説明

溶融エステル交換法によるポリカーボネートの製造方法

本発明は、溶融エステル交換法によるポリカーボネートの製造方法、この方法によって得られる帯電性が低いポリカーボネート、およびこのポリカーボネートで製造される成形品もしくは押出品、特に光学データ記憶媒体もしくは光拡散プレート、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融エステル交換法によるポリカーボネートの製造方法、この方法によって得られる帯電性の低いポリカーボネート、およびこのポリカーボネートから製造される成形品または押出品、特に光学データ記憶媒体または光散乱プレートを提供する。
【背景技術】
【0002】
光学データ記録材料は、多量のデータの可変記録および/または保管媒体としてますます使用されつつある。このタイプの光学データ記憶媒体の例は、CD、スーパーオーディオCD、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、HD−DVDおよびBDである。
【0003】
透明熱可塑性プラスチック材料、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートおよびそれらの化学変性品、は、典型的には、光学記憶媒体に使用される。基材としてのポリカーボネートは、特に、追記型光ディスクおよび書換型光ディスク、更に、自動車のグレージング領域の成形品、例えば光拡散プレート、の製造に好適である。この熱可塑性プラスチック材料は、優れた機械的安定性を有し、寸法変化を受けにくく、かつ、高い透明性および衝撃強さに優れている。
【0004】
DE−A 2119799によると、フェノール性末端基を伴うポリカーボネートの製造は、界面法並びに均質相における方法によって行われる。
【0005】
別の工業的に使用されるポリカーボネートの製造方法は、溶融エステル交換法である。この方法によって製造されるポリカーボネートは、原理的には上記フォーマットの光学データ記憶媒体、例えばコンパクトディスク(CD)またはデジタル多用途ディスク(DVD)の製造に使用されうる。
【0006】
しかしながら、この方法は、これまでポリカーボネートであって、射出成形体への加工後に射出成形品の表面に高い電場を形成する特性を有するポリカーボネートを生じるという欠点を有していた。従って、例えば、このポリカーボネートで作られる光学データ記憶媒体用のディスクは、射出成形法による製造中に高い電場を形成する。光学データ記憶媒体の製造中に、基材におけるこの高い場の強度は、例えば環境からのダストの誘引や、射出成形品、例えばディスク、が互いに付着することをもたらし、このことが完成射出成形品の品質を低下させ、更に、射出成形プロセスを更に困難にする。
【0007】
更に、帯電、特に(光学データキャリア用の)ディスクの帯電は、濡れ性、特に非極性媒体、例えば非極性染料、に対する濡れ性や溶媒、例えばジブチルエーテル、エチルシクロヘキサン、テトラフルオロプロパノール、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンもしくはオクタフルオロプロパノール、からの染料の適用、の不足をもたらす。例えば、書込型データ記憶媒体の場合、染料適用中の基材表面の高い電荷は、例えば染料での不規則かつ不完全なコーティングをもたらし、従って、情報層における欠陥を引き起こす。
【0008】
従って、書込可能染料がスピンコーティング法で表面に適用される光学データ記憶媒体の場合、書込可能層の均一適用および円滑な製造プロセスを保証するために、低い絶対電場強度が要求される。
【0009】
基材の帯電は、電場をもたらし、これは基材表面からの特定の距離における測定によって定量化される。
【0010】
そのような高い電場の別の欠点は、更に、上記事実のために基材に関する収率の低下に見られる。このことは、製造量の減少をもたらし、従って相当する更なるコストを引き起こす。
【0011】
射出成形プロセス中に射出成形部品に生じる電場は、製造プロセス中一定ではないが、特定の場の強度のパターンに従う。従って、問題となるディスクにおける場の強さは、射出成形プロセスの開始後に増加(新しいマトリクスが使用される場合)し、ある時期の後にプラトーに到達するかまたは更にわずかだけ増加することが示される。このことは、次の製造工程、例えば染料を基材に適用する工程、における射出成形部品の性能に重要な特徴である。溶融エステル交換法によるポリカーボネートから製造される射出成形体の時間依存性帯電は、界面法によるポリカーボネートから製造される射出成形体の時間依存性帯電と異なる。溶融エステル交換法によって製造されるポリカーボネートの場合の射出成形プロセスの開始時における場の強度の出発値は、たいていの場合、界面法によって製造されるポリカーボネートの場合よりも著しく低い。ある運転時間後(例えば2時間の連続射出成形プロセスの後)に落ち着くプラトー値は、界面法によって製造されるポリカーボネートとは対照的に、しばしば、著しく負の範囲(負の場の強度)にある。
【0012】
強い帯電の問題を解決するためにいくつかのアプローチが行われてきた。一般的に、帯電防止剤を添加剤として基材に添加する。帯電防止剤が添加されたそのようなポリカーボネート組成物は、例えば、特開昭62−207358に記述されており、この明細書ではポリエチレンまたはポリプロピレン誘導体が添加剤として使用されている。この明細書では帯電防止剤として特にリン酸誘導体がポリカーボネートに添加されている。EP−A 922728は、さまざまな帯電防止剤、例えばポリアルキレングリコール誘導体、エトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリシロキサン誘導体、ホスフィンオキシド、並びにジステアリルヒドロキシアミン、を記述しており、これらは単独で使用されても混合物の形態で使用されてもよい。特開昭62−207358は、帯電防止活性を有する添加剤として亜リン酸のエステルを記述している。US 5,668,202において、スルホン酸誘導体が添加剤として記述されている。
【0013】
US 6,262,218および6,022,943は、溶融ポリカーボネート(溶融エステル交換法によって製造されたポリカーボネート)中の末端基含量を増加させるためのクロロ蟻酸フェニルの使用を記述している。これらの明細書中で、90%を超える末端基含量が帯電特性に対して好ましい効果を有することが仮定されている。WO−A 00/50488において、3,5−ジ−tert−ブチルフェノールが界面法における連鎖停止剤として使用されている。この連鎖停止剤は、常套の連鎖停止剤と比較して対応する基材のより低い静電荷をもたらす。EP−A 1304358は、溶融エステル交換法からのポリカーボネート中の添加剤として、短いオリゴマー、例えば、ビスフェノールAビス−(4−tert−ブチルフェニルカーボネート)、の使用を記述している。
【0014】
しかしながら、この記述されている添加剤は、基材の特性に悪影響を及ぼしうる。なぜなら、これらの添加剤は、高温において材料から移動し、その結果、コーティングの形成や不完全な離型をもたらす傾向があるからである。更に、このポリカーボネート中のオリゴマーの含量は、低レベルの機械的特性およびガラス転移温度の低下ももたらしうる。加えて、これらの添加剤は、物質に添加されると二次反応を引き起こしうる。結果としてベース材料の熱安定性が低くなりうる。エステル交換法によって得られるポリカーボネートの次の「エンドキャッピング」は複雑である。そのために必要な物質を提供しなければならず、このことは、次の「エンドキャッピング」のための追加のコストおよび追加の処理工程に関連する。
【0015】
DE−A 102004061754、DE−A 102004061715、US−A 2006135736、US−A 2006135735およびUS−A 2006134366は、低帯電射出成形体の製造に特に好適な物質を記述している。しかしながら、これらの材料は、界面法によって製造されたポリカーボネートだけである。これらに記述されている手段は溶融エステル交換法には効果がない。
【0016】
製造プロセスにおける光学データ記憶媒体の良好な被覆性を保証するために、イオン化された気流をディスク上に通過させる、いわゆるイオナイザーが頻繁に使用されている。しかしながら、イオナイザーの使用は、製造プロセスをより割高にする。従って、経済的なプロセスのために、使用されるイオナイザーの数は最小限に減らすべきである。
【0017】
従って、低帯電成形体または押出品への加工に好適なポリカーボネートの溶融エステル交換法による製造方法へのニーズが引き続き存在する。加えて、成形体または押出品への加工中に成形用品または対応する成形品に沈着物ができるだけ少ししか生じないことが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の目的は、溶融エステル交換法およびこの方法によって製造されるポリカーボネートであって、成形体や押出品への加工後に基材表面の帯電ができるだけ少ないという要件を満たし、かつ、上記欠点を避けるポリカーボネートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
意外なことに、この目的は、最終反応段階の前に少なくとも一種類の抑制剤を溶融物に添加し、かつ、最終反応段階中もしくは最終反応段階後に一種類以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸またはそれらの誘導体を添加する、多段階溶融エステル交換法によって達成される。本発明による方法によって製造されるポリカーボネートは、上記欠点を有さず、静電荷の低い成形体や押出品への加工に著しく好適である。
【0020】
従って、本発明は、少なくとも一種類の触媒を使用して少なくとも一種類のジヒドロキシアリール化合物を少なくとも一種類のジアリールカーボネートと多段階法において反応させる、溶融エステル交換法によるポリカーボネートの製造方法であって、最終反応段階の前に少なくとも一種類の抑制剤を溶融物に添加すること、および、一種類以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体を最終反応段階中または最終反応段階後に添加することを特徴とする、ポリカーボネートの製造方法を提供する。
【0021】
本発明による方法は、溶融エステル交換法によって行われる。芳香族オリゴ−またはポリ−カーボネートの溶融エステル交換法による製造は文献で知られており、例えば、Encyclopedia of Polymer Science,第10巻(1969年),Chemistry and Physics of Polycarbonates,Polymer Reviews,H.Schnell,第9巻,John Wiley and Sons,Inc.(1964年),44〜51頁、並びに、DE−C 1031512、US−A 3,022,272、US−A 5,340,905およびUS−A 5,399,659に記述されている。
【0022】
この方法によると、芳香族ジヒドロキシ化合物は、溶融状態で、好適な溶媒および要すれば別の添加剤を用いて、炭酸ジエステルとエステル交換される。
【0023】
この方法は、一般的に、直列につながれたリアクターにおいて、複数の段階で行われ、ポリカーボネートの分子量および従って粘度を段階的に増加させる。
【0024】
