説明

測定装置

【課題】被検溶液の濃度を変えて検体物質との反応状態を検出するスクリーニングを行った場合の反応状態を示すデータの精度を向上させることができる測定装置を提供する。
【解決手段】複数枚の試料プレート40P(40P−1〜40P−10)に跨って各ウェルに個別に貯留された複数種類でかつ複数の濃度のアナライト溶液を、タンパクTaが付着した複数の測定チップ50(50−1〜50−4)に供給する場合に、同じ種類の各濃度のアナライト溶液を同一の測定チップ50に供給するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に係り、特に測定対象とする検体物質に様々な溶液を各々個別に供給して検体物質と各溶液との反応状態を検出することにより、当該検体物質の特性を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定対象とする検体物質に様々な溶液を各々個別に供給して検体物質と各溶液との反応状態を検出することにより、当該検体物質の特性を測定する測定装置が知られている。
【0003】
例えば、本出願人は、特許文献1に、液体が流通可能に液体流路が形成されると共に、液体流路内の壁面に測定対象とする検体物質を付着させた付着領域が設けられた測定チップの液体流路に対して、複数種類の被検溶液を順次供給して検体物質と被検溶液の反応状態を検出することにより、当該検体物質と反応する被検溶液を特定するスクリーニングを行う測定装置を開示している。
【0004】
ところで、スクリーニングでは、検体物質と反応する被検溶液を探すため、様々な種類の被検溶液を各々複数の濃度で用意する。
【0005】
しかし、被検溶液の種類が多く、また、多くの濃度の被検溶液を用意する場合、各被検溶液を手作業で分けるのは煩雑である。
【0006】
このため、複数種類の被検溶液を各々複数の濃度で用意する場合、一般的に、溶液を個別に貯留する貯留部(所謂、ウェル)が複数設けられたプレート(例えば、タイタープレート)の各貯留部に複数種類の被検溶液を個別に貯留させたマスタプレートを作成し、分注装置を用いてマスタプレートから各種類の被検溶液を異なるプレートの各貯留部に分注することにより、濃度の異なる各被検溶液が作成される。
【0007】
例えば、384ウェルのプレートを用いて各被検溶液毎に10種類の濃度(濃度1〜濃度10)の溶液を用意する場合、図15に示すように、10枚のプレート(40P−1〜40P−10)を用意して分注装置を用いてマスタプレートから各プレートに溶液を分注することにより、濃度1〜濃度10の各被検溶液が作成される。
【0008】
上述した測定装置では、このように濃度毎に複数種類の被検溶液が個別に貯留された複数のプレートがセットされ、各プレートの貯留部に貯留された複数種類の被検溶液を測定チップの液体流路に順次供給して検体物質と被検溶液の反応状態を検出することによりスクリーニングを行う。
【特許文献1】特開2007−198768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、測定チップは、被検溶液の供給回数が多くなると液体流路内の付着領域に付着した検体物質の状態が変化するため、被検溶液を供給可能な供給回数が制限されている。このため、上述した測定装置では、供給回数が所定の制限回数(以下、「再利用回数」ともいう。)となると、測定チップを交換してスクリーニングを続行する。
【0010】
しかしながら、プレート順に、各プレートの各貯留部に貯留された被検溶液を測定チップの液体流路に順次供給してスクリーニングを行った場合、供給回数が再利用回数となって測定チップが交換されてしまい、同じ種類の被検溶液でも濃度が違うと異なる測定チップで反応状態が検出されてしまう場合がある。
【0011】
例えば、再利用回数の関係から4本の測定チップ(50−1〜50−4)により、図15に示した384ウェルの10枚のプレートに貯留された濃度1〜濃度10の複数種類の被検溶液を、プレート順に測定チップの液体流路に順次供給してスクリーニングを行った場合、図18に示すように、濃度3のプレートの途中と、濃度5と濃度6のプレートの間と、濃度8のプレートの途中と、で測定チップが各々交換され、10枚のプレートで使用する測定チップが分かれて検出される。なお、図18には、10枚のプレートにおいて4つの測定チップ50(50−1〜50−4)にそれぞれアナライト溶液を供給するウェルが設けられて領域を網掛けの種類を変えて示している。
【0012】
しかしながら、この測定チップは、測定チップ毎に検体物質の付着状態に違いがある。このため、この種の測定装置では、同じ種類の被検溶液でも濃度の違う被検溶液の反応状態を異なる測定チップで検出した場合、検出によって得られる反応状態を示すデータの精度が低い、という問題点があった。
【0013】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、被検溶液の濃度を変えて検体物質との反応状態を検出するスクリーニングを行った場合の反応状態を示すデータの精度を向上させることができる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、各々測定対象とする検体物質が付着した複数の測定チップと、個別に溶液を貯留する貯留部を複数有し、前記検体物質の特性の測定に用いる複数種類の被検溶液を各々複数の濃度で前記貯留部に個別に複数枚に跨って貯留した複数枚のプレートと、前記複数枚のプレートの前記貯留部に個別に貯留された各濃度の各被検溶液を個別に前記複数の測定チップの何れかに供給する供給手段と、同じ種類の各濃度の前記被検溶液を同一の測定チップに供給するように前記供給手段を制御する制御手段と、を備えている。
【0015】
請求項1記載の発明は、複数の測定チップに各々測定対象とする検体物質が付着しており、個別に溶液を貯留する貯留部を複数有する複数枚のプレートにより、検体物質の特性の測定に用いる複数種類の被検溶液が各々複数の濃度で貯留部に個別に複数枚に跨って貯留されており、供給手段により、複数枚のプレートの貯留部に個別に貯留された各濃度の各被検溶液が個別に前記複数の測定チップの何れかに供給されるものとされている。
