説明

溶融金属塗布装置

【課題】本発明は、被塗布体の外周面に溶融金属を均一な厚みで塗布可能な溶融金属塗布装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係わる溶融金属塗布装置は、被塗布体の外周面に溶融金属を塗布する溶融金属塗布装置であって、被塗布体を挿入可能な孔部が形成された塗布手段を有し、孔部の内面には溶融金属が供給されるとともに、被塗布体が挿入されたとき当該被塗布体の外周面に対し均一な間隙で対向するよう孔部の内面は形成されている溶融金属塗布装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗布体の表面に溶融金属塗布装置に係わり、特に円柱形状の被塗布体の表面に溶融金属を塗布するのに好適な溶融金属塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野の一例として被塗布体である蛍光ランプを構成するガラスからなるバルブの表面に金属を塗布する方法が特許文献1に開示されている。すなわち、特許文献1には、管型バルブの両端に外部電極を形成するため、例えばニッケル・タングステン・モリブデン等を溶融した溶融金属槽内にバルブの両端を浸漬するディッピング法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−40109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかるディッピング法によれば、溶融金属に被塗布体を浸漬するという一回の操作で容易に溶融金属を塗布することができるという利点があるが、一方で溶融金属の粘度の高さに起因しディッピング法では厚みを均一に塗布することが困難であるという問題がある。例えば、特許文献1の場合には、ディッピング法によってバルブの端面に溶融金属を塗布して形成された外部電極は膜圧が不均一となり易い。その結果、外部電極の膜厚が薄い部分に電流が集中することによって過熱し、バルブが破損し、蛍光ランプが不点灯に到ることがある。
【0005】
なお、本発明の課題を明確にするため特許文献1を例示して課題を説明したが、それ以外の分野でも被塗布体の外周面に均一に溶融金属を塗布する技術が要請されており、特に電子部品の分野において粘度の高い溶融金属をミクロンメータレベルの塗布厚みで塗布可能な塗布技術の要請が高まっている。したがって、本発明は、被塗布体の外周面に溶融金属を均一な厚みで塗布可能な溶融金属塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係わる溶融金属塗布装置の態様は、被塗布体の外周面に溶融金属を塗布する溶融金属塗布装置であって、被塗布体を挿入可能な孔部が形成された塗布手段を有し、孔部の内面には溶融金属が供給されるとともに、被塗布体が挿入されたとき当該被塗布体の外周面に対し均一な間隙で対向するよう孔部の内面は形成されている溶融金属塗布装置である。
【0007】
かかる態様の溶融金属塗布装置によれば、溶融金属塗布装置の塗布手段に設けられた孔部には溶融金属が供給される。溶融金属を外周面に塗布するため孔部に被塗布体は挿入される。ここで、孔部の内面は、当該孔部へ被塗布体が挿入されたとき被塗布体の外周面に対し均一な間隙で対向するよう形成されているので、挿入された被塗布体と孔部の内面との間には均一な間隙が形成される。したがって、孔部に供給されている溶融金属はその間隙に満たされ、その結果間隙の大きさに応じた塗布厚みで被塗布体の外周面には均一に溶融金属が塗布される。
【発明の効果】
【0008】
上記説明のとおり本発明は構成されているので、被塗布体の外周面に溶融金属を均一な厚みで塗布することのできる溶融金属塗布装置を提供するという本発明の課題を解決することができ、特にミクロンメータレベルの厚みで均一に溶融金属を被塗布体に塗布可能な溶融金属塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係わる第1態様の溶融金属塗布装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係わる第2態様の溶融金属塗布装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の溶融金属塗布装置について、その実施態様1及び2に基づき説明する。なお、以下の実施態様の説明では略円柱形状のガラス体を被塗布体の例として説明するが、被塗布体の形状を角柱状若しくは平板状等に替えた場合、又は被塗布体の材質を金属若しくはセラミックス等に替えた場合においても、本発明は同様な作用・効果を奏することができる。また、以下の実施態様の説明では溶融金属として低融点金属である半田を溶融した溶融半田を例として説明するが、半田を他の金属に替えた場合でも、本発明は同様な作用・効果を奏することができる。さらに、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、それと同一性の範囲において適宜変形実施することができ、実施形態の各構成要素は単独に又は適宜組み合わせて実施することができる。
