説明

湯水混合水栓

【課題】温調用弁装置及び切換用弁装置を備える湯水混合水栓において、製造上の手間を少なくし、製造コストの低廉化を図る。
【解決手段】水栓本体1と温度調節用弁装置Bと切換用弁装置Cとを備える。温度調節用弁装置Bが、略筒状の温調用固定弁体部と温調用可動弁体部を具備する。切換用弁装置Cも、略筒状の切換用固定弁体部と略筒状の切換用可動弁体部を具備する。温調用可動弁体部を回動させると、温調用可動弁体部の温調用連通流路が、温調用固定弁体部の給湯用の流入路及び給水用の流入路のうちの少なくとも一方と常時連通した状態となる。切換可動弁体部を、回動させると、切換用可動弁体部が、切換用固定弁体部に設けられた第1の取出用流路及び前記第2の取出用流路のうちの一方に択一的に連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
湯水混合水栓の中には、吐水温度を調節するためのハンドル(以下、「温調ハンドル」ということがある。)と、「使用する吐水手段の選択」等を行うためのハンドル(以下、「切換ハンドル」ということがある。)と、を別個に備えるものがある。ここで、「切換ハンドル」を操作することで、(1)「使用する吐水手段(例えば、カランと、シャワー)の選択」と共に、吐止水の選択が行われたり、吐止水の選択及び吐水量の選択が行われる。
【0003】
この種の「湯水混合水栓を構成する水栓本体」は、吐水温度を調節するための温度調節用弁装置(以下、「温調用弁装置」という。)と、吐水手段の選択等を行うための切換用弁装置と、を内蔵している(特許文献1の図1等を参照、以下、「従来例」という。)。そして、水栓本体に給湯される湯と、水栓本体に給水される水と、が温調弁装置内において所定の混合割合で混合され、混合水とされる。更に、この混合水は、「温調用弁装置」外部、つまり、温調用弁装置の2次側に流出し、「切換用弁装置」に流入する。
【特許文献1】特開平11−182716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この種の湯水混合水栓では、水栓本体に内蔵される「温調用弁装置」及び「切換用弁装置」の構造が大きく異なるのが、一般的である。例えば、従来例に係る水栓本体の内部には、「サーモスタット方式の温調用弁装置」と、「円板状の固定ディスク弁と、円板状の可動ディスク弁とを用いて構成される切換用弁装置」とが配置されている。従って、この種の湯水混合水栓の製造に際しては、構造が大きく異なる「温調用弁装置」及び「切換用弁装置」を用いることが必要なため、その分、製造上の手間が多くなったり、製造コストが高くなっているのが実情である。
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決するものであり、「温調用弁装置」及び「切換用弁装置」を備える湯水混合水栓において、製造上の手間を少なくすると共に、製造コストの低廉化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明の湯水混合水栓は、
1次側に配置される給湯源に連絡される給湯流路と、1次側に配置される給水源に連絡される給水流路と、2次側に配置される第1の吐水手段に連絡される第1の吐水流路と、2次側に配置される第2の吐水手段に連絡される第2の吐水流路と、を具備する水栓本体と、
前記水栓本体に装着される温度調節用弁装置と、
前記水栓本体に装着される切換用弁装置と、
を備える湯水混合水栓であって、
前記温度調節用弁装置が、
前記給湯流路に接続される給湯用の流入流路と、前記給水流路に接続される給水用の流入流路と、を外周部及び内周部を貫通する状態に備える、略筒状の温調用固定弁体部と、
内部空間部によって流出流路を構成すると共に、前記温調用固定弁体部の内部空間部内に第1の回転角度の範囲内で回動可能な状態に配置され、1次側の端部を前記温調用可動弁体部の外周部で開口させ、2次側の端部を前記温調用可動弁体部の内周部で開口させた温調用連通流路を備える、略筒状の温調用可動弁体部と、を具備し、
前記切換用弁装置が、
前記第1の吐水流路に接続される第1の取出用流路と、前記第2の吐水流路に接続される第2の取出用流路と、を外周部及び内周部を貫通する状態に備える切換用固定弁体部と、
内部空間部によって取入用流路を構成すると共に、前記切換用固定弁体部の内部空間部内に第2の回転角度の範囲内で回動可能な状態に配置され、2次側の端部を外周部で開口させ、1次側の端部を内周部で開口させた切換用連通流路を備える、略筒状の切換用可動弁体部と、を具備し、
前記温調用可動弁体部を、前記第1の回転角度の範囲内で回動させると、前記温調用連通流路が前記給湯用の流入流路及び前記給水用の流入流路のうちの少なくとも一方と常時連通した状態にて、前記給湯用の流入流路の前記温調用連通流路に対する連通度合いと、前記給水用の流入流路の前記温調用連通流路に対する連通度合いと、が調節され、
前記切換可動弁体部を、前記第2の回転角度の範囲内で回動させると、前記切換用連通流路が、前記第1の取出用流路及び前記第2の取出用流路のうちの一方に択一的に連通することを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明では、温調用弁装置及び切換用弁装置が、同一の構造を備えるため、湯水混合水栓の製造上の手間を少なくすると共に、その製造コストの低廉化を図ることができる。つまり、温調用弁装置及び切換用弁装置が、何れも、(1)2種類の流路を貫通状に備える略筒状の固定弁体部(温調用固定弁体部、切換用固定弁体部)の内部空間部に、(2)所定の流路を貫通状に備える略筒状の可動弁体部(温調用可動弁体部、切換用可動弁体部)を、挿入した構造を備える。このため、温調用弁装置及び切換用弁装置において、構成部品の共通化を図ったり、構成部品の共通性を高めることがでできる。このため、温調用弁装置及び切換用弁装置の製造上の手間を少なくしたり、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0008】
より具体的な態様として、(1)温調用固定弁体部及び切換用固定弁体部として、同一の筒状体を用い、温調用可動弁体部及び切換用可動弁体部として、同一性の高い筒状体を用いる態様(以下、「第1の態様」という。)と、(2)温調用固定弁体部及び切換用固定弁体部として、同一性の高い筒状体を用い、温調用可動弁体部及び切換用可動弁体部として、同一の筒状体を用いる態様(以下、「第2の態様」という。)と、(3)温調用固定弁体部及び切換用固定弁体部として、同一性の高い筒状体を用い、温調用可動弁体部及び切換用可動弁体部として、同一性の高い筒状体を用いる態様(以下、「第3の態様」という。)、を例示できる。
【0009】
ここで、「第1の態様」、「第2の態様」、及び「第3の態様」において、何れの筒状体も、「流路を形成するための貫通孔」を外周部及び内周部を貫通する状態に備える。そして、「同一の筒状体」とは、「貫通孔を含めて同一の筒状体」を指し、「同一性の高い筒状体」とは、「貫通孔の形成態様の差異(形状、サイズ等の差異)を除いて同一の筒状体」を指す。
【0010】
即ち、「第1の態様」では、ともに、二種類の貫通孔(何れの種類の貫通孔も、一個であるか、複数個であるかを問わない。)を備える「同一の筒状体を用意する。そして、温調用固定弁体部を、一方の筒状体で構成し、その一方の種類の貫通孔で給湯用の流入流路を構成し、その他方の種類の貫通孔で給水用の流入流路を構成する。また、切換用固定弁体部を、他方の筒状体で構成し、その一方の種類の貫通孔で第1の取出用流路を構成し、その他方の種類の貫通孔で第2の取出用流路を構成する。
【0011】
また、「第1の態様」では、ともに、一種類の貫通孔(一個であるか、複数個であるかを問わない。)を備える2つの筒状体であって、この貫通孔の構成態様(少なくても、周方向幅が異なること)のみが異なるもの(同一性が高い筒状体の一具体例)」を用意する。そして、温調用可動弁体部を、「周方向幅の長い貫通孔」を備える筒状体で構成し、その貫通孔で温調用連通流路を構成する。また、温調用可動弁体部を、「周方向幅の短い貫通孔」を備える筒状体で構成し、その貫通孔で切換用連通流路を構成する。
【0012】
つまり、「第1の態様」では、温度調節用弁装置を構成する主要部品(温調用固定弁体部及び温調用可動弁体部)と、切換用弁装置を構成する主要部品(切換用固定弁体部及び切換用可動弁体部)との間で、温調用可動弁体部及び切換用可動弁体部に設けられる貫通孔(連通流路)の構成態様が異なるだけである。このため、温調用弁装置及び切換用弁装置の間で、構成部品の共通性が高められる。
【0013】
「第2の態様」では、ともに、二種類の貫通孔(何れの種類の貫通孔も、一個であるか、複数個であるかを問わない。)を備える2つの筒状体であって、これらの貫通孔の構成態様(少なくても、周方向幅が異なること)のみが異なるもの(同一性が高い筒状体の一具体例)」を用意する。そして、温調用固定弁体部を、「周方向幅の長い2種類の貫通孔」を備える一方の筒状体で構成し、その一方の種類の貫通孔で給湯用の流入流路を構成し、その他方の種類の貫通孔で給水用の流入流路を構成する。また、切換用固定弁体部を、「周方向幅の短い2種類の貫通孔」を備える他方の筒状体で構成し、その一方の種類の貫通孔で第1の取出用流路を構成し、その他方の種類の貫通孔で第2の取出用流路を構成する。
【0014】
また、「第2の態様」では、ともに、一種類の貫通孔(一個であるか、複数個であるかを問わない。)を備える「同一の筒状体」を用意する。そして、温調用可動弁体部を、一方の筒状体で構成し、その貫通孔で温調用連通流路を構成する。また、温調用可動弁体部を、他方の筒状体で構成し、その貫通孔で切換用連通流路を構成する。
【0015】
つまり、「第2の態様」では、温度調節用弁装置を構成する主要部品(温調用固定弁体部及び温調用可動弁体部)と、切換用弁装置を構成する主要部品(切換用固定弁体部及び切換用可動弁体部)との間で、温調用固定弁体部及び切換用固定弁体部に設けられる貫通孔の構成態様が異なるだけである。このため、温調用弁装置及び切換用弁装置の間で、構成部品の共通性が高められる。
【0016】
「第3の態様」では、ともに、二種類の貫通孔(何れの種類の貫通孔も、一個であるか、複数個であるかを問わない。)を備える2つの筒状体であって、これらの貫通孔の構成態様(少なくても、周方向幅が異なること)のみが異なるもの(同一性が高い筒状体の一具体例)」を用意する。そして、温調用固定弁体部を、「周方向幅の長い2種類の貫通孔」を備える一方の筒状体で構成し、その一方の種類の貫通孔で給湯用の流入流路を構成し、その他方の種類の貫通孔で給水用の流入流路を構成する。また、切換用固定弁体部を、「周方向幅の短い2種類の貫通孔」を備える他方の筒状体で構成し、その一方の種類の貫通孔で第1の取出用流路を構成し、その他方の種類の貫通孔で第2の取出用流路を構成する。
【0017】
また、「第3の態様」では、ともに、一種類の貫通孔(一個であるか、複数個であるかを問わない。)を備える2つの筒状体であって、この貫通孔の構成態様(少なくても、周方向幅が異なること)のみが異なるもの(同一性が高い筒状体の一具体例)」を用意する。そして、温調用可動弁体部を、「周方向幅の長い貫通孔」を備える筒状体で構成し、その貫通孔で温調用連通流路を構成する。また、温調用可動弁体部を、「周方向幅の短い貫通孔」を備える筒状体で構成し、その貫通孔で切換用連通流路を構成する。
【0018】
つまり、「第3の態様」では、温度調節用弁装置を構成する主要部品(温調用固定弁体部及び温調用可動弁体部)と、切換用弁装置を構成する主要部品(切換用固定弁体部及び切換用可動弁体部)との間で、温調用固定弁体部及び切換用固定弁体部に設けられる貫通孔の構成態様と、温調用可動弁体部及び切換用可動弁体部に設けられる貫通孔の構成態様と、が異なるのみである。このため、温調用弁装置及び切換用弁装置の間で、構成部品の共通性が高められる。
【0019】
また、請求項1の発明によると、「湯水混合水栓の製造コストの低廉化の要請と、温度調節の高精度化の要請」とを両立できるという、効果を得ることもできる。つまり、従来の「温調用弁装置」及び「切換用弁装置」を備える湯水混合水栓においては、「温調用弁装置」として、前述の所謂「サーモスタット方式の温調用弁装置」や、所謂「リフト方式の温調弁装置等を用いられてきた。
【0020】
ここで、「サーモスタット方式の温調弁装置」は、温度変化に対応して伸縮する感温素子を用いて、給湯口と給水口の開口比率を調節し、湯水の温度を調節する温調弁装置である。
【0021】
また、「リフト方式の温調弁装置」は、図30に示すように、ハウジング90と、ハウジング90内において軸心を上下方向に向けたシャフト91と、このシャフト91の軸方向に沿って所定の間隔で、上下に並ぶ、湯用の弁体92と、水用の弁体93と、を主体に構成される。この温調弁装置では、ハウジング90内に、孔状の湯用の弁座95と、孔状の水用の弁座96とが設けられ、シャフト91が上下動することにより、湯用の弁体92が湯用の弁座95に挿嵌状に着座したり、水用の弁体93が水用の弁座96に挿嵌状に着座する。そして、シャフト91の上下方向への動作量に応じて、湯用の弁座95の開度と、水用の弁座96の開度の比率が選択され、これにより、ハウジング90の2次側(外部)に流出する湯水の温度が調節される。
【0022】
