説明

溶解性及び生体内利用率が改善されたチオウレア誘導体含有の医薬用組成物

本発明は、チオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩及びシクロデキストリン又はその誘導体を含む医薬用組成物、並びにこれを含む医薬用製剤に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩、シクロデキストリン又はその誘導体を含む医薬用組成物、並びにこれらを含む医薬用製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カプサイシン(8-メチル-N-バニリル-6-ノネンアミド)は唐辛子の主な辛味成分である。唐辛子は香辛料としてだけでなく伝統医薬として、胃の疾患の治療並びに局所適用で疼痛及び炎症の緩和のために長い間用いられてきた(Szallasi and Blumberg, Pharm, Rev., 51, pp l59-212(1999))。カプサイシンは非常に多様な生理活性を示すが、心血管系および呼吸系に強い刺激効果を示すだけでなく、局所適用時に疼痛と刺激性を誘発する。しかしながら、カプサイシンはこのような疼痛誘発後に、カプサイシンそのものだけでなく他の有害刺激に対しても脱感作を誘導し、それにより鎮痛効果をもたらす。この特性に基づきカプサイシン及びオルバニル、ヌバニル、DA-5018、SDZ-249482、レシニフェラトキシン等の類似体が鎮痛剤、又は尿失禁や皮膚疾患の治療剤として使用されている(Wriggleworth and Walpole, Drugs of the Future, 23, pp 531-538 (1998))。
【0003】
機械的、熱的及び化学的有害刺激の伝達は主に無髄神経線維(C-腺維)と有髄神経線維(A-腺維)のような一次求心性神経線維によるものであり、カプサイシンやその類似体(“バニロイド”)はこれらの神経線維に作用する。カプサイシンはこれらの神経線維に存在する受容体に作用して、カルシウム及びナトリウムイオン等の1価及び2価カチオンを強力に流入させることにより、強力な刺激を誘発し、その後神経機能を遮断することにより、強力な鎮痛効果を発揮する(Wood et al., J. Neurosci. 8, pp 3208-3220 (1988))。バニロイド受容体(VR1)は、ごく最近クローニングされてその存在が確認された(Caterina et al., Nature 389, pp 783-784 (1997))。神経線維上のバニロイドの受容体、すなわちバニロイド受容体(VR1)はカプサイシン又はバニロイドだけでなく、プロトン及び熱刺激等の多様な有害刺激も伝達することが報告されている(Tominaga et al., Neuron, 21, pp 531-543 (1998))。これらの事実はバニロイド受容体が様々な有害刺激に対する統合的調節体として機能し、疼痛及び有害刺激の伝達において不可欠な役割を果たしていることを示唆している。近年、バニロイド受容体の遺伝子を欠いたノックアウトマウスが調製され(Caterina et al., 2000, Science, 288, pp 306-313; Davis et al., 2000, Nature, 405, pp 183-187)、このマウスは正常マウスと比べて熱刺激および熱性痛覚過敏に対して示す反応性が著しく弱い。この結果は有害刺激伝達における上記受容体の重要性を再確認するものである。
【0004】
上記のように、カプサイシン反応性知覚神経細胞及びその細胞に存在するバニロイド受容体は全身に分布して痛覚と有害刺激を伝達するという基本的な機能を果たしている。さらにそれらは、神経性炎症の発現においてもやはり重要因子として作用し、従って、神経障害、神経損傷、脳卒中、喘息、慢性閉塞性肺疾患、膀胱過敏症、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、発熱、皮膚疾患及び炎症性疾患などの疾患の原因と密接に関連している。それらの神経障害性疾患との関連性も示唆されている(WO 99/00125)。近年、胃腸障害におけるカプサイシンに反応性を示す求心性知覚神経の役割が注目されている。求心性神経はCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)等の末梢神経ペプチドを遊離して胃の微小循環を改善し、胃の損傷に対する防御作用を示す一方で、交感神経系を刺激して胃の損傷を誘発し得ることも提唱されている(Ren et al., Dig. Dis. Sci. 45, pp 830-836 (2000))。従って、バニロイド受容体調節剤は多機能なバニロイド受容体の活性を調節することにより、上記の様々な疾患の予防又は治療において有効な薬剤になることが期待されている。
【0005】
