係における延長部材の重量百分率を変化させることができるということが考えられる。
【0034】
図4を参照すると、左側の欄10は、3つのセルロース系繊維12、13及び14を例示している。セルロース系繊維12は、セグメント化パイ構成で配置されたさまざまな延長部材を含んでいる。例示された実施形態においては、第1の延長部材のセット15、15’、15’’、15’’’及び15’’’’及び第2の延長部材のセット16、16’、16’’、16’’’及び16’’’’は、交互に配置され、くさび形をした横断面を有する。一般に延長部材は、同じであるか又は異なるものである横断面形状及び面積を有することができる。セルロース系繊維12は、10個の延長部材を伴って例示されているが、一般的には2つ以上の延長部材をセグメント化パイ構成で配置することができ、延長部材の少なくとも1つが標準的には温度調節材料を含むものとすることが考えられる。
【0035】
セルロース系繊維13は、アイランド・イン・シー構成で配置されたさまざまな延長部材を含む。例示された実施形態においては、第1の延長部材のセット(例えば延長部材35、35’、35’’及び35’’’)が第2の延長部材36の中に位置づけされこれにより取り囲まれており、かくして「シー(海)」の中の「アイランド(島)」を形成している。このような構成は、セルロース系繊維13内部の温度調節材料のさらに均一な分布を提供するために役立つ。例示された実施形態においては、第1の延長部材のセットは、台形の横断面を有している。一般に、第1の延長部材のセットは同じか又は異なるものである横断面形状及び面積を有することができる。延長部材13は第2の延長部材36の内部に位置づけされこれにより取り囲まれている17個の延長部材を伴って例示されているものの、一般的には、1つ以上の延長部材が第2の延長部材36の内部に位置づけされこれによりとり囲まれ得るということが考えられる。
【0036】
セルロース系繊維14は、ストライプ構成で配置されたさまざまな延長部材を含んでいる。例示された実施形態においては、第1の延長部材のセット37、37’、37’’、37’’’及び37’’’’及び第2の延長部材セット38、38’、38’’及び38’’’は交互に配置され、セルロース系繊維14の長手方向スライスの形をしている。一般に、延長部材は、同じか又は異なるものである横断面形状及び面積を有することができる。セルロース系繊維14は、自己捲縮又は自己テクスチャリング繊維であり得、ロフト、バルク、断熱、伸縮性又はその他の類似の特性を付与することができる。セルロース系繊維14は9個の延長部材を伴って例示されているが、一般に2つ以上の延長部材をストライプ構成で配置することができ、延長部材のうちの少なくとも1つは温度調節材料を含むものとすることが考えられる。
【0037】
セルロース系繊維12及び14については、第1の延長部材のセットの1つ以上の延長部材(例えば延長部材15)が、1つ以上の隣接する延長部材(例えば延長部材16及び16’’’’)によって部分的にとり囲まれ得る。相変化材料を含む延長部材が完全に取り囲まれていない場合、封じ込め構造(例えばマイクロカプセル)を用いて、延長部材内部に分散した相変化材料を封じ込めることが望ましいかもしれないが、必ずしも必要ではない。ある場合では、セルロース系繊維12、13及び14をさらに加工して、デニール数のさらに小さい1つ以上の繊維を形成することができる。かくして、例えばセルロース系繊維12を形成する延長部材12を分割することができ、そうでなければ1つ以上の延長部材(又はその1つ以上の一部分)を溶解、融解又はその他の形で除去することができる。結果として得られたデニール数のさらに小さい繊維は、例えば互いに連結された延長部材15及び16を含むことができる。
【0038】
図4の中央の欄20は、4つのセルロース系繊維21、22、23及び24を例示している。特に、セルロース系繊維21、22、23及び24は各々、コア・シース構成で配置されたさまざまな延長部材を含む。
【0039】
セルロース系繊維21は、第2の延長部材40の内部に位置づけされそれによりとり囲まれた第1の延長部材39を含む。より特定的には、第1の延長部材39は、温度調節材料を含むコア部材として形成される。このコア部材は、シース部材として形成される第2の延長部材40の内部に同心的に位置づけされ、これによって完全にとり囲まれる。例示された実施形態においては、セルロース系繊維21は、約25重量パーセントのコア部材と約75重量パーセントのシース部材を含むことができる。
【0040】
セルロース系繊維21について論述した通り、セルロース系繊維22は第2の延長部材42の内部に位置づけされそれによりとり囲まれた第1の延長部材41を含む。第1の延長部材41は、温度調節材料を含むコア部材として形成される。このコア部材は、シース部材として形成される第2の延長部材42の内部に同心的に位置づけされ、これによって完全にとり囲まれる。例示された実施形態においては、セルロース系繊維22は、約50重量パーセントのコア部材と約50重量パーセントのシース部材を含むことができる。
【0041】
セルロース系繊維23は、第2の延長部材44の内部に位置づけされこれによりとり囲まれた第1の延長部材43を含む。ここでは、第1の延長部材43は、シース部材として形成される第2の延長部材44の内部に偏心的に位置づけされるコア部材として形成されている。セルロース系繊維23は、所望の熱調節特性、機械的特性及び吸湿率を提供するべく、さまざまな重量百分率のコア部材とシース部材を含むことができる。
【0042】
図4で例示されている通り、セルロース系繊維24は第2の延長部材46の内部に位置づけされこれによって取り囲まれている第1の延長部材45を含む。例示された実施形態においては、第1の延長部材45は、3裂片の横断面形状をもつコア部材として形成されている。このコア部材は、シース部材として形成されている第2の延長部材46の内部に同心的に位置づけされている。セルロース系繊維24は、所望の熱調節特性、機械的特性及び吸湿率を提供するべく、さまざまな重量百分率のコア部材とシース部材を含むことができる。
【0043】
一般に、コア部材は、例えば円形、入り組んだ形、花弁形、多裂片、八角形、楕円形、五角形、矩形、鋸歯状、方形、台形、三角形、くさび形などといった、さまざまな規則的な又は不規則な断面形状のいずれかを有し得るものと考えられる。セルロース系繊維21、22、23、及び24は、各々シース部材の内部に位置づけされそれによりとり囲まれた1つのコア部材を伴って例示されているが、(例えばセルロース系繊維13について例示されているものと類似の要領で)2つ以上のコア部材がシース部材の内部に位置づけされそれによってとり囲まれ得るものと考えられる。これらの2つ以上のコア部材は、同じか又は異なるものである横断面形状及び面積を有することができる。同様に、セルロース系繊維が、コア・シース構成に配置された3つ以上の延長部材を含み、かくして延長部材がセルロース系繊維の同心的又は偏心的長手方向スライスとして整形されるようにすることができるものと考えられる。かくして、例えば、セルロース系繊維は、シース部材の内部に位置づけされそれによって取り囲まれているコア部材を含み、このシース部材はそれ自体もう1つのシース部材内部に位置づけされそれによって取り囲まれていることが可能である。
【0044】
図4の右側の欄30は、5つのセルロース系繊維26、27、28、29及び34を例示する。特に、セルロース系繊維26、27、28、29及び34は各々、並列構成で配置されたさまざまな延長部材を含む。
【0045】
セルロース系繊維26は、第2の延長部材48に隣接して位置づけされそれにより部分的に取り囲まれている第1の延長部材47を含む。例示されている実施形態においては、延長部材47及び48は、半円形の横断面形状を有する。ここでは、セルロース系繊維26は、約50重量パーセントの第1の延長部材47と約50重量パーセントの第2の延長部材48を含み得る。延長部材47及び48は同様に、セグメント化パイ又はストライプ構成で配置されているものとして特徴づけすることもできる。
【0046】
セルロース系繊維26について論述された通り、セルロース系繊維27は第2の延長部材50に隣接して位置づけされこれにより部分的に取り囲まれている第1の延長部材49を含む。例示された実施形態においては、セルロース系繊維27は約20重量パーセントの第1の延長部材49及び約80重量パーセントの第2の延長部材50を含み得る。延長部材49及び50は同様に、コア・シース構成で配置され、かくして第1の延長部材49が第2の延長部材50との関係において偏心的に位置づけされそれにより部分的にとり囲まれるようになっているものとして特徴づけすることもできる。
【0047】
セルロース系繊維28及び29は、混合粘性の繊維の例である。セルロース系繊維28及び29は各々、内部に分散した温度調節材料を有しかつ第2の延長部材52又は54に隣接して位置づけされそれにより部分的に取り囲まれている第1の延長部材51又は53を含んでいる。
【0048】
混合粘性繊維は、自己捲縮又は自己テクスチャリング繊維であり、かくして繊維の捲縮又はテクスチャリングが、ロフト、バルク、断熱、伸縮性又はその他の特性を付与できるものと考えることができる。標準的には、混合粘性繊維は、異なる重合体材料から形成されるさまざまな延長部材を含む。混合粘性繊維を形成するために使用される異なる重合体材料としては、異なる粘度、化学的構造又は分子量をもつ重合体がある。混合粘性繊維が延伸される場合、不均一な応力がさまざまな延長部材間で生み出される可能性があり、混合粘性繊維は捲縮又は屈曲し得る。ある場合では、混合粘性繊維を形成するのに用いられる異なる重合体材料は、異なる結晶化度をもつ重合体を含むことができる。例えば、第1の延長部材を形成するために使用される第1の重合体材料は、第2の延長部材を形成するために使用される第2の重合体材料よりも低い結晶化度を有することができる。混合粘性繊維が延伸される場合、第1及び第2の重合体材料は異なる結晶化度を受けて、混合粘性繊維内に方向性及び強度を「ロック」することができる。その後の加工(例えば熱処理)中の混合粘性繊維の再方向づけを防止又は削減するのに充分な結晶化度が所望される可能性がある。
【0049】
例えば、セルロース系繊維28については、第1の延長部材51を第1のセルロース系材料から形成させ、第2の延長部材52を、幾分か異なる特性をもつ第2のセルロース系材料で形成させることができる。第1の延長部材51及び第2の延長部材52を同じセルロース系材料で形成させることができ、セルロース系繊維28に対し自己捲縮又は自己テクスチャリング特性を付与するために第1の延長部材51内部で温度調節材料を分散させることができるものと考えられる。同様に、重合体相変化材料から第1の延長部材51を形成させ、幾分か異なる特性をもつセルロース系材料で第2の延長部材52を形成させることができることも考えられる。セルロース系繊維28及び29は、所望の熱調節特性、機械的特性、吸湿率及び自己捲縮又は自己テクスチャリング特性を提供するべく第1の延長部材51及び53及び第2の延長部材52及び54をさまざまな重量百分率で含むことができる。
【0050】
セルロース系繊維34は、ABA繊維の一例である。図4で例示されているように、セルロース系繊維34は、第2の延長部材のセット56及び56’の間に位置づけされこれにより取り囲まれている第1の延長部材55を含む。例示された実施形態においては、第1の延長部材55は、内部に分散した熱調節特性を有するセルロース系材料から形成される。ここでは、第2の延長部材セット56及び56’は、同じくセルロース系材料又は幾分か異なる特性をもつもう1つのセルロース系材料から形成され得る。一般に、延長部材55、56及び56’は、同じ又は異なるものである横断面形状及び面積を有することができる。延長部材55、56及び56’は同様に、ストライプ構成で配置されるものとして特徴づけすることもできる。