これらの温調弁装置には、以下のような問題点がある。即ち、「サーモスタット方式の温調弁装置」では、「感温素子」を主体とした複雑な構造を備えるため、製造コストが高くなり易い。
【0023】
一方、リフト方式の温調弁装置は、「サーモスタット方式の温調弁装置」と比べて、簡易な構造を備えるため、その製造コストを低くすることができる。ところが、以下に示す理由で、シール部分(湯用の弁体92及び水用の弁体93において、湯用の弁座95や水用の弁座96に対して、着座させようとする部位)に、「ゴム等の弾性シール部材」を用いることができないため、高精度な温度調節を行うことが困難である。
【0024】
仮に、図31(a)及び(b)に示すように、弁体92、93の外周部に、シャフト91の軸心方向に凹む周回溝97を設け、この周回溝97に「Oリング(ゴム等)」で構成される弾性部材98を装着すると、次のような問題を生ずる。即ち、弁体92、93を弁座95、96に挿嵌状に着座させると、図31(a)に示すように、弾性部材98には、その半径を縮小させるような変形が加えられ、弁体92、93を弁座95、96から抜脱すると、図31(b)に示すように、弾性部材98には、その半径を復元させるような変形が加えられる。そして、弁体92、93を弁座95、96に着座させることと、弁体92、93を弁座95、96から離間させることを繰り返すと、弾性部材98の弾性が徐々に低下し、弁体92、93と弁座95、96との間の水密性が徐々に低下することになる。また、弁座95、96に着座して圧縮状態にある弾性部材98が、弁座95、96から抜脱されるたときに、その半径が必要以上に拡大することがある。この場合、弁体92、93を弁座95、96に再び、着座させる際に、弾性部材98の周縁部が、弁座95、96の入口部95a、96aに引掛かる可能性ある。
【0025】
よって、リフト方式の温調弁装置においては、通常、湯用の弁体92及び水用の弁体93を剛性の高い素材(金属)のみで構成するのが一般的である。そして、弁座95、96は、通常、金属(鋳物)で構成されるため、リフト方式の温調弁装置においては、金属の弁体92、弁体93を金属の弁座95、96に着座させる構造が採用されることになる。このため、通常、弁体92、93の外径と、弁座95、96の内径との間には所定のクリアランスが設けられ、弁体92、93を弁座95、96に対して、円滑に挿嵌可能とすることが行われている。
【0026】
従って、リフト方式の温調弁装置では、弁体92、93と、弁座95、96の内壁部との間には不可避的な隙間(クリアランス)が存在することになる。このため、前述のように、リフト方式の温調弁装置によると、高精度な温度調節を行うことが困難である。
【0027】
以上のような事情より、「温調用弁装置」及び「切換用弁装置」を備える湯水混合水栓において、「湯水混合水栓の製造コストの低廉化の要請と、温度調節の高精度化の要請」とを両立することが、切望されている。
【0028】
これに対して、請求項1の発明では、温度調節用弁装置を、温調用固定弁体部と、温調用可動弁体部とを主体とする簡易な構成を備えるため、前述の「リフト方式の温調弁装置」と同様に、安価に製造できる。また、請求項1の発明では、摺動弁装置(ロータリー式の摺動弁)に、「通常の技術常識に反する改良」を施して、高精度な温度調節を行うことができる温度調節用弁装置を得ることとしている。つまり、摺動弁装置は、水密性が高く、完全止水機能(弁装置の1次側の流路と、弁装置の2次側の流路とを完全に遮断する機能)を発揮する上で、有効とされている。ところが、請求項1の発明では、この摺動弁装置に改良を加え、常時連通水型(弁装置の1次側の流路と、弁装置の2次側の流路とを常時連通する形式)とすることで、温度調節用弁装置として活用している。そして、請求項1の発明では、このように、水密性の高い摺動弁を用いて温度調節を行うため、高精度な温度調節を行うことができる。
【0029】
各請求項の発明の「温調用連通流路」は、温調用可動弁体部の所定の一箇所に設けられた単一の貫通孔によって構成されてもよしい、温調用可動弁体部の複数箇所に設けられた複数の貫通孔によって構成されてもよい。また、各請求項の発明の「温調用連通流路」が、「給湯用の流入流路」専用の連通流路部と、「給水用の流入流路」専用の連通流路部と、で構成されてもよい。つまり、各請求項の発明の「温調用連通流路」を、(A)温調用可動弁体部の回動に応じて、「給湯用の流入流路」と連通したり、非連通となるが、「給水用の流入流路」とは常時、非連通な連通流路部と、(B)温調用可動弁体部の回動に応じて、「給水用の流入流路」と連通したり、非連通となるが、「給湯用の流入流路」とは常時、非連通な連通流路部と、で構成してもよい。
【0030】
同様に、各請求項の発明の「切換用連通流路」は、切換用可動弁体部の所定の一箇所に設けられた単一の貫通孔によって構成されてもよしい、切換用可動弁体部の複数箇所に設けられた複数の貫通孔によって構成されてもよい。また、各請求項の発明の「切換用連通流路」が、「第1の取出用流路」専用の連通流路部と、「第2の取出用流路」専用の連通流路部と、で構成されてもよい。つまり、各請求項の発明の「切換用連通流路」を、(a)切換用可動弁体部の回動に応じて、「第1の取出用流路」と連通したり、非連通となるが、「第2の取出用流路」とは常時、非連通な連通流路部と、(B)切換用可動弁体部の回動に応じて、「第2の取出用流路」と連通したり、非連通となるが、「第1の取出用流路」とは常時、非連通な連通流路部と、で構成してもよい。
【0031】
請求項2の発明の湯水混合水栓は、請求項1に記載の湯水混合水栓において、
前記温調用可動弁体部を、前記第1の回転角度の範囲内で回動すると、
前記温調用連通流路が、前記給湯用の流入流路と連通し、前記給水用の流入流路と非連通となる状態と、
前記温調用連通流路が、前記給湯用の流入流路及び前記給水用の流入流路と連通する状態と、
前記温調用連通流路が、前記給湯用の流入流路と非連通となり、前記給水用の流入流路と連通とする状態と、が実現されることを特徴とする。
【0032】
請求項2の発明によると、より使用勝手の良い、湯水混合水栓を得ることができる。つまり、前述の「リフト方式の温調用弁装置」では、(1)給湯源(給湯器等)から温調用弁装置に給湯された湯(以下、「元湯」ということがある。)を、そのままの状態(温調用弁装置に給水された水が、混ざらない状態)で、温調用弁装置外に排出すること(以下、「元湯給湯」、若しくは、「片側給湯」ということがある。)が困難である点と、(2)給水源(水道配管等)から温調用弁装置に給水された水(以下、「元水」ということがある。)を、そのままの状態(温調用弁装置に給湯された湯が、混ざらない状態)で、温調用弁装置外に排出すること(以下、「元水給水」、若しくは、「片側給水」ということがある。)ことが困難である点で、使用勝手が悪くなっている。
【0033】
即ち、図30及び図31に示すように、リフト方式の温調用弁装置では、前述のように、弁体92、93と、弁座95、96の内壁部との間には不可避的な隙間(クリアランス)が存在する。このため、「元湯給湯」を実行しようとしても、水用の弁体93と水用の弁座96との間の隙間(クリアランス)を通過する水が、元湯に混入する。同様に、「元水給水」を実行しようとしても、湯用の弁体92と湯用の弁座95との間の隙間(クリアランス)を通過する湯が、元水に混入する。このため、リフト方式の温調用弁装置で、「元湯給湯」や「元水給水」を行うことは困難である。
【0034】
尚、近年、湯水混合水栓の給湯源を構成する「給湯器」の性能の向上がめざましく、この「給湯器」から流出させる湯の温度管理を高精度に行うことが可能となっている。ところが、リフト方式の温調用弁装置を用いると、「給湯器」の性能の向上を十分に利用することができない。例えば、「給湯器」から「摂氏40度」の湯が、精度良く給湯されているにも関わらず、湯水混合水栓(温調用弁装置)から排出される湯の温度は、「摂氏37度」に低下しているという不具合を生ずることもあるからである。よって、「給湯器の性能の向上」を生かすためにも、温調用弁装置に的確な改良を施すことが望ましい。
【0035】
これに対して、請求項2の発明によると、温調用可動弁体部(温調用の可動弁体)の回動位置(回動角度)を選択することで、(1)温調用連通流路を給湯用の流入流路と連通させ、温調用連通流路を給水用の流入流路と非連通とする状態と、(2)温調用連通流路を給水用の流入流路と連通させ、温調用連通流路を給湯用の流入流路と非連通とする状態と、を実現できる。このため、請求項2の発明によると、「元湯給湯」と、「元水給水」とを好適に行うことができる。従って、請求項2の発明によると、より使用勝手の良い、温度調節用弁装置を得られる。
【0036】
請求項3の発明の湯水混合水栓は、請求項1又は請求項2に記載の湯水混合水栓において、
前記温調用固定弁体部の内周部において、前記給湯用の流入流路の2次側の端部を包囲する部位と、前記給水用の流入流路の2次側の端部を包囲する部位とにシール部材が装着されると共に、
前記温調用可動弁体部を、前記第1の回転角度の範囲内で回動すると、前記温調用可動弁体部の外周部が、前記シール部材に対して摺動することを特徴とする。
【0037】
請求項3の発明は、温度調節用弁装置の具体的な態様を例示するものである。そして、この請求項3の発明の温度調節用弁装置では、温調用連通流路を、温調用可動弁体部の軸心方向に所定の間隔をおいて配置される複数個の連通孔を用いて構成することが望ましい。蓋し、温調用固定弁体部に装着される各シール部材は、「温調用固定弁体から離反して温調用連通流路に進入しようとする挙動」を示す可能性がある。ところが、温調用可動弁体部において複数の連通孔の間に位置する部位によって、この挙動を阻止したり、抑制できるからである。
【0038】
尚、請求項3の発明においても、温調用連通流路として、「給湯用の流入流路」専用の連通流路と、「給水用の流入流路」専用の連通流路と、を備えてもよい。つまり、前記連通流路として、給湯用の流入流路と連通可能であるが、給水用の流入流路とは連通不可能な湯側の連通流路と、給水用の流入流路と連通可能であるが、給湯用の流入流路とは連通不可能な水側の連通流路と、を備えてもよい。この態様は、例えば、「給湯用の流入流路」及び「給水用の流入流路」を、温調用可動弁体部の軸心方向に沿って所定の間隔をおいた位置に設けると共に、湯側の連通流路及び水側の連通流路を可動弁体の軸心方向に沿って所定の間隔をおいた位置に設け、「給湯用の流入流路」及び湯側の連通流路を、温調用可動弁体部の径方向に位置合わせ可能とし、「給水用の流入流路」及び水側の連通流路を、温調用可動弁体部の径方向に位置合わせ可能とすることで実現できる。また、この湯側の連通流路と、水側の連通流路も、可動弁体の軸心方向に所定の間隔をおいて配置される、複数の連通孔を用いて構成することが望ましい。
【0039】
請求項4の発明の湯水混合水栓は、請求項1〜3の何れかに記載の湯水混合水栓において、
前記切換用固定弁体部の内周部において、前記第1の取出用流路の1次側の端部を包囲する部位と、前記第2の取出用流路の1次側の端部を包囲する部位とにシール部材が装着されると共に、
前記切換用可動弁体部を、前記第2の回転角度の範囲内で回動すると、前記切換用可動弁体部の外周部が、前記シール部材に対して摺動することを特徴とする
【0040】
請求項4の発明は、切換用弁装置の具体的な態様を例示するものである。そして、この請求項4の発明の切換用弁装置では、切換用連通流路を、切換用可動弁体部の軸心方向に所定の間隔をおいて配置される複数個の連通孔を用いて構成することが望ましい。蓋し、切換用固定弁体部に装着される各シール部材は、「切換用固定弁体部から離反して切換用連通流路に進入しようとする挙動」を示す可能性がある。ところが、切換用可動弁体部において複数の連通孔の間に位置する部位によって、この挙動を阻止したり、抑制できるからである。
【0041】
尚、請求項4の発明においても、切換用連通流路として、「第1の取出用流路」専用の連通流路と、「第2の取出用流路」専用の連通流路と、を備えてもよい。つまり、前記切換用連通流路として、第1の取出用流路と連通可能であるが、第2の取出用流路とは連通不可能な第1の切換用連通流路と、第2の取出用流路と連通可能であるが、第1の取出用流路とは連通不可能な第2の切換用連通流路と、を備えてもよい。この態様は、例えば、「第1の取出用流路」及び「第2の取出用流路」を、切換用可動弁体部の軸心方向に沿って所定の間隔をおいた位置に設けると共に、第1の切換用連通流路及び第2の切換用連通流路を切換用可動弁体部の軸心方向に沿って所定の間隔をおいた位置に設け、「第1の取出用流路」及び第1の切換用連通流路を、切換用可動弁体部の径方向に位置合わせ可能とし、「第2の取出用流路」及び第2の切換用連通流路を、切換用可動弁体部の径方向に位置合わせ可能とすることで実現できる。また、この第1の連通流路と、第2の連通流路も、切換用可動弁体部の軸心方向に所定の間隔をおいて配置される、複数の連通孔を用いて構成することが望ましい。
【0042】
尚、請求項3の発明に関連する発明(以下、「関連発明1」という。)として以下の発明を例示できる。つまり、関連発明1の湯水混合水栓は、請求項1又は請求項2に記載の湯水混合水栓において、
「前記温調用可動弁体部の外周部において、前記温調用連通流路の1次側の端部を包囲する部位にシール部材が装着されると共に、
