説明

湿度センサー材料、湿度センサー材料を用いた湿度センサー及び湿度センサー材料を備えた電気機器

【課題】 本発明は、湿度変化に応じて、電気伝導度が大きく変化する湿度センサー材料、湿度センサー材料を用いた湿度センサー及び湿度センサー材料を用いた電気機器を提供する。
【解決手段】 少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nmより小さく、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度センサー材料、湿度センサー材料を用いた湿度センサー及び湿度センサー材料を用いた電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、湿度センサーを構成する感湿材料としては、MgCr−TiO系,TiO−V系、MgAl系などの多孔質ガラスの薄膜が用いられていた。これらの感湿材料は空気中の水分子と接触すると抵抗値が変化するため、この抵抗変化値を測定することによって湿度が検出できるものとなっている。
このような感湿材料としては、特開2003−130833号公報(特許文献1)に、MgCr−TiOを原料として用い、平均細孔径0.05〜1μmの細孔を有するように微細粒子が焼結されてなる骨格間に、互いに連通する連続気孔が形成された3次元網目構造をなすとともに、その気孔率が60〜98容量%とされたセラミックス多孔質基体の表面に、薄膜状の電極を設けたことを特徴とする湿度センサーが開示されている。この感湿材料は、応答性に優れた湿度センサーである。しかしながら、このような湿度センサー材料であっても、電気伝導度の変化が十分でなかった。即ち、所定の湿度域において、電気伝導度が大きく変化する(急峻な変化をする)ような特性を示すものは、これまでになかった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−130833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するものであり、湿度変化に応じて、電気伝導度が大きく変化する湿度センサー材料、湿度センサー材料を用いた湿度センサー及び湿度センサー材料を用いた電気機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは以下のものである。
(1) 少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nmより小さく、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっていることを特徴とする湿度センサー材料。
(2) 前記湿度センサー材料は、30%RH以下の湿度測定用のものである上記(1)に記載の湿度センサー材料。
(3) 前記湿度センサー材料は、20%RH〜30%RHの湿度測定用のものである上記(1)に記載の湿度センサー材料。
(4) 前記湿度センサー材料の平均細孔径は、1nm〜3nmである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の湿度センサー材料。
【0006】
上記目的を達成するものは以下のものである。
(5) 少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したボトルネック状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が2nm〜8nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、1〜2nmとなっていることを特徴とする湿度センサー材料。
(6) 前記湿度センサー材料は、30%RH〜80%RHの湿度測定用のものである上記(5)に記載の湿度センサー材料。
(7) 前記湿度センサー材料は、50%RH〜75%RHの湿度測定用のものである上記(5)に記載の湿度センサー材料。
(8) 前記湿度センサー材料の平均細孔径は、3nm〜6nmである上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の湿度センサー材料。
【0007】
上記目的を達成するものは以下のものである。
(9) 少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nm〜14nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっていることを特徴とする湿度センサー材料。
(10) 前記湿度センサー材料は、80%RH以上の湿度測定用のものである上記(9)に記載の湿度センサー材料。
(11) 前記湿度センサー材料は、90%RH以上の湿度測定用のものである上記(9)に記載の湿度センサー材料。
(12) 前記湿度センサー材料の平均細孔径は、8nm〜12nmである上記(9)ないし(11)のいずれかに記載の湿度センサー材料。
【0008】
(13) 前記湿度センサー材料は、P成分を含有している上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の湿度センサー材料。
(14) 前記湿度センサー材料は、ZrO、SnO、TiO、B成分のうち少なくとも一種以上を含有している上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の湿度センサー材料。
(15) 上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の湿度センサー材料を用いることを特徴とする湿度センサー。
(16) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の湿度センサー材料を有する第1の湿度センサーと、上記(5)ないし(8)のいずれかに記載の湿度センサー材料を有する第2の湿度センサーと、上記(9)ないし(12)のいずれかに記載の湿度センサー材料を有する第3の湿度センサーとのうち少なくとも2種を備えることを特徴とする湿度センサー。
(17) 上記(1)ないし(16)のいずれかに記載の湿度センサー材料を用いることを特徴とする電気機器。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nmより小さく、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっている湿度センサー材料である。
このため、本発明の湿度センサー材料は、湿度変化に応じて、電気伝導度が大きく変化する。
また、本発明は、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したボトルネック状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が2nm〜8nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、1〜2nmとなっている湿度センサー材料である。
このため、本発明の湿度センサー材料は、湿度変化に応じて、電気伝導度が大きく変化する。
【0010】
また、本発明は、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nm〜14nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっている湿度センサー材料である。
このため、本発明の湿度センサー材料は、湿度変化に応じて、電気伝導度が大きく変化する。
また、本発明は、上記湿度センサー材料を用いる湿度センサーである。
このため、本発明の湿度センサーは、湿度変化に応じて、電気伝導度が大きく変化する。
【0011】
また、本発明は、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nmより小さく、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっている湿度センサー材料を有する第1の湿度センサーと、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したボトルネック状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が2nm〜8nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、1〜2nmとなっている湿度センサー材料を有する第2の湿度センサーと、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nm〜14nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっている湿度センサー材料である第3の湿度センサーとのうち、少なくとも2種を備える湿度センサーである。
このため、本発明の湿度センサーは、湿度変化に応じて、電気伝導度が大きく変化する。
また、本発明は、上記湿度センサー材料を用いる電気機器である。
このため、本発明の電気機器は、湿度変化に応じた適切な制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例である湿度センサー材料、湿度センサー材料を使用した湿度センサー及び湿度センサー材料を使用した電気機器について添付図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例である湿度センサー材料の湿度−電気伝導度曲線であり、図2は、本発明の実施例である湿度センサー材料の湿度−電気伝導度の関係を示す表であり、図3は、本発明の実施例である湿度センサー材料の細孔径分布であり、図4は、本発明の実施例である吸着・脱着等温線であり、図5は、本発明の実施例である湿度センサー材料の細孔構造を説明するための説明図である。この実施例は、図1,図2,図3,図4の実施例1を用いて説明される。
【0013】
本発明の湿度センサー材料は、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔からなる細孔構造を有し、さらに、細孔は、平均細孔径が5nmより小さく、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっている。
本発明の実施例の湿度センサー材料は、SiOを主成分とする多孔質ガラスである。本発明の湿度センサー材料は、ガラスマトリックスと、ガラスマトリックス内に形成された細孔構造を有している。本発明の湿度センサー材料に対するSiO成分の含有量は、100〜80%、特に、97〜85%であることが好ましい。
また、本発明の湿度センサー材料は、湿度センサー材料の導電性を向上させるため、Pを含有していてもよい。湿度センサー材料に対するP成分の含有量は、0〜10%、特に、2〜8%であることが好ましい。Pを含有することにより、湿度センサー材料の導電性が向上する。
