説明

温水装置

【課題】ガスバーナに供給される燃料ガスの種類または供給圧の情況を正確に判断することが可能な温水装置を提供する。
【解決手段】ガスバーナ1により発生される燃焼ガスとの熱交換によって湯水を加熱する熱交換器2A,2Bと、ガスバーナ1および熱交換器2A,2Bの湯水加熱効率ηを求め、かつこの湯水加熱効率ηと閾値Thとを比較することにより、ガスバーナ1に供給される燃料ガスの種類または供給圧の情況を判断する判断手段5と、を備えている、温水装置WHであって、判断手段5は、燃料ガスの種類または供給圧の情況を判断するときに、熱交換器2A,2Bへの入水温度に応じて閾値Thを変更し、熱交換器2A,2Bへの入水温度が低いときよりも高いときの方が、閾値Thが小さくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水加熱用の熱源としてガスバーナが用いられ、かつこのガスバーナに供給される燃料ガスの種類あるいは供給圧の情況を判断する機能を備えている温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、この種の温水装置の一例として、特許文献1に記載されたものを先に提案している。同文献に記載された温水装置は、ガスバーナと、このガスバーナにより発生させた燃焼ガスとの熱交換によって湯水加熱を行なう熱交換器と、ガスバーナに供給される燃料ガスの種類を判断するためのガス種判断手段とを備えている。燃料ガスとしては、たとえばコード番号「12A」,「13A」が付され、かつ発熱量が相違する2種類の都市ガスがある。前記ガス種判断手段は、そのような2種類の燃料ガスの種類を判断可能である。その判断手法としては、ガスバーナを実際に駆動燃焼させて給湯動作を行なった際の入水温度、出湯温度、および湯水流量などに基づいて、ガスバーナおよび熱交換器の湯水加熱効率ηを求め、かつこの湯水加熱効率ηを閾値Thと比較する手法が用いられている。閾値Thとしては、たとえば90%の値が用いられる。η≧90%の場合には、燃料ガスは13Aであると判断され、η<90%の場合には、燃料ガスは12Aであると判断される。
【0003】
このような構成によれば、ガスバーナに供給されてくる燃料ガスが12A,13Aのいずれであるかを判断し、燃料ガスの種類に応じてファンを制御するなど、燃料ガスを適切な条件で燃焼させることが可能である。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、温水装置が具備する熱交換器の熱交換効率は、常に一定ではなく、熱交換器への入水温度が高くなるほど、その効率は低下する特性がある。このような特性は、潜熱回収用の熱交換器を備えた高効率の温水装置においてより顕著となる。潜熱回収用の熱交換器は、顕熱回収用の熱交換器を通過して温度が低下した燃焼ガスを熱交換対象としており、このような燃焼ガスから多くの潜熱を回収するには熱交換器内を通過する湯水の温度が低いほどよいからである。これに対し、前記従来技術では、燃料ガスの種類を判断すべく湯水加熱効率ηと閾値Thとを比較する場合に、その閾値Thとしては、熱交換器への入水温度には関係なく、常に同一の値が用いられている。これでは、入水温度の変化に伴って熱交換器の熱交換効率が変化する事情をなんら考慮することなく燃料ガスの種類が判断されていることとなり、その判断精度はやや劣るものとなる。その結果、たとえば入水温度がかなり低い条件、あるいは高い条件において燃料ガスの種類が判断される際に、過誤を生じる虞がある。したがって、このような虞を無くすように、判断精度をより高めることが望まれる。
【0006】
なお、国または地域によっては、燃料ガスの供給圧が不安定な情況で温水装置が使用される場合がある。