説明

溶液中の染料の蛍光量子収率の相対測定方法

本発明は染料の相対蛍光量子収率の測定方法に関し、a)溶媒中の染料の溶液の少なくとも10つの異なる濃度に対して、電磁放射(6)を用いて染料を励起する段階と、放射によって励起された染料の光ルミネッセンス(67)、及び、染料を収容するセルを透過した信号(65)を測定する段階と、b)測定データを標準染料のフォトルミネッセンス及び透過のデータと比較する段階と、c)染料の相対蛍光量子収率を計算する段階とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中の染料の蛍光量子収率の相対測定用の新規方法に関する。本発明は、如何なる有機または無機染料に対しても応用され、例えば、半導体ナノ結晶が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
有機及び無機染料の多数の応用は、例えば蛍光マーカーとして用いられるように、それらの染料が発光可能であることに基づいている。
【0003】
蛍光量子収率は、そうした染料の効率を定量化するものであり、溶液によって放出された光子数対吸収された光子数の比に等しい。これは、染料製品の製造者及び使用者にとって重要なパラメータであり、この量子収率の系統的かつ信頼できる測定が望まれる。
【0004】
蛍光量子収率の測定は、参照用染料を決定するための有機染料の測定において知られており、そして、その量子収率がわかるので、参照用染料を標準として用いることが可能になる。
【0005】
蛍光量子収率の絶対測定が用いられてきており、熱量法、光音響法、積分球を用いた方法、バビロフ法がよく知られている(非特許文献1)。
【0006】
こうした方法は時間がかかり、自動化できず、研究所の計測学の分野に関係してくるので、実行するのが面倒である。これに加えて、精度が5%から10%までで変化するので、その信頼性には限界がある。また、こうした方法は、濃縮溶液を要することが多いが、例えば、半導体ナノ結晶等の僅かな量しか手に入らない場合には、このような溶液を得ることは難しい。
【0007】
こうした理由から、溶液中の蛍光量子収率の測定は、相対的に実施されることが多く、上述の引用文献または標準染料が用いられる。これに関して、二つの方法が存在する(非特許文献1)。
【0008】
一つの方法は、所謂“高光密度”法であり、高濃縮溶液を要する。しかしながら、上述の理由により、この方法は、大抵の無機染料には適さない。
【0009】
もう一つの方法は、所謂“低光密度”法であり、希釈溶液を要する。この方法では、量子収率が既知の染料の光ルミネッセンス強度を、決定したいサンプルの強度と比較する。
【0010】
しかしながら、大抵の研究所や製造会社による製品は、次の二点に関して不確かである。
1)第一に、二つの溶液の蛍光発光強度を比較可能にするためには、吸光度が同じでなければいけないが、サンプルと参照体を単一の濃度で比較する場合に、常に保証できるものではない。この方法を後で測定結果を補正するようにして用いることは、可能である。しかし、補正因子は常に適切に制御されるものではなく、これが、蛍光量子収率の値のエラーの主な原因となる。
2)もう一つの難しさは、測定の再現性に関する。相対測定において、通常用いられる装置は、光学系(ミラー、フィルタ等)によってサンプル上に伝えられるレーザビームと、溶液を収容する蛍光セルと、ルミネッセンスを収集する光学系(レンズ、絞り等)と、検出器とを備える。しかしながら、光ルミネッセンスは等方性であり、検出器によって測定される収率は放出流の一部を示しているに過ぎない。従って、装備の幾何学的配置についての正確な情報が必要不可欠である。何故ならば、レーザビームの経路におけるまたはセルの配置における僅かな変化であっても、測定の致命的なエラー及び結果の再現性の悪さに繋がり得るからである。
【0011】
結論として、通常実施されているような蛍光量子収率の相対測定は、ほとんど信用できず、再現することが難しく、自動化されないということになる。
【0012】
【非特許文献1】J.N.Demas外、J.Phys.Chem.、1971年、第75巻、p.991―1023
【非特許文献2】A.V.Butenin外、Opt.Spectrosc.、1979年、第47巻、第5号、p.568―569
【非特許文献3】B.Gelernt外、J.Chem.Soc.,Faraday Trans.、1974年、第2巻、第70号、p.939―940
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、染料の相対的量子収率を測定するための新規方法及び新規装置を見つけ出すことが課題である。
【0014】
このような方法及び装置を用いて、広範な範囲の濃度に対して測定を実施可能であることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によって、蛍光量子収率の測定をより正確に実施すること、及び、前述の方法と比較してかなり短い時間で測定を実施することが可能になる。
【0016】
本発明は染料の相対蛍光量子収率の測定方法に関し、
a)溶媒中の染料の溶液の少なくとも10つの異なる濃度に対して、
‐電磁放射(6)を用いて染料を励起する段階と、
‐放射によって励起された染料の光ルミネッセンス(67)、及び、染料を収容するセルを透過した信号(65)を測定する段階と、
b)測定データを標準染料のフォトルミネッセンス及び透過のデータと比較する段階と、
c)染料の相対蛍光量子収率を計算する段階とを備える。
【0017】
或る実施例によると、測定データは、透過信号に対する光ルミネッセンスの変化を与える理論式に適切にフィッティングされて、サンプルの蛍光量子収率の計算を可能にするパラメータが導出される。
【0018】
本方法により、染料の濃度に関する不確かさを克服することができる。何故ならば、本方法においては、如何なる段階でも、測定される染料の濃度または標準染料の濃度のどちらの情報も必要とされないからである。
【0019】
濃度は徐々に減少することが好ましい。つまり、測定開始時には最高濃度であり、測定終了時には最低濃度である。
【0020】
本方法を、第一に標準染料(蛍光量子収率は知られている)に適用し、次に、蛍光量子収率を決定したいサンプルに適用することができる。代わりに、標準染料の量子収率は既にわかっているので、量子収率が未知の染料に対してのみ測定が行われる。
【0021】
従って、対象となる溶液は第一に標準染料のものであり、その後で、同じ実験が、同じ幾何学条件下で、収率を決定したいサンプルに対して実施される。
【0022】
入射放射のパワーまたは強度の測定を用いて、測定を規格化することができ、ビームまたは入射放射の強度またはパワーの変化とは測定が無関係になる。
【0023】
本発明の或る実施例によると、入射ビームのパワーと、セルを透過したもののパワーと、溶液によって放出される蛍光信号とを同時に測定することが可能である。
【0024】
ビームまたは入射放射は、レーザや、例えば光放出三極管型の源の視準されたビーム等の非コヒーレント源や、スペクトルをフィルタリングした白色ランプや、測定される染料の蛍光を励起可能であるがそのスペクトルが染料の放出スペクトルに重ならない他の源によるものであってもよい。
【0025】
染料を収容するセルによって反射されたビームの追加的な測定を用いて、セル内の溶液の一様性を制御することが可能である。
【0026】
本発明の方法は特に、無機染料の蛍光量子収率の測定に適するものであり、例えば、CdSe(ZnS)等のII―VI族の半導体ナノ結晶が挙げられる。半導体について、本発明は最も関心がある。何故ならば、ナノ結晶の重さはむらがあり、その濃度を評価することは非常に難しいからである。本発明は、このような濃度の情報を要さない。
【0027】
蛍光及び透過放射を検出する検出手段と、セルと、入射放射の経路を定めるために用いられる手段の少なくとも一部とは、互いに及び/又はテーブル上に固定されているとよい。
【0028】
蛍光セルは循環セルであることが好ましく、置換せずにセル内の溶液の濃度を変更することが可能になる。
【0029】
これに加えて、セルは、セル内に気泡が入り込まないように染料及び溶媒を追加する手段を有することが好ましい。
【0030】
また、本発明は溶媒中の染料の溶液の相対蛍光量子収率を測定するための装置に関するものである。本装置は、
‐蛍光セルと、
‐励起された染料によって放出される蛍光信号及び染料を透過した信号を測定する手段と、
‐励起された染料によって放出される蛍光信号及び染料を透過するレーザ信号のデータと標準染料についてのデータとに関する相対量子収率を計算する手段とを備える。
【0031】
セル内の染料の濃度を時間に関して変化させる手段を備えてもよい。
【0032】
セルは、循環蛍光セルであってもよい。
【0033】
また追加として、本装置は、セルによって反射された信号を測定する手段を備えてもよい。
【0034】
セル内の染料を一様化する手段によって、一様な溶液内での測定が可能になる。
【0035】
セル上での入射放射の強度またはパワーの変化を測定する手段を備えてもよい。
【0036】
一実施例によると、計算手段によって、蛍光信号及び透過信号が理論式にフィッティングされる。
【0037】
本発明の装置及び方法の両方に対して、理論式は
【数1】