WO 02/16318において、本発明者らはチオウレア誘導体を含む多数のバニロイド受容体拮抗剤の鎮痛作用、抗炎症作用及び抗潰瘍作用を、動物実験を通じて明確に証明し、それによりバニロイド受容体拮抗剤の鎮痛、抗炎症、及び抗潰瘍薬剤としての有効性を示唆した。しかしながら、このようなチオウレア誘導体はほとんど水に不溶性であり、そのためこれらを医薬上有効な量で含有する、例えば注射用溶液などの液体製剤を製造するのは難しい。さらに、これらの誘導体を含有する固形製剤は、限られた生体内利用率と血漿中薬物濃度の著しい個体差を示すために臨床で使用する際に多くの難点がある。よって、チオウレア誘導体の溶解性及び生体内利用率を増加させる方法の開発が尚も必要である。
【0006】
そこで我々の研究所の多くの研究者が、様々な担体及び製剤化方法を用いて水溶性の低いチオウレア誘導体の溶解性及び生体内利用率を改善させるために様々な研究を行ってきたが、チオウレア誘導体の高い親油性のために全ての試みが失敗に終わった。例えば、粉砕により薬物の粒子サイズを小さくすることにより溶解速度を高めようと試みた場合、固形製剤の形成は可能だったが液体製剤の形成は不可能であった。溶出率が有意に改善されることはなかった。固体分散物は薬物自体の特性によりほぼ半固体形状を示し、溶出率も低かった。
【0007】
シクロデキストリンは、α-(1→4)-グリコシド結合で連結したd-グルコピラノース単位を有する環状化合物である。シクロデキストリンの外部表面は水酸基が存在するため親水性であるが、内部は疎水性である。よって、シクロデキストリンの内部に適した分子構造を有する親油性物質(“ゲスト分子”)がシクロデキストリンの内部に包接されて包接複合体を形成することができる。一般的に使用されるシクロデキストリンは、それぞれ6、7及び8個のグルコピラノース単位を有するα-、β-及びγ-シクロデキストリンであり、このうちβ-シクロデキストリンが包接能および低価格という理由から好ましい。シクロデキストリンと包接複合体を形成する化合物に関しては、Journal of Parenteral Science & Technology, 43, pp 231-240 (1989)及びStella and Rajewski, Pharmaceutical Research, 14, pp 556-567 (1997)に報告されている。
【0008】
最近になって高い溶解度を有する様々なシクロデキストリン誘導体、例えばアルキル-シクロデキストリン、ヒドロキシアルキル-シクロデキストリン、カルボキシエチル-シクロデキストリン、スルホアルキルエーテル-シクロデキストリン等が開発された。ヒドロキシアルキルとしては、 炭素数1〜6のアルキル基を有するものが好ましく、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等を挙げることができ、特にヒドロキシプロピル基が好ましい。様々なシクロデキストリン誘導体のうち、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは水中での溶解度が高いうえに毒性が無いため注射剤及び経口製剤での使用に最も適している。様々なシクロデキストリン誘導体がRajewski and Stella, Journal of Pharmaceutical Science 85(11), pp 1142-1169 (1996)に報告されている。
【0009】
シクロデキストリンを利用した包接複合体に関しては、USP 4,727,064が医薬用特性を改善する方法を開示している。例えば、シクロデキストリン誘導体を水性媒質に溶解させ、得られた溶液に薬物を加えて薬物/シクロデキストリン複合体を形成させることにより親油性薬物の低い水溶性を改善させることができる。USP 4,596,795はシクロデキストリン誘導体との包接複合体の形態の性ホルモンを舌下又はバッカル経路で投与したところ、このホルモンの全身循環中への有効な移行が得られその後徐々に分解されるのみであることを開示している。さらに、USP 4,371,673はレチノイドポリマーのシクロデキストリン複合体及び、レチノイドとシクロデキストリンのエーテル型誘導体の複合体を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的はバニロイド受容体1(VR1)に対する優れた拮抗活性を有するチオウレア誘導体の溶解性及び生体内利用率が改善された医薬用組成物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、上記の組成物を含有する均質性、安定性及び生体内利用率が改善された医薬用製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様により、式(I)のチオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩、シクロデキストリン又はその誘導体、及び任意で医薬上許容しうる添加剤を含む医薬用組成物が提供される:
【化1】

