説明

溶液製膜方法及び流延装置

【課題】厚みが幅方向で均一な従来よりも幅が広い長尺のフィルムを製造する。
【解決手段】流延支持体として、中央部33cと側部33sとが溶接により一体とされた環状のバンド33を用いる。幅広の中央部33cは従来から流延支持体として用いられてきたバンド幅Wcをもち、側部33sは中央部33cよりも幅Wsが狭い。バンド33は、循環するように長手方向に搬送する。ドープは、中央部33c上と溶接部33w上とに流延膜39が形成されるように流延する。剥取位置から流延位置PCに向かうバンド33に対向するように設けた1対の第1ローラ52により、側部33sと溶接部33wとを、流延面側から押さえて、側部33sの浮き上がりを矯正して流延面の高さを中央部33cと同じくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に延びた溶接部を両側にもつ環状のバンドを流延支持体として用いる溶液製膜方法、及び前記バンドを備える流延装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)の大画面化に伴い、LCDに用いる光学フィルムにも大面積化が要求される。光学フィルムは、長尺に製造されてから、LCDに対応するように所定のサイズにカットされる。したがって、より大きな面積の光学フィルムを製造するためには、長尺の光学フィルムを製造するにあたって、幅がより大きくなるように製造する必要がある。
【0003】
長尺の光学フィルムの代表的な製造方法としては、連続方式の溶液製膜方法がある。溶液製膜方法は、周知のように、ポリマーが溶剤に溶けているドープを、走行する流延支持体の上に流して流延し、流延により膜状になったドープ、すなわち流延膜を流延支持体から剥がして乾燥することによりフィルムを製造する方法である。
【0004】
流延支持体として用いられるものとしては、金属からなるバンドがある。製造することができるフィルムの幅は、このバンドの幅に制約され、より大きな幅のフィルムを製造するには、より大きな幅のバンドが必要となる。しかし、これまで、幅が2m程度までのバンドしか得られていなかった。
【0005】
そこで、特許文献1では、幅方向の中央部になる中央バンドと、バンドの各側部になる1対の側部バンドとを、長手方向に溶接することにより、幅が2200mmと従来よりも大きなバンドを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開公報第2009−0110082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が提案するバンドは、従来よりも幅が大きな長尺の光学フィルムを製造するという点で意味がある。しかし、特許文献1のように溶接部が長手方向に延びて形成されているバンドは、側部バンドから形成された側部領域が反り上がって、中央バンドから形成された中央部領域よりも浮いてしまい流延面(ドープが流延される一方の表面)が高くなっていることがある。このように流延面の高さが一定ではないバンドにドープを流延すると、厚みが均一なフィルムを製造することができないという問題がある。例えば側部領域と中央部領域との流延面の高さが異なると、幅方向での厚みが均一なフィルムを製造することができない。厚みが不均一であるフィルムは、光学軸の方向等の光学特性も不均一となってしまう。しかしながら、特許文献1には、このような問題を踏まえた製膜方法については開示していない。
【0008】
そこで、本発明は、長手方向に延びた溶接部が側部にあるバンドを流延支持体として用い、溶接部上にも流延膜を形成する場合に、厚みが幅方向で均一な従来よりも幅が広い長尺のフィルムを製造する溶液製膜方法及び流延装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、1対のローラの周面に巻き掛けられて循環するように長手方向に搬送される環状の金属製バンドに、ポリマーが溶剤に溶解したドープを流延することにより流延膜を形成し、この流延膜をバンドから剥がして乾燥することによりフィルムとする溶液製膜方法において、前記バンドは、幅広の中央部とその両側端に溶接で一体化された1対の幅狭の側部とからなり、流延膜を剥がす剥離位置からドープを流延する流延位置へ向かうバンドに対向するように配され、バンドの幅方向に長手方向を一致させて回転自在に備えられた第1ローラにより、ドープが流延される一方のバンド面側から、バンドの長手方向に延びた溶接部と前記1対のローラから浮き上がった側部とを押さえて、側部の浮き上がりを矯正し、流延膜が中央部上と両側の溶接部上とに形成されるように、ドープを流延することを特徴として構成されている。
【0010】
前記バンドの全幅よりも長い前記第1ローラにより、前記バンドの全幅域を押さえることが好ましい。駆動手段を有し、周面が樹脂加工された前記第1ローラを、前記バンドの搬送速度と同じ速度で、前記駆動手段により周方向に回転することが好ましい。
【0011】
流延位置から剥離位置へ向かうバンドに対向するように配され、バンドの幅方向に長手方向を一致させて回転自在に備えられた第2ローラにより、前記一方のバンド面のうち流延膜が形成されずに露呈している非流延領域を押さえることが好ましい。
【0012】