【0014】
本発明の湿度センサー材料は、耐水性などの化学的耐久性を向上させるために、ZrO、SnO、TiO、Bの少なくとも一種を含有していてもよい。本発明の湿度センサー材料に対するZrO、SnO、TiO、B成分の含有量は、0%〜10%、特に、1%〜8%であることが好ましい。
湿度センサー材料がSiOとPとを含有する場合は、湿度センサー材料に対してSiOの含有量は、100〜90%、Pの含有量、0〜10%、特に、SiOの含有量は、98〜92%、Pの含有量は、2〜8%であることが好ましい。
湿度センサー材料がSiOとPとZrOとを含有する場合は、湿度センサー材料に対してSiOの含有量は、100〜80%、Pの含有量は、0〜10%、ZrOの含有量は、0〜10%、特に、SiOの含有量は、97〜85%、Pの含有量は、2〜8%、ZrOの含有量は、1〜7%であることが好ましい。
【0015】
本発明の実施例である細孔構造は、図5に示すように、両端が開口したシリンダー状の細孔が3次元的に連続するように形成されている。シリンダー状の細孔であることは、図4に示す実施例1の窒素ガス吸着・脱着等温線を用いて、de Boreの分類により証明することができる。
de Boreは、細孔形状の違いによって吸着・脱着等温線が示すヒステリシスループを5つの分類に分けている(参考文献J.Am.Chem.Soc.,73,1951,373頁)。この分類によると、図4に示すような吸着・脱着等温線のヒステリシスループを有する多孔質ガラスの細孔構造は、図5に示すような両端が開口したシリンダー状の細孔により形成されていると考えられる。
【0016】
また、本発明の実施例である湿度センサー材料を構成するガラス多孔質は、湿度センサー材料の内部全体に分布していることが好ましい。
本発明の湿度センサー材料には、両端が開口したシリンダー状の細孔が3次元的に内部全体に分布していると考えられる。細孔構造が、湿度センサー材料全体に分布していれば、湿度センサー材料全体にプロトンが移動可能な通路が形成されると考えられるため、電気伝導度がより高くなると考えられる。
また、本発明の湿度センサー材料の平均細孔径は、5nmより小さいことが好ましく、特に、平均細孔径は、1nm〜3nmであることが好ましく、さらに好ましくは、約2nmである。湿度センサー材料の平均細孔径は、図3に示す細孔径分布によりわかる。また、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmであることが好ましい。細孔の平均細孔径、細孔径の標準偏差(σ)がこのようなものであれば、図1,図2に示すように、低湿度側において電気伝導度が急激に変化する(導電率の変化率が大きい)と考えられる。
【0017】
本発明の湿度センサー材料を構成する多孔質ガラスの比表面積は、50〜1000m/gであることが好ましく、特に、300〜800m/gであることが好ましい。また、細孔容積は、0.1〜1cc/g、特に、0.2〜0.5cc/gであることが好ましい。このように、大きな比表面積もしくは細孔容積を有することにより、本発明の湿度センサー材料は、細孔中に大量の水を吸収することができるため、大きな電気伝導度を有する。なお、比表面積及び細孔容積は、後述するBET法により求めることができる。
細孔は、3次元的に連続して形成されていることが好ましい。細孔構造がこのような構成をしていれば、湿度センサー材料全体にプロトンが移動可能な通路が形成されると考えられるため、電気伝導度がより高くなると考えられる。
【0018】
また、本発明の実施例である湿度センサー材料は、ゾルゲル法により作製されたガラス多孔質であることが好ましい。ゾルゲル法により作製されたガラス多孔質の細孔表面には、周りの原子と水素結合を持っていない水酸基である自由水酸基、粒子の表面の自由水酸基が隣接粒子間で水素結合したものである粒子間水素結合性水酸基、粒子の表面の自由水酸基が相互に水素結合したものである表面水素結合性水酸基、熱処理により細孔の入り口が閉鎖することによって内部に閉じ込められた水酸基である内部水酸基などいろいろな水酸基が存在していると考えられる。細孔表面が以上のような構成をしていれば、本発明の湿度センサー材料を大気中にさらすと、大気中に存在する水蒸気(水分子)は、細孔構造の開口から細孔内に進入して細孔構造内にはプロトンが移動する通路が形成される。プロトン伝導性は、吸着された水の含有量が増大するにつれて増大する。具体的に、プロトンの伝導は、細孔表面に存在する水酸基からのプロトンの解離と、水酸基と水の分子との間でのプロトンのホッピングにより促進される。
【0019】
また、細孔構造は、図5に示すように、3次元的な網目状に形成されたシリンダー状の細孔により形成されていることが好ましい。また、シリンダー状の細孔(細孔構造)は、多孔質ガラス表面において開口している。
また、本発明の実施例である湿度センサー材料は、テンプレート剤として陽イオン界面活性剤を用いてゾルゲル法により作製されているため、ガラス多孔質内に細孔が3次元的に規則正しく形成されていると考えられる。
【0020】
また、本発明の湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、30%RH以下において電気伝導度が急激に変化する(導電率の変化率が大きい)ことが好ましく、特に、本発明の湿度センサー材料は、20%RH〜30%RHの範囲内において電気伝導度が急激に変化する(導電率の変化率が大きい)ことが好ましい。また、本発明の湿度センサー材料は、30%RH以下の湿度測定用のものであることが好ましく、特に、本発明の湿度センサー材料は、20%RH〜30%RHの範囲内の湿度測定用のものであることが好ましい。また、本発明の湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、30%RH以下、特に、20%RH〜30%RHの範囲内で導電率に対する湿度応答特性がよいものであることが好ましい。また、本発明の湿度センサー材料の電気伝導度σ(S/cm)は、10−8〜10−1、特に、10−6〜10−2の範囲内で変化するものであることが好ましい。また、湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、低湿度側において電気伝導度が急激に変化する(導電率の変化率が大きい)ものであることが好ましい。
【0021】
また、本発明の実施例である湿度センサー材料の湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、ヒステリシス特性を有している。
また、湿度上昇過程において、湿度センサー材料の湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、湿度減少側に凸変化する増加曲線となっている。また、湿度上昇過程において、湿度センサー材料は、図1に示すように、低湿度側において伝導度が大きく変化する(導電率が大きい)ものである。また、湿度上昇過程において、本発明の湿度センサー材料は、30%RH以下、特に、20%RH〜30%RHの範囲内において電気伝導度が急激に変化する(導電率の変化率が大きい)ものである。
【0022】
また、30%RHより高湿度側において伝導度は緩やかに増加している。また、湿度センサー材料は、図1に示すように、湿度上昇過程における湿度−電気伝導度曲線の急変点が、湿度減少過程における湿度−電気伝導度曲線の急変点より、若干高湿度側に生じている。
一方、湿度減少過程においては、湿度センサー材料の湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、湿度上昇過程における湿度−電気伝導度曲線に対して若干低湿度側に位置している。また、湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、湿度減少側に凸変化しながら減少する曲線となっている。また、湿度減少過程において、湿度センサー材料は、若干低湿度側において伝導度が急激に変化するものとなっている。
【0023】
湿度減少過程において、また、湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、30%RH以下、特に、30%RH〜20%RHの範囲内で電気伝導度が急激に変化する(導電率の変化率が大きい)ものとなっている。また、30%RHより高湿度側において伝導度は緩やかに減少する。
また、本発明は、上述したような湿度センサー材料を備える電気機器である。湿度センサー材料を用いる電気機器とは、例えば、エアーコンディショナー、除湿器、加湿器、電子レンジ等の調理器等が挙げられる。このような電気機器であれば、湿度変化に応じた適切な制御が可能となる。
【0024】
次に、SiOとPとを含有する本発明の湿度センサー材料の製造方法について説明する。
本発明の湿度センサー材料の製造方法は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、テンプレート剤である陽イオン界面活性剤とを用いて加水分解することによりゾル溶液を調整する調整工程と、調整工程において調整されたゾル溶液を成形してゲル成形体を成形する工程と、ゲル成形体を焼結する工程とを備えている。本発明の実施例の湿度センサー材料の製造方法は、ゾルゲル法により行われていることが好ましい。
また、本発明の製造方法の調整工程は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、水と、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、テンプレート剤である陽イオン界面活性剤とを用いてゾル溶液を調整するものである。
【0025】
また、調整工程は、具体的に、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうち少なくとも一種と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、水と、アルコールとを用いて調整した溶液と、テンプレート剤である陽イオン界面活性剤と、アルコールと、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうち少なくとも一種と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、水とを用いて調整した溶液とを混合することによりゾル溶液を調整するものである。
【0026】