【0051】
次に図5に注目すると、この図は、本発明の1実施形態に従ったコア・シース構成を有するセルロース系繊維59の3次元図を例示している。セルロース系繊維59は、延びた環状のシース部材58内部に位置づけされそれによって取り囲まれている延びた全体に筒形のコア材料57を含む。例示された実施形態においては、コア部材57は、実質的にセルロース系繊維59の長さを通って延びており、セルロース系繊維59の外部を形成するシース部材58により完全にとり囲まれるか又は包み込まれている。一般に、コア部材57は、シース部材58の中に同心的に又は偏心的に位置づけされ得る。
【0052】
図5に例示されている通り、コア部材57は、内部に分散した温度調節材料61を含む。例示された実施形態においては、温度調節材料61は相変化材料を封じ込めるさまざまなマイクロカプセルを含むことができ、マイクロカプセルはコア部材57全体を通って実質的に均一に分散され得る。コア部材57の内部でマイクロカプセルを均一に分散させることが望ましいかもしれないが、このような構成が全ての用途で必要であるわけではない。コア部材57及びシース部材58は、同じセルロース系材料又は異なるセルロース系材料から形成可能である。コア部材57及びシース部材58のいずれか又は両方をさまざまなその他のタイプの重合体材料から形成させることができるものと考えられる。セルロース系繊維59は、所望の熱調節特性、機械的特性及び吸湿率を提供するべくさまざまな重量百分率のコア部材57及びシース部材58を含むことができる。
【0053】
図6は、本発明の1実施形態に従ったコア・シース構成を有するもう一つのセルロース系繊維60の3次元図を例示している。セルロース系繊維59について論述された通り、セルロース系繊維60は、その長さを通って実質的に延びる、長く全体に筒形のコア部材63を含む。コア部材63は、セルロース系繊維60の外部を形成する長く環状のシース部材64の内部に位置づけされ、それにより完全にとり囲まれるか又は包み込まれている。一般にコア部材63は、シース部材64の内部に同心的又は偏心的に位置づけされ得る。
【0054】
図6に例示されている通り、コア部材63は、その内部に分散した温度調節材料62を含む。ここでは、温度調節材料62は、未加工形態の相変化材料を含むことができ、相変化材料は、コア部材63全体にわたり実質的に均一に分散され得る。相変化材料をコア部材63内部に均一に分散させることが望ましいかもしれないが、かかる構成が全ての用途において必要であるわけではない。例示された1実施形態においては、相変化材料は、コア部材63の内部に分散した全く異なるドメインを形成することができる。コア部材63をとり囲むことによって、シース部材64は、コア部材63内部に相変化材料を囲い込むのに役立ち得る。従って、シース部材64は、繊維形成中又は最終的使用中の相変化材料の損失又は漏洩を低減又は防止することができる。コア部材63及びシース部材64は、同じセルロース系材料又は異なるセルロース系材料から形成され得る。コア部材63及びシース部材64のいずれか一方又は両方をさまざまなその他のタイプの重合体材料から形成させることができるものと考えられる。かくして、例えば、コア部材63を、セルロース系材料内に分散される必要のない重合体相変化材料から形成させることができるものと考えられる。セルロース系繊維60は、所望の熱調節特性、機械的特性及び吸湿率を提供するべく、さまざまな重量百分率のコア部材63及びシース部材64を含み得る。
【0055】
図7を参照すると、本発明の実施形態に従って、アイランド・イン・シー構成をもつセルロース系繊維70の3次元図が例示されている。セルロース系繊維70は、長く延びたシー(海)部材71の内部に位置づけされそれによって取り囲まれている長く全体に筒形のアイランド(島)部材のセット72、73、74及び75を含む。例示された実施形態においては、アイランド部材72、73、74及び75は実質的にセルロース系繊維70の長さを通って延び、セルロース系繊維70の外部を形成するシー部材71により完全に取り囲まれているか又は包み込まれている。4つのアイランド部材が例示されているものの、セルロース系繊維70は、その特定の用途に応じて多少の差のあるアイランド部材を含み得るものと考えられる。
【0056】
アイランド部材72、73、74及び75の内部に1つ以上の温度調節材料を分散させることができる。図7に例示されている通り、セルロース系繊維70は2つの異なる温度調節材料80及び81を含む。アイランド部材72及び75は温度調節材料80を含み、一方アイランド部材73及び74は温度調節材料81を含む。例示された実施形態においては、温度調節材料80及び81は、未加工形態で異なる相変化材料を含むことができ、相変化材料はそれぞれのアイランド部材内部に分散した全く異なるドメインを形成することができる。アイランド部材72、73、74及び75をとり囲むことにより、シー部材71は、アイランド部材72、73、74及び75内部に相変化材料を囲い込むのに役立ち得る。
【0057】
例示された実施形態においては、シー部材71はシーセルロース系材料82で形成され、アイランド部材72、73、74及び75はそれぞれアイランドセルロース系材料76、77、78及び79で形成されている。シーセルロース系材料82及びアイランドセルロース系材料76、77、78及び79は、同じであるか又は何らかの形で互いに異なるものであり得る。シー部材71及びアイランド部材72、73、74及び75のうちの1つ以上のものを、その他のさまざまな形の重合体材料から形成することができるものと考えられる。かくして、例えば、セルロース系材料内に分散される必要のない重合体相変化材料からアイランド部材72、73、74及び75のうちの1つ以上のものを形成させることができるものと考えられる。セルロース系繊維70は、所望の熱調節特性、機械的特性及び吸湿率を提供するべく、さまざまな重量百分率のシー部材71及びアイランド部材72、73、74及び75を含むことができる。
【0058】
以上で論述した通り、本発明のある実施形態に従ったセルロース系繊維は、1つ以上の温度調節材料を含み得る。温度調節材料は、標準的に1つ以上の相変化材料を含む。一般に相変化材料は、温度安定化範囲内で熱流を調節、低減又は削除するべく熱エネルギーを吸収又は放出する能力を有する任意の物質(又は任意の物質混合物)であり得る。温度安定化範囲は、特定の転移温度又は特定の転移温度範囲を含み得る。本発明のさまざまな実施形態と併せて使用される相変化材料は、標準的に相変化材料が2つの状態の間で転移するにつれて(例えば液体及び固体状態、液体及び気体状態、固体及び気体状態又は2つの固体状態の間)、相変化材料が熱を吸収又は放出している時間中熱エネルギーの流れを阻害する能力をもつ。この作用は標準的に過渡的である。ある場合では、相変化材料は、加熱又は冷却プロセス中に相変化材料の潜熱が吸収又は放出されるまで、熱エネルギー流を有効に阻害できる。熱エネルギーは、相変化材料から貯蔵又は除去され得、相変化材料は標準的に、熱又は低温源によって有効に再充填され得る。適当な相変化材料を選択することにより、さまざまな製品うちの任意のものにおいて使用するようにセルロース系繊維を設計することができる。
【0059】
ある用途については、相変化材料は固体/固体相変化材料であり得る。固体/固体相変化材料は、2つの固体状態間で転移(例えば結晶質又は準結晶質相変態)し、従って標準的に使用中に液体とはならないタイプの相変化材料である。
【0060】
相変化材料は、2つ以上の物質の混合物を含み得る。2つ以上の異なる物質を選択し混合物を形成することにより、セルロース系繊維の任意の特定の用途について広範囲にわたり温度安定化範囲を調整することができる。ある場合では、2つ以上の異なる物質の混合物は、セルロース系繊維内に取込まれた時点で、2つ以上の全く異なる転移温度又は単一の修正された転移温度を示すことができる。
【0061】
本発明のさまざまな実施形態と併せて使用可能な相変化材料としては、さまざまな有機及び無機物質が含まれる。相変化材料の例としては、炭化水素(例えば、直鎖アルカン又はパラフィン系炭化水素、分岐アルカン、不飽和炭化水素、ハロゲン化炭化水素及び脂環式炭化水素)、水和塩(例えば、塩化カルシウム六水和物、臭化カルシウム六水和物、硝酸マグネシウム六水和物、硝酸リチウム三水和物、フッ化カリウム四水和物、アンモニウムミョウバン、塩化マグネシウム六水和物、炭酸ナトリウム十水和物、リン酸二ナトリウム十二水和物、硫酸ナトリウム十水和物及び酢酸ナトリウム三水和物)、ロウ、油、水、脂肪酸、脂肪酸エステル、二塩基酸、二塩基エステル、1−ハロゲン化物、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコール、芳香族化合物、クラスレート、半クラスレート、ガスクラスレート、無水物(例えば、ステアリン酸無水物)、エチレンカルボネート、多価アルコール(例えば、2,2−ジメチル−l,3−プロパンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−l,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ペンタグリセリン、テトラメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、テトラメチロールプロパン、2−アミノ−2−メチル−l,3−プロパンジオール、モノアミノペンタエリスリトール、ジアミノペンタエリスリトール及びトリス(ヒドロキシメチル)酢酸)、重合体(例えば、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、マロン酸ポリプロピレン、セバシン酸ポリネオペンチルグリコール、グルタル酸ポリペンタン、ミリスチン酸ポリビニル、ステアリン酸ポリビニル、ラウリン酸ポリビニル、ポリヘキサデシルメタクリレート、ポリオクタデシルメタクリレート、ニ塩基酸(又はそれらの誘導体)を用いたグリコールの重縮合により生成されたポリエステル(又はそれらの誘導体)、及び共重合体、例えばアルキル炭化水素側鎖又はポリエチレングリコール側鎖を伴うポリアクリレート又はポリ(メト)アクリレート及びポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールを含む共重合体、金属及びそれらの混合物がある。
【0062】
相変化材料の選択は、標準的には、相変化材料を含むセルロース系繊維の転移温度又は特定の用途によって左右される。相変化材料の転移温度は標準的に、相変化材料により維持され得る所望の温度又は所望の温度範囲と相関関係をもつ。例えば、室温又は正常な体温に近い転移温度をもつ相変化材料が、衣類の用途には望ましい可能性がある。特に、かかる相変化材料を含むセルロース系繊維は、ユーザーにとって快適な皮膚温度を維持するべく、衣料品又は履き物の中に取込むことができる。個人的衛生用品又は医療用品に関係する用途といったようなその他の用途についても、室温又は正常な体温に近い転移温度を有する相変化材料が望ましい可能性がある。ある場合では、相変化材料は、約−5℃〜約125℃、例えば約0℃〜約100℃、約0℃〜約50℃、約15℃〜約45℃、約22℃から約40℃、又は約22℃〜約28℃の範囲内の転移温度を有することができる。