(A)バンドは、周方向に回転する前記1対のローラにより搬送され、前記1対のローラのうち一方のローラ上の前記バンドに対向して設けた流延ダイから前記ドープを流出することにより、流延位置を一方のローラ上にすること、または、(B)バンドを、周方向に回転する前記1対のローラにより搬送し、前記1対のローラの一方から他方に向かうバンドを支持ローラにより支持し、支持ローラ上の前記バンドに対向して設けた流延ダイから前記ドープを流出することにより、流延位置を支持ローラ上にすることが好ましい。
【0013】
また、本発明の流延装置は、1対のローラと、前記1対のローラの周面に巻き掛けられて、溶剤にポリマーを溶解しているドープが流延されて流延膜が形成される流延位置と、流延膜が剥がされる剥離位置とを循環するように長手方向に搬送され、幅広の中央部とその両側部に溶接で一体化された1対の幅狭の側部とからなる環状の金属製バンドと、バンドの幅方向に長手方向が一致させて回転自在に備えられ、剥離位置から流延位置へ向かうバンドの長手方向に延びた溶接部と前記1対のローラから浮き上がった側部とを押圧して前記側部の浮き上がりを矯正する第1ローラと、流延膜を中央部上と両側の前記溶接部上とに形成するように、ドープを流出する流延ダイとを備えることを特徴として構成されている。
【0014】
前記第1ローラは、バンドの全幅域を押圧するようにバンドの幅よりも長くされてあることが好ましい。第1ローラは、駆動手段を有し、周面が樹脂加工されてあることが好ましい。
【0015】
バンドの幅方向に長手方向を一致させて回転自在に備えられ、流延位置から剥離位置へ向かうバンドのうち、流延膜が形成されずに露呈している非流延領域を押圧する第2ローラを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、長手方向に延びた溶接部が側部にあるバンドを流延支持体として用い、溶接部上にも流延膜を形成する場合に、厚みが幅方向で均一な従来よりも幅が広い長尺のフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】溶液製膜設備の概略図である。
【図2】ローラに巻き掛けたバンド及び第1ローラの概略斜視図である。
【図3】バンドの側部の浮き上がりの説明図である。
【図4】第1ローラを用いた本発明の第1の実施態様の側面図である。
【図5】第1の実施態様の平面図である。
【図6】第1ローラの斜視図である。
【図7】全幅押圧ローラを用いた第2の実施態様の平面図である。
【図8】第1ローラと第2ローラとを用いた第3の実施態様の側面図である。
【図9】第3の実施態様の平面図である。
【図10】全幅押圧ローラを用いた第4の実施態様の側面図である。
【図11】第4の実施態様の平面図である。
【図12】反り角θの説明図である。
【図13】バンドの溶接部及びその近傍の浮き上がりの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、溶液製膜設備10は、流延装置11と、第1スリッタ12と、第1テンタ13と、ローラ乾燥装置16と、第2テンタ17と、第2スリッタ18と、巻取装置19とを上流側から順に備え、これらは直列に接続する。
【0019】
流延装置11は、セルロースアシレート22が溶剤23に溶解したドープ24からセルロースアシレートフィルム(以降、単に「フィルム」と称する)27を形成する。第1スリッタ12は、フィルム27の各側部を切除する。第1テンタ13は、フィルム27の各側部を保持手段としてのクリップ28で保持しながら乾燥をすすめる。ローラ乾燥装置16は、フィルム27を複数のローラ29で支持しながら乾燥する。第2テンタ17は、フィルム27の各側部を保持手段としてのクリップ32で保持し、フィルム27に対して幅方向での張力を付与する。第2スリッタ18は、第2テンタ17のクリップ32により保持された各側部の保持跡を切除する。巻取装置19は、フィルム27を巻き芯に巻いてロール状にする。
【0020】
溶液製膜設備10を構成する各装置及び製膜方法について、以下に説明する。なお、本明細書においては、溶剤含有率(単位;%)は乾量基準の値であり、具体的には、溶剤23の質量をx、フィルム27の質量をyとするときに、{x/(y−x)}×100で求める値である。
【0021】
流延装置11は、流延支持体としてのバンド33と、周方向に回転する1対のローラ34,35を備える。バンド33は、環状に形成された無端の流延支持体であり、ローラ34とローラ35との周面に巻き掛けられる。ローラ34,35の径が小さすぎるとバンド33が塑性変形することがあるので、ローラ34,35の直径は1.5m以上であることが好ましい。ローラ34,35の少なくともいずれか一方は、駆動手段を有する駆動ローラとされる。この駆動ローラが周方向に回転することにより、周面に接するバンド33が搬送される。
【0022】
バンド33の上方にはドープ24を流出する流延ダイ38が備えられる。搬送されているバンド33に流延ダイ38からドープ24を連続的に流出することにより、ドープ24はバンド33上で流延されて流延膜39が形成される。図1に示す本実施態様では、流延ダイ38は、一方のローラ34上にあるバンド33の上方に設けてある。
【0023】
流延ダイ38からバンド33に至るドープ24、いわゆるビードに関して、バンド33の走行方向における上流には、減圧チャンバ40が設けられる。この減圧チャンバ40は、流出したドープ24の上流側エリアの雰囲気を吸引して前記エリアを減圧する。
【0024】
