説明

溶液中のタンパク質を安定化するための方法

【課題】可溶化した身体サンプルの溶液中の分析物を安定化するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、可溶化した身体サンプルの溶液中に、1以上の分析物を可溶化する方法を提供し、この方法は、i)界面活性剤およびカオトロピック因子から選択される変性剤を含有するサンプル媒体中に、哺乳動物被験体から採取した身体サンプルを可溶化する工程;ii)次いで、サンプルを含有するサンプル媒体を、一定の時間にわたり、少なくとも70℃を上回る温度に加熱する工程;ならびにiii)次いで、保存および運搬、ならびに、その後のイムノアッセイのために、サンプル媒体中に可溶化した1以上の分析物を安定化させる工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶化した身体サンプルの溶液中の分析物を安定化するための方法に関する。この方法は、適切なサンプル媒体中に、被験体から採取した身体サンプルを可溶化する工程、および、上記サンプル媒体を特定の時間にわたり加熱することによって、このサンプル媒体内に含まれる上記身体サンプルを安定化する工程を包含する。本発明のさらなる局面は、溶液中のタンパク質の変性イムノアッセイ(denaturing immunoassay)を行なう方法である。この方法は、タンパク質を含むサンプルを変性剤に接触させる工程、および、変性剤の存在下で上記サンプルを加熱して、タンパク質を変性させる工程を包含する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
医療診断において、適用される診断方法の結果に影響を与える重要な工程の一つは、サンプルの保存および運搬である。これは、特に、身体サンプル内で検出される分析物が、運搬および保存の間に、変性に供され得るか、または、他の方法で影響を及ぼされ得るという事実に起因するものである。診断的に関連する分析物の正確な測定を保証するために、サンプル内のこのような分析物の完全性は、分析が行なわれるまで、維持されなければならない。
【0003】
当該技術分野において、分析物に関する安定性の問題を克服するための1つのアプローチは、注意点を満たすことによって、サンプルのあらゆる運搬および保存を回避するような試験システムを探求しており、このシステムは、患者をケアする場所(この場所において、サンプルが採取される)における、直接的に身体サンプルの分析を可能にする。しかし、このようなアプローチは、適用され得るそれぞれの分析技術を制限する。実験装置を必要とする複雑な分析方法については、分析物の完全性を損ねることなく、サンプルを運搬および保存することが可能な方法が見つけられなければならない。
【0004】
身体サンプルの運搬を可能にする1つの方法は、サンプル内に含まれる細胞を保存すること、したがって、サンプル物質の細胞ベースの細胞学的検査または組織学的検査を可能にすることである。細胞学的検査のための保存溶液の例としては、Digeneのユニバーサル回収媒体(特許文献1)、Cytyc(登録商標)のPreservCyt(登録商標)溶液(特許文献2)、または、Surepath(登録商標)Cytorich(登録商標)溶液が挙げられる。これらの媒体は、保存された細胞サンプルの細胞学的な検査を可能にするために、細胞の形態を保存し、そしてまた、細胞のタンパク質の完全性を保存するように設計される。全てのこのような保存溶液は、固定剤としてアルコールを含有する。一般に、このような手順における分析物の保存は、化学的な保存物質を加えることによって達成される。細胞の完全性がもはや診断手順に必要とされない場合、溶液中の分析物の完全性は、同様に化学的な保存物質を加えることによって達成され得る。このアプローチの主な欠点は、保存物質が、しばしば、操作者に危害を加え得、そして、こぼれた場合に環境を損ね得る毒性物質であることである。さらに、廃棄物処理についての要件ならびに、廃棄物処理についての費用は、サンプルの安定化のために化学的な添加物を用いる場合に増加する。
【0005】
身体サンプルにおける分析物の安定性の問題を解決するための1つのさらなるアプローチは、運搬および保存の間に、身体サンプルを冷蔵または凍結することである。生物学的な物質は、特定の期間にわたって冷蔵することによって保存され得、そして、−20℃より低い温度で生物学的な物質を凍結することは、長期間にわたる保存に適用され得ることが公知である。しかし、この解決策は、エネルギーを消費し、そして、運搬プロセスに困難を突きつけるという欠点を有する。冷蔵、または、−20℃より低い温度が、運搬期間の全体にわたり、維持され得るということは、常には保証され得ない。このことは、分析物の安定性が、特定の温度条件下では証明されていない場合に、深刻な問題であることが分かる。それゆえ、加熱工程を包含する本発明の方法は、保存物質を加える必要も、冷蔵する必要もない、運搬および保存のためにサンプルを安定化するための、簡単な方法を提供する。
【0006】
さらに、変性剤を含有する媒体中で行った場合、加熱工程は、その後の分析工程の再現性および正確性に寄与し得る。加熱工程が、例えば、それぞれのサンプル中のタンパク質と相互作用するドデシル硫酸ナトリウムの存在下で行われる場合、タンパク質の変性した構造が得られる。この変性した構造は、特定の場合に、溶液中のタンパク質の再現性がありかつ定量的な決定に有益であり得る。
【0007】
当該分野において、変性タンパク質のバイオアッセイのための方法は、Laemmli−Systemの場合に、SDSの存在下での変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGEとして公知)において使用される。この場合、タンパク質を含有するサンプルがまた、タンパク質を変性させるようにSDSの存在下で加熱され、その後、電気泳動の工程において、そのサイズによって分離される。この方法における変性の目的は、SDSイオンを用いたタンパク質の均質なローディングと共にタンパク質の完全な線状化を可能にするための、タンパク質の変性である。このことは、タンパク質が、その本来の形態とは対照的に、分子の全体的なサイズに比例する電荷を示すことを確実にする。この全体的な方法は、分子のサイズによる分離を可能にする。
【特許文献1】国際公開第99/31273号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第0511430号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1)可溶化した身体サンプルの溶液中に、1以上の分析物を可溶化する方法であって、該方法は、以下:
i)界面活性剤およびカオトロピック因子から選択される変性剤を含有するサンプル媒体中に、哺乳動物被験体から採取した身体サンプルを可溶化する工程;
ii)次いで、該サンプルを含有するサンプル媒体を、一定の時間にわたり、少なくとも70℃を上回る温度に加熱する工程;ならびに
iii)次いで、保存および運搬、ならびに、その後のイムノアッセイのために、該サンプル媒体中に可溶化した該1以上の分析物を安定化させる工程
を包含する、方法。
(項目2)前記少なくとも1つの界面活性剤が、SDS、DOC、n−オクチルグリコシド、Triton X−100、Chap、Tween 20、N−ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル−アリールスルホネート、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩およびαオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホサクシネート、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル、カチオン性界面活性剤、塩化セチルトリメチルアンモニウム、Nonidet P−40、NP−40、Igepal CA−630、両性界面活性剤、CHAP、3−ドデシル−ジメチルアンモニオ−プロパン−1−スルホネート、ラウリルジメチルアミンオキシドを含む群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)前記70℃を上回る温度が、90℃と110℃との間の温度である、項目1または2のいずれか1項に記載の方法。
(項目4)前記90℃と110℃との間の温度が、95℃と99℃との間の温度である、項目3に記載の方法。
(項目5)前記一定の時間が、5分を上回る時間である、項目1〜4のいずれかに記載の方法。
(項目6)前記5分を上回る時間が、7分と30分との間の時間である、項目5に記載の方法。
(項目7)前記7分と30分との間の時間が、10分と27分との間の時間である、項目6に記載の方法。
(項目8)前記10分と27分との間の時間が、20分と25分との間の時間である、項目7に記載の方法。
(項目9)前記加熱する工程が、水浴、圧力鍋、高周波レンジ、UV加熱デバイスおよび加熱ブロックを含む群より選択される加熱デバイスにおいて行なわれる、項目1〜8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)前記身体サンプルが、分泌物、スワブ、洗浄物、体液、精液、細胞サンプルおよび組織サンプル、液体ベースの細胞学サンプル、血液、塗抹標本、痰、尿、便、脳脊髄液、胆汁、消化管分泌物、リンパ液、骨髄、吸引物、ならびに、針生検またはパンチ生検のような器官の生検、ならびに、(微細な)針による吸引物を含む群より選択される、項目1〜9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)前記1以上の分析物が、p13.5、p14、p15、p16(p16INK4aとも呼ばれる)、p19、p21、p27、p53、pRb、p14ARF、サイクリンA、サイクリンB、サイクリンE、MDM−2、CDC2、Id1、オステオポンチン、GRP、腎臓ジペプチダーゼ、her2/neu、TGFβIIレセプター、サイトケラチン(例えば、サイトケラチン8、サイトケラチン10、サイトケラチン18)、ムチン抗原(MUC1、MUC2、Tn、STn)、EpCAMおよびgカテニン、コンカナバリンAレセプター、GalNacトランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、レクチン(ConA、WGA、PNA、UEA I、DBA、SBA、SNA)、プラコフィリン、ビメンチン、CD抗原(例えば、CD3、CD16、CD18、CD4、CD8、CD56、CD19、CD2O)、HPV関連マーカー(例えば、HPV遺伝子L1、L2、E1、E2、E4、E5、E6もしくはE7に由来するもの)、CDC6、MCM2、MCM3、MCM4、MCM5、MCM6、MCM7、CDC7プロテインキナーゼ、Dbf4、CDC14プロテインホスファターゼ、CDC45およびMCM10、Ki67、Ki−S2、PCNA、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、Topo2α、転写因子、E2Fファミリーメンバー、Brn−3a、Brn−3b、またはPOLDを含む群より選択される、項目1〜10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)溶液中のタンパク質の変性イムノアッセイのための方法であって、該方法において、該イムノアッセイの少なくとも1つの工程が、1以上の分析物のタンパク質の変性された状態を維持することが可能な濃度の少なくとも1つの変性剤の存在下で行なわれる、方法。
(項目13)前記1以上の分析物のタンパク質が、変性剤の存在下で該タンパク質を加熱して、該タンパク質を変性させることによって変性される、項目12に記載の方法。
(項目14)項目12または13のいずれか1項に記載の方法であって、該方法は、以下:
i)タンパク質を含有するサンプルを、1以上の変性剤と接触させる工程、
ii)該サンプルを、該変性剤の存在下で一定の時間にわたって加熱して、該タンパク質を変性させる工程、および
iii)サンプル媒体中に可溶化した該サンプルを試験のための生検として用いて、1以上のタンパク質を検出するために、1以上のイムノアッセイを行なう工程
を包含する、方法。
(項目15)少なくとも1つの免疫化学的検出が、免疫沈降または免疫学的アッセイ、EIA、ELISA、RIA、側方流れアッセイ、貫流アッセイ、イムノクロマトグラフィーストリップおよびラテックス凝集アッセイを含む群より選択されるイムノアッセイである、項目12〜14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)前記少なくとも1つの変性剤が、界面活性剤、有機酸、無機酸、SDS、DOC、n−オクチルグリコシド、Triton X−100、Chap、Tween 20、ウレア、ホルムアミド、GuaSCN、ギ酸ウレア、酢酸ウレアおよびリン酸ウレア、N−ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル−アリールスルホネート、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩およびαオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホサクシネート、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル、カチオン性界面活性剤、塩化セチルトリメチルアンモニウム、Nonidet P−40、NP−40、Igepal CA−630、両性界面活性剤、CHAP、3−ドデシル−ジメチルアンモニオ−プロパン−1−スルホネート、ラウリルジメチルアミンオキシド、水酸化アルカリ、NaOH、ならびにKOHを含む群より選択される、項目12〜15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)前記少なくとも1つの変性剤が、前記アッセイに適用されるサンプル溶液中に、0.3%以上の濃度で存在する、項目12〜16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)イムノアッセイにおける、標準物質またはコントロールの目的のためのサンプルであって、該サンプルは、1以上の変性剤の存在下での生化学分析または免疫化学分析に適した分析物を含有し、そして、以下:
i)該分析物を変性剤に接触させる工程、
ii)該変性剤の存在下で一定の時間にわたり該分析物を加熱して、該分析物を変性させる工程、ならびに
iii)該分析物を、イムノアッセイにおいて使用するまで、該変性剤の存在下で保存および/または梱包する工程
を包含する方法に供される、サンプル。
(項目19)前記1以上の変性剤が、界面活性剤、有機酸、無機酸、SDS、DOC、n−オクチルグリコシド、Triton X−100、Chap、Tween 20、ウレア、ホルムアミド、GuaSCN、ギ酸ウレア、酢酸ウレアおよびリン酸ウレア、N−ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル−アリールスルホネート、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩およびαオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホサクシネート、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル、カチオン性界面活性剤、塩化セチルトリメチルアンモニウム、Nonidet P−40、NP−40、Igepal CA−630、両性界面活性剤、CHAPS、3−ドデシル−ジメチルアンモニオ−プロパン−1−スルホネート、ラウリルジメチルアミンオキシド、水酸化アルカリ、NaOHおよびKOHからなる群より選択され、前記分析物が、p13.5、p14、p15、p16(p16INK4aとも呼ばれる)、p19、p21、p27、p53、pRb、p14ARF、サイクリンA、サイクリンB、サイクリンE、MDM−2、CDC2、Id1、オステオポンチン、GRP、腎臓ジペプチダーゼ、her2/neu、TGFβIIレセプター、サイトケラチン(例えば、サイトケラチン8、サイトケラチン10、サイトケラチン18)、ムチン抗原(MUC1、MUC2、Tn、STn)、EpCAMおよびgカテニン、コンカナバリンAレセプター、GalNacトランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、レクチン(ConA、WGA、PNA、UEA I、DBA、SBA、SNA)、プラコフィリン、ビメンチン、CD抗原(例えば、CD3、CD16、CD18、CD4、CD8、CD56、CD19、CD2O)、HPV関連マーカー(例えば、HPV遺伝子L1、L2、E1、E2、E4、E5、E6もしくはE7に由来するもの)、CDC6、MCM2、MCM3、MCM4、MCM5、MCM6、MCM7、CDC7プロテインキナーゼ、Dbf4、CDC14プロテインホスファターゼ、CDC45およびMCM10、Ki67、Ki−S2、PCNA、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、Topo2α、転写因子、E2Fファミリーメンバー、Brn−3a、Brn−3b、またはPOLDを含む群より選択される、項目18に記載のサンプル。
(項目20)前記1以上の変性剤の濃度が、0.3%以上である、項目18または19のいずれか1項に記載のサンプル。
(項目21)人体から身体サンプルをサンプリングするためのサンプル回収バイアルであって、該バイアルは、界面活性剤、有機酸、無機酸、SDS、DOC、n−オクチルグリコシド、Triton X−100、Chap、Tween 20、ウレア、ホルムアミド、GuaSCN、ギ酸ウレア、酢酸ウレアおよびリン酸ウレア、N−ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル−アリールスルホネート、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩およびαオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホサクシネート、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル、カチオン性界面活性剤、塩化セチルトリメチルアンモニウム、Nonidet P−40、NP−40、Igepal CA−630、両性界面活性剤、CHAPS、3−ドデシル−ジメチルアンモニオ−プロパン−1−スルホネート、ラウリルジメチルアミンオキシド、水酸化アルカリ、NaOHおよびKOHを含む群より選択される変性剤を含むサンプル媒体を含有し、そして、該回収バイアルは、閉じたバイアル内での該サンプル媒体の110℃までの加熱を可能にするように設計されている、バイアル。
(項目22)項目1〜11のいずれか1項に記載の方法を行うための、自動加熱デバイスであって、該デバイスは、以下:
i)可溶化した身体サンプルの溶液を含む少なくとも1つの容器を、予め設定した温度まで加熱する工程;
ii)該サンプル液体内の温度を、予め設定した時間にわたり維持する工程;および
iii)インキュベーション時間の終わりを示す、聴覚、振動または視覚による信号を示す工程
を行なうように設計されている、デバイス。
(項目23)前記予め設定した温度が、90℃〜110℃の範囲内である、項目22に記載の加熱デバイス。
(項目24)前記予め設定した温度が、95℃〜99℃の範囲内である、項目22に記載の加熱デバイス。
(項目25)前記予め設定した時間が、7分〜30分の範囲内である、項目22に記載の加熱デバイス。
(項目26)前記予め設定した時間が、10分〜27分の範囲内である、項目22に記載の加熱デバイス。
【0009】
本発明は、可溶化身体サンプル中の分析物が、特定の期間にわたってサンプル溶液を加熱することにより安定化され得るという本発明者らの発見に基づく。本発明によれば、加熱は、例えば、適切なサンプル媒体中で実行されてもよい。本発明にしたがう方法は、当該分野で公知である方法の欠点を克服する。本発明者らにより見出された方法は、動物、ヒトまたは環境に危害を与え得る化学的な保存物質を使用せず、運搬および保存の全体的なプロセスの間に冷蔵する必要性も、他のエネルギーを消費する状態を維持する必要性も課さない。
【0010】
加熱工程の間にタンパク質を変性させた結果、変性バイオアッセイを使用したサンプル内のタンパク質の正確な測定が可能となる。当該分野で公知の方法とは対照的に、変性イムノアッセイは、固相に固定された検出プローブを使用する、サンプル溶液からの直接的な免疫化学的検出であり、このプローブは、サンプル内のタンパク質に特異的に結合する。電気泳動工程は、必ずしも全ての方法に包含されない。したがって、この方法の文脈における変性の目的および効果は、タンパク質の電荷に依存する均一なサイズの生成には起因しないが、部分的に線状化に起因し、それゆえ、タンパク質内の抗原性エピトープの改善された接近性に起因する。
【0011】
(発明の簡単な説明)
本発明は、本発明の以下の説明に示され、そして本明細書に提供される実施例により例示される本発明者らの発見に基づく。この発見は、身体サンプルの溶液中の分析物が加熱工程により安定化され得るということである。この加熱工程は、サンプルを安定化させるのに十分な温度までの期間、サンプル溶液を、好ましくは変性剤の存在下で加熱する工程を包含する。本発明はさらに、変性剤の存在下で加熱して溶液中のタンパク質を部分的に変性させることにより、溶液に含まれるタンパク質を変性させることによる、例えば、溶液中のタンパク質−分析物の正確かつ定量的または半定量的測定の改善、および続くタンパク質の免疫化学的な定量的または半定量的測定の改善に関する。この方法は、例えば、評価の過程の後に続くアッセイのための分析物の保存、または上記の身体サンプルの基礎分析物レベルに基づく診断の支持に適用可能である。この方法は、診断目的で取得されるか、またはどのような目的であれ取得される、あらゆる種類の身体サンプルに適用され得る。
【0012】
本発明の一局面は、可溶化身体サンプル溶液中の分析物を安定化するための方法である。この方法は、適切なサンプル媒体中で、被験体から得たサンプル物質を可溶化する工程、および、特定の期間、このサンプル媒体を加熱することにより、サンプル媒体中に含まれるサンプルを安定化する工程を包含する。この方法は、分析物の安定化に適しており、冷却または冷蔵が不可能な環境、および化学保存物質が回避されるか、または回避されるべき環境下で特に適用され得る。
【0013】
本発明の第二の局面は、溶液中のタンパク質の変性イムノアッセイのための方法であり、このイムノアッセイのうちの少なくとも一工程は、分析物タンパク質の変性状態を維持することを可能にする濃度の変性剤の存在下で実行される。
【0014】
本発明の第三の局面は、例えば、アッセイまたはアッセイキットのための標準サンプルまたはコントロールサンプルとして使用される、生化学的分析または免疫化学的分析に適する分析物を含むサンプルであり、このサンプルは、本発明の方法にしたがって処理されている。
【0015】
本発明の第四の局面は、本発明の方法にしたがってサンプルを加熱するためのデバイスであり、このデバイスは、タイマーおよび、サンプル収集バイアルへの適合に適切な穿孔を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の第五の局面は、サンプル収集バイアルであり、このサンプル収集バイアルは、本発明の方法にしたがう身体サンプルの安定化および/または変性に適する因子を含む媒体を含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明者らの発見に基づいて、身体サンプル中の分析物の安定化は、適切なサンプル媒体中でこの身体サンプルを可溶化し、続いて、サンプルの運搬および保存の前に、この可溶化サンプルを加熱工程に供することにより達成され得る。さらに、変性剤の存在下でのサンプルの加熱工程は、サンプル中の分析物の正確な定量的測定に寄与し得る。
【0018】
医療検査手順は、一般的に、身体サンプル中の分析物のアッセイを伴うか、またはこれに支持される。このような分析物は、例えば、臨床的な化学実験室手順によりアッセイされ得る。
【0019】
本発明の文脈で使用される発現分析物とは、分析的試験手順の間に検出され得る分子をいう。本発明の特定の実施形態において、分析物は、例えば、核酸および(ポリ)ペプチド分子である。したがって、このような分析物は、例えば、RNA(mRNA、hnRNAなど)、DNA(cDNA、ゲノムDNAなど)、タンパク質、ポリペプチド、プロテオグリカン、糖タンパク質およびこれらの分子のそれぞれのフラグメントを含む。
【0020】
分析物は、いかなる分子でもよい。本発明の特定の実施形態において、分析物は、哺乳動物の疾患の検出に対して特別な関連性を有する分子である。本発明にしたがう疾患は、あらゆる種類の医学的に関連する状態を含み得、これらは、新形成性の疾患、炎症疾患、感染性疾患、変性疾患、遺伝的疾患、増殖性疾患および血管疾患ならびに前悪性および悪性の癌性状態を含み得るが、これらに限定されない。本発明の特定の実施形態において、前悪性および悪性の癌性状態は、新形成性の障害(例えば、腫瘍)を含み得る。腫瘍は、頭部および頚部の腫瘍、気道の腫瘍、肛門性器管(anogenital tract)の腫瘍、胃腸管の腫瘍、泌尿器系の腫瘍、生殖器系の腫瘍、内分泌系の腫瘍、中枢神経系および末梢神経系の腫瘍、皮膚およびその付属器の腫瘍、軟組織および骨の腫瘍、リンパ球産生系および造血系の腫瘍などを含み得る。腫瘍は、例えば、良性および悪性の腫瘍、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫または形成異常のような新生物を含み得る。特定の実施形態において、腫瘍は、例えば、頭部および頚部の癌、気道の癌、肛門性器管の癌、胃腸管の癌、皮膚およびその付属器の癌、中枢神経系および末梢神経系の癌、泌尿器系の癌、生殖器系の癌、内分泌系の癌、軟組織および骨の癌、造血系およびリンパ球産生系の癌である。
【0021】
肛門性器管の腫瘍は、会陰および陰嚢の皮膚の癌、子宮頚癌、外陰部の癌、膣の癌、陰茎の癌、肛門の癌などを含み得る。子宮頚癌は、扁平上皮(squamous)の病変、腺の病変または他の上皮腫瘍を含み得る。扁平上皮の病変は、例えば、頚部上皮内癌(軽度、中程度および重度の形成異常)、上皮内癌、扁平上皮癌(例えば、角質化、非角質化、いぼ状(verrucous)、いぼ状(warty)、乳頭状、リンパ上皮腫様)を含む。腺の病変は、異型過形成、上皮内腺癌、腺癌(例えば、ムチン性、類内膜、明細胞、悪性腺腫(adenoma malignum)、乳頭状、重度の腺癌または中腎腫のような)を含み得る。他の上皮腫瘍は、腺扁平上皮癌、硝子細胞(glassy cell)癌腫、腺様嚢胞癌、腺様基底癌腫(adenoid basal carcinoma)、カルチノイド、小細胞癌腫および未分化癌腫を含み得る。さらに詳細な情報については、「Kurman,R.、Norris,H.ら、Tumors of the Cervix,Vagina,and Vulva,Atlas of Tumor Pathology,1992,AFIP,」(この内容は、参考として本明細書に援用される)を提供する。
【0022】