例えば、WO−A 02/077067に記述されているようなシステムデザインが、本発明による方法を行うために使用されうる。このデザインにおいて、ポリカーボネート合成は、第四級オニウム化合物の存在下におけるジアリールカーボネートとジヒドロキシアリール化合物とのエステル交換によって行われ、ここで、温度が段階的に上がり圧力が段階的に下がる複数のエバポレーター段階においてオリゴカーボネートが製造され、このオリゴカーボネートは、直列に配置された一つまたは二つのバスケットリアクター(basket reactor)中で、更に温度が上昇し、圧力が低下すると、縮合してポリカーボネートになる。
【0025】
本発明による方法に好適なジヒドロキシアリール化合物は、一般式(I)
HO−Z−OH (I)
(式中、Zは、炭素原子を6〜34個有する芳香族基であって、一以上の任意に置換されていてもよい芳香核および脂肪族もしくは脂環式基またはアルキルアリールもしくはヘテロ原子をブリッジメンバーとして含んでいてもよい芳香族基である。)
のジヒドロキシアリール化合物である。
【0026】
好適なジヒドロキシアリール化合物の例は、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アリール、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらの環アルキル化化合物および環ハロゲン化化合物である。
【0027】
これらおよび更なる好適な別のジヒドロキシアリール化合物は、例えば、DE−A 3832396、FR−A 1561518、H.Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Interscience Publishers,ニューヨーク1964年,28頁以降;102頁以降およびD.G.Legrand,J.T.Bendler,Handbook of Polycarbonate Science and Technology,Marcel Dekker New York 2000,72頁以降に記述されている。
【0028】
好ましいジヒドロキシアリール化合物は、例えば、レソルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロ−プロパン,2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロ−ヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−4−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロ−ヘキサン、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−3−ジイソプロピル−ベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼン、1,3−ビス−[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホンおよび2,2’,3,3’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラ−メチル−1,1’−スピロビ−[1H−インデン]−5,5’−ジオールである。
【0029】
特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は、レソルシノール、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピル−ベンゼンおよび1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼンである。
【0030】
より特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンである。
【0031】
一種類のジヒドロキシアリール化合物を使用してホモポリカーボネートを生成することもさまざまなジヒドロキシアリール化合物を使用してコポリカーボネートを生成することも可能である。
【0032】
ジヒドロキシアリール化合物は、残留量のモノヒドロキシアリール化合物であって、ジヒドロキシアリール化合物を製造したモノヒドロキシアリール化合物と共に使用されてもよく、低分子量オリゴカーボネートは、残留量のモノヒドロキシアリール化合物であって、オリゴマーの製造中に分離されたモノヒドロキシアリール化合物と共に使用されてもよい。残留量のモノヒドロキシアリール化合物は、20wt.%以下、好ましくは10wt.%以下、特に好ましくは5wt.%以下、より特に好ましくは2wt.%以下である。
【0033】
ジヒドロキシアリール化合物との反応に好適なジアリールカーボネートは、一般式(II)
【化1】

(式中、
R、R’およびR’’ は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールであり、Rは、更に、−COO−R’’’であってもよく、R’’’は、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールである。)
のジアリールカーボネートである。
【0034】
好ましいジアリールカーボネートは、例えば、ジフェニルカーボネート、メチルフェニル−フェニルカーボネートおよびジ−(メチルフェニル)カーボネート、4−エチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−エチルフェニル)カーボネート、4−n−プロピルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−プロピルフェニル)カーボネート、4−イソプロピルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソプロピルフェニル)カーボネート、4−n−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ブチルフェニル)カーボネート、4−イソブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソブチルフェニル)カーボネート、4−tert−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、4−n−ペンチル−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ペンチルフェニル)カーボネート、4−n−ヘキシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ヘキシルフェニル)カーボネート、4−イソオクチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソオクチルフェニル)カーボネート、4−n−ノニルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ノニル−フェニル)カーボネート、4−シクロヘキシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−シクロヘキシルフェニル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル]カーボネート、ビフェニル−4−イル−フェニルカーボネート、ジ−(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−ナフチル)−フェニル−フェニルカーボネート、4−(2−ナフチル)−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−[4−(1−ナフチル)−フェニル]カーボネート、ジ−[4−(2−ナフチル)フェニル]カーボネート、4−フェノキシフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−フェノキシフェニル)カーボネート、3−ペンタデシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(3−ペンタデシルフェニル)カーボネート、4−トリチル−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−トリチルフェニル)カーボネート、メチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(メチルサリチレート)カーボネート、エチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(エチルサリチレート)カーボネート、n−プロピルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(n−プロピルサリチレート)カーボネート、イソプロピルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(イソプロピルサリチレート)カーボネート、n−ブチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(n−ブチルサリチレート)カーボネート、イソブチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(イソブチルサリチレート)カーボネート、tert−ブチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(tert−ブチルサリチレート)カーボネート、ジ−(フェニルサリチレート)カーボネートおよびジ−(ベンジルサリチレート)カーボネートである。
【0035】
特に好ましいジアリール化合物は、ジフェニルカーボネート、4−tert−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル−4−イル−フェニルカーボネート、ジ−(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル]カーボネートおよびジ−(メチルサリチレート)カーボネートである。
【0036】
ジフェニルカーボネートがより特に好ましい。
【0037】
一種類のジアリールカーボネートを使用することもさまざまなジアリールカーボネートを使用することも可能である。
【0038】
ジアリールカーボネートは、更に、それを製造する残留量のモノヒドロキシ−アリール化合物と共に使用されてもよい。残留量のモノヒドロキシアリール化合物は、20wt.%以下、好ましくは10wt.%以下、特に好ましくは5wt.%以下、より特に好ましくは2wt.%以下である。
【0039】
ジヒドロキシアリール化合物1モルに対して、ジアリールカーボネート1.02〜1.30mol、好ましくは1.04〜1.25mol、特に好ましくは1.045〜1.22mol、より特に好ましくは1.05〜1.20molが一般的に使用される。更に、上記ジアリールカーボネートの混合物を使用することも可能であり、このとき、上記ジヒドロキシアリール化合物1モル当たりのモル量は、ジアリールカーボネートの混合物の総量に関連する。
【0040】
末端基を制御するかまたは変更するために、更に使用されるジアリールカーボネートの製造において用いられなかった一種類以上のモノヒドロキシアリール化合物を使用することが可能である。これらのモノヒドロキシアリール化合物は、一般式(III)
【化2】

(式中、
は、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリール、C〜C34−アリールまたは−COO−Rであり、Rは、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールであり、かつ、