または
【数2】

であってもよい。ここで、Fは蛍光信号のパワーに比例し、Tは透過信号のパワーに比例し、ρは絶対蛍光量子収率、
【数3】

は溶液によって放出された光子のエネルギー、
【数4】

は入射光子のエネルギー、B、A及びCは定数、Δ及びLは染料を収容するセルの幾何学パラメータである。
【0038】
計算手段は、以下の式
【数5】

を用いて、染料の相対蛍光量子収率を計算することが好ましい。ここで、
【数6】

は溶液によって放出された光子のエネルギー、
【数7】

は入射光子のエネルギー、m1及びm2は透過信号(T)に対する蛍光信号(F)の変化特性のパラメータ、添え字R及びEはそれぞれ、標準染料及びサンプルに関する。
【0039】
ここ場合もまた、セル及び測定手段は、互いに関して固定されて配置されていることが好ましい。
【0040】
放射の入射方向を定める手段を備えてもよい。
【0041】
染料溶液のセル内への注入及び、その後の溶液を希釈するための溶媒のセル内への注入は、自動注入手段を用いて行われてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
図1は、本発明において使用可能な装置の多様な構成要素を概略的に示す。
【0043】
本装置は、励起放射を生じさせる放射源6または放射手段6と、光学手段2とを備え、光学手段2自体は、蛍光セル20を備え、また、第一に蛍光の光学信号を検出し第二に該セル20を通過した信号を検出するための検出手段22を少なくとも備える。従って、図1の参照符号22は、単一の検出器というよりもむしろ一組の検出器を示すものである。
【0044】
流体手段4は、染料及び溶媒をセル20内に注入するために用いられる。図1に示すように、例えば自動注入手段40を備えることが好ましい。
【0045】
データ獲得及び処理用手段8は、検出器によって供給されるデータを収集及び処理するために用いられる。
【0046】
励起源6は、例えば365nmの波長のアルゴンレーザ等の持続性放射源である。
【0047】
入射ビームまたは放射は、レーザや、例えば光放出三極管型の源の視準されたビーム等の非コヒーレント源や、スペクトルをフィルタリングした白色ランプや、測定される染料の蛍光を励起可能であるがそのスペクトルが染料の放出スペクトルに重ならない他の源によるものであってもよい。
【0048】
放射源のパワーは、測定を歪める染料の蛍光粒子の光脱色(光酸化による破壊)が生じないように十分に低いものであるように選ばれることが好ましい。
【0049】
例えば、このパワーは、1μWと10μWの間、または100μWと200μWの間である。
【0050】
手段6によって放出された放射60の一部62は、セル20に向かう。この同じ放射の他の一部61は、放射60の強度変化を測定するために用いることができ、この場合、検出手段22は、上述の手段に加えて、放射のこの一部61を検出するための手段も備える。
【0051】
作動時には、流体手段4(例えば、少なくとも二つのチャネルを有するバルブ(低圧液体クロマトグラフィーで用いられる6チャネルバルブ等)を備えた自動注入手段40等)が、染料及び溶媒が注入される蛍光セルに接続される。
【0052】
セル20から放出した蛍光放射67は、手段22によって、より正確には蛍光放射検出手段によって検出及び測定される。染料によって吸収されずにセルを通過して放出した放射65も、手段22によって、より正確には透過放射検出手段によって検出及び測定される。
【0053】
一実施例によると、セルによって反射された放射63も、手段22(特定の検出器)によって検出されてもよい。この検出の有益性については下記で説明する。
【0054】
図1の手段8は、データ獲得用の一つ以上のコンピュータインターフェイスボード80を備え得る。このボードは、例えばマイクロプロセッサやPC型のデータ処理手段に結合されて、検出手段22からのデータを獲得及び処理することができる。
【0055】
このデータ処理手段は、この目的のために特別にプログラムされて、下記で説明するような本発明によるデータ処理を実行するものであってもよい。
【0056】
図2は光学手段2の一実施例を示す。
【0057】
この図では、手段6(この図には示さず)によって放出された入射ビームの軌跡が実線で示されており、二つの絞り13及び15によって、その基準方向が定められている。
【0058】
この装置は4つのミラー10、12、14、16を有する。
【0059】
二つの検出器223及び224(例えば光ダイオード)を用いて、第一にセル20に収容された染料の光ルミネッセンス67と、第二に染料を通過してセルを透過したビーム65の強度またはパワーが測定される。
【0060】
高域フィルタ(例えば365nmの入射ビームに対して400nmのカットオフ波長を有する)を検出器223と組み合わせることが可能であり、例えばこの検出器の支持体に集積させて、不純物による励起信号(この場合λ=365nm)の拡散を遮断する。
【0061】
信号の収集を最大にするために、検出器223は可能な限りセル20に近づけて配置されることが好ましい。検出器に向かう蛍光を収集するための光学手段が追加されてもよい(レンズ、及び/又は、ミラー、及び/又は、積分球)。
【0062】
これに対して、蛍光信号対励起信号の比を最大限に減少させるために、検出器224は可能な限りセル20から遠ざけて配置されることが好ましい(蛍光は利用可能な全方位における放出であり、レーザビームとは異なり、その強度は距離の二乗の逆数で減少する)。
【0063】
ガラススライド5をセル20の前方に配置して、入射信号ビームの僅かな部分61をサンプリングして、その部分を検出器221に送ることができる(図2)。この信号は参照用に用いられる。検出器221(例えば光ダイオード)の補助によって、入射ビームの強度またはパワーの変化が測定可能になる。
【0064】
この測定は、図2に示すシステムの外側でも同じ様に行うことができ、例えば、放射源6(図2には示さず)の近くで行われる。
【0065】
第四検出器222(例えばこれも光ダイオード)を用いて、セル20の入口及び出口窓によって反射された信号63の強度またはパワーを測定または制御することが可能になる。
【0066】
この検出器222は、可能な限りミラー14に近づけて配置されることが好ましく、反射ビーム63(また入射ビーム62)が、セルに対する法線と小さな角を成す(略3.5°)。略直角で入射するビームによって、検出器222上の信号検出を最大にすることができ、セル上の反射率及び透過率の計算が単純化される。
【0067】