前記温調用可動弁体部を、前記第1の回転角度の範囲内で回動すると、前記シール部材が、前記温調用固定弁体部の内周部に対して摺動すること」を特徴とする。
【0043】
また、請求項4の発明に関連する発明(以下、「関連発明2」という。)として以下の発明を例示できる。つまり、関連発明2の湯水混合水栓は、請求項1の発明、請求項2の発明、若しくは、関連発明1の湯水混合水栓において、
「前記切換用可動弁体部の外周部において、前記切換用連通流路の1次側の端部を包囲する部位にシール部材が装着されると共に、
前記切換用可動弁体部を、前記第2の回転角度の範囲内で回動すると、前記シール部材が、前記切換用固定弁体部の内周部に対して摺動すること」を特徴とする。
【0044】
請求項3の発明、請求項4の発明、関連発明1、及び関連発明2の「シール部材(給湯側のシール部材、及び、給水側のシール部材、若しくは、連通側のシール部材)」としては、例えば、パッキンを例示できる。このシール部材の材質としては、合成ゴム、天然ゴム、エラストマ等を例示できる。また、潤滑性ゴム(ポリテトラフルオロエチレン等の固体潤滑材を配合して潤滑性を付与したゴム)を例示することもできる。
【0045】
尚、請求項3の発明の温度調節用弁装置が、
「前記温調用固定弁体部が、周壁部を貫通する状態、若しくは、内周部に凹設された状態に設けられた給湯側の被装着部と、周壁部を貫通する状態、若しくは、内周部に凹設された状態に設けられた給水側の被装着部と、を備える本体部材と、
前記給湯側の被装着部に装着されると共に、前記温調用可動弁体部側に位置する開口部によって、前記給湯用の流入流路の2次側の端部を構成する貫通孔を備える、給湯側の装着部材と、
前記給水側の被装着部に装着されると共に、前記温調用可動弁体側に位置する開口部によって、前記給水用の流入流路の2次側の端部を構成する貫通孔を備える、給水側の装着部材と、
前記給湯側の被装着部の周縁部と前記給湯側の装着部材の周縁部との間に装着される前記給湯側のシール部材と、
前記給水側の被装着部の周縁部と前記給水側の装着部材の周縁部との間に装着される前記給水側のシール部材と、を備える」
ことを特徴としてもよい(以下、関連発明3という。)。
【0046】
また、関連発明1の発明の温度調節用弁装置が、
「前記温調用可動弁体部が、周壁部を貫通する状態、若しくは、外周部に凹設された状態に設けられた被装着部を備える本体部材と、
前記被装着部に装着されると共に、前記温調用固定弁体側に位置する開口部によって、前記温調用連通流路の1次側の端部を構成する貫通孔を備える、装着部材と、
前記被装着部の周縁部と前記装着部材の周縁部との間に装着されるシール部材と、を備える」
ことを特徴としてもよい(以下、関連発明4という。)。
【0047】
また、請求項4の発明の切換用弁装置が、
「前記切換用固定弁体部が、周壁部を貫通する状態、若しくは、内周部に凹設された状態に設けられた第1の被装着部と、周壁部を貫通する状態、若しくは、内周部に凹設された状態に設けられた第2の被装着部と、を備える本体部材と、
前記第1の被装着部に装着されると共に、前記切換用可動弁体部側に位置する開口部によって、前記第1の取出用の流路の1次側の端部を構成する貫通孔を備える、第1の装着部材と、
前記第2の被装着部に装着されると共に、前記切換用可動弁体部側に位置する開口部によって、前記第2の取出用流路の1次側の端部を構成する貫通孔を備える、第2の装着部材と、
前記第1の被装着部の周縁部と前記第1の装着部材の周縁部との間に装着される前記第1のシール部材と、
前記第2被装着部の周縁部と前記第2の装着部材の周縁部との間に装着される前記給第2のシール部材と、を備える」
ことを特徴としてもよい(以下、関連発明5という。)。
【0048】
また、関連発明2の発明の切換用弁装置が、
「前記切換用可動弁体部が、周壁部を貫通する状態、若しくは、外周部に凹設された状態に設けられた被装着部を備える本体部材と、
前記被装着部に装着されると共に、前記切換用固定弁体部側に位置する開口部によって、前記切換用連通流路の2次側の端部を構成する貫通孔を備える、装着部材と、
前記被装着部の周縁部と前記装着部材の周縁部との間に装着されるシール部材と、を備える」
ことを特徴としてもよい(以下、関連発明6という。)。
【0049】
関連発明3〜関連発明6によると、可動弁体部(温調用可動弁体部、切換用可動弁体部)を回転させる際の摩擦抵抗の低下を図りつつ、弁装置(温調用弁装置、切換用弁装置)の操作性を向上させることができる。つまり、関連発明3〜関連発明6においては、「対象とする流路」の所定の端部の周囲に、装着部材(シール部材の装着をアシストする部材)と、シール部材とを配置する。蓋し、固定弁体部と可動弁体部との間の摺接面の広範な部位にシール部材を配置すると、可動弁体部を回転させる際の摩擦抵抗が大きくなり、弁装置の操作性が低下する。一方、関連発明3〜関連発明6では、「対象とする流路」の所定の端部の周囲に限定してシール部材を配置し、可動弁体部を回転させる際の摩擦抵抗の低下を図ることで、弁装置の操作性を向上させている。
【0050】
関連発明3〜関連発明6の各「装着部材」は、シール部材(パッキン等)を装着する際の補助部材(つまり、アシストする部材)として機能する。この装着部材の材質としては、この装着部材の強度を確保しつつ軽量化を図る観点から、合成樹脂とすることが好ましい。この「合成樹脂」としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等を例示できる。尚、これらの合成樹脂は、装着部材の摺動特性を高めるために、固体潤滑剤(ポリテトラフルオロエチレン、グラファイト等)を含有することが望ましい。
【0051】
また、「装着部材」を合成樹脂によって構成すると、以下のような利点がある。つまり、「装着部材」を金属で構成しつつ、貫通孔の開口形状(平面形状)を単純形状(矩形状等)以外の特殊形状にしようとすると(例えば、亀甲状、三角形状等)、貫通孔の周縁部に「ばり」が形成される可能性がある。また、「装着部材」をセラミックスで構成しつつ、貫通孔の開口形状(平面形状)を単純形状(矩形状等)以外の特殊形状にしようとすると、貫通孔に割れを生じたり、特殊形状の貫通孔自体を形成することが不可能な場合がある。これに対して、「装着部材」を合成樹脂によって構成する場合には、貫通孔の開口形状(平面形状)を特殊形状としても、貫通孔の仕上がり状態が良好となるからである。
【0052】
請求項5の発明の湯水混合水栓は、請求項1乃至4の何れかに記載の湯水混合水栓において、
前記温調用連通流路として、前記給湯用の流入流路と連通可能であるが、前記給水用の流入流路とは連通不可能な湯側の温調用連通流路と、
前記給水用の流入流路と連通可能であるが、前記給湯用の流入流路とは連通不可能な水側の温調用連通流路と、を備え、
前記温調用可動弁体部を、前記温調用可動弁体部の軸心回りに一の回転方向に回転させると、前記給湯用の流入流路と前記湯側の温調用連通流路との連通度合いが増加し、前記給水用の流入流路と前記水側の温調用連通流路との連通度合いが減少し、
前記温調用可動弁体部を、前記温調用可動弁体部の軸心回りに、前記一の回転方向とは逆の他の回転方向に回転させると、前記給湯用の流入流路と前記湯側の温調用連通流路との連通度合いが減少し、前記給水用の流入流路と前記水側の温調用連通流路との連通度合いが増加すると共に、
前記湯側の温調用連通流路の1次側の端部に、前記可動弁体の軸心方向に沿った幅が、前記他の回転方向に沿って徐々に減少する、給湯側の幅減少部を設け、
前記水側の温調用連通流路の1次側の端部に、前記可動弁体の軸心方向に沿った幅が、前記一の回転方向に沿って徐々に減少する、給水側の幅減少部を設けたことを特徴とする。
【0053】
請求項5の発明によると、より使用勝手に優れた温度調節用弁装置を得ることができる。つまり、温調用連通流路を、湯側の温調連通流路と、水側の温調連通流路とで構成すると共に、各温調用連通流路の1次側の端部に、幅減少部を設ける。このため、温調用可動弁体部の一の回転方向への回転量を徐々に増加させると、温度調節用弁装置から流出する湯水の温度を徐々に上昇させ、温調用可動弁体部の他の回転方向への回転量を徐々に増加させると、温度調節用弁装置から流出する湯水の温度を徐々に下降させることができる。
【0054】
ここで、「湯側の温調用連通流路の1次側の端部における給湯側の幅減少部の形成範囲」と、「水側の温調用連通流路の1次側の端部における給水側の幅減少部の形成範囲」と、を種々選択できる。例えば、「湯側の温調用連通流路の1次側の端部」の全域が、「給湯側の幅減少部の形成範囲」とされてもよいし、「湯側の連通流路の1次側の端部」の一部(特に、他の回転方向に沿った端部側)のみが、「給湯側の幅減少部の形成範囲」とされてもよい。同様に、「水側の温調用連通流路の1次側の端部」の全域が、「給水側の幅減少部の形成範囲」とされてもよいし、「水側の温調用連通流路の1次側の端部」の一部(特に、他の回転方向に沿った端部側)のみが、「水湯側の幅減少部の形成範囲」とされてもよい。
【0055】
請求項5の発明において、給湯側の幅減少部の開口形状としては、「略三角形状」、「略涙形状」、「略台形状」等を例示できる。また、給水側の幅減少部の開口形状としても、「略逆三角形状」、「略逆涙形状」、「略逆台形状」等を例示できる。尚、各請求項の発明において、「給湯用の流入流路の2次側の端部の開口形状」や、「給水用の流入流路の2次側の端部の開口形状」は種々選択可能である。例えば、(1)温調用可動弁体部の軸心方向に沿った幅を徐々に増加させる形状(略逆三角形状、略逆涙形状、略逆台形状等)、徐々に減少させる形状(略三角形状、略涙形状、略台形状等)、(2)温調用可動弁体部の軸心方向に沿った幅を、徐々に増加させた後に、再び、減少させる形状(略亀甲形状、略菱形状等)等を例示できる。
【0056】
請求項6の発明の湯水混合水栓は、請求項1乃至5の何れかに記載の湯水混合水栓において、
前記切換用連通流路として、前記第1の取出用流路と連通可能であるが、前記第2の取出用流路とは連通不可能な第1の切換用連通流路と、
前記第2の取出用流路と連通可能であるが、前記第1の取出用流路とは連通不可能な第2の切換用連通流路と、を備え、
前記切換用可動弁体部を、前記切換用可動弁体部の軸心回りに一の回転方向に回転させると、前記第1の取出用流路と前記第1の切換用連通流路との連通度合いが増加し、
前記切換用可動弁体部を、前記切換用可動弁体部の軸心回りに、前記一の回転方向とは逆の他の回転方向に回転させると、前記第2の取出用流路と前記第2の切換用連通流路との連通度合いが増加し、
前記第1の切換用連通流路の2次側の端部に、前記切換用可動弁体部の軸心方向に沿った幅が、前記一の回転方向に沿って徐々に減少する、第1の幅減少部を設け、
前記第2の切換用連通流路の2次側の端部に、前記切換用可動弁体部の軸心方向に沿った幅が、前記他の回転方向に沿って徐々に減少する、第2の幅減少部を設けたことを特徴とする。
【0057】
請求項6の発明によると、請求項5の発明と同様に、より使用勝手に優れた切換用弁装置を得ることができる。
【0058】
ここで、「第1の切換用連通流路の2次側の端部における第1の幅減少部の形成範囲」と、「第2の切換用連通流路の2次側の端部における第2の幅減少部の形成範囲」と、を種々選択できる。例えば、「第1の切換用連通流路の2次側の端部」の全域が、「第1の幅減少部の形成範囲」とされてもよいし、「第1の切換用連通流路の2次側の端部」の一部(特に、他の回転方向に沿った端部側)のみが、「第1の幅減少部の形成範囲」とされてもよい。同様に、「第2の切換用連通流路の2次側の端部」の全域が、「第2の幅減少部の形成範囲」とされてもよいし、「第2の切換用連通流路の2次側の端部」の一部(特に、他の回転方向に沿った端部側)のみが、「第2の幅減少部の形成範囲」とされてもよい。
【0059】
請求項6の発明において、第1の幅減少部の開口形状としては、「略三角形状」、「略涙形状」、「略台形状」等を例示できる。また、第2の幅減少部の開口形状としても、「略逆三角形状」、「略逆涙形状」、「略逆台形状」等を例できる。尚、各請求項の発明において、「第1の取出用流路の1次側の端部の開口形状」や、「第2の取出用流路の1次側の端部の開口形状」は種々選択可能である。例えば、(1)切換用可動弁体部の軸心方向に沿った幅を徐々に増加させる形状(略逆三角形状、略逆涙形状、略逆台形状等)、徐々に減少させる形状(略三角形状、略涙形状、略台形状等)、(2)切換用可動弁体部の軸心方向に沿った幅を、徐々に増加させた後に、再び、減少させる形状(略亀甲形状、略菱形状等)等を例示できる。
【発明の効果】
【0060】
以上のように、各請求項の発明によると、「温調用弁装置」及び「切換用弁装置」を備える湯水混合水栓において、製造上の手間を少なくすると共に、製造コストの低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
次に、本各発明に係わる「湯水混合水栓(以下、単に「水栓」という。)」の最良の形態(以下、「実施例」という。)を図面に従って詳細に説明する。
【0062】
(1)水栓の全体の構成
本実施例に係る水栓100は、図1に示すように、水栓本体1と、この水栓本体1内に装着される温調用弁装置Bと、この水栓本体1内において温調用弁装置Bの2次側に装着される切換用弁装置Cと、温調用弁装置Bを操作するための温調用ハンドルTと、切換用弁装置Cを操作するための切換用ハンドルtと、を備えている。
