説明

溶解炉への原料供給装置及び原料供給方法

【課題】溶解炉の坩堝内の融液面上に固体原料の追加チャージやリチャージを行う際の操業効率を向上させ、これによって溶解炉を用いた各種操業の生産性を改善することができる溶解炉への原料供給装置及び原料供給方法を提供する。
【解決手段】融液を貯留する溶解炉の坩堝内に固体原料を供給する原料供給装置Sであり、切出弁5を有して固体原料が装入される供給タンク1と、この供給タンク1の下方に配設され、投入弁6を有して供給タンク1から小分けに切り出された固体原料が装填される投入カップ2と、切出弁5及び投入弁6の弁開閉操作を行う弁操作手段3とを備え、供給タンク1から坩堝内への固体原料の供給時には、弁操作手段3により供給タンク1内の固体原料を小分けして投入カップ2に切り出し、次いで投入カップ2内に装填された固体原料を坩堝内に投入する弁開閉操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、融液を貯留する溶解炉の坩堝内に固体原料を供給するための原料供給装置及び原料供給方法に係り、特に溶解炉の操業途中で坩堝内に固体原料を追加チャージあるいはリチャージする際に好適な溶解炉への原料供給装置及び原料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造するシリコン単結晶引上げ装置においてはアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で溶解炉が用いられており、また、リン(P)等の比較的不純物濃度の高いシリコン原料から高純度シリコンを得るシリコン精製装置においては減圧雰囲気下で真空溶解炉が用いられている。更には、真空又は減圧下に各種の金属や合金等の製錬を行うための真空冶金炉、各種の金属を二次精錬する際にRH(Ruhrstahl-Heraeus)法等で用いられる真空脱ガス炉、真空又は減圧下で、あるいは、不活性ガス雰囲気下でアーク式、高周波誘導式、電磁誘導式、抵抗加熱式等の方式により各種の希土類元素含有合金等の加熱し溶融して再生する雰囲気溶解炉等の各種の溶解炉においても、溶解炉の坩堝内に供給された固体原料を、真空・減圧雰囲気下に又は不活性ガス雰囲気下に高温に加熱し溶解させて製錬や精錬等の操業が行われている。
【0003】
そして、このような溶解炉の操業においては、その効率化や熱エネルギーの節約のために、坩堝が加熱されていないときに行われるいわゆる「初期チャージ」とは別に、この初期チャージにより坩堝内に供給された固体原料を加熱して溶解させた後に、この坩堝が融液で満たされるまで坩堝内に更に固体原料を追加して投入するいわゆる「追加チャージ」や、先行する処理操作が終了した後に引き続き後続する処理操作を行う際に、先行処理操作と後続処理操作との間に、空になった、あるいは、少量の融液が残存する坩堝内に、再び新しい固体原料を供給するいわゆる「リチャージ」が行われている。
【0004】
しかるに、このような追加チャージやリチャージの操作は、いずれも非常に高温の坩堝内に常温の固体原料(冷塊)を投入する操作であり、高温に加熱されている坩堝が投入された冷塊により急激に冷却されることになる。一方で、坩堝内に供給された冷塊を溶解するための加熱は、通常、坩堝の外側からの入熱であるため、坩堝の内面と外面との間には大きな温度差が生じる。そして、連続体である坩堝の部分的な温度差は、熱膨張差に由来する熱応力を発生させ、この熱応力の大きさは時として坩堝を破壊する程の大きさにまでなる。
【0005】
そして、このような連続体である坩堝が破壊するか否かは、統計的に扱われ、破壊確率として表現される。坩堝材質の強度として一般的にカタログに記載される数値は、複数本の小さな試験片の強度試験結果を確率的に処理して求められた数値である。この強度試験の試験片の大きさと同じ体積の坩堝については、強度試験の強度値と同じオーダーの応力が加えられた場合に破壊確率が1に近くなるが、連続体である坩堝についてはその体積が大きくなればなるほど、強度試験の強度値より低い応力で破壊確率が1になる。また、ある体積・形状の坩堝に対して、破壊確率が1となる応力の1/2の大きさの応力を加えた場合には、破壊確率は数桁低下するため、破壊することはほとんどなくなる。
【0006】
以上のことから、坩堝の破壊を回避しながら追加チャージやリチャージを実施するためには、坩堝に少量ずつの固体原料を投入することにより、1回の投入で生じる坩堝内面の温度低下をできるだけ小さくすること、すなわち、1回の投入で坩堝に加わる熱応力をできるだけ小さくすることが重要であり、坩堝が大型化すればするほどその重要性が増す。
【0007】
そして、このような追加チャージやリチャージを実施するため装置についても、これまでに幾つかの提案がされている。