二つの絞り13、15は確実に固定されていることが好ましく、基準方向を定める。
【0068】
二つの第一ミラー10、12は調節可能であり、基準方向内にビームを合わせるために用いられる。
【0069】
流れを下って見ていくと、ミラー14、16、検出器223、224の支持体及びセル20は、それらの位置が最適化された後で永久的に固定される。
【0070】
ミラー10、12の下流に位置する構成要素を固定することによって、固定された測定の構成を定めることが可能になる。
【0071】
装置の使用においては、装備(ミラー、絞り)の幾何学パラメータを固定することが好ましく、セルを介して検出器に向かうビーム62の経路が常に同じになる。
【0072】
蛍光及び透過放射を検出する検出手段223、224と、セル20と、入射放射62の経路を決定可能にする手段13、14、15、16の少なくとも一部とは、互いに相対的に固定されていることが好ましい。
【0073】
こうすることによって、安定した配置で動作することが可能になる。
【0074】
本発明による装置で用いられるセル20の例が図3A及び3Bに示されている。
【0075】
セルの体積は、例えば0.1mlと10mlとの間である。
【0076】
セルは、幅L(セル全体をビームが通過する時のビーム経路の実際の長さ)で、例えば石英の壁201、203を有し、励起放射62(パワーPi)と透過放射65(パワーPt)の出入りが可能である。
【0077】
横方向には、例えば細長い形状で、石英内の幅2Δの窓202によって、蛍光放射(パワーPf)用の出口67が与えられる。
【0078】
従って、蛍光信号は、この細長い窓202を介して測定される。
【0079】
図3Bには、不透明ならば灰色で、透明であれば白で示された石英の壁が示されている。
【0080】
セル20によって反射されたビーム63(パワーPr)は、第一に入口窓201によって第二に出口窓203によって反射された二つの構成要素601、603を有する。
【0081】
セル20上で反射された信号63の測定を用いて、このセル内の溶液の一様性が確かめられる。
【0082】
手段26、28によって、流体をセルに加え、またセルから除去することが可能になる。任意ではあるが、ポンピング手段によって補助してもよい。
【0083】
セル20は循環セルであることが好ましく、置換せずにセル内の溶液の濃度を変更することが可能になり、装備の幾何学的安定性にも貢献する。
【0084】
このセルにおいては、開始時の製品を、例えば濃縮溶液とすることが可能であり、測定が行われる間、溶媒が連続的に注入されて、濃縮溶液が希釈される。
【0085】
また、自動注入装置を用いて溶媒を注入することによって(例えば100μl/minから200μl/minの速度)、10分間で数千点の測定を行うことができ、精度が顕著に向上する一方で、同程度の精度の測定を行うためには数時間かかる周知の方法で必要とされる時間よりもはるかに短い実験時間が維持される。
【0086】
セル内の溶液の一様性を維持するために、一様化手段206を使用可能であり、例えば、磁気ロッド(例えばL=2mm、φ=1mmという小型)をセル内に配置して、例えばモータ(図示せず)によって回転駆動する二つの磁石を有する磁気攪拌器によって、作動させる。
【0087】
検出器からの信号は、電子的獲得手段及び信号処理用手段に送られる。
【0088】
処理の一例によると、光ダイオードによって検出される信号は、複数の回路によって、変換、増幅及びフィルタリングされる。それぞれの回路は、それぞれの検出器の後方に配置されている。
【0089】
信号は、獲得ボード(キースレー社製)を介してコンピュータに送られて、プログラムによって処理される。
【0090】
異なる検出器によって行われる測定は、ほぼ同時に行われ、例えば、5ms毎または10ms毎から、100ms毎または200または300ms毎の間にデータが一つ獲得される(実際には同時に複数獲得されている)ように、獲得速度が高速であることが好ましい。他の例によると、50ms毎に一つ獲得される。
【0091】
一般的に、用いられる検出器は、全てシリコン光ダイオードであることが好ましい。
【0092】
信号処理の例を下記に示す。
【0093】
持ち運びを簡単にするために、装備は小型に設計されていてもよい。
【0094】
この目的のため、光学手段及び検出手段は、例えば25cm×15cm×1cmのサイズのアルミニウム等のプレート上に固定されてもよい。このプレートは、三フィートの調節可能な高さに静止しており、使用されるテーブルに容易に固定可能である。
【0095】
完全な装備の例は、
‐1つのアルゴンレーザ6と、
‐3フィートに固定された1つのプレートと、
‐それぞれ直径12.7mmでプレートに固定された支持体を備えた4つの紫外線干渉ミラー10、12、14、16と、
‐直径0.8mmの2つの絞り13、15と、
‐1つの分離スライド5及びその支持体と、
‐1つの循環蛍光セル20(体積=100μl)と、
‐セル内の磁気ロッド206及び1つの磁気攪拌器と、
‐400nmのカットオフ波長を有し放出蛍光の観察窓の側面上に存在するセル内の1つの高域フィルタと、
‐4つの検出器221、222、223、224及びそれらの支持体と、
‐4つの印刷基板(それぞれの検出器用)、一つの電流/電圧変換器及び増幅器と、
‐1つの獲得ボードと、
‐獲得ボードに対するリンクを確実にする1つの印刷回路と、
‐1つの自動注入器と、
‐1つの6チャネルバルブ及びバルブに接続されたシリンジとを備える。
【0096】
実験時に測定された強度から蛍光量子収率を得るために、様々な実験データ処理方法を用いることができるが、それら全てが同じ精度を有する訳ではない。
【0097】
或る処理方法では、溶液の濃度が中程度である時には良い結果が得られるが、高濃度及び低濃度においては、量子収率の計算におけるエラーが発散する。
【0098】
蛍光量子収率に対して最高の精度を与え、透過信号に関してつまりは濃度に関してルミネッセンス信号を描く手段を備え、理論式を用いて得られた曲線をフィッティングできる方法を用いることが好ましい。
【0099】
従って、量子収率における相対エラーは、測定点全体に対しては平均化される。
【0100】
異なる測定強度の理論式は、蛍光セルの幾何学構造に依存する。
【0101】
透過信号(Pt)の理論式は、
X=α(L/2)とすると、
Pt=APiexp(−2X) (1)
である。ここで、Aは定数、αはテストした溶液の吸収度、Lは蛍光セルの幅である。
【0102】
蛍光信号(Pf)の理論式は、
X=α(L/2)とすると、
【数8】

