説明

測位方法、プログラム及び測位装置

【課題】測位率や測位結果の正確性の向上を可能ならしめること。
【解決手段】第1の高分解能相関積算処理を開始してから第3の閾値時間が経過した時刻
「T3」において、第2の高分解能相関積算処理を開始する。そして、第1の高分解能相
関積算処理を開始してから第2の閾値時間(>第3の閾値時間)が経過した時刻「T4」
において、当該第1の高分解能相関積算処理の処理結果から得られる擬似距離用コード位
相を用いて測位演算を行うとともに、第1の高分解能相関積算処理を再び最初から開始す
る。また、第2の高分解能相関積算処理を開始してから第2の閾値時間が経過した時刻「
T5」において、当該第2の高分解能相関積算処理の処理結果から得られる擬似距離用コ
ード位相を用いて測位演算を行うとともに、第2の高分解能相関積算処理を再び最初から
開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位方法、プログラム及び測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測位用信号を利用した測位システムとして、GPS(Global Positioning System)が
広く知られており、携帯型電話機やカーナビゲーション装置等に内蔵された測位装置に利
用されている。GPSでは、自機の位置を示す3次元の座標値と、時計誤差との4つのパ
ラメータの値を、複数のGPS衛星の位置や各GPS衛星から自機までの擬似距離等の情
報に基づいて求める測位演算を行うことで、自機の現在位置を測位する。
【0003】
上述した測位システムでは、拡散符号の一種であるPRNコードで拡散変調された受信
信号と、PRNコードのレプリカコードとの相関演算を行い、その相関値が最大となるコ
ード位相を検出する手法が測位用信号を捕捉する技術として一般的に用いられている。し
かし、コード位相を正しく検出することができないと、測位演算に使用する擬似距離を正
確に求めることができず、測位の正確性を低下させる要因となる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、受信信号と、1チップ毎に位相が異なるPRNコード
の複数のレプリカコードそれぞれとの相関演算を行い、相関値が最大になると予想される
位相探索範囲を求め、その位相探索範囲について、更に、受信信号と、0.1チップ毎に
位相の異なる複数のレプリカコードとの相関演算を行って、コード位相を検出する技術が
開示されている。
【特許文献1】特開2000−312163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、いわゆるインドア環境のような、受信した測位用信号が弱電界の信号となる
環境(以下、「弱電界環境」と称す。)では、信号が微弱であるために、相関値を計算し
た場合にその最大値の判別が困難な場合がある。そこで、弱電界環境においては、相関値
を所定期間に亘って積算して相関積算値を求める処理(以下、「相関積算処理」と称す。
)を行い、所定期間が経過した時点で相関積算値の最大値を判別することによって、コー
ド位相を検出する技術が用いられている。
【0006】
また、従来の技術では、所定期間が経過した後は、積算時間をリセットして最初から相
関積算処理をやり直す。しかし、この場合、再び所定期間が経過するまでの間は、コード
位相を検出することができないため、当該期間の間はその衛星信号を用いずに測位演算を
行うか、古いコード位相の情報を活用して測位演算を行うしかなく、測位率(測位演算を
行った結果を出力できた割合のこと。通常、測位演算は収束計算であるため、演算が収束
したとしても前回出力位置から大きくずれて真の位置とは到底考えられない位置に収束し
た場合には出力しない等の処理を行っている。)や測位結果の正確性が低下するという問
題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、測位
率や測位結果の正確性を向上させるための新たな手法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための第1の発明は、拡散符号で拡散変調された測位用信号の受
信信号と前記拡散符号のレプリカコードとを位相をずらしつつ所定期間に亘って相関積算
する複数の相関積算処理を、開始タイミングをずらして並列に繰り返し実行することと、
前記並列実行されている複数の相関積算処理のうち、所与の測位タイミングの時点で当該
相関積算処理の積算処理時間が最も長い相関積算処理の処理結果を用いて測位演算を行う
ことと、を含む測位方法である。
【0009】
また、第8の発明として、拡散符号で拡散変調された測位用信号の受信信号と前記拡散
符号のレプリカコードとを位相をずらしつつ所定期間に亘って相関積算する複数の相関積
算処理を、開始タイミングをずらして並列に繰り返し実行する相関積算処理部と、前記並
列実行されている複数の相関積算処理のうち、所与の測位タイミングの時点で当該相関積
算処理の積算処理時間が最も長い相関積算処理の処理結果を用いて測位演算を行う測位部
と、を備えた測位装置を構成してもよい。
【0010】
この第1の発明等によれば、拡散符号で拡散変調された測位用信号の受信信号と拡散符
号のレプリカコードとを位相をずらしつつ所定期間に亘って相関積算する複数の相関積算
処理を、開始タイミングをずらして並列に繰り返し実行する。そして、並列実行されてい
る複数の相関積算処理のうち、所与の測位タイミングの時点で当該相関積算処理の積算処
理時間が最も長い相関積算処理の処理結果を用いて測位演算を行う。これにより、一の相
関積算処理の処理結果を用いることができない場合も、他の相関積算処理の処理結果を用
いて測位演算を行うことが可能となり、測位率が向上する。また、測位タイミングの時点
で積算処理時間が最も長い相関積算処理の処理結果を用いて測位演算を行うようにしたこ
とで、測位結果の正確性も向上させることができる。
【0011】
また、第2の発明として、第1の発明の測位方法であって、所定の広幅位相探索範囲で
前記受信信号と前記レプリカコードとを位相をずらしつつ相関積算する広幅範囲相関積算
処理を実行することと、前記広幅範囲相関積算処理の相関積算値に基づいて、前記広幅位
相探索範囲内でコード位相が含まれると推定される探索範囲を狭小位相探索範囲として設
定することと、を更に含み、前記複数の相関積算処理を実行することは、前記狭小位相探
索範囲内で位相をずらして前記相関積算を行うことである測位方法を構成してもよい。
【0012】
この第2の発明によれば、広幅範囲相関積算処理の相関積算値に基づいて、広幅位相探
索範囲内でコード位相が含まれると推定される探索範囲を狭小位相探索範囲として設定す
る。そして、設定した狭小位相探索範囲内で位相をずらして、複数の相関積算処理を行う

【0013】
また、第3の発明として、第2の発明の測位方法であって、前記狭小位相探索範囲を設
定することは、前記広幅範囲相関積算処理中の第1のタイミングにおける相関積算値に基
づいて前記狭小位相探索範囲を設定することを含み、前記広幅範囲相関積算処理中の前記
