説明

測量装置、鉄道測量システム、測量プログラム、情報記憶媒体

【課題】作業員が現地に赴かなくとも鉄道沿線設備の測量を簡単に行うことができる測量装置、鉄道測量システム、測量プログラム、及びこの測量プログラムを記憶した情報記憶媒体を提供する。
【解決手段】ビデオカメラ10は、列車1の進行方向の画像を撮影し、画像データを生成する。列車1の車載装置2は、ビデオカメラ10が生成した画像データをMPEG等でエンコードする。さらに、車載装置2は、測位部12から位置情報を取得する。そして、車載装置2は、動画データを構成する各画像フレームと各画像フレームを撮影した時のビデオカメラ10の位置とを対応付けた対応テーブル20を作成し、動画データ及び対応テーブル20をUSBメモリ18に保存する。測量装置3は、2枚の画像フレームが確定すると、その対応テーブル20に基づいて両画像フレーム間の距離を算出し、その距離と両画像フレームとに基づいて架線柱90の測量を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の進行方向に存在する鉄道沿線設備の測量を行う測量装置、この測量装置を用いる鉄道測量システム、この測量をコンピュータに実行させる測量プログラム、及びこの測量プログラムを記憶した情報記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、線路上を進行する列車の進行方向には、列車の進行を補助する鉄道沿線設備が設置されている。鉄道沿線設備とは、例えば信号機や架線柱などである。
【0003】
現在、鉄道沿線設備には老朽化が進んでいるものも多くあり、鉄道沿線設備の取替えが必要となってきている。鉄道沿線設備の取替えにあたっては、鉄道沿線設備の寸法を事前に調べておく必要がある。しかし、取替えの必要な鉄道沿線設備は例えば10年以上昔に設置されており、鉄道沿線設備の寸法を記述した図面等は殆ど存在していないのが実状である。
【0004】
従って、現状では、作業員が鉄道沿線設備の測量を現地に赴いて直接行わなければならないという状況となっている。
なお、特許文献1では、2台のCCDカメラでレールを認識する鉄道測量システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−2485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、鉄道沿線設備は線路に沿って設置されており、線路の上方に位置するものもある。そのため、鉄道沿線設備の測量では、作業員が高所で測量したり、測量前に鉄道沿線設備を停電させたり、測量中に列車が鉄道沿線設備に近づいて来ないかを見張る人員を確保したりしなければならない。
従って、現地における鉄道沿線設備の測量には、非常に多くの労力と危険を伴うという問題があった。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決しようとするものであり、作業員が現地に赴かなくとも鉄道沿線設備の測量を簡単に行うことができる測量装置、鉄道測量システム、測量プログラム、及びこの測量プログラムを記憶した情報記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の測量装置は、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0009】
(1)線路上を進行する列車に取り付けられた単一のビデオカメラにより撮影された前記列車の進行方向の画像を示す動画データと、前記動画データに基づく動画を構成する複数の画像フレームと各画像フレームを撮影した時の前記ビデオカメラの位置とを対応付けた対応テーブルと、が記録されたメディアから、前記動画データを読み取る読取手段と、
前記列車の進行方向に沿って存在する鉄道沿線設備の測量を行う測量手段と、を有する測量装置であって、
測量すべき前記鉄道沿線設備について、前記ビデオカメラの第一の位置の入力を受け付ける入力手段を有し、
前記読取手段は、前記入力手段で入力された前記第一の位置で前記ビデオカメラが撮影した前記鉄道沿線設備の画像フレームと、前記入力手段で入力された前記第一の位置から所定距離変位した第二の位置で前記ビデオカメラが撮影した同じ前記鉄道沿線設備の画像フレームと、を前記対応テーブルに基づいて前記動画データから読み取り、
前記測量手段は、
前記第一の位置から前記第二の位置までの距離を算出し、
前記読取手段により読み取られた前記両画像フレームと算出した前記距離とに基づいて、前記鉄道沿線設備の測量を行うことを特徴とする。
【0010】
