説明

溶融亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法

【課題】プレス加工時のパウダリング性、摺動性、塗装後の鮮映性およびスポット溶接性をすべて満足する溶融亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】溶融亜鉛めっき処理後、合金化処理を施すことにより得られるZn−Fe合金層を有する溶融亜鉛系めっき鋼板であり、該鋼板のめっき層表層には、めっき付着量の10〜50mass%の亜鉛η相を有し、かつ、下記式(1)で示されるめっき鋼板表面における断面曲線振幅確率密度分布の歪度Sが、−1.5〜0である。
S=μ3/σ3 ―――式(1)
但し、μ3:振幅確率密度の3次モーメント、σ:振幅確率密度の標準偏差である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法に関し、特に自動車用防錆鋼板として最適な、プレス加工時に良好なパウダリング性、摺動性を示し、かつ塗装後の鮮映性に優れ、さらには優れたスポット溶接性を有する溶融亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用防錆鋼板としては、溶融亜鉛系めっきが犠牲防食性に優れ良好な耐食性を示しかつ製造コストが低廉であるため主流になっている。
溶融亜鉛系めっきのうち、溶融亜鉛めっき鋼板はめっき層が延性に富んだ純亜鉛層で構成されているため、プレス加工時のパウダリング性に著しく優れた性能を示す。一方で、めっき表層が軟質で低融点の亜鉛層であるがゆえに、プレス加工時の摺動性や耐型かじり性といった性能面では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に劣るという短所がある。また、スポット溶接時の連続打点性なども、溶融亜鉛めっき鋼板はめっき層が電極である銅合金とCu-Zn合金を生成しやすく、電極寿命が合金化溶融亜鉛めっき鋼板に比べて短いという欠点も有する。
【0003】
一方、合金化溶融亜鉛めっきは、めっき層がZn-Fe系の金属間化合物から構成されているため、プレス加工時には延性に乏しいめっき層にクラックが入りやすく、特にめっき/鋼板界面に生成される硬く脆いΓ相、Γ1相のためにパウダリング性に劣るという本質的な問題を抱えている。
【0004】
このように、それぞれに欠点があり、これらを解消する目的で、めっき層の構成を溶融亜鉛めっき層と合金化溶融亜鉛めっき層を合わせたような技術、すなわち鋼板側のZn-Fe合金層の上層に亜鉛η相を配するという技術が提案されている。例えば、特許文献1には、Si、Mn、Alを含有する素材の溶融めっき鋼板であり、めっき皮膜中、Feを重量%で0.50〜7.0%含有し、Zn-Fe合金相を5〜90vol%含有し、残部が実質η相であるというめっきが提案されている。
【特許文献1】特開2004-124187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の従来技術には以下のような問題点がある。
η相の範囲が10〜95vol%でありη相が多すぎるとスポット溶接性に関して実質溶融亜鉛めっき鋼板と性能的にあまり変わらなくなり、スポット溶接性に劣ることになる。一方で、η相の量がある程度限定されると、めっき層の凹凸が顕著となる。これに伴い、塗装したあとの鮮映性が著しく劣化し、表面外観上問題となる。また、過度な凹凸はプレス加工時の摺動性に悪影響を及ぼす。すなわち、凸部での著しい面圧上昇により摺動性の劣化や型かじりを招聘する。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、プレス加工時のパウダリング性、摺動性、塗装後の鮮映性およびスポット溶接性のすべて満足する溶融亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
鋭意検討した結果、亜鉛η相量の最適値を規定することでスポット溶接性およびプレス加工時の良好なパウダリング性を確保し、式(1)で定義されるめっき鋼板表面の断面曲線の振幅確率密度分布の歪度Sを規定することにより、塗装後の鮮映性、プレス加工時の摺動性を良好に出来ることを見出した。
S=μ3/σ3 (1)
但し、μ3:振幅確率密度の3次モーメント、σ:振幅確率密度の標準偏差
本発明は上記知見に基づくものであり、特徴は以下の通りである。
