説明

測定光による観察装置

【課題】観測光が微弱な場合においても,測定光の出射端面の反射をすることができる低減観察装置を提供する。
【解決手段】レーザ光源101として,中心波長840nm,光出力7mWの9個の出力を持つ光源を用いる。ファイバカプラユニット102は分岐比90:10の2対1カプラが9個並列に並べられている。レーザ光源側から出射光ユニット103側に光が通過するときに10%透過するように配置されている。逆に,反射光が出射光ユニット103側から入射するときは,90%の光量が検出ユニット106に入射する。検出ユニット106の内部には各ファイバ端にAPD(アバランシェフォトダイオード)が設けられ,検出光を電気信号に変えて検出する。出射光ユニット103から出射された測定光は,走査光学系104でコリメートされガルバノスキャナで走査され,対物レンズ105で眼底110上に集光される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,測定光による観察装置に関し,特に測定光の出射端面に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,複数の測定光を用いて,被検査物の異なる位置・深さを同時に観察する観察装置が提案されている。ある一定の領域を観察する場合に,複数の測定光を用いることで,観察時間が短縮できる。そのため,生体の細胞,器官(眼,血管,心臓など)のように拍動等で常に動いているものを観察する際にはこの技術は特に有用である。
例えば,特許文献1では,複数のシート状のファイバの出射端を光軸方向にずらして配置し,異なる深さ方向の情報を得ることにより立体的に観察する方法が開示されている。また,特許文献2では,ファイバ端の位置を階段上にずらして配置し異なる深さ方向の情報を取得する方法を開示している。また、通常のPC(physical contact)研磨されたファイバ端面の反射率は−40dB(0.01%)以下であるが,例えば眼底の反射率は−50dB(0.001%)程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−535717
【特許文献2】特表2004−502957
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,これらの方法を生体観察に応用した場合,検出する光量が微弱であるため,測定光が出射される出射端面の反射光が問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に係る観察装置は、
測定光源と、
前記測定光源から発せられた測定光の出射光軸に対して斜めの出射端面を有する出射光ユニットと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,観測光が微弱な場合においても,測定光の出射の端面反射による影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態の構成を説明する図である。
【図2】台座に傾いて固定される光ファイバガイドの図である。
【図3】本発明の第2の実施例における眼底像観察装置の構成を説明する図である。
【図4】第2の実施形態の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態1]
次に,本発明の実施形態1について図1を用いて説明する。
【0009】
測定光源であるレーザ光源101から出た複数の光は複数のファイバカプラが並列に並べられたファイバカプラユニット102を通って,出射光ユニット103より測定光として複数出射される。
【0010】
該測定光はビーム走査を行う走査手段(走査光学系)104によって走査され,照射光学系を構成する対物レンズ105を介して,被観察物110に照射される。被観察物110によって反射された戻り光は,再び同じ光学系を通って,ファイバカプラユニット102に戻される。ファイバカプラユニット102は各カプラが2対1の構成で,反射戻り光を2つに分岐し,一方は光検出ユニット106に入射され光強度が検出される。
【0011】
出射光ユニット103の構成を図2に示す。光ファイバ201は測定光源であるレーザ光源101から発せられた光を導光する。 出射光ユニット103は,光ファイバガイド202に通された光ファイバ201が光ファイバガイド202ごと台座203に固定された構成となっている。光ファイバ201は光ファイバガイド202を貫通し,図2(a)の紙面右方向に測定光が出射される。図2(b)は出射光ユニット103を測定光の出射口側から見た図である。複数の光ファイバ201が横一列に複数挿入された光ファイバガイド202が紙面垂直方向に複数積まれている。各光ファイバガイド202の出射口端面は光ファイバの光軸に対して斜めに光学研磨されている。また、後述するように出射光軸に対しても斜めに光学研磨されている。
【0012】
こうすることで光ファイバ201の端面で反射される光が再び光ファイバ内に戻る分を大幅に低減できる。ただし,斜めに研磨すると出射光は光ファイバ201の光軸に対して斜めに出射されるため,光ファイバガイド202は傾けて台座203に固定されている。
ここで、図3は光ファイバ201の光軸と端面の角度と測定光の出射光軸の関係を示す図である。
【0013】
図3に示すように、光ファイバ201の光軸と出射光軸との所定の角度αは,レーザ光源101の波長における光ファイバの屈折率n,出射口端面角度θを用いてスネルの法則から次の(1)式で計算できる。θは端面に垂直な軸と光ファイバ201の光軸との角度を示す。
α=sin−1(n・sinθ)−θ ・・・(1)式
以上の本実施形態の構成によれば,測定光による観察装置において,観測光が非常に微弱な場合においても,光ファイバ等の端面反射による光ノイズの影響を低減することができる。
【0014】
以下に実施例について説明する。
【0015】
レーザ光源101として,中心波長840nm,光出力7mWの9個の出力を持つ光源を用いる。ファイバカプラユニット102は分岐比90:10の2対1カプラが9個並列に並べられている。レーザ光源側から出射光ユニット103側に光が通過するときに10%透過するように配置されている。逆に,反射光が出射光ユニット103側から入射するときは,90%の光量が検出ユニット106に入射する。検出ユニット106の内部には各ファイバ端にAPD(アバランシェフォトダイオード)が設けられ,検出光を電気信号に変えて検出する。出射光ユニット103から出射された測定光は,走査光学系104でコリメートされガルバノスキャナで走査され,対物レンズ105で眼底110上に集光される。
【0016】
出射光ユニット103は図2のように,縦3列横3列の9本が1.0mm間隔でガラス製の光ファイバガイド202内に貫通させる形で等間隔に配置され,設置角度αで台座203上に固定されている。光ファイバガイド202の端面研磨の角度をθ=8°,ファイバの屈折率を1.4とすると,数式1からα=3.2°である。この出射光ユニット103から出射された測定光は,眼底110上を縦3列横3列の9つ領域に分割して走査することができ,通常1つの測定光で走査する場合に比べて大幅に走査時間を短縮できる。また,光ファイバガイド202の端面を斜めに研磨することで測定光の反射ノイズを−60dB以下に抑えることができる。
