説明

溶解度が低い活性物質を可溶化するための樹状ポリ尿素

本発明は、両親媒性物質および20℃での水への溶解度が10 g/L以下である活性物質を含む組成物であって、該両親媒性物質が少なくとも1つの線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと結合した樹状ポリ尿素を含み、線状ポリマーの繰り返し単位が重合したアルキレンオキシドから作られる場合には該結合が二官能性リンカーを介しておこなわれる、前記組成物に関する。本発明はさらに、樹状ポリ尿素を含む両親媒性物質、および該両親媒性物質の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性物質および20℃での水への溶解度が10 g/L以下である活性成分を含む組成物を提供する。本発明はまた、樹状ポリ尿素を含む両親媒性物質、および該両親媒性物質を調製する方法に関する。好ましい特徴と他の好ましい特徴との組合せは本発明に包含される。
【背景技術】
【0002】
多くの場合に、疎水性の活性成分を、その活性成分に化学的変化を起こすことなく、そのままで水中に可溶化することが必要になる。この目的で、例えば、エマルションを調製して、その活性成分をエマルションの油相中に存在させることが可能である。しかしながら、多くの活性医薬成分または特に作物保護剤に対して、特に体液により輸送される薬剤または植物の樹液中に輸送される薬剤に対して、この種の方法を実施することは不可能である。高いせん断力の作用下でエマルションは破壊され得る。さらに、エマルションを維持しながらの殺菌は多くの場合不可能である。
【0003】
活性成分およびポリ尿素に基づく両親媒性物質を含む組成物は広く知られている。WO 2006/087227には、窒素原子を含有する超分岐ポリマーおよび25℃での水への溶解度が10 g/l以下である活性成分を含む活性成分組成物が開示されている。好適な超分岐ポリマーは、低分子量化合物またはポリエーテロールとのポリマー類似反応をおこなうことが可能なポリ尿素である。ポリマー類似反応は、この場合には、超分岐ポリマーにより直接おこなわれる。WO 2009/021986は、活性成分および超分岐ポリマー(例えば、超分岐ポリ尿素であってよい)を含む種子粉衣剤を開示している。超分岐ポリマーはアルキレンオキシドによりアルコキシ化することも、ポリエーテルアルコールと直接反応させることもできる。
【0004】
超分岐ポリ尿素は広く知られており、調製方法は、例えばWO 2003/066702、WO 2005/075541およびWO 2005/044897に詳細に記載されている。
【0005】
疎水性活性成分を水性媒体中に可溶化するための公知の両親媒性物質の欠点は、それらが少量の活性成分しか可溶化することができないことである。さらに、両親媒性物質そのものがしばしば水溶性または水分散性でなく、そのため、水性媒体への可溶化には適さない。さらなる欠点は、実際には、樹状ポリ尿素の直接のアルコキシ化によっては所望の生成物への変換が実質的にもたらされないことである。その理由は、ポリ尿素の溶解度が限定的であるため、反応を好ましくはアルコール中で実施しなければならず、そのため二次成分としてエトキシ化された溶媒(すなわちエトキシ化されたアルコール)が大量に得られることである。他の好適な溶媒、例えばジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドは、アルコキシ化の反応条件下(高温、塩基性のpH)でKOH触媒により部分的に分解または劣化する。これにもかかわらずアルコキシ化による生成物を得ることができたとしても(例えば、溶融物中で)、これらの生成物は、不均一なPEG鎖長のために、しばしば水溶性でなく、または比較的不十分な施用特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 2006/087227
【特許文献2】WO 2009/021986
【特許文献3】WO 2003/066702
【特許文献4】WO 2005/075541
【特許文献5】WO 2005/044897
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水性媒体に難溶性の活性成分を可溶化するのに適した新しい両親媒性物質を見いだすことであった。さらなる目的は、非常に大量の活性成分、特に活性農薬成分を可溶化することができる両親媒性物質を見いだすことであった。さらに、両親媒性物質はそれ自体が水溶性または水分散性でなければならない。最後に、さらなる目的は、既製の成分、例えば既製のポリマーから調製することができる両親媒性物質を見いだすことであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的は、両親媒性物質および20℃での水への溶解度が10 g/L以下である活性成分を含む組成物であって、該両親媒性物質が少なくとも1つの線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと結合した樹状ポリ尿素を含み、線状ポリマーの繰り返し単位が重合したアルキレンオキシドから構成される場合には該結合が二官能性リンカーを介しておこなわれる、前記組成物により達成された。
【発明を実施するための形態】
【0009】
活性成分の20℃での水への溶解度は10 g/L以下、好ましくは2 g/l以下、より好ましくは0.5 g/l以下、特に0.1 g/l以下である。組成物は1種以上の異なる活性成分を含んでもよい。活性成分の例は、活性農薬成分、活性化粧品成分、活性医薬成分または栄養補給剤(例えばビタミンおよびカロテノイド)である。好ましい活性成分は活性農薬成分である。
【0010】
活性化粧品成分の例は、化粧用油、芳香剤および香味料、ビタミンまたはUV吸収剤である。化粧用油としては、ピーナッツ油、ホホバ油、ココナッツ油、アーモンド油、オリーブ油、パーム油、ひまし油、ダイズ油もしくはコムギ胚芽油、または精油、例えばドワーフパイン油、ラベンダー油、ローズマリー油、トウヒ葉油、マツ葉油、ユーカリ油、ペパーミント油、セージ油、ベルガモット油、テレビン油、バーム(balm)油、杜松油、レモン油、アニス油、カルダモン油、ショウノウ油等、またはそれらの混合物が挙げられる。UV吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2'-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン、3-(4-メトキシベンジリデン)カンファー、2-エチルヘキシルN,N-ジメチル-4-アミノベンゾエート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルサリチレート、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、2-エチルヘキシルp-メトキシシンナメート、および2-イソアミルp-メトキシシンナメート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0011】
芳香剤および香味料の例は、WO 01/49817または“Flavors and Fragrances“, Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Wiley-VCH, 2002に記載される通りである(これらの文献を参照により本明細書に組み入れる)。
【0012】
ビタミンの例は、群A、C、E、およびFのビタミン、プロビタミンおよびビタミン前駆体、特に、3,4-ジデヒドロレチノール、ベータ-カロテン(ビタミンAのプロビタミン)、アスコルビン酸(ビタミンC)およびアスコルビン酸のパルミチン酸エステル、グルコシドまたはリン酸エステル、トコフェロール、特にアルファ-トコフェロールおよびそのエステル(例えば酢酸エステル、ニコチン酸エステル、リン酸エステル、およびコハク酸エステル)、ならびに必須脂肪酸を構成すると考えられるビタミンF(特にリノール酸、リノレン酸、およびアラキドン酸)である。
【0013】
活性医薬成分の例としては、ベンゾジアゼピン類、降圧剤、ビタミン類、細胞増殖抑制剤(特にタキソール)、麻酔剤、神経遮断薬、抗うつ薬、抗ウイルス薬、例えば抗HIV剤、抗生物質、抗真菌薬、抗認知症薬、殺菌剤、化学療法剤、泌尿器薬、血小板凝集阻害剤、スルホンアミド類、鎮痙薬、ホルモン、免疫グロブリン、血清、甲状腺治療薬、精神活性剤、抗パーキンソン薬および他の抗多動薬、眼薬、ニューロパシー製品、カルシウム代謝調節物質、筋弛緩剤、麻酔剤、脂質低下剤、肝臓治療薬、冠動脈薬、強心剤、免疫治療薬、調節ペプチドおよびそれらの阻害剤、催眠薬、鎮静薬、婦人科薬、痛風治療薬、線維素溶解薬、酵素製品および輸送タンパク質、酵素阻害剤、催吐剤、血流刺激薬、利尿剤、診断補助薬、コルチコイド、コリン作動薬、胆汁治療薬、抗喘息薬、気管支拡張薬、ベータ受容体遮断薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤、動脈硬化治療薬、抗炎症薬、抗凝血薬、抗低血圧薬、抗低血糖薬、降圧剤、抗線維素溶解薬、抗てんかん薬、鎮吐薬、解毒剤、抗糖尿病薬、抗不整脈薬、抗貧血薬、抗アレルギー薬、駆虫剤、鎮痛剤、中枢神経興奮薬、アルドステロン拮抗薬、痩身薬が挙げられる。
【0014】
用語「活性農薬成分」(以下に駆除剤とも呼ぶ)は、殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、薬害軽減剤および/または成長調節物質の群より選択される少なくとも1種の活性成分を指す。好ましい駆除剤は、殺菌剤、殺虫剤および除草剤、特に殺虫剤である。2種以上の前記クラスの駆除剤の混合物も使用することができる。このような駆除剤は当業者に公知であり、それらは、例えばPesticide Manual, 14th Ed. (2006), The British Crop Protection Council, Londonに記載されている。好適な殺虫剤は、カルバメート類、有機ホスフェート類、有機塩素殺虫剤、フェニルピラゾール類、ピレスロイド類、ネオニコチノイド類、スピノシン類、アベルメクチン類、ミルベマイシン類、幼若ホルモン類似物質、ハロゲン化アルキル、有機スズ化合物、ネライストキシン類似物質、ベンゾイル尿素類、ジアシルヒドラジン類、METI殺ダニ剤のクラスの殺虫剤、ならびに、クロロピクリン(chloropicrin)、ピメトロジン(pymetrozine)、フロニカミド(flonicamid)、クロフェンテジン(clofentezine)、ヘキシチアゾックス(hexythiazox)、エトキサゾール(etoxazole)、ジアフェンチウロン(diafenthiuron)、プロパルギット(propargite)、テトラジホン(tetradifon)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、DNOC、ブプロフェジン(buprofezine)、シロマジン(cyromazine)、アミトラズ(amitraz)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、アセキノシル(acequinocyl)、フルアクリピリム(fluacrypyrim)、ロテノン(rotenone) 、またはそれらの誘導体などの殺虫剤である。好適な殺菌剤は、ジニトロアニリン類、アリルアミン類、アニリノピリミジン類、抗生物質、芳香族炭化水素、ベンゼンスルホンアミド類、ベンズイミダゾール類、ベンズイソチアゾール類、ベンゾフェノン類、ベンゾチアジアゾール類、ベンゾトリアジン類、ベンジルカルバメート類、カルバメート類、カルボキシアミド類、クロロニトリル類、シアノアセトアミドオキシム類、シアノイミダゾール類、シクロプロパンカルボキシアミド類、ジカルボキシイミド類、ジヒドロジオキサジン類、ジニトロフェニルクロトネート類、ジチオカルバメート類、ジチオラン類、エチルホスホネート類、エチルアミノチアゾールカルボキシアミド類、グアニジン類、ヒドロキシ(2-アミノ)ピリミジン類、ヒドロキシアニリド類、イミダゾール類、イミダゾリノン類、無機化合物、イソベンゾフラノン類、メトキシアクリレート類、メトキシカルバメート類、モルホリン類、N-フェニルカルバメート類、オキサゾリジンジオン類、オキシイミノアセテート類、オキシイミノアセトアミド類、ペプチジルピリミジンヌクレオシド類、フェニルアセトアミド類、フェニルアミド類、フェニルピロール類、フェニル尿素類、ホスホネート類、ホスホロチオレート類、フタラミン酸類、フタルイミド類、ピペラジン類、ピペリジン類、プロピオンアミド類、ピリダジノン類、ピリジン類、ピリジニルメチルベンズアミド類、ピリミジンアミン類、ピリミジン類、ピリミジノンヒドラゾン類、ピロロキノリノン類、キナゾリノン類、キノリン類、キノン類、スルファミド類、スルファモイルトリアゾール類、チアゾールカルボキシアミド類、チオカルバメート類、チオファネート類、チオフェンカルボキシアミド類、トルアミド類、トリフェニルスズ化合物、トリアジン類、トリアゾール類のクラスの殺菌剤である。好適な除草剤は、アセトアミド類、アミド類、アリールオキシフェノキシプロピオネート類、ベンズアミド類、ベンゾフラン類、安息香酸類、ベンゾチアジアジノン類、ビピリジリウム、カルバメート類、クロロアセトアミド類、クロロカルボン酸類、シクロヘキサンジオン類、ジニトロアニリン類、ジニトロフェノール、ジフェニルエーテル類、グリシン類、イミダゾリノン類、イソキサゾール類、イソキサゾリジノン類、ニトリル類、N-フェニルフタルイミド類、オキサジアゾール類、オキサゾリジンジオン類、オキシアセトアミド類、フェノキシカルボン酸類、フェニルカルバメート類、フェニルピラゾール類、フェニルピラゾリン類、フェニルピリダジン類、ホスフィン酸類、ホスホロアミデート類、ホスホロジチオエート類、フタラメート類、ピラゾール類、ピリダジノン類、ピリジン類、ピリジンカルボン酸類、ピリジンカルボキシアミド類、ピリミジンジオン類、ピリミジニル(チオ)ベンゾエート類、キノリンカルボン酸類、セミカルバゾン類、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン類、スルホニル尿素類、テトラゾリノン類、チアジアゾール類、チオカルバメート類、トリアジン類、トリアジノン類、トリアゾール類、トリアゾリノン類、トリアゾロカルボキシアミド類、トリアゾロピリミジン類、トリケトン類、ウラシル類、尿素類のクラスの除草剤である。
