説明

溶融システムにおける処理方法

【課題】シュート等の劣化を抑制しつつスラグによる出滓口の閉塞を抑えることのできる溶融システムの処理方法を提供する。
【解決手段】吸引手段70により溶融部12から排出される高温ガスの一部を還流路60を通して溶融部12または二次燃焼部14に戻すガス吸引工程と、検出されたシュート20内のガス温から予測される出滓口12a付近のガス温が基準温度以上であるかどうかを判定する温度判定工程とを実施し、出滓口12a付近のガス温が基準温度未満であると判定された場合には、吸引手段70の吸引力を増大させる吸引力増大工程を実施するとともに、出滓口12a付近のガス温が前記基準温度以上であると判定され、かつ、出滓口12aにスラグが固着している場合には、溶融部12内に塩基度調整剤を投入することと、燃焼器により燃焼エネルギーをスラグに供給して加熱することの少なくとも一方を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を処理するための溶融部を備えた溶融システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物を処理するものとして、廃棄物が熱分解されることにより発生する熱分解ガス中の灰分を溶融してスラグを生成する溶融部を備えた溶融炉が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、廃棄物やこの廃棄物の焼却灰を溶融させてスラグを生成する溶融部と、この溶融部の下端に設けられた出滓口から下方に延びて内側を前記溶融部から排出されたスラグが流下するシュートとを備えた溶融炉が開示されている。この溶融炉では、前記シュートの前記出滓口よりも下方の部分に前記溶融部内の高温のガスを引き抜くための引き抜き部が設けられている。そして、前記溶融部から排出された高温のガスをこの引き抜き部に向かわせて前記出滓口付近において前記スラグと接触させることで、出滓口付近におけるスラグの温度を高く維持してこのスラグの固着を抑制している。さらに、この溶融炉では、前記引き抜き部に流入するガス量を調整して、前記シュート内の部分の温度を所定温度以上とする処理が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3076010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記スラグの溶融点あるいは粘性は、前記溶融部で処理される廃棄物の性状によって異なる。そのため、前記従来の処理方法のように、単に、前記シュート内の温度を所定温度以上とする方法では、この温度の設定によってはスラグの固着を十分に抑制できず、固着したスラグが出滓口を閉塞するおそれがある。スラグが出滓口を閉塞すると、この固着したスラグを除去するために溶融炉の運転を停止せねばならず、運転効率が悪化する。ここで、この温度を非常に高い温度に設定すれば、スラグの固着は抑制されるが、高温に晒されることで前記シュートや引き抜き部が劣化するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、シュート等の劣化を抑制しつつスラグによる出滓口の閉塞を抑えて運転効率を高く維持することのできる溶融システムの処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、廃棄物の熱分解ガス中の灰分を燃焼溶融させてスラグを生成するとともに下流端に形成された出滓口から前記スラグを排出する溶融部と、前記出滓口から下方に延びてこの出滓口から流下するスラグを囲む形状を有するシュートと、前記出滓口が形成された前記溶融部の下流端に連設されて前記溶融部から排出される排ガスが導入されて当該排ガスが内側で燃焼する二次燃焼部とを備えた溶融システムにおける処理方法であって、前記溶融部から排出される排ガスの一部が前記出滓口から前記シュート内に流入するように、吸引手段を用いて、前記シュートと前記溶融部または前記二次燃焼部とを連通する還流部内に前記シュート内のガスを吸引するとともに、当該吸引した排ガスを前記還流部を通して前記溶融部または前記二次燃焼部に戻すガス吸引工程と、前記シュートのうち前記出滓口よりも下方かつ当該シュートと前記還流部との連通部分よりも上方の部分に設けられてこの部分を通過するガスの温度を検出可能な温度検出手段の検出値から予測される前記出滓口付近のガスの温度が、予め設定された基準温度以上であるかどうかを判定する温度判定工程と、前記温度判定工程後であって、当該温度判定工程にて前記出滓口付近のガスの温度が前記基準温度未満であると判定された場合に実施されて、当該出滓口付近のガスの温度が前記基準温度以上となるように前記吸引手段の吸引力を増大させる吸引力増大工程と、前記温度判定工程後であって、当該温度判定工程にて前記出滓口付近のガスの温度が前記基準温度以上であると判定され、かつ、前記出滓口付近に前記スラグが固着している場合に実施されて、前記固着したスラグを溶融させる固着スラグ溶融工程とを含み、前記固着スラグ溶融工程では、前記溶融部内に塩基度調整剤を投入して前記固着したスラグが溶融するように当該スラグの塩基度を調整することと、前記出滓口付近に設けられた燃焼器を用いて前記出滓口付近に固着したスラグに当該スラグを溶融可能な燃焼エネルギーを供給してこのスラグを加熱することの少なくとも一方が実施されることを特徴とする溶融システムにおける処理方法を提供する。
【0008】
この方法によれば、前記シュートおよび還流部の早期の劣化が抑制されつつスラグによる出滓口の閉塞が抑えられて運転効率が高く維持される。
【0009】
すなわち、この方法では、吸引手段による吸引力により、前記溶融部から排出される高温の排ガスの一部が前記出滓口から前記シュート内に流入しており、前記出滓口付近において前記スラグが高温ガスとの接触により高温に維持されて、このスラグの出滓口付近における固着が抑制される。特に、出滓口付近のガスの温度が基準温度未満であると判定された場合には、当該出滓口付近のガスの温度が前記基準温度以上となるように吸引手段の吸引力が増大されており、出滓口付近におけるスラグがより確実に高温に維持される。
