説明

温水便座装置

【課題】水を温水にする投入熱量を低減でき、配管に残る温水を利用することで省エネを実現できる温水便座装置を提供する。
【解決手段】温水便座装置は、温水等が流れる便座流路221をもつ温水便座22と、便座流路221に供給する温水を貯留可能な貯留空間411をもつ貯留部4と、便座流路221に貯留空間411の温水等を供給する供給部5と、便座流路221に供給された温水等を貯留空間411に回収する回収部6をもち貯留空間411に回収しなかった温水等は排水口69に排出する排出部6とを備える。回収部6は、温水等を貯留空間411に回収するか排水口69に排出するかを回収判定手段で行う。回収判定手段は、回収部6の回収流路61内の温水等の温度を測定し、一定の温度以上であれば貯留空間411に回収し一定の温度より低ければ排水口69に排出するかの切り替えを回収切替部62で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水便座装置に関し、詳しくは便座等を暖房するために使用した温水を回収する温水便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレの腰掛け式の便器に取り付けられる便座には、内部の配管に温水を流して便座表面を暖めるものがある。例えば、特許文献1および特許文献2では、便座の暖房、局部洗浄用あるいは床暖房のために供給する温水を必要時に給湯機や電気温水器などで水を温め供給する温水便座装置が開示されている。
【特許文献1】実開平6−12578号公報
【特許文献2】特開平9−273322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1および特許文献2の装置では、温水を供給する際に水を温水にするため、投入熱量が多い。特に、冬季などの温める前の水も温水が通過する配管も冷えている場合は一段と投入熱量が多くなる。また、便座の表面や床暖房は、使用者がトイレを使用後、暖房されている必要はなく、一度温められた温水は配管内で冷めるか排出されてしまう。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、水を温水にする投入熱量を低減でき、配管に残る温水を利用することで省エネを実現できる温水便座装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の温水便座装置は、便器に取り付けられ内部に温水が流れる便座流路を有する温水便座と、前記温水便座の前記便座流路に供給する前記温水を貯留する貯留空間をもつ貯留部と、給水源から水および/または前記貯留部の前記貯留空間から前記温水を前記温水便座の前記便座流路に供給する供給部と、前記温水便座の前記便座流路に供給された前記水および/または前記温水を排水口に排出する排出部と、を有する温水便座装置において、前記排出部は、前記温水便座の前記便座流路に供給された前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収する回収部を有することを特徴とする。
【0006】
本発明の温水便座装置では、供給部によって温水便座の便座流路に供給された水および/または温水(以下、温水等とする。)を排水口に排出する排出部が、便座流路に供給された温水等を貯留部の貯留空間に回収する回収部を有する。これにより、便座表面を暖房する際に供給する温水を循環できるため、温水の熱が便座表面を暖房することにのみ使用されるので、投入熱量を低減できる。また、便座内部の便座流路に供給された温水等を貯留部に回収することで、貯留部に水を供給するより貯留部内の温水の温度が低下しにくく、その上投入した熱量を温水として回収できるので省エネになる。
【0007】
本発明の温水便座装置で用いられる前記回収部は、前記温水便座の前記便座流路に供給された前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収するための回収流路と、前記回収流路の前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収するか排水口に排出するかを判定する回収判定手段とを有することが好ましい。回収判定手段で判定した温水等を回収することで、回収流路内を流れる全ての温水等を回収するのではなく、回収した方が良い温水等(例えば水は回収せず)を回収することで、貯留部内の温水の温度の低下を防げる。よって、投入熱量がより低減でき省エネになる。また、供給される温水等は貯留部の温水と給水源からの水であるので、回収判定手段で判定することで貯留部に回収する温水等が増量するのを防げ、必要最小容量の貯留部を用いることができる。
【0008】
本発明の温水便座装置で用いられる前記回収判定手段は、前記回収流路を通過する前記水および/または前記温水の温度を測定する温度センサーと、前記温度センサーの結果に基づいて前記回収流路内の前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収または前記排水口に排出するのを切り替える回収切替部とを有することが好ましい。