この構成において、メディアは、例えば光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリである。また、鉄道沿線設備とは、例えば信号機や架線柱などである。
この構成において測量者は、寸法を知りたい鉄道沿線設備について、第一の位置を入力手段で入力する。これにより、読取手段が、第一の位置に対応する画像フレームと、第二の位置に対応する画像フレームとを対応テーブルから読み取る。さらに、測量手段が第一の位置から第二の位置までの距離を算出する。そして、測量手段は、同一の鉄道沿線設備を写す2枚の画像フレームについてステレオ視を行うことで該鉄道沿線設備の測量を行う。従って、作業員が現地に赴かなくとも鉄道沿線設備の測量を簡単に行うことができる。
【0011】
(2)前記鉄道沿線設備は、門型の架線柱であり、
前記動画データから読み取られた前記画像フレーム上における前記架線柱の両角の指定を受け付ける指定手段を有し、
前記測量手段は、前記指定手段で前記架線柱の両角の2点が指定されると、いずれか一方の点と前記第一の位置を結ぶ第一指定線と前記2点の中心線とが成す第一の角と、いずれか一方の点と前記第二の位置を結ぶ第二指定線と前記中心線とが成す第二の角と、算出した前記距離と、に基づいて、前記鉄道沿線設備の測量を行うことを特徴とする。
【0012】
この構成では、門型の架線柱を測量する際のパラメータを具体的に明示している。
この構成において測量者は、寸法を知りたい架線柱について、第一の位置と第二の位置を入力手段で入力するとともに、上記の2点を指定手段で指定する。すると、測量手段が、その架線柱について測量を行う。従って、作業員が現地に赴かなくとも門型の架線柱の測量を簡単に行うことができる。
【0013】
(3)前記測量手段が測量した測量結果を、測量した前記鉄道沿線設備の位置と対応付けて記憶する記憶手段を有することを特徴とする。
【0014】
この構成では、測量結果は測量した鉄道沿線設備の位置と対応付けて記憶手段に保存される。そのため、測量者は測量結果をデータ化した状態で保持することができる。
【0015】
また、本発明の鉄道測量システムは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0016】
(4)線路上を進行する列車に取り付けられ、前記列車の進行方向の画像を撮影する単一のビデオカメラと、
撮影中の前記ビデオカメラの位置を測位する測位手段と、
前記ビデオカメラにより撮影された画像に基づいて動画データを作成するとともに、作成した前記動画データを構成する複数の画像フレームと各画像フレームを撮影した時の前記撮影手段の位置とを対応付けた対応テーブルを作成する作成手段と、
を有する車載装置と、
上記(1)から(3)のいずれかに記載の測量装置と、を備えることを特徴とする。
【0017】
この構成における鉄道測量システムの車載装置は、上記(1)から(3)の測量装置が用いる動画データと対応テーブルを作成している。
これにより、上記(1)と同様の効果を奏する。
【0018】
また、本発明の測量プログラムは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0019】
(5)線路上を進行する列車に取り付けられたビデオカメラにより撮影された前記列車の進行方向の画像を示す動画データと、前記動画データに基づく動画を構成する複数の画像フレームと各画像フレームを撮影した時の前記ビデオカメラの位置とを対応付けた対応テーブルと、が記録されたメディアから、前記動画データを読み取って再生する第1ステップと、
前記第1ステップによる前記動画データの再生時、前記列車の進行方向に沿って存在する測量すべき鉄道沿線設備について、前記ビデオカメラの第一の位置の入力を受け付ける第2ステップと、
前記第2ステップで入力された前記第一の位置で前記ビデオカメラが撮影した前記鉄道沿線設備の画像フレームと、前記第2ステップで入力された前記第一の位置から所定距離変位した第二の位置で前記ビデオカメラが撮影した同じ前記鉄道沿線設備の画像フレームと、を前記対応テーブルに基づいて前記動画データから読み取る第3ステップと、
前記第一の位置から前記第二の位置までの距離を算出する第4ステップと、
前記第3ステップにより読み取られた前記両画像フレームと前記第4ステップで算出した前記距離とに基づいて、前記鉄道沿線設備の測量を行う第5ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0020】
この構成における測量プログラムは、上記(1)で行われる処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
これにより、上記(1)と同様の効果を奏する。