例えば、特許文献1には、チョクラルスキー法でシリコン単結晶を製造する際に、内部に固形状多結晶原料(固体原料)を坩堝内の固化した融液面に直接投入し、リチャージに適した供給速度を実現し、短時間で効率良くリチャージを行って生産性の向上を図ることができるとするリチャージ管が提案されている。また、特許文献2には、同様の構成を有して、粒塊状の固形原料(固体原料)を坩堝内の融液に対して円周方向均一に投入できるとする原料供給装置が提案されている。更に、特許文献3には、リチャージ管の下部外側にリチャージ管に対して摺動可能な漏斗状外筒を設け、坩堝中心部のみに固形状多結晶原料を投入できるようにし、これによって融液面の固化割合低い状態でも原料投入可能にし、生産性の向上を図ることができるとするリチャージ装置が提案されている。更にまた、特許文献4には、底蓋に原料粉の落下防止手段を設けることにより、原料供給管(ホッパー本体)と底蓋との間に生じる隙間から原料が落下するのを防止できる原料供給装置が提案されている。
【0008】
しかしながら、これらいずれの提案においても、使用するリチャージ管や原料供給管は、その管内に充填した固体原料を坩堝内に投入する際には、全ての固体原料を一度に坩堝内に投入する構造になっている。このため、坩堝内に比較的多量の固体原料を少量ずつ複数回に亘って投入し溶解したい場合には、その都度、少量ずつの原料をリチャージ管や原料供給管に充填し、坩堝内に投入する必要が生じる。
【0009】
しかしながら、上述したような真空・減圧雰囲気下に又は不活性ガス雰囲気下に操業される溶解炉においては、炉外からの物の出し入れのたびに炉内が大気雰囲気になるのを避けるために、不活性ガスによるガス置換操作が不可避であり、炉内の坩堝に固体原料を供給する際には、一般的には、先ず固体原料を予備排気室に入れ、この予備排気室内の空気を不活性ガスに置換し、その後に予備排気室と炉体との間のゲートバルブを開いて炉内の坩堝に固体原料を投入することが行われている。そして、この予備排気室での雰囲気置換操作にかかる時間は、予備排気室内に持ち込む物の量に依存せず、専ら予備排気室の容積に依存するため、予備排気室に持ち込む物の量が少ないと非効率になる。
【0010】
このため、上述した従来のリチャージ管や原料供給管を用いて溶解炉の坩堝内に固体原料の追加チャージやリチャージを行う場合には、リチャージ管や原料供給管への固体原料の装填操作の回数が増加し、また、ガス置換操作が必要であると、予備排気室内でのガス置換操作の回数が増加し、追加チャージやリチャージの操作に要する時間も長くなり、更に、比較的多量の固体原料の追加チャージやリチャージが必要な場合には、必要なリチャージ管の本数が多くなり、固体原料を数多く小分けにして充填する手間も負担となり、このことが溶解炉を用いた各種操業の生産性向上に多大な障害になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2002/068,732公報
【特許文献2】特開2006-089,294号公報
【特許文献3】特開2007-277,069号公報
【特許文献4】特開2008-088,000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明者らは、このような従来のリチャージ管や原料供給管を用いた溶解炉への原料供給装置における問題点を解決すべく鋭意検討した結果、下端に固体原料を小分けして切り出す切出弁を備えた供給タンクと、下端に投入弁を有して切出弁から切り出された固体原料が装填される投入カップと、前記切出弁及び投入弁の弁開閉操作を行う弁操作手段とを備えた原料供給装置により前記問題点を解決できることを見い出し、本発明を完成した。
【0013】
従って、本発明の目的は、溶解炉の坩堝内の融液面上に固体原料の追加チャージやリチャージを行う際に、1回の投入量を少量にして複数回の投入操作を行う場合においても、この固体原料の追加チャージやリチャージの操業効率を向上させることができ、これによって溶解炉を用いた各種操業の生産性を改善することができる溶解炉への原料供給装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、原料供給装置を用いて溶解炉の坩堝内の融液面上に固体原料の追加チャージやリチャージを行うに際し、1回の投入量を少量にして複数回の投入操作を行う場合における操業効率を向上させることができる溶解炉への原料供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 融液を貯留する溶解炉の坩堝内に固体原料を供給する原料供給装置であり、
下端に切出弁を備えると共に前記坩堝内に供給される固体原料が装入される供給タンクと、この供給タンクの下方に配設され、下端に投入弁を備えると共に前記供給タンクの切出弁から小分けに切り出された固体原料が装填される投入カップと、前記切出弁及び投入弁の弁開閉操作を行う弁操作手段とを備え、