【0009】
または、本発明の温水便座装置で用いられる前記回収判定手段は、または前記回収流路を通過する前記水および/または前記温水の温度に感応して、前記貯留部の前記貯留空間に回収または前記排水口に排出するのを切り替える感応型切替部を有することが好ましい。
【0010】
本発明の温水便座装置は、前記便座に使用者が着座しているかどうかを検知する着座センサーおよび/または前記便器が設置されている室内に使用者が入室したかどうかを検知する入室検知センサーを更に有し、前記回収部は、前記着座センサーまたは前記入室検知センサーの検知した信号に基づいて前記給水源から前記温水便座の前記便座流路に前記水を供給して前記便座流路内の前記水または前記温水を前記回収流路に流入させることが好ましい。回収部は、着座センサーおよび/または入室検知センサーの結果を用いることで、便座流路内の温水の回収のタイミングを測り、温水が便座流路内で冷めてしまう前に効率よく回収できる。
【0011】
本発明の温水便座装置は、前記供給部は前記便座に前記水および/または前記温水を供給するための供給流路と、前記供給流路に位置し前記給水源から供給される前記水または前記貯留部の前記貯留空間から供給される前記温水を切り替えまたは混合する供給切替部とを有することが好ましい。供給部は、貯留部から温水と給水源の水とを便座流路に供給するにあたり、温水と水とを切り替えてどちらかだけを供給したり、混合したりした温水等を供給することができる。これにより、供給する温水等の温度が調節でき、例えば季節の違いや使用者の好みなどで便座表面の温度を変更することができるので、実用的な温水便座装置を提供できる。
【0012】
本発明の温水便座装置は、前記便器に取り付けられ局部を洗浄するための局部洗浄部と、前記局部洗浄部に前記給水源から前記水および/または前記貯留部の前記貯留空間から前記温水を供給するための局部洗浄用流路とを更に有することが好ましい。
【0013】
本発明の温水便座装置は、手を洗うための手洗い部と、前記手洗い部に前記給水源から前記水および/または前記貯留部の前記貯留空間から前記温水を供給し、供給した前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収するための手洗い用流路とを更に有することが好ましい。これにより、手を洗うための手洗い部に温水等が供給できるだけでなく、手洗い部に供給した温水等も貯留部に回収することができるので、手洗いのために投入した熱量のいくらかを回収できる。よって、手洗い部に温水を供給した場合も省エネを考慮することができる。
【0014】
本発明の温水便座装置は、前記便器が設置される床の内部に前記給水源から前記水および/または前記貯留部の前記貯留空間から前記温水を供給し、供給した前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収するための床暖房用流路を更に有することが好ましい。これにより、便座のみならず床も暖房される温水便座装置が提供でき、床暖房のために供給した温水等も貯留部に回収できるので、床暖房のために投入した熱量のいくらかを回収できる。よって、床暖房のために投入熱量が増加したとしても温水を回収できない装置に比べれば省エネである。
【0015】
本発明の温水便座装置に用いられる前記貯留部は、前記貯留空間の前記温水を保温する保温部と、前記貯留空間の前記温水の温度を測定する貯留空間温度センサーと、前記貯留空間温度センサーの検知した温度に基づいて前記貯留空間の前記温水を温めるヒーターと、前記貯留空間の水位を検知する水位センサーとを有し、前記水位センサーの検知に基づいて前記給水源から前記水が供給されることが好ましい。貯留部は、保温部により貯留空間の温水の温度を保てるので、貯留空間の温水を再加熱するための熱量が低減できる。その温度は貯留空間温度センサーで感知し、ヒーターで温める。また、貯留部内の水量は水位センサーで検知し、必要に応じて給水源から給水できる。
【0016】
本発明の温水便座装置は、前記着座センサーが着座を検知しているまたは前記入室検知センサーが使用者の入室を検知している場合は、前記貯留部の前記貯留空間に前記給水源から前記水が供給されないことが好ましい。これにより、使用者の使用中に貯留部内の温水の温度変化を防ぎ、一定温度の温水等を供給できるので、快適な使用感を与える。
【0017】
本発明の温水便座装置は、前記貯留部、前記供給部の一部および前記排出部の一部が、前記便器または前記便器が設置される室内の壁内に設置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の温水便座装置によれば、温水を貯留部の貯留空間に回収することができるので、便座の表面を暖房する際に供給する温水を循環することができ、温水の熱を便座の表面を暖房することにのみ使用されるため、投入熱量を低減できる。また、便座内部の便座流路に供給された温水等を貯留部に回収することで、貯留部に水を供給するより貯留部内の温水の温度が低下しにくく、その上投入した熱量を温水として回収できるので省エネになる。