【0016】
そして、本発明では、制御手段により、同じ種類の各濃度の被検溶液を同一の測定チップに供給するように前記供給手段が制御される。
【0017】
このように請求項1記載の発明によれば、複数枚のプレートに跨って各貯留部に個別に貯留された複数種類でかつ複数の濃度の被検溶液を、検体物質が付着した複数の測定チップに供給する場合に、同じ種類の各濃度の被検溶液を同一の測定チップに供給するように制御しているので、被検溶液の濃度を変えて検体物質との反応状態を検出するスクリーニングを行った場合の反応状態を示すデータの精度を向上させることができる。
【0018】
なお、本発明は、請求項2記載の発明のように、前記制御手段が、同じ種類の各濃度の前記被検溶液を濃度の低い順に供給するように前記供給手段を制御することが好ましい。
【0019】
また、本発明は、請求項3記載の発明のように、前記複数種類の被検溶液が、濃度毎に別なプレートに貯留されてもよい。
【0020】
また、本発明は、請求項4記載の発明のように、前記測定チップに前記供給手段から被検溶液が供給された状態で、当該測定チップの検体物質の付着領域で全反射されるように複数の角度で光ビームを入射させて前記付着領域において全反射された光ビームの光強度分布に基づいて前記検体物質と当該被検溶液の反応状態を検出する検出手段をさらに備えてもよい。
【0021】
また、請求項4記載の発明は、請求項5記載の発明のように、前記測定チップが、前記被検溶液を供給可能な供給回数が所定の制限回数に制限されており、前記検出手段により反応状態を検出可能な位置に前記測定チップを個別に搬送する搬送手段と、をさらに備え、前記制御手段が、前記検出可能な位置の前記測定チップに対して前記供給手段から次の種類の各濃度の前記被検溶液を供給した際の当該測定チップの前記被検溶液の供給回数が前記制限回数よりも大きい場合に、前記測定チップを交換するように前記搬送手段を制御してもよい。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明によれば、複数枚のプレートに跨って各貯留部に個別に貯留された複数種類でかつ複数の濃度の被検溶液を、検体物質が付着した複数の測定チップに供給する場合に、同じ種類の各濃度の被検溶液を同一の測定チップに供給するように制御しているので、被検溶液の濃度を変えて検体物質との反応状態を検出するスクリーニングを行った場合の反応状態を示すデータの精度を向上させることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では、表面プラズモン共鳴現象(Surface Plasmon Resonance:SPR)による全反射減衰の発生によって暗線が発生した反射角度を検出することにより、検体物質と被検溶液の反応状態を検出する測定装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0024】
本実施の形態に係る測定装置としてのバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴現象を利用して、タンパクTaと試料Aとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0025】
図1〜図4に示すように、バイオセンサー10は、下部筐体11及び上部筐体12を備えている。上部筐体12は、断熱部材で構成されており、バイオセンサー10の上半分全体を覆っている。上部筐体12内と、外部及び下部筐体11内との間は、断熱されている。上部筐体12の手前側は、上方へ開放可能とされており、把手13が取り付けられている。上部筐体12の外側には、ディスプレイ14及び入力部16が設置されている。
【0026】
図2は、上部筐体12を取り去って、図1の奥側からみたバイオセンサー10の内部を示す図であり、図3は筐体の内部を上面からみた図であり、図4は図2の手前側からみた内部の側面図である。
【0027】
上部筐体12の内部には、分注ヘッド20、測定部30、試料ストック部40、ピペットチップストック部42、バッファストック部44、保冷部46、廃液プレート47、測定チップストック部48、ラジエータ60、ラジエータ送風ファン62、水平方向送風ファン64が備えられている。
【0028】
試料ストック部40は、試料積層部40A及び試料セット部40Bで構成されている。試料積層部40Aには、個々のセルに検体物質の特性の測定に用いる被検溶液として各種の試料を含んだ各々異なる複数種類のアナライト溶液をストックする試料プレート40Pが、Z方向(鉛直方向)に積層されて収容されている。本実施の形態に係る試料積層部40Aには、図5に示すように、試料プレート40Pを2列に分けて6枚ずつ計12枚収容可能とされている。この試料積層部40Aの試料プレート40Pを収容する各収容部にはそれぞれ1から順に番号が割り当てられている。図5では、括弧内の数字により割り当てた番号が示されている。
【0029】
試料セット部40B(図3参照)には、1枚の試料プレート40Pが、図示しない搬送機構により試料積層部40Aから搬送されてセットされる。この試料プレート40Pは、溶液を個別に貯留するウェルが2次元状に複数設けられており、本実施の形態では、図6に示すように、384ウェル(16行×24列)のプレートを用いている。この試料プレート40Pは、各行にA〜Pのアルファベットが割り当てられ、各列に1〜24の数字が割り当てられている。試料プレート40Pは、割り当てられたアルファベットと数字の組み合わせて行及び列を特定することにより、各ウェルを特定することができ、このアルファベットと数字の組み合わせが各ウェルのアドレスとされている。
【0030】
一方、ピペットチップストック部42(図3参照)は、ピペットチップ積層部42A及びピペットチップセット部42Bで構成されている。ピペットチップ積層部42Aには、複数のピペットチップを保持するピペットチップストッカー42Pが、Z方向に積層されて収容されている。ピペットチップセット部42Bには、1枚のピペットチップストッカー42Pが、図示しない搬送機構によりピペットチップ積層部42Aから搬送されてセットされる。