また、さらに具体的には、本発明の実施例の調整工程においては、まず、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、水と、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒とにより調整された溶液を攪拌することによりケイ素のアルコキシド等が部分的に加水分解されたゾル溶液を調整する。攪拌は、1〜2hr行うことが好ましい。そして、部分的に加水分解されたゾル溶液に、テンプレート剤である陽イオン界面活性剤と、水と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうち少なくとも一種と、アルコールとにより調整した溶液とを混合し攪拌することによりゾル溶液の調整が行われる。攪拌は、1〜2hr行うことが好ましい。調整工程は、具体的に、20〜45℃で行うことが好ましい。このような工程により、ケイ素アルコキシド等は、加水分解・縮重合反応によりゾル溶液となる。
【0027】
ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物、ケイ素酸化物のうち、特に、反応性に富み、溶液中で酸素−金属−酸素の結合からなる金属酸化物重合体(ゲル前駆体)を形成する点からケイ素アルコキシドを用いることが好ましい。
ケイ素アルコキシドとしては、Si(OCH (TMOS)、(Si(OC(TEOS)等、特に、TEOSを使用することが好ましい。また、ケイ素酸化物としては、コロイダルシリカ等を用いることが好ましい。
酸性触媒としては、塩酸、硫酸等を用いることが好ましく、特に、塩酸を用いることが好ましい。塩基性触媒としては、アンモニア水等が好ましい。
【0028】
酸性触媒は、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して、水素イオン濃度が0.001〜0.03倍mol、特に0.005〜0.02倍molとなるように混合することが好ましい。アルコールとしては、溶解性の観点から低級アルコールを用いることが好ましく、低級アルコールとしては、エタノール、メタノール、2−プロパノール等が好ましく、特に、エタノールを用いることが好ましい。アルコールは、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して1〜4倍mol、特に、1〜2倍mol混合することが好ましい。
【0029】
リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうちリンアルコキシドが好ましい。リンアルコキシドとしては、PO(OCH、PO(OC等を用いることが好ましい。リン塩化物としては、POCl等を用いることが好ましい。リンのアルコキシド等は、ケイ素のアルコキシド等に対して0〜0.1倍mol、特に、0.02〜0.08倍mol添加することが好ましい。
テンプレート剤としては、[C1633N(CH]Br、[CH(CH15N(CH)]Br(CTAB、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド)、[C1633N(CH]Cl(CTAC、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド)、CHN[(CHCHBr、CH(CH13N(CH13Br等を使用することが好ましく、特に、CATB、CATCを用いることが好ましい。テンプレート剤を用いてゾルゲル法により作製することにより、本発明の湿度センサー材料の細孔構造を制御することができる。
【0030】
テンプレート剤は、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して0.05〜0.2倍mol、特に、0.1〜0.15倍mol混合することが好ましい。
テンプレート剤を溶解するアルコールとしては、溶解性の観点から低級アルコールであることが好ましく、低級アルコールとしては、エタノール、メタノール、2−プロパノール等が好ましく、特に、エタノールを用いることが好ましい。アルコールは、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して1〜4倍mol、特に、1〜2倍mol混合することが好ましい。
テンプレート剤とともに添加される酸性触媒もしくは塩基性触媒としては、上述したようなものが好ましく、特に、上述した酸性触媒を使用することが好ましい。また、酸性触媒は、ケイ素アルコキシド、ケイ素酸化物もしくはケイ素酸化物に対して、水素イオン濃度が0.001〜0.03倍mol、特に0.005〜0.02倍molとなるように混合することが好ましい。
【0031】
次に、上述したように調整したゾル溶液を成形してゲル成形体を成形する成形工程について説明する。本発明の実施例では、ゾル溶液を成形用型枠に注入し、反応を促進させることにより流動性を失った固体(ゲル成形体)を成形する。
また、本発明の成形工程は、ゾル溶液を成形型枠に注入して乾燥させる工程を有している。乾燥温度としては、20℃〜45℃で行うことが好ましい。また、乾燥湿度としては、30%RHから60%RHで行うことが好ましい。また、乾燥時間としては、7日〜30日程度行うことが好ましい。乾燥工程により、成形用型枠に注入されたゾル溶液はゲル成形体となる。
【0032】
また、成形工程としては、上述したように調整したゾル溶液をディップコーティングによりもしくはスピンコーティングにより基板状にコーティングして薄膜状のゲル成形体を形成するものであってもよい。ディップコーティング又はスピンコーターに用いられる基板としては、ITOガラス、FTO等が好ましい。ディップコーティングの基板の引き上げ速度は、0.1〜10mm/sであることが好ましい。スピンコーターの基板の回転速度としては、500〜3000rpmであることが好ましい。ディップコーティング若しくはスピンコーティングを用いて薄膜を成形した場合の乾燥工程は、自然乾燥または、調湿乾燥(湿度を制御しながら乾燥する)が好ましい。
湿度センサー材料は、100〜1000nm、特に、200〜500nmの薄膜状に形成されていることが好ましい。
【0033】
また、多孔質ガラスの製造方法は、ゲル成形体を水蒸気処理する工程を備えていることが好ましい。水蒸気工程を行うことによりゲル成形体の反応を促進させることができる。水蒸気処理工程は、室温から徐々に昇温し、最終的に、150℃での飽和水蒸気の圧力下で行うことが好ましい。また、水蒸気処理工程は、15〜25hr行うことが好ましい。
【0034】
次に、ゲル成形体を焼結する焼結工程について説明する。焼結は、300〜800℃の範囲内で行われることが好ましく、特に、400〜650℃の範囲内で行われることが好ましい。加熱温度は、20〜50℃/hで昇温させることが好ましい。加熱温度が300℃より低いと有機質分の揮発が不十分となり目的のガラスにならず、加熱温度が800℃より高いと、細孔の焼失がみられ、高い伝導度が得られない。焼成時間は、1〜5hrであることが好ましい。そして、上述した焼成物を冷却して本発明の湿度センサー材料の製造を完了した。
SiOのみを主成分として含有する湿度センサー材料の製造方法は、調整工程においてリンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種を添加しないことを除いて上述した製造方法と同様であることが好ましい。
【0035】
次に、SiOとPとZrOとを含有する湿度センサー材料の製造方法について説明する。この湿度センサー材料の製造方法と、上述したSiOとPを有する湿度センサー材料の製造方法との相違点は、調整工程において、ジルコニウム、チタン、ホウ素、スズのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種を添加する点である。
本発明の湿度センサー材料の製造方法は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、ジルコニウム、チタン、ホウ素、スズのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、テンプレート剤である陽イオン界面活性剤とを用いて加水分解することによりゾル溶液を調整する調整工程と、調整工程において調整されたゾル溶液を成形してゲル成形体を成形する成形工程と、ゲル成形体を焼結する焼結工程とを備えている。
【0036】
本発明の湿度センサー材料の調整工程は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、水と、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、テンプレート剤である陽イオン界面活性剤と、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、ジルコニウム、チタン、ホウ素、スズのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種とを用いてゾル溶液を調整する工程であることが好ましい。
【0037】
また、調整工程は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうち少なくとも一種と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、水と、アルコールとを用いて調整した溶液と、テンプレート剤である陽界面活性剤と、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、ジルコニウム、チタン、ホウ素、スズのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、水とを用いて調整した溶液とを混合することによりゾル溶液を調整するものであることが好ましい。
【0038】
具体的に、本発明の実施例の調整工程においては、まず、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、水と、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒とにより調整された溶液を攪拌することによりケイ素のアルコキシド等が部分的に加水分解されたゾル溶液を調整する。攪拌は、1〜2hr行うことが好ましい。そして、部分的に加水分解されたゾル溶液に、テンプレート剤である陽イオン界面活性剤と、水と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、アルコールと、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、ジルコニウム、チタン、ホウ素、スズのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種とにより調整した溶液とを混合し攪拌することによりゾル溶液の調整が行われる。攪拌は、1〜2hr行うことが好ましい。調整工程は、具体的に、20〜40℃で行うことが好ましい。このような工程により、ケイ素アルコキシド等は、加水分解・縮重合反応によりゾル溶液となる。
【0039】
ケイ素のアルコキシド等、酸性及び塩基性触媒、アルコール、水、リンのアルコキシド等及びそれぞれの添加量は、上述した通りであることが好ましい。