したがって、燃料ガスの種類の判断に加え、または代えて、燃料ガスの供給圧がどのような情況にあるかを正確に判断し、それに対応した燃焼制御ができるようにすることも望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−194330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、ガスバーナに供給される燃料ガスの種類または供給圧の情況を正確に判断することが可能な温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明により提供される温水装置は、ガスバーナと、このガスバーナにより発生される燃焼ガスとの熱交換によって湯水を加熱する少なくとも1つの熱交換器と、前記ガスバーナおよび前記熱交換器の湯水加熱効率を求め、かつこの湯水加熱効率と予め定められた閾値とを比較することにより、前記ガスバーナに供給される燃料ガスの種類または供給圧の情況を判断する判断手段と、を備えている、温水装置であって、前記判断手段は、前記燃料ガスの種類または供給圧の情況を判断するときには、前記熱交換器への入水温度に応じて前記閾値を変更し、前記熱交換器への入水温度が低いときよりも高いときの方が、前記閾値が小さくなるように構成されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、ガスバーナおよび熱交換器の湯水加熱効率と閾値とを比較して、燃料ガスの種類または供給圧の情況を判断する場合において、熱交換器への入水温度が低く、熱交換器の熱交換効率が比較的高いときには、値が大きめの閾値が用いられる。これとは反対に、熱交換器への入水温度が高く、熱交換器の熱交換効率が低いときには、値が小さめの閾値が用いられる。このため、入水温度には関係なく閾値が常に一定とされていた従来技術と比較して、熱交換器の特性をより考慮した判断が行なわれることとなり、燃料ガスの種類または供給圧の情況についての判断精度を高めることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記熱交換器として、前記燃焼ガスから顕熱を回収する1次熱交換器と、潜熱を回収する2次熱交換器とを有している。
【0013】
潜熱回収用の2次熱交換器を備えた温水装置では、入水温度が高くなった場合の熱交換効率の低下幅が大きいために、本来的には、燃料ガスの種類や供給圧の情報を判断する場合に過誤を生じ易い。これに対し、本発明は、前記したように燃料ガスの種類または供給圧の情況についての判断精度を高める効果が得られるために、潜熱回収用の2次熱交換器を備えた温水装置に、より適するものとなる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記ガスバーナに燃焼用空気を供給するファンを備えており、前記判断手段は、前記湯水加熱効率が前記閾値未満の場合には、そうでない場合よりも、発熱量が低い燃料ガスが供給されている状態、またはガス供給圧が低い状態であると判断し、前記ファンの回転速度を遅くする制御を実行するように構成されている。
【0015】
このような構成によれば、ガスバーナに対する燃焼用空気の供給量を、燃料ガスの発熱量または供給圧に対応した適正なものとして、ガスバーナの駆動燃焼状態を良好にすることが可能である。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る温水装置の一例を示す説明図である。
【図2】図1に示す温水装置において実行される燃料ガスの種類の判断で用いられる閾値の具体例を示す説明図である。
【図3】図1に示す温水装置の1次熱交換器と2次熱交換器の熱交換効率に関する特性を示す図である。
【図4】図1に示す温水装置の制御部の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す温水装置の制御部の動作処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図6】閾値のデータの他の例を示す説明図である。
【図7】本発明の他の例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1に示す温水装置WHは、ガス給湯装置として構成されており、ガスバーナ1、1次および2次の熱交換器2A,2B、制御部5、ならびにこれらを囲んで保護する外装ケース90を備えている。
【0020】
ガスバーナ1は、缶体6内に配された複数の燃焼管11と、開閉バルブ12a〜12cとを備えている。複数の燃焼管11は、開閉バルブ12a〜12cに対応する複数の領域に区分されており、開閉バルブ12a〜12cの切替え動作によって前記複数の領域の燃焼駆動のオン・オフが個々に制御される。ガスバーナ1には、外装ケース90の外部に敷設されたガス管(図示略)から供給されてくる燃料ガスを導く配管19が接続されており、この配管19には、圧力調整用のバルブ13、および元栓としての役割を果たす開閉バルブ14が設けられている。ガスバーナ1の近傍には、点火プラグ15、火炎立ち消え検出用のセンサ16、および火炎温度検出用のセンサ17が設けられている。缶体6の下部には、外部の空気を燃焼用空気として缶体6内に送り込むファン18が設けられている。
