説明

湿度センサ異常検出システム

【課題】幅広い湿度条件において高い信頼性を有する湿度センサ異常検出システムを提供すること。
【解決手段】室内湿度センサ22によって検出された検出室内湿度が、湿度正常範囲に存在するか否かを判定する検出結果判定手段(S15、S16)と、湿度正常範囲を、検出室内湿度の取得の際に室内温度センサによって検出された検出室内温度と、検出室内湿度の取得の際にエバポレータ出口側温度センサによって検出された検出エバポレータ出口側温度と、に対応する推定室内湿度を基準にして決定する湿度正常範囲決定手段(S14、即ち、S141〜S148(図3参照))とを有して構成し、検出結果判定手段による判定の結果、検出室内湿度が湿度正常範囲に存在しない場合は、室内湿度センサ22の異常の判断を行う(S20〜S22が実行される)湿度センサ異常判定部を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度センサの異常を検出する湿度センサ異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湿度センサ異常検出システムとして、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この湿度センサ異常検出システムにあっては、湿度センサによって検出された相対湿度(検出相対湿度)が、既定の範囲内にあるかどうかが判定され、この検出相対湿度が既定の範囲内であれば、湿度センサの正常が判定され、検出相対湿度が既定の範囲外であれば、湿度センサの異常が判定される。
【0003】
なお、以下において、「相対湿度」は、「湿度」と記すこととする。
【特許文献1】特開2001−153438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の湿度センサ異常検出システムにあっては、湿度センサの異常検出に用いられる既定値は、予め設定された一定の上限値と下限値とから設定されたものである。このため、検出湿度は、実際の湿度からのズレの大小にかかわらず、検出湿度が既定値の範囲外であれば、湿度センサの異常が判定される。即ち、実際の湿度が既定値の範囲外であると、湿度センサの異常検出ができない。
【0005】
この場合、既定値の幅を拡大すれば異常判定が可能な湿度条件は拡大するが、異常判定の信頼性は低下し、また、既定値の幅を縮小すれば異常判定の信頼性は向上するが異常判定が可能な湿度条件は縮小するといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、幅広い湿度条件において高い信頼性を有する湿度センサ異常検出システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
室内湿度センサによって検出された検出室内湿度が、湿度正常範囲に存在するか否かを判定する検出結果判定手段と、
前記湿度正常範囲を、前記検出室内湿度の取得の際に室内温度センサによって検出された検出室内温度と、前記検出室内湿度の取得の際にエバポレータ出口側温度センサによって検出された検出エバポレータ出口側温度と、に応じた推定室内湿度を基準にして決定する湿度正常範囲決定手段と、を有し、
前記検出結果判定手段による判定の結果、前記検出室内湿度が前記湿度正常範囲に存在しない場合は、前記室内湿度センサの異常の判断を行う湿度センサ異常判定部を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の湿度センサ異常検出システムにあっては、室内湿度センサが正常であるか異常であるかは、検出結果照合手段によって、室内湿度センサで検出された室内の湿度(室内湿度)が湿度正常範囲にあるか否かによって判定される。
【0009】
ところで、後述するように、室内湿度は、室内温度とエバポレータ出口側温度のみの関数として取り扱うことができ、従って、この両温度のみから推定することができる。
【0010】
そして、湿度正常範囲は、湿度正常範囲決定手段によって、室内湿度の検出の際の室内温度と、同じく室内湿度の検出の際のエバポレータ出口側温度とに応じて推定された室内湿度を基準にして決定される。
【0011】
このため、室内湿度の正常又は異常の判定に用いられる湿度正常範囲の決定に用いられる湿度正常範囲は、室内湿度検出時の室内湿度に応じて常に更新され、かつ、実際の室内湿度に近似した推定室内湿度に基づいたものであるから、検出結果判定手段による判定の信頼性が高いものとなる。