ジルコニウムアルコキシドとしては、Zr(OC等を用いることが好ましい。また、チタンアルコキシドとしては、Ti(OC等を用いることが好ましい。ホウ素アルコキシドとしては、B(C等を用いることが好ましい。また、スズアルコキシドとしては、Sn(OC等を用いることが好ましい。具体的に、本発明の製造方法の調整工程においては、ジルコニウムアルコキシドを添加することが好ましい。ジルコニウムアルコキシド等は、ケイ素アルコキシド等に対して0.01〜0.1倍mol、特に、0.01〜0.08倍mol添加されることが好ましい。これらを添加することにより、湿度センサー材料の耐水性などの化学的耐久性が向上する。
【0040】
次に、調整工程において調整されたゾル溶液を成形して上述した実施例と同様の方法でゲル成形体を成形する成形工程を行うことが好ましい。
次に、ゲル成形体を焼結する焼結工程について説明する。焼結は、300〜800℃の範囲内で行われることが好ましく、特に、350〜600℃の範囲内で行われることが好ましい。
加熱温度は、20〜50℃/hで昇温させることが好ましい。加熱温度が300℃より低いと有機質分の揮発が不十分となり目的のガラスにならず、加熱温度が800℃より高いと、細孔の焼失がみられ、高い伝導度が得られない。焼成時間は、1〜5hrであることが好ましい。そして、上述した焼成物を冷却して本発明の湿度センサー材料の製造を完了した。また、本発明の湿度センサー材料の製造方法は、上述したようにゲル成形体を水蒸気処理する工程を備えていてもよい。
【0041】
なお、SiO及びZrOを含有する湿度センサー材料は、SiOとPとを含有する湿度センサー材料の製造方法の調整工程において、リンのアルコキシド等の代わりにジルコニウムアルコキシド等を添加することを除いて同様であることが好ましい。ジルコニウムアルコキシド等及びそれらの添加量は、上述した通りであることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の他の実施例であるセンサー材料について上述した図1〜図4及び図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施例である湿度センサー材料の細孔構造を説明するための説明図である。この実施例は、図1,図2,図3,図4の実施例3を用いて説明される。
本発明は、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したボトルネック状の多数の細孔からなる細孔構造を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が2nm〜8nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、1〜2nmとなっている。
【0043】
本発明の湿度センサー材料は、SiOを主成分とする多孔質ガラスである。
本発明の湿度センサー材料は、ガラスマトリックスと、ガラスマトリックス内に形成された細孔構造を有している。本発明の湿度センサー材料に対するSiO成分の含有量は、100〜80%、特に、98〜82%、特に、97%〜84%であることが好ましい。
また、本発明の湿度センサー材料は、上述したように伝導度を向上させるために、Pが含有していることが好ましい。本発明の湿度センサー材料に対するP成分の含有量は、0〜10%、特に、2〜8%であることが好ましい。
【0044】
また、耐水性などの化学的耐久性を向上させるために、ZrO、SnO、TiO、Bの少なくとも一種を含有していることが好ましい。本発明の湿度センサー材料に対するZrO、SnO、TiO、B成分の含有量は、0%〜10%、特に、1%〜8%であることが好ましい。特に、湿度センサー材料は、ZrOを含有していることが好ましい。
湿度センサー材料が、SiOとPを含有する場合は、湿度センサー材料に対してSiOの含有量は、100〜90%、Pの含有量、0〜10%、特に、SiOの含有量は、98〜92%、Pの含有量は、2〜8%であることが好ましい
【0045】
湿度センサー材料が、SiOとPとZrOを含有する場合は、湿度センサー材料に対してSiOの含有量は、100〜80%、Pの含有量は、0〜10%、ZrOの含有量は、0〜10%、特に、SiOの含有量は、97〜84%、Pの含有量は、2〜8%、ZrOの含有量は、1〜8%であることが好ましい。
細孔構造は、図6に示すような両端が開口したボトルネック状の細孔が3次元的に連続するように形成されている。ボトルネック状の細孔とは、図6に示すように、細孔の中央部が拡径している細孔をいう。
【0046】
ボトルネック状の細孔であることは、図4に示す実施例3の窒素ガス吸着・脱着等温線を用いて、de Boreの分類により証明することができる。
de Boreは、細孔形状の違いによって吸着・脱着等温線が示すヒステリシスループを5つの分類に分けている(参考文献J.Am.Chem.Soc.,73, 1951,373頁)。この分類によると、図4に示すような吸着・脱着等温線のヒステリシスループを有する多孔質ガラスの細孔構造は、上述したような両端が開口したボトルネック状の細孔により形成されていると考えられる。
【0047】
また、本発明の実施例である湿度センサー材料を構成するガラス多孔質は、内部全体に分布していることが好ましい。本発明の湿度センサー材料内部には、両端が開口したボトルネック状の細孔が3次元的に内部全体に分布していると考えられる。細孔構造が、湿度センサー材料全体に分布していれば、湿度センサー材料全体にプロトンが移動可能な通路が形成されると考えられるため、電気伝導度がより高くなると考えられる。
また、本発明の湿度センサー材料の平均細孔径は、2nm〜8nmであることが好ましく、特に、平均細孔径は、3nm〜6nmであることが好ましく、さらに好ましくは、約4nmである。湿度センサー材料の平均細孔径は、図3に示す細孔径分布によりわかる。また、細孔径の標準偏差(σ)は、1〜2nmである。細孔の平均細孔径及び細孔径の標準偏差がこのようなものであれば、図1,図2に示すように、上述したように、電気伝導度が大きく変化する(急峻な導電率変化が生じる)ものと考えられる。
【0048】
比表面積は、50〜1000m/gであることが好ましく、特に、300〜800m/gであることが好ましい。また、細孔容積は、0.1〜1cc/g、特に、0.2〜0.5cc/であることが好ましい。このように、大きな比表面積もしくは細孔容積を有することにより、本発明の多孔質ガラスは、細孔中に大量の水を吸収することができるため、大きな電気伝導度を有する。なお、比表面積及び細孔容積は、後述するBET法により求めることができる。
細孔は、3次元的に連続して形成されていることが好ましい。このような構成であれば、湿度センサー材料全体にプロトンが移動可能な通路が形成されると考えられるため、電気伝導度がより高くなると考えられる。
【0049】
また、本発明の実施例である湿度センサー材料は、ゾルゲル法により作製されたガラス多孔質であることが好ましい。ゾルゲル法により作製されたガラス多孔質の細孔表面には、周りの原子と水素結合を持っていない水酸基である自由水酸基、粒子の表面の自由水酸基が隣接粒子間で水素結合したものである粒子間水素結合性水酸基、粒子の表面の自由水酸基が相互に水素結合したものである表面水素結合性水酸基、熱処理により細孔の入り口が閉鎖することによって内部に閉じ込められた水酸基である内部水酸基などいろいろな水酸基が存在していると考えられる。細孔表面が以上のような構成をしていれば、本発明の湿度センサー材料を大気中にさらすと、大気中に存在する水蒸気(水分子)は、細孔構造の開口から細孔内に進入して細孔構造内にはプロトンが移動する通路が形成される。プロトン伝導性は、吸収された水の含有量が増大するにつれて増大する。具体的に、プロトンの伝導は、細孔表面に存在する水酸基からのプロトンの解離と、水酸基と水の分子との間でのプロトンのホッピングにより促進される。
【0050】
また、細孔構造は、3次元的な網目状に形成されたボトルネック状の細孔により形成されていることが好ましい。また、ボトルネック状の細孔(細孔構造)は、多孔質ガラス表面において開口している。
特に、本発明の実施例である湿度センサー材料は、テンプレート剤を用いてゾルゲル法により作製されているため、ガラス多孔質内に細孔が3次元的に規則正しく形成されていると考えられる。
【0051】
また、本発明の湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、30%RH〜80%RHの範囲内において伝導度が大きく変化することが好ましく、特に、本発明の湿度センサー材料は、50%RH〜75%RHの範囲内において伝導度が大きく変化する(急峻な導電率変化が生じる)ことが好ましい。また、本発明の湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、30%RH〜80%RHの湿度測定用のものであることが好ましく、特に、本発明の湿度センサー材料は、50%RH〜75%RHの湿度測定用のものであることが好ましい。
また、本発明の湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、30%RH〜80%RHの範囲内、特に、50%RH〜75%RHの範囲内で導電率に対する湿度応答特性がよいものであることが好ましい。また、本発明の湿度センサー材料の電気伝導度σ(S/cm)は、10−8〜10−1、特に、10−6〜10−2の範囲内で変化するものであることが好ましい。
【0052】
また、本発明の実施例である湿度センサー材料の湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、ヒステリシス特性を有している。
湿度上昇過程において、湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、中湿度付近から高湿度付近まで湿度減少側に凸変化し、低湿度付近において湿度減少側に凹変化する増加曲線となっている。また、湿度上昇過程において、湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、中湿度付近から高湿度付近において電気伝導度が急峻な変化を示す。また、湿度上昇過程において、本発明の湿度センサー材料は、30%RH〜80%RHの範囲内、特に、50%RH〜75%RHの範囲内において伝導度が大きく変化する(急峻な導電率変化が生じる)ものとなっている。本発明の湿度センサー材料の伝導度は、80%RHより高湿度側において緩やかに増加する。また、図1に示すように、湿度上昇過程における湿度−電気伝導度曲線の急変点は、湿度減少過程における湿度−電気伝導度曲線の急変点より、高湿度側に生じている。
【0053】