である。ここで、Bは定数、
【数9】

は溶液が放出した光子のエネルギー、
【数10】

は入射光子のエネルギー(レーザから導出される)、ρは蛍光量子収率、Δは蛍光セルの幾何学パラメータである(図3A)。
【0103】
入射信号(Pi)でこの式を割ることによって、規格化を実行してもよく、T=Pt/Pi、F=Pf/Piとすると、式(1)より
T=Aexp(−2X) (3)
が得られ、式(2)より
【数11】

が得られる。
【0104】
式(3)及び(4)より、曲線F=f(T)の理論式は
【数12】

となる。
【0105】
この完全な式に対して相対的に測定点をフィッティングすることが可能である。しかしながら、極僅かな物質しか手に入らないのであれば、低濃度での測定結果しか得られない。そこで、この場合にはより単純に、例えば、T=Aの周りで式(5)を限定的な級数で展開する等といった式(5)の近似式に対して相対的に実験の測定結果をフィッティングする。
【0106】
用いられる近似式は、例えば
【数13】

である。ここで、Cは既知のパラメータであるが、その値は量子収率を計算するのに必要ではない。
【0107】
従って、曲線F=f(T)のフィッティングは、次の三つのパラメータに関して行われることになる。
【数14】

【0108】
式(6)によるように、実験データは僅かな曲率を示す。m3は後で用いられることはないが、m1の正確な値を得るため、(T−A)の比例項をフィッティングにおいて考慮する。
【0109】
この手順を初めに、標準染料に適用してもよい。そうして、(m1)、(m2)、(m3)が得られる。一変形例によると、これらのパラメータは、同一の標準染料に対して以前に行われた測定から既知である。
【0110】
この手順がサンプルに適用されて、(m1)、(m2)、(m3)が得られる。
【0111】
(m1)/(m1)の比を用いて、サンプルの相対量子収率ρが、式(7)より
【数15】