【0010】
しかも、前記出滓口付近のガスの温度が前記基準温度以上であるにも関わらず前記出滓口付近においてスラグが固着している場合には、前記出滓口付近のガスの温度がさらに高められることなく、前記溶融部内に塩基度調整剤が投入される、あるいは、燃焼器によりスラグが加熱されて、これらにより固着したスラグが除去されるため、前記シュートおよび還流部が過剰な高温のガスに晒されることで早期に劣化するのが抑えられつつスラグによる出滓口の閉塞が抑えられる。
【0011】
本発明において、前記固着スラグ溶融工程では、前記溶融部内に前記塩基度調整剤を投入し、この投入した塩基度調整剤の量が予め設定された基準量以上であり、かつ、前記出滓口付近に前記スラグが固着している場合のみに、前記燃焼器を用いて前記出滓口付近に固着したスラグを加熱するのが好ましい(請求項2)。
【0012】
この構成では、前記塩基度調整剤が予め設定された基準量以上投入され、かつ、前記出滓口に前記スラグが固着している場合にはじめて、燃焼器によりスラグが加熱されており、塩基度調整剤により固着したスラグの除去が可能な場合は、前記燃焼器は駆動されない。従って、燃焼器の過度の駆動が抑制されて、この駆動のために必要なエネルギーが少なく抑えられる。このことは、コストを低減するとともに燃焼器の早期劣化および燃焼ガスの過度の供給に伴う前記出滓口付近の早期劣化を抑制する。
【0013】
また、本発明において、前記温度判定工程の前に、前記スラグの塩基度を調整するための塩基度調整剤を前記溶融部内に投入する塩基度調整剤投入工程が実施され、前記温度判定工程は、前記塩基度調整剤投入工程において前記溶融部内に投入された前記塩基度調整剤が予め設定された基準量以上であり、かつ、前記出滓口付近に前記スラグが固着している場合のみに実施され、前記固着スラグ溶融工程では、前記燃焼器を用いて前記出滓口付近に固着したスラグを加熱することのみが実施されるのが好ましい(請求項3)。
【0014】
この構成では、前記温度判定工程およびこの温度判定工程後に実施される前記吸引力増大工程および燃焼器によるスラグの加熱が、前記塩基度調整剤が予め設定された基準量以上投入され、かつ、前記出滓口に前記スラグが固着している場合にはじめて実施されており、塩基度調整剤により固着したスラグの除去が可能な場合は、吸引手段の吸引力は増大されず、前記燃焼器も駆動されない。従って、吸引手段の吸引力を増大するため、および、燃焼器を駆動するために必要なエネルギーが少なく抑えられる。このことは、コストを低減するとともに燃焼器の早期劣化および燃焼ガスの過度の供給に伴う前記出滓口付近の早期劣化を抑制する。
【0015】
本発明において、前記塩基度調整剤は、その少なくとも一部が前記溶融部から排出されたガスとともに前記二次燃焼部内に流入するように、前記溶融部のうち前記出滓口の上方部分から当該溶融部内に投入されるのが好ましい(請求項4)。
【0016】
前記溶融部で生成されたスラグの一部は、この溶融部の下流に設けられた前記二次燃焼部側にも流入する。そして、前記二次燃焼部の上流端であって前記出滓口が形成された前記溶融部の下流端に接続される部分の温度は、前記溶融部の温度よりも低く、前記スラグはこの二次燃焼部の上流端付近において固着しやすい。これに対して、この方法では、塩基度調整剤が前記二次燃焼部内に流入されて、この二次燃焼部内で固着したスラグが効果的に除去されるため、前記スラグによる前記出滓口の閉塞がより確実に抑えられる。
【0017】
また、本発明は、前記温度判定工程後であって、当該温度判定工程にて前記出滓口付近のガスの温度が予め設定された最大温度以上であると判定された場合のみに実施されて、前記還流部内に吸引されるガス量が減少するように前記吸引手段の吸引力を減少させる吸引力減少工程を含むのが好ましい(請求項5)。
【0018】
このようにすれば、前記シュートおよび還流部内のガス温度が過剰に高くなるのがより確実に抑制される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、シュートおよび還流部等の劣化を抑制しつつスラグによる出滓口の閉塞を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る溶融システムを備える廃棄物処理設備の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す溶融システムの一部を拡大して示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る溶融システムの処理方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態に係る溶融システムの処理方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態に係る溶融システムを備える廃棄物処理設備の全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る溶融システム50を含む廃棄物処理設備1の全体構成を示した概略図である。まず、この廃棄物処理設備1における廃棄物の処理要領について説明する。
【0023】
この廃棄物処理設備1は、溶融システム50に加えて、主に、上流側から、ごみピット2と、給塵機4と、流動床式ガス化炉6と、ボイラー30と、ガス冷却器42と、バグフィルタ44と、脱硝装置46と、煙突48とを有している。
【0024】
この廃棄物処理設備1では、まず、ごみピット2に貯留された廃棄物が、給塵機4に投入される。前記給塵機4に投入された前記廃棄物は、この給塵機4から定量的に前記流動床式ガス化炉6に供給されて、この流動床式ガス化炉6にて熱分解される。この流動床式ガス化炉6では、前記廃棄物の部分燃焼が行われ、砂層等からなる流動層の温度を所定の温度に維持した熱分解すなわちガス化が行われる。この流動床式ガス化炉6で発生した熱分解ガスは、前記溶融システム50に導かれる。一方、前記廃棄物のうち不燃物は炉床下部より抜き出され、非鉄金属、鉄分等にそれぞれ分離されて、再利用されるべくこの廃棄物処理設備1外等に搬送される。
