説明

測定装置

【課題】検体物質への泡の付着による測定精度の低下を抑制することができる測定装置を提供する。
【解決手段】
ピペットチップCPの排出口を測定チップ50に設けられた供給口に挿入させて貯留された溶液を排出口から供給口に移動させることにより液体流路55に対して溶液を供給する際に、溶液を、液体流路55内において排出口の先端部に形成された空気層よりも溶液が速く移動して当該溶液が当該空気層の下側を流れる第1速度で移動させた後に、第1速度よりも遅い第2速度で移動させる速度パターンを含んだ所定の速度パターンで溶液を排出口から供給口に所定期間だけ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に係り、特に、液体が流通可能に液体流路が形成され、当該液体流路内の底面に測定対象とする検体物質が付着された測定チップを備えた測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体が流通可能に液体流路が形成され、当該液体流路内の底面に測定対象とする検体物質が付着された測定チップの前記液体流路に対して、様々な溶液を各々個別に供給して検体物質の反応状態を検出することにより、当該検体物質の特性を測定する測定装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体流路に様々な溶液を各々個別に供給し、検体物質が付着した付着部分の界面に対して光ビームを種々の角度で入射させて界面で全反射した光ビームの反射角度毎の光強度分布を検出し、検出した光強度分布から表面プラズモン共鳴現象(Surface Plasmon Resonance:SPR)による全反射減衰の発生によって暗線が発生した反射角度を検出することにより、検体物質の特性を測定する測定装置が開示されている。
【0004】
ところで、この種の測定装置では、図15に示すように、液体流路内の溶液を他の種類の溶液に入れ替えてようとして溶液を流した場合、液体流路内における溶液の速度分布は、層流状態となり、液体流路内の壁面に近いほど溶液の速度が遅くなる。
【0005】
このため、この種の測定装置では、液体流路内の溶液を入れ替える場合に、図16に示すように、一定速度で所定期間(例えば、5秒)だけ溶液を流すことによって、液体流路内の溶液の入れ替えを行っている。
【特許文献1】特開2006−98369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、図17(A)〜(C)に示すように、2本のピペットを用いて、溶液Bが貯留された一方のピペットから溶液Bを液体流路に上記一定速度で上記所定期間だけ供給すると共に、他方のピペットで液体流路から溶液Aを吸引させて液体流路内の溶液を溶液Aから溶液Bに入れ替えるものとした場合、ピペット先端部には空気を入れない方式であって、多くの場合は空気層は混入しないが、何回もの送液をおこなっている間には、溶液の表面張力などの影響により一方のピペットの先端部に空気層が形成されてしまい、当該空気層が液体流路内に混入して検体物質に泡が付着して測定装置の測定精度が低下してしまう場合がある、という問題点があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、検体物質への泡の付着による測定精度の低下を抑制することができる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、液体を供給するための供給口と当該供給口より供給された液体が流れる液体流路が設けられ、当該液体流路内の底面に測定対象とする検体物質が付着される流路部材と、前記検体物質の特性の測定に用いる溶液を貯留すると共に、当該溶液を排出するための排出口が前記供給口に挿入可能に形成された貯留手段と、前記排出口を前記供給口に挿入させて前記貯留手段に貯留された前記溶液を前記排出口から前記供給口に移動させることにより前記液体流路に対して前記溶液を供給する供給手段と、前記液体流路に対して前記溶液を供給する際に、前記溶液を、前記液体流路内において、前記排出口を前記供給口に挿入した際に前記排出口の先端部に形成された空気層よりも前記溶液が速く移動して当該溶液が当該空気層の下側を流れる第1速度で移動させた後に、前記第1速度よりも遅い第2速度で移動させる速度パターンを含んだ所定の速度パターンで前記溶液を前記排出口から前記供給口に所定期間だけ移動させるように前記供給手段を制御する制御手段と、を備えている。
【0009】