【発明の効果】
【0012】
即ち、本発明によれば、幅広い湿度条件において、信頼性の高い湿度センサ異常検出システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の湿度センサ異常検出システムを実現する最良の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
はじめに、構成を説明する。
図1は、実施例1の湿度センサ異常検出システムの全体構造図である。
この湿度センサ異常検出システムは、車両に搭載され、空調装置3、湿度センサ異常判定部を有するCU(空調制御ユニット)1、及び、これに接続されるセンサ(符号21〜28)等の信号生成系によって構成される。
【0015】
空調装置3は、エバポレータ321及びヒータコア35を格納した空調ユニット31を備えており、この空調ユニット31に導入された空気(導入空気)は、エバポレータ321を通過して冷却され、また、ヒータコア35を通過して暖められる。
【0016】
この導入空気は、ブロワファン34の駆動によって生成される空調ユニット31内部の負圧によって導入され、この空調ユニット31に設けられた内気吸入口311から内気が、外気吸入口312から外気が導入される。そして、この導入空気は、空調ユニット31に設けられているデフロスタ吹き出し口(不図示)へ通じるデフロスタダクト313、フェイス吹き出し口(不図示)へ通じるフェイスダクト314、フット吹き出し口(不図示)へ通じるフットダクト315の各ダクトへ案内され、室内の冷暖房に供される。
【0017】
内気吸入口311と外気吸入口312の開口付近には、内気と外気の混合割合を調節するための切り換えダンパ371が設けられており、内気循環モード又は外気循環モードの選択も可能である。また、デフロスタダクト313、フェイスダクト314及びフットダクト315の開口付近には切り換えダンパ372及び切り換えダンパ373が設けられており、これらの切り換えダンパの位置調節によって、前記の各ダクトに案内される導入空気の割合調節が可能である。さらに、エバポレータ321の下流側であってヒータコア35の上流側に、エアミックスダンパ374が設けられており、このエアミックスダンパ374の位置調節によって、エバポレータ321及びヒータコア35を通過する導入空気の割合調節が可能である。
【0018】
なお、切り換えダンパ371、切り換えダンパ372、切り換えダンパ373及びエアミックスダンパ374は、それぞれCU1から送信される信号に基づいて制御されるアクチュエータ361、アクチュータ362、アクチュエータ363及びアクチュエータ364によって駆動される。
【0019】
エバポレータ321の出口側の直後には、この位置の温度(エバポレータ出口側温度)を検出するエバポレータ出口側温度センサ23が設けられ、アスピレータ316の室内側には、室内温度を検出する室内温度センサ21及び室内湿度を検出する室内湿度センサ22が設けられており、これらのセンサは、CU1に接続されて空調制御に用いられる。このCU1に入力された室内温度センサ21及び室内湿度センサ22による検出室内温度及び検出室内湿度の情報は、CU1の湿度センサ異常判定部にも伝達される。
【0020】
また、外気の温度を検出する外気温度センサ27及び日射量を検出する日射量センサ28がCU1に接続され、検出外気温度及び検出日射量を用いて空調制御の補正が行われる。
【0021】
さらに、ドアセンサ24及び窓センサ25がCU1に接続され、窓及びドアの開閉状態に関する情報が、CU1の湿度センサ異常判定部に入力されるようになっている。
【0022】
そして、GPS(Global Positioning System;位置決定システム)アンテナ26を有するカーナビゲーションシステムNがCU1に接続されており、GPSアンテナ26によって受信されたGPSから送信されてくる情報のうち、現在の日時情報がCU1の湿度センサ異常判定部に入力される。
【0023】
湿度センサ異常判定部に入力された検出室内温度、検出エバポレータ出口側温度、検出された窓の開閉状態、検出されたドアの開閉状態、受信された現在の日時情報は、後述する室内湿度センサ22の異常判断処理に用いられる。
【0024】