第1のタイミングにおける相関積算値と、前記第1のタイミングより遅い第2のタイミン
グにおける相関積算値とに基づいて、設定した前記狭小位相探索範囲の適否を判定するこ
とを更に含み、前記測位演算を行うことは、前記狭小位相探索範囲が適切と判定された場
合に、前記相関積算処理の処理結果を用いた前記測位演算を行うことである測位方法を構
成してもよい。
【0014】
この第3の発明によれば、広幅範囲相関積算処理中の第1のタイミングにおける相関積
算値に基づいて狭小位相探索範囲を設定する。そして、広幅範囲相関積算処理中の第1の
タイミングにおける相関積算値と、第1のタイミングより遅い第2のタイミングにおける
相関積算値とに基づいて、設定した狭小位相探索範囲の適否を判定する。そして、狭小位
相探索範囲が適切と判定された場合に、相関積算処理の処理結果を用いた測位演算を行う
。複数の相関積算処理における位相探索範囲の妥当性を適確に判定し、適切な相関積算処
理結果を用いて測位演算をするため、真の位置に可及的に近い、より正確な測位結果を算
出し得る。
【0015】
また、第4の発明として、第3の発明の測位方法であって、前記狭小位相探索範囲が不
適と判定された場合に、前記狭小位相探索範囲を再設定することを更に含む測位方法を構
成してもよい。
【0016】
この第4の発明によれば、狭小位相探索範囲が不適と判定された場合に、狭小位相探索
範囲を再設定する。これにより、当初設定した狭小位相探索範囲が誤った探索範囲であっ
たとしても、適切な探索範囲に設定し直して、位相探索をやり直すことが可能となる。
【0017】
また、第5の発明として、第3又は第4の発明の測位方法であって、前記狭小位相探索
範囲の適否を判定することは、前記第1のタイミングにおける相関積算値の位相特性と前
記第2のタイミングにおける相関積算値の位相特性とに基づいて、設定した前記狭小位相
探索範囲の適否を判定することである測位方法を構成してもよい。
【0018】
この第5の発明によれば、第1のタイミングにおける相関積算値の位相特性と、第2の
タイミングにおける相関積算値の位相特性とに基づいて、設定した狭小位相探索範囲の適
否を判定する。
【0019】
また、第6の発明として、第2〜第5の何れかの発明の測位方法であって、前記相関積
算処理は、前記広幅範囲相関積算処理における位相のずらし間隔より狭い間隔で前記相関
積算を行う処理である測位方法を構成してもよい。
【0020】
この第6の発明によれば、相関積算処理では、広幅範囲相関積算処理における位相のず
らし間隔より狭い間隔で相関演算を行うため、分解能の高い位相探索を実現することがで
きる。
【0021】
また、第7の発明として、第1〜第6の何れかの発明の測位方法を、測位装置に内蔵さ
れたコンピュータに実行させるためのプログラムを構成してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に好適な実施形態の一例を説明する。尚、以下では、測
位装置を備えた電子機器として携帯型電話機を例に挙げ、測位システムとしてGPS(Gl
obal Positioning System)を用いた場合について説明するが、本発明を適用可能な実施
形態がこれらに限定されるわけではない。
【0023】
1.機能構成
図1は、本実施形態における携帯型電話機1の機能構成を示すブロック図である。携帯
型電話機1は、GPSアンテナ5と、GPS受信部10と、ホストCPU(Central Proc
essing Unit)30と、操作部40と、表示部50と、携帯電話用アンテナ60と、携帯
電話用無線通信回路部70と、ROM(Read Only Memory)80と、RAM(Random Acc
ess Memory)90とを備えて構成される。
【0024】
GPSアンテナ5は、GPS衛星から発信されているGPS衛星信号を含むRF(Radi
o Frequency)信号を受信するアンテナであり、受信した信号をGPS受信部10に出力
する。尚、GPS衛星信号は、衛星毎に異なる拡散符号の一種であるPRN(Pseudo Ran
dom Noise)コードで直接スペクトラム拡散方式により変調された1.57542[GH
z]の通信信号である。PRNコードは、コード長1023チップを1PNフレームとす
る繰返し周期1msの擬似ランダム雑音符号である。
【0025】
GPS受信部10は、GPSアンテナ5から出力された信号に基づいて携帯型電話機1
の現在位置を測位する測位回路であり、いわゆるGPS受信機に相当する機能ブロックで
ある。GPS受信部10は、RF受信回路部11と、ベースバンド処理回路部20とを備
えて構成される。尚、RF受信回路部11と、ベースバンド処理回路部20とは、それぞ
れ別のLSI(Large Scale Integration)として製造することも、1チップとして製造
することも可能である。
【0026】
RF受信回路部11は、RF信号の処理回路ブロックであり、所定の局部発振信号を分
周或いは逓倍することで、RF信号乗算用の発振信号を生成する。そして、生成した発振
信号を、GPSアンテナ5から出力されたRF信号に乗算することで、RF信号を中間周
波数の信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)信号」と称す。)にダウンコンバ
ートし、IF信号を増幅等した後、A/D変換器でデジタル信号に変換して、ベースバン
ド処理回路部20に出力する。
【0027】
ベースバンド処理回路部20は、RF受信回路部11から出力された信号に対して相関
処理等を行ってGPS衛星信号を捕捉・抽出し、データを復号して航法メッセージや時刻
情報等を取り出して測位演算を行う回路部である。ベースバンド処理回路部20は、プロ
セッサとしてのCPU21と、メモリとしてのROM23及びRAM25とを備えて構成
される。
【0028】
ホストCPU30は、ROM80に記憶されているシステムプログラム等の各種プログ
ラムに従って携帯型電話機1の各部を統括的に制御するプロセッサである。ホストCPU
30は、CPU21から入力した測位位置をプロットしたナビゲーション画面を、表示部
50に表示させる。
【0029】
操作部40は、例えばタッチパネルやボタンスイッチ等により構成される入力装置であ
り、押下されたアイコンやボタンの信号をホストCPU30に出力する。この操作部40
の操作により、通話要求やメールの送受信要求、GPSの起動要求等の各種指示入力がな
される。
【0030】
表示部50は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、ホストCPU3
0から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部50には、
ナビゲーション画面や時刻情報等が表示される。
【0031】
携帯電話用アンテナ60は、携帯型電話機1の通信サービス事業者が設置した無線基地
局との間で携帯電話用無線信号や各種データの送受信を行うアンテナである。
【0032】
携帯電話用無線通信回路部70は、RF変換回路、ベースバンド処理回路等によって構
成される携帯電話の通信回路部であり、携帯電話用無線信号の変調・復調等を行うことで