流延膜39を、第1テンタ13への搬送が可能な程度にまで固くしてから、溶剤23を含む状態でバンド33から剥がす。剥ぎ取りの際には、フィルム27を剥ぎ取り用のローラ(以下、剥取ローラと称する)43で支持し、流延膜39がバンド33から剥がれる剥取位置を一定に保持する。剥取ローラ43は、駆動手段を備え周方向に回転する駆動ローラであってもよい。
【0025】
流延装置11には、乾燥した気体を送り出すダクト44が、バンド33の走行路に沿って複数並んで設けられる。各ダクト44には、乾燥した気体を流出する流出口(図示せず)がバンド33の走行路に対向してそれぞれ複数形成されてある。これにより、流延膜39に向けて乾燥気体が送り出され、流延膜の乾燥を促す。
【0026】
ダクト44は、それぞれ送風機(図示せず)に接続し、送風機から供給された気体を流出口から流出する。送風機には、複数のダクト44のそれぞれへ供給する気体の温度、湿度、流量を独立して制御する送風コントローラ(図示せず)が接続する。ダクト44からの気体は、加熱された温風であり、この温風により流延膜39を加熱する。流延膜39の温度は、この温風の温度及び流量の制御と、ローラ34,35の後述の温度制御とにより、調整される。
【0027】
剥ぎ取られた流延膜39、すなわちフィルム27は、第1テンタ13に案内される。
【0028】
第1テンタ13は、フィルム27をクリップ28で保持して長手方向(以下、A方向と称する)に搬送しながら、幅方向(以下、B方向と称する)への張力を付与し、フィルム27の幅を拡げる。第1テンタ13には、上流側から順に、予熱エリア、延伸エリア、及び緩和エリアが形成されてある。なお、緩和エリアは無くてもよい。
【0029】
第1テンタ13は、1対のレール(図示無し)及びチェーン(図示無し)を備える。レールはフィルム27の搬送路の両側に設置され1対のレールは所定の間隔で離間して配される。このレール間隔は、予熱エリアでは一定であり、延伸エリアでは下流に向かうに従って次第に広くなり、緩和エリアでは一定である。なお、緩和エリアのレール間隔は、下流に向かうに従って次第に狭くなるようにしてもよい。
【0030】
チェーンは、原動スプロケット及び従動スプロケット(図示無し)に掛け渡され、レールに沿って移動自在に取り付けられている。複数のクリップ28は、チェーンに所定の間隔で取り付けられている。原動スプロケットの回転により、クリップ28はレールに沿って循環移動する。
【0031】
クリップ28は、第1テンタ13の入口近傍で、案内されてきたフィルム27の保持を開始し、出口に向かって移動して、出口近傍で保持を解除する。保持を解除したクリップ28は再び入口近傍に移動して、新たに案内されてきたフィルム27を保持する。
【0032】
予熱エリア、延伸エリア、緩和エリアは、ダクト45からの乾燥風の送り出しによって空間として形成されたものであり、明確な境界があるわけではない。ダクト45はフィルム27の搬送路の上方に設けられる。ダクト45は、乾燥風を送り出すスリットを有し、送風機(図示無し)から供給される。送風機は、所定の温度や湿度に調整した乾燥風をダクト45に送る。スリットがフィルム27の搬送路と対向するようにダクト45は配される。各スリットはフィルム27の幅方向に長く伸びた形状であり、搬送方向で互いに所定の間隔をもって形成されている。なお、ダクト45を、フィルム27の搬送路の下方に設けてもよいし、フィルム27の搬送路の上方と下方との両方にそれぞれ設けてもよい。
【0033】
この第1テンタ13で、フィルム27は搬送されながら、ダクト45からの乾燥風により乾燥をすすめられるとともに、クリップ28により幅を所定のタイミングで変えられる。
【0034】
延伸エリアにおけるフィルム27の溶剤含有率は、2質量%以上250質量%以下であることが好ましく、2質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。延伸処理における延伸率ER1(={(延伸後の幅)/(延伸前の幅)}×100)は、100%より大きく140%以下であることが好ましい。延伸処理におけるフィルム27の温度は、95℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0035】
ローラ乾燥装置16の内部の雰囲気は、温度や湿度などが温調機(図示無し)により調節される。ローラ乾燥装置16では、多数のローラ29にフィルム27が巻き掛けられて搬送され、この搬送の間に、フィルム27から溶剤23が蒸発する。ローラ乾燥装置16では、溶剤含有率が5質量%以下となるまで、乾燥工程が行うことが好ましい。
【0036】
なお、ローラ乾燥装置16から出たフィルム27がカールしている場合には、ローラ乾燥装置16と第2テンタ17との間に、カールを矯正してフィルム27を平らにするカール矯正装置(図示無し)を設けてもよい。
【0037】
第2テンタ17は、フィルム27を延伸する。この延伸により、所望の光学特性を有するフィルム27となる。得られるフィルム27は、例えば、液晶ディスプレイ用の位相差フィルムとして利用することができる。第2テンタ17は、第1テンタ13と同様の構造を有する。なお、第2テンタ17に設けられるダクト48は、スリット(図示せず)から、所定の温度に加熱された乾燥風を流出し、フィルム27に向かって流れる。
【0038】