【0011】
[実施態様1]
本発明に係わる溶融金属塗布装置の第1実施形態について、図1を参照しながら説明する。なお、実施態様1の溶融金属塗布装置における被塗布体は、図1において符号W1で示す先端が平坦で直径がΦAの略円柱形状のガラス体である。そして、ガラス体W1の外周面には、ガラスとの接合性に優れた低融点金属であるSnAgAl系合金、具体的には質量%でAgが8.5%、Alが0.35%、残部Snからなる半田を溶融した溶融半田Mが所定の厚みtで均一に塗布される。
【0012】
まず、第1態様の溶融金属塗布装置の構成について説明する。図1において符号10は下記する塗布手段12を支持する支持部材である。支持部材10には、ガラス体W1の表面に存在する気泡を除去し、半田とガラス基板の濡れ性を改善するため図示しない超音波印加手段が接続されており、紙面水平方向に塗布手段12へ超音波振動を付与する。また、支持部材10の外周にはコイル状の加熱ヒータ11が巻回されており、加熱コイル11を発熱させることにより支持部材10を介して糸半田M1の溶融温度以上に塗布手段12は加熱される。
【0013】
図1において符号12は、支持部材10で支持された塗布手段である。その塗布手段12において符号121は、その右側側面に開口した第1開口122と左側側面に開口した第2開口123を有する貫通孔状の孔部である。そして、孔部121の直径ΦBは、ガラス体W1の直径ΦAに塗布すべき溶融半田Mの厚みtの2倍を加えた大きさである。
【0014】
塗布手段12の上部には凹部が設けられ、凹部の底面が、原料である線状の糸半田M1の端面が当接し溶融半田M2を生成する溶融部14とされている。そして、塗布手段12には、その溶融部14に開口した流入口15と、流入口15から下方に延びて孔部121の側面に開口した流出口とを有する、略円管状の流通通路が設けられており、溶融部14で生成された溶融半田M2はこの流通通路を流下して孔部121へ供給される。ここで、流入口15の径d2は糸半田M1の径d1よりも小さく形成されている。したがって、糸半田M1の表面に酸化膜が形成されている場合でも、流入口15の外周縁部、すなわち溶融部14で酸化膜が除去され、酸化物を含まない清浄な溶融半田M2のみが孔部121へ供給される。
【0015】
なお、上記溶融部14、流通通路又は孔部121の表面には、溶融半田M2との濡れ性を高め円滑に溶融半田M2を流動させるためCr層が形成することが望ましい。なお、Cr層に代えてAl、Mo、W、V、Nb、Taからなる層を設けてもよい。さらに、それらの表面には、その表面が溶融半田M2から溶食され難いよう溶食防止処理、例えば窒化処理を施すことが望ましい。
【0016】
符号17はガラス体W1の後端である右端部を把持固定するとともに、軸心回りにガラス体W1を回転可能に構成された把持手段であり、固定部材16に組み込まれている。この把持手段17によるガラス体W1の回転機構は本態様の溶融金属塗布装置1において好ましい構成として組み込まれているものであり、その回転操作は例えば手動で行っても良いが、工業生産上の観点から効率的に安定して溶融半田M2を塗布するためにはモータ等により回転制御しながら行うことが望ましい。また、ガラス体W1は、その軸心が孔部121の軸心とほぼ一致するよう把持手段17で把持されており、もって、ガラス体W1が孔部121へ挿入されたときには、孔部121の内面はガラス体W1の外周面に対し均一な図示する間隙gで対向する状態となる。ここで、上記したように孔部の直径φBはガラス体121の直径φAに溶融半田Mの厚みtを加算した大きさであるので、間隙gの大きさは溶融半田Mの厚みtとほぼ同寸法となっている。
【0017】
符号18は、ベース19に配置された水平移動手段である。水平移動手段18は具体的には不図示のモータ等でスライダーが左右に自在に移動するリニアガイドであり、上記固定部材16はスライダーの上面に配置されている。ここで、溶融半田M2を塗布する前には、把持手段17に把持させたガラス体W1の先端部(左端部)は第1開口122から離隔した初期位置に位置させる必要がある。そして、その後の溶融半田M2を塗布する工程では所望の長さだけ溶融半田Mをガラス体W1に塗布するため、初期位置からガラス体W1を左方向へ水平移動させて孔部121の中を挿通させ、終端位置まで移動させる必要がある。しかして、水平移動手段18は、かかる初期位置から終端位置までの間を速度及び位置制御されつつ自在にスライダーが移動可能なよう構成されている。
【0018】
上記溶融金属塗布装置1の動作について以下説明する。まず、準備工程である。準備工程では、溶融半田Mを塗布すべきガラス体W1を準備し、水平移動手段18を初期位置に位置せしめた状態で把持手段17にガラス体W1を把持させる。その後、溶融金属塗布装置1を作動させると、まず溶融金属塗布装置1は、加熱ヒータ11に通電して塗布手段12が糸半田M1の溶融温度以上となるよう加熱するとともに、不図示の超音波印加手段を作動させて塗布手段12に水平方向、すなわちガラス体W1の軸心と同一方向の振動を印加する。
