説明

測定装置および測定システム

【課題】測定結果の読み取りを困難とすることなく、小形化および軽量化を図り得る測定装置を提供する。
【解決手段】電気的パラメータを測定する測定部11を備えた測定装置1であって、測定装置1の動作状態、および測定部11の測定結果をスマートフォン2の表示部23に表示させるための表示用データD1を生成する処理部16と、処理部16の制御に従ってスマートフォン2に表示用データD1を送信する無線通信部14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象についての電気的パラメータを測定可能に構成された測定装置、およびその測定装置を備えて構成された測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、実開平5−52765号公報に開示されているマルチメータは、一対のプローブを接続可能なジャックと、測定条件を設定操作するための各種ボタンと、測定結果を表示するための液晶表示器とがケーシング(筐体)の一面に配設されて、電圧値、電流値および抵抗値のいずれかを測定して測定結果を液晶表示器に表示することができるように構成されている。このマルチメータの使用に際しては、まず、セレクトボタンを操作して、例えば電圧値の測定処理を選択すると共に、この処理に対応付けられたジャックに両プローブを接続する。次いで、両プローブを測定対象に接触させることにより、測定回路によって電圧値が測定されて、その測定結果が液晶表示器に数値で表示される。また、電圧値の測定に代えて、電流値を測定する際には、セレクトボタンを操作して、電流値の測定処理を選択すると共に、この処理に対応付けられたジャックに両プローブを接続する。次いで、両プローブを測定対象に接触させることにより、測定回路によって電流値が測定されて、その測定結果が液晶表示器に数値で表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−52765号公報(第6−9頁、第1−4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のマルチメータには、以下の問題点が存在する。すなわち、従来のマルチメータでは、電圧値、電流値および抵抗値などの測定結果を、ケーシングの一面に配設された液晶表示器に表示させる構成が採用されている。この場合、この種の測定装置に対しては、容易に持ち運び可能とし、かつ、不使用時における占有スペース(収納スペース)を小さくするため、小形化および軽量化を図るべきとの強い要望がある。しかしながら、従来のマルチメータを小形化する場合には、測定結果表示用の液晶表示器についても小形化せざるを得ず、測定結果の読み取りが困難になるおそれがある。このため、従来のマルチメータのような測定装置においては、測定結果を容易に読み取り得る十分な大きさの表示器を搭載する必要があり、これに起因して、小形化および軽量化が困難になっているという問題点がある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、測定結果の読み取りを困難とすることなく、測定装置の小形化および軽量化を図り得る測定装置および測定システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、電気的パラメータを測定する測定部を備えた測定装置であって、当該測定装置の動作状態、および前記測定部の測定結果をスマートフォンの表示部に表示させるための表示用データを生成する処理部と、前記処理部の制御に従って前記スマートフォンに前記表示用データを送信する無線通信部とを備えている。
【0007】
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記処理部は、前記スマートフォンから送信された操作データに応じて前記測定部を制御して前記電気的パラメータを測定させる。
【0008】
さらに、請求項3記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、信号ケーブルを介して前記スマートフォンに接続可能に構成されて前記処理部の制御に従って当該信号ケーブルを介して前記スマートフォンに前記表示用データを送信する有線通信部を備えている。
【0009】
さらに、請求項4記載の測定装置は、請求項2記載の測定装置において、信号ケーブルを介して前記スマートフォンに接続可能に構成されて前記処理部の制御に従って当該信号ケーブルを介して前記スマートフォンに前記表示用データを送信すると共に当該信号ケーブルを介して当該スマートフォンからの前記操作データを受信する有線通信部を備えている。
【0010】
また、請求項5記載の測定装置は、請求項1または3記載の測定装置において、当該測定装置の電源を遮断する電源遮断処理を実行する制御部を備え、前記制御部は、前記スマートフォンから前記電源遮断処理の実行を指示する制御データが送信されたときに当該制御データに従って当該電源遮断処理を実行する。
【0011】
また、請求項6記載の測定装置は、請求項2または4記載の測定装置において、当該測定装置の電源を遮断する電源遮断処理を実行する制御部を備え、前記制御部は、前記スマートフォンから前記電源遮断処理の実行を指示する制御データが送信されたときに当該制御データに従って当該電源遮断処理を実行する。
【0012】
さらに、請求項7記載の測定装置は、請求項5または6記載の測定装置において、前記制御部は、前記スマートフォンへの前記表示用データの送信が可能な通信可能状態が解除されて当該表示用データを送信できなくなったときに前記電源遮断処理を実行する。
【0013】
また、請求項8記載の測定システムは、請求項1または3記載の測定装置と、当該測定装置から送信された前記表示用データに基づいて当該測定装置の前記動作状態および前記測定結果を前記表示部に表示させる測定装置用プログラムがインストールされた前記スマートフォンとを備えて構成されている。
【0014】
また、請求項9記載の測定システムは、請求項2または4記載の測定装置と、操作部から出力された出力信号に基づいて前記操作データを生成して前記測定装置に送信すると共に当該測定装置から送信された前記表示用データに基づいて当該測定装置の前記動作状態および前記測定結果を前記表示部に表示させる測定装置用プログラムがインストールされた前記スマートフォンとを備えて構成されている。
【0015】
また、請求項10記載の測定システムは、請求項5記載の測定装置と、現在位置を測位して現在位置情報を出力する現在位置測位部を有する前記スマートフォンとを備えて構成された測定システムであって、前記スマートフォンは、前記測定装置から送信された前記表示用データに基づいて当該測定装置の前記動作状態および前記測定結果を前記表示部に表示させ、かつ、前記現在位置測位部から出力された前記現在位置情報に基づいて特定した現在位置が予め設定された範囲を外れたときに前記制御データを前記測定装置に送信して前記電源遮断処理を実行させる測定装置用プログラムがインストールされている。
【0016】