第2テンタ17での延伸における延伸率ER2(={(延伸後の幅)/(延伸前の幅)}×100)は、105%より大きく200%以下であることが好ましく、110%以上160%以下であることがより好ましい。第2テンタ17での延伸開始時におけるフィルム27の溶剤含有率は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。延伸におけるフィルム27の温度は、100℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0039】
製造目的とするフィルム27の光学特性によっては、第2テンタ17は用いずともよい。
【0040】
第2テンタ17の下流の第2スリッタ18は、フィルム27が案内されてくると、第1テンタ13や第2テンタ17の各クリップ28,32による保持跡を含む側部を切除する。側部を切除したフィルム27を巻取装置19に送り、ロール状に巻き取る。
【0041】
第2テンタ17と第2スリッタ18との間に冷却装置(図示無し)を設けて、第2テンタ17からのフィルム27を冷却して降温させてもよい。
【0042】
図2及び図3に示すように、バンド33は、中央部33cと、中央部33cの両側に備えられる1対の側部33sとからなり、中央部33cと側部33sとが一体に溶接されたものである。図2において、溶接部には符号33wを付してある。中央部33cの幅Wcは側部33sの幅Wsよりも広い。すなわち、中央部33cは幅広であり、各側部33sは幅狭である。中央部33cは、流延支持体として従来広く用いられてきた、幅が概ね1500mm以上2100mm以下のものから形成される。側部33sは、幅が概ね50mm以上500mm以下のバンド部材から形成される。バンド33の幅は、2000mm以上3000mm以下の範囲である。なお、図2,図3においては、バンド33の長手方向であるA方向を上向きとしたときに、バンド33の右側縁に符号33e(R)を付し、左側縁に符号33e(L)を付す。
【0043】
ドープ24がバンド33に接触すると、バンド33上には流延膜39が形成される。このようにドープ24がバンド33に接触を開始した位置は、流延膜39が形成し始める位置であり、この位置を以下の説明においては流延位置PCと称する。本実施態様では、流延位置PCがローラ34上となるように、ローラ34上に巻き掛かっているバンド33に対向して流延ダイ38を配してある。図2は、ローラ34に巻き掛かっているバンド33の巻き掛け領域Arの下流端が流延位置PCである場合を示す。
【0044】
ローラ34は、張力コントローラ51を備え、張力コントローラ51は、バンド33の長手方向での張力を制御するように、ローラ34の断面円形の中心にある回転軸34aを変位することによりローラ34を変位させる。張力コントローラ51は、例えば、バンド33の長手方向での張力を上げる場合には、ローラ35から離れる方向へローラ34を変位させ、張力を下げる場合には、ローラ35に近づくようにローラ34を変位させる。
【0045】
図3に示すように、バンド33は、ローラ34,35(図1参照)に巻き掛けた状態では、中央部33cはローラ34に接しているが、側部33sは反りあがってローラ34から浮いており、流延面33Aの高さは中央部33cよりも側部33sの方が高い。
【0046】
反り上がってローラ34の周面から浮いているバンド33の側部33sは、側縁に向かうにつれて浮き量が増加する。浮き量とは、ローラ34の周面34bからバンドの非流延面33Bまでの距離である。本実施形態におけるバンド33のように側部33sが反り上がっている場合には、側縁33e(L),33e(R)における浮き量J1が大きい場合ほど本発明の効果は大きく、少なくとも1mm、すなわち1mm以上である場合に、本発明は特に効果が大きい。なお、浮き量は、バンド33の長手方向における張力によって変わるので、浮き量を測定する場合には流延している間と同じ条件下における張力の元で測定することが好ましい。そこで、本実施形態では流延している間におけるバンド33の張力が60N/mmであるため、60N/mmの張力下で浮き量を測定する。この張力は、単位N/mmに示すように、バンド33の幅方向に沿った断面1mm当たりの値であるので、単位断面積当たりの張力と以降称する。したがって、全幅域での張力は、単位断面積当たりの張力と、バンド33の厚みと、幅との積となる。単位断面積当たりの張力が60N/mmで、例えば厚み1mm、幅2200mmのバンド33の全幅域での張力の値は、60(N/mm)×1(mm)×2200(mm)である。
【0047】
流延膜39が中央部33c上と溶接部33w上とに形成されるように、ドープ24は流延される。つまり、流延膜39が形成される流延領域Acは、一方の溶接部33wと他方の溶接部33wとを含むように、一方の側部33sから他方の側部33sに亘る。バンド33の両側は、流延膜39が形成されずに露呈する非流延領域Anである。
【0048】
流延膜39のうち、第2スリッタ18を経て製品となるフィルム27に対応する製品予定領域Apの幅は、第1テンタ13での延伸率ER1と第2テンタ17での延伸率ER2、及び第1スリッタ12で切除する幅と、第2スリッタ18で切除する幅とのそれぞれに応じて変わる。
【0049】
本発明は、製品予定領域Apが溶接部33w上にある場合に特に効果があり、製品予定領域Apの浮き量が大きいほどその効果は大きい。本実施形態におけるバンド33のように側部33sが反り上がっている場合には、製品予定領域Apの側縁における浮き量Kが大きい場合ほど本発明の効果は大きく、製品予定領域Apの側縁における浮き量Kが0.1mmよりも大きい場合に、本発明は特に効果が大きい。
【0050】