【0063】
相変化材料の選択は、相変化材料の潜熱によっても左右され得る。相変化材料の潜熱は、標準的にその熱伝導調節能力と相関関係をもつ。ある場合では、相変化材料は、少なくとも約40J/g、例えば少なくとも約50J/g、少なくとも約60J/g、少なくとも約70J/g、少なくとも約80J/g、少なくとも約90J/g、又は少なくとも約100J/gである潜熱を有し得る。かくして例えば、相変化材料は、約40J/g〜約400J/g、例えば約60J/g〜約400J/g、約80J/g〜約400J/g又は約100J/gから約400J/gの潜熱を有することができる。
【0064】
特に有用な相変化材料としては、10〜44個の炭素原子をもつパラフィン系炭化水素(すなわちC10〜C44パラフィン系炭化水素)がある。表1は、本書に記述されているセルロース系繊維内で相変化材料として使用可能なC13−C28パラフィン系炭化水素のリストを示している。パラフィン系炭化水素の炭素原子の数は、標準的にその融点と相関関係をもつ。例えば、1分子あたり28個の直鎖炭素原子を含むn−オクタコサンは、約61.4℃の融点を有する。これと比較して、1分子あたり13個の直鎖炭素原子を含むn−トリデカンは、約−5.5℃の融点を有する。1分子あたり18個の直鎖炭素を含み約28.2℃の融点を有するn−オクタデカンは、衣類の用途にとって特に望ましいものであり得る。
【0065】
【表1】

【0066】
その他の有用な相変化材料としては、結果として得られるセルロース系繊維の所望の用途に適した転移温度を有する重合体相変化材料が含まれる。かくして、衣類及びその他の用途のためには、重合体相変化材料は約0℃〜約50℃、例えば約22℃〜約40℃の範囲内の転移温度を有することができる。
【0067】
重合体相変化材料は、さまざまな鎖構造のいずれかを有し、1つ以上のタイプの単量体単位を含む重合体(又は重合体混合物)を含むことができる。特に、重合体相変化材料は、直鎖重合体、分岐重合体(例えば星型分岐重合体、櫛型分岐重合体又は樹枝状分岐重合体)又はそれらの混合物を含み得る。ある用途については、重合体相変化材料は望ましくは、より高い密度及びより高秩序の分子パッキング及び結晶化度を可能にするために少量の分岐を伴う重合体又は直鎖重合体を含む。このようなより高い秩序分子パッキング及び結晶化度は、より大きな潜熱及びより狭い温度安定化範囲(例えば明確な転移温度)を導き得る。重合体相変化材料は、単独重合体、共重合体(例えばターポリマー、統計共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、周期共重合体、ブロック共重合体、ラジアル共重合体、又はグラフト共重合体)又はそれらの混合物を含み得る。重合体相変化材料を形成する1つ以上のタイプの単量体単位の特性は、重合体相変化材料の転移温度に影響を及ぼす可能性がある。従って、単量体単位の選択は、重合体相変化材料を含むセルロース系繊維の所望の転移温度又は所望の用途によって左右され得る。当業者であれば理解できるように、重合体の反応性及び機能性は、例えばアミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、エポキシド、無水物、イソシアネート、シラン、ケトン、アルデヒドなどといったような1つ以上の官能基の付加又は置換によって改変され得る。同様に、重合体相変化材料は、熱、水分又は化学物質に対する耐性又は堅牢性を増大させるため架橋、エンタングルメント又は水素結合する能力をもつ重合体を含み得る。
【0068】
当業者であればわかるように、ある重合体は、その重合体を形成させるのに用いた加工条件によって分子量が決定され得ることを理由として、異なる分子量をもつさまざまな形態で提供され得る。従って、重合体相変化材料は、特定の分子量又は特定の分子量範囲をもつ重合体(又は重合体の混合物)を含み得る。本明細書で使用する「分子量」という用語は、重合体(又は重合体混合物)の数平均分子量又は重量平均分子量を意味し得る。
【0069】
或る用途のためには、例えばパラフィン系炭化水素といったような非重合体相変化材料に比べてさらに高い分子量、さらに大きい分子サイズ及びさらに高い粘度を有することの結果として、重合体相変化材料が望ましい可能性がある。かかる特性の結果として、重合体相変化材料は、繊維形成中又は最終的使用中にセルロース系繊維から漏洩する傾向が少なくなる可能性がある。本発明のある実施形態については、重合体相変化材料は約400〜約5,000,000、例えば約2,000〜約5,000,000、約8,000〜約100,000又は約8,000〜約15,000の範囲内の数平均分子量を有する重合体を含み得る。当業者であればわかるように、重合体についてのより高い分子量は、標準的にその重合体についてのより低い酸価と結びつけられる。コア・シース又はアイランド・イン・シー構成をもつセルロース系繊維内に取込まれた場合、より高い分子量又はより高い粘度は、セルロース系繊維の外部を形成するシース部材又はシー部材の中を重合体相変化材料が流れるのを防ぐのに役立つ。熱調節特性を提供することに加えて、重合体相変化材料は、本発明のさまざまな実施形態に従ってセルロース系繊維内に取込まれた場合に改善された機械的特性を提供できる。ある場合では、所望の転移温度を有する重合体相変化材料をセルロース系材料又はその他の重合体材料と混合して延長部材を形成させることができる。その他のケースでは、重合体相変化材料は、適切な機械的特性を提供でき、かくしてセルロース系材料又はその他の重合体材料を必要とせずに延長部材を形成させるために使用可能である。かかる構成は、重合体相変化材料のより高い負荷レベル及び改善された熱調節特性を可能にし得る。
【0070】
例えば、本発明のある実施形態においては、相変化材料としてポリエチレングリコールを使用することができる。ポリエチレングリコールの数平均分子量は標準的にその融点と相関関係をもつ。例えば、約570〜約630の範囲内の数平均分子量を有するポリエチレングリコール(例えばミシガン州MidlandのDow Chemical Companyから入手可能なCarbowaxTM 600)は、標準的に約20℃〜約25℃の範囲内の融点を有し、このためこれらは衣類の用途において望ましいものとなっている。その他の温度安定化範囲で有用であり得るその他のポリエチレングリコールとしては、約400の数平均分子量及び約4℃〜約8℃の範囲内の融点を有するポリエチレングリコール、約1,000〜約1,500の範囲内の数平均分子量及び約42℃〜約48℃の範囲内の融点を有するポリエチレングリコール、そして約6,000の数平均分子量及び約56℃〜約63℃の範囲内の融点を有するポリエチレングリコール(ミシガン州MidlandのDow Chemical Companyから入手可能なCarbowaxTM 400、1500及び6000)がある。
【0071】
さらなる有用な相変化材料としては、脂肪酸でエンドキャッピングされているポリエチレングリコールベースの重合体相変化材料がある。例えば、約22℃〜約35℃の範囲内の融点をもつポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルは、ステアリン酸又はラウリン酸でエンドキャッピングされている約400〜約600の範囲内の数平均分子量をもつポリエチレングリコールから形成させることができる。さらなる有用な相変化材料としては、テトラメチレングリコールをベースとする重合体相変化材料が含まれる。例えば、約1,000〜約1,800の範囲内の数平均分子量をもつポリテトラメチレングリコール(例えばデラウェア州WilmingtonのDuPont Inc.,から入手可能なTerathane(商標)1000及び1800)は、標準的に、約19℃〜約36℃の範囲内の融点を有する。約60℃〜約65℃の範囲内の融点を有するポリエチレンオキシドも又、本発明のある実施形態において相変化材料として使用可能である。
【0072】
或る用途においては、重合体相変化材料は、従来の重合プロセスを用いて形成され得る約0℃〜約50℃の範囲内の融点をもつ単独重合体を含み得る。表2は、異なるタイプの単量体単位から形成させることのできるさまざまな単独重合体の融点を示している。
【0073】
【表2】

【表3】

【表4】

【0074】
重合体相変化材料は、例えば二酸(又はその誘導体)でのグリコール(又はその誘導体)の重縮合によって形成され得る約0℃〜約40℃の範囲内の融点をもつポリエステルを含み得る。表3は、グリコールと二酸の異なる組合せから形成可能であるさまざまなポリエステルの融点を示している。
【0075】
【表5】

【0076】
ある場合では、相変化材料(例えば上述の相変化材料)を重合体(又は重合体の混合物と反応させることによって)所望の転移温度を有する重合体相変化材料を形成させることができる。かくして、例えば、n−オクタデシル酸(すなわちステアリン酸)をポリビニルアルコールと反応させるか又はそれでエステル化してステアリン酸ポリビニルを生成でき、そうでなければドデカン酸(ラウリン酸)をポリビニルアルコールと反応させるか又はそれでエステル化してラウリン酸ポリビニルを生成することができる。相変化材料(例えばアミン、カルボキシル、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、硫黄などといった1つ以上の官能基を伴う相変化材料)と重合体のさまざまな組合せを反応させて所望の遷移温度をもつ重合体相変化材料を生成させることができる。
【0077】
所望の転移温度を有する重合体相変化材料をさまざまなタイプの単量体単位から形成させることができる。例えば、ポリオクタデシルメタクリレートと同様に、メタクリル酸とオクタデシルアルコールのエステル化によって形成可能なオクタデシルメタクリレートを重合することにより、重合体相変化材料を形成させることができる。同様に、重合体(又は重合体混合物)を重合させることによって重合体相変化材料を形成させることができる。例えば、それぞれポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリテトラメチレングリコールメタクリレート及びポリテトラメチレングリコールアクリレートを重合させることによって、ポリ−(ポリエチレングリコール)メタクリレート、ポリ(ポリエチレングリコール)アクリレート、ポリ−(ポリテトラメチレングリコール)メタクリレート、及びポリ−(ポリテトラメチレングリコール)アクリレートを形成させることができる。この例においては、単量体単位はメタクリル酸(又はアクリル酸)でのポリエチレングリコール(又はポリテトラメチレングリコール)のエステル化によって形成可能である。ポリグリコールをアリルアルコールでエステル化又は酢酸ビニルでトランスエステル化してポリグリコールビニルエーテルを形成させることができ、このポリグリコールビニルエーテル自体を重合させてポリ−(ポリグリコール)ビニルエーテルを形成させることができるものと考えられる。類似の要領で、重合体相変化材料を、例えばエステル又はエーテルでエンドキャッピングされたポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールといったようなポリグリコールの同族体から形成できるものと考えられる。
【0078】
本発明のある実施形態に従うと、温度調節材料は、未加工形態の相変化材料を含み得る。セルロース系繊維の形成中、未加工形態での相変化材料を、さまざまな形態(例えばバルク形態、粉末、ペレット、顆粒、フレークなど)のうちのいずれかで固体として、又はさまざまな形態(融解形態、溶媒中に溶解した状態など)のいずれかの形で液体として提供することができる。
