説明

湯水混合弁

【課題】互いに別体をなす湯側弁,水側弁に製造上のばらつきがあっても、それらが弁ケース内面を円滑に摺動し得て、制御弁体による温度調節作用を良好に行うことのできる自動温度調節機能付きの湯水混合弁を提供する。
【解決手段】互いに別体をなす水側弁24と湯側弁26とを弁軸28で連結して組み付けて成る制御弁体22を有し、感温ばね34による制御弁体22の位置の移動によって混合水の温度を設定温度に自動調節する湯水混合弁10において、水側弁24を湯側弁26に対して軸線と直角方向のオフセット方向及び傾斜方向に相対移動可能としておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は湯水混合弁に関し、詳しくは自動温度調節機能付きの湯水混合弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種自動温度調節機能付き(サーモスタット式)の湯水混合弁として、(イ)筒状を成す弁ケースと、(ロ)互いに別体を成し、弁ケースの内面に沿って摺動する水側弁と湯側弁とを連結部材で軸線方向に一体移動する状態に連結して組み付けて成り、軸線方向の移動により水側弁及び湯側弁の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させて水と湯との流入比率を変化させる制御弁体と、(ハ)混合水の温度上昇に感応して伸び、混合水の温度を低下させる方向に制御弁体の位置を移動させる感温体と、(ニ)混合水の温度を上昇させる方向に制御弁体を付勢するバイアスばねと、を有し、感温体による制御弁体の位置の移動によって混合水温度を設定温度に自動調節する湯水混合弁が公知である。
【0003】
図7はその具体例を示している。
同図において200は円筒形状を成す弁ケースで、軸線方向に離隔した位置に水流入口202,湯流入口204が設けられている。
206は弁ケース200内部に且つ軸線方向に移動可能に設けられた制御弁体で、弁ケース200の内面に沿って摺動する水側弁208及び湯側弁210を有している。
【0004】
ここで水側弁208及び湯側弁210は別体を成していて、それらが連結部材としての弁軸212により軸線方向に一体移動する状態に組み付けられ、以って制御弁体206を構成している。
詳しくは、図8に示しているように湯側弁210には水側弁208の側に向かって軸方向に突出する断面略十字状のアーム214が一体に備えられている。
ここでアーム214の図中右側の部分には中心部に円筒部が備えられていてその内周面に雌ねじ部218が形成されている。
【0005】
一方、水側弁208は中心部に円形の嵌合孔220を有しており、その嵌合孔220において弁軸212に対し外嵌状態に嵌合している。
嵌合孔220の図中左端には大径部220Aが形成されており、そしてこの大径部220Aの形成により生じた段付部222の軸線と直角方向の段付面224を、アーム214の軸線と直角方向の先端面228に当接させる状態に大径部220Aがアーム214に外嵌されている。
【0006】
弁軸212には、軸端から所定距離離れた位置に環状溝が形成されていて、そこに径方向に弾性を有する止め輪230が装着されている。また軸端部には雄ねじ部232が形成されている。
弁軸212は、雄ねじ部232が湯側弁210の雌ねじ部218にねじ込まれ、そして止め輪230によって水側弁208を湯側弁210に押し付けている。
即ち、水側弁208の段付面224を湯側弁210のアーム214の先端面228に押し付ける状態に、弁軸212が湯側弁210の雌ねじ部218に一杯までねじ込まれ、これにより互いに別体を成す湯側弁210,水側弁208及び弁軸212が一体的に組み付けられている。
【0007】
弁ケース200には、これら水側弁208,湯側弁210の間の位置において、水側弁208,湯側弁210に各対応して水側弁座234,湯側弁座236が設けられており、それらに対し水側弁208,湯側弁210がそれぞれ当接するようになっている。
【0008】
制御弁体206は、バイアスばね240にて図中左向き、即ち水側弁208を閉弁させる方向に付勢されており、また混合室242内に設けられた形状記憶合金から成る感温ばね(感温体)244によりこれとは反対方向の図中右向き、即ち湯側弁210を閉弁させる方向に付勢されている。
【0009】
この湯水混合弁において、水流入口202及び湯流入口204を通じて流入した水と湯とは図中左向きに流れて混合室242へと到り、混合室242で水と湯とが混合された上で、その混合水が吐水部に向けて左方向に流出する。
【0010】
