説明

湿式成膜用ウレタン樹脂組成物、それを用いて得られる多孔体及び研磨パッドならびにそれらの製造方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、優れた柔軟性と、圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性と、湿熱環境下に一定期間放置された場合であっても前記特性を維持可能なレベルの耐久性とを備えた多孔体を形成可能な、もっぱら湿式成膜法による加工に適したウレタン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、脂肪族ポリエステルポリオールを含むポリオール(a1)と、芳香族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られるウレタン樹脂(A)、カルボジイミド化合物(B)及び有機溶剤(C)を含有する湿式成膜用ウレタン樹脂組成物であって、前記カルボジイミド化合物(B)が、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜5質量部の範囲で含まれることを特徴とする湿式成膜用ウレタン樹脂組成物、多孔体、研磨パッド及びその製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば合成皮革や人工皮革等の皮革様シートや透湿防水材料、研磨パッドをはじめとする様々な分野に使用可能な、もっぱら湿式成膜法による加工に適したウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂組成物は、良好な柔軟性や強度を備えた皮膜を形成できることから、従来から接着剤やコーティング剤、成形材料等の様々な用途で使用されている。なかでも、ポリウレタン樹脂組成物は、その良好な柔軟な風合いを活かし、例えば皮革様シートの中間層や表皮層をはじめ、衣服や透湿防水材料、研磨パッド等に使用される多孔体の製造に好適に使用されている。
【0003】
前記ポリウレタン樹脂組成物を用いて多孔体を製造する方法としては、従来から乾式法と湿式法とが知られている。
【0004】
前記乾式法による多孔体の形成方法としては、例えば沸点が120℃以下で25℃における水の溶解度が1〜50gである有機媒体と、所定量のポリオキシエチレン基を有するポリウレタン系重合体と水とからなる油中水型の混合分散液を被覆等した基材を、短時間、特定の凝固剤と接触させることによって、微多孔性シートを形成する方法が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、乾式法は、通常、多孔体の製造に使用する有機溶剤の回収が困難であるため、昨今の環境負荷低減の観点から好ましい方法ではなかった。また、乾式法によって得られる多孔体は、比較的大きな孔を形成しにくく多孔体の低密度化が困難であるため、柔軟性の点で十分でない場合があった。
【0006】
一方、湿式法による多孔体の形成方法としては、例えば透湿防水加工用ウレタン樹脂とジメチルホルムアミドと架橋剤等とを含有する樹脂配合液を基材上に塗布し、ジメチルホルムアミドの10%水溶液中に浸漬し凝固させる湿式防水加工布の製造法が知られている(例えば特許文献2参照。)。前記湿式法は、多孔体の製造に使用する有機溶剤の回収手段がある程度確立し、かつ、得られる多孔体表面のピンホールや皮張りの発生を防止できるため、多孔体の好適な製造方法として様々な用途で実施されている。
【0007】
しかし、前記特許文献2に具体的に記載されたエーテル系ウレタン樹脂を用いた場合も、孔が大きく良好な柔軟性を備えた多孔体を形成できない場合があった。また、前記多孔体に圧力を加え、該多孔体を圧縮した状態で一定期間放置し、次いで該圧力から開放した場合に、前記孔がもとの形状及び大きさに回復せず、多孔体の厚みが経時的に小さくなる等の点で問題があった。
一方、前記多孔体を製造する際には、前記エーテル系ウレタン樹脂とともに架橋剤を組み合わせ使用する場合があり、かかる架橋剤としてはイソシアネート系架橋剤をはじめ様々なものが知られている。
しかし、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いる場合には、多孔体を形成できないか、または形成できても非常に硬く、本願発明が課題とする優れた柔軟性等を有するものではなかった。
【0008】
とりわけ、研磨パッドには、研磨対象の表面形状に対応可能なレベルの柔軟性や、圧力から開放された際に、前記孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性が求められる。また、研磨パッドには、研磨の際の摩擦熱や水分、在庫の際の気温や湿度等の影響によって起こりうる研磨パッドの劣化、具体的には、多孔体が圧力から開放された際に前記孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性の低下を引き起こさないレベルの耐久性が求められる。
【0009】
しかし、前記文献1及び2に記載の組成物では、例えば前記研磨パッド用途に使用可能なレベルの柔軟性や耐久性を付与できない場合がある。そのため、それらを両立可能な多孔体を形成しうるウレタン樹脂組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭51−41063号公報
【特許文献2】特開2007−169486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、優れた柔軟性と、圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性と、湿熱環境下に一定期間放置された場合であっても前記特性を維持可能なレベルの耐久性とを備えた多孔体を形成可能な、もっぱら湿式成膜法による加工に適したウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討を進めた結果、特定のエステル構造を有するウレタン樹脂と特定の架橋剤と有機溶剤とを含有するウレタン樹脂組成物を、湿式成膜法で加工することによって、優れた柔軟性と、圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性と、湿熱環境下に一定期間放置された場合であっても前記特性を維持可能なレベルの耐久性とを備えた多孔体等を製造できることを見出した。
【0013】
即ち、本発明は、脂肪族ポリエステルポリオールを含むポリオール(a1)と、芳香族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られるウレタン樹脂(A)、カルボジイミド化合物(B)及び有機溶剤(C)を含有する湿式成膜用ウレタン樹脂組成物であって、前記カルボジイミド化合物(B)が、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜5質量部の範囲で含まれることを特徴とする湿式成膜用ウレタン樹脂組成物、多孔体、研磨パッド及びその製造方法に関するものである。
【0014】
