説明

測角処理装置

【課題】リアルタイム性を維持しつつ、到来信号の測角時における角度アンビギュイティを除去するとともに、良好な精度の測角結果を取得する測角処理装置を得る。
【解決手段】インターフェロメータ方式により到来する信号の測角処理を行う際に、到来する信号を空中線部内の測角用の複数のアンテナ素子で受信し、その中の1つのアンテナ素子で受信した受信レベルと、合成ビームとして和のパターンにより受信した受信レベルとを取得して、これらを比較する。そして、和のパターンによる受信レベルが1つのアンテナ素子による受信レベル以上の場合に、角度アンビギュイティのない測角対象範囲内から到来した信号としてインターフェロメータ方式による測角処理を行うとともに、それ以外の場合には測角対象範囲外の信号として棄却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測角処理装置に係り、特にインターフェロメータ方式を採用した測角処理装置において発生する角度アンビギュイティに対処した測角処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、受信信号の到来方向を取得する手法として、インターフェロメータ方式による測角処理が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。インターフェロメータ方式では、到来する信号の位相情報に基づき測角処理を行っている。すなわち、到来する信号を複数のアンテナ素子からなる空中線本体で受信し、その受信信号間の位相差に基づいて、次式のように到来方向を算出する。
【数1】

【0003】
このような、受信信号の位相情報に基づく測角処理においては、アンテナ素子間の距離dが長いほど良好な測角精度を得ることができるが、アンテナ素子間の距離dが受信信号の半波長を超えると、いわゆる角度アンビギュイティの発生により、同一位相差となる角度が±90°の範囲に複数存在してしまうため、例えば前方正面を中心に左右あるいは上下方向90°の範囲内で受信信号の到来方位を一義的に決めることができなくなる。このため、インターフェロメータ方式による測角処理では、例えば、アンテナ素子間の距離dの異なる、アンテナ素子の複数の組合せを用いて測角処理を繰り返し、その範囲を絞り込みつつ、受信信号の到来方向を算出している。
【0004】
なお、特許文献1には、複数のアンテナ素子の組合せ選択を変更可能にして信頼性を向上させた、インターフェロメータ方式を用いた電波到来角度推定装置及び推定方法が開示されている。また、特許文献2には、不要波が混在する場合でも所望する方探範囲に対応する信号成分のみを抽出してインターフェロメータ方式による測角を行う到来方向測定装置が開示されている。また、特許文献3には、角度アンビギュイティが発生した場合に、予測フィルタ等を用いて到来方向を推定する手法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−240832号公報(第7ページ、図1)
【特許文献2】特開2004−239771号公報(第5ページ、図1)
【特許文献3】特開2005−3579号公報(第9ページ、図1)
【非特許文献1】吉田孝監修「改訂レーダ技術」電子情報通信学会、平成8年10月1日、P.285−286
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、受信信号の位相情報を用いたインターフェロメータ方式による測角処理では、十分な測角精度を得ようとすると、角度アンビギュイティが発生する場合がある。そして、角度アンビギュイティが発生した場合には、複数の測角結果の中から真値を適切に判別するための処理を必要とし、例えば、測角処理演算を繰り返し実行するなど、結果を得るまでに処理時間を要していた。このため、例えば、特に高いデータレートで受信信号の到来方向を取得する必要がある場合等には、必ずしもリアルタイム性が十分ではなく不都合を生じていた。