式中、
R1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、メトキシカルボニル基、カルボキシル基又はヒドロキシアミノカルボニル基を示し、
R2は水素原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、ネオペントキシ基、メトキシメトキシ基又はベンジルオキシ基を示す。
【0013】
本発明の別の態様により、上記の医薬用組成物を含む、疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、手術後疼痛、偏頭痛、関節痛、神経障害、神経損傷、糖尿病性神経障害、神経変性疾患、神経性皮膚疾患、脳卒中、膀胱過敏症、過敏性腸症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、皮膚・目又は粘膜の刺激、発熱、胃十二指腸潰瘍及び炎症性疾患からなる群から選択される疾患の予防又は治療用の医薬用製剤が提供される。
【0014】
また別の態様として、本発明は式(I)のチオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩、及びシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体を含む包接複合体に関するものである:
【化2】

式中、
R1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、メトキシカルボニル基、カルボキシル基又はヒドロキシアミノカルボニル基を示し、
R2は水素原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、ネオペントキシ基、メトキシメトキシ基又はベンジルオキシ基を示す。
【0015】
本発明はさらに、バニロイド受容体の病的刺激及び/又は発現増加に関連した疾患の治療用医薬の製造のための、式(I)のチオウレア誘導体及びシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体の包接複合体の用途に関するものである。
【0016】
本発明はさらに、VR1受容体の病的刺激を罹患しているヒトを含む哺乳動物の治療方法であって、式(I)のチオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩、シクロデキストリン又はその誘導体、及び任意で医薬上許容しうる添加剤を含む医薬用組成物を上記哺乳動物に投与することを含む方法に関するものである。
【0017】
本発明はさらに、バニロイド受容体の病的刺激及び/又は発現増加に関連した疾患の治療のための、式(I)のチオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩、シクロデキストリン又はその誘導体、及び任意で医薬上許容しうる添加剤を含む医薬用組成物の用途に関するものである。
【0018】
式(I)のチオウレア誘導体はWO 02/16318に開示されており、それに開示された方法に従って製造できる。
本発明で使用するチオウレア誘導体のうち、好ましいものは、
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア、
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-クロロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア、
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-メトキシカルボニル-4-メタンスルホニル-アミノベンジル)チオウレア、
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア、
1-(4-t-ブチル-2-イソブトキシベンジル)-3-(4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア、及び医薬上許容しうるその塩である。
それらのうち特に好ましいものは、1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレアである。
【0019】
本発明の医薬用組成物は、式(I)のチオウレア系誘導体又は医薬上許容しうるその塩のための溶解度及び生体内利用率を改善する担体として、シクロデキストリン又はその誘導体を含む。本発明の医薬用組成物は、チオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩1重量部に対してシクロデキストリン又はその誘導体を1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部含むことができる。
【0020】
シクロデキストリンは、無水物又は水和物形態のものでよい。さらに、無定形又は結晶形でもよく、α-、β-又はγ-型でもよい。
本発明に使用できるシクロデキストリン誘導体の好ましい例としては、少なくとも一つの水酸基が置換されているα-、β-又はγ-シクロデキストリン誘導体が挙げられる。好適な置換体の例としては、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、カルボキシメチル又はカルボキシエチルのようなアルキル基又は置換アルキル基(エーテル誘導体);マルトシル、グルコシル、マルトトリオシルのようなサッカライド(サッカライド誘導体);又はスルホアルキル基(スルホアルキルエーテル誘導体)を挙げることができる。
【0021】
好ましいシクロデキストリン誘導体としては、2,6-ジメチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-γ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、(2-カルボキシメトキシ)プロピル-β-シクロデキストリン又はスルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン等を例示することができ、特に2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが特に好ましい。さらに、無定形のシクロデキストリン誘導体は本発明で好ましく使用することができる。
【0022】
本発明の組成物はさらに当技術分野で公知の医薬上許容しうる添加剤、例えば、電解質又は非電解質の希釈剤、pH調節剤、浸透圧調節剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、増粘剤、滑沢剤及び防腐剤、並びにそれらの混合物を含んでもよい。
【0023】
本発明の医薬用組成物が水又は胃腸液にさらされると微細な固体粒子形態の水溶性担体が水相に放出され、同時に包接複合体及び/又は固体分散体の成分が微細粒子として放出され、それにより薬物粒子の表面積が増大する。薬物粒子がより小さくなり担体が非常に短い時間内に完全に溶解するため、溶解の初期段階で拡散層、すなわち薬物粒子を囲んでいる微細環境中における担体による薬物の可溶化が達成される。よって、上記の因子が集合的に作用して薬物の溶解度と初期溶解速度を増加させることが分かる。
【0024】