【0025】
前記溶融システム50では前記熱分解ガスがさらに燃焼される。この溶融システム50のうち後述する溶融部12内では、旋回流が形成されており、約1300℃の高温燃焼が行われる。このとき、前記熱分解ガス中の灰分が溶融されてスラグが生成する。生成した前記スラグは、この溶融システム50の後述するシュート20を流下し、このシュート20の下方に設けられたスラグ冷却装置28に排出される。そして、このスラグは、前記スラグ冷却装置28にて急冷却され、再利用されるべく外部に搬送される。
【0026】
また、前記溶融部12からは高温ガスが排出される。この高温ガスは、溶融システム50の後述する二次燃焼部14に導入される。この二次燃焼部14では前記溶融部12からの排ガス中の未燃物の完全燃焼が行われる。この二次燃焼部14から排出された排ガスは前記ボイラー30に導入される。このボイラー30は、前記排ガスを熱交換器等に接触させることでその廃熱を回収する。このボイラー30でその廃熱が回収されたガスは、前記ガス冷却器42にて冷却された後、バグフィルタ44で除塵され、脱硝装置46を経て煙突48から排出される。
【0027】
次に、前記溶融システム50の詳細について説明する。
【0028】
図2前記溶融システム50の一部を拡大して示す概略断面図である。この溶融システム50は、前記溶融部12と、この溶融部12の下流に設けられるシュート20と、このシュート20のさらに下流に設けられる二次燃焼部14と、還流路(還流部)60と、ファン(吸引手段)70と、温度センサ16と、塩基度調整剤投入装置17と、バーナー(燃焼器)18とを有している。
【0029】
前記溶融部12は、前記流動床式ガス化炉6に連通している。この溶融部12は、前記流動床式ガス化炉6から導入された熱分解ガスを燃焼させ、前記熱分解ガスの灰分を溶融してスラグを生成する部分である。この溶融部12は、上下方向に延びる略筒状を有している。この溶融部12の上端には、前記流動床式ガス化炉6に連通する連通口12eが設けられており、この連通口12eを介して前記流動床式ガス化炉6から前記熱分解ガスが導入される。この溶融部12の頂部11にはガス燃焼用バーナーが取付けられており、前記熱分解ガスは、このガス燃焼用バーナーにより加熱されることで燃焼する。
【0030】
前記溶融部12の下流端すなわち下端には、前記シュート20に連通される出滓口12aが設けられている。この溶融部12で生成されたスラグは前記出滓口12aを介して前記シュート20に排出される。
【0031】
前記シュート20は、前記溶融部12から前記出滓口12aを介して排出されたスラグを下方に流下させるためのものである。このシュート20は、前記出滓口12aから流下するスラグを囲むような形状を有している。具体的には、このシュート20は、筒状を有しており、前記出滓口12aから下方に延びる中空の周壁22を有している。このシュート20の上端は、前記出滓口12aを介して前記溶融部12と連通している。このシュート20の下端には、前記スラグ冷却装置28が連設されている。前記出滓口12aからこのシュート20に排出されたスラグは、このシュート20の周壁22の内側を流下することで前記スラグ冷却装置28に案内される。
【0032】
前記シュート20の周壁22には、前記出滓口12aと連通するその上端よりも下方の位置に、還流路入口24が設けられている。この還流路入口24は、前記還流路60に連通しており、シュート20内のガスはこの還流路入口24から前記還流路60内に流入可能となっている。
【0033】
前記シュート20の周壁22のうち、前記出滓口12aより下方かつ前記還流路入口24よりも上方に位置する被温度検出部22aには、前記温度センサ16が取付けられている。この温度センサ16は、前記被温度検出部22aにおけるシュート20内のガスの温度を検出する。この温度センサ16としては、例えば、K熱伝対が用いられる。
【0034】
なお、前記溶融部12の底面12bは、前記出滓口12aに向かって下方に傾斜している。この底面12bの下端すなわち前記出滓口12aを囲む部分には、シュート20の内側に向かって張り出す張り出し部15が設けられている。従って、前記スラグは、この張り出し部15に沿って流下することでシュート20の内側面よりも内側に案内され、シュート20の側面への付着が抑制された状態でシュート20内を流下していく。
【0035】
前記二次燃焼部14は、前記溶融部12から排出される高温ガス中の未燃成分を燃焼処理するためのものである。この二次燃焼部14は、前記出滓口12aが形成された前記溶融部12の下流端に連設されており、この二次燃焼部14と前記溶融部12とは、前記出滓口12aの上方において互いに連通している。この二次燃焼部14は、前記溶融部12の下流端から下流に向かうに従って上方に傾斜する、すなわち、前記出滓口12aに向かって下方に傾斜する連通路14aと、この連通路14aの下流端から上方に延びる本体部14cとを有している。
【0036】
前記溶融部12から排出された高温ガスの少なくとも一部は、前記出滓口12aの上方および前記連通路14aを通って前記二次燃焼部14の本体部14cに流入する。この二次燃焼部14の本体部14c内には二次空気が供給されている。この二次燃焼部14の本体部14c内では前記二次空気との接触により前記溶融部12からの排ガス中の未燃物の完全燃焼が行われる。この二次燃焼部14の本体部14cの下流には、前記ボイラー30が連設されており、二次燃焼部14で処理された高温ガスはこのボイラー30に流入する。
【0037】
前記二次燃焼部14には、前記溶融部12から前記高温ガスとともにスラグの一部が流入する。この二次燃焼部14に流入したスラグは、前記連通路14aの底面14bを前記出滓口12aに向かって流下して、この出滓口12aを介して前記シュート20内に流入する。
【0038】