【0006】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、リアルタイム性を維持しつつ、到来信号の測角時における角度アンビギュイティを除去するとともに、良好な精度の測角結果を取得する測角処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の測角処理装置は、配列された複数のアンテナ素子により到来信号を受信する空中線部と、この空中線部内の近接したアンテナ素子を選択し、これらアンテナ素子による合成ビームを形成する合成ビーム形成部と、前記到来信号を前記空中線部内の1つのアンテナ素子で受信した受信レベル、及び前記合成ビーム形成部で形成した合成ビームで受信した受信レベルのそれぞれを取得するとともに、これら取得した受信レベルを比較してその比較結果に基づき前記空中線部の各アンテナ素子のそれぞれで受信した到来信号を通過させる受信レベル判定部と、インターフェロメータ方式により前記受信レベル判定部を通過した到来信号の到来方向を算出する測角処理部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リアルタイム性を維持しつつ、到来信号の測角時における角度アンビギュイティを除去して、良好な精度の測角結果を取得することができる測角処理装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係る測角処理装置を実施するための最良の形態について、図1乃至図10を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明に係る測角処理装置の第1の実施例の構成を示すブロック図である。図1に例示したように、この測角処理装置は、空中線部10、合成ビーム形成部20、受信レベル判定部30、及び測角処理部40から構成されている。空中線部10は、到来する信号を受信し、受信信号として合成ビーム形成部20に送出する。ここに、空中線部10は、複数n個の配列された測角用のアンテナ素子101(#1〜#n)を備えている。各アンテナ素子101(#1〜#n)は、インターフェロメータ方式を用いた測角処理装置としての要求に基づいて、例えば互いに所定の間隔をおいて方位方向、高低方向、あるいは2次元に配列され、それぞれに到来信号を受信する。
【0011】
合成ビーム形成部20は、この空中線部10内の近接したアンテナ素子を選択し、これら選択したアンテナ素子により合成ビームを形成するとともに、この合成ビームにより受信した受信信号を受信レベル判定部30に送出する。本実施例においては、選択される空中線部10内のアンテナ素子101(#1〜#n)は、n個の中から、その間の距離が到来信号の周波数の1波長未満となる組合せの2つとし、また、形成する合成ビームは、選択されたアンテナ素子による和のパターンとしている。
【0012】
受信レベル判定部30は、空中線部10内の1つのアンテナ素子101からの受信信号の受信レベル、及び合成ビーム形成部20による合成ビームによる受信信号の受信レベルを取得するとともに、これら取得した受信レベルを比較してその結果に基づき、空中線部10内の各アンテナ素子101(#1〜#n)からの受信信号を後段の測角処理部40に通過させる。本実施例においては、受信レベルを比較した結果、合成ビーム形成部20からの和のパターンによる受信レベルが空中線部10内の1つのアンテナ素子101による受信レベル以上の場合に、各受信信号を後段の測角処理部40に通過させている。また、本実施例においては、受信レベルを取得する空中線部10内の1つのアンテナ素子101は、合成ビーム形成部20で選択されたアンテナ素子のいずれかとしているが、これら以外の空中線部10内のアンテナ素子でもよい。
【0013】
アンテナ素子101の受信指向性パターン、及び合成ビーム形成部20による和のパターンの一例をモデル化して図2に例示する。これら2つの指向性パターンによる到来信号の受信レベルを比較すると、この図2の事例では、上記した条件を満足するのは正面から概略±30°の範囲と読みとることができる。インターフェロメータ方式の測角処理で発生する角度アンビギュイティは、各アンテナ素子101(#1〜#n)受信信号間の位相差が大きくなる広角方向(前方正面からの角度が大きくなる方向)から到来する信号に対して起こることが見込まれるため、受信レベル判定部30は、広角方向からの到来信号は通過させず、図2の事例のように、角度アンビギュイティの起こらない範囲として、例えば正面から概略±30°の角度範囲からの受信信号を後段の測角処理部40に送出している。
【0014】
ここに、受信レベル判定部30は、2台の受信器301(#1〜#2)、及び比較・判定部302を備えている。2台の受信器301(#1〜#2)は、受信レベルの取得対象の信号数に対応した台数分(ここでは2台)、いずれも同一の構成のものとして設けられ、受信信号に対して低雑音増幅、周波数変換、検波等の各種受信処理を施し、各信号の受信レベルを取得する。比較・判定部302は、これら受信器301(#1〜#2)で取得した受信レベルを比較し、合成ビーム形成部20からの和のパターンによる受信レベルが空中線部10内の1つのアンテナ素子101による受信レベル以上の場合に、空中線部10からの各受信信号を後段の測角処理部40に通過させる。