さらに、チオウレア誘導体/シクロデキストリン又はその誘導体の包接複合体は水又は水性体液にさらされると、不溶性のチオウレア誘導体が水溶性が非常に高いシクロデキストリン又はその誘導体の疎水性空洞に包接されシクロデキストリン又はその誘導体は水中に溶解するという過程を通して、薬物の過飽和溶液を形成しうる。
【0025】
本発明の医薬用組成物は、a)シクロデキストリン又はその誘導体を、水若しくは緩衝液等の水性溶液又は、例えばエタノール等のアルコールのような有機溶媒に均質に溶解させる、b)得られたシクロデキストリン溶液を攪拌しながらチオウレア誘導体と反応させる、及び任意で、c)得られた反応生成物を、例えば凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥又は流動床乾燥により乾燥させて固体粉末を得る、という工程を含む方法により製造してもよい。
【0026】
上記の有機溶媒の代表的な例としては、クロロホルム、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン及びエチルアセテートが挙げられる。エタノールが好ましい。
【0027】
シクロデキシトリン又はその誘導体の均質化工程で水性溶液又は少量のエタノールを使用した場合は、工程b)で得られた液体層の反応生成物をろ過のみを行った後に注射用溶液又は内用液剤の製造に用いてもよい。
【0028】
工程c)で得られた固体粉末はふるいにかけるか微粉砕して適当な粒径の粒子とした後、固体製剤の製造に使用してもよい。この固体生成物は、溶解性が改善されているため血漿中薬物濃度の個体差が低減されるという長所、及び固体製剤の製造に適した流動性粉末の形態を有するという長所を有する。
【0029】
式(I)のチオウレア誘導体は有機溶媒中よりも水性溶液中の溶解度が低いため、工程a)で溶剤として水性溶液を使用すると、得られる医薬用組成物は主にチオウレア誘導体及びシクロデキストリンの包接複合体を含む。一方、有機溶媒を工程a)で使用すると、得られる医薬用組成物は主にチオウレア誘導体及びシクロデキストリンの固体分散体を含む。
【0030】
本発明の組成物は、チオウレア誘導体とシクロデキストリン又はその誘導体との包接複合体、及び/又は固体分散体形態であってもよく、水又は胃腸液中でチオウレア誘導体の優れた溶解度及び速い溶解速度を示し、それにより生体内利用率が増加する。
【0031】
本発明の医薬用組成物は、医薬上許容しうる賦形剤と組み合わせて、経口又は、例えば静脈内、皮下、筋肉内、経皮、経眼、経鼻、膣内及び直腸内注射等の非経口で投与することができる医薬用製剤にしてもよい。好ましくは、本発明の組成物は経口で投与される。上記の医薬用製剤は本発明の医薬用組成物に加えて公知他の活性成分を含んでもよい。
【0032】
経口投与用の医薬用製剤は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、ペレット又はカプセル剤等の固体形態、又は液剤、懸濁剤又はシロップ剤等の液体形態でもよい。経口用製剤は速放性でも徐放性でもよい。
【0033】
例えば、固体形態の経口用製剤は、結合剤(例えば、α化コーンスターチ、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、直接打錠用の充填剤(例えば、スプレードライラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ又はステアリルフマル酸ナトリウム)又は界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリソルベート)のような通常の医薬上許容しうる賦形剤を含んでもよい。
【0034】
錠剤は通常の公知の方法でコーティングしてもよい。例えば、サッカライド、蜜蝋若しくはそれらの組み合わせ、又はポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性ポリマーを口腔内又は胃内で崩壊するコーティング材料として使用してもよく、或いは、胃液抵抗性の材料をコーティング材料に用いて活性成分が小腸又は大腸で吸収されるようにしてもよい。
【0035】
経口投与用の液剤は、例えば溶液、シロップ又は懸濁液(例えば、胃液抵抗性のコーティング材料でコーティングされた組成物、及び水又はシロップ等の懸濁液に粒子として分散された組成物)の形態をとることができ、或いは使用前に水又はその他の適した賦形剤と混和する乾燥組成物として提供することもできる。
【0036】
コーティングされた錠剤、顆粒又はペレットは、コーティングされたフィルム層及び核を含んでもよい。フィルム層は、酢酸セルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ワックス、ユードラジット類(Eudragits)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース等から選択される少なくとも一つフィルム形成材料、又はポリエチレングリコール、ソルビトール、スクロース、有機酸等から選択される少なくとも一つのチャンネル形成材料剤、又はそれらの組み合わせからできていてもよい。
【0037】
カプセル製剤は、散剤、顆粒剤又は液剤をゼラチン等でできたカプセルに充填することにより得てもよい。
【0038】
好ましい固体形態の経口用製剤は、浸透圧ポンプ錠剤、多層錠剤、コーティング錠剤、コーティングペレット、再結合粉末、カプセル, コーティング顆粒でもよい。
【0039】
液剤、シロップ剤又は懸濁剤のような経口投与用の液体形態の製剤は、乳化(例えば、レシチン又はアカシア)、非水性溶媒(例えば、アーモンド油、脂肪酸エステル、エタノール又は分別植物油)及び防腐剤(例えば、メチル又はプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸、ベンジルアルコール、又はソルビン酸)を使用して通常の方法で製造してもよい。液体製剤は乾燥固体形態の製剤を適当な水性又は非水性の担体と混合することにより製造してもよく、さらにpH調節剤、香味剤、着色料又は甘味料のような添加剤を追加して含んでもよい。pH調節剤の代表的な例としては、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、マロン酸、マンデル酸、アスコルビン酸等の有機酸及びリン酸等の無機酸を含む酸、並びに水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の塩基が挙げられる。
【0040】
静脈内、皮下、又は筋肉内投与用の本発明の医薬用製剤は、無菌の水性又は非水性溶媒中に活性成分を溶解した注射用溶液の形態でもよい。水性溶媒の代表的な例としては生理食塩水が挙げられ、非水性溶媒の代表的な例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、オレイン酸エチル、ヨウ化ケシ油及び脂肪酸エステルである。これらの製剤はさらに等張化溶液、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤又は安定化剤等の添加剤を追加して含んでもよく、また、ろ過、抗菌剤の混合、又は放射線照射により殺菌してもよい。これらの製剤は発熱物質を含まない滅菌物質と組み合わせた固体製剤の形態に調製して、滅菌蒸留水又は生理食塩水のような適当な溶媒に使用前に溶解できるようにしてもよい。
【0041】
経皮投与用の本発明の医薬用製剤は、軟膏、クリーム、ローション、液剤、ゲル、ペースト剤、貼剤及びエアゾールの形態でもよく、通常の方法により製造できる。
【0042】