、通話やメールの送受信等を実現する。
【0033】
ROM80は、読み取り専用の不揮発性の記憶装置であり、ホストCPU30が携帯型
電話機1を制御するためのシステムプログラムや、ナビゲーション機能を実現するための
各種プログラムやデータ等を記憶している。
【0034】
RAM90は、読み書き可能な揮発性の記憶装置であり、ホストCPU30により実行
されるシステムプログラム、各種処理プログラム、各種処理の処理中データ、処理結果な
どを一時的に記憶するワークエリアを形成している。
【0035】
2.データ構成
図2は、ベースバンド処理回路部20のROM23に格納されたデータの一例を示す図
である。ROM23には、CPU21により読み出され、ベースバンド処理(図7〜図9
参照)として実行されるベースバンド処理プログラム231が記憶されている。
【0036】
ベースバンド処理とは、CPU21が、捕捉対象とするGPS衛星(以下、「捕捉対象
衛星」と称す。)それぞれについて、第1の相関積算処理と、第1の高分解能相関積算処
理及び第2の高分解能相関積算処理(以下、包括的に「高分解能相関積算処理」と称す。
)とを行って、受信信号のPRNコードの位相(いわゆるコード位相)を判定して擬似距
離用コード位相とし、当該擬似距離用コード位相を基に算出した擬似距離を用いて所定の
測位演算を行うことで、携帯型電話機1の現在位置を測位する処理である。
【0037】
具体的には、CPU21は、レプリカコードの発生信号の周波数、及び、レプリカコー
ドの位相を変更しつつ、受信信号とレプリカコードとの相関演算を行って相関値を求め、
その相関値を積算していく処理を行う。レプリカコードとは、擬似的に発生させた捕捉対
象衛星の衛星信号に含まれるPRNコードを模擬した信号である。レプリカコードの発生
信号の周波数と受信信号の周波数とが一致し、且つ、レプリカコードの位相と受信信号の
PRNコードの位相とが一致した場合に、相関値並びに相関積算値が最大となる。以下で
は、周波数方向の相関演算については説明を省略し、位相方向の相関演算を中心に説明す
る。
【0038】
GPS衛星信号はPRNコードで繰り返し変調されているため、観念的には、GPS衛
星と携帯型電話機1との間には、PRNコードが連続的に並んでいると考えることができ
る。しかし、GPS衛星から携帯型電話機1までの距離がPRNコードの長さの整数倍に
なるとは限らず、端数部分が発生する。相関積算処理では、この端数部分に相当するコー
ド長をPRNコードのコード位相として検出する。この場合、PRNコードの長さの整数
倍に端数部分を加えた長さがGPS衛星と携帯型電話機1間の擬似距離となる。
【0039】
図4は、本実施形態における第1の相関積算処理及び高分解能相関積算処理の概略を示
す図である。図4において、横軸はコード位相、縦軸は相関積算値を示している。また、
図5は、本実施形態における第1の相関積算処理及び高分解能相関積算処理の時系列を示
す図である。図5において、上段は第1の相関積算処理、中段は第1の高分解能相関積算
処理、下段は第2の高分解能相関積算処理を示しており、横軸は時間を示している。また
、上向きの矢印は、その矢印が付された時点における相関積算値を用いて、その時点での
コード位相(擬似距離用コード位相)が特定されて擬似距離が算出され、測位演算がなさ
れたことを示している。
【0040】
以下の説明では、第1の相関積算処理で最初に積算を開始してからの経過時間を「第1
の積算時間」、第1の高分解能相関積算処理で最初に積算を開始してからの経過時間を「
第1の高分解能積算時間」、第2の高分解能相関積算処理で最初に積算を開始してからの
経過時間を「第2の高分解能積算時間」とそれぞれ称する。
【0041】
第1の相関積算処理では、第1の位相探索範囲において、受信信号とレプリカコードと
の相関演算を、レプリカコードの位相を第1の単位位相間隔でずらしながら行う。そして
、その相関値を同期積算する処理を行う。より具体的に説明する。各相関演算で得られた
相関値は、そのまま積算することができない。なぜならば、僅かな時間間隔ではあるが、
各相関演算を時系列に行っている。そのため、それぞれの相関演算で求めた値には、信号
速度(=光速)に応じたコード位相のズレが含まれているからである。
【0042】
そこで、相関演算した時刻と所定の積算基準時刻(本実施形態では最新の相関演算時刻
)との差の時間に光速を乗じた距離相当値を、PRNコードにおける位相のズレに換算す
る。そして、計算した位相のズレ分だけ、相関演算で求めた値を補正することで、所定の
積算基準時刻において相関演算したかのような値を得る。そして、この補正した値を積算
していく。この一連の処理は「同期積算」と呼ばれる。
【0043】
一方、高分解能相関積算処理では、第1の位相探索範囲内でコード位相が含まれると推
定される探索範囲である第2の位相探索範囲において、受信信号とレプリカコードとの相
関演算を、レプリカコードの位相を第1の単位位相間隔より狭い第2の単位位相間隔でず
らしながら行い、その相関値を同期積算する。従って、高分解能相関積算処理では、第1
の相関積算処理よりも狭い位相探索範囲において、分解能を上げてコード位相の探索を行
うことになる。
【0044】
第2の位相探索範囲は、第1の積算時間が第1の閾値時間に達したタイミング(以下、
「第1のタイミング」と称す。)における第1の相関積算処理の処理結果に基づいて、第
1の位相探索範囲よりも狭くなるように設定する。より具体的には、第1のタイミングで
相関積算値が最大であるコード位相を含む所定範囲を、第2の位相探索範囲として設定す
る。
【0045】
具体的には、図4に示すように、PRNコードのコード長である1023チップ全体を
第1の位相探索範囲として設定し、PRNコードをN個(N≧1023)に区切った場合
の位相間隔を第1の単位位相間隔として設定する。本実施形態では、第1の単位位相間隔
を「0.8チップ」とする。そして、第1の位相探索範囲において第1の単位位相間隔で
レプリカコードの位相をずらしながら相関積算を行う。その結果、図4では、第1のタイ
ミングにおいて、コード位相「CP」で相関積算値が最大となっている。
【0046】
そして、第1のタイミングにおいて相関積算値が最大となった位相を中心として、例え
ば「±0.32チップ」の探索範囲を第2の位相探索範囲として設定する。また、第1の
単位位相間隔よりも狭い第2の単位位相間隔を設定する。本実施形態では、第2の単位位
相間隔は、第1の単位位相間隔の1/10である「0.08チップ」とする。そして、第
2の位相探索範囲において第2の単位位相間隔でレプリカコードの位相をずらしながら、
高分解能相関積算処理を行う。
【0047】
その結果、図4では、コード位相「CP」を中心とし、下限を「CP1(>CP−1)」、
上限を「CP9(<CP+1)」とする探索範囲(CP1≦C≦CP9)が第2の位相探索範囲と
して設定されている。また、高分解能相関積算処理の結果、コード位相「CP3」で相関積
算値が最大となっており、第1の相関積算処理よりも高分解能でコード位相が検出されて
いることがわかる。
【0048】