前記二次燃焼部14の連通路14aの底面14bの下端であって前記出滓口12aに臨む部分にも、シュート20の内側に向かって張り出す前記張り出し部15が設けられている。従って、溶融部12から前記二次燃焼部14側に流入したスラグは、前記二次燃焼部14の連通路14aの底面14bを流下した後、この張り出し部15に沿って流下することでシュート20の内側面よりも内側に案内され、前記還流路入口24が形成されたシュート20の側面への付着が抑制された状態でシュート20内を流下していく。
【0039】
前記二次燃焼部14には、前記還流路60に連通する還流路出口14dが設けられている。前記二次燃焼部14には、この還流路出口14dを介して還流路60内のガスが導入される。この還流路出口14dは、前記連通路14aと前記二次燃焼部14の本体部14cとの境界付近に接続されており、このガスは、前記二次燃焼部14の本体部14cに導入されて、この本体部14c内で燃焼処理される。
【0040】
前記塩基度調整剤投入装置17は、前記溶融部12および前記二次燃焼部14内に、スラグの塩基度を調整するための塩基度調整剤を投入するためのものである。スラグの塩基度は、処理された廃棄物の種類等に応じて異なり、これに伴いスラグの溶融点あるいは粘性は異なる。前記塩基度調整剤は、このスラグの塩基度を調整してスラグの溶融点あるいは粘性を適正な状態にするためのものであり、この塩基度調整剤がスラグに供給されると、スラグの固着が抑制されるとともに固着したスラグは溶融する。塩基度調整剤としては、例えば、砂やカルシウムが用いられる。
【0041】
前記塩基度調整剤投入装置17は、前記出滓口12aの上方であって溶融部12の下流端の天壁に設けられた塩基度調整剤投入口12cに接続されており、この塩基度調整剤投入口12cを介して前記出滓口12aの上方からこの出滓口12aに向かって前記塩基度調整剤を投入する。
【0042】
前記バーナー18は、前記出滓口12a付近に固着したスラグを溶融させるためのものである。このバーナー18は、前記シュート20の周壁22の上端近傍に、前記出滓口12aを向くようにして取付けられている。このバーナー18は、前記出滓口12aに向かって燃焼ガスすなわち燃焼エネルギーを供給することで、出滓口12a付近に固着したスラグを溶融させる。このバーナー18としては、例えば、燃料と酸素とを燃焼させるO2バーナーが用いられる。
【0043】
前記還流路60は、前記シュート20内のガスを前記二次燃焼部14に戻すための通路である。この還流路60の一端は、前記シュート20の前記還流路入口24に接続されており、他端は、前記還流路出口14dに接続されている。この還流路60は、前記還流路入口24および還流路出口14dを介して前記シュート20と前記二次燃焼部14とを連通している。
【0044】
前記ファン70は、前記溶融部12から排出された前記高温ガスを、前記シュート20を介して前記還流路60内に吸引するための装置である。このファン70は、複数の羽を有し、この羽の回転によってガスを吸引する。このファン70は、前記還流路60の途中に設けられている。このファン70は、前記還流路60内のガスのうちこのファン70よりも上流側すなわち前記シュート20側のガスを吸引する。
【0045】
前記ファン70により還流路60内のガスに吸引力が作用すると、前記シュート20内のガスが前記還流路入口24を介して還流路60内に吸引される。さらに、前記溶融部12から排出された高温ガスの一部が前記出滓口12aを介して前記シュート20内に吸引される。すなわち、前記溶融部12から排出された高温ガスの一部は、前記出滓口12aを通ってシュート20内を流下した後、前記還流路入口24を介して還流路60内に流入する。そして、前記高温ガスの一部はこの還流路60を通って前記二次燃焼部14に流入する。
【0046】
このようにして、前記溶融部12から排出された高温ガスの一部が前記スラグとともに前記出滓口12aを介してシュート20内に流入すると、出滓口12a付近において、スラグはこの高温ガスとの接触により高温に維持される。これにより、スラグは、この出滓口12a付近での固着が抑制された状態でシュート20に流入する。
【0047】
ここで、前記溶融部12から排出された高温ガスには、スラグ化されずに残った灰分および溶融部12での燃焼時等に生成された酸性ガスが含まれている。従って、この灰分や酸性ガスが前記ファン70および還流路60内に流入すると、ファン70の吸引力が低下するとともに還流路60が腐食するおそれがある。また、ファン70が故障等により停止すると前記還流路60を通って前記二次燃焼部14内の比較的低温のガスが、前記シュート20内に逆流してこのシュート20内および前記出滓口12a付近の温度を低下させるおそれがある。
【0048】
そこで、本実施形態では、前記還流路60のうち前記ファン70の上流側、すなわち、前記還流路入口24とファン70の間に、前記高温ガスから灰分および酸性ガスを除去可能であるとともに、ファン70の停止時に前記逆流を規制可能なスクラバー80が設けられており、このスクラバー80により高温ガスから灰分等を除去することでファン70等の腐食を抑制するとともに、前記逆流による前記出滓口12a付近の温度低下ひいては出滓口12a付近でのスラグの固着を抑制している。
【0049】
このスクラバー80の外壁82の内側は、隔壁84により、前記還流路60の前記シュート20側と連通する上流室86と前記還流路60の前記ファン70側と連通する下流室88とが区画されている。この上流室86と下流室88とには、それぞれ水が貯留されている。この上流室86と下流室88とは、前記隔壁84の下方においてガスおよび水が流通可能なように互いに連通している一方、隔壁84の下端部より上方ではガスおよび水の流通が不能なように隔離されている。
【0050】