また、請求項11記載の測定システムは、請求項6記載の測定装置と、現在位置を測位して現在位置情報を出力する現在位置測位部を有する前記スマートフォンとを備えて構成された測定システムであって、前記スマートフォンは、操作部から出力された出力信号に基づいて前記操作データを生成して前記測定装置に送信すると共に当該測定装置から送信された前記表示用データに基づいて当該測定装置の前記動作状態および前記測定結果を前記表示部に表示させ、かつ、前記現在位置測位部から出力された前記現在位置情報に基づいて特定した現在位置が予め設定された範囲を外れたときに前記制御データを前記測定装置に送信して前記電源遮断処理を実行させる測定装置用プログラムがインストールされている。
【0017】
また、請求項12記載の測定システムは、請求項10または11記載の測定システムにおいて、前記スマートフォンには、前記測定装置用プログラムとして、前記測定装置に前記電源遮断処理を実行させるための前記制御データを送信した後に当該測定装置用プログラムを終了するようにプログラムされたプログラムがインストールされている。
【0018】
さらに、請求項13記載の測定システムは、請求項5から12のいずれかに記載の測定システムにおいて、前記スマートフォンには、前記測定装置用プログラムとして、前記表示用データから前記測定結果を抽出してストレージメモリに記憶させるデータ保存処理を実行可能なプログラムがインストールされている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の測定装置では、電気的パラメータを測定する測定部と、測定装置の動作状態、および測定部の測定結果をスマートフォンの表示部に表示させるための表示用データを生成する処理部と、処理部の制御に従ってスマートフォンに表示用データを送信する無線通信部とを備えて構成されている。また、請求項8記載の測定システムでは、上記の測定装置と、測定装置から送信された表示用データに基づいて測定装置の動作状態および測定結果を表示部に表示させる測定装置用プログラムがインストールされたスマートフォンとを備えて構成されている。
【0020】
したがって、請求項1記載の測定装置、および請求項8記載の測定システムによれば、動作状態や測定結果を表示するための表示部が測定装置に存在しなくても、無線通信部から送信した表示用データに基づいて測定装置の動作状態や測定部による測定結果をスマートフォンの表示部に表示させることができるため、測定結果の読み取りが困難となる事態を招くことなく、表示部を不要として、測定装置を十分に小形化および軽量化することができる。また、測定装置とは別体に専用の表示装置を設ける構成とは異なり、スマートフォンを所有している者にとっては、測定システムを安価に構築することができる。さらに、無線通信によって測定装置からスマートフォンに表示用データを送信することにより、通信用のケーブルが絡み合うことがないため、測定装置やスマートフォンの取り扱いが十分に容易となる。加えて、他の通信機器を別途用意することなく、スマートフォンが接続可能な各種通信網(携帯電話通信網等)を利用して測定結果を任意の場所へ送信することができる。
【0021】
また、請求項2記載の測定装置では、処理部が、スマートフォンから送信された操作データに応じて測定部を制御して電気的パラメータを測定させる。また、請求項9記載の測定システムでは、上記の測定装置と、操作部から出力された出力信号に基づいて操作データを生成して測定装置に送信すると共に測定装置から送信された表示用データに基づいて測定装置の動作状態および測定結果を表示部に表示させる測定装置用プログラムがインストールされたスマートフォンとを備えて構成されている。したがって、請求項2記載の測定装置、および請求項9記載の測定システムによれば、電源スイッチ等の必要最低限の操作スイッチを除いて、測定処理用の操作スイッチが不要となる分だけ、測定装置を一層小形化および軽量化することができる。
【0022】
さらに、請求項3記載の測定装置では、処理部の制御に従って信号ケーブルを介してスマートフォンに表示用データを送信する有線通信部を備えている。また、請求項4記載の測定装置では、処理部の制御に従って信号ケーブルを介してスマートフォンに表示用データを送信すると共に信号ケーブルを介してスマートフォンからの操作データを受信する有線通信部を備えている。したがって、請求項3,4記載の測定装置によれば、無線通信の実行を制限されている場所においても信号ケーブルを介して表示用データ等を測定装置からスマートフォンに送信することができる。また、一般的には、無線通信よりも有線通信の方が測定装置やスマートフォンにおける電力消費量が少なくて済むため、測定装置やスマートフォンのバッテリ残量が少ないときに、無線通信しつつ測定処理を実行するよりも長い時間に亘って測定処理を実行することができる。
【0023】
また、請求項5,6記載の測定装置では、制御部が、スマートフォンから電源遮断処理の実行を指示する制御データが送信されたときに制御データに従って電源遮断処理を実行して測定装置の電源を遮断する。また、請求項10記載の測定システムでは、請求項5記載の測定装置と、測定装置から送信された表示用データに基づいて測定装置の動作状態および測定結果を表示部に表示させ、かつ、現在位置測位部から出力された現在位置情報に基づいて特定した現在位置が予め設定された範囲を外れたときに制御データを測定装置に送信して電源遮断処理を実行させる測定装置用プログラムがインストールされたスマートフォンとを備えて構成されている。さらに、請求項11記載の測定システムでは、請求項6記載の測定装置と、操作部から出力された出力信号に基づいて操作データを生成して測定装置に送信すると共に測定装置から送信された表示用データに基づいて測定装置の動作状態および測定結果を表示部に表示させ、かつ、現在位置測位部から出力された現在位置情報に基づいて特定した現在位置が予め設定された範囲を外れたときに制御データを測定装置に送信して電源遮断処理を実行させる測定装置用プログラムがインストールされたスマートフォンとを備えて構成されている。
【0024】
したがって、請求項5記載の測定装置、および請求項10記載の測定システムによれば、測定結果の読み取りが困難となる事態を招くことなく、表示部を不要として、測定装置を十分に小形化および軽量化することができるだけでなく、測定処理の終了後に測定装置の電源を遮断し忘れたとしても、その状態の測定システムを携行して測定現場を離れたとき(スマートフォンが予め設定された範囲外に移動したとき)に、測定装置の電源が遮断されるため、測定処理を実行していない測定装置によって不要な電力が消費される事態を確実かつ容易に回避することができ、請求項6記載の測定装置、および請求項11記載の測定システムによれば、測定結果の読み取りが困難となる事態を招くことなく、表示部を不要として、測定装置を十分に小形化および軽量化することができると共に、測定処理用の操作スイッチが不要となる分だけ、測定装置を一層小形化および軽量化することができるだけでなく、測定処理の終了後に測定装置の電源を遮断し忘れたとしても、その状態の測定システムを携行して測定現場を離れたとき(スマートフォンが予め設定された範囲外に移動したとき)に、測定装置の電源が遮断されるため、測定処理を実行していない測定装置によって不要な電力が消費される事態を確実かつ容易に回避することができる。
【0025】
