説明

温風発生機の触媒保持構造

【課題】ワイヤメッシュ触媒に担持した白金、パラジウム等の触媒の揮散が促進されることによる触媒寿命の低下。
【解決手段】ワイヤメッシュ触媒表面への冷却用空気の導入を可能にすることで、ワイヤメッシュ触媒の温度を適性に保持することを可能とし、ワイヤメッシュ触媒に担持した白金、パラジウム等の触媒の揮散を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化した液体燃料を触媒燃焼する温風発生機の触媒保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、火炎燃焼に比べて燃焼温度が低く無炎で燃焼する触媒燃焼が知られている。触媒燃焼は、NOxなどの燃焼排ガスの排出が少なく、また、希薄混合気の燃焼が可能で、燃焼量の調整範囲が広く、放射熱量が大きい等の様々なメリットを有している。このため、触媒燃焼を温風あるいは赤外線を放出する暖房機器などに用いることが検討されている。その1つとして、前方にプレート状の触媒層を設け、この触媒層の後方に、噴霧された液体燃料を気化する気化室が配置された触媒燃焼装置が検討されている。
【0003】
このような技術において、本出願人によって、気化室の温度を確実に制御できる制御手段および制御方法を提供することにより、触媒燃焼を安定して制御することが可能で、触媒燃焼をさらに安定して維持することができる触媒燃焼装置およびその制御方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、燃焼室内で灯油を燃焼させることにより発生する燃焼ガス中のホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物(VOC)を、燃焼室の下流側に配置したワイヤメッシュ触媒で分解し、排気ガスを浄化している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3654572号公報
【特許文献2】特願2006−063445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのような触媒燃焼装置およびその制御方法においては、高温の燃焼ガスがワイヤメッシュ触媒を通過するため、ヒーターの熱出力を変更した場合などに適正温度を外れてしまうと、ワイヤメッシュ触媒に担持した白金、パラジウム等の触媒の揮散が促進されて、触媒寿命の低下を招く虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、ワイヤメッシュ触媒に担持した白金、パラジウム等の触媒の揮散が促進されてしまうのを防止することができ、ワイヤメッシュ触媒の長寿命化を図ることが可能な温風発生機の触媒保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた第1の構成の温風発生機の触媒保持構造によれば、本体前方に配置された吹出部から温風が吹き出されるとともに、該温風内の揮発性有機化合物を分解可能な触媒が設定されている温風発生機の触媒保持構造であって、触媒の温度を適性に保持すべく、触媒保持部近傍から触媒表面へ冷却用空気を導入可能になされていることを特徴としている。
【0008】
このように構成することによって、第1の構成の温風発生機の触媒保持構造によれば、触媒の温度を適性に保持すべく冷却用空気を導入することが可能になされているため、ヒーターの熱出力を変更した場合などであっても冷却用空気によって適宜冷却されるため、高温化し過ぎて適正温度から外れてしまうことがない。そのため、ワイヤメッシュ触媒に担持した白金、パラジウム等の触媒の揮散が促進されて、触媒寿命の低下を招いてしまうのを防止することが可能になる。
【0009】
また、第2には、、上記第1の構成において、前記触媒が、保持金具内で容易に熱変形可能な状態で保持されていることを特徴としている。
この第2の構成の温風発生機の触媒保持構造によれば、前記触媒が、保持金具内で容易に熱変形可能な状態で保持されているため、触媒が熱膨張と収縮を繰り返す際に、触媒を保持する保持金具との引っ掛かかりが生じることがないため、破損や変形が生じてしまうのを防止することが可能になる。
【0010】
また、第3には、、上記第1又は2の構成において、前記触媒の温度が980℃以下となるように、触媒保持部近傍から触媒表面への冷却用空気の量が設定されていることを特徴としている。
この第3の構成の温風発生機の触媒保持構造によれば、前記触媒の温度が980℃以下となるように、触媒保持部近傍から触媒表面への冷却用空気の量が設定されているため、ワイヤメッシュ触媒に担持した白金、パラジウム等の触媒の揮散が促進されてしまうのを、確実に防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態が適用された実施例について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0012】
図1は、本実施例による温風発生機の触媒保持構造の構成を示す構成図である。
可搬型ヒータ1は、外形略直方体状の燃料タンク10の上部に、先端に吹出部40が接続され外形略円筒状に形成された本体20が一体的に接続されている。また、前記本体20の内部には、バーナー2、燃焼筒30、ブロワー4、燃料ポンプ5などが配設されており、燃料ポンプ5によって供給された燃料をバーナー2が噴霧することで燃焼させている。
そして、生成された温風は、金属製多孔板による炎止め32a、二枚のワイヤメッシュ触媒50を通過して、本体20の前方に配置された吹出部40より所定の方向へ吐出される。
【0013】