請求項1記載の発明は、流路部材に液体を供給するための供給口と当該供給口より供給された液体が流れる液体流路が設けられており、当該流路部材にの液体流路内の底面に測定対象とする検体物質が付着される。そして、貯留手段により、前記検体物質の特性の測定に用いる溶液が貯留されると共に、当該貯留手段に当該溶液を排出するための排出口が前記供給口に挿入可能に形成されており、供給手段により、排出口を供給口に挿入させて貯留手段に貯留された溶液を排出口から供給口に移動させることにより液体流路に対して溶液が供給される。
【0010】
そして、本発明は、制御手段により、液体流路に対して溶液を供給する際に、溶液を、液体流路内において、排出口を供給口に挿入した際に排出口の先端部に形成された空気層よりも溶液が速く移動して当該溶液が当該空気層の下側を流れる第1速度で移動させた後に、第1速度よりも遅い第2速度で移動させる速度パターンを含んだ所定の速度パターンで溶液を排出口から供給口に所定期間だけ移動させるように供給手段が制御される。
【0011】
このように請求項1記載の発明によれば、排出口を供給口に挿入させて貯留された溶液を排出口から供給口に移動させることにより液体流路に対して溶液を供給する際に、溶液を、液体流路内において排出口の先端部に形成された空気層よりも溶液が速く移動して当該溶液が当該空気層の下側を流れる第1速度で移動させた後に、第1速度よりも遅い第2速度で移動させる速度パターンを含んだ所定の速度パターンで溶液を排出口から供給口に所定期間だけ移動させるように制御しているので、検体物質への泡の付着による測定精度の低下を抑制することができる。
【0012】
なお、本発明は、請求項2記載の発明ように、前記排出口から前記溶液を前記第1速度で移動させる期間が、少なくとも前記空気層が前記液体流路内の前記検体物質の付着領域を通過する期間であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、請求項3記載の発明ように、前記所定期間が、前記液体流路内の底面近傍の溶液が当該液体流路の断面の中央部へ拡散するのに要する期間であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、排出口を供給口に挿入させて貯留された溶液を排出口から供給口に移動させることにより液体流路に対して溶液を供給する際に、溶液を、液体流路内において排出口の先端部に形成された空気層よりも溶液が速く移動して当該溶液が当該空気層の下側を流れる第1速度で移動させた後に、第1速度よりも遅い第2速度で移動させる速度パターンを含んだ所定の速度パターンで溶液を排出口から供給口に所定期間だけ移動させるように制御しているので、検体物質への泡の付着による測定精度の低下を抑制することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
本実施の形態に係る測定装置としてのバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴現象を利用して、タンパクTaと試料Aとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0017】
図1〜図4に示すように、バイオセンサー10は、下部筐体11及び上部筐体12を備えている。上部筐体12は、断熱部材で構成されており、バイオセンサー10の上半分全体を覆っている。上部筐体12内と、外部及び下部筐体11内との間は、断熱されている。上部筐体12の手前側は、上方へ開放可能とされており、把手13が取り付けられている。上部筐体12の外側には、ディスプレイ14及び入力部16が設置されている。
【0018】
図2は、上部筐体12を取り去って、図1の奥側からみたバイオセンサー10の内部を示す図であり、図3は筐体の内部を上面からみた図、図4は図2の手前側からみた内部の側面図である。
【0019】
上部筐体12の内部には、分注ヘッド20、測定部30、試料ストック部40、ピペットチップストック部42、バッファストック部44、保冷部46、測定チップストック部48、ラジエータ60、ラジエータ送風ファン62、水平方向送風ファン64が備えられている。
【0020】
試料ストック部40は、試料積層部40A及び試料セット部40Bで構成されている。試料積層部40Aには、個々のセルに検体物質の特性の測定に用いる試料として各々異なるアナライト溶液をストックする試料プレート40Pが、Z方向(鉛直方向)に積層されて収容されている。試料セット部40Bには、1枚の試料プレート40Pが、図示しない搬送機構により試料積層部40Aから搬送されてセットされる。