さらに、請求項7記載の測定装置によれば、スマートフォンへの表示用データの送信が可能な通信可能状態が解除されて表示用データを送信できなくなったときに電源遮断処理を実行することにより、測定処理の終了後に測定装置の電源を遮断し忘れたとしても、測定装置からスマートフォンに表示用データを送信することができなくなったとき(通信可能状態が解除されたとき)に、測定装置の電源が遮断されるため、スマートフォンに表示用データに基づく画面を表示させていないとき、すなわち、測定処理を実行していないときに、測定装置によって不要な電力が消費される事態を確実かつ容易に回避することができる。
【0026】
また、請求項12記載の測定システムによれば、測定装置に電源遮断処理を実行させるための制御データを送信した後に測定装置用プログラムを終了するようにプログラムされたプログラムを測定装置用プログラムとしてスマートフォンにインストールしたことにより、測定装置の電源を遮断させたとき、すなわち、測定処理を終了したときに、スマートフォンにおいて継続して実行させる必要がなくなった測定装置用プログラムを、終了操作を行うことなく自動的に終了させることができるため、測定装置用プログラムの不要な実行によってスマートフォンの電力が消費される事態を回避することがきる。
【0027】
また、請求項13記載の測定システムによれば、表示用データから測定結果を抽出して測定結果データとしてストレージメモリに記憶させるデータ保存処理を実行可能なプログラムを測定装置用プログラムとしてスマートフォンにインストールしたことにより、測定装置内に大容量のメモリを搭載することなく、測定部による測定結果をスマートフォンにおいてストレージメモリに記憶させて保存することができる。これにより、小さなメモリを搭載して測定装置を製造できるため、測定装置の製造コストを十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】測定システム100の構成を示すブロック図である。
【図2】測定システム100における測定装置1およびスマートフォン2の外観図である。
【図3】表示部23に電源遮断処理開始メッセージ36を表示させた状態のスマートフォン2の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、測定装置および測定システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0030】
図1,2に示す測定システム100は、測定装置1およびスマートフォン2を備えて構成されている。この場合、「スマートフォン」は、広義には、PDA(携帯情報端末)の機能が備わった携帯電話を意味するが、本明細書では、この広義の「スマートフォン」のうちの「各種プログラムのインストールによって、任意の機能を付加したり、端末の操作環境や表示環境等をカスタマイズしたりすることができるもの」を「スマートフォン」という。なお、上記のスマートフォン2は、後述するように、この測定システム100専用の「測定装置用プログラム」がインストールされた既存の「スマートフォン」で構成されている。
【0031】
測定装置1は、図1に示すように、測定部11、操作部12、インジケータ13、無線通信部14、有線通信部15および処理部16を備えて構成されている。この場合、この測定装置1は、図2に示すように、一例として、上記の各要素11〜16が円筒状のケーシング内に収容されて構成された本体部10aと、本体部10a(測定部11)に対してケーブル11cを介して接続されたテストリード10bとを備えて構成されている。測定部11は、本体部10aに配設された接触子11aと、テストリード10bに配設されてケーブル11cを介して接続された接触子11bとを備えている。この測定部11は、後述するように、処理部16からの制御信号S2に従い、「電気的パラメータ」の一例である直流電圧値(DCV)、交流電圧値(ACV)および抵抗値(Ω)の3種類のうちのいずれかを測定し、その測定結果を処理部16に出力可能に構成されている。
【0032】
操作部12は、一例として、操作時間(押圧状態を維持する時間)に応じて、予め割り当てられた機能を実行するための操作スイッチとして機能するプッシュスイッチを備えて構成されている。具体的には、この測定装置1では、一例として、電源が遮断されている状態において1秒以上3秒未満の長押し操作を行うことで電源が投入され、電源が投入されている状態において1秒以上の長押し操作を行うことで電源が遮断され、電源が遮断されている状態において3秒以上の長押し操作を行うことで電源が投入された後に後述するペアリングモードに移行する機能が操作部12の操作スイッチに割り当てられている。インジケータ13は、例えばLEDで構成されて、処理部16の制御に従い、一例として、電源投入状態において点灯し、ペアリングモードに移行している状態において点滅する。
【0033】
無線通信部14は、一例として、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)規格に準じた近距離無線通信を実行可能に構成されて、後述するように、「測定装置用プログラム」がインストールされたスマートフォン2との間でペアリングされた状態において、スマートフォン2から送信された操作データD0を受信して処理部16に出力すると共に、処理部16の制御に従って表示用データD1をスマートフォン2に向けて送信する。有線通信部15は、一例として、USB規格に準じた接続コネクタ15a(図2参照)を備えて、この接続コネクタ15aに接続される信号ケーブルC(図1参照)を介してスマートフォン2と接続可能に構成されている。また、有線通信部15は、信号ケーブルCを介してスマートフォン2と接続された状態において、スマートフォン2から送信された操作データD0を受信して処理部16に出力すると共に、処理部16の制御に従って表示用データD1をスマートフォン2に向けて送信する。なお、この測定装置1では、一例として、接続コネクタ15aに信号ケーブルCが接続されたときに無線通信部14がオフ状態に移行し、接続コネクタ15aから信号ケーブルCが取り外されたときに無線通信部14がオン状態に移行するように構成されている。
【0034】
処理部16は、測定装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部16は、スマートフォン2から送信されて無線通信部14または有線通信部15によって受信された操作データD0に応じて測定部11を制御する(制御信号S2を出力する)ことにより、直流電圧値の測定処理、交流電圧値の測定処理、および抵抗体の抵抗値の測定処理のいずれかを実行させる。また、処理部16は、測定部11に実行させた測定処理の内容(「測定装置の動作状態」の一例)、および測定部11の測定結果をスマートフォン2に表示させるための表示用データD1を生成して、無線通信部14または有線通信部15を介してスマートフォン2に送信させる。
【0035】
さらに、処理部16は、「制御部」を構成し、測定装置1の電源を遮断する「電源遮断処理」を実行する。具体的には、処理部16は、無線通信部14または有線通信部15からスマートフォン2への表示用データD1の送信が可能な通信可能状態が維持されているかを監視すると共に、一例として、通信可能状態が解除されて表示用データD1を送信することができなくなった時点から30秒が経過したときに測定装置1の電源を自動的に遮断する処理を「電源遮断処理」として実行する。また、処理部16は、後述するようにして、スマートフォン2から「電源遮断処理」の実行を指示する操作データD0(「制御データ」の一例)」が送信されたときに、送信された操作データD0に従って測定装置1の電源を遮断する処理を「電源遮断処理」として実行する。