図4及び図5に示すように、本発明の第1の実施態様では、剥取位置PP(図1参照)から流延位置PCに向かうバンド33に対向するように、第1ローラ52が備えられる。この実施態様では、長手方向に延びた溶接部33wと側部33sとに対向する第1ローラ52が、バンド33の両側部近傍に1対備えられる。第1ローラ52は、周方向に回転自在であり、長手方向(回転軸方向に一致する)がバンド33の幅方向であるB方向に一致するように設けられる。
【0051】
第1ローラ52は、溶接部33wと側部33sとを流延面33A側から押圧してローラ34との間にニップする。これにより、バンド33の側部33sの浮き上がりを矯正し、側部33sの流延面33Aの高さを中央部33cの流延面33Aの高さと同じにする。したがって、側部33sと中央部33cとの厚みが同じである場合には、側縁33e(L),33e(R)における浮き量J1は0(ゼロ)になり、側部33sはローラ34に接するようになる。ドープ24は、溶接部33w上と中央部33c上と側部33sとで均一な厚みになるように流延される。これにより、幅方向で厚みが均一なフィルム27が得られる。
【0052】
なお、浮き量は、0(ゼロ)になることが最も好ましい。しかし、幅方向で均一な厚みのフィルム27を得る観点では、浮き量は必ずしも0にならなくてもよく、製品予定領域Apの側縁における浮き量Kが0.1mm以下となるように浮き上がりを矯正すればよい。
【0053】
減圧チャンバ40を用いる場合には、バンド33の搬送方向における減圧チャンバ40の上流に、第1ローラ52を設けるとよい。
【0054】
第1ローラ52は、回転自在に設けられていればよく、駆動手段により周方向に回転する駆動ローラであることがより好ましい。
【0055】
第1ローラ52が駆動ローラである場合には、バンド33の搬送速度と同じ速度で回転するように、第1ローラ52を駆動することが好ましい。
【0056】
第1ローラ52は、シフト機構53を備え、B方向に変位する。シフト機構53はコントローラ54を有し、コントローラ54はシフト機構53を制御して、第1ローラ52のB方向における変位量を調節する。これにより、第1ローラ52でバンド33を押圧する領域が調整される。
【0057】
第1ローラ52は、周面が平滑なローラである。第1ローラ52の直径は80mm以上200mm以下の範囲であることがより好ましい。
【0058】
第1ローラ52が駆動ローラである場合には、第1ローラ52は、図6に示すように、周面が樹脂加工されているものが好ましい。すなわち、第1ローラ52は、ローラ本体52aの周面が樹脂層52bで覆われているものが好ましい。これにより、バンド33の流延面33Aのうち第1ローラ52に接する領域に傷がつきにくくなる。傷の発生が防止されることより、平滑な表面をもつ流延膜39が継続して形成される。なお、樹脂とは、合成樹脂である。
【0059】
第2の実施態様では、図7に示すように、1対の第1ローラ52に代えて、長さがバンド33の幅W33(図2参照)よりも長く、バンド33の全幅域を押さえる全幅押圧ローラ57を用いる。全幅押圧ローラ57は、第1ローラ52と同様に、長手方向がB方向に一致するように配される。全幅押圧ローラ57は、回転自在に設けられていればよく、周方向に回転する駆動ローラであることがより好ましい。
【0060】
全幅押圧ローラ57も、第1ローラと同様に、コントローラ54を有するシフト機構53を備え、B方向に変位する。
【0061】
全幅押圧ローラ57は、周面が平滑なローラである。全幅押圧ローラ57の直径は80mm以上200mm以下の範囲であることがより好ましい。全幅押圧ローラ57も、第1ローラ52と同様に、駆動ローラである場合には周面が樹脂加工されてあることが好ましい。これにより、バンド30に傷がつきにくくなる。
【0062】
第3の実施態様では、図8及び図9に示すように、第1ローラ52に加えて、A方向における流延位置PCよりも下流、つまり流延位置PCから剥取位置PP(図1参照)に向かうバンド33に対向するように1対の第2ローラ61を設けてある。
【0063】
第2ローラ61は、長手方向がB方向に一致するように、配される。第2ローラ61は、図9に示すように、バンド33の非流延領域Anに対向するように設けてあり、側部33sを流延面33A側から押圧する。
【0064】
流延位置PCがローラ34での巻き掛け領域Ar(図2参照)の下流端にある場合には、図8及び図9に示すように、巻き掛け領域Arよりも下流で、第2ローラ61により側部33sを押圧する。流延位置PCが巻き掛け領域Arの下流端よりも上流であって、第2ローラ61を巻き掛け領域Arに配する場合には、ローラ34との間に側部33sをニップするように第2ローラ61で側部33sを押さえることが好ましい。第2ローラ61を第1ローラ52に加えて用いることにより、側部33sを流延位置PCの上流と下流との両方で押さえるので、流延位置PCにおける側部33sの浮き上がりをより確実に矯正することができる。これにより、B方向におけるフィルム27の厚みをより確実に均一にすることができる。
【0065】
第2ローラ61を、巻き掛け領域Arよりも下流で側部33sを押圧する場合には、第2ローラ61と側部33sとが互いに線接触ではなく面接触となるように、第2ローラ61で側部33sを押すことが好ましい。これにより、浮き上がりがより確実に矯正される。ただし、このように面接触とする場合には、第2ローラ61における側部33sのラップ角(巻きかけ中心角)が、大きくとも7°に抑えられてあることが好ましい。これにより、バンド33の塑性変形が抑えられる。