246は回転操作軸で、この回転操作軸を回転操作することで進退部材248がねじ送りで図中左右方向に移動し、これによりバイアスばね240の付勢力が強く又は弱く変更される。
これにより制御弁体206の図中左右方向の位置、詳しくはバイアスばね240と感温ばね244との付勢力の釣合い位置が左右方向にシフトせしめられる。即ち湯水混合弁における混合水の温度が所望温度に設定されないしは設定変更される。
【0011】
この湯水混合弁では、制御弁体206が図中左向きに一杯まで移動して水側弁208が水側弁座234に当接することで水側弁208が全閉、湯側弁210が全開となり、また逆方向に一杯まで移動して湯側弁210が湯側弁座236に当接することで湯側弁210が全閉,水側弁208が全開状態となる。
【0012】
またそれらの中間位置において水側弁208及び湯側弁210を開き且つその開度を変化させて水,湯の流入量を変化させる。
具体的には、湯側弁210が全閉、水側部208が全開状態の下で回転操作軸246を回転(正方向回転)操作すると、バイアスばね240の付勢力が強まって制御弁体206が図中左方向に位置移動(シフト)させられる。
そしてそのシフトした状態においてバイアスばね240による左向きの付勢力と、感温ばね244による右向きの付勢力とが釣合った状態となり、その状態で水流入口202及び湯流入口204から流入する水と湯の混合水の温度が変動すると、これに伴って感温ばね244が付勢力を増減させて制御弁体206を左右方向に微動させる。これにより混合水温度が設定温度に維持される。
【0013】
また一方回転操作軸246を逆方向に回転操作すると、バイアスばね240の付勢力が低下し、これにより制御弁体206が図中右方向にシフトさせられる。そしてそのシフト位置において感温ばね244の温度感知に基づく付勢力の増減によって混合水温度が自動調節される。
尚、この種の湯水混合弁については下記特許文献1にその一例が開示されている。
【0014】
ところでこの湯水混合弁にあっては、湯側弁210におけるアーム214の先端面228と水側弁208の段付面224とが、湯側弁210,水側弁208の軸線に対して正しく直角の面となっているときには、湯側弁210の軸線に対して水側弁208の軸線が同軸線となるようにそれらを組み付けることができる(図9(A)参照)。
【0015】
ところが互いに別体をなす湯側弁210,水側弁208の製造上のばらつき等によって、それらアーム214の先端面228,段付面224が軸線に対し正しく直角の面となっていない場合が生じ、この場合湯側弁210と水側弁208とを組み付けたとき、図9(B)に示しているように水側弁208が湯側弁210に対し相対的に傾いた状態に取り付いてしまう。
【0016】
この場合、水側弁208或いは湯側弁210が弁ケース200内面に対して部分的に強く当った状態で弁ケース200の内面を擦れながら摺動することとなり、その抵抗によって制御弁体206の移動による温調性能(温度調節性能)が悪化してしまう。
またこのように水側弁208(或いは湯側弁210)が弁ケース200の軸線に対して傾いてしまうと、水流入口202,湯流入口204と水側弁208,湯側弁210との間隔が周方向でアンバランスとなり、このこともまた温調性能を悪化させる原因となる。
【0017】
更に水側弁208,湯側弁210の製造上のばらつき等によって水側弁208が湯側弁210に対して相対的にオフセット方向(互いの軸線がその直角方向に平行移動する方向)に位置ずれした状態で固定的に組み付いてしまう場合もあり、この場合においても水側弁208,湯側弁210の弁ケース200内面に対する円滑な摺動が阻害されて、制御弁体206による温調性能が悪化する問題を生ずる。
【0018】
以上図7に示したものを例にとって説明したが、こうした問題は図7に例示したものに限らず、湯側弁210と水側弁208とを別体に構成して、それらを連結部材で軸線方向に一体移動する状態に連結することで制御弁体を構成して成る湯水混合弁に共通して生じる問題である。
【0019】
【特許文献1】特開2006−118545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は以上のような事情を背景とし、互いに別体をなす湯側弁,水側弁に製造上のばらつきがあっても、それらが弁ケース内面を円滑に摺動し得て、制御弁体による温度調節作用を良好に行うことのできる自動温度調節機能付きの湯水混合弁を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