【0017】
なお,本実施例では光ファイバをガラス製の光ファイバガイド202に通した構成を例として示した。ファイバガイドは、ガラス製,金属製のいずれかでよく,アルミニウム,銅等も仕様可能である。また,シリコンV溝構造のファイバガイドを用いた場合や,プレーナ光波回路(PLC,Planar Lightwave Circuit)を用いた場合でも同様に斜め研磨して台座203に配置することで同様の効果を得ることができる。また、複数の測定光を出射する例で説明したが、単一の測定光を出射する場合でも同様な効果を得られることは言うまでもない。
【0018】
[実施形態2]
本実施形態では光干渉断層計(OCT,Optical coherence tomography)の例を図4を用いて説明する。図1と同様の構成は同一の番号を付して説明を省略する。OCTの場合には、参照光と測定光をファイバカプラユニット402で干渉させるために特に出射端での反射光が問題となる。
【0019】
中心波長840nm,波長幅40nm,光出力7mWの9個の出力を持つSLD光源401から出た光は,90:10の分岐比のファイバカプラが9個並列に並べられたファイバカプラユニット402に入力される。これらのファイバカプラは2対2の構成で,光源の光量の10%を測定光側の出射光ユニット103に,90%を参照光側の出射光ユニット403に分岐する。
【0020】
測定光側の出射光ユニット103出射された測定光は,実施例1と同様に複数の測定光が眼底110上を走査するようになっている。眼底110からの反射光は同じ光路を通りファイバカプラユニット402に戻される。参照光側の出射光ユニット403から出射された参照光はコリメータレンズ404で平行光になる。そして,分散補償ガラス405を通り,電動ステージ406上の参照ミラー407で反射され,同じ光路を戻りファイバカプラユニット402に戻される。ここで,出射光ユニット103,403は実施例1図2と同じ構成のものである。また,分散補償ガラス405は,測定光側の走査光学系104以降の光路と参照光の光路で同じ分散量になるように,長さを調整したBK7ガラスである。
【0021】
ファイバカプラユニット402に戻された眼底110の反射光と参照光はファイバカプラで合成され,干渉光となる。これら9つの干渉光は検出ユニット410で検出される。光検出ユニット401には9つのAPD(アバランシェフォトダイオード)が設けられ,干渉光を電気信号に変えて検出する。
【0022】
出射光ユニット103から出射された測定光は,実施例1と同様に眼底110上を縦3列横3列の9つ領域に分割して走査することができ,参照ミラー407の位置に対応した眼底110の深さ位置情報が干渉光強度として検出される(タイムドメイン方式OCT)。
【0023】
眼底の光反射率は−50dB以下である。垂直研磨された光ファイバの場合,端面反射率が−40dBあるので,測定光の反射戻り光の方が大きくAPDが飽和してしまう。本実施例の構成によれば,光ファイバガイド202の貫通穴の位置を調整することにより,任意の位置に複数の光ファイバを配置することができ,同時に斜め研磨された出射口から反射戻り光の少ない状態で,測定光を出射することができる。光ファイバガイドの端面を斜めに研磨することで測定光の反射ノイズを抑えることができる。これにより、OCTにおいて不要な干渉を抑えることで測定対象からの信号を精度よく得ることができる。
【0024】
また,本実施例ではタイムドメイン方式OCTの例を示したが,フーリエドメインOCTの場合でも同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0025】
101 レーザ光源
102 ファイバカプラユニット
103 出射光ユニット
106 検出ユニット
201 光ファイバ
202 光ファイバガイド
203 台座
401 検出ユニット
402 ファイバカプラユニット
403 出射光ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光源と、
前記測定光源から発せられた測定光の出射光軸に対して斜めの出射端面を有する出射光ユニットと、
を備えることを特徴とする観察装置。
【請求項2】
前記測定光源から発せられた光を導光する光ファイバを更に備え、
前記出射端面は前記光ファイバを挿入した光ファイバガイドの端面であることを特徴とする請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
前記出射端面は、前記光ファイバの光軸に対して斜めに光学研磨されていることを特徴とする請求項2に記載の観察装置。
【請求項4】
ファイバカプラを更に備え、
測定光源から発せられた光を前記ファイバカプラを介して前記光ファイバに導光し、前記ファイバカプラで分岐した観察物からの戻り光を検出する検出ユニットを更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の観察装置。
【請求項5】
前記出射光ユニットは測定光を複数出射する出射端面を有し、それぞれの出射端面は平行であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項6】
前記ファイバカプラは、
前記測定光源からの光を参照光として分岐し、参照ミラーで反射したで反射した光と観察物からの戻り光を干渉光として合成することを特徴とする請求項4又は5のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項7】
前記光ファイバガイドは、ガラス製,金属製のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項8】
前記光ファイバガイドは、プレーナ光波回路、シリコンV溝構造のファイバガイドのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項9】
前記出射端面の角度を前記測定光の出射光軸に対して所定の角度で固定する台座を更に備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項10】
前記測定光の出射光軸と照射光学系の光軸とが平行になるように前記出射端面が斜めに配置されていることを特徴とする請求項9に記載の観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75034(P2013−75034A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216775(P2011−216775)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】