【0015】
一実施形態において、駆除剤は殺虫剤を含み、好ましくは、駆除剤は少なくとも1種の殺虫剤からなる。好ましい殺虫剤は、フィプロニル(fipronil)、アレスリン(allethrin)、アルファシペルメトリン(alpha-cypermethrin)、ベータシフルトリン(beta-cyfluthrin)、ビフェントリン(bifenthrin)、ビオアレスリン(bioallethrin)、4-クロロ-2-(2-クロロ-2-メチルプロピル)-5-[(6-ヨード-3-ピリジニル)メトキシ]-3(2H)-ピリダジノン(CAS-RN: 120955-77-3)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、クロルピリホス(chlorpyrifos)、シフルトリン(cyfluthrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、エトフェンプロックス(etofenprox)、フェノキシカルブ(fenoxycarb)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、メタフルミゾン(metaflumizone)、ペルメトリン(permethrin)、ピリプロキシフェン(pyriproxifen)、シラフルオフェン(silafluofen)、テブフェノシド(tebufenocide)、およびトラロメトリン(tralomethrin)である。特に好ましい殺虫剤は、フィプロニル、アルファシペルメトリン、ビフェントリン、クロルフェナピル、シフルトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、ヒドラメチルノン、メタフルミゾン、ペルメトリンである。特に好ましい殺虫剤は、フィプロニル、アルファシペルメトリン、デルタメトリン、クロルフェナピル、ヒドラメチルノン、およびメタフルミゾンである。特に好ましい殺虫剤はフィプロニルである。別の実施形態において、駆除剤は殺菌剤を含み、好ましくは駆除剤は少なくとも1種の殺菌剤からなる。好ましい殺菌剤は、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)、メトコナゾール(metconazole)、およびエポキシコナゾール(epoxiconazole)である。別の実施形態において、駆除剤は除草剤を含み、好ましくは、駆除剤は少なくとも1種の除草剤からなる。別の実施形態において、駆除剤は成長調節物質を含み、好ましくは、駆除剤は少なくとも1種の成長調節物質からなる。
【0016】
本発明の組成物は、組成物に対して、典型的には0.1重量%〜70重量%、好ましくは1重量%〜50重量%、特に3重量%〜30重量%の活性成分を含む。
【0017】
両親媒性物質は、典型的には、少なくとも1つの極性(親水性)部分および少なくとも1つの非極性(疎水性)部分を含む。典型的な両親媒性物質は、脂肪酸、界面活性剤、およびリン脂質である。組成物は1種以上の異なる両親媒性物質を含んでもよい。
【0018】
本発明の組成物は、通常0.01重量%〜40重量%、好ましくは0.05重量%〜30重量%、より好ましくは0.1重量%〜20重量%の両親媒性物質を含む。両親媒性物質は通常水に可溶性または分散性である。すなわち、透明な(すなわち、肉眼で見える粒子が存在しない)水溶液または水分散液を調製することができる。
【0019】
本発明の文脈において、用語「樹状」ポリマーには、非常に一般的に、分枝鎖構造および高い官能性を特徴とするポリマーが含まれる。本発明の意味における「樹状ポリマー」には、デンドリマー、超分岐ポリマー、およびそれらに由来する構造が含まれる。
【0020】
「デンドリマー」は、高い対称構造を有する分子的に均一な巨大分子である。デンドリマーはスターポリマーに構造的に由来し、スターポリマーは個々の鎖のそれぞれにさらに星状分枝を有する。それらは小分子から出発して一連の反応を連続的に繰り返すことにより得られ、その結果、より一層多数の分枝を有し、それらの分枝の末端にはそれぞれ官能基が存在して、これがさらなる分枝の出発点となる。このようにして、モノマー末端基の数は各反応段階ごとに増大して、最終的に球状の樹状構造となる。デンドリマーの特徴は、それらの合成の目的で実施する反応段階(世代)の数である。それらの均一な構造に基づいて、デンドリマーは一般に明確な分子量を有する。
【0021】
特に好適なものは、異なる長さおよび異なる分枝ならびにモル質量分布を持つ側鎖を有する分子的および構造的に不均一な超分岐ポリマーである。超分岐ポリマーの一般的定義に関しては、P. J. Flory, J. Am. Chem. Soc. 1952, 74, 2718およびH. Frey et al., Chem. Eur. J. 2000, 6, no. 14, 2499をも参照されたい。
【0022】
これらの超分岐ポリマーの合成に好適なものは、特に、ABxモノマーと呼ばれるものである。これらのモノマーは、互いに反応して結合することが可能な2個の異なる官能基AおよびBを有する。官能基Aは分子あたり1個のみ存在し、官能基Bは2個以上存在する。前記ABxモノマーを互いに反応させると、規則的に配置された分枝部位を有する実質的に架橋していないポリマーが生成する。該ポリマーは鎖の末端にほぼB基のみを有する。さらなる詳細は、例えば、Journal of Molecular Science, Rev. Macromol. Chem. Phys., C37(3), 555-579 (1997)に記載されている。
【0023】
本発明により使用される超分岐ポリマーは、好ましくは、10%〜100%、より好ましくは10%〜90%、特に10%〜80%の分子あたりの分岐度(DB)を有する。分岐度の定義については、H. Frey et al., Acta Polym. 1997, 48, 30を参照されたい。
【0024】
超分岐ポリマー、すなわち分子的および構造的に不均一であるポリマーが好ましく使用される。それらは、一般にデンドリマーと比較して調製するのが容易であり、そのためより経済的である。
【0025】
本発明は、特定のタイプの樹状ポリマー、すなわち、樹状ポリ尿素、特に超分岐ポリ尿素に関する。本発明の意味における用語「ポリ尿素」は、尿素基に加えて、ウレタン基、アロファネート基、ビウレット基、およびさらなる官能基(例えば、アミン官能基など)を有してもよいポリマーを含む。ウレタン基は通常O-アルキルウレタン基(アルキル基は1〜18個の炭素原子を有する)である。イソシアネート基とブロック剤として使用したモノアルコールとを反応させることにより得られるO-アルキルウレタン基が好ましい。
【0026】
約500〜100,000 g/mol、好ましくは1000〜50,000 g/molの範囲の重量平均分子量を有する樹状ポリ尿素が好ましい。この測定は、通常ゲル浸透クロマトグラフィーにより、検出器として屈折計を用いておこなう。測定は、好ましくは実施例に記載される通りに実施する。
【0027】
樹状ポリ尿素は、好ましくは水溶性または水分散性でない。これは透明な(すなわち、肉眼で見える粒子が存在しない)水溶液または水分散液を調製することが不可能であることを意味する。
【0028】
樹状ポリ尿素、特に超分岐ポリ尿素は当業者に公知であり、さまざまな方法により、例えば尿素とポリアミンとの直接の反応により、または炭酸ジアルキルとポリアミンとの反応により、入手可能である。しかしながら、本発明のポリ尿素は、好ましくはブロックされたポリイソシアネートとポリアミンとの反応により得ることができる。他の調製方法は、以下の文献に記載されている。例えば、WO 05044897 A1には、炭酸エステル(例えば、ジ炭酸エチル;A2モノマー)と多官能性アミン(例えば、トリアミン;B3モノマー)からの超分岐ポリ尿素の合成が記載されており、または、WO 05075541には、尿素または尿素誘導体(A2モノマー)と多官能性アミン(例えば、トリアミン;B3モノマー)からの超分岐ポリ尿素の合成が記載されている。
【0029】
樹状ポリ尿素、特に超分岐ポリ尿素は、好ましくは、2個以上の官能基を有するブロックされたジイソシアネートまたはポリイソシアネートと、少なくとも1種の2個以上の官能基を有する第1級および/または第2級アミンとから、ブロック剤の脱離を伴ってポリ尿素を得る反応を含む方法により調製することができる。
【0030】
2個以上の官能基を有するブロックされたジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、例えば、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートと、脂肪族、芳香脂肪族(araliphatic)または芳香族アルコール(好ましくはモノアルコール)との反応により調製し得る。さらに、それらは、例えば、EP-A-18586に記載される第1級アミンとアルコールおよび尿素との反応により、EP 18588もしくはEP-A-28338に記載される第1級アミンとO-アルキルカルバメートとの反応により、EP-A-570071に記載される第1級アミンと炭酸ジメチルとの反応により、またはEP-A-609786に記載されるホルムアミドと炭酸ジメチルとの反応もしくは第1級アミンとギ酸メチルとの反応により、調製し得る。一般に、EP 355443、EP 566925、EP 568782またはDE 19820114の明細書に記載される、ホスゲンを使用せずに調製されるジイソシアネートまたはポリイソシアネートの合成における出発物質または中間体として得られるジイソシアネートまたはポリイソシアネートを使用することも可能である。
【0031】
ジイソシアネートまたはポリイソシアネートとジアミンまたはポリアミンから超分岐ポリ尿素を得る反応において、通常の反応条件下でのイソシアネートとアミンの間の反応の不可逆性とは対照的な、イソシアネートとアルコールの間の反応の可逆性が、制御された分子構築を管理するために利用される。ここで、アルコールは原則としてイソシアネート基のブロック剤として、言い換えると、イソシアネートとアミンの非常に高い反応性の減速剤(moderator)として利用される。
【0032】
好適なブロック剤としては、モノアルコールまたはブロック試薬が挙げられ、モノアルコールが好ましい。好適なモノアルコールは、好ましくは直鎖もしくは分枝鎖脂肪族モノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、イソプロパノール、イソブタノールもしくは2-エチル-1-ヘキサノール、または芳香脂肪族モノアルコール、例えば、ベンジルアルコールもしくはフェニルエタノールである。特に好ましいのは、直鎖もしくは分枝鎖脂肪族モノアルコールならびにベンジルアルコールである。とりわけ好ましいのは、1〜18個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖脂肪族モノアルコールである。
【0033】
別の実施形態は、先行技術において記載される通りのブロック試薬として知られるものによりそのNCO基をブロックされた、2個以上の官能基を有するブロックされたジイソシアネートまたはポリイソシアネートから出発する。これらのブロック試薬の特徴は、それらによれば一般に160℃未満の温度でのイソシアネート基の熱可逆的ブロッキングが確保されることである。そのため、この種のブロック剤は、熱硬化性一成分ポリウレタン系において使用されるイソシアネート基を修飾するために使用される。使用される好ましいブロック試薬は、フェノール、カプロラクタム、1H-イミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、3,5-ジメチルピラゾール、マロン酸ジアルキルエステル、アセトアニリド、アセトンオキシムまたはブタノンオキシムである。ここでも、超分岐ポリ尿素を得るためのジアミンまたはポリアミンとの反応は、ブロック剤の脱離を伴って起こる。したがって、以下の文章において、モノアルコールまたはブロック試薬によりブロックされたNCO基を、「キャップされたNCO基」と呼ぶ。
【0034】
反応の後、すなわち、修飾されない状態で、樹状ポリ尿素、特に超分岐ポリ尿素は、アミノ基またはキャップされたNCO基のいずれかの末端を有する。それらは、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、ブタノール)、アルコール/水混合物、エステル(例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル)、ならびにジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンなどの極性溶媒に容易に溶解する。