なお、本発明で得られた多孔体の「多孔」は、前記ウレタン樹脂組成物を湿式法により凝固させれば自ずと得られる程度の多数の孔、及び、該孔に起因した柔軟性を有するものであることを指す。
【発明の効果】
【0015】
本発明のウレタン樹脂組成物であれば、湿式成膜法で加工することによって、優れた柔軟性と、圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性とを両立した多孔体を形成できる。前記多孔体は、例えば衣料や車両シート、家具シート、靴、鞄等に使用される合成皮革や人工皮革等の皮革様シートの表皮層や中間層、研磨パッド、研磨用バックパッド、手術衣やベットシーツ等の医療衛生材料、防風・防水シートや結露防止シート等の建材用シート、乾燥剤や除湿剤や芳香剤等の包装材料、農業用シート、各種セパレータ、パッキン等を構成する中間層は表皮層等の様々な用途に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、脂肪族ポリエステルポリオールを含むポリオール(a1)と、芳香族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られるウレタン樹脂(A)、カルボジイミド化合物(B)、有機溶剤(C)、及び必要に応じてその他の添加剤を含有するウレタン樹脂組成物であって、前記カルボジイミド化合物(B)が、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜5質量部の範囲で含まれるウレタン樹脂組成物のうち、もっぱら湿式成膜法による加工に好適に使用可能なものである。
【0017】
ここで、前記湿式成膜法は、前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を、基材表面に塗布または含浸し、次いで、該塗布面または含浸面に水や水蒸気等を接触させることによって前記ウレタン樹脂(A)を凝固させ多孔体を製造する方法である。
【0018】
本発明の湿式成膜用ウレタン樹脂組成物は、もっぱら、前記湿式成膜法によって多孔体を製造する際に、好適に使用することができる。とりわけ、優れた柔軟性と、圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性と、湿熱環境下に一定期間放置された場合であっても前記特性を維持可能なレベルの耐久性とを備えた多孔体を、前記湿式成膜法によって製造する際に、好適に使用することができる。
【0019】
前記ウレタン樹脂(A)としては、脂肪族ポリエステルポリオールを含むポリオール(a1)と、芳香族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られるウレタン樹脂を使用することが必須である。
【0020】
ここで、前記ウレタン樹脂(A)の代わりに、例えばポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールと、芳香族ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタン樹脂を使用して得られたウレタン樹脂組成物では、柔軟性に優れた多孔体を形成できない場合がある。
【0021】
また、前記ウレタン樹脂(A)の代わりに、脂肪族ポリエステルポリオールを含むポリオール(a1)と、脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタン樹脂を使用して得られたウレタン樹脂組成物では柔軟性に優れた多孔体を形成できない場合がある。
【0022】
前記ウレタン樹脂(A)としては、5000〜500000の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、50000〜300000の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましく、100000〜250000の重量平均分子量を有するものを使用することが、多孔体の前記耐久性の向上、及び、湿式成膜の加工のし易さを向上するうえで、より好ましい。
【0023】
前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用可能なポリオール(a1)としては、脂肪族ポリエステルポリオールを必須成分として使用し、必要に応じてその他のポリオールを組み合わせ使用することができる。
【0024】
前記脂肪族ポリエステルポリオールとしては脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものを使用することができる。
【0025】
前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール(数平均分子量300〜6000の範囲)、ポリプロピレングリコール(数平均分子量300〜6000の範囲)、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(数平均分子量300〜6000の範囲);水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキサイド付加体;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリストール、ソルビトール等を使用することができる。
【0026】
前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びこれらのポリカルボン酸の無水物あるいはエステル形成誘導体等を使用することができる。
【0027】
前記脂肪族ポリエステルポリオールとしては、湿式成膜法によって柔軟な多孔体を形成するうえで、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールからなる群より選ばれる1種以上の脂肪族ポリオールと、アジピン酸を含む脂肪族ポリカルボン酸とを反応させて得られるものを使用することが好ましい。
【0028】
前記脂肪族ポリエステルポリオールとしては、湿式成膜法によって柔軟な多孔体を形成するうえで、500〜5000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、1000〜3500のものを使用することがより好ましい。
【0029】
また、前記脂肪族ポリエステルポリオールとしては、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル、及びこれらの共重合ポリエステル等を使用することもできる。
【0030】
前記脂肪族ポリエステルポリオールは、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の合計質量に対して、40質量%〜85質量%の範囲で使用することが、湿式成膜法によって柔軟な多孔体を形成するうえで好ましい。
【0031】
また、前記ポリオール(a1)としては、前記脂肪族ポリエステルポリオールの他に、さらに、必要に応じてその他のポリオールを使用することができる。
【0032】