このスクラバー80では、前記ファン70が稼動しておらず前記上流室86および下流室88内の圧力が等しい条件下では、各室86、88の水面が前記隔壁84の下端部よりも上方に位置して、上流室86から下流室88へのガスの移動、ひいては、前記二次燃焼部14から前記シュート20側へのガスの逆流が規制される。一方、前記ファン70が稼動して前記下流室88内のガスが吸引されて下流室88内の圧力が上流室86内の圧力よりも所定圧力低くなる条件下では、上流室86の水面が前記隔壁84の下端部よりも下方に位置して、上流室86のガスが下流室88へ流入可能となる。すなわち、シュート20側から流入した前記高温ガスの前記ファン70側への移動が可能となる。このとき、下流室88の水面は前記隔壁84の下流端よりも上方に位置しており、前記高温ガスは下流室88内の水に混入し、この高温ガスに含まれていた水溶性の酸性ガス、具体的には、塩素系ガスおよび硫酸系ガス、および灰が水に溶解して除去される。また、前記スクラバー80とファン70との間には、高温空気供給手段92により高温の空気が導入されており、スクラバー80から排出された水分が蒸発されて、この水分によりファン70および還流路60が腐食されるのが抑制されている。
【0051】
前記スクラバー80内の灰および酸性ガスが溶解した水は、スクラバー80の下端に設けられた水抜き装置95により適宜外部に排出される。
【0052】
以上のように構成された溶融システム50では、前述のように、前記ファン70の吸引力により、前記溶融部12から排出された高温ガスが前記出滓口12aを通って前記シュート20内に流下することで、前記出滓口12a付近でのスラグの固着が抑制される。しかしながら、前記スラグが溶融する温度あるいはスラグの粘性は、前記溶融部12で処理される廃棄物の性状によって異なる。これに対して、例えば、前記ファン70の回転数すなわち吸引力を最大として、前記出滓口12aを通過するガス量を多くしこの出滓口12a付近の温度を非常に高い温度とすれば、異なる複数のスラグの性状に対応することができ、出滓口12a付近でのスラグの固着をより確実に抑制することができる。しかしながら、前記出滓口12aを通過するガス量を多くすると、シュート20および還流路60が高温のガスに晒されて早期に劣化するおそれがある。そこで、本溶融システム50では、オペレータが次のような処理を行うことで、シュート20等の早期劣化を抑制しつつスラグの固着に伴う出滓口12aの閉塞を回避する。
【0053】
本溶融システム50の第1の実施形態に係る処理方法を、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
まず、ステップS1にて、溶融システムの稼動とともに前記ファン70を駆動して前記シュート20内のガスを溶融部60内に吸引し、これにより、前記溶融部12から排出された高温ガスを前記出滓口12aを通って前記シュート20内に流下させるとともに(ガス吸引工程)、前記温度センサ16による温度検出を開始する。
【0055】
オペレータは、ステップS2で、前記温度センサ16の検出値を読み取り、この温度センサ16の検出値から前記出滓口12aにおけるガスの温度を予測する。以下、この予測された温度を出滓口予測温度という。前記温度センサ16で検出される前記被温度検出部22aにおけるシュート20内のガスの温度と、前記出滓口12aにおけるガスの温度との相関が高いことは分かっており、この温度センサ16の検出値により前記出滓口12aの温度は精度良く予測される。具体的には、予め前記被温度検出部22aにおけるガスの温度を検出するとともに前記出滓口12aの温度を検出し、この被温度検出部22aの温度と出滓口12aの温度との関係をマップとして準備しておき、このマップから前記温度センサ16の検出値に対応する値を出滓口予測温度として抽出する。あるいは、前記温度センサ16検出値に一定値を加えた値(例えば100℃)を前記出滓口予測温度として算出する。
【0056】
ここで、前記出滓口12aに直接温度センサを取付けることが考えられるが、出滓口12aの温度は前記被温度検出部22aよりも高温であるとともに、出滓口12aでは温度センサとスラグとの接触機会が多く温度センサが早期に故障してしまう。これに対して、本処理方法では、前述のように、前記出滓口12aよりも下方の被温度検出部22aに温度センサ16を取付けて前記被温度検出部22aの温度を検出し、この検出値に基づいて出滓口12aの温度を予測しており、出滓口12aの温度を安定して知ることができる。
【0057】
次に、ステップS3にて、出滓口予測温度が基準温度Tmin以上であるかどうか、すなわち、前記出滓口予測温度が予め設定された基準温度Tmin未満であるかどうかを判定する(温度判定工程)。また、この出滓口予測温度が予め設定された最大温度Tmax以下であるかどうかを判定する。前記基準温度Tminは例えば1250℃に設定されており、最大温度Tmaxは例えば1300℃に設定されている。
【0058】
前記ステップS3での判定がNOであって、前記出滓口予測温度が前記基準温度Tmin未満あるいは前記最大温度Tmaxより高い場合は、ステップS4にて、前記ファン70の回転数を上昇あるいは低下させる。
【0059】
具体的には、前記出滓口予測温度が前記基準温度Tmin未満の場合は、出滓口12aにおいてスラグが固着する可能性が高い。そこで、この場合には、ステップS4にて、前記ファン70の回転数を上昇させてファン70による吸引力を増大させ、前記出滓口12aを通過するガス量を増大させる(吸引力増大工程)。これにより、出滓口12a付近においてスラグの温度は高くなり、スラグの固着が抑えられる。
【0060】
一方、前記出滓口予測温度が前記最大温度Tmaxより高い場合は、前記ファン70の回転数を低下させてファン70の吸引力を減少させる(吸引力減少工程)。これにより、出滓口12aの温度が最大温度Tmax以上になるのが回避されて、シュート20および還流路60の熱劣化が抑えられる。
【0061】
前記ステップS4は、前記出滓口予測温度が前記基準温度Tmin以上最大温度Tmax以下になるまで実施される。
【0062】
前記ステップS3での判定がYESであって、前記出滓口予測温度が前記基準温度Tmin以上かつTmax以下の場合は、次に、ステップS5にて、出滓口12aにスラグが固着しているかどうかを判定する。具体的には、オペレータが出滓口12a付近に設けられた窓から出滓口12aを見て、スラグの固着を判定する。
【0063】
前記ステップS5での判定がNOであって、前記出滓口12aにスラグが固着していない場合は、そのまま処理を終了する。
【0064】