胃腸の腫瘍は、結腸癌、上行結腸癌、下行結腸癌、横行結腸の癌、S字結腸(sigmoidum)の癌、直腸癌、小腸癌、空腸癌、十二指腸癌、胃癌、食道癌、肝臓癌、胆癌、胆管系(biliary system)の癌、膵臓癌などを含み得る。胃腸の病変についての包括的な概説は、「Hamilton Sr、Aaltonen LA(編):World Health Organization Classification of Tumours,Pathology and Genetics of Tumors of the Digestive System,IARC Press:Lyon 2000」(これは参考として、本明細書に援用される)に示される。
【0023】
気道の腫瘍は、例えば、肺の癌、肺胞の癌、細気管支の癌、気管支(bronchial tree)および気管支(broncus)の癌、鼻咽頭の空間の癌、口腔の癌、咽頭の癌、鼻腔および副鼻腔の癌のような、気道のあらゆる悪性の状態を含み得る。肺癌(例えば、小細胞肺癌(small cell lung cancer)、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫(squamous cell lung carcinoma)、小細胞肺癌腫(small cell lung carcinoma)、肺の腺癌、大細胞型肺癌腫(large cell lung carcinoma)、腺扁平上皮肺癌腫(adeno−squamous lung carcinoma)、肺のカルチノイド、気管支腺腫瘍(broncheal gland tumor)または(悪性)中皮腫)。気道の腫瘍についての概説は、Colby TVら:Tumors of the Lower RespiratoryTract,Atlas of Tumor Pathology,Third Series,Fascicle 13,AFIP:Washington 1995(これは参考として、本明細書に援用される)に見出され得る。
【0024】
泌尿器系の腫瘍は、膀胱癌、腎臓の癌、腎盤の癌、尿管の癌および尿道の癌などを含み得る。生殖器系の腫瘍は、卵巣、子宮、精巣、前立腺、副睾丸などの癌およびその前駆段階を含み得る。
【0025】
本発明にしたがって分析物として使用され得る、疾患と特別な関連性を有する分子は、このような疾患が存在するか、または存在しないかを検出するために使用され得る。これらの分子は、種々の方法によって、このような疾患が存在するか、または存在しないかを示し得る。このような方法は、発現レベル(例えば、増加、低下、一過的または局所的な変更)および変更された特徴を有する分子の発現の変更を包含し得る。このような変更された特徴は、あらゆる種類の改変された分子を包含し得る。このような改変は、分子の配列の改変(例えば、突然変異、欠失、挿入など)および任意の他の型の分子の改変(例えば、化学的改変、リン酸化、グリコシル化、誘導体化、脱リン酸化など)を包含し得る。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、分析物は、例えば、癌のマーカー分子または腫瘍マーカーであり得る。分析物は、細胞増殖についてのマーカー、アポトーシスに特徴的なマーカー、細胞表面エピトープについてのマーカー、細胞内のウイルス感染またはウイルス活性に関連するマーカー(例えば、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66およびHPV68を含む群から選択される、危険性が高いヒトパピローマウイルスによる感染についてのマーカー)、細胞分化に特徴的なマーカーなどを含む群から選択され得る。特定の好ましい実施形態において、分析物は、サイクリン依存性キナーゼインヒビターである。
【0027】
分析物は、例えば、以下を含む群から選択されるタンパク質に由来する分子を含み得る:p13.5、p14、p15、p16(p16INK4aとも呼ばれる)、p19、p21、p27、p53、pRb、p14ARF、サイクリンA、サイクリンB、サイクリンE、MDM−2、CDC2、Id1、オステオポンチン、GRP、腎ジペプチダーゼ、her2/neu、TGFβIIレセプター、サイトケラチン(例えば、サイトケラチン8、サイトケラチン10、サイトケラチン18)、ムチン抗原(MUC1、MUC2、Tn、STn)、EpCAMおよびgカテニン、コンカナバリンAレセプター、GalNacトランスフェラーゼ、オリゴ糖トランスフェラーゼ(oligosaccharyltransferase)、レクチン(ConA、WGA、PNA、UEA I、DBA、SBA、SNA)、プラコフィリン(plakophilin)、ビメンチン、CD抗原(例えば、CD3、CD16、CD18、CD4、CD8、CD56、CD19、CD20)、例えば、HPV遺伝子L1、L2、E1、E2、E4、E5、E6またはE7に由来するHPV関連マーカー、CDC6、MCM2、MCM3、MCM4、MCM5、MCM6、MCM7、CDC7プロテインキナーゼ、Dbf4、CDC14プロテインホスファターゼ、CDC45およびMCM10、Ki67、Ki−S2、PCNA、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、Topo2α、転写因子、E2F−ファミリーのメンバー、Brn−3a、Brn−3bあるいはPOLDなど。
【0028】
分析物は、定性的、半定量的および定量的基準に基づいて検出される分子であり得る。定量的な値は、例えば、濃度によって表され得る。半定量的な値は、程度のレベル(例えば、検出不能なレベル、低いレベル、中間のレベル、高いレベル、または任意の他の適切な様式)によって表現され得る。分析物のレベルはまた、依存性のパラメータ(例えば、マーカー分子の存在に応答するアッセイ様式により生成されるシグナルの強度)によって示され得る。半定量的アッセイおよび定量的アッセイにおけるシグナル強度の表現に関して、分析物の決定された量の表現のために、相対単位が使用され得る。使用される相対単位は、例えば、サンプルのmLあたりの単位(U/mL)としてのように、任意の適切な様式で称され得る。このような単位は、溶液中で測定される分析物の実際のモル濃度に直接関連し得るが、各々のアッセイ様式に適用可能な任意の単位でもあり得る。
【0029】
分析物は、本発明にしたがってイムノアッセイにより検出される。本発明にしたがうイムノアッセイは、分析物の任意の免疫化学的検出である。特定の実施形態において、このような免疫化学的検出は、1つ以上のプローブまたは抗体を使用して、分析物分子を捕捉し、続いて、分析物のプローブ/抗体複合体を検出するアッセイを包含し得る。このような反応は、溶液中で実行され得るか、または固相に固定されて実行され得るかのいずれかである。当業者は、適切なイムノアッセイを知っている。このようなアッセイは、ELISAおよび種々の種類の他のイムノアッセイを含み得る。このようなイムノアッセイは、例えば、免疫沈降または免疫学的アッセイ(例えば、EIA、ELISA、RIA、ECLIA、LIA、側方流れ(lateral flow)アッセイ、貫流(flow through)アッセイ、イムノクロマトグラフィーストリップ(immunochromatographic strip)など)を含み得るが、これらに限定されない。本発明で使用するためのイムノアッセイは、競合イムノアッセイおよび非競合イムノアッセイを含み得る。特定の実施形態において、固相に固定された抗体またはプローブが、イムノアッセイに使用され得る。固相は、平らな表面、粒子(ミクロ粒子、ナノ粒子またはなおさらに小さな粒子が挙げられる)のような固体物質の種々の実施形態を含み得る。特定の実施形態において、粒子は、球、ビーズまたはコロイドなどとして提供され得る。
【0030】
試験キットまたはインビトロ診断デバイスにおいて、試薬の固相への固定は、直接的な固定または間接的な固定によって実行され得る。直接的な固定は、共有結合、非共有結合、会合または表面への吸着により実行され得る。間接的な固定は、因子へ抗体が結合することによって実行され得、この因子自体は、固相に直接的に固定され得る。結合因子としては、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ジゴキシゲニンまたは抗体などが挙げられる。
【0031】
イムノアッセイは、分析物、または好ましくは分析物を認識するために使用されるプローブのいずれかを認識する因子を検出することを伴う、1つ以上のさらなる反応を含み得る。検出反応はさらに、分析物のレベルを示すレポーター反応を含み得る。
【0032】
検出系は、例えば、色素形成系、発光系(電気発光(electroluminescence)、生物発光、光ルミネセンス、放射線発光(radioluminescence)、化学発光、電気化学発光(electrochemiluminescence))、蛍光ベースの系、伝導率ベースの検出系、照射(光、UV、X線、γなど)、プラスモン共鳴(例えば、表面プラスモン共鳴 SPR)または任意の他の公知の方法であり得る。
【0033】
本発明によれば、サンプル媒体中に可溶化された身体サンプルは、イムノアッセイを実行するための標本として直接適用され得る。本発明の特定の実施形態において、イムノアッセイの間に、高濃度の界面活性剤が存在していてもよい。したがって、イムノアッセイは、本発明の特定の実施形態において、変性条件に対して特に耐性であるイムノアッセイであってもよい。本発明の特定の実施形態において、イムノアッセイは、0.1%より高い濃度のSDSに対して耐性であり、好ましい実施形態において、イムノアッセイは、0.3%より高いSDS濃度に対して耐性である。別の好ましい実施形態において、イムノアッセイは1%より高い濃度のSDSに対して耐性である。
【0034】
分析物の検出は、分析物の検出のための、1つ以上の「プローブ」(本発明内において、用語「結合因子」と交換可能に使用される)を使用して通常実行される。プローブは、例えば、分析物に特異的に結合する抗体であってもよい。全ての文法的形態での用語「抗体」は、本発明の文脈において、一般に抗原に結合する分子をいい、これらとしては、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、抗体のフラグメント、抗原結合エピトープ、ミニ(mini)抗体、抗原結合特性を有するペプチド模倣物、抗カリン(anticaline)およびダイアボディ(diabody)が挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、分析物の検出は、分析物の存在もしくは非存在および/または分析物のレベルの検出を含む。
【0035】
本明細書で使用される表現「身体サンプル」は、あらゆる種類および性質の任意の身体サンプルを包含する。このような身体サンプルの例は、分泌物、スワブ、洗浄液、体液、精液、細胞サンプルおよび組織サンプル、血液、塗沫標本、痰、尿、便、脳脊髄液(本明細書において「リカー」と短縮して呼ばれる)、胆汁、胃腸の分泌物、リンパ液、骨髄、器官の吸引物および生検(例えば、ニードル生検またはパンチ生検および(微細な)ニードル吸引物)である。肛門性器の癌(例えば、子宮頚癌)の検出が関与する場合には、特に、塗抹、スワブおよび生検を示す。この本文を通して使用される用語「生検」は、当業者に公知のあらゆる種類の生検を包含する。したがって、本発明の文脈で使用される生検は、例えば、腫瘍の切除サンプル、内視鏡手段または器官のパンチ生検もしくはニードル生検により調製される組織サンプルを含み得る。生検は、数個の異なる方法(例えば、寒冷式(cold knife)生検、LEEP(ループ状電気メス(loop electrocautery)切除手順)生検など)により得られる標本を含む。本発明にしたがう身体サンプルは、本発明の特定の実施形態において、人体から取得される細胞物質を含む標本をいってもよい。このようなサンプルは、例えば、細胞学的検査に使用するのに適した標本を含んでもよい。例は、スワブサンプル、液体ベースの細胞学的なサンプルおよび塗抹である。
【0036】
液体ベースの細胞学的なサンプルは、あらゆる種類の液体ベースの細胞学的なサンプルを含んでもよく、この液体ベースの細胞学的なサンプルは、例えば、市販の保存媒体(ホルマリン溶液、Cytyc「PreservCyt」または「CytoLyt」、Digene「Universal Collection Medium」、Tripath Imaging「Cytorich」など)のような当業者に公知の任意の標準的な収集媒体、保存媒体または運搬媒体に保存された、例えば、細胞サンプルまたは組織サンプルを含む。あるいは、液体ベースの細胞学的なサンプルのための細胞保存媒体は、細胞成分の保存のためのアルコール、アルデヒド、ケトン、酸、金属イオンまたは昇華物、エーテルなどを含む群から選択される1つ以上の混合物を含み得る。アルコールとしては、メタノール、エタノール、(n−またはi−)プロパノール、(n−、i−またはt−)ブタノールまたは高級分枝もしくは非分枝アルコールが挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。アセトンのようなケトンを使用してもよい。標準的なサンプル媒体での使用のための酸としては、有機酸(酢酸、トリクロロ酢酸、サリチル酸、ピクリン酸)または例えば、クロム酸のような無機酸が挙げられる。標準的なサンプル溶液は、銀、銅、クロム、水銀、オスミウム、ウランのような金属を含み得る。塩(例えば、酢酸ウラニル、二クロム酸カリウム、硫酸アンモニウムなど)の溶液は、保存媒体の成分であってもよい。好ましい実施形態において、液体ベースの細胞学的標本は、サンプル中のタンパク質分析物の引き続く免疫化学的検出に特に適している。
【0037】