【0063】
水栓本体1は、両端に開口部を備える略筒状に構成され、内部空間のうちの左側(左右は、使用者を基準とする。)の部位を、本温調用弁装置Bが装着される装着用空間部1aとし、内部空間のうちの右側の部位を、切換用弁装置Cが装着される装着用空間部1bとしている。
【0064】
水栓本体1の内部には、水栓本体1の軸心方向に沿って複数の隔壁1c〜1gが設けられている。そして、「左側の2つの隔壁1c、1d、及び、中央の隔壁1eの左端側」と、これらの内側に水密状に装着される温調用弁装置Bと、を用いて、水栓本体1の内部には複数の流路が形成される。つまり、本温調用弁装置Bの1次側には、給湯流路5と、給水流路7とが形成され、本温調用弁装置Bの2次側には、供給用流路3が形成される。
【0065】
給湯流路5は、水栓本体1の背後に接続された接続管(ソケット)5Sを用いて、給湯源(給湯器等)に接続(連絡)され、給水流路7は、水栓本体1の背後に接続された接続管(ソケット)7Sを用いて、給水源(水道配管の端末部等)に接続され(連絡)ている。また、供給用流路3は、切換用弁装置Cの湯水取入口81に接続されている。
【0066】
「右側の2つの隔壁1g、1f、及び、中央の隔壁1eの右端側」と、これらの内側に水密状に装着される切換用弁装置Cと、を用いて、水栓本体1の内部には複数の流路が形成される。つまり、切換用弁装置Cの1次側には、前述の供給用流路3が接続され、切換用弁装置Cの2次側には、カラン側の吐水流路85と、シャワー側の吐水流路87と、が形成されている。そして、カラン側の吐水流路85の端末部には、カラン(図示を省略)が接続され、シャワー側の吐水流路87の端末部には、シャワー設備(例えば、シャワーホースと、シャワーヘッドとを備えるシャワー設備)が接続されている。
【0067】
カランは、「第1の吐水手段」の具体例を構成し、カラン側の吐水流路85は、「第1の吐水流路」の具体例を構成する。また、シャワーヘッドは、「第2の吐水手段」の具体例を構成し、シャワー側の吐水流路87は、「第2の吐水流路」の具体例を構成する。尚、「第1の吐水手段」及び「第2の吐水手段」の具体例は、カラン及びシャワーヘッドに限定されない。例えば、態様の異なるシャワー吐水手段(一方が、ハンドシャワーヘッドで、他方がミストシャワー用の吐水手段である場合等)であってもよい。
【0068】
本実施例では、(1)「温調用弁装置Bにおいて所望の温度に調温された混合湯水(給水源から供給される水と、給湯源から供給される湯とを混合して構成される混合水の意味で用いる。以下、単に、「混合湯水」という。)、(2)給水源から供給され、そのまま「温度調節弁装置」を通過した水、(以下、単に、「元水」という。)若しくは、(3)給湯源から供給され、そのまま「温度調節弁装置」を通過した湯(以下、単に、「元湯」という。)が、供給用流路3を通過して、切換用弁装置Cに到達する。
【0069】
そして、切換用弁装置Cを操作すると、(a)供給用流路3を、両吐水流路85、87と遮断して構成される止水状態(閉弁状態)と、(b)供給用流路3をカラン側の吐水流路85と連通させて構成されるカラン側の吐水状態(カラン側の開弁状態)と、(c)供給用流路3をシャワー側の吐水流路87と連通させて構成されるシャワー側の吐水状態(シャワー側の開弁状態)と、のうちの何れかが選択的に実行される。つまり、本水栓100によると、切換用弁装置Cの開閉弁作動により、カラン吐水の状態(即ち、「カラン側の吐水状態」)と、シャワー吐水の状態(即ち、「シャワー側の吐水状態」)と、止水状態と、を選択的に実行可能である。また、カラン吐水の状態と、シャワー吐水の状態にあるときには、切換用弁装置Cの開弁度合いを調節することで、吐水量の調節がなされる。
【0070】
(2)温調用弁装置Bの構成
温調用弁装置Bは、図2に示すように、ハウジング10と、温調用固定弁体20と、温調用可動弁体30と、スピンドル40と、取付カラー60と、取付リング61と、を備えている。尚、本温調用弁装置Bにおいて、操作ハンドルTが装着される端部側を「前端側」若しくは「前方側」と称し、この端部側とは「反対の端部側」を、「後端側」若しくは「後方側」と称する。また、温調用固定弁体20は、「温調用固定弁体部」の具体例を構成し、温調用可動弁体30は、「温調用可動弁体部」の具体例を構成する。
【0071】
ハウジング10は、温調用弁装置Bの外郭部を構成するものあり、図3に示すように、軸心方向に沿った両端部を開口部11、12とする略円筒形状とされている。このハウジング10の「後端側」の開口部11は、「前端側」の開口部12よりも、大きな口径を備える。そして、後端側の開口部11が、後述する温調用固定弁体20と、温調用可動弁体30と、スピンドル40とを装着するための装着口を構成し、前端側の開口部12が後述する「スピンドル40」を軸支するための軸受け部を構成する。
【0072】
ハウジング10の周壁部(周壁)13の前端側と後端側には、各々2つずつの貫通孔15、16が、当該周壁部(周壁)13を「ハウジング10の半径方向」に貫通する状態で設けられている(図12等も参照)。これらの貫通孔15、16の断面形状(流体の通過方向に直交する断面に沿った断面形状)は、何れも、ハウジング10を周回する方向に沿って長尺な略長円状とされている(図9を参照)。つまり、ハウジング10の後端側には、2つの貫通孔(以下、「給湯用の通過孔」という。)15、15が併設され、ハウジング10の前端側にも、2つの貫通孔(以下、「給水用の通過孔」という。)16が併設されている(図12等も参照)。また、給湯用の通過孔15、15と、給水用の通過孔16、16とは、ハウジング10を周回する方向に沿って、約120度隔てた位置に設けられている。
【0073】
ハウジング10の外周部には、周回溝17〜19が設けられている。これらの周回溝17〜19は、ハウジング10の軸心方向に沿って間隔をおいて形成されている。つまり、最後端側の周回溝17と中間部の周回溝18とで給湯用の通過孔15を挟み込み、中間部の周回溝18と最前端側の周回溝19とで給水用の通過孔16を挟み込む構成とされている。そして、各周回溝17〜19には、Oリング17a、18a、19aがはめ込まれている。これらのOリング17a、18a、19aの外周部は、本温調用弁装置Bを水栓本体1の装着空間部1aに装着したときに、水栓本体1の隔壁1c、1d、1eに当接する。これにより、水栓本体1の内部流路間(供給用流路3と、給湯流路5と、給水流路7との間)の水密性が保持されている。
【0074】
ハウジング10の内周部であって、しかも、ハウジング10の前端側の部位には、ハウジング10の軸心方向に沿って長尺状の位置決め突起14が設けられている。
【0075】
温調用固定弁体20は、図4及び図6に示すように、本体部材21と、2つの装着部材50、50と、2つのシール部材55、55とを備えている。このうち、本体部材21は略円筒体を用いて構成されている。
【0076】
本体部材21は、合成樹脂製で、薄肉の略円筒体である。この本体部材21も、軸心方向に沿った両端に開口部22a、22bを備える。また、本体部材21の周壁23の前端側と後端側には、各々1つずつの被装着孔23a、23bが、当該周壁部(周壁)23を「本体部材21の半径方向」に貫通する状態で設けられている(図12等も参照)。尚、これらの被装着孔23a、23bは、「被装着部」の具体例を構成する。
【0077】
つまり、本体部材21の後端側には、1つの被装着孔(以下、「給湯側の被装着孔」という。)23aが設けられ、本体部材21の前端側にも、1つの被装着孔(以下、「給水側の被装着孔」という。)23bが設けられている(図12等も参照)。また、両被装着孔23a、23bは、本体部材21を周回する方向に沿って、約120度隔てた位置に設けられている。
【0078】
両被装着孔23a、23bは、何れも、本体部材21の軸心方向に沿って長尺な略長円状とされている。また、給湯側の被装着孔23aのサイズは、ハウジング10の後端側に併設される「2つの給湯用の通過孔15、15」を余裕をもって包囲可能なサイズとされている(図9を参照)。また、給水側の被装着孔23bのサイズは、ハウジング10の前端側に併設される「2つの給水用の通過孔16、16」を余裕をもって包囲可能なサイズとされている。
【0079】
本体部材21には、位置決め用スリット25が設けられている。この位置決め用スリット25は、本体部材21の前端部で開口すると共に、本体部材21の軸心方向に長尺状で、しかも、本体部材21を半径方向に貫通する状態に設けられている。更に、この位置決め用スリット25のサイズ(空間部分のサイズ)は、ハウジング10の内周部の位置決め突起14を嵌合可能なサイズとされている。
【0080】
この本体部材21は、位置決め用スリット25を、位置決め突起14に嵌合させつつ、ハウジング10内に挿入される。更に、位置決め用スリット25の後端部に位置決め突起14の後端部を当接させると、ハウジング10内に位置決め固定される。つまり、本体部材21、ひいては、温調用固定弁体20は、位置決め用スリット25及び位置決め突起14の嵌合と、両者の後端部相互の当接によって、ハウジング10の軸心方向と、ハウジング10の周回方向に位置決めされた状態となる。そして、このように、本体部材21の位置決めがなされると、給湯側の被装着孔23aと、「2つの給湯用の通過孔15、15」との位置合わせがされ(図2を参照)、給水側の被装着孔23bと、「2つの給水用の通過孔16、16」との位置合わせがされる。
【0081】
尚、本実施例においては、本体部材21に設けられた2つの被装着孔23a、23bの平面形状、深さ、断面積(本体部材21の周壁部23に沿った断面積)が等しくされている。また、本実施例では、「被装着部(被装着孔23a、23b)」を、本体部材21を半径方向に貫通する孔状に構成したが、本体部材21の内周部に凹設される凹設状に構成してもよい(つまり、被装着凹部として構成してもよい。)。この場合、凹設状の被装着部(被装着凹部)の底部には、本体部材21の半径方向に向かって貫通孔を設けることが必要となる。また、凹設状の被装着部(被装着凹部)を設ける場合、本体部材21を一部材で構成してもよいが、製造上の便宜を考慮して、本体部材21を複数の部材(内側円筒体と、外側円筒体)で構成してもよい。
【0082】
何れの装着部材50も、図6及び図7に示すように、長手方向に2つの貫通孔51、51を併設した枠状体を用いて構成されている。この装着部材50の平面形状は略矩形とされ、その肉厚は、各被装着孔23a、23bの深さ(つまり、本体部材21の肉厚)と略等しくされている。また、装着部材50の外縁部(周縁部)52の寸法は、各被装着孔23a、23bの周縁部Sの寸法よりも小さくされている。つまり、装着部材50を、各被装着孔23a、23bに装着すると、装着部材50の外縁部52と、各被装着孔23a、23bの周縁部Sとの間に略矩形枠状の隙間部が形成されることとなっている。尚、給湯側の被装着孔23aに装着される装着部材50は、給湯側の装着部材の具体例を構成し、給水側の被装着孔23bに装着される装着部材50は、給水側の装着部材の具体例を構成する。
【0083】
装着部材50の長手方向に併設される貫通孔51、51の平面形状(開口部の形状)は、何れも、略「亀甲形状(略正六角形状)」とされている。つまり、相互に対向する一対の頂点部51a、51bを短手方向(温調用固定弁体20を周回する方向)に並べた構成を備える。
【0084】
各装着部材50において、2つの貫通孔51、51の配置間隔は、ハウジング10の後端側で並ぶ「2つの給湯用の通過孔15、15」と等しくされると共に、ハウジング10の前端側で並ぶ「2つの給水用の通過孔16、16」と等しくされている。そして、給湯側の被装着孔23aに装着される装着部材(給湯側の装着部材)50に設けられる「2つの貫通孔51、51」によって、「給湯用の流入流路7H」の具体例を構成し、給水側の被装着孔23bに装着される装着部材(給水側の装着部材)50に設けられる「2つの貫通孔51、51」によって、「給水用の流入流路5W」の具体例を構成している。
【0085】
各シール部材55は、図6に示すように、合成ゴム、天然ゴム、エラストマ等の弾性素材を用いて構成した「リング状のパッキン」によって構成されている。尚、このシール部材55の直径は、前述の「装着部材50の外縁部52と、各被装着孔23a、23bの周縁部Sとの間に略矩形枠状の隙間部」の幅よりも大きくされ、このシール部材55の円周長は、この隙間部の全長よりも短くされている。つまり、このシール部材55は、適宜な弾性変形を行いつつ、当該「隙間部」に装着可能なサイズを備えている。尚、給湯側の被装着孔23aに装着されるシール部材55は、「給湯側のシール部材」の具体例を構成し、給水側の被装着孔23bに装着されるシール部材55は、「給水側のシール部材」の具体例を構成する。また、給湯側の被装着孔23aに装着されるシール部材55と、給水側の被装着孔23bに装着されるシール部材55とは、請求項3の発明の「被摺動部」の具体例を構成し、温調用可動弁体30の外周部は、請求項3の発明の「摺動部」の具体例を構成する。
【0086】