【0036】
一方、スマートフォン2は、上記したように、「測定装置用プログラム」がインストールされた既存の「スマートフォン」で構成され、図1に示すように、一例として、本体メモリ21、操作部22、表示部23、無線通信部24、有線通信部25、処理部26、ストレージメモリ装着部27、携帯電話通信部28およびGPSレシーバ29を備えて構成されている。なお、スマートフォン2における「携帯電話としての機能」や「PDAとしての機能」を実現するための構成要素については公知のため、図示および説明を省略する。本体メモリ21は、スマートフォン2の動作プログラムを記憶すると共に、利用者がインストールする各種プログラムを記憶する。操作部22は、図示しない電源スイッチなどの他に、表示部23の表面側に配設されたタッチパネルを備えて構成されて、これらの操作に応じた操作信号S1(「操作部から出力された出力信号」の一例)を処理部26に出力する。
【0037】
表示部23は、処理部26の制御に従って各種の表示画面を表示する。この場合、この測定システム100では、後述するようにスマートフォン2において「測定装置用プログラム」が実行されたときに、図2に示す測定処理用画面30が表示部23に表示される。この測定処理用画面30には、一例として、操作部22におけるタッチパネルの操作によって測定装置1に直流電圧値の測定処理を実行させるためのファンクション選択キー表示31a、タッチパネルの操作によって測定装置1に交流電圧値の測定処理を実行させるためのファンクション選択キー表示31b、タッチパネルの操作によって測定装置1に抵抗値の測定処理を実行させるためのファンクション選択キー表示31c、測定装置1の動作状態(実行される測定処理の内容)を示すファンクション表示32、測定装置1(測定部11)による測定結果を表示する測定結果表示33、タッチパネルの操作によって図示しないメニュー画面を表示部23に表示させるためのMenuキー表示34、およびタッチパネルの操作によって「測定装置用プログラム」を終了させるためのEndキー表示35が表示される。
【0038】
無線通信部24は、測定装置1の無線通信部14と同様にして、ブルートゥース規格に準じた近距離無線通信を実行可能に構成されて、後述するように、測定装置1との間でペアリングされた状態において、処理部26の制御に従って測定装置1に操作データD0を送信すると共に、測定装置1から送信された表示用データD1を受信して処理部26に出力する。有線通信部25は、測定装置1の有線通信部15と同様にして、USB規格に準じた接続コネクタを備えて、この接続コネクタに接続される信号ケーブルC(図1参照)を介して測定装置1や図示しない各種の外部装置と接続可能に構成されている。この有線通信部25は、信号ケーブルCを介して測定装置1と接続された状態において、処理部26の制御に従って測定装置1に操作データD0を送信すると共に、測定装置1から送信された表示用データD1を受信して処理部26に出力する。
【0039】
処理部26は、スマートフォン2を総括的に制御する。具体的には、処理部26は、「測定装置用プログラム」に従い、表示部23に測定処理用画面30を表示させる。また、処理部26は、操作部22(タッチパネル)から出力された操作信号S1に基づき、測定装置1を遠隔操作するための操作データD0を生成して、無線通信部24または有線通信部25を介して測定装置1に送信させる。さらに、処理部26は、測定装置1から送信されて無線通信部24または有線通信部25によって受信された表示用データD1に基づき、測定処理用画面30のファンクション表示32に測定装置1の動作状態(測定部11によって実行されている測定処理の内容)を表示させると共に、測定結果表示33に測定結果を数値表示させる。また、処理部26は、測定装置1から送信されて無線通信部24または有線通信部25によって受信された表示用データD1から測定結果を抽出して測定結果データD2としてストレージメモリM(または、本体メモリ21)に記録させる。さらに、処理部26は、Menuキー表示34の操作によって表示されるメニュー画面のなかからデータ送信処理を選択されたときに、ストレージメモリM(または、本体メモリ21)に記録されている測定結果データD2を、携帯電話通信網を介して任意のデータサーバに送信する処理を実行する。ストレージメモリ装着部27は、既存のメモリカードをストレージメモリMとして装着可能に構成されている。
【0040】
携帯電話通信部28は、処理部26の制御に従い、携帯電話の公衆回線網を構成する携帯電話基地局(以下、単に「基地局」ともいう)との間で各種のデータを送受信する。具体的には、携帯電話通信部28は、アクセス可能な複数の基地局の各位置に基づいて上記の公衆回線網の管理設備やいずれかの基地局において生成されて送信される現在位置情報Dp1を受信すると共に、通話時には、基地局との間で通話データを送受信する。また、携帯電話通信部28は、基地局を介してインターネット上の所定のサーバーに上記の測定結果データD2をアップロードしたり、所定のサーバーから「測定装置用プログラム」の更新データなどをダウンロードしたりする際に、これらのデータを送受信する。GPSレシーバ29は、GPS衛星からのGPS信号Sgを受信してスマートフォン2の現在位置を特定し、その特定結果を現在位置情報Dp2として処理部26に出力する。なお、GPSレシーバ29による現在位置の測位方法や現在位置情報Dp2の生成方法については公知のため、詳細な説明を省略する。この場合、このスマートフォン2では、GPSレシーバ29が「現在位置測位部」の1つを構成すると共に、携帯電話通信部28および処理部26が相まって「現在位置測位部」の他の1つを構成する。
【0041】
この測定システム100の使用に際しては、まず、スマートフォン2に「測定装置用プログラム」をインストールする。この「測定装置用プログラム」については、一例として、測定装置1の附属品としてインストール用光ディスクを提供したり、インターネット内の任意のサイトからダウンロードして使用するようにしたりすることができる。なお、「測定装置用プログラム」のインストール作業に関しては、「スマートフォン」に対する各種プログラムのインストール作業と同様のため、説明を省略する。また、「測定装置用プログラム」のインストール先については、本体メモリ21およびストレージメモリMのいずれでもよい。次いで、スマートフォン2と測定装置1との間においてブルートゥースのペアリングを行う。なお、ペアリング作業に関しては、公知の各種ブルートゥース機器のペアリング作業と同様のため、その説明を省略する。これにより、測定システム100を使用する準備が整う。
【0042】
一方、測定システム100を使用して測定対象についての測定処理を実行する際には、スマートフォン2の無線通信部24をオン状態にする(通信可能な状態とする)と共に「測定装置用プログラム」を実行する。この状態において操作部12を操作して測定装置1に電源を投入すると、測定装置1のインジケータ13が点灯すると共に、上記のペアリング作業によってペアリングされた無線通信部14,24が相互に通信可能な状態となる。この際に、測定装置1の処理部16は、無線通信部14,24の間のペアリングが維持されているか否か(スマートフォン2との通信が可能な状態が維持されているか否か)の監視を開始する。また、スマートフォン2においては、「測定装置用プログラム」の実行によって表示部23に測定処理用画面30が表示される。ここで、例えば直流電圧値の測定処理を実行する際には、スマートフォン2の測定処理用画面30におけるファンクション選択キー表示31aの表示部位にタッチする。この際には、操作部22(タッチパネル)からの操作信号S1に基づいて、処理部26が「直流電圧値の測定処理を実行する旨の操作」に対応する操作データD0を生成して、無線通信部24を介して測定装置1に送信させる。