と得られる。
【0112】
定数B、L、Δについて式(8)を整理して、パラメータAを上記フィッティング方法でわかったm2に置き換えると、
【数16】

が得られる。
【0113】
蛍光エネルギー
【数17】

の比が含まれるのは、基準体及びサンプルが厳密に同じ波長で放出するとは限らないからである。
【0114】
こうした理由で、蛍光検出器の効率は波長で異なり得るので、他の補正因子を用いてもよい。
【0115】
他の補正も可能であり、特に、標準染料及び測定される染料用に用いられる溶媒の屈折率の違いに関係した補正が可能である。
【0116】
検出器222(図2)を用いて、セルの前面201及び背面203(図3B)によって反射されたパワー(Pr)を測定することによって、セル内の溶液の一様性を確かめることができる。
【0117】
上述のように、図3Bによると、Prは以下の二つの構成要素の和である。
(1)セルの前面201で反射される、つまり、Piに比例し、溶液の濃度に無関係な構成要素601
(2)セル20の背面で反射されて、二回通過することになる溶液に依存する第二構成要素603
【0118】
反射パワーの理論式は、
Pr=rPi+r’Pt (10)
である。ここで、r及びr’は定数。前述のようにPiで割って、R=Pr/Piとすると、
R=r+r’T (11)
が得られる。
【0119】
この計算は、セル内の溶液が一様である場合に有効である。そうでない場合には、複雑な現象が作用して、この理論式は確かではない。放物線に対して相対的にR=f(T)の軌跡をフィッティングすることによって、溶液の一様性が確かめられる。
【0120】
データ処理手段8によって、上述のような方法を用いて検出器によって測定されたデータを処理することが可能になる。
【0121】
この手段は図7に示されており、検出器と組み合わせられた獲得ボードからデータを受信して上述のような本発明による方法を実施するようにプログラムされたマイクロコンピュータ82に加えて、表示手段84も備える。この表示手段84は例えば、
‐測定点F及びTと曲線F=f(T)の分布
‐計算されたパラメータm1、m2と任意ではあるがC、また、得られた相対蛍光収率
‐任意ではあるが、曲線R=f(t)とその点
を作業者が視覚化できるようにする。
【0122】
例えば入射ビーム特性等の他のパラメータも表示可能である。
【0123】
周辺手段86、88によって、作業者が、例えば、放射源の始動、測定の継続時間、獲得点の数等の測定全体を制御することが可能になる。
【0124】
この手段は、図2のような装備と組み合わせられて、作業テーブル上に固定されている。また、染料が定常的に用いられて、その量子収率の特性を決定しなければならない研究所や染料製造ユニットに統合されていてもよい。
【0125】
本発明の主な利点は次の通りである。
a)強度F及びTまた任意ではあるがR及びIを得ることによる相対量子収率測定の高い精度。また、多数の点が僅かな時間で測定可能である。実際のところ、点の数は全体として少なくとも1000点または5000点であり、例えば、略10分以内で1000点から5000点までが測定可能である。または、5分から20分の間で、本方法の完全な精度が保証される。また、本発明は結果の適切な応用を可能にする。予定される精度は3%よりも良く、標準染料の蛍光量子収率の値(絶対測定法)に関して既に存在している誤差を考慮する必要がない。
b)幾何学的パラメータが厳密に設定されている専用装備によって標準体とサンプルとの信頼できる比較を保証する、時間内の測定の再現性。従って、時間のかかるものである、溶液の蛍光量子収率の時間変化を、良い精度で研究することが可能になる。
c)測定及びその結果を応用する方法の高速性。異なる複数の検出器によって行われる測定は、同時かほぼ同時に行われる。これに加えて、自動注入器及びデータ獲得手段を用いた装備の自動化によって、測定スピードが高速になり、標準体及び染料それぞれの製品の測定にかかる実験時間が10分から15分程度に短縮化される。つまり、式(9)を用いて量子収率を得るための時間は、全体として略30分になる。
d)測定される染料の全範囲の濃度に対して使用可能ではあるが、本発明では、高濃度での測定は必要とされない。また、蛍光放射及び透過放射のみを使用するので、染料の濃度の正確な情報が必要とされない。
【0126】
エタノール中のローダミン6Gに関する蛍光量子収率の測定を行った。その絶対量子収率は、いくつかの方法によって既に測定されている。
【0127】
最高の精度を有するとされる熱量法によると、その収率は94%からその5%以内であると主張されている(非特許文献2)。
【0128】
本方法の正しさを実証するため、初めに、文献によってその収率が既知の有機染料に対して、‘テスト’測定を行った。
【0129】