【0079】
本発明のその他の実施形態に従うと、温度調節材料は、相変化材料をカプセル化するか、封じ込めるか、とり囲むか、吸収するか又はこれと反応する封じ込め構造を含むことができる。封じ込め構造は、同様に、セルロース系繊維又はそれから作られた製品の形成中に相変化材料に対する一定の保護(例えば溶媒、高温又はせん断力からの保護)をも提供しながら相変化材料の取扱いを容易にすることができる。その上、封じ込め構造は、最終的使用の間のセルロース系繊維からの相変化材料の漏出を削減又は防止するのに役立つことができる。本発明のある実施形態に従うと、内部に分散した相変化材料を有する延長部材がもう1つの延長部材により完全に取り囲まれていない場合、封じ込め構造の使用が望ましいが、必ずしも必要ではない。その上、相変化材料と共に封じ込め構造を使用することにより、(1)標準のセルロース系繊維との関係においてそれに匹敵するか又はそれよりも優れた特性(例えば吸湿率に関して)を提供する;(2)結果として得られる生成物をより低い全体的重量で提供するべくより低い密度のセルロース系繊維を可能にする;及び(3)標準的艶消し剤(例えばTiO2)の代りに又はこれと併せて使用可能なさほど高価でない艶消し剤として役立つ、といったさまざまその他の利点が得られるということも発見された。特定の理論により束縛されることを望まないが、これらの利点のうちのいくつかは、或る種の封じ込め構造の比較的低い密度ならびに結果としてのセルロース系繊維の内部の空隙の形成の結果もたらされるものである、と考えられている。
【0080】
例えば、温度調節材料は、相変化材料を封じ込めるさまざまなマイクロカプセルを含むことができ、マイクロカプセルは、セルロース系繊維を形成する1つ以上の延長部材の内部で均一に又は不均一に分散し得る。マイクロカプセルは、相変化材料を囲い込むシェルとして形成され得、さまざまな規則的な又は不規則な形状(例えば球状、回転楕円体状、長円体状など)及びサイズで形成された個々のマイクロカプセルを含むことができる。マイクロカプセルは同じ形状又は異なる形状を有することができ、同じサイズ又は異なるサイズを有することができる。本明細書中で用いられる「サイズ」という用語は、1つの物体の最大の寸法を意味する。かくして、例えば、回転楕円体のサイズは、回転楕円体の長軸を意味することができ、一方、球のサイズはその球の直径を意味し得る。ある場合では、マイクロカプセルは実質的に回転楕円体又は球形であり得、約0.01〜約4,000ミクロン、例えば約0.1〜約1,000ミクロン、約0.1〜約500ミクロン、約0.1〜約100ミクロン、約0.1〜約20ミクロン、約0.3〜約5ミクロン、又は約0.5〜約3ミクロンの範囲のサイズを有することができる。或る実施のためには、少なくとも約50パーセント、少なくとも約60パーセント、少なくとも約70パーセント、少なくとも約80パーセント又は最高約100パーセントといった実質的な割合のマイクロカプセルが、約12ミクロン未満、約0.1〜約12ミクロン又は約0.1〜約10ミクロンといった特定された範囲内のサイズを有することが望ましいことがある。マイクロカプセルが、その形状及びサイズのいずれか又は両方に関して単分散であることも望ましいことがある。本明細書で使用される「単分散」という用語は、1つの特性セットに関し実質的に均一であることを意味している。かくして、例えば、単分散であるマイクロカプセルのセットは、サイズ分布の平均といったような1サイズ分布モードのまわりで狭いサイズ分布をもつこのようなマイクロカプセルを意味し得る。ある場合では、単分散であるマイクロカプセルセットは、10パーセント未満又は5パーセント未満といったようなサイズの平均に対する20パーセント未満の標準偏差を示すサイズを有し得る。マイクロカプセルを形成するための技術例は、以下の参考文献中に見出すことができ、その開示全体が本明細書に参照により組入れる;「カプセル化方法とそれにより生産されたマイクロカプセル」という題のTsueiらの米国特許第5,589,194号;「マイクロカプセルとその製造方法」という題のTsueiらの米国特許第5,433,953号;「相変化材料のカプセル化」という題のHaffieldの米国特許第4,708,812号;及び「カプセル化された相変化材料の調製方法」という題のChenらの米国特許第4,505,953号。
【0081】
封じ込め構造のその他の例としては、シリカ粒子(例えば沈降シリカ粒子、ヒュームドシリカ粒子及びその混合物)、ゼオライト粒子、炭素粒子(例えば黒鉛粒子、活性炭粒子及びその混合物)及び吸収材料(例えば、或るセルロース系材料、超吸収材料、ポリ(メタ)クリレート材料、ポリ(メタ)クリレート材料の金属塩、及びそれらの混合物)が含まれる。例えば、温度調節材料には、シリカ粒子、ゼオライト粒子、炭素粒子又は相変化材料を含浸させた吸収材料が含まれ得る。
【0082】
本発明のある実施形態に従うと、セルロース系繊維を形成する延長部材は、最高約100重量パーセントの温度調節材料を含むことができる。標準的には、延長部材は、温度調節材料を最高約90重量パーセント含む。かくして例えば、延長部材は、最高約50重量パーセント又は最高約25重量パーセントの温度調節材料を含み得る。本発明のある実施形態のためには、延長部材は約1重量パーセント〜約70重量パーセントの温度調節材料を含み得る。かくして、1つの実施形態においては、延長部材は約1重量パーセント〜約60重量パーセント又は約5重量パーセント〜約60重量パーセントの温度調節材料を含むことができ、その他の実施形態においては、延長部材は約5重量パーセント〜約40重量パーセント、約10重量パーセント〜約30重量パーセント、約10重量パーセント〜約20重量パーセント、又は約15重量パーセントから約25重量パーセントの温度調節材料を含み得る。
【0083】
本発明のある実施形態に従ったセルロース系繊維は、少なくとも約1J/g、例えば少なくとも約2J/g、少なくとも約5J/g、少なくとも約8J/g、少なくとも約11J/g、又は少なくとも約14J/gの潜熱を有することができる。例えば、本発明の1実施形態に従ったセルロース系繊維は、約1J/g〜約100J/g、例えば約5J/g〜約60J/g、約10J/g〜約30J/g、約2J/g〜約20J/g、約5J/g〜約20J/g、約8J/g〜約20J/g、約11J/g〜約20J/g、又は約14J/g〜約20J/gの範囲内の潜熱を有することができる。
【0084】
前述の通り、本発明のある実施形態に従ったセルロース系繊維は、延長部材のセットを含み得る。この延長部材のセットのうちのさまざまな延長部材は、同じセルロース系材料又は異なるセルロース系材料から形成可能である。ある場合では、延長部材セットは、中に温度調節材料が分散した第1のセルロース系材料から形成された第1の延長部材のセットを含み得る。さらに、延長部材のセットは、第2のセルロース系材料から形成された第2の延長部材のセットを含み得る。延長部材は同じセルロース系材料から形成され得、その場合第1及び第2のセルロース系材料は同じものとなるものと考えられる。同じく、温度調節材料が適切な機械的特性を提供する重合体相変化材料を含み得ることも考えられる。この場合、第1の延長部材のセットを形成するために、第1のセルロース系材料を必要とせずに重合体相変化材料を使用することができる。
【0085】
一般に、セルロース系材料は、延長部材へと形成される能力をもつあらゆるセルロースベースの重合体(又はセルロースベースの重合体の混合物)を含み得る。セルロース系材料は、さまざまな鎖構造をもち1つ以上のタイプの単量体単位を含むセルロースベースの重合体(又はその混合物)を含み得る。特に、セルロースベースの重合体は、線状重合体又は分岐重合体(例えば星状分岐重合体、櫛状分岐重合体又は樹枝状分岐重合体)であり得る。セルロースベースの重合体は、単独重合体又は共重合体(例えばターポリマー、統計共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、周期共重合体、ブロック共重合体、ラジアル共重合体、又はグラフト共重合体)であり得る。当業者であればわかるように、セルロースベースの重合体の反応性及び機能性は、例えばアミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、エポキシド、無水物、イソシアネート、シラン、ケトン、アルデヒドなどといったような官能基の付加又は置換によって改変され得る。同様に、セルロースベースの重合体は、熱、水分又は化学物質に対する耐性又は堅牢性を増大させるため架橋、エンタングルメント又は水素結合する能力をもつことができる。
【0086】
延長部材を形成するために使用できるセルロースベースの重合体の例としては、セルロース及びセルロースのさまざまな変性形態、例えばセルロースエステル(例えば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、フタル酸セルロース及びトリメリット酸セルロース)、硝酸セルロース、リン酸セルロース、セルロースエーテル(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース及びブチルセルロース)、セルロースのその他の変性形態(例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びシアノエチルセルロース)、及びその塩又は共重合体が含まれる。セルロースは標準的に、連続的単量体単位が1つの単量体単位のアノマー炭素からもう1つの単量体単位のC−4ヒドロキシル基へとβ−グルコシド結合によって連結されているD−グルコースの線状単独重合体に対応する。その他の有用なセルロースベースの重合体には、例えばある百分率のヒドロキシル基がその他のタイプの官能基によって置換されているセルロースの変性形態が含まれる。酢酸セルロースは標準的に、ある百分率のヒドロキシル基がアセチル基によって置換されているセルロースの変性形態に対応する。置換されるヒドロキシ基の百分率は、さまざまな加工条件により左右される可能性がある。ある場合においては、酢酸セルロースのヒドロキシル基の少なくとも約92パーセントがアセチル基で置換され得、その他の場合では、酢酸セルロースは、1単量体単位あたり平均少なくとも約2個のアセチル基を有することができる。ある用途については、セルロース系材料は、約300〜約15,000個の単量体単位の範囲内の平均分子鎖長をもつセルロースベースの重合体を含み得る。かくして、1つの実施形態においては、セルロース系材料は約10,000個〜約15,000個の単量体単位の範囲内の平均分子鎖長をもつセルロースベースの重合体を含むことができる。その他の実施形態においては、セルロース系材料は、約300〜約10,000個、例えば約300〜約450個の単量体単位、約450〜約750個の単量体単位又は約750個〜約10,000個の単量体単位の範囲内の平均分子鎖長を有するセルロースベースの重合体を含み得る。
【0087】