本発明の特定の実施形態において、身体サンプルは、デバイスから取得され得、このデバイスは、別の手順において試験用の標本を取得するために使用され、その後、このようなデバイスは破棄される。例えば、デバイスは、あらゆる種類のブラシ、長柄のブラシ、スパーテル、スワブなどを備え得る。このようなデバイスは、例えば、Dacron(登録商標)、綿または任意の他の繊維から作製されたスワブ、子宮頚管内(Endocervical)ブラシのようなブラシ、子宮頚部(cervical)のサンプル収集のためのMedscandシステム、CervexBrush(登録商標)、Rovers Medical Systems,N.V.からのCervexBrush CombiTM、Medscand Medical ABからのCytobrush(登録商標)およびDigene Corp.のCervical Cell SamplerTMを備える。
【0038】
特定の実施形態において、別の試験手順のためのサンプル物質が取得された後、本発明にしたがう身体サンプルが、デバイスから取得される。例えば、サンプル収集デバイスは、従来の塗抹サンプルの調製に使用され得、その後、本発明にしたがうサンプル媒体と接触され得る。あるいは、サンプル収集デバイスはまた、あらゆる種類の液体ベースの細胞学的サンプルの調製のために使用され得、続いて本発明にしたがうサンプル媒体と接触され得る。液体ベースの細胞学的なサンプルの場合において、液体ベースの細胞学的サンプルの一部が、サンプル媒体と接触させるために使用され得、そして安定化または変性イムノアッセイによる分析のために可溶化され得ることも本発明者らによって企画される。
【0039】
サンプル収集デバイスとサンプル収集媒体とを接触させる工程は、サンプル収集デバイスを、サンプル媒体を含むバイアルへ浸す工程を包含し得る。特定の実施形態において、サンプル収集デバイスは媒体に浸す際に、サンプル媒体により人体と接触させたサンプル収集デバイスの一部を完全に覆う。サンプル収集デバイスをサンプル媒体へ浸して、このデバイスは媒体中で攪拌され得る。あるいは、この媒体とサンプル収集デバイスとはともに、振とうまたはボルテックスされ得る。特定の場合において、サンプル収集デバイスまたはデバイスの一部が、細胞または細胞片の完全な溶解を可能にする期間、サンプル媒体中に保存または放置される方法で、このデバイスはサンプル媒体と接触され得る。特定の場合において、サンプル収集デバイスは、例えば、サンプル媒体内でともに加熱され得る。
【0040】
一般的に、イムノアッセイの実行は、身体サンプルとサンプル媒体とを接触させた直後に行われ得るか、特定の期間の時間の後に行われ得る。本発明の特定の実施形態において、イムノアッセイは、身体サンプルの溶解が完了するか、または完了したと考えられる直後に実行される。本発明の特定のさらなる実施形態において、身体サンプルの溶解の完了後、サンプル溶液は、数分から数週間までの範囲であり得る期間、保存される。好ましい一実施形態において、サンプル媒体中での身体サンプルの溶解とイムノアッセイの実行との間の時間は1分以上かつ90日間以下の期間であり、なおさらに好ましい実施形態において、この期間は1時間以上かつ14日間以下であり、そして別の好ましい実施形態において、この期間は7日間以下である。特定の実施形態において、この期間は、数年の範囲まででさえあり得る。
【0041】
本発明にしたがう身体サンプルは、サンプルを得た直後にサンプル媒体と接触させてもよく、特定の期間が経過した後でさえサンプル媒体と接触させてもよい。この間、身体サンプルを、例えば、冷蔵しても、凍結しても、細胞保存溶液中に保存してもよい。このような細胞保存または凍結もしくは冷蔵による保存のための方法は、当業者に公知である。
【0042】
本発明によれば、1つの身体サンプルは、免疫化学的分析による1つ以上の分析物の検出のために使用され得る。分析物の検出は、1つの単一のアッセイまたは複数の異なるアッセイにより実行され得る。したがって、本発明の特定の実施形態において、身体サンプル全体のアリコートのみが、身体サンプルのうちの単一の分析物の決定のために使用される。
【0043】
本発明の文脈で使用される用語「可溶化される」または「可溶化」は、身体サンプルの成分がサンプル媒体と接触し、サンプル媒体により少なくとも部分的に溶解され、続いて身体サンプルの成分が、溶液の成分により少なくとも部分的に代表されることを意味する。
【0044】
本発明の文脈で使用される用語「サンプル媒体」は、細胞成分または細胞全体の可溶化に適する、当業者に公知のあらゆる液体であり得る。サンプル媒体は、例えば、以下のものの有機溶液または水溶液であり得る:カオトロピック剤(例えば、尿素、GuaSCN)、ホルムアミド、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤(例えば、SDS、N−ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル−アリールスルホネート、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩およびαオレフィンスルホン酸塩、硫酸化(sulphated)モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホサクシネート(sulphosuccinate)、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル)、カチオン性界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロライド)、非イオン性界面活性剤(例えば、Tween 20、Nonidet P−40、Triton X−100、NP−40、Igepal CA−630、N−オクチル−グルコシド)または両性界面活性剤(例えば、CHAPS、3−ドデシル−ジメチルアンモニオ(dimethylammonio)−プロパン−1−スルホネート、ラウリルジメチルアミンオキシド))および/または、例えば、NaOHもしくはKOHのようなアルカリ水酸化物。特定の実施形態において、サンプル媒体はまた、無機酸または有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、リン酸など)を成分として含んでもよい。細胞の溶解が界面活性剤を使用することなく達成され得る特定の実施形態において、高張液もしくは低張液または緩衝液または単に水もしくは有機性の液体を溶媒として使用してもよい。完全または部分的に身体サンプルの細胞成分を可溶化するのに適する、あらゆる液体が、本明細書で使用されるサンプル媒体としてみなされ得る。したがって、本明細書で使用されるサンプル媒体は、緩衝化物質を含んでも、緩衝化能力を有してもよいが、必ずしもそうである必要は無い。
【0045】
一般的に、あらゆる適切な液体が、本発明のサンプル媒体において使用され得る。液体は、有機性でも無機性でもよく、純粋な液体でも液体の混合物でも液体中の物質の溶液でもよく、そして溶媒の特性を高めるさらなる物質を含んでもよい。細胞の溶解が界面活性剤を使用することなく達成され得る特定の実施形態において、高張液もしくは低張液または緩衝液または単に水もしくは有機性の液体を溶媒として使用してもよい。完全または部分的に身体サンプルの細胞成分を可溶化するのに適する、あらゆる液体が、本明細書で使用され得るサンプル媒体としてみなされ得る。したがって、本明細書で使用されるサンプル媒体は、必ずしも緩衝化物質を含む必要もなく、また緩衝化能力を有する必要も無い。しかしながら本発明の特定の実施形態において、サンプル媒体は、緩衝化能力を有しても、緩衝化物質を含んでもよい。
【0046】
一実施形態においてサンプル媒体は、生サンプルに潜在的に存在する細胞、細胞片、核酸、ポリペプチド、脂質および他の生体分子が可溶化されるように、設計される。本発明のさらなる実施形態において、溶媒は、身体サンプルの特定の成分の差次的な可溶化を確保し、他の成分は可溶化されないままにするように設計され得る。
【0047】
本発明にしたがう身体サンプルを可溶化するためのサンプル媒体はさらに、生サンプル中の成分の分解を防ぐ1つ以上の因子を含んでもよい。このような成分は、例えば、プロテイナーゼインヒビター、RNAseインヒビター、DNAseインヒビターなどのような酵素インヒビターを含んでもよい。本発明の一実施形態において、サンプルは、試験個体から得られた形態で直接溶解される。プロテイナーゼインヒビターは、例えば、セリンプロテイナーゼのインヒビター、システインプロテイナーゼのインヒビター、アスパラギン酸プロテイナーゼのインヒビター、メタロプロテイナーゼのインヒビター、酸性プロテイナーゼのインヒビター、アルカリ性プロテイナーゼのインヒビターまたは中性プロテイナーゼのインヒビターを含み得る。本発明の特定の実施形態において、酵素の阻害は、例えば、塩濃度、pHまたはカオトロピック剤などによる酵素の変性のような化学的手段によって達成され得る。
【0048】
本発明の特定の実施形態において、アッセイの最適な結果を得るために、アッセイ系に直接的に適用され得るサンプル媒体のpHは、中性付近である。さらなる実施形態において、サンプル媒体のpHは、4〜10の範囲内である。特定の他の実施形態において、pHは5〜9の範囲内である。好ましい実施形態において、pHは6〜8の範囲内である。より好ましい実施形態において、pHは6.5〜7.5の範囲内である。
【0049】
サンプル媒体および/または本発明にしたがう分析物の変性のための変性剤の例は、例えば、表1に示される物質から選択され得る。
【0050】
(表1)
サンプル媒体
界面活性剤:
0.1%〜1% SDS
0.2%〜3% SDS
0.2%〜3% DOC
0.1%〜1% n−オクチルグリコシド
0.1%〜3% Triton X−100%
0.1%〜1% Chaps
0.1%〜3% Tween
界面活性剤混合物:
RIPA(1% NP40、0.5% DOC、0.1% SDS、PBS)40%〜100%
SOX(0.5% DOC、0.5% n−オクチルグリコシド)40%〜100%
特別なサンプル媒体(3% Triton X−100、0.4% SDS、PBS)
市販の溶解媒体:
Dynal(Dynal、Oslo、Norway)
M−PER/B−PER(Pierce、Rockford、IL)
その他:
0.5M〜8M 尿素
1%〜99% ホルムアミド
GuaSCN
1%〜80% ギ酸
1%〜70% 酢酸
1%〜50% リン酸
Laemmliサンプル緩衝液(10%〜80% DMSO、10%〜80% ホルムアミド、50%〜70% ギ酸、PBS、クエン酸塩緩衝液 pH 6.0、リン酸塩緩衝液中の500mM NaCl)。
【0051】
本発明の全開示を通して、パーセント(%)で示される全ての濃度は、体積あたりのパーセント重量(%w/v)をいう。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明にしたがうサンプル媒体は、変性剤を含む。このような変性剤は、界面活性剤またはカオトロピック剤を含む群から選択されてもよい。
【0053】
特定の状況において、分析物は、可溶化サンプル中で分解され得、それゆえ検出され得ない。このことは特に、サンプルが、さらなる調製の前に溶解(lysing)媒体に直接移され、その中で特定の期間にわたって、保存される場合に当てはまる。分解を防止するために、サンプル媒体はさらに、生サンプル内の成分の分解を防止する1つ以上の因子を含んでもよい。このような成分は、例えば、プロテイナーゼインヒビター、RNAseインヒビター、DNAseインヒビターなどのような酵素インヒビターを含んでもよい。インヒビターは、例えば、表2に示される組成物から選択されるプロテイナーゼインヒビターを含んでもよい。
【0054】
(表2)
インヒビター 阻害されるプロテイナーゼのクラス
アプロチニン セリン
ベンザミジン セリン
ベスタチン アミノペプチダーゼ
カルペプチン システイン
シスタチン システイン
E−64 システイン
EDTA メタロ
エラスタチナール セリン
EST システイン
ウシ胎仔血清 全てのクラス
ロイペプチン セリン/システイン
a2−マクログロブリン 全てのクラス
NCO−700 システイン
ペファブロック=AEBSF セリン
ペプスタチンA アスパラギン酸
PMSF セリン
o−フェナントロリン メタロ。
【0055】
安定化の目的のために、サンプル媒体はまた、分解においてサンプルタンパク質と競合する、かさ高いタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンもしくは仔ウシ血清アルブミンのようなアルブミン、大豆レシチンまたは他のバルクのタンパク質)を含んでもよい。かさ高いタンパク質は、例えば、プロテイナーゼインヒビターと一緒に存在し得るか、またはプロテイナーゼインヒビターの代わりに添加され得る。特定の実施形態において、サンプル媒体は、アッセイ(例えば、ELISA)の実行と適合するように選択され得、その結果、可溶化サンプルは、アッセイに直接的に適用され得る。
【0056】
特定の実施形態において、サンプル媒体はまた、微生物の活動を阻害するための物質を含んでもよい。このような物質は、例えば、マイクロビジディック(microbizidic)物質または静菌性(microbiostatic)物質を含み得る。このような物質は、例えば、アジ化ナトリウム、プロクリン、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび水銀含有化合物(例えば、チメロサール)を含む。
【0057】
本発明にしたがうサンプル媒体中の分析物の全体的な安定化のために、加熱工程が適用される。特定の実施形態において、本発明にしたがうサンプル媒体はまた、1つ以上の変性剤を含んでもよい。このような組み合わせは、本明細書に開示される変性剤を、任意の適切な組み合わせで含み得る。
【0058】