【0031】
バッファストック部44は、ボトル収容部44A及びバッファー供給部44Bで構成されている。ボトル収容部44Aには、測定の基準となる基準溶液としてのバッファー液が貯留された複数本のボトル44Cが収容されている。バッファー供給部44Bには、バッファプレート44Pがセットされている。バッファプレート44Pは、複数筋に区画されており、各々の区画には濃度の異なるバッファー液が貯留されている。また、バッファプレート44Pの上部には、分注ヘッド20のアクセス時にピペットチップCPが挿入される孔Hが構成されている。バッファプレート44Pへは、ホース44Hによりボトル44Cからバッファー液が供給される。
【0032】
バッファー供給部44Bの隣には、補正用プレート45が配置され、その隣に保冷部46が配置され、その隣に廃液プレート47が配置されている。補正用プレート45は、バッファー液の濃度調整を行うためのプレートであり、マトリクス状に複数セルが構成されている。保冷部46には、冷蔵の必要な試料が配置される。保冷部は低温とされており、この上で試料は低温状態に保たれる。廃液プレート47は、ホースによって図示しない廃液タンクと接続されており、廃液プレート47に排出された溶液は、廃液タンクに収容される。
【0033】
測定チップストック部48には、測定チップ収容プレート48Pがセットされている。測定チップ収容プレート48Pには、測定チップ50が複数本収納されている。
【0034】
測定チップストック部48と測定部30との間には、測定チップ搬送機構49が備えられている。測定チップ搬送機構49は、測定チップ50を両側から挟み込んで保持する保持アーム49A、回転により保持アーム49AをY方向に移動させるボールねじ49B、Y方向に配置され、測定チップ50が載せられる搬送レール49C、を含んで構成されている。測定の際には、1本の測定チップ50が測定チップ搬送機構49により測定チップ収容プレート48Pから搬送レール49C上に載せられ、保持アーム49Aにより挟持されつつ測定部30へ移動してセットされる。
【0035】
測定チップ50は、図7及び図8に示すように、誘電体ブロック52、流路部材54、及び、保持部材56、で構成されている。
【0036】
誘電体ブロック52は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部52A、及び、プリズム部52Aの両端部にプリズム部52Aと一体的に形成された被保持部52Bを備えている。プリズム部52Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、金属性の薄膜57が形成されている。誘電体ブロック52は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部52Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から薄膜57との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0037】
薄膜57の表面には、測定対象とする検体物質としてタンパクTaを薄膜57上に付着させるための、リンカー層57Aが形成されている。このリンカー層57A上にタンパクTaが付着される。
【0038】
プリズム部52Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材56と係合される係合凸部52Cが形成されている。また、プリズム部52Aの下側には、側端辺に沿って搬送レール49Cと係合されるフランジ部52Dが形成されている。
【0039】
図8に示すように、流路部材54は、6個のベース部54Aを備え、ベース部54Aの各々に4本の円筒部材54Bが立設されている。ベース部54Aは、3個のベース部54A毎に、立設された円筒部材54Bのうちの1本の上部が連結部材54Dによって連結されている。流路部材54は、軟質で弾性変形可能な材料、例えば非晶質ポリオフィレンエラストマーで構成されている。このように、流路部材54を弾性変形可能な材料で構成することにより、誘電体ブロック52との密着性を高め、誘電体ブロック52との間に構成される液体流路55の密閉性を確保している。
【0040】
保持部材56は、長尺とされ、上面部材56A及び2枚の側面板56Bが蓋状に構成された形状とされている。側面板56Bには、誘電体ブロック52の係合凸部52Cと係合される係合孔56C、及び、上記光ビームの光路に対応する部分に窓56Dが形成されている。保持部材56は、係合孔56Cと係合凸部52Cとが係合されて、誘電体ブロック52に取り付けられる。流路部材54は、保持部材56と一体成形されており、保持部材56と誘電体ブロック52の間に配置される。上面部材56Aには、流路部材54の円筒部材54Bに対応する位置に、受部59が形成されている。受部59は略円筒状とされている。
【0041】
ベース部54Aには、図9に示すように、底面側に略S字状の2本の流路溝54Cが形成されている。流路溝54Cは、端部の各々が1の円筒部材54Bの中空部と連通されている。ベース部54Aは、底面が誘電体ブロック52の上面と密着され、流路溝54Cと誘電体ブロック52の上面との間に構成される空間と前記中空部とで、液体流路55が構成される。
【0042】
1個のベース部54Aには、2本の液体流路55が構成される。各々の液体流路55において、円筒部材54Bの上端面に液体流路55の出入口53が構成される。
【0043】
ここで、2本の液体流路55のうち、1本は測定流路55Aとして用いられ、他の1本は参照流路55Rとして用いられる。測定流路55Aの薄膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaを付着させ、参照流路55Rの薄膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaを付着させない状態で測定が行われる。本実施の形態に係る測定チップ50は、このように1対の測定流路55A及び参照流路55Rからなる測定チャネルが6つ設けられている。
【0044】