一方、湿度減少過程においては、湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、湿度上昇過程における湿度−電気伝導度曲線に対して低湿度側に位置している。湿度減少過程における湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、中湿度付近から高湿度付近まで湿度減少側に凸変化し、低湿度付近において湿度減少側に凹変化する減少曲線となっている。また、湿度上昇過程において、湿度センサー材料は、中湿度付近から高湿度付近において伝導度が急峻な変化を示すものとなっている。
湿度減少過程において、また、湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、80%RH〜30%RHの範囲内、特に、75%RH〜50%RHの範囲内で伝導度が大きく変化するものとなっている。また、80%RHより高湿度側において伝導度は緩やかに減少するものとなっている。
【0054】
また、本発明は、上述した湿度センサー材料を用いた湿度センサーである。このような湿度センサーであれば、湿度変化に応じて伝導度が大きく変化する。
また、本発明は、上述したような湿度センサー材料を備える電気機器である。湿度センサー材料を用いる電気機器とは、例えば、エアーコンディショナー、除湿器、加湿器、電子レンジ等の調理器等が挙げられる。このような電気機器であれば、湿度変化に応じた適切な制御が可能となる。
【0055】
次に、SiOとPとを含有する本発明の他の湿度センサー材料の製造方法について説明する。
本発明の湿度センサー材料の製造方法は、上述したSiOとPとを含有する湿度センサー材料の製造方法と、テンプレート剤としてDMF等を使用する点もしくはテンプレート剤を使用しない点についてのみ異なっている。
本発明の湿度センサー材料の製造方法は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、テンプレート剤とを用いて調整した溶液を加水分解することによりゾル溶液を調整する調整工程と、調整工程において調整されたゾル溶液を成形してゲル成形体を成形する成形工程と、ゲル成形体を焼結する焼結工程とを備えている。本発明の実施例の湿度センサー材料の製造方法は、ゾルゲル法により行われている。
【0056】
また、本発明の湿度センサー材料の調整工程は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうち少なくとも一種と、水と、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、テンプレート剤とを用いてゾル溶液を調整するものである。
また、調整工程は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうち少なくとも一種と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、水と、アルコールとを用いて調整した溶液と、テンプレート剤と、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうち少なくとも一種と、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒、水とを用いて調整した溶液とを混合することによりゾル溶液を調整するものである。
【0057】
本発明の実施例の調整工程においては、まず、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、水と、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒とにより調整した溶液を攪拌することによりケイ素のアルコキシド等が部分的に加水分解されたゾル溶液を調整する。攪拌は、1〜2hr行うことが好ましい。そして、部分的に加水分解されたゾル溶液に、テンプレート剤と、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうち少なくとも一種と、水と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、アルコールとにより調整した溶液とを混合し攪拌することによりゾル溶液の調整が行われる。攪拌は、1〜2hr行うことが好ましい。調整工程は、具体的に、20〜45℃で行うことが好ましい。このような工程により、ケイ素アルコキシド等は、加水分解・縮重合反応によりゾル溶液となる。
【0058】
ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物、ケイ素酸化物のうち、特に、反応性に富み、溶液中で酸素−金属−酸素の結合からなる金属酸化物重合体(ゲル前駆体)を形成する点からケイ素アルコキシドを用いることが好ましい。ケイ素アルコキシドとしては、Si(OCH (TMOS)、(Si(OC(TEOS)等、特に、TEOSを使用することが好ましい。また、ケイ素酸化物としては、コロイダルシリカ等を用いることが好ましい。
【0059】
酸性触媒としては、塩酸、硫酸等を用いることが好ましく、特に、塩酸を用いることが好ましい。塩基性触媒としては、アンモニア水等が好ましい。
酸性触媒は、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して、水素イオン濃度が0.001〜0.03倍mol、特に0.005〜0.02倍molとなるように混合することが好ましい。アルコールとしては、溶解性の観点から低級アルコールを用いることが好ましく、低級アルコールとしては、エタノール、メタノール、2−プロパノール等が好ましく、特に、エタノールを用いることが好ましい。アルコールは、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して1〜4倍mol、特に、1〜2倍mol混合することが好ましい。
【0060】
テンプレート剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)が用いられている。ジメチルホルムアミドを用いてゾルゲル法により作製することにより、本発明の多孔質ガラスの細孔構造を本発明の細孔構造のように制御することができる。
テンプレート剤は、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して0.1〜2倍mol、特に、0.3〜1倍mol混合することが好ましい。
テンプレート剤を溶解するアルコールとしては、溶解性の観点から低級アルコールであることが好ましく、低級アルコールとしては、エタノール、メタノール、2−プロパノール等が好ましく、特に、エタノールを用いることが好ましい。アルコールは、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して1〜4倍mol、特に、1〜2倍mol混合することが好ましい。
【0061】
テンプレート剤とともに添加される酸性触媒もしくは塩基性触媒としては、上述したようなものが好ましく、特に、酸性触媒である塩酸を使用することが好ましい。また、酸性触媒は、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して水素イオン濃度が、0.001〜0.03倍mol、特に0.005〜0.02倍molとなるように添加することが好ましい。
リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうちリンアルコキシドが好ましい。リンアルコキシドとしては、PO(OCH、PO(OC等を用いることが好ましい。リン塩化物としては、POCl等を用いることが好ましい。リンのアルコキシド等は、ケイ素のアルコキシド等に対して0〜0.1倍mol、特に、0.02〜0.07倍mol添加することが好ましい。
【0062】
次に、上述したように調整したゾル溶液を成形してゲル成形体を成形する成形工程、乾燥工程を行う。成形工程、乾燥工程としては、上述した成形工程、乾燥工程と同様であることが好ましい。
湿度センサー材料は、100〜1000nm、特に、200〜500nmの薄膜状に形成されていることが好ましい。
また、多孔質ガラスの製造方法は、ゲル成形体を水蒸気処理する工程を備えていることが好ましい。水蒸気工程を行うことによりゲル成形体の反応を促進させることができる。水蒸気処理工程は、室温から徐々に昇温し、最終的に、150℃での飽和水蒸気の圧力下で行うことが好ましい。また、水蒸気処理工程は、15〜25hr行うことが好ましい。
【0063】
次に、ゲル成型体を焼結する焼結工程について説明する。焼結は、300〜800℃の範囲内で行われることが好ましく、特に、350〜600℃の範囲内で行われることが好ましい。加熱温度は、20〜50℃/hで昇温させることが好ましい。加熱温度が300℃より低いと有機質分の揮発が不十分となり目的のガラスにならず、加熱温度が800℃より高いと、細孔の焼失がみられ、高い伝導度が得られない。焼成時間は、1〜5hrであることが好ましい。そして、上述した焼成物を冷却して本発明の湿度センサー材料を製造が完了した。
また、本発明の湿度センサー材料の製造方法の調整工程は、テンプレート剤を用いず行ってもよい。このような方法であっても、同様の細孔構造を有する湿度センサー材料を製造することができる。
【0064】
SiOのみを主成分として含有する湿度センサー材料の製造方法は、調整工程においてリンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種を添加しないことを除いて上述した製造方法と同様であることが好ましい。
また、SiOとPとZrOとを含有する湿度センサー材料の製造方法は、調整工程において、ジルコニウム、チタン、ホウ素、スズのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種を添加することを除いてSiOとPとを含有する湿度センサー材料の製造方法と同様であることが好ましい。ZrOは、調整工程においてリンのアルコキシド等とともに添加されることが好ましい。
【0065】
具体的には、ジルコニウムアルコキシドとしては、Zr(OC等を用いることが好ましい。また、チタンアルコキシドとしては、Ti(OC等を用いることが好ましい。ホウ素アルコキシドとしては、B(C等を用いることが好ましい。また、スズアルコキシドとしては、Sn(OC等を用いることが好ましい。具体的に、本発明の製造方法の調整工程においては、ジルコニウムアルコキシドを添加することが好ましい。ジルコニウムアルコキシド等は、ケイ素アルコキシド等に対して0.01〜0.1倍mol、特に、0.02〜0.08倍mol添加されることが好ましい。これらを添加することにより、湿度センサー材料の耐水性などの化学的耐久性が向上する。
なお、SiO及びZrOを含有する湿度センサー材料の製造方法は、上述したSiOとPとを含有する湿度センサー材料の製造方法の調整工程においてリンのアルコキシド等に代えてジルコニウムアルコキシド等を添加したものであることが好ましい。ジルコニウムアルコキシド等の添加量としては、上述した通りであることが好ましい。