【0021】
ピペットチップストック部42は、ピペットチップ積層部42A及びピペットチップセット部42Bで構成されている。ピペットチップ積層部42Aには、複数のピペットチップを保持するピペットチップストッカー42Pが、Z方向に積層されて収容されている。ピペットチップセット部42Bには、1枚のピペットチップストッカー42Pが、図示しない搬送機構によりピペットチップ積層部42Aから搬送されてセットされる。
【0022】
バッファストック部44は、ボトル収容部44A及びバッファ供給部44Bで構成されている。ボトル収容部44Aには、測定の基準となる基準試料としてのバッファー液が貯留された複数本のボトル44Cが収容されている。バッファ供給部44Bには、バッファプレート44Pがセットされている。バッファプレート44Pは、複数筋に区画されており、各々の区画には濃度の異なるバッファー液が貯留されている。また、バッファプレート44Pの上部には、分注ヘッド20のアクセス時にピペットチップCPが挿入される孔Hが構成されている。バッファプレート44Pへは、ホース44Hによりボトル44Cからバッファ液が供給される。
【0023】
バッファ供給部44Bの隣には、補正用プレート45が配置され、その隣に保冷部46が配置されている。補正用プレート45は、バッファー液の濃度調整を行うためのプレートであり、マトリクス状に複数セルが構成されている。保冷部46には、冷蔵の必要な試料が配置される。保冷部は低温とされており、この上で試料は低温状態に保たれる。
【0024】
測定チップストック部48には、測定チップ収容プレート48Pがセットされている。測定チップ収容プレート48Pには、測定チップ50が複数本収納されている。
【0025】
測定チップストック部48と測定部30との間には、測定チップ搬送機構49が備えられている。測定チップ搬送機構49は、測定チップ50を両側から挟み込んで保持する保持アーム49A、回転により保持アーム49AをY方向に移動させるボールねじ49B、Y方向に配置され、測定チップ50が載せられる搬送レール49C、を含んで構成されている。測定の際には、1本の測定チップ50が測定チップ搬送機構49により測定チップ収容プレート48Pから搬送レール49C上に載せられ、保持アーム49Aにより挟持されつつ測定部30へ移動してセットされる。
【0026】
測定チップ50は、図5及び図6に示すように、誘電体ブロック52、流路部材54、及び、保持部材56、で構成されている。
【0027】
誘電体ブロック52は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部52A、及び、プリズム部52Aの両端部にプリズム部52Aと一体的に形成された被保持部52Bを備えている。プリズム部52Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、金属性の薄膜57が形成されている。誘電体ブロック52は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部52Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から薄膜57との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0028】
薄膜57の表面には、測定対象とする検体物質としてタンパクTaを薄膜57上に付着させるための、リンカー層57Aが形成されている。このリンカー層57A上にタンパクTaが付着される。
【0029】
プリズム部52Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材56と係合される係合凸部52Cが形成されている。また、プリズム部52Aの下側には、側端辺に沿って搬送レール49Cと係合されるフランジ部52Dが形成されている。
【0030】
図6に示すように、流路部材54は、6個のベース部54Aを備え、ベース部54Aの各々に4本の円筒部材54Bが立設されている。ベース部54Aは、3個のベース部54A毎に、立設された円筒部材54Bのうちの1本の上部が連結部材54Dによって連結されている。流路部材54は、軟質で弾性変形可能な材料、例えば非晶質ポリオフィレンエラストマーで構成されている。このように、流路部材54を弾性変形可能な材料で構成することにより、誘電体ブロック52との密着性を高め、誘電体ブロック52との間に構成される液体流路55の密閉性を確保している。
【0031】