測定流路55A及び参照流路55Rには、図9に示すように、各々光ビームL1、L2が入射される。光ビームL1、L2は、図10に示すように、ベース部54Aの中心線M上に配置されるS字の屈曲部分に照射される。以下、測定流路55Aにおける光ビームL1の照射領域を測定領域E1、参照流路55Rにおける光ビームL2の照射領域を参照領域E2という。参照領域E2は、タンパクTaが付着した測定領域E1から得られるデータを補正するための測定を行う領域である。
【0045】
図11には、分注ヘッド20の詳細な構成が示されている。
【0046】
分注ヘッド20は、12本の分注管20Aを備えている。各分注管20Aは、X方向と直交する矢印Y方向に沿って1列に配置されるように保持部材20Bにより保持されている。分注管20Aは、隣り合う2本で一対とされ、一方が液体供給用、他方が液体排出用とされている。分注管20Aの先端部には、ピペットチップCPが取り付けられる。ピペットチップCPは、ピペットチップストッカー42Pにストックされており、必要に応じて交換可能とされている。
【0047】
図2に示すように、分注ヘッド20は、上部筐体12内の上部に設けられ、水平駆動機構22により矢印X方向に移動可能とされている。水平駆動機構22は、ボールねじ22A、モータ22B、ガイドレール22Cにより構成されている。ボールねじ22A及びガイドレール22Cは、X方向に配置されている。ガイドレール22Cは平行に2本配置され、そのうちの1本はボールねじ22Aの下側に所定間隔離れて配置されている。分注ヘッド20は、モータ22Bの回転駆動によってボールねじ22Aが回転することにより、ガイドレール22Cに沿ってX方向に移動される。このX方向移動により、分注ヘッド20は、廃液プレート47、保冷部46、補正用プレート45、バッファー供給部44B(バッファプレート44P)、測定部30(測定チップ50)、試料セット部40B(試料プレート40P)、及びピペットチップセット部42B(ピペットチップストッカー42P)に対向する位置にそれぞれ移動可能とされている。
【0048】
また、図11に示すように、分注ヘッド20には、分注ヘッド20を矢印Z方向に移動させる鉛直駆動機構24が設けられている。鉛直駆動機構24は、モータ24A及びZ方向に配置された駆動軸24Bを含んで構成され、モータ24Aの回転駆動によって駆動軸24Bが回転することにより、分注ヘッド20をZ方向に移動させる。このZ方向移動により、分注ヘッド20は、ピペットチップセット部42Bにセットされたピペットチップストッカー42P、試料セット部40Bにセットされた試料プレート40P、バッファー供給部44Bにセットされたバッファプレート44P、補正用プレート45、保冷部46にセットされたプレート、及び測定部30にセットされた測定チップ50などにアクセス可能となっている。
【0049】
さらに、分注ヘッド20は、12本の分注管20Aのうち液体供給用の6本の分注管20Aを鉛直方向に所定距離だけ移動させる不図示の分注管下降機構が設けられている。分注ヘッド20は、この分注管下降機構により、液体供給用の6本の分注管20Aを鉛直方向に所定距離だけ下降させることが可能とされている。
【0050】
分注ヘッド20は、試料プレート40Pやバッファプレート44P、補正用プレート45、保冷部46にセットされたプレートなどから溶液を吸引する場合、分注管下降機構により液体供給用の6本の分注管20Aを下降させ、液体供給用の6本の分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPのみをアクセスさせて溶液を吸引する。また、分注ヘッド20は、吸引した溶液を測定チップ50に供給する場合や廃液プレート47に排出する場合、分注管下降機構により液体供給用の6本の分注管20Aを上昇させて12本の分注管20Aを同じ高さとして12本の分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPのみをアクセスさせる。
【0051】
図12に示されるように、分注ヘッド20には、吸排駆動部26が接続されている。吸排駆動部26は、第1ポンプ27、第2ポンプ28を備えている。第1ポンプ27及び第2ポンプ28は、前述の一対の分注管20Aに各々対応して設けられている。第1ポンプ27は、シリンジポンプで構成されており、第1シリンダ27A、第1ピストン27B、及び、第1ピストン27Bを駆動させる第1モータ27Cを備えている。第1シリンダ27Aは、配管27Hを介して分注ヘッド20と接続されている。また、第2ポンプ28も、シリンジポンプで構成されており、第2シリンダ28A、第2ピストン28B、及び、第2ピストン28Bを駆動させる第2モータ28Cを備えている。第2シリンダ28Aは、配管28Hを介して分注ヘッド20と接続されている。
【0052】
分注ヘッド20は、第1モータ27C及び第2モータ28Cの回転駆動が各々制御されて第1ピストン27B及び第2ピストン28Bの駆動が制御されることにより、吸引、排出する溶液の液量、及び吸引、排出する際の溶液の速度が調整可能とされている。
【0053】
一方、図4に示すように、測定部30は、光学定盤32、光出射部34、受光部36を含んで構成されている。光学定盤32には、側方向から見て、上部中央の水平平面で構成される上部台32A、上部台32Aから離れる方向に向かって低くなる出射傾斜部32B、上部台32Aを挟んで出射傾斜部32Bと逆側に配置される受光傾斜部32Cが形成されている。上部台32Aには、Y方向沿って測定チップ50がセットされるものとされている。光学定盤32の出射傾斜部32Bには、測定チップ50に対して光ビームL1、L2を出射する光出射部34が設置されている。また、受光傾斜部32Cには、受光部36が設置されている。光学定盤32の隣には、光学定盤32を冷却する水冷ジャケット32Jが設けられている。
【0054】
図13には光出射部34及び受光部36の概略構成が示されている。なお、図13では、測定チップ50の1つの測定チャネルに対して光ビームL1、L2を出射する部分のみの構成を示しているが、測定チップ50の6つの測定チャネルに対して同時に光ビームL1、L2を出射して反射光を受光可能なように光出射部34及び受光部36が並列に6つ設けられている。