次に、第1の相関積算処理及び高分解能相関積算処理の時系列について説明する。図5
において、時刻「T1」から第1の相関積算処理を開始する。そして、第1の積算時間が
第1の閾値時間である「16秒」に達した時刻「T2」(第1の相関積算処理を開始して
から16秒後の時刻)において、第1の相関積算処理を継続しつつ、第1の高分解能相関
積算処理を開始する。そして、第1の高分解能積算時間が第3の閾値時間である「8秒」
に達した時刻「T3」(第1の相関積算処理を開始してから24秒後の時刻)において、
第1の相関積算処理及び第1の高分解能相関積算処理を継続しつつ、第2の高分解能相関
積算処理を開始する。
【0049】
その後、第1の高分解能積算時間が第2の閾値時間である「16秒」に達した時刻「T
4」(第1の相関積算処理を開始してから32秒後の時刻)では、第1の高分解能相関積
算処理で相関積算値が最大となったコード位相を擬似距離用コード位相として測位演算を
実行する。そして、時刻「T2」から「T4」までの期間の第1の高分解能相関積算処理
で得られた相関積算値のデータをクリアするとともに、第1の高分解能積算時間をリセッ
トして、第1の高分解能相関積算処理を再び最初から開始する。
【0050】
その後、第2の高分解能積算時間が第2の閾値時間である「16秒」に達した時刻「T
5」(第1の相関積算処理を開始してから40秒後の時刻)では、第2の高分解能相関積
算処理で相関積算値が最大となったコード位相を擬似距離用コード位相と判定し、当該擬
似距離用コード位相を用いて測位演算を実行する。そして、時刻「T3」から「T5」ま
での期間の第2の高分解能相関積算処理で得られた相関積算値のデータをクリアするとと
もに、第2の高分解能積算時間をリセットして、第2の高分解能相関積算処理を再び最初
から開始する。
【0051】
時刻「T5」以降は、時刻「T3」以降と同様に、第3の閾値時間間隔(8秒間隔)で
、第1の高分解能相関積算処理の処理結果から得られる擬似距離用コード位相と、第2の
高分解能相関積算処理の処理結果から得られる擬似距離用コード位相とを交互に用いて測
位演算を行うことを繰り返す。
【0052】
また、本実施形態では、高分解能相関積算処理を行っている間も、第1の相関積算処理
を継続して行っており、第1の高分解能相関積算処理又は第2の高分解能相関積算処理で
擬似距離用コード位相が得られない期間は、第1の相関積算処理で得られた擬似距離用コ
ード位相を補完的に用いて測位演算を行う。すなわち、図5の時刻「T2」から時刻「T
5」までの期間において、時刻「T4」及び時刻「T5」を除いた期間は、第1の相関積
算処理で得られた擬似距離用コード位相を用いて測位演算を行うことになる。
【0053】
さらに、本実施形態で特徴的であるのは、高分解能相関積算処理を行っている間に、継
続して行っている第1の相関積算処理の処理結果を用いて、当初設定した第2の位相探索
範囲が適切であるかを判定する点にある。そして、適切でないと判定した場合は、第1の
相関積算処理中の処理結果に基づいて第2の位相探索範囲を新たに設定して、高分解能相
関積算処理を最初からやり直す。
【0054】
具体的には、第1のタイミングにおいて、相関積算値が最大であるコード位相を「当初
コード位相」として取得して保存する。そして、測位を行う各タイミング(以下、このタ
イミングを「第2のタイミング」と称す。)毎に、当該第2のタイミングにおいて第1の
相関積算処理で相関積算値が最大であるコード位相を「確認用コード位相」として取得し
、当初コード位相と確認用コード位相とが一致するか否かを判定する。そして、一致する
と判定した場合は、設定した第2の位相探索範囲は適切であると判定する。一方、当初コ
ード位相と確認用コード位相とが一致しない場合は、設定した第2の位相探索範囲は不適
であると判定し、確認用コード位相に基づいて第2の位相探索範囲を再設定する。
【0055】
これは、当初コード位相と確認用コード位相とが一致していれば、第2の位相探索範囲
には相関積算値の真の最大値が含まれている可能性が高いため、第2の位相探索範囲は適
切であると判定することにしたものである。一方、当初コード位相と確認用コード位相と
が一致しない場合は、第2の位相探索範囲には相関積算値の真の最大値が含まれていない
可能性があるため、第2の位相探索範囲は不適であると判定した上で、第2の位相探索範
囲を設定し直すことにしている。
【0056】
このような処理により、第1の相関積算処理の処理結果に基づいて、第2の位相探索範
囲の適否(妥当性)を判断することが可能となり、高分解能相関積算処理において誤った
コード位相が検出されることを防止することができる。特に、いわゆるインドア環境のよ
うな、受信した測位用信号が弱電界の信号となる環境(以下、「弱電界環境」と称す。)
では、相関積算値の最大値が判別し難いため、本実施形態の手法は効果的である。
【0057】
また、第1の高分解能積算時間又は第2の高分解能積算時間が第2の閾値時間に達する
までは、第1の高分解能相関積算処理又は第2の高分解能積算処理の処理結果を用いて測
位演算を行わずに、第1の相関積算処理の処理結果を用いて測位演算を行うことにしてい
る。これは、弱電界環境では、積算時間が短過ぎると相関積算値のピークとノイズとの判
別が困難となり、コード位相が正しく検出されない可能性があるためである。
【0058】
図3は、ベースバンド処理回路部20のRAM25に格納されるデータの一例を示す図
である。RAM25には、相関積算値データベース251と、擬似距離データ253と、
測位データ255とが記憶される。
【0059】
図6は、相関積算値データベース251のデータ構成の一例を示す図である。相関積算
値データベース251は、各捕捉対象衛星2511それぞれについて、第1の相関積算処
理用データ2512と、第1の高分解能相関積算処理用データ2513と、第2の高分解
能相関積算処理用データ2514と、処理状況2515と、適否判定用コード位相251
6と、擬似距離用コード位相2517とが対応付けて記憶されたデータであり、ベースバ
ンド処理においてCPU21により更新される。
【0060】
第1の相関積算処理用データ2512は、第1の相関積算処理に用いるデータであり、
第1の相関積算値データテーブルと、第1の積算基準時刻と、第1の積算時間とがこれに
含まれる。第1の高分解能相関積算処理用データ2513は、第1の高分解能相関積算処
理に用いるデータであり、第1の高分解能相関積算値データテーブルと、第1の高分解能
積算基準時刻と、第1の高分解能積算時間とがこれに含まれる。同様に、第2の高分解能
相関積算処理用データ2514は、第2の高分解能相関積算処理に用いるデータであり、
第2の高分解能相関積算値データテーブルと、第2の高分解能積算基準時刻と、第2の高
分解能積算時間とがこれに含まれる。
【0061】
各データにおける相関積算値データテーブルは、相関積算で求めた各位相それぞれにお
ける相関積算値が記憶されたデータテーブルであり、相関値が積算される毎に同期積算処
理が行われて随時更新される。積算基準時刻は、同期積算処理を行う際に基準とする時刻
であり、最新の相関演算時刻で更新される。従って、時々刻々と相関積算が行われるが、