【0015】
測角処理部40は、インターフェロメータ方式の測角処理によって受信信号の到来方向を算出する測角処理アルゴリズムを有しており、受信レベル判定部30を通過した受信信号を受けとって、インターフェロメータ方式の測角処理によりこの受信信号の到来方向を算出する。
【0016】
次に、前出の図1及び図2、ならびに図3のフローチャート及び図4の説明図を参照して、上述のように構成された本実施例の測角処理装置の動作について説明する。図3は、図1に例示した測角処理装置の第1の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。まず、初期化等の後、装置動作が開始されると、空中線部10において到来する信号が各アンテナ素子101(#1〜#n)で受信され、それぞれに受信信号として合成ビーム形成部20に送出される(ST31)。
【0017】
合成ビーム形成部20では、合成ビームを形成するために選択した空中線部10内の2つのアンテナ素子101からの受信信号を合成する。本実施例では、合成ビームとして和のパターンを形成するように受信信号を合成する。なお、選択する空中線部10内のアンテナ素子については、例えば、初期化処理等の中であらかじめ選択設定しておくこともできる。合成後の信号は、和のパターンによる受信信号として、空中線部10の各アンテナ素子101(#1〜#n)からの受信信号とともに、受信レベル判定部30に送出される(ST32)。
【0018】
次いで、受信レベル判定部30は、合成ビーム形成部20からこれらの受信信号を受けとると、まず、受信器301(#1〜#2)を用いて、空中線部10内の1つのアンテナ素子101からの受信信号の受信レベル、及び和のパターンによる受信信号の受信レベルをそれぞれに取得し、比較・判定部302に送る(ST33)。比較・判定部302では、これら取得した2つの受信レベルを比較する(ST34)。そして、和のパターンによる受信レベルが空中線部10内の1つのアンテナ素子101による受信レベル以上の場合に、各受信信号を後段の測角処理部40に通過させる(ST35のY)。一方、これ以外の場合には、各受信信号は測角処理部40に送られることなく棄却される(ST35のN)。
【0019】
このような受信レベルに基づいた判定によって、図4の説明図に例示したように、信号の到来範囲が角度アンビギュイティを含まないような範囲に限定され、この範囲内から到来する信号が測角対象の信号として後段の測角処理部40に送出される。すなわち、例えば図2の事例においては、正面から概ね±30°の範囲から到来する信号が測角対象として測角処理部40に送出される(ST35)。
【0020】
そして、受信レベル判定部30を通過した受信信号は、測角処理部40においてインターフェロメータ方式を用いた測角処理によりその到来方向が算出され、測角結果としてさらに後段の機器等に対して送出される(ST36)。この後は、動作の終了が指示されるまで、上述したST31のステップからの動作を繰り返す(ST37)。
【0021】
以上説明したように、本実施例においては、インターフェロメータ方式により到来する信号の測角処理を行う際に、到来する信号を空中線部内の測角用の複数のアンテナ素子で受信し、その中の1つのアンテナ素子で受信した受信レベルと、合成ビームとして和のパターンにより受信した受信レベルとを取得して、これらを比較している。そして、和のパターンによる受信レベルが1つのアンテナ素子による受信レベル以上の場合に、角度アンビギュイティのない測角対象範囲内から到来した信号としてインターフェロメータ方式による測角処理を行うとともに、それ以外の場合には測角対象範囲外の信号として棄却している。
【0022】
これにより、受信レベルの比較という、多くの演算処理負荷を伴うことのない手法によって、角度アンビギュイティの発生が見込まれる方向範囲から到来する信号を測角対象外として棄却した上で、測角対象の信号に対してインターフェロメータ方式による測角処理を行うので、リアルタイム性を維持しつつ、到来信号の測角時における角度アンビギュイティを除去して、良好な精度で測角結果を取得することができる。
【実施例2】
【0023】