【0019】
次いで、溶融半田供給工程である。糸半田M1を送り出してその端面を溶融部14に当接させる。この動作は人手で行ってもよいが、溶融半田M2を定量的に供給するためにはボビン等に巻き取られた糸半田M1を機械的に送り出し溶融部14に当接させるよう構成しておくことが望ましい。溶融温度以上に加熱された溶融部14に当接した糸半田M1は溶融して溶融半田M2が形成されるが、上記説明のとおり酸化物は溶融部14で除去され清浄な溶融半田M2が流通通路を流下し、孔部121へ溶融半田M2が供給される。なお、この供給工程は、以下説明する塗布工程の間、継続して実施される。
【0020】
次いで、溶融半田塗布工程である。溶融半田塗布装置1は、把持手段17でガラス体W1を回転させつつ、水平移動手段18のスライダーを左方向に移動させ、第1開口122からガラス体W1を序々に孔部121へ挿通させる。ここで、上記説明のとおり挿入されたガラス体W1の外周面と孔部121の内面との間には、塗布すべき溶融半田Mの厚みと同寸法である所定の間隙gが全周に渡り均一に形成されているので、第2開口123から抜け出たガラス体W1の外周面には均一な厚みtで溶融半田Mが塗布されている。そして、水平移動手段18でガラス体W1を終端位置まで水平移動させる間も、かかる間隙gは一定に保持される。したがって、ガラス体W1の外周面には所望の長さで均一な厚みの溶融半田Mが塗布されることとなる。終端位置まで移動すると、溶融半田塗布装置1は、溶融半田M2の供給を停止するとともに、水平移動手段18を初期位置へ移動させて、塗布工程を終了する。
【0021】
[実施態様2]
本発明に係わる溶融金属塗布装置の第2実施形態について図2を参照しながら説明する。なお、第1実施態様の溶融金属塗布装置1と同一の構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0022】
第2実施態様の溶融金属塗布装置で溶融半田Mが塗布される被塗布体であるガラス体W2は、上記ガラス体W1とほぼ同様な構成であるが、図2に示すように、円柱部W21とその先端に形成された半球部W22とで構成されている点で相違し、第2実施態様の溶融金属塗布装置は、以下説明するように、この半球部W22を含むガラス体W2の先端部の外周面に溶融半田Mを塗布するよう構成されている。
【0023】
第2実施態様の溶融金属塗布装置2は、第1態様の溶融金属塗布装置1と主に塗布手段22の構成において相違する。すなわち、塗布手段22の孔部221は、右側面に第1開口222を有する有底の止まり孔である。その孔部221の直径ΦBは、上記孔部121と同様に、ガラス体W2の円柱部W21の直径ΦAに塗布すべき溶融半田Mの厚みtの2倍を加算した大きさである。さらに、孔部221の底部223はガラス体W2の半球部W22に対応して半球状に形成されており、その半径Rは、半球部W22の半径rに塗布すべき溶融半田Mの厚みtを加えた大きさである。
【0024】
なお、上記有底の孔部221にガラス体W2を挿入するため、本態様の水平移動手段18は、ガラス体W2が図2に示す終端位置、具体的には孔部221の底面と半球部W22の外周面の間の間隙が寸法gとなった位置で停止するよう構成されている。
【0025】
上記溶融金属塗布装置2によれば、溶融半田供給工程において孔部221へ溶融半田M2を供給し、次いで溶融半田塗布工程においてガラス体W2を孔部221へ挿入し、上記終端位置まで水平移動させることにより、円柱部W21の外周面には厚みtで溶融半田Mが塗布され、さらに半球部W22の外周面にも厚みtで溶融半田Mが塗布される。
【符号の説明】
【0026】
1(2) 溶融金属塗布装置
10 支持部材
11 加熱ヒータ
12(22) 塗布手段
14 溶融部
15 流入口
16 固定手段
17 把持手段
18 水平移動手段
19 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布体の外周面に溶融金属を塗布する溶融金属塗布装置であって、前記被塗布体を挿入可能な孔部が形成された塗布手段を有し、前記孔部の内面には溶融金属が供給されるとともに、前記被塗布体が挿入されたとき当該被塗布体の外周面に対し均一な間隙で対向するよう前記孔部の内面は形成されている溶融金属塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−196139(P2010−196139A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45093(P2009−45093)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】