前記その他のポリオールとしては、芳香族ポリエステルポリオールや、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができるが、湿式成膜法によって柔軟な多孔体を形成する観点から、その使用量は、前記ポリオール(a1)の全量に対して30質量%以下であることが好ましい。
【0033】
前記芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸や、ビスフェノールA等の芳香族ポリオールとをエステル化反応して得られるものや、それらと前記脂肪族ポリオールや脂肪族ポリカルボン酸とを組み合わせエステル化反応して得られるもの等を使用することができる。
【0034】
前記その他のポリオールに使用可能なポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0035】
前記開始剤としては、例えばプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、水、ヘキサントリオール等を使用することができる。
【0036】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えばプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0037】
また、炭酸と脂肪族系多価アルコールとをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のようなジオール類と、ジメチルカーボネート等によって代表されるようなジアルキルカーボネート或いはエチレンカーボネート等によって代表されるような環式カーボネートとの反応生成物などが挙げられる。
【0038】
また、前記ポリオール(a1)に使用可能なその他のポリオールとしては、従来から鎖伸長剤に使用される分子量が約40〜200程度の比較的低分子量のポリオールを使用することもでき、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールへプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)へプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ハイドロキノンジエチロールエーテル等の多価アルコール、アミン化合物、アミノ酸、アルカノールアミン、シリコーン変性化合物等を使用することができ、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールを使用することが好ましい。
【0039】
前記比較的低分子量のポリオールは、湿式成膜法により柔軟な多孔体を形成するうえで、ポリオール(a1)の全量に対して3質量%〜30質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0040】
また、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリイソシアネート(a2)としては、芳香族ポリイソシアネートを必須成分とし、必要に応じてその他のポリイソシアネートを組み合わせ使用することができる。
【0041】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアネート(2,4−TDI)、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート(2,6−TDI)、1−メチル−2,5−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−3,5−フェニレンジイソシアネート、1−エチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−イソプロピル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−4,6−フェニレンジイソシアネート、1,4−ジメチル−2,5−フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1−メチル−3,5−ジエチルベンゼンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ジエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3,5−トリエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、1−メチル−ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、ナフタレン−2,7−ジイソシアネート、1,1−ジナフチル−2,2’−ジイソシアネート、ビフェニル−2,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3−3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4−MDI)、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート(2,2−MDI)、ジフェニルメタン−2,4−ジイソシアネート(2,4−MDI)等を使用することができる。
【0042】
なかでも、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4−MDI)を使用することが、圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性に優れた柔軟な多孔体を形成するうえで好ましい。
【0043】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばテトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4H−MDI)、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(2,4−H−MDI)、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(2,2−H−MDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等及びこれらの3量体等を使用することができる。
【0044】
前記ウレタン樹脂(A)は、例えば無溶剤下または後述する有機溶剤(C)の存在下で、前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)とを混合し反応させることによって製造することができる。
【0045】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際に前記比較的低分子量のポリオールを鎖伸長剤として使用する場合、前記鎖伸長剤は前記ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを混合する際に使用し反応させてもよく、また、前記ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させ分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造した後、該ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを混合し反応させてもよい。