【0019】
また、貯留部は、保温部により貯留空間の温水の温度を保てるので、貯留空間の温水を再加熱するための熱量が低減できる。
【0020】
そして、貯留部への温水等の回収は、回収判定手段で判定した温水等を回収するので、回収流路内を流れる全ての温水等を回収するのではない。つまり、回収した方が良い温水等(例えば水は回収せず)を回収するので、貯留部内の温水の温度の低下を防げる。よって、貯留部内の温水を再加熱するための投入熱量が低減でき省エネになる。その上、供給される温水等は貯留部の温水と給水源からの水とであるので、回収判定手段で判定することで貯留部に回収する温水等が増量するのを防げ、必要最小容量の貯留部を用いることができる。
【0021】
そして、回収判定手段は、回収流路内の温水等の温度を測定し、その結果を基に回収か排出かを切り替えられる回収切替部あるいは温度に感応して回収流路内の温水等の流出先を変更できる感応型切替部で実現できるので、簡単な構成で温水の回収ができる。
【0022】
そして、温水便座装置は、更に着座センサーおよび/または入室検知センサーの結果に基づいて、温水等を貯留部に回収するタイミングを測り、温水が便座流路内で冷めてしまう前に回収できる。これにより、熱量を投入して暖めた温水を効率よく回収できる。
【0023】
また、供給部によれば、貯留部から温水と給水源の水とを便座流路に供給するにあたり、温水と水とのどちらかだけを供給したり、混合したりした温水等を供給することができる。これにより、供給する温水等の温度を調節でき、例えば季節の違いや使用者の好みなどで便座表面の温度を変更することができるので、実用的な温水便座装置を提供できる。
【0024】
そして、本発明の温水便座装置は、局部を洗浄するために局部洗浄部に温水等を供給することもできる。更には、トレイ使用後に手を洗うための手洗い部やトイレ内の床暖房のために貯留部から温水等を供給でき、手洗いに使用されなかった温水やトイレ退出後の床暖房用流路内の温水を回収できるので、手洗いや床暖房のために投入した熱量のいくらかを回収できる。これは、手洗いや床暖房のために投入熱量が増加したとしても温水を回収できない装置に比べれば省エネである。
【0025】
そして、温水便座装置は、着座センサーまたは入室検知センサーが使用者の着座または入室を検知している場合に、貯留部に給水源から水を供給しないことで、使用中の貯留空間の温水の温度変化を防ぎ、一定温度の温水等を使用者に供給できるので、快適な使用感を与える。
【0026】
そして、前記貯留部、前記供給部の一部および前記回収部の一部は、便器または便器が設置される室内の壁内に設置されることで、従来からの温水便座装置が配置される場所に設置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
【0028】
(実施例1)
本実施例1の温水便座装置1は、図1および図2に示すように、便座22、局部洗浄部31、手洗い部32、貯留部4、供給部5、排出部(回収部)6、給水源7を備える。本実施例1の温水便座装置1に係る便座22は、便器23の上方に配され、便蓋21が便座22の上方に配される。便蓋21および便座22は、便器23の上方の後部に配された基部24に枢支され、便器23に対して回動して便器23の上面を開閉する。便座22は、内部に温水等が供給される便座流路221が形成され、便座22表面の温度を測定する便座温度センサー222を有している。本実施例の装置は、更に基部24上方に本実施例の装置が設置される室内に使用者が入室したかどうかを検知する入室検知センサー25と、便座22に使用者が着座したかどうか検知する着座センサー26とを有する。本実施例の装置は、便器23内を洗浄するための水を排出するためのタンクを持たないタンクレス式の温水便座装置である。なお、本明細書中において、上、下は図中の上、下を指し、前、後は、本実施例の便器23に対して基部24が配されていない側を前とし、基部24が配されている側を後とする。
【0029】
局部洗浄部31は、本実施例の装置を使用する使用者のビデ側を洗浄するビデノズル311と、おしり側を洗浄するおしりノズル312とを備え、便器23内部に基部24から前方に向かって出し入れ可能に取り付けられる。局部洗浄部31のビデノズル311およびおしりノズル312には、局部洗浄用流路313から温水等が供給される。そして、局部洗浄用流路313の端部側では、ビデノズル311側かおしりノズル312側のどちらに温水を供給するかを切り替えられる局部洗浄切替バルブ314が取り付けられている。
【0030】
手洗い部32は、トレイ内に位置し、手洗い用流路321から手を洗浄するための温水等が供給される。手洗い用流路321の途中に手洗い部32に温水等を供給するか排出部6側に流すかを切り替える手洗い用切替バルブ322が取り付けられている。
【0031】