さまざまなその他のタイプの重合体材料から1つ以上の延長部材を形成できるものと考えられる。かくして、本発明のある実施形態においては、任意の繊維形成重合体(又は任意の繊維形成重合体アイランド・イン・シー)から延長部材を形成することができる。延長部材を形成するために使用可能である重合体例としては、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン12、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸など)、ポリアミン、ポリイミド、ポリアクリル系(例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、メタクリル酸及びアクリル酸のエステルなど)、ポリカーボネート(例えば、ポリビスフェノールAカーボネート、ポリプロピレンカーボネートなど)、ポリジエン(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリノルボルネンなど)、ポリエポキシド、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリプロピレンスクシネートなど)、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)、ポリブチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリオキシメチレン(パラホルムアルデヒド)、ポリテトラメチレンエーテル(ポリテトラヒドロフラン)、ポリエピクロロヒドリンなど)、ポリフルオロカーボン、ホルムアルデヒド重合体(例えば、ユリア−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒドなど)、天然重合体(例えば、キトサン、リグニン、ロウなど)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブテン、ポリオクテンなど)、ポリフェニレン(例えば、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテルスルホンなど)、ケイ素含有重合体(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリカルボメチルシランなど)、ポリウレタン、ポリユリア、ポリビニル(例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールのエステル及びエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリビニルメチルケトンなど)、ポリアセタール、ポリアリーレート及び共重合体(例えば、ポリエチレン−コ−酢酸ビニル、ポリエチレン−コ−アクリル酸、ポリブチレンテレフタレート−コ−ポリエチレンテレフタレート、ポリラウリルラクタム−ブロック−ポリテトラヒドロフランブロックなど)が含まれる。
【0088】
本発明のある実施形態に従うと、担体重合体材料から1つ以上の延長部材を形成することができる。担体重合体材料は、本発明のある実施形態に従ってセルロース系繊維が形成されるにつれて温度調節材料用の担体として役立ち得る。担体重合体材料には、1つ以上の延長部材の内部での温度調節材料の分散又は取込みを容易にする重合体(又は重合体混合物)が含まれ得る。さらに、担体重合体材料は、繊維形成中に1つ以上の延長部材の無欠性を容易に維持できるようにし、結果としてのセルロース系繊維に対し増強された機械的特性を提供できる。望ましくは、担体重合体材料は、温度調節材料が担体重合体材料内に分散させられた場合に所望の温度安定化範囲が維持されるように、温度調節材料と充分な非反応性を有するように選択可能である。
【0089】
1つ以上の延長部材を形成する場合に、担体重合体材料をセルロース系材料と併せて又はその代替として使用することができる。ある場合では、担体重合体材料は、セルロース系繊維又はそれから作られる製品の形成中に相変化材料に対し一定の保護も提供しながら、相変化材料の取扱いを容易にするための封じ込め構造として役立ち得る。セルロース系繊維の形成中、担体重合体材料はさまざまな形態(例えばバルク形態、粉末、ペレット、顆粒、フレークなど)のいずれかでの固体として提供され得、その中に分散した温度調節材料を有することができる。かくして、例えば、中に温度調節材料が分散している担体重合体材料から形成された粉末又はペレットを、セルロース系材料と混合して、1つ以上の延長部材を形成するために使用される配合物を形成させることができる。担体重合体材料は、さまざまな形態(例えば融解形態、溶媒中に溶解した状態など)のいずれかでの液体として提供され得、中に分散した温度調節材料を有することができるものと考えられる。同じく、セルロース系材料が担体重合体材料として役立ち得るということも考えられる。例えば、中に温度調節材料が分散しているセルロース系材料を同じ又は異なるセルロース系材料と混合して、1つ以上の延長部材を形成させるのに用いられる配合物を形成させることができる。
【0090】
或る用途については、担体重合体材料は、温度調節材料と相溶性又は混和性があるか又は温度調節材料に対する親和性を有する重合体(又は重合体混合物)を含み得る。かかる親和性は、例えば担体重合体材料及び温度調節材料の溶解度パラメータ、極性、疎水性特性又は親水性特性の類似性などといった数多くの要因により左右され得る。温度調節材料についての親和性は、セルロース系繊維の形成中の中間的融解、液体又は溶解形態の担体重合体材料内での温度調節材料の分散を容易にすることができる。究極的には、かかる親和性は、セルロース系繊維内により均一の又はより多くの量の(例えば、より高い負荷レベル)の相変化材料を取込むことを容易にすることができる。
【0091】
温度調節材料がマイクロカプセルといったような封じ込め構造を含む本発明の実施形態については、担体重合体材料は、相変化材料に対するその親和性と併せてか又はこれと代替的に、封じ込め構造に対する親和性を有する重合体(又は重合体混合物)を含み得る。例えば、温度調節材料が相変化材料を封じ込めたさまざまなマイクロカプセルを含んでいる場合、重合体(又は重合体混合物)を、マイクロカプセル(例えばマイクロカプセルを形成している材料)に対するその親和性に基づいて選択することができる。ある場合においては、担体重合体材料は、マイクロカプセルを形成しているものと類似の重合体を含むことができる。かくして、例えば、マイクロカプセルがナイロンシェルを含む場合、ナイロンを含むように担体重合体材料を選択することができる。マイクロカプセルに対するかかる親和性は、中間的な融解、液体又は溶解形態の担体重合体材料中での相変化材料を封じ込めているマイクロカプセルの分散を容易にすることができ、かくしてセルロース系繊維中により均一の又はより多くの量の相変化材料を取込むことを容易にする。
【0092】
ある場合では、担体重合体材料は、温度調節材料に対する部分的親和性をもつ重合体(又は重合体混合物)を含み得る。例えば、担体重合体材料は、温度調節材料との半混和性を有する重合体(又は重合体混合物)を含むことができる。かかる部分的親和性は、より高い温度及びせん断条件での担体重合体材料内部の温度調節材料の分散を容易にするために適切であり得る。さらに低い温度及びせん断条件では、かかる部分的親和性により、温度調節材料が析出する可能性がある。未加工形態の相変化材料が使用される場合、かかる部分的親和性は、相変化材料の不溶化及び担体重合体材料内及び結果としてのセルロース系繊維内での相変化材料ドメインの増大を導く可能性がある。ドメイン形成は、2つの状態間の相変化材料の転移を容易にすることにより改善された熱調節特性を導き得る。さらにドメイン形成は、繊維形成中又は最終的使用中のセルロース系繊維からの相変化材料の喪失又は漏洩を削減又は防止するのに役立ち得る。
【0093】
例えば、パラフィン系炭化水素といったような或る相変化材料は、より低い相変化材料濃度で、又は温度が臨界溶液温度を超える場合に、ポリオレフィン又はポリオレフィン共重合体との相容性を有する可能性がある。かくして、例えば、パラフィン系炭化水素(又は、その混合物)とポリエチレン又はポリエチレン−コ−ビニルアセテートとの混合をより高温で達成して、繊維形成に関連して容易に制御、ポンプ送り及び加工できる実質的に均一な配合物を生成することができる。配合物がひとたび冷却すると、パラフィン系炭化水素は不溶性となり、固体材料内の全く異なるドメインへと析出し得る。これらのドメインは、熱調節特性の改善のためのパラフィン系炭化水素の純粋な融解又は結晶化を可能にし得る。さらに、これらのドメインは、パラフィン系炭化水素の喪失又は漏洩を削減又は防止するために役立つことができる。内部に分散したドメインを有する固体材料を加工して、セルロース系繊維を形成するべくセルロース系材料と混合可能な粉末又はペレットを形成させることができる。
【0094】
本発明のある実施形態に従うと、担体重合体材料は、約5重量パーセント〜約90重量パーセントの酢酸ビニル、例えば5重量パーセント〜50重量パーセントの酢酸ビニル又は約18重量パーセント〜約25重量パーセントの酢酸ビニルを有するポリエチレン−コ−ビニルアセテートを含み得る。この酢酸ビニル含有量は、パラフィン系炭化水素とポリエチレン−コ−ビニルアセテートとを混合して配合物を形成する場合に、温度混和性制御の改善を可能にすることができる。特にこの酢酸ビニル含有量は、より高い温度で優れた混和性を可能にし、かくして配合物の均一性に起因する加工安定性及び制御を容易にすることができる。より低い温度(例えば室温又は正規の市販の布帛の使用温度)では、ポリエチレン−コ−ビニルアセテートはパラフィン系炭化水素中で半混和性であり、かくしてパラフィン系炭化水素の分離及びミクロドメイン形成を可能にする。
【0095】
担体重合体材料内に含まれ得るその他の重合体としては、約4〜約36g/10minの範囲内のメルトインデックスを有する高密度ポリエチレン(例えば、ミズーリ州、St-LouisのSigma-Aldrich Corp.,から入手可能な4、12及び36g/10minのメルトインデックスをもつ高密度ポリエチレン)、変性形態の高密度ポリエチレン(デラウェア州WilmingtonのDuPont Incから入手可能なFusabond(商標) EMB100D)及び、変性形態のエチレンプロピレンゴム(デラウェア州WilmingtonのDuPont Inc.,から入手可能なFusabond(商標) NMF416D)がある。当業者であればわかるように、メルトインデックスは標準的に重合体(又は重合体混合物)の流量特性の1つの尺度を表し、重合体(又は重合体混合物)の分子量と逆相関する。極性相変化材料(例えばポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びその同族体)については、担体重合体材料は、相変化材料の分散を容易にするべく極性重合体(又は極性重合体混合物)を含み得る。かくして例えば、担体重合体材料は、ポリエステルの共重合体例えばポリブチレンテレフタレート−ブロック−ポリテトラメチレングリコール(例えばDelaware州WilmingtonのDuPont Inc.,から入手可能であるHytrel(商標)3078、5544、及び8238)及びポリアミド共重合体、例えばポリアミド−ブロック−ポリエーテル(例えばペンシルバニア州PhiladelphiaのATOFINA Chemical, Inc.,から入手可能なPebax(商標)2533、4033、5533、7033、MX1205及びMH1659)を含み得る。
【0096】