その後、無機粒子(半導体ナノ粒子)の蛍光量子収率を測定した。
【実施例1】
【0130】
《有機染料(硫酸キニーネ)の蛍光量子収率の相対測定》
ローダミン6G同様に、硫酸キニーネは最も研究されてきた染料の一つであり、その量子収率はよく知られている。熱量測定によって、0.1Nの硫酸中のキニーネの収率は56%からその7%以内であると示されている(非特許文献3)。
【0131】
光学系を調節して、レーザビームを二つの絞りによって与えられる基準方向に合わせた後で(図2)、標準染料(今回はローダミン)の測定を実施する準備ができる。
【0132】
蛍光セル内に、1mlのローダミン溶液が、エタノール中の濃度C=1mg/mlで注入された。理想的には、実験開始時に透過率がゼロであり(レーザビームの全ての光が吸収される)、その後急速にゼロでなくなり(つまり、濃縮過多でなくなり)、獲得時間を制限するように、溶液の濃度は選択される。
【0133】
例えば、手に入る物質の量が僅かである時には、ほとんど濃縮されていない溶液を用いることが可能である。
【0134】
その後、“6チャネル”バルブの他のバルブを介してエタノールが注入されて、空気がシステム内に入り込まないようにされる。
【0135】
この注入は自動化されていて、自動シリンジプランジャを用いて、100μl/minから200μl/minの速度で行われる。
【0136】
十分な数の測定点を得るために、この速度は、溶液の希釈が遅くなるように最適化されているが、データを獲得するのに10から15分を超えることはない。
【0137】
蛍光信号がゼロ付近に落ち込んだ時、つまり、セル内に実質的にローダミンが無くなった時に、測定は自動的に終了する。
【0138】
必要に応じて、使用後の溶液を収集することが可能であるが、ローダミンに関しては必要ない。何故ならば、ローダミンは標準体であり、測定毎に新しい溶液を使う方が好ましいからである。
【0139】
他方、僅かな量しか手に入らない染料に対しては有益である。ここで、レーザビームのパワーは非常に低く、光学システム内への入力においてはP=1μWであり、つまり、ミラーや絞り等による損失のせいでセル上でのパワーの略半分よりも小さい。
【0140】
このパワーは、測定を歪める染料の蛍光粒子の光脱色(光酸化による破壊)が生じないように十分に低いものである。
【0141】
0.1Nの硫酸内のキニーネに対しても同じ手順で行う。開始時の濃度はC=4.5mg/mlであった。
【0142】
データの獲得が終了すると、測定結果が処理される。
【0143】
標準体とサンプルの両方に対して、透過信号、反射信号及び蛍光信号が、入射信号を用いて規格化される。
【0144】
その後、両方の染料に対して、R=f(T)及びF=f(T)が描かれる。
【0145】
図4のグラフR=f(T)は、測定点及び理論式(11)を用いたフィッティング結果(点線)を示す。
【0146】
放物線による曲線R=f(T)のフィッティングは非常によいものである。曲線に対する相対的なフィッティングの補正係数Cは、1に非常に近い。これによって、硫化キニーネに対するデータ獲得時に溶液が一様であったことが実証される(図4)。ローダミンに対しても同じ様に実証される(図にはデータを示さず)。
【0147】
高濃度での点を取り除いた後で、理論式(6)を用いて曲線F=f(T)をフィッティングする。何故ならば、この近似式はF=0近傍の低濃度の場合にしか有効ではないからである。
【0148】
放出の再吸収現象を含むことがあるため、このフィッティングからは、高濃度の点は除外される。
【0149】
図5は、ローダミン(Rhodamine)とキニーネ(Quinine)に対する曲線F=f(T)、式(6)によるフィッティングを示す。補正係数はそれぞれCRh=0.9979とCQu=0.9983と1に近く、フィッティングは非常によいものである。また、(m1)Rh=−0.01040、(m1)Qu=−0.00547、(m2)Rh=0.3816、(m2)Qu=0.3819とわかった。
【0150】
中濃度及び低濃度の測定点のみが示されている。点線は理論式(6)に関して、実験的な曲線をフィッティングしたものである。
【0151】
補正係数Cは1に近く、実験的な曲線に対するフィッティングの妥当性を裏付ける。そこから、(m1)Rh及び(m1)Quが導出され、(m2)Rh及び(m2)Quについても同様である。
【0152】
ローダミンに対する最大ルミネッセンス放出は、波長λRh=568nmで生じ、キニーネに対しては、波長λQu=477nmである(光ルミネッセンス測定は予め行われている)。この波長における蛍光検出器の効率(製造業者のデータ)はそれぞれ、EdRh=37%、EdQu=27%である。そこから、式(9)を用いてキニーネの蛍光量子収率が以下のように導出される。
【数18】