【0021】
1次および2次熱交換器2A,2Bは、ガスバーナ1によって発生された燃焼ガスから顕熱および潜熱を順次回収するためのものであり、たとえば複数のフィン20a,20bを備えた水管21a,21bを利用して構成されている。ただし、1次および2次の熱交換器2A,2Bは、そのようなフィン付きチューブを用いた構成に限らない。1次および2次の熱交換器2A,2Bにより熱回収がなされた燃焼ガスは、缶体6の排気口60から外装ケース90の外部に排出される。外装ケース90の外部から給水管(図示略)を介して給水口30に供給された湯水は、入水管3を介して2次熱交換器2B内に供給され、かつこの2次熱交換器2Bを通過した湯水は1次熱交換器2A内をさらに通過する。この過程において、湯水加熱が行なわれる。1次熱交換器2Aを通過した湯水は、その後に出湯管4内を通過して出湯口40に到達し、外部給湯管(図示略)を介して所定の給湯先に供給される。
【0022】
入水管3および出湯管4は、バイパス管7を介して連結されている。入水管3には、入水温度センサ31および流量センサ32が設けられている。バイパス管7には、バイパス流量調整バルブ72が設けられている。出湯管4には、出湯流量調整バルブ41、ならびに出湯温度センサ42,44が設けられている。出湯管4内を流通してきた湯水には、バイパス管7を通過してきた水が所定の比率で混合され、このことにより所望の目標温度の温水を生成することが可能である。温度センサ42,44は、そのような温水の混合前と混合後のそれぞれの温度を検出可能である。
【0023】
制御部5は、本発明でいう「判断手段」の一例に相当し、たとえばマイクロコンピュー
タを用いて構成され、温水装置WHの各部の動作制御やデータ処理を実行する。外装ケース90の外部には、制御部5と通信接続されたリモコン59が設けられている。このリモコン59から制御部5に対して目標出湯温度(目標給湯温度)やその他のデータを送信可能であり、制御部5は、給湯動作時には、目標出湯温度の湯水を生成するための制御行なうようにガスバーナ1の火力調整、バルブ41,72などの開度制御、およびファン18の回転速度制御を実行する。前記した各種のセンサ類は、その検出信号を制御部5に送信する。
【0024】
制御部5は、ガスバーナ1に供給される燃料ガスの種類または供給圧に関する燃料供給条件を判断可能である(なお、説明の便宜上、燃料ガスの供給圧の変化の判断については後述する)。この温水装置WHは、既述したコード番号「12A」,「13A」の2種類の都市ガスに対応し得る仕様である。都市ガス「12A」の発熱量は8800〔Kcal/m3〕、都市ガス「13A」の発熱量は、11000〔Kcal/m3〕である。制御部5は、燃料ガスが「12A」,「13A」のいずれであるかを判断可能であり、そのための手段として、後述する所定の閾値ThのデータD1を記憶する記憶部50を有している。
【0025】
燃料ガスの種類を判断する場合、ガスバーナ1と、1次および2次の熱交換器2A,2Bとを総合した湯水加熱効率ηを求め、この湯水加熱効率ηを閾値Thと比較する手法が用いられる。
湯水加熱効率ηは、次の式で求められる。
η=Go/Gt ・・・(式1)
Gt:目標加熱量(目標燃焼号数)
Go:実測加熱量(実測燃焼号数)
目標加熱量Gtは、目標出湯温度での出湯を行なわせるのに必要とされる理論値としての加熱量(ガスバーナ1の駆動燃焼により発生する熱量)であり、Gt=(目標出湯温度−入水温度)×トータル出湯流量/定数 の式で求めることが可能である。
実測加熱量Goは、目標出湯温度での出湯を行なわせるべくガスバーナ1の駆動を実際に行なった際の実測値としての加熱量であり、Go=(出湯温度−入水温度)×トータル出湯流量/定数 の式で求めることが可能である。入水温度は、入水温度センサ31を利用して検出され、出湯温度は、出湯温度センサ42を利用して検出される。トータル出湯流量は、流量センサ32を利用して検出可能である。
【0026】