【0021】
また、本発明の情報記憶媒体は、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0022】
(6)上記(5)に記載の測量プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体。
【0023】
この構成において情報記憶媒体は、例えば光ディスク、又は半導体メモリである。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、作業員が現地に赴かなくとも鉄道沿線設備の測量を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態である鉄道測量システムの車載装置の各部の構成を示すブロック図
【図2】上記車載装置の制御部が行う動作を示すフローチャート
【図3】ビデオカメラで任意の架線柱を撮影する時の様子を示す図
【図4】第一の位置と第二の位置で撮影された架線柱の画像フレームを示す図
【図5】動画データを構成する複数の画像フレームと位置情報とを対応付けた対応テーブルの一例を示す図
【図6】本発明の実施形態である鉄道測量システムの測量装置の各部の構成を示すブロック図
【図7】上記測量装置の制御部が行う動作を示すフローチャート
【図8】本発明の実施形態において測量中に表示される表示画面の一例を示す図
【図9】ビデオカメラで2本の架線柱を撮影する時の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態である鉄道測量システムについて説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態である鉄道測量システムの車載装置の各部の構成を示すブロック図である。車載装置2は、ビデオカメラ10と接続されるインタフェースとしての画像取込部11と、ビデオカメラ10の位置を測位する測位部12と、装置本体各部の動作を制御する制御部13と、情報を記憶する記憶部14と、操作者による入力操作を受け付ける操作部15と、情報を表示する表示部16と、USBメモリ18が装着されるUSBポート17と、を有する。本発明の実施形態である鉄道測量システムは、この車載装置2と後述の測量装置3(図6)とで構成される。
なお、この実施形態におけるビデオカメラ10及び車載装置2は、列車1の先頭車両に設置されているが、実施の際は、列車1のどこに設置しても構わない。ただし、ビデオカメラ10及び車載装置2は、同一の車両に設置することが好ましい。
【0028】
記憶部14は、例えばハードディスク、又はフラッシュメモリで構成される。記憶部14は、装置本体各部の制御方法が記述された制御プログラムを記憶する。
【0029】
ビデオカメラ10は、線路上を矢印の方向へ進行する列車1の先頭車両の運転席に取り付けられている。ビデオカメラ10は、列車1の進行方向の画像を撮影し、撮影した画像を示す画像データを生成する。そして、ビデオカメラ10は、画像データを画像取込部11に出力する。
【0030】
画像取込部11は、ビデオカメラ10から入力される画像データを取り込み、制御部13に出力する。
【0031】
制御部13は、例えばMPUで構成され、制御プログラムで処理されるデータを展開するワークフィールドとしてのRAM13Aを内蔵する。制御部13は、画像取込部11から入力される画像データを例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)でエンコードする。これにより、この実施形態では30画像フレーム/秒の動画データが作成される(後述の図5参照)。そして、制御部13は作成した動画データを記憶部14又はUSBメモリ18に保存する。ここで、MPEG方式で符号化された画像データには、周知のように、1画像フレームの画面のすべてを予測を用いずイントラ符号化する画像フレーム内符号化画像(Iピクチャ)と、予測を用いる画像フレーム間順方向予測符号化画像(Pピクチャ)と、I、Pピクチャを先に処理した後でその間に挿入される、予測を用いる双方向予測符号化画像(Bピクチャ)のピクチャタイプがある。即ち、Iピクチャは単体で1枚の画像に復元され、P、Bピクチャは、Iピクチャに基づいて画像に復元される。
なお、制御部13が、本発明の「作成手段」に相当する。
【0032】
測位部12は、例えばGPSアンテナと、RFアンプと、A/Dと、データレジスタと、カウンタと、デコーダと、それらを制御するマイクロコンピュータと、により構成されている。測位部12は、GPS衛星からの電波をGPSアンテナで受信する。次に、測位部12は、その受信信号を増幅し、復調する。そして、測位部12は、復調により取得した衛星データを解読する。そして、測位部12は、解読したデータによりビデオカメラ10の位置を計測する。最後に、測位部12は、計測により得られた位置情報を制御部13に送出する。この位置情報は、ビデオカメラ10の緯度経度をXY座標系で示す情報である(後述の図5参照)。
