説明

測定結果の記録領域を選択可能にした輪郭形状測定機

【課題】記録紙を複数の領域に分割して、測定と同時に、指定した領域に測定結果を記録する。
【解決手段】記録装置の所定位置に置かれた記録紙36について、複数の記録領域44毎の記録装置上の座標データ(46、54)を、予め制御・操作ユニットに保存しておくこととする。記録領域44を示す番号とその記録領域に関する座標データとを対応させておくことによって、測定者が制御・操作ユニットに対して記録領域44を示す番号を入力するだけで、内部のCPUが記録装置に出力すべきデータに座標データを反映させることが可能となり、所望の記録領域44に測定結果52が記録されるようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪郭形状測定機に関し、特に輪郭形状を測定した結果の記録紙上での記録領域を選択可能にした輪郭形状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
スタイラスを被測定物表面に接触させてトレースし、被測定物の輪郭形状を測定する輪郭形状測定機において、測定の進行と同時に、測定して得られた輪郭形状をX−Y記録計、又は、X−Yプロッタ等の記録装置に記録する輪郭形状測定機が種々の分野で使用されている。
【0003】
しかしながら、従来の輪郭形状測定機においては、1つの被測定物に対し、複数の輪郭形状測定を行った場合、その測定結果としての輪郭曲線を、同一記録紙上の複数の領域に分割して記録することは考慮されておらず、複数の輪郭曲線を、1つの記録紙の紙面に記録するものであった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−280904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、もし1枚の記録紙を異なる領域に分割して、測定と同時に所望の領域に記録しようとするような場合には、測定を行う都度記録装置のペンを記録開始位置に合わせたり、記録の倍率を設定しなおしたりする必要があった。
【0005】
特に、一つの被測定物の複数箇所について、一枚の記録紙上の複数の領域に分けて、それぞれに順次記録を行いながら測定するような場合には、操作が煩雑であって測定を効率的に行う上で障害になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る輪郭形状測定機は、上記課題を解決するためになされたもので、一枚の記録紙上に複数の記録領域を設定しておいて、それぞれの記録領域における記録開始点及び記録領域終端とを予め記憶させておき、被測定物の輪郭を測定するときに、記憶された記録領域を選択することにより、自動的に所望の記録領域に記録を行うことができるようにすることを目的とする。
【0007】
具体的には、
被測定物の表面を一定方向に走査して輪郭形状のデータを生成する測定装置と;
該輪郭形状を記録紙上に記録する記録装置と;
該測定装置及び記録装置の制御及び操作を行う制御・操作ユニットと、を有し、
該制御操作ユニットは、
記録紙上に想定される複数の記録領域の原点及びフルスケールに対応した記録装置上の座標データを記憶するデータ保存部と、
該データ保存部に記憶された該複数の記録領域から、測定結果を記録すべき領域を選択する記録領域選択部と、
該測定装置に対して、測定開始及び測定終了の制御を行う測定装置制御部と、
該測定装置で生成された輪郭形状のデータ及び該選択された記録領域の座標データに基づいて、該記録装置によって該記録紙上に記録するための記録データを演算する演算部と、
該記録装置に対して、該記録データを送信する記録装置制御部と、
を有している。
【0008】
又、該記録領域は該記録紙の紙面を複数に分割して設定しておくようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定者が所望の記録領域を選択して測定開始の指示を制御・操作ユニットに入力するだけで、測定をするのと同時に、測定結果をモニター上に表示するとともに所望の記録領域に記録するようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る輪郭形状測定機の一実施形態について説明する。
【0011】