貯留部4、供給部5の一部、排出部6の一部は、図1において、便器23後方の壁11の内側に配される。貯留部4は、図3に示されるように、タンク本体部41、タンク蓋部42、水位センサー、貯留空間温度センサー44、ヒーター45、流入口46、給湯口47を備える。タンク本体部41は、温水が貯留される貯留空間411を真空の空間を有する保温部412が覆う2重構造で形成されている。タンク蓋部42は、下側に位置しタンク本体部41の底を形成する。タンク蓋部42には、下方から貯留空間411に向かって水位センサー、貯留空間温度センサー44およびヒーター45が貫通している。そして、流入口46と給湯口47とは、一端部がタンク蓋部42の下面から下方に突出し、他端部が貯留空間411に直結している。
【0032】
水位センサーは、貯留空間411上方に延び貯留空間411に貯留される温水の上限水位を検知する上限水位センサー431と、貯留空間411の下方に位置し貯留空間411に貯留される温水の下限水位を検知する下限水位センサー432との2つからなる。下限水位センサー432で下限水位が検知された場合に、上限水位センサー431で上限水位が検知されるまで給水源7から水を供給する。貯留空間温度センサー44は、下限水位センサー432よりも下方に位置し、貯留空間411の温水の温度を検出する。ヒーター45は、上限水位センサー431と下限水位センサー432との間の高さで、貯留空間411の温水を加熱する電気ヒーターである。貯留空間411の温水は、例えば60度を目安に、57度まで下がった場合に60度くらいにヒーター45で加熱する。そして、ヒーター45は、貯留空間411の水位が上限の場合に作動する。貯留空間411に貯留する温水の温度は季節や貯留空間411の大きさに応じて設定変更も可能で、ヒーター45が作動する目安は設定温度より5度以下、10度以下などでも良い。
【0033】
流入口46は、後述する排出部6の回収流路61の一端側が接続され、温水等が貯留空間411に回収または供給される。給湯口47は、後述する供給部5の供給流路51の一端側が接続され、給湯口47から温水が供給流路51に給湯される。
【0034】
供給部5は、図2に示されるように、貯留部4の給湯口47に一端側が接続し貯留部4から温水が流入される供給流路51、供給流路51の途中にポンプ52、混合バルブ53、供給切替バルブ(供給切替部)54からなる。供給流路51は、一端側が貯留部4の給湯口47に接続し、他端側が供給切替バルブ54に接続される。ポンプ52は、供給流路51の一端側の端部で貯留部4の給湯口47に近い位置に配され、貯留部4からの温水を便座流路221側に流す。混合バルブ53は、ポンプ52から温水、給水源7から水が流入し、使用状況に応じて温水のみ、水のみ、温水と水を混合した温水等を便座流路221側に流す。供給切替バルブ54は、貯留部4側から流入してくる温水等を便座22の便座流路221、局部洗浄部31の局部洗浄用流路313または手洗い部32の手洗い用流路321のいずれかに流れるように切り替える。
【0035】
排出部6は、一端側が貯留部4の流入口46に接続し、他端側が便座22の便座流路221側に接続し、便座流路221内の温水等を貯留部4の貯留空間411に戻す回収流路61を備える。そして、回収流路61の途中で回収流路61内の温水等を貯留部4側か排水口69側に流出させるか切り替える回収切替バルブ(回収切替部)62と、回収流路61内の温水等の温度を回収切替バルブ62と便座流路221側との間で測定する回収流路温度センサー63と、を備える回収判定手段を有する。回収判定手段は、回収流路温度センサー63の測定結果に基づいて回収切替バルブ62を切り替える。つまり、回収流路61内の温度を回収流路温度センサー63で測定し、回収切替バルブ62を切り替えるだけで、温水は回収し水は回収しない作動をさせることができるので、簡単な構成で温水の回収ができる。
【0036】
給水源7は、貯留部4の貯留空間411の温水が下限水位センサー432によって下限量になったのが検知された場合に、貯留部4の流入口46から貯留空間411に水を給水する外部水源である。給水源7は、閉じ切り弁72で水を給水するか停止するかを切り替え、給水する水を貯留部4の流入口46に供給するか供給部5の混合バルブ53に供給するかを給水切替部71で切り替える。
【0037】
また、便座22の便座流路221の途中、手洗い部32の手洗い用流路321途中、回収切替バルブ62と貯留部4の流入口46との間、給水源7と貯留部4の流入口46との間、の4カ所に温水等の逆流を防止する逆流防止弁9が取り付けられている。
【0038】
本実施例1の温水便座装置1は、基部24内部に制御装置100が設けられている。制御装置100は、図4に示すように、信号が入力される入力処理回路101と、データおよびプログラムを格納するメモリ111および演算処理を行うCPU112を有する制御回路102と、制御信号を出力する出力処理回路103とを備えている。ここで、入室検知センサー25、着座センサー26、便座温度センサー222、貯留空間温度センサー44、上限水位センサー431、下限水位センサー432、回収流路温度センサー63の各信号は入力処理回路101を経てCPU112に入力される。CPU112の制御信号は、出力処理回路103を介して、ヒーター45、ポンプ52、混合バルブ53、供給切替バルブ54、回収切替バルブ62、閉じ切り弁72、局部洗浄切替バルブ314および手洗い用切替バルブ322にそれぞれの駆動回路を経て出力される。