【0066】
第2ローラ61は、シフト機構62を備え、B方向に変位する。シフト機構62はコントローラ54に接続し、コントローラ54はシフト機構53に加えてシフト機構62を制御する。シフト機構62の制御により、第2ローラ61のB方向における変位量を調節する。これにより、第2ローラ61でバンド33を押圧する領域を調整する。
【0067】
第2ローラ61は、周面が平滑なローラである。第2ローラ61の直径は80mm以上200mm以下の範囲であることがより好ましい。第2ローラ61は、回転自在に設けられていればよく、周方向に回転する駆動ローラであることがより好ましい。第2ローラ61も、第1ローラ52と同様に、駆動ローラである場合には周面が樹脂加工されてあることが好ましい。これにより、バンド30に傷がつきにくくなる。
【0068】
以上の実施態様では、流延位置PCがローラ34に対するバンド33の巻き掛け領域Ar上になるように流延ダイ38を配してあるが、本発明がこの態様に限定されない。例えば、図10及び図11に示す第4実施態様のように、流延位置PCがローラ34からローラ35に向かうバンド33上になるように、両ローラ34,35の間に流延ダイ38を配してもよい。この場合には、ローラ34からローラ35へ向かうバンド33の下に支持ローラ65を配し、支持ローラ65に下方から支持されているバンド33に対向するように流延ダイ38を配することが好ましい。これにより、流延位置PCは、より確実に、支持ローラ65に支持されているバンド33上に保持される。
【0069】
第4の実施態様では、流延位置PCの上流に、第2の実施態様と同じ全幅押圧ローラ57を配してある。全幅押圧ローラ57は、第1ローラ52よりも、より確実に側部33sの浮き上がりを矯正することができるからである。
【0070】
第4の実施態様においては、全幅押圧ローラ57とバンド33とが互いに線接触ではなく面接触となるように、全幅押圧ローラ57でバンド33を押すことが好ましい。これにより、浮き上がりがより確実に矯正される。ただし、面接触とする場合には、全幅押圧ローラ57におけるバンド33のラップ角が、大きくとも7°に抑えられてあることが好ましい。これにより、バンド33の塑性変形が抑えられる。
【0071】
第4の実施態様においても、流延位置の下流側に第2ローラ61を配することがより好ましい。これにより、浮き上がりがより確実に矯正される。
【0072】
本発明では、流延ダイ38のスリット状である流出口38a(図5,図7,図9,図11参照)の長さがバンド33の中央部33cの幅よりも長く、流延膜39が溶接部33w上及び側部33s上にも形成されてよい。ただし、側部33sの非流延面33Bのうち、溶接部33wよりも10mm離れた位置P1と溶接部33wの非流延面33Bとを結ぶ線分と中央部33cの非流延面33Bとのなす角(以下、「10mm位置における反り角θ」と称する)が0.05°よりも小さいバンドを用いることがより好ましい。なお、「側部33sの非流延面33Bのうち、溶接部33wよりも10mm離れた位置」は、具体的には、以下のように特定される。図12に示すように、溶接部33wからローラ34の端部側に向かい、中央部33cの非流延面33Bの延長線上で距離D=10mmとなる位置PDを求める。この位置PDにおける垂線と側部33sの非流延面33Bとの交点を求める。この交点が、「側部33sの非流延面33Bのうち、溶接部33wよりも10mm離れた位置」である。
【0073】
なお、流延膜39の温度を調整するために、バンド33の温度をローラ34,35(図1参照)で調整することが好ましい。この場合には、ローラ34,35の各周面温度を所定の温度に制御するコントローラ(図示せず)がそれぞれ備えられる。
【0074】
以上に示す実施態様は、側部33sが反り上がっているバンド33を使用する場合であるが、本発明はこの場合に限定されない。例えば、流延を開始した時点では側部33sが反り上がっておらず、バンド33が平坦であっても、流延を継続しているうちに側部33sが徐々に反り上がってくる場合もある。このような場合にも、本発明は効果がある。
【0075】
また、長手方向に溶接されたバンド33は、側部33sが反り上がっているのではなく、両側の溶接部33w及びこれらの近傍が浮き上がっていることがある。具体的には、図13に示すように、溶接部33w及びこの近傍が頂部となるように山状に浮いている場合である。溶接部33wが山状の頂部となるように浮いているために、側部33sのみならず、中央部33cの溶接部33wに近い領域もローラ34から浮いている。なお、図13には、バンド33のうち、右側の側部のみを図示してあり、左側の側部の図示は略す。バンドの右側縁33e(R)は図13に示すようにローラ34に接していることもあるし、ローラ34から浮いていることもある。
【0076】
本発明は、このように溶接部33w及びこの近傍が頂部を成すように浮いているバンド33を使用する場合にも効果がある。バンド33が山状に浮いた態様においては、浮き量が最も大きい位置は、溶接部33wであることが多いので、図13には、溶接部33wが最も大きく浮いてある態様を示してある。最も大きく浮いている位置における浮き量J2が大きい場合ほど本発明の効果は大きい。非流延領域Anが溶接部33wよりも側縁33e(R)側である場合には、最も大きく浮いている位置における浮き量J2は、製品予定領域Apにおける浮き量のうち幅方向における最大の値となる。この場合には、J2が0.1mmよりも大きい場合に、0.1mm以下となるように浮き上がりを矯正することが好ましい。
