説明

温風加熱用食器

【課題】 調理済み食品、特にご飯を温風で加熱するときに、食器に接触した部分の乾燥を抑えながら加熱することができる食器を提供すること。
【解決手段】 椀型食器であって、その側面部において、蓋を支持しうる上縁部の下方0.5cmから食器の中心である底面表面までの垂直方向距離の半分の高さの位置までの側面部上部が肉厚に構成されている食器。
前記側面部上部の肉厚部厚さの最高値が、該垂直方向距離の半分の高さの位置から底面表面の位置までの側面部下部の側面厚さの1.2〜3倍である食器は好ましい態様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルド冷蔵保管と再加熱によって、調理済み食品、特にご飯を加熱するのに好適に使用できる樹脂製食器に関する。さらに詳しくは、本発明は、特定の形状を有した調理済み食品の乾燥に好適な食器に関する。
【背景技術】
【0002】
学校、病院、企業内食堂などでは大量の食品が配膳されている。近年チルド冷蔵保管と再加熱の技術が大幅に改善されてきたことと、そのための機器の入手が容易になってきた(例えば特許文献1)ことから、食品を良好な環境で調理し、必要に応じて加熱して食事に供する方法が注目されるようになった。
【0003】
このような調理済み食品を急速冷蔵して保管し、配膳前に再加熱して提供する方式は、クックチルシステムと呼ばれている。クックチルを使用すれば特殊な食品添加物を使用しなくとも、保管が可能であり、味のよい食品を暖かい状態で提供できるという利点がある。チルド冷蔵保管し、再加熱して食事に供するのに、調理済み食品を収容した食器をトレイ上に載置して、温風によって調理済みを加熱する方法が用いられている。
【0004】
ところが、冷蔵保管した調理済み食品を、食事に供するに際して温風によって再加熱するとき、食器に接触している部分の水分が蒸発してしまい、乾燥するという問題があった。調理済み食品の加熱を促進するために、蓋が調理済み食品と接触する構造の食器が提案されている(例えば特許文献2)が、提案されている食器を用いてもなお食器と接触する部分の乾燥を防ぐには十分ではなかった。特に調理済み食品がご飯であるとき、再加熱後のご飯の上面部周辺は、乾燥して食感及び食味が低下するため、喫食の楽しみ及び食欲がそがれるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−328859号公報
【特許文献2】特開2005−144013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、前記従来技術の課題を解決するために食器形状の改良に鋭意努力した結果本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、調理済み食品を温風で加熱するときに、食器に接触した部分の乾燥を抑えながら加熱することができる食器を提供するものである。
本発明の食器は、調理済みご飯を温風で加熱するときに、食器に接触した部分の乾燥を抑えながら加熱することができる飯椀として好適な食器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、椀型食器であって、その側面部において、蓋を支持しうる上縁部の下方0.5cmから食器の中心である底面表面までの垂直方向距離の半分の高さの位置までの側面部上部に肉厚部が構成されている食器を提供するものである。
【0008】
前記側面部上部の側面部厚さの最高値が、該垂直方向距離の半分の高さの位置から底面表面の位置までの側面部下部の側面厚さの1.2〜3倍である前記した食器は本発明の好ましい態様である。
【0009】
前記食器が、ポリプロピレンまたはそれと同程度の熱伝導特性を有する樹脂によって構成されている食器は本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、調理済み食品を温風で加熱するときに、食器に接触した部分の乾燥を抑えながら加熱することができる食器が提供される。
本発明により、調理済みご飯を温風で加熱するときに、食器に接触した部分の乾燥を抑えながら加熱することができる飯椀が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来形状の食器の例を示す断面図である。
【図2】本発明の食器の一例を示す断面図である。
【図3】図2の食器の一部拡大断面図である。
【図4】本発明の食器で蓋を被せた態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、椀型食器であって、その側面部において、蓋を支持しうる上縁部の下方0.5cmから食器の中心である底面表面までの垂直方向距離の半分の高さの位置までの側面部上部が肉厚に構成されている食器を提供するものである。
【0013】
前記側面部上部の肉厚部厚さの最高値が、該垂直方向距離の半分の高さの位置から底面表面の位置までの側面部下部の厚さの1.2〜3倍、より好ましくは1.5〜2.5倍である前記した食器は本発明の好ましい態様である。
【0014】
従来のクックチルに用いられている椀型食器は図1の(1)または(2)に示されているような形状が主流であって、加熱時には蓋を被せて使用されている。本発明において蓋を支持しうる上縁部というのは、図1の(1)の形状の椀型食器においては側面部上縁であり、図1の(2)の形状の椀型食器においては蓋を係止させる内方突起部をいう。
【0015】
図2に本発明の食器の一例を示す断面図が示されている。図2の椀型食器は図1に示した形状の椀型食器と同様に側面部上縁において蓋を支持しうる形状である。図2において、食器の側面部上部が肉厚に構成されていることがわかる。
【0016】
図3は、図2に示された食器の半分を糸尻部を除外して示した断面図である。図3には、その側面部において、垂直方向距離で蓋を支持しうる上縁部をAとして、Aの下方垂直距離αの位置をBとし、食器の中心である底面表面の位置をCとして、BとCの垂直方向距離の半分の高さの位置をDとして示されている。AB間の距離αは、0.5cmであることが好ましい。BからDの間が側面部上部であり、CからDが側面部下部である。本発明の食器では、側面部上部において肉厚部分が設けられている。
【0017】
図3において、BからDの間の側面部上部に肉厚部が設けられており、該側面部上部における肉厚の最高値はCからDの間の側面部下部の厚さの平均値の1.2〜3倍、より好ましくは1.5〜2.5倍であることが望ましい。また、側面部上部における肉厚の最高値は、絶対値にして5mm程度であることが望ましい。側面部上部に設けられた肉厚部は、肉厚が最高値を示す位置(a)を挟んで少なくとも10mm、より好ましくは12〜20mm程度あることが望ましい。側面部下部の厚さは、CからDの中間点における側面部の厚さとすることができる。
なお、本発明における側面部の厚さとは、側面中心線に垂直の方向で測定した厚さをいう。
【0018】
本発明の食器が、図1の(2)に示された食器のように蓋を係止させる内方突起部を有する形状である場合には、蓋を支持しうる上縁部Aは、内方突起部の上縁となる。
【0019】
本発明の食器に調理済み食品、特にご飯を盛り付けて再加熱した場合、再加熱後のご飯の上面部周辺は、乾燥することなく食感及び食味を維持することができるという効果を発揮する。
【0020】
本発明の食器の素材は、特に制限はなく、従来公知の素材から適宜選択することができる。例えば、ポリプロピレン、ポリエーテルサルホンなどの熱可塑性樹脂や、メラミン樹脂などの熱硬化製樹脂、陶磁器などで構成することができる。調理済み食品の乾燥という観点からは、中でも食器の素材はポリプロピレンが好適に使用される。
【0021】
また、熱伝導特性の観点から密度が1.2g/cm以下である樹脂は、ポリプロピレンと同様に好適に使用することができると考えられるが、ポリプロピレンが特に好ましい素材である。
【0022】
本発明の椀型食器には、温風によって加熱する際に蓋を被せて使用される。蓋の形状には特に制限はなく、椀型食器の形状に合わせて適宜選択することができる。
図4には、図2に示された本発明の椀型食器に蓋を被せた態様が示されている。
【0023】
本発明の椀型食器には、通常底部分に糸尻が設けられる。糸尻の形状には特に制限はなく、容器の底が持ち上がるような高さに設定される。糸尻7に温風が通風し得る大きさの切欠状の開口部を形成すると、加熱時に糸尻7内にも温風が入り込み効率よく加温することができる。
【実施例】
【0024】
(1)食器形状
素材がポリプロピレン、ABS及びメラミン樹脂であり、上縁部に蓋を係止させる突起のない形状であって、表1に記載した構成の直径14cm、容器容量が約450mlの椀型食器を用いた。
【0025】
【表1】

