説明

湿式画像形成装置および湿式画像形成方法

【課題】数分程度の一旦停止後の動作初期においても、あるいは、1日以上経過した長期停止後の動作初期においても、筋発生が少ない湿式画像形成装置および画像形成方法を提供する。
【解決手段】感光体と、当該感光体を所定電位に帯電させるための帯電装置と、感光体に対して、絶縁性液体中にトナーを分散させた液体現像剤を供給する現像ローラーと、を備えた湿式画像形成装置および画像形成方法であって、現像ローラーの表面における反発弾性率(JIS K 6255準拠測定)を50〜70%の範囲内の値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式画像形成装置および湿式画像形成方法に関し、特に、停止後の動作初期における形成画像に筋発生が少ない湿式画像形成装置および湿式画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式画像形成装置においては、現像装置として、液体現像装置が搭載されており、感光体上に形成された静電潜像を、この液体現像装置から供給される液体現像剤によって現像する。
この際、湿式画像形成装置を起動させた動作初期に、絶縁性液体中にトナーを分散させてなる液体現像剤の供給量がばらつくためと推定されるが、得られる画像において、所定の筋が発生しやすいという問題が見られた。
すなわち、液体現像装置は、接触現像方式を採用しており、当該液体現像装置の一部を構成し、液体現像剤を供給する現像ローラーは、供給ローラーやクリーニングブレード等の接触部材と協同している。
そして、現像ローラーは、これらの接触部材と、高荷重で接触しているために、現像ローラーの表面に歪が発生し、それが原因となって、液体現像剤の供給量がばらつくためと推定されている。
【0003】
そこで、現像剤支持体の表面に対して、液体現像剤を、最初から均一な厚さで供給することができる静電潜像の液体現像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図5に示すように、感光体上に形成された静電潜像をトナーによって現像する静電潜像の液体現像装置であって、液体現像剤を担持する現像ベルト310と、現像ベルト310上に液体現像剤を塗布する塗布ローラー322dと、塗布ローラー322dに液体現像剤を搬送する搬送ローラー322cと、現像ベルト310および塗布ローラー322dを離接させると共に、塗布ローラー322dおよび搬送ローラー322cを離接させる離接手段353と、を具備している。
【特許文献1】特開平8−137279号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された液体現像装置では、特殊な離間機構を設ける必要があって、液体現像装置の構成が複雑になるばかりか、シール性が不十分となって、液体現像剤の液漏れが生じやすくなるという問題が見られた。
【0005】
そこで、本発明者らは鋭意研究した結果、現像ローラーの表面における反発弾性率を所定範囲内の値とすることによって、現像ローラーの表面に歪が生じにくくなって、それにより、連続動作させた時はもちろんのこと、動作初期においても筋発生を少なくできることを見出した。
すなわち、本発明によれば、簡易な構成によって、現像ローラーの表面における歪発生を防止し、ひいては、動作初期においても筋発生が少ない湿式画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
感光体と、当該感光体を所定電位に帯電させるための帯電装置と、感光体に対して、絶縁性液体中にトナーを分散させた液体現像剤を供給する現像ローラーと、を備えた湿式画像形成装置であって、
現像ローラーの表面における反発弾性率(JIS K 6255準拠測定)を50〜70%の範囲内の値とすることを特徴とする湿式画像形成装置が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、本発明によれば、簡易な構成によって、現像ローラーの表面における歪発生を防止し、ひいては、動作初期においても筋発生が少ない湿式画像形成装置を提供することができる。
なお、現像ローラーの表面における反発弾性率は、JIS K 6255に準拠し、温度23℃の条件で、規定の試験片(厚さ 12.5mm×直径 29mmの円柱形状)を用いて測定する。
【0007】
また、本発明を構成するにあたり、現像ローラーが、表面層と、基材と、を含んで構成されており、当該表面層における反発弾性率を50〜70%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成すると、表面層と、基材の構成の組み合わせによって、現像ローラーの表面における反発弾性率をきめ細かく調整することができる。
なお、本発明における表面層とは、現像ローラーにおける最表面層を示す。
たとえば、基材に対して、ウレタン樹脂等からなる中間層を介在させ、その上に処理層を積層させた場合には、当該処理層が表面層となる。
なお、表面層の反発弾性率は、表面層の構成材料からなる規定の試験片を対象として、JIS K 6255に準拠して測定する。
【0008】
また、本発明を構成するにあたり、現像ローラーの表面層が、ウレタン樹脂を主構成材料として含んでおり、かつ、基材が、ウレタン樹脂以外のゴム材料を主構成材料として含んでいることが好ましい。
このように構成すると、現像ローラーの表面層および基材の構成樹脂の組み合わせによって、現像ローラーの表面における反発弾性率をきめ細かく調整することができ、さらには、所定の耐久性を得ることができる。
【0009】
また、本発明を構成するにあたり、現像ローラーの表面層の厚さを5〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成すると、所定厚さを有する表面層によって、現像ローラーの表面における反発弾性率をきめ細かく調整することができ、さらには、所定の耐久性を得ることができる。
【0010】
また、本発明を構成するにあたり、現像ローラーの表面層の硬度(国際ゴム硬度)を50〜100°の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成すると、所定硬度を有する表面層によって、現像ローラーの表面における反発弾性率をきめ細かく調整することができ、さらには、所定の耐久性を得ることができる。
なお、国際ゴム硬度は、JIS K 6253のN法またはH法に準拠し、規定の試験片(厚さ 8mmの上下面が平面形状)を用いて、測定する。
【0011】
また、本発明の別の態様は、
感光体と、
当該感光体を所定電位に帯電させるための帯電装置と、
感光体に対して、絶縁性液体中にトナーを分散させた液体現像剤を供給する現像ローラーと、
を用いた湿式画像形成方法であって、
表面の反発弾性率が50〜70%の範囲内の値である現像ローラーを用いることを特徴とする湿式画像形成方法である。
すなわち、本発明によれば、簡易な構成によって、現像ローラーの表面における歪発生を防止し、ひいては、動作初期においても筋発生が少ない湿式画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態は、図1に例示するように、
感光体と、当該感光体を所定電位に帯電させるための帯電装置と、感光体に対して、絶縁性液体中にトナーを分散させた液体現像剤を供給する現像ローラーと、を備えた湿式画像形成装置であって、
現像ローラーの表面における反発弾性率(JIS K 6255準拠測定)を50〜70%の範囲内の値とすることを特徴とする湿式画像形成装置である。
【0013】
以下、図2に示すように、カラー画像形成用のタンデム型の湿式画像形成装置(カラープリンタ)150の場合を例にとって、図1に例示する湿式画像形成装置10を具体的に説明する。
【0014】
1.基本構成
図2に示すカラープリンタ150は、画像形成のための様々なユニットや部品が収納される上側本体部150Aと、この上側本体部150Aの下部に配置され、各色用の液体現像剤循環装置LY、LM、LC、LB(混合液体供給システム)が収納される下側本体部150Bと、から構成されている。
【0015】
そして、上側本体部150Aには、画像データに基づいてトナー画像を形成するタンデム式の画像形成部2と、用紙を収容する用紙収納部3と、画像形成部2で形成されたトナー画像を用紙上に転写する二次転写部4と、転写されたトナー画像を用紙上に定着させる定着部5と、定着の完了した用紙を排紙する排出部6と、用紙収納部3から排出部6まで用紙を搬送する用紙搬送部7と、が含まれている。
【0016】
ここで、画像形成部2は、中間転写ベルト21と、この中間転写ベルト21のクリーニング部22と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色にそれぞれ対応した画像形成ユニットFY、FM、FC、及びFBとを備える。
また、中間転写ベルト21は、導電性を有する使用可能な用紙搬送方向に直角な方向の長さが最大の用紙より幅広であって、無端状、すなわちループ状部材であり、図中、時計回りに循環駆動される。
なお、中間転写ベルト21の循環駆動において外側を向く面を以下、表面と称し、他方の面を裏面と称する。
【0017】
また、画像形成ユニットFY、FM、FC、及びFBは、中間転写ベルト21の近傍に4つ並べて中間転写ベルト21のクリーニング部22と、二次転写部4との間に配置される。
なお、各画像形成ユニットFY、FM、FC、FBの配置の順番はこの限りではないが、各色の混色による完成画像への影響を配慮すると、この配置が好ましい。
【0018】
また、画像形成ユニットFY、FM、FC、及びFBは、感光体ドラム51と、帯電装置53と、LED露光装置54と、現像装置18と、一次転写ローラー20と、クリーニング装置58と、除電装置52と、を備えている。
そして、各画像形成ユニットFY、FM、FC、FBに対応して、それぞれ液体現像剤循環装置LY、LM、LC、LBが、下側本体部150Bに設けられ、各色の液体現像剤の供給、並びに回収が行われるようになっている。
【0019】
2.感光体
湿式現像画像形成装置に装着する感光体としては、単層型と積層型とがあるが、いずれも適用可能である。
ただし、特に正負いずれの帯電性にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、感光体層を形成する際の被膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の理由から、単層型に適用することがより好ましい。
【0020】
また、耐久性に優れていることから、アモルファスシリコン感光体を用いることが好ましい。
以下、図3に示すアモルファスシリコン感光体51を例にとって、感光体の詳細について説明する。
【0021】
(1)導電性基板
図3のアモルファスシリコン感光体51の部分的断面図に示すように、アモルファスシリコン感光体51は、通常、コアとして導電性基板51aを含んでおり、アルミニウム合金などの導電部材でもって構成するか、もしくは樹脂やガラスの表面に導電性膜を蒸着などから構成してもよい。
【0022】
ここで、導電性基板を構成する材料としては、アルミニウム(Al)、SUS(ステンレススチール)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、金(Au)、銀(Ag)などの金属材料やそれらの合金材料などが挙げられる。
【0023】
また、樹脂やガラス、セラミックスなどの絶縁性材料の表面を、上述した金属やITO、SnO2 などの透明導電性材料で導電処理したものなども挙げられる。
中でも、アルミニウム合金材料を用いると、低コストで感光体の軽量化が可能なばかりか、a−Si系光導電層あるいはキャリア注入阻止層との密着性が高く、それにより感光体の信頼性も向上するといった点で好適である。
【0024】
(2)キャリア注入阻止層
また、図3に示すように、キャリア注入阻止層51bは、アモルファスシリコン系材料(a−Si系材料)を母材にして、それに水素(H)やフッ素(F)を含有させ、さらに周期律表第III 族、第IV族、第V族のうち少なくとも1種の元素を含有させて構成することが好ましい。
また、C、N、Oなどの元素を、キャリア注入阻止層の構成材料として、さらに含有させることも好ましい。
【0025】
(3)光導電層
また、図3に示すように、アモルファスシリコン系材料からなる光導電層51cとしては、アモルファス状態を略してa−と表示した場合、例えば、a−SiC、a−SiCN、a−SiNO、a−SiCO、a−SiN、a−Si、a−C、a−CN、a−SiO等から構成してあることが好ましい。
また、水素(H)やフッ素(F)などの元素を、アモルファスシリコン系材料の一部として、さらに含有させることも好ましい。
【0026】
(4)表面層
また、図3に示すように、表面層51dは、アモルファス状態の珪素(Si)および/または炭素(C)の原子から構成するとともに、酸素(O)または窒素(N)のうち少なくとも1種の原子と、水素(H)またはフッ素(F)のうち少なくとも1種の原子とを含有することが好ましい。
例えば、そのSi原子とC原子との比率をSi1-x x で表示した場合には、xを0.4≦x≦1.0の範囲にすると、モース硬度が8〜11になることが確認されている。
なお、かかる表面層の膜厚を0.1〜10μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.3〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0027】
4.帯電装置
また、帯電装置としては、公知の態様とすることができるが、例えば、スコロトロン型帯電装置とすることが好ましい。
【0028】
5.液体現像装置
(1)基本的構成
また、液体現像装置18は、図1に示すように、トナーを含有する液体現像剤11を貯溜する液体現像剤タンク45を、その外部に備えている。
また、かかる液体現像装置18の内部には、現像ローラー12と、アニロックスローラー13と、汲み上げローラー14と、ドクターブレード15と、クリーニングブレード33と、帯電装置17と、クリーニング手段32等が設けられており、現像ローラー12、アニロックスローラー13、および汲み上げローラー14は、それぞれ歯車列等からなる駆動手段により回転駆動される。
そして、アニロックスローラー13と、汲み上げローラー14と、の当接部近傍であって、汲み上げローラー14上に、供給装置18cによって、所定のトナー濃度の液体現像剤11が供給されている。
【0029】
また、汲み上げローラー14の上方に、アニロックスローラー13が設けられている。そして、かかるアニロックスローラー13の上方には、現像ローラー12がさらに設けられている。
そして、汲み上げローラー14とアニロックスローラー13、及びアニロックスローラー13と現像ローラー12は、それぞれ当接している。
【0030】
また、ドクターブレード15は、アニロックスローラー13の上部、かつ現像ローラー12に対して、アニロックスローラー13の回転方向の上流側に、アニロックスローラー13の軸線方向について、その一端が当接しており、アニロックスローラー13のローラー面に供給された液体現像剤11が表面に彫られた溝(凹部)に保持され、かかる液体現像剤11の量を規制している。
そして、感光体ドラム51は、液体現像装置18の外側にあって、現像ローラー12に当接している。
【0031】
(2)液体現像剤
また、液体現像装置18に外部に設けてある液体現像剤貯溜槽(液体現像剤タンク)45には、トナー粒子と絶縁性液体であるキャリアからなる液体現像剤11が貯溜されている。
かかる液体現像剤11は、シリコンオイル等の非極性、すなわち、電気的に中性の溶媒であるキャリア液中にトナー粒子が高濃度で分散するように調整されている。
また、トナー粒子は、エポキシ等の樹脂(バインダー)、トナーに所定の電荷を与える荷電制御剤、着色顔料等から構成されている。
そして、この液体現像剤11を、現像剤担持体としての現像ローラー12から、感光体ドラム51のLED露光装置54によって光が照射された部分の静電潜像に、供給することにより、感光体ドラム51にトナー像を現像することができる。
【0032】
(3)現像ローラー
また、本発明において、現像ローラーの表面における反発弾性率(JIS K 6255準拠測定)を50〜70%の範囲内の値とすることを特徴とする。
すなわち、このように構成することにより、簡易な構成によっても、現像ローラーの表面における歪発生を防止し、例えば、数分程度の一旦停止後の動作初期においても、あるいは、1日以上経過した長期停止後の動作初期においても、筋発生が少ない湿式画像形成装置を提供することができるためである。
【0033】
より具体的には、現像ローラーの表面における反発弾性率が50%未満の値になると、高荷重で接触している接触部材によって、現像ローラーの表面に歪が生じ、それが原因となって、動作初期において、液体現像剤の供給量がばらついて、筋発生が生じるためである。
一方、現像ローラーの表面における反発弾性率が70%を超えた値になると、表面層の構成に関して、選択の余地が過度に制限されるためである。
したがって、現像ローラーの表面における反発弾性率を55〜68%の範囲内の値とすることがより好ましく、60〜65%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
また、図4に示すように、現像ローラー12が、表面層12aと、基材12bと、中間層12cと、を含んで構成されており、当該表面層12aにおける反発弾性率を50〜70%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成すると、表面層と、基材の構成の組み合わせによって、現像ローラーの表面における反発弾性率をきめ細かく調整することができるためである。
すなわち、所定材料からなる表面層と、所定材料からなる基材との組み合わせによって、現像ローラーの表面における反発弾性率を、所定範囲で、きめ細かく調整することができる。
【0035】
また、図4に示す現像ローラー12の表面層12aが、ウレタン樹脂を主構成材料として含んでおり、かつ、基材12bが、ウレタン樹脂以外のゴム材料を主構成材料として含んでいることが好ましい。
この理由は、このように構成すると、現像ローラーの表面層および基材の構成樹脂の組み合わせによって、現像ローラーの表面における反発弾性率をきめ細かく調整することができ、さらには、所定の耐久性を得ることができるためである。
すなわち、ウレタン樹脂からなる表面層と、アルミニウム等からなる基材の構成の組み合わせによって、現像ローラーの表面における反発弾性率を、所定範囲で、きめ細かく調整することができる。
【0036】
なお、ウレタン樹脂は、アルコール化合物(ジオール化合物等)と、イソシアネート化合物(ジイソシアネート化合物等)との反応物であるが、これらのアルコール化合物(ジオール化合物等)や、イソシアネート化合物(ジイソシアネート化合物等)の種類や添加割合を変えるだけで、所望の反発弾性率を得やすい一方、ウレタン樹脂であれば、現像ローラーとして、優れた耐久性を得ることができる。
そして、現像ローラーの外側の少なくとも一部が、ウレタン樹脂から構成してあることによって、現像ローラーの反発弾性率の値を所望範囲に調整できることが判明している。
【0037】
また、図4に示す現像ローラー12の表面層12aの厚さを5〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成すると、所定厚さを有する表面層によって、現像ローラーの表面における反発弾性率をきめ細かく調整することができ、さらには、所定の耐久性を得ることができるためである。
より具体的には、現像ローラーにおける表面層の厚さが5μm未満の値になると、機械的強度が低下したり、均一な厚さに成形することが困難となったりする場合があるためである。
一方、現像ローラーにおける表面層の厚さが50μmを超えた値になると、均一な厚さに成形することが困難となったり、そのため、通過する液体現像剤の量がばらつきやすくなったりする場合があるためである。
したがって、現像ローラーにおける表面層の厚さを15〜45μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜40μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、中間層は、例えば、ウレタン樹脂等から構成することができる。
【0038】
また、図4に示す現像ローラー12の表面層12aの硬度(国際ゴム硬度)を50〜100°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成すると、所定硬度を有する表面層によって、現像ローラーの表面における反発弾性率をきめ細かく調整することができ、さらには、所定の耐久性を得ることができるためである。
より具体的には、現像ローラーにおける表面層の硬度が50°未満の値になると、液体現像剤のシール性が低下したり、表面層の構成材料に関して、選択の余地が過度に制限されるためである。
一方、現像ローラーにおける表面層の硬度が100°を超えた値になると、現像ローラーを液体現像剤が通過する際に、液体現像剤に対して付加される荷重やストレスが多くなって、ローラ間のニップでの液切れが悪くなり所謂リブレット現象が発生してしまうためである。
したがって、現像ローラーにおける表面層の硬度を60〜90°の範囲内の値とすることがより好ましく、70〜80°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【実施例】
【0039】
[実施例1]
1.湿式画像形成装置の準備
(1)感光体の準備
直径が40mmのアモルファスシリコン感光体を準備した。
なお、アモルファスシリコン感光体の形態は、図3に示す構成に準拠した。
【0040】
(2)現像ローラーの準備
次いで、鋼材の周囲に、所定量のジオール化合物およびジイソシアネート化合物からなる、ウレタン樹脂を、金型を用いて積層した後、切削研磨し、厚さ2mmのウレタン樹脂層とした。
さらに、エーテル系熱可塑性ポリウレタン溶液100重量部に所定のフッ素系改質剤としてのフッ素系樹脂4重量部と導電化剤としてのケッチンブラックインターナショナル製ケッチンブラックEC300J40重量部を配合した溶液(固形分が10重量%となるようにテトロヒドロフランを加えた)をウレタン樹脂表面に塗布して130度で2時間熱処理し約30μmの厚さの表面層を有する直径20mmの現像ローラーを得た。
また、表面層における反発弾性力を測定したところ53%であり、表面層における硬度(国際ゴム硬度)を測定したところ、88°であった。
なお、表面層における反発弾性率は、JIS K 6255に準拠し、温度23℃の条件で、表面層の構成材料からなる規定の試験片(厚さ 12.5mm×直径 29mmの円柱形状)を用いて測定した。
また、国際ゴム硬度は、JIS K 6253のN法またはH法に準拠し、規定の試験片(厚さ 8mmの上下面が平面形状)を用いて、測定した。
【0041】
(3)湿式画像形成装置の準備
準備したアモルファスシリコン感光体および現像ローラーを、京セラミタ製の湿式画像形成装置の実験器に搭載し、実施例1の湿式画像形成装置とした。
【0042】
2.湿式画像形成装置の評価
(1)動作初期における筋発生評価
得られた湿式画像形成装置を用い、3回の印刷実験(所定パターン、A4紙、100枚連続印刷を3回繰り返し、停止時間10分)の動作初期において得られた所定画像を目視観察し、以下の基準で、筋発生評価を行った。
○:3回とも、筋発生が全く見られなかった。
△:1回〜2回、筋発生が見られた。
×:3回とも筋発生が見られた。
【0043】
[実施例2]
実施例2では、表面層の反発弾性力が59%であって、かつ、表面層の硬度が54°である現像ローラーを使用したほかは、実施例1と同様に、湿式画像形成装置を作成し、評価した。
なお、現像ローラーにおける表面層の反発弾性力および硬度は、フッ素化合物(PFA)の添加量および被覆剤の処理量を変えて、所定値に調整した。
【0044】
[実施例3]
実施例3では、表面層の反発弾性力が55%であって、かつ、表面層の硬度が86°である現像ローラーを使用したほかは、実施例1と同様に、湿式画像形成装置を作成し、評価した。
なお、現像ローラーにおける表面層の反発弾性力および硬度は、フッ素化合物(PFA)の添加量および被覆剤の処理量を変えて、所定値に調整した。
【0045】
[実施例4]
実施例4では、表面層の反発弾性力が66%であって、かつ、表面層の硬度が57°である現像ローラーを使用したほかは、実施例1と同様に、湿式画像形成装置を作成し、評価した。
なお、現像ローラーにおける表面層の反発弾性力および硬度は、フッ素化合物(PFA)の添加量および被覆剤の処理量を変えて、所定値に調整した。
【0046】
[比較例1]
比較例1では、表面層の反発弾性力が47%であって、かつ、表面層の硬度が97°である現像ローラーを使用したほかは、実施例1と同様に、湿式画像形成装置を作成し、評価した。