【0153】
数週間間隔で、別に準備したキニーネ溶液に対して実験を繰り返し、56%、57%、58%という同様の結果を得た。文献の値(ρ=56%)に対する相対的なずれは2%未満である。
【実施例2】
【0154】
《CdSe(ZnS)ナノ結晶の蛍光量子収率の相対測定》
II―VI半導体ナノ結晶は、直径2から10nmの無機粒子であり、光励起により光を放出する。
【0155】
その考えられる応用の一つは、化学または生物学における有機染料の代わりである。
【0156】
従って、蛍光量子収率の観点から、有機染料と比較することは重要である。
【0157】
テストしたナノ結晶は市販のものである。これらはコア(シェル)であり、トルエン中に分散させたCdSe(Zns)である。
【0158】
粘性の低い溶液を得るため、トリクロロメタン中に分散させる。この粒子は、λ=626nmの波長で放出する。
【0159】
実施例1と同様の手順を行い、まず、標準とするローダミンのデータを獲得し、次に、ナノ結晶溶液のデータを獲得する。結果の処理も、実施例1と同様に行う。R=f(T)を描いてフィッティングすると、ローダミン及びナノ結晶に対して1に近い補正係数が得られ(データは示さず)、実験の正しさが実証される。
【0160】
図6には、中濃度及び低濃度での測定点のみが示されている。点線は、理論式(6)について、実験的な曲線をフィッティングしたものである。補正係数Cは1に近く、それぞれ、ローダミンに対してCRh=0.9986、ナノ結晶に対してCnX=0.9985であり、実験的な曲線に対するフィッティングの妥当性を裏付ける。そこから、(m1)Rh及び(m1)nXが導出され、(m2)Rh及び(m2)nXについても同様である。
【0161】
図6はローダミン及びナノ結晶に対する曲線F=f(T)及びそのフィッティングを示す。値は、(m1)Rh=−0.01079、(m1)nX=−0.00241、(m2)Rh=0.3859、(m2)nX=0.3430とわかった。対応する波長での蛍光検出器の効率はそれぞれ、EdRh=37%、EdnX=43%である。ナノ結晶の蛍光量子収率は、式(9)を用いて、次のように導出される。
【数19】

【0162】
同じナノ結晶に対してもう一度測定を行ったが、19%という同じ値が得られ、先の結果が裏付けられた。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本発明による装置の概略図である。
【図2】本発明による装置の一実施例で用いられる光学装備の図である。
【図3A】蛍光セルの側面図である。
【図3B】蛍光セルの上方から見た断面図である。
【図4】硫化キニーネに対するR=f(T)のグラフである。
【図5】ローダミン及び硫化キニーネに対するF=f(T)のグラフである。
【図6】ローダミン及びCdSe(ZnS)ナノ結晶に対するF=f(T)のグラフである。
【図7】本発明において使用可能なデータ処理手段を示す。
【符号の説明】
【0164】
5 スライド
6 レーザ
10、12、14、16 ミラー
13、15 絞り
20 蛍光セル
206 磁気ロッド
221、222、223、224 検出器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)溶媒中の染料の溶液の少なくとも10つの異なる濃度に対して、
‐電磁放射(6)を用いて前記染料を励起する段階と、
‐前記放射によって励起された前記染料の光ルミネッセンス(67)、及び、前記染料を収容するセルを透過した信号(65)を測定する段階と、
b)測定データを標準染料のフォトルミネッセンス及び透過のデータと比較する段階と、
c)前記染料の相対蛍光量子収率を計算する段階とを備えた
染料の相対蛍光量子収率を測定するための方法。
【請求項2】
前記溶媒中の前記染料の前記溶液は時間をかけて希釈されていく請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記染料はまず前記標準染料とし、その後で、前記量子収率を測定したい染料とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記測定は、15または20または25超の数、または、10から100の間の数、または、10から500の間の数の濃度に対して行われる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
蛍光信号(F)のデータ及び透過信号(T)のデータを理論式にフィッティングする段階を更に備えた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記理論式は、
【数1】