常時、最新の相関演算時間に同期が取られた積算値になる。また、積算時間は、最初に相
関積算を開始してから現在までの経過時間である。
【0062】
処理状況2515は、現在実行している処理の状況を示しており、第1の相関積算処理
及び高分解能相関積算処理の何れも実行していない場合は「未実行」、第1の相関積算処
理のみを実行している場合は「第1の処理中」、第1の相関積算処理を実行しており、且
つ、第1の高分解能相関積算処理及び第2の高分解能相関積算処理の少なくとも一方を実
行している場合は、「第1の処理中&(第1の高分解能処理中 or 第2の高分解能処理中
)」が記憶される。
【0063】
適否判定用コード位相2516は、現在設定されている第2の位相探索範囲の適否を判
定するためのコード位相であり、上述した当初コード位相と、確認用コード位相とがこれ
に含まれる。
【0064】
擬似距離用コード位相2517は、上述したように擬似距離を算出するために用いるコ
ード位相である。図5において矢印が付された時点での、当該矢印が付されている第1の
相関積算処理、第1の高分解能相関積算処理又は第2の高分解能相関積算処理の相関積算
値を用いてコード位相が算出される。
【0065】
擬似距離データ253は、各捕捉対象衛星について算出された擬似距離のデータであり
、ベースバンド処理においてCPU21により更新される。
【0066】
測位データ255は、測位演算によって求められた測位位置についてのデータであり、
ベースバンド処理においてCPU21により更新される。
【0067】
3.処理の流れ
図7〜図9は、CPU21によりROM23に記憶されているベースバンド処理プログ
ラム231が読み出されて実行されることで、携帯型電話機1において実行されるベース
バンド処理の流れを示すフローチャートである。
【0068】
ベースバンド処理は、RF受信回路部11によるGPS衛星信号の受信と併せて、CP
U21が、操作部40に測位開始指示の操作がなされたことを検出した場合に実行を開始
する処理であり、各種アプリケーションの実行といった各種の処理と並行して行われる処
理である。尚、携帯型電話機1の電源のON/OFFとGPSの起動/停止とを連動させ
、携帯型電話機1の電源投入操作を検出した場合にベースバンド処理の実行を開始させる
ことにしてもよい。
【0069】
先ず、CPU21は、最新のアルマナックデータ等に基づいて、捕捉対象衛星を判定す
る(ステップA1)。より詳細には、不図示の時計部で計時されている現在時刻において
、所与の仮の現在位置の天空に位置するGPS衛星をアルマナックやエフェメリスのデー
タから判定する。仮の現在位置は、例えば携帯電話の通信基地局の位置や、前回の測位位
置として与えられる。
【0070】
そして、CPU21は、RAM25の相関積算値データベース251を更新する(ステ
ップA3)。具体的には、前回の更新時には捕捉対象衛星と判定されたが今回は捕捉対象
衛星と判定されなかった捕捉対象衛星のデータを相関積算値データベース251から削除
するとともに、前回の更新時には捕捉対象衛星と判定されなかったが今回は捕捉対象衛星
と判定された捕捉対象衛星のデータを相関積算値データベース251に新たに追加する。
そして、CPU21は、各捕捉対象衛星について、ループAの処理を実行する(ステップ
A5〜A79)。
【0071】
ループAでは、CPU21は、相関積算値データベース251に記憶されている当該捕
捉対象衛星の処理状況2515を判定する(ステップA7)。そして、処理状況2515
が「未実行」であると判定した場合は(ステップA7;未実行)、当該捕捉対象衛星の処
理状況2515を「第1の処理中」に変更する(ステップA9)。
【0072】
次いで、CPU21は、第1の位相探索範囲を設定するとともに(ステップA11)、
第1の単位位相間隔を設定する(ステップA13)。そして、CPU21は、第1の相関
積算処理を行って、相関積算値データベース251の第1の相関積算処理用データ251
2を更新する(ステップA15)。具体的には、第1の位相探索範囲において第1の単位
位相間隔で当該捕捉対象衛星のレプリカコードの位相をずらしながら、RF受信回路部1
1から出力された受信信号との相関演算を行い、求めた相関値を同期積算する処理を行う

【0073】
この際、相関演算を行う毎に、その最新の相関演算を行った時刻で第1の積算基準時刻
を更新し、この第1の積算基準時刻に基づいて同期積算処理を行う。勿論、同期積算処理
の結果である相関積算値に基づいて第1の相関積算値データテーブルを更新する。第1の
相関積算値データテーブルには、第1の単位位相間隔での各位相それぞれに対する相関積
算値が格納される(尚、より正確には、説明の簡明化のために各位相の各周波数ごとに相
関演算を行う旨の説明を省略しているため、実際には、各位相の各周波数それぞれに対す
る相関積算値が相関積算値データテーブルに格納される。)。また、第1の相関積算処理
を最初に開始してからの経過時間で第1の積算時間を更新する。その後、CPU21は、
次の捕捉対象衛星へと処理を移行する。
【0074】
一方、ステップA7において当該捕捉対象衛星の処理状況2515が「第1の処理中」
であると判定した場合は(ステップA7;第1の処理中)、CPU21は、第1の積算時
間が第1の閾値時間に達したか否かを判定し(ステップA17)、まだ達していないと判
定した場合は(ステップA17;No)、ステップA15へと処理を移行する。
【0075】
また、ステップA17において、第1の積算時間が第1の閾値時間に達したと判定した
場合は(ステップA17;Yes)、CPU21は、相関積算値データベース251に記
憶されている当該捕捉対象衛星の処理状況2515を「第1の処理中&(第1の高分解能
処理中 or 第2の高分解能処理中)」に変更する(ステップA19)。
【0076】
次いで、CPU21は、第1の相関積算処理用データ2512の第1の相関積算値デー
タテーブルから当初コード位相を判定する(ステップA21)。具体的には、第1の相関
積算値データテーブルを参照し、現時点において相関積算値が最大である位相を当初コー
ド位相と判定する。そして、判定した当初コード位相を、当該捕捉対象衛星の適否判定用
コード位相2516として相関積算値データベース251に記憶させる。
【0077】
その後、CPU21は、ステップA21で判定した当初コード位相に基づいて第2の位
相探索範囲を設定する(ステップA23)。また、第1の単位位相間隔よりも狭い第2の
単位位相間隔を設定する(ステップA25)。そして、CPU21は、第1の相関積算処
理を行う(ステップA27)。
【0078】
次いで、CPU21は、第1の相関積算処理用データ2512の第1の相関積算値デー
タテーブルから擬似距離用コード位相を判定する(ステップA29)。具体的には、第1
の相関積算値データテーブルを参照し、現時点において相関積算値が最大である位相を擬
似距離用コード位相と判定する。そして、判定した擬似距離用コード位相を、当該捕捉対
象衛星の擬似距離用コード位相2517として相関積算値データベース251に記憶させ
る。
【0079】
その後、CPU21は、第1の高分解能相関積算処理を行って、相関積算値データベー