前述の通り、セルロース系材料は、本発明のある実施形態において担体重合体材料として役立つことができる。例えば、ポリエチレングリコールといったような或る相変化材料は、溶液中のセルロースベースの重合体と相溶性を有し得る。特に、ポリエチレングリコール(又はポリエチレングリコールの混合物)とセルロース又は酢酸セルロースの混合を、その開示全体が本明細書に参照により組入れられているJournal of Applied Polymer Science、88巻、652〜658頁(2008年)中のGuoらの論文「ポリエチレングリコール―二酢酸セルロース複合材料の溶液混和性及び相変化挙動」の中で記述されているように実質的に均一な配合物を生成するように達成することができる。ポリエチレングリコールは、結果として得られる固体材料の内部で全く異なるドメインを形成することができ、これらのドメイン内部で2つの固体状態の間で転移し得る。中に分散したドメインを有する固体材料を加工して、セルロース系繊維を形成させるべくセルロース系材料と混合可能な粉末又はペレットを形成させることができる。
【0097】
本発明のある実施形態に従うと、担体重合体材料は、低分子量の重合体(又は低分子量の重合体の混合物)を含むことができる。前述の通り、一部の重合体は、異なる分子量をもつさまざまな形態で提供することができる。従って、低分子量の重合体は、重合体の低分子量形態を意味し得る。例えば、約20,000(又はそれ未満)の数平均分子量を有するポリエチレンを、本発明の1実施形態において低分子量重合体として使用できる。低分子量重合体は標準的には、融解物を形成するように加熱された時点で低い粘度を有し、この低粘度は、融解物中の温度調節材料の分散を容易にすることができる。低分子量重合体の所望の分子量又は分子量範囲は、選択された特定の重合体(例えばポリエチレン)又は、低分子量重合体の融解物中で温度調節材料を分散させるのに用いられる方法又は機器によって左右され得るものと考えられる。
【0098】
本発明のもう1つの実施形態に従うと、担体重合体材料は、低分子量重合体と高分子量重合体の混合物を含み得る。高分子量重合体は、重合体の高分子量形態を意味することができる。高分子量重合体は標準的には、増強した機械的特性を有するが、融解物を形成させるように加熱した時点で、高い粘度を有し得る。ある場合では、低分子量重合体と高分子量重合体を、互いに対する親和性を有するように選択することができる。かかる親和性は、繊維形成中に低分子量重合体、高分子量重合体及び温度調節材料の配合物の形成を容易にし、セルロース系繊維中へのより均一な又はより多くの量の相変化材料の取込みを容易にすることができる。本発明のある実施形態に従うと、低分子量重合体は、セルロース系繊維内への温度調節材料の取込みを容易にするため高分子量重合体と温度調節材料の間の相溶化リンクとして役立つことができる。
【0099】
本発明のさまざまな実施形態に従ったセルロース系繊維は、例えば溶液紡糸プロセス(湿式又は乾式)などを含めたさまざまな方法を用いて形成可能である。溶液紡糸プロセスにおいては、1つ以上のセルロース系材料及び1つ以上の温度調節材料をスピナレットの孔に送出することができる。当業者であればわかるように、スピナレットというのは、標準的には、外部環境内に押出すため孔を通して融解、液体又は溶解材料を送出する繊維形成器具の一部分を意味する。スピナレットは標準的には、その長さ1メートルあたり約1個〜約500,000個の孔を含む。スピナレットは、プレートを通してドリル加工又はエッチングされた穴を伴ってか又は所望の繊維を発出する能力をもつ任意のその他の構造を伴って実施可能である。
【0100】
セルロース系材料は、セルロースシート、木材パルプ、リンター及び実質的に精製されたセルロースのその他の供給源といったようなさまざまな形態のうちのいずれかの形態で当初提供され得る。標準的には、セルロース系材料は、スピナレットの孔を通過する前に溶媒の中で溶解させられる。ある場合では、セルロース系材料は、溶媒中でこれを溶解させる前に、加工(例えば化学的に処理)され得る。例えば、セルロース系材料を、塩基性溶液(例えば苛性ソーダ)中に浸漬させ、ローラを通して圧搾させ、次に細かく刻んで小片を形成させることができる。小片をその後、二硫化炭素で処理してキサントゲン酸セルロースを形成することができる。もう1つの例としては、セルロース系材料を氷酢酸、無水酢酸及び触媒の溶液と混合させ、その後熟成させて酢酸セルロースを形成させることができ、この酢酸セルロースはフレークの形で溶液から沈澱することができる。
【0101】
セルロース系材料を溶解させるために用いられる溶媒の組成は、結果として得られるセルロース系繊維の所望の利用分野に応じて変更し得る。例えば上述の通りのキサントゲン酸セルロースの小片を塩基性溶媒(例えば苛性ソーダ又は2.8パーセントの水酸化ナトリウム溶液)中に溶解させて粘性溶液を形成させることができる。もう1つの例としては、上述の通りの酢酸セルロースの沈澱したフレークをアセトン中で溶解させて粘性溶液を形成させることができる。例えば酸化アミン溶液又は銅アンモニア溶液といったようなさまざまなその他のタイプの溶媒を使用することができる。ある場合では、結果として得られた粘性溶液をろ過して、未溶解のセルロース系材料があればそれを除去することができる。
【0102】
セルロース系繊維の形成中、温度調節材料をセルロース系材料と混合して配合物を形成させることが可能である。混合の結果として、温度調節材料はセルロース系材料の内部で分散し、それにより少なくとも部分的に囲い込まれ得る。温度調節材料を、繊維形成のさまざまな段階でセルロース系材料と混合させることができる。標準的には、温度調節材料は、スピナレットの孔を通過する前に、セルロース系材料と混合させられる。特に、セルロース系材料を溶媒中で溶解させる前か又はその後に、温度調節材料をセルロース系材料と混合することができる。例えば温度調節材料は、相変化材料を封じ込めるマイクロカプセルを含むことができ、マイクロカプセルは、溶解したセルロース系材料の粘性溶液中で分散し得る。ある場合では、温度調節材料は、スピナレットの孔を通過する直前に粘液溶液と混合可能である。
【0103】
本発明のある実施形態に従うと、セルロース系繊維は、担体重合体材料を用いて形成され得る。例えば、内部に温度調節材料が分散した担体重合体材料から形成された粉末又はペレットを用いて、セルロース系繊維を形成させることができる。ある場合では、担体重合体材料と温度調節材料の固化された融解混合物から、粉末又はペレットを形成させることができる。当初、粉末又はペレットを担体重合体材料から形成させ、温度調節材料をこれに含浸させるか又は吸収させることができるものと考えられる。同様に、粉末又はペレットを担体重合体材料及び温度調節材料の乾燥した溶液から形成させることができるということも考えられる。セルロース系繊維の形成中、粉末又はペレットをセルロース系材料と混合させて、繊維形成のさまざまな段階において配合物を形成させることができる。標準的には、粉末又はペレットは、スピナレットの孔を通過する前にセルロース系材料と混合される。
【0104】
或る用途のためには、セルロース系繊維を多成分繊維として形成させることができる。特に、第1のセルロース系材料を温度調節材料と混合して配合物を形成させることができる。この配合物と第2のセルロース系材料を組合せ、特定の構成でスピナレットの孔を通して導いて、セルロース系繊維のそれぞれの延長部材を形成させることが可能である。例えば、配合物を孔を通して導き、コア部材又はアイランド部材を形成させることができ、一方で第2のセルロース系材料を孔を通して導いてシース部材又はシー部材を形成させることができる。孔内を通過する前に、第1のセルロース系材料及び第2のセルロース系材料を同じ溶媒又は異なる溶媒中に溶解させることができる。第1のセルロース系材料により囲み込まれていない温度調節材料の部分は、結果として得られたセルロース系繊維からの温度調節材料の損失又は漏洩を削減又は防止するためスピナレットから出現した時点で第2のセルロース系材料により囲み込まれ得る。或る用途については第1のセルロース系材料は使用する必要がないものと考えられる。例えば、温度調節材料は、所望の転移温度をもちセルロース系繊維内に取込まれた時点で適切な機械的特性を提供する重合体相変化材料を含むことができる。この重合体相変化材料と第2のセルロース系材料を組合せ、特定の構成でスピナレットの孔を通して導き、セルロース系繊維のそれぞれの延長部材を形成させることができる。例えば、重合体相変化材料を孔を通して導いてコア部材又はアイランド部材を形成させ、一方で第2のセルロース系材料を孔を通して導きシース部材又はシー部材を形成させることができる。
【0105】
スピナレットから出現した時点で、1つ以上のセルロース系材料は標準的に固化してセルロース系繊維を形成する。湿式溶液紡糸プロセスにおいては、スピナレットは凝固又は紡糸浴(例えば化学浴)の中に沈められ、かくしてスピナレットから退出した時点で、1つ以上のセルロース系材料が沈澱し固体セルロース系繊維を形成することができる。紡糸浴の組成は、結果として得られるセルロース系繊維の所望の用途に応じて変更し得る。例えば、紡糸浴は、水、酸性溶液(例えば硫酸を含む弱酸溶液)、又は酸化アミン溶液であり得る。乾式溶液紡糸プロセスにおいては、1つ以上のセルロース系材料が暖気中でスピナレットから出現し、暖気中で蒸発する溶媒(例えばアセトン)に起因して固化することができる。
【0106】
スピナレットから出現した後、ゴデット又は吸引器を用いてセルロース系繊維を延伸又は引抜きすることができる。例えば、スピナレットから現われるセルロース系繊維は、変速ゴデットロールの間で延伸された後ボビン上に巻回されるか又は短繊維に切断される下向きに移動するセルロース系繊維の垂直に方向づけされた幕を形成することができる。スピナレットから出現するセルロース系繊維は、紡糸浴内で水平に方向づけされた幕を形成することもでき、変速ゴデットロール間で延伸され得る。もう1つの例として、スピナレットから出現するセルロース系繊維は、スピナレットの下に位置づけされた長いスロット形状の空気吸引器に入る前に少なくとも部分的に急冷され得る。吸引器は、1つ以上の空気吸引ジェットから圧縮空気によって生成される、高速で下向きに移動する空気流を導入することができる。この空気流は、セルロース系繊維上に延伸力を作り出し、これらのセルロース系繊維をスピナレットと空気ジェットの間で引き抜きさせ、セルロース系繊維を減衰させる。繊維形成のこの部分の間、セルロース系繊維を形成する1つ以上のセルロース系材料が固化しつつあることがある。セルロース系繊維の延伸又は引抜きは、セルロース系繊維の乾燥の前又は後に発生し得るということが考えられる。
【0107】
ひとたび形成されると、セルロース系繊維はさまざまな繊維用途のためにさらに加工され得る。特に、本発明のさまざまな実施形態に従ったセルロース系繊維は、さまざまな製品の中で、それに熱調節特性を提供するために使用されるか又は取込まれ得る。例えば、セルロース系繊維は、テキスタイル(例えばファブリック)、衣料品(例えばアウトドア用衣類、ドライスーツ及び防護服)、履き物(例えばソックス、ブーツ及び靴の中敷)、医療用品(例えば防寒用毛布、治療用パッド、トイレシーツ、及びホット/コールドパック)、個人的衛生用品(例えばオムツ、タンポン及びボディケア及びベビーケア用の吸収性ふき取り繊維又はパッド)、清浄用品(例えば家庭内クリーニング、営業用クリーニング及び工業用クリーニング向けの吸収性ふき取り繊維又はパッド)、コンテナ及び包装材料(例えば食料/食品コンテナ、食物加温器、座席クッション及び回路基板積層品)、建物(例えば壁や天井内の断熱材、壁紙、カーテンライニング、パイプ被覆、カーペット及びタイル)、電気器具(例えば家庭用電気器具の絶縁)、工業製品(例えばフィルタ材料)及びその他の製品(例えば自動車のライニング材料、家具、寝袋及び寝具類)の中で使用可能である。