、R は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールである。)
のモノヒドロキシアリール化合物である。
【0041】
そのようなモノヒドロキシアリール化合物は、例えば、1−、2−または3−メチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、4−エチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−イソブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、4−n−ペンチルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−イソオクチルフェノール、4−n−ノニルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェノール、4−フェニルフェノール、4−フェノキシフェノール、4−(1−ナフチル)−フェノール、4−(2−ナフチル)フェノール、4−トリチルフェノール、メチルサリチレート、エチルサリチレート、n−プロピルサリチレート、n−ブチルサリチレート、イソブチルサリチレート、tert−ブチルサリチレート、フェニルサリチレートおよびベンジルサリチレートである。
【0042】
4−tert−ブチルフェノール、4−イソオクチルフェノールおよび3−ペンタデシルフェノールが好ましい。
【0043】
このモノヒドロキシアリール化合物は、その沸点が使用されるジアリールカーボネートの製造において用いられるモノヒドロキシアリール化合物の沸点よりも高くなるように選択される。モノヒドロキシアリール化合物は、反応中の任意の時点において添加されうる。好ましくは、反応の開始時に添加される。フリーのモノヒドロキシアリール化合物の量は、ジヒドロキシアリール化合物に対して0.2〜20mol%、好ましくは0.4〜10mol%である。
【0044】
更に、生じるポリカーボネートの末端基を、少なくとも一種類の追加のジアリールカーボネートであって、ベースのモノヒドロキシアリール化合物の沸点が主に使用されるジアリールカーボネートのベースモノヒドロキシアリール化合物の沸点よりも高いジアリールカーボネートの添加によって変えることも可能である。ここでも、追加のジアリールカーボネートは、反応中の任意の時点において添加されうる。好ましくは、反応の開始時に添加される。使用されるジアリールカーボネートの総量中の高沸点ベースモノヒドロキシアリール化合物を有するジアリールカーボネートの量は、1〜40mol%、好ましくは1〜20mol%、特に好ましくは1〜10mol%である。
【0045】
文献で知られている塩基性触媒、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物および酸化物および/またはオニウム塩、例えばアンモニウムもしくはホスホニウム塩が、ポリカーボネートの製造に関する溶融エステル交換法において触媒として使用されうる。合成において、オニウム塩、特に好ましくはホスホニウム塩を使用することが好ましい。そのようなホスホニウム塩は、例えば、一般式(IV)
【化3】

(式中、
7〜10 は、同一または異なる、任意に置換されていてもよいC〜C10−アルキル、C〜C14−アリール、C〜C15−アリールアルキルまたはC〜C−シクロアルキル残基、好ましくはメチルまたはC〜C14−アリール、特に好ましくはメチルまたはフェニルであり、かつ、
は、ヒドロキシド、スルフェート、ハイドロゲンスルフェート、ハイドロゲンカーボネート、カーボネート、ハライド、好ましくは、クロリド、および式−OR11(式中、R11は、任意に置換されていてもよいC〜C14−アリール、C〜C15−アリールアルキルまたはC〜C−シクロアルキル基、C〜C20−アルキル、好ましくはフェニルである。)のアルキレートまたはアリーレートの群から選択されるアニオンである。)
のホスホニウム塩である。
【0046】
特に好ましい触媒は、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラフェニルホスホニウムフェノレートであり、テトラフェニルホスホニウムフェノレートがより特に好ましい。
【0047】
触媒は、ジヒドロキシアリール化合物1モルに対して、好ましくは10−8〜10−3molの量で、特に好ましくは10−7〜10−4molの量で使用される。
【0048】
重縮合の速度を増加させるために要すれば共触媒を更に使用してもよい。
【0049】
これらは、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルカリ性反応塩(alkaline−reacting salts)、例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウムの水酸化物、任意に置換されていてもよいC〜C10−アルコキシドおよびC〜C14−アリールオキシド、好ましくはナトリウムの水酸化物、任意に置換されていてもよいC〜C10−アルコキシドまたはC〜C14−アリールオキシドである。水酸化ナトリウム、ナトリウムフェノレートまたは2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−プロパンの二ナトリウム塩が好ましい。
【0050】
アルカリまたはアルカリ土類金属イオンがそれらの塩の形態で供給される場合、アルカリまたはアルカリ土類金属イオンの量(例えば、原子吸光分析によって決定される。)は、生成されるポリカーボネートに対して1〜500ppb、好ましくは5〜300ppb、最も好ましくは5〜200ppbである。しかしながら、本発明による方法の好ましい形態において、アルカリ金属塩は使用しない。
【0051】
本発明の範囲内で、ppbおよびppmは、特に言及しない限り、重量部を意味すると理解されるべきである。
【0052】
アルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルカリ性反応塩は、望ましくない二次反応を抑制するために、オリゴカーボネートの製造中、すなわち、合成の開始時に、または後の処理工程において混合されうる。触媒の総量を、更に、この方法に数工程で添加してもよい。
【0053】
以上で既に言及した触媒および触媒量に加えて、補助量のオニウム触媒を重縮合前に添加することも更に可能である。上記触媒が既にオニウム触媒である場合、重縮合前に補助量で添加されるオニウム触媒は、上記オニウム触媒と同一であっても異種オニウム触媒であってもよい。
【0054】
触媒の添加は、好ましくは、計量添加中の危険な過剰濃度を避けるために溶液において行われる。溶媒は、好ましくは、系およびプロセスに内在する化合物、例えばジヒドロキシアリール化合物、ジアリールカーボネートまたは要すれば用いられるモノヒドロキシアリール化合物である。モノヒドロキシアリール化合物が特に好ましい。なぜなら、ジヒドロキシアリール化合物およびジアリールカーボネートは、わずかに高い温度でさえ、特に触媒の作用のもとで、容易に変化し始め、分解することが当業者に知られているからである。結果として、ポリカーボネートの品質が損なわれうる。本発明による方法の特に好ましい形態において、触媒用の溶媒はフェノールである。この形態で好ましく使用される触媒テトラフェニルホスホニウムフェノレートはその製造においてフェノールとの混晶の形態で単離されるので、本発明による方法のこの形態においてフェノールが特に好適である。
【0055】
このプロセスによって得られるポリカーボネートは、式(III)のフェノールによってキャップされた鎖末端に加えて、更に特定の割合の非キャップフェノール性末端基も有するという事実が構造的に認められる。この構造要素は、例えば以下の式(V)
【化4】

(式中、Zは、一般式(I)のZと同じ意味を有する。)
によって記述されうる。
【0056】
赤外分光によって決定されるフェノール性OH末端基の含量は、好ましくは150ppm超、特に好ましくは200ppm超、より特に好ましくは250ppm超である(ポリカーボネートの重量に対する。)。
【0057】
ポリカーボネートを、好適な分枝剤を反応混合物に添加することによって意図的に分枝してもよい。ポリカーボネートの製造用の好適な分枝剤は当業者に既知である。それらは三以上の官能基を有する化合物、好ましくは三以上のヒドロキシル基を有する化合物である。
【0058】
三以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する好適な化合物は、例えば、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノールおよびテトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタンである。
【0059】
三以上の官能基を有する別の好適な化合物は、例えば、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0060】
好ましい分枝剤は、3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンである。
【0061】
分枝剤は、一般的に、ジヒドロキシアリール化合物に対して、例えば0.02〜3.6mol%の量で使用される。
【0062】
使用されるジヒドロキシアリール化合物、ジアリールカーボネートおよびモノヒドロキシアリール化合物、並びに合成に添加される別の全ての原料、ケミカルおよび助剤は、それ自体の合成、取り扱いおよび貯蔵由来の不純物で汚染されていてもよく、更なる精製なしに使用されうる。しかしながら、必ず必要ではないが、できるだけ純粋な原料、ケミカルおよび助剤を扱うことが望ましい。
【0063】
少なくとも一種類の抑制剤の添加を、最終反応段階の前に行う。本発明の範囲内で、これは、添加を最終反応段階の前の少なくとも一つの反応段階で行うかまたは二つの反応段階の間で行うことを意味する。この添加を、好ましくは、最終反応段階の直前の反応段階または最後から二番目の反応段階と最終反応段階との間で行う。
【0064】
この溶融エステル交換法によって製造されるポリカーボネートは、その製造後に触媒的に活性な塩基性不純物を含みうる。これらは一方で出発物質の分離されなかったわずかな不純物、分離されなかった熱分解性触媒の塩基性残留物、または分離されなかった安定塩基性触媒である。熱分解性触媒は、例えば、上記オニウム塩であると理解されるべきである。熱的に安定な触媒は、例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属のアルカリ性反応塩であると理解されるべきである。これらの触媒的に活性な塩基性不純物を抑制するために、特定の抑制剤が、原理的にはそれぞれのプロセスの様々な時点においてポリカーボネートに添加されうる。
【0065】
好適な抑制剤は、酸成分、例えばルイスもしくはブレンステッド酸、または強酸のエステルである。抑制剤のpKa値は5を超えず、好ましくは3未満であるべきである。所望の分子量に達すると、上記塩基性不純物を不活性にするために、酸成分またはそれらのエステルを添加し、そのようにして、理想的には、反応を停止する。そのような抑制剤は、例えばEP−A 1612231、EP−A 435124またはDE−A 4438545に記述されている。
【0066】