ス251の第1の高分解能相関積算処理用データ2513を更新する(ステップA31)
。具体的には、第2の位相探索範囲において第2の単位位相間隔で当該捕捉対象衛星のレ
プリカコードの位相をずらしながら、RF受信回路部11から出力された受信信号と相関
演算を行い、その相関値を同期積算する処理を行い、第1の高分解能相関積算値データテ
ーブルを更新する。また、第1の高分解能相関積算処理を開始してからの経過時間で第1
の高分解能積算時間を更新する。その後、CPU21は、次の捕捉対象衛星へと処理を移
行する。
【0080】
一方、ステップA7において、当該捕捉対象衛星の処理状況2515が「第1の処理中
&(第1の高分解能処理中 or 第2の高分解能処理中)」であると判定した場合は(ステ
ップA7;第1の処理中&(第1の高分解能処理中 or 第2の高分解能処理中))、CP
U21は、第1の相関積算処理用データ2512の第1の相関積算値データテーブルから
確認用コード位相を判定する(ステップA33)。具体的には、第1の相関積算値データ
テーブルを参照し、現時点で相関積算値が最大である位相を確認用コード位相と判定する
。そして、判定した確認用コード位相を、当該捕捉対象衛星の適否判定用コード位相25
16として、相関積算値データベース251に記憶させる。
【0081】
次いで、CPU21は、相関積算値データベース251の適否判定用コード位相251
6に記憶されている当初コード位相と確認用コード位相とが一致しているか否かを判定す
る(ステップA35)。そして、一致していると判定した場合は(ステップA35;Ye
s)、第1の高分解能積算時間が第2の閾値時間に達したか否かを判定する(ステップA
37)。
【0082】
ステップA37において、第1の高分解能積算時間が第2の閾値時間に達したと判定し
た場合は(ステップA37;Yes)、CPU21は、第1の高分解能相関積算処理用デ
ータ2513の第1の高分解能相関積算値データテーブルから擬似距離用コード位相を判
定する(ステップA39)。具体的には、第1の高分解能相関積算値データテーブルを参
照し、現時点において相関積算値が最大である位相を擬似距離用コード位相と判定する。
そして、判定した擬似距離用コード位相を、当該捕捉対象衛星の擬似距離用コード位相2
517として相関積算値データベース251に記憶させる。
【0083】
次いで、CPU21は、第1の高分解能相関積算処理用データ2513をクリアする(
ステップA41)。すなわち、第1の高分解能相関積算値データテーブルに格納されてい
る各位相及び各周波数毎の相関積算値のデータをクリアするとともに、第1の高分解能積
算基準時刻をクリアする。また、第1の高分解能積算時間をリセットする。その後、CP
U21は、第1の相関積算処理と(ステップA43)、第1の高分解能相関積算処理と(
ステップA45)を行った後、次の捕捉対象衛星へと処理を移行する。
【0084】
また、ステップA35において、当初コード位相と確認用コード位相とが一致しないと
判定した場合は(ステップA35;No)、CPU21は、ステップA33で判定した確
認用コード位相に基づいて第2の位相探索範囲を新たに設定する(ステップA47)。ま
た、CPU21は、第2の単位位相間隔を設定する(ステップA49)。
【0085】
その後、CPU21は、ステップA33で判定した確認用コード位相で、相関積算値デ
ータベース251に記憶されている当該捕捉対象衛星の当初コード位相を更新する(ステ
ップA51)。そして、CPU21は、第1の高分解能相関積算処理用データ2513を
クリアした後(ステップA53)、ステップA27へと処理を移行する。
【0086】
また、ステップA37において、第1の高分解能積算時間が第2の閾値時間に達してい
ないと判定した場合は(ステップA37;No)、CPU21は、第2の高分解能相関積
算処理を実行中であるか否かを判定する(ステップA55)。そして、実行中であると判
定した場合は(ステップA55;Yes)、第2の高分解能積算時間が第2の閾値時間に
達したか否かを判定する(ステップA57)。
【0087】
ステップA57において、第2の高分解能積算時間が第2の閾値時間に達したと判定し
た場合は(ステップA57;Yes)、CPU21は、第2の高分解能相関積算処理用デ
ータ2514の第2の高分解能相関積算値データテーブルから擬似距離用コード位相を判
定する(ステップA59)。具体的には、第2の高分解能相関積算値データテーブルを参
照し、現時点において相関積算値が最大である位相を擬似距離用コード位相と判定する。
そして、判定した擬似距離用コード位相を、当該捕捉対象衛星の擬似距離用コード位相2
517として相関積算値データベース251に記憶させる。
【0088】
次いで、CPU21は、第2の高分解能相関積算処理用データ2514をクリアする(
ステップA61)。すなわち、第2の高分解能相関積算値データテーブルに格納されてい
る各位相及び各周波数毎の相関積算値のデータをクリアするとともに、第2の高分解能積
算基準時刻をクリアする。また、第2の高分解能積算時間をリセットする。その後、CP
U21は、第1の相関積算処理と(ステップA63)、第1の高分解能相関積算処理と(
ステップA65)、第2の高分解能相関積算処理と(ステップA67)を行った後、次の
捕捉対象衛星へと処理を移行する。
【0089】
また、ステップA57において、第2の高分解能積算時間が第2の閾値時間に達してい
ないと判定した場合は(ステップA57;No)、CPU21は、第1の相関積算処理を
行う(ステップA69)。そして、第1の相関積算値データテーブルから擬似距離用コー
ド位相を判定する(ステップA71)。そして、第1の高分解能相関積算処理と(ステッ
プA73)、第2の高分解能相関積算処理と(ステップA75)を行った後、次の捕捉対
象衛星へと処理を移行する。
【0090】
また、ステップA55において、第2の高分解能相関積算処理を実行中ではないと判定
した場合、すなわち、第2の高分解能相関積算処理を1回も実行していないと判定した場
合は(ステップA55;No)、CPU21は、第1の高分解能積算時間が第3の閾値時
間に達したか否かを判定する(ステップA77)。そして、まだ第3の閾値時間に達して
いないと判定した場合は(ステップA77;No)、CPU21は、ステップA27へと
処理を移行する。また、第3の閾値時間に達したと判定した場合は(ステップA77;Y
es)、ステップA69へと処理を移行する。
【0091】
全ての捕捉対象衛星についてステップA7〜A77の処理を行った後、CPU21は、
ループAを終了する(ステップA79)。ループAを終了した後、CPU21は、各捕捉
対象衛星について、相関積算値データベース251に記憶されている擬似距離用コード位
相2517を用いて、当該捕捉対象衛星と携帯型電話機1間の擬似距離を算出し、RAM
25の擬似距離データ253に記憶させる(ステップA81)。
【0092】
そして、CPU21は、RAM25の擬似距離データ253に記憶されている擬似距離
を用いて所定の測位演算を行うことで、携帯型電話機1の現在位置を測位し、その測位位