而して請求項1のものは、(イ)筒状を成す弁ケースと、(ロ)互いに別体を成し、該弁ケースの内面に沿って摺動する水側弁と湯側弁とを連結部材で軸線方向に一体移動する状態に連結して組み付けて成り、該軸線方向の移動により該水側弁及び該湯側弁の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させて水と湯との流入比率を変化させる制御弁体と、(ハ)混合水の温度上昇に感応して伸び、該混合水の温度を低下させる方向に該制御弁体の位置を移動させる感温体と、(ニ)該混合水の温度を上昇させる方向に該制御弁体を付勢するバイアスばねと、を有し、該感温体により該制御弁体の位置を移動させることによって前記混合水の温度を設定温度に自動調節する湯水混合弁において、前記水側弁と湯側弁とを、互いの軸線が該軸線と直角方向に平行移動する方向及び互いの軸線が交差する傾斜方向に相対移動可能となしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項2のものは、請求項1において、前記水側弁が前記連結部材と別体をなしていて、それら連結部材と水側弁との間にばねが介在させてあり、該ばねの弾性変形に基づいて該水側弁が前記湯側弁に対して相対移動可能となしてあることを特徴とする。
【0023】
請求項3のものは、請求項2において、前記連結部材が軸状の部材であって、前記水側弁が中心の嵌合孔において該連結部材に遊嵌されており、該水側弁が前記ばねにより該連結部材に対し軸線方向に押圧状態に組み付けてあることによって該水側弁が前記湯側弁に対して相対移動可能となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0024】
以上のように本発明は、互いに別体をなす水側弁と湯側弁とを連結部材とともに組み付けて、弁ケースの軸線方向に一体移動する制御弁体を構成して成る自動温度調節機能付きの湯水混合弁において、水側弁を湯側弁に対して軸線と直角方向に平行移動するオフセット方向及び傾斜方向に相対移動可能に組み付けて制御弁体を構成したもので、本発明によれば、水側弁が湯側弁に対し相対的にオフセット方向に位置がずれた状態で組み付けられた場合であっても、或いは水側弁が湯側弁に対して相対的に傾斜した状態で組み付いた場合であっても、湯側弁と水側弁とがそれらの方向に相対移動可能となしてあるため、制御弁体の移動時に水側弁や湯側弁が部分的に弁ケースの内面に強く当って大きな摺動抵抗を発生し、そのことによって制御弁体による温調性能が悪化する問題を解決することができる。即ち制御弁体による良好な温調性能を確保することができる。
【0025】
本発明では、水側弁を連結部材と別体となして、それら連結部材と水側弁との間にばねを介在させ、そのばねの弾性変形に基づいて水側弁を湯側弁に対し相対移動可能となしておくことができる(請求項2)。
【0026】
本発明ではまた、連結部材を軸状の部材にて構成して水側弁を中心の嵌合孔において連結部材に遊嵌し、そして水側弁と連結部材との間にばねを介装して、水側弁をばねにより連結部材に対し軸線方向に押圧状態に組み付けておくことができる(請求項3)。
この請求項3によれば、ばねの弾性変形に基づいて水側弁を湯側弁に対し相対移動可能とした状態で連結部材とともに組み付けて制御弁体を構成することができる。
この請求項3では、連結部材と水側弁の間にばねを介装することで、水側弁を連結部材を介して湯側弁側に押し付ける。この場合ばねの弾性変形による自由度により水側弁が連結部材に対して、即ち湯側弁に対して傾斜方向及びオフセット方向に自由に相対移動することができる。
またこの請求項3によれば、極めて簡単な構造で、水側弁が湯側弁に対して相対移動可能な制御弁体を構成することができる。
【0027】
請求項3では、水側弁を連結部材に対して直接に軸線方向に押圧状態に組み付けておくことも可能であるが、請求項3に従って水側弁を上記ばねにより湯側弁に直接押し付ける状態に組み付けることによって、間接的にかかる水側弁を連結部材に対し軸線方向に押圧状態に組み付けるようになすことができる。
このようにすれば、ばねで押圧状態にすることで、2つの弁体間の距離を一定に保ち、尚且つばねの弾性変形による自由度にて水側弁の可動を確保でき、また制御弁体の構造を更に簡単な構造となすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び図2において、10は自動温度調節機能付きの湯水混合弁で、12は円筒形状をなす弁ケースである。
弁ケース12には、軸線方向に離隔した位置にこれを径方向に貫通する水流入口14,湯流入口16が設けられており、これらを通じて水,湯が内部に流入するようになっている。
流入した水と湯とは混合室18で混合され、そしてその混合水が流出部20から吐水部に向けて図中左向きに流出する。