好適な酸成分の例は、オルト−リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、次リン酸、ポリリン酸、ベンゼン−ホスホン酸、リン酸二水素ナトリウム、ホウ酸、アリールボロン酸、塩酸(塩化水素)、硫酸、ベンゼンスルホン酸、トルエン−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸および別の全てのフェニル置換ベンゼンスルホン酸、硝酸、酸塩化物、例えばクロロ蟻酸フェニルエステル、アセトキシ−BP−A、塩化ベンゾイル、並びに上記酸のエステル、セミ−エステルおよびブリッジエステル、例えばトルエンスルホン酸エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ジメチルスルフェート、ホウ酸エステル、アリールボロン酸エステルおよび水の影響下で酸を生成する別の成分、例えばトリ−iso−オクチルホスファイト、Ultranox 640およびBDP(ビスフェノールジホスフェートオリゴマー)である。
【0067】
有機硫黄含有酸、有機硫黄含有酸のエステルまたはそれらの混合物の、抑制剤としての使用が好ましい。有機硫黄含有酸は、例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸またはスルホン化ポリスチレンでありうる。有機硫黄含有酸のエステルは、例えば、ジメチルスルホネート、ジエチルスルホネート、p−トルエンスルホン酸またはベンゼンスルホン酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチルまたはフェニルエステルでありうる。それらは更に多価アルコールの完全または部分エステル、例えばグリセロールトリベンゼンスルホン酸エステル、グリセロールジベンゼンスルホン酸エステル、グリセロールモノベンゼンスルホン酸エステル、グリセロールトリ−p−トルエンスルホン酸エステル、グリセロールジ−p−トルエンスルホン酸エステル、グリセロールモノ−p−トルエンスルホン酸エステル、エチレングリコールジベンゼンスルホン酸エステル、エチレングリコールモノベンゼンスルホン酸エステル、エチレングリコールジ−p−トルエンスルホン酸エステル、エチレングリコールモノ−p−トルエンスルホン酸エステル、ペンタエリトリトールテトラベンゼンスルホン酸エステル、ペンタエリトリトールトリベンゼンスルホン酸エステル、ペンタエリトリトールジベンゼンスルホン酸エステル、ペンタエリトリトールモノベンゼンスルホン酸エステル、ペンタエリトリトールテトラ−p−トルエンスルホン酸エステル、ペンタエリトリトールトリ−p−トルエンスルホン酸エステル、ペンタエリトリトールジ−p−トルエンスルホン酸エステル、ペンタエリトリトールモノ−p−トルエンスルホン酸エステル、トリメチロールプロパントリベンゼンスルホン酸エステル、トリメチロールプロパンジベンゼンスルホン酸エステル、トリメチロールプロパンモノベンゼンスルホン酸エステル、トリメチロールプロパントリ−p−トルエンスルホン酸エステル、トリメチロールプロパンジ−p−トルエンスルホン酸エステル、トリメチロールプロパンモノ−p−トルエンスルホン酸エステル、ネオペンチルグリコールジベンゼンスルホン酸エステル、ネオペンチルグリコールモノベンゼンスルホン酸エステル、ネオペンチルグリコールジ−p−トルエンスルホン酸エステル、ネオペンチルグリコールモノ−p−トルエンスルホン酸エステル、およびそれらの混合物であってもよい。これらの混合物は、更に出発化合物(酸成分および/またはアルコール成分)の残留物を含んでいてもよい。そのような抑制剤は、限定を意味せずに、更に、例えばEP−A 1609818にも記述されている。
【0068】
記述されている抑制剤は、ポリマー溶融物に単独で添加されても、互いの所望の混合物において添加されても、数種類の異なる混合物において添加されてもよい。
【0069】
これらの抑制剤は、ポリカーボネートに対して100ppm未満の量で、好ましくはポリカーボネートに対して0.1〜50ppmの量で、特に好ましくは0.5〜10ppm、より特に好ましくは1〜5ppmの量で使用されうる。
【0070】
抑制剤の添加の形態に関して限定はない。抑制剤は、固体の形態で、例えばパウダーの形態で、溶液において、または溶融物の形態でポリマー溶融物に添加されうる。別のタイプの添加は、配合によってホモジナイズされており、更に別の添加剤、例えば別の安定剤もしくは離型剤、を含んでいてもよいマスターバッチ、すなわち抑制剤とポリマー、好ましくはポリカーボネート、との混合物、の使用である。
【0071】
有機硫黄含有酸のエステルは、好ましくは、液体の形態で添加される。添加される量が非常に少ないので、エステルの溶液またはマスターバッチが好ましく使用される。
【0072】
溶媒として選択される化合物は、好ましくは、問題となっているプロセスにおいて既に別の成分として使用されている化合物である。残る残留物は、製造される製品の要求特性に依存して、品質を損なわない。
【0073】
問題となっているプロセスにおいて既に使用されている好適な化合物は、好ましくは、化学的に不活性であり、かつ、迅速に蒸発する化合物である。例えば、フェノールまたはジフェニルカーボネートが好ましい態様においてそのような化合物として好適である。
【0074】
常圧における沸点が30〜300℃、好ましくは30〜250℃、特に好ましくは30〜200℃の全ての有機溶媒、並びに水−結晶の水も含む−が、別の溶媒として好適である。
【0075】
好適な溶媒は、例えば、水または任意に置換されていてもよいアルカン、シクロアルカンまたは芳香族化合物である。置換基は、さまざまな組み合わせの脂肪族、脂環式もしくは芳香族基、並びにハロゲンまたはヒドロキシル基である。ヘテロ原子、例えば窒素、が脂肪族、脂環式または芳香族基の間のブリッジメンバーであってもよく、これらの基は同一であっても異なっていてもよい。別の溶媒は、ケトンおよび有機酸のエステル並びに環状カーボネートであってもよい。抑制剤をグリセロールモノステアレートに溶解し、計量添加することもまた可能である。上記溶媒の混合物もまた溶媒として使用されうる。
【0076】
そのような溶媒の例は、水に加えて、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンおよびそれらの異性体、クロロベンゼン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびそれらの異性体、フェノール、o−、m−およびp−クレゾール、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルケトン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチルアセテート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびそれらの混合物である。
【0077】
水、フェノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、トルエンおよびそれらの混合物が好ましく好適である。
【0078】
水、フェノール、プロピレンカーボネートおよびそれらの混合物が特に好ましく好適である。
【0079】
均質混合をもたらすスタティックミキサーまたは別のダイナミックミキサー(dynamic mixers)、例えば押出機、が抑制剤を効率的に混合するのに好適である。
【0080】
本発明による方法の最終反応段階中または最終反応段階後に、一種類以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体を反応混合物に添加する。従って、添加は、好ましくは、いわゆる仕上げリアクター(finishing reactor)または仕上げリアクターの下流、特に好ましくは仕上げリアクターの下流において行われる。
【0081】
芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体の添加の形態に関して限定はない。それらは、ポリマー溶融物に固体の形態で、例えばパウダーの形態で、溶液において、または溶融物の形態で添加されうる。別のタイプの添加は、マスターバッチ、すなわち、ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体とポリマー、好ましくはポリカーボネート、との混合物、の使用である。このマスターバッチは、配合によってホモジナイズされており、使用されるポリカーボネートは、別の添加剤、例えば別の安定剤または離型剤、を含みうる。例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体、好ましくはポリカーボネート中のマスターバッチの形態のもの、は、最終反応段階後、ポリマーを排出する前に側面押出機(side extruder)によってポリカーボネート溶融物に添加され、要すれば別の混合デバイス、例えばスタティックミキサーによって更に分散されうる。更に、最終加工段階後に得られるグラニュールの形態のポリマーを、好ましくは押出機において、再度溶融し、それを芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体、好ましくはポリカーボネートとのマスターバッチの形態のもの、と混合することも可能である。
【0082】
芳香族ヒドロキシカルボン酸の誘導体は、例えば対応する酸のエステル、アミド、ハライドまたは無水物、好ましくは対応する酸のエステル、またはヒドロキシ基誘導体化カルボン酸、例えばアルコキシカルボン酸もしくはアルキルオキシカルボニル−もしくはアリールオキシカルボニル−カルボン酸、であると理解されるべきである。
【0083】
好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体は、例えば、一般式(VI)、(VII)または(VIII)
【化5】

(式中、
、R1’ は、互いに独立して、Hまたは直鎖、環状もしくは分枝C〜C10−アルキル、C〜C34−アラルキル基または直鎖、環状もしくは分枝C〜C10−ヒドロキシアルキル基、好ましくはHまたは直鎖もしくは分枝C〜C−アルキル基または直鎖C〜C−ヒドロキシアルキル基であり、
、R2’ は、互いに独立して、直鎖もしくは分枝C〜C10−アルキル、C〜C34−アラルキル基、好ましくは直鎖もしくは分枝C〜C−アルキル基であり、
、R3’ は、互いに独立して、H、直鎖もしくは分枝C〜C10−アルキル−カルボニルまたはC〜C34−アリールカルボニル基、好ましくはHまたはメチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、フェニルカルボニル、ブチルカルボニル基、より特に好ましくはHまたはメチルカルボニル基であり、
は、Hまたは直鎖もしくは分枝C〜C10−アルキル、C〜C34−アラルキル基または直鎖もしくは分枝C〜C10−ヒドロキシアルキル基、好ましくはHまたは直鎖もしくは分枝C〜C−アルキル基または直鎖C〜C−ヒドロキシアルキル基であり、
l は、1または2、好ましくは1であり、
n は、0または1〜3の整数、好ましくは0または1であり、
m は、1または2、好ましくは1であり、
Y は、炭素原子および/またはヘテロ原子を1〜8個含む二価の基、好ましくは−C(R)(R)−、−(CR−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−(C=O)−、−O(C=O)O−、−O−C(R)O−、特に好ましくは−C(R)(R)−(式中、RおよびRは、互いに独立して、C〜C10−アルキル基、好ましくはC〜C−アルキル基、特に好ましくはメチルである。)であり、かつ、