保持部材56は、長尺とされ、上面部材56A及び2枚の側面板56Bが蓋状に構成された形状とされている。側面板56Bには、誘電体ブロック52の係合凸部52Cと係合される係合孔56C、及び、上記光ビームの光路に対応する部分に窓56Dが形成されている。保持部材56は、係合孔56Cと係合凸部52Cとが係合されて、誘電体ブロック52に取り付けられる。流路部材54は、保持部材56と一体成形されており、保持部材56と誘電体ブロック52の間に配置される。上面部材56Aには、流路部材54の円筒部材54Bに対応する位置に、受部59が形成されている。受部59は略円筒状とされている。
【0032】
ベース部54Aには、図7に示すように、底面側に略S字状の2本の流路溝54Cが形成されている。流路溝54Cは、端部の各々が1の円筒部材54Bの中空部と連通されている。ベース部54Aは、底面が誘電体ブロック52の上面と密着され、流路溝54Cと誘電体ブロック52の上面との間に構成される空間と前記中空部とで、液体流路55が構成される。なお、本実施の形態に係る円筒部材54Bの中空部の流路の高さは200〜500μmであり、液体流路55の容量は、7μlとされている。
【0033】
1個のベース部54Aには、2本の液体流路55が構成される。各々の液体流路55において、円筒部材54Bの上端面に液体流路55の出入口53が構成される。
【0034】
ここで、2本の液体流路55のうち、1本は測定流路55Aとして用いられ、他の1本は参照流路55Rとして用いられる。測定流路55Aの薄膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaを付着させ、参照流路55Rの薄膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaを付着させない状態で測定が行われる。
【0035】
測定流路55A及び参照流路55Rには、図7に示すように、各々光ビームL1、L2が入射される。光ビームL1、L2は、図8に示すように、ベース部54Aの中心線M上に配置されるS字の屈曲部分に照射される。以下、測定流路55Aにおける光ビームL1の照射領域を測定領域E1、参照流路55Rにおける光ビームL2の照射領域を参照領域E2という。参照領域E2は、タンパクTaが付着した測定領域E1から得られるデータを補正するための測定を行う領域である。
【0036】
図9には、分注ヘッド20の詳細な構成が示されている。
【0037】
分注ヘッド20は、12本の分注管20Aを備えている。各分注管20Aは、X方向と直交する矢印Y方向に沿って1列に配置されるように保持部材20Bにより保持されている。分注管20Aは、隣り合う2本で一対とされ、一方が液体供給用、他方が液体排出用とされている。分注管20Aの先端部には、ピペットチップCPが取り付けられる。ピペットチップCPは、ピペットチップストッカー42Pにストックされており、必要に応じて交換可能とされている。
【0038】
図2に示すように、分注ヘッド20は、上部筐体12内の上部に設けられ、水平駆動機構22により矢印X方向に移動可能とされている。水平駆動機構22は、ボールねじ22A、モータ22B、ガイドレール22Cにより構成されている。ボールねじ22A及びガイドレール22Cは、X方向に配置されている。ガイドレール22Cは平行に2本配置され、そのうちの1本はボールねじ22Aの下側に所定間隔離れて配置されている。分注ヘッド20は、モータ22Bの回転駆動によってボールねじ22Aが回転することにより、ガイドレール22Cに沿ってX方向に移動される。このX方向移動により、分注ヘッド20は、保冷部46、補正用プレート45、バッファ供給部44B(バッファプレート44P)、測定部30(測定チップ50)、試料セット部40B(試料プレート40P)、及びピペットチップセット部42B(ピペットチップストッカー42P)に対向する位置にそれぞれ移動可能とされている。
【0039】
また、図9に示すように、分注ヘッド20には、分注ヘッド20を矢印Z方向に移動させる鉛直駆動機構24が設けられている。鉛直駆動機構24は、モータ24A及びZ方向に配置された駆動軸24Bを含んで構成され、モータ24Aの回転駆動によって駆動軸24Bが回転することにより、分注ヘッド20をZ方向に移動させる。このZ方向移動により、分注ヘッド20は、ピペットチップセット部42Bにセットされたピペットチップストッカー42P、試料セット部40Bにセットされた試料プレート40P、バッファ供給部44Bにセットされたバッファプレート44P、補正用プレート45、保冷部46にセットされたプレート、及び測定部30にセットされた測定チップ50などにアクセス可能となっている。