【0046】
前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)との反応は、前記ポリオール(a1)の有する水酸基と前記ポリイソシアネート(a2)の有するイソシアネート基との当量割合[イソシアネート基/水酸基]が0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1であることがより好ましい。
【0047】
前記方法で得られたウレタン樹脂(A)は、有機溶剤(C)に溶解または分散したものであることが好ましく、ウレタン樹脂(A)の一部または全部が前記有機溶剤(C)に溶解したものであることが好ましい。
【0048】
次に、本発明で使用するカルボジイミド化合物(B)について説明する。
前記カルボジイミド化合物(B)は、得られる多孔体に良好な柔軟性と、圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性とを付与するうえで必須成分であり、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部〜5質量部の範囲で使用することが重要である。
【0049】
ここで、前記使用量が0.1質量部未満であると、カルボジイミド化合物(B)を使用する効果が得られず、また、前記使用量が5質量部を超えると、湿式成膜法により形成される多孔体のセル孔が加工過程で潰れやすく、孔形状を維持できない場合がある。
【0050】
したがって、前記カルボジイミド化合物(B)は、前記範囲内で使用することが必須であり、0.3質量部〜3質量部の範囲で使用することが特に好ましい。
【0051】
本発明で使用するカルボジイミド化合物(B)は、ポリイソシアネートを用い、脱二酸化炭素を伴う縮合反応することによって得られるものであることが好ましい。
【0052】
前記カルボジイミド化合物(B)の製造に使用するポリイソシアネートとしては、例えばテトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4H−MDI)、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(2,4−H−MDI)、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(2,2−H−MDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアネート(2,4−TDI)、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート(2,6−TDI)、1−メチル−2,5−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−3,5−フェニレンジイソシアネート、1−エチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−イソプロピル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−4,6−フェニレンジイソシアネート、1,4−ジメチル−2,5−フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1−メチル−3,5−ジエチルベンゼンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ジエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3,5−トリエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、1−メチル−ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、ナフタレン−2,7−ジイソシアネート、1,1−ジナフチル−2,2’−ジイソシアネート、ビフェニル−2,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3−3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4−MDI)、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート(2,2−MDI)、ジフェニルメタン−2,4−ジイソシアネート(2,4−MDI)等を使用することができる。
【0053】
前記ポリイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応は、2個のイソシアネート基間の反応であって、結合(−N=C=N−)を形成する反応である。その際、二酸化炭素が生成される。
【0054】
前記反応は、例えば前記ポリイソシアネートを有機リン系触媒の存在下で100〜200℃で加熱しながら攪拌し、窒素気流とともに二酸化炭素を反応系外へ除去することで行うことができる。
【0055】
前記カルボジイミド化合物(B)としては、前記ポリイソシアネートとしてキシリレンジイソシアネートまたはテトラメチルキシリレンジイソシアネートを使用し、それらの脱二酸化炭素縮合物を使用することが、多孔体の面方向の幅(厚み方向)に長く発達した孔を形成した多孔体が得られる点で好ましい。多孔体の面方向の幅(厚み方向)に長く発達した孔を形成した多孔体は、優れた柔軟性とともに適度な弾力を有し、かつ圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性を有するため、例えば研磨パッド等の用途に好適に使用することができる。
また、前記カルボジイミド化合物(B)としては、具体的には、ポリ[フェニレンビス(ジメチルメチレン)カルボジイミド]やポリ(メチル−1,3−フェニレンカルボジイミド)等を使用することができる。カルボジイミド化合物(B)としては、例えば日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライトV−07やV−09等を使用することができる。
【0056】
また、前記カルボジイミド化合物(B)としては、湿式成膜で密度が小さい柔軟な多孔体を得るうえで、数平均分子量1000〜5000程度の、一般にオリゴマーやポリマーと称されうるものを使用することが好ましい。
【0057】
次に、本発明で使用する有機溶剤(C)について説明する。
本発明では、前記ウレタン樹脂(A)等を用いて湿式成膜法により多孔体を製造する際に使用する有機溶剤(C)として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンや、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤や、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル等のエステル系溶剤等を使用することができる。