前記供給タンクから坩堝内への固体原料の供給時には、前記弁操作手段が、供給タンク内に装入された固体原料を小分けして投入カップに切り出し、次いで投入カップ内に装填された固体原料を坩堝内に投入する弁開閉操作を行うことを特徴とする溶解炉への原料供給装置である。
【0016】
(2) 前記供給タンク、投入カップ、及び弁操作手段に加えて、装置全体を吊り上げて坩堝上の原料投入位置に移動させる昇降手段を備えていることを特徴とする前記(1)に記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0017】
(3) 前記供給タンク、投入カップ、及び弁操作手段に加えて、前記投入カップの下方位置に下端開口を有する投入案内が設けられていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0018】
(4) 前記供給タンクは、その上部が垂直筒状の直胴部に形成されていると共に下部がロート状のホッパー部に形成されていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0019】
(5) 前記切出弁は、供給タンクのホッパー部下端に形成された切出開口の開口周縁部を切出弁座とし、この切出弁座に着座し、また、切出弁座から離れて切出開口を開閉する切出弁体を有すると共に、前記切出開口の閉塞時には前記切出弁座と切出弁体との間が実質的に線接触により接触することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0020】
(6) 前記切出弁の切出弁座は、供給タンクのホッパー部下端の切出開口の開口部周縁から上方に向けてリング状に突出しており、供給タンク内の固体原料を小分けして投入カップ内に切り出す際に切出弁を通過して流れる固体原料の流れを規制することを特徴とする前記(5)に記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0021】
(7) 前記切出弁の切出弁体は、上部が円錐形状で下部が逆円錐形状に形成されており、この切出弁体の下部逆円錐面が切出弁座に着座することを特徴とする前記(5)又は(6)に記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0022】
(8) 前記投入カップは、その上端側に前記供給タンクの切出開口よりも大きな開口の受入開口を有すると共に下端側に投入開口を有し、また、前記受入開口が供給タンクの開口した切出開口に連通する受入位置と、前記切出開口から離れて投入弁の弁開閉操作が行われる降下位置との間で上下方向移動可能になっており、また、この投入カップの投入弁は、前記投入開口の開口周縁部を投入弁座とし、この投入弁座に着座し、また、投入弁座から離れて投入開口を開閉する投入弁体を有することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0023】
(9) 前記投入弁の投入弁体は、円錐形状に形成されてその円錐面が投入弁座に着座することを特徴とする前記(8)に記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0024】
(10) 前記弁操作手段は、供給タンクの切出弁の弁開閉操作を行う切出弁操作部材と、投入カップをその降下位置と受入位置との間で移動させると共に投入カップの投入弁の弁開閉操作を行う投入弁操作部材とを有しており、
前記供給タンクから坩堝内への固体原料の供給時には、前記切出弁操作部材により、供給タンクの切出弁を開いて固体原料を小分けしながら投入カップに切り出し、また、前記投入弁操作部材により、投入カップをその降下位置と受入位置との間で移動させると共に、降下位置で投入カップの投入弁を開いて固体原料を坩堝内に投入することを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0025】
(11) 前記投入弁操作部材が、供給タンクをその上方から下方に貫通すると共に前記切出弁の切出弁体を移動可能に貫通し、上端が前記昇降手段に連結されていると共に下端には投入カップの投入弁の投入弁体が設けられた投入弁操作桿であり、また、前記切出弁操作部材が、前記投入弁操作桿を介して操作され、投入カップがその受入位置にあるときに切出弁の切出弁体を切出弁座から離して切出開口を開き、また、投入カップがその降下位置にあるときに切出弁の切出弁体を切出弁座に着座させて切出開口を閉じるスペーサ部材であり、