本発明の文脈で使用される加熱は、可溶化身体サンプルを含むサンプル媒体を周囲温度よりも高い温度に供するプロセスをいい、特定のサンプル媒体の沸点より低いか、またはそれより高い任意の温度まで加熱することに関し得る。加熱は、例えば、30℃〜150℃の温度に供することを包含し得る。特定の実施形態において、加熱は、50℃より高い温度に供することを包含し得る。本発明の好ましい実施形態において、加熱は、70℃と130℃との間の温度に供することをいう。別の好ましい実施形態において、加熱は、95℃と110℃との間の温度に供することを包含する。
【0059】
本発明の文脈において、加熱は、身体サンプルに含まれる分析物がサンプル媒体中で最適に安定化されることを可能にする期間にわたり、実行される。この方法に必要とされる期間は、変動し得、サンプルの型に依存する。所定の温度での加熱時間(有効なインキュベーション時間)は、5分間と30分間との間となるように選択され得る。本発明の好ましい実施形態において、インキュベーション時間は、10分間と27分間との間である。別の好ましい実施形態において、インキュベーション時間は、15分間と25分間との間である。所定の温度での全体的な加熱時間は、所定の温度でのサンプル溶液のインキュベーションのための時間とは区別しなければならない。先に示される加熱時間(有効なインキュベーション時間)は、サンプル溶液の温度が最終的なインキュベーション温度へ平衡化される時間の間、サンプル溶液が加熱デバイス内で加熱される時間をいう。この時間は、一般的に、サンプル溶液がインキュベーション温度に平衡化した後の、想定されるインキュベーション温度でのインキュベーションのための期間よりも長い。目的とされる温度での単なるインキュベーションのために、1分間〜30分間の期間が、本発明にしたがう方法に適切であるとみなされ得る。本発明の好ましい実施形態において、3分間〜15分間の期間が加熱のために使用される。本発明の特定の実施形態において、5分間と12分間との間の期間が十分である。与えられるインキュベーション時間は、使用される加熱デバイスならびに使用されるバイアルの型およびサンプル媒体に強く依存する。したがって、インキュベーションに必要とされる期間は、先に示される期間を超過しても、それよりもなお短くてもよい。当業者は、計画した期間にわたる、想定されるインキュベーション温度でのサンプル溶液のインキュベーションを可能にするために、周囲温度に平衡化したサンプル溶液(このサンプル溶液は、既に熱くなった加熱デバイスに導入されている)のインキュベーションに必要とされる期間をどのようにして決定するかを知っている。本発明の方法を実行するための加熱デバイスは、実験室において、固定された期間にわたって、サンプル溶液を加熱することに適用可能な、あらゆる加熱デバイスであり得る。一般的に、加熱デバイスは、サーモスタットを備えており、予め選択された固定温度を維持するように設定され得る。このような加熱デバイスは、例えば、水浴、マイクロ波オーブン、および加熱ブロックを含み得る。本発明の特定の実施形態において、加熱デバイスは、使用者がインキュベーション時間を容易に制御することを可能にするタイマーを備えている。その他の方法では、使用者は、インキュベーション時間を制御するために、例えば、目覚まし時計のような外部のタイマーを使用し得る。
【0060】
本発明の文脈で使用される安定化は、特定の温度でサンプル媒体中でインキュベートされる分析物が分解されるか、またはその他の方法で改変され、それにより分析物が検出不能にされるか、もしくは、特定の期間を経た後に分析物が、インキュベーションの開始点と比べて、改変されたレベルで検出不能または検出可能にされる状況をいう。本発明の特定の実施形態において、安定化は、サンプル溶液中での検出可能なレベルの分析物の安定化をいう。特定の実施形態において、特定の期間を経た後の検出可能な分析物のレベルの偏差が、期間の始まりにおける検出可能なレベルと比べて、30%以下であることが、安定であるとみなされる。特定の好ましい実施形態において、20%以下の偏差が安定であるとみなされる。特定の特に好ましい実施形態において、15%以下の偏差が、分析物が安定化されたとみなされる。
【0061】
本発明の特定の実施形態において、安定化は特に、周囲温度でのサンプルの保存および運搬のための安定化である。周囲温度は主に、−20℃と+50℃との間の温度を与える。本発明の特別な実施形態において、安定化はまた、特別な温度範囲での分析物の安定化をいい得、そしてまた、2℃と30℃との間での保存条件および運搬条件のための安定化をいい得る。なお別の実施形態において、温度範囲は、−80℃と20℃との間であり得る。特定の実施形態において、安定化は特に、サンプルの温度が全く制御されず、その結果、運搬環境または保存環境に存在するあらゆる温度が、特定の検出方法により検出可能な分析物のレベルに変更が生じないという意味においてサンプルおよび安定性に許容され得る状態をいう。本発明のいくつかの実施形態において、分析物の安定化はまた、保存および運搬のためのあらゆる温度のために達成され得る。
【0062】
本発明の文脈で使用される分析物を変性することまたは分析物の変性は、分析物の天然の状態に対する、あらゆる種類の、分析物を変更することまたは分析物の変更をいう。本発明の特定の実施形態において、天然の状態に対するこのような変更は、分析物(タンパク質)の、天然の、または天然に存在する二次構造、三次構造または四次構造のあらゆる種類の破壊を包含し得る。
【0063】
本発明の一局面は、変性バイオアッセイに関する。本発明の文脈における変性バイオアッセイは、サンプル溶液中の分析物の存在もしくは非存在および/または分析物のレベルを検出するように設計される免疫化学的アッセイである。このようなバイオアッセイは、好ましくは、分析物の検出を液相で実行するか、または固相に固定された試薬を使用するアッセイである。あらゆる場合において、本発明にしたがう変性バイオアッセイは、変性剤の存在下で実行される免疫化学的反応の少なくとも1つの工程に特徴を有する。本発明にしたがう変性バイオアッセイにおける状況とは対照的に、SDS−PAGEにおいては、ゲル電気泳動のみが変性条件下で実行され、変性剤を洗い流した後に続いて、免疫化学的検出反応が実行される。本発明にしたがう変性バイオアッセイの一例は、例えば、抗原捕捉工程を分析物と変性剤とを含むサンプル溶液から直接的に実行するサンドウィッチELISAである。このような場合において、変性剤を含むサンプル溶液は、固相に固定された、特定の分析物に対する抗体に接触される。捕捉抗体による分析物の捕捉が実行され、この工程の後にのみ、変性剤が洗い流される。このような方法の利点は、変性された分析物に存在するコンフォメーションの変化が、捕捉工程の間維持され、したがってプローブまたは抗体と変性された分析物との相互作用が生じ得るということである。特定の場合において、このことは、分析物の検出において精度の改善をもたらし得る。特に、分析物の線状エピトープがプローブまたは抗体の生成に使用された場合、上記の抗体によるこのような分析物の検出は、免疫化学的反応が変性条件下で実行された場合に改善され得る。
【0064】
しかしながら、当該分野において、高濃度の変性剤が免疫化学的反応を妨害し、それゆえ、例えば、インキュベーション溶液中にSDSが存在する場合、抗原結合が適切な方法で生じ得ないという先入観が存在した。ここで、本発明者らは、このような増大した濃度の変性剤が、先に記載される特定の状況下での免疫化学的検出反応の性能に肯定的な影響を有し得ることを見出した。
【0065】
本発明にしたがう変性イムノアッセイは、例えば、免疫沈降または免疫学的アッセイ(例えば、EIA、ELISA、RIA、ECLIA、LIA、側方流れアッセイ、貫流アッセイ、イムノクロマトグラフィーストリップ、ラテックス凝集アッセイなど)を含み得るが、これらに限定されない。本発明において変性イムノアッセイとして使用するためのイムノアッセイは、競合イムノアッセイおよび非競合イムノアッセイを含み得る。特定の実施形態において、固相に固定された抗体またはプローブが、イムノアッセイに使用され得る。固相は、平らな表面、粒子(ミクロ粒子、ナノ粒子またはなおさらに小さな粒子が挙げられる)のような固体物質の種々の実施形態を含み得る。特定の実施形態において、粒子は、球、ビーズまたはコロイドなどとして提供され得る。
【0066】
試験キットまたはインビトロ診断デバイスにおいて、試薬の固相への固定は、直接的な固定または間接的な固定によって実行され得る。直接的な固定は、共有結合、非共有結合、会合または表面への吸収により実行され得る。間接的な固定は、因子へ抗体が結合することによって実行され得、この因子自体は、固相に直接的に固定され得る。結合因子としては、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ジゴキシゲニンまたは抗体などが挙げられる。
【0067】
イムノアッセイは、分析物、または好ましくは分析物を認識するために使用されるプローブのいずれかを認識する因子を検出することを伴う、1つ以上のさらなる反応を含み得る。検出反応はさらに、分析物のレベルを示すレポーター反応を含み得る。
【0068】
検出系は、例えば、色素形成系、発光系(電気発光、生物発光、光ルミネセンス、放射線発光、化学発光、電気化学発光)、蛍光ベースの系、伝導率ベースの検出系、照射(光、UV、X線、γなど)、プラスモン共鳴(例えば、表面プラスモン共鳴 SPR)または任意の他の公知の方法であり得る。
【0069】
本発明の特定の実施形態において、このような変性バイオアッセイに使用される変性剤は、サンプル媒体の一部であってもよく、このサンプル媒体中に身体サンプルが、分析前に、保存および運搬のために導入される。他の実施形態において、変性工程の直前に、変性剤とサンプル中の分析物タンパク質とを接触させる。本明細書に開示される変性バイオアッセイに使用される変性剤は、例えば、以下を含み得る:尿素、GuaSCN、ホルムアミドのようなカオトロピック剤、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤(例えば、SDS、N−ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル−アリールスルホネート、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩およびαオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホサクシネート、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル)、カチオン性界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロライド)、非イオン性界面活性剤(例えば、Tween 20、Nonidet P−40、Triton X−100、NP−40、Igepal CA−630、N−オクチル−グルコシド)または両性界面活性剤(例えば、CHAPS、3−ドデシル−ジメチルアンモニオ−プロパン−1−スルホネート、ラウリルジメチルアミンオキシド))および、例えば、NaOHもしくはKOHのようなアルカリ水酸化物。特定の実施形態において、変性剤はまた、無機酸または有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、リン酸など)を成分として含んでもよい。
【0070】
本発明によれば、イムノアッセイの間に、増大した濃度の界面活性剤が存在してもよい。本発明の特定の実施形態において、イムノアッセイは、0.1%より高い濃度のSDSに対して許容性であり、好ましい実施形態において、イムノアッセイは、0.3%より高いSDS濃度に対して許容性である。別の好ましい実施形態において、イムノアッセイは1%より高い濃度のSDSに対して許容性である。本発明の特定の実施形態において、イムノアッセイは、0.1%より低い濃度から少なくとも3%までの濃度のTriton X 100に対して許容性であり得る。
【0071】
本発明のさらなる局面は、タイマーを備える自動加熱デバイスであり、このデバイスは、本発明にしたがう方法のための加熱サイクルを実行するように設計される。加熱デバイスは、サンプル媒体中に可溶化されたサンプルを目標温度まで上昇させ、特定の時間の間、目標温度でサンプルを維持するように設計される。
【0072】
本発明の最も好ましい実施形態において、自動化されるとは、温度の設定がデバイス内において事前に設定されており、使用者がインキュベーションのための温度を設定しなくてもよくかつ設定する必要がないことを意味する。さらに、自動化されるとは、インキュベーションのための時間もまたデバイスにおいて事前に設定されていることを意味する。使用者は、事前に設定されたパラメータに影響する立場に立つことなく、事前に設定されたインキュベーションサイクルを開始するだけでよい。このような自動化は、インキュベーションパラメータに対する誤りを減少させるために適している。
【0073】
特定の実施形態において、加熱デバイスは、サンプル内の温度を、70℃以上の温度へ上昇させ、その温度を維持するように設計される。さらなる実施形態において、加熱デバイスは、サンプル内の温度を、90℃〜110℃の温度へ上昇させ、その温度を維持するように設計される。最も好ましい実施形態において、加熱デバイスは、サンプル内の温度を、95℃〜99℃の温度へ上昇させ、その温度を維持するように設計される。測定アーチファクトおよび/または測定の不正確さに起因して、示される温度は、+/−2℃として理解されなければならない。
【0074】
加熱デバイスは、少なくとも5分間、サンプル内の温度を維持するように設計される。別の実施形態において、加熱デバイスは、7分間〜30分間、サンプル内のこの温度を維持するように設計される。最も好ましい実施形態において、加熱デバイスは、10分〜27分の期間にわたり、サンプル内の温度を維持するように設計される。
【0075】