なお、正確な測位を行うため、測位部12は、XY座標系でビデオカメラ10と同じ位置に設置することが好ましい。
【0033】
操作部15には、ユーザからの操作入力を受け付ける複数のキーが設けられている。複数のキーには、例えば動画像の撮影開始を指示するための撮影開始キー、動画像の撮影終了を指示するための撮影終了キー等が含まれる。
【0034】
表示部16は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)で構成される。
【0035】
ここで、この実施形態では、列車1の進行方向の画像を撮影する撮影段階と、撮影段階で撮影された画像に基づいて鉄道沿線設備の測量を行う測量段階とに分かれる。まず、撮影段階について説明する。
【0036】
図2は、上記車載装置の制御部が行う動作を示すフローチャートである。図3は、ビデオカメラで任意の架線柱を撮影する時の様子を示す図である。図4の(A)は、図3に示す第二の位置92で撮影された架線柱90の画像を示し、図4の(B)は、図3に示す第一の位置91で撮影された架線柱90の画像を示している。図5は、動画データを構成する複数の画像フレームと位置情報とを対応付けた対応テーブルの一例を示す図である。
【0037】
操作者は、列車1が車庫や駅から出発する時に撮影開始キーを押下する。これにより、制御部13は、図2に示す撮影処理を実行する。これにより、列車1の進行方向の画像の撮影がビデオカメラ10により開始される。
【0038】
まず、制御部13は、画像取込部11で取り込まれるオリジナルの画像データを取得する(S1)。
【0039】
そして、制御部13は、その画像データをエンコードし、動画データ(この実施形態では30画像フレーム/秒)を作成する(S2)。ここで、ビデオカメラ10による撮影では、例えば、図3に示すような架線柱90が撮影の対象となる。そして、図3において第一の位置91から架線柱90を撮影したものが図4(B)に示す画像フレーム101であり、第二の位置92から架線柱90を撮影したものが図4(A)に示す画像フレーム102である。画像フレーム101、102は、S2で作成される動画データに基づく動画を構成する全画像フレームの一部の画像フレームである。画像フレーム101は遠くから画像フレーム102は近くから架線柱90を撮影した画像フレームであるため、架線柱90の画像は、画像フレーム102から画像フレーム101にかけて大きくなっている。
【0040】
さらに、制御部13は、測位部12から位置情報を取得する(S3)。これにより、列車1が通過した全位置の緯度経度がXY座標系で制御部13に取得される。例えば、第一の位置91や第二の位置92の緯度経度がXYの値で制御部13に取得される。
【0041】
制御部13は、動画データを構成する各画像フレームと各画像フレームを撮影した時のビデオカメラ10の位置とを対応付けた対応テーブル20(図5参照)を作成し、動画データを対応テーブル20とともに記憶部14又はUSBメモリ18に保存する(S4)。S4では、USBメモリ18がUSBポート17に装着されていれば、制御部13は、対応テーブル20及び動画データをUSBメモリ18に保存する。S4においてUSBメモリ18がUSBポート17に装着されていない場合、操作者が動画データを記憶部14からUSBメモリ18にコピー又は移動する。
【0042】
以後、制御部13は、動画像の撮影終了が撮影終了キーで指示されるまでS1〜S4の動作を繰り返す。そして撮影が終了すると、動画データを格納した動画ファイルがUSBメモリ18に保存されている状態となる。操作者は、USBメモリ18をUSBポート17から取り外し、測量を行う測量者が、そのUSBメモリ18を図6に示す測量装置3のUSBポート31に装着する。そして測量装置3において、測量者が架線柱90等の鉄道沿線設備の測量を行う。
【0043】
なお、この実施形態では動画データをUSBメモリ18に記録しているが、実施の際は、動画データを磁気性のビデオテープに記録しても構わない。この場合、測量者はUSBメモリ18の代わりにこのビデオテープを測量に用いる。
【0044】
次に、測量段階について説明する。
【0045】