【0108】
ある場合においては、セルロース系繊維は、さまざまなタイプの組み、編み、撚り合せ、フェルト、ニット、織布又は不織布の布帛を形成するべく、ウォーブン、ノンウォーブン、ニッティング又はウィービングプロセスに付されることがある。結果として得られた布帛は、セルロース系繊維から形成された単一層を含むことができ、そうでなければ、これらの層のうちの少なくとも1つがセルロース系繊維から形成されているような形で多重層を含み得る。例えば、セルロース系繊維をボビン上に巻回するか、糸の形に紡糸し、その後さまざまな従来のニット又はウィービングプロセスにおいて利用することができる。もう1つの例としては、形成用表面(例えばフードリニア(Fourdrinier)ワイヤといったような移動するコンベヤスクリーンベルト)の上に無作為にセルロース系繊維を置いて、セルロース系繊維の連続した不織布ウェブを形成させることができる。ある場合では、ウェブを形成する前にセルロース系繊維を短繊維の形に切断することができる。短繊維を利用することのもつ1つの潜在的利点は、短繊維がウェブの中でより長い又は未切断の繊維(例えばトウの形をした連続繊維)に比べてさらに無作為に方向づけされ得ることから、より等方性の不織布ウェブを形成できる、ということにある。このとき、ウェブは従来のボンディングプロセス(例えばスパンボンドプロセス)を用いてボンディングされて、さまざまなテキスタイルを製造する上で使用するための安定した不織布を形成することができる。ボンディングプロセスの一例には、移動するコンベヤスクリーンベルトからウェブをもち上げ、このウェブを2本の加熱したカレンダロールに通す段階が関与する。ロールの一方又は両方共にエンボス加工が施され、ウェブを数多くの箇所でボンディングさせるようになっていてよい。本発明のある実施形態に従ったセルロース系繊維から、カード(例えばエアカード)ウェブ、ニードルパンチウェブ、スパンレースウェブ、エアレイドウェブ、ウェットレイドならびにスパンレイドウェブを形成させることができる。
【0109】
布帛を2つ以上の異なる温度調節材料を含むセルロース系繊維から形成できるものと考えられる。本発明のある実施形態に従うと、温度調節材料のこのような組合せは、2つ以上の全く異なる転移温度を示すことができる。例えば、各々が相変化材料A及びBを含むセルロース系繊維から、手袋に使用するための布帛を形成させることができる。相変化材料Aは、約5℃という融点を有することができ、相変化材料Bは約75℃の融点を有することができる。セルロース系繊維内の相変化材料のこの組合せは、寒冷環境(例えば冬季条件の間の屋外使用)ならびに温暖環境(例えばオーブンのトレイなどの加熱した物体をとり扱う場合)における改善された熱調節特性を手袋に提供することができる。さらに、何らかの形で異なる2つ以上のタイプの繊維(例えば異なる構成又は横断面形状を有するか又は異なる温度調節材料を含むように形成された2つ以上のタイプのセルロース系繊維)から布帛を形成することができる。例えば、ある百分率の相変化材料A含有セルロース系繊維及び残りの百分率の相変化材料B含有セルロース系繊維を用いて布帛を形成することができる。セルロース系繊維のこの組合せは、異なる環境における(例えば寒冷及び温暖環境)における改善された熱調節特性を布帛に提供することができる。もう1つの例としては、ある百分率の相変化材料含有セルロース系繊維と残りの百分率の相変化材料不含セルロース系繊維を用いて布帛を形成することができる。この例では、相変化材料含有セルロース系繊維の百分率は約10重量パーセント〜約99重量パーセント、例えば約30〜約80パーセント又は約40〜約70パーセントの範囲内にあることがある。さらなる例としては、ある百分率の相変化材料含有セルロース系繊維及び、残りの百分率のその他の相変化材料含有又は相変化材料不含繊維(例えばその他の重合体から形成された合成繊維)を用いて布帛を形成することができる。この例では、セルロース系繊維の百分率は同様に、約10重量パーセント〜約99重量パーセント、例えば約30〜約80パーセント又は約40〜約70パーセントの範囲内にあり得る。
【0110】
本発明のある実施形態に従った結果としての布帛は、少なくとも約1J/g例えば少なくとも約2J/g、少なくとも約5J/g、少なくとも約8J/g、少なくとも約11J/g又は少なくとも約14J/gである潜熱を有し得る。例えば、本発明の1実施形態に従った布帛は、約1J/g〜約100J/g、例えば約5J/g〜約60J/g、約10J/g〜約30J/g、約2J/g〜約20J/g、約5J/g〜約20J/g、約8J/g〜約20J/g、約11J/g〜約20J/g又は約14J/g〜約20J/gの範囲内の潜熱を有し得る。
【0111】
さらに、本発明のある実施形態に従った結果としての布帛は、その他の望ましい特性を示し得る。例えば、本発明の1実施形態に従った布帛(例えば不織布)は、以下の特性のうちの1つ以上のものを有し得る:(1)(特定の環境条件下での布帛の絶対乾燥重量に比べた吸収水分重量の比率として表わされた)少なくとも10グラム/グラム、例えば約12グラム/グラム〜約35グラム/グラム、約15グラム/グラム〜約30グラム/グラム又は約18グラム/グラム〜約25グラム/グラムである吸湿率;
(2)約2秒〜約60秒、例えば約3秒〜約20秒又は約4秒から約10秒のシンク時間;(3)約13cN/tex〜約40cN/tex、例えば約16cN/tex〜約30cN/tex又は約18cN/tex〜約25cN/texの引張り強度;(4)約10パーセント〜約40パーセント、例えば約14パーセント〜約30パーセント又は約17パーセント〜約22パーセントといった破断点伸び;(5)約0パーセントから約6パーセント、例えば約0パーセント〜約4パーセント又は約0パーセント〜約3パーセントの沸とう水中収縮及び(6)約10g/m2〜約500g/m2、例えば約15g/m2〜約400g/m2又は約40g/m2〜約150g/m2である単位体積重量。
【0112】
この点において、当業者であれば、本発明のさまざまな実施形態と結びつけられた一定数の利点を認識することができる。例えば本発明のさまざまな実施形態に従ったセルロース系繊維は、高い吸湿率と共に改善された熱調節特性を提供することができる。このような特性の組合せは、セルロース系繊維が衣料品、履き物、個人的衛生用品及び医療用品といった製品の中に取込まれる場合に、改善された快適性レベルを可能にする。本発明のある実施形態に従ったセルロース系繊維は、第1の延長部材のセット内に高い負荷レベルの相変化材料を含むことができる。ある場合においては、第2の延長部材セットが第1の延長部材のセットをとり囲むことができることを理由として、このような高い負荷レベルを提供することができる。第2の延長部材のセットは、第1の延長部材のセットの欠陥(例えば機械的な又は吸湿率の欠陥)が見られた場合にこれを補償することができる。さらに、第2の延長部材のセットは、セルロース系繊維の全体的な機械的特性、吸湿率及び加工性を(例えば溶液紡糸プロセスを介してその形成を容易にすることで)改善させるように選択されたセルロース系材料を含むことができる。第1の延長部材のセットをとり囲むことにより、第2の延長部材のセットは、相変化材料の損失又は漏洩を削減又は防止するためセルロース系繊維内部に相変化材料を囲み込むのに役立つことができる。
【実施例】
【0113】
以下の実施例は、当業者用の指針として提供されている。これらの実施例は、本発明のある実施形態を理解し実践する上で有用な特定の方法論を提供しているにすぎないことから、本発明を制限するものとみなされるべきではない。
実施例1
【0114】
3セットのセルロース系繊維を形成させた。第1のセルロース系繊維セットを対照セットとして使用した。第1のセルロース系繊維セットのためには、8.00gのN−メチルモルホリンオキシド溶媒(ウィスコンシン州、MilwaukeeのAldrich Chemical Co.,から入手可能な97パーセントのNMMO)、1.00gの微結晶性セルロース(ウィスコンシン州MilwaukeeのAldrich Chemical Co.,から入手可能)及び1.00gの脱イオン水を20ml入りのガラス製バイアル中で組合わせて、10重量パーセントのセルロースを伴う溶液を得た。バイアルを125℃のオーブン内に入れ、その中身が均質に混合されるまで、定期的に混合した。次に中身を予熱した10mlのシリジン内に注ぎ込み、温かい撹拌された水の凝固浴内へとゆっくりと押し出して、第1のセルロース系繊維セットを形成させた。
【0115】
第2のセルロース系繊維セットのためには、0.90gの脱イオン水及び、相変化材料を封じ込めた加湿されたマイクロカプセル(マイクロカプセル化されたパラフィンPCM、潜熱120J/g、融点33℃、50パーセントのマイクロカプセル、英国BradfordのCiba Specialty Chemical Co.,から入手可能)0.20gを20ml入りのガラス製バイアル内で組合わせた。次に、8.00gのN−メチルモルホリンオキシド溶媒(ウィスコンシン州、MilwaukeeのAldrich Chemical Co.,から入手可能な97パーセントのNMMO)及び0.90gの微結晶性セルロース(ウィスコンシン州MilwaukeeのAldrich Chemical Co.,から入手可能)を加えて、10重量パーセントの固形分を伴う溶液を得た。固形分には、90/10の重量比のセルロースと相変化材料を封じ込めたマイクロカプセルが含まれていた。バイアルを125℃のオーブン内に入れ、その中身が均質に混合されるまで、定期的に混合した。次に中身を予熱した10mlのシリンジ内に注ぎ込み、温かい撹拌された水の凝固浴内へとゆっくりと押し出して、増強した可逆的熱特性を有するリヨセルタイプのセルロース系繊維を形成させた。
【0116】
第2のセルロース系繊維セットのためには、0.80gの脱イオン水及び、相変化材料を封じ込めた加湿されたマイクロカプセル(マイクロカプセル化されたパラフィンPCM、潜熱154J/g、融点31℃、32パーセントのマイクロカプセル、韓国J & C Microchem Inc.,から入手可能)0.31gを20ml入りのガラス製バイアル内で組合わせた。次に、8.00gのN−メチルモルホリンオキシド溶媒(ウィスコンシン州、MilwaukeeのAldrich Chemical Co.,から入手可能な97パーセントのNMMO)及び0.90gの微結晶性セルロース(ウィスコンシン州MilwaukeeのAldrich Chemical Co.,から入手可能)を加えて、10重量パーセントの固形分を伴う溶液を得た。固形分には、90/10の重量比のセルロースと相変化材料を封じ込めたマイクロカプセルが含まれていた。バイアルを125℃のオーブン内に入れ、その中身が均質に混合されるまで、定期的に混合した。次に中身を予熱した10mlのシリンジ内に注ぎ込み、温かい撹拌された水の凝固浴内へとゆっくりと押し出して、増強した可逆的熱特性を有するリヨセルタイプのセルロース系繊維を形成させた。
【0117】
3セットのセルロース系繊維をろ過し乾燥させ、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて熱測定を行なった。表4は、3セットのセルロース系繊維についてのこれらの熱測定の結果を示している。
【0118】
【表6】

実施例2
【0119】