【0029】
22は制御弁体で、弁ケース12の内面に沿って摺動する水側弁24,湯側弁26及びそれらを軸線方向に連結する連結部材としての弁軸28を有している。
制御弁体22は、弁ケース12の内部をその軸線方向に移動して水側弁24,湯側弁26の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させ、水流入口14,湯流入口16からの水,湯の流入量を変化させる。即ち水と湯との混合比率を変化させて混合水の温度を調節する。
【0030】
弁ケース12には水側弁24,湯側弁26に対応して水側弁座30,湯側弁座32が設けられている。
制御弁体22は、水側弁24を水側弁座30に当接させることで水側弁24を閉弁状態として、水流入口14からの水の流入を遮断する。
また湯側弁26を湯側弁座32に当接させることで湯側弁26を閉弁状態として、湯流入口16からの湯の流入を遮断する。
尚、水側弁24が全閉状態のときには湯側弁26は全開状態となり、また湯側弁26が全閉状態となるときには水側弁24は全開状態となる。
【0031】
34は混合室18内に設けられた形状記憶合金製のコイルばねからなる感温ばねで、その一端(図中左端)を弁ケース12の一部を形成する円筒形状のばね受35に当接させ、また他端(図中右端)を湯側弁26に対し軸方向に当接させ、制御弁体22を図中右方向に付勢している。即ち水側弁24を開、湯側弁26を閉とする方向にその付勢力を制御弁体22に対して及ぼしている。
【0032】
この感温ばね34は、混合室18内部の混合水の温度に感応して付勢力を増減させる。詳しくは混合水の温度が上昇したときには制御弁体22に対する図中右向きの付勢力を増大させて湯側弁26を閉じる方向に、また水側弁24を開く方向に制御弁体22の位置を移動(シフト)させる。
また一方、混合水の温度が低下したときにはその付勢力を低下させ、後述のバイアスばね36の付勢力によって湯側弁26を開く方向に、また水側弁24を閉じる方向に制御弁体22の位置を移動させる。
【0033】
36は制御弁体22に対し感温ばね34による付勢力とは逆向きに付勢力を及ぼすバイアスばねで、その一端(図中左端)をばね受け38を介して水側弁24に対し軸方向に当接させ、また他端(図中右端)をストッパリング40を後述の進退部材42に当接させている。
【0034】
44は回転操作軸で、弁ケース12から図中右向きに突出した部分の外周面にセレーション部46を有しており、このセレーション部46において回転ハンドルに一体回転状態に連結されるようになっている。
この回転操作軸44は嵌合軸部48を有しており、この嵌合軸部48が、弁ケース12の嵌合孔50に回転可能に嵌合されている。
回転操作軸44は、弁ケース12の内部に底付きの円筒部52を有している。そして回転操作軸44は、この円筒部52と回転操作軸44に装着された径方向に弾性を有する止め輪54にて、弁ケース12に対し軸方向に固定されている。
【0035】
円筒部52の内周面には雌ねじ部が形成されており、この雌ねじ部が、円筒形状をなす進退部材42の外周面の雄ねじ部に螺合されている。
この結果進退部材42は、回転操作軸44の回転操作に基づいてねじ送りで図中左右方向、即ち弁ケース12の軸線方向に進退移動させられる。
そしてこの進退部材42の進退移動によって、バイアスばね36による制御弁体22への付勢力が増減せしめられる。
【0036】
尚、図3において90は水流入口14から流入した水を旋回流として混合室18に流入させる旋回流発生部材で、弁ケース12の内面に固定状態に設けられている。
この旋回流発生部材90は内周面に多数のフィンを有しており、そのフィンにより水の流れを変えることで旋回流を発生させる。
【0037】
この湯水混合弁10では、回転操作軸44を正方向に回転操作すると、進退部材42がねじ送りで図中左向きに前進移動してバイアスばね36の付勢力を増大させる。
その結果、制御弁体22はバイアスばね36による付勢力と、感温ばね34による付勢力とが丁度釣り合う位置まで図中左方向に位置移動させられる。
即ち水側弁24の開度を小,湯側弁26の開度を大とする方向に制御弁体22が位置移動させられる。
そしてその状態で感温ばね34が混合水温度に感応して付勢力を増減させることで、制御弁体22の位置が図中左右方向に微動させられて、混合水の温度を設定された温度に自動調節する。
【0038】
一方回転操作軸44を逆方向に回転操作すると、進退部材42が図中右方向に後退移動してバイアス36の付勢力を低下させる。