【0058】
なかでも、N,N−ジメチルホルムアミドを使用することが、ウレタン樹脂の溶解性と水への溶解性が高く、かつ、熱風で乾燥することにより除去しやすいためで好ましい。有機溶剤(C)としては、前記有機溶剤(C)全量に対して70質量%以上のN,N−ジメチルホルムアミドを含むものを使用することが特に好ましい。
【0059】
前記有機溶剤(C)は、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際に反応溶媒として使用することもできる。
【0060】
前記有機溶剤(C)は、本発明で使用する前記ウレタン樹脂(A)及び前記カルボジイミド化合物(B)の合計量に対して、200質量%〜900質量%の範囲で使用することが好ましく、300質量%〜700質量%の範囲であることがより好ましい。
【0061】
本発明で使用する湿式成膜用ウレタン樹脂組成物は、例えば無溶剤下で製造した前記ウレタン樹脂(A)と、前記カルボジイミド化合物(B)と前記有機溶剤(C)とを混合することによって製造することができる。また、有機溶剤(C)の存在下で前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)等とを反応させることによって、ウレタン樹脂(A)と有機溶剤(B)との混合物を製造した場合には、該混合物と前記カルボジイミド化合物(B)とを混合したものを使用することができる。
【0062】
前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物は、前記したものの他に、必要に応じてその他の添加剤を含有していても良い。
【0063】
前記添加剤としては、例えば有機系顔料、無機系顔料によって着色されていても良く、必要に応じて更に、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、可塑剤、軟化剤、安定剤、ワックス、消泡剤、分散剤、浸透剤、界面活性剤、各種フィラー、防黴剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、蛍光増白剤、老化防止剤、増粘剤などの通常使用される添加剤を本発明の効果を阻害しない範囲で使用することができる。
【0064】
前記方法で得られた湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を用い、湿式成膜法によって多孔体を製造する方法としては、例えば、基材表面に前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を塗布または含浸させ、次いで、該塗布面に水または水蒸気を接触させることにより、前記ウレタン樹脂組成物中に含まれるウレタン樹脂(A)を湿式法によって凝固させ多孔体を形成し、次いで、必要に応じて多孔体表面を水や温水を用いて洗浄し、乾燥することによって製造する方法が挙げられる。
【0065】
前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を塗布等する基材としては、不織布や織布、編み物からなる基材や樹脂フィルム等を使用することができる。前記基材を構成するものとしては、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維や、綿、麻、絹、羊毛や、それらの混紡繊維等を使用することができる。
【0066】
前記基材の表面には、必要に応じ制電加工や離型処理加工、撥水加工、吸水加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮断加工等が施されていてもよい。
【0067】
前記基材表面に前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を塗布または含浸する方法としては、例えば、グラビアコーター法やナイフコーター法、パイプコーター法、コンマコーター法が挙げられる。その際、ウレタン樹脂組成物の粘度を調整し塗工作業性等を向上する観点から、必要に応じて有機溶剤(C)の使用量を調節して良い。
【0068】
前記方法で塗布または含浸された湿式成膜用ウレタン樹脂組成物からなる塗膜の膜厚は、0.5mm〜5.0mm程度であることが好ましく、0.5mm〜3mm程度であることがより好ましい。
【0069】
前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物が塗布または含浸され形成した塗布面に水または水蒸気を接触させる方法としては、例えば前記ウレタン樹脂組成物からなる塗布層や含浸層の設けられた基材を水浴中に浸漬する方法や、前記塗布面上にスプレー等を用いて水を噴霧する方法等が挙げられる。前記浸漬は、5〜60℃程度の水浴中に、2分〜20分程度行うことが好ましい。
【0070】
前記方法によって形成された多孔体は、必要に応じて、常温の水や温水を用いてその表面を洗浄して有機溶剤(C)を抽出除去し、次いで乾燥することが好ましい。前記洗浄は5〜60℃程度の水で20〜120分程度行なうことが好ましく、洗浄に使用する水は1回以上入れ替えるか、あるいは、流水で連続して入れ替えるのが好ましい。前記乾燥は、80℃〜120℃程度に調整した乾燥機等を用い、10〜60分程度行うことが好ましい。
【0071】
以上の方法によって得られた多孔体は、面の厚さ方向に長い紡錘形または涙滴形の多孔構造を有する。前記孔の大きさは、用途に応じて適宜調整できるが、優れた柔軟性と耐久性を両立する観点から、面方向の幅(厚み方向)が最も大きい部分で直径1μm〜10μmのものであることが好ましい。本発明で得られた多孔体は、孔が厚さ方向に長く、面方向には直径が揃ったものであるため、柔軟かつ厚さ方向への圧縮に対して適度な弾力を有し、研摩パッドとして好適に利用できる。前記多孔体の厚みは、概ね0.45mm〜1.0mm程度の比較的厚膜であることが、研磨パッド等の用途で使用するうえで好適であり、0.45mm〜0.7mmであることがより好ましい。
【0072】
以上のように、本発明の湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を用いて得られた多孔体は、優れた柔軟性と、耐加水分解性と耐アルカリ性等の耐久性とを両立できることから、例えば衣料や車両シート、家具シート、靴、鞄等に使用される合成皮革や人工皮革等の皮革様シート、研磨パッド、手術衣やベットシーツ等の医療衛生材料、防風・防水シートや結露防止シート等の建材用シート、乾燥剤や除湿剤や芳香剤等の包装材料、農業用シート、各種セパレータ、パッキン等を構成する中間層は表皮層等の様々な用途に使用することが可能である。
【0073】
なかでも、本発明の多孔体は、ハードディスクプラッタ用のガラスや金属、フラットパネルディスプレイ用のガラス、シリコンウエーハなどの平坦化加工の用途で、研磨加工および対象物の固定に使用される研磨パッドに好適に使用することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明する。