【0040】
図10に示されるように、分注ヘッド20には、吸排駆動部26が接続されている。吸排駆動部26は、第1ポンプ27、第2ポンプ28を備えている。第1ポンプ27及び第2ポンプ28は、前述の一対の分注管20Aに各々対応して設けられている。第1ポンプ27は、シリンジポンプで構成されており、第1シリンダ27A、第1ピストン27B、及び、第1ピストン27Bを駆動させる第1モータ27Cを備えている。第1シリンダ27Aは、配管27Hを介して分注ヘッド20と接続されている。また、第2ポンプ28も、シリンジポンプで構成されており、第2シリンダ28A、第2ピストン28B、及び、第2ピストン28Bを駆動させる第2モータ28Cを備えている。第2シリンダ28Aは、配管28Hを介して分注ヘッド20と接続されている。
【0041】
分注ヘッド20は、第1モータ27C及び第2モータ28Cの回転駆動が各々制御されて第1ピストン27B及び第2ピストン28Bの駆動が制御されることにより、吸引、排出する溶液の液量、及び吸引、排出する際の溶液の速度が調整可能とされている。
【0042】
一方、図4に示すように、測定部30は、光学定盤32、光出射部34、受光部36を含んで構成されている。光学定盤32には、側方向から見て、上部中央の水平平面で構成される上部台32A、上部台32Aから離れる方向に向かって低くなる出射傾斜部32B、上部台32Aを挟んで出射傾斜部32Bと逆側に配置される受光傾斜部32Cが形成されている。上部台32Aには、Y方向沿って測定チップ50がセットされるものとされている。光学定盤32の出射傾斜部32Bには、測定チップ50へ向かって光ビームL1、L2を出射する光出射部34が設置されている。また、受光傾斜部32Cには、受光部36が設置されている。光学定盤32の隣には、光学定盤32を冷却する水冷ジャケット32Jが設けられている。
【0043】
図11に示すように、光出射部34には、光源34A、レンズユニット34Bが備えられている。また、受光部36には、レンズユニット36A、CCD36Bが備えられている。CCD36Bは、バイオセンサー10の全体の制御を司る制御部70が接続された画像処理部38と接続されている。
【0044】
光源34Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。レンズユニット34Bは、偏光ビームスプリッタを内蔵しており、光源34Aから入射する光ビームLのP偏光成分とS偏光成分に分離し、光ビームLのP偏光成分をZ方向に対して一定の幅を持った比較的太い2本の平行な光ビームL1、L2に分ける。そして、レンズユニット34Bは、この2本の平行な光ビームL1、L2を薄膜57と誘電体ブロック52との界面の測定領域E1と参照領域E2に対して全反射角以上の種々の入射角で測定領域E1と参照領域E2において収束光状態となるように入射させる。よって、測定領域E1及び参照領域E2に入射する光ビームL1、L2は、誘電体ブロック52と薄膜57との界面において種々の反射角で全反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、レンズユニット36Aを経てCCD36Bに結像される。CCD36Bは、全反射された2本の光ビームL1、L2を共に受光可能な面積の受光面を有するエリアセンサとされており、受光面に結像した像を示す画像情報を生成して出力する。この出力された画像情報は画像処理部38に入力される。画像処理部38では、入力された画像情報に基づいて所定の処理を行なって、測定領域E1及び参照領域E2での屈折率変化データを導出する。導出された屈折率変化データは、制御部70へ出力される。
【0045】
ここで、この屈折率変化データは、測定チップ50に試料及びバッファー液をそれぞれ個別に供給してそれぞれ光出射部34から光ビームLを出射させて測定領域E1及び参照領域E2に光ビームL1、L2を照射し、測定領域E1及び参照領域E2において全反射された光ビームL1、L2に暗線が発生する反射角度をそれぞれ求めた場合の、測定領域E1において試料及びバッファー液で暗線が発生する反射角度の角度差と、参照領域E2において試料及びバッファー液で暗線が発生する反射角度の角度差との差に基づいて求められるものである。薄膜57と誘電体ブロック52との界面に特定の入射角で入射した光ビームL1、L2は、界面に表面プラズモンを励起させ、これにより、特定の入射角で入射した光ビームL1、L2の反射光の強度が鋭く低下して暗線として観察される。この暗線となる光ビームL1、L2の入射角が全反射減衰角θSPであり、測定領域E1及び参照領域E2において検出される全反射減衰角θSPの変化(角度差)の差が屈折率変化データとなる。