各装着部材50は、図9に示すように、その外縁部52にシール部材55を装着した状態で、各被装着孔23a、23bに装着される。その際、給湯側の被装着孔23aに装着される装着部材50の「2つの貫通孔51、51」が、「給湯用の流入流路7H」を構成し、給水側の被装着孔23bに装着される装着部材50の「2つの貫通孔51、51」が、「給水用の流入流路5W」を構成する。この「給湯用の流入流路7H」及び「給水用の流入流路5W」の1次側の端部は、温調用固定弁体20の外周部で開口し、「給湯用の流入流路7H」及び「給水用の流入流路5W」の2次側の端部は、温調用固定弁体20の内周部で開口している。尚、「給湯用の流入流路7H」及び「給水用の流入流路5W」の2次側の端部は、温調用固定弁体20を周回する方向に沿って、約120度隔てた位置で開口している。また、本実施例の温調用固定弁体20では、内周部20Bと外周部とが円筒周面を備えるが、外周部の周面形状は適宜変更可能である。例えば、固定筒状部の外縁部の平面形状(外周部の外縁部の平面形状)は、三角形、多角形等の円形以外の形状とされてもよい。
【0087】
温調用可動弁体30は、金属製で、薄肉の略円筒体を用いて構成されている。この温調用可動弁体30も、図5に示すように、軸心方向に沿った両端に開口部31a、31bを備える。また、温調用可動弁体30の周壁32の前端側と後端側には、各々2つずつの連通孔32a、32bが、当該周壁部(周壁)32を「温調用可動弁体30の半径方向」に貫通する状態で設けられている。
【0088】
つまり、温調用可動弁体30の後端側には、2つの連通孔(以下、「給湯側の連通孔」という。)32a、32aが併設され、温調用可動弁体30の前端側にも、2つの連通孔(以下、「給水側の連通孔」という。)32b、32bが併設されている。つまり、2つの「給湯側の連通孔」32a、32aによって「湯側の連通流路32H」の具体例が構成され、2つの「給水側の連通孔」32b、32bによって「水側の連通流路32W」の具体例が構成される。つまり、本実施例では、連通流路として、湯側の連通流路32Hと、水側の連通流路32Wと、を備えている。
【0089】
図8に示すように、給湯側の連通孔32aと、給水側の連通孔32bとは、温調用可動弁体30を周回する方向(図中の矢印W1の方向、若しくは、矢印W2の方向)に沿って長尺状とされると共に、1次側の端部を、温調用可動弁体30の外周部で開口させ、2次側の端部を、温調用可動弁体30の内周部で開口させている。これらの連通孔32a、32bは、平面形状が矩形状の孔部分の一つの端部(温調用可動弁体30の周方向に沿った一つの端部)に、平面形状が三角形状の孔部分を連結した形状を備えている。換言すると、温調用可動弁体30を周回する方向に沿って長尺な連通孔32a、32bは、長手方向に沿った中心部よりも一側を、「短手方向幅が略一定の片側連通部32c」とし、長手方向に沿った中心部よりも他側を、「短手方向幅が連通孔32の他端部(長手方向に沿った他端部)に向かって徐々に減少する(テーパ状に減少する)混合連通部32d」としている。
【0090】
本実施例では、給湯側の連通孔32aを構成する「混合連通部32d」の先端部(尖る部分)32eが、温調用可動弁体30の外周部を一の回転方向(図8中の矢印W1の方向)を向き、給水側の連通孔32bを構成する「混合連通部32d」の先端部(尖る部分)32fが、温調用可動弁体30の外周部を、一の回転方向と反対の他の回転方向(図8中の矢印W2の方向)を向いている。尚、「給湯側の連通孔32aの混合連通部32d」は、「給湯側の幅減少部32g」の具体例を構成し、「給水側の連通孔32bの混合連通部32d」は、「給水側の幅減少部32h」の具体例を構成している。
【0091】
図5に示すように、温調用可動弁体30の内部には、略円柱状の空間部が形成され、この空間部によって、「連通孔32a、32b(連通流路32H、32W)」の2次側に位置する流出流路33」が形成されている。この流出流路33には、「給湯側の連通孔32a(連通流路32H)」の2次側の端部と、「給水側の連通孔32b(連通流路32W)」の2次側の端部とが接続されている。尚、流出流路33の2次側の端部は、本温調用弁装置Bを水栓本体1の内部に装着したときに、供給用流路3の1次側の端部に接続される。尚、温調用可動弁体30の後端部には、抜け防止用のフランジ部35が設けられている。
【0092】
スピンドル40は、図2に示すように、その後端部に、温調用可動弁体30(可動筒状部)を一体回動可能な状態で保持するための保持部41を備えている。つまり、スピンドル40の後端部は、その保持部41を用いて、温調用可動弁体30(可動筒状部)の前端部を保持している。これにより、スピンドル40と温調用可動弁体30(可動筒状部)とは、両者の軸心を同一直線上に配置しつつ、直列に連結された状態となっている。そして、スピンドル40は温調用可動弁体30と一体で回動可能とされている。
【0093】
スピンドル40の後端部側の周面部には周回溝43が設けられ、この周回溝43にはパッキン44が装着されている。また、スピンドル40の中間部の周面部には、雄型のセレーション部45が設けられている。更に、このスピンドル40の中間部の周面部には、周回状の取付溝46が形成されている。
【0094】
取付カラー60は、図2に示すように、前端部の外周部から鍔部を突出させた略円筒状に形成され、内周部には、スピンドル40の雄型のセレーション部45と、「セレーション嵌合」可能な雌型のセレーション部60aが設けられている。また、取付リング61は、図2に示すように、前述の「取付溝46」に取付可能な「Cリング」を用いて構成されている。
【0095】
次に、本温調用弁装置Bの組み付けの手順の一具体例を説明する。先ず、本体部材21の後端側の開口部22a(温調用固定弁体20の後端の開口部)と、温調用可動弁体30の前端の開口部31bとを同心状に位置合わせし、本体部材21の内部に温調用可動弁体30を挿入する。この挿入は、温調用可動弁体30の抜け防止用のフランジ部35が、本体部材21の後端面に当接するまで行われる。これにより、温調用可動弁体30は、本体部材21の内部において、本体部材21を基準に回動可能となる。尚、この回動は、温調用可動弁体30の軸心を、本体部材21の軸心と一致させ、温調用可動弁体30の外周部を本体部材21の内周部に摺動させた状態で行われる。
【0096】
このように、本体部材21の内部に温調用可動弁体30を挿入すると、温調用可動弁体30の後端側の「2つの給湯側の連通孔32a、32a」と、本体部材21の後端側の「給湯側の被装着孔23a」とが、温調用可動弁体30の軸心方向に位置合わせされる。同時に、温調用可動弁体30の前端側の「2つの給水側の連通孔32b、32b」と、本体部材21の前端側の「給水側の被装着孔23b」とが、温調用可動弁体30の軸心方向に位置合わせされる。
【0097】
尚、温調用可動弁体30を一方の回転方向に回転させ、「給湯側の被装着孔23a」と、「2つの給湯側の連通孔32a、32a」とを本体部材21を周回する方向に沿って位置合わせする。そして、「給湯側の被装着孔23a」を覗き込むと、「給湯側の被装着孔23a」の外縁部の内側に「2つの給湯側の連通孔32a、32a」が収まる。また、温調用可動弁体30を他方の回転方向に回転させ、「給水側の被装着孔23b」と、「2つの給水側の連通孔32b、32b」とを本体部材21を周回する方向に沿って位置合わせする。そして、「給水側の被装着孔23b」を覗き込むと、「給水側の被装着孔23b」の外縁部の内側に「2つの給湯側の連通孔32b、32b」が収まる。
【0098】
本体部材21の内部に温調用可動弁体30を挿入した後、本体部材21の前端側の開口部22bから露呈する温調用可動弁体30の前端部を、スピンドル40の保持部41で保持し、スピンドル40を温調用可動弁体30に一体化する。これにより、スピンドル40と温調用可動弁体30(可動筒状部)とは、直列に連結された状態となり、スピンドル40及び温調用可動弁体30が一体で回動可能とされる。尚、スピンドル40の保持部41の外径が、本体部材21の前端側の開口部22bの外径よりも大きくされている。そして、本体部材21が、温調用可動弁体30の一部を構成する抜け防止用のフランジ部35と、温調用可動弁体30に一体化された保持部41とで両端を挟まれた状態となる。このため、本体部材21と、温調用可動弁体30とが不用意に離脱することが防止される。
【0099】
スピンドル40を温調用可動弁体30に一体化した後、「給湯側の被装着孔23a」と、「給水側の被装着孔23b」との各々に、装着部材50とシール部材55とを装着する。この作業は、各装着部材50を、その外縁部52にシール部材55を装着した状態で、各被装着孔23a、23bに装着して行われる。これにより、温調用可動弁体30を適宜、回転させると、給湯側の被装着孔23aに装着される装着部材50によって構成される「給湯用の流入流路7H」が、温調用可動弁体30に形成された給湯側の連通孔32a、32a(連通流路32H)と、温調用可動弁体30の径方向に対向可能(重なり合可能)となる。また、温調用可動弁体30を適宜、回転させると、給水側の被装着孔23bに装着される装着部材50によって構成される「給水用の流入流路5W」が、温調用可動弁体30に形成された給湯側の連通孔32b、32b(連通流路32W)と、温調用可動弁体30の径方向に対向可能(重なり合可能)となる。
【0100】
本実施例では、「各貫通孔51(給湯用の流入流路7Hを構成するための2つの貫通孔51と、給水用の流入流路5Wを構成するための2つの貫通孔51)の温調用可動弁体30側の開口部(以下、「可動側開口部」という。)」の形状が特殊形状なっている。つまり、各貫通孔51は、図7(a)に示すように、温調用固定弁体20の周壁部23を周回する方向に沿って、一対の頂点部51a、51bを並べた「略亀甲形状」とされている。このため、何れの「可動側の開口部」においても、その両端側を、「温調用可動弁体30の軸心方向に沿った幅が変化する幅変化部H1、H2」とされている。また、「何れの貫通孔51の温調用可動弁体30側の開口部」においても、幅変化部H1、H2で挟まれた部位が、温調用固定弁体20の軸心方向に沿った幅が一定の「幅一定部HC」とされている。
【0101】
つまり、この「可動側開口部」の温調用可動弁体30(可動筒状部)の軸心方向に沿った幅は、一方の幅変化部H1において、温調用可動弁体30(可動筒状部)を周回する方向に沿って徐々に(1次関数的に)増加する。そして、幅変化部H1の終点で一定となり、「幅一定部HC」において、温調用可動弁体30(可動筒状部)を周回する方向に沿って、この一定値を保持した後、他方の幅変化部H2において、温調用可動弁体30を周回する方向に沿って徐々に(1次関数的に)減少する。
【0102】
また、本温調用弁装置Bに操作を施し、各連通孔32a(32b)が、対応する貫通孔51(51)と重なり合う際に(連通する際に)、各貫通孔51(51)において、対応する連通孔32a(32b)と最初に交差する部位、つまり、「貫通孔51(51)の連通始端部K」は以下の部位である。即ち、各貫通孔51(51)において、温調用固定弁体20の周回方向に沿った一端部が、この「固定側連通始端部K」となる(図18を参照)。尚、以下の説明において、「温調用固定弁体20の連通始端部K」を、「固定側の連通始端部K」と称する。
【0103】
一方、本温調用弁装置Bに操作を施し、各連通孔32a(32b)が、対応する貫通孔51(51)と重なり合う際に、各貫通孔51(51)において、対応する連通孔32a(32b)と最後に交差する部位、つまり、「開弁終端部E」は以下の部位である。即ち、図18(b)に示すように、各貫通孔51(51)において、温調用固定弁体20の周回方向に沿った他端部が、この「開弁終端部E」となる。尚、以下の説明において、「温調用固定弁体20の連通終端部E」を、「固定側の連通終端部E」と称する。
【0104】
そして、給湯用の流入流路7Hを構成するための2つの貫通孔51においては、「固定側の連通始端部K」が貫通孔51の一方の頂点部51aによって構成され、「固定側の連通終端部E」が貫通孔51の他方の頂点部51bによって構成される。また、給水用の流入流路5Wを構成するための2つの貫通孔51においては、「固定側の連通始端部K」が貫通孔51の他方の頂点部51bによって構成され、「固定側の連通終端部E」が貫通孔51の一方の頂点部51aによって構成される。
【0105】
また、本実施例では、「湯側の連通流路32Hを構成するための給湯側の連通孔32a、32a」と、「水側の連通流路32Wを構成するための給水側の連通孔32b、32b」とにおいて、「固定弁体20側の開口部(以下、「固定側の開口部」という。)」の形状が特殊形状なっている。つまり、各連通孔32a(32b)は、図8に示すように、温調用可動弁体30を周回する方向に沿って長尺状とされる。そして、各連通孔32a(32b)の一側を構成すると共に短手方向幅(温調用可動弁体30の軸心方向に沿った幅)が略一定の「片側連通部32c」と、各連通孔32a(32b)の他側を構成すると共に、短手方向幅が連通孔32a(32b)の他端部(長手方向に沿った他端部)に向かって徐々に減少する(テーパ状に減少する)混合連通部32dと、を備える。
【0106】