【0043】
これに応じて、測定装置1では、処理部16が、無線通信部14によって受信された操作データD0に応じて測定部11に制御信号S2を出力することにより、直流電圧値の測定処理を開始させる。また、処理部16は、測定部11への制御信号S2の出力と並行して、直流電圧値の測定処理を測定部11に開始させた旨を示す表示用データD1(測定装置1の動作状態を示す表示用データD1)を生成して、無線通信部14を介してスマートフォン2に送信させる。この際には、スマートフォン2の処理部26が無線通信部24によって受信された表示用データD1に基づき、表示部23を制御して、測定処理用画面30のファンクション表示32に「Function:DCV」との文字列(測定装置1が「直流電圧値の測定モード」で動作している旨を示す情報)を表示させる。
【0044】
次いで、一例として、測定処理用画面30を視認可能にスマートフォン2を任意の場所に載置した状態において、測定装置1の本体部10aおよびテストリード10bを手に持って接触子11a,11bを測定対象の任意の測定ポイントに接触させる。この際には、測定部11によって両測定ポイントの間の直流電圧値が測定され、処理部16がその測定結果に基づいて表示用データD1(測定結果をスマートフォンの表示部23に表示させるための表示用データD1)を生成して、無線通信部14を介してスマートフォン2に送信させる。この際に、スマートフォン2では、処理部26が、無線通信部24によって受信された表示用データD1に基づき、表示部23を制御して、測定処理用画面30の測定結果表示33に測定値(この例では、直流電圧値)を数値表示させる。
【0045】
また、処理部26は、表示用データD1から測定結果(この例では、直流電圧値)を抽出して、その測定時刻に対応付けた測定結果データD2としてストレージメモリM(または、本体メモリ21)に記憶させる(「データ保存処理」の実行)。なお、測定結果データD2を記憶させる媒体やフォルダについては、一例として、測定処理用画面30におけるMenuキー表示34の表示部位にタッチすることで表示されるメニュー画面(図示せず)において関連項目を選択することで表示部23に表示される設定画面において予め登録しておく。これにより、直流電圧値の測定処理が完了する。
【0046】
この後、直流電圧値の測定に代えて、交流電圧値の測定処理や、抵抗値の測定処理を実行するときには、スマートフォン2の操作部22(タッチパネル)を操作してファンクション選択キー表示31b,31cのいずれかの表示部位にタッチする。これにより、上記のファンクション選択キー表示31aの表示部位にタッチして直流電圧値の測定処理を実行したときと同様にして、タッチした部位に応じた測定処理が実行され(図示せず)、測定結果が測定処理用画面30の測定結果表示33に表示されると共に、測定結果を示す測定結果データD2がストレージメモリM(または、本体メモリ21)に記憶される。
【0047】
また、この測定システム100では、医療施設内や空港設備内のように無線通信(電波を発射する通信)の利用を制限されている場所(無線通信部14,24間での無線通信を行わない方がよい場所)においても各種測定処理を実行することができるように構成されている。具体的には、まず、信号ケーブルCを介して測定装置1の有線通信部15(接続コネクタ15a)とスマートフォン2の有線通信部25とを相互に接続する。この際には、測定装置1において処理部16が無線通信部14をオフ状態に移行させると共に、無線通信部14,24の間のペアリングが維持されているか否かの監視に代えて、信号ケーブルCを介してのスマートフォン2との接続が維持されているか否か(スマートフォン2との通信が可能な状態が維持されているか否か)の監視を開始する。
【0048】
次いで、スマートフォン2の無線通信部24をオフ状態にすると共に「測定装置用プログラム」を実行する。これにより、上記の無線通信部14,24間において無線通信によって送受信された操作データD0および表示用データD1が有線通信部15,25間において送受信される。なお、スマートフォン2の操作方法、測定装置1による測定作業、スマートフォン2の表示部23に表示される測定処理用画面30、およびストレージメモリM(または、本体メモリ21)への測定結果データD2の記憶処理については、無線通信部14,24間において操作データD0や表示用データD1を送受信した上記の例と同様のため、説明を省略する。
【0049】
一方、この測定システム100では、上記の測定処理の終了後に測定装置1の電源を遮断し忘れたときに、電源遮断処理が実行されて、測定装置1の電力が不要に消費される事態を回避する構成が採用されている。具体的には、無線通信部14,24を使用した測定処理の後に、測定装置1の電源を遮断し忘れた状態(測定装置1の電源が投入された状態)において、測定装置1およびスマートフォン2の間のペアリングが解除されたとき、すなわち、測定装置1からスマートフォン2に表示用データD1を送信可能な通信可能状態が解除されたときに、処理部16は、30秒間待機してから、測定装置1の電源を遮断する。また、有線通信部15,25および信号ケーブルCを使用した測定処理の後に、測定装置1の電源を遮断し忘れた状態(測定装置1の電源が投入された状態)において、有線通信部15,25のいずれか(または、双方)と信号ケーブルCとの接続が断たれたとき、すなわち、測定装置1からスマートフォン2に表示用データD1を送信可能な通信可能状態が解除されたときに、処理部16は、30秒間待機してから、測定装置1の電源を遮断する。
【0050】
この場合、この測定システム100では、上記の例においてペアリングが解除されたとき、または有線通信部15,25と信号ケーブルCとの接続が絶たれたときに、直ちに電源を遮断する構成とは異なり、例えば、通信状態の一時的な悪化に起因して測定装置1とスマートフォン2とのペアリングが一時的に解除されたときや、誤って有線通信部15,25から信号ケーブルCを引き抜いてしまったときなどに、測定装置1の電源が遮断されて測定処理が中断される事態が回避される。さらに、この測定システム100では、スマートフォン2において「測定装置用プログラム」が終了させられて、測定装置1からスマートフォン2に表示用データD1を送信することができなくなったときにも、処理部16が、通信可能状態が解除されたと判別して電源遮断処理を実行する。
【0051】