特定の実施形態において、加熱デバイスは、デバイスの自動遮断により、インキュベーション期間の終了を自動的に検出することを可能にする方法で自動化されてもよい。さらなる実施形態において、デバイスは、インキュベーション期間の終了時に、聴覚、振動または視覚による信号を与えるように装備されてもよい。
【0076】
好ましい実施形態において、加熱デバイスは、サンプルバイアルを取り上げ得るドリルを備える加熱ブロックであってもよい。
【0077】
以下に提供される実施例により、本発明の主題の説明が示され、そしてこれらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとは意図されない。提供される実施例への数例のバリエーションが、当業者により実行され得る。したがって、実施例は、ここで詳述した本発明のもとの方法の限定された範囲の実施形態を提供するにすぎない。本発明者らにより実行された包括的な試験に基づいて、開示された方法は、本明細書に詳述された本発明の方法の肯定的な効果を変更することなく、容易に他の分析物および他の変性剤に移すことが可能であると、本発明者らは考える。
【実施例】
【0078】
(実施例1:子宮頸部由来のサンプル中のp16INK4aタンパク質、Ep−CAMタンパク質およびγカテニンタンパク質の安定化)
標準的なサンプリングデバイスを用いて得られた頸部標本中のp16INK4aタンパク質レベルを決定した。11個のサンプルを本明細書中に開示される本発明に従う加熱工程に供し、特定期間の保存後のp16INK4aレベルについて分析した;さらに7つのサンプルを、p16INK4aタンパク質レベルについてのELISA技術によるサンプル分析のために直接使用した。
【0079】
(サンプルの調製および安定化)
この実施例のため、子宮頸管内部(endocervical)ブラシまたはCervex−Brush Combi(Rovers Medical Devices)を使用して、婦人科医が患者サンプルを収集した。子宮頸管内部ブラシからの従来のPAP塗沫標本の調製後、このブラシが有する残存サンプル材料を、5mlのPST緩衝液(PST緩衝液:1% Triton X100、0.3% SDS、およびリン酸緩衝化生理食塩水;使用前に緩衝液の安定化のために保存剤としてProclin 300を含めた、リン酸緩衝化生理食塩水)を含むサンプル収集バイアル(例えば、SarstedtによるPPバイアル)に入れる。そのブラシのハンドルを取り外し、このブラシの先端をサンプル収集バイアル内に残す。サンプル材料および収集ブラシの入ったサンプル収集バイアルを、サンプル収集後2時間以内に、95℃の水浴中で15分間熱処理するか、あるいは熱処理工程のために使用され得る、加熱ブロックにおいて100℃で25分間熱処理する。
【0080】
サーモスタットおよびバイアルに適したサイズのドリル穴を有する加熱ブロック(NeoLab カタログ番号2−2503)を使用した。さらなる操作なしに(遠心分離なし、ブラシはバイアル内のまま)、サンプルを、以下のようにELISAによるサンプルの分析まで室温で14日間保存する。
【0081】
(ELISAの実施)
p16INK4aのレベルおよび/または濃度を、100μlのサンプル/測定物を用いる二連の測定において決定する。p16INK4aレベルを、例えば、室温で、サンプル保存開始から1日後、2日後、5日後および6日後に測定する。各データ点は2つの測定の平均である(変動係数10%未満)。
【0082】
p16INK4a特異的抗体クローンmtm E6H4によりコーティングされたELISAプレートを、p16INK4aのELISA検出のために使用した。100μlの細胞溶解サンプルを各ウェルに添加した。試験の検量目的のため、異なる濃度の組み換えp16INK4aタンパク質(0pg/ml、50pg/ml、100pg/ml、200pg/ml、400pg/ml、800pg/ml)を試験中に含めた。サンプルを室温で1時間インキュベートした。
【0083】
その後、自動ELISA洗浄器を使用して3回の洗浄を実施した。p16INK4aタンパク質に特異的な、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化二次抗体クローンmtm D7D7を、サンドイッチELISA系における検出のために使用した。100μlのD7D7−HRP溶液を各ウェルに添加し、そして室温で1時間インキュベートした。その後、自動ELISA洗浄器を使用して3回の洗浄工程を実施した。100μlのTMB基質を各ウェルに添加した。これらのELISAプレートを暗所で正確に15分間25℃でインキュベートした。次いで、その反応を80μlの2.5M HSOの添加によって停止させた。反応停止後5分以内にOD450nmを測定した。それらの結果の評価後、各サンプルはOD値を有した。このアッセイに含まれる検量サンプルに基づいた検量曲線を使用して、ODを相対的なユニット/mLに変換した。
【0084】
Ep−CAMおよびgカテニンを、以下の抗体の対に基づく特異的なサンドイッチELISAを使用して、類似のサンプルから決定した:Ep−CAMに対してHEA−125(German Cancer Research Center)およびMK1−410(BioVendor)、gカテニンに対して10F8(mtm laboratories)および4C12(mtm laboratories)。
【0085】
(結果)
頸部標本において測定したp16INK4aレベルを、OD(このとき、1つのサンプルについての全てのデータは1つのみのELISAプレートを使用して得る)またはユニット/mLのいずれかで記録する。異なる時点におけるそれぞれのサンプル中で測定されるレベルを、熱処理されていないサンプルについて図1に、そして熱処理されたサンプルについて図2に示す。
【0086】
図1に示されるデータは、サンプルが周囲温度で数日間にわたって保存される場合、ELISAにおいて検出可能な、p16INK4aシグナルの有意な消失が存在することを実証する。このことは、サンプル中のp16INK4a分析物タンパク質の分解があること示す。図2において、熱処理に供されたサンプルについて試験した期間全体にわたって、シグナルの消失が存在しないことが認識できる。したがって、熱処理後に得た頸部標本からのp16INK4aレベルは、全保存期間の間、安定化される。
【0087】
標本サンプル中のp16INK4aレベルが種々の熱処理手順によって影響を受けるかどうかを決定するため、14個の異なるサンプルから4つの連続したアリコートを得、以下のようにインキュベートした:
・100℃で15分後に採取したアリコート1
・100℃で25分後に採取したアリコート2
・100℃で35分後に採取したアリコート3
・さらに105℃で10分後に採取したアリコート4(熱処理の総時間45分)。
【0088】
p16−ELISAを使用して、各アリコートからp16INK4a濃度を個別に二連で決定した。4つの測定物間での平均濃度(4つの測定物のエラーバーを含む)および変動係数を図3に示す。この状況における検出限界を、4U/mLに設定する。この実験の結果は、測定したp16INK4aレベルにおいて、適用される時間期間の範囲にわって、熱処理に適用されるインキュベーション時間に依存した差異のないことが認識されることを示す。このことは、広い範囲の時間期間が適用され得ることを実証する。サンプルの熱処理期間の増加および温度の上昇でさえ、p16−ELISAを使用した分析物の決定を妨げない。
【0089】
いくつかの患者サンプルのプールを使用し、そして80℃、90℃または99℃での10分間の熱処理を行った。これにより、安定化が熱処理の温度に依存することが示され得る。このプールされたサンプルのアリコートは未処理のままであり、これをコントロールとして使用した。図4に示されるように、患者サンプルのプールは、熱処理に供されない場合には不安定であり、そして熱処理の際に安定化される。観察される安定化は、この熱処理が90℃超である温度でなされる場合に最良である。
【0090】
熱処理に供されない3つの患者サンプル中のgカテニンレベルおよび熱処理に供された7つの患者サンプル中のgカテニンレベルの決定の結果を、それぞれ図5および図6に示す。本発明者らの結果から、gカテニンが熱処理の際にPST緩衝液中で安定化されることが分かり得る。
【0091】
熱処理に供されない6つの患者サンプル中のEp−CAMレベルおよび熱処理に供された7つの患者サンプル中のEp−CAMレベルの測定による類似の結果を、図7および図8にそれぞれ示す。本発明者らの結果は、Ep−CAMも熱処理の際にPST緩衝液中で安定化されることを示す。
【0092】
同じ患者サンプルから採取したアリコートからのp16INK4aの測定を実施した。Ep−Camおよびgカテニンについて同じ測定を行った。この場合の測定は、各分析物についての別々のELISAプレートを使用して実施した。しかしながら、2つ以上の分析物の決定を1つの単独のプレートにおいて実施し得るELISAプレートを作製することは可能である。
【0093】
要約すると、概説した実験の結果は、熱処理の間に適用される温度が所定の条件下で少なくとも5分間90℃超に良好に適することを示す。45分までの処置持続時間のさらなる延長は、分析物を変化させない。さらに、これらの結果は、p16分析物、gカテニン分析物およびEp−CAM分析物の安定性より、周囲温度での少なくとも6日間の保存が達成され得ることを示す。これらの観察された安定化はタンパク質に特異的ではない。なぜなら、3種の異なるタンパク質について観察されることが示されるからである。
【0094】
これらの結果はまた、実験において試験した全ての分析物が免疫アッセイにおいて検出され得ることを実証する。ここで第一のインキュベーション工程は、0.3% SDSおよび1% Triton X100の存在下で実施される。
【0095】
さらに、この熱処理手順が、患者サンプル中に存在する細胞からのp16INK4aの抽出手順の安定化を生じさせることが注意され得る。ブラシ(これは熱処理の間にバイアル中に残される)の存在に起因して、細胞の効率的な溶解および分析物の均一な可溶化が達成される。ブラシ中に残される物質を失う危険性は、大いに低減される。
【0096】
(実施例1a:子宮頸部由来のサンプル中のp16INK4aタンパク質についての変性イムノアッセイ)
上記プロトコルの改変物において、本発明者らは、異なる加熱時間および異なる組成のサンプル媒体による種々の実験を実施した。頸部スワブを備える頸部サンプリングデバイス(Cytobrush)に、700μlの溶解緩衝液(3% Triton X100および0.5% SDSを有するPBS)の入った1.5mlの反応チューブ中に入れた。シャフトを切断し、閉じたチューブを室温で30秒間ボルテックスした。その後、ブラシを取り除いた。反応チューブを30分間95℃で加熱した。100μlの溶解物を、p16INK4a捕捉抗体(クローンE6H4)によりコーティングした96ウェルプレートにおいて、ウェルごとにピペッティングした。ビオチン化p16INK4a特異的検出抗体およびストレプトアビジン−HRP結合体を用いて、検出を実施した。基質としてDABを使用した。これらの結果を図9に示す。p16INK4aが、ある濃度の変性剤(0.5% SDSおよび3% Triton X100)の存在下でのELISAアッセイによって検出されたことが、認められ得る。さらに、p16INK4a値の上昇(p16INK4aの過剰発現を示す)と、試験した組織の細胞学的に確認される異常の存在との間に相関関係が存在する。
【0097】
(実施例2:ELISA技術およびLIA技術を使用したp16INK4aについての変性免疫アッセイの実施)
標準的な頸部サンプリングデバイスを用いて得た頸部標本におけるp16INK4aタンパク質のレベルを決定した。12個のサンプルを本明細書中に開示される本発明に従う加熱工程に供し、そして高濃度の界面活性剤の存在下において、ELISA技術およびLIA技術によってp16INK4aレベルについて分析した。
【0098】
サンプルの調製および安定化、ならびにELISAを、実施例1に示されるように実施する。
【0099】
(LIAの実施)
Dynalからの標準的なコーティング手順を使用して、p16INK4a特異的抗体クローンmtm E4H6によりダイナビーズ(Dynabeads)M−280をコーティングし、そして保存緩衝液中で濃度5mg/mlにて保存した。p16INK4a特異的な抗体クローンmtm D7D7を、標準的な手順によってイソルミノールにより標識した。このアッセイを、DiaSorin Liaison(登録商標)分析器を用いて実施した。溶解した細胞サンプルのうち200μlのサンプルを、100μlのトレーサー溶液(tracersolution)(10mM PBS(pH7.4)、1% BSA中のイソルミノールにより標識したモノクローナル抗p16INK4a抗体D7D7)および20μlの抗体コーティングした磁気粒子に添加した。37℃で10分のインキュベーション後、これらの粒子を磁石により分離し、Liaison(登録商標)Wash/System Liquidにより3回洗浄した。3回目の洗浄工程の後、これらの粒子を再度分離し、その上清を廃棄した。2つの使用準備済みの(ready−to−use)誘発溶液(Liason(登録商標)Starter Kit)の注入により化学発光シグナルを生成する。この試験の検量目的のため、異なる濃度の組み換えp16INK4aタンパク質(0pg/ml、50pg/ml、100pg/ml、200pg/ml、400pg/ml、800pg/ml)をこの試験に含めた。
【0100】
(結果)
頸部標本で測定されたp16INK4aレベルを、ユニット/mLで報告する。
【0101】
図10に示されるデータは、両方のアッセイ型によって測定されたp16INK4aレベルと僅かな差異のみを示す。したがって、この実験は、ELISA技術およびLIA技術を使用して、分析物タンパク質の変性状態を維持させ得る濃度(0.3% SDS)の変性剤の存在下で分析物を検出し得ることを証明する。