【0035】
樹状ポリ尿素、特に超分岐ポリ尿素とは、本発明の文脈において、尿素基ならびに3個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは8個以上の官能基を有する製品を意味する。原則として官能基の数には上限はないが、非常に多くの官能基を有する製品は、例えば高い粘度または低い溶解度などの望ましくない特性を示す可能性がある。本発明の高官能性ポリ尿素は、通常100個以下の官能基、好ましくは50個以下の官能基を有する。
【0036】
樹状ポリ尿素、特に超分岐ポリ尿素を調製するために使用される2個以上の官能基を有する第1級および/または第2級アミンは、ウレタン基に対して反応性の少なくとも2個のアミン基を有する化合物から選択される。ウレタン基に対して反応性の少なくとも2個のアミン基を有する化合物は、例えば、エチレンジアミン、N-アルキルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N-アルキルプロピレンジアミン、ブチレンジアミン、N-アルキルブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-アルキルヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロヘキシルジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタメチレンジアミン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン、2-アミノプロピルシクロヘキシルアミン、3(4)-アミノメチル-1-メチルシクロヘキシルアミン、1,4-ジアミノ-4-メチルペンタン、アミン末端ポリオキシアルキレンポリオール(ジェファミン(Jeffamines)として知られる)、アミン化されたポリテトラメチレングリコール、N-アミノアルキルピペリジン、アンモニア、ビス(アミノエチル)アミン、ビス(アミノプロピル)アミン、ビス(アミノブチル)アミン、ビス(アミノペンチル)アミン、ビス(アミノヘキシル)アミン、トリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4-アミノメチル-1,8-オクタメチレンジアミン、N’-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、トリスアミノノナンまたはメラミンである。2種以上の上記化合物の任意の所望の混合物を使用することも可能である。好ましい2個以上の官能基を有する第1級および/または第2級アミンは、2個以上の官能基を有する第1級アミン、より好ましくは二官能性脂肪族第1級アミン、特にイソホロンジアミンである。
【0037】
意図されるジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、先行技術により公知であり、以下に例示される脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および芳香族ジイソシアネートまたはポリイソシアネートである。それらとしては、好ましくは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、モノマージフェニルメタンジイソシアネートとオリゴマージフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(ポリマーMDI)、テトラメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート三量体、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、イソホロンジイソシアネート三量体、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ドデシルジイソシアネート、リシンアルキルエステルジイソシアネート(ここで、アルキルはC1〜C10である)、1,4-ジイソシアナートシクロヘキサンまたは4-イソシアナートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0038】
ポリ尿素を構築するのに特に好適なものは、異なる反応性を有するNCO基を有するジイソシアネートまたはポリイソシアネートである。ここで、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、トリイソシアナートトルエン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2-ブチル-2-エチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2-イソシアナートプロピルシクロヘキシルイソシアネート、3(4)-イソシアナートメチル-1-メチルシクロヘキシルイソシアネート、1,4-ジイソシアナート-4-メチルペンタン、2,4’-メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、および4-メチルシクロヘキサン1,3-ジイソシアネート(HTDI)を挙げることができる。そのNCO基が開始時には同じ反応性を有するが、反応物質が最初に1つのNCO基に付加することにより第2のNCO基に対する反応性の低下を誘導することが可能なイソシアネートも、ポリ尿素を構築するのに好適である。それらの例は、そのNCO基が非局在化されたπ電子系を介して結合しているイソシアネート、例えば、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネートまたは2,6-トリレンジイソシアネートである。
【0039】
さらに、例えば、前記のジイソシアネートもしくはポリイソシアネートまたはそれらの混合物から、ウレタン、アロファネート、尿素、ビウレット、ウレトジオン、アミド、イソシアヌレート、カルボジイミド、ウレトンイミン、オキサジアジントリオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を用いて結合させることにより調製することができるオリゴイソシアネートまたはポリイソシアネートを使用することも可能である。
【0040】
ポリ尿素を構築するのに好適な特に好ましいジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および芳香族(好ましくは脂肪族)ジイソシアネートまたはポリイソシアネートから、ウレタン、アロファネート、尿素、ビウレット、ウレトジオン、アミド、イソシアヌレート、カルボジイミド、ウレトンイミン、オキサジアジントリオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を用いて(好ましくはイソシアヌレート構造を用いて)結合させることにより調製することができるオリゴイソシアネートまたはポリイソシアネートである。典型的には、これらのオリゴイソシアネートまたはポリイソシアネートは、2.1〜4.9、好ましくは2.9〜4.4、特に3.4〜3.9の平均NCO官能性を有する。平均モル質量は、通常300〜3000 g/mol、好ましくは400〜1500 g/mol、より好ましくは500〜800 g/molである。
【0041】
高官能性ポリ尿素の調製において、キャップされたNCO基に対して反応性の少なくとも2個のアミン基を有する化合物の、キャップされたイソシアネートに対するモル比を、得られる考え得る最も単純な縮合生成物(下に縮合生成物(A)と呼ぶ)が、平均して、1個のキャップされたNCO基および1個よりも多いキャップされたNCO基に対して反応性の基、または1個のキャップされたNCO基に対して反応性の基および1個よりも多いキャップされたNCO基のいずれかを含むように設定する必要がある。キャップされたジイソシアネートまたはポリイソシアネート(X)とジアミンまたはポリアミン(Y)から形成される縮合生成物(A)の最も単純な構造は、配列XYnまたはXnY [ここで、nは、一般に1〜6の間、好ましくは1〜4の間、より好ましくは1〜3の間の数を表す]となる。この場合に個別の基として得られる反応性の基を、以下に一般に「焦点基(focal group)」と呼ぶ。
【0042】
例えば、キャップされたジイソシアネートと2価アミンからの最も単純な縮合生成物(A)の調製において、反応比は1:1であり、その結果型XYの分子が得られる。キャップされたジイソシアネートと3価アミンから1:1のモル反応比で縮合生成物(A)を調製した場合には、得られるのは型XY2の分子である。ここでの焦点基はキャップされたイソシアネート基である。キャップされたジイソシアネートと4価アミンから、ここでも1:1の反応比で縮合生成物(A)を調製した場合、得られるのは型XY3の分子である。ここでの焦点基はキャップされたイソシアネート基である。さらに、縮合生成物(A)は、例えば、キャップされたジイソシアネートとキャップされたジイソシアネートに対して反応性の3価の成分からモル反応比を2:1として調製してもよい。ここで、得られるのは型X2Yの分子であり、焦点基はアミンである。二官能性の化合物(例えば2個のキャップされたイソシアネート基を有するものまたは2個のアミン基を有するもの)を追加的に成分に加えた場合、結果として鎖の伸張がもたらされる。ここでも、得られるのは型X2Yの分子であり、焦点基はキャップされたイソシアネート基である。
【0043】
反応生成物(A)は、好ましくは単離されない。好ましくは、方法のさらなる過程において、反応生成物(A)を直接超分岐ポリ尿素(P)に反応させる。
【0044】
縮合生成物(A)を得る反応および重縮合生成物(P)を得る反応は、通常0〜250℃、好ましくは60〜160℃の温度で、バルク中または溶液中でおこなう。これらの反応において、一般に、各反応物質に対して不活性な任意の溶媒を使用することができる。例えば、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたは溶媒ナフサなどの有機溶媒を使用することが好ましい。1つの好ましい実施形態において、縮合反応をバルク中でおこなう。反応を促進するために、アミンとの反応の過程で放出されるキャップ剤(例えばウレタン化に使用したアルコールなど)を蒸留(場合により減圧下で実施する)により反応平衡から除去してもよい。
【0045】
別の好ましい実施形態において、ブロッキングに使用されるアルコールを反応の溶媒として使用する。この場合、ウレタン成分をアルコール溶液として導入し、アミン成分を適切な割合で加える。温度を上げると、ウレタンの形で結合したアルコールがアミン成分により置換され、本発明の尿素が形成される。過剰に存在するアルコール成分は形成される尿素の溶媒としても機能する。
【0046】
反応を促進するために、触媒または触媒混合物を加えることも可能である。好適な触媒は、一般にウレタン反応を触媒する化合物であり、例えば、アミン類、アンモニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物または有機ビスマス化合物である。例として、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾールなどのイミダゾール類、チタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、スズジオクトエート、ジルコニウムアセチルアセトネートまたはそれらの混合物を使用することが可能である。触媒は、使用するイソシアネートの量に対して、一般に、重量で50〜10,000 ppm、好ましくは100〜5000 ppmの量で加える。さらに、好適な触媒を加えることおよび好適な温度を選択することの両方により、分子間重縮合反応を制御することが可能である。さらに、ポリマー(P)の平均分子量を、出発成分の組成により、および滞留時間により調節することができる。高温で調製された縮合生成物(A)および重縮合生成物(P)は典型的には室温で比較的長期間安定である。
【0047】
縮合生成物(A)の性質を考慮して、縮合反応により、分枝を有するが架橋を持たない異なる構造を有する重縮合生成物(P)を得ることが可能である。さらに、重縮合生成物(P)は、1個のキャップされたイソシアネート焦点基および2個よりも多いキャップされたイソシアネート基と反応性の基、あるいは1個のキャップされたイソシアネートと反応性の焦点基および2個よりも多いキャップされたイソシアネート基のいずれかを含む。反応性の基の数は、使用する縮合生成物(A)の性質および重縮合の程度に依存する。
【0048】
分子間重縮合反応を終了させる方法として、さまざまな可能性が存在する。例として、温度を、反応が止まり、生成物(A)または重縮合生成物(P)が保存中に安定である範囲まで下げることができる。好ましい実施形態において、縮合生成物(A)の分子間反応により所望の重縮合度を有する重縮合生成物(P)が得られた後直ちに、生成物(P)に、(P)の焦点基に対して反応性の基を有する製品を加えることにより反応を止める。例えば、キャップされたNCO焦点基の場合、例えばモノアミン、ジアミンまたはポリアミンを加えることができる。アミン焦点基の場合、生成物(P)には、例えばモノウレタン、ジウレタンもしくはポリウレタン、モノイソシアネート、ジイソシアネートもしくはポリイソシアネート、アルデヒド、ケトン、またはアミンに対して反応性の酸誘導体を加えることができる。