制御部5は、湯水加熱効率ηを求めた後には、これを閾値Thと比較することにより、燃料ガスの種類を判断する。より具体的には、η≧Thの場合には、燃料ガスが「13A」であると判断し、η<Thの場合には、「12A」であると判断する。
ただし、閾値Thは一定ではなく、入水温度に応じて変更される。制御部5の記憶部50には、たとえば図2に示すような、閾値ThのデータD1が記憶されている。このデータD1では、入水温度が10〜30℃(30℃丁度は除く)の場合には閾値Thが92%、30〜40℃(40℃丁度は除く)の場合には閾値Thが90%、40℃以上の場合には閾値Thが88%とされている。制御部5は、前記した3種類の閾値Thの中から、実際の入水温度に対応した1つの閾値Thを選択し、この選択された閾値Thを燃料ガスの種類の判断に利用するように構成されている。
【0027】
図3は、1次および2次の熱交換器2A,2Bのそれぞれに個別に入水を行なわせて、この水の加熱を行なった場合の、入水温度と出力(出湯温度または加熱効率)との関係を示している。同図に示すように、1次および2次の熱交換器2A,2Bは、いずれも入水温度が高くなるほどその出力は低下する特性があり、とくに、2次熱交換器2Bにおいて、そのような特性は顕著である。図2に示したデータD1の閾値Thは、図3に示した1次および2次の熱交換器2A,2Bの特性を反映したものとなっている。なお、データD1の閾値Thは、試験により求めればよい。
【0028】
次に、温水装置WHの作用、および制御部5の具体的な動作処理手順の一例について、図4のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0029】
まず、制御部5は、燃料ガスの種類をこの制御部5自体が既に確定させているか否かを判断する(S1)。温水装置WHが所望箇所に設置されて試運転が行なわれる迄は、燃料ガスの種類は未確定状態である(S1:YES)。このような状態において、給湯動作を開始すべく1次および2次熱交換器2A,2Bに所定量以上の通水がなされると、制御部5は、ガスバーナ1を駆動燃焼させ(S2:YES,S3)、その後に燃料ガスの種類を判断するための処理を開始する。前記したガスバーナ1の駆動燃焼時においては、燃料ガスが「13A」である場合と同様の制御が暫定的に行なわれる。もちろん、これとは異なり、たとえば「12A」,「13A」の中間的な発熱量の燃料ガスに対応する制御内容として、「12A」,「13A」のいずれにも適度に対応できるような暫定制御を行なうようにしてもよい。燃料ガスの種類の判断は、その正確性を高めるために、好ましくは、ガスバーナ1の駆動燃焼火力が一定以上とされ、かつその状態が一定時間以上安定した状態で行なわれる。
【0030】
燃料ガスの種類を判断する手法は、先に述べたとおりであり、まず目標加熱量Gtおよび実測加熱量Goを算出し、湯水加熱効率ηを求める(S4)。次いで、図2に示したデータD1の中から、入水温度に対応した閾値Thを選択し、この選択された閾値Thと湯水加熱効率ηとを比較する(S5,S6)。その結果、η≧Thの場合には、燃料ガスが「13A」であると判断され、その旨が確定される(S6:YES,S7,S8)。これとは異なり、η<Thの場合には、燃料ガスが「12A」であると判断され、その旨が確定される(S6:NO,S10,S11)。燃料ガスが「12A」であると判断された場合には、その後「12A」に対応した燃焼制御に切り替えられ、たとえばファン18の回転速度が低くされる(S12)。これに対し、燃料ガスが「13A」であると判断された場合には、「13A」に対応していた燃焼制御がそのまま維持される(S9)。「12A」の場合と「13A」の場合とのファン回転速度比は、たとえば92:100である。このような制御により、適切な空燃比が得られる。
【0031】
制御部5は、燃料ガスの種類を一度確定させると、その後は特別なスイッチ操作がなされたり、あるいは温水装置WHの電源オフなどがなされない限りは、燃料ガスの種類を判断する処理を再度実行しないように構成されている。このことにより、制御部5の負荷を少なくすることができる。
【0032】