また、本温調用弁装置Bに操作を施し、各連通孔32a(32b)が、対応する貫通孔51(51)と重なり合う際に(連通する際に)、各連通孔32a(32b)において、対応する貫通孔51(51)と最初に交差する部位、つまり、「連通孔32a(32b)の連通始端部F」は以下の部位である。即ち、各連通孔32a(32b)において、温調用可動弁体30の周回方向に沿った他端部が、この「連通始端部F」となる(図18を参照)。換言すると、混合連通部32dの尖った先端部が、「連通孔32a(32b)の連通始端部M」となる。尚、以下の説明において、「温調用可動弁体30の連通始端部M」を、「可動側の連通始端部M」と称する。そして、混合連通部32dは、「各連通孔32a(32b)において温調用可動弁体30の周回方向に沿った他端部の側」に向かって、その幅を徐々に拡大し、幅減少部32f(32g)の具体例を構成している。
【0107】
尚、本温調用弁装置Bにおいて、温調ハンドルTを、高温側に目一杯操作したり、低温側に目一杯操作しても、「各連通孔32a(32b)において、連通始端部Fと反対側に位置する端部G」は、「固定側の連通始端部K」と交差することはない。
【0108】
尚、本実施例では、各連通流路32H、32Wを、単一の連通孔で構成するのではなく、所定の間隔を隔てて併設された複数個の連通孔32a、32a(32b、32b)によって構成している。これは、シール部材55が、温調用可動弁体30の内部に進入することを防止するための進入防止部38を、温調用可動弁体30の外周部における後端部側の部位と、前端部側の部位とに設ける趣旨である。
【0109】
即ち、温調用弁装置Bに操作を施し、温調用固定弁体20を基準に温調用可動弁体30を回動させると、図11(a)及び(b)に示すように、装着部材50の外縁部52に装着されたシール部材55の一部55aが、「装着部材50の外縁部52と、各被装着孔23a、23bの周縁部Sとの間の隙間部」から脱落し、温調用可動弁体30の内周部の側に移動する可能性がある。このとき、各連通流路32H、32Wが単一で、大型の連通孔39とされていると(つまり、進入防止部38を存在しないと)、この一部55aが、この大型の連通孔39に誤って進入する可能性が高くなる。尚、図11(a)において、装着部材50の図示を省略している。
【0110】
一方、本実施例の構成を採用すると、図10(a)及び(b)に示すように、装着部材50の外縁部52に装着されたシール部材55の一部55aが、「装着部材50の外縁部52と、各被装着孔23a、23bの周縁部Sとの間の隙間部」から脱落し、温調用可動弁体30の外周部の側に移動しようとしても、この一部55aは、進入防止部38に邪魔をされ、各連通流路32H、32Wに進入し難くなっている。このため、シール部材55の一部55aが、温調用可動弁体30の内部に進入することを防止することができる。尚、図10(a)において、装着部材50の図示を省略している。
【0111】
前述の如く、温調用固定弁体20と温調用可動弁体30とスピンドル40の一体品は、ハウジング10に対して以下のように組み付けられている。つまり、スピンドル40の前端部を先頭に、この「一体品」を、後端側の開口部11からハウジング10の内部に挿入する。更に、スピンドル40を、その前端部を先頭に、ハウジング10の前端側の開口部12に挿入し、スピンドル40の前端部及び中間部を、ハウジング10の前方に突出させる。この際、ハウジング10の突起14と、位置決め用スリット25とが嵌合する。これにより、この「一体品」とハウジング10とが、ハウジング10の周方向に沿って位置決めされる。
【0112】
そして、スピンドル40の前端部から、スピンドル40の中間部に取付カラー60を装着し、更に、取付溝46に取付リング61を取り付ける。これにより、温調用弁装置Bの構成部品の組み付けを完了し、温調用弁装置Bを完成する。このように、弁装置Bを完成すると、スピンドル40は、開口部12の内壁面との間の水密性を、パッキン44によって維持しつつ、開口部12によって軸支される。このため、スピンドル40及び温調用可動弁体30は、温調用固定弁体20を基準に回動可能となる。また、このように弁装置Bを完成すると、相互に対応し合う流入流路及び連通流路(7H及び32H、5W及び32W)が、温調用固定弁体20の軸心方向に位置合わせされた状態となる。更に、この温調用弁装置Bを、水栓本体1の装着空間部1aに装着され、スピンドル40に、温調ハンドルTを装着すると、温調用弁装置Bは使用可能な状態となる。
【0113】
本実施例では、温調用弁装置Bに加える各操作に伴って、以下のような温度制御を行うことができる。先ず、図12(a)及び(b)に示すように、温調ハンドルTの操作位置が、中立位置にある場合、(1)給湯側の連通孔32a、32a(連通流路32H)を構成する混合連通部32dと、給湯側の被装着孔23aに装着される装着部材(給湯側の装着部材)50に設けられた貫通孔51、51とが連通すると共に、(2)給水側の連通孔32b、32b(連通流路32W)を構成する混合連通部32dと、給水側の被装着孔23bに装着される装着部材(給湯側の装着部材)50に設けられた貫通孔51、51とが連通する(図13を参照)。
【0114】
温調用弁装置Bの流出流路33から流出させる湯水の温度を上昇させることを意図する場合、温調ハンドルTは一の回転方向に回転操作される。このように、温調ハンドルTを、一の回転方向に操作すると、(3)給湯側の連通孔32a、32aと、給湯側の被装着孔23aに装着される装着部材(給湯側の装着部材)50に設けられた貫通孔51、51との連通度合い(以下、「給湯側の連通度」という。)が向上すると共に、(4)給水側の連通孔32b、32b(連通流路32W)を構成する混合連通部32dと、給水側の被装着孔23bに装着される装着部材(給湯側の装着部材)50に設けられた貫通孔51、51との連通度合い(以下、「給水側の連通度」という。)が低下する。そして、一の回転方向への回転操作量を徐々に増加させると、「給湯側の連通度」が緩やかに上昇すると共に、「給水側の連通度」が緩やかに低下する。
【0115】
「給湯側の連通度」及び「給水側の連通度」は、温調ハンドルTに加える操作量が少ない間には、その変化率は低水準に留まる。つまり、各連通孔32a、32aと、対応する貫通孔51(51)において、連通始端部K、F側の形状が、連通始端部K、Fから離間するに従って、短手幅を徐々に拡大するテーパ状とされるため、温調ハンドルTに加える操作量が少ない間には、「給湯側の連通度」及び「給水側の連通度」の変化率が低水準に留まる。
【0116】
そして、図14に示すように、温調ハンドルTを、一の回転方向(高温吐水の方向)への限界位置に回転操作すると、(5)給湯側の連通孔32a、32a(連通流路32H)を構成する「片側連通部32c」と、給湯側の被装着孔23aに装着される装着部材(給湯側の装着部材)50に設けられた貫通孔51、51とが連通するが、(6)給水側の連通孔32b、32b(連通流路32W)と、給水側の被装着孔23bに装着される装着部材(給湯側の装着部材)50に設けられた貫通孔51、51とは非連通となる(図15を参照)。
【0117】
中立位置にある温調ハンドルTを、他の回転方向に操作すると、「給湯側の連通度」が低下すると共に、「給水側の連通度」が向上する。そして、他の回転方向への回転操作量を徐々に増加させると、「給水側の連通度」が緩やかに上昇すると共に、「給湯側の連通度」が緩やかに低下する。
【0118】
そして、図16に示すように、温調ハンドルTを、他の回転方向(低温吐水の方向)への限界位置に操作すると、(7)給水側の連通孔32b、32b(連通流路32W)を構成する「片側連通部32c」と、給水側の被装着孔23bに装着される装着部材(給湯側の装着部材)50に設けられた貫通孔51、51とが連通するが、(8)給湯側の連通孔32a、32a(連通流路32H)と、給湯側の被装着孔23aに装着される装着部材(給湯側の装着部材)50に設けられた貫通孔51、51とは非連通となる(図17を参照)。
【0119】
本実施例では、温調ハンドルTを中立位置を中心として、一の回転方向と他の回転方向へ回転操作することができる。そして、温調ハンドルTの操作範囲(回動範囲であって、一の回転方向への限界位置と、他の回転方向への限界位置との間に規制される範囲)で操作するときに、少なくも何れかの連通孔32a、32bが、少なくも何れかの貫通孔51、51と連通する状態とされる。尚、温調用可動弁体30が、温調用固定弁体20に対して摺動する範囲(摺動範囲)は、この温調ハンドルTの操作範囲に応じて規制される。
【0120】
本実施例の温調用弁装置Bは、温調用固定弁体20と、温調用可動弁体30とを主体とする簡易な構成を備えるため、安価に製造することができる。また、本実施例の温調用弁装置Bは、温調用固定弁体20と、この温調用固定弁体20に対して水密状に摺動する温調用可動弁体30とを主体に構成され、しかも、各流入流路7H、5Wの連通流路32H、32Wに対する連通度合いを調節することで、温度調節を行うため、高精度な温度調節を行うことができる。
【0121】
また、本実施例の温調用弁装置Bによると、温調ハンドルTの操作量(温調用可動弁体30の摺動位置)を選択することで、「元湯給湯」と、「元水給水」とを好適に行うことができる。従って、本実施例によると、より使用勝手の良い、温度調節用弁装置Bを得ることができる。
【0122】
更に、本実施例によると、連通流路32H、32Wの温調用固定弁体20側の開口部(1次側の端部)の形状、サイズ、形成位置等を選択したり、各流入流路7H、5Wの温調用可動弁体30側の開口部(2次側の端部)の形状、サイズ、形成位置等を選択することで、種々の態様の温度制御を実現できる。この点に関し、図19の吐水温度特性を示すグラフ用いて説明する。
【0123】
図19は、温調Tの回転操作量と、吐水温度(流出流路33から流出する湯水の温度)との関係を示す説明図である。つまり、図19において、横軸に温調ハンドルTの回転操作量(A〜9A)を示し、縦軸に吐水温度(摂氏20〜摂氏60)を示している。そして、説明図には、比較例の温調用弁装置に係るグラフ(X0)と、本実施例の温調用弁装置Bに係るグラフ(X1)と、変形例1の温調用弁装置に係るグラフ(X2)が図示されている。尚、回転操作量は、「温調ハンドルTが、低温側の操作限界位置にある場合」を「A」で示し、「温調ハンドルTが、高温側の操作限界位置にある場合」を「9A」で示している。
【0124】
ここで、比較例の温調用弁装置は、前述のリフト方式の温調用弁装置である。また、変形例1の温調用弁装置は、図20に示すように、幅減少部32g(32h)の態様が、実施例の幅減少部32g(32h)と異なる点を除いて、実施例の温調用弁装置Bと同様である。つまり、変形例1の幅減少部32f、32g(実線L2で表示)を、実施例の幅減少部32g、32h(破線L2で表示)と比べると、長さ(連通孔32a、32bの長手方向に沿った長さ)が短くされると共に、幅減少部32g、32hの幅減少率(連通孔32a、32bの長手方向に沿った、短手幅増加率)が、大きくされている。
【0125】
比較例の温調用弁装置では、「温調ハンドルTが低温側の操作限界位置にある場合(回転操作量が、Aの場合)」、この温調ハンドルTを僅かに操作するだけで、吐水温度が急激に上昇する。また、「温調ハンドルTが高温側の操作限界位置にある場合(回転操作量が、9Aの場合)」、この温調ハンドルTを僅かに操作するだけで、吐水温度が急激に下降する。このため、使用者にとっては、使用勝手が悪く、安心感に乏しい、温調用弁装置となる。
【0126】
一方、実施例の温調用弁装置Bと、変形例の温調用弁装置では、「温調ハンドルTが低温側の操作限界位置にある場合(回転操作量が、Aの場合)」、この温調ハンドルTを操作すると、吐水温度は緩やかに上昇する。また、「温調ハンドルTが高温側の操作限界位置にある場合(回転操作量が、9Aの場合)」、この温調ハンドルTを操作すると、吐水温度が緩やかに下降する。このため、使用者にとっては、使用勝手が良く、安心感に富んだ、温調用弁装置B等となる。
【0127】
また、実施例の温調用弁装置Bと、変形例の温調用弁装置では、連通孔32a、32bの態様を変更することで、異なる態様の温度制御を実現できる。つまり、変形例1では、幅減少部32g、32hの長さが短くされると共に、幅減少率が大きくされる。このため、「低温側の操作限界位置にある温調ハンドルT」に操作を加えた場合、実施例の温調用弁装置Bに比べて、吐水温度の上昇率を僅かに向上させることができる。同様に、「高温側の操作限界位置にある温調ハンドルT」に操作を加えた場合、実施例の温調用弁装置Bに比べて、吐水温度の下降率を僅かに下降させることができる。つまり、各請求項の発明によると、本実施例や変形例1の如く、連通孔32a、32bの態様を変更することで、「元湯給湯(所謂、片側給湯)」、「元水給水(所謂、片側給水)、若しくは、これに近似した温度の湯水の吐水を行うための「温調ハンドルTの操作角度の範囲」を変更することができる。
【0128】
(3)切換用弁装置Cの構成
切換用弁装置Cは、その前端側(前方側)、つまり、「切換用弁装置Cを操作するための操作ハンドルtが装着される端部側」を、右方向に突出させた状態で、水栓本体1に装着されている。そして、この切換用弁装置Cの後端部と、前述の温調用弁装置Cの後端部とは、対向する状態(供給用流路3を挟んで対向する状態)とされている。このため、切換用弁装置Cの各構成部品の後端部は、温調用弁装置Cの各構成部品の後端部と対向する状態とされている。
【0129】