X は、C〜C10−アルキル、C〜C10−アルキルフェニルまたはフェニル基、特に好ましくはフェニル基である。)
の化合物である。
【0084】
特に好ましい芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体は、例えば2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジイソプロピルサリチル酸、5,5−メチレンジサリチル酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチルエステル、サリチル酸2−エチルヘキシルエステルおよびサリチル酸n−ブチルエステルである。
【0085】
芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体は、本発明による方法の最終反応段階中または最終反応段階後に、例えば、ポリカーボネートに対して5〜500ppm、好ましくは10〜300ppm、特に好ましくは20〜200ppmの量で使用される。
【0086】
この、最終反応段階の前の反応段階における少なくとも一種類の抑制剤の添加と、最終反応段階における少なくとも一種類の芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体の添加と、の組み合わせによって、溶融エステル交換法によって、更なる処理、例えば射出成形による処理、において表面の帯電が少ない成形品を生じるポリカーボネートを得ることが可能である。プロセス内のこの特定の時系列における抑制剤と追加の芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体とのそのような組み合わせは、今まで文献に記述されていなかった。例えば仕上げリアクター前の上記タイプの抑制剤の添加は既に知られている(例えば、EP−A 1612231およびDE−A 10357161参照。)が、生じる成形体や押出品の帯電性にポジティブな効果がないので、生じる成形体または押出品の表面におけるこの低い帯電の効果はいっそう意外である。
【0087】
本発明による方法は、不連続的に行っても連続的に行ってもよい。
【0088】
一旦ジヒドロキシアリール化合物とジアリール化合物とが、要すれば別の化合物、例えば高沸点モノヒドロキシアリール化合物、と共に、溶融物の形態で存在すると、少なくとも一種類の好適な触媒の存在のもとで反応が開始する。所望の最終状態、すなわち所望の転化率または分子量、に到達するまで好適な器具およびデバイスにおいて温度を上昇させ、圧力を低下させ、分離されるモノヒドロキシアリール化合物を運び出すことによって、転化率、すなわち分子量を増加させる。末端基の性質および濃度は、ジヒドロキシアリール化合物とジアリールカーボネートとの比率、蒸気および任意に添加される別の化合物、例えば高沸点モノヒドロキシアリール化合物、によるジアリールカーボネートの減少速度(これはポリカーボネートの製造に関する手順や装置の選択によって決定される。)の選択によって形成される。
【0089】
本発明の範囲内で、C〜C−アルキルは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルを意味し、C〜C−アルキルは、更に、例えばn−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピルを意味し、C〜C10−アルキルは、更に、例えば、n−ヘプチルおよびn−オクチル、ピナキル(pinakyl)、アダマンチル、メンチルの異性体、n−ノニル、n−デシルを意味し、C〜C34−アルキルは、更に、例えばn−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルを意味する。例えばアラルキルまたはアルキルアリール、アルキルフェニルまたはアルキルカルボニル基における、対応するアルキル基についても同じことが言える。対応するヒドロキシアルキルまたはアラルキルまたはアルキルアリール基におけるアルキレン基は、例えば上記アルキル基に対応するアルキレン基を意味する。
【0090】
アリールは、構造炭素原子を6〜34個有する炭素環式芳香族基を意味する。アリールアルキル基(アラルキル基ともいわれる。)の芳香族部分、並びに、より複雑な基、例えばアリールカルボニル基、のアリール成分についても同じことが言える。
【0091】
〜C34−アリールの例は、フェニル、o−、p−、m−トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニルまたはフルオレニルである。
【0092】
アリールアルキルやアラルキルは、それぞれ独立して、上記定義に記載の直鎖、環状、分枝または非分枝アルキル基であって、上記定義に記載のアリール基によって一置換されていても、多置換されていても、完全置換されていてもよいアルキル基である。
【0093】
上記リストは限定を意味せずに一例と解釈されるべきである。
【0094】
このプロセスを行う装置および手順における方法に関して原則として限定や制限はない。このプロセスは、好ましくは、以下に記載の方法で行われる。
【0095】
更に、本発明による方法に関する温度および圧力に関して特定の限定や制限はない。選択される温度、圧力および触媒が分離されるモノヒドロキシアリール化合物の適切に迅速な除去と共に溶融エステル交換を可能にすれば、任意の条件が可能である。
【0096】
全プロセスを通じて、温度は、一般的に180〜330℃であり、かつ、圧力は15bar(絶対)〜0.01mbar(絶対)である。
【0097】
好ましくは連続手順が選択される。なぜなら、これが製品の品質に有利であるからである。
【0098】
本発明によるそのような連続プロセスは、好ましくは以下のように行われる。少なくとも一種類の触媒を使用して、一種類以上のジヒドロキシアリール化合物を一種類以上のジアリールカーボネートおよび要すれば別の反応物と予備縮合し、この予備縮合の後、段階的に上昇する温度および段階的に低下する圧力を伴う次の複数の反応−エバポレーター段階において、生成するモノヒドロキシアリール化合物を分離せずに、最終生成物の分子量を所望のレベルに増加させる。
【0099】
個々の反応−エバポレーター段階に好適なデバイス、器具およびリアクターは、手順に従うと、熱交換器、減圧器具(pressure−relieving apparatuses)、セパレータ、カラム、蒸発器、撹拌容器および選択温度かつ圧力において必要な滞留時間を提供するリアクターまたは別の市販の器具である。選択されるデバイスは、必要な熱の導入を可能にしなければならず、かつ、連続的に増加する溶融粘度に適合するように組み立てられなければならない。
【0100】
全てのデバイスを、ポンプ、パイプおよびバルブを通じて互いに接続する。不必要に長い滞留時間を避けるために、全デバイス間のパイプは、もちろん、できるだけ短くなければならず、かつ、パイプにおけるベンドの数はできるだけ少なく保たなければならない。化学装置のアセンブリに関する外部の、すなわち、技術上の周辺条件および事項を考慮に入れるべきである。
【0101】
好ましい連続手順によるプロセスを行うために、反応物同士を共に溶融しても、固体ジヒドロキシアリール化合物をジアリールカーボネート溶融物に溶解しても、固体ジアリールカーボネートをジヒドロキシアリール化合物の溶融物に溶解してもよい。すなわち、二種類の原料を溶融形態で、好ましくはその製造から直接、一緒にする。個々の原料の溶融物の滞留時間、特にジヒドロキシアリール化合物の溶融物の滞留時間、はできるだけ短くする。一方、溶融物の混合物は、原料混合物の融点が個別の原料の融点と比較して低いために、対応する低い温度においてより長い時間、品質の低下なく保たれうる。
【0102】
その後、触媒、好ましくは好適な溶媒(例えばフェノール)に溶解されている触媒、を添加し、溶融物を反応温度に加熱する。
【0103】
本発明による方法の好ましい形態において、最後から二番目のリアクターと仕上げリアクターとの間のギアポンプを用いて溶融ストリームから部分ストリームを移し、この部分ストリームに少なくとも一種類の抑制剤を計量添加する。その直後に、この混合物を、強力混合のためのスタティックミキサーを通じてメインストリームに送り返す。流れの方向における入口の下流に、メインの溶融ストリームにおける均質分散を確実にする別のスタティックミキサーがあり、メインの溶融ストリームは次に最終リアクターに入る。残留モノマーの削減に使用される最終リアクター中で、温度260〜310℃、好ましくは265〜300℃、特に好ましくは270〜290℃かつ圧力0.01〜3mbar、好ましくは0.2〜2.5mbar、特に好ましくは0.4〜2mbarにおいて残留モノマーを減らす。最終リアクター中の充填レベルは、このプロセスに関して技術的に可能な限り低くする。最終リアクター−仕上げリアクターとも云う−における滞留時間は、数分〜数時間のオーダーであり、5〜180分が好ましく、特に好ましくは10〜150分、より特に好ましくは15〜120分である。残留モノマーを大部分蒸発させる最終リアクターにおいて起こりうるわずかな分子量増加は、残留モノマーを蒸発させた後に所望の最終分子量が正確に達成される程度まで注入分子量を小さくすることによって相殺される。ポンプデバイスを用いて完成ポリカーボネートを最終リアクターから排出し、必要であれば、既知の方法によって、その特性を改良する添加剤と共に提供する。完成ポリカーボネートは、押出物の形態で出され、冷却され、グラニュール化される。ポンプデバイスとしてギアポンプが一般的に使用される。代わりに、全く異なる構造のスクリューや特別の構造の排出ポンプを使用してもよい。
【0104】
本発明による方法、例えば2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA、BPA)とジフェニルカーボネート(DPC)とを互いに反応させてポリカーボネートを生じる方法、の特に好ましい形態を、以下に、限定を意図せず、一例として示す。
【0105】
この特に好ましい形態の開始時の反応温度は、180〜220℃、好ましくは190〜210℃、より特に好ましくは190℃である。滞留時間15〜90分、好ましくは30〜60分の場合、反応平衡は、生成するヒドロキシアリール化合物が取り除かれずに成立する。反応は、大気圧において行ってもよいが、技術的理由から、過剰圧力のもとでも行われうる。工業的装置における好ましい圧力は2〜15bar(絶対)である。
【0106】
圧力が100〜400mbar、好ましくは150〜300mbarに調節された第一真空チャンバーに溶融混合物を投入し、その直後に同じ圧力において好適なデバイスにおいて注入温度に再度加熱する。この投入操作中、生成するヒドロキシアリール化合物を依然として存在するモノマーと共に蒸発させる。同一圧力かつ温度における、任意にポンピングによる再循環を伴ってもよい排液受けにおける5〜30分の滞留時間の後、反応混合物を圧力50〜200mbar、好ましくは80〜150mbarの第二真空チャンバーに投入し、その直後に好適なデバイスにおいて同じ圧力において温度190〜250℃、好ましくは210〜240℃、特に好ましくは210〜230℃に加熱する。ここでも、生成するヒドロキシアリール化合物を依然として存在するモノマーと共に蒸発させる。同一圧力かつ温度における、任意にポンピングによる再循環を伴ってもよい排液受けにおける5〜30分の滞留時間の後、反応混合物を圧力30〜150mbar、好ましくは50〜120mbarの第三真空チャンバーに投入し、その直後に好適なデバイスにおいて同じ圧力において温度220〜280℃、好ましくは240〜270℃、特に好ましくは240〜260℃に加熱する。ここでも、生成するヒドロキシアリール化合物を依然として存在するモノマーと共に蒸発させる。同一圧力かつ温度における、任意にポンピングによる再循環を伴ってもよい排液受けにおける5〜20分の滞留時間の後、反応混合物を圧力5〜100mbar、好ましくは15〜100mbar、特に好ましくは20〜80mbarの別の真空チャンバーに投入し、その直後に好適なデバイスにおいて同じ圧力において温度250〜300℃、好ましくは260〜290℃、特に好ましくは260〜280℃に加熱する。ここでも、生成するヒドロキシアリール化合物を依然として存在するモノマーと共に蒸発させる。