また、この測定システム100では、無線通信部14,24を使用した測定処理の後に、測定装置1の電源を遮断し忘れた状態において、測定装置1およびスマートフォン2の間のペアリングが維持されているときや、有線通信部15,25および信号ケーブルCを使用した測定処理の後に、測定装置1の電源を遮断し忘れた状態において、有線通信部15,25と信号ケーブルCとの接続が維持されているときであっても、その状態の測定システム100(スマートフォン2)が、測定処理の開始時点におけるスマートフォン2の現在位置を中心とする予め設定された範囲を外れたときに、測定装置1において電源遮断処理が実行されて電源が遮断される構成が採用されている。なお、測定装置1が測定現場に位置させられた状態においてスマートフォン2だけが測定現場から離間させられたときには、上記の「通信可能状態」が解除されて測定装置1の電源が遮断される。したがって、測定処理の終了後に、測定装置1およびスマートフォン2の双方が測定現場から離間させられたときを例にして、測定システム100の動作を説明する。
【0052】
この測定システム100では、スマートフォン2の処理部26が、「測定装置用プログラム」の開始を指示されたときに、スマートフォン2の現在位置を特定して、特定した現在位置を、ストレージメモリ装着部27に装着されたストレージメモリM、および本体メモリ21のいずれか予め設定された一方に記憶させる。この場合、GPSレシーバ29に電源が供給されてGPSレシーバ29がGPS信号Sgに基づく現在位置の測位を実行可能な状態となっているときには、処理部26は、GPSレシーバ29から出力された現在位置情報Dp2に基づいてスマートフォン2の現在位置を特定する。また、GPSレシーバ29に電源が投入されていないときや、GPSレシーバ29によるGPS信号Sgの受信が困難なとき(GPSレシーバ29による現在位置の測位が困難なとき)には、処理部26は、携帯電話通信部28を介して基地局からの現在位置情報Dp1を取得して、取得した現在位置情報Dp1に基づいてスマートフォン2の現在位置を特定する。
【0053】
また、処理部26は、「測定装置用プログラム」に従い、前述した測定処理の実行中に、GPSレシーバ29から出力された現在位置情報Dp2、または、携帯電話通信部28を介して受信した現在位置情報Dp1に基づき、スマートフォン2の現在位置を所定時間間隔(一例として、1分間隔)で特定する。さらに、処理部26は、現在位置を特定する都度、特定した現在位置が、測定処理の開始時に特定したスマートフォン2の現在位置を中心とする予め設定された範囲(一例として、半径50mの範囲)から外れているか否か(スマートフォン2が予め設定された範囲の外に移動したか否か)を判別する処理を、測定装置1から送信された表示用データD1に基づいて測定処理用画面30を表示させる処理、および操作部22の操作に応じて出力される操作データD0を測定装置1に送信する処理と並行して実行する。
【0054】
一方、測定システム100による測定処理が完了した後に、測定装置1の電源を遮断し忘れて(測定装置1の電源を投入したまま)、測定装置1およびスマートフォン2を携帯して測定現場を離れたときには、スマートフォン2が、予め設定された範囲の外に移動させられる。この際には、処理部26が、GPSレシーバ29から出力された現在位置情報Dp2、または、携帯電話通信部28を介して受信した現在位置情報Dp1に基づいて特定した現在位置が設定された範囲を外れたと判別し、一例として、図3に示すように、「測定装置をOFFにします。宜しいですか?」との電源遮断処理開始メッセージ36を測定処理用画面30(表示部23)に表示させると共に、「現在位置が設定された範囲を外れた時点からの経過時間」の計時を開始する。
【0055】
この際に、本例とは相違するが、例えば、GPSレシーバ29による測位の誤りや、基地局からの誤った現在位置を示す現在位置情報Dp1の送信に起因して、スマートフォン2が測定現場を離れていない(設定された範囲内にスマートフォン2が存在している)にも関わらず電源遮断処理開始メッセージ36が表示されたときには、利用者は、操作部22を操作して、「キャンセル」を選択する。これにより、電源遮断処理開始メッセージ36が消去されると共に、後述するように、電源遮断処理の実行を指示する操作データD0が測定装置1に送信されることなく、測定処理が継続される。
【0056】
一方、電源遮断処理開始メッセージ36の表示から30秒が経過するまでに「キャンセル」が選択されなかったとき、電源遮断処理開始メッセージ36の表示から30秒が経過する以前に「OK」が選択されたとき、並びに電源遮断処理開始メッセージ36の表示から30秒が経過するまでに「OK」および「キャンセル」のいずれも選択されなかったときのいずれかのときには、処理部26は、測定装置1に電源遮断処理を実行を指示する操作データD0を生成して、無線通信部24またはスマートフォン25を介して測定装置1に送信させる。これに応じて、測定装置1では、処理部16が電源遮断処理を実行して、測定装置1の電源を遮断する。また、スマートフォン2は、電源遮断処理の実行を指示する操作データD0を測定装置1に送信した後に、「測定装置用プログラム」を終了する。これにより、測定処理の終了後に測定装置1の電源を遮断し忘れたとしても、測定システム100が測定現場を離れることで、測定装置1の電源が自動的に遮断されて、不要な電力の消費が回避される。
【0057】
また、この測定システム100では、スマートフォン2のストレージメモリM(または、本体メモリ21)に記憶させた測定結果データD2を、携帯電話通信部28から、携帯電話通信網やインターネット通信網を介して、予め設定したデータサーバに転送することができる。なお、転送先のデータサーバについては、一例として、測定処理用画面30におけるMenuキー表示34の表示部位にタッチすることで表示されるメニュー画面(図示せず)において関連項目を選択することで表示部23に表示される設定画面において予め登録しておく。また、測定結果データD2の転送に際しては、Menuキー表示34の表示部位にタッチすることで表示されるメニュー画面(図示せず)において関連項目を選択することで、処理部26がストレージメモリMから測定結果データD2を読み出して、上記の各通信網を介して、登録されているデータサーバに送信する。なお、電子メールの添付ファイルとして測定結果データD2をスマートフォン2から任意のメールサーバに転送することもできる。
【0058】
このように、この測定装置1では、測定対象についての「電気的パラメータ(本例では、直流電圧値、交流電圧値および抵抗値)」を測定する測定部11と、測定装置1の動作状態、および測定部11の測定結果をスマートフォン2の表示部23に表示させるための表示用データD1を生成する処理部16と、処理部16の制御に従ってスマートフォン2に表示用データD1を送信する無線通信部14とを備えて構成されている。また、この測定システム100では、測定装置1と、測定装置1から送信された表示用データD1に基づいて測定装置1の動作状態および測定結果を表示部23に表示させる「測定装置用プログラム」がインストールされたスマートフォン2とを備えて構成されている。
【0059】
したがって、この測定装置1および測定システム100によれば、動作状態や測定結果を表示するための表示部が測定装置1に存在しなくても、無線通信部14から送信した表示用データD1に基づいて測定装置1の動作状態や測定部11による測定結果をスマートフォン2の表示部23に表示させることができるため、測定結果の読み取りが困難となる事態を招くことなく、表示部を不要として、測定装置1を十分に小形化および軽量化することができる。また、「測定装置」とは別体に専用の「表示装置」を設ける構成とは異なり、「スマートフォン」を所有している者にとっては、測定システム100を安価に構築することができる。さらに、無線通信によって測定装置1からスマートフォン2に表示用データD1を送信することにより、通信用のケーブルが絡み合うことがないため、測定装置1やスマートフォン2の取り扱いが十分に容易となる。加えて、他の通信機器を別途用意することなく、スマートフォン2が接続可能な各種通信網(携帯電話通信網等)を利用して「測定結果(本例では、測定結果データD2)」を任意の場所へ送信することができる。