図2は、本実施例による燃焼筒の構成を示す側面図である。図3は、本実施例による燃焼筒先端部を示す要部拡大図である。
前記燃焼筒30は、略円筒状に形成されており、内部に燃料を燃焼させる燃焼室32が形成されている。
また、前記燃焼筒30の先端部には、二枚のワイヤメッシュ触媒50が装着されている。
該ワイヤメッシュ触媒50は、白金やパラジウム等の触媒を担持した金網状の担体であり、外形略円盤状に形成されている。
【0014】
また、図4の本実施例によるワイヤメッシュ触媒の保持構造を示す断面図に示すように、ワイヤメッシュ触媒50の端部は、アウター保持金具60とインナー保持金具70の間に所定の間隙を有する状態で介挿されて保持されている。
また、この所定の間隙は、ワイヤメッシュ触媒50がアウター保持金具60とインナー保持金具70に介挿された状態で、スムーズに熱変形が可能となるように設定されている。
そのため、ワイヤメッシュ触媒50が熱膨張と収縮を繰り返す際に、ワイヤメッシュ触媒50を保持するアウター保持金具60とインナー保持金具70との引っ掛かかりが生じることがないため、破損や変形が生じてしまうのを防止することが可能になる。
【0015】
なお、アウター保持金具60とインナー保持金具70は、外形略円盤状に形成されており、インナー保持金具70は前記燃焼筒30の先端部を嵌合可能な径に形成されているとともに、所定の部位に複数の通風長穴72が形成されている。
【0016】
また、ワイヤメッシュ触媒50を保持したアウター保持金具60とインナー保持金具70とは、複数のネジ80によって調節可能に締結されてワイヤメッシュ触媒サブアッセンブリ52となる。
そして、そのように組み付けられたワイヤメッシュ触媒サブアッセンブリ52を、図3に示すように、インナー保持金具70を前記燃焼筒30の先端部に嵌合し、その状態で複数の皿ネジ90を前記燃焼筒30の孔30a及びインナー保持金具70の長穴74に挿通し、更にリング部材92に形成された所定のネジ孔92aにねじ込んで締結する。
【0017】
このように構成することによって、図3の矢印に示すように、インナー保持金具70の所定の部位に複数の通風長穴72が形成されているため、該通風長穴72からワイヤメッシュ触媒50の表面に対する冷却用空気の導入が可能になる。
そのため、ヒーターの熱出力を変更した場合などには、前記皿ネジ90を緩めてワイヤメッシュ触媒サブアッセンブリ52を前後に移動させ、通風長穴72からの冷却用空気の風量を調節することで、ワイヤメッシュ触媒50を適正な温度に冷却することができるため、ワイヤメッシュ触媒50が高温化し過ぎて適正温度から外れてしまうことがない。従って、ワイヤメッシュ触媒50に担持された白金、パラジウム等の触媒の揮散が促進されてしまうのを防止することができ、ワイヤメッシュ触媒50の長寿命化を図ることが可能になる。
【0018】
なお、ワイヤメッシュ触媒50に担持された触媒が、白金及びパラジウムである場合には、980℃以下の温度であれば、揮散が促進されてしまうことがない。また、200℃以上であれば、触媒としての機能に支障を及ぼすことがない。
従って、前記触媒の温度が980℃以下となるように、ワイヤメッシュ触媒50の表面に対する冷却用空気の導入を、通風長穴72からの冷却用空気の風量を調節する。具体的には、略700〜800℃の間で温度が推移するように、予め通風長穴72からの冷却用空気の風量を設定しておくのが好ましい。
【0019】
なお、本技術は、本実施例の態様のみに限定されるものではなく、多様な態様が可能である。例えば、本実施例では燃焼筒30を円筒状とするとともにワイヤメッシュ触媒50を円盤状としているが、直方体状などどのような形状であってもよい。また、冷却用空気の導入方法も、スリットとするなどどのようなものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施例による温風発生機の触媒保持構造の構成を示す構成図である。
【図2】本実施例による燃焼筒の構成を示す側面図である。
【図3】本実施例による燃焼筒先端部を示す要部拡大図である。
【図4】本実施例によるワイヤメッシュ触媒の保持構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 可搬型ヒータ
20 本体
30 燃焼筒
32 燃焼室
50 ワイヤメッシュ触媒
60 アウター保持金具
70 インナー保持金具
72 通風長穴
80 ネジ
90 皿ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体前方に配置された吹出部から温風が吹き出されるとともに、該温風内の揮発性有機化合物を分解可能な触媒が設定されている温風発生機の触媒保持構造であって、
触媒の温度を適性に保持すべく、触媒保持部近傍から触媒表面へ冷却用空気を導入可能になされていることを特徴とする温風発生機の触媒保持構造。
【請求項2】
前記触媒が、保持金具内で容易に熱変形可能な状態で保持されていることを特徴とする請求項1記載の温風発生機の触媒保持構造。
【請求項3】
前記触媒の温度が980℃以下となるように、触媒保持部近傍から触媒表面への冷却用空気の量が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の温風発生機の触媒保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−2563(P2009−2563A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163134(P2007−163134)
【出願日】平成19年6月24日(2007.6.24)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】