供給タンクへの原料装入時には、前記昇降手段により投入弁操作桿を下方に移動させて前記切出弁を閉じ、また、装置全体の吊上げ時には、前記昇降手段により投入弁操作桿を上方に移動させて前記投入弁を閉じ、次いで、投入カップをその受入位置に移動させて前記切出弁を開くと共に、供給タンクの切出開口と投入カップの受入開口とを連通連結させて供給タンク内の固体原料を投入カップ内に装填し、更に、坩堝内への原料投入時には、前記昇降手段により投入弁操作桿を下方に移動させることにより切出弁を閉じて固体原料を小分けし、次いで、投入弁を開いて小分けされた固体原料を坩堝内に投入することを特徴とする前記(10)に記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0026】
(12) 前記投入弁操作桿は、前記投入カップの下端に設けられて閉じた状態の投入弁の投入弁体と、受入位置に移動して受入開口の開口周縁部が供給タンクの荷重受け部に当接した投入カップとを介して、前記投入カップ上の供給タンクの荷重を支持することを特徴とする前記(11)に記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0027】
(13) 前記切出弁操作部材は、前記スペーサ部材に加えて、供給タンク内中央部にステーを介して取り付けられ、上端が供給タンクの上部上方に延びると共に下端が供給タンク内に延びるパイプ状の弁操作案内管と、下端が前記切出弁の切出弁体に連結されていると共に上端が前記弁操作案内管内に上下方向移動可能に延び、かつ、内部には前記投入弁操作桿が上下方向移動可能に貫通する切出弁制御管とを備えていることを特徴とする前記(11)又は(12)に記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0028】
(14) 投入案内は、その上部に少なくとも前記投入カップより大きくてこの投入カップを収容する垂直筒状の直胴部が形成されていると共に、その下部に前記直胴部の開口よりも小さい下端開口を有するロート部が形成されており、また、前記投入カップの周壁外面には前記直胴部内を上下方向に移動し、前記ロート部の上端部に当接して投入カップの降下位置を規定する位置決めアームが設けられていることを特徴とする前記(8)〜(13)のいずれかに記載の溶解炉への原料供給装置である。
【0029】
(15) 原料供給装置を用いて融液を貯留する溶解炉の坩堝内に固体原料を供給するに際し、前記原料供給装置には下端に切出弁を有する供給タンクと、下端に投入弁を有すると共に前記供給タンクの下方に位置する投入カップとを設け、前記供給タンクに固体原料を装入した後にこの供給タンクを前記投入カップと共に坩堝上に移動させ、次いで、前記切出弁及び投入弁の弁開閉操作により、供給タンク内に装入された固体原料を切出弁から小分けして投入カップに装填した後に、投入カップの投入弁を開いてこの投入カップ内に装填された固体原料を坩堝内に投入する小分け投入操作を複数回繰り返して行い、供給タンク内の固体原料の全量を坩堝内の融液面上に投入することを特徴とする溶解炉への原料供給方法である。
【0030】
(16) 溶解炉への原料供給を前記(2)〜(14)のいずれかに記載された原料供給装置を用いて行う前記(15)に記載の溶解炉への原料供給方法である。
【0031】
本発明において、前記昇降手段については、原料供給装置の全体を吊り上げて坩堝上の原料投入位置に移動させ、この原料投入位置で原料供給装置を上下方向に移動させることができれば、特に制限されるものではないが、好適には吊下げワイヤとワイヤ巻取り具を備えた吊下げ装置や、上方にストローク分の鍵溝を切った棒状の部材とそれを上下させる歯車を連結したモーターからなる昇降機構等を例示することができる。
【0032】
また、前記供給タンクについては、その上部上方から固体原料を装入することができ、その下部に切出弁を設けることができれば、特に制限されるものではないが、搭載した固体原料を下方に位置する投入カップ内に小分けして切り出すための切出開口を設けると共に、搭載された固体原料の全量を投入カップに少量ずつ切り出す必要があることから、好ましくはその下部にロート状に形成されたホッパー部を有するものがよい。
【0033】