その結果制御弁体22は、感温ばね34による図中右向きの付勢力と、感温ばね36による図中左向きの付勢力とが釣り合う位置まで図中右方向に位置移動させられ、そしてその釣合い位置で感温ばね34による付勢力の増減に基づいて制御弁体22が微動させられ、混合水温度を新たに設定された温度に自動調節する。
【0039】
尚、回転操作軸44を正方向に一杯まで回転操作すると水側弁24が水側弁座30に当接し閉弁状態となる一方、湯側弁26が湯側弁座32から一杯まで開いて全開状態となる。
また逆に回転操作軸44を逆方向に一杯まで回転操作すると、今度は湯側弁26が湯側弁座32に当接して閉弁状態となり、また一方水側弁24が全開状態となる。
【0040】
図2及び図3に示しているように、本実施形態では水側弁24と湯側弁26とが別体をなしていて、それらが連結部材としての弁軸28により軸線方向に連結されて組み付けられ、水側弁24と湯側弁26との軸線方向の距離を一定に保ちつつ弁ケース12の軸線方向に一体に移動する制御弁体22を構成している。
尚、これら水側弁24,湯側弁26のそれぞれには外周面に環状の弾性を有するシール部材56が保持されており、水側弁24,湯側弁26と弁ケース12の内面との間がそれらシール部材56にて水密にシールされている。
【0041】
湯側弁26には、水側弁24の側に向かって軸線方向に突出するアーム58が一体に備えられている。
このアーム58の付け根側の部分は横断面形状が十字状をなしており、また先端側の部分は円筒部60とされている。
この円筒部60の内周面には雌ねじ部62が形成されている。
尚64は円筒部60の先端面を表している。
【0042】
一方、水側弁24は中心部に断面円形の嵌合孔66を有しており、その嵌合孔66において弁軸28の外周面に軸線と直角方向に所定のクリアランスをもって遊嵌されている。
この嵌合孔66の図中左側の部分は大径部66Aとされていて、この大径部66Aの形成により嵌合孔66に段付部70が形成されている。図中72はその段付部70の段付面を表している。
尚嵌合孔66は円筒部74の内側に形成されている。
【0043】
水側弁24にはまた、円筒部74とは反対側にばね収容室76が形成されていて、そこにコイルばねからなる押ばね78が収容されている。
押ばね78は、図4に示しているように一端(図中左端)をばね収容室76の段付面80に当接させ、また他端(図中右端)を弁軸28に装着された止め輪86に当接させている。
ここで止め輪86は径方向に弾性を有しており、その弾性に基づいて弁軸28に形成された環状溝84に弾性的に嵌め込まれている。
【0044】
弁軸28の先端部(図中左端部)には雄ねじ部82が設けられており、この雄ねじ部82が、湯側弁26の円筒部60内側に形成された雌ねじ部62にねじ込まれている。
そして湯側弁26と弁軸28とのねじ結合により、湯側弁26,水側弁24及び弁軸28が軸線方向に一体移動する状態に組み付けられている。
【0045】
この組付状態において、水側弁24は段付面72を湯側弁26の円筒部60の先端面64に当接させる状態に大径部66Aが円筒部60に外嵌され、そしてその状態で水側弁24が押ばね78によって湯側弁26に対し図中左方向に押し付けられている。
即ち水側弁24が、弁軸28に対し押ばね78によって軸線方向に押圧状態で湯側弁26とともに組み付けられている。
【0046】
この実施形態の湯水混合弁において、水側弁24は押ばね78により湯側弁26に対し軸線方向に押し付けられる状態で組み付けられているため、図5(A)に示しているように水側弁24は湯側弁26に対し相対的に傾斜する方向に移動可能であり、また(B)に示しているように軸線と直角方向のオフセット方向にも湯側弁26に対して相対的に移動可能である。
【0047】
そのため、湯側弁26,水側弁24の製造上のばらつきによって、また組付誤差によって水側弁24が湯側弁26に対し相対的に傾いた状態で組み付けられていたり、或いはオフセット方向にずれた位置に組み付けられていた場合であっても、押ばね78の弾性変形に基づいて水側弁24が弁ケース12の内面に追従してその傾きやオフセット方向の位置を容易に変えることができ、制御弁体22が弁ケース12内で軸線方向に移動する際、それら湯側弁26,水側弁24が弁ケース12の内面を円滑に摺動運動することができる。これにより制御弁体22による良好な温度調節作用が確保される。
【0048】
因みに図6は本実施形態の湯水混合弁の温調性能(温度調節性能)の確認試験を行った結果を比較例(図1〜図4の水側弁24を押ばね78を介さずに弁軸28の止め輪にて直接湯側弁26に押圧状態に固定したもの)とともに示している。
図6中(A)は実施例品の特定結果を、また(B)は比較例品の測定結果をそれぞれ表している。