【0049】
樹状ポリ尿素は、一般に、2 mbar〜20 barの圧力範囲、好ましくは大気圧で、バッチ方式で、半バッチ方式でまたは連続的に操作される反応器または反応器カスケード中で、調製される。上記の反応条件の設定により、および、場合により、好適な溶媒の選択により、本発明の生成物は、その調製の後にさらなる精製をすることなくさらに加工することができる。
【0050】
両親媒性物質は、好ましくは、少なくとも1つの線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと結合した樹状ポリ尿素を含み、線状ポリマーの繰り返し単位が重合したアルキレンオキシドから構成される場合、該結合は二官能性リンカーを介しておこなわれる。
【0051】
樹状ポリ尿素と線状ポリマーおよび櫛形ポリマーの合計とのモル比は、通常1:1〜1:100、好ましくは1:1〜1:50、より好ましくは1:1〜1:25の範囲である。
【0052】
線状ポリマーは、好ましくは
a) 極性エチレン性不飽和モノマーを含むホモポリマーまたはランダムコポリマー、
b) ポリエチレングリコールのブロックもしくは少なくとも1種の極性エチレン性不飽和モノマーに基づくブロックを含むブロックポリマー、または
c) ポリエチレングリコールを含む重縮合物、または
d) ポリエチレングリコール
であり、ポリエチレングリコールd)は二官能性リンカーを介して樹状ポリ尿素に結合している。線状ポリマーは、より好ましくは、前記ポリマーa)、b)またはc)のうちの1つである。別の特に好ましい実施形態において、線状ポリマーは、前記ポリマーa)、c)またはd)のうちの1つである。線状ポリマーは、特に好ましくは前記ポリマーa)またはc)のうちの1つ、特にa)である。
【0053】
一実施形態において、線状ポリマーは、極性エチレン性不飽和モノマーを含むホモポリマーまたはランダムコポリマーであってよい。数平均モル質量Mnは、通常100,000 g/mol未満、好ましくは50,000 g/mol未満、より好ましくは20,000 g/mol未満、最も好ましくは10,000 g/mol未満であり、GPCおよび好適な標準により決定することができる。Mnは、典型的には200 g/molよりも大きく、好ましくは500 g/molよりも大きい。
【0054】
好適な極性エチレン性不飽和モノマーは、電荷を有するかイオン化可能な基を有し、かつ重合可能なエチレン性不飽和結合を含むモノマーである。電荷を有する基またはイオン化可能な基の例は、カルボン酸、スルホン酸、ポリエチレングリコール、アルコール、ニトリル、アミド、アミン、ジアルキルアミンである。極性エチレン性不飽和モノマーの例は、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、硫黄含有(メタ)アクリレート(例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、アミノ官能性(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート)、ポリエチレングリコール誘導体の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート)、イタコン酸、無水マレイン酸、OH基により置換されたC1〜C20-アルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドである。好ましい極性エチレン性不飽和モノマーは、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。「(メタ)アクリル」という表現は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0055】
極性エチレン性不飽和モノマーを含む線状ホモポリマーの例は、前記極性エチレン性不飽和モノマーのホモポリマー、好ましくはビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのホモポリマーである。
【0056】
極性エチレン性不飽和モノマーを含むランダムコポリマーの例は、前記極性エチレン性不飽和モノマーのコポリマー、好ましくはビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのコポリマーである。さらなるモノマーとして、ランダムコポリマーは、アクリル酸とC1〜C10-アルカノールとのエステル、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシルおよびアクリル酸3-プロピルヘプチル、メタクリル酸とC1〜C10-アルカノールとのエステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチルおよびメタクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸およびメタクリル酸のN-(C2〜C10-アルキル)アミド、ならびにアクリル酸およびメタクリル酸のN-(C1〜C2-アルキル)-N-(C2〜C10-アルキル)アミド、例えば、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-メチル-N-プロピルアクリルアミド、N-(n-ヘキシル)アクリルアミド、N-(n-オクチル)アクリルアミドならびに対応するメタクリルアミド、ビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、2〜10個の炭素原子を有するオレフィン、好ましくは3〜10個の炭素原子を有するα-オレフィン、例えば、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセン、脂肪族カルボン酸のビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ノナン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニルおよびステアリン酸ビニル、不飽和ニトリル、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、ハロゲン化オレフィン、例えば、塩化ビニル、好ましくは3〜6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸のC11〜C20-アルキルエステル、例えば、アクリル酸C11〜C20-アルキルおよびメタクリル酸C11〜C20-アルキル、例えば、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸イソトリデシル、メタクリル酸イソトリデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するエチレン性不飽和ジカルボン酸のジ-C1〜C20-アルキルエステル、例えば、フマル酸およびマレイン酸のジ-C1〜C20-アルキルエステル、例えば、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジブチルおよびマレイン酸ジブチル、好ましくは3〜6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、例えば、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルを含み得る。好ましいさらなるモノマーは、C1〜C10-アルカノールのアクリル酸およびメタクリル酸のエステルである。
【0057】
別の実施形態において、線状ポリマーは、ポリエチレングリコールのブロックまたは少なくとも1種の極性エチレン性不飽和モノマーのブロックを含むブロックポリマーであってよい。モル質量Mnは、通常200〜10,000 g/mol、好ましくは300〜2000 g/molの範囲であり、GPCにより決定することができる。ブロックポリマーは、A-BまたはA-B-A型であってよく、好ましくはA-B型である。これらの型のブロックポリマーの調製は周知である。好適で好ましい極性エチレン性不飽和モノマーは上に特定した通りである。ポリエチレングリコールのブロックの例は、200〜10,000 g/molのモル質量Mnを有するポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである。少なくとも1種の極性エチレン性不飽和モノマーのブロックの例は、ポリビニルピロリドンまたはポリ(メタ)アクリル酸またはポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートである。他方のブロックは、いずれの場合にも先行技術のポリマーブロックから形成され得る。他方のブロックは、好ましくは無極性である。例えば、それはカプロラクトンまたはプロピレンオキシドから形成される。別の実施形態において、他方のブロックはポリエステル(例えば、ジカルボン酸およびジオールに基づく)、ポリアミド(例えば、ジカルボン酸およびジアミンに基づく)、ポリカーボネート、ポリウレタンまたはポリ尿素を含む。好ましいブロックポリマーは、ポリエチレングリコール-ブロック-ポリカプロラクトンおよびポリエチレングリコールモノメチルエーテル-ブロック-ポリカプロラクトンおよびポリプロピレングリコール-ブロック-ポリエチレングリコールである。
【0058】
別の実施形態において、線状ポリマーは、ポリエチレングリコールを含む重縮合物であってよい。本発明の文脈において、用語「重縮合物」は、重付加生成物をも含む。ポリエチレングリコールの例は、200〜10,000 g/molのモル質量Mnを有するポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである。重縮合物の例は、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタンおよびポリ尿素であり、好ましくはポリエーテルおよびポリエステルである。好ましい重縮合物は、C3〜C24アルキレンオキシド、特にプロピレンオキシドに基づくポリエーテル、およびヒドロキシカルボン酸化合物、ジアルコール化合物または二酸化合物、特にヒドロキシカルボン酸化合物に基づくポリエステルである。好ましいヒドロキシカルボン酸化合物は、ラクトン、特にC4〜C18-アルキルラクトン、最も好ましくはε-カプロラクトンである。
【0059】
別の実施形態において、線状ポリマーはポリエチレングリコールであってよく、その場合、ポリエチレングリコールはリンカーを介してポリ尿素に結合している。リンカーは、好ましくはポリイソシアネートである。ポリエチレングリコールの例は、200〜10,000 g/mol、好ましくは300〜2000 g/molのモル質量Mnを有するポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである。ポリエチレングリコールは、好ましくはポリエチレングリコールモノ-C1〜C18-アルキルエーテル、特にポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0060】
櫛形ポリマーは、ここでは、典型的には、線状主鎖上におおよそ規則的な間隔で実質的に等しい長さの比較的長い側鎖、好ましくは脂肪族側鎖を含む櫛形ポリマーを意味すると理解される。モル質量Mnは、通常500〜100,000 g/molの範囲であり、GPCにより決定することができる。櫛形ポリマーは、好ましくは、重合した形のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートまたはアリルアルコールアルコキシレート(例えば、ポリエチレングリコールアリルエーテル)、好ましくは、100〜5000 g/molのモル質量Mnを有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含む。櫛形ポリマーは、より好ましくは、それぞれ100〜3000 g/mol、好ましくは200〜1500 g/molのモル質量Mnを有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレートまたはポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートを含む。ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートまたはアリルアルコールアルコキシレートに加えて、櫛形ポリマーは、任意の所望の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。好ましい追加のモノマーは、無極性モノマーおよび/または前記の極性エチレン性不飽和モノマーである。好ましい無極性モノマーは、C1〜C20-アルキル(メタ)アクリレートまたは20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物である。例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルまたは(メタ)アクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシルが挙げられる。有用なビニル芳香族化合物としては、例えば、ビニルトルエン、α-ブチルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-n-デシルスチレンまたはスチレンが挙げられる。好ましい追加のモノマーは、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、スチレン、ビニルピロリドンまたはそれらの混合物である。