なお、符号322、323、324及び325は、それぞれ、空調冷凍サイクルを構成するコンプレッサ、コンデンサ、リキッドタンク及び膨張弁であって周知の技術を適用し、符号Cは、デフロスタ吹き出し口313等から吹き出される空気の温度を設定するコントローラ、符号Bは、車体の電装系を統合制御するボディーコントロールユニット(Body Control Unit)であって、検出された窓及びドアの開閉状態は、これを介してCU1の湿度センサ異常判定部に入力される。
【0025】
また、符号11は、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)11であって、室内湿度センサ22の劣化の開始(乾燥剤を同封した梱包材からの取り出し時点)の日時情報が記憶されている。この日時情報は、後述する室内湿度センサ22の異常判断処理に用いられる。
【0026】
図2は、この構成の湿度センサ異常検出システムのCU1内部の湿度センサ異常判定部において行われる湿度センサ22の異常判断の処理を示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。なお、図2に示す記号「S」は下記「ステップ」を表す。
【0027】
ステップ1では、GPSアンテナ26で受信したGPS情報のうち現在の日時情報が読み込まれる。
【0028】
ステップ2では、ステップ1に続いて、EEPROM11に予め記憶されている室内湿度センサ22の劣化開始の日時情報と、GPSアンテナ26によって受信された現在の日時情報とから、湿度センサの経年劣化による検出誤差が推定値として算出される。この室内湿度センサ22による検出室内湿度は、年間およそ1.5%の割合で実際の室内湿度を過小評価するという実測データに基づいて、検出室内湿度は、補正前の検出室内湿度×1.015(%)×劣化開始時点からの経過年数である。
【0029】
ステップ3では、ステップ2に続いて、室内湿度センサ22による検出室内湿度が読み込まれる。
【0030】
ステップ4では、ステップ3に続いて、ステップ2で読み込まれた湿度センサ22による検出室内湿度を、ステップ2で算出された検出誤差を用いて補正される。
【0031】
以下、「検出室内湿度」は、「室内湿度センサ22による検出室内湿度×1.015×劣化開始時点からの経過年数」を意味する。
【0032】
ステップ5では、ステップ4に続いて、空調装置3が稼動しているか否かが判定される。これは、空調装置3の冷凍サイクルに含まれるコンプレッサ322が稼動しているか否かによって判定される。
【0033】
これは、この湿度センサ異常検出システムによる室内湿度センサ22の異常検出は、室内湿度センサ22の異常による室内湿度の不正確な検出によって、冷暖房によって生じる結露(フロントガラス等の曇り)を防止する機能(室内湿度に応じてデフロスタ吹き出し口の風量を制御する等)が作動しないことを防止することを主な目的としていることから、空調装置3の稼動を前提とするためである。
【0034】
空調装置3が稼動していると判定された場合はステップ6に移行するが、空調装置3が稼動していないと判定された場合は処理を終了し、ステップ1から処理が再開される。
【0035】
以下、処理が終了したときは、ステップ1から処理が再開される。以下同様である。
【0036】
ステップ6では、ステップ5に続いて、内気循環モードであるか否か、即ち、切り換えダンパ371によって外気吸入口312が閉鎖された状態であるか否かが判定される。これは、後述するように、室内湿度センサ22の異常判断に用いられる湿度正常範囲の決定に用いられる推定室内湿度の精度を維持するためである。このため、内気循環モードであると判定された場合は、ステップ7に移行するが、内気循環モードでないと判定された場合は、処理は終了する。
【0037】
ステップ7では、車両のドア(不図示)が閉じられているか否かが判定される。この判定は、ドアセンサ24によって検出されたドア開閉状態の情報に基づいて判断される。ドアが閉じられていると判定された場合は、ステップ8に移行し、閉じられていない場合は、処理を終了する。これは、後述するように、室内湿度センサ22の異常判断に用いられる湿度正常範囲の決定に用いられる推定室内湿度の精度を維持するためである。
【0038】