切換用弁装置Cは、図21に示すように、ハウジング10Cと、切換用固定弁体20Cと、切換用可動弁体30Cと、スピンドル40Cと、取付カラー60Cと、取付リング61Cと、を構成部品として備えている。このうち、「ハウジング10C」は「温調用弁装置Cの構成するハウジング10C」と同一の部品であり、「切換用固定弁体20C」は「温調用弁装置Cの構成する温調用固定弁体20C」と同一の部品である。また、「スピンドル40C」は「温調用弁装置Cの構成する取付カラー60」と同一の部品であり、「取付リング61C」は「温調用弁装置Cの構成する取付リング61」と同一の部品である。但し、切換用可動弁体30Cは、「温調用弁装置Cの構成する温調用可動弁体30」と同一性の高い部品とされている。尚、以下に示す切換用弁装置Cの構成部品に関し、温調用弁装置Cの対応する構成部品と同一の箇所に関しては、温調用弁装置Cの対応する構成部品と同一の符号を付して説明するか、その説明を省略することがある。また、切換用固定弁体20Cは、切換用固定弁体部の具体例を構成し、切換用可動弁体30Cは、切換用可動弁体部の具体例を構成する。
【0130】
ハウジング10Cは、図22に示すように、切換用弁装置Cの外郭部を構成するものある。この切換用弁装置Cの後端部(後端側の開口部11)と、温調用弁装置Cの後端部(後端側の開口部11)とは、対向する状態(供給用流路3を挟んで対向する状態)とされている(図1を参照)。このハウジング10Cにおいても、後端側の開口部11が、後述する切換用固定弁体20Cと、切換用可動弁体30Cと、スピンドル40Cとを装着するための装着口を構成し、前端側の開口部12が後述する「スピンドル40C」を軸支するための軸受け部を構成する。
【0131】
ハウジング10Cは、図22に示すように、前述のハウジング10と同一の構成を備えるが、前端側及び後端側の貫通孔15、16の用途が、前述のハウジング10と異なっている。つまり、後端側(温調用弁装置Cに近接する側)の「2つの貫通孔15、15」が、「カラン側の通過孔15K、15K」として使用され、前端側(温調用弁装置Cと離間する側)の「2つの貫通孔16、16」が、「シャワー側の通過孔16S、16S」として使用される(図27等を参照)。
【0132】
ハウジング10Cの外周部の周回溝17〜19にも、図21に示すように、Oリング17a、18a、19aがはめ込まれている。これらのOリング17a、18a、19aの外周部は、本切換用弁装置Cを水栓本体1の装着空間部1bに装着したときに、水栓本体1の隔壁1e、1f、1gに当接する。これにより、水栓本体1の内部流路間(供給用流路3と、カラン側の吐水流路85と、シャワー側の吐水流路87との間)の水密性が保持されている。
【0133】
切換用固定弁体20Cは、図23及び図25に示すように、「前述の温調用固定弁体20を構成する本体部材21」と同一の本体部材21と、「前述の温調用固定弁体20を構成する、2つの装着部材50、50」と同一の「2つの装着部材50、50」と、「前述の温調用固定弁体20を構成する、2つのシール部材55、55」と同一の「2つのシール部材55、55」とを備えている。
【0134】
前述のように、切換用固定弁体20Cは、前述の温調用固定弁体20とは、同一の構成を備えるが、前端側及び後端側に設けられる被装着孔23a、23bと、これらに装着される装着部材50、50との用途が、以下の点で異なっている。つまり、切換用固定弁体20Cを構成する本体部材21においては、後端側の被装着孔23aが、「カラン側の装着孔(第1の装着孔)23K」を構成し、前端側の被装着孔23bは、「シャワー側の装着孔(第2の装着孔)23S」を構成する(図27等を参照)。そして、この本体部材21を、位置決めを行いつつ(温調用固定弁体20を、ハウジングに装着する場合と同様な位置決め方法による。)、ハウジング10Cに装着すると、図27等に示すように、「カラン側の装着孔23K」と、「2つのカラン側の通過孔15K、15K」との位置合わせがされ、「シャワー側の装着孔23S」と、「2つのシャワー側の通過孔16S、16S」との位置合わせがされる。
【0135】
切換用固定弁体20Cを構成する各装着部材50において、2つの貫通孔51、51の配置間隔は、ハウジング10Cの後端側で並ぶ「2つのカラン側の通過孔15K、15K」と等しくされると共に、ハウジング10Cの前端側で並ぶ「2つのシャワー側の通過孔16S、16S」と等しくされている。そして、「カラン側の装着孔23K」に装着される装着部材(カラン側の装着部材)50に設けられる「2つの貫通孔51、51」によって、「カラン側の取出流路51K」を構成し(図27等を参照)、シャワー側の被装着孔23Sに装着される装着部材(シャワー側の装着部材)50に設けられる「2つの貫通孔51、51」によって、「シャワー側の取出流路51S」の具体例を構成している(図27等を参照)。ここで、「カラン側の取出流路51K」は「第1の取出流路」の具体例を構成し、「シャワー側の取出流路51S」は「第2の取出流路」の具体例を構成する。
【0136】
この「カラン側の取出流路51」及び「シャワー側の取出流路51S」において、1次側の端部は切換用固定弁体20Cの内周部で開口し、2次側の端部は切換用固定弁体20Cの外周部で開口している。
【0137】
切換用可動弁体30Cは、金属製で、薄肉の略円筒体を用いて構成されている。この切換用可動弁体30Cも、図24及び図25に示すように、温調用可動弁体30と同一性に富んだ構成を備えている。つまり、図24に示すように、この切換用可動弁体30Cにおいても、軸心方向に沿った両端に開口部31a、31bを備える。そして、切換用可動弁体30Cの周壁32の前端側と後端側には、各々2つずつの連通孔32K、32Sが、当該周壁部(周壁)32を「切換用可動弁体30Cの半径方向」に貫通する状態で設けられている。但し、この連通孔32K、32Sの形成態様が、温調用可動弁体30の各対応する連通孔32a、32bと異なったものとされている。
【0138】
つまり、図26に示すように、前端側に設けられる「2つの連通孔32K、32K」の各々の断面形状(流体の通過方向に直交する断面に沿った断面形状)は、前述の「2つのカラン側の通過孔15K、15K」の各々の略一致する。また、後端側に設けられる「2つの連通孔32S、32S」の各々の断面形状(流体の通過方向に直交する断面に沿った断面形状)は、前述の「2つのシャワー側の通過孔16S、16S」の各々の略一致している。つまり、何れの連通孔32K、32Sの断面形状も、切換用可動弁体30Cを周回する方向に沿って長尺な略長円状とされている。また、これらの連通孔32K、32Sの断面積(流体の通過方向に直交する断面に沿った断面積)も、対応する各通過孔15K、16Sの断面積と等しくされている。
【0139】
ここで、切換用可動弁体30Cにおいて、各連通孔32K、32Sは、以下の用途で用いられる。つまり、前端側に設けられる「2つの連通孔32K、32K」によって、カラン側の連通流路32Vが構成され、後端側に設けられる「2つの連通孔32S、32S」によって、シャワー側の連通流路32Yが構成される。また、可動弁体30の内部には略円柱状の空間部(内部空間部)が形成され、この内部空間部によって、取入用流路33Cが構成されている。この取入用流路33Cの1次側の端部は、前述の供給用流路3に接続されている。また、カラン側の連通流路32Vの1次側の端部、及び、シャワー側の連通流路32Yの1次側の端部は、取入用流路33Cに接続されている。
【0140】
本切換用弁装置Cにおいても、先ず、本体部材21の後端側の開口部22a(切換用固定弁体20Cの後端の開口部)と、切換用可動弁体30Cの前端の開口部31bとを同心状に位置合わせし、本体部材21の内部に切換用可動弁体30Cを挿入し、切換用可動弁体30Cを、本体部材21の内部において、本体部材21を基準に回動可能な状態とする。これにより、切換用可動弁体30Cの後端側の「2つのカラン側の連通孔32K、32K」と、本体部材21の後端側の「カラン側の被装着孔23K」とが、切換用可動弁体30Cの軸心方向に位置合わせされる。同時に、切換用可動弁体30Cの前端側の「2つのシャワー側の連通孔32S、32S」と、本体部材21の後端側の「シャワー側の被装着孔23S」とが、切換用可動弁体30Cの軸心方向に位置合わせされる。
【0141】
尚、切換用可動弁体30Cを一方の回転方向に回転させ、「カラン側の被装着孔23K」と、「2つのカラン側の連通孔32K、32K」とを本体部材21を周回する方向に沿って位置合わせする。そして、「カラン側の被装着孔23K」を覗き込むと、「カラン側の被装着孔23K」の外縁部の内側に「2つのカラン側の連通孔32K、32K」が収まる。また、切換用可動弁体30Cを他方の回転方向に回転させ、「シャワー側の被装着孔23S」と、「2つのシャワー側の連通孔32S、32S」とを本体部材21を周回する方向に沿って位置合わせする。そして、「シャワー側の被装着孔23S」を覗き込むと、「シャワー側の被装着孔23S」の外縁部の内側に「2つのシャワー側の連通孔32S、32S」が収まる。
【0142】
本体部材21の内部に切換用可動弁体30Cを挿入した後、本体部材21の前端側の開口部22bから露呈する切換用可動弁体30Cの前端部を、スピンドル40Cの保持部41で保持し、スピンドル40Cを切換用可動弁体30Cに一体化する。これにより、スピンドル40Cと切換用可動弁体30C(可動筒状部)とは、直列に連結された状態となり、スピンドル40C及び切換用可動弁体30Cが一体で回動可能とされる。尚、スピンドル40Cの保持部41の外径が、本体部材21の前端側の開口部22bの外径よりも大きくされている。そして、本体部材21が、切換用可動弁体30Cの一部を構成する抜け防止用のフランジ部35と、切換用可動弁体30Cに一体化された保持部41とで両端を挟まれた状態となる。このため、本体部材21と、切換用可動弁体30Cとが不用意に離脱することが防止される。
【0143】
スピンドル40Cを切換用可動弁体30Cに一体化した後、「カラン側の被装着孔23K」と、「シャワー側の被装着孔23S」との各々に、装着部材50とシール部材55とを装着する。この作業は、各装着部材50を、その外縁部52にシール部材55を装着した状態で、各被装着孔23K、23Sに装着して行われる。これにより、切換用可動弁体30Cを適宜、回転させると、カラン側の被装着孔23Kに装着される装着部材50によって構成される「カラン側の取出流路51K」が、切換用可動弁体30Cに形成されたカラン側の連通孔32K、32K(カラン側の連通流路32V)と、切換用可動弁体30Cの径方向に対向可能(重なり合可能)となる。
【0144】
また、切換用可動弁体30Cを適宜、回転させると、「シャワー側の取出流路51S」が、切換用可動弁体30Cに形成されたシャワー側の連通孔32S、32S(シャワー側の連通流路32Y)と、切換用可動弁体30Cの径方向に対向可能(重なり合可能)となる。
【0145】
尚、この切換用弁装置Cにおいても、「各貫通孔51の切換用可動弁体30C側の開口部(以下、「可動側開口部」という。)」の形状が、温調用弁装置Bを構成する各貫通孔51の「可動側開口部」と同様な特殊形状なっている。
【0146】
前述の如く、切換用固定弁体20Cと切換用可動弁体30Cとスピンドル40Cの一体品は、ハウジング10Cに対して以下のように組み付けられている。つまり、スピンドル40Cの前端部を先頭に、この「一体品」を、後端側の開口部11からハウジング10の内部に挿入する。更に、スピンドル40Cを、その前端部を先頭に、ハウジング10の前端側の開口部12に挿入し、スピンドル40Cの前端部及び中間部を、ハウジング10の前方に突出させる。この際、ハウジング10の突起14と、位置決め用スリット25とが嵌合する。これにより、この「一体品」とハウジング10とが、ハウジング10の周方向に沿って位置決めされる。
【0147】
そして、スピンドル40Cの前端部から、スピンドル40Cの中間部に取付カラー60Cを装着し、更に、取付溝46に取付リング61Cを取り付ける。これにより、切換用弁装置Cの構成部品の組み付けを完了し、切換用弁装置Cを完成する。このように、切換用弁装置Cを完成すると、スピンドル40Cは、開口部12の内壁面との間の水密性を、パッキン44によって維持しつつ、開口部12によって軸支される。
【0148】
このため、スピンドル40C及び切換用可動弁体30Cは、切換用固定弁体20Cを基準に回動可能となる。また、このように切換用弁装置Cを完成すると、相互に対応し合う取出用流路及び連通流路(32V及び32Y)が、切換用固定弁体20Cの軸心方向に位置合わせされた状態となる。更に、この切換用弁装置Cが、水栓本体1の装着空間部1bに装着され、スピンドル40Cに、温調ハンドルtを装着すると、切換用弁装置Cは使用可能な状態となる。
【0149】
この切換用弁装置Cにおいて、止水状態(閉弁状態)にあるときには、図27(a)に示すように、カラン側の取出流路51Kと、カラン側の連通流路32Vとが非連通な状態となると共に、図27(b)に示すように、シャワー側の取出流路51Sと、シャワー側の連通流路32Yとが非連通な状態となる。
【0150】
この止水状態(閉弁状態)にあるときに、操作部(ハンドル)tを、一方の回転方向に回転操作すると、図28(a)に示すように、カラン側の取出流路51Kと、カラン側の連通流路32Vとが連通し、本切換用弁装置Cは、開弁状態(カラン側の開弁状態)となる。これにより、本湯水混合水栓100においては、流出用流路33、供給用流路3、及び、取入用流路33Cが、カラン側の吐水流路85と連通し、カランを用いた吐水を行うことができる。このとき、図28(b)に示すように、シャワー側の取出流路51Sと、シャワー側の連通流路32Yとが非連通な状態を維持する。