【0039】
図5〜図7は、制御装置100のCPU112が実行する制御の代表的なフローチャートを示す。但しフローチャートは一例であり、これに限定されるものではない。まず、制御装置100は、入室検知センサー25の信号を読み込む(ステップS101)。次に、使用者が本実施例の装置が設置されている室内に入室したか否かを判定する(ステップS102)。使用者が入室するまではステップS103以降は実行されない。使用者が入室すれば、便座温度センサー222の信号を読み込み(ステップS103)、便座22の温度として設定されている温度より低いか否かを判定する(ステップS104)。便座22の温度が便座表面の温度として設定した温度より低ければ、便座22を暖めるために供給手段(ステップS105)を実行してから次のステップS106に進み、便座22の温度が設定温度とほぼ同じであればステップS105の供給手段には進まずステップS106に進む。ステップS106では、着座センサー26の信号を読み込み、使用者が着座しているか否かを判定する(ステップS107)。使用者が着座していなければ、ステップS106に戻る。使用者が着座していれば、局部洗浄部31の局部洗浄用流路313に温水を供給するために供給手段を実行する(ステップS108)。ステップS108実行後、手洗い部32に温水を供給するために供給手段を実行する(ステップS109)。その後、入室検知センサー25の信号を読み込み(ステップS110)、入室検知センサー25で使用者が入室しているか退室しているかを判定する(ステップS111)。使用者が退室すると適当な時間(例えば3分程度)待機し(ステップS112)、便座流路221および手洗い用流路321の温水等を回収するために供給手段を実行する(ステップS113)。ステップS113を実行後は、ステップS101に戻り入室検知センサー25で使用者の入室が検知されるのを待つ。ここで、ステップS112の待機中に使用者が入室した場合は、割り込み処理として信号が処理され、ステップS103が実行される。
【0040】
上記したステップS105、ステップS108、ステップS109、ステップS113の供給手段の代表的な制御として、フローチャートを図6に示す。本フローチャートは、図6に示されるものに限定されるのではなく、あくまでも一例である。まず、供給手段は、温水等を供給する先が便座流路221か否かを判定する(ステップS201)。便座22を暖房する場合は、供給切替バルブ54を切り替えて便座流路221に温水等が供給されるようにする(ステップS202)。ステップS202では、ステップS103で取得した便座温度センサー222の信号を基に、ポンプ52、混合バルブ53、閉じ切り弁72の切替調節等を行う。例えば、便座22が冷えている(20度以下)ならばポンプ52を開き、閉じ切り弁72は閉じ、混合バルブ53をポンプ52側からだけ流入し、便座流路221側に貯留部4の温水(約60度)だけを流すように切り替える。ある程度暖かければ(例えば、20<便座22の温度<35度)、ポンプ52も閉じ切り弁72も開いて混合バルブ53で適度な温度に調節し、その温水等を便座流路221側に流す。もし、便座22が暖かければ(35度以上)、ポンプ52も閉じ切り弁72も閉じ混合バルブ53に温水も水も供給しない。
【0041】
ステップS202で、便座流路221に温水等が供給された場合、自動的に便座流路221内にあった温水等が排出部6側に押し流されるので、排出部6側ではそれを回収するか排出するか温水回収手段を実行する(ステップS203)。その後、供給手段を終了し、元のフローチャートのステップに戻る。
【0042】
そして、ステップS201で便座22の暖房でないと判定された場合は、局部洗浄部31に温水等を供給するか否か判定する(ステップS204)。局部洗浄部31に供給すると判定された場合は、供給切替バルブ54を切り替え、温水等が局部洗浄用流路313に流入されるようにする(ステップS205)。ステップS205では、ポンプ52および閉じ切り弁72を開き温水と水とを混合バルブ53で混合し、温水を局部洗浄用流路313に流出する。その後、着座センサー26の信号を読み込み(ステップS206)、使用者が着座していた状態から立ち上がったか否かを判定する(ステップS207)。使用者が立ち上がったら、供給手段を終了し、元のフローチャートに戻る。
【0043】
そして、ステップS204の判定で局部洗浄部31に温水等を供給するのではない場合は、手洗い部32に温水等を供給するか否かを判定する(ステップS208)。手洗い部32に温水等を供給する場合は、供給切替バルブ54を切り替え、温水等が手洗い用流路321に流入されるようにする(ステップS209)。ステップS209では、ポンプ52および閉じ切り弁72を開き貯留部4から温水、給水源7から水を供給し、混合バルブ53でちょうどよい温度に混合した温水を流出させる。そして、手洗い部32に温水等を供給しない場合は、供給切替バルブ54を切り替え、温水等が便座流路221および手洗い用流路321に流入されるようにする(ステップS210)。ステップS210では、ポンプ52を閉め、閉じ切り弁72を開き、給水源7の水だけを供給する。