ステップ8では、車両の窓(不図示)が閉じられているか否かが判定される。この判定は、窓センサ25によって検出された窓開閉状態の情報に基づいて判断される。窓が閉じられていると判定された場合は、ステップ8に移行し、閉じられていないと判定された場合は、処理を終了する。これは、後述するように、室内湿度センサ22の異常判断に用いられる湿度正常範囲の決定に用いられる推定室内湿度の精度を維持するためである。
【0039】
ステップ9では、CU1に含まれる内部タイマにセットされた30分間の設定時間のカウントが開始される。
【0040】
ステップ10では、ステップ9に続いて、セットされた30分が経過したか否かが判断される。30分が経過していない場合は、30分が経過するまでステップ1〜ステップ10までの処理が繰り返される。このとき、タイマがリセットされない限り、ステップ9の処理は行われない。この30分が経過した場合は、ステップ12に移行する。
【0041】
ステップ11は、上記ステップ5〜ステップ8において、各ステップの条件を満たさないと判定された場合に実行され、タイマの経過時間情報がリセットされる。
【0042】
ステップ12では、ステップ10に続いて、エバポレータ出口側温度センサ23によって検出された検出エバポレータ出口側温度が読み込まれる。
【0043】
ステップ13では、ステップ12に続いて、室内温度センサ21によって検出された検出室内温度が読み込まれる。
【0044】
ステップ14では、ステップ13に続いて、ステップ12で読み込まれた検出エバポレータ出口側温度及びステップ13で読み込まれた検出室内温度を用いて湿度正常範囲が決定される。この決定の処理については後述する。
【0045】
ステップ15では、ステップ14に続いて、室内湿度センサ22による検出室内湿度がステップ14で決定された湿度正常範囲の範囲にあるか否かが判定される。
【0046】
ステップ16では、ステップ15に続いて、室内湿度センサ22による検出室内湿度がステップ14で決定された湿度正常範囲にある場合は、ステップ16に移行し、この検出室内湿度が湿度正常範囲にない場合は、処理は終了する。
【0047】
ステップ17では、ステップ16に続いて、CU1に含まれる内部タイマにセットされた1分間の設定時間のカウントが開始される。
【0048】
ステップ18では、ステップ17に続いて、セットされた1分が経過したか否かが判断される。1分が経過していない場合は、1分が経過するまでステップ1〜ステップ18までの処理が繰り返される。このとき、タイマがリセットされない限り、ステップ17の処理は行われない。この1分が経過した場合は、ステップ19に移行する。
【0049】
ステップ19では、ステップ18に続いて、警告灯Aが点灯される。
【0050】
ステップ20では、ステップ19に続いて、エバポレータ321の温度制御が禁止される。
【0051】
ステップ21では、ステップ20に続いて、エバポレータ321の温度を一定温度に固定する。この温度は、検出室内湿度が湿度正常範囲にない状態が設定時間継続した後の温度である。
【0052】
ステップ22は、上記ステップ16において、このステップの条件を満たさないと判定された場合に実行され、スタイマの経過時間情報がリセットされる。
【0053】
ここで、上記構成のうち、EEPROM11は記憶手段に、GPSアンテナ26は日時情報受信手段に、このフローチャートにおけるステップ2は検出誤差推定手段に、ステップ4は検出湿度補正手段に、ステップ6〜11は推定可能条件判定手段に、ステップ14は湿度正常範囲決定手段に、ステップ15及び16は検出結果照合手段に、ステップ19は異常報知手段に、ステップ20及び21は温度制御禁止手段に相当する。
【0054】
図3は、この構成の湿度センサ異常検出システムのCU1内部の湿度センサ異常判定部において行われる湿度センサ22の異常判断の処理のうち、ステップ14における湿度正常範囲の決定の処理を示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。
【0055】
ステップ141では、エバポレータ出口側温度センサ23によって検出されたエバポレータ出口側温度が読み込まれる。
【0056】
ステップ142では、ステップ141に続いて、予めEEPROM11に記憶されているエバポレータ出口側湿度(エバポレータ321の出口側の直後の湿度)が読み込まれる。ここで、エバポレータ出口側湿度の最大値は、おおよそ95%であるという知見に基づいて、95%に設定している。