一方、前記ステップS5での判定がYESであって、前記出滓口12aにスラグが固着している場合、すなわち、前記出滓口予測温度が基準温度Tmin以上であるにも関わらず出滓口12aにスラグが固着している場合は、ステップS6からステップS10において、固着したスラグを溶融するための固着スラグ溶融工程として、溶融部12内に塩基度調整剤を投入する工程と、バーナー18により固着しているスラグを加熱する工程とを実施する。
【0065】
まず、前記ステップS5での判定がYESの場合は、ステップS6に進み、前記塩基度調整剤投入装置17により前記塩基度調整剤投入口12cから出滓口12aの上方に塩基度調整剤を投入する。投入された塩基度調整剤は、出滓口12a付近のスラグ中に混入して、スラグの溶融点あるいは粘性を適正な状態とする。これにより、出滓口12a付近に固着していたスラグは溶融除去される。
【0066】
特に、この塩基度調整剤は前記溶融部12から排出された高温ガスとともにその多くが前記二次燃焼部14内に流入する。前述のように、二次燃焼部14の連通路14aにはスラグが流入している。この二次燃焼部14の連通路14aは、燃焼が行われている溶融部12a内に比べて比較的温度が低い。そのため、溶融部12aよりもこの二次燃焼部14の連通路14aにおいてスラグは多く固着しており、前記塩基度調整剤の多くが二次燃焼部14に流入することでこの連通路14aに固着したスラグは効果的に溶融する。
【0067】
このように、前記出滓口12aにスラグが固着している場合であっても、出滓口予測温度が基準温度Tmin以上の場合には、出滓口12aを介してシュート20および還流路60に流入する高温ガスの量を増大させて出滓口12aの温度をさらに上昇させることなく塩基度調整剤による固着したスラグの除去が行われており、シュート20および還流路60の熱劣化が抑えられつつ固着したスラグの除去が行われる。
【0068】
前記投入される塩基度調整剤の種類は、処理された廃棄物の種類等に応じて適宜決定される。
【0069】
前記ステップS6の塩基度調整剤を投入する工程は、前記出滓口12a付近において固着していたスラグが除去されるまで、あるいは、投入する塩基度調整剤の量が予め設定された基準量以上となるまで実施される。すなわち、前記ステップS6後に実施されるステップS7において、出滓口12aにまだスラグが固着しているかどうかを判定する。この判定がNOであって、出滓口12aに固着していたスラグが除去されたと判定されると処理を終了する。一方、前記ステップS7の判定がYESであって、出滓口12aにまだスラグが固着している場合は、次に、ステップS8にて、投入された塩基度調整剤が前記基準量以上かどうかを判定する。このステップS8での判定がNOであって、塩基度調整剤の投入量が前記基準量未満の場合は、ステップS6に戻り、再び塩基度調整剤を投入する。一方、このステップS8での判定がYESであって、前記出滓口予測温度が前記基準温度Tmin以上であり、かつ、前記基準量以上の塩基度調整剤が投入されているにも関わらず、出滓口12aにスラグが固着している場合は、塩基度調整剤の投入を停止してステップS9に進む。
【0070】
前記ステップS9では、前記バーナー18を駆動して、このバーナー18により出滓口12a付近に固着しているスラグを加熱して燃焼除去する。このバーナー18の駆動は固着しているスラグが完全に除去されるまで実施される。すなわち、前記ステップS9の後に進むステップS10において、スラグが固着しているかどうかを判定する。そして、この判定がNOすなわち出滓口12a付近にスラグが固着していないと判定されるまでステップS9を実施し、この判定がNOになった時点でステップS11に進みバーナー18の駆動を停止する。
【0071】
このように、前記出滓口12aにスラグが固着している場合であっても、前記塩基度調整剤の投入量が基準量以上の場合には、塩基度調整剤の投入量をさらに増加させることなく、バーナー18により固着したスラグの除去が行われており、塩基度調整剤の過剰な投入が回避される。また、前記バーナー18は、前記塩基度調整剤の投入量が最大量を超えた場合にのみ駆動されており、このバーナー18の過度の駆動が抑制されて、このバーナー18を駆動するためのエネルギーが小さく抑えられる。
【0072】
以上のようにして、本処理方法では、出滓口12aの温度および出滓口12a付近におけるスラグの固着状況に応じて、吸引力増大工程と、塩基度調整剤を投入する工程と、バーナー18により固着したスラグを加熱する工程とが段階的に実施されており、出滓口12a付近、シュート20および還流路60の熱劣化が抑えられつつ、効率よくスラグの固着の回避あるいは固着したスラグの除去が行われる。
【0073】
ここで、前記吸引力減少工程は省略可能である。すなわち、前記ステップS3における出滓口予測温度が最大温度Tmax以下であるかどうかの判定、および、ステップS4におけるファン70の回転数を低下させる工程は省略可能である。例えば、前記ファン70の回転数を段階的に上昇させるようにして、前記出滓口予測温度が前記基準温度Tmin以上となった時点でファンの回転数の上昇を停止するようにしてもよい。ただし、前記吸引力減少工程を実施して、出滓口予測温度が前記最大温度Tmax以上の場合にはファン70の回転数を低減してシュート20および還流路60に流入するガスの温度を低下させれば、出滓口12a付近、シュート20および還流路60の熱劣化をより確実に抑えることができる。
【0074】
また、前記実施形態では、温度判定工程→吸引力増大工程(および吸引力減少工程)→塩基度調整剤を投入する工程→固着したスラグを加熱する工程の順で処理を行う場合について説明したが、前記吸引力増大工程(および吸引力減少工程)の後に、塩基度調整剤を投入する工程と固着したスラグを加熱する工程のいずれか一方のみを実施してもよい。
【0075】