【0107】
これらの段階の数(この場合、4)は、例えば、2〜6に変えてもよい。段階の数を変えると、同等の結果を得るために、それに応じて温度と圧力とが適応される。これらの段階で達成されるオリゴマーカーボネートの相対粘度は、1.04〜1.20、好ましくは1.05〜1.15、特に好ましくは1.06〜1.10である。
【0108】
最終フラッシュ/エバポレーター段階と同一の圧力かつ温度における、任意にポンピングによる再循環を伴ってもよい排液受けにおける5〜20分の滞留時間の後、そのように製造されたオリゴカーボネートをディスクリアクター(disk reactor)またはバスケットリアクターに供給し、250〜310℃、好ましくは250〜290℃、特に好ましくは250〜280℃、圧力1〜15mbar、好ましくは2〜10mbarにおいて滞留時間30〜90分、好ましくは30〜60分で更に縮合する。生成物は、相対粘度1.12〜1.28、好ましくは1.13〜1.26、特に好ましくは1.13〜1.24に達する。
【0109】
このリアクターを離れる溶融物を別のディスクリアクターまたはバスケットリアクターにおいて所望の最終粘度または最終分子量にする。温度は270〜330℃、好ましくは280〜320℃、特に好ましくは280〜310℃であり、圧力は0.01〜3mbar、好ましくは0.2〜2mbarであり、滞留時間は60〜180分、好ましくは75〜150分である。相対粘度は意図する用途に必要なレベルに調節され、1.18〜1.40、好ましくは1.18〜1.36、特に好ましくは1.18〜1.34である。
【0110】
そのようにして得られるポリカーボネートは、理想的には、ジフェニルカーボネート(DPC)350ppm未満、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(BPA)40ppm未満およびフェノール150ppm未満、好ましくはDPC300ppm未満、BPA30ppm未満およびフェノール100ppm未満、特に好ましくはDPC250ppm未満、BPA20ppm未満およびフェノール80ppm未満、より特に好ましくはDPC200ppm未満、BPA15ppm未満およびフェノール70ppm未満を含む。
【0111】
二つのバスケットリアクターの機能を一つのバスケットリアクターに組み合わせてもよい。
【0112】
全処理段階の蒸気を迅速に取り除き、収集し、かつ、ワークアップする(work up)。このワークアップは、高純度の回収物質を得るために、一般的には、蒸留によって行われる。これは、例えば、DE−A 10100404に従って行われうる。経済的かつ環境的な視点から、高純度の形態で分離されたモノヒドロキシアリール化合物の回収および単離は明白である。このモノヒドロキシアリール化合物は、ジヒドロキシアリール化合物やジアリールカーボネートの製造に直接使用されうる。
【0113】
ディスクリアクターまたはバスケットリアクターは、長い滞留時間で、真空において頻繁に新しくされる非常に広い表面積を提供するという事実が認められている。ジオメトリーに関して、ディスクリアクターまたはバスケットリアクターは生成物の溶融粘度に従って作られる。例えばDE 4447422C2およびEP−A 1253163に記述されているようなリアクター、またはWO−A 99/28370に記述されているようなツインシャフトリアクター(twin−shaft reactor)が好適である。
【0114】
上記特に好ましい形態の本発明による方法は、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA、BPA)以外のジヒドロキシアリール化合物またはジアリールカーボネートとジフェニルカーボネート(DPC)との反応にも適用されうる。個々の処理段階における温度および圧力設定の適応も任意に必要でありうる。
【0115】
オリゴカーボネート(非常に低分子量のオリゴカーボネートを含む)と完成ポリカーボネートとは、一般的には、ギアポンプ、さまざまなタイプのスクリューまたは特別なタイプの排出ポンプによって運搬される。
【0116】
器具、リアクター、パイプ、ポンプおよび取り付け部品の製造に特に好適な材料は、CrNi(Mo)18/10タイプのステンレス鋼、例えば1.4571または1.4541(Stahlschluessel 2001,Verlag:Stahlschluessel Wegst GmbH,Th−Heuss−Strasse 36,D−71672 Marbach)、およびNiベースの合金タイプC、例えば2.4605または2.4610(Stahlschluessel 2001,Verlag:Stahlschluessel Wegst GmbH,Th−Heuss−Strasse 36,D−71672 Marbach)である。ステンレス鋼は、処理温度約290℃以下で使用され、Niベースの合金は約290℃を超える処理温度において使用される。
【0117】
重要な処理パラメータ、例えばこの処理の開始時点におけるジアリールカーボネート対ジヒドロキシアリール化合物の比、圧力、温度および滞留時間、は、最終リアクターまたは仕上げリアクターの前の装置全体を通じて、製造される製品の意図する用途に十分な分子量および特定のOH末端基含量が反応溶融物が最終リアクターまたは仕上げリアクターに入る前に達成されるように選択される。最終分子量は、実質的に、リアクターの選択出口温度、圧力およびOH末端基濃度に依存する。従って、これらの条件は、最後から二番目のリアクターにおいて所望の最終製品が製造されるように選択される。平均重量平均分子量Mは、40,000g/molを超えず、好ましくは36,000g/molを超えず、かつ、特に好ましくは30,000g/molを超えないMが得られるように調節される。ポリカーボネート中のOH末端基の含量は、好ましくは150ppm超、特に好ましくは200ppm超、より特に好ましくは250ppm超である。OH末端基含量150〜750ppm、好ましくは150〜600ppm、特に好ましくは200〜550ppm、より特に好ましくは250〜500ppmが特に好ましい。
【0118】
残留モノマー含量を低くするために、溶融物は、反応を停止するために、仕上げリアクターの前に、好ましくは最後から二番目のリアクターと最終リアクターとの間に、または脱ガス器具の前に、少なくとも一種類の上記好適な抑制剤と徹底的に混合されるべきである。次に、モノマーは、仕上げリアクター(または脱ガス器具)において蒸発されうる。
【0119】
本発明による方法によって製造されるポリカーボネートは、特に要すれば書換可能型であってもよい、被覆性および濡れが良好であり、かつ、汚染傾向が低い光学データキャリアに好適である。加えて、ポリカーボネートの成形品や押出品への加工中に金型や対応する成形品や押出品に沈着がほとんど起こらない。
【0120】
本発明による方法によって製造されるポリカーボネートは、更に、電場強度の値が驚くほど低い射出成形品の製造に好適である。イオナイザーを使用しない既知の射出成形法によって製造される射出成形品に関して、許容可能な範囲、例えば、−18kV/m〜+18kV/m、の電場強度の値が達成可能である。
【0121】
そのようなポリカーボネートは、今まで、溶融エステル交換法によって入手可能でなく、文献に記述されていなかった。
【0122】
従って、本発明は、更に、本発明による方法で製造されるポリカーボネートも提供する。
【0123】
これらのポリカーボネートは、好ましくはフェノール性OH末端基含量が150ppm超、好ましくは200ppm超、特に好ましくは250ppm超である。
【0124】
OH末端基の量は、OH末端基のNMR測定、IR測定またはオンラインIR測定によって決定されうる。OH末端基の測定は、測光法(photometry)によっても行われうる。IR法および測光法は、Horbach,A.;Veiel,U.;Wunderlich,H.,Makromolekulare Chemie 1965年,第88巻,215〜231頁に記述されている。フェノール性OH基の含量に関して与えられる本発明の範囲内の値は、IR測定によって決定された。
【0125】
溶融エステル交換法によって製造される常套のポリカーボネートの射出成形体は、射出成形品の表面に高い電場を形成する特性を有する。従って、例えば、このポリカーボネートで作られた光学データ記憶媒体用のディスクは、その射出成形法による製造中に高い電場を形成する。光学データ記憶媒体の製造中、基材におけるこの高い場の強度は、例えば、ダストが環境から誘引されることや、射出成形品、例えばディスク、が互いに付着することをもたらし、このことは、完成射出成形品の品質を低下させ、更に、射出成形法をより困難にする。
【0126】
更に、帯電、特にディスク(光学データキャリア用)の帯電、は、濡れ性、特に非極性媒体、例えば非極性染料、に対する濡れ性や溶媒(例えばジブチルエーテル、エチルシクロヘキサン、テトラフルオロプロパノール、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンまたはオクタフルオロプロパノール)からの染料の適用の不足をもたらす。例えば、染料適用中の基材表面における高い電荷は、書き込み可能なデータ記憶媒体の場合、例えば染料での不規則かつ不完全なコーティングをもたらし、従って、情報層に欠陥をもたらす。
【0127】
本発明によるポリカーボネートが、特定の電場強度(特定の製造時間の後に基材表面から所定の距離において、かつ、所定の温度および湿度において測定する。)を超えない射出成形品を生じるのに特に好適であることが示された。許容可能なコーティング挙動を達成するために、2時間の連続射出成形プロセス後に±18kV/mを超えないことが望ましい。本発明によるポリカーボネートに関して達成される値は、好ましくは、2時間の連続射出成形プロセス後に−18〜+18kV/mである。電場強度の値は、一般的に、一時間以内に落ち着き、その後、単位時間当たり、わずかにしか変化しないか、または全く変化しない。本発明による基材に関する上記電場強度の値は、更に、イオナイザーを使用せずに達成されうるので、ポリカーボネートの更なる加工中のイオナイザーの使用が大幅に減る。
【0128】
電場強度に関して上記特性を有するポリカーボネートの射出成形体、例えば光ディスク、は、染料での良好な被覆性が認められる。このことは、欠陥のない書込可能層の適用、従って、問題のない製造プロセスを確実にするのに重要である。このことは常套の基材と比較して不良率の著しい削減をもたらす。
【0129】
対応する基材の表面電荷によって引き起こされる電場強度は、射出成形体のジオメトリーおよび寸法および射出成形法の性質に依存する。従って、完成射出成形体、例えば光学データキャリア用のディスク、における電場強度を測定することが必要である。
【0130】
低い電場強度の値は、本発明によるポリカーボネートにおける比較的高いフェノール性OH基含量の観点から特に意外である。
【0131】