さらに、経眼投与用の本発明の医薬用製剤は懸濁液形態の製剤よりも透明度の高い液体の形態が好ましい。この製剤は使用前に適当な溶媒に溶解できる固体製剤の形態に調製してもよい。経眼用製剤はさらに緩衝剤、張性調節剤、増粘剤、懸濁化剤、可溶化剤、pH調節剤、又はキレート剤のような補助剤を追加して含んでいてもよい。緩衝剤の代表的な例としては、リン酸塩、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、及び有機酸(例えば酢酸及びクエン酸)又はその塩が挙げられる。緩衝剤の代表的な例としては、ホウ酸、アルカリ金属塩(例えば塩化ナトリウム及び塩化カリウム)及びグリセロールが挙げられる。増粘剤の代表的な例としては、ヒドロキシプロピルセルロース及びその塩が挙げられる。懸濁化剤の代表的な例としては、界面活性剤(例えばポリソルベート)及び水溶性ポリマー(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース及びポリビニルアルコール)が挙げられる。可溶化剤の代表的な例としては、例えばポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアリン酸塩、トリグリセリド、ポリエチレングリコールのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。pH調整剤の代表的な例としては、アルカリ性化合物(例えば水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム及びホウ酸ナトリウム)及び酸性化合物(例えば塩酸、ホウ酸、リン酸又は酢酸)が挙げられる。キレート剤の適当な例としては、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び縮合リン酸ナトリウムが挙げられる。
【0043】
経鼻投与用の本発明の医薬用製剤は溶液又は粉末の形態でもよい。溶液形態の場合は懸濁状の製剤よりもより透明であることが好ましく、使用前に適当な溶媒に溶解することができる粉末又は錠剤形態に調製してもよい。そのような溶媒の代表的な例としては、水、食塩水、リン酸緩衝液及び酢酸緩衝液が挙げられる。溶液形態の経鼻製剤はさらに当技術分野で周知の界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、防腐剤及び増粘剤等の添加剤をさらに含んでもよい。粉末形態の製剤は好ましくは吸収性基剤を含んでいたもよく、その代表的な例として、ポリアクリル酸塩(例えばポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム及びポリアクリル酸アンモニウム)、セルロースの低級アルキルエーテル(例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アミロース及びプルランのような水溶性基剤;セルロース誘導体(例えば結晶セルロース、α-セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、デキストリン誘導体(例えばヒドロキシプロピルデキストリン、カルボキシメチルデキストリン、架橋デキストリン、アミロース、アミロペクチン、ペクチン)、蛋白(例えばゼラチン、カゼイン、カゼインナトリウム)、ガム(例えばアラビアガム、トラガカントガム、グリコマンナン)、ポリビニルピロリドン、架橋ポリアクリル酸又はその塩、架橋ポリビニルアルコールのような非水溶性基剤;及びそれらの混合物を挙げることができる。粉末状製剤はさらに当技術分野で周知の酸化防止剤、着色剤、防腐剤及び貯蔵安定化剤等の添加剤を含んでもよい。経鼻投与用の溶液又は粉末形態の医薬用製剤は好ましくはスプレー器具を使用して投与してもよい。
【0044】
本発明の組成物は、液体又は半固形の経膣又は直腸投与用の剤形に製剤化してもよく、例えばココア脂及びグリセリドのような通常の座薬基剤を含有する座薬又は補助浣腸剤にしてもよい。
【0045】
経口又は経鼻で投与するための器具、例えばスプレー、ネブライザー及びアトマイザー等を使用して、本発明の組成物を包接複合体及び/又は固体分散体として単独で、又は適当な生体適合性の賦形剤と配合して粉末状又は液体の組成物として標的部位に投与してもよい。本発明の組成物をフレオン等のエアゾール用噴射剤に懸濁して投与することもできる。
【0046】
本発明の医薬用組成物又は本発明の包接複合体は、バニロイド受容体の調節に関連する疾患の予防又は治療用として効果的に使用できる。これらの疾患は、バニロイド受容体、例えばVR1の発現又は刺激が増加することにより誘発され得るものであり、或いはこれらの疾患はそれ自体が、バニロイド受容体、例えばVR1に対して異常な刺激、発現又はその他の病的調節を誘発し得る。このような疾患としては、疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、手術後疼痛、偏頭痛、関節痛、神経障害、神経損傷、糖尿病性神経障害、神経変性疾患、神経性皮膚疾患、脳卒中、膀胱過敏症、過敏性腸症候群、喘息又は慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器異常、皮膚・目又は粘膜の刺激、発熱、胃十二指腸潰瘍又は炎症性疾患等が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の医薬用組成物又は本発明の包接複合体は、疼痛の予防又は治療に特に有効に使用できる。
【0047】
本発明はまた、上記の疾患を罹患しているヒトの患者を含む哺乳動物を治療する方法であって、ヒトの患者を含む当該哺乳動物に治療上有効な量の本発明の医薬用組成物を投与することによって治療する方法に関するものである。
【0048】
上記及びその他の本発明の目的及び特徴は、下記にそれぞれ示す図面とともに本発明の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア原末(○)の溶解率(%)を、製剤例2(●)と比較したグラフである。
【図2】図2は、1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア懸濁液(○)、及び製剤例3(●)をラットに投与した後に測定した血漿中濃度-時間曲線をそれぞれ示したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
下記の実施例及び実験例は本発明をさらに詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
また特に指示しない場合は、下記に示すパーセントは固体混合物中の固体、液体中の液体、及び液体中の固体について、それぞれ重量/重量、容量/容量、及び重量/容量に基づくパーセントであり、また全ての反応は室温で行った。
【実施例】
【0051】
実験例1
0.4gの1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア(化合物1)を、0、1.5、3.5、7.0、14.0及び28.0w/v%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン水溶液10mlにそれぞれ加えた。得られた混合液を72時間攪拌し、0.2μmのろ紙でろ過した。ろ液中の化合物1の濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの濃度による化合物1の溶解度を表1に示す。
【表1】