【0075】
[実施例1]
攪拌機、凝縮還流器、温度計を有する反応装置に、エチレングリコールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール(数平均分子量2000)を102.7質量部、1,4−ブタンジオールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール(数平均分子量3000)を102.7質量部、エチレングリコールを14.4質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを699.0質量部および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを80.2質量部投入し、攪拌下60℃で6時間反応させ、引き続きイソプロピルアルコールを1.0質量部投入してさらに60℃で1時間攪拌することによってウレタン樹脂(i)の溶液(I)を得た。
ウレタン樹脂(i)溶液(I)は、不揮発分が30質量%、粘度が55Pa・sであり、ウレタン樹脂(i)のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレンを標準試料とする重量平均分子量は151000であった。
【0076】
ウレタン樹脂(i)溶液(I)を333質量部、ポリ[フェニレンビス(ジメチルメチレン)カルボジイミド]のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(不揮発分50質量%)を2質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを222質量部、無機系顔料としてダイラックL−5442(DIC株式会社製)を33重量部、界面活性剤としてクリスボンアシスターSD−7(DIC株式会社製)を9質量部及びクリスボンアシスターSD−11(DIC株式会社)を6質量部、を混合することによって、湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(1)を得た。
【0077】
(多孔体の作製)
厚さ0.25mmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(1)をフィルムアプリケーター用いて、塗布膜厚が約1.2mmとなるように塗布し、次いで、前記塗布物を25℃に調整した水中に10分間浸漬することによって、前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(1)中に含まれるウレタン樹脂(i)を湿式凝固させた。
【0078】
次いで、前記塗布物を、50℃に調整した温水に120分間浸漬することでその表面を洗浄した後、100℃に調整した熱風乾燥機を用いて20分間乾燥させることによって、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された多孔体(1)を得た。
【0079】
(研磨パッドの作製)
前記で得た多孔体(1)を構成するポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面に両面テープ(ダイタック8800HC(DIC株式会社製))を貼り付けることによって、研摩パッド(1)を得た。
【0080】
[実施例2]
攪拌機、凝縮還流器、温度計を有する反応装置に、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール(数平均分子量2000)を95.9質量部、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール(数平均分子量3000)を95.9質量部、1,6−ヘキサンジオールを28.0質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを699.0質量部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを80.1質量部混合し、攪拌下60℃で6時間反応させ、引き続きイソプロピルアルコールを1.0質量部投入してさらに60℃で1時間攪拌することによってウレタン樹脂(ii)の溶液(II)を得た。
ウレタン樹脂(ii)溶液(II)は、不揮発分が30質量%、粘度が45Pa・s、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレンを標準試料とする重量平均分子量は145000であった。また、前記ウレタン樹脂(i)溶液(I)の代わりに、ウレタン樹脂(ii)溶液(II)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(2)、多孔体(2)及び研磨パッド(2)を得た。
【0081】
[実施例3]
ウレタン樹脂(i)溶液(I)を333質量部、ポリ[フェニレンビス(ジメチルメチレン)カルボジイミド]のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(不揮発分50質量%)を8質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを222質量部、無機系顔料としてダイラックL−5442(DIC株式会社製)を33重量部、界面活性剤としてクリスボンアシスターSD−7(DIC株式会社製)を9質量部及びクリスボンアシスターSD−11(DIC株式会社製)を6質量部、を混合することによって湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(3)を得た。また、前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(1)の代わりに、湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(3)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、多孔体(3)及び研磨パッド(3)を得た。
【0082】
[実施例4]
ウレタン樹脂(i)溶液(I)を333質量部、ポリ(メチル−1,3−フェニレンカルボジイミド)のトルエン溶液(不揮発分50質量%)を2質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを222質量部、無機系顔料としてダイラックL−5442(DIC株式会社製)を33重量部、界面活性剤としてクリスボンアシスターSD−7(DIC株式会社製)を9質量部及びクリスボンアシスターSD−11(DIC株式会社製)を6質量部、を混合することによって湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(4)を得た。また、前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(1)の代わりに、湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(4)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、多孔体(4)及び研磨パッド(4)を得た。