【0057】
ステップ143では、ステップ142に続いて、エバポレータ出口側水蒸気圧(エバポレータ321の出口側の直後の水蒸気圧)が算出される。この算出においては、「エバポレータ出口側湿度=(エバポレータ出口側水蒸気圧/エバポレータ出口側飽和水蒸気圧)×100」の関係を用いている。なお、エバポレータ出口側飽和水蒸気圧(エバポレータ出口側の直後の水上気圧)は、「エバポレータ出口側飽和水蒸気圧=6.1121×Exp(17.502×エバポレータ出口側温度/(エバポレータ出口側温度+240.9)」の関係を用いている。
【0058】
ステップ144では、ステップ143に続いて、室内温度センサ21による検出室内温度が読み込まれる。
【0059】
ステップ145では、ステップ144に続いて、ステップ144で読み込まれた検出室内温度を用いて室内の飽和水蒸気圧が算出される。この算出においては、「室内飽和水蒸気圧=6.1121×Exp(17.502×室内温度/(室内温度+240.9))」の関係を用いている。
【0060】
ステップ126では、ステップ125に続いて、ステップ123で算出されたエバポレータ出口側水蒸気圧と、ステップ124で算出された室内飽和水蒸気圧とを用いて室内湿度が算出される。この算出においては、「室内湿度≒(エバポレータ出口側水蒸気圧/室内飽和水蒸気圧)×100」の関係を用いている。
【0061】
ここで、室内湿度の近似式において、室内水蒸気圧としてエバポレータ出口側水蒸気圧を代用している。これは、エバポレータ出口側と室内とを含む空間が、閉じられた体系において連通している場合にあっては、エバポレータ出口側水蒸気圧と室内水蒸気圧は、空気温度にかかわらず同一の値となるからである。従って、同一の値として取り扱うことが適切でない場合は、即ち、内気循環モードでないか、ドアが閉鎖状態でないか、或は、窓が閉鎖状態でない場合は、室内湿度の推定は行わないようにしている(ステップ6〜8)。外気が混入し、エバポレータ出口側水蒸気圧と室内水蒸気圧とが一致せず室内湿度の推定精度が低下するためである。
【0062】
ステップ147では、ステップ146に続いて、ステップ146で算出された推定室内湿度に許容誤差として±10%が付加されて湿度正常範囲が決定される。
【0063】
次に、作用を説明する。
CU1の湿度センサ異常判定部において、GPSから現在の日時情報が取得され(ステップ1)、この現在の日時情報と、予めEEPROM11に記憶されている室内湿度センサ22の劣化開始時の日時情報とから、経年劣化による検出誤差(経年劣化誤差)が算出される(ステップ2)。
【0064】
そして、室内湿度センサ22による検出室内湿度が読み込まれ(ステップ3)、この検出室内湿度は、既に算出されている経年劣化誤差を用いて補正される(ステップ4)。このため、室内湿度センサ22による室内湿度の検出は、開封時の精度に近い精度で行われることになる。
【0065】
上記検出室内湿度の補正の処理(ステップ1〜4)が実行された後、ステップ5に移行する。ステップ5において、空調装置ONでないと判定された場合は、室内湿度センサ22の異常検出の処理は実行されないが、ステップ1〜ステップ4までの処理は常時実行されている。
即ち、室内湿度センサ22による検出室内湿度の補正は、室内湿度センサ22の異常判断とは独立して常時行われる。
【0066】
ステップ1〜ステップ4に続いて、ステップ5〜ステップ8までの処理が順次実行される。
【0067】
また、ステップ6〜ステップ8までの判定処理によって、外気が混入することで、室内水蒸気圧が変動し、室内水蒸気圧とエバポレータ出口側水蒸気圧との相違が大きくなって室内湿度の推定の精度が低下(室内湿度センサ22の異常判定の信頼性が低下)するような場合は、処理を終了し、室内湿度の推定の精度が低下しない場合に限って後続の室内湿度の推定処理が行われるになっている。前述したように、室内湿度センサ22の異常判断に用いられる推定室内湿度は、室内水蒸気圧とエバポレータ出口側水蒸気圧とが等しいとして、室内水蒸気圧に代用してエバポレータ出口側水蒸気圧が用いられて算出されることから、この代用による近似計算の精度を維持するためである。
【0068】