【0061】
線状ポリマーまたは櫛形ポリマーは、公知の方法(例えば、US 5,556,918およびEP 742 238に記載される方法)により調製することができる。一実施形態において、極性エチレン性不飽和モノマーを含むホモポリマーまたはランダムコポリマーである線状ポリマー、ポリエチレングリコールのブロックまたは少なくとも1種の極性エチレン性不飽和モノマーに基づくブロックを含むブロックポリマー、および櫛形ポリマーは、開始剤および適切な場合には調節剤の存在下でのモノマーのフリーラジカル開始溶液重合により調製される。分解した時にヒドロキシラジカル(OHラジカル)を形成する開始剤、および/またはOH基またはNH2基を含む調節剤を用いることが好ましい。これらのOH基またはNH2基は後にリンカー反応性基として使用することができる。
【0062】
好適な開始剤は、tert-ブチルヒドロペルオキシド、テトラヒドロフランヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドまたは2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)などの有機ヒドロペルオキシドである。好適な調節剤は、アミノアルコール、アミノフェノールおよび特にチオアルカノール、例えば、3-ヒドロキシプロパンチオール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、2-ヒドロキシエチル3-メルカプトプロピオネート、および、特に2-ヒドロキシエタンチオール(メルカプトエタノール)である。このような調節剤を使用する場合には、重合は従来の開始剤、例えば従来のアゾ開始剤の存在下で、または有機ペルオキシド、例えば、アゾビス(イソブチロニトリル)、ジ-(tert-ブチル)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルアセテートまたはtert-ブチル2-メチルペルプロピオネートの存在下で実施することもできる。重合を前記調節剤のうちの1つの存在下で実施する場合、調節剤は一般に、モノマーの総量に対して、0.1〜12重量%、しばしば0.2〜8重量%、特に0.5〜5重量%の量で使用される。開始剤は一般に、重合されるモノマーに対して、0.05〜5重量%、しばしば0.1〜4重量%、より好ましくは0.2〜3重量%の量で使用される。さらなる詳細に関しては、特にEP 742 238の第3ページを参照されたい(その開示を参照により組み入れる)。
【0063】
線状ポリマーまたは櫛形ポリマーは、好ましくは二官能性リンカーを用いて樹状ポリ尿素に結合される。通常、リンカーを最初に線状ポリマーまたは櫛形ポリマーに共有結合し、次に、リンカーを含むポリマーを樹状ポリ尿素に結合する。リンカーを含むポリマーを調製するために、出発ポリマーは通常リンカーと反応することができる基(リンカー反応性基)を含む。リンカー反応性基の平均数は、一般にポリマー分子あたり2以下であり、好ましくは0.3〜1.8の範囲、特に0.5〜1.5の範囲、とりわけ0.6〜1.4の範囲である。リンカー反応性基はポリマー鎖内部に配置されるか、または好ましくはポリマー鎖の末端に存在する。
【0064】
極性エチレン性不飽和モノマーを含むホモポリマーまたはランダムコポリマーである線状ポリマー、ポリエチレングリコールのブロックもしくは少なくとも1種の極性エチレン性不飽和モノマーに基づくブロックを含むブロックポリマー、または櫛形ポリマーの場合には、リンカー反応性基は上記の通りの好適な開始剤および/または調節剤を用いて導入することができる。あるいは、リンカー反応性基は、先行技術の制御されたフリーラジカル反応(例えば、原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization (ATRP))、可逆的付加開裂連鎖移動重合(Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer Polymerization (RAFT))、またはニトロキシド媒介重合(Nitroxide Mediated Polymerization (NMP))を用いて、制御された方式で鎖の末端に導入することができる。ポリマー鎖中の官能基をリンカー反応性基として使用することも同様に可能である。例えば、重合したヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのいくつかのOH基のうちの1つをリンカー反応性基として使用することが可能である。
【0065】
ポリエチレングリコールを含む重縮合物の場合には、リンカー反応性基は、好適な化学量論および一官能性モノマーの使用により重縮合物の鎖の末端に得ることができる。リンカー反応性基は好ましくはラクトンの開環重合により得られ、これにより鎖の末端に正確に1個の官能性ヒドロキシ基が形成される。
【0066】
ポリエチレングリコールの場合には、使用されるリンカー反応性基は鎖の末端のヒドロキシ基であってよい。鎖の末端に正確に1個のリンカー反応性基を有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
【0067】
一般に、有用な二官能性リンカーには、少なくとも2個の反応性の基を有する反応性多官能性化合物が含まれる。好ましいリンカーは、少なくとも1.5、特に1.5〜4.5、とりわけ1.8〜3.5のイソシアネート基に基づく官能性を有するポリイソシアネートであり、脂肪族、脂環式および芳香族ジイソシアネートおよびポリイソシアネート、ならびに脂肪族、脂環式および芳香族ジイソシアネートのイソシアヌレート、アロファネート、ウレトジオンおよびビウレットが含まれる。ポリイソシアネートは、好ましくは分子あたり平均1.8〜3.5個のイソシアネート基を有する。好適なポリイソシアネートの例は、トリレン2,4-ジイソシアネート、トリレン2,6-ジイソシアネート、市販のトリレン2,4-ジイソシアネートとトリレン2,6-ジイソシアネートとの混合物(TDI)、フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジフェニル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、クメン2,4-ジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロロ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-エトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジメチレン-1,3-フェニレンジイソシアネート、5,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアナートジフェニルエーテルなどの芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、プロピレン1,2-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、ならびにイソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,2-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネートおよびビス(4,4’-イソシアナートシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジイソシアネートである。ポリイソシアネートの中でも、そのイソシアネート基が異なる反応性を有するもの、例えばトリレン2,4-ジイソシアネート、トリレン2,6-ジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、またはこれらの化合物の混合物が好ましい。
【0068】
ポリイソシアネートとの反応の反応条件は、線状ポリマーもしくは櫛形ポリマーまたは樹状ポリマーのリンカー反応性基のタイプに依存する。反応は、原則としてメルト中または有機溶媒中で実施することができる。線状ポリマーまたは櫛形ポリマーのリンカー反応性基がヒドロキシ基である場合、リンカーとの反応は、好ましくは非プロトン性極性有機溶媒またはそれらの溶媒の混合物中でおこなわれる。例としては、ケトン(例えば、アセトン)、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン(THF)、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられる。反応は、典型的には高温でおこなわれ、反応温度は選択される溶媒の沸点温度によっても決定される。第一成分がリンカー反応性基としてヒドロキシ基を有する場合、ポリイソシアネートを20〜80℃で第一成分と反応させることができるが、所望の場合には温度を100℃まで上げることも可能である。
【0069】
さらなるイソシアネート基と樹状ポリ尿素のリンカー反応性基との反応は、ポリ尿素のリンカー反応性基がアミノ基である場合、好ましくは-20〜40℃の温度で起こる。この場合にも、反応はメルト中または有機溶媒中で実施し得る。第1成分(それがリンカー反応性基としてヒドロキシル基を有する場合)との反応とは異なり、溶媒として既に上げた溶媒に加えて、ここではアルコールを使用することも可能である。これは、残ったイソシアネート基とポリマーのアミノ基との反応は、競合するアルコール性溶媒成分のヒドロキシ基との反応よりも早く進行するためである。好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、およびtert-ブタノールである。第2のイソシアネート基とポリ尿素との反応に特に好ましい溶媒は、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、キシレンまたはアセトン(第1の反応から得られる)と上に挙げたアルコールのうちの1つとの溶媒混合物である(該溶媒混合物には超分岐ポリ尿素を特に効果的に溶解することができる)。1つの特定の実施形態において、線状ポリマーまたは櫛形ポリマーの樹状ポリ尿素コアへの結合は、溶媒なしでメルト中で実施する。
【0070】
反応は等モル方式で実施することができる。これは、量の比を、官能基化試薬中または線状ポリマーもしくは櫛形ポリマー中の変換されるべきヒドロキシ基1モルあたり1モルのジイソシアネートを使用するように選択することを意味する。回収されないジイソシアネートの量を減らすために、わずかに(例えば0〜15 mol%)過剰のヒドロキシ基を使用して反応をおこなうことが好ましい。フリーラジカルコポリマーを開始剤または調節剤を用いてOH-官能基化する場合には、ジイソシアネートをこの方法により導入されるOH基に対して等モル量またはわずかに少ない量で反応させる。対称ジイソシアネート(例えば、HDI)の場合には、過剰のジイソシアネートを使用した後、過剰分を蒸留により除去することが望ましい。
【0071】
反応を触媒の存在下で実施することが好ましい。好適な触媒は、例えば、第3級アミン、例えば、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジンおよびジアザビシクロオクタン(DABCO)、カルボン酸亜鉛、カルボン酸ビスマス、チタンアルコキシド、有機スズ化合物、特にジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジオクトエートなどの脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、ジオクタン酸スズなどのジアルカン酸スズ(II)、ならびに酢酸セシウムなどのセシウム塩である。一実施形態において、カルボン酸亜鉛、カルボン酸ビスマス、チタンアルコキシドが特に好適であり、前記カルボン酸は、好ましくはC1〜C20-カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、オクタン酸またはネオデカン酸)である。触媒は、固体の総量に対して、50〜50,000 ppm、好ましくは100〜5000 ppmの量で使用することができる。
【0072】
ヒドロキシ基との反応は、典型的には40〜120℃の範囲の高温で実施する。一方では、アミノ基、特に樹状ポリ尿素コアのアミノ基との反応は、好ましくは-20〜40℃の温度でおこなう。個々の事例においてどの温度を選択するかは、使用する有機溶媒のタイプに依存する。溶媒は後に蒸留により除去することができる。
【0073】
典型的には、反応は、イソシアネート基により官能基化されるべき成分(例えば、線状ポリマーまたは櫛形ポリマー)を、まず触媒および場合により溶媒の存在下で、反応混合物中のイソシアネート値が半減するまでジイソシアネートと反応させる方法で実施する。ヒドロキシ基をわずかに過剰に使用する場合には、ヒドロキシ基の完全な変換に相当する理論的終結値まで反応を続ける。これは、例えば、公知の滴定手段により決定することができる。次に、他の成分(例えば、アミノ基を有する超分岐ポリ尿素)を添加する。樹状ポリ尿素と線状ポリマーおよび櫛形ポリマーの合計とのモル比は、1:1〜1:100、好ましくは1:1〜1:50、より好ましくは1:1〜1:25の範囲である。反応はイソシアネート値がゼロになるまで続ける。
【0074】