【0083】
[比較例1]
ウレタン樹脂溶液(I)を333質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを222質量部、無機系顔料としてダイラックL−5442(DIC株式会社製)を33重量部、界面活性剤としてクリスボンアシスターSD−7(DIC株式会社製)を9質量部及びクリスボンアシスターSD−11(DIC株式会社製)を6質量部、を混合することによって湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(1’)を得た。また、前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(1)の代わりに、湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(1’)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、多孔体(1’)及び研磨パッド(1’)を得た。
【0084】
[比較例2]
ウレタン樹脂溶液(I)を333質量部、メチル−1,3−フェニレンジイソシアネートのアダクト体の酢酸エチル溶液(不揮発分75質量%)を1.3質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを222質量部、無機系顔料としてダイラックL−5442(DIC株式会社製)を33重量部、界面活性剤としてクリスボンアシスターSD−7(DIC株式会社製)を9質量部及びクリスボンアシスターSD−11(DIC株式会社製)を6質量部、を混合することによって湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(2’)を得た。また、前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(1)の代わりに、湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(2’)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、多孔体(2’)及び研磨パッド(2’)を得た。なお、前記多孔体(2’)及び研磨パッド(2’)は微細な孔構造を形成しているため厚膜な多孔体を形成できない場合があり、実施例1等で得られた多孔体(1)等と比較して薄膜のものであった。
【0085】
[比較例3]
攪拌機、凝縮還流器、温度計を有する反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)を102.7質量部、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量3000)を102.7質量部、エチレングリコールを14.4質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを699.0質量部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを80.2質量部投入し、攪拌下60℃で6時間反応させ、引き続きイソプロピルアルコールを1.0質量部投入してさらに60℃で1時間攪拌することによってウレタン樹脂(iii)の溶液(III)を得た。
前記ウレタン樹脂(iii)溶液(III)は、不揮発分が30質量%、粘度が40Pa・s、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレンを標準試料とする重量平均分子量は145000であった。また、前記ウレタン樹脂(i)溶液(I)の代わりに、ウレタン樹脂(iii)溶液(III)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(3’)、多孔体(3’)及び研磨パッド(3’)を得た。なお、前記多孔体(3’)等は微細な孔構造を形成しているため厚膜な多孔体を形成できない場合があり、実施例1等で得られた多孔体(1)等と比較して薄膜のものであった。
【0086】
[比較例4]
攪拌機、凝縮還流器、温度計を有する反応装置に、1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネートジオール(数平均分子量2000)を102.7質量部、1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネートジオール(数平均分子量3000)を102.7質量部、エチレングリコールを14.4質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを699.0質量部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを80.2質量部投入し、攪拌下60℃で6時間反応させ、引き続きイソプロピルアルコールを1.0質量部投入してさらに60℃で1時間攪拌することによってウレタン樹脂(iv)の溶液(IV)を得た
ウレタン樹脂(iv)溶液(IV)は、不揮発分が30質量%、粘度が60Pa・s、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレンを標準試料とする重量平均分子量は145000であった。また、前記ウレタン樹脂(i)溶液(I)の代わりに、ウレタン樹脂(iv)溶液(IV)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(4’)、多孔体(4’)及び研磨パッド(4’)を得た。なお、前記多孔体(4’)等は微細な孔構造を形成しているため厚膜な多孔体を形成できない場合があり、実施例1等で得られた多孔体(1)等と比較して薄膜のものであった。
【0087】
[比較例5]
攪拌機、凝縮還流器、温度計を有する反応装置に、エチレングリコールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール(数平均分子量2000)を112.6質量部、1,4−ブタンジオールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール(数平均分子量3000)を112.6質量部、エチレングリコールを15.8質量部、N,N−ジメチルホルムアミドを699.0質量部、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを59.1質量部投入し、攪拌下60℃で9時間反応させ、引き続きイソプロピルアルコールを1.0質量部投入し、さらに60℃で1時間攪拌することによってウレタン樹脂(i’)の溶液(I’)を得た。前記ウレタン樹脂(i’)の溶液(I’)は、不揮発分が30質量%、粘度が38Pa・s、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレンを標準試料とする重量平均分子量は136000であった。