【0066】
次に、本発明の他の実施例である湿度センサー材料、湿度センサー材料を使用した湿度センサー及び湿度センサー材料を使用した電気機器について図1ないし図5の図面を用いて説明する。この実施例は、図1,図2,図3,図4の実施例5を用いて説明される。
本発明の湿度センサー材料は、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔からなる細孔構造を有し、さらに、細孔は、平均細孔径が5nm〜14nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は2〜4nmとなっている。
【0067】
本発明の実施例の湿度センサー材料は、SiOを主成分とする多孔質ガラスである。本発明の湿度センサー材料は、ガラスマトリックスと、ガラスマトリックス内に形成された細孔構造を有している。本発明の湿度センサー材料に対するSiO成分の含有量は、100〜80%、特に、97%〜84%であることが好ましい。
また、本発明の湿度センサー材料は、上述したように伝導度を向上させるために、Pが含有していることが好ましい。本発明の湿度センサー材料に対するP成分の含有量は、0〜10%、特に、2〜8%であることが好ましい。
【0068】
また、耐水性などの化学的耐久性を向上させるために、ZrO、SnO、TiO、Bの少なくとも一種を含有していることが好ましい。本発明の湿度センサー材料に対するZrO、SnO、TiO、B成分の含有量は、0%〜10%、特に、1%〜8%であることが好ましい。特に、湿度センサー材料は、ZrOを含有していることが好ましい。
湿度センサー材料が、SiOとPを含有する場合は、湿度センサー材料に対して、SiOの含有量は、100〜90%、Pの含有量、0〜10%、特に、SiOの含有量は、98〜92%、Pの含有量は、2〜8%であることが好ましい
【0069】
湿度センサー材料が、SiOとPとZrOを含有する場合は、湿度センサー材料に対して、
SiOの含有量は、100〜80%、Pの含有量は、0〜10%、ZrOの含有量は、0〜10%、特に、SiOの含有量は、97〜84%、Pの含有量は、2〜8%、ZrOの含有量は、1〜8%であることが好ましい。
本発明の実施例である細孔構造は、図5に示すように、両端が開口したシリンダー状の細孔が3次元的に連続するように形成されている。
【0070】
シリンダー状の細孔であることは、図4に示す実施例5の窒素ガス吸着・脱着等温線を用いて、de Boreの分類により証明することができる。
de Boreは、細孔形状の違いによって吸着・脱着等温線が示すヒステリシスループを5つの分類に分けている(参考文献J.Am.Chem.Soc.,73, 1951,373頁)。この分類によると、図4に示すような吸着・脱着等温線のヒステリシスループを有する多孔質ガラスの細孔構造は、上述したような両端が開口したシリンダー状の細孔により形成されていると考えられる。
また、本発明の実施例である湿度センサー材料には、シリンダー状の細孔が内部全体に分布していることが好ましい。細孔構造が、湿度センサー材料全体に分布していれば、湿度センサー材料全体にプロトンが移動可能な通路が形成されると考えられるため、電気伝導度がより高くなると考えられる。
【0071】
また、本発明の湿度センサー材料の平均細孔径は、5nm〜14nmであることが好ましく、特に、平均細孔径は、8nm〜12nmであることが好ましく、さらに好ましくは、8nm〜11nmである。また、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmであることが好ましい。細孔の平均孔径及び細孔径の標準偏差がこのようなものであれば、図1,図2に示すように、電気伝導度が大きく変化するものと考えられる。
【0072】
本発明の湿度センサー材料を構成する多孔質ガラスの比表面積は、50〜1000m/gであることが好ましく、特に、300〜800m/gであることが好ましい。また、細孔容積は、0.1〜1cc/g、特に、0.2〜0.5cc/gであることが好ましい。このように、大きな比表面積もしくは細孔容積を有することにより、本発明の多孔質ガラスは、細孔中に大量の水を吸収することができるため、大きな電気伝導度を有する。なお、比表面積及び細孔容積は、後述するBET法により求めることができる。
細孔は、3次元的に連続して形成されていることが好ましい。このような構成であれば、湿度センサー材料全体にプロトンが移動可能な通路が形成されると考えられるため、電気伝導度がより高くなると考えられる。
【0073】
また、本発明の実施例である湿度センサー材料は、ゾルゲル法により作製されたガラス多孔質であることが好ましい。ゾルゲル法により作製されたガラス多孔質の細孔表面には、周りの原子と水素結合を持っていない水酸基である自由水酸基、粒子の表面の自由水酸基が隣接粒子間で水素結合したものである粒子間水素結合性水酸基、粒子の表面の自由水酸基が相互に水素結合したものである表面水素結合性水酸基、熱処理により細孔の入り口が閉鎖することによって内部に閉じ込められた水酸基である内部水酸基などいろいろな水酸基が存在していると考えられる。細孔表面が以上のような構成をしていれば、本発明の湿度センサー材料を大気中にさらすと、大気中に存在する水蒸気(水分子)は、細孔構造の開口から細孔内に進入して細孔構造内にはプロトンが移動する通路が形成される。プロトン伝導性は、吸収された水の含有量が増大するにつれて増大する。具体的に、プロトンの伝導は、細孔表面に存在する水酸基からのプロトンの解離と、水酸基と水の分子との間でのプロトンのホッピングにより促進される。
【0074】
また、細孔構造は、3次元的な網目状に形成されたシリンダー状の細孔により形成されていることが好ましい。また、シリンダー状の細孔(細孔構造)は、多孔質ガラス表面において開口している。
特に、本発明の実施例である湿度センサー材料は、例えば、ホルムアミド(FA)を用いてゾルゲル法により作製されているため、ガラス多孔質内に細孔が3次元的に規則正しく形成されていると考えられる。
【0075】
また、本発明の湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、80%RH以上において伝導度が大きく変化する(導電率が大きい)ことが好ましく、特に、本発明の湿度センサー材料は、90%RH以上において伝導度が大きく変化する(導電率が大きい)ことが好ましい。また、本発明の湿度センサー材料は、80%RH以上の湿度測定用のものであることが好ましく、特に、本発明の湿度センサー材料は、90%RH以上の湿度測定用のものであることが好ましい。また、本発明の実施例である湿度センサー材料の湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、ヒステリシス特性を有している。言い換えると、本発明の湿度センサー材料は、図1に示すグラフのように、80%RH以上、特に、90%RH以上で導電率の変化が大きくなっている。また、上述した範囲で、湿度応答特性が良いものとなっている。また、本発明の湿度センサー材料の電気伝導度σ(S/cm)は、10−8〜10−1、特に、10−6〜10−2の範囲内で変化するものであることが好ましい。また、湿度センサー材料は、図1に示すように、高湿度側において電気伝導度が大きく変化する(導電率が大きい)ものであることが好ましい。
【0076】
湿度上昇過程において、湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、凹変化する増加曲線となっていることが好ましい。また、湿度上昇過程において、湿度センサー材料は、高湿度側において伝導度が急激に変化するものとなっている。また、湿度上昇過程において、本発明の湿度センサー材料は、80%RH以上、特に、90%RH以上において伝導度が大きく変化する(導電率が大きい)ものとなっている。また、80%RHより低湿度側において、伝導度は単調に増加している。また、図1に示すように、湿度上昇過程における湿度−電気伝導度曲線の急変点は、湿度減少過程における湿度−電気伝導度曲線の急変点より、高湿度側に生じている。
【0077】
一方、湿度減少過程においては、湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、湿度上昇過程における湿度−電気伝導度曲線に対して低湿度側に位置している。また、湿度−電気伝導度曲線は、図1に示すように、凹変化しながら減少する減少曲線となっている。また、湿度上昇過程において、湿度センサー材料は、高湿度側において伝導度が急激に変化するものとなっている。
湿度減少過程において、また、湿度センサー材料は、図1,図2に示すように、80%RH以上において、特に、90%RH以上において伝導度が大きく変化する(導電率が大きい)ものとなっている。また、80%RHより低湿度側において、伝導度は単調に減少するものとなっている。
【0078】
また、本発明は、上述した湿度センサー材料を用いた湿度センサーである。このような湿度センサーであれば、湿度変化に応じて伝導度が大きく変化する。
また、本発明は、上述したような湿度センサー材料を備える電気機器である。湿度センサー材料を用いる電気機器とは、例えば、エアーコンディショナー、除湿器、加湿器、電子レンジ等の調理器等が挙げられる。このような電気機器であれば、湿度変化に応じた適切な制御が可能となる。
【0079】
次に、本発明の湿度センサー材料の製造方法について説明する。
本発明の湿度センサー材料の製造方法は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、ホルムアミドとを用いて加水分解することによりゾル溶液を調整する調整工程と、調整工程において調整されたゾル溶液を成形してゲル成形体を成形する工程と、ゲル成形体を焼結する工程とを備えている。本発明の実施例の湿度センサー材料の製造方法は、ゾルゲル法により行われていることが好ましい。
湿度センサー材料の調整工程は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、水と、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、ホルムアミドを用いてゾル溶液を調整するものである。
【0080】
また、調整工程は、具体的に、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうち少なくとも一種と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、水と、アルコールとを用いて調整した溶液と、ホルムアミドと、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、水とを用いて調整した溶液とを混合することによりゾル溶液を調整するものである。
【0081】