本発明の組成物は、両親媒性物質と20℃での水への溶解度が10 g/L以下である活性成分とを接触させることにより得ることができ、該両親媒性物質は、少なくとも1つの線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと結合した樹状ポリ尿素を含み、線状ポリマーがポリアルキレンオキシドから構成される場合には、該結合は二官能性リンカーを介しておこなわれる。前記成分は、混合、乳化または懸濁などの公知の方法により接触させることができる。
【0075】
活性成分と両親媒性物質との重量比は、100:1〜1:100、好ましくは10:1〜1:50、より好ましくは2:1〜1:25である。活性成分は溶解した形または固体粒子の形であってよい。活性成分粒子は結晶またはアモルファスであってよい。粒径は1 nm〜10μmであってよい。組成物は、活性成分の溶液、エマルション、懸濁液、またはサスポエマルションであってよい。本発明の組成物は、好ましくは水性組成物である。本発明の組成物は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に80重量%以上の水を含む。組成物は、典型的には99重量%以下の水を含む。
【0076】
本発明の組成物は製剤助剤を含んでもよく、助剤の選択は典型的には特定の施用形態および/または活性成分により決定される。好適な製剤助剤の例は、溶媒、固体の担体、界面活性物質(例えば、界面活性剤、保護コロイド、湿潤剤、および展着剤)、有機および無機増粘剤、殺細菌剤、凍結防止剤、消泡剤、所望の場合には着色剤、および接着剤(例えば、種子処理のため)である。
【0077】
意図される界面活性物質(補助剤、湿潤剤、展着剤、分散剤または乳化剤)としては、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩、例えばリグノスルホン酸(Borresperse(登録商標)製品、Borregaard、ノルウェイ)、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸(Morwet(登録商標)製品、Akzo Nobel、米国)、およびジブチルナフタレンスルホン酸(Nekal(登録商標)製品、BASF、ドイツ)のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩、ならびに脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩、アルキル-およびアルキルアリールスルホネート、アルキル、ラウリルエーテル、および脂肪アルコールサルフェート、ならびに硫酸化ヘキサ-、ヘプタ-およびオクタデカノールの塩、ならびに脂肪アルコールグリコールエーテルの塩、スルホン化ナフタレンおよびその誘導体とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ナフタレンまたはナフタレンスルホン酸とフェノールおよびホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシ化イソオクチルフェノール、オクチルフェノールまたはノニルフェノール、アルキルフェニルおよびトリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコールエチレンオキシド縮合物、エトキシ化ひまし油、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル、リグニン亜硫酸廃液、ならびにタンパク質、変性タンパク質、多糖(例えば、メチルセルロース)、疎水性変性デンプン、ポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)製品、Clariant、スイス)、ポリカルボキシレート(Sokalan(登録商標)製品、BASF、ドイツ)、ポリアルコキシレート、ポリビニルアミン(Lupamin(登録商標)製品、BASF、ドイツ)、ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)製品、BASF、ドイツ)、ポリビニルピロリドン、ならびにそれらのコポリマーが挙げられる。
【0078】
好適な界面活性剤としては、特に、アニオン性、カチオン性、非イオン性、および両性界面活性剤、ブロックポリマー、ならびに高分子電解質が挙げられる。好適なアニオン性界面活性剤は、スルホネート、サルフェート、ホスフェートまたはカルボキシレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩である。スルホネートの例は、アルキルアリールスルホネート、ジフェニルスルホネート、アルファ-オレフィンスルホネート、脂肪酸および油のスルホネート、エトキシ化アルキルフェノールのスルホネート、縮合ナフタレンのスルホネート、ドデシルベンゼンおよびトリデシルベンゼンのスルホネート、ナフタレンおよびアルキルナフタレンのスルホネート、スルホサクシネートまたはスルホサクシナメートである。サルフェートの例は、脂肪酸および油のサルフェート、エトキシ化アルキルフェノールのサルフェート、アルコールのサルフェート、エトキシ化アルコールのサルフェート、または脂肪酸エステルのサルフェートである。ホスフェートの例は、ホスフェートエステルである。カルボキシレートの例は、アルキルカルボキシレートおよびカルボキシ化されたアルコールまたはアルキルフェノールエトキシレートである。
【0079】
好適な非イオン性界面活性剤は、アルコキシレート、N-アルキル化脂肪酸アミド、アミンオキシド、エステルまたは糖をベースとする界面活性剤である。アルコキシレートの例は、アルコキシ化されたアルコール、アルキルフェノール、アミン、アミド、アリールフェノール、脂肪酸または脂肪酸エステルなどの化合物である。アルコキシ化には、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドを使用することが可能である。N-アルキル化脂肪酸アミドの例は、脂肪酸グルカミドまたは脂肪酸アルカノールアミドである。エステルの例は、脂肪酸エステル、グリセロールエステルまたはモノグリセリドである。糖をベースとする界面活性剤の例は、ソルビタン、エトキシ化ソルビタン、スクロースエステルおよびグルコースエステル、またはアルキルポリグルコシドである。好適なカチオン性界面活性剤は、第4級界面活性剤、例えば、1または2個の疎水性基を有する第4級アンモニウム化合物、または長鎖第1級アミンの塩である。好適な両性界面活性剤は、アルキルベタインおよびイミダゾリン類である。好適なブロックポリマーは、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのブロックを含むA-BまたはA-B-A型のブロックポリマー、またはアルカノール、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含むA-B-C型のブロックポリマーである。好適な高分子電解質は、ポリ酸またはポリ塩基である。ポリ酸の例は、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩である。ポリ塩基の例は、ポリビニルアミンまたはポリエチレンアミンである。
【0080】
本発明の組成物は、大量の界面活性物質および界面活性剤を含んでもよい。本発明の組成物は、組成物の総量に対して、合計0.1重量%〜40重量%、好ましくは1重量%〜30重量%、特に2重量%〜20重量%の界面活性物質および界面活性剤を含み得る。
【0081】
補助剤の例は、BreakThruS 240(登録商標)などの有機修飾ポリシロキサン;Atplus(登録商標)245、Atplus(登録商標)MBA 1303、Plurafac(登録商標)LF、およびLutensol(登録商標)ONなどのアルコールアルコキシレート;EO-POブロックポリマー、例えば、Pluronic(登録商標)RPE 2035およびGenapol(登録商標)B;アルコールエトキシレート、例えば、Lutensol(登録商標)XP 80;およびジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、例えばLeophen(登録商標)RAである。
【0082】
増粘剤(すなわち、組成物に変更されたレオロジー、すなわち、休止状態での高い粘性および動的状態での低い粘性を与える化合物)の例は、多糖、ならびにキサンタンガム(Kelzan(登録商標)、CP Kelco)、Rhodopol(登録商標)23 (Rhodia)またはVeegum(登録商標)(R.T. Vanderbilt)またはAttaclay(登録商標)(Engelhard Corp.)などの有機および無機層状鉱物である。
【0083】
1つの好ましい実施形態において、活性化合物は駆除剤であり、本発明の組成物は農薬製剤の形態である。好適な農薬製剤は、水溶性濃縮物(SL、LS)、再分散性濃縮物(DC)、乳化性濃縮物(EC)、エマルション(EW、EO、ES、ME)、懸濁液(SC、OD、FS)またはサスポエマルション(SE)である。組成物は、好ましくは、乳化性濃縮物(EC)、懸濁液濃縮物(SC)、水溶性濃縮物(SL)、種子処理用溶液(LS)、または再分散性濃縮物(DC)の形態を取る。
【0084】
農薬製剤は、通常、施用の前に希釈して、いわゆるタンクミックスを調製する。好適な希釈剤としては、中程度から高沸点の鉱油留分、例えば灯油またはディーゼル油、ならびにコールタール油および植物または動物由来の油、脂肪族、環状、および芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレンまたはその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、イソホロン、強極性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンまたは水が挙げられる。水を使用することが好ましい。両親媒性物質を実際にタンクミックスを調製する際に初めて加えることも可能である。この実施形態において、本発明の組成物はタンクミックスの形態である。
【0085】
希釈された組成物は、典型的にはスプレーまたは噴霧により施用される。タンクミックスに、さまざまなタイプの油、湿潤際、補助剤、除草剤、殺細菌剤または殺真菌剤を、施用の直前に加えることが可能である(タンクミックス)。これらの薬剤は、本発明の組成物に、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1の重量比で混合し得る。タンクミックス中の駆除剤の濃度は比較的広範囲で変えることができる、濃度は、一般的に0.0001%〜10%、好ましくは0.01%〜1%の間である。作物保護における施用の場合には、所望の効果の性質に依存して、施量はヘクタールあたり0.01〜2.0 kgの活性成分である。
【0086】
農薬製剤は、植物病原性菌類および/または望まれない植物の成長および/または望まれない昆虫もしくはダニの蔓延を防除するために、および/または植物の成長を調節するために使用することができ、それにより、組成物は、それぞれの有害生物、それらの生育環境、またはそれぞれの有害生物から保護されるべき植物、土壌に対して、および/または望まれない植物に対して、および/または作物に対して、および/またはそれらの生育環境に対して作用を引き起こす。農薬製剤は、植物上の望まれない昆虫またはダニを防除するため、および/または植物病原性菌類を防除するため、および/または望まれない植物の成長を防除するために、作物の種子を前記組成物により処理することにより使用することも可能である。
【0087】
本発明はまた、樹状ポリ尿素を含む両親媒性物質を提供し、該樹状ポリ尿素は少なくとも1つの線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと結合しており、線状ポリマーの繰り返し単位が重合したアルキレンオキシドから構成される場合には、該結合は二官能性リンカーを介しておこなわれる。ポリ尿素は、好ましくは、ポリイソシアネートおよび疎水性ポリアミンから構成され、疎水性ポリアミンは、第1級アミノ基の形の窒素を除いて、好ましくはさらなるヘテロ原子を持たない。
【0088】
好ましい両親媒性物質は、少なくとも1つの線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと結合した樹状ポリ尿素を含み、ここで、線状ポリマーは、
a) 極性エチレン性不飽和モノマーを含むホモポリマーまたはランダムコポリマー、
b) ポリエチレングリコールのブロックまたは極性エチレン性不飽和モノマーに基づくブロックを含むブロックポリマー、
c) ポリエチレングリコールを含む重縮合物、または
d) ポリエチレングリコール
であり、ポリエチレングリコールd)は二官能性リンカーを介してポリ尿素に結合している。
【0089】
好適で好ましい線状ポリマーまたは櫛形ポリマーは上に記載した通りである。特に好ましくは、線状ポリマーは前記ポリマーa)、b)またはc)のうちの1つである。別の特に好ましい実施形態において、線状ポリマーは、前記ポリマーa)、c)またはd)のうちの1つである。非常に好ましくは、線状ポリマーは、前記ポリマーa)またはc)のうちの1つである。特に好ましくは、櫛形ポリマーは、重合された形のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含む。好ましいリンカーはポリイソシアネートである。樹状ポリ尿素の他の好ましい実施形態は上に記載した通りである。