ポリカーボネートの重量平均分子量は、一般的に、M=10,000〜40,000g/mol、好ましくは15,000〜36,000g/mol、特に好ましくは18,000〜35,000g/molである。分子量の重量平均は、Mark−Houwink相関による極限粘度によって決定される(G.V.Schulz,H.Horbach,Makromol.Chem.1959,29,93)。極限粘度は、25℃におけるポリカーボネートの塩化メチレン溶液の粘度をDIN EN ISO 1628に従ってUbbelohdeキャピラリー粘度計を用いて決定すると得られる。Mark−Houwink方程式を用いて、ポリカーボネートの分子量の重量平均を、[η]=K×Mα([η]:極限粘度;K:11.1×10−3ml/g;α:0.82)に従って得る。
【0132】
ポリカーボネートは、更に、好ましくは、塩のような不純物の含量が非常に低い。塩のような不純物から生じるアルカリまたはアルカリ土類金属イオンの量(原子吸光分光法によって決定する。)は、60ppb未満、好ましくは40ppb未満、特に好ましくは20ppb未満でなければならない。塩のような不純物は、例えば、使用される原料由来の不純物、ホスホニウム塩およびアンモニウム塩から生じうる。別のイオン、例えばFe、Ni、Cr、Zn、Sn、Mo、Alイオンおよびそれらの類似物は、原料に含まれるかまたは使用される装置の材料からの磨耗もしくは腐蝕によって生じうる。これらのイオンの総計は、2ppm未満、好ましくは1ppm未満、特に好ましくは0.5ppm未満である。
【0133】
アニオンとして、無機酸および有機酸のアニオンが当量、存在する(例えば、クロリド、スルフェート、カーボネート、ホスフェート、ホスファイト、オキサレートなど。)。
【0134】
ごく少量のそのようなカチオンとアニオンが望ましく、従って、できるだけ純粋な原料を使用することが有利である。そのような純粋な原料は、部分的に汚染された工業原料から、例えば、その使用前の更なる精製操作によって、例えば再結晶、蒸留、洗浄を伴う沈殿などによって、得られる。
【0135】
本発明によるポリカーボネートは、更に、特性を変えるための別の常套の添加剤および添加物質(例えば、補助物質および強化物質)と共に提供されうる。添加剤および添加物質の添加は、耐用年数を延ばすこと(例えば加水分解安定剤または崩壊安定剤(degradation stabilizers))、色安定性を改良すること(例えば熱安定剤および紫外線安定剤)、加工を平易にすること(例えば離型剤、流動性改良剤)、使用における特性を改良すること、耐燃性を改良すること、視覚的印象に影響を及ぼすこと(例えば有機着色剤、顔料)、またはポリマーの特性を特定のストレスに適合させること(耐衝撃性改良剤、微細鉱物、繊維材料、石英粉末、グラスファイバーおよびカーボンファイバー)に役立つ。そのような添加物質および添加剤は、例えば、“Plastics Additives”,R.Gaechter and H.Mueller,Hanser Publishers 1983年に記述されている。
【0136】
防炎加工剤、離型剤、紫外線安定剤、熱安定剤の量は、芳香族ポリカーボネートに関する技術の当業者に知られている方法で選択される。しかしながら、最初に記述した理由のために、使用される添加剤の量は、できるだけ少なく保たなければならない。そのような添加剤の例は、ステアリン酸および/またはステアリルアルコールベースの離型剤、特に好ましくはペンタエリトリトールステアレート、トリメチロールプロパントリステアレート、ペンタエリトリトールジステアレート、ステアリルステアレートおよびグリセロールモノステアレート、並びに常套の熱安定剤である。
【0137】
望ましい特性を得るために、異種添加剤を互いに組み合わせてもよい。これらの添加剤および添加物質は、ポリマー溶融物に、単独で、または任意の所望の混合物で、または複数の異種混合物で、ポリマーの単離中に直接添加されても、グラニュールの溶融後に、いわゆる配合工程において添加されてもよい。
【0138】
添加剤および添加物質、またはそれらの混合物は、ポリマー溶融物に、固体の形態で、すなわちパウダーの形態で、添加されても、溶融物の形態で添加されてもよい。別のタイプの計量添加は、マスターバッチ、すなわち添加剤または添加物質と、ポリマー、好ましくはポリカーボネート、と、の混合物、であって、配合によってホモジナイズされた混合物、または添加剤もしくは添加剤混合物のマスターバッチの混合物の使用である。
【0139】
これらの物質の添加は、好ましくは、完成ポリカーボネートに常套のデバイスにおいて行われる。
【0140】
好適な添加剤は、例えば、Additives for Plastics Handbook,John Murphy,Elsevier,Oxford 1999年またはPlastics Additives Handbook Hans Zweifel,Hanser,ミュンヘン2001年に記述されている。
【0141】
本発明によるポリカーボネートは、透明射出成形部品、特に被覆される射出成形部品、例えば透明シート、レンズ、光学記憶媒体もしくは光学記憶媒体用キャリア、または自動車のグレージング領域の物品、例えば光拡散プレート、用の基材として著しく好適である。従って、本発明によるポリカーボネートから、特に光学記憶媒体または光学記憶媒体用キャリア、例えば、書き込み可能な光学データ記憶媒体、であって被覆性および濡れ性が良好であり、かつ、例えば溶液、特に非極性媒体、からの染料の適用に好適であるもの、を製造することが可能である。加えて、これらのポリカーボネートから製造される光学射出成形部品は汚染の傾向が低い。
【0142】
従って、本発明は、更に、本発明によるポリカーボネートから製造される成形品または押出品、例えば書き込み可能な光学データ記憶手段用のディスクまたは自動車グレージング分野の材料、例えば光拡散プレート、も提供する。
【0143】
以下の実施例は、本発明を限定することを意図せずに、一例として説明する役割を果たす。
【実施例】
【0144】
相対溶液粘度:
相対溶液粘度を、ジクロロメタン中で25℃において濃度5g/lで決定した。
【0145】
フェノール性OH末端基含量:
フェノール性OH末端基含量をIR測定によって得た。このために、純粋なジクロロメタンと比較したジクロロメタン50ml中のポリマー2gの溶液の示差測定を行い、3582cm−1における吸光度の差を決定した。
【0146】
コーティング試験:
コーティング試験は、コーティング形成に関して対応する射出成形法における材料の挙動をシミュレートする。コーティング試験は、以下のように行った。
【0147】
ポリマーグラニュール20gを120℃において4時間乾燥し、次に直径80mmのアルミニウムの小皿に置いた。次にこの小皿を、電気的に300℃に加熱された直径85mmかつ深さ50mmの円形凹部を有する金属ブロックに置いた。
【0148】
金属ブロックの凹部を厚さ0.03mmのアルミホイルで覆い、次に冷却性金属ブロックをその背面から適用した。この金属ブロックは、温度約20℃の水が流れる冷却チャネルを備える。
【0149】
測定時間(これは4時間である。)の間、グラニュールから蒸発する揮発性成分がアルミホイルに凝縮する。測定を行うとき、アルミホイルがサンプルチャンバーを外側に対して効果的にシールすることを確実にしなければならない。
【0150】
次に試験器具を周囲温度に冷却した。周囲温度に到達すると、アルミホイルを除去し、微量天秤で重量測定した。試験の前後のホイルの重さの差から凝縮物の量を決定した。コーティング値は、ホイルに凝結したコーティングの重量対存在するグラニュールのもとの重量である。
【0151】
電場強度の測定:
本発明による方法の影響を、完成射出成形部品(この場合、ディスクである。)の電場強度の測定を用いてチェックした。これらの光ディスクの製造に関して以下の射出成形パラメータおよび条件を定めた。
マシーン:Netstal Discjet
マトリクス:オーディオスタンパー(audio stamper)
サイクル時間:4.4秒
組成物の温度:310〜330℃
基材寸法:オーディオCD
金型温度、マトリクス側:60℃
【0152】
射出成形プロセスの開始前に、新しいオーディオスタンパーをマシーンに挿入した。新しいスタンパーを挿入する前に、全射出成形装置から前の材料を取り除いて測定値が歪められないようにした。
【0153】
Eltec製のフィールドメーター(EMF 581230)を使用して電場強度を測定した。射出成形プロセスの終了直後に、ロボットアームを用いてディスクを取り出し、置いた。ディスクは、金属と接触させなかった。なぜなら、そうでなければ測定値が損なわれるからである。更に、存在するイオナイザー全てのスイッチを切らなければならなかった。
【0154】
フィールドメーターをディスクの水平面から100mmの距離でディスク上に配置した。ディスクの内側のエッジ(inside edge)からのフィールドメーターの距離は29mmであり、かつ、書込可能面の中心上に方向を合わせた。ディスクを動かさなかった。従って、射出成形プロセスの完了に続いて、場の測定を3〜10秒間行った。
【0155】
測定デバイスをx/yプロッターに接続し、これによって値をプリントアウトした。従って、電場の特定の積分値をそれぞれの測定ディスクに与えた。データの量を制限するために、プロセスの開始後に測定を100回行った。すなわち、最初の100枚のディスクの表面における対応する電場強度を記録した。それぞれ60分後に、更に100回測定を行った。3回目の一連の測定後、すなわち、約2時間後に、測定を終えた。
【0156】
測定を行うとき、更に、測定中の湿度が20〜50%であり、かつ、室温が22〜28℃であることを確実にした。
【0157】
実施例1(比較例)
レシーバから、ジフェニルカーボネート3741kg/時間(17.45kmol/時間)およびビスフェノールA3759kg/時間(16.47kmol/時間)を含有する溶融混合物7500kg/時間と、更に、触媒混合物4.19kg/時間とを、熱交換器を通じてポンプで押し出し、190℃に加熱し、12barかつ190℃において滞留カラムの中を通した。平均滞留時間は50分であった。触媒混合物は、フェノール4.5kgに溶解されたテトラフェニルホスホニウムフェノラートのフェノール付加物(テトラフェニルホスホニウムフェノラート65.5wt.%、0.786molを含む。)0.52kgからなっていた。
【0158】
次に溶融物を圧力200mbarのもとで安全弁を通じてセパレータに通した。流れる溶融物を、流下液膜式蒸発器の中で同様に圧力200mbarのもとで再度200℃に加熱し、レシーバに収集した。滞留時間20分の後に、溶融物を次の三つの段階(これらは同じ構成である。)にポンプで押し出した。第2/第3/第4段階における圧力、温度および滞留時間の条件は、90/70/40mbar、223/252/279℃および20/10/10分であった。蒸気を全て圧調節器を通じて真空のカラムに導き、凝縮液の形態で排出した。
【0159】
次に、オリゴマーを次のバスケットリアクター中で280℃かつ4.7mbarにおいて、滞留時間45分で縮合して、相対粘度が1.195の高分子量生成物を生じた。蒸気は凝縮した。
【0160】
ギアポンプを用いて溶融物の部分ストリーム150kg/時間を溶融ストリームからそらし、これを別のバスケットリアクターに導き、この部分ストリームに1,2,3−プロパントリオールトリス(4−ベンゼンスルホネート)2.0g/時間を添加し、この混合物を長さ対直径の比が20のスタティックミキサーの中を通してメインの溶融ストリームに戻した。一緒にした直後に、1,2,3−プロパントリオールトリス(4−ベンゼンスルホネート)を別のスタティックミキサーを用いて溶融ストリーム全体に均質に分散させた。そのように処理された溶融物を別のバスケットリアクターの中で294℃、0.7mbarかつ平均滞留時間130分で更に処理条件に曝した。次に、この溶融物に液体の形態のグリセロールモノステアレート(これは離型剤の役割を果たす。)250ppm、並びに熱安定剤としてのトリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(CAS:78−42−2)50ppmを添加し、次にこの溶融物を排出し、グラニュール化した。