図6は、本発明の実施形態である鉄道測量システムの測量装置の各部の構成を示すブロック図である。測量装置3は、上記のUSBメモリ18が装着されるUSBポート31と、装置本体各部の動作を制御する制御部32と、情報を記憶する記憶部33と、操作者による入力操作を受け付ける操作部34と、情報を表示する表示部35と、セットされた光ディスク37からデータを読み取って制御部32に伝送するドライブ装置36と、を有する。
【0046】
制御部32は、例えばMPUで構成され、制御プログラムで処理されるデータを展開するワークフィールドとしてのRAM32Aを内蔵する。制御部32は、USBメモリ18に記録されている情報をUSBポート31を介して読み取る。
【0047】
記憶部33は、例えばハードディスクで構成される。記憶部33は、装置本体各部の制御方法が記述された制御プログラムと、該制御プログラムに予めインストールされた測量支援プログラムと、を記憶する。
【0048】
なお、測量装置3の管理者が、測量支援プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な光ディスク37(この実施形態ではCD−ROM)をドライブ装置36にセットし、インストールを操作部34で指示する。これにより、上記測量支援プログラムが、制御部32によって制御プログラムにインストールされる。
【0049】
操作部34には、ユーザからの操作入力を受け付ける複数のキーが設けられている。複数のキーには、例えば測量支援プログラムの起動を指示する起動キー、表示部35の画面上に表示されるカーソル52(後述の図8参照)の移動を受け付けるカーソルキー、表示部35の画面上でカーソル52が指すものを指定する指定キー、数字と小数点の入力を受け付けるテンキー、実行中の測量支援プログラムの終了を指示する終了キー、等が含まれる。
【0050】
表示部35は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)で構成される。
【0051】
なお、制御部32が、本発明の「読取手段」「測量手段」に相当する。また、USBメモリ18が、本発明の「メディア」に相当する。また、操作部34が、本発明の「入力手段」「指定手段」に相当する。また、測量支援プログラムが、本発明の「測量プログラム」に相当する。
【0052】
図7は、上記測量装置の制御部が行う動作を示すフローチャートである。この動作は、対応テーブル20及び動画ファイルが記録されたUSBメモリ18をUSBポート31に装着した状態で測量者が起動キーを押下した時の動作である。
【0053】
制御部32は、測量支援プログラムを起動し、測量支援プログラムを記憶部33からRAM32A上に展開する(S101)。そして、制御部32は、測量支援プログラムに従って以下の処理を実行する。
【0054】
制御部32は、USBメモリ18に記録されている動画ファイルの再生を表示部35で開始する(S102)。これにより、表示部35には例えば図8に示すような画面が表示され、動画ファイルに基づく動画が表示部35のビデオ領域41で再生される。
【0055】
図8は、本発明の実施形態において測量中に表示される表示画面の一例を示す図である。表示部35の画面上には、測量者が測量を行うウィンドウ40と、地図を表示するウィンドウ60と、測量結果がテーブル形式で記述されていくウィンドウ70と、カーソル52と、が表示されている。
【0056】
ウィンドウ60には、地図と、地図上に存在する線路を示す線路ライン61と、現在ビデオ領域41で再生されている画像フレームを撮影した時のビデオカメラ10の位置を示すポインタ62と、が表示される。制御部32は、ビデオ領域41で再生される画像フレームに応じて地図を対応テーブル20に基づいてウィンドウ60で表示する。さらに、制御部32は、ビデオ領域41で再生される画像フレームに応じて、ポインタ62を対応テーブル20に基づいて移動させる。そして、制御部32は、ポインタ62の位置に応じてウィンドウ60の地図をスクロールさせる。
なお、ビデオカメラ10は列車1に取り付けられているため、ポインタ62は現時点の列車1の位置も示す。
【0057】
ウィンドウ40には、ビデオ領域41と、ステータスバー42と、フレーム44と、巻戻しボタン45と、前のチャプタにジャンプする頭出しボタン46と、一時停止ボタン47と、再生ボタン48と、次のチャプタにジャンプする頭出しボタン49と、早送りボタン50と、フレーム51と、が表示される。ステータスバー42は、動画ファイルの全再生時間を示し、現時点バー43で現時点の再生経過時間を示す。そして、フレーム44で示される時間が現時点バー43における再生経過時間を示す。ビデオ領域41は、現時点における再生経過時間の画像フレーム画像を表示する領域である。フレーム51には、撮影開始地点から現在地点までの距離、即ち列車1が進行した移動距離が示される。制御部32は、対応テーブル20に基づいて撮影開始地点と現在地点の位置情報から移動距離を算出し、フレーム51に表示する。また、フレーム51では、ユーザが上述のテンキーで所望の移動距離を指定することもできる。