【0055】
同図に示すように、光出射部34には、光源34A、レンズユニット34Bが備えられている。また、受光部36には、レンズユニット36A、CCD36Bが備えられている。
【0056】
光源34Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。レンズユニット34Bは、偏光ビームスプリッタを内蔵しており、光源34Aから入射する光ビームLのP偏光成分とS偏光成分に分離し、光ビームLのP偏光成分をZ方向に対して一定の幅を持った比較的太い2本の平行な光ビームL1、L2に分ける。そして、レンズユニット34Bは、この2本の平行な光ビームL1、L2を薄膜57と誘電体ブロック52との界面の測定領域E1と参照領域E2に対して全反射角以上の種々の入射角で測定領域E1と参照領域E2において収束光状態となるように入射させる。よって、測定領域E1及び参照領域E2に入射する光ビームL1、L2は、誘電体ブロック52と薄膜57との界面において種々の反射角で全反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、レンズユニット36Aを経てCCD36Bに結像される。CCD36Bは、全反射された2本の光ビームL1、L2を共に受光可能な面積の受光面を有するエリアセンサとされており、受光面に結像した像を示す画像情報を生成して出力する。
【0057】
図14には、本実施の形態に係るバイオセンサー10の電気系の構成が示されている。
【0058】
同図に示すように、バイオセンサー10は、CPU70A、ROM70B、RAM70C、HDD70D等を含んで構成され、装置全体の動作を司る制御部70と、上記モータ22Bとモータ24Aの回転駆動、及び上記第1モータ27Cと第2モータ28Cの回転駆動を制御することにより、分注ヘッド20のX方向及びZ方向への移動、並びに分注ヘッド20の各分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPへの各種類のアナライト溶液やバッファ液の吸引や排出を制御する分注ヘッド駆動制御部72と、保持アーム49Aを動作及びボールねじ49Bを回転させる不図示のモータの回転駆動を制御することにより、測定チップ搬送機構49の動作を制御する測定チップ搬送制御部73と、不図示の搬送機構の動作を制御することにより、試料積層部40Aに収納された各試料プレート40Pの試料セット部40Bへの搬送を制御するプレート搬送制御部74と、不図示の搬送機構の動作を制御することにより、ピペットチップ積層部42Aに収納された各ピペットチップストッカー42Pのピペットチップセット部42Bへの搬送を制御するストッカー搬送制御部75と、CCD36Bの撮像動作の制御するCCD制御部76と、光源34Aへの電力供給を制御することにより、光源34Aの点灯を制御する点灯制御部78と、ネットワーク90に接続されて当該ネットワーク90に接続されたサーバなどの端末装置92と通信を行う通信制御部80と、を備えている。
【0059】
制御部70には、分注ヘッド駆動制御部72、測定チップ搬送制御部73、プレート搬送制御部74、ストッカー搬送制御部75、CCD制御部76、点灯制御部78、ディスプレイ14、入力部16、及び通信制御部80が接続されている。
【0060】
従って、制御部70は、分注ヘッド駆動制御部72を介した分注ヘッド20の移動、並びにピペットチップCPへのアナライト溶液やバッファ液、洗浄液の吸引や排出の制御と、測定チップ搬送制御部73を介した測定チップ50の搬送の制御と、プレート搬送制御部74を介した試料プレート40Pの搬送の制御と、ストッカー搬送制御部75を介したピペットチップストッカー42Pの搬送の制御と、CCD制御部76を介したCCD36Bの撮像動作の制御と、点灯制御部78を介して光源34Aの点灯を制御と、ディスプレイ14への操作画面、各種メッセージ等の各種情報の表示の制御と、通信制御部80を介して端末装置92との各種情報の送受信の制御と、を各々行うことができる。また、制御部70は、入力部16に対する操作内容を把握することができる。
【0061】
制御部70では、CCD制御部76を介して入力された画像情報に基づいて所定の処理を行なって、測定領域E1及び参照領域E2での屈折率変化データを導出する。
【0062】
この屈折率変化データは、測定チップ50にアナライト溶液及びバッファー液を個別に供給して光出射部34から光ビームLを出射させて各測定チャネルの測定領域E1及び参照領域E2に光ビームL1、L2を照射し、測定領域E1において全反射された光ビームL1の暗線が発生した反射角度と参照領域E2において全反射された光ビームL2の暗線が発生した反射角度との角度差に基づいて測定チャネル毎に求められるものである。薄膜57と誘電体ブロック52との界面に特定の入射角で入射した光ビームL1、L2は、界面に表面プラズモンを励起させ、これにより、特定の入射角で入射した光ビームL1、L2の反射光の強度が鋭く低下して暗線として観察される。この暗線となる光ビームL1、L2の入射角が全反射減衰角θSPであり、バッファー液を測定チップ50に供給した場合の測定領域E1及び参照領域E2において検出される全反射減衰角θSPの角度差と、アナライト溶液を測定チップ50に供給した場合の測定領域E1及び参照領域E2において検出される全反射減衰角θSPの角度差との差が屈折率変化データとなる。
【0063】
次に、本実施の形態に係るバイオセンサー10の作用について説明する。
【0064】
タンパクTaの特性の測定するスクリーニングを行う場合、ユーザは、被検溶液として各種の試料を含んだ各々異なる複数種類のアナライト溶液を試料プレート40Pの各ウェルに個別に貯留させたマスタプレートを作成し、分注装置を用いてマスタプレートから各種類のアナライト溶液を異なる試料プレート40Pの各ウェルに分注して、濃度の異なる各アナライト溶液を用意する。例えば、本実施の形態のように、384ウェルの試料プレート40Pを用いている場合は、384種類のアナライト溶液を試料プレート40Pの各ウェルに個別に貯留させたマスタプレートを作成し、例えば、分注装置を用いて10枚の試料プレート40Pに分注して、図15に示すように、10枚の試料プレート40P(40P−1〜40P−10)に濃度1〜濃度10の複数種類のアナライト溶液を用意する。