【0151】
一方、止水状態(閉弁状態)にあるときに、操作部(ハンドル)tを、他方の回転方向に回転操作すると、図29(b)に示すように、シャワー側の取出流路51Sと、シャワー側の連通流路32Yとが連通し、本切換用弁装置Cは、開弁状態(シャワー側の開弁状態)となる。これにより、本湯水混合水栓100においては、流出用流路33、供給用流路3及び取入用流路33Cが、シャワー側の吐水流路87と連通し、シャワー設備を用いた吐水を行うことができる。このとき、図29(a)に示すように、カラン側の取出流路51Kと、カラン側の連通流路32Vとは非連通の状態を維持する。
【0152】
(4)実施例の効果
本実施例では、温調用弁装置B及び切換用弁装置Cが、同一の構造を備え、その主要な構成部品の共通化が図られている。つまり、温調用弁装置B及び切換用弁装置Cにおいては、ハウジング10、10Cと、固定弁体(温調用固定弁体20C、切換用固定弁体20C)と、可動弁体(温調用可動弁体30、切換用可動弁体30C)と、スピンドル40、40Cと、取付リング61、61Cとを主要な構成部品としている。そして、本実施例では、これらの主要な構成部品のうちで、可動弁体(温調用可動弁体30、切換用可動弁体30C)を除く全てを共通部品とする。しかも、温調用可動弁体30及び切換用可動弁体30Cにおいても、連通孔32a、32b、32K、32Sの形状と周方向幅とが異なるだけある。つまり、温調用可動弁体30及び切換用可動弁体30Cも、共通性の高い構成部品である。
【0153】
このため、本実施例によると、水栓100の製造上の手間を少なくすると共に、その製造コストの低廉化を図ることができる。つまり、温調用弁装置B及び切換用弁装置Cが、何れも、(1)2種類の流路を貫通状に備える略筒状の固定弁体部(温調用固定弁体部20、切換用固定弁体部20C)の内部空間部に、(2)流路を貫通状に備える略筒状の可動弁体部(温調用可動弁体部30、切換用可動弁体部30C)を、挿入した構造を備える。このため、温調用弁装置B及び切換用弁装置Cにおいて、構成部品の共通化を図ったり、構成部品の共通性を高めることで、温調用弁装置B及び切換用弁装置Cの製造上の手間を少なくしたり、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0154】
尚、本各発明の範囲は前記実施例に示す具体的な態様に限定されず、本各発明の範囲内で種々の変形例を例示できる。即ち、各実施例と、各変形例では、本体部材21と、装着部材50と、シール部材55とを備える固定弁体(温調用固定弁体20、切換用固定弁体20C)を例示したが、本体部材と、装着部材と、シール部材と、を備える可動弁体(温調用固定弁体30、切換用可動弁体30C)を具備する弁装置を例示することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、例えば、水栓の製造、販売、施工、加工等を行う分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】実施例の湯水混合水栓の縦断面図である。
【図2】実施例の温調用弁装置の縦断面図である。
【図3】図2の温調用弁装置を構成するハウジングの縦断面図である。
【図4】図2の温調用弁装置を構成する本体部材の縦断面図である。
【図5】図2の温調用弁装置を構成する可動弁体の縦断面図である。
【図6】図2の温調用弁装置を構成する可動弁体と、固定弁体と、装着部材と、シール部材とを説明するための斜視図である。
【図7】(a)は実施例の装着部材の平面図、(b)は図7(a)の1−1断面図、(c)は図7(a)の2−2断面図である。
【図8】連通孔の平面形状を説明するための説明図(展開図)である。
【図9】実施例の温調用弁装置の一部平面図(ハウジングから、固定弁体等を一部抜き出した状態)である。
【図10】(a)は進入防止部の機能を説明するための説明図、(b)は図10(a)の3−3断面図である。
【図11】(a)は進入防止部の機能を説明するために比較のために図示した説明図、(b)は図11(a)の5−5断面図である。
【図12】(a)及び(b)は、湯水混合状態にある場合における図2の温調用弁装置の説明図である。
【図13】湯水混合状態にある場合における図2の温調用弁装置の説明図(展開図)である。
【図14】(a)及び(b)は、元湯給湯の状態にある場合における図2の温調用弁装置の説明図である。
【図15】元湯給湯の状態にある場合における図2の温調用弁装置の説明図(展開図)である。
【図16】(a)及び(b)は、元水給水の状態にある場合における図2の温調用弁装置の説明図である。
【図17】元水給水の状態にある場合における図2の温調用弁装置の説明図(展開図)である。
【図18】(a)及び(b)は、連通流路(連通孔)と、流入流路(貫通孔)の関係を示す説明図である。
【図19】実施例の温調用弁装置等の吐水量特性を説明するための説明図(グラフ)である。
【図20】変形例1の温調用弁装置に設けられた連通孔の平面図である。
【図21】切換用弁装置の縦断面図である。
【図22】図21の切換用弁装置を構成するハウジングの縦断面図である。
【図23】図21の切換用弁装置を構成する本体部材の縦断面図である。
【図24】図21の切換用弁装置を構成する切換用可動弁体の縦断面図である。
【図25】図21の切換用弁装置を構成する切換用可動弁体と、切換用固定弁体と、装着部材と、シール部材とを説明するための斜視図である。
【図26】図21の切換用弁装置の一部平面図(ハウジングから、切換用固定弁体等を一部抜き出した状態)である。
【図27】(a)及び(b)は、止水状態にある場合における図1の弁装置の説明図である。
【図28】(a)及び(b)は、吐水状態(カラン側の吐水状態)にある場合における図1の弁装置の説明図である。
【図29】(a)及び(b)は、吐水状態(シャワー側の吐水状態)にある場合における図1の弁装置の説明図である。
【図30】従来例に係る温調用弁装置の説明図である。
【図31】従来例に係る温調用弁装置の問題点を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0157】
B;温調用弁装置、
5A;給水用の流入流路、
7A;給湯用の流入流路、
10;ハウジング、
20;温調用固定弁体、
30;温調用可動弁体、
32a;給湯側の連通孔、
32b;給水側の連通孔、
32g、32h;幅減少部、
32H、32Y;連通流路
C;切換用弁装置、
10C;ハウジング、
20C;切換用固定弁体、
23K、23S;被装着孔(被装着部)、
30;切換用可動弁体、
50;装着溝、
51;貫通孔、
55;シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側に配置される給湯源に連絡される給湯流路と、1次側に配置される給水源に連絡される給水流路と、2次側に配置される第1の吐水手段に連絡される第1の吐水流路と、2次側に配置される第2の吐水手段に連絡される第2の吐水流路と、を具備する水栓本体と、
前記水栓本体に装着される温度調節用弁装置と、
前記水栓本体に装着される切換用弁装置と、
を備える湯水混合水栓であって、
前記温度調節用弁装置が、
前記給湯流路に接続される給湯用の流入流路と、前記給水流路に接続される給水用の流入流路と、を外周部及び内周部を貫通する状態に備える、略筒状の温調用固定弁体部と、
内部空間部によって流出流路を構成すると共に、前記温調用固定弁体部の内部空間部内に第1の回転角度の範囲内で回動可能な状態に配置され、1次側の端部を前記温調用可動弁体部の外周部で開口させ、2次側の端部を前記温調用可動弁体部の内周部で開口させた温調用連通流路を備える、略筒状の温調用可動弁体部と、を具備し、
前記切換用弁装置が、
前記第1の吐水流路に接続される第1の取出用流路と、前記第2の吐水流路に接続される第2の取出用流路と、を外周部及び内周部を貫通する状態に備える切換用固定弁体部と、
内部空間部によって取入用流路を構成すると共に、前記切換用固定弁体部の内部空間部内に第2の回転角度の範囲内で回動可能な状態に配置され、2次側の端部を外周部で開口させ、1次側の端部を内周部で開口させた切換用連通流路を備える、略筒状の切換用可動弁体部と、を具備し、
前記温調用可動弁体部を、前記第1の回転角度の範囲内で回動させると、前記温調用連通流路が前記給湯用の流入流路及び前記給水用の流入流路のうちの少なくとも一方と常時連通した状態にて、前記給湯用の流入流路の前記温調用連通流路に対する連通度合いと、前記給水用の流入流路の前記温調用連通流路に対する連通度合いと、が調節され、
前記切換可動弁体部を、前記第2の回転角度の範囲内で回動させると、前記切換用連通流路が、前記第1の取出用流路及び前記第2の取出用流路のうちの一方に択一的に連通することを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
前記温調用可動弁体部を、前記第1の回転角度の範囲内で回動すると、
前記温調用連通流路が、前記給湯用の流入流路と連通し、前記給水用の流入流路と非連通となる状態と、
前記温調用連通流路が、前記給湯用の流入流路及び前記給水用の流入流路と連通する状態と、
前記温調用連通流路が、前記給湯用の流入流路と非連通となり、前記給水用の流入流路と連通とする状態と、が実現されることを特徴とする請求項1に記載の湯水混合水栓。
【請求項3】
前記温調用固定弁体部の内周部において、前記給湯用の流入流路の2次側の端部を包囲する部位と、前記給水用の流入流路の2次側の端部を包囲する部位とにシール部材が装着されると共に、
前記温調用可動弁体部を、前記第1の回転角度の範囲内で回動すると、前記温調用可動弁体部の外周部が、前記シール部材に対して摺動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の湯水混合水栓。
【請求項4】
前記切換用固定弁体部の内周部において、前記第1の取出用流路の1次側の端部を包囲する部位と、前記第2の取出用流路の1次側の端部を包囲する部位とにシール部材が装着されると共に、
前記切換用可動弁体部を、前記第2の回転角度の範囲内で回動すると、前記切換用可動弁体部の外周部が、前記シール部材に対して摺動することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の湯水混合水栓。
【請求項5】
前記温調用連通流路として、前記給湯用の流入流路と連通可能であるが、前記給水用の流入流路とは連通不可能な湯側の温調用連通流路と、
前記給水用の流入流路と連通可能であるが、前記給湯用の流入流路とは連通不可能な水側の温調用連通流路と、を備え、
前記温調用可動弁体部を、前記温調用可動弁体部の軸心回りに一の回転方向に回転させると、前記給湯用の流入流路と前記湯側の温調用連通流路との連通度合いが増加し、前記給水用の流入流路と前記水側の温調用連通流路との連通度合いが減少し、
前記温調用可動弁体部を、前記温調用可動弁体部の軸心回りに、前記一の回転方向とは逆の他の回転方向に回転させると、前記給湯用の流入流路と前記湯側の温調用連通流路との連通度合いが減少し、前記給水用の流入流路と前記水側の温調用連通流路との連通度合いが増加すると共に、
前記湯側の温調用連通流路の1次側の端部に、前記可動弁体の軸心方向に沿った幅が、前記他の回転方向に沿って徐々に減少する、給湯側の幅減少部を設け、
前記水側の温調用連通流路の1次側の端部に、前記可動弁体の軸心方向に沿った幅が、前記一の回転方向に沿って徐々に減少する、給水側の幅減少部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の湯水混合水栓。
【請求項6】
前記切換用連通流路として、前記第1の取出用流路と連通可能であるが、前記第2の取出用流路とは連通不可能な第1の切換用連通流路と、
前記第2の取出用流路と連通可能であるが、前記第1の取出用流路とは連通不可能な第2の切換用連通流路と、を備え、
前記切換用可動弁体部を、前記切換用可動弁体部の軸心回りに一の回転方向に回転させると、前記第1の取出用流路と前記第1の切換用連通流路との連通度合いが増加し、
前記切換用可動弁体部を、前記切換用可動弁体部の軸心回りに、前記一の回転方向とは逆の他の回転方向に回転させると、前記第2の取出用流路と前記第2の切換用連通流路との連通度合いが増加し、
前記第1の切換用連通流路の2次側の端部に、前記切換用可動弁体部の軸心方向に沿った幅が、前記一の回転方向に沿って徐々に減少する、第1の幅減少部を設け、
前記第2の切換用連通流路の2次側の端部に、前記切換用可動弁体部の軸心方向に沿った幅が、前記他の回転方向に沿って徐々に減少する、第2の幅減少部を設けたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の湯水混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−2635(P2008−2635A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174478(P2006−174478)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【Fターム(参考)】