【0102】
本発明者らは、いくつかの分析物(p16INK4aタンパク質、gカテニン、Ep−Cam、HPV E7、CA19−9、MCM−2およびCDC−6が挙げられる)の検出についてELISAアッセイおよびLIAアッセイを等価に実施し得、そして有意により高濃度の変性剤の存在下においてさえ再現性よく検出され得ることを示し得る。例えば、1% SDSの存在下でのアッセイを首尾よく実施し得る。あるいは、3% Triton X100の濃度を、分析物の検出のためにELISA形式において首尾よく使用した。これらの場合、本発明者らは、変性剤がアッセイの間に存在する場合において、変性剤を省略した場合と比較して、免疫アッセイにおけるサンプルの分析によって得られた結果の再現性の改善を観察し得る。このことは、本明細書中に詳述したような範囲の濃度の変性剤が、能力、特に免疫化学的検出方法の再現性を改善するのに適していることを示す。
【0103】
(実施例3:側方流れ試験形式における頸部上皮内癌の検出)
9つの頸部スワブ(実施例1の条件と同様の溶解条件)を、従来のPAP試験に供し、そしてそれらのスワブ中に含まれる細胞から調製した溶液中のサイクリン依存性キナーゼインヒビターp16INK4aの過剰発現の、その後の側方流れに基づく検出において、溶解に供した。この側方流れ試験を、以下のように実施した。
【0104】
(細胞の溶解)
頸部スワブサンプルを、5mlのPST緩衝液の入ったサンプル収集バイアル(SCV)に移した。このサンプル収集バイアルを水浴中で95℃で15分間インキュベートした。このサンプル収集バイアルを室温に冷まし、4mlの上清を新しいチューブに遠心分離なしで移した。場合によって、この上清を−20℃で保存してもよい。
【0105】
(側方流れアッセイの実施)
(捕捉抗体の膜への適用)
p16INK4a特異的抗体mtm E6H4および組み換えp16INK4aタンパク質のストック溶液を、TBS(1%ウシ血清アルブミンを含む)中に希釈し、最終抗体濃度1mg/mlおよび組み換えp16INK4a濃度10μg/mlの使用準備済みのスポット溶液を得た。この使用準備済み溶液を、30μl/30cmにてニトロセルロース膜上にスポットした。Schleicher & Schuellのウィック(wick)をそのニトロセルロースの一端に取り付け、そしてディップスティックを37℃で15分間乾燥させる。次いで、これらのディップスティックを室温で平衡化させて4mm幅のディップスティックに切断する。
【0106】
(サンプルとのインキュベーション)
2μlのp16INK4a特異的抗体(クローンmtm D7D7)を、金コロイド(40nmの粒子サイズ;OD 44)と結合体化させ、これを100μlの各サンプル溶解物(0.3% SDSおよび1% Tritonを含む)に添加し、よく混合し、マイクロタイターウェルに移す。ディップスティックを、捕捉抗体として捕捉抗体クローンmtm E6H4、およびポジティブコントロールのラインとして組み換えp16INK4aによりコーティングし、これをウェルに加え、サンプルを浸漬させ完了するまで移動させた(run)。ディップスティックが濡れている間に、シグナルを読み取った。
【0107】
(結果)
これらの結果を図11に示す。本発明者らの試験形式において、以下のことが認識可能である。3つ全てのサンプルを、対応する細胞学的標本のPAP染色によってPAPIVaとして分類した。これは、形成異常細胞であることを示し、スポットした捕捉抗体の領域中に明確に視認可能なバンドを得た。対照的に、残りの6サンプルについてはバンドを検出し得ず、PAP染色によってPAP II−IIwとして分類した。これは正常細胞であることを示す。ポジティブコントロールのラインは、試験成分が機能性であることを示す。サンプルなしのネガティブコントロール(Co)は、非特異的な染色を示さなかった。
【0108】
(実施例4:尿由来の液体ベースの細胞学的サンプル中のMCM−5タンパク質レベルおよびMCM−2タンパク質レベルの免疫化学分析)
CytoLytTMにおける尿細胞の20個のLBCサンプルを本実施例のために使用した。実施例1に示されるようなELISA形式において、それぞれの分析物タンパク質に特異的な市販の抗体対を使用して、タンパク質分析を実施した。両方の場合において、モノクローナル抗体をELISAプレートにコーティングした捕捉抗体として使用し、そして検出抗体としてポリクローナル抗体を使用した。実験手順は、以下に示されるとおりに実施した。
【0109】
この実施例において、サンプルを溶解しそして加熱した直後の分析物について、身体サンプルを分析した。
【0110】
実施例1に開示されるようなサンプル媒体中に尿LBCサンプルを溶解した後、そして、そのサンプル溶液を加熱した後に、このような尿LBCサンプル由来の溶解物において、MCM−5およびMCM−2を容易に検出し得ることが示され得る。MCM−2およびMCM−5についての免疫化学アッセイにより得られたこれらの結果は、それぞれのタンパク質についてのサンプルの免疫細胞学的分析から得られた結果とかなり良好に対応する。細胞学において、MCM−5タンパク質についての免疫細胞学的染色を、診断評価の補助として使用した。
【0111】
上記の実験は、本明細書中に開示される方法が、保存剤を添加する必要なしに保存および運搬のため、ならびにその後の免疫アッセイによる分析のため、広い範囲の分析物の安定化に適していることを実証する。さらに、これらの実験は、変性イムノアッセイが広い範囲の分析物に適合し、そしてその免疫化学的検出を改善するのを助け得ることを実証する。
【0112】
本発明は、哺乳動物体より得られた分析物の、その後の免疫化学的分析による分析のための、容易かつコスト効果の高い保存を容易にする。本発明は、その他にはサンプル中の分析物の保存に使用され得る毒性成分および危険性成分の使用を除く方法を提供する。さらに、本発明は、サンプル中の分析物の決定の正確性および再現性を向上させ得、これによって免疫化学的検出方法の信頼性を向上させ得る。したがって、本発明は、例えば、ヒトにおける疾患の診断の評価を支持する試験結果に寄与し得る、改善された免疫化学的方法に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】(溶解サンプル中のp16INK4aの安定性)図1は、ELISAを使用してヒト子宮頸部由来のサンプルにおいて測定される、p16INK4aレベルのグラフを示す。頸部サンプルをサンプル媒体中に溶解し、その後、周囲温度において数日間インキュベートした。p16INK4aレベルの測定のため、各サンプルからのアリコートを、1日目(熱処理の直後)、2日目、3日目および7日目に採取した。グラフは、異なる時点における7つのサンプルにおいて測定されたp16INK4aレベルを示し、これにより所定の条件下での特定の患者サンプル中のp16INK4aの不安定性を示す。詳細については、実施例1を参照のこと。
【図2】(熱処理後の溶解サンプル中のp16INK4aの安定性)図2は、ELISAを使用してヒト子宮頸部由来のサンプルにおいて測定される、p16INK4aレベルのグラフを示す。頸部サンプルはサンプル媒体中に溶解し、水浴中で95℃で5分間熱処理し、その後、周囲温度において数日間インキュベートした。各サンプルからのアリコートを、1日目(熱処理の直後)、2日目、5日目および8日目に採取した。グラフは、11個の特定のサンプルにおいて測定されたp16INK4aレベルを示し、熱処理の際のp16INK4aの安定性を示す。詳細については、実施例1を参照のこと。
【図3】(熱処理後の溶解サンプル中のp16INK4aの安定性に対する、熱処理の持続期間の影響)図3は、ELISAを使用してヒト子宮頸部由来のサンプルにおいて測定される、p16INK4a濃度のグラフを示す。14個の異なる頸部サンプルを、95℃超で45分間インキュベートした。4つの連続するアリコートを、熱処理開始から15分後、25分後、35分後、および45分後に採取した。p16INK4a濃度を、p16INK4a ELISAを使用して、各々のアリコートから個別に二連で測定した。4つの測定値のエラーバーを含む平均濃度、および4つの測定値の間の変動係数が示される。詳細については、実施例1を参照のこと。
【図4】(熱処理後の溶解サンプル中のp16INK4aの安定性に対する、熱処理の間に適用される温度の影響)図4は、ELISAを使用してヒト子宮頸部由来のサンプルにおいて測定される、p16INK4aレベルのグラフを示す。p16INK4aポジティブのいくつかの患者サンプルの混合プールを、4つのアリコートに分け、それらを未処理のままにするか、または10分間それぞれ80℃、90℃、99℃でインキュベートした。アリコートを、1日目(熱処理の直後)、3日目、6日目および8日目に採取した。詳細については、実施例1を参照のこと。
【図5】(6つの溶解サンプル中のgカテニンの安定性)図5は、ELISAを使用してヒト子宮頸部由来のサンプルにおいて測定される、gカテニンレベルのグラフを示す。3つの頸部サンプルを、それらのサンプルが得られた直後にサンプル媒体中に溶解し、その後、周囲温度で数日間インキュベートした。アリコートを、1日目(熱処理の直後)、2日目、5日目および6日目に採取した。ELISAを使用した各サンプルにおいて測定されたgカテニンレベルがグラフ表示される。詳細については、実施例1を参照のこと。
【図6】(熱処理後の7つの溶解サンプル中のgカテニンの安定性)図6は、ELISAを使用してヒト子宮頸部由来のサンプルにおいて測定された、gカテニンレベルのグラフを示す。7つの頸部サンプルを、それらのサンプルが得られた直後にサンプル媒体中に溶解し、水浴中で95℃で15分間熱処理し、その後、周囲温度において数日間インキュベートした。アリコートを、1日目(熱処理の直後)、2日目、4日目、8日目、10日目および15日目に採取した。詳細については、実施例1を参照のこと。
【図7】(7つの溶解サンプル中のEp−CAMの安定性)図7は、ELISAを使用してヒト子宮頸部由来のサンプルにおいて測定された、Ep−CAMレベルのグラフを示す。6つの頸部サンプルを、それらのサンプルが得られた直後にサンプル媒体中に溶解し、その後、周囲温度で数日間インキュベートした。アリコートを、1日目(熱処理の直後)、3日目、5日目および7日目に採取した。詳細については、実施例1を参照のこと。
【図8】(熱処理後の7つの溶解サンプル中のEp−CAMの安定性)図8は、ELISAを使用してヒト子宮頸部由来のサンプルにおいて測定された、Ep−CAMレベルのグラフを示す。7つの頸部サンプルを、それらのサンプルが得られた直後にサンプル媒体中に溶解し、水浴中で95℃で15分間熱処理し、その後、周囲温度において数日間インキュベートした。アリコートを、1日目(熱処理の直後)、2日目、5日目および6日目に採取した。詳細については、実施例1を参照のこと。
【図9】(0.5% SDSおよび3% Tritonの存在下でのp16INK4aELISA)図9は、3% Trition X100および0.5%SDSを含むサンプルを用いてELISAにおいて測定された、p16INK4aレベルを示す。子宮頸部上皮の細胞学的に報告される異常を有するサンプルを適用した。グラフは、ELISAにおいて測定されたODを、利用可能な細胞学的診断と相関して示す。詳細については、実施例1aを参照のこと。
【図10】(0.3% SDSの存在下で実施されたELISAおよびLIA両方により、患者サンプルにおいて測定されたp16INK4aレベル)図10は、ELISAおよびLIAの免疫アッセイを使用して、ヒト子宮頸部由来のサンプルにおいて測定された、p16INK4aレベルのグラフを示す。免疫アッセイを、両アッセイ型に対して、0.3% SDSの存在下で実施した。12個の頸部サンプルを0.3% SDSを含むサンプル媒体中に迅速に溶解した。サンプル媒体内のサンプルを、免疫アッセイに直接適用した。両方の型の免疫アッセイは、上昇させた濃度のSDSの存在下でp16INK4aタンパク質レベルを検出することを証明する。詳細については、実施例2を参照のこと。
【図11】(0.3% SDSの存在下で実施された側方流れアッセイにより、患者サンプルにおいて測定されたp16INK4aレベル)図11は、側方流れのディプスティックに、0.3% SDSおよび1% Triton X100を含むサンプル溶液を直接適用した場合に、患者由来の細胞学的標本および組織学的標本について得られたデータを、得られた結果の表示と相関して示す表である。ディプスティックアッセイ形式において、供与された患者の形成異常病変に対応して、p16INK4aが特異的なバンド形成によって検出され得る。このことは、ディップスティック形式が変性剤の存在下で本発明にしたがって適用され得ることを実証する。詳細については、実施例3を参照のこと。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶化した身体サンプルの溶液中に、1以上の分析物を可溶化する方法であって、該方法は、以下:
i)界面活性剤およびカオトロピック因子から選択される変性剤を含有するサンプル媒体中に、哺乳動物被験体から採取した身体サンプルを可溶化する工程;
ii)次いで、該サンプルを含有するサンプル媒体を、一定の時間にわたり、少なくとも70℃を上回る温度に加熱する工程;ならびに