【0065】
このように分注された各試料プレート40Pには、同一アドレスのウェルに、同じ種類のアナライト溶液が異なる濃度で貯留されている。
【0066】
ユーザは、このようにいて用意した各試料プレート40Pを試料積層部40Aにセットする。
【0067】
また、ユーザは、各測定流路55Aの薄膜57上に測定対象とするタンパクTaを付着させた測定チップ50を複数本用意し、用意した複数本の測定チップ50を測定チップ収容プレート48Pに収納して測定チップストック部48にセットする。
【0068】
ユーザは、入力部16から測定チップ50の再利用回数、及び試料プレート40P毎に、当該試料プレート40Pの各ウェルのアドレスに対応させて、試料積層部40Aにセットした各試料プレート40Pの各ウェルに貯留されたアナライト溶液の種類及びアナライト溶液の濃度を被検溶液情報として登録する。なお、再利用回数、及び被検溶液情報は、ネットワーク90を介して接続されたサーバなどの端末装置92から登録するものとしてもよい。
【0069】
制御部70は、登録された再利用回数及び被検溶液情報をHDD70Dに記憶させる。
【0070】
ユーザは、スクリーニング開始を指示する場合、入力部16に対して所定の指示操作を行う。
【0071】
また、本実施の形態に係るバイオセンサー10は、スクリーニングを行う際の測定モードとして精度優先モード又は速度優先モードを選択可能とされている。ユーザは、スクリーニング開始を指示する際に、測定モードとして精度優先モード又は速度優先モードの何れか一方を選択する。
【0072】
スクリーニング開始を指示する所定の指示操作が行われると、制御部70は、後述する供給順序決定処理を行って、HDD70Dに記憶された再利用回数及び被検溶液情報に基づいて、測定チップ50毎に、当該測定チップ50に対する各試料プレート40Pからのアナライト溶液の供給順序を決定し、決定した供給順序を示す供給順序情報を生成する。
【0073】
その後、制御部70は、供給順序情報により示される供給順序に従って、測定チップ搬送制御部73を介して測定チップ搬送機構49を制御して、測定対象とする測定チップ50を上部台32Aに搬送して、各測定チャネルの測定流路55Aの測定領域E1及び参照流路55Rの参照領域E2に各々光ビームL1、L2が入射する測定位置に測定チップ50を配置する。また、制御部70は、供給順序情報により示される供給順序に従って、プレート搬送制御部74を介した試料プレート40Pの搬送を制御すると共に、分注ヘッド駆動制御部72を介して分注ヘッド20を制御して、決定した供給順序で測定対象とする測定チップ50の各測定チャネルの測定流路55A及び参照流路55Rに対して分注ヘッド20から所定の濃度のバッファー液や様々な種類のアナライト溶液、洗浄液を個別に供給させる。
【0074】
制御部70は、測定対象とする測定チップ50にバッファー液やアナライト溶液が供給されると、点灯制御部78を制御して光源34Aの点灯させ、光出射部34から光ビームを出射させて各測定チャネルの測定領域E1、参照領域E2の各々に、光ビームL1、L2を各々照射させる。これらの光ビームL1、L2は、測定領域E1、参照領域E2で全反射され、発散しながら誘電体ブロック52のプリズム面を通って外部に出射される。外部に出射された光ビームL1、L2は、レンズユニット36Aを経てCCD36Bの受光面に結像される。
【0075】
制御部70は、CCD制御部76を介してCCD36Bの撮像動作の制御して、CCD36Bの受光面に結像した像の撮像を行わせ、当該像を示す画像情報をCCD36Bから出力させる。出力された画像情報はCCD制御部76を介して制御部70に入力する。
【0076】
制御部70は、画像情報が入力されると、入力された画像情報に基づいて所定の処理を行なって、測定チャネル毎に測定領域E1及び参照領域E2での屈折率変化データを導出する。
【0077】
次に、図16には、スクリーニング開始を指示する所定の指示操作が行われた場合に制御部70により実行される供給順序決定処理の流れを示すフローチャートが示されている。以下、同図を参照して、当該供給順序決定処理について説明する。
【0078】
同図のステップ100では、HDD70Dに記憶された再利用回数及び被検溶液情報を読み出す。
【0079】
次のステップ102では、被検溶液情報に基づき、試料積層部40Aにセットされた各試料プレート40Pの各ウェルに貯留された各アナライト溶液に、種類が同じで濃度が異なるアナライト溶液があるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ106へ移行する一方、否定判定となった場合はステップ104へ移行する。
【0080】
ステップ104では、試料積層部40Aにセットされた各試料プレート40Pの各ウェルに貯留されたアナライト溶液は全て種類が異なるため、試料積層部40Aにセットされた試料プレート40Pを、試料積層部40Aの収容部の番号順に試料セット部40Bに搬送し、試料プレート40Pの各ウェルのアドレス順に、アナライト溶液の供給回数が再利用回数となるまで各測定チップ50にアナライト溶液を供給するものとしてアナライト溶液の供給順序を定める。本実施の形態では、試料プレート40Pとして384ウェルのプレートを用いているため、アドレス順として、例えば、図17の矢印に示すように、列順に、各列で1列毎に列方向に1ウェル分だけ位置をずらして4回ずつアナライト溶液を供給するものとしてアナライト溶液の供給順序を定める。なお、上述したように、試料プレート40Pから溶液を吸引する場合は、分注管下降機構により液体供給用の6本の分注管20Aを下降させる。このため、図17では、各測定チャネルに対応する一対のピペットチップCPのうち、一方のピペットチップCPが突出して示されている。
【0081】