すなわち、前記ステップS6からS8までを省略して、固着したスラグを加熱する工程のみを実施してもよい。ただし、この固着したスラグを加熱する工程の前に塩基度調整剤を投入すれば、塩基度調整剤によって固着したスラグが除去できない場合にのみ前記バーナー18が駆動されてバーナー18の過度の駆動が抑制されるため、この駆動のためのエネルギーが少なく抑えられてコストが低減するとともにバーナー18の早期劣化が抑制される。また、バーナー18による燃焼ガスの過度の供給により前記出滓口12a付近、例えば、前記張り出し部15等の早期劣化が抑制される。また、前記ステップS9からS11までを省略して、塩基度調整剤を投入する工程のみを実施するとともに、ステップS8を省略して、固着したスラグが除去されるまで塩基度調整剤を投入してもよい。ただし、塩基度調整剤を投入した量が基準量以上となった時点で塩基度調整剤の投入を停止してバーナー18により固着したスラグの加熱を実施すれば、塩基度調整剤の過度の投入が抑制されて、効率よく固着したスラグを除去することができる。
【0076】
また、前記温度判定工程の前に、塩基度調整剤を投入する塩基度調整剤投入工程を実施して、塩基度調整剤投入工程→温度判定工程→吸引力増大工程(および吸引力減少工程)→固着したスラグを加熱する工程の順で処理を行ってもよい。この第2の実施形態に係る処理方法のフローチャートを図4に示す。
【0077】
この第2の実施形態では、まず、前記第1の実施形態と同様に、ステップS1において、溶融システムの稼動とともに前記ファン70を駆動して前記シュート20内のガスを溶融部60内に吸引するとともに、前記温度センサ16による温度検出を開始する。
【0078】
次に、ステップS22において、前記塩基度調整剤投入装置17により前記塩基度調整剤投入口12cから出滓口12aの上方に塩基度調整剤を投入する(塩基度調整剤投入工程)。この塩基度調整剤投入工程は、前記出滓口12a付近において固着していたスラグが除去されるまで(ステップS23での判定がNOとなるまで)、あるいは、投入した塩基度調整剤の量が予め設定された基準量以上となるまで(ステップS24での判定がYESとなるまで)実施される。
【0079】
前記塩基度調整剤の投入後、出滓口12a付近にスラグが固着していないと判定された場合(ステップS23での判定がNOの場合)は、そのまま処理を終了する。一方、塩基度調整剤を基準量以上投入した後も、出滓口12a付近にスラグが固着していると判定されると(ステップS24での判定がYESとなると)、ステップS25において、前記温度センサ16の検出値を読み取り、この温度センサ16の検出値から前記出滓口12aにおけるガスの温度を予測する。そして、ステップS26にて、前記温度判定工程を実施して、出滓口予測温度が前記基準温度Tmin以上かつ最大温度Tmax以下であるかどうかを判定する。このステップS26の判定がNOの場合は、ステップS27にて前記吸引力増大工程あるいは吸引力減少工程を実施して、出滓口予測温度を前記基準温度Tmin以上前記最大温度Tmax以下に制御する。
【0080】
その後、ステップS28にて、出滓口12aにスラグが固着しているかどうかを判定する。このステップS28の判定がNOの場合は、そのまま処理を終了する。一方、前記ステップS28での判定がYESであって、前記出滓口12aにスラグが固着している場合は、出滓口12a付近にスラグが固着していないと判定されるまで(ステップS30での判定がNOになるまで)、ステップS29においてバーナー18により固着したスラグを加熱する。すなわち、前記バーナー18を駆動して、このバーナー18により出滓口12a付近に固着しているスラグを燃焼除去する。そして、スラグが燃焼除去されると(ステップS30での判定がNOとなると)、バーナー18の駆動を停止する(ステップS31)。
【0081】
以上のように構成された第2の実施形態に係る処理方法では、前記塩基度調整剤が予め設定された基準量以上投入され、かつ、前記出滓口12aに前記スラグが固着している場合に、前記吸引力増大工程がはじめて実施されており、塩基度調整剤により固着したスラグの除去が可能な場合は、ファン70の吸引力は増大されない。従って、ファン70の吸引力を増大するために必要なエネルギーが少なく抑えられて、コストが低減する。
【0082】
ここで、前記第1の実施形態および第2の実施形態では、塩基度調整剤が、前記前記出滓口12a付近において固着していたスラグが除去されるまで(第1の実施形態においてステップS7での判定がNOとなるまで、第2の実施形態においてステップS23での判定がNOとなるまで)、あるいは、投入する塩基度調整剤の量が予め設定された基準量以上となるまで(第1の実施形態においてステップS8での判定がYESとなるまで、第2の実施形態においてステップS24での判定がYESとなるまで)投入される場合について説明したが、ステップS7、S8あるいはステップS23,24を省略して、塩基度調整剤を、スラグの固着状況によらず投入するようにしてもよい。
【0083】
また、前記第1の実施形態および第2の実施形態では、前記温度判定工程等の各工程を含む前記処理がオペレータにより行われる場合について説明したが、コンピュータ等を利用して前記処理が自動的に実施されるように構成してもよい。例えば、前記温度センサ16の検出値をコンピュータに入力してコンピュータにより温度判定工程を実施させる。また、前記出滓口12a上部にカメラを設け、このカメラにより撮影された所定時刻の出滓口12aの画像をコンピュータに送信し、コンピュータにより、この画像とスラグが固着していない状態の画像とを比較させてスラグが固着しているかどうかを自動的に判定させる。そして、これらの判定結果に基づいて、コンピュータが、前記ファン70に信号を送りファン70の回転数を変更する、また、前記塩基度調整剤投入装置17に信号を送信して塩基度調整剤を自動的に投入する、また、前記バーナー18に信号を送信してバーナー18を自動的に駆動するようにしてもよい。
【0084】
また、本発明において、図5に示すように、前記還流路出口14dが前記溶融部12に設けられており、前記還流路60が前記シュート20と前記溶融部12とを連通していてもよい。この場合には、還流路60を通過したガスは前記還流路出口14dから溶融部12内に流入し、このガス中の未燃物が溶融部12内で燃焼される。ただし、この還流路60を通過するガスすなわち溶融部12から排出されたガスが空気を含んでいない場合は、ガス中の未燃物が溶融部12内で十分に燃焼せず、溶融部12内の温度を低下させるおそれがある。そのため、このような場合には、前記実施形態のように還流路出口14dを前記二次燃焼部14に設けて、還流路60を通過したガスが二次燃焼部14に流入するのが好ましい。