図5は、本発明に係る測角処理装置の第2の実施例の構成を示すブロック図である。また、図7は、この測角処理装置の第2の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。この第2の実施例について、図1及び図3に示した第1の実施例の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。この第2の実施例が第1の実施例と異なる点は、合成ビームの形成に際し、第1の実施例においては、選択されたアンテナ素子により形成する合成ビームを、和のパターンとしたのに対し、第2の実施例においては、形成する合成ビームを差のパターンとした点である。以下、前出の図1及び図3、ならびに図5乃至図7を参照して、その相違点のみを説明する。
【0024】
図5に例示したように、この測角処理装置は、空中線部10、合成ビーム形成部21、受信レベル判定部31、及び測角処理部40から構成されている。空中線部10、及び測角処理部40は、第1の実施例と同様に構成される。合成ビーム形成部21は、合成ビームとして、選択したアンテナ素子により差のパターンを形成し、この差のパターンで受信した受信信号を受信レベル判定部31に送出する。
【0025】
受信レベル判定部31は、受信器301(#1〜#2)のそれぞれを用いて、空中線部10内の1つのアンテナ素子101からの受信信号の受信レベル、及び合成ビーム形成部21からの差のパターンによる受信信号の受信レベルを取得するとともに、比較・判定部312においてこれら受信レベルを比較する。そして、空中線部10内の1つのアンテナ素子101による受信レベルが、合成ビーム形成部21からの差のパターンによる受信レベル以上の場合に、空中線部10の各アンテナ素子からの受信信号を後段の測角処理部40に通過させる。
【0026】
アンテナ素子101の受信指向性パターン、及び合成ビーム形成部21による差のパターンの一例をモデル化して図6に例示する。比較・判定部312における比較・判定の結果、この図6の事例においては、例えば、正面から概略±30°の範囲からの到来信号が測角処理部40に送出されることになる。
【0027】
次に図7のフローチャートを参照して、この測角処理装置の動作について説明する。まず、第1の実施例と同様に、空中線部10の各アンテナ素子101(#1〜#n)からの受信信号が合成ビーム形成部21に送られてくると(ST31)、合成ビーム形成部21は、合成ビームとして差のパターンを形成するように、選択した2つのアンテナ素子からの受信信号を合成する。合成後の信号は、差のパターンによる受信信号として、受信レベル判定部31に送出される(ST72)。次いで、受信レベル判定部31では、受信器301(#1〜#2)により空中線部10内の1つのアンテナ素子101からの受信信号の受信レベル、及び差のパターンによる受信信号の受信レベルをそれぞれに取得し(ST33)、比較・判定部312に送る。
【0028】
比較・判定部312では、これら取得した2つの受信レベルを比較し(ST34)、空中線部10内の1つのアンテナ素子101による受信レベルが、合成ビーム形成部21からの差のパターンによる受信レベル以上の場合に、空中線部10の各アンテナ素子101(#1〜#n)からの各受信信号を角度アンビギュイティの起こらない方向範囲から到来する信号として後段の測角処理部40に通過させ、これ以外の場合は、これら各受信信号を棄却する(ST75)。そして、測角処理部40では、インターフェロメータ方式を用いた測角処理により、受信レベル判定部31を通過した受信信号の到来方向が算出され(ST36)、さらに、動作終了が指示されるまで、上述した動作が継続される(ST37)。
【0029】
以上説明したように、本実施例においては、空中線部内の1つのアンテナ素子で受信した受信レベルと、合成ビームとして形成した差のパターンにより受信した受信レベルとの比較結果によって、角度アンビギュイティの発生が見込まれる方向範囲から到来する信号を棄却しており、第1の実施例と同様に、リアルタイム性を維持しつつ、到来信号の測角時における角度アンビギュイティを除去して、良好な精度で測角結果を取得することができる。
【実施例3】
【0030】