[1]溶融亜鉛めっき処理後、加熱合金化処理を施すことにより得られるZn−Fe合金層を有する溶融亜鉛系めっき鋼板であり、該鋼板のめっき層表層には、めっき付着量の10〜50mass%の亜鉛η相を有し、かつ、下記式(1)で示されるめっき鋼板表面における断面曲線振幅確率密度分布の歪度Sが、−1.5〜0であることを特徴とする溶融亜鉛系めっき鋼板。
S=μ3/σ3 ―――式(1)
但し、μ3:振幅確率密度の3次モーメント、σ:振幅確率密度の標準偏差である。
[2]溶融亜鉛めっき処理を施しめっき層中のAl含有量をめっき付着量の0.10〜0.30 mass%とし、引き続き、合金化処理を施し、さらに、調質圧延を行うことを特徴とする溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【0007】
なお、本発明において、溶融亜鉛系めっき鋼板とは、溶融亜鉛めっき処理後合金化処理を施すめっき鋼板であり、めっき表層まで完全に合金化していない鋼板、すなわち表層に亜鉛η相が残存するめっき鋼板を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プレス加工時のパウダリング性、摺動性、塗装後の鮮映性およびスポット溶接性に優れた溶融亜鉛系めっき鋼板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の溶融亜鉛系めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき処理後に合金化処理を施すことで、鋼板表面にZn−Fe合金層を有する溶融亜鉛系めっき鋼板である。そして、鋼板のめっき層表層には、めっき付着量の10〜50mass%の亜鉛η相を有し、かつ、下記式(1)で示されるめっき鋼板表面における断面曲線振幅確率密度分布の歪度Sが、−1.5〜0であることを特徴とする。
S=μ3/σ3 (1)
但し、μ3:振幅確率密度の3次モーメント、σ:振幅確率密度の標準偏差である。
【0010】
以下、上記限定理由について具体的に説明する。
めっき付着量の10〜50mass%の亜鉛η相
亜鉛η相の量が50 mass%を超えるとスポット溶接性の改善効果が十分発現せず、連続打点性が溶融亜鉛めっき鋼板とあまり変わらなくなる。よって、鋼板のめっき層表層に残存する亜鉛η相の量の上限は、めっき付着量の50mass%とする。
ここで、亜鉛系めっき鋼板の場合のスポット溶接性の劣化機構は以下のように考えられる。
電極寿命の低下は、電極であるCu合金と溶接中に溶解した溶融亜鉛とが反応してCu-Zn合金(brass)を形成し、このうち特に脆いγ-brassが生成することになり溶接中に電極からCu-Zn合金が剥離脱落する。そして、これにより電極先端径が拡大し、溶接電流密度が低下することになる。また、溶接時に溶解する溶融亜鉛によって溶接電流の通電経路は、電極と接する鋼板表層が固相の場合に比べて拡大し溶接電流密度の低下となる。以上から、溶接性の確保には溶接時に簡単に溶解する純亜鉛の量をなるべく少なくすることが有利となると考えられる。
一方、亜鉛η相の量の下限は、プレス加工時のパウダリング性によって決まる。すなわち、鋼板のめっき層表層の亜鉛η相の量が10mass%未満になるとパウダリング性が劣化し始める。本発明のパウダリング性に対する効果は、延性に乏しいZn-Fe合金の上層に軟質で延性に富んだ亜鉛η相の存在が存在することにより発現する。詳述すると、プレス加工時にめっき層が歪を受けた場合、下層のZn-Fe合金層内、特にめっき/鋼板界面近傍でクラックが発生しめっき層内を伝播しても、上層のη相自体は延性に富むためクラックは入らず、先のクラックはη層で伝播が止まり、めっき表層まで伝播することはない。このη相のクラック発生抑制効果およびZn-Fe合金層の脱落抑制効果によりパウダリングの発生が顕著に抑制される。亜鉛η相が10mass%未満で劣化し始めるのは、10mass%未満ではη相がZn-Fe合金層の上層に均一に残存することが困難となり、上述の効果が全領域で発現できなくなるためである。
よって、本発明では亜鉛η相の量の下限を10mass%とする。
【0011】
断面曲線振幅確率密度分布の歪度Sが、−1.5〜0
本発明では、めっき鋼板表面の粗度の要件も重要となる。すなわち、本発明では下記式(1)で示されるめっき鋼板表面における断面曲線振幅確率密度分布の歪度Sを、−1.5以上0以下とすることが重要な要件となる。