表1の結果は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの濃度が高いほど化合物1の溶解度が向上することを示している。
【0052】
実験例2
0.4gの1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア(化合物1)を、0、1.5、3.5、7.0、14.0及び28.0w/v%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンのグリシン緩衝液(pH10.5)溶液10mlにそれぞれ加えた。得られた混合液を72時間攪拌し、0.2μmのろ紙でろ過した。
ろ液中の化合物1の濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの濃度による化合物1の溶解度を表2に示す。
【表2】

表2の結果は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの濃度が高いほど化合物1の溶解度が向上することを示している。
【0053】
実施例1−3
メスフラスコに14、20及び28gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを入れ、それに脱イオン水を加えて100mlにして、この混合液を攪拌し、ここに2gの1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア(化合物1)を加え、混合液が透明になるまで攪拌した。この溶液を0.2μmのろ紙でろ過し、ろ液を凍結乾燥して白色固体を収得し、この固体を40号篩にかけた。
【表3】

【0054】
実験例3
5gの1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア(化合物1)を0、1.0、2.0、5.0、10.0又は20.0w/v%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含有する95%のエタノール溶液100mlに加えて、この混合液を72時間攪拌した後、0.2μmのろ紙でろ過した。ろ液中の化合物1の濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの濃度による化合物1の溶解度を表4に示す。
【表4】

表4の結果は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの濃度が高いほど化合物1の溶解度が向上することを示している。
【0055】
実施例4−6
メスフラスコに15、20又は30gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを入れ、それに95%のエタノールを加えて総量100mlにして、この混合液を攪拌した。ここに4.5gのチオウレア誘導体、すなわち1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア(化合物1)を加え、化合物1が完全に溶解するまで混合液を振盪した。得られた溶液を減圧乾燥して溶媒を除き、白色固体を収得した。この固体を40号篩に通した。
【表5】

【0056】
製剤例
本発明の組成物は、単独で又は適当な医薬用賦形剤と組み合わせて、下記に例示するような通常の方法のいずれかに従って様々な医薬用製剤に製造することができる。
【0057】
製剤例1.カプセルの製造
mg/カプセル
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-
メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア 20
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン 280
ステアリン酸マグネシウム 1

実施例3で調製した白色粉末を上記の組成に従ってミキサーでステアリン酸マグネシウムと完全に混合し、0号カプセルに充填した。
【0058】
製剤例2.錠剤の製造
mg/錠
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-
メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア 90
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン 400
ステアリン酸マグネシウム 1

実施例5で調製した白色粉末を上記の組成に従ってミキサーでステアリン酸マグネシウムと完全に混合し、通常の打錠過程を経て錠剤を得た。
【0059】
製剤例3.液体製剤の製造
g/液体製剤
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-
メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア 2
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン 28
脱イオン水 適量(総量100ml)

攪拌しながら2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを脱イオン水に溶解した後、1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレアをそれに加えて攪拌しながら溶解した。得られた溶液を滅菌した0.45μmのフィルターでろ過し、バイアルに充填して栓をして液体製剤を得た。
【0060】
製剤例4.注射用製剤の製造
g/注射用製剤
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-
メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア 2
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン 28
脱イオン水 適量(総量100ml)

攪拌しながら2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを脱イオン水に溶解した後、1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレアをそれに加えて攪拌しながら溶解した。得られた溶液を滅菌した0.2μmのフィルターでろ過した後、バイアルに充填して凍結乾燥し、栓をして注射用製剤を得た。
【0061】
製剤例5.経皮用ゲル製剤の製造
g/ゲル製剤
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-
メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア 2
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン 28
ポロキサマー 20
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.5
脱イオン水 適量(総量100ml)