【0058】
また、カーソル52は、カーソルキーの操作によって表示部35の画面上を移動するカーソルである。
【0059】
S102の後、制御部32は、ウィンドウ60で任意の一地点が指定されたかどうか(S103)、又はウィンドウ40のフレーム51で任意の移動距離が指定されたかどうか(S104)、を判定する。S103及びS104では、測量者が、ウィンドウ60で表示される線路ライン61上の任意の一地点にカーソル52を合わせ、指定キーで指定する状態となっている。これにより、制御部32は、指定された地点にポインタ62を移し、そのポインタ62の指す位置に応じた画像フレームを、対応テーブル20に基づいてビデオ領域41で表示する。さらに、S103及びS104では、測量者が、カーソル52をフレーム51に合わせ、テンキーで所望の移動距離を指定する状態になっている。すると、制御部32は、対応テーブル20に基づいて、指定された移動距離に対応する箇所に現時点バー43を移す。この結果、指定された移動距離に対応する画像フレームがビデオ領域41で表示される。
【0060】
S103及びS104において任意の一地点が指定されると、制御部32は、その指定地点を第一位置とし、その第一位置における画像フレームをビデオ領域41で表示する(S105)。これにより、この実施形態では、図8(B)に示すような画像フレーム101が表示され、第一位置91が確定する。測量者は、この画像フレーム101を見ながら、測量したい2点間の両端にカーソル52を合わせ、2点を指定キーで指定する。これにより、2端点P1、P2が図8(B)に示すように画像フレーム101上でマークされる。
【0061】
画像フレーム101上で2端点P1、P2が指定されると(S106のY)、制御部32は第二位置の画像フレームを探索する(S107)。ここで、第二位置の画像フレームとは、第一位置を中心とした予め指定された半径内で、第一位置の画像フレームと同じ鉄道沿線設備が写っている画像フレームの内、第一位置から最も離れた位置にある画像フレームをいう。また、その最も離れた位置が第二位置に相当する。
なお、2端点P1、P2が指定されずに再生ボタン48が指定されると(S106のN)、制御部32は動画データの再生を再開してS103に戻る。
【0062】
第二位置の画像フレーム102を発見すると(S108のY)、制御部32は第二位置における画像フレーム102をビデオ領域41で表示する(S109)。これにより、この実施形態では、図8(A)に示すような画像フレーム102が表示され、第二位置92が確定する。測量者は、この画像フレーム102を見ながら、先ほど指定した2端点P1、P2と同じ点にカーソル52を合わせ、2点を指定キーで指定する。これにより、2端点P1、P2が図8(A)に示すように画像フレーム102上でもマークされる。
【0063】
画像フレーム102上で2端点P1、P2が指定されると(S110のY)、制御部32は、両画像フレーム101、102間の距離と両画像フレーム101、102とに基づいて鉄道沿線設備の測量を行う(S111)。即ち、制御部32は、同一の鉄道沿線設備を写す2枚の画像フレーム101、102についてステレオ視を行うことで該鉄道沿線設備の測量を行う。
【0064】
S111で行われる測量について図3、図4、及び図8を用いて詳述する。まず、S105において第一位置91が確定し、S109において第二位置92が確定している。そのため、第一位置91の位置情報と第二位置92の位置情報とに基づいて、図3に示す列車1の移動距離Lが制御部32により算出される。また、架線柱90は、門型の架線柱である。そのため、S106において画像フレーム101上で2端点P1、P2が指定されると、端点P2と第一位置91を結ぶ第一指定線と2端点P1、P2の中心線94との成す角度θが定まる。さらに、S110において画像フレーム102上で2端点P1、P2が指定されると、端点P2と第二位置92を結ぶ第二指定線と中心線94との成す角度θが定まる。よって、制御部32は、移動距離Lと角度θと角度θとに基づいて、架線柱90の測量を行うことができる。
【0065】