S=μ3/σ3 (1)
但し、μ3:振幅確率密度の3次モーメント、σ:振幅確率密度の標準偏差
めっき鋼板の表面形状と諸性能との関係を検討した結果、表面の深さ方向のヒストグラムを示す振幅確立密度を制御することにより各種性能が改善されることを見出した。深さ方向の振幅確率密度とは、めっき鋼板の表面の断面曲線をある深さで切った時、その直線と断面曲線との交点の数をその深さの頻度とし、それぞれの深さにおける頻度の分布を確立分布とすることにより求めたものである。
また、深さにおける頻度をヒストグラムに表せば、振幅確率密度分布曲線が得られる。その模式図を図1に示す。
【0012】
振幅確率密度の歪度Sとは、上記式(1)で定義され、統計学においてヒストグラムの非対称性を示す尺度である。すなわち、N個の測定点における、Xiなる表面粗さの振幅値を有する試料の出現確立をfi,3次モーメントをXとするときの標準偏差と3次モーメントは下記式(2)および下記式(3)で算出される。
【0013】
【数1】

【0014】
【数2】

【0015】
めっき鋼板の表面状態と振幅確率密度分布曲線と歪度Sとの関係を模式的に図2に示す。図2から明らかなように、Sが0以下の場合、めっき鋼板の表面状態が凹部に比べ比較的平坦な凸部が多く存在することが分かる。一方、Sが0を超える場合は、めっき鋼板の表面状態が凸部に比べ比較的平坦な凹部が多く存在することになる。
【0016】
本発明では、めっき表面に軟質な亜鉛η相が規定量存在することにより、スポット溶接性とプレス加工時のパウダリング性を向上させる。これに加え、合摺動性や耐型かじり性の向上に関しては、鋼板表面に適正な粗度パターンを付与することで望ましい性能を得ることができる。そして、めっき鋼板の表面状態を凹部に比べ比較的平坦な凸部が多く存在させることにより、良好なプレス加工時の摺動性、かつ良好な塗装後の鮮映性を確保することができる。そのため、この歪度Sの上限を0と規定する。歪度Sが0超えになると局所的に存在する凸部ではプレス加工時に金型と接触する面圧が高くなり、金型との凝着などが起こりやすくなり、摺動性や耐型かじり性が劣化する。
【0017】
また、塗装後の鮮映性と歪度Sとの関係を調査したところ、歪度Sが0超えになると鮮映性が著しく劣化することが明らかになった。これは、歪度Sが0以下場合、めっき鋼板の比較的平坦な凸部によって確保されていた鮮映性が、歪度Sが0超になると確保できなくなるためである。従って、鮮映性の観点からも振幅確率密度の歪度Sの上限は0と規定する。
【0018】
一方、振幅確率密度の歪度Sが−1.5未満になると、凹部の体積が少なすぎ、プレス加工時の潤滑油の保持効果が十分発現しにくくなる。従って本発明では、振幅確率密度の歪度Sの下限値を−1.5と規定する。
【0019】
本発明の溶融亜鉛系めっき鋼板を製造するにあたっては、溶融亜鉛めっき処理を施しめっき層中のAl含有量をめっき付着量の0.10〜0.30%とし、引き続き、合金化処理を施し、さらに、調質圧延を行うこととする。単に合金化溶融亜鉛めっきの合金化度を下げて、表層にη相を残存させるという方法では、振幅確率密度の歪度Sを0以下にできない。振幅確率密度の歪度Sを0以下とするため、本発明では、上記の方法により製造することとする。
【0020】
亜鉛η相の量が50%超と高い場合は、めっき表層の粗度はかなり平滑であるが、50%以下になると、めっき表層の凹凸がかなり顕著となる。この凹凸の原因は、溶融亜鉛めっき時に鋼板/めっき界面に生成され、Zn−Fe合金化反応を抑制するFe−Al金属間化合物の生成量が素材のフェライト粒の面方位によって異なること、または鋼板表面粒内、粒界により異なること、に起因する。特に、合金化が終了する前の亜鉛η相の量が50%以下の状態では、合金化反応が早いサイト(フェライト粒)では周囲の溶融亜鉛(η相)を取り込むような形で合金化が進行するため、一段と凹凸形成が激しくなる。
【0021】
本発明では、以上のように、この凹凸を抑制して如何に摺動性、鮮映性といった性能を向上させるかを追求した。上記Fe−Al金属間化合物に着目したところ、めっき中に取り込まれるAl量をある範囲に規定することで摺動性および鮮映性が向上することを見出した。すなわち、めっき層中のAlの含有量がめっき付着量の0.10%以上0.30%以下となるように溶融亜鉛めっき処理を施し、引き続き合金化処理を施し、さらに調質圧延で粗度調整することで振幅確率密度の歪度Sが−1.5〜0となる。