【0044】
ステップS209およびステップ210で、手洗い用流路321等に温水等が供給されると自動的に手洗い流路321内等にあった温水等が排出部6側に押し流されるので、排出部6側ではそれを回収するか排出するか温水回収手段を実行して行う(ステップS211)。そして、供給手段を終了し、それぞれのステップが呼び出された元のフローチャートのステップに戻る。
【0045】
次に、ステップS203およびS211の温水回収手段の代表的な制御として、フローチャートを図7に示す。本フローチャートは、図7に示されるものに限定されるのではなく、あくまでも一例である。温水回収手段は、回収流路温度センサー63の信号を読み込み(ステップS301)、回収流路61内の温度が一定温度(例えば25度)より高いか低いかを判定する(ステップS302)。回収流路61内の温度が高ければ、回収切替バルブ62を貯留部4側だけに温水等が流れるように切り替え、貯留部4の貯留空間411に流入口46から温水等を流入させる(ステップS303)。そして、回収流路61内の温度が低ければ、回収流路61内の温水等が排水口69側に排出されるように回収切替バルブ62を切り替える(ステップS304)。
【0046】
そして、上記した制御装置100で実行される制御において、入室検知センサー25で使用者の入室を検知または着座センサー25で使用者の着座を検知している場合は、貯留部4の貯留空間411に給水源7から水を供給しない。つまり、室内に使用者が入室し温水等が貯留空間411から供給されて貯留空間411の水位が低下したとしても、使用者が入室(着座)している状態では貯留部4の給水処理は割り込ませず、使用者が退室(起立)後に給水処理する。これにより、使用中による貯留空間411の温水の温度変化を防げるので、一定温度の温水を便座流路221等に供給でき、快適な使用感を与えられる。
【0047】
上記した実施例によれば、保温できる貯留部4に温水を貯留しておけるので、温水を供給する際、投入熱量を減少させるあるいは熱量を投入せずとも十分に温かい温水を供給することができるので、投入熱量を低減でき省エネである。そして、供給部5によって便座22の便座流路221および手洗い部32の手洗い用流路321に供給した温水等を排出部6で、回収判定手段よって温水等を貯留部4の貯留空間411に回収することができる。温水等の回収は、回収判定手段の回収流路温度センサー63で回収流路61内の温水等の温度を測定し、回収切替バルブ62を切り替えて、回収流路61内の温水等の流入先を変更することで行われる。これにより、熱量を投入して温めた温水が便座流路221内および手洗い用流路321内で自然に冷めてしまうのを防ぎ、貯留部4の貯留空間411に戻すことができるので、温水が循環し貯留空間411の温水が減りすぎず且つ再加熱のための投入熱量を低減させることができ、省エネになる。また、一定の温度を基準に回収判定手段で判定して温水だけを回収するため、大きな貯留空間411を必要とせず、貯留部4の配置場所も限定され難い。
【0048】
そして、排出部6による温水等の回収は、入室検知センサー25によって使用者が退室してから適当な時間経過後に行われるので、温水が冷める前に効率よく回収できる。回収のタイミングは、着座センサー26の信号を基に、つまり使用者が便座22から立ち上がった時を基準にすることもできる。
【0049】
(実施例2)
本発明の実施例2について具体的に説明する。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心に説明する。
【0050】
本実施例の温水便座装置1’は、図8に示すように、給水源7の水を測定する給水源温度センサーが給水源7の付近に設置される。そして、排出部6の回収判定手段において、回収切替バルブ62の切り替えの判定で、回収流路温度センサー63で測定した回収流路61内の温水等の温度と給水源温度センサー73で測定した給水源7の水の温度とを比較する。図9は、図7のステップS301およびステップS302が異なるだけである。回収流路61内の温水等の温度と給水源7の水の温度の判定(ステップS306)によって、給水源7の水の温度より回収流路61内の温水等の温度が高ければ、回収流路61内の温水等を貯留部4の貯留空間411に回収する。回収流路61内の温水等の温度と比較する対象としては、給水源の水の温度以外にトイレ室内の温度などもある。
【0051】
(実施例3)
本発明の実施例3について具体的に説明する。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心に説明する。
【0052】