【0090】
本発明は、また、
a) ポリ尿素を線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと反応させること、または
b) ポリ尿素を、開環重合により線状ポリマーまたは櫛形ポリマー(好ましくは線状ポリマー)の一部を形成することが可能なモノマーと反応させること
により、本発明の両親媒性物質を調製する方法を提供する。
【0091】
方法a)が好ましい。
【0092】
方法b)に好適なモノマーは、例えば、ラクトン、ラクチドまたはオキサゾリジン、好ましくはε-カプロラクトンである。方法b)の開環重合の後、得られた部分ポリマーを、典型的には、本発明の両親媒性物質を得るためにさらに反応させる。例えば、さらなる反応は従来のアルコキシ化(例えば、エチレンオキシドによる)であってよい。
【0093】
調製方法a)によれば、線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと二官能性リンカーとを反応させる。好ましい二官能性リンカーおよび反応条件は上に記載した通りである。特に好ましい方法a)によれば、両親媒性物質は、
i) 樹状ポリ尿素および線状ポリマーまたは櫛形ポリマーを提供し、次いで、
ii) 上記成分を二官能性リンカーにより結合させる
ことにより得ることができる。
【0094】
特に好ましくは、両親媒性物質はこの方法により得られる。二官能性リンカーは好ましくはジイソシアネートである。
【0095】
本発明の利点は、高濃度の活性化合物を溶液中に導入することができること、既製のポリマーからリンカーを用いて非常に簡単にかつ工業的に両親媒性物質の調製を達成できること、線状ポリマーまたは櫛形ポリマー(より特定的にはランダムコポリマーおよび極性ホモポリマーならびにポリエチレングリコール)は入手が非常に容易であり、特定の両親媒性物質のために最適化することすら可能であること、または両親媒性物質そのものが水溶性または水分散性であることである。
【0096】
樹状ポリ尿素の直接のアルコキシ化と比較して、本発明の方法は、次の利点を提供する。
【0097】
i) アミノ基がイソシアネート基に対して溶媒のヒドロキシ基よりも高い反応性を有するので、ポリ尿素を、溶媒としてアルコールを用いてリンカー修飾されたポリエチレングリコールと容易に反応させることができる;ポリ尿素は一般により極性が低い有機溶媒(アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸ブチル、キシレン、トルエン)に溶解しないので、樹状ポリ尿素の溶媒としてのアルコールは必要である;有害なまたは高沸点の双極性非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドの使用は二次反応を引き起こす(KOH触媒が溶媒を分解する)。
【0098】
ii) ポリ尿素が同じ鎖長のPEG鎖(非常に狭いMW分布を有する「既製」の形で得ることができる)により官能基化される;それに対して、アルコキシ化の場合、アミノ基と2 EO単位との最初の反応がアミノジオール基を生成し、次にそれ自体が(たとえより遅いとしても)同時にさらなるEOとの反応をおこなうことが可能であり、異なる長さの鎖を生成する(ポリマーにおける立体的条件等も原因である)という問題が生じる。
【0099】
iii) 本発明により調製される両親媒性物質は、リンカーそのものによりその両親媒性およびその施用特性を調整することが可能である(例えば、イソホロンジイソシアネートリンカーは得られる両親媒性物質の疎水性部分を増大させ、それにより疎水性相互作用による活性成分の取り込みを改善する)。
【0100】
さらなる利点は、活性成分のバイオアベイラビリティーが増大すること、葉からの取り込みの場合の活性農薬成分の全身的作用(systemic effect)が増大すること、難溶性活性農薬成分でさえも溶解した形、例えばSL(水溶性濃縮物)またはLS(種子処理用溶液)に製剤することが可能になること、活性農薬成分の噴霧溶液中の分布が改善されること、および活性成分の再使用可能な包装および施用装置(例えば、駆除剤の噴霧装置)を水によりより効率的に洗浄することができることである。
【0101】
以下の実施例は本発明を限定することなく説明するものである。
【実施例】
【0102】
Basonat(登録商標)HI 100:ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくポリイソシアヌレート、DIN EN ISO 11909によるNCO含有量21.5重量%、DIN EN ISO 3219による23℃での粘度3500 mPas、BASF SEより市販されている。
【0103】
DBTL:ジ-n-ブチルスズジラウレート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
PEGMEMA 475:ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(M = 475 g/mol)
PEGMENA 1100:ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(M = 100 g/mol)
AIBN:アゾビス(イソブチロニトリル)
【0104】
超分岐ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、検出器として屈折計を用いて分析した。使用した移動相は、ヘキサフルオロイソプロパノールであり、分子量を決定するために使用した標準はポリメチルメタクリレート(PMMA)であった。アミン数(以下の文において常に第1級アミンの数を記載する)は、DIN EN 13717に従って決定した。本発明のポリマーのモル質量は、親超分岐コア分子の数平均分子量、そのアミン数、および選択された官能基化の程度(官能基化された線状ポリマーのNCO基のコア分子の平均アミン基に対する化学量論比)から、リンカー反応性基のリンカーに対する付加反応が定量的であると仮定して、計算により決定した。
【0105】
合成例1:末端アミノ基を有する超分岐ポリ尿素(A.1)
乾燥窒素気流下で、135.8 gのBasonat(登録商標)HI 100を導入し、攪拌しながら80℃に加熱した。次に、連続的に攪拌しながら、104.5 gの無水n-ブタノールを2時間かけて反応混合物の温度が80℃を超えないような速度で加えた。添加が終了した後、80℃でさらに1時間攪拌を続けた。次にバッチを60℃に冷却し、59.7 gのイソホロンジアミンおよび0.1 gの水酸化カリウム(2.0 mlのn-ブタノール中の溶液として)と混合した。次いで反応混合物を150℃で11.5時間攪拌した後、さらに0.2 gの水酸化カリウムを加え、次に150℃でさらに2時間攪拌した。反応時間中に渡って、反応混合物中のアミンの消費を0.1N HClを用いる滴定によりモニターし、この方法により変換を理論的に可能な完全な変換に対するパーセンテージとして測定した。60%の変換に到達した時に、反応混合物を室温に冷却することにより反応を終了した。n-ブタノールを含むポリマーA.1(Mn = 1710 g/mol;Mw = 3860 g/mol;アミン数:36 mg KOH/gポリマー)が、水不溶性の高粘度の黄色の液体の形で得られた。
【0106】
合成例2:末端アミノ基を有する超分岐ポリ尿素(A.2)
段階1 (A.2a):乾燥窒素気流下で、1499.1 gのBasonat(登録商標)HI 100を導入し、攪拌しながら80℃に加熱した。次に、連続的に攪拌しながら、1155.9 gのn-ブタノールを3.0時間かけて反応混合物の温度が80℃を超えないような速度で加えた。添加が終了した後、78℃で30分間攪拌を続け、次いで反応混合物を室温に冷却した。
【0107】
段階2 (A.2):乾燥窒素気流下で、146.4 gの反応生成物A.2aおよび36.4 gのイソホロンジアミンを導入した。触媒として0.1 gの水酸化カリウム(2 mlのn-ブタノール中の溶液として)を加えた後、反応混合物を攪拌しながら150℃に加熱し、この温度で12時間攪拌した後、室温に冷却することにより反応を終了させた。
【0108】
ポリマーA.2(Mn = 3600 g/mol;Mw = 12,100 g/mol;アミン数:25 mg KOH/gポリマー)が水不溶性の高粘度の黄色の液体の形で得られた。
【0109】
合成例3:末端アミノ基を有する超分岐ポリ尿素(A.3)
段階1 (A.3a):乾燥窒素気流下で、1499.1 gのBasonat(登録商標)HI 100を導入し、攪拌しながら80℃に加熱した。次に、連続的に攪拌しながら、1155.9 gのn-ブタノールを3.0時間かけて反応混合物の温度が80℃を超えないような速度で加えた。添加が終了した後、78℃で30分間攪拌を続け、次いで反応混合物を室温に冷却した。
【0110】
段階2 (A.3):240 gの反応生成物A.3aおよび59.7 gのイソホロンジアミンを導入して、触媒の0.02 gのDBTLと混合した。反応混合物を攪拌しながら160℃に加熱し、反応の間に放出されたn-ブタノールを蒸留により分離しながら、この温度で2時間攪拌した。この時間中に、反応混合物中のアミンの消費を0.1N HClを用いる滴定によりモニターし、この方法により変換を理論的に可能な完全な変換に対するパーセンテージとして測定した。47%の変換に到達した時に、室温に冷却することにより反応を終了し、冷却工程中に生成物を100 mlのn-ブタノールにより希釈した。
【0111】
n-ブタノールを含むポリマーA.3(Mn = 2600 g/mol;Mw = 10,200 g/mol;アミン数:55 mg KOH/gポリマー)が、水不溶性の高粘度の黄色の液体の形で得られた。
【0112】
合成例4:末端アミノ基を有する超分岐ポリ尿素(A.4)
乾燥窒素気流下で、129.3 gのBasonat(登録商標)HI 100を導入し、攪拌しながら80℃に加熱した。次に連続的に攪拌しながら、99.6 gのn-ブタノールを1.5時間かけて反応混合物の温度が80℃を超えないような速度で加えた。添加が終了した後、80℃でさらに30
分間攪拌を続けた。次にバッチを60℃に冷却し、還流冷却器を収集容器を付けた下降冷却器と交換して、反応混合物を71.1 gのイソホロンジアミンおよび0.05 gのDBTLと混合した。反応混合物を攪拌しながら150℃に加熱し、その温度で1.5時間攪拌して、反応中にn-ブタノールを蒸留により分離し、除去した。反応時間中に渡って、反応混合物中のアミンの消費を0.1N HClを用いる滴定によりモニターし、この方法により変換を理論的に可能な完全な変換に対するパーセンテージとして測定した。35%の変換に到達した時に、反応混合物を室温に冷却することにより反応を終了し、冷却工程中に100 mlのn-ブタノールにより希釈した。n-ブタノールを含むポリマーA.4(Mn = 2200 g/mol;Mw = 6600 g/mol;アミン数:33 mg KOH/gポリマー)が、水不溶性の高粘度の黄色の液体の形で得られた。
【0113】
合成例5:疎水性超分岐ポリ尿素コア(A.1)および線状PEG鎖に基づくコポリマー、官能基化度100% (A.5)
段階1 (A.5a):123.5 gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn = 500 g/mol)を導入し、減圧下、80℃で残留する水を除去した。室温に冷却した後、バッチを窒素雰囲気下に置き、ポリマーを123.5 gの酢酸ブチルに溶解した。次に、50.0 gのイソホロンジイソシアネートを加えて、混合物を50℃に加熱した。19 mgのネオデカン酸亜鉛を1 mlの酢酸ブチル中の溶液として加えることにより反応を開始し、NCO含有量が2.87%になるまで、50℃で3.5時間反応させた。その後、-20℃に冷却することにより反応を終了させた。反応生成物A.5aを、それ以上の後処理をすることなく、段階2に直接使用した。
【0114】
段階2 (A.5):4.0 gのポリ尿素コアA.1を導入し、窒素雰囲気下で36.0 gのイソブタノールに溶解し、3.9 gの反応混合物A.5aと混合した。次に、バッチを25℃で72時間攪拌した。すべてのNCO基の反応が完了した後(NCO含有量0%)、溶媒を減圧除去した。最終的に、これにより、線状-樹状コポリマーA.5(Mn = 249 g/mol)が、完全に水溶性である高粘度の黄色の液体の形で得られた。
【0115】
合成例6:疎水性超分岐ポリ尿素コア(A.2)および櫛形PMMA-co-PS-co-PEGMEMAコポリマーに基づくコポリマー、官能基化度100% (A.6)
段階1 (A.6a):250.0 gのテトラヒドロフランを窒素雰囲気下で導入した後、加熱還流した。117.1 gのメタクリル酸メチル、44.8 gのスチレンおよび315.7 gのPEGMEMA 1100からなる混合物1を2時間の工程で、ならびに、同時に5.4 gのAIBNおよび17.0 gのメルカプトメタノールの250.0 gのTHF中の溶液からなる混合物2を4時間の工程で、2台の計量ポンプを用いてゆっくりとバッチに供給した。混合物2の添加が終了した後、反応混合物をさらに16時間加熱還流した。GCによる残留するモノマーのモニタリングが1%未満のMMAフラクションを示した後、バッチを冷却し、生成物A.6a(Mn = 2200 g/mol)を次の段階2に直接使用した。
【0116】