実施例3で調製した白色粉末をその他の成分と完全に混合して経皮用ゲル製剤を得た。
【0062】
実験例4.比較溶解試験
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア(化合物1)及び製剤例2で調製した錠剤を、大韓薬典に記載されている溶解試験法第2法(パドル法)に従って、放出溶媒として水を使用して試験した。
37℃、50rpmの条件下で決められた時間間隔ごとに3mlのサンプルを採取し、0.45μmのフィルターでろ過した。各サンプル中の化合物1の濃度をHPLCで測定した。
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレアの放出量における経時的変化を図1に示す(●:製剤例2の錠剤、及び○:化合物1)。図1に示すように、化合物1自体は水中で不溶性であったのに対し、本発明の製剤からの薬物の溶解率は有意に増大した。
【0063】
実験例5.薬物動態試験
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア(化合物1)及び製剤例3で調製した液体製剤をそれぞれラットに経口投与し、薬物の血漿中濃度の変化を所定のタイムスケジュールに従ってモニターした。各実験動物群は、雄性ラット4匹から成った。ラットをエーテルで麻酔して、手術で大腿動脈中にPE-50ポリエチレンチューブを挿入した後、0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液中の化合物1の懸濁液及び製剤例3の液体製剤をそれぞれラットに経口投与した。投与後15、30、60、120、210、300及び480分に150μlの血液サンプルをラットから採取した。各血液サンプルを遠心分離して血漿を分離し、それをHPLCにかけて血漿中の化合物1の濃度を測定した。結果を表6及び図2に示す。
【表6】

上記の結果に見られるように、本発明の製剤(製剤例3)は化合物1自体と比較して経時的な血漿中濃度において有意な差異を示し、溶解度及び溶解速度の改善により生体内利用率も約4倍に増加した。
【0064】
本発明を上記の特定の態様について説明したが、様々な修正及び変更が本発明には可能でありそれらも添付の請求の範囲に規定される本発明の範囲内に含まれることが当業者には認識される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のチオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩、及びシクロデキストリン又は
その誘導体を含む医薬用組成物:
【化1】

式中、
R1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、メトキシカルボニル基、カルボキシル基又はヒドロキシアミノカルボニル基を示し、
R2は水素原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、ネオペントキシ基、メトキシメトキシ基又はベンジルオキシ基を示す。
【請求項2】
チオウレア誘導体が以下からなる群から選択される、請求の範囲第1項に記載の医薬用組成物:
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア、
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-クロロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア、
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-メトキシカルボニル-4-メタンスルホニル-アミノベンジル)チオウレア、
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア、及び
1-(4-t-ブチル-2-イソブトキシベンジル)-3-(4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア。
【請求項3】
チオウレア誘導体が1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレアである、請求の範囲第1項に記載の医薬用組成物。
【請求項4】
チオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩の1重量部に対してシクロデキストリン又はその誘導体を1〜20重量部の範囲の量で含む、請求の範囲第1項〜第3項に記載の医薬用組成物。
【請求項5】
シクロデキストリンがα-、β-又はγ-型である、請求の範囲第1項〜第4項に記載の医薬用組成物。
【請求項6】
シクロデキストリン誘導体が2,6-ジメチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-γ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、(2-カルボキシメトキシ)プロピル-β-シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリンからなる群から選択される、請求の範囲第1項〜第5項に記載の医薬用組成物。
【請求項7】
シクロデキストリン誘導体が2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、請求の範囲第1項〜第6項に記載の医薬用組成物。
【請求項8】
上記組成物が医薬上許容しうる添加剤をさらに含む、請求の範囲第1項〜第7項に記載の医薬用組成物。
【請求項9】
医薬上許容しうる添加剤が希釈剤、pH調節剤、浸透圧調節剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、増粘剤、滑沢剤、防腐剤及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求の範囲第8項に記載の医薬用組成物。
【請求項10】
チオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩及びシクロデキストリン又はその誘導体を水又は緩衝液に溶解することにより製造される包接複合体を含有する溶液を含む、請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載の医薬用組成物。
【請求項11】
チオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩及びシクロデキストリン又はその誘導体を水又は緩衝液に溶解して得られた溶液を凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥又は流動床乾燥にかけて水分を除去することにより製造される固体の包接複合体を含む、請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載の医薬用組成物。
【請求項12】
チオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩及びシクロデキストリン又はその誘導体を有機溶媒に溶解して得られた溶液を凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥又は流動床乾燥にかけて有機溶媒を除去することにより製造される固体の包接複合体及び/又は固体分散体を含む、請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載の医薬用組成物。
【請求項13】
有機溶媒がエタノールである、請求の範囲第12項に記載の医薬用組成物。
【請求項14】
請求の範囲第1項〜第13項のいずれかに記載の医薬用組成物を含む医薬用製剤であって、当該医薬用組成物が疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、手術後疼痛、偏頭痛、関節痛、神経障害、神経損傷、糖尿病性神経障害、神経変性疾患、神経性皮膚疾患、脳卒中、膀胱過敏症、過敏性腸症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、皮膚・目又は粘膜の刺激、発熱、胃十二指腸潰瘍及び炎症性疾患からなる群から選択される疾患の予防又は治療に有効な量の式(I)のチオウレア誘導体を含む医薬用製剤。
【請求項15】
錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びカプセル剤からなる群から選択される経口製剤である、請求の範囲第1項〜第14項のいずれかに記載の医薬用製剤。
【請求項16】
静脈内、皮下、又は筋肉内注射用の注射用液剤である、請求の範囲第1項〜第14項のいずれかに記載の医薬用製剤。
【請求項17】
軟膏、クリーム、ローション、液剤、ゲル、ペースト剤、貼剤及びエアゾールからなる群から選択される経皮用製剤である、請求の範囲第1項〜第14項のいずれかに記載の医薬用製剤。
【請求項18】
液体の経眼用製剤である、請求の範囲第1項〜第14項のいずれかに記載の医薬用製剤。
【請求項19】
液体又は粉末形態の経鼻用製剤である、請求の範囲第1項〜第14項のいずれかに記載の医薬用製剤。
【請求項20】
液体又は半固体の膣内又は直腸投与用製剤である、請求の範囲第1項〜第14項のいずれかに記載の医薬用製剤。
【請求項21】
式(I)のチオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩、及びシクロデキストリン又はその誘導体を含む包接複合体:
【化2】