上記めっき層中のAlの含有量の下限は、めっき密着性の観点から確保すべき値である。合金化後に鋼板のめっき表層に亜鉛η相を適量残存させても、めっき層中のAl量が0.10未満であると密着性の確保は困難となる。また、めっき層中のAl量が0.30超えであるとめっき表面形状が劣化する。
【0022】
めっき層中のAlの含有量がめっき付着量の0.10%以上0.30%以下となるように溶融亜鉛めっき処理を施す方法として、例えば、CGLにおける操業方法では、めっき後取り込まれるAlの値がこの範囲になるように浴のAl濃度を決定し、所定の浴温、進入板温でめっき処理する。
【0023】
また、合金化処理においては合金化終了後に亜鉛η相が、10〜50mass%となるように、ラインスピードやめっき付着量に合わせて合金化温度を調整すればよい。
【0024】
さらに、調質圧延により粗度を制御する。この調質圧延によって最終的にめっき表面形状(振幅確率密度の歪度S)を制御できる。本発明では、圧延方法は特に規定しないが、ロール粗度はショットブラスト処理したものより、EDTロールなどのほうが制御性に優れており、望ましい。伸長率も特には限定しないが、板厚(mm)程度の値(%)で行うのが、実際的で操業しやすい。
上述した以外の溶融亜鉛めっき処理を行う方法は、常法でよい。
また、溶融亜鉛めっき処理に引き続き合金化処理を行うときは、溶融亜鉛めっきしたのち、450℃以上550℃以下に鋼板を加熱して合金化処理を施し、めっき層のFe含有量が7〜15質量%になるよう行うのが好ましい。
【実施例】
【0025】
極低炭素軟鋼を素材とし、以下のめっき条件によりCGLでめっき処理した後、合金化処理を施し、EDTロールによる調質圧延を行い、以下に示す方法により表1に示すようなめっき層性状を有するめっき鋼板を製造した。
(めっき処理条件) 浴Al:0.13mass%、浴温:460℃、進入板温:470℃
めっき分析
上記により得られためっき鋼板のめっき層をJIS H0401に基づく方法で溶解し、溶解液をICPにて分析し、めっき付着量、Fe%,Al%を求めた。
【0026】
亜鉛η相
めっき層を、以下の溶液中で、電流密度20mA/cm2で定電流溶解を行い、電位と溶解時間との関係を求めた。この関係から、亜鉛の電位を示すプラトーの溶解時間とめっき全体の溶解時間との比から亜鉛η相の量を求めた。
溶解液:NaCl200 g/l、ZnSO4100 g/l
振幅確率密度 歪度S
振幅確率密度は、3次元粗さ測定器(明伸工機(株)製SAS2002)を用い、接触式触針(先端径5μm)により、測定面積10mm*5mm、測定ピッチ(x軸方向10μm、y軸方向5μm)で測定した。
以上により得られためっき鋼板に対して、パウダリング性、プレス成形性、鮮映性、スポット溶接性を評価した。
【0027】
パウダリング性
パウダリング性は、セロテープ(登録商標)を貼ったサンプルに対して90°曲げ戻し試験を行い、テープに付着しためっき剥離粉を蛍光X線装置にてZnのカウント(cps)を測定した。なお、cpsが100以下のものをblank(表中では「−」と標記)とした。 摺動性
プレス成形性を評価するために、各めっき鋼板の摩擦係数を以下のようにして測定した。
図3は摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押し上げることによりビード6による摩擦係数測定用試料1への押し付け荷重Nを測定するための第1ロードセル7がスライドテーブル支持台5に取り付けられている。上記押し付け力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するために第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取り付けられている。なお、潤滑油としてスギムラ化学社製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを摩擦係数測定用試料1の表面に塗布して試験を行った。
図4は使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図4に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ12mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有する。