前記した一連の動作手順によれば、湯水加熱効率ηと閾値Thとを比較して燃料ガスの種類を判断する際に、入水温度が低く1次および2次の熱交換器2A,2Bの熱交換効率が高いときには、大きめの閾値Thが用いられ、そうでないときには、小さめの閾値Thが用いられる。このため、図3に示したように、入水温度に対応して変化する1次および2次の熱交換器2A,2Bの熱交換効率を考慮した判断が行なわれることとなり、燃料ガスの種類についての判断精度を高めることが可能である。したがって、そのような判断結果に基づいて実行されるガスバーナ1の駆動燃焼制御も適切なものとなる。
【0033】
制御部5には、図5に示すフローチャートのような動作処理を実行させることも可能である。同図に示す動作処理は、温水装置WHが燃料ガスの供給圧が比較的不安定な条件下で設置使用される場合に対処するための処理であり、制御部5は、次に述べるように、燃料ガスの供給圧の変化を検出する処理を実行する。なお、以下の説明では、理解を容易にするため、燃料ガスの種類は一定であって、燃料ガスの種類についての判断処理は行なわないものとする。
【0034】
制御部5は、ガスバーナ1が駆動燃焼を開始すると(S21:YES)、その駆動燃焼が安定した状態において、湯水加熱効率ηを求めるとともに、入水温度に対応した閾値Thを選択する(S22,S23)。閾値Thは、燃料ガスの種類や供給圧帯域などに対応して決定されるものであり、図3に示したデータD1とは必ずしも一致しない。ただし、入水温度が高いほどその値が小さくなる点は、データD1と同様である。
【0035】
次いで、制御部5は、湯水加熱効率ηと選択された閾値Thとを比較し、η≧Thの場合には、燃料ガスの供給圧が高圧気味であると判断する(S24:YES,S25)。この場合、たとえばファン18の回転速度を、後述するガス供給圧が低圧気味の場合よりも高い速度とし(S26)、燃料リッチになることを解消する。前記とは異なり、η<Thの場合には、燃料ガスの供給圧が低圧気味であると判断し、たとえばファン18の回転速度を低速気味とし(S24:NO,S28,S29)、エアリッチになることを解消する。
【0036】
前記したような動作処理は、ガスバーナ1の駆動燃焼が終了する迄は、一定周期または不定周期で繰り返し実行される(S27:NO,S22)。したがって、ガスバーナ1の駆動燃焼中において燃料ガスの供給圧が変化しても、この供給圧の変化に対応してガスバーナ1の駆動条件を適切に変更し、安定した給湯動作を実現することができる。
【0037】
図5に示した動作処理では、燃料ガスの種類を判断していない。ただし、温水装置としては、燃料ガスの供給圧が比較的大きく変化する虞があることに対応しつつ、2種類の燃料ガスのいずれにも対応可能なものとしたい場合がある。このような要望を満たす手段として、図4および図5で示した動作処理が組み合わされて実行されるように構成してもよい。
【0038】
図6および図7は、本発明の他の実施形態を示している。
【0039】
図6は、閾値Thのデータテーブルを模式的に示しており、入水温度と湯水加熱効率ηとを座標軸とする座標面に、閾値Thのラインが示されている。このデータテーブルでは、入水温度および湯水加熱効率ηの座標が閾値Thのラインよりも下側領域にある場合には、発熱量が小さい燃料ガス、あるいは燃料ガスの供給圧が低めであると判断することが可能であり、閾値Thのラインよりも上側領域にある場合には、発熱量が大きい燃料ガス、あるいは燃料ガスの供給圧が高めであると判断することが可能である。本実施形態のようなデータテーブルを用いれば、図2に示したデータD1を用いる場合よりも、閾値Thがよりきめ細かく選定されることとなり、判断精度をさらに高めることが可能である。
【0040】
図7に示す実施形態では、1次および2次の熱交換器2A,2Bを繋ぐ配管80に、その内部を流通する湯水の温度を検出するための温度センサ33が設けられている。本発明では、このような構成を前提とし、2次熱交換器2Bのみを考慮し、または1次熱交換器2Aのみを考慮して燃料ガスの種類または供給圧の変化を判断することが可能である。より具体的には、温度センサ33で検出される温度を2次熱交換器2Bからの出湯温度として用いれば、入水温度センサ31や流量センサ33を用いた計測値などに基づき、2次熱交換器2Bのみを対象とした湯水加熱効率を算出することができる。この湯水加熱効率を所定の閾値と比較することにより、燃料ガスの種類または供給圧の変化を判断することが可能である。
【0041】