また、さらに具体的には、本発明の実施例の調整工程においては、まず、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、水と、アルコールと、酸性触媒もしくは塩基性触媒とにより調整された溶液を攪拌することによりケイ素のアルコキシド等が部分的に加水分解されたゾル溶液を調整する。攪拌は、1〜2hr行うことが好ましい。そして、部分的に加水分解されたゾル溶液に、ホルムアミドと、水と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、アルコールとにより調整した溶液とを混合し攪拌することによりゾル溶液の調整が行われる。攪拌は、1〜2hr行うことが好ましい。ゾル溶液を調整する温度としては、低温で行うことが好ましく、具体的に、20〜45℃で行うことが好ましい。このような工程により、ケイ素アルコキシド等は、加水分解・縮重合反応によりゾル溶液となる。
【0082】
ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物、ケイ素酸化物のうち、特に、反応性に富み、溶液中で酸素−金属−酸素の結合からなる金属酸化物重合体(ゲル前駆体)を形成する点からケイ素アルコキシドを用いることが好ましい。
ケイ素アルコキシドとしては、Si(OCH (TMOS)、(Si(OC(TEOS)等、特に、TEOSを使用することが好ましい。また、ケイ素酸化物としては、コロイダルシリカ等を用いることが好ましい。
酸性触媒としては、塩酸、硫酸等を用いることが好ましく、特に、塩酸を用いることが好ましい。塩基性触媒としては、アンモニア水等が好ましい。
【0083】
酸性触媒は、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して水素イオン濃度が0.001〜0.03倍mol、特に0.005〜0.02倍molとなるように混合されることが好ましい。アルコールとしては、溶解性の観点から低級アルコールを用いることが好ましく、低級アルコールとしては、エタノール、メタノール、2−プロパノール等が好ましく、特に、エタノールを用いることが好ましい。アルコールは、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して1〜4倍mol、特に、1〜2倍mol混合することが好ましい。
ホルムアミドのような物質を用いてゾルゲル法により作製することにより、本発明の湿度センサー材料の細孔構造を制御することができる。
ホルムアミドは、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して0.05〜0.2倍mol、特に、0.1〜0.15倍mol混合することが好ましい。
【0084】
ホルムアミドを溶解するアルコールとしては、溶解性の観点から低級アルコールであることが好ましく、低級アルコールとしては、エタノール、メタノール、2−プロパノール等が好ましく、特に、エタノールを用いることが好ましい。アルコールは、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して1〜4倍mol、特に、1〜2倍mol混合することが好ましい。
ホルムアミドとともに添加される酸性触媒もしくは塩基性触媒としては、上述したようなものが好ましく、特に、塩酸を使用することが好ましい。また、酸性触媒は、ケイ素アルコキシド、ケイ素塩化物もしくはケイ素酸化物に対して水素イオン濃度が、0.001〜0.03倍mol、特に0.005〜0.02倍molとなるように混合されることが好ましい。
また、本発明の多孔質ガラスの製造方法の調整工程においては、上述したようなジルコニウム、チタン、ホウ素、スズのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種を添加してもよい。これらを添加することにより、本発明の多孔質ガラスの耐久性が向上する。
【0085】
次に、上述したように調整したゾル溶液を成形してゲル成形体を成形する成形工程、ゲル成形体を乾燥させる乾燥工程、乾燥されたゲル成形体を焼結する焼結工程を行い湿度センサー材料を作製する。成形工程、乾燥工程、焼結工程としては、テンプレート剤としてCTABを用いる湿度センサー材料の製法と同様であることが好ましい。
湿度センサー材料は、100〜1000nm、特に、200〜500nmの薄膜状に形成されていることが好ましい。
SiOとPとを含有する湿度センサー材料の製造方法は、調整工程においてリンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種を添加することを除いて上述した製造方法と同様であることが好ましい。
【0086】
湿度センサー材料の調整工程は、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、水と、アルコールと、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、ホルムアミドを用いてゾル溶液を調整するものである。
また、調整工程は、具体的に、ケイ素のアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうち少なくとも一種と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、水と、アルコールとを用いて調整した溶液と、ホルムアミドと、アルコールと、リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種と、酸性触媒もしくは塩基性触媒と、水とを用いて調整した溶液とを混合することによりゾル溶液を調整するものである。リンのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物のうちリンアルコキシドが好ましい。リンアルコキシドとしては、PO(OCH、PO(OC等を用いることが好ましい。リン塩化物としては、POCl等を用いることが好ましい。リンのアルコキシド等は、ケイ素のアルコキシド等に対して0〜0.1倍mol、特に、0.02〜0.07倍mol添加することが好ましい。
【0087】
また、SiOとPとZrOとを含有する湿度センサー材料の製造方法は、調整工程において、ジルコニウム、チタン、ホウ素、スズのアルコキシド、塩化物もしくは酸化物の少なくとも一種を添加することを除いてSiOとPとを含有する湿度センサー材料の製造方法と同様であることが好ましい。ZrOは、調整工程においてリンのアルコキシド等とともに添加されることが好ましい。具体的には、ジルコニウムアルコキシドとしては、Zr(OC等を用いることが好ましい。また、チタンアルコキシドとしては、Ti(OC等を用いることが好ましい。ホウ素アルコキシドとしては、B(C等を用いることが好ましい。また、スズアルコキシドとしては、Sn(OC等を用いることが好ましい。具体的に、本発明の製造方法の調整工程においては、ジルコニウムアルコキシドを添加することが好ましい。ジルコニウムアルコキシド等は、ケイ素アルコキシド等に対して0.01〜0.1倍mol、特に、0.02〜0.08倍mol添加されることが好ましい。これらを添加することにより、湿度センサー材料の耐水性などの化学的耐久性が向上する。
【0088】
なお、SiO及びZrOを含有する湿度センサー材料の製造方法は、上述したSiOとPとを含有する湿度センサー材料の製造方法の調整工程においてリンのアルコキシド等に代えてジルコニウムアルコキシド等を添加したものであることが好ましい。ジルコニウムアルコキシド等の添加量としては、上述した通りであることが好ましい。
また、多孔質ガラスの製造方法は、テンプレート剤としてCTABを用いる場合と同様に成形体を水蒸気処理する工程を備えていることが好ましい。
【0089】
次に、本発明は、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nmより小さく、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっている湿度センサー材料を有する第1の湿度センサー、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したボトルネック状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が2nm〜8nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、1〜2nmとなっている湿度センサー材料を備える第2の湿度センサー、少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nm〜14nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっている第3の湿度センサーの少なくとも2種以上を備える湿度センサーである。
【0090】
第1の湿度センサーを構成する湿度センサー材料、第2の湿度センサー材料を構成する湿度センサー材料、第3の湿度センサー材料を構成する湿度センサー材料は、上述した通りである。第1の湿度センサーを構成する湿度センサー材料、第2の湿度センサー材料を構成する湿度センサー、第3の湿度センサー材料を構成する第3の湿度センサーの製造方法としては、上述した通りであることが好ましい。
このような湿度センサーであれば、低湿度領域、中湿度領域、高湿度領域の少なくとも2つの領域において高い電気伝導度変化を有することとなる。
【0091】
具体的に、本発明は、上述した第1の湿度センサーと、第2の湿度センサーとを備える湿度センサーであってもよい。また、本発明は、上述した第2の湿度センサーと、第3の湿度センサーとを備える湿度センサーであってもよい。また、本発明は、第1の湿度センサーと、第3の湿度センサーとを備える湿度センサーであってもよい。また、本発明の湿度センサー材料としては、第1のセンサーと、第2のセンサーと、第3のセンサーとを備えるものであってもよい。
第1の湿度センサーを構成する湿度センサー材料は、上述したように、30%RH以下の湿度測定用のものであることが好ましい。また、第1の湿度センサーを構成する湿度センサー材料は、上述したように、20%RH〜30%RHの湿度測定用のものである。第1の湿度センサーを構成する湿度センサー材料の平均細孔径は、上述したように、1nm〜3nmであることが好ましい。
【0092】
第2の湿度センサーを構成する湿度センサー材料は、上述したように、30%RH〜80%RHの湿度測定用のものであることが好ましい。また、第2の湿度センサー構成する湿度センサー材料は、上述したように、50%RH〜75%RHの湿度測定用のものであることが好ましい。また、第2の湿度センサー材料を構成する湿度センサー材料の平均細孔径は、上述したように、3nm〜6nmであることが好ましい。