ここで、空調装置3が稼動し、内気循環モードであり、ドア及び窓の閉鎖状態が判定された場合であっても、空調装置3のON−OFF操作、内外気循環モードの切り換え、ドア或は窓の開閉操作が行われた場合は、しばらくは室内水蒸気圧が変動することによって、室内水蒸気圧に基づいて算出される推定室内湿度の精度が低下するおそれがある。しかしながら、ステップ10の判定処理によって、室内水蒸気圧が一定値に収束するまでに必要な時間として内部タイマにセットされた30分のカウント終了まで、ステップ5〜ステップ8までの判定処理が繰り返されることから、推定室内湿度の精度の低下は防止される。
【0069】
そして、前述の30分のカウントが終了するまでに実行されるステップ5〜ステップ8までの判定処理の実行中に、ステップ5〜ステップ8における各条件が満たされないと判定された場合、例えば、ドアが一時的であっても開放された場合は、タイマの経過時間情報はリセットされる。再びステップ5〜ステップ8における各条件をすべて満足したときは、ステップ9においてタイマにセットされた30分のカウントが開始される。
【0070】
ステップ10に続いて、ステップ12〜ステップ15までの処理が順次実行される。即ち、エバポレータ出口側温度が取得され(ステップ12)、室内温度が取得され(ステップ13)、これら両温度に応じた湿度正常範囲が決定され(ステップ14)、検出室内湿度(ステップ4で補正された検出室内湿度)と湿度正常範囲との比較が行われる(ステップ15)。
【0071】
検出室内湿度が室内正常範囲に存在する場合は、ステップ18に移行してタイマの経過時間情報はリセットされて処理は終了し、ステップ1から処理が再開される。
【0072】
検出室内湿度が湿度正常範囲に存在しない場合は、室内湿度センサ22は異常であると判断されるが、警告灯Aが点灯(ステップ19に移行)する前に、ステップ17によってタイマに設定された1分がカウント開始され、この1分がカウント終了するまでは、ステップ1〜ステップ17までの処理が繰り返される。
【0073】
このため、検出室内湿度が湿度正常範囲に存在しないとの判断が、ノイズによるものである可能性を低減するためであり、ステップ1〜ステップ17の1分間の反復処理が終了し、即ち、検出室内湿度が湿度正常範囲に存在しない状態が1分間続いている場合は、ステップ19において室内湿度センサ22の異常を乗員に知らせるための警告灯Aが点灯されることとなる。
【0074】
そして、警告灯Aが点灯された後、エバポレータ321の温度制御(コンプレッサ322の吐き出し量制御)が禁止され、エバポレータ321の冷媒温度が、警告灯Aの点灯処理の際の温度(前記1分間の経過後の温度)で固定される。
【0075】
次に、効果を説明する。
本実施例の湿度センサ異常検出システムにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0076】
(1)本発明の湿度センサ異常検出システムにあっては、室内湿度センサ22が正常であるか異常であるかは、検出結果照合手段(ステップ15及び16)によって、室内湿度センサ22で検出された室内の湿度(室内湿度)が湿度正常範囲にあるか否かによって判定される。
【0077】
そして、湿度正常範囲は、湿度正常範囲決定手段(ステップ141〜148)によって、室内湿度の検出の際の室内温度と、同じく室内湿度の検出の際のエバポレータ出口側温度を用いて推定された室内湿度(推定室内湿度)を基準にして決定される。
【0078】
このため、室内湿度の正常又は異常の判定に用いられる湿度正常範囲の決定に用いられる湿度正常範囲は、室内湿度検出時の室内湿度に応じて常に更新され、かつ、実際の室内湿度に近似した推定室内湿度に基づいたものであるから、検出結果判定手段による判定の信頼性が高いものとなる。
【0079】
(2)推定可能条件判定手段(ステップ6〜ステップ11)によって、内気循環モードであり、ドア及び窓が閉鎖状態であり、この状態が所定の設定時間(30分間)維持されている(推定可能条件が満たされている)と判定された場合、即ち、湿度正常範囲の精度が損なわれない場合に限り、湿度正常範囲決定手段(ステップ141〜148)によって、湿度正常範囲が決定されるため、さらに信頼性の高い異常検出が可能となる。
【0080】
(3)室内湿度センサ22の経年劣化誤差の増大によって実際の室内湿度を過小評価の割合が増大しても、検出室内湿度は、検出湿度補正手段(ステップ4)によって、劣化開始の日時情報と現在の日時情報とを用いて室内湿度センサ22の経年劣化誤差が補正される。このため、経年劣化誤差の増大によって検出室内湿度が湿度正常範囲を満たさなくなることが防止されることで警告灯Aの点灯時期が延長され、室内湿度センサ22の交換時期が延長される。