図1に示すように、輪郭形状測定機10は測定装置12と、制御・操作ユニット14と、記録装置16とから構成されている。測定装置12及びそれに関連する制御・操作ユニット14の機能は図2に示すように、輪郭形状測定部102、測定値記憶部104、測定装置制御部106とから構成される。また、記録装置16及びそれに関連する制御・操作ユニット14の機能は、記録部108、記録装置制御部110、と、輪郭形状測定部102による測定値に所定の演算処理を施すCPU112、演算結果及び演算のための中間データ、記録領域に関するデータを保存するデータ保存部114、CPUの動作プログラムを記憶しておくプログラム記憶部116、測定者が測定機の操作のために入力をする操作操作・入力部118と、測定者による入力や測定結果を表示する表示部120とから構成されている。
【0012】
図1において、測定装置12は、被測定物(図示せず)を載置する定盤26と、該定盤上の被測定物表面に接触するスタイラス18を支持し、その上下方向の変位量を電気的な信号として検出する検出器20と、検出器20を支持して図面で見て左右方向に移動させる送り装置22と、定盤26上に立設されて送り装置22を上下方向に移動可能に支持するコラム24とからなっている。なお、定盤26の上に、いわゆるX−Yステージ27を載せて、その上に被測定物を載せるようにしてもよい。
【0013】
制御・操作ユニット14は、測定装置制御信号ケーブル28を介して測定装置12の測定動作の制御を行う機能を有しており、又、スタイラス18の上下方向の変位が検出器20によって変換された電気信号を、検出信号ケーブル30を介して取り込んで測定データとして処理し、このデータと、送り装置22による検出器の移動データと組み合わせて、被測定物の輪郭形状を表すデータとして、表示部120である制御・測定ユニット14に内蔵されたモニター32上に表示させる。同時に、記録信号ケーブル34を介して接続された記録装置16に転送して記録紙36の上に記録させる。
【0014】
記録装置16における記録紙36への記録は、キャリッジ38によってX方向(図1で見て左右方向)とY方向(図1で見て上下方向)に搬送されるペン40で行うことができる。記録装置16は制御・操作ユニット14から記録信号を受けてペン40による記録を行うことができる他に、操作パネル42から入力してペン40のX方向、Y方向の移動や、ペン40のZ方向(図1で見て紙面に垂直な方向)の移動を行わせることができる。
【0015】
図3は、記録紙36の面を複数の領域に分割して記録する場合について、例えばNo.1からNo.6までの6つの領域に分割された記録紙36の、No.5の領域44に記録した場合を示しており、図4は、そのときの測定モニター32の画面上の表示を示している。
【0016】
ここで、制御・測定ユニット14には、No.1からNo.6それぞれの記録領域の原点及びフルスケールに対応した記録装置上の座標データを、領域を表す符号(例えば、No.5)と関連付けて、予めデータ保存部114に保存しておくことができるようになっている。こうすることにより、測定者が測定を行う度に、記録させたい領域の記録装置上の座標データを入力しなくとも、領域を表す符号を入力するだけで、CPU112が領域を表す符号に基づいて該当する座標データを参照し、記録装置16に送信するデータを演算するようにすることができる。
【0017】
測定は図5にフローチャートで示す通り、以下の操作手順で実行される;
(1)被測定物を輪郭形状測定機の載物台(図1に示す輪郭形状測定機の場合は、測定
装置の定盤26)の上にセットする。(ステップS1010)
(2)スタイラスを測定開始点に移動する。(ステップS1020)
(3)分割記録を行う場合には、予め登録されている記録領域を選択する。(ステップ
S1030)
(図3の例では、No.5の領域を選択。このとき、記録装置16のペン40が
自動的にNo.5の領域の記録開始位置46に移動する;ステップS1040)
(3’)従来通りの記録形態で輪郭形状測定を行う場合は、ステップS1030の操作
を行わないで次の操作を行う。
(4)測定開始のスイッチを押して測定を開始する。(ステップS1050)
以上により、測定装置12が作動して(ステップS1060)、制御・操作ユニ
ットのモニター32上に、描画開始位置48から線画50として測定された形状
が描かれると同時に、記録紙上の選択された記録領域(No.5の領域44)に
も線画52として記録される(ステップS1070)。
(5)No.5の記録領域の終端54まで記録が進むと(ステップS1080)、送り
装置22の動作が停止し(ステップS1090)、1回の測定が終了する(ステ
ップS1100)。このとき、モニター32上においても終端56まで描画が進
んでいる。
【0018】
以上の過程において、モニター32には選択された記録領域(今の例ではNo.5)58が表示される。
【0019】
上記の操作の手順に対応して、制御・操作ユニットは図6のフローチャートのように動作する。