単位:mm
【0026】
(2)再加熱実験条件
各試験食器に、市販パックご飯を各々150g盛り付け、容器ごと5℃まで冷却し蓋をし、120℃エアーオーブン中で40分加熱した後、ご飯の上面部で食器と接触する周辺部を目視によって観察し、その後上面周辺部の加熱ご飯を試食して食感を確認して、下記基準で評価した。
【0027】
外観:
4:乾燥は見られない
3:縁部に若干の乾燥がみられる
2:縁部に若干の乾燥とこびりつきがみられる
1:縁部が乾燥し固くこびりついている
【0028】
食感:
4:違和感なく普通に食することができる
3:若干の異物感があるが食することができる
2:異物感はあるが食することはできる
1:異物感が大きく食する気にならない
【0029】
(3)試験結果
試験結果を、表2に示した。
【0030】
【表2】

表2から、本発明の食器において、加熱後のご飯の乾燥が抑制され、食味が維持されていることがわかる。メラミン製の従来形状の食器においては、ご飯の乾燥が顕著で、食感の低下が著しかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明により、調理済み食品、特にご飯を温風で加熱するときに、食器に接触した部分の乾燥を抑えながら加熱することができる椀型食器が提供される。
本発明により提供される椀型食器は、クックチルシステム用の食器として好適に使用される食器である。
【符号の説明】
【0032】
1.食器
2.側面部上部
3.食器上縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椀型食器であって、その側面部において、蓋を支持しうる上縁部の下方0.5cmから食器の中心である底面表面までの垂直方向距離の半分の高さの位置までの側面部上部に肉厚部が構成されている食器。
【請求項2】
前記側面部上部の肉厚部厚さの最高値が、該垂直方向距離の半分の高さの位置から底面表面の位置までの側面部下部の側面厚さの1.2〜3倍であることを特徴とする請求項1に記載の食器。
【請求項3】
前記食器が、ポリプロピレン樹脂によって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の食器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−193916(P2010−193916A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38605(P2009−38605)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000176176)三信化工株式会社 (34)
【Fターム(参考)】