置をRAM25の測位データ255に記憶させる(ステップA83)。尚、測位演算とし
ては、最小二乗法を用いた測位演算やカルマンフィルタを用いた測位演算等の公知の手法
を適用することができる。
【0093】
その後、CPU21は、RAM25の測位データ255に記憶されている測位位置をホ
ストCPU30に出力する(ステップA85)。そして、CPU21は、測位を終了する
か否かを判定し(ステップA87)、まだ終了しないと判定した場合は(ステップA87
;No)、ステップA1に戻る。また、測位を終了すると判定した場合は(ステップA8
7;Yes)、ベースバンド処理を終了する。
【0094】
4.作用効果
本実施形態によれば、PRNコードで拡散変調されたGPS衛星信号の受信信号とPR
Nコードとのレプリカコードとを位相をずらしつつ所定期間に亘って相関積算する複数の
相関積算処理を、開始タイミングをずらして並列に繰り返し実行する。そして、並列実行
されている複数の相関積算処理のうち、所与の測位タイミングの時点で当該相関積算処理
の積算処理時間が最も長い相関積算処理の処理結果を用いて測位演算を行う。
【0095】
より具体的には、第1の高分解能相関積算処理を開始してから第3の閾値時間が経過し
たときに、第2の高分解能相関積算処理を開始する。そして、第1の高分解能相関積算処
理を開始してから第2の閾値時間(>第3の閾値時間)が経過したときには、当該第1の
高分解能相関積算処理の処理結果から得られる擬似距離用コード位相を用いて測位演算を
行い、第1の高分解能相関積算処理を一から開始する。また、第2の高分解能相関積算処
理を開始してから第2の閾値時間が経過したときには、当該第2の高分解能相関積算処理
の処理結果から得られる擬似距離用コード位相を用いて測位演算を行い、第2の高分解能
相関積算処理を一から開始する。
【0096】
以降は、第3の閾値時間間隔で、第1の高分解能相関積算処理の処理結果から得られる
擬似距離用コード位相と、第2の高分解能相関積算処理の処理結果から得られる擬似距離
用コード位相とを交互に用いて測位演算を行うことを繰り返す。かかる処理により、一の
高分解能相関積算処理を行っている間も、他の高分解能相関積算処理の処理結果を用いて
測位演算を行うことが可能となり、測位率が向上する。また、測位タイミングにおいて、
積算処理時間が長い方の高分解能相関積算処理の処理結果を用いて測位演算を行うように
したことで、測位結果の正確性も向上させることができる。
【0097】
また、本実施形態では、高分解能相関積算処理中も、高分解能相関積算処理と比べて広
い位相探索範囲内で広い単位位相間隔でレプリカコードの位相をずらしつつ相関積算を行
う第1の相関積算処理を継続して行っており、第1及び第2の高分解能相関積算処理の何
れの処理結果からも擬似距離用コード位相を取得することができない期間は、第1の相関
積算処理の処理結果から擬似距離用コード位相を取得して測位演算を行うことにしている
。すなわち、第1の相関積算処理の処理結果を補完的に用いて測位演算を行うことにして
おり、測位率を一層向上させることができる。
【0098】
5.変形例
5−1.電子機器
上述した実施形態では、測位装置を備えた電子機器として携帯型電話機を例に挙げて説
明したが、本発明を適用可能な電子機器はこれに限られるわけではない。例えば、測位装
置を備えたノート型パソコンやPDA(Personal Digital Assistant)、カーナビゲーシ
ョン装置等の電子機器に適用することも可能である。
【0099】
5−2.衛星測位システム
また、上述した実施形態では、衛星測位システムとしてGPSに本願発明を適用した例
を説明したが、WAAS(Wide Area Augmentation System)、QZSS(Quasi Zenith
Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GAL
ILEO等の他の衛星測位システムに本願発明を適用することとしてもよい。
【0100】
5−3.処理の分化
CPU21が行う処理の一部又は全部を、ホストCPU30が行うことにしてもよい。
例えば、CPU21が第1の相関積算処理及び高分解能相関積算処理を行って擬似距離用
コード位相を検出し、ホストCPU30に出力する。そして、ホストCPU30は、CP
U21から入力した擬似距離用コード位相を基に擬似距離を算出し、この算出した擬似距
離を用いて測位演算を実行する。また、第1の相関演算処理及び高分解能相関演算処理も
含めて全ての処理をホストCPU30が行うことにしてもよい。
【0101】
5−4.相関積算部
上述した実施形態では、CPU21が相関積算処理を行ってコード位相の検出をソフト
ウェア的に実現することとして説明したが、ベースバンド処理回路部20に相関積算を行
う回路部である相関積算部を独立して設けて、ハードウェア的に実現することとしてもよ
い。この場合は、第1の相関積算を行うチャンネルと、第1の高分解能相関積算を行うチ
ャンネルと、第2の高分解能相関積算を行うチャンネルとを用意して並列的に相関積算を
行うことにすれば好適である。
【0102】
5−5.相関積算処理
上述した実施形態では、高分解能相関積算処理中に第1の相関積算処理を継続して実行
するものとして説明したが、第1の高分解能相関積算処理を開始した後は、第1の相関積
算処理の実行を停止することにしてもよい。すなわち、図5において、時刻「T2」の後
は、第1の相関積算処理の実行を停止する。また、第1の相関積算処理を一切行わずに、
高分解能相関積算処理のみを実行することにしてもよい。
【0103】
また、高分解能相関積算処理は必ずしも2段階で行う必要はなく、3段階以上で行うこ
ととしてもよい。例えば、図10に示すように、第1の高分解能相関積算処理を開始して
から4秒後に第2の高分解能相関積算処理を開始し、その4秒後(第1の高分解能相関積
算処理の開始から8秒後)に第3の高分解能相関積算処理を開始し、その4秒後(第1の
高分解能相関積算処理の開始から12秒後)に第4の高分解能相関積算処理を実行する。
この場合は、4秒に1回の割合で高分解能相関積算処理の処理結果から擬似距離用コード
位相を取得して測位演算に使用することができるため、測位率及び測位結果の正確性が一
層向上する。
【0104】
5−6.擬似距離用コード位相
高分解能相関積算処理の処理結果から取得した最新の擬似距離用コード位相から(以下
、この最新の擬似距離用コード位相を取得した時刻を「基準時刻」と称す。)、各測位時
刻における擬似距離用コード位相を予想する処理(いわゆるプロパゲーション処理)を行
い、当該予想した擬似距離用コード位相を用いて測位演算を行うこととしてもよい。
【0105】
すなわち、図5において、時刻「T4」の後、時刻「T5」の前までの期間は、基準時
刻「T4」において第1の高分解能相関積算処理の処理結果から取得した擬似距離用コー
ド位相を用いて各測位時刻における擬似距離用コード位相を予想し、当該予想した擬似距
離用コード位相を用いて測位演算を実行する。また、時刻「T5」の後、時刻「T6」の
前までの期間は、基準時刻「T5」において第2の高分解能相関積算処理の処理結果から
取得した擬似距離用コード位相を用いて各測位時刻における擬似距離用コード位相を予想