ここで、架線柱90の測量で用いる演算式について例示する。まず、架線柱90の高さをZ、2端点P1、P2間の距離を2Tとすると、三平方の定理から、「Z+T=S」の第一式が成立する。これらの内のSは、「S=L×tanθ×tanθ/(tanθ−tanθ)」の第二式で算出できる。次に、Tは、「T=U×tanθ」の第三式と、「T=(U−L)×tanθ」の第四式と、が成立する。そのため、Tの値は2つの連立方程式を解くことで算出できる。従って、「Z+T=S」の式からZの値も求まるため、制御部32は、架線柱90の高さと、2端点P1、P2間の距離と、を測量できる(S111)。また、第二位置92から沿線設備の位置93までの距離Vは、「V=U−L−Z」の第五式で得られるため、制御部32は、沿線設備の設置位置93の位置情報も算出できる。
【0066】
なお、2端点P1、P2間の距離の測量は、指定された端点P1を三次元座標の原点とし、その原点P1から、指定された端点P2までの相対的な距離を算出していることになる。そのため、制御部32は、指定された端点がP2でなくP3であった場合(図9参照)、S111において、原点P1から端点P3までの相対的な距離を算出することになる。図9を用いて詳述すると、制御部32は、端点P1に対して第一位置91と第二位置92でステレオ視を行うことにより端点P1の位置を特定し、三次元座標の原点とする。端点P1の位置の特定は、上記演算式と同じ演算式を用いて行われる。次に、制御部32は、端点P3に対して第一位置95と第二位置96でステレオ視を行うことにより端点P3の位置を特定する。端点P3の位置の特定は、上記演算式と同様の演算式を用いて行われる。即ち、「θ」を「θ」に、「θ」を「θ」に、「L」を「L2」に、「S」を「S2」に、「T」を「T2」に、「U」を「U2」に、「V」を「V2」に、「Z」を「Z2」に、それぞれ置き換えた演算式を用いて行われる。ここで、第一位置91から第一位置95までの距離Mは、測位部12で測定される列車1の進行方向を含むパラメータであり、対応テーブル20から得られる。端点P1と端点P3の位置の特定が完了すると、制御部32は、距離Mに基づいて、端点P1を原点とし、原点P1から端点P3までの相対的な距離を算出する。これにより、架線柱90と架線柱190の間の距離が得られる。
【0067】
S111において架線柱90の測量が完了すると、制御部32は、その測量結果をウィンドウ40(ビデオ領域41の右側)において表示する(S112)。さらに、制御部32は、その測量結果を鉄道沿線設備の位置と対応付けてウィンドウ70に記述する(S113)。ウィンドウ70に記述される測量結果は、テーブル形式で記憶部33に保存される。
なお、測量支援プログラムが終了して次回に起動された時、その測量結果は、測量支援プログラムによって記憶部33から読み取られ、ウィンドウ70で表示される。
【0068】
そして、制御部32は、他の鉄道沿線設備について測量を行うかどうかを測量者に尋ねるメッセージを表示部35の表示画面に表示し、測量を続行するかどうか判定する(S114)。S114では、他の鉄道沿線設備について測量を行うかどうか測量者が再生ボタン48又は終了キーで選択できる状態となっている。
【0069】
S113の後に再生ボタン48が指定されると(S114のY)、制御部32は、動画データの再生を再開し(S115)、S103に戻る。一方、S113の後に終了キーが操作されると(S114のN)、制御部32は、実行中の測量支援プログラムを終了し、本処理を終了する。
【0070】
以上より、測量者は、測量装置3の表示部35の表示画面を見ながら、寸法を知りたい鉄道沿線設備について、2枚の画像フレームと2端点P1、P2を指定していく。これにより、その鉄道沿線設備について測量が行われる。従って、作業員が現地に赴かなくとも鉄道沿線設備の測量を簡単に行うことができる。
また、測量結果は測量した鉄道沿線設備の位置と対応付けて記憶部33に保存されるため、測量者は測量結果をデータ化した状態で保持することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…列車
2…車載装置
3…測量装置
10…ビデオカメラ
11…画像取込部
12…測位部
13…制御部
13A…RAM
14…記憶部
15…操作部
16…表示部
17…USBポート
18…USBメモリ
20…対応テーブル
31…USBポート
32…制御部
32A…RAM
33…記憶部
34…操作部
35…表示部
40…ウィンドウ
41…ビデオ領域
42…ステータスバー
43…現時点バー
44…フレーム
45…巻戻しボタン
46…頭出しボタン
47…一時停止ボタン
48…再生ボタン
49…頭出しボタン
50…早送りボタン
51…フレーム
52…カーソル
60…ウィンドウ
61…線路ライン
62…ポインタ
70…ウィンドウ
90…架線柱
91…第一位置
92…第二位置
93…設置位置
94…中心線
95…第一位置
96…第二位置
97…設置位置
101…画像フレーム
102…画像フレーム
190…架線柱