iii)次いで、保存および運搬、ならびに、その後のイムノアッセイのために、該サンプル媒体中に可溶化した該1以上の分析物を安定化させる工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、SDS、DOC、n−オクチルグリコシド、Triton X−100、Chap、Tween 20、N−ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル−アリールスルホネート、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩およびαオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホサクシネート、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル、カチオン性界面活性剤、塩化セチルトリメチルアンモニウム、Nonidet P−40、NP−40、Igepal CA−630、両性界面活性剤、CHAP、3−ドデシル−ジメチルアンモニオ−プロパン−1−スルホネート、ラウリルジメチルアミンオキシドを含む群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記70℃を上回る温度が、90℃と110℃との間の温度である、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記90℃と110℃との間の温度が、95℃と99℃との間の温度である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記一定の時間が、5分を上回る時間である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記5分を上回る時間が、7分と30分との間の時間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記7分と30分との間の時間が、10分と27分との間の時間である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記10分と27分との間の時間が、20分と25分との間の時間である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱する工程が、水浴、圧力鍋、高周波レンジ、UV加熱デバイスおよび加熱ブロックを含む群より選択される加熱デバイスにおいて行なわれる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記身体サンプルが、分泌物、スワブ、洗浄物、体液、精液、細胞サンプルおよび組織サンプル、液体ベースの細胞学サンプル、血液、塗抹標本、痰、尿、便、脳脊髄液、胆汁、消化管分泌物、リンパ液、骨髄、吸引物、ならびに、針生検またはパンチ生検のような器官の生検、ならびに、(微細な)針による吸引物を含む群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記1以上の分析物が、p13.5、p14、p15、p16(p16INK4aとも呼ばれる)、p19、p21、p27、p53、pRb、p14ARF、サイクリンA、サイクリンB、サイクリンE、MDM−2、CDC2、Id1、オステオポンチン、GRP、腎臓ジペプチダーゼ、her2/neu、TGFβIIレセプター、サイトケラチン(例えば、サイトケラチン8、サイトケラチン10、サイトケラチン18)、ムチン抗原(MUC1、MUC2、Tn、STn)、EpCAMおよびgカテニン、コンカナバリンAレセプター、GalNacトランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、レクチン(ConA、WGA、PNA、UEA I、DBA、SBA、SNA)、プラコフィリン、ビメンチン、CD抗原(例えば、CD3、CD16、CD18、CD4、CD8、CD56、CD19、CD2O)、HPV関連マーカー(例えば、HPV遺伝子L1、L2、E1、E2、E4、E5、E6もしくはE7に由来するもの)、CDC6、MCM2、MCM3、MCM4、MCM5、MCM6、MCM7、CDC7プロテインキナーゼ、Dbf4、CDC14プロテインホスファターゼ、CDC45およびMCM10、Ki67、Ki−S2、PCNA、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、Topo2α、転写因子、E2Fファミリーメンバー、Brn−3a、Brn−3b、またはPOLDを含む群より選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
溶液中のタンパク質の変性イムノアッセイのための方法であって、該方法において、該イムノアッセイの少なくとも1つの工程が、1以上の分析物のタンパク質の変性された状態を維持することが可能な濃度の少なくとも1つの変性剤の存在下で行なわれる、方法。
【請求項13】
前記1以上の分析物のタンパク質が、変性剤の存在下で該タンパク質を加熱して、該タンパク質を変性させることによって変性される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12または13のいずれか1項に記載の方法であって、該方法は、以下:
i)タンパク質を含有するサンプルを、1以上の変性剤と接触させる工程、
ii)該サンプルを、該変性剤の存在下で一定の時間にわたって加熱して、該タンパク質を変性させる工程、および
iii)サンプル媒体中に可溶化した該サンプルを試験のための生検として用いて、1以上のタンパク質を検出するために、1以上のイムノアッセイを行なう工程
を包含する、方法。
【請求項15】
少なくとも1つの免疫化学的検出が、免疫沈降または免疫学的アッセイ、EIA、ELISA、RIA、側方流れアッセイ、貫流アッセイ、イムノクロマトグラフィーストリップおよびラテックス凝集アッセイを含む群より選択されるイムノアッセイである、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの変性剤が、界面活性剤、有機酸、無機酸、SDS、DOC、n−オクチルグリコシド、Triton X−100、Chap、Tween 20、ウレア、ホルムアミド、GuaSCN、ギ酸ウレア、酢酸ウレアおよびリン酸ウレア、N−ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル−アリールスルホネート、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩およびαオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホサクシネート、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル、カチオン性界面活性剤、塩化セチルトリメチルアンモニウム、Nonidet P−40、NP−40、Igepal CA−630、両性界面活性剤、CHAP、3−ドデシル−ジメチルアンモニオ−プロパン−1−スルホネート、ラウリルジメチルアミンオキシド、水酸化アルカリ、NaOH、ならびにKOHを含む群より選択される、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの変性剤が、前記アッセイに適用されるサンプル溶液中に、0.3%以上の濃度で存在する、請求項12〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
イムノアッセイにおける、標準物質またはコントロールの目的のためのサンプルであって、該サンプルは、1以上の変性剤の存在下での生化学分析または免疫化学分析に適した分析物を含有し、そして、以下:
i)該分析物を変性剤に接触させる工程、
ii)該変性剤の存在下で一定の時間にわたり該分析物を加熱して、該分析物を変性させる工程、ならびに
iii)該分析物を、イムノアッセイにおいて使用するまで、該変性剤の存在下で保存および/または梱包する工程
を包含する方法に供される、サンプル。
【請求項19】
前記1以上の変性剤が、界面活性剤、有機酸、無機酸、SDS、DOC、n−オクチルグリコシド、Triton X−100、Chap、Tween 20、ウレア、ホルムアミド、GuaSCN、ギ酸ウレア、酢酸ウレアおよびリン酸ウレア、N−ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル−アリールスルホネート、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩およびαオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホサクシネート、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル、カチオン性界面活性剤、塩化セチルトリメチルアンモニウム、Nonidet P−40、NP−40、Igepal CA−630、両性界面活性剤、CHAPS、3−ドデシル−ジメチルアンモニオ−プロパン−1−スルホネート、ラウリルジメチルアミンオキシド、水酸化アルカリ、NaOHおよびKOHからなる群より選択され、前記分析物が、p13.5、p14、p15、p16(p16INK4aとも呼ばれる)、p19、p21、p27、p53、pRb、p14ARF、サイクリンA、サイクリンB、サイクリンE、MDM−2、CDC2、Id1、オステオポンチン、GRP、腎臓ジペプチダーゼ、her2/neu、TGFβIIレセプター、サイトケラチン(例えば、サイトケラチン8、サイトケラチン10、サイトケラチン18)、ムチン抗原(MUC1、MUC2、Tn、STn)、EpCAMおよびgカテニン、コンカナバリンAレセプター、GalNacトランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、レクチン(ConA、WGA、PNA、UEA I、DBA、SBA、SNA)、プラコフィリン、ビメンチン、CD抗原(例えば、CD3、CD16、CD18、CD4、CD8、CD56、CD19、CD2O)、HPV関連マーカー(例えば、HPV遺伝子L1、L2、E1、E2、E4、E5、E6もしくはE7に由来するもの)、CDC6、MCM2、MCM3、MCM4、MCM5、MCM6、MCM7、CDC7プロテインキナーゼ、Dbf4、CDC14プロテインホスファターゼ、CDC45およびMCM10、Ki67、Ki−S2、PCNA、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、Topo2α、転写因子、E2Fファミリーメンバー、Brn−3a、Brn−3b、またはPOLDを含む群より選択される、請求項18に記載のサンプル。
【請求項20】
前記1以上の変性剤の濃度が、0.3%以上である、請求項18または19のいずれか1項に記載のサンプル。
【請求項21】
人体から身体サンプルをサンプリングするためのサンプル回収バイアルであって、該バイアルは、界面活性剤、有機酸、無機酸、SDS、DOC、n−オクチルグリコシド、Triton X−100、Chap、Tween 20、ウレア、ホルムアミド、GuaSCN、ギ酸ウレア、酢酸ウレアおよびリン酸ウレア、N−ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル−アリールスルホネート、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩およびαオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホサクシネート、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル、カチオン性界面活性剤、塩化セチルトリメチルアンモニウム、Nonidet P−40、NP−40、Igepal CA−630、両性界面活性剤、CHAPS、3−ドデシル−ジメチルアンモニオ−プロパン−1−スルホネート、ラウリルジメチルアミンオキシド、水酸化アルカリ、NaOHおよびKOHを含む群より選択される変性剤を含むサンプル媒体を含有し、そして、該回収バイアルは、閉じたバイアル内での該サンプル媒体の110℃までの加熱を可能にするように設計されている、バイアル。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法を行うための、自動加熱デバイスであって、該デバイスは、以下:
i)可溶化した身体サンプルの溶液を含む少なくとも1つの容器を、予め設定した温度まで加熱する工程;
ii)該サンプル液体内の温度を、予め設定した時間にわたり維持する工程;および
iii)インキュベーション時間の終わりを示す、聴覚、振動または視覚による信号を示す工程
を行なうように設計されている、デバイス。
【請求項23】
前記予め設定した温度が、90℃〜110℃の範囲内である、請求項22に記載の加熱デバイス。
【請求項24】
前記予め設定した温度が、95℃〜99℃の範囲内である、請求項22に記載の加熱デバイス。
【請求項25】
前記予め設定した時間が、7分〜30分の範囲内である、請求項22に記載の加熱デバイス。
【請求項26】
前記予め設定した時間が、10分〜27分の範囲内である、請求項22に記載の加熱デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図3】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−83660(P2013−83660A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−275557(P2012−275557)
【出願日】平成24年12月18日(2012.12.18)
【分割の表示】特願2007−23582(P2007−23582)の分割
【原出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(504341793)ロッシュ エムティーエム ラボラトリーズ アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】