例えば、測定チップ50の再利用回数を160回である場合、1つの測定チップ50に6つの測定チャネルがあるので、1つの測定チップ50で960回アナライト溶液を測定することができる。よって、384ウェルの試料プレート40Pの場合は、1つの測定チップ50あたり、2.5(=960/384)枚の試料プレート40Pを測定でき、例えば、10枚の384ウェルの試料プレート40Pにそれぞれ各々異なる種類のアナライト溶液が貯留されている場合は、4つの測定チップ50で測定することになる。図18には、この場合に、10枚の試料プレート40Pにおいて4つの測定チップ50(50−1〜50−4)にそれぞれアナライト溶液を供給するウェルが設けられて領域を網掛けの種類を変えて示している。
【0082】
一方、ステップ106では、試料積層部40Aにセットされた各試料プレート40Pの各ウェルに貯留された各アナライト溶液から種類が同じで濃度が異なるアナライト溶液をグループ化する。図19には、グループ化した結果が模式的に示されている。
【0083】
次のステップ108では、上記ステップ106においてグループ化した各化合物グループ毎にアナライト溶液の供給回数をカウントする。そして、本ステップ108では、化合物グループ毎のアナライト溶液の供給回数を順番に加算し、加算結果の供給回数が再利用回数以下の場合は直前に供給回数を加算した化合物グループのアナライト溶液を同じ測定チップ50に供給し、加算結果の供給回数が再利用回数を超えた場合は直前に供給回数を加算した化合物グループのアナライト溶液を次の測定チップ50に供給するものとして、化合物グループ毎に測定チップ50を割り当てる。図19には、化合物グループ毎に4つの測定チップ50(50−1〜50−4)を割り当てた結果が示されている。これにより、化合物グループが同一の測定チップ50に供給されるようになる。
【0084】
例えば、測定チップ50の再利用回数を160回である場合は、上述のように1つの測定チップ50で960回アナライト溶液を測定できる。よって、例えば、図15に示すように、10枚の試料プレート40P(40P−1〜40P−10)に濃度1〜濃度10の複数種類のアナライト溶液を用意した場合は、1種類のアナライト溶液あたり10濃度を測定するため、1つの測定チップ50で96(=960/10)種類のアナライト溶液ずつ測定することになり、384種類のアナライト溶液を4つの測定チップ50で測定することになる。また、図15に示すような10枚の試料プレート40Pは、上述のように、同一アドレスのウェルに、同じ種類のアナライト溶液が異なる濃度で貯留されている。このため、各試料プレート40Pを1/4(=96/386)ずつ異なる測定チップ50で測定することとなる。図20には、この場合に、10枚の試料プレート40Pにおいて4つの測定チップ50にそれぞれアナライト溶液を供給するウェルが設けられて領域を網掛けの種類を変えて示している。
【0085】
次のステップ110では、測定モードとして速度優先モードが指定されたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ112へ移行する一方、否定判定となった場合はステップ114へ移行する。
【0086】
ステップ112では、測定チップ50毎に、試料積層部40Aにセットされた試料プレート40Pを試料積層部40Aの収容部の番号順に試料セット部40Bに搬送し、測定チップ50に割り当てられた各化合物グループのアナライト溶液を試料プレート40Pの各ウェルのアドレス順に、各化合物グループのアナライト溶液がそれぞれ同じ測定チャネルに供給されるようにアナライト溶液の供給順序を定める。
【0087】
よって、この速度優先モードでは、図20に示した試料プレート40Pの測定チップ50に対応する網掛領域の各ウェルのアナライト溶液が全て測定チップ50に供給されると、試料プレート40Pが交換され、全ての試料プレート40Pでのアナライト溶液の供給が完了すると、測定チップ50が交換される。これにより、試料プレート40Pの入れ替え回数を減らすことができるため、スクリーニングに必要な測定時間を短くすることができる。
【0088】
一方、ステップ114では、測定チップ50毎に、同一の測定チップ50に割り当てられた各化合物グループのアナライト溶液の濃度の低い順に同じ測定チャネルに供給されるようにアナライト溶液の供給順序を定める。
【0089】
よって、この精度優先モードでは、各化合物グループ毎に、試料積層部40Aにセットされた試料プレート40Pが濃度の低い順に試料セット部40Bに搬送され、アナライト溶液を1度供給する毎に試料プレート40Pが交換され、測定チップ50に割り当てた全ての化合物グループのアナライト溶液の供給が完了すると、測定チップ50が交換される。これにより、測定チップ50内でのアナライト溶液を濃度変化を少なく抑えることができるため、測定精度がさらに向上する。
【0090】
以上のように、本実施の形態によれば、複数枚の試料プレート40Pに跨って各ウェルに個別に貯留された複数種類でかつ複数の濃度のアナライト溶液を、タンパクTaが付着した複数の測定チップ50に供給する場合に、同じ種類の各濃度のアナライト溶液を同一の測定チップ50に供給するように制御しているので、アナライト溶液の濃度を変えてタンパクTaとの反応状態を検出するスクリーニングを行った場合の反応状態を示すデータの精度を向上させることができる。
【0091】
また、本実施の形態によれば、測定チップ50に同じ種類の各濃度のアナライト溶液を供給して反応状態を検出する際に、測定チップ50が交換されず、反応状態を検出する検出領域も変化しないため、反応状態を示すデータの精度を向上させることができる。
【0092】
なお、本実施の形態で説明したバイオセンサー10は、さらに精度のよい測定を行うために、濃度の濃い化合物を測定した場合に測定チップ50に検体物質を洗浄する洗浄溶液をさらに個別に供給するものとして、洗浄時間を長くする/洗浄回数を増やすなど送液パターンも変更する仕組みを持たせてもよい。
【0093】
また、本実施の形態で説明したバイオセンサー10は、測定チップ50に測定チャネルが複数設けられ、複数の測定チャネルを同時に測定するものとしたが、これに限定されるものではない。
【0094】