L…移動距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路上を進行する列車に取り付けられた単一のビデオカメラにより撮影された前記列車の進行方向の画像を示す動画データと、前記動画データに基づく動画を構成する複数の画像フレームと各画像フレームを撮影した時の前記ビデオカメラの位置とを対応付けた対応テーブルと、が記録されたメディアから、前記動画データを読み取る読取手段と、
前記列車の進行方向に沿って存在する鉄道沿線設備の測量を行う測量手段と、を有する測量装置であって、
測量すべき前記鉄道沿線設備について、前記ビデオカメラの第一の位置の入力を受け付ける入力手段を有し、
前記読取手段は、前記入力手段で入力された前記第一の位置で前記ビデオカメラが撮影した前記鉄道沿線設備の画像フレームと、前記入力手段で入力された前記第一の位置から所定距離変位した第二の位置で前記ビデオカメラが撮影した同じ前記鉄道沿線設備の画像フレームと、を前記対応テーブルに基づいて前記動画データから読み取り、
前記測量手段は、
前記第一の位置から前記第二の位置までの距離を算出し、
前記読取手段により読み取られた前記両画像フレームと算出した前記距離とに基づいて、前記鉄道沿線設備の測量を行うことを特徴とする測量装置。
【請求項2】
前記鉄道沿線設備は、門型の架線柱であり、
前記動画データから読み取られた前記画像フレーム上における前記架線柱の両角の指定を受け付ける指定手段を有し、
前記測量手段は、前記指定手段で前記架線柱の両角の2点が指定されると、いずれか一方の点と前記第一の位置を結ぶ第一指定線と前記2点の中心線とが成す第一の角と、いずれか一方の点と前記第二の位置を結ぶ第二指定線と前記中心線とが成す第二の角と、算出した前記距離と、に基づいて、前記鉄道沿線設備の測量を行うことを特徴とする請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記測量手段が測量した測量結果を、測量した前記鉄道沿線設備の位置と対応付けて記憶する記憶手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の測量装置。
【請求項4】
線路上を進行する列車に取り付けられ、前記列車の進行方向の画像を撮影する単一のビデオカメラと、
撮影中の前記ビデオカメラの位置を測位する測位手段と、
前記ビデオカメラにより撮影された画像に基づいて動画データを作成するとともに、作成した前記動画データを構成する複数の画像フレームと各画像フレームを撮影した時の前記撮影手段の位置とを対応付けた対応テーブルを作成する作成手段と、
を有する車載装置と、
請求項1から3のいずれかに記載の測量装置と、を備えることを特徴とする鉄道測量システム。
【請求項5】
線路上を進行する列車に取り付けられたビデオカメラにより撮影された前記列車の進行方向の画像を示す動画データと、前記動画データに基づく動画を構成する複数の画像フレームと各画像フレームを撮影した時の前記ビデオカメラの位置とを対応付けた対応テーブルと、が記録されたメディアから、前記動画データを読み取って再生する第1ステップと、
前記第1ステップによる前記動画データの再生時、前記列車の進行方向に沿って存在する測量すべき鉄道沿線設備について、前記ビデオカメラの第一の位置の入力を受け付ける第2ステップと、
前記第2ステップで入力された前記第一の位置で前記ビデオカメラが撮影した前記鉄道沿線設備の画像フレームと、前記第2ステップで入力された前記第一の位置から所定距離変位した第二の位置で前記ビデオカメラが撮影した同じ前記鉄道沿線設備の画像フレームと、を前記対応テーブルに基づいて前記動画データから読み取る第3ステップと、
前記第一の位置から前記第二の位置までの距離を算出する第4ステップと、
前記第3ステップにより読み取られた前記両画像フレームと前記第4ステップで算出した前記距離とに基づいて、前記鉄道沿線設備の測量を行う第5ステップと、をコンピュータに実行させる測量プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の測量プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−179683(P2010−179683A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22511(P2009−22511)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(591285273)西日本電気システム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】