相変化材料を封じ込めたマイクロカプセル(mPCM、オクタデカンを封じ込めたポリアクリルシェルマイクロカプセル、潜熱175J/g、45パーセントのマイクロカプセル、英国BradfordのCiba Specialty Chemical Co.,から入手可能)100.0キログラムに対し、(攪拌しながら)100.0キログラムの水そして次に5.2キログラムの50パーセントのNaOH/水溶液を加えることによって、懸濁液を形成させた。この懸濁液は、約12.8のpHで21.95重量パーセントのマイクロカプセルを含有していた。懸濁液を9.1パーセントのセルロース溶液内に計量して、異なるmPCM濃度をもつさまざまな試料セットを生成し、次に下表5に記されている通りのセルロース系繊維へと紡糸した。
【0120】
【表7】

実施例3
【0121】
2セットのビスコースタイプのセルロース系繊維を形成させた。第1のセルロース系繊維セットを対照セットとして使用し、艶消し剤としてTiO2を内含させた。第2のセルロース系繊維は、相変化材料を封じ込めたマイクロカプセル(mPCM)を含んでいたが、TiO2は含んでいなかった。表6は、第2のセルロース系繊維セットの特性を記している。表6を参照するとわかるように、第2のセルロース系繊維セットは、(TiO2の使用を必要とせずに)曇った外観と共に増強した可逆的熱特性を示した。
【0122】
【表8】

【0123】
第2のセルロース系繊維セットを単独で用いるか又は標準的なビスコースタイプのセルロース系繊維との配合物として、さまざまな不織布を形成させた。不織布は、標準的なビスコースニードルパンチ不織ラインを用いて形成させた。このラインは約1.5〜2.5メートル/分の速度で作動させた。表7は、不織布の特性を記している。
【0124】
【表9】

実施例4
【0125】
2つのスパンレース不織布試料を形成させた。相変化材料を封じ込めたマイクロカプセル(mPCM)を含む100パーセントビスコースタイプのセルロース系繊維から第1の布帛試料を形成させた。100パーセント標準ビスコースタイプのセルロース系繊維から第2の布帛試料を形成させ、これを対照として用いた。2つの布帛試料を、約10メートル/分の速度及びライン上14、50、60、70/60及び70バールの圧力で作動する標準的なパイロットラインを用いて形成させた。2つの布帛試料の製造可能性には観察可能な差異は全く存在しなかった。
【0126】
その後、2つの布帛試料を、標準試験方法に従ってさまざまな測定に付した。重量についての測定は、欧州消耗品及び不織布協会(「EDANA」)試験方法ERT40.3−90に従って実施した。厚みの測定は、0.8kPa(又は0.8g/cm2)のゲージ圧で実施した。引張り強度及び伸びについての測定はEDANA試験方法ERT20.2−89に従って実施し、吸収度及びシンク時間についての測定は、STL試験方法及び欧州薬局方試験方法に従って実施した。表8は、これらの測定の結果を記している。表8では、MDは長手方向又は流れ方向を意味し、一方TDは横方向を意味する。表8を参照すればわかるように、第1の布帛試料は一般に、第2の布帛試料のものに匹敵するか又はこれより優れた特性を示した。
【0127】
【表10】

【0128】
当業者であれば本明細書中に記述されているセルロース系繊維を開発する上でさらなる説明を全く必要としないはずであるが、それでもその開示全体が本明細書に参照により組入れられているKodolphらの「テキスタイル」という著書の第7章−人造再生繊維(第8版、Prentice-Hall, Inc. 1998年)及びFrankhamらの「タンポン生産」という題の米国特許第5,686,034号;Wilkesらの「セルロース繊維組成物」という題の米国特許第6,333,108号;Fischerらの「ビスコース及びそれから成る物品の製造」という題の米国特許第6,538,130号;Poggiらの「ビスコース生産方法」という題の米国特許第6,392,033号;及びHillsの「複数成分の繊維の製造方法」という題の米国特許第5,162,074号といった特許を検討することによりなんらかの役立つ指針を見出すことができる。当業者であれば、同様に、その開示全体が本明細書に参照により組入れられているHartmannの「温度調節合成繊維、布帛及びテキスタイルにおいて使用するための安定した相変化材料」という題の米国特許第6,689,466号;及びHartmannらの「増強した可逆的熱特性を有する融解紡糸性濃縮物ペレット」という題の米国特許第6,793,856号といった特許を検討することによりなんらかの役立つ指針を見出すかもしれない。
【0129】
本明細書中で言及され参照指示されている特許出願、特許、公報及びその他の公開文書は各々、各々の個々の特許出願、特許、公報及びその他の公開文書が具体的にかつ個別に参照により組入れられるべきものと指示された場合と同じ程度で、その全体が本明細書に参照により組入れられている。
【0130】
本発明はその具体的実施形態を基準にして記述されてきたが、当業者であれば、添付のクレームによって規定されている通りの本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を加えることができ、等価物で置換することができるということを、理解するはずである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、方法、プロセス段階(単複)を本発明の目的、精神及び範囲に適合させるように、数多くの修正を行なうことも可能である。かかる修正は全て本書に添付の特許請求の範囲内に入るように意図される。特に、本書で開示されている方法は、特定の順序で実施される特定の作業を基準にして記述されてきたが、本発明の教示から逸脱することなく等価の方法を形成するべく、これらの作業を組合せるか、細分するか又は順序付けし直すことが可能であるものと理解される。従って、本書に別段の具体的指示のないかぎり、作業の順序及びグループ分けは、本発明の制限とはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系材料及びこのセルロース系材料中に分散した複数のマイクロカプセルを含む繊維本体を含むセルロース系繊維において、複数のマイクロカプセルが、少なくとも40J/gの潜熱及び0℃〜100℃の範囲内の転移温度をもつ相変化材料を封じ込め、相変化材料が、転移温度での潜熱の吸収及び放出のうちの少なくとも1つに基づいた熱調節を提供する、セルロース系繊維。
【請求項2】
セルロース系材料がセルロース及び酢酸セルロースのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項3】
複数のマイクロカプセルが0.1〜20ミクロンの範囲内のサイズを有する、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項4】
複数のマイクロカプセルが、そのサイズに関して単分散である、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項5】
相変化材料の潜熱が60J/g〜400J/gの範囲内にある、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項6】
相変化材料の転移温度が0℃〜50℃の範囲内にある、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項7】
相変化材料がパラフィン系炭化水素を含んでいる請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項8】
相変化材料が多価アルコールを含む、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項9】
相変化材料がポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール及びポリエステルのうちの1つを含む、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項10】
相変化材料を封じ込める複数のマイクロカプセルを5重量パーセント〜40重量パーセント含む、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項11】
6パーセント〜15パーセントの範囲内の吸湿率を有する、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項12】
0.1デシテックス〜60デシテックスである、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項13】
増強された可逆的熱特性を有しかつ
− セルロース系材料及び該セルロース系材料の内部に分散した温度調節材料を含む延長部材を含む繊維本体であって、該温度調節材料には0℃〜50℃の範囲内の転移温度を有する相変化材料が含まれている繊維本体、
を含むセルロース系繊維を含んでいる複数のセルロース系繊維の配合物を含む布帛。
【請求項14】
複数のセルロース系繊維が不織プロセスにより共に配合されている、請求項13に記載の布帛。
【請求項15】
5J/g〜60J/gの範囲内の潜熱を有する、請求項13に記載の布帛。
【請求項16】
12グラム/グラム〜35グラム/グラムの範囲内の吸湿率を有する、請求項13に記載の布帛。
【請求項17】
15グラム/グラム〜30グラム/グラムの範囲内の吸湿率を有する、請求項13に記載の布帛。
【請求項18】
15g/m2〜400g/m2の範囲内の単位体積重量を有する請求項13に記載の布帛。
【請求項19】
セルロース系材料がセルロースと酢酸セルロースのうちの1つを含む、請求項13に記載の布帛。
【請求項20】
相変化材料の転移温度が22℃〜40℃の範囲内にある、請求項13に記載の布帛。
【請求項21】
相変化材料がパラフィン系炭化水素、多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール及びポリエステルのうちの1つを含む、請求項13に記載の布帛。
【請求項22】
温度調節材料がさらに、相変化材料を封じ込める複数のマイクロカプセルをさらに含む、請求項13に記載の布帛。
【請求項23】
繊維本体が、前記延長部材を含んでいる複数の延長部材で形成されている、請求項13に記載の布帛。
【請求項24】
複数の延長部材が、アイランド・イン・シー構成、セグメント化パイ構成、コア・シース構成、サイドバイサイド構成及びストライプ構成のうちの1つの形に配置されている、請求項23に記載の布帛。
【請求項25】
セルロース系繊維が第1のセルロース系繊維であり、温度調節材料が第1の温度調節材料であり、複数のセルロース系繊維が、増強した可逆的熱特性を有し第2の温度調節材料を含む第2のセルロース系繊維を含む、請求項13に記載の布帛。
【請求項26】
第1の温度調節材料と第2の温度調節材料が異なるものである、請求項25に記載の布帛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−544866(P2009−544866A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521904(P2009−521904)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/073789
【国際公開番号】WO2008/014164
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(503107196)アウトラスト テクノロジーズ,インコーポレイティド (10)
【Fターム(参考)】