第3の湿度センサーを構成する湿度センサー材料は、上述したように、80%RH以上の湿度測定用のものであることが好ましい。また、第3の湿度センサー材料を構成する湿度センサー材料は、上述したように、90%RH以上の湿度測定用のものであることが好ましい。第3の湿度センサーを構成する湿度センサー材料の平均細孔径は、上述したように、8nm〜12nmであることが好ましい。
【実施例】
【0093】
以下に、本発明の湿度センサー材料の具体的実施例について説明する。
(実施例1)(テンプレート剤CTAB)
TEOS(コルコート製)308gに、エタノール68ml、0.15Nの塩酸27mlを加え、1hr攪拌し部分的に加水分解したゾル溶液を調整した。
そして、部分的に加水分解したゾル溶液に、0.15Nの塩酸107mlと、エタノール68mlと、PO(OCH(ナカライテクス製)22g、テンプレート剤であるCTAB(アルドリッチ製)100gとにより調整された溶液を加え、1hr攪拌した。ゾル溶液を調整する際の温度は、25℃であった。
そして、攪拌後、溶液を、直径110mm、高さ15mmの成形型に流し込み固化させた後、150℃の飽和水蒸気の圧力下で15hr水蒸気処理した。その後、これを、室温〜600℃まで25℃/hrで昇温後、600℃で5hr焼成し、実施例1のガラスを作製した。
【0094】
(実施例2)(テンプレート剤CTAB)
TEOS(コルコート製)290gに、エタノール64ml、0.15Nの塩酸25mlを加え、1hr攪拌し部分的に加水分解したゾル溶液を調整した。
そして、部分的に加水分解したゾル溶液に、0.15Nの塩酸100mlと、エタノール64mlと、PO(OCH(ナカライテスク製)21gと、Zr(OC(アルドリッチ製)17gと、テンプレート剤であるCTAB(アルドリッチ製)90gとにより調整された溶液を加え、1hr攪拌した。ゾル溶液を調整する際の温度は、25℃であった。
そして、攪拌後、溶液を、直径110mm、高さ15mmの成形型に流し込み固化させた後、150℃の飽和水蒸気の圧力下で15hr水蒸気処理した。その後、これを、室温〜400℃まで25℃/hrで昇温後、400℃で5hr焼成し、実施例2のガラスを作製した。
【0095】
(実施例3)(テンプレート剤DMF)
TEOS(コルコート製)308gに、エタノール68ml、0.15Nの塩酸27mlを加え、1hr攪拌し部分的に加水分解したゾル溶液を調整した。
そして、部分的に加水分解したゾル溶液に、0.15Nの塩酸107mlと、エタノール68mlと、PO(OCH(ナカライテスク製)22gと、テンプレート剤であるDMF(キシダ製)67gとにより調整された溶液を加え、1hr攪拌した。ゾル溶液を調整する際の温度は、25℃であった。
そして、攪拌後、溶液を、直径110mm、高さ15mmの成形型に流し込み固化させた後、150℃の飽和水蒸気の圧力下で15hr水蒸気処理した。その後、これを、室温〜400℃まで25℃/hrで昇温後、400℃で5hr焼成し、実施例3のガラスを作製した。
【0096】
(実施例4)(テンプレート剤なし)
TEOS(コルコート製)308gに、エタノール68ml、0.15Nの塩酸27mlを加え、1hr攪拌し部分的に加水分解したゾル溶液を調整した。
そして、部分的に加水分解したゾル溶液に、0.15Nの塩酸107mlと、エタノール68mlと、PO(OCH(ナカライテスク製)22gとにより調整された溶液を加え、1hr攪拌した。ゾル溶液を調整する際の温度は、25℃であった。
そして、攪拌後、溶液を、直径110mm、高さ15mmの成形型に流し込み固化させた後、150℃の飽和水蒸気の圧力下で15hr水蒸気処理した。その後、これを、室温〜600℃まで25℃/hrで昇温後、600℃で5hr焼成し、実施例4のガラスを作製した。
【0097】
(実施例5)
TEOS(コルコート製)347gに、エタノール77ml、0.15Nの塩酸30mlを加え、1hr攪拌し部分的に加水分解したゾル溶液を調整した。
そして、部分的に加水分解したゾル溶液に、0.15Nの塩酸120mlと、エタノール77mlと、ホルムアミド(キシダ製)70gとにより調整された溶液を加え、1hr攪拌した。ゾル溶液を調整する際の温度は、25℃であった。
そして、攪拌後、溶液を、直径110mm、高さ15mmの成形型に流し込み固化させた後、150℃の飽和水蒸気の圧力下で15hr水蒸気処理した。その後、これを、室温〜600℃まで25℃/hrで昇温後、600℃で5hr焼成し、実施例1のガラスを作製した。
【0098】
(実験1)
上述したように作製した実施例1ないし5の湿度センサー材料を真空デシケーター内で12時間以上保持した後、比表面積分析装置(Quantachrome社、NOVA1000)を用いて、BET法により、細孔径分布測定及び吸着・脱着等温線測定を行ったところ、図3,図4に示す結果となった。
BET法の測定条件としては、脱気温度250℃、脱気時間60min、平衡休止時間360sec、平衡時間許容範囲120sec、飽和蒸気圧770mmHg、測定温度−195.8℃(液体窒素)であった。
【0099】
(実験2)
次に、以下のような実験を行って相対湿度に対する電気伝導度の変化を測定したところ図1,図2に示すような結果となった。
Solartron社製1260型のインピーダンスアナライザーを用いて、交流インピーダンス法により、実施例のガラス多孔質の電気伝導度の測定のための準備として、まず、ガラス多孔質表面に電極(φ3mm)を取りつけるために、まず、試料の両面をマスキングし、乾燥器(50℃)で約1日乾燥させた。その後、イオンスパッタコーティング装置((株式会社エイコーエンジニアリング、EIKOイオンコーター IB−3)を使用して試料の両面に金蒸着を行った。この金薄膜の上に電子顕微鏡用銀ペースト(日新EM株式会社、シルベスト P255)を接着剤として導線を取りつけた。
【0100】
インピーダンスアナライザーの設定条件としては、AC電圧振幅0.5〜2.0V、最低周波数1Hz、最高周波数3.0×10Hz、ログ周波数でスィープし{スィープ方向ダウン、スィープ測定点数10(point/decade)}、積分時間0.2s、ディレイ時間0.1sであった。
そして、実験では、バルクによる抵抗値Rbからσ=d/(Rb・S)を使ってガラスの伝導率σ(S/cm)を算出した(dは、電極間距離cm、Sは、電極面積である。)。インピーダンス法による測定は、電極を取りつけた試料を恒温恒湿器(東洋制作所、AE−215)に入れ、温度と湿度が一定になった後(2時間)行われた。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、本発明の実施例である湿度センサー材料の湿度−電気伝導度曲線である。
【図2】図2は、本発明の実施例である湿度センサー材料の湿度−電気伝導度の関係を示す表である。
【図3】図3は、本発明の実施例である湿度センサー材料の細孔径分布である。
【図4】図4は、本発明の実施例である吸着・脱着等温線である。
【図5】図5は、本発明の実施例である湿度センサー材料の細孔構造を説明するための説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施例である湿度センサー材料の細孔構造を説明するための説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nmより小さく、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっていることを特徴とする湿度センサー材料。
【請求項2】
前記湿度センサー材料は、30%RH以下の湿度測定用のものである請求項1に記載の湿度センサー材料。
【請求項3】
前記湿度センサー材料は、20%RH〜30%RHの湿度測定用のものである請求項1に記載の湿度センサー材料。
【請求項4】
前記湿度センサー材料の平均細孔径は、1nm〜3nmである請求項1ないし3のいずれかに記載の湿度センサー材料。
【請求項5】
少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したボトルネック状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が2nm〜8nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、1〜2nmとなっていることを特徴とする湿度センサー材料。
【請求項6】
前記湿度センサー材料は、30%RH〜80%RHの湿度測定用のものである請求項5に記載の湿度センサー材料。
【請求項7】
前記湿度センサー材料は、50%RH〜75%RHの湿度測定用のものである請求項5に記載の湿度センサー材料。
【請求項8】
前記湿度センサー材料の平均細孔径は、3nm〜6nmである請求項5ないし7のいずれかに記載の湿度センサー材料。
【請求項9】
少なくともSiO成分を含有する多孔質性の湿度センサー材料であって、該湿度センサー材料は、両端が開口したシリンダー状の多数の細孔を有し、さらに、前記細孔は、平均細孔径が5nm〜14nmであり、細孔径の標準偏差(σ)は、2〜4nmとなっていることを特徴とする湿度センサー材料。
【請求項10】
前記湿度センサー材料は、80%RH以上の湿度測定用のものである請求項9に記載の湿度センサー材料。
【請求項11】
前記湿度センサー材料は、90%RH以上の湿度測定用のものである請求項9に記載の湿度センサー材料。
【請求項12】
前記湿度センサー材料の平均細孔径は、8nm〜12nmである請求項9ないし11のいずれかに記載の湿度センサー材料。
【請求項13】
前記湿度センサー材料は、P成分を含有している請求項1ないし12のいずれかに記載の湿度センサー材料。
【請求項14】
前記湿度センサー材料は、ZrO、SnO、TiO、B成分のうち少なくとも一種以上を含有している請求項1ないし13のいずれかに記載の湿度センサー材料。
【請求項15】
前記請求項1ないし14のいずれかに記載の湿度センサー材料を用いることを特徴とする湿度センサー。
【請求項16】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の湿度センサー材料を有する第1の湿度センサーと、前記請求項5ないし8のいずれかに記載の湿度センサー材料を有する第2の湿度センサーと、前記請求項9ないし12のいずれかに記載の湿度センサー材料を有する第3の湿度センサーとのうち少なくとも2種を備えることを特徴とする湿度センサー。
【請求項17】
前記請求項1ないし16のいずれかに記載の湿度センサー材料を用いることを特徴とする電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−27925(P2006−27925A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205801(P2004−205801)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000147202)株式会社成田製陶所 (5)
【Fターム(参考)】