また、本実施の形態で説明したバイオセンサー10は、濃度別に各種類のアナライト溶液が別な試料プレート40Pに貯留されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、1枚の試料プレート40Pに複数の濃度の各種類のアナライト溶液を貯留してもよく。また、ある濃度の各種類のアナライト溶液を複数の試料プレート40Pに跨って貯留してもよい。さらに各濃度の各種類のアナライト溶液をそれぞれ複数の試料プレート40Pに跨って貯留してもよい。
【0095】
さらに、本実施の形態で説明したバイオセンサー10の構成(図1〜図14参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0096】
また、本実施の形態で説明した溶液供給制御処理(図16参照。)の処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0097】
その他、本実施の形態では、バッファー液を供給した場合の反射角度の角度差とアナライト溶液を供給した場合の反射角度の角度差との差から検体物質の反応状態を検出する表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、検体物質の特性を測定する測定装置としては、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】実施の形態に係るバイオセンサー全体の斜視図である。
【図2】実施の形態に係るバイオセンサーの内部の斜視図である。
【図3】実施の形態に係るバイオセンサーの内部の上面図である。
【図4】実施の形態に係るバイオセンサーの内部の側面図である。
【図5】実施の形態に係る試料積層部を拡大して示した正面図である。
【図6】実施の形態に係る試料プレートの斜視図である。
【図7】実施の形態に係る測定チップの斜視図である。
【図8】実施の形態に係る測定チップの分解斜視図である。
【図9】実施の形態に係る測定チップの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図10】実施の形態に係る測定チップの流路部材を下側からみた図である。
【図11】実施の形態に係るバイオセンサーの分注ヘッドの鉛直駆動機構を示す斜視図である。
【図12】実施形態に係るバイオセンサーの液体吸排部の概略構成図である。
【図13】実施の形態に係るバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図14】実施の形態に係るバイオセンサーの電気系の構成を示すブロック図である。
【図15】濃度1〜濃度10の複数種類のアナライト溶液を10枚の試料プレートに用意した状態を示す図である。
【図16】実施の形態に係る溶液供給制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】実施の形態に係る試料プレートに貯留されたアナライト溶液の供給順序をしめす模式図である。
【図18】各測定チップにアナライト溶液を供給する試料プレートのウェルが設けられて領域を示す模式図である。
【図19】実施の形態に係る各化合物グループを測定チップに割り当てた結果を示す模式図である。
【図20】実施の形態に係る各測定チップにアナライト溶液を供給する試料プレートのウェルが設けられて領域を示す模式図である。
【符号の説明】
【0099】
10 バイオセンサー
20 分注ヘッド(供給手段)
30 測定部(検出手段)
40P 各試料プレート(プレート)
49 測定チップ搬送機構(搬送手段)
50 測定チップ
70 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々測定対象とする検体物質が付着した複数の測定チップと、
個別に溶液を貯留する貯留部を複数有し、前記検体物質の特性の測定に用いる複数種類の被検溶液を各々複数の濃度で前記貯留部に個別に複数枚に跨って貯留した複数枚のプレートと、
前記複数枚のプレートの前記貯留部に個別に貯留された各濃度の各被検溶液を個別に前記複数の測定チップの何れかに供給する供給手段と、
同じ種類の各濃度の前記被検溶液を同一の測定チップに供給するように前記供給手段を制御する制御手段と、
を備えた測定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、同じ種類の各濃度の前記被検溶液を濃度の低い順に供給するように前記供給手段を制御する
請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記複数種類の被検溶液は、濃度毎に別なプレートに貯留されている
請求項1又は請求項2記載の測定装置。
【請求項4】
前記測定チップに前記供給手段から被検溶液が供給された状態で、当該測定チップの検体物質の付着領域で全反射されるように複数の角度で光ビームを入射させて前記付着領域において全反射された光ビームの光強度分布に基づいて前記検体物質と当該被検溶液の反応状態を検出する検出手段をさらに備えた請求項1〜請求項3の何れか1項記載の測定装置。
【請求項5】
前記測定チップは、前記被検溶液を供給可能な供給回数が所定の制限回数に制限されており、
前記検出手段により反応状態を検出可能な位置に前記測定チップを個別に搬送する搬送手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記検出可能な位置の前記測定チップに対して前記供給手段から次の種類の各濃度の前記被検溶液を供給した際の当該測定チップの前記被検溶液の供給回数が前記制限回数よりも大きい場合に、前記測定チップを交換するように前記搬送手段を制御する
請求項4載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図18】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−236852(P2009−236852A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86351(P2008−86351)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】