図8は、本発明に係る測角処理装置の第3の実施例の構成を示すブロック図である。また、図10は、この測角処理装置の第3の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。この第3の実施例について、図1及び図3に示した第1の実施例の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。この第3の実施例が第1及び第2の実施例と異なる点は、合成ビームの形成に際し、第1及び第2の実施例においては、選択されたアンテナ素子により、それぞれ和のパターンまたは差のパターンを形成したのに対し、第3の実施例においては、形成する合成ビームを和のパターン及び差のパターンの両方とするとともに、受信レベルの比較及び判定に際しては、これら2つの合成ビームによる受信レベルと1つのアンテナ素子による受信レベルとの3つの値に基づき判定を行うようにした点である。以下、前出の図1及び図3、図5及び図7、ならびに図8乃至図10を参照して、その相違点のみを説明する。
【0031】
図8に例示したように、この測角処理装置は、空中線部10、合成ビーム形成部22、受信レベル判定部32、及び測角処理部40から構成されている。空中線部10、及び測角処理部40については、第1の実施例と同様に構成される。合成ビーム形成部22は、合成ビームとして、選択したアンテナ素子により、和のパターン、及び差のパターンを形成し、それぞれのパターンで受信した受信信号を受信レベル判定部32に送出する。
【0032】
受信レベル判定部32は、3台の受信器301(#1〜#3)を備えるように構成され、これらを用いて空中線部10内の1つのアンテナ素子101からの受信信号の受信レベル、ならびに合成ビーム形成部22からの和のパターン及び差のパターンによる受信信号の受信レベルを取得するとともに、比較・判定部322において、取得された3つの受信レベルを比較する。そして、空中線部10内の1つのアンテナ素子101による受信レベルが、合成ビーム形成部22からの差のパターンによる受信レベル以上かつ和のパターンによる受信レベル以下の場合に、空中線部10の各アンテナ素子からの受信信号を後段の測角処理部40に通過させる。
【0033】
アンテナ素子101の受信指向性パターン、ならびに合成ビーム形成部22による和のパターン及び差のパターンの一例をモデル化して図9に例示する。比較・判定部322における比較・判定の結果、この図9の事例においても、例えば、正面から概略±30°の範囲からの到来信号が測角処理部40に送出されることになる。
【0034】
次に、図10のフローチャートを参照して、この測角処理装置の動作について説明する。まず、空中線部10の各アンテナ素子101(#1〜#n)からの受信信号が合成ビーム形成部21に送られてくると(ST31)、合成ビーム形成部22は、合成ビームとして和のパターン及び差のパターンを形成するように、選択した2つのアンテナ素子からの受信信号を合成する。合成後の信号は、それぞれ和のパターン、及び差のパターンによる受信信号として、受信レベル判定部32に送出される(ST102)。次いで、受信レベル判定部32では、受信器301(#1〜#3)により空中線部10内の1つのアンテナ素子101からの受信信号の受信レベル、ならびに合成ビーム形成部22からの和のパターン及び差のパターンによる受信信号の受信レベルをそれぞれに取得し(ST33)、比較・判定部322に送る。
【0035】
比較・判定部322では、これら取得した3つの受信レベルを比較し(ST34)、空中線部10内の1つのアンテナ素子101による受信レベルが、合成ビーム形成部22からの差のパターンによる受信レベル以上かつ和のパターンによる受信レベル以下の場合に、空中線部10の各アンテナ素子101(#1〜#n)からの各受信信号を角度アンビギュイティの起こらない方向範囲から到来する信号として後段の測角処理部40に通過させ、これ以外の場合は、これら各受信信号を棄却する(ST105)。そして、測角処理部40では、インターフェロメータ方式を用いた測角処理により、受信レベル判定部32を通過した受信信号の到来方向が算出され(ST36)、さらに、動作終了が指示されるまで、上述した動作が継続される(ST37)。
【0036】
以上説明したように、本実施例においては、空中線部内の1つのアンテナ素子で受信した受信レベルと、合成ビームとして形成した和のパターン、及び差のパターンのそれぞれにより受信した受信レベルとの比較結果によって、角度アンビギュイティの発生が見込まれる方向範囲から到来する信号を棄却しており、第1及び第2の実施例と同様に、リアルタイム性を維持しつつ、到来信号の測角時における角度アンビギュイティを除去して、良好な精度で測角結果を取得することができる。
【0037】