また、前記ウレタン樹脂(i)溶液(I)の代わりに、ウレタン樹脂(i’)溶液(I’)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、湿式成膜用ウレタン樹脂組成物(5’)、多孔体(5’)及び研磨パッド(5’)を得た。なお、前記多孔体(5’)等は微細な孔構造を形成しているため厚膜な多孔体を形成できない場合があり、実施例1等で得られた多孔体(1)等と比較して薄膜のものであった。
【0088】
研磨パッドの柔軟性と、圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性との評価は、それらの特性が実質的に、ウレタン樹脂組成物が凝固して形成された多孔層の特性に起因するものであることから、前記で得た研磨パッドからポリエチレンテレフタレートフィルム及び両面テープを取り除いた、前記湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を用いて得られた多孔体を用いて行った。
[柔軟性の評価方法]
前記で得た多孔体の厚みを、厚さ測定器CR−10A(株式会社大栄科学精機製作所製)を用いて測定した。前記厚みの測定は、前記多孔体に1.96kPaの荷重が加えられた状態で1分間放置した後に行った(厚み1)。したがって、前記測定で得られた多孔体の厚みは、1.96kPaの荷重が加えられた状態の厚みを示す。
次に、23.5kPaの荷重が加えられた状態で1分間放置した後の、多孔体の厚みを、前記と同様の厚さ測定器を用いて行った(厚み2)。
前記(厚み2)の値が、前記(厚み1)の値に対して60%以下であったものを「○」と評価し、特に55%以下であったものを「◎」と評価した。一方、前記(厚み2)の値が、前記(厚み1)の値に対して60%を超えるものを「△」と評価し、特に70%を超えるものを「×」と評価した。
【0089】
[圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性の評価方法(特性1)]
前記で得た多孔体の厚みを、厚さ測定器CR−10A(株式会社大栄科学精機製作所製)を用いて測定した。前記厚みの測定は、前記多孔体に1.96kPaの荷重が加えられた状態で1分間放置した後に行った(厚み1)。したがって、前記測定で得られた多孔体の厚みは、1.96kPaの荷重が加えられた状態の厚みを示す。
次に、23.5kPaの荷重が加えられた状態で1分間放置した後の多孔体の厚みを、前記と同様の厚さ測定器を用いて行った(厚み2)。
次に、前記荷重を当初の1.96kPaに戻し、1分間放置した後の多孔体の厚みを、前記と同様の厚さ測定器を用いて行った(厚み3)。
前記(厚み3)の値が、前記(厚み1)の値に対して95%以上であったものを「◎」と評価し、90%以上95%未満であったものを「○」と評価した。一方、前記(厚み3)の値が、前記(厚み1)の値に対して80%以上90%未満であるものを「△」と評価し、特に80%に満たないものを「×」と評価した。
【0090】
[湿熱環境下に放置した多孔体が圧力から開放された際に孔がもとの形状及び大きさに回復しうる特性の評価方法(特性2)]
前記で得た多孔体を、40℃及び95%Rhに調整した湿熱試験機内に7日間保存した後、40℃に調整した熱風乾燥機を用いて4時間乾燥した。
次いで、25℃の常温環境下に20時間静置した多孔体の厚みを、厚さ測定器CR−10A(株式会社大栄科学精機製作所製)を用いて測定した。前記厚みの測定は、前記多孔体に1.96kPaの荷重が加えられた状態で1分間放置した後に行った(厚み4)。したがって、前記測定で得られた多孔体の厚みは、1.96kPaの荷重が加えられた状態の厚みを示す。
次に、23.5kPaの荷重が加えられた状態で1分間放置した後の多孔体の厚みを、前記と同様の厚さ測定器を用いて行った(厚み5)。
次に、前記荷重を当初の1.96kPaに戻し、1分間放置した後の多孔体の厚みを、前記と同様の厚さ測定器を用いて行った(厚み6)。
前記(厚み6)の値が、前記(厚み3)の値に対して95%以上であったものを「◎」と評価し、90%以上95%未満であったものを「○」と評価した。一方、前記(厚み6)の値が、前記(厚み3)の値に対して80%以上90%未満であるものを「△」と評価し、特に80%に満たないものを「×」と評価した。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステルポリオールを含むポリオール(a1)と、芳香族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られるウレタン樹脂(A)、カルボジイミド化合物(B)及び有機溶剤(C)を含有する湿式成膜用ウレタン樹脂組成物であって、前記カルボジイミド化合物(B)が、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜5質量部の範囲で含まれることを特徴とする湿式成膜用ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステルポリオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールからなる群より選ばれる1種以上を含む脂肪族ポリオールと、アジピン酸を含む脂肪族ポリカルボン酸とを反応させて得られるものである、請求項1に記載の湿式成膜用ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボジイミド化合物(B)が、キシリレンジイソシアネートまたはテトラメチルキシリレンジイソシアネートの脱二酸化炭素縮合物を含むものである、請求項1に記載の湿式成膜用ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤(C)が、前記有機溶剤(C)全体に対して70質量%以上のN,N−ジメチルホルムアミドを含むものである、請求項1に記載の湿式成膜用ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を用い、湿式成膜法によって加工して得られる多孔体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を用い、湿式成膜法によって加工して得られる研磨用パッド。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を基材表面に塗布または含浸し、次いで、該塗布面または含浸面に、水または水蒸気を接触させることを特徴とする多孔体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の湿式成膜用ウレタン樹脂組成物を基材表面に塗布または含浸し、次いで、該塗布面または含浸面に、水または水蒸気を接触させることを特徴とする研磨用パッドの製造方法。

【公開番号】特開2012−102182(P2012−102182A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249681(P2010−249681)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】