【0060】
また、この測定装置1では、処理部16が、スマートフォン2から送信された操作データD0に応じて測定部11を制御して「電気的パラメータ」を測定させる。また、この測定システム100では、測定装置1と、操作部22から出力された操作信号S1に基づいて操作データD0を生成して測定装置1に送信すると共に測定装置1から送信された表示用データD1に基づいて測定装置1の動作状態および測定結果を表示部23に表示させる測定装置用プログラムがインストールされたスマートフォン2とを備えて構成されている。したがって、この測定装置1および測定システム100によれば、電源スイッチ等の必要最低限の操作スイッチを除いて、測定処理用の操作スイッチが不要となる分だけ、測定装置1を一層小形化および軽量化することができる。
【0061】
さらに、この測定装置1では、処理部16の制御に従って信号ケーブルCを介してスマートフォン2に表示用データD1を送信する有線通信部15を備えている。また、この測定システム100(測定装置1)では、処理部16の制御に従って信号ケーブルCを介してスマートフォン2に表示用データD1を送信すると共に信号ケーブルCを介してスマートフォン2からの操作データD0を受信する有線通信部15を備えている。したがって、この測定装置1および測定システム100によれば、無線通信の実行を制限されている場所においても信号ケーブルCを介して表示用データD1等を測定装置1からスマートフォン2に送信することができる。また、一般的には、無線通信よりも有線通信の方が測定装置1やスマートフォン2における電力消費量が少なくて済むため、測定装置1やスマートフォン2のバッテリ残量が少ないときに、無線通信しつつ測定処理を実行するよりも長い時間に亘って測定処理を実行することができる。
【0062】
また、この測定装置1では、処理部16が、スマートフォン2から電源遮断処理の実行を指示する操作データD0が送信されたときに操作データD0に従って電源遮断処理を実行して測定装置1の電源を遮断する。また、この測定システム100では、測定装置1と、操作部22から出力された操作信号S1に基づいて操作データD0を生成して測定装置1に送信すると共に測定装置1から送信された表示用データD1に基づいて測定装置1の動作状態および測定結果を表示部23に表示させ、かつ、携帯電話通信部28を介して受信した現在位置情報Dp1、またはGPSレシーバ29から出力された現在位置情報Dp2に基づいて特定した現在位置が予め設定された範囲を外れたときに操作データD0を測定装置1に送信して電源遮断処理を実行させる「測定装置用プログラム」がインストールされたスマートフォン2とを備えて構成されている。
【0063】
したがって、この測定装置1および測定システム100によれば、測定結果の読み取りが困難となる事態を招くことなく、表示部を不要として、測定装置1を十分に小形化および軽量化することができると共に、電源スイッチ等の必要最低限の操作スイッチを除いて、測定処理用の操作スイッチが不要となる分だけ、測定装置1を一層小形化および軽量化することができるだけでなく、測定処理の終了後に測定装置1の電源を遮断し忘れたとしても、その状態の測定システム100を携行して測定現場を離れたとき(スマートフォン2が予め設定された範囲外に移動したとき)に、測定装置1の電源が遮断されるため、測定処理を実行していない測定装置1によって不要な電力が消費される事態を確実かつ容易に回避することができる。
【0064】
さらに、この測定装置1によれば、スマートフォン2への表示用データD1の送信が可能な通信可能状態が解除されて表示用データD1を送信できなくなったときに電源遮断処理を実行することにより、測定処理の終了後に測定装置1の電源を遮断し忘れたとしても、測定装置1からスマートフォン2に表示用データD1を送信することができなくなったとき(通信可能状態が解除されたとき)に、測定装置1の電源が遮断されるため、スマートフォン2に表示用データD1に基づく測定処理用画面30を表示させていないとき、すなわち、測定処理を実行していないときに、測定装置1によって不要な電力が消費される事態を確実かつ容易に回避することができる。
【0065】
また、この測定システム100によれば、測定装置1に電源遮断処理を実行させるための操作データD0を送信した後に測定装置用プログラムを終了するようにプログラムされたプログラムを「測定装置用プログラム」としてスマートフォン2にインストールしたことにより、測定装置1の電源を遮断させたとき、すなわち、測定処理を終了したときに、スマートフォン2において継続して実行させる必要がなくなった測定装置用プログラムを、終了操作を行うことなく自動的に終了させることができるため、測定装置用プログラムの不要な実行によってスマートフォン2の電力が消費される事態を回避することがきる。
【0066】
また、この測定システム100によれば、表示用データD1から測定結果を抽出して測定結果データD2としてストレージメモリM(または、本体メモリ21)に記憶させる「データ保存処理」を実行可能なプログラムを「測定装置用プログラム」としてスマートフォン2にインストールしたことにより、測定装置1内に大容量のメモリを搭載することなく、測定部11による測定結果をスマートフォン2においてストレージメモリM(または、本体メモリ21)に記憶させて保存することができる。これにより、小さなメモリを搭載して測定装置1を製造できるため、測定装置1の製造コストを十分に低減することができる。
【0067】
なお、測定装置および測定システムの構成は、上記の測定装置1や、これを備えた測定システム100の構成に限定されない。例えば、ブルートゥース規格に準じた近距離無線通信を実行可能な無線通信部14を備えた測定装置1を例に挙げて説明したが、この構成に代えて、または、この構成に加えて、IrDA規格に準じた赤外線通信を実行可能な無線通信部(図示せず)を備えて「測定装置」を構成することもできる。このような構成を採用した場合においても、上記の測定装置1および測定システム100と同様の効果を奏することができる。また、赤外線通信によって操作データD0や表示用データD1を送受信する構成を採用した場合には、電波を発射する無線通信の利用を制限されている場所においても、操作データD0や表示用データD1を無線通信で送受信することができる。
【0068】
また、スマートフォン2の操作によってスマートフォン2から操作データD0を測定装置1に送信して測定装置1による測定処理を実行する例について説明したが、測定処理の実行に必要な操作スイッチを「測定装置」に設けると共に(図示せず)、「スマートフォン」から測定装置1に操作データD0を送信させずに「測定装置」の操作スイッチを操作して測定処理を実行し、その測定結果に対応する表示用データD1を「スマートフォン」に送信して測定結果を表示部23に表示させる構成(「測定装置」による測定処理を「スマートフォン」の操作によって実行しない構成)を採用することもできる。このような構成を採用した場合においても、測定結果を表示するための表示部が「測定装置」に不要となる分だけ、「測定装置」を十分に小形化および軽量化することができる。