【0046】
図12には、バイオセンサー10の動作を制御する制御系の機能構成を示すブロック図が示されている。
【0047】
同図に示されるように、制御部70には、ディスプレイ14及び入力部16が接続されている。
【0048】
また、制御部70には、上記モータ22B、モータ24A、第1モータ27C、及び第2モータ28Cが接続されている。
【0049】
制御部70は、モータ22B及びモータ24Aの回転駆動を制御することにより、分注ヘッド20のX方向及びZ方向への移動を制御する。また、制御部70は、第1モータ27C、及び第2モータ28Cの回転駆動を制御することにより、分注ヘッド20の各分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPへの試料やバッファ液の吸引や排出を制御する。
【0050】
制御部70では、入力部16を介してオペレータにより入力されたバイオセンサー10に対する動作指示に応じて測定チップ50の各液体流路55への試料やバッファ液などの溶液の注入、屈折率データの取得、解析等を含む測定処理が実行される。また、制御部70では、画像処理部38より入力する屈折率変化データに基づいて、タンパクTaと試料Aとの反応状態を測定し、測定結果をディスプレイ14に表示させる。
【0051】
次に、タンパクTaの特性を測定する際の本実施の形態に係るバイオセンサー10の作用について説明する。
【0052】
バイオセンサー10は、測定チップ50の各液体流路55に試料やバッファ液などの溶液の供給する場合、分注ヘッド20を、供給対象とする溶液が保存された保冷部46や、試料セット部40B、バッファ供給部44B上へ移動させ、一対の分注管20Aの一方(計6本)に取り付けられたピペットチップCPで溶液を吸引する。このときの吸引量は、一対の液体流路55A、55Rに供給するため、2本分の量である。そして、溶液を吸引した6本の分注管20A側のピペットチップCPを、測定チップ50の測定流路55A側の片方の出入口53(以下「供給口53A」という)へ挿入すると共に、排出用の列の6本の分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPを他方の出入口53(以下「排出口53B」という)へ挿入する。そして、供給口53A側の分注管20Aから半量の溶液を供給すると共に、排出口53B側の分注管20Aで液体を吸入することにより行われる。続いて、参照流路55R側へも、同様にしてピペットチップCPの残り半量の溶液が供給される。
【0053】
この測定チップ50の測定流路55A及び参照流路55Rに対して溶液を供給する際、制御部70は、第1モータ27C、及び第2モータ28Cの回転駆動を制御することにより、図13に示すように、溶液を、第1速度(例えば、9[μl/sec])で溶液を1秒間供給した後、第2速度(例えば、4[μl/sec])で溶液を4秒間供給するように制御している。
【0054】
なお、上述したように、液体流路55の容量は、7μlとされており、本実施の形態に係る各試料やバッファ液は水と同等の液粘度であり、溶液Bの吸引時にピペットチップCPの先端部に形成される空気層は2〜5μlである。
【0055】
これにより、例えば、図17(A)に示すように、分注ヘッド20から溶液Bを供給して液体流路55内の溶液Aを溶液Bに入れ替えようとした場合、ピペットチップCPの先端部に空気層が形成されていたとしても、ピペットチップCPから溶液Bを上記第1速度で1秒間供給することにより、図14に示すように、液体流路55内において溶液Bが空気層よりも速く移動して溶液Bが空気層の下側を流れて液体流路55内で空気層が浮き、空気層が液体流路55内の天井面に薄い層を形成して流路内を通過するため、空気層が液体流路55内の底面の測定領域E1及び参照領域E2に接触することが抑制される。
【0056】
そして、空気層が液体流路55内を通過した後に、上記第2速度で溶液を4秒間供給し続けることにより、液体流路55内の底面近傍の溶液Aが除々に液体流路55の断面の中央部に拡散して液体流路55内の溶液Aが溶液Bに入れ替わる。
【0057】