(1)制御・操作ユニットは、測定作業者からの命令を受ける待機状態にあり、上記の
ステップS1030で記録領域が選択されると、先ずその情報を読み込む。(ス
テップS3010)
(2)読み込んだ情報に基づいて、標準的な全面記録か領域分割記録かを判別し(ステ
ップS3020)、領域分割記録の場合には、どの領域が選択されたかを、言い
替えればどの領域が指定されたかを参照する(ステップS3030)。
(3)次に、標準的な全面記録が選択された場合も、領域分割記録が選択された場合も
記録紙上の記録開始位置の設定(ステップS3050)、記録終了位置の設定(
ステップS3070)、及び、縦軸・横軸の記録倍率の設定(ステップS309
0)と続く。
(4)これらの設定が終了すると、制御・操作ユニット14は記録装置16に対して、
記録用のペンを記録開始位置へ移動するよう命令を出し(ステップS3100)
測定作業者からの測定開始命令が入力されるのを待ち受ける状態で待機する(ス
テップS3110)。
(5)測定作業者が測定ボタンを押すなどして、制御・操作ユニットに対する測定開始
の入力がなされると(ステップ3120:YES)制御・操作ユニットは測定装
置の送り装置22に対して、スタイラスを送るよう動作開始を命令し(ステップ
S3130)、測定が開始される。
(6)続いて、制御・操作ユニット14は、検出器の電気的な出力を入力し(ステップ
S3140)、測定条件や記録形態に応じた所定の倍率の演算を行って(ステッ
プS3150)記録装置に出力する(ステップS3160)。
(7)前項の動作は、記録装置16のペンが、ステップS3070で設定された記録終
了位置に達するまで(ステップS3170:NO)繰り返し継続される。
(8)記録終了位置に達すれば(ステップS3170:YES)、制御・操作ユニット
は送り装置22と記録装置16に終了の命令を出して(ステップS3180)、
その1回の測定が終了したこととなる。
【0020】
以上の実施形態では、接触式のスタイラス18を用いた測定装置12について説明したが、例えば光学式に非接触で被測定物の輪郭形状を測定する測定装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の輪郭形状測定機の実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す実施形態の機能ブロック図である。
【図3】記録領域を6つに分割した記録紙の例である。
【図4】モニター画面の表示例である。
【図5】操作手順のフローチャートである。
【図6】操作・制御ユニットの動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
10 輪郭形状測定機
12 測定装置
14 制御・操作ユニット
16 記録装置
18 スタイラス
20 検出器
22 送り装置
24 コラム
26 コラム付き定盤
28 測定装置制御信号ケーブル
30 検出信号ケーブル
32 モニター
34 記録信号ケーブル
36 記録紙
38 キャリッジ
40 ペン
42 操作パネル
44 記録領域
46 記録開始位置
48 描画開始位置
50、52 線画
54、56 終端
102 輪郭形状測定部
104 測定値記憶部
106 測定装置制御部
108 記録部
110 記録装置制御部
112 CPU
114 データ保存部
116 プログラム記憶部
118 操作・入力部
120 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面を一定方向に走査して輪郭形状のデータを生成する測定装置と;
該輪郭形状を記録紙上に記録する記録装置と;
該測定装置及び記録装置の制御及び操作を行う制御・操作ユニットと、を有し、
該制御・操作ユニットは、
記録紙上に想定される複数の記録領域の原点及びフルスケールに対応した記録装置上の座標データを記憶するデータ保存部と、
該データ保存部に記憶された該複数の記録領域から、測定結果を記録すべき領域を選択する記録領域選択部と、
該測定装置に対して、測定開始及び測定終了の制御を行う測定装置制御部と、
該測定装置で生成された輪郭形状のデータ及び該選択された記録領域の座標データに基づいて、該記録装置によって該記録紙上に記録するための記録データを演算する演算部と、
該記録装置に対して、該記録データを送信する記録装置制御部と、
を有することを特徴とする輪郭形状測定機。
【請求項2】
該記録領域は該記録紙の紙面を複数に分割して設定されたものであることを特徴とする請求項1に記載の輪郭形状測定機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate