説明

満腹感、脂質代謝及び脂肪利用に影響を及ぼすための組成物及び方法

本発明は、(1)食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する脂肪酸アミドを投与された動物において差次的に発現される遺伝子、及び(2)食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する新しい化合物を同定するための該遺伝子の使用に関する組成物及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002]本発明は、全般には、動物において差次的に発現される遺伝子に関し、特に、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する脂肪酸アミドを長期にわたり規則的に投与された動物において差次的に発現される遺伝子、並びにそうしたパラメーターの1つ又は複数に影響する新しい化合物を同定するため、及び動物における関連の表現型を調節するための該差次的発現遺伝子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、2008年8月14日出願の米国特許仮出願第61/188907号の優先権を主張するものであり、この開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0003】
[0003]脂肪過多及び肥満は、ヒトの間での世界的な健康問題として認識されている。世界保健機関(WHO)では、10億人を超える過体重の成人がいるが、肥満に分類されているのはそのうちわずか3分の1未満であると推定している。加えて、肥満は、動物、特に、イヌ及びネコなどの伴侶動物にとっての問題としても次第に認識されてきている。疾病対策センター(CDC)によれば、肥満は、少なくとも、高血圧症、脂質異常症、II型糖尿病、心疾患、脳卒中、睡眠時無呼吸、並びにある種の癌(乳癌、子宮体癌及び大腸癌など)を含め、他の健康問題のリスクと密接に関連がある。肥満になる個体のリスク因子としては、遺伝学的特徴、情緒/ストレス、過食及び座りきりの生活様式が挙げられる。
【0004】
[0004]肥満との戦いは、過度の肥満に結び付くリスクについて公に語られることが増えるのに伴い、少なくとも20年前に始まった。栄養勧告が制定及び再制定され、広く伝えられ、学校で教育も行われた。それにもかかわらず、肥満及び過体重の人々の数は未だに増え続けている。健康な食餌及びより頻度の高い身体活動に加え、現在、減量のための医薬が頻繁に処方されている。こうした医薬は、胃膨満感の模倣、食欲低下、又は脂肪吸収の制限など、さまざまなレベルで機能する。しかし、そのような薬剤は、長期の治療にとって満足なものとは思われておらず、それは、部分的には、時間の経過に伴う有効性の低下、並びに望ましくない副作用が原因である。少なくともそうした理由から、抗肥満薬物療法を用いた場合の患者のコンプライアンスは、決して満足なものではないと考えられる。当技術分野において、肥満との戦いにおける新しい薬物療法又は栄養補助食品を発見及び開発する必要があることは明らかである。
【0005】
[0005]脂肪酸アミド(FAE)又はN−アシルエタノールアミドは、エタノールアミンと連結した脂肪酸部分を含有する、構造的に関連のある脂質である。FAEは、天然に存在する脂質ファミリーであり、植物及び動物の組織において見出され、エネルギーバランスの調節、食物摂取の制御などの健康、更には抗炎症特性などに対する効果を示す。FAEは、N−アセチル化ホスファチジルエタノールアミド誘導体からもin−vivoで形成される。脳及び神経細胞などの生体組織において見出される最も主要なFAEは、アナンダミド(N−アラキドノイルエタノールアミン)及びN−オレオイルエタノールアミド(OEA)である。OEAは、食品中でも低量見出され、主に内因性の合成に由来する(Di Marzo V、1999、Life Sci.、65、645〜55)。
【0006】
[0006]齧歯動物においては、OEAの腹腔内投与により満腹感及び脂質基質の末梢での利用が誘導され、それにより体脂肪増の抑制がもたらされたと報告された(Thabuis Cら、2007、Lipid Technology、19、225〜7)。in−vitro試験及びノックアウト動物モデルの両方により、PPAR−αシグナル伝達(Fu Jら、2003、Nature、425、90〜3)、近位腸によるFAT/CD36依存性の脂質取込み(Yang Yら、2007、Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol.、292、R235〜41)、選択されたニューロン活性化(Ahern GP、2003、J Biol Chem.、278、30429〜34)及びグレリンシグナル伝達(Cani PDら、2004、Br J Nutr.、92、757〜61)など、いくつかの作用機序が明らかになっている。近位腸は、満腹感制御の標的器官であると思われる(Thabuis Cら、上記参照のこと)。OEAは野生型マウスにおける食物摂取量を調節するが、PPAR α(−/−)マウスにおいては調節しないことが示されている。最近では、OEAは、G−タンパク質共役カンナビノイド受容体GPR119にも結合できることが示されている(Overton HAら、2006、Cell Metab.、3、167〜75)。腹腔内投与すると、OEAは、以下のいくつかパラメーターに影響を及ぼすことにより食物摂取量を減少させる:食事量の減少、最初の食事摂取の遅延及び食事間隔の長時間化(Oveisi Fら、2004、Pharmacol Res.、49、461〜6)。OEA経口投与の効果は、急性強制経口投与後24時間調べられてもおり、食物摂取量を最初の12時間にわたり顕著に減少させることが示されている(上記参照のこと)。しかし、前述の試験は、短期間(腹腔内投与では6時間〜11日、経口投与では24時間)にわたり実施されただけであり、満腹感、又は体脂肪関連の他のパラメーターに及ぼす長期の効果は、これまでのところ示されていない。
【0007】
[0007]肥満に対処するための現在の方法に伴う問題を考慮すると、動物における非肥満表現型の促進に有用である傾向があるかどうかを判断するための物質のスクリーニングに、又、動物の脂肪組織の量を調節するための当該物質の使用に有用な新しい方法及び組成物が引き続き必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]したがって、本発明の目的は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物において差次的に発現される1つ又は複数の遺伝子又は遺伝子断片を提供することである。
【0009】
[0009]本発明の別の目的は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じるRBF/IS表現型を含む表現型を呈する動物において差次的に発現される複数のポリヌクレオチドを含む組合せを提供することである。
【0010】
[0010]本発明の別の目的は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じるRBF/IS表現型を呈する動物において差次的に発現される遺伝子の発現の検出に適した2つ以上のポリヌクレオチドプローブ又はポリペプチドプローブから成る組成物、及び該プローブを含有する基質アレイなどのデバイスを提供することである。
【0011】
[0011]本発明の更なる目的は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じるRBF/IS表現型を呈する動物において差次的に発現される1つ又は複数の遺伝子の差次的発現を、正常動物又は非処置動物との比較により検出する方法を提供することである。
【0012】
[0012]本発明の別の目的は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じるRBF/IS表現型を呈する動物において差次的に発現される1つ又は複数の遺伝子の発現プロファイルに試験物質が及ぼす効果を正常動物又は非処置動物との比較により測定する方法を提供することである。
【0013】
[0013]本発明の更なる目的は、動物においてRBF/IS表現型を促進する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[0014]こうした他の目的の1つ又は複数は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じるRBF/IS表現型を呈する動物において差次的に発現される遺伝子及び遺伝子断片を表すポリヌクレオチド又はポリペプチドの新規の組合せを使用して達成される。このポリヌクレオチドは、RBF/IS表現型を呈する動物において差次的に発現されるポリヌクレオチドの実態を正常動物又は非処置動物との比較により決定するための、組成物、プローブ、プローブをベースにしたデバイス及び方法を作製するために使用され、上で確認した目的(例えば、表現型に関する状態を予測及び診断すること)の達成、並びに当該表現型を促進するために有用である傾向があるかどうかを判断するための物質のスクリーニングに有用である。そのような物質は、一旦同定されれば、表現型を促進するために使用できる。プローブと、プローブを利用するデバイスと物質との組合せを備える多様なキットも提供され、情報を処理するための多様なコンピュータープログラム、並びに差次発現遺伝子及びそれらを使用する方法に関する情報をやりとりするためのコミュニケーション媒体も同様に提供される。
【0015】
[0015]本発明の他の、又、更なる目的、特徴及び利点は、当業者には容易に明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0016]定義
本明細書において表現する全ての比率(%)は、具体的に記載しない限り、乾燥物基準での組成物の重量比である。当業者には、用語「乾燥物基準」は、組成物中の成分の濃度が、組成物中の全ての遊離水分を除去した後に測定されることを意味することは理解されよう。
【0017】
[0017]本明細書においては、範囲を略号として使用するが、これは、当該範囲内のありとあらゆる値を長々と記載し説明する必要を回避するためである。必要に応じ、上限値、下限値、又は当該範囲の末端として、当該範囲内の任意の適切な値を選択できる。
【0018】
[0018]別に明示しない限り、本明細書において表現される用量の単位は、体重1キログラム当たりのミリグラム又はグラム(mg/kg又はg/kg)である。
【0019】
[0019]本明細書において使用する場合、そうでないことが文脈により明らかに指示されない限り、単語の単数形には複数形が包含され、逆も又同様である。したがって、「a」、「an」及び「the」と言う場合には、それぞれの用語の複数形が一般に包含される。例えば、「動物(an animal)」、「方法(a method)」又は「物質(a substance)」と言う場合には、複数の当該「動物(animals)」、「方法(methods)」又は「物質(substances)」が包含される。同様に、単語「〜を含む(comprise)」、「〜を含む(comprises)」及び「〜を含む(こと)(comprising)」は、排他的にではなく包含的に解釈されたい。
【0020】
[0020]用語「動物」は、脂肪組織を有する、ヒト又は他の動物(トリ、ウシ科、イヌ科、ウマ科、ネコ科、ヤギ科、ネズミ科、ヒツジ科及びブタ科の動物など)を意味する。被験者を比較する文脈においてこの用語が使用される場合、比較される動物は、同じ種の同じ品種又は血統と考えられる動物である。「伴侶動物」は、飼いならされた任意の動物であり、このような動物としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:ネコ、イヌ、ウサギ、モルモット、フェレット、ハムスター、マウス、スナネズミ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ブタなど。好ましくは、動物は、ヒト、又はイヌ若しくはネコなどの伴侶動物である。
【0021】
[0021]用語「抗体」は、特異的な抗原と結合する任意の免疫グロブリン(IgG抗体、IgM抗体、IgA抗体、IgD抗体及びIgE抗体など)を意味する。この用語は、以下を包含する:ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一価抗体、ヒト化抗体、ヘテロ複合体、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、キメラ抗体、二重特異性抗体、ジアボディー、単鎖抗体、並びにFab、Fab’、F(ab’)2及びFvなどの抗体断片、又は他の抗原結合断片。
【0022】
[0022]用語「アレイ」は、基質上に少なくとも2つのプローブが整然と配列されているものを意味する。プローブの少なくとも1つは対照又は標準であり、プローブの少なくとも1つは、診断用プローブである。基質上の約2〜約40,000個のプローブの配列により、プローブと試料のポリヌクレオチド又はポリペプチドとの間に形成された各標識化複合体のサイズ及びシグナル強度を個々に区別することが確実にできるようになる。
【0023】
[0023]用語「結合複合体」は、試料中のポリペプチドが、抗体又はその機能的断片などの結合相手と特異的に結合(本明細書において定義する通りに)した場合に形成される複合体を指す。
【0024】
[0024]本明細書において使用する場合、「栄養補助食品」は、動物の通常の食餌に加えて摂取されることを意図した製品である。栄養補助食品は、任意の形態、例えば、固形、液体、ゲル、錠剤、カプセル、粉末などであってもよい。好ましくは、栄養補助食品は、便利な剤形で提供される。いくつかの実施形態では、栄養補助食品は、バルク粉末又は液体など、消費者用のバルクパッケージに入った状態で提供される。他の実施形態では、補助食品は、スナック、トリート、サプリメントバー、飲料など他の食品アイテム中に含められるように、バルク量で提供される。
【0025】
[0025]用語「差次的な発現」又は「差次的に発現される」は、遺伝子発現の増加若しくは非制御を意味するか、又は試料中の転写されたメッセンジャーRNA若しくは翻訳されたタンパク質の有無若しくはその量の少なくとも2倍の変化により検出されるような遺伝子発現の減少若しくは下方制御を意味する。
【0026】
[0026]用語「有効量」は、本明細書に記載のRBF/IS表現型の促進など特定の生物学的結果を達成するのに有効な化合物、材料、組成物、医薬又は他の材料の量を意味する。
【0027】
[0027]用語「食品」又は「食品組成物」は、動物(ヒトなど)による摂取を意図し、そうした動物に栄養をもたらす組成物を意味する。本明細書において使用する場合、「ヒトの摂取用に調合された食用製品」は、ヒトによる摂取を具体的に意図した任意の組成物である。「ペットフード」は、ペット、好ましくは伴侶動物による摂取を意図した組成物である。「完全で栄養的にバランスのとれたペットフード」は、当該食品の意図される受け手又は摂取者にとっての全ての公知の必要栄養素を、例えば、伴侶動物の栄養の分野における公認の専門家の推奨に基づく適切な量及び比率で含有するものである。したがって、そのような食品は、生命を維持し、又は繁殖を促進するための食餌摂取の単一源として、補助的な栄養源を添加することなく与えることが可能である。栄養的にバランスのとれたペット用食品組成物は、当技術分野では広く知られており、広く使用されている。
【0028】
[0028]用語「断片」は、(1)完全配列の一部であり、特定の使用の場合に完全なポリヌクレオチド配列と同じ若しくは同様の活性を有するオリゴヌクレオチド若しくはポリヌクレオチド配列、又は(2)完全配列の一部であり、特定の使用の場合に完全なポリペプチド配列と同じ若しくは同様の活性を有するペプチド若しくはポリペプチド配列を意味する。そのような断片は、特定の使用に適していると考えられる任意の数のヌクレオチド又はアミノ酸を含むことができる。一般に、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド断片は、少なくとも約10個、約50個、約100個又は約1000個のヌクレオチドを含有し、ポリペプチド断片は、完全配列に由来する少なくとも約4個、約10個、約20個又は約50個の連続したアミノ酸を含有する。この用語は、断片のポリヌクレオチド及びポリペプチドの変異体を包含する。
【0029】
[0029]用語「遺伝子」又は「複数の遺伝子」は、コード領域に先行及び追随する領域(リーダー及びトレーラー)、並びに個々のコード領域(エキソン)間の介在配列(イントロン)など、ポリペプチドの産生に関与するDNAの完全又は部分的な断片を意味する。この用語は、遺伝子コード配列の相補的部分とハイブリダイズする一切のDNA配列を包含する。
【0030】
[0030]用語「遺伝子産物」は、mRNA若しくはその誘導体(例えばcDNA)などの遺伝子転写産物、又は遺伝子転写物の翻訳産物を意味する。用語「遺伝子産物」は、一般には翻訳産物を指し、これは、タンパク質である。用語「遺伝子産物」は、本明細書においては用語「タンパク質」と互換的に使用される場合がある。
【0031】
[0031]用語「相同体」は、以下を意味する:(1)同じ若しくは異なる動物種に由来するポリヌクレオチドを含め、基準のポリヌクレオチドと30%超、50%超、70%超若しくは90%超の配列類似性を有し、基準のポリヌクレオチドと同じ若しくは実質的に同じ特性を有し、同じ若しくは実質的に同じ機能を発揮し、又はストリンジェントな条件下で基準のポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする能力を有するポリヌクレオチド、或いは(2)同じ若しくは異なる動物種に由来するポリペプチドを含め、基準のポリペプチドと30%超、50%超、70%超若しくは90%超の配列類似性を有し、基準のポリペプチドと同じ若しくは実質的に同じ特性を有し、同じ若しくは実質的に同じ機能を発揮し、又は基準のポリペプチドと特異的に結合する能力を有するポリペプチド。完全長のコード配列の断片と言う場合、そうした断片の機能は、単に、ある一定の配列のポリペプチドの選択された部分をコードするためのものであるか、又は適切には、当該ポリペプチドをコードする別のポリヌクレオチド断片とハイブリダイズする類似の配列のものであってもよい。ポリペプチドの断片と言う場合、そうした断片の機能は、単に、抗体の産生に適したエピトープを形成するためのものであってもよい。2つのポリペプチド配列又は2つのポリヌクレオチド配列の配列類似性は、例えば、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87、2264〜2268(1990))など当業者に公知の方法を用いて決定される。そのようなアルゴリズムは、AltschulらのNBLAST及びXBLASTのプログラム中に組み込まれている(J Mol.Biol.、215、403〜410(1990))。比較を目的としたギャップ付きアラインメントを得るには、Altschulら(Nucl.Acids Res.、25、3389〜3402(1997))中に記載されているように、Gapped Blastを利用できる。BLAST及びGapped BLASTのプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用する。http://ww.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0032】
[0032]用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、1つのポリヌクレオチドのプリンを相補的なポリヌクレオチドのピリミジンと(例えば、5’−A−G−T−C−3’塩基対を3’−T−C−A−G−5’と)水素結合させた際に試料のポリヌクレオチド間に形成される複合体を意味する。相補性の程度及びヌクレオチド類似体の使用は、ハイブリダイゼーション反応の効率及びストリンジェンシーに影響する。
【0033】
[0033]用語「〜と共に」は、薬剤、食品又は他の物質を、動物に、(1)組成物、特に食品組成物中で一緒に、又は(2)同じ若しくは異なる投与経路を用いて、ほぼ同時若しくは定期的に、同じ若しくは異なる頻度で別々に投与することを意味する。「定期的に」は、物質が特定の物質にふさわしい投与計画で投与されることを意味する。「ほぼ同時」は、一般には、物質(食品又は薬剤)が、同時に、又は互いに約72時間以内に投与されることを意味する。「〜と共に」には、具体的には、薬物などの物質が所定の期間にわたり投与され、本発明の組成物が無期限に投与される投与スキームが含まれる。
【0034】
[0034]用語「個体」は、動物について言う場合には、任意の種又は種類の個体動物を意味する。
【0035】
[0035]「長期」投与は、本明細書において使用する場合、一般には、1カ月を超える期間を指す。2カ月、3カ月又は4カ月より長い期間が企図される。5カ月超、6カ月超、7カ月超、8カ月超、9カ月超又は10カ月超を包含する、より長い期間も包含される。11カ月又は1年を超える期間も包含される。1年、2年、3年又はそれより長い年数を超える、より長期間の使用も、本発明においては企図される。一定の動物の場合には、動物には本発明の方法により同定された物質を規則的に投与することになると想定される。「規則的」は、本明細書において使用する場合、少なくとも毎週の投与を指す。より頻回な投与(週に2回又は3回など)が企図される。少なくとも1回、2回、3回又はより多い回数の毎日の投与を含むレジメンも包含される。本明細書において明示的に例証されているか否かに関わらず、どのような投与頻度も有用と考えられる。当業者には、投与頻度は投与されている物質の機能であると考えられ、組成物の中には、所望の生化学的効果、生理学的効果又は遺伝子発現効果、すなわち、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用、並びにそれらに関連する遺伝子発現プロファイルのうち1つ又は複数を包含する効果を維持するために、程度の差こそあれ頻回な投与が必要な場合があることは理解されよう。用語「長期にわたり規則的に」は、物質が規則的に長期投与されることを指す。
【0036】
[0036]「正常な」又は「正常な対象」又は「正常な動物」は、RBF/IS表現型が現れている対象に関して使用する場合、RBF/IS表現型に関連する遺伝子の差次的発現の結果もたらされる分子的、生化学的、生理学的、細胞的、全身的及び身体的な影響が存在しないことを指す。
【0037】
[0037]用語「経口投与」若しくは「経口投与する(こと)」は、動物が摂取するか、又は本明細書に記載の物質のうち1つ若しくは複数をヒトが動物に給餌するように指示されるか若しくは実際に給餌することを意味する。用語「摂取」は、本明細書においては用語「経口投与」と互換的に使用される。ヒトが当該物質を経口的に投与又は給餌するように指示される場合、そのような指示は、当該物質を使用すると、そこに書かれた利益を得ることができる及び/又は得られるであろうということをヒトに知らせ及び/又は伝えるものであってもよい。そのような指示は、口答による指示(例えば、医師、獣医若しくは他の健康専門家からの口答による指導、又はラジオ若しくはテレビ媒体(すなわち広告)などによる)、或いは文字による指示(例えば、医師、獣医若しくは他の健康専門家(例えば処方箋)、販売の専門家又は組織(例えば、マーケティング用の小冊子、パンフレット又は他の指導用品などによる)からの文字による指示)、文字媒体(例えば、インターネット、電子メール又は他のコンピューター関連媒体)などによる)、及び/又は当該物質に付随するパッケージであってもよい。
【0038】
[0038]用語「ポリヌクレオチド」又は「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドのポリマーを意味する。この用語は、DNA及びRNA(cDNA及びmRNAを含め)の分子を包含し、一本鎖又は二本鎖いずれでもよく、一本鎖の場合、その相補配列は、直鎖状又は環状いずれの形態でもよい。この用語は、配列について必要に応じ、元の配列と同じ又は実質的に同じ特性を有し、同じ又は実質的に同じ機能を発揮する断片、変異体、相同体及び対立遺伝子も包含する。特に、この用語は、異なる種(例えば、マウス及びイヌ又はネコ)由来の相同体を包含する。この配列は、アラインした場合に完全に相補的(ミスマッチなし)であってもよく、又は最大約30%の配列ミスマッチを有していてもよい。好ましくは、ポリヌクレオチドの場合、鎖は、約50〜10,000個のヌクレオチド、より好ましくは約150〜3,500個のヌクレオチドを含有する。好ましくは、オリゴヌクレオチドの場合、鎖は、約2〜100個のヌクレオチド、より好ましくは約6〜30個のヌクレオチドを含有する。ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの正確なサイズは、多様な因子、並びに特定の用途及びポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの使用に依存することになる。この用語には、合成され、天然源から単離及び精製されたヌクレオチドポリマーが包含される。用語「ポリヌクレオチド」は、「オリゴヌクレオチド」を包含する。
【0039】
[0039]用語「ポリペプチド」、「ペプチド」又は「タンパク質」は、アミノ酸のポリマーを意味する。この用語は、天然に存在する及び天然に存在しない(合成の)ポリマー、並びに人工の化学模倣体が1つ又は複数のアミノ酸に置換されているポリマーを包含する。この用語は、更に、元の配列と同じ又は実質的に同じ特性を有し、同じ又は実質的に同じ機能を発揮する断片、変異体及び相同体も包含する。この用語は、任意の長さのポリマー、好ましくは、約2〜1000個のアミノ酸、より好ましくは約5〜500個のアミノ酸を含有するポリマーを包含する。この用語は、合成された、並びに天然源から単離及び精製されたアミノ酸ポリマーを包含する。
【0040】
[0040]用語「プローブ」は、(1)オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド(RNA又はDNAいずれでもよく、精製された制限酵素消化産物と同様に天然に生じるものであるか合成により作製されるかを問わない)で、プローブと相補的な配列を有するポリヌクレオチドとアニーリング若しくは特異的にハイブリダイズする能力のあるもの、又は(2)化合物若しくは物質(ペプチド若しくはポリペプチドを含め)で、特定のタンパク質若しくはタンパク質断片を、他のタンパク質若しくはタンパク質断片を実質的に排除するように特異的に結合させる能力のあるものを意味する。オリゴヌクレオチドプローブ又はポリヌクレオチドプローブは、一本鎖又は二本鎖いずれでもよい。プローブの正確な長さは、多くの因子(温度、入手源及び用途など)に依存することになる。例えば、診断用途の場合、標的配列の複雑さによるが、オリゴヌクレオチドプローブは、典型的には、約10〜100個、15〜50個、又は15〜25個のヌクレオチドを含有する。一定の診断用途では、ポリヌクレオチドプローブは、約100〜1000個、300〜600個のヌクレオチド、好ましくは約300個のヌクレオチドを含有する。本発明におけるプローブは、特定の標的配列の異なる鎖と「実質的に」相補的であるように選択される。これは、プローブが、一連の既定条件下でそのそれぞれの標的配列と特異的にハイブリダイズ又はアニールするだけ十分に相補的でなくてはならないことを意味する。したがって、プローブ配列は、標的の正確な相補配列を反映する必要はない。例えば、非相補的なヌクレオチド断片は、プローブの5’末端又は3’末端に結合して、プローブ配列の残りは標的配列と相補的であってもよい。或いは非相補的な塩基又はより長い配列をプローブ中に散在させてもよいが、但し、プローブ配列が、標的ポリヌクレオチドと特異的にアニールする標的ポリヌクレオチドの配列と十分な相補性を有することが条件である。ペプチド又はポリペプチドプローブは、タンパク質又はペプチドが特異的に結合する任意の分子(DNA(DNA結合タンパク質の場合)、抗体、細胞膜受容体、ペプチド、補因子、レクチン、糖、多糖、細胞、細胞膜、細胞小器官及び細胞小器官膜など)であってもよい。
【0041】
[0041]用語「試料」は、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、代謝産物などを含有する任意の動物の組織又は体液を意味し、細胞、並びにDNA及びRNAを含有する他の組織が含まれる。例としては、脂肪組織、血液組織、軟骨組織、結合組織、上皮組織、リンパ組織、筋組織、神経組織、痰組織などが挙げられる。試料は、固体であっても液体であってもよく、DNA、RNA、cDNA、体液(血液又は尿など)、細胞、細胞調製物、又はその可溶性画分若しくは培地アリコット、染色体、細胞小器官などであってもよい。
【0042】
[0042]用語「単一パッケージ」は、キットの構成要素が、1つ若しくは複数の容器の中に、又はそれと共に物理的に付随しており、製造、配送、販売又は使用のための単位とみなされることを意味する。容器としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:袋、箱、瓶、シュリンクラップパッケージ、ホチキス留め若しくは他の方法により添付された構成要素、又はそれらの組合せ。単一パッケージは、製造、配送、販売又は使用のための単位とみなされるように物理的に付随している個々の食品組成物の容器であってもよい。
【0043】
[0043]用語「特異的に結合する」は、2つの分子間で特殊且つ正確な相互作用が生じることを意味し、その作用は、分子の構造、特にその分子の側基に依存する。例えば、DNA分子の主溝中への調節タンパク質のインターカレーション、2つの一本鎖核酸間の骨格に沿った水素結合、又はタンパク質のエピトープと作動薬、拮抗薬若しくは抗体との間の結合。
【0044】
[0044]用語「特異的にハイブリダイズする」は、当技術分野で一般に使用される既定条件下でそのようなハイブリダイゼーションを可能にする十分に相補的な配列の2つの一本鎖ポリヌクレオチド間がつながることを意味する(「実質的に相補的な」と呼ぶ場合もある)。例えば、この用語は、ポリヌクレオチドプローブが、非相補的な配列の一本鎖ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることを実質的に除外するように、ポリヌクレオチドプローブを、本発明の一態様による一本鎖のDNA又はRNA分子内に含有される実質的に相補的な配列とハイブリダイズすることを指すことがある。
【0045】
[0045]用語「標準」は、(1)使用される文脈について必要に応じ、例えば、試験物質が差次的な遺伝子発現をもたらすかどうかを判断するために、試験物質を投与された対象に由来する組織を含有する試料と比較する、対照若しくは基準物質を投与された、又は物質を一切投与されていない対象に由来する組織を含有する対照試料を意味する。
【0046】
[0046]用語「ストリンジェントな条件」は、以下を意味する:(1)50%(体積/体積)ホルムアミドに0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を添加し、750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウムを加えた中における42℃でのハイブリダイゼーション、(2)50%ホルムアミド、5倍SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5倍デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS及び10%硫酸デキストラン中における42℃でのハイブリダイゼーション;加えて、42℃、0.2倍SSC及び0.1%SDS中での洗浄若しくは0.015M NaCl、0.0015Mクエン酸ナトリウム、0.1%Na2SO4を用いての50℃での洗浄、又は同様の低イオン強度及び高温洗浄剤及び同様の変性剤を用いた同様の手順を用いる。
【0047】
[0047]用語「変異体」は、(1)ポリヌクレオチド配列からの又はそれへの1つ又は複数のヌクレオチドの任意の置換え、変異、改変、取換え、削除又は付加が為されており、元の配列と同じ又は実質的に同じ特性を有し、同じ又は実質的に同じ機能を発揮するポリヌクレオチド配列、並びに(2)ポリペプチド配列からの又はそれへの1つ又は複数のアミノ酸の任意の置換え、変異、改変、取換え、削除又は付加が為されており、元の配列と同じ又は実質的に同じ特性を有し、同じ又は実質的に同じ機能を発揮するポリペプチド配列を意味する。したがって、この用語には、一塩基多型(SNP)及び対立遺伝子変異体が包含され、ポリペプチド中の保存型及び非保存型のアミノ酸置換体が包含される。この用語は、更に、必要に応じ、ポリヌクレオチド又はポリペプチドを化学誘導体化したもの、及びヌクレオチド又はアミノ酸を、天然には生じないヌクレオチド又はアミノ酸で置き換えたものを包含する。
【0048】
[0048]用語「仮想パッケージ」は、キットの構成要素に、他の構成要素の入手の仕方を使用者に指導する1つ又は複数の物理的又は仮想的なキット構成要素についての案内が付いていること、例えば、袋に、1つの構成要素と、キットの使用方法についての説明を入手するための、ウェブサイトへのアクセスの仕方、録音メッセージの聴き方、画像メッセージの見方、又は介護者若しくは指導者への連絡のとり方を使用者に指導する案内とが入っていることを意味する。
【0049】
[0049]本明細書で開示される方法及び組成物及び他の利点は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコール及び試薬に限定されないが、その理由は、当業者には理解されるであろうが、そうしたものは変化する可能性があるからである。更に、本明細書において使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであって、開示又は特許請求されている実施形態の範囲を限定することを意図したものではなく、それを実際に限定するものでもない。
【0050】
[0050]別に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語及び科学用語、専門用語及び頭字語は、本発明の1つ若しくは複数の技術分野、又はそうした用語が使用される1つ若しくは複数の技術分野における当業者により普通に理解される意味を有する。本明細書に記載のものと同様若しくは同等の任意の組成物、方法、製品、又は他の手段若しくは材料を本発明の実行において使用できるが、本明細書には、好ましい組成物、方法、製品、又は他の手段若しくは材料を記載してある。
【0051】
[0051]本明細書において引用又は参照する全ての特許、特許出願、刊行物及び他の参考文献は、規制法により認められる範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。そうした参考文献の検討は、その中で為される主張を単に要約することを意図したものである。そのような一切の特許、特許出願、刊行物若しくは参考文献、又はその任意の部分が、関連のある、有形の、又は先行する技術であることを認めるものではない。関連のある、有形の、又は先行する技術としてのそのような特許、特許出願、刊行物及び他の参考文献の一切の主張の正確性及び妥当性に異議を申し立てる権利は、明確に保護される。
【0052】
[0052]本発明
本発明は、部分的には、腹膜投与されると食物摂取、満腹感、脂質代謝及び/又は脂肪利用に影響することが公知の脂肪酸アミドが、体脂肪及び血漿トリグリセリドレベルの減少、食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加、及び長期にわたり規則的に経口投与された際に体脂肪量及び食物摂取に関連するいくつかの遺伝子の発現の付随的変化をもたらすという明確な実証から生まれたものである。すなわち、本明細書において例証するように、2つの異なる濃度でOEAを補給すると、動物モデルにおける4週間の試験期間にわたり、食物摂取量が顕著に減少し、脂肪組織量が減少し、血漿トリグリセリドが減少した。体脂肪量及び食物摂取量に関連する44個の遺伝子の発現を、OEA又はその加水分解抵抗性の誘導体を投与された対象の末梢組織におけるリアルタイムPCRにより、複数週の試験期間にわたり測定した。差次発現遺伝子の遺伝子産物は、本明細書の表1及び表2に記載してある。多変量統計分析により、こうした処置の結果生じる全体の遺伝子発現パターンが有意に変化することが示された。特に、この変化に関与する遺伝子には、脂肪レプチン及びFAAH(脂肪酸アミド加水分解)、腸のFAT/CD36及びOEA受容体GPR119の遺伝子があった。統計的な相関分析により、そうした遺伝子は脂肪体の減少と関連があることが示され、脂肪FAAHは、食物摂取量の減少に主に関連があることが見出された。
【0053】
[0053]表1及び表2に記載のタンパク質を、異なる基準に基づいて複数群に分ける。まず、処置動物対非処置動物における各遺伝子の差次的発現の統計分析に基づいてタンパク質を4つの群に分ける。第1の「群」は、表1及び表2に列挙してある全てのタンパク質を包含する。第2の群、A群は、処置動物と非処置動物との間の遺伝子発現の差がp<0.05のレベルで統計的に有意であったタンパク質を表す。第3の群、B群は、処置動物と非処置動物との間の遺伝子発現の差がp<0.01のレベルで統計的に有意であったタンパク質を表す。第4の群、C群は、処置動物と非処置動物との間の遺伝子発現の差がp<0.001のレベルで統計的に有意であったタンパク質を表す。
【0054】
[0054]第2に、タンパク質の機能又は生理学的役割に基づいてタンパク質を群に分ける。こうした機能には以下が含まれる:脂質β−酸化、脂質生成、脂質輸送、インスリンシグナル伝達、食物摂取の制御、脂肪酸エタノールアミドの代謝又はシグナル伝達及びグルコース代謝。
【0055】
[0055]このようにして、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、及び食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加(本明細書においては体脂肪減少/満腹感増加(RBF/IS、reduced body fat/increased satiety)表現型と呼ぶ)が現れている(これらは全て、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び/又は脂肪利用に影響する物質(すなわち、OEA及びその誘導体)の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる)対象において差次的に発現されるいくつかの遺伝子が同定されている。こうした遺伝子を形成するポリヌクレオチド及びその断片、並びにそのコードされたタンパク質及び断片は、例えば、RBF/IS表現型への変化を測定するための診断アッセイ若しくは予測アッセイ、又は試験化合物をRBF/IS表現型を促進若しくは支持するためのその有効性についてスクリーニングするのに有用なアッセイにおいて使用できる。
【0056】
[0056]本発明の一定の実施形態では、少なくとも1つの差次発現遺伝子の発現量を測定できる。好ましい実施形態では、2つ以上の差次発現遺伝子の発現量を測定して、遺伝子発現パターン又は遺伝子発現プロファイルを得てもよい。より好ましくは、差次発現遺伝子の多様性の測定を実施して、遺伝子発現のパターン又はプロファイルについての追加的な情報を得てもよい。
【0057】
[0057]本発明の多様な実施形態では、遺伝子発現の変化は、2つの様式:(1)特定の遺伝子により産生されるmRNAの検出により転写量を測定すること、及び(2)特定の転写物により産生されるタンパク質の検出により翻訳量を測定することの一方又は両方において測定してもよい。
【0058】
[0058]発現量の増減は、ポリヌクレオチドの定量化のための当技術分野で周知の方法のいずれかを用いてRNAレベルで測定でき、そのような方法は、例えば、PCR法(限定するものではないが、RT−PCR及びqPCRなど)、リボヌクレアーゼ保護法、ノーザンブロット法、マイクロアレイ法、マクロアレイ法及び他のハイブリダイゼーション法などである。本発明によりアッセイされ又は調べられる遺伝子は、典型的には、mRNA又は逆転写mRNAの形態のものである。遺伝子は、クローニング及び/又は増幅してもよい。クローニング自体は集団内における遺伝子の表現を偏らせるようには見えない。しかし、入手源としてはポリA+RNAを使用することが好ましいと考えられ、その理由は、より少ない加工ステップを用いて使用できるからである。
【0059】
[0059]したがって、本発明の一態様は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な投与の結果としてのRBF/IS表現型を呈する動物において差次的に発現される複数のポリヌクレオチド又はそれらから発現されるタンパク質を含む組合せであって、該ポリヌクレオチドが、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される組合せを提供する。一実施形態では、ポリヌクレオチド又は発現されるタンパク質は、表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される。別の実施形態では、ポリヌクレオチド又は発現されるタンパク質は、表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される。別の実施形態では、ポリヌクレオチド又は発現されるタンパク質は、表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される。別の実施形態では、ポリヌクレオチド又は発現されるタンパク質は、以下の機能のうち1つ又は複数に関与するタンパク質をコードする遺伝子から選択される:脂質β−酸化、脂質生成、脂質輸送、インスリンシグナル伝達、食物摂取の制御、脂肪酸エタノールアミドの代謝又はシグナル伝達及びグルコース代謝。
【0060】
[0060]一実施形態では、この組合せは、2つ以上のポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドから発現されるタンパク質を含む。好ましくは、この組合せは、特定の群及び使用について必要に応じ、複数のポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドから発現されるタンパク質、一般には、約5個、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個、約60個、約70個、約80個、約90個、約100個又はそれを超えるポリヌクレオチド若しくはタンパク質又はその断片を含む。この組合せが1つ又は複数の断片を含む場合、断片は、元のポリヌクレオチド又はタンパク質の特性及び機能を保持する任意のサイズ(好ましくは、元のものの約30%、約60%又は約90%から)のものであってもよい。
【0061】
[0061]ポリヌクレオチド及びタンパク質は、任意の動物、好ましくはイヌ及びネコ、最も好ましくはイヌに由来するものであってもよい。異なる動物種に由来するポリヌクレオチド及びタンパク質の相同体は、当業者に周知の標準的な情報探索法及び分子法により得られる。例えば、異なる種に由来する当該遺伝子についての情報(配列情報など)をもたらす入手源の一覧を生成する公共的にアクセス可能ないくつかのデータベースの1つに、遺伝子又はタンパク質の名称又は機能の説明を入力してもよい。そのような1つのデータベースは「Information Hyperlinked over Proteins(iHOP)データベースであり、インターネットで以下のurlによりアクセスできる:ihop−net.org。或いは、公知の遺伝子又はタンパク質の公共データベース受入番号を利用して、当該遺伝子又はタンパク質についての配列情報にアクセスし、配列比較検索を用いて他の種における相同体又は相同分子種について検索してもよい。例えば、マウス由来の遺伝子又はタンパク質のGenBank受入番号をアメリカ国立衛生研究所の国立生物工学情報センター(NCBI)のデータベースに入力し、それにより当該マウス遺伝子についてのDNA又はポリペプチド配列にアクセスしてもよい。同じデータベースを用いて、マウスのDNA若しくはタンパク質配列、又は十分な長さのその断片についてBLAST検索を実施して、遺伝子又はタンパク質を定義し、他の種(例えばイヌ)由来の十分な相同性を有する配列を同定してもよい。次に、所望の他の種由来の配列の受入番号をデータベースに入力して、それらの完全長のヌクレオチド又はタンパク質配列に関する情報、並びに他の説明的な情報を得てもよい。
【0062】
[0062]本発明の別の態様は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果としてのRBF/IS表現型を呈する動物における差次的な遺伝子発現を検出するための2つ以上のプローブを含む組成物を提供する。このプローブは、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含んでもよい。或いは、このプローブは、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合するポリペプチド結合剤を含んでもよい。一定の実施形態では、ポリペプチド結合剤は抗体であり、特定の一実施形態では、ポリペプチド結合剤はモノクローナル抗体である。一実施形態では、プローブは、表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは、プローブは、表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する。別の実施形態では、プローブは、表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは、プローブは、表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する。また別の実施形態では、プローブは、表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは、プローブは、表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する。別の実施形態では、プローブは、以下から選択される機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は当該タンパク質を含むポリペプチドと特異的にハイブリダイズ又は特異的に結合する:脂質β−酸化、脂質生成、脂質輸送、インスリンシグナル伝達、食物摂取の制御、脂肪酸エタノールアミドの代謝又はシグナル伝達及びグルコース代謝。好ましい一実施形態では、プローブは、イヌ又はネコのポリヌクレオチド又はポリペプチドと特異的にハイブリダイズ又は結合する。
【0063】
[0063]好ましくは、この組成物は、特定の群及び使用について必要に応じ、ポリヌクレオチド又はタンパク質又はそれらの断片を検出するための、複数のプローブ、一般には約5個、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個、約60個、約70個、約80個、約90個、約100個、約200個、約500個又はそれを超えるプローブを含む。単一の標的遺伝子又はタンパク質用の複数の異なるプローブを利用して、プローブを利用するアッセイの感度又は正確性を改良してもよいことは、当業者には理解されよう。例えば、標的ポリヌクレオチド上の異なる配列と特異的にハイブリダイズするいくつかのオリゴヌクレオチドプローブを用いてもよい。同様に、標的タンパク質上の異なるエピトープに免疫学的に特異的ないくつかの抗体を利用してもよい。
【0064】
[0064]試料を調べるための1つ又は複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドプローブは、本明細書に列挙してある遺伝子のいずれかについての配列情報を用いて任意の種(好ましくはイヌ又はネコ)から調製してもよい。プローブは、実質的に排他的に、適切な相補的な遺伝子又は転写物と特異的にハイブリダイズするのに十分な長さのものであるべきである。一定の実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブは、長さが少なくとも約10、12、14、16、18、20又は25ヌクレオチドであろう。いくつかの実施形態では、少なくとも約30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチドの、より長いプローブが望ましく、いくつかの実施形態では、約100ヌクレオチドより長いプローブが適切と考えられる。プローブは、機能性タンパク質をコードする完全長の配列を含んでもよい。核酸プローブは、例えば、ヌクレオチドからのin vitro合成、天然源からの単離及び精製、又は本発明のポリヌクレオチドの酵素的切断など、当業者に公知の方法を用いて作製又は入手する。
【0065】
[0065]本発明のポリヌクレオチドとハイブリダイズされる核酸プローブを含むハイブリダイゼーション複合体は、当技術分野で公知のさまざまな方法により検出できる。本発明の一定の実施形態では、固定化された核酸プローブをポリヌクレオチド及びその発現パターンの迅速且つ特異的な検出に使用してもよい。典型的には、核酸プローブは固体支持体に連結し、標的ポリヌクレオチド(例えば、遺伝子、転写産物、単位複製配列、又は最も一般的には増幅した混合物)をプローブとハイブリダイズする。プローブ又は標的のいずれか又は両方を、典型的にはフルオロフォア又は他のタグ(ストレプトアビジンなど)で標識できる。標的が標識されると、結合した蛍光を検出することによりハイブリダイゼーションを検出しうる。プローブを標識すると、ハイブリダイゼーションは、典型的には標識の消光により検出される。プローブ及び標的の両方を標識する場合、ハイブリダイゼーションの検出は、典型的には、結合した2つの標識の接近の結果生じる色の変化をモニターすることにより実施される。さまざまな標識化戦略、標識など(特に蛍光ベースの施用について)は、当技術分野で公知である。
【0066】
[0066]別の実施形態では、プローブは、本明細書において列挙してあるポリペプチドの1つ若しくは複数又はその断片の発現により作製されるポリペプチドと特異的に結合するポリペプチド結合剤を含む。そのようなタンパク質結合プローブは、表1及び表2において同定されているタンパク質又はその断片のいずれかについて入手可能な配列情報を用いて調製してもよい。
【0067】
[0067]試料中のタンパク質のレベルを決定するために使用できるアッセイ法も、当業者には周知である。そのようなアッセイ法としては、放射性免疫測定法、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット分析及びELISAアッセイが挙げられる。抗体を利用するアッセイ法においては、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は両方とも本発明における使用に適している。当業者には十分理解されていると考えられるが、そのような抗体は、特定のタンパク質、又はタンパク質のエピトープ、又はタンパク質断片に免疫学的に特異的であってもよい。タンパク質又はペプチドに免疫学的に特異的なポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を作製する方法も当技術分野では周知である。
【0068】
[0068]本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載の遺伝子の発現により作製されるタンパク質の検出及び定量化に抗体を利用してもよい。タンパク質は、免疫沈降、親和性分離、ウェスタンブロット分析などにより検出してもよいが、好ましい方法は、抗体が固体支持体上で固定化され、固定化された抗体に標的タンパク質又はペプチドが暴露されるELISA型の方法を利用する。プローブ若しくは標的のいずれか又は両方を標識できる。さまざまな標識化戦略、標識などは、当技術分野では公知である。
【0069】
[0069]本発明の別の態様は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じるRBF/IS表現型を呈する動物における差次的な遺伝子発現を検出するための複数のプローブを含むアレイが取り付けられた固体支持体を備えるデバイスを提供する。本発明の特に好ましい実施形態では、本明細書において定義される通りのRBF/IS表現型対正常な表現型において差次的に発現される複数の遺伝子の発現パターン又はプロファイルが、標的のポリヌクレオチド又はタンパク質を検出するためのプローブのアレイを利用して観察される。このデバイスは、表1又は表2又はそのサブセット、すなわちA群、B群、C群、又は以下から選択される機能を含む機能性サブセットに記載の遺伝子産物をコードする遺伝子の差次的発現を検出するために使用してもよい:脂質β−酸化、脂質生成、脂質輸送、インスリンシグナル伝達、食物摂取の制御、脂肪酸エタノールアミドの代謝又はシグナル伝達及びグルコース代謝。好ましい一実施形態では、このデバイスは、イヌ又はネコに由来する遺伝子の差次的発現を検出するために使用される。
【0070】
[0070]一実施形態では、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドプローブのアレイを利用してもよく、別の実施形態は、差次的に発現される遺伝子産物と特異的に結合する抗体又は他のタンパク質のアレイを利用してもよい。そのようなアレイは、例えば、固体支持体上でのin−situ合成、又は予め合成したプローブのミクロプリンティング法による固体支持体への取付けなど、公知の方法により特別に作製してもよい。好ましい実施形態では、核酸又はタンパク質結合プローブのアレイは、本明細書に記載の差次発現遺伝子又は遺伝子断片の2つ以上により作製される転写物又はタンパク質を特異的に検出するために特別に作製する。
【0071】
[0071]本発明の別の態様は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物において差次的に発現される1つ又は複数の遺伝子の差次的発現を、正常動物又は非処置動物と比較して検出する方法を提供する。この方法は一般に、以下を含む:(a)(i)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、或いは(ii)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質又はその断片から選択される2つ以上のポリペプチドと特異的に結合するポリペプチド結合剤を含むプローブを供給することと、(b)プローブを、RBF/IS表現型を呈する動物に由来するmRNA若しくはタンパク質を含む試料に、ハイブリダイゼーションを可能にする様式で加えるか、又はプローブを試料中のmRNA若しくはタンパク質と結合させることにより、試料中でハイブリダイゼーション複合体若しくは結合複合体を形成することと、(c)場合により、プローブを、正常な動物に由来するmRNA若しくはタンパク質を含む別の試料に、ハイブリダイゼーションを可能にする様式で加えるか、又はプローブを第2の試料中のmRNA若しくはタンパク質と結合させることにより、他の試料中でハイブリダイゼーション複合体若しくは結合複合体を形成することと、(d)1つ又は複数の試料中でハイブリダイゼーション複合体を検出することと、(e)第1の試料に由来するハイブリダイゼーション複合体若しくは結合複合体を、標準に由来する、又は場合により他の試料に由来するハイブリダイゼーション複合体若しくは結合複合体と比較することであって、標準又は任意選択の他の試料と比較した場合に、試料中のハイブリダイゼーション又は結合の量の間の少なくとも1つの差が、RBF/IS表現型を呈する動物において、当該表現型を呈さない動物と比較して差次的に発現される1つ又は複数の遺伝子の差次的発現を示すこと。
【0072】
[0072]この方法は、表1又は表2又はそのサブセット、すなわち、A群、B群、C群、又は以下から選択される機能を含む機能性サブセットに記載の遺伝子産物をコードする遺伝子の差次的発現を検出するために用いてもよい:脂質β−酸化、脂質生成、脂質輸送、インスリンシグナル伝達、食物摂取の制御、脂肪酸エタノールアミドの代謝又はシグナル伝達及びグルコース代謝。好ましい一実施形態では、この方法は、イヌ又はネコに由来する遺伝子の差次的発現を検出するために用いられる。特定の実施形態では、プローブは、好ましくはアレイ中で基質と結合する。
【0073】
[0073]ステップ(c)、並びにステップ(d)及び(e)の一部は任意選択であり、2つ以上の試験系の比較的同時の比較が行われる場合に使用される。しかし、好ましい一実施形態では、比較に用いられる標準は、この方法を用いて予め入手したデータに基づく。
【0074】
[0074]これらのプローブを試料に暴露して、検出され標準のものと比較されるハイブリダイゼーション複合体又は結合複合体を形成する。試料及び標準に由来するハイブリダイゼーション複合体又は結合複合体の間との差により、ポリヌクレオチドの差次的発現、ひいては、試料中のRBF/IS表現型対正常な表現型において差次的に発現される遺伝子が示唆される。好ましい一実施形態では、プローブは、本発明により同定された遺伝子又は遺伝子断片の1つ又は複数により作製されたポリヌクレオチド又はその断片を特異的に検出するように作製される。ハイブリダイゼーション複合体を検出する方法は、当業者に公知である。
【0075】
[0075]一実施形態では、この方法は、アッセイを実施する前に、動物又は試料を試験物質に暴露することを更に含む。次に、比較により、試験物質が処置動物対非処置動物において差次的に発現される遺伝子の発現を変化させるかどうかが示される。
【0076】
[0076]RBF/IS表現型の診断的又は予後決定に有用な別の実施形態では、検出は、間隔を置いて、例えば、動物においてRBF/IS表現型を誘導しようと試みた際の動物の進行をモニターするために実施する。
【0077】
[0077]本発明の別の態様は、試験物質が、長期にわたり規則的に動物に投与されると、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響することにより、RBF/IS表現型を誘導するうえで有用である傾向があるかどうかを判断する方法を提供する。この方法は、典型的には以下を含む:(a)試験物質不在下での試験系において、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される2つ以上のポリヌクレオチドの転写産物又は翻訳産物を測定することにより第1の遺伝子発現プロファイルを決定することと、(b)試験物質存在下での試験系において、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される2つ以上のポリヌクレオチドの転写産物又は翻訳産物を測定することにより第2の遺伝子発現プロファイルを決定することと、(c)第1の遺伝子発現プロファイルを第2の遺伝子発現プロファイルを比較することであって、第1の遺伝子発現プロファイルと比較した場合の第2の遺伝子発現プロファイルの変化が、試験物質が、動物に投与された際に食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響を及ぼすうえで有用である傾向があることを示すこと。
【0078】
[0078]一定の実施形態では、この方法は、動物に投与した際に食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響することが公知の基準物質の存在下での試験系において、少なくとも第2の遺伝子発現プロファイルを、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される2つ以上のポリヌクレオチドの転写産物又は翻訳産物を測定することにより得られる基準又は標準の遺伝子発現プロファイルと比較するステップを更に包含してもよい。そのような物質は、例えば、OEA又はその加水分解抵抗性の誘導体であってもよい。
【0079】
[0079]一実施形態では、試験系は、培養細胞の集団を含む。本発明によるRBF/IS関連遺伝子を含む核酸構築体を、培養した宿主細胞中に導入する。宿主細胞は、哺乳動物の細胞株(NIH3T3、CHO、HELA及びCOSなどであるがこれらに限定されない)であってもよいが、非哺乳動物の細胞(酵母、細菌及び昆虫細胞など)も使用できる。遺伝子のコード配列は、利用されることになる特定の宿主細胞に適した適切な発現調節エレメントと操作可能な状態で連結する。核酸構築体は、当技術分野において許容可能な任意の手段(形質移入、形質転換、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔法及びリポフェクションなどであるがこれらに限定されない)により宿主細胞中に導入できる。そのような手法は当技術分野では周知且つ慣例的なものである。形質転換細胞は、RBF/IS関連遺伝子の発現を調節する化合物を同定するためにも使用できる。
【0080】
[0080]遺伝子発現アッセイは、レポーター遺伝子と操作可能な状態で連結する選択されたRBF/IS関連遺伝子のプロモーターを含む遺伝子構築体を使用して実行できる。レポーター構築体は、適当な培養細胞中に導入してもよく、そのような細胞としては、限定するものではないが、前述の標準的な宿主細胞系、又は脂肪細胞、筋細胞若しくは肝細胞など、対象から単離されたばかりの細胞が挙げられる。アッセイは、試験化合物の存在下又は不在下でレポーター遺伝子の発現をモニターすることにより実施する。
【0081】
[0081]好ましい一実施形態では、試験系は動物を含む。典型的には、試験化合物を対象に投与し、対象の遺伝子発現プロファイルを分析して、試験化合物が本発明の遺伝子又は遺伝子産物の転写又は翻訳に及ぼす効果を決定する。遺伝子発現を、in situ又はex vivoで分析して、試験化合物の効果を決定することができる。別の実施形態では、試験化合物を対象に投与し、試験化合物が所望のタンパク質の活性に及ぼす効果を決定するための当技術分野において適した任意の手段により、遺伝子から発現されたタンパク質の活性をin situ又はex vivoで分析する。加えて、試験化合物を対象に投与すると、当該化合物の生理学的、全身的及び身体的な効果だけでなく、化合物の潜在的な毒性も評価できる。
【0082】
[0082]試験物質は、RBF/IS表現型を呈する動物において差次的に発現されるポリヌクレオチド又は遺伝子に影響を及ぼす可能性のある任意の物質であってもよい。好ましい試験物質は、OEAの誘導体などの脂肪酸アミドである。他の試験物質としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:アミノ酸;タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、小分子、巨大分子、ビタミン、ミネラル、単糖;複合糖;多糖;炭水化物;中鎖トリグリセリド(MCT);トリアシルグリセリド(TAG);DHA、EPA、ALAなどのn−3(ω−3)脂肪酸;LA、γ−リノレン酸(GLA)及びARAなどのn−6(ω−6)脂肪酸;SA、複合リノール酸(CLA);レシチンなどのコリン源;ビタミンA、及びカロテノイド(例えば(β−カロテン)などその前駆体、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)及びビタミンD3(コレカルシフェロール)などのビタミンD源、トコフェロール(例えばα−トコフェロール)及びトコトリエノールなどのビタミンE源、並びにビタミンK1(フィロキノン)及びビタミンK2(メナジオン)などのビタミンK源を含む脂溶性ビタミン;リボフラビン、ナイアシン(ニコチンアミド及びニコチン酸など)、ピリドキシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン及びコバラミンなどのビタミンB群を含む水溶性ビタミン;並びにビタミンC(アスコルビン酸);上に列挙したビタミンのいくつか、特にビタミンE及びCなどの酸化防止剤;更には、カテキン、ケルセチン及びテアフラビンなどのビオフラボノイド;ユビキノンなどのキノン;リコペン及びリコキサンチンなどのカロテノイド;レスベラトロール;並びにα−リポ酸;L−カルニチン;D−リモネン;グルコサミン;S−アデノシルメチオニン;並びにキトサン。好ましい一実施形態では、試験物質は、食品に添加するか、又は補助食品として摂取できる栄養素である。
【0083】
[0083]前述の方法により同定される物質も、本発明の一部として企図される。
【0084】
[0084]本発明の別の態様は、動物におけるRBF/IS表現型を促進する方法を提供する。この方法は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質を、動物に長期にわたり規則的に経口投与することを含む。好ましくは、動物はイヌ又はネコである。典型的には、この物質は、少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも4週間又はそれより長期にわたり規則的に投与される。この物質の投与は、例えば、1カ月間、2カ月間、3カ月間、6カ月間若しくは9カ月間、又は1年間若しくはそれより長く、又は更には動物の生涯にわたり、無期限に継続してもよい。この物質は、一般に、少なくとも毎日投与されるが、投与計画は、物質の性質及び力価に依存することになる。したがって、投与は、例えば、1日2回若しくは3回など、より高頻度であってもよく、又は例えば、週に3回、週に2回、週に1回、1カ月に2回若しくは1カ月に2回など、より低頻度であってもよい。
【0085】
[0085]一定の実施形態では、この物質は脂肪酸アミドである。特に、この物質は、N−オレオイルエタノールアミド、又は(Z)−(R)−9−オクタデセンアミド,N−(2−ヒドロキシエチル,1−メチル)など、その加水分解抵抗性の誘導体である。他の実施形態では、この物質は、本明細書において先に記載したスクリーニング法により同定された物質である。
【0086】
[0086]一定の実施形態では、この物質を長期にわたり規則的に経口投与することにより、表1又は表2の1つ又は複数の遺伝子の発現の変化がもたらされる。特定の実施形態では、この物質の長期にわたる規則的な経口投与により、レプチン、脂肪酸アミド加水分解(FAAH)、FAT/CD36及びオレオイルエタノールアミド受容体GPR119から選択されるタンパク質をコードする1つ又は複数の遺伝子の発現の変化がもたらされる。
【0087】
[0087]通常の栄養所要量を補うための補助食品として利用する場合、この物質は、動物に直接投与してもよい。或いは、この物質は、飲料水などの液体を含め毎日の餌若しくは食品と接触させ若しくは混合し、又は栄養補助食品として補給することができる。毎日の餌若しくは食品と共に又はその中に組み込んで利用する場合、投与は当業者には周知であろう。投与は、動物用の食餌計画の一部として実施できる。例えば、食餌計画は、RBF/IS表現型を促進するのに有効な量で、動物がこの物質を規則的に摂取するようにさせることを含んでもよい。別の実施形態では、この物質は、動物において体脂肪を調節し又はRBF/IS表現型を促進するための1つ又は複数の薬剤、栄養補給食品又は栄養剤と共に動物に投与される。
【0088】
[0088]一定の実施形態では、この方法により投与される物質の1日又は定期的な用量は、体重1kg当たり約0.001g〜体重1kg当たり10gの範囲である。より詳細には、この用量は、体重1kg当たり0.01g、0.02g、0.03g、0.04g、0.05g、0.06g、0.07g、0.08g、0.09g又は0.1gを超える。他の実施形態では、この用量は、物質及び投与頻度によるが、体重1kg当たり0.2g、0.5g、1g、3g、5g、7g又は10g又はそれを超える量であってもよい。当業者は、対象に応じた用量及び投与計画の開発に精通している。
【0089】
[0089]本発明の別の態様は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質を投与された動物において差次的に発現される、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される1つ又は複数のポリヌクレオチドの発現レベルを同定する情報を含むデータベースと、使用者がデータベース中の情報を入手又は処理することができるようにするユーザーインターフェースとを備えるコンピューターシステムを提供する。このシステムは、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子から選択される1つ又は複数のポリヌクレオチド、及び/又は表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質と特異的に結合するポリペプチドの発現レベルを同定する情報を含むデータベースと、このデータベースとやりとりするための、特に、異なる動物又は動物の部類についての情報をインプット、処理及び精査するためのユーザーインターフェースとを備える。一実施形態では、このデータベースは、表1又は表2に列挙してある1つ又は複数のポリペプチドの活性レベルを同定する情報を更に含有する。別の実施形態では、このデータベースは、好ましくはさまざまな種に由来する、表1又は表2に列挙してあるようなポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ又は複数についての配列情報を更に備える。他の実施形態では、このデータベースは、1つ又は複数の動物種における遺伝子の推定説明を記載する追加的な情報を含有する。このコンピューターシステムは、データを含有及び処理し使用者とやりとりすることが可能な任意の電子機器、例えば、典型的なコンピューター、又は本発明を用い、動物の状態に関する結果をアウトプットすることが容易になるように設計された分析機器である。
【0090】
[0090]別の態様では、本発明は、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じるRBF/IS表現型の差次的な遺伝子発現を検出するための2つ以上のプローブのコレクションの入った容器を備えるキットを提供する。このキットは、使用及びキット構成要素について必要に応じ、単一パッケージ中の別々の容器又は仮想パッケージ中の別々の容器の中に、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物における差次的な遺伝子発現を検出するための2つ以上のプローブとを備え、該プローブが、(a)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、或いは(b)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質又はその断片から選択される2つ以上のポリペプチドと特異的に結合するポリペプチド結合剤を含み、(1)食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物における差次的な遺伝子発現を検出するための遺伝子発現アッセイにおけるプローブの使用方法についての説明書、(2)プローブを使用するための試薬及び備品、並びに(3)長期にわたり規則的に摂取するとRBF/IS表現型が誘導されることが公知の組成物のうち少なくとも1つを更に備える。好ましくは、プローブは、既知の位置で固体支持体に取り付ける。規則的に摂取するとRBF/IS表現型が誘導されることが公知の適当な基準物質は、N−オレオイルエタノールアミド又はその加水分解抵抗性の誘導体である。
【0091】
[0091]このキットが仮想パッケージを備える場合、キットは、1つ又は複数の物理的なキット構成要素と組み合わせた、仮想環境における説明書に限定される。一実施形態では、キットには、プローブ及び/又は他の物理的構成要素、並びにインターネットにより入手できるプローブ及び他の構成要素を使用するための説明書が入っている。このキットには、試料を混合するためのデバイス、プローブ及び試薬、並びにキットを使用するためのデバイス、例えば、試験管又は混合用具などの追加アイテムが入っていてもよい。
【0092】
[0092]別の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物及び方法の1つ又は複数についての情報又は説明書をやりとりするための手段を提供する。この手段は、情報又は説明書が入っている、文書、デジタル記憶媒体、光学記憶媒体、音声説明、画像ディスプレイなどを備える。例えば、コミュニケーション媒体は、ウェブサイト表示、キヨスク、小冊子、製品ラベル、添付文書、広告、チラシ、公共放送録音テープ、ビデオテープ、DVD、CD、コンピューター読込みチップ、コンピューター読込みカード、コンピューター読込みディスク、コンピューターメモリー、又はその任意の組合せであってもよい。有用な情報としては、(1)動物の健康及びウェルネスを促進する方法、並びに(2)本発明及びその使用について疑問がある場合に使用するための、動物の介護者のための連絡情報のうち1つ又は複数が挙げられる。有用な説明書としては、プローブを使用するための手法、遺伝子発現アッセイの実施、及び物質の投与量及び頻度についての説明書が挙げられる。このコミュニケーション手段は、本発明を使用する利点について指導するために有用である。
【実施例】
【0093】
[0093]本発明の多様な態様は、以下の実施例により更に例証できる。この実施例は、特に指示がない限り、例証目的でのみ記載するものであり、本明細書において開示する本発明の範囲を限定するものではないことは理解されよう。
実施例1
【0094】
[0094]OEAの慢性的な経口投与の生理学的効果及び生化学的効果を調査した。4週間の間、補助食品として供給することでマウスにOEAを慢性的に与え、他のパラメーターの中でも体重増加及び累積食物摂取量に及ぼす効果を試験した。
【0095】
[0095]材料及び方法
動物、食餌及び実験デザイン。生後8週間の時点で購入した成体のオスC3Hマウスを個別に収容し、異なる食餌及び水を2週間自由に摂取させて維持した。7匹のマウスを、体重によりランダム化することにより3つの群に割り当て、2週間、高脂肪食(1日のエネルギーの50%を脂質が占めた)を与えた。1kg当たりの高脂肪食の組成は、以下の通りであった:トウモロコシデンプン284.5g、ショ糖89.5g、カゼイン250g、セルロース50g、ビタミン混合物(V1001)10g、ミネラル混合物(S10026)35g及びキャノーラ油(UPAE、Jouy en Josas、フランス)281g。次に、体重1kg当たり0mg、10mg又は100mgのOEAを供給するように、異なるレベルで食餌にOEAを加えた。マウスを各食餌で4週間維持した。栄養学的介入の間、毎日の食物摂取量をモニターし、マウスを週3回計量した。
【0096】
[0096]試料採取。実験期間の終了時点で、イソフルランでの麻酔後に血液を抜き取ることによりマウスを屠殺した。遠心分離(1,000g、4℃で10分間)により血漿を得た。腸間膜、精巣上体、鼠径部及び腹膜の脂肪蓄積部、並びに肝臓、胃、小腸粘膜及び腓腹筋を切除し、液体窒素中に入れて凍結させた。血漿及び器官の試料を、分析まで−80℃で維持した。Beckman Coulter Systems SYNCHRON LX20(Beckman Coulter、Fullerton、USA)(グルコースについてはオキシダーゼ法、Beckman Coulter、TGについてはGPO法、Beckman Coulter、コレステロールについてはオキシダーゼ及びエステラーゼ法、Beckman Coulter)を用い、酵素的手順による屠殺の間に採集した血漿試料でトリグリセリド、グルコース、総コレステロール及びHDLコレステロールを直接測定した。HDLは、沈殿単離キット(Beckman Coulter、Fullerton、USA)を用いて特異的な可溶化により単離した。
【0097】
[0097]統計分析。結果は、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として決定した。Statviewソフトウェア(SAS institute、Cary、USA)を用い、一元配置ANOVAにより生理学的パラメーターの統計分析を実施した。統計的有意性は、P<0.05のレベルに設定した。
【0098】
[0098]結果
食物摂取。線形回帰分析により、実験期間にわたる累積食物摂取量から、脂肪の脂肪体量の全変動の最大40%を予測できた。OEA摂取マウスにおいては、食物摂取量はわずか(−6.5%)ではあるが有意に(P<0.05)減少した。1日の食物摂取量は、実験全期間にわたり対照と比較して、OEAの両方の用量について有意に異なった(二元配置ANOVA、P<0.01)。しかし、観察された効果は用量依存的ではなかった。
【0099】
[0099]生理学的及び生化学的なパラメーター。OEA処置は、肝腫大を誘導しなかった。OEAは、総脂肪の脂肪体重量の同様な減少を誘導した。腹膜脂肪組織は大部分が減少し、皮下脂肪蓄積の指標として取り出した鼠径部の脂肪体(脂肪貯蔵の主要部位)も、OEA摂取により減少した(P<0.05)が、腸間膜の脂肪体は、投与された用量に関わらず影響されないままであった。マウスの最終的な体重は影響を受けなかった。
【0100】
[00100]血漿トリグリセリドは、両方のOEA群において有意に減少した(10mg用量については−72%、P<0.05;100mg用量については−59%、P<0.05)。10mg/kgでは血漿総コレステロールが低下する傾向が観察され、この値は、体重1kg当たり100mgの処置では統計的有意に達した。
実施例2
【0101】
[00101]末梢組織において、リアルタイムPCRにより45個の遺伝子の発現量を測定して、満腹感、脂質代謝、脂肪利用、食物摂取及び体脂肪量に影響するオレオイルエタノールアミド(OEA)又は非加水分解性のOEA類似体(KDS5104)の経口投与に応答して差次的に発現される遺伝子を同定した。
【0102】
[00102]材料及び方法
動物、食餌及び実験デザイン。生後8週間の時点で購入した成体のオスC57bl6jマウスを個別に収容し、高脂肪食及び水を2週間自由に摂取させて維持した。7匹のマウスを3つの群にランダムに割り当て、2週間、高脂肪食(1日のエネルギーの50%を脂質が占めた)を与えた。1kg当たりの高脂肪食の組成は、以下の通りであった:カゼイン235g、ショ糖201g、L−シスチン3.5g、デンプン85g、マルトデキストリン116g、セルロース60g、ビタミン混合物(AIN−93M、UPAE、Jouy−en−Josas、フランス)12g、ミネラル混合物(AIN−93Vx、UPAE、Jouy−en−Josas、フランス)51.5g及びラード236g。次に、体重1kg当たり100mgの濃度でOEA又はKDS5104のいずれかを食餌に加えた。マウスを処置下で5週間維持した。
【0103】
[00103]化学合成。Roe、ETら、1952、J.American Oil Chemists’ Society、29、(1)、18〜22により、高オレイン酸のヒマワリ油及びエタノールアミン(Sigma−Aldlich、Saint−Louis、USA)からOEAを化学的に合成した。公知の手順を用いて、塩化オレオイルを、対応するアミン、すなわち、トリエチルアミン(Sigma−Aldlich、Saint−Louis、USA)の存在下の(R)−(−)−2−アミノプロパノール(Sigma−Aldlich、Saint−Louis、USA)と化学量論的反応させることにより、KDS5104[(Z)−(R)−9−オクタデセンアミド,N−(2−ヒドロキシエチル,1−メチル)]を合成した。反応は、0〜4℃、12時間の撹拌下にてジクロロメタン中で行った。真空下で溶媒を除去し、混合物をテトラヒドロフラン/エタノール(1:1)に溶解し、3N KOH(2当量)の水溶液で処理した。この溶液を30分間環流状態で維持し、その後、溶媒を除去した。残留物を酢酸エチルに溶解し、水、水酸化ナトリウム(2N)、塩酸(2N)及びブラインで順次洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した(Astaritaら、2006、J.Pharmacol.Exp.Ther.、318、(2)、563〜70を参照のこと)。
【0104】
[00104]試料採取。実験期間の終了時点で、イソフルランでの麻酔後に血液を抜き取り(心臓穿刺)によりマウスを屠殺した。遠心分離(1,000g、4℃で10分間)により血漿を得た。腸間膜、精巣上体、鼠径部及び腹膜の脂肪蓄積部、並びに肝臓、胃、小腸粘膜、膵臓及び腓腹筋を切除し、液体窒素中に入れて凍結させた。血漿、尿、糞便及び器官の試料を、分析まで−80℃で維持した。
【0105】
[00105]RNA抽出及び遺伝子発現。肝臓、腸粘膜、脂肪組織、腓腹筋、膵臓及び胃から、全RNAをTRIzol試薬(Invitrogen、Carlsbad、USA)で、製造者の説明書に従って抽出した。吸光度260nmからのナノ液滴を用いてRNA濃度を定量した。Applied Biosystem Thermal Cycler2720及びSuperscript II(Invitrogen、Carlsbad、USA)を用い、製造者のプロトコールに従って、cDNAを合成するための逆転写PCRを実施した。ハイスループットシステム(Biomek3000、Beckman&Coulter、Fullerton、USA)及びLightcycler480(Roche/Hitachi、Basel、スイス)をSYBR Green Masterミックス+キット(Eurogentec、Philadelphia、USA)と共に用いて前述のように入手したcDNAで、リアルタイム定量PCR(RT−qPCR)を実施した。Lightcyclerの製造者(Roche)からのオンラインによるインフォマティクス支援を用いて、選択された遺伝子用のプライマーを生成した。遺伝子を同定するために使用するデータベースは、(1)NCBIデータベース(GenBank)及び(2)IHOP(Information Hyperlinked over Protein)データベース(www.ihop−net.org/UniPub/iHOP/bng/)であった。値は、ΔΔ(Ct)(Livak KJ&Schmittgen TD、2001、Methods、25、402〜8)を用いて、対照マウス(体重1kg当たりOEA0mgの食餌)に対するRNAレベルの比率として表した。以下の遺伝子の遺伝子発現量を測定した(略称及びGenBank受入番号をカッコ内に示す)。
アシルCoAオキシダーゼ(ACO)(NM_015729)
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ活性化補助因子1α(PGC1α)(NM_008904)
ピルビン酸ホスホエノールカルボキシキナーゼ(PEP CK)(NM028994)
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)(NM_011144)
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)(NM_133249)
アシルCoAカルボキシラーゼ(ACC)(NM_133360)
空腹誘導脂肪細胞因子(Fiaf)(NM_020581)
脂肪酸輸送体/分化クラスター36(FAT/CD36)(NM_007643)
リポタンパク質リパーゼ(LPL)(NM_008509)
肝臓脂肪酸結合タンパク質1(LFABP1)(NM_017399)
タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)(NM_153565)
Aディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン17(Adam17)(NM_009615)
グレリン(NM_021488)
Gタンパク質共役受容体119(GPR119)(NM_181751)
コレシストキニン(CCK)(NM_031161)
ペプチドYY(PYY)(NM_145435)
レプチン(NM_008493)
アディポネクチン(NM_009605)
ビスファチン(NM_021524)
ステロール調節エレメント結合タンパク質−c1(SREBP1c)(NM_011480)
ステロール調節エレメント結合タンパク質−C2(SREBP2 l)(NM_033218)
脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)(NM_010173)
N−アシルスフィンゴシンアミド加水分解酵素様(NAAA)(NM_025972)
オレオイルエタノールアミド合成酵素(OEA合成酵素)(NM_178728)
脱共役タンパク質2(UCP2)(NM_011671)
グルコース輸送体4(Glut4)(NM_009204)
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(PPAR δ)(NM_011145)
カンナビノイド受容体1(CB1)(NM_007726)
インスリン受容体基質1(IRS1)(NM_010570)
グルコース6−ホスファターゼ(G6P)(NM_008061)
ステアロイル−補酵素Aデサチュラーゼ1(SCD1)(NM_009127)
脂肪酸合成酵素(FAS1)(NM_007988)
【0106】
[00106]統計分析。結果は、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表す。Statviewソフトウェア(SAS institute、Cary、USA)を用い、一元配置ANOVAにより生理学的パラメーター及び遺伝子発現データの統計分析を実施した。Statviewソフトウェアを用い、二元配置ANOVAを用いて、1日の食物摂取量を分析した。統計的有意性は、P<0.05レベル、P<0.01レベル及びP<0.001レベルで設定した。遺伝子発現データの統計分析については、値は、各マウス及び遺伝子について18S発現と比較して計算した。
【0107】
[00107]結果
OEA処置についての結果を表1に示す。KD5104処置についての結果を表2に示す。表中では以下の命名法を使用する:i:近位腸、s:胃、l:肝臓、m:筋肉、p:膵臓;at:脂肪組織、at ep:精巣上体脂肪組織;at per:腹膜脂肪組織。
【表1】

【0108】
[00108]表1を参照すると、多変量統計分析により、OEA処置時には遺伝子発現パターン全体が有意に変化することが示された。脂肪のレプチン及びFAAH(脂肪酸アミド加水分解酵素)、腸のFAT/CD36及びOEA受容体GPR119の遺伝子は、この変化に主に関与する遺伝子に属し、体脂肪体の減少とも関連があった。脂肪のFAAHは、食物摂取量の減少と主に関連があることが見出された。こうしたデータから、OEAの抗肥満作用は、脂肪組織においては脂肪酸アミド加水分解経路の調節に部分的に、又、近位腸においては新しく発見されたGPR119 OEAシグナル伝達経路の調節及び脂肪酸取込みの制御に全体を通して依存することが示される。
【表2】

【0109】
[00109]表2を参照すると、多変量統計分析により、KDS5104処置時には遺伝子発現パターン全体が有意に変化することが示された。肝臓FAS(脂肪酸合成酵素)、腸のCPT1及びオレオイルエタノールアミド受容体GPR119の遺伝子は、この変化に主に関与する遺伝子に属し、体脂肪体の減少とも関連があった。腸のGPR119は、食物摂取量の減少と主に関連があることが見出された。このデータから、KDS5104の抗肥満作用は、脂肪組織においては脂肪酸アミド加水分解経路の調節に部分的に、又、近位腸においては新しく発見されたGPR119内在性カンナビノイドシグナル伝達経路の調節及び脂肪酸取込みの制御に全体を通して依存することが示される。
【0110】
[00110]本明細書は、本発明の典型的な好ましい実施形態を開示及び例示してきており、具体的な用語を用いてはいるが、こうした用語は、一般的及び説明的な意味のみで用いられているものであり、限定、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を目的としたものではない。前述の教示に照らせば、本発明の多くの改変形及び変形が可能であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲内では、具体的に記載された以外の方法で本発明を実行できることは理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物において差次的に発現される複数のポリヌクレオチドを含む組合せであって、前記ポリヌクレオチドが、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される組合せ。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドが、表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドが、表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドが、表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが、脂質β−酸化に関与するタンパク質をコードする遺伝子から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、脂質生成に関与するタンパク質をコードする遺伝子から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが、脂質輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドが、インスリンシグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドが、食物摂取の制御に関与するタンパク質をコードする遺伝子から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項10】
前記ポリヌクレオチドが、脂肪酸エタノールアミドの代謝及びシグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチドが、グルコース代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項12】
前記物質が、少なくとも4週間にわたり規則的に摂取される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項13】
前記物質が、少なくとも1日1回摂取される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項14】
前記物質が脂肪酸アミドである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項15】
前記物質が、N−オレオイルエタノールアミド又はその加水分解抵抗性誘導体である、請求項14に記載の組合せ。
【請求項16】
前記物質が、(Z)−(R)−9−オクタデセンアミド,N−(2−ヒドロキシエチル,1−メチル)である、請求項15に記載の組合せ。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドが、イヌ又はネコのポリヌクレオチドである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項18】
食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物における差次的な遺伝子発現を検出するための2つ以上のプローブを含む組成物であって、前記プローブが、
a)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、或いは
b)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質又はその断片から選択される2つ以上のポリペプチドと特異的に結合するポリペプチド結合剤
を含む組成物。
【請求項19】
前記ポリペプチド結合剤が抗体である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記プローブが、表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記プローブが、表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記プローブが、表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
前記プローブが、脂質β−酸化、脂質生成、脂質輸送、インスリンシグナル伝達、食物摂取の制御、脂肪酸エタノールアミドの代謝若しくはシグナル伝達及びグルコース代謝から選択される機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は前記タンパク質を含むポリペプチドと、特異的にハイブリダイズ、又は特異的に結合する、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
前記プローブが、イヌ又はネコのポリヌクレオチド又はポリペプチドと特異的にハイブリダイズ又は結合する、請求項18に記載の組成物。
【請求項25】
食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物における差次的な遺伝子発現を検出するための複数のプローブを含むアレイが取り付けられた固体支持体を備えるデバイスであって、前記プローブが、
a)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、或いは
b)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質又はその断片から選択される2つ以上のポリペプチドと特異的に結合するポリペプチド結合剤
を含むデバイス。
【請求項26】
前記ポリペプチド結合剤が抗体である、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記プローブが、表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項28】
前記プローブが、表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項29】
前記プローブが、表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項30】
前記プローブが、脂質β−酸化、脂質生成、脂質輸送、インスリンシグナル伝達、食物摂取の制御、脂肪酸エタノールアミドの代謝若しくはシグナル伝達及びグルコース代謝から選択される機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は前記タンパク質を含むポリペプチドと、特異的にハイブリダイズ、又は特異的に結合する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項31】
前記プローブが、イヌ又はネコのポリヌクレオチド又はポリペプチドと特異的にハイブリダイズ又は結合する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項32】
食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物において差次的に発現される1つ又は複数の遺伝子の差次的発現を、正常な動物と比較して検出する方法であって、
a)(i)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、或いは(ii)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質又はその断片から選択される2つ以上のポリペプチドと特異的に結合するポリペプチド結合剤を含むプローブを供給するステップと、
b)前記プローブを、前記RBF/IS表現型を呈する動物に由来するmRNA若しくはタンパク質を含む試料に、前記試料中の前記mRNA若しくはタンパク質への前記プローブのハイブリダイゼーション又は結合を可能にする様式で加えることにより、前記試料中でハイブリダイゼーション複合体若しくは結合複合体を形成するステップと、
c)場合により、前記プローブを、正常な動物に由来するmRNA若しくはタンパク質を含む別の試料に、第2の試料中の前記mRNA若しくはタンパク質への前記プローブのハイブリダイゼーション又は結合を可能にする様式で加えることにより、前記他の試料中でハイブリダイゼーション複合体若しくは結合複合体を形成するステップと、
d)前記1つ又は複数の試料中で前記ハイブリダイゼーション複合体を検出するステップと、
e)第1の試料に由来するハイブリダイゼーション複合体若しくは結合複合体を、標準、又は場合により前記他の試料に由来する前記ハイブリダイゼーション複合体若しくは結合複合体と比較するステップであって、前記標準又は前記任意選択の他の試料と比較した場合に、前記試料中のハイブリダイゼーション又は結合の量の間の少なくとも1つの差が、前記RBF/IS表現型を呈する動物において差次的に発現される前記1つ又は複数の遺伝子の差次的発現を示すステップと
を含む方法。
【請求項33】
前記プローブが、表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記プローブが、表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記プローブが、表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするか、或いは表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質を含むポリペプチド又はその断片と特異的に結合する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記プローブが、脂質β−酸化、脂質生成、脂質輸送、インスリンシグナル伝達、食物摂取の制御、脂肪酸エタノールアミドの代謝若しくはシグナル伝達及びグルコース代謝から選択される機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は前記タンパク質を含むポリペプチドと、特異的にハイブリダイズ、又は特異的に結合する、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記プローブが、イヌ又はネコのポリヌクレオチド又はポリペプチドと特異的にハイブリダイズ又は結合する、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記プローブが基質と結合する、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記プローブがアレイの中にある、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記検出するステップが、間隔を置いて実施され、動物において前記RBF/IS表現型を誘導しようと試みた際の前記動物の進行をモニターするために用いられる、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
試験物質が、動物に投与されると、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響することにより、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を促進するうえで有用である傾向があるかどうかを判断する方法であって、
a)前記試験物質不在下での試験系において、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される2つ以上のポリヌクレオチドの転写産物又は翻訳産物を測定することにより第1の遺伝子発現プロファイルを決定するステップと、
b)前記試験物質存在下での試験系において、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される2つ以上のポリヌクレオチドの転写産物又は翻訳産物を測定することにより第2の遺伝子発現プロファイルを決定するステップと、
c)前記第1の遺伝子発現プロファイルを前記第2の遺伝子発現プロファイルと比較するステップであり、前記第1の遺伝子発現プロファイルと比較した場合の前記第2の遺伝子発現プロファイルの変化が、動物に投与されると前記試験物質は食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響を及ぼすうえで有用である傾向があることを示すステップと
を含む方法。
【請求項42】
動物に投与されると食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうちの1つ又は複数に影響することが公知の基準物質の存在下での試験系において、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される2つ以上のポリヌクレオチドの前記転写産物又は翻訳産物を測定することにより得られる基準の遺伝子発現プロファイルと少なくとも前記第2の遺伝子発現プロファイルとを比較するステップを更に包む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記試験系が培養細胞の集団を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記試験系が動物を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記転写産物又は翻訳産物が、表1若しくは表2のA群に列挙してあるタンパク質をコードするか、又は前記タンパク質若しくはその断片を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記転写産物又は翻訳産物が、表1若しくは表2のB群に列挙してあるタンパク質をコードするか、又は前記タンパク質若しくはその断片を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記転写産物又は翻訳産物が、表1若しくは表2のC群に列挙してあるタンパク質をコードするか、又は前記タンパク質若しくはその断片を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記転写産物又は翻訳産物が、脂質β−酸化、脂質生成、脂質輸送、インスリンシグナル伝達、食物摂取の制御、脂肪酸エタノールアミドの代謝若しくはシグナル伝達及びグルコース代謝から選択される機能を有するタンパク質をコードするか、又は前記タンパク質を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記試料が、イヌ又はネコに由来するmRNA又はタンパク質を含有する、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記遺伝子発現プロファイルが、間隔を置いて決定され、前記動物において前記RBF/IS表現型を経時的に誘導する前記試験化合物の効果をモニターするために用いられる、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
動物に投与されると、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響することにより、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を促進する傾向があると、請求項41に記載の方法により同定される物質。
【請求項52】
体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む、動物における表現型(RBF/IS表現型)を促進する方法であって、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質を、前記動物に長期にわたり規則的に経口投与するステップを含む方法。
【請求項53】
前記物質が、少なくとも4週間にわたり規則的に投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記物質が、少なくとも1日1回投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記物質が脂肪酸アミドである、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記物質が、N−オレオイルエタノールアミド又はその加水分解抵抗性の誘導体である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記物質が、(Z)−(R)−9−オクタデセンアミド,N−(2−ヒドロキシエチル,1−メチル)である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記物質の長期にわたる規則的な経口投与により、表1又は2の1つ又は複数の遺伝子の発現の変化がもたらされる、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記物質の長期にわたる規則的な経口投与により、レプチン、脂肪酸アミド加水分解(FAAH)、FAT/CD36及びオレオイルエタノールアミド受容体GPR119から選択されるタンパク質をコードする1つ又は複数の遺伝子の発現の変化がもたらされる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記物質が、請求項41の方法により同定される物質である、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
前記動物がイヌ又はネコである、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物において差次的に発現される、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される1つ又は複数のポリヌクレオチドの発現レベルを同定する情報を含むデータベースと、使用者が前記データベース中の前記情報を入手又は処理することができるようにするユーザーインターフェースとを備えるコンピューターシステム。
【請求項63】
単一パッケージ中の別々の容器、又は仮想パッケージ中の別々の容器の中に、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物における差次的な遺伝子発現を検出するための2つ以上のプローブを備えるキットであって、前記プローブが、(a)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、或いは(b)表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質又はその断片から選択される2つ以上のポリペプチドと特異的に結合するポリペプチド結合剤を含み、(1)食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物における差次的な遺伝子発現を検出するための遺伝子発現アッセイにおける前記プローブの使用方法についての説明書、(2)前記プローブを使用するための試薬及び備品、並びに(3)長期にわたり規則的に摂取すると前記RBF/IS表現型が誘導されることが公知の組成物のうち少なくとも1つを更に備えるキット。
【請求項64】
前記プローブが、既知の位置で固体支持体に取り付けられている、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
前記ポリペプチド結合剤が抗体である、請求項63に記載のキット。
【請求項66】
規則的に摂取すると前記RBF/IS表現型が誘導されることが公知の前記物質が、N−オレオイルエタノールアミド又はその加水分解抵抗性の誘導体である、請求項63に記載のキット。
【請求項67】
(1)食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物において差次的に発現される遺伝子の発現を検出するために、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、又はそれによりコードされる前記タンパク質若しくはその断片を使用すること、(2)食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物において差次的に発現される遺伝子の発現に試験物質が及ぼす影響を測定するために、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、又はそれによりコードされる前記タンパク質若しくはその断片を使用すること、(3)食物摂取、満腹感、脂質代謝のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物において差次的に発現される遺伝子の発現を調節する傾向があるかどうかを判断するための試験物質のスクリーニング用に、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、又はそれによりコードされる前記タンパク質若しくはその断片を使用すること、(4)食物摂取、満腹感、脂質代謝のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物において差次的に発現される1つ又は複数の遺伝子の発現を調節するために、表1若しくは表2に列挙してあるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、又はそれによりコードされる前記タンパク質若しくはその断片を使用すること、(5)食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響する物質の長期にわたる規則的な摂取の結果生じる、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少、並びに食物摂取量の減少により測定される満腹感の増加を含む表現型(RBF/IS表現型)を呈する動物において差次的に発現される、表1又は表2に列挙してあるタンパク質をコードする遺伝子又はその断片から選択される1つ又は複数のポリヌクレオチドの発現レベルを同定する情報を含むデータベースを備えるコンピューターシステムを使用すること、並びに(6)動物に投与されると、食物摂取、満腹感、脂質代謝及び脂肪利用のうち1つ又は複数に影響することにより、体脂肪及び血漿トリグリセリドの減少並びに満腹感の増加を含む表現型を促進するうえで有用である傾向がある表1又は表2に列挙してあるタンパク質をコードする1つ又は複数の遺伝子の差次的発現をもたらす能力により同定される物質を投与することのうち1つ又は複数についての情報又は説明書をやりとりするための手段であって、前記情報又は説明書が入っている、文書、デジタル記憶媒体、光学記憶媒体、音声説明又は画像ディスプレイのうち1つ又は複数を備える媒体。
【請求項68】
ウェブサイト表示、キヨスク、小冊子、製品ラベル、添付文書、広告、チラシ、公共放送録音テープ、ビデオテープ、DVD、CD、コンピューター読込みチップ、コンピューター読込みカード、コンピューター読込みディスク、コンピューターメモリー、又はその組合せである、請求項67に記載の手段。

【公表番号】特表2011−530308(P2011−530308A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522981(P2011−522981)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/004583
【国際公開番号】WO2010/019211
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】