【0161】
光学成形品(ディスク)の製造および電場強度の測定を、上記のように行った。この目的を達成するために、生じるグラニュールを6時間乾燥し、次にNetstal Discjet射出成形マシーン(上記参照。)を用いてサイクル時間4.4秒で上に示すパラメータのもとでディスクに加工した。オーディオスタンパーをマトリクスとして使用した。最初の100枚のディスクの電場を上記のようにフィールドメーターを使用して測定した。一時間後、別の100枚のディスクを連続して測定した。射出成形プロセスは中断しなかった。更に一時間後、100枚のディスクを同様に連続して測定した。評価のために、二時間の連続射出成形プロセス後の最後の100枚のディスクの測定値を使用した。
【0162】
最後の100枚(2時間の射出成形プロセス後)のディスクの電場強度の平均値は−25.0kV/mであった。
【0163】
コーティング試験は、0.0967wt.%の凝縮物を生じた。
【0164】
フェノール性OH基含量:470ppm
【0165】
このポリマーの極限粘度は、36.5である。これは、およそ分子量M=19,450g/molに相当する。
【0166】
実施例2(比較例)
仕上げリアクターの前に1,2,3−プロパントリオールトリス(4−ベンゼンスルホネート)2ppmを添加したこと以外、実施例1の手順に従った。加えて、実施例1と異なり、最終バスケットリアクター、すなわち最終処理工程、の後に、更に1,2,3−プロパントリオールトリス(4−ベンゼンスルホネート)10ppmを材料に添加した。次にこの混合物を紡糸し、グラニュール化した。
【0167】
ディスクの製造および電場強度の測定を上記のように行った。
【0168】
最後の100枚(2時間の射出成形プロセス後)のディスクの電場強度の平均値は−24.6kV/mであった。
【0169】
コーティング試験は、0.0957wt.%の凝縮物を生じた。
【0170】
フェノール性OH基含量:500ppm
【0171】
このポリマーの極限粘度は、35.4である。これは、およそ分子量M=18,740g/molに相当する。
【0172】
実施例3(本発明による)
最終バスケットリアクター、すなわち、最終処理工程、の後に材料にサリチル酸300ppmを添加したこと以外、実施例1の手順に従った。次に、この混合物を紡糸し、グラニュール化した。
【0173】
ディスクの製造および電場強度の測定を上記のように行った。
【0174】
最後の100枚(2時間の射出成形プロセス後)のディスクの電場強度の平均値は−15.8kV/mであった。
【0175】
コーティング試験は、0.0974wt.%の凝縮物を生じた。
【0176】
フェノール性OH基含量:470ppm
【0177】
このポリマーの極限粘度は、36.3である。これは、およそ分子量M=19,320g/molに相当する。
【0178】
実施例4(本発明による)
最終バスケットリアクター、すなわち、最終処理工程、の後にアセチルサリチル酸100ppmを材料に添加したこと以外、実施例1の手順に従った。次に、この混合物を紡糸し、グラニュール化した。
【0179】
ディスクの製造および電場強度の測定を上記のように行った。
【0180】
最後の100枚(2時間の射出成形プロセス後)のディスクの電場強度の平均値は−11.1kV/mであった。
【0181】
コーティング試験は、0.089wt.%の凝縮物を生じた。
【0182】
フェノール性OH基含量:470ppm
【0183】
このポリマーの極限粘度は、36.1である。これは、およそ分子量M=19,190g/molに相当する。
【0184】
実施例5(本発明による)
最終バスケットリアクター、すなわち最終処理工程、の後にアセチルサリチル酸300ppmを材料に添加したこと以外、実施例1の手順に従った。次に、この混合物を紡糸し、グラニュール化した。
【0185】
ディスクの製造および電場強度の測定を上記のように行った。
【0186】
最後の100枚(2時間の射出成形プロセス後)のディスクの電場強度の平均値は+9.0kV/mであった。
【0187】
コーティング試験は、0.0963wt.%の凝縮物を生じた。
【0188】
フェノール性OH基含量:460ppm(wt.)
【0189】
このポリマーの極限粘度は、36.0である。これは、およそ分子量M=19,130g/molに相当する。
【0190】
実施例6(本発明による)
最終バスケットリアクター、すなわち、最終処理工程、の後に5,5−メチレンビス(サリチル酸)100ppmを材料に添加したこと以外、実施例1の手順に従った。次に、この混合物を紡糸し、グラニュール化した。
【0191】
ディスクの製造および電場強度の測定を上記のように行った。
【0192】
最後の100枚(2時間の射出成形プロセス後)のディスクの電場強度の平均値は+10.0kV/mであった。
【0193】
上記本発明による実施例は、意外なことに、比較例と比較して著しく低い帯電を示し、更なる添加剤にもかかわらず、ディスクへの沈着が比較的少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種類の触媒を用いて、少なくとも一種類のジヒドロキシアリール化合物を少なくとも一種類のジアリールカーボネートと多段階法において反応させる溶融エステル交換法によるポリカーボネートの製造方法であって、最終反応段階の前に少なくとも一種類の抑制剤を溶融物に添加し、かつ、一種類以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸またはそれらの誘導体を最終反応段階中または最終反応段階後に添加することを特徴とする、ポリカーボネートの製造方法。
【請求項2】
該芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体が一般式(VI)、(VII)または(VIII)
【化1】

(式中、
、R1’ は、互いに独立して、Hまたは直鎖、環状もしくは分枝C〜C10−アルキル、C〜C34−アラルキル基または直鎖、環状もしくは分枝C〜C10ヒドロキシアルキル基、好ましくはHまたは直鎖もしくは分枝C〜C−アルキル基または直鎖C〜C−ヒドロキシアルキル基であり、
、R2’ は、互いに独立して、直鎖もしくは分枝C〜C10−アルキル、C〜C34−アラルキル基、好ましくは直鎖もしくは分枝C〜C−アルキル基であり、
、R3’ は、互いに独立して、H、直鎖もしくは分枝C〜C10−アルキルカルボニルまたはC〜C34−アリールカルボニル基、好ましくはHまたはメチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、フェニルカルボニル、ブチルカルボニル基、より特に好ましくはHまたはメチルカルボニル基であり、
は、Hまたは直鎖もしくは分枝C〜C10−アルキル、C〜C34−アラルキル基または直鎖もしくは分枝C〜C10−ヒドロキシアルキル基、好ましくはHまたは直鎖もしくは分枝C〜C−アルキル基または直鎖C〜C−ヒドロキシアルキル基であり、
l は、1または2、好ましくは1であり、
n は、0または1〜3の整数、好ましくは0または1であり、
m は、1または2、好ましくは1であり、
Y は、1〜8個の炭素原子および/またはヘテロ原子からなる二価の基、好ましくは−C(R)(R)−、−(CR−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−(C=O)−、−O(C=O)O−、−O−C(R)O−、特に好ましくは−C(R)(R)−(式中、RおよびRは、互いに独立して、C〜C10−アルキル基、好ましくはC〜C−アルキル基、特に好ましくはメチルである。)であり、かつ、
X は、C〜C10−アルキル、C〜C10−アルキルフェニルまたはフェニル基、特に好ましくはフェニル基である。)
の一種類以上の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体が、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジイソプロピルサリチル酸、5,5−メチレンジサリチル酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチルエステル、サリチル酸2−エチルヘキシルエステルおよびサリチル酸n−ブチルエステルから選択される一種類以上の化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該抑制剤が硫黄含有酸、有機硫黄含有酸のエステルまたはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜3の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項5】
ジヒドロキシアリール化合物として、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アリール、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらの環アルキル化化合物および環ハロゲン化化合物の群から選択される一種類以上の化合物を使用することを特徴とする、請求項1〜4の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
ジアリールカーボネートとして、一般式(II)
【化2】

(式中、
R、R’、R’’ は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールであり、Rは、更に、−COO−R’’’であってもよく、R’’’は、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールである。)
の一種類以上の化合物を使用することを特徴とする、請求項1〜5の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項7】
触媒として、アルカリ、アルカリ土類およびオニウム塩、好ましくはオニウム塩、の群から選択される一種類以上の化合物を使用することを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7の少なくとも一項に記載の方法によって得られ、かつ、フェノール性OH末端基含量が150ppm超である、ポリカーボネート。
【請求項9】
請求項8に記載のポリカーボネートから得られる成形品または押出品。
【請求項10】
請求項8に記載のポリカーボネートから得られる光学データ記憶媒体または光拡散プレート。

【公表番号】特表2010−526920(P2010−526920A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507825(P2010−507825)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003632
【国際公開番号】WO2008/138517
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】