【0077】
また、流延を開始した時点では溶接部33w及びこの近傍が浮き上がっておらず、バンド33が平坦であっても、流延を継続しているうちに溶接部33w及びこの近傍が徐々に浮き上がってくる場合もある。このような場合にも、本発明は効果がある。
【0078】
製造速度をより向上するために、剥離位置PPに向かう流延膜39は、ローラ35により加熱することが好ましい。一方、流延位置PCに向かうバンド33が巻き掛けられて通過するローラ34は、バンド33が過度に昇温しないように、周面を冷却することが好ましい。本発明によると、ローラ34,35の周面温度がB方向で均一に制御されている場合に、バンド33の浮き上がりを矯正してローラ34,35に接触させるので、ローラ34,35による温度調整がより確実になり、B方向でより確実に均一な温度になる。これにより、溶接部33w上や側部33s上での流延膜39の発泡や剥取時における剥げ残りがより確実に防止されるという効果もある。
【0079】
セルロースアシレート22は特に限定されない。セルロースアシレート22のアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基を有していても良い。アシル基が2種以上であるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものが好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
【0080】
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 1.0≦ A ≦3.0
(III) 0 ≦ B ≦2.0
【0081】
アシル基の全置換度A+Bは、2.20以上2.90以下であることがより好ましく、2.40以上2.88以下であることが特に好ましい。また、炭素原子数3〜22のアシル基の置換度Bは、0.30以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。中でも、本発明は、セルロースアシレート22としてセルロースジアセテート(DAC)を用いた場合に特に大きな効果がある。
【0082】
以下に本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、以下の各実施例は本発明の例として挙げるものである。詳細は実施例1にて説明し、実施例2以下の各実施例、及び本発明に対する比較例については、実施例1と異なる条件のみを示す。
【実施例1】
【0083】
図1に示す溶液製膜設備により、ドープ24からフィルム27を製造した。用いたセルロースアシレート22は、セルロースジアセテート(DAC)である。このフィルム27はいわゆるLCDのVA(Vertical Alignment)方式用位相差フィルムとして用いるものである。ローラ34,35の直径は2mである。
【0084】
SUS316で形成されたバンド33を用いた。各側部33sの幅は150mm、中央部33cの幅は2000mmである。バンド33の長さは80m、厚みは1.5mmである。
【0085】
バンド33の単位断面積当たりの張力が60N/mmとなるように、張力コントローラ51によりローラ34を変位してバンド33に対してA方向での張力を付与した。この張力付与状態下においては、側部33sが反り上がっており、側部33sはローラ34の周面34bから浮いていた。中央部33cはローラ34の周面34bに接していた。側縁33e(L),33e(R)における浮き量J1は1.1mm、製品予定領域Apの側縁における浮き量Kは0.11mmであった。
【0086】
図1,図2,図4,図5に示すように、流延位置PCを、ローラ34に対する巻き掛け領域Arの下流端になるように流延ダイ38を配し、1対の第1ローラ52を流延位置PCの上流に配して溶接部33w及び側部33sを押さえ、側部33sの浮き上がりを矯正した。第1ローラ52の直径は100mmである。
【0087】
得られたフィルム27の幅方向における厚みのむらは許容できるレベルであった。また、剥ぎ取りにおける流延膜39のバンド33への剥げ残りは確認されず、流延膜39の発泡は、側部のみならず全幅域にわたり確認されなかった。
【実施例2】
【0088】
図9に示すように流延位置PCの下流に第2ローラ61を配し、流延位置PCから案内されてきたバンド33の側部33sを押圧した。その他の条件は実施例1と同様に実施した。第2ローラ61の直径は100mmである。
【0089】
得られたフィルム27の幅方向における厚みの均一性は実施例1よりもさらに優れ、許容できるレベルであった。また、剥ぎ取りにおける流延膜39のバンド33への剥げ残りは確認されず、流延膜39の発泡は、全幅域にわたり確認されず、側部においても確認されなかった。
【実施例3】
【0090】
流延位置PCの上流の第1ローラ52を、図7に示すように全幅押圧ローラ57に代えて、剥取位置PPから流延位置PCに向かうバンド33の側部33sと溶接部33wとを中央部33cを含めて押圧した。その他の条件は実施例1と同様に実施した。全幅押圧ローラ57の直径は150mmである。
【0091】
得られたフィルム27の幅方向における厚みのむらは許容できるレベルであり、実施例1よりも優れていた。また、剥ぎ取りにおける流延膜39のバンド33への剥げ残りは確認されず、流延膜39の発泡は、全幅域にわたり確認されず、側部においても確認されなかった。