【0081】
また、劣化開始の日時情報と現在の日時情報とを用いて室内湿度センサ22の経年劣化誤差が補正されるため、CU1に通電されていない時間が加味された累積経年劣化を算出することができる。
【0082】
(4)GPSアンテナ26によって受信されるGPS情報の現在日時情報が常にCU1に入力されているため、経年劣化による検出誤差の補正は、常時正確な日時情報が用いられて検出精度も正確なものとなるとともに、乗員が現在の日時情報を手動で入力する必要もない。
【0083】
(5)湿度センサ異常判定部による室内湿度センサ22の異常が検出されている間は、温度制御禁止手段(ステップ21、22)によって、暫定的にエバポレータ321の温度制御(コンプレッサ322の吐き出し量制御)が禁止され、エバポレータ321の温度は、室内湿度センサ22の異常が検出された時点(警告灯Aの点灯時)の温度で維持される。このため、室内湿度センサ22の異常によって、室内湿度を用いて行われる冷暖房制御による結露の防止機能が有効に機能しなくなっても、結露の発生・増加を抑えることができる。
【0084】
(6)検出結果照合手段(ステップ14、15)によって、室内湿度センサ22が異常であると判定された場合は、異常報知手段(ステップ16)によって、異常を報知する警告灯Aが点灯されるため、乗員に対において室内湿度センサ22の交換時期の判断が容易となる。
【0085】
以上、実施例について説明したが、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
たとえば、予め実験若しくは上述した計算式を用いて、室内温度及びエバポレータ出口側温度に対応させて室内湿度を推定し、この室内湿度(推定室内湿度)を基準にして湿度正常範囲を決定し、これをテーブル値としてEEPROM11に記憶させておき、CU1の湿度センサ異常判定部の湿度正常範囲決定手段は、EEPROM11から、検出室内湿度の取得の際の検出室内温度及び検出エバポレータ出口側温度に対応する前記テーブル値を読み出し、検出結果判定手段によって、検出室内湿度が、テーブル値としての湿度正常範囲に存在するか否かを判定することで、室内湿度センサ22の異常の判定を行うようにしてもよい。
【0086】
この場合、例えば、同一の温度(エバポレータ出口側温度及び室内温度)条件下で室内湿度を複数回実測し、その平均値を推定室内湿度として、これに基づいて決定された湿度正常範囲をテーブル値とすることができる。このため、湿度正常範囲の精度を向上させ、室内湿度センサ22の異常判定の信頼性を向上させることができる。
【0087】
また、ステップ9においてカウントされるタイマ時間は、室内湿度の推定精度を考慮して任意に設定できる。同様に、ステップ17においてカウントされるタイマ時間は、ノイズによる誤判断を考慮して任意に設定できる。
【0088】
さらに、ステップ147の推定室内湿度の許容誤差は、室内湿度センサ22の異常判定の精度を考慮して任意に設定できる。
【0089】
そして、ステップ21でエバポレータ321の温度制御を禁止し、ステップ22で、エバポレータ321の温度を室内湿度センサ22の異常が検出された時点(警告灯Aの点灯時)の温度で固定しているが、これに代えて、デフロスタ吹き出し口における吹き出し量を増加させ、或は、この吹き出し口の空気温度を高めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】湿度センサ異常検出システムの全体構造を示す概略図である。
【図2】湿度センサ異常検出システムによる室内湿度センサの異常検出の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】室内湿度センサの異常検出に用いられる湿度正常範囲の決定の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
1 空調制御ユニット(湿度センサ異常判定部)
11 EEPROM(記憶手段)
26 GPSアンテナ(日時情報受信手段)
S2 検出誤差推定手段
S4 検出湿度補正手段
S6〜S11 推定可能条件判定手段
S14 湿度正常範囲決定手段
S15、S16 検出結果判定手段
S20 異常報知手段