本実施例の温水便座装置1”は、図10に示すように、排出部6の回収判定手段が回収流路61内の温度に感応するバイメタルやワックスなどの感応型切替部64である。感応型切替部64は、回収流路61内の温水等に感応し、貯留部4側か排水口69側かに流れを切り替える。回収判定手段が温度を測定するセンサーを用いず1つの構成要素で実現できるため、部品点数を減らすことができる。
【0053】
(実施例4)
本発明の実施例4について説明する。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心に説明する。
【0054】
本実施例の温水便座装置は、本実施例の装置が設置される室内の床の内部に温水等を供給する床暖房用流路が形成される。供給部5は、手洗い部32に温水等を供給するのと同様に床の床暖房用流路にも温水等が供給する。供給部5において、床暖房用流路に温水を供給するタイミングは、便座22に温水を供給するのと同じタイミングである。図5で示されているフローチャートにおいては、ステップS105の便座22に温水湯を供給するのと同時に床暖房用流路に温水等を供給する。そして、床暖房用流路は排出部6の回収流路61に接続されるので、便座22の便座流路221や手洗い部32の手洗い用流路321に供給された温水等を回収するのと同様に床暖房用流路に供給された温水等を回収できる。本実施例によれば、床暖房が実現されるだけでなく、暖房のために使用した温水等を使用者が退室後に回収することで、貯留部4の貯留空間411から給湯される温水量が増え投入熱量が増加したとしても、回収しない温水便座装置より省エネになる。
【0055】
(他の実施例)
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば、実施例2と実施例4とまたは実施例3と実施例4とを組み合わせて、実施例1同様、実施例2および実施例3に床暖房のために床暖房用流路を取り付けることもできる。また、温水便座装置として便器23内部の洗浄用の水を貯蓄しないタンクレス式を用いたがタンクを持つハイタンク式やロータンク式にも同様に本発明の温水便座装置を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施例1の温水便座装置に係る温水便座装置と温水便座装置が設置されている室内の側面図である。
【図2】本実施例1の温水便座装置の回路図である。
【図3】本実施例1の温水便座装置に係る貯留部の断面図である。
【図4】本実施例1の温水便座装置に係る制御装置のブロック図である。
【図5】制御装置が実行するフローチャートである。
【図6】制御装置が実行する供給手段に係るフローチャートである。
【図7】制御装置が実行する温水回収手段に係るフローチャートである。
【図8】本実施例2の温水便座装置に係る制御装置のブロック図である。
【図9】制御装置が実行する温水回収手段に係るフローチャートである。
【図10】本実施例3の温水便座装置に係る制御装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1,1’,1”:温水便座装置、11:壁、
21:便蓋、22:便座(温水便座)、221:便座流路、222:便座温度センサー、23:便器、24:基部、25:入室検知センサー、26:着座センサー、
31:局部洗浄部、311:ビデノズル、312:おしりノズル、313:局部洗浄用流路、314:局部洗浄切替バルブ、32:手洗い部、321:手洗い用流路、322:手洗い用切替バルブ、
4:貯留部、41:タンク本体部、411:貯留空間、412:保温部、42:タンク蓋部、431:上限水位センサー、432:下限水位センサー、44:貯留空間温度センサー、45:ヒーター、46:流入口、47:給湯口、
5:供給部、51:供給流路、52:ポンプ、53:混合バルブ、54:供給切替バルブ(供給切替部)、
6:排出部(回収部)、61:回収流路、62:回収切替バルブ(回収切替部)、63:回収流路温度センサー、64:感応型切替部、69:排水口、
7:給水源、71:給水切替部、72:閉じ切り弁
9:逆流防止弁,
100:制御装置、101:入力処理回路、102:制御回路(回収判定手段)、103:出力処理回路、111:メモリ:、112:CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に取り付けられ内部に温水が流れる便座流路を有する温水便座と、
前記温水便座の前記便座流路に供給する前記温水を貯留可能な貯留空間をもつ貯留部と、
給水源から水および/または前記貯留部の前記貯留空間から前記温水を前記温水便座の前記便座流路に供給する供給部と、
前記温水便座の前記便座流路に供給された前記水および/または前記温水を排水口に排出する排出部と、
を有する温水便座装置において、
前記排出部は、前記温水便座の前記便座流路に供給された前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収する回収部を有することを特徴とする温水便座装置。
【請求項2】