【0092】
[比較例1]
第1ローラ52を用いなかった他は、実施例1と同じ条件である。
【0093】
得られたフィルムの幅方向における厚みは非常に不均一であり、許容できないレベルであった。また、剥ぎ取りにおける流延膜のバンドへの剥げ残りが確認された。さらに、流延膜においては、側部に発泡が確認された。
【符号の説明】
【0094】
10 溶液製膜設備
11 流延装置
24 ドープ
27 フィルム
33 バンド
33A 流延面
33c 中央部
33s 側部
33w 溶接部
38 流延ダイ
39 流延膜
52,61 第1ローラ,第2ローラ
57 全域押圧ローラ
65 支持ローラ
PC 流延位置
PP 剥取位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のローラの周面に巻き掛けられて循環するように長手方向に搬送される環状の金属製バンドに、ポリマーが溶剤に溶解したドープを流延することにより流延膜を形成し、前記流延膜を前記バンドから剥がして乾燥することによりフィルムとする溶液製膜方法において、
前記バンドは、幅広の中央部とその両側端に溶接で一体化された1対の幅狭の側部とからなり、
前記流延膜を剥がす剥離位置から前記ドープを流延する流延位置へ向かう前記バンドに対向するように配され、前記バンドの幅方向に長手方向を一致させて回転自在に備えられた第1ローラにより、前記ドープが流延される一方のバンド面側から、前記バンドの長手方向に延びた溶接部と前記1対のローラから浮き上がった前記側部とを押さえて、前記側部の浮き上がりを矯正し、
前記流延膜が前記中央部上と両側の前記溶接部上とに形成されるように、前記ドープを流延することを特徴とする溶液製膜方法。
【請求項2】
前記バンドの全幅よりも長い前記第1ローラにより、前記バンドの全幅域を押さえることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
【請求項3】
駆動手段を有し、周面が樹脂加工された前記第1ローラを、前記バンドの搬送速度と同じ速度で、前記駆動手段により周方向に回転することを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
【請求項4】
前記流延位置から前記剥離位置へ向かう前記バンドに対向するように配され、前記バンドの幅方向に長手方向を一致させて回転自在に備えられた第2ローラにより、前記一方のバンド面のうち前記流延膜が形成されずに露呈している非流延領域を押さえることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の溶液製膜方法。
【請求項5】
前記バンドは、周方向に回転する前記1対のローラにより搬送され、
前記1対のローラのうち一方のローラ上の前記バンドに対向して設けた流延ダイから前記ドープを流出することにより、前記流延位置を前記一方のローラ上にしたことを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の溶液製膜方法。
【請求項6】
前記バンドを、周方向に回転する前記1対のローラにより搬送し、
前記1対のローラの一方から他方に向かうバンドを支持ローラにより支持し、
前記支持ローラ上の前記バンドに対向して設けた流延ダイから前記ドープを流出することにより、前記流延位置を前記支持ローラ上にしたことを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の溶液製膜方法。
【請求項7】
1対のローラと、
前記1対のローラの周面に巻き掛けられて、溶剤にポリマーを溶解しているドープが流延されて流延膜が形成される流延位置と、流延膜が剥がされる剥離位置とを循環するように長手方向に搬送され、幅広の中央部とその両側部に溶接で一体化された1対の幅狭の側部とからなる環状の金属製バンドと、
前記バンドの幅方向に長手方向が一致させて回転自在に備えられ、前記剥離位置から前記流延位置へ向かう前記バンドの長手方向に延びた溶接部と前記1対のローラから浮き上がった前記側部とを押圧して前記側部の浮き上がりを矯正する第1ローラと、
前記流延膜を前記中央部上と両側の前記溶接部上とに形成するように、前記ドープを流出する流延ダイとを備えることを特徴とする流延装置。
【請求項8】
前記第1ローラは、前記バンドの全幅域を押圧するように前記バンドの幅よりも長くされてあることを特徴とする請求項7記載の流延装置。
【請求項9】
前記第1ローラは、駆動手段を有し、周面が樹脂加工されてあることを特徴とする請求項7または8記載の流延装置。
【請求項10】
前記バンドの幅方向に長手方向を一致させて回転自在に備えられ、前記流延位置から前記剥離位置へ向かう前記バンドのうち、前記流延膜が形成されずに露呈している非流延領域を押圧する第2ローラを備えることを特徴とする請求項7ないし9いずれか1項記載の流延装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−61842(P2012−61842A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125033(P2011−125033)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】