なお、本発明は、上記した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る測角処理装置の第1の実施例の構成を示すブロック図。
【図2】アンテナ素子101の受信指向性パターン、及び合成ビーム形成部20による和のパターンの一例をモデル化して示す図。
【図3】図1に例示した測角処理装置の第1の実施例の動作を説明するためのフローチャート。
【図4】角度アンビギュイティを含まない測角対象範囲の一例をモデル化して示す説明図。
【図5】本発明に係る測角処理装置の第2の実施例の構成を示すブロック図。
【図6】アンテナ素子101の受信指向性パターン、及び合成ビーム形成部21による差のパターンの一例をモデル化して示す図。
【図7】図5に例示した測角処理装置の第2の実施例の動作を説明するためのフローチャート。
【図8】本発明に係る測角処理装置の第3の実施例の構成を示すブロック図。
【図9】アンテナ素子101の受信指向性パターン、及び合成ビーム形成部22による和のパターン及び差のパターンの一例をモデル化して示す図。
【図10】図8に例示した測角処理装置の第3の実施例の動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0039】
10 空中線部
20、21、22 合成ビーム形成部
30、31、32 受信レベル判定部
40 測角処理部
101 アンテナ素子
301 受信器
302、312、322 比較・判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列された複数のアンテナ素子により到来信号を受信する空中線部と、
この空中線部内の近接したアンテナ素子を選択し、これらアンテナ素子による合成ビームを形成する合成ビーム形成部と、
前記到来信号を前記空中線部内の1つのアンテナ素子で受信した受信レベル、及び前記合成ビーム形成部で形成した合成ビームで受信した受信レベルのそれぞれを取得するとともに、これら取得した受信レベルを比較してその比較結果に基づき前記空中線部の各アンテナ素子のそれぞれで受信した到来信号を通過させる受信レベル判定部と、
インターフェロメータ方式により前記受信レベル判定部を通過した到来信号の到来方向を算出する測角処理部とを備えたことを特徴とする測角処理装置。
【請求項2】
前記合成ビーム形成部で選択される前記空中線部内のアンテナ素子は、これらアンテナ素子間の距離が前記到来信号の周波数の1波長未満に位置するものであることを特徴とする請求項1に記載の測角処理装置。
【請求項3】
前記合成ビーム形成部で形成する合成ビームは、前記選択されたアンテナ素子による和のパターンとするとともに、前記受信レベル判定部は、受信レベルの比較結果において前記合成ビームによる受信レベルが前記1つのアンテナ素子による受信レベル以上の場合に、前記空中線部の各アンテナ素子のそれぞれで受信した到来信号を通過させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測角処理装置。
【請求項4】
前記合成ビーム形成部で形成する合成ビームは、前記選択されたアンテナ素子による差のパターンとするとともに、前記受信レベル判定部は、受信レベルの比較結果において前記合成ビームによる受信レベルが前記1つのアンテナ素子による受信レベル以下の場合に、前記空中線部の各アンテナ素子のそれぞれで受信した到来信号を通過させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測角処理装置。
【請求項5】
前記合成ビーム形成部で形成する合成ビームは、前記選択されたアンテナ素子による和のパターン及び差のパターンとするとともに、前記受信レベル判定部は、受信レベルの比較結果において前記1つのアンテナ素子による受信レベルが前記差のパターンによる受信レベル以上、かつ前記和のパターンによる受信レベル以下の場合に、前記空中線部の各アンテナ素子のそれぞれで受信した到来信号を通過させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測角処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−139486(P2010−139486A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318878(P2008−318878)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】