請求項1において、前記回収部は、前記温水便座の前記便座流路に供給された前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収するための回収流路と、前記回収流路の前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収するか前記排水口に排出するかを判定する回収判定手段とを有することを特徴とする温水便座装置。
【請求項3】
請求項2において、前記回収判定手段は、前記回収流路を通過する前記水および/または前記温水の温度を測定する回収流路温度センサーと、前記回収流路温度センサーの結果に基づいて前記回収流路内の前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収または前記排水口に排出するのを切り替える回収切替部とを有することを特徴とする温水便座装置。
【請求項4】
請求項2において、前記回収判定手段は、前記回収流路を通過する前記水および/または前記温水の温度に感応して、前記貯留部の前記貯留空間に回収または前記排水口に排出するのを切り替える感応型切替部を有することを特徴とする温水便座装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項において、前記便座に使用者が着座しているかどうかを検知する着座センサーおよび/または前記便器が設置されている室内に使用者が入室したかどうかを検知する入室検知センサーを有し、
前記回収部は、前記着座センサーまたは前記入室検知センサーの検知した信号に基づいて前記給水源から前記温水便座の前記便座流路に前記水を供給して前記便座流路内の前記水または前記温水を前記回収流路に流入させることを特徴とする温水便座装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちいずれか一項において、前記供給部は前記便座に前記水および/または前記温水を供給するための供給流路と、前記供給流路に位置し前記給水源から供給される前記水または前記貯留部の前記貯留空間から供給される前記温水を切り替えまたは混合する供給切替部とを有することを特徴とする温水便座装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちいずれか一項において、前記便器に取り付けられ局部を洗浄するための局部洗浄部と、前記局部洗浄部に前記給水源から前記水および/または前記貯留部の前記貯留空間から前記温水を供給するための局部洗浄用流路とを更に有することを特徴とする温水便座装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうちいずれか一項において、手を洗うための手洗い部と、前記手洗い部に前記給水源から前記水および/または前記貯留部の前記貯留空間から前記温水を供給し、供給した前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収するための手洗い用流路とを更に有することを特徴とする温水便座装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のうちいずれか一項において、前記便器が設置される床の内部に前記給水源から前記水および/または前記貯留部の前記貯留空間から前記温水を供給し、供給した前記水および/または前記温水を前記貯留部の前記貯留空間に回収するための床暖房用流路を更に有することを特徴とする温水便座装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のうちいずれか一項において、前記貯留部は、前記貯留空間の前記温水を保温する保温部と、前記貯留空間の前記温水の温度を測定する貯留空間温度センサーと、前記貯留空間温度センサーの検知した温度に基づいて前記貯留空間の前記温水を温めるヒーターと、前記貯留空間の水位を検知する水位センサーとを有し、前記水位センサーの検知に基づいて前記給水源から前記水が供給されることを特徴とする温水便座装置。
【請求項11】
請求項6〜請求項10のうちのいずれか一項において、前記着座センサーが着座を検知しているまたは前記入室検知センサーが使用者の入室を検知している場合は、前記貯留部の前記貯留空間に前記給水源から前記水が供給されないことを特徴とする温水便座装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のうちのいずれか一項において、前記貯留部、前記供給部の一部および前記排出部の一部が、前記便器または前記便器が設置される室内の壁内に設置されることを特徴とする温水便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−307185(P2008−307185A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156684(P2007−156684)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】