前記とは異なり、温度センサ33で検出される温度を1次熱交換器2Aに対する入水温度として用いれば、出湯温度センサ45や流量センサ32を用いた計測値などに基づき、1次熱交換器2Aのみを対象とした湯水加熱効率を算出することができる。したがって、やはり閾値との比較により、燃料ガスの種類または供給圧の変化を判断することが可能である。図3に示したデータから理解されるように、1次熱交換器2Aは、2次熱交換器2
Bと比較すると、入水温度の変化に対する熱交換効率の変化量が少ないために、1次熱交換器2Aのみを対象として燃料ガスの種類や供給圧を判断すれば、その判断精度を高める上で好ましいものとなる。
【0042】
本実施形態および先の実施形態から理解されるように、温水装置が1次および2次の熱交換器を有するものである場合、本発明でいう湯水加熱効率としては、それら1次および2次の熱交換器の全体を対象とした湯水加熱効率でもよいし、1次熱交換器のみ、または2次熱交換器のみを対象とした湯水加熱効率であってもよい。もちろん、本発明は、2次熱交換器を具備せず、潜熱回収機能を具備しない温水装置にも適用することができる。
【0043】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内で種々に設計変更自在である。
【0044】
図1〜図4に示した実施形態では、発熱量が相違する2種類の燃料ガスに対応する場合について説明したが、燃料ガスとして、3種類あるいはそれ以上の燃料ガスが供給される可能性がある場合にも、本発明を適用可能である。たとえば、3種類の燃料ガスに対応する場合、閾値Thとして、2種類の閾値Th1,Th2を使用し(ただし、Th1>Th2)、η≧Th1の場合には発熱量が最大の燃料ガス、Th1>η≧Th2の場合には発熱量が中間の燃料ガス、η<Th2の場合には発熱量が最小の燃料ガスであると判断すればよい。もちろん、それらの閾値Th1,Th2は、入水温度に応じて変更される。
【0045】
本発明でいう燃料ガスの種類とは、たとえばガス会社によって規定された燃料ガスの種類と一致する必要はない。単に発熱量が所定値以上の燃料ガスであるか否かとして判断する場合も、燃料ガスの種類の判断に含まれる。本発明に係る温水装置は、給湯装置以外の装置(たとえば、床暖房装置)として構成することができる。
【符号の説明】
【0046】
WH 温水装置
1 ガスバーナ
2A 1次熱交換器(熱交換器)
2B 2次熱交換器(熱交換器)
5 制御部(判断手段)
18 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナと、
このガスバーナにより発生される燃焼ガスとの熱交換によって湯水を加熱する少なくとも1つの熱交換器と、
前記ガスバーナおよび前記熱交換器の湯水加熱効率を求め、かつこの湯水加熱効率と予め定められた閾値とを比較することにより、前記ガスバーナに供給される燃料ガスの種類または供給圧の情況を判断する判断手段と、
を備えている、温水装置であって、
前記判断手段は、前記燃料ガスの種類または供給圧の情況を判断するときには、前記熱交換器への入水温度に応じて前記閾値を変更し、前記熱交換器への入水温度が低いときよりも高いときの方が、前記閾値が小さくなるように構成されていることを特徴とする、温水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温水装置であって、
前記熱交換器として、前記燃焼ガスから顕熱を回収する1次熱交換器と、潜熱を回収する2次熱交換器とを有している、温水装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温水装置であって、
前記ガスバーナに燃焼用空気を供給するファンを備えており、
前記判断手段は、前記湯水加熱効率が前記閾値未満の場合には、そうでない場合よりも、発熱量が低い燃料ガスが供給されている状態、またはガス供給圧が低い状態であると判断し、前記ファンの回転速度を遅くする制御を実行するように構成されている、温水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−172964(P2012−172964A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39042(P2011−39042)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】