【0085】
また、前記塩基度調整剤を投入する位置は、前記出滓口12aの上方に限らない。例えば、溶融部12aの上流端であってもよい。さらに、この溶融部12aの上流に設けられた前記流動床式ガス化炉6内に投入して、この流動床式ガス化炉6から溶融部12a内に塩基度調整剤が流入するようにしてもよい。ただし、前記のように、出滓口12aの上方から出滓口12aに向けて塩基度調整剤を投入すれば、溶融部12aから排出された高温のガスと同伴して塩基度調整剤の多くが、温度が比較的低くスラグの固着量の多い前記二次燃焼部14の前記連通路14aに流入するため、スラグが効率よく除去される。
【0086】
また、前記溶融部12内の高温ガスを前記還流路60内に吸引するための吸引手段は、前記ファン70に限らない。
【0087】
また、本溶融システム50の適用については、前記廃棄物処理設備1に限らない。
【符号の説明】
【0088】
1 廃棄物処理設備
12 溶融部
12a 出滓口
14 二次燃焼部
16 温度センサ
17 塩基度調整剤投入装置
18 バーナー(燃焼器)
20 シュート
50 溶融システム
60 還流路(還流部)
70 ファン(吸引手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の熱分解ガス中の灰分を燃焼溶融させてスラグを生成するとともに下流端に形成された出滓口から前記スラグを排出する溶融部と、前記出滓口から下方に延びてこの出滓口から流下するスラグを囲む形状を有するシュートと、前記出滓口が形成された前記溶融部の下流端に連設されて前記溶融部から排出される排ガスが導入されて当該排ガスが内側で燃焼する二次燃焼部とを備えた溶融システムにおける処理方法であって、
前記溶融部から排出される排ガスの一部が前記出滓口から前記シュート内に流入するように、吸引手段を用いて、前記シュートと前記溶融部または前記二次燃焼部とを連通する還流部内に前記シュート内のガスを吸引するとともに、当該吸引した排ガスを前記還流部を通して前記溶融部または前記二次燃焼部に戻すガス吸引工程と、
前記シュートのうち前記出滓口よりも下方かつ当該シュートと前記還流部との連通部分よりも上方の部分に設けられてこの部分を通過するガスの温度を検出可能な温度検出手段の検出値から予測される前記出滓口付近のガスの温度が、予め設定された基準温度以上であるかどうかを判定する温度判定工程と、
前記温度判定工程後であって、当該温度判定工程にて前記出滓口付近のガスの温度が前記基準温度未満であると判定された場合に実施されて、当該出滓口付近のガスの温度が前記基準温度以上となるように前記吸引手段の吸引力を増大させる吸引力増大工程と、
前記温度判定工程後であって、当該温度判定工程にて前記出滓口付近のガスの温度が前記基準温度以上であると判定され、かつ、前記出滓口付近に前記スラグが固着している場合に実施されて、前記固着したスラグを溶融させる固着スラグ溶融工程とを含み、
前記固着スラグ溶融工程では、前記溶融部内に塩基度調整剤を投入して前記固着したスラグが溶融するように当該スラグの塩基度を調整することと、前記出滓口付近に設けられた燃焼器を用いて前記出滓口付近に固着したスラグに当該スラグを溶融可能な燃焼エネルギーを供給してこのスラグを加熱することの少なくとも一方が実施されることを特徴とする溶融システムにおける処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の溶融システムにおける処理方法であって、
前記固着スラグ溶融工程では、前記溶融部内に前記塩基度調整剤を投入し、この投入した塩基度調整剤の量が予め設定された基準量以上であり、かつ、前記出滓口付近に前記スラグが固着している場合のみに、前記燃焼器を用いて前記出滓口付近に固着したスラグを加熱することを特徴とする溶融システムにおける処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の溶融システムにおける処理方法であって、
前記温度判定工程の前に、前記スラグの塩基度を調整するための塩基度調整剤を前記溶融部内に投入する塩基度調整剤投入工程が実施され、
前記温度判定工程は、前記塩基度調整剤投入工程において前記溶融部内に投入された前記塩基度調整剤が予め設定された基準量以上であり、かつ、前記出滓口付近に前記スラグが固着している場合のみに実施され、
前記固着スラグ溶融工程では、前記燃焼器を用いて前記出滓口付近に固着したスラグを加熱することのみが実施されることを特徴とする溶融システムにおける処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の溶融システムにおける処理方法であって、
前記塩基度調整剤は、その少なくとも一部が前記溶融部から排出されたガスとともに前記二次燃焼部内に流入するように、前記溶融部のうち前記出滓口の上方部分から当該溶融部内に投入されることを特徴とする溶融システムにおける処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の溶融システムにおける処理方法であって、
前記温度判定工程後であって、当該温度判定工程にて前記出滓口付近のガスの温度が予め設定された最大温度以上であると判定された場合のみに実施されて、前記還流部内に吸引されるガス量が減少するように前記吸引手段の吸引力を減少させる吸引力減少工程を含むことを特徴とする溶融システムにおける処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231939(P2011−231939A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99794(P2010−99794)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】