摩擦係数測定試験は下に示す条件で行った。
[条件]
図4に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル13の水平移動速度):1.0m/minで、摺動性長さ100mmの引き抜きを行い、引き抜き荷重Fと押し付け荷重Nとの比、F/Nを摩擦係数とした。
また、材質は、工具鋼SKD11である。サンプルには、防錆油NOX-RUST550HN/(株)ハ゜ーカー興産製を1g/m2塗布した。
【0028】
塗装後の鮮映性
供試材にリン酸塩処理、電着塗装(20μm)、中塗り塗装(35μm)、上塗り塗装(35μm)、クリアー塗装(25μm)の順で施した。鮮映性は、スガ試験機製の写像鮮明度測定装置HA-NSICにより、NSIC値を測定した。なお、NSIC値は、黒板研磨ガラスを100とし、その値が100に近いほど良好な鮮映性とされている。
【0029】
スポット溶接性
めっき鋼板に対して、以下に示す溶接条件によりスポット溶接時の連続打点数の調査を行った。なお、連続打点性調査における溶接電流値は、板厚をt(mm)とした時の4√t で示されるナゲット径が得られる電流値:I1(kA)および溶着電流値:I2(kA)の平均値を用いた。連続打点性は、ナゲット径が4√tをきるまでの打点数とした。結果を表1に示す。
(溶接条件)電極:CF型、先端径:4.5mmφ、先端角:120°、外径:13mmφ、材質:Cu-Cr、通電時間:10サイクル、加圧力:170kgf、加圧条件(通電前:30サイクル、通電後:7 サイクル)、アップダウンスロープなし
以上により得られた結果を条件と併せて表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1より、本発明例では、プレス加工時のパウダリング性、摺動性、塗装後の鮮映性およびスポット溶接性に優れた溶融亜鉛系めっき鋼板が得られている。
一方、比較例では、プレス加工時のパウダリング性、摺動性、塗装後の鮮映性およびスポット溶接性のいずれか一つ以上が劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の溶融亜鉛系めっき鋼板は、プレス加工時のパウダリング性、摺動性、塗装後の鮮映性およびスポット溶接性に優れるため、自動車用防錆鋼板として好適に利用することができる。また、自動車以外にも、素材鋼板に防錆性を付与した表面処理鋼板として、家電、建材の分野等、広範な分野で適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】振幅確率密度分布曲線を示す模式図である。
【図2】めっき鋼板の表面状態と振幅確率密度分布曲線と歪度Sとの関係を模式的に示す図である。
【図3】摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。
【図4】図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 摩擦係数測定用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
9 レール
N 押付荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融亜鉛めっき処理後、加熱合金化処理を施すことにより得られるZn−Fe合金層を有する溶融亜鉛系めっき鋼板であり、該鋼板のめっき層表層には、めっき付着量の10〜50mass%の亜鉛η相を有し、かつ、下記式(1)で示されるめっき鋼板表面における断面曲線振幅確率密度分布の歪度Sが、−1.5〜0であることを特徴とする溶融亜鉛系めっき鋼板。
S=μ3/σ3 ―――式(1)
但し、μ3:振幅確率密度の3次モーメント、σ:振幅確率密度の標準偏差である。
【請求項2】
溶融亜鉛めっき処理を施しめっき層中のAl含有量をめっき付着量の0.10〜0.30 mass%とし、引き続き、合金化処理を施し、さらに、調質圧延を行うことを特徴とする溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−121189(P2010−121189A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297746(P2008−297746)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】