なお、現像ローラーにおける表面層の反発弾性力および硬度は、フッ素化合物(PFA)の添加量および被覆剤の処理量を変えて、所定値に調整した。
【0047】
[比較例2]
比較例2では、表面層の反発弾性力が73%であって、かつ、表面層の硬度が69°である現像ローラーを使用したほかは、実施例1と同様に、湿式画像形成装置を作成し、評価した。
なお、現像ローラーにおける表面層の反発弾性力および硬度は、フッ素化合物(PFA)の添加量および被覆剤の処理量を変えて、所定値に調整した。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の湿式画像形成装置および湿式画像形成方法によれば、現像ローラーの表面における反発弾性率を所定範囲内の値とすることによって、現像ローラーの表面に歪が生じにくくなって、ひいては、動作初期においても筋発生が少ない湿式画像形成装置および画像形成方法を提供することができるようになった。
また、現像ローラーの表面における反発弾性率が所定範囲であることから、現像ローラーを駆動させる際のトルクを低減することができ、その結果、湿式画像形成装置等の消費エネルギーを低下させるとともに、耐久性に富んだ湿式画像形成装置等とすることができる。
よって、本発明の湿式画像形成装置等であれば、各種プリンタ、ファクシミリ、コピー機等の一部として、好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る湿式画像形成装置を説明にするために供する図である。
【図2】液体現像装置を搭載したタンデム型湿式カラー画像形成装置を説明にするために供する図である。
【図3】アモルファスシリコン感光体を説明にするために供する部分断面図である。
【図4】現像装置の態様を説明にするために供する図である。
【図5】(a)〜(c)は、従来の液体現像装置の構成を説明にするために供する図である。
【符号の説明】
【0051】
2:画像形成部
3:用紙収納部
4:二次転写部
5:定着部
6:排出部
7:用紙搬送部
10:湿式画像形成装置
11:液体現像剤
12:現像ローラー(現像剤担持体)
13:アニロックスローラー
14:汲み上げローラー
15:ドクターブレード
17:帯電装置
18:液体現像装置
18a:回収液溜め
18b:廃棄液溜め
18c:供給装置
20:一次転写ローラー
21:中間転写ベルト
22:クリーニング部
32:クリーニングローラー
33:クリーニングブレード
45:液体現像剤タンク
51:感光体ドラム
52:除電装置
53:帯電装置
54:LED露光装置
57:クリーニングブレード
58:研磨装置
150:カラープリンタ(湿式画像形成装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
当該感光体を所定電位に帯電させるための帯電装置と、
前記感光体に対して、絶縁性液体中にトナーを分散させた液体現像剤を供給する現像ローラーと、
を備えた湿式画像形成装置であって、
前記現像ローラーの表面における反発弾性率(JIS K 6255準拠測定)を50〜70%の範囲内の値とすることを特徴とする湿式画像形成装置。
【請求項2】
前記現像ローラーが、表面層と、基材と、を含んで構成されており、当該表面層における反発弾性率を50〜70%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の湿式画像形成装置。
【請求項3】
前記現像ローラーの表面層が、ウレタン樹脂を主構成材料として含んでおり、かつ、前記基材が、ウレタン樹脂以外のゴム材料を主構成材料として含んでいることを特徴とする請求項2に記載の湿式画像形成装置。
【請求項4】
前記現像ローラーの表面層の厚さを5〜50μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項2または3に記載の湿式画像形成装置。
【請求項5】
前記現像ローラーの表面層の硬度(国際ゴム硬度)を50〜100°の範囲内の値とすることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の湿式画像形成装置。
【請求項6】
感光体と、
当該感光体を所定電位に帯電させるための帯電装置と、
前記感光体に対して、絶縁性液体中にトナーを分散させた液体現像剤を供給する現像ローラーと、
を用いた湿式画像形成方法であって、
表面の反発弾性率(JIS K 6255準拠測定)が50〜70%の範囲内の値である現像ローラーを用いることを特徴とする湿式画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−85648(P2010−85648A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253882(P2008−253882)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】