S21、S22 温度制御禁止手段





























【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内湿度センサによって検出された検出室内湿度が、湿度正常範囲に存在するか否かを判定する検出結果判定手段と、
前記湿度正常範囲を、前記検出室内湿度の取得の際に室内温度センサによって検出された検出室内温度と、前記検出室内湿度の取得の際にエバポレータ出口側温度センサによって検出された検出エバポレータ出口側温度と、に応じた推定室内湿度を基準にして決定する湿度正常範囲決定手段と、を有し、
前記検出結果判定手段による判定の結果、前記検出室内湿度が前記湿度正常範囲に存在しない場合は、前記室内湿度センサの異常の判断を行う湿度センサ異常判定部を備えたことを特徴とする湿度センサ異常検出システム。
【請求項2】
前記湿度正常範囲決定手段は、前記検出室内温度を用いて算出された室内飽和水蒸気圧と、前記検出エバポレータ出口側温度を用いて算出されたエバポレータ出口側水蒸気圧と、を用いて前記推定室内湿度を推定することを特徴とする請求項1に記載の湿度センサ異常検出システム。
【請求項3】
予め実験若しくは計算式を用いて、室内温度及びエバポレータ出口側温度に対応させて室内湿度が推定されるとともに、該室内湿度を基準にして湿度正常範囲が決定され、
前記湿度センサ異常判定部は、前記湿度正常範囲を前記予め推定された室内湿度を基準にして決定された湿度正常範囲をテーブル値として記憶する記憶手段を有し、
前記湿度正常範囲決定手段は、前記記憶手段から、前記検出室内湿度の取得の際の前記検出室内温度及び前記検出エバポレータ出口側温度に対応する前記テーブル値を読み出し、
前記検出結果判定手段は、前記検出室内湿度が、前記読み出されたテーブル値としての湿度正常範囲に存在するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の湿度センサ異常検出システム。
【請求項4】
前記湿度センサ異常判定部は、前記推定室内湿度の精度が維持される推定可能条件を満たすか否かを判定する推定可能条件判定手段を有し、
前記検出結果判定手段は、前記推定可能条件判定手段によって前記湿度推定精度維持条件が満たされないと判定された場合は、前記判定を行わないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の湿度センサ異常検出システム。
【請求項5】
前記湿度センサ異常判定部は、現在の日時情報を電波受信する日時情報受信手段と、
前記日時情報を用いて、前記室内湿度センサの経年劣化による検出誤差を推定する検出誤差推定手段と、
前記検出誤差を用いて、前記検出室内湿度を補正する検出湿度補正手段と、を有し、
前記検出結果判定手段は、前記補正された検出室内湿度が、前記湿度正常範囲に存在するか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の湿度センサ異常検出システム。
【請求項6】
前記日時情報受信手段は、GPSから現在の日時情報を受信することを特徴とする請求項5に記載の湿度センサ異常検出システム。
【請求項7】
前記湿度センサ異常判定部は、前記検出結果判定手段によって前記検出室内湿度が前記湿度正常範囲に存在しないと判定された場合は、室内温度の制御を禁止するとともに、室内温度を所定の温度で維持する温度制御禁止手段を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の湿度センサ異常検出システム。
【請求項8】
前記検出結果判定手段によって前記検出室内湿度が前記湿度正常範囲に存在しないと判定された場合は、該異常を報知する異常報知手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の湿度センサ異常検出システム。





























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−216209(P2008−216209A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57668(P2007−57668)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】