【0069】
さらに、スマートフォン2において表示用データD1から抽出した測定結果を測定結果データD2としてストレージメモリM等に記憶させたり、ストレージメモリM等に記憶させた測定結果データD2をデータサーバ等に送信することができる「測定装置用プログラム」をスマートフォン2にインストールした例について説明したが、測定結果データD2の生成およびストレージメモリM等への記憶を実行することなく、単に、測定結果を「表示部」に表示させる処理だけを実行する「測定装置用プログラム」をスマートフォン2にインストールすることもできる。また、本体部10aおよびテストリード10b(接触子11a,11b)を備えた測定装置1を例に挙げて説明したが、「測定装置」はこれに限定されず、本体部に設けられた1つの接触子と接地電位との間の電圧値や抵抗値を測定する構成の測定装置(本体部10aとは別体のテストリード10bを備えていない測定装置)に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 測定システム
1 測定装置
2 スマートフォン
11 測定部
14,24 無線通信部
15,25 有線通信部
15a 接続コネクタ
16,26 処理部
21 本体メモリ
22 操作部
23 表示部
27 ストレージメモリ装着部
28 携帯電話通信部
29 GPSレシーバ
30 測定処理用画面
31a〜31c ファンクション選択キー表示
32 ファンクション表示
33 測定結果表示
34 Menuキー表示
35 Endキー表示
36 電源遮断処理開始メッセージ
C 信号ケーブル
D0 操作データ
D1 表示用データ
D2 測定結果データ
Dp1,Dp2 現在位置情報
M ストレージメモリ
S1 操作信号
S2 制御信号
Sg GPS信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的パラメータを測定する測定部を備えた測定装置であって、
当該測定装置の動作状態、および前記測定部の測定結果をスマートフォンの表示部に表示させるための表示用データを生成する処理部と、
前記処理部の制御に従って前記スマートフォンに前記表示用データを送信する無線通信部とを備えている測定装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記スマートフォンから送信された操作データに応じて前記測定部を制御して前記電気的パラメータを測定させる請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
信号ケーブルを介して前記スマートフォンに接続可能に構成されて前記処理部の制御に従って当該信号ケーブルを介して前記スマートフォンに前記表示用データを送信する有線通信部を備えている請求項1記載の測定装置。
【請求項4】
信号ケーブルを介して前記スマートフォンに接続可能に構成されて前記処理部の制御に従って当該信号ケーブルを介して前記スマートフォンに前記表示用データを送信すると共に当該信号ケーブルを介して当該スマートフォンからの前記操作データを受信する有線通信部を備えている請求項2記載の測定装置。
【請求項5】
当該測定装置の電源を遮断する電源遮断処理を実行する制御部を備え、
前記制御部は、前記スマートフォンから前記電源遮断処理の実行を指示する制御データが送信されたときに当該制御データに従って当該電源遮断処理を実行する請求項1または3記載の測定装置。
【請求項6】
当該測定装置の電源を遮断する電源遮断処理を実行する制御部を備え、
前記制御部は、前記スマートフォンから前記電源遮断処理の実行を指示する制御データが送信されたときに当該制御データに従って当該電源遮断処理を実行する請求項2または4記載の測定装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記スマートフォンへの前記表示用データの送信が可能な通信可能状態が解除されて当該表示用データを送信できなくなったときに前記電源遮断処理を実行する請求項5または6記載の測定装置。
【請求項8】
請求項1または3記載の測定装置と、当該測定装置から送信された前記表示用データに基づいて当該測定装置の前記動作状態および前記測定結果を前記表示部に表示させる測定装置用プログラムがインストールされた前記スマートフォンとを備えて構成されている測定システム。
【請求項9】
請求項2または4記載の測定装置と、操作部から出力された出力信号に基づいて前記操作データを生成して前記測定装置に送信すると共に当該測定装置から送信された前記表示用データに基づいて当該測定装置の前記動作状態および前記測定結果を前記表示部に表示させる測定装置用プログラムがインストールされた前記スマートフォンとを備えて構成されている測定システム。
【請求項10】
請求項5記載の測定装置と、現在位置を測位して現在位置情報を出力する現在位置測位部を有する前記スマートフォンとを備えて構成された測定システムであって、
前記スマートフォンは、前記測定装置から送信された前記表示用データに基づいて当該測定装置の前記動作状態および前記測定結果を前記表示部に表示させ、かつ、前記現在位置測位部から出力された前記現在位置情報に基づいて特定した現在位置が予め設定された範囲を外れたときに前記制御データを前記測定装置に送信して前記電源遮断処理を実行させる測定装置用プログラムがインストールされている測定システム。
【請求項11】
請求項6記載の測定装置と、現在位置を測位して現在位置情報を出力する現在位置測位部を有する前記スマートフォンとを備えて構成された測定システムであって、
前記スマートフォンは、操作部から出力された出力信号に基づいて前記操作データを生成して前記測定装置に送信すると共に当該測定装置から送信された前記表示用データに基づいて当該測定装置の前記動作状態および前記測定結果を前記表示部に表示させ、かつ、前記現在位置測位部から出力された前記現在位置情報に基づいて特定した現在位置が予め設定された範囲を外れたときに前記制御データを前記測定装置に送信して前記電源遮断処理を実行させる測定装置用プログラムがインストールされている測定システム。
【請求項12】
前記スマートフォンには、前記測定装置用プログラムとして、前記測定装置に前記電源遮断処理を実行させるための前記制御データを送信した後に当該測定装置用プログラムを終了するようにプログラムされたプログラムがインストールされている請求項10または11記載の測定システム。
【請求項13】
前記スマートフォンには、前記測定装置用プログラムとして、前記表示用データから前記測定結果を抽出してストレージメモリに記憶させるデータ保存処理を実行可能なプログラムがインストールされている請求項5から12のいずれかに記載の測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−160174(P2012−160174A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−288387(P2011−288387)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】