であり、ここで、Fは前記蛍光信号のパワーに比例し、Tは前記透過信号のパワーに比例し、ρは絶対蛍光量子収率、
【数2】

は前記溶液によって放出された光子のエネルギー、
【数3】

は入射光子のエネルギー、B及びAは定数、Δ及びLは前記染料を収容する前記セルの幾何学パラメータである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記理論式は、
【数4】

であり、ここで、Fは前記蛍光信号のパワーに比例し、Tは前記透過信号のパワーに比例し、ρは絶対蛍光量子収率、
【数5】

は前記溶液によって放出された光子のエネルギー、
【数6】

は入射光子のエネルギー、B、A及びCは定数、Δ及びLは前記染料を収容する前記セルの幾何学パラメータである請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記染料の相対蛍光量子収率は、次の式
【数7】

によって得られ、ここで、
【数8】

は前記溶液によって放出された光子のエネルギー、
【数9】

は入射光子のエネルギー、m1及びm2は透過信号(T)に対する蛍光信号(F)の変化特性のパラメータ、添え字R及びEはそれぞれ、前記標準染料及びサンプルに関する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記セル上の入射放射の強度またはパワーの変化を測定する段階と、蛍光信号及び透過信号のデータを前記変化に対して規格化する段階とを更に備えた請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記セル内の染料を一様化する段階を更に備えた請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記染料を収容する前記セルによって反射された信号(63)を測定する段階を更に備えた請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記染料の一様性を制御する段階を更に備えた請求項10または請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記染料は有機物である請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記染料は無機物である請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記染料は半導体のナノ結晶を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記半導体はII―VI族である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記半導体はCdSe(ZnS)である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
蛍光及び透過放射を検出する検出手段(223、224)と、前記セルと、入射放射(62)の経路の決定を可能にする手段(13、14、15、16)の少なくとも一部とは、互いに関して固定されている請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記放射によって励起された前記染料の光ルミネッセンス(67)、及び、前記染料を収容するセルを透過した信号(65)を測定する段階と、反射放射及び/又は入射放射の追加的な測定が同時に行われる請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
溶媒中の染料の溶液の相対蛍光量子収率を測定するための装置であり、
‐蛍光セル(20)と、
‐励起された前記染料によって放出される蛍光信号及び前記染料を透過した信号を測定する手段(223、224)と、
‐励起された前記染料によって放出される蛍光信号及び前記染料を透過するレーザ信号のデータと標準染料についてのデータとによって相対量子収率を計算する手段(8、80)とを備えた装置。
【請求項21】
前記セル内の前記染料の濃度を時間に対して変化させる手段を更に備えた請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記セル(20)によって反射される信号を測定する手段(222)を更に備えた請求項20または請求項21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
前記セル内の前記染料を一様化する手段(206)を更に備えた請求項20から請求項22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記セル(20)上の入射放射の強度またはパワーの変化を測定する手段(221)を更に備えた請求項20から請求項23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記計算手段は、蛍光信号(F)のデータ及び透過信号(T)のデータを理論式にフィッティングする請求項20から請求項24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記理論式は、
【数10】

であり、ここで、Fは前記蛍光信号のパワーに比例し、Tは前記透過信号のパワーに比例し、ρは絶対蛍光量子収率、
【数11】

は前記溶液によって放出された光子のエネルギー、
【数12】

は入射光子のエネルギー、B及びAは定数、Δ及びLは前記染料を収容する前記セルの幾何学パラメータである請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記理論式は、
【数13】

であり、ここで、Fは前記蛍光信号のパワーに比例し、Tは前記透過信号のパワーに比例し、ρは絶対蛍光量子収率、
【数14】

は前記溶液によって放出された光子のエネルギー、
【数15】

は入射光子のエネルギー、B、A及びCは定数、Δ及びLは前記染料を収容する前記セルの幾何学パラメータである請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記計算手段(8)は、次の式
【数16】

を用いて前記相対蛍光量子収率を計算し、ここで、
【数17】

は前記溶液によって放出された光子のエネルギー、
【数18】

は入射光子のエネルギー、m1及びm2は透過信号(T)に対する蛍光信号(F)の変化特性のパラメータ、添え字R及びEはそれぞれ、前記標準染料及びサンプルに関する請求項20から請求項27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記セル(20)及び前記測定手段(223、224)は互いに関して固定されて配置されている請求項20から請求項28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
放射(60)の入射方向を定める手段(13、14、15、16)を更に備えた請求項20から請求項29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記セル内に前記染料及び前記溶媒を注入する自動注入手段を更に備えた請求項20から請求項30のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−518222(P2008−518222A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538481(P2007−538481)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050896
【国際公開番号】WO2006/092475
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】