以上のように本実施の形態によれば、液体流路55内を空気層が通過する際に、空気層が液体流路55内の底面の測定領域E1及び参照領域E2に接触することが抑制されるので、検体物質に泡が付着して測定精度の低下してしまうことを抑制することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、分注ヘッド20から溶液を供給する際に、上記第1速度で溶液を1秒間供給する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、少なくとも、空気層が測定チップ50の流路内の底面の検体物質の付着領域を通過する間だけ上記第1速度で溶液を供給すればよい。
【0059】
その他、本実施の形態では、測定装置として、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、測定装置としては、表面プラズモンセンサーに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態に係るバイオセンサー全体の斜視図である。
【図2】実施の形態に係るバイオセンサーの内部の斜視図である。
【図3】実施の形態に係るバイオセンサーの内部の上面図である。
【図4】実施の形態に係るバイオセンサーの内部の側面図である。
【図5】実施の形態に係る測定チップの斜視図である。
【図6】実施の形態に係る測定チップの分解斜視図である。
【図7】実施の形態に係る測定チップの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図8】実施の形態に係る測定チップの流路部材を下側からみた図である。
【図9】実施の形態に係るバイオセンサーの分注ヘッドの鉛直駆動機構を示す斜視図である。
【図10】実施形態に係るバイオセンサーの液体吸排部の概略構成図である。
【図11】実施の形態に係るバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図12】実施の形態に係るバイオセンサーの制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図13】実施の形態に係る液体流路に対して溶液を供給する速度を示すグラフである。
【図14】実施の形態に係る液体流路内の空気層の状態を示す模式図である。
【図15】従来の溶液を供給した場合の流路内での溶液の速度分布を示す図である。
【図16】従来の液体流路に対して溶液を供給する速度を示すグラフである。
【図17】従来の液体流路内の溶液の入れ替わり状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
10 バイオセンサー
20 分注ヘッド(供給手段)
50 測定チップ(流路部材)
70 制御部(制御手段)
CP ピペットチップ(貯留手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給するための供給口と当該供給口より供給された液体が流れる液体流路が設けられ、当該液体流路内の底面に測定対象とする検体物質が付着される流路部材と、
前記検体物質の特性の測定に用いる溶液を貯留すると共に、当該溶液を排出するための排出口が前記供給口に挿入可能に形成された貯留手段と、
前記排出口を前記供給口に挿入させて前記貯留手段に貯留された前記溶液を前記排出口から前記供給口に移動させることにより前記液体流路に対して前記溶液を供給する供給手段と、
前記液体流路に対して前記溶液を供給する際に、前記溶液を、前記液体流路内において、前記排出口を前記供給口に挿入した際に前記排出口の先端部に形成された空気層よりも前記溶液が速く移動して当該溶液が当該空気層の下側を流れる第1速度で移動させた後に、前記第1速度よりも遅い第2速度で移動させる速度パターンを含んだ所定の速度パターンで前記溶液を前記排出口から前記供給口に所定期間だけ移動させるように前記供給手段を制御する制御手段と、
を備えた測定装置。
【請求項2】
前記排出口から前記溶液を前記第1速度で移動させる期間は、少なくとも前記空気層が前記液体流路内の前記検体物質の付着領域を通過する期間である
請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記所定期間は、前記液体流路内の底面近傍の溶液が当該液体流路の断面の中央部へ拡散するのに要する期間である
請求項1又は請求項2記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−233019(P2008−233019A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76785(P2007−76785)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】