この試験では給湯圧力,給水圧力をそれぞれ0.4MPaとし且つ混合水の設定温度を40℃とし、その状態で実際の混合水温度を測定するとともに、給水圧力を0.4MPaに、また設定温度を40℃に保ったまま、給湯圧力を0.3,0.2,0.1,0.05MPaと変化させたときの、実際の混合水の温度の測定結果を縦軸に示している。
【0049】
(B)の比較例では、給湯圧力を小さくして行くと各比較例品の間で実際の混合水温度が大きくばらついているが、実施例品の場合には給水圧力を低くして行っても、実際の混合水の温度は設定温度からあまり変化せず、制御弁体22による温調作用が良好に行われていることが理解できる。
尚、図6において実施例品1〜5とあるのは5つの実施例品を作成して、それぞれについて試験を行った結果を表している。比較例品についても同様である。
【0050】
以上のような本実施形態によれば、組付時において水側弁24が湯側弁26に対し相対的にオフセット方向に位置ずれした状態或いは傾斜した状態で組み付けられていた場合であっても、水側弁24がそれらの方向に相対移動可能となしてあるため、制御弁体22の移動時に水側弁24や湯側弁26が部分的に弁ケース12の内面に強く当って大きな摺動抵抗を発生し、そのことによって制御弁体22による温調性能が悪化する問題を解決して、制御弁体22による良好な温調性能を確保することができる。
【0051】
また本実施形態は押ばね78の弾性変形に基づいて水側弁24を湯側弁26に対し相対移動可能に組み付けて制御弁体22を構成してあるため、水側弁24が湯側弁26に対して相対移動可能な制御弁体22を極めて簡単な構造で構成することができる。
【0052】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態である湯水混合弁の断面図である。
【図2】同実施形態の要部を各部品に分解して示す図である。
【図3】同実施形態の要部を各部品に分解して示した斜視図である。
【図4】同実施形態における制御弁体を示した図である。
【図5】同実施形態の湯水混合弁の作用説明図である。
【図6】同実施形態の湯水混合弁の温調性能の確認試験を行った結果を示す図である。
【図7】従来の湯水混合弁の図である。
【図8】図7の湯水混合弁の要部の分解図である。
【図9】図7の湯水混合弁の不具合の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 湯水混合弁
12 弁ケース
22 制御弁体
24 水側弁
26 湯側弁
28 弁軸(連結部材)
34 感温ばね
36 バイアスばね
66 嵌合孔
78 押ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)筒状を成す弁ケースと、(ロ)互いに別体を成し、該弁ケースの内面に沿って摺動する水側弁と湯側弁とを連結部材で軸線方向に一体移動する状態に連結して組み付けて成り、該軸線方向の移動により該水側弁及び該湯側弁の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させて水と湯との流入比率を変化させる制御弁体と、(ハ)混合水の温度上昇に感応して伸び、該混合水の温度を低下させる方向に該制御弁体の位置を移動させる感温体と、(ニ)該混合水の温度を上昇させる方向に該制御弁体を付勢するバイアスばねと、を有し、該感温体により該制御弁体の位置を移動させることによって前記混合水の温度を設定温度に自動調節する湯水混合弁において
前記水側弁と湯側弁とを、互いの軸線が該軸線と直角方向に平行移動する方向及び互いの軸線が交差する傾斜方向に相対移動可能となしてあることを特徴とする湯水混合弁。
【請求項2】
請求項1において、前記水側弁が前記連結部材と別体をなしていて、それら連結部材と水側弁との間にばねが介在させてあり、該ばねの弾性変形に基づいて該水側弁が前記湯側弁に対して相対移動可能となしてあることを特徴とする湯水混合弁。
【請求項3】
請求項2において、前記連結部材が軸状の部材であって、前記水側弁が中心の嵌合孔において該連結部材に遊嵌されており、該水側弁が前記ばねにより該連結部材に対し軸線方向に押圧状態に組み付けてあることによって該水側弁が前記湯側弁に対して相対移動可能となしてあることを特徴とする湯水混合弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−115891(P2008−115891A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297164(P2006−297164)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】