段階2 (A.6b):200.0 gの反応混合物A.6aを導入し、減圧下でTHF溶媒を除去した。室温に冷却した後、バッチを窒素雰囲気下に置き、残渣を97.0 gの酢酸ブチルに溶解した。次に、8.78 gのイソホロンジイソシアネートを加えて、混合物を50℃に加熱した。10 mgのネオデカン酸亜鉛を1 mlの酢酸ブチル中の溶液として加えることにより反応を開始し、NCO含有量が0.71%になるまで、50℃で合計14時間反応させた。その後、-20℃に冷却することにより反応を終了させた。反応生成物A.6bを、それ以上の後処理をすることなく、段階3に直接使用した。
【0117】
段階3 (A.6):3.0 gのポリ尿素コアA.2を導入し、窒素雰囲気下で27.0 gのイソブタノールに溶解し、9.0 gの反応混合物A.6bと混合した。次に、バッチを25℃で48時間攪拌した。NCO基の反応が完了した後(NCO含有量0%)、溶媒を減圧除去した。最終的に、これにより、線状-樹状コポリマーA.6(Mn = 7120 g/mol)が、完全に水溶性である高粘度の黄色の液体の形で得られた。
【0118】
合成例7:疎水性超分岐ポリ尿素コア(A.3)および櫛形PVP-co-Pアクリル酸ラウリル-co-PEGMEMAコポリマーに基づくコポリマー、官能基化度100% (A.7)
段階1 (A.7a):100.0 gのテトラヒドロフランを窒素雰囲気下で導入した後、加熱還流した。155.9 gのアクリル酸ラウリル、144.2 gのN-ビニルピロリドンおよび163.3 gのPEGMEMA 475の200.0 gのTHF中の溶液からなる混合物1を3時間の工程で、ならびに、同時に、8.8 gのAIBNおよび27.8 gのメルカプトエタノールの200.0 gのTHF中の溶液からなる混合物2を4時間の工程で、2台の計量ポンプを用いてゆっくりとバッチに供給した。混合物2の添加が終了した後、反応混合物をさらに18時間加熱還流した。GCによる残留するモノマーのモニタリングが1%未満のアクリル酸ラウリルフラクションを示した後、バッチを冷却し、生成物A.7a(Mn = 1000 g/mol)を次の段階2に直接使用した。
【0119】
段階2 (A.7b):278.4 gの反応混合物A.7aを導入し、減圧下でTHF溶媒を除去した。室温に冷却した後、バッチを窒素雰囲気下に置き、残渣を140.0 gの酢酸ブチルに溶解した。次に、20.0 gのイソホロンジイソシアネートを加えて、混合物を50℃に加熱した。21 mgのネオデカン酸亜鉛を1 mlの酢酸ブチル中の溶液として加えることにより反応を開始し、NCO含有量が1.06%になるまで、50℃で合計約12時間反応させた。その後、-20℃に冷却することにより反応を終了させた。反応生成物A.7bを、それ以上の後処理をすることなく、段階3に直接使用した。
【0120】
段階3 (A.7):2.0 gのポリ尿素コアA.3を導入し、窒素雰囲気下で18.0 gのイソブタノールに溶解し、7.9 gの反応混合物A.7bと混合した。次に、バッチをまず25℃で17時間、次いで80℃で6時間攪拌した。すべてのNCO基の反応が完了した後(NCO含有量0%)、溶媒を減圧除去した。最終的に、これにより、線状-樹状コポリマーA.7(Mn = 5660 g/mol)が、完全に水溶性である高粘度の黄色の液体の形で得られた。
【0121】
合成例8:疎水性超分岐ポリ尿素コア(A.4)および線状PEG-b-ポリカプロラクトンブロックコポリマーに基づくコポリマー、官能基化度100% (A.8)
段階1 (A.8a):150.0 gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn = 500 g/mol)を導入し、減圧下、90℃で残留する水を除去した。室温に冷却した後、バッチを窒素雰囲気下に置き、205.0 gのε-カプロラクトンと混合した。混合物を90℃に加熱し、355 mgのブチルスズトリス(2-エチルヘキサノエート)を加えることによりカプロラクトンの開環重合を開始した。バッチをさらに18時間90℃に加熱し、反応が終了した後、室温に冷却した。得られたOH-末端ブロックコポリマーA.8a (Mn = 1180 g/mol)をそれ以上精製することなく段階2に直接使用した。
【0122】
段階2 (A.8b):200.0 gのブロックコポリマーA.8aを導入し、窒素雰囲気下に置き、34.1 gのイソホロンジイソシアネートと混合した。混合物を50℃に加熱した。30 mgのネオデカン酸亜鉛を1 mlの酢酸ブチル中の溶液として加えることにより反応を開始し、NCO含有量が2.23%になるまで50℃で4時間反応をおこなった。次いで、-20℃に冷却することにより反応を終了させた。反応生成物A.8bをさらなる後処理をおこなうことなく段階3に直接使用した。
【0123】
段階3 (A.8):18.0 gのポリ尿素コアA.4を導入し、窒素雰囲気下で72.0 gのイソブタノールに溶解した。次に、バッチを20.0 gの反応混合物A.8bと混合し、まず25℃で16時間、次いで80℃で4時間攪拌した。すべてのNCO基の反応が完了した後(NCO含有量0%)、バッチを冷却し、溶媒を減圧除去した。最終的に、これにより、線状-樹状コポリマーA.8(Mn = 4020 g/mol)が、完全に水溶性である高粘度の黄色の液体の形で得られた。
【0124】
可溶化実験
UV分光測定の波長(適用される場合)を表1にまとめる。
【0125】
表1:
【表1】

【0126】
一般法1:ピロキシカム、カルバマゼピン、エストラジオールおよびクロトリマゾールを用いる可溶化実験
約2 gのポリマーを50 mLのガラス製ビーカーに量り取った。次に0.2 gのそれぞれの活性成分をバッチに量り入れ、過飽和溶液を得た。次に、pH 7.0のリン酸緩衝液を、ポリマー:リン酸緩衝液の質量比が1:9となる量で加えた。次に、マグネチックスターラーを用いて混合物を室温で72時間攪拌した。1時間の静止時間の後、濾過により可溶化しなかった活性成分を除去した。次に、得られた透明または不透明な溶液を、UV分光法またはHPLCによりその活性成分含有量について分析した。
【0127】
表2:
【表2】

【0128】
一般法2:ピレン、ピラクロストロビンおよびフィプロニルを用いる可溶化実験
約100 mgのポリマーを50 mLのガラス製ビーカーに量り取り、9.900 gの蒸留水に溶解した。次に100 mgのそれぞれの活性成分をバッチに量り入れ、過飽和溶液を得た。次に、マグネチックスターラーを用いて混合物を室温で24時間攪拌した。1時間の静止時間の後、遠心分離により可溶化しなかった活性成分を除去した。次に、得られた透明または不透明な溶液を、UV分光法によりその活性成分含有量について分析した。
【0129】
表3:
【表3】

【0130】
コア、シェル、コア/シェル混合物および本発明のコポリマーの可溶化特性の比較
溶解度を方法2に記載される通りに測定した。
【0131】
表4a:
【表4】

【0132】
表4aは、本発明のポリ尿素A.4(PEGモノメチルエーテルにより官能基化されたA.1)が、個々の成分、すなわち、コアポリマー(A.1)、シェルポリマー(PEGモノメチルエーテル)またはコアポリマーとシェルポリマーとの混合物(すなわち、共有結合していないもの)よりも高い可溶化能力を有することを示している。
【0133】
表4b:
【表5】

【0134】
表4bは、本発明のポリ尿素A.7(A.7aにより官能基化されたA.3)が、個々の成分、すなわち、コアポリマー(A.3)、シェルポリマー(ポリマーA.7a)またはコアポリマーとシェルポリマーとの混合物(すなわち、共有結合していないもの)よりも高い可溶化能力を有することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性物質および20℃での水への溶解度が10 g/L以下である活性成分を含む組成物であって、該両親媒性物質が少なくとも1つの線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと結合した樹状ポリ尿素を含み、線状ポリマーの繰り返し単位が重合したアルキレンオキシドから構成される場合には該結合が二官能性リンカーを介しておこなわれる、前記組成物。
【請求項2】
線状ポリマーが、
a) 極性エチレン性不飽和モノマーを含むホモポリマーまたはランダムコポリマー、
b) ポリエチレングリコールのブロックまたは極性エチレン性不飽和モノマーに基づくブロックを含むブロックポリマー、または
c) ポリエチレングリコールを含む重縮合物、または
d) ポリエチレングリコール
であり、ポリエチレングリコールd)が二官能性リンカーを介してポリ尿素に結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
線状ポリマーが、
a) 極性エチレン性不飽和モノマーを含むホモポリマーまたはランダムコポリマー、
b) ポリエチレングリコールのブロックまたは極性エチレン性不飽和モノマーに基づくブロックを含むブロックポリマー、または
c) ポリエチレングリコールを含む重縮合物
である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
極性エチレン性不飽和モノマーが、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、硫黄含有モノマー、アミノ官能性モノマーまたはポリエチレングリコール誘導体の(メタ)アクリル酸エステルである、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
櫛形ポリマーが、重合した形のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートまたはアリルアルコールアルコキシレートを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
活性成分が駆除剤である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
樹状ポリ尿素が好ましくは超分岐ポリ尿素である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
超分岐ポリ尿素が、2個以上の官能基を有するブロックされたジイソシアネートまたはポリイソシアネートと少なくとも1種の2個以上の官能基を有する第1級および/または第2級アミンとの、ブロック剤の脱離を伴う反応を含む方法により得ることができる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ブロック剤がモノアルコールである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
樹状ポリ尿素を含む両親媒性物質であって、該樹状ポリ尿素が少なくとも1つの線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと結合しており、線状ポリマーの繰り返し単位が重合したアルキレンオキシドから構成される場合には該結合が二官能性リンカーを介しておこなわれる、前記両親媒性物質。
【請求項11】
線状ポリマーが、
a) 極性エチレン性不飽和モノマーを含むホモポリマーまたはランダムコポリマー、
b) ポリエチレングリコールのブロックまたは極性エチレン性不飽和モノマーに基づくブロックを含むブロックポリマー、
c) ポリエチレングリコールを含む重縮合物、または
d) ポリエチレングリコール
であり、ポリエチレングリコールd)が二官能性リンカーを介してポリ尿素に結合している、請求項10に記載の両親媒性物質。
【請求項12】
櫛形ポリマーが、重合した形のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含む、請求項10または11に記載の両親媒性物質。
【請求項13】
樹状ポリ尿素が好ましくは超分岐ポリ尿素である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の両親媒性物質。
【請求項14】
超分岐ポリ尿素が、2個以上の官能基を有するブロックされたジイソシアネートまたはポリイソシアネートと少なくとも1種の2個以上の官能基を有する第1級および/または第2級アミンとの、ブロック剤の脱離を伴う反応を含む方法により得ることができる、請求項13に記載の両親媒性物質。
【請求項15】
使用される前記ジイソシアネートまたはポリイソシアネートが、300〜3000 g/molの平均モル質量を有するオリゴイソシアネートまたはポリイソシアネートである、請求項13または14に記載の両親媒性物質。
【請求項16】
a) 樹状ポリ尿素を線状ポリマーまたは櫛形ポリマーと反応させること、または
b) 樹状ポリ尿素を、開環重合により線状ポリマーまたは櫛形ポリマーの一部を形成することができるモノマーと反応させること
による、請求項10〜15のいずれか1項に記載の両親媒性物質の調製方法。
【請求項17】
両親媒性物質と活性成分とを接触させることによる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の調製方法。

【公表番号】特表2013−512294(P2013−512294A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540393(P2012−540393)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067978
【国際公開番号】WO2011/064185
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】