式中、
R1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、メトキシカルボニル基、カルボキシル基又はヒドロキシアミノカルボニル基を示し、
R2は水素原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、ネオペントキシ基、メトキシメトキシ基又はベンジルオキシ基を示す。
【請求項22】
チオウレア誘導体が以下からなる群から選択される、請求の範囲第21項に記載の包接複合体:
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア、
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-クロロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア、
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-メトキシカルボニル-4-メタンスルホニル-アミノベンジル)チオウレア、
1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア、及び
1-(4-t-ブチル-2-イソブトキシベンジル)-3-(4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレア。
【請求項23】
チオウレア誘導体が1-(4-t-ブチルベンジル)-3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルアミノベンジル)チオウレアである、請求の範囲第21項に記載の包接複合体。
【請求項24】
チオウレア誘導体又は医薬上許容しうるその塩の1重量部に対してシクロデキストリン又はその誘導体を1〜20重量部の範囲の量で含む、請求の範囲第21項〜第23項のいずれかに記載の包接複合体。
【請求項25】
シクロデキストリンがα-、β-又はγ-型である、請求の範囲第21項〜第24項のいずれかに記載の包接複合体。
【請求項26】
シクロデキストリン誘導体が2,6-ジメチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-γ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、(2-カルボキシメトキシ)プロピル-β-シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリンからなる群から選択される、請求の範囲第21項〜第25項のいずれかに記載の包接複合体。
【請求項27】
シクロデキストリン誘導体が2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、請求の範囲第21項〜第26項のいずれかに記載の包接複合体。
【請求項28】
VR1受容体の病的刺激及び/又は発現増加に関連した疾患の治療用医薬の製造のための、請求の範囲第21項〜第27項のいずれかに記載の包接複合体の用途。
【請求項29】
疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、手術後疼痛、偏頭痛、関節痛、神経障害、神経損傷、糖尿病性神経障害、神経変性疾患、神経性皮膚疾患、脳卒中、膀胱過敏症、過敏性腸症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、皮膚・目又は粘膜の刺激、発熱、胃十二指腸潰瘍及び炎症性疾患からなる群から選択される疾患の治療用医薬の製造のための、請求の範囲第21項〜第27項のいずれかに記載の包接複合体の用途。
【請求項30】
疾患が疼痛である、請求の範囲第29項に記載の包接複合体の用途。
【請求項31】
VR1受容体の病的刺激を罹患しているヒトを含む哺乳動物の治療方法であって、請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載の医薬用組成物を当該哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項32】
VR1受容体の病的刺激が疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、手術後疼痛、偏頭痛、関節痛、神経障害、神経損傷、糖尿病性神経障害、神経変性疾患、神経性皮膚疾患、脳卒中、膀胱過敏症、過敏性腸症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、皮膚・目又は粘膜の刺激、発熱、胃十二指腸潰瘍及び炎症性疾患から選択される少なくとも一つの疾患に関連したものである、請求の範囲第31項に記載の方法。
【請求項33】
VR1受容体の病的刺激及び/又は発現増加に関連した疾患の治療用医薬の製造のための、請求の範囲第1項〜第13項のいずれかに記載の医薬用組成物の用途。
【請求項34】
疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、手術後疼痛、偏頭痛、関節痛、神経障害、神経損傷、糖尿病性神経障害、神経変性疾患、神経性皮膚疾患、脳卒中、膀胱過敏症、過敏性腸症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、皮膚・目又は粘膜の刺激、発熱、胃十二指腸潰瘍及び炎症性疾患からなる群から選択される疾患の治療用医薬の製造のための、請求の範囲第1項〜第13項のいずれかに記載の医薬用組成物の用途。
【請求項35】
疾患が疼痛である、請求の範囲第34項に記載の医薬用組成物の用途。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−509137(P2007−509137A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536453(P2006−536453)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002702
【国際公開番号】WO2005/040106
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(503327691)株式會社アモーレパシフィック (73)
【住所又は居所原語表記】181, Hankang−ro 2−ka, Yongsan−ku, Seoul 140−777 Republic of Korea
【Fターム(参考)】