し、当該予想した擬似距離用コード位相を用いて測位演算を実行する。
【0106】
擬似距離用コード位相の予想は次のようにして行う。すなわち、単位時間当たりのGP
S衛星信号の周波数の変化量に、基準時刻から測位時刻までの経過時間を乗算することで
、当該経過時間における擬似距離用コード位相の予想変化量を求める。そして、求めた予
想変化量を基準時刻における擬似距離用コード位相に加算した値を、測位時刻における擬
似距離用コード位相と予想する。
【0107】
5−7.コード位相の近似条件
上述した実施形態では、当初コード位相と確認用コード位相とが一致する場合に、第2
の位相探索範囲が適切であると判定するものとして説明したが、当初コード位相と確認用
コード位相とが完全に一致しない場合であっても、近似している場合(例えば当初コード
位相と確認用コード位相との差が±3チップの範囲内である場合)は、第2の位相探索範
囲が適切であると判定することにしてもよい。
【0108】
5−8.位相探索範囲
上述した実施形態では、PRNコードのチップ長全体を第1の位相探索範囲として設定
するものとして説明したが、前回の位相探索においてコード位相の検出を既に行っている
場合は、検出済みのコード位相を含む所定範囲(例えば当該コード位相を中心として±8
チップの範囲)を第1の位相探索範囲として設定することで、当初の第1の位相探索範囲
よりも位相探索範囲を狭めて第1の相関積算処理を行うこととしてもよい。
【0109】
また、当初コード位相を中心として「±0.32チップ」の範囲を第2の位相探索範囲
として設定するものとして説明したが、この範囲は広狭変更可能である。尚、第2の位相
探索範囲は、当初コード位相を含む範囲であればよく、必ずしも当初コード位相を第2の
位相探索範囲の中心とする必要はない。
【0110】
5−9.単位位相間隔
上述した実施形態では、第1の単位位相間隔を「0.8チップ」として説明したが、こ
の値は適宜変更可能である。また、第2の単位位相間隔を第1の単位位相間隔の1/10
チップである「0.08チップ」とするものとして説明したが、必ずしも1/10チップ
である必要はなく、例えば1/5チップや1/20チップ等としてもよい。
【0111】
5−10.閾値時間
また、上述した実施形態では、第1の閾値時間を「16秒」、第2の閾値時間を「16
秒」、第3の閾値時間を「8秒」として説明したが、これらの値はあくまでも一例であり
、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】携帯型電話機の機能構成を示すブロック図。
【図2】ベースバンド処理回路部のROMに格納されたデータの一例を示す図。
【図3】ベースバンド処理回路部のRAMに格納されるデータの一例を示す図。
【図4】第1の相関積算処理及び高分解能相関積算処理の概略を示す図。
【図5】第1の相関積算処理及び高分解能相関積算処理の時系列を示す図。
【図6】相関積算値データベースのデータ構成の一例を示す図。
【図7】ベースバンド処理の流れを示すフローチャート。
【図8】ベースバンド処理の流れを示すフローチャート。
【図9】ベースバンド処理の流れを示すフローチャート。
【図10】変形例における第1の相関積算処理及び高分解能相関積算処理の時系列を示す図。
【符号の説明】
【0113】
1 携帯型電話機、 5 GPSアンテナ、 10 GPS受信部、
11 RF受信回路部、 20 ベースバンド処理回路部、 21 CPU、
23 ROM、 25 RAM、 30 ホストCPU、 40 操作部、
50 表示部、 60 携帯電話用アンテナ、 70 携帯電話用無線通信回路部、
80 ROM、 90 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散符号で拡散変調された測位用信号の受信信号と前記拡散符号のレプリカコードとを
位相をずらしつつ所定期間に亘って相関積算する複数の相関積算処理を、開始タイミング
をずらして並列に繰り返し実行することと、
前記並列実行されている複数の相関積算処理のうち、所与の測位タイミングの時点で当
該相関積算処理の積算処理時間が最も長い相関積算処理の処理結果を用いて測位演算を行
うことと、
を含む測位方法。
【請求項2】
所定の広幅位相探索範囲で前記受信信号と前記レプリカコードとを位相をずらしつつ相
関積算する広幅範囲相関積算処理を実行することと、
前記広幅範囲相関積算処理の相関積算値に基づいて、前記広幅位相探索範囲内でコード
位相が含まれると推定される探索範囲を狭小位相探索範囲として設定することと、
を更に含み、
前記複数の相関積算処理を実行することは、前記狭小位相探索範囲内で位相をずらして
前記相関積算を行うことである、
請求項1に記載の測位方法。
【請求項3】
前記狭小位相探索範囲を設定することは、前記広幅範囲相関積算処理中の第1のタイミ
ングにおける相関積算値に基づいて前記狭小位相探索範囲を設定することを含み、
前記広幅範囲相関積算処理中の前記第1のタイミングにおける相関積算値と、前記第1
のタイミングより遅い第2のタイミングにおける相関積算値とに基づいて、設定した前記
狭小位相探索範囲の適否を判定することを更に含み、
前記測位演算を行うことは、前記狭小位相探索範囲が適切と判定された場合に、前記相
関積算処理の処理結果を用いた前記測位演算を行うことである、
請求項2に記載の測位方法。
【請求項4】
前記狭小位相探索範囲が不適と判定された場合に、前記狭小位相探索範囲を再設定する
ことを更に含む請求項3に記載の測位方法。
【請求項5】
前記狭小位相探索範囲の適否を判定することは、前記第1のタイミングにおける相関積
算値の位相特性と前記第2のタイミングにおける相関積算値の位相特性とに基づいて、設
定した前記狭小位相探索範囲の適否を判定することである請求項3又は4に記載の測位方
法。
【請求項6】
前記相関積算処理は、前記広幅範囲相関積算処理における位相のずらし間隔より狭い間
隔で前記相関積算を行う処理である請求項2〜5の何れか一項に記載の測位方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の測位方法を、測位装置に内蔵されたコンピュータに
実行させるためのプログラム。
【請求項8】
拡散符号で拡散変調された測位用信号の受信信号と前記拡散符号のレプリカコードとを
位相をずらしつつ所定期間に亘って相関積算する複数の相関積算処理を、開始タイミング
をずらして並列に繰り返し実行する相関積算処理部と、
前記並列実行されている複数の相関積算処理のうち、所与の測位タイミングの時点で当
該相関積算処理の積算処理時間が最も長い相関積算処理の処理結果を用いて測位演算を行
う測位部と、
を備えた測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−288225(P2009−288225A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144383(P2008−144383)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】