更に、この供給タンクに設けられる切出弁についても、供給タンク内に搭載した固体原料を下方に位置する投入カップ内に小分けして切り出すことができれば、特に制限されるものではないが、好ましくは、供給タンクのホッパー部下端に形成された切出開口の開口周縁部を切出弁座とし、また、逆円錐形状の切出弁体を有するものであり、ホッパー部下端の開口周縁部(切出弁座)の逆円錐面に逆円錐形状の切出弁体が着座し、また、この切出弁座から離れて切出開口を開閉するものである。そして、これら切出弁の切出弁座及び切出弁体については、より好ましくは、開口周縁部(切出弁座)の逆円錐面及び/又は切出弁体の逆円錐面に、例えばリング状の突条部を有して、前記切出開口の閉塞時にこれら切出弁座と切出弁体との間が実質的に線接触により接触するものであるのがよく、これによって、固体原料を小分けして切り出す際にこの切出弁を通過する固体原料の流れを規制することができる。また、更に好ましくは、前記切出弁の切出弁座が供給タンクのホッパー部下端の切出開口の開口部周縁から上方に向けてリング状に突出した形状に形成されていることであり、これによって、上記と同様に切出弁を通過する固体原料の流れを規制できるだけでなく、固体原料を小分けして切り出す際に、僅かな固体原料が開口周縁部(切出弁座)の逆円錐面と切出弁体の逆円錐面との間に挟まれてできる隙間から、固体原料が落下するのを防止することができる。
【0034】
また、本発明において、前記投入カップは、好ましくは、その上端側に前記供給タンクの切出開口よりも大きな開口の受入開口を有すると共に下端側に投入開口を有し、また、前記受入開口が供給タンクの開口した切出開口に連通する受入位置と、前記切出開口から離れて投入弁の弁開閉操作が行われる降下位置との間で上下方向移動可能に形成される。そして、この投入カップについては、より好ましくは、その上端側の受入開口が下端側の投入開口よりも大きい逆円錐台形状に形成されているのがよく、これによって、小分けして投入カップ内に切り出された少量の固体原料を坩堝内の融液面中心部のより狭い範囲に投入することができ、また、必要によりこの投入カップの下方位置に設けられる投入案内の中に正確に投入することができる。
【0035】
この投入カップの前記投入開口に設けられる投入弁は、この投入開口の開口周縁部を投入弁座とし、この投入弁座に着座し、また、投入弁座から離れて投入開口を開閉する投入弁体を有するものであり、好ましくは、前記投入弁体が、円錐形状に形成されてその円錐面が投入開口の開口周縁部(投入弁座)に着座する。このように投入弁体の形状を円錐形状に形成することにより、固体原料の投入時にこの固体原料の一部が投入弁体の上部に残留することがない。
【0036】
更に、本発明において、前記弁操作手段については、それが前記供給タンクから坩堝内への固体原料の供給時に、供給タンク内に装入された固体原料を小分けして投入カップに切り出し、次いで投入カップ内に装填された固体原料を坩堝内に投入する弁開閉操作を行うことができれば、例えば、投入カップの操作手段、切出弁の弁開閉操作手段及び投入弁の弁開閉操作手段をそれぞれ個別に構成したり、その幾つかの手段を適当に組み合わせて構成する等、特に制限されるものではないが、好ましくは、供給タンクの切出弁の弁開閉操作を行う切出弁操作部材と、投入カップをその降下位置と受入位置との間で移動させると共に投入カップの投入弁の弁開閉操作を行う投入弁操作部材とで構成するのがよい。このように構成することにより、前記供給タンクから坩堝内への固体原料の供給時には、前記切出弁操作部材により、供給タンクの切出弁を開いて固体原料を小分けしながら投入カップに切り出し、また、前記投入弁操作部材により、投入カップをその降下位置と受入位置との間で移動させると共に、降下位置で投入カップの投入弁を開いて固体原料を坩堝内に投入することができる。
【0037】
また、前記弁操作手段の切出弁操作部材や投入弁操作部材については、より好ましくは、前記投入弁操作部材が、供給タンクをその上方から下方に貫通すると共に前記切出弁の切出弁体を移動可能に貫通し、上端が前記昇降手段に連結されていると共に下端には投入カップの投入弁の投入弁体が設けられた投入弁操作桿で構成され、また、前記切出弁操作部材が、前記投入弁操作桿を介して操作され、投入カップがその受入位置にあるときに切出弁の切出弁体を切出弁座から離して切出開口を開き、また、投入カップがその降下位置にあるときに切出弁の切出弁体を切出弁座に着座させて切出開口を閉じるスペーサ部材で構成されているのがよい。
【0038】
前記弁操作手段の切出弁操作部材及び投入弁操作部材をこのように構成することにより、供給タンクへの原料装入時には、前記昇降手段により投入弁操作桿を下方に移動させて前記切出弁を閉じ、また、装置全体の吊上げ時には、前記昇降手段により投入弁操作桿を上方に移動させて前記投入弁を閉じ、次いで、投入カップをその受入位置に移動させて前記切出弁を開くと共に、供給タンクの切出開口と投入カップの受入開口とを連通連結させて供給タンク内の固体原料を投入カップ内に装填し、更に、坩堝内への原料投入時には、前記昇降手段により投入弁操作桿を下方に移動させることにより切出弁を閉じて固体原料を小分けし、次いで、投入弁を開いて小分けされた固体原料を坩堝内に投入することができる。
【0039】
ここで、前記投入弁操作桿と前記供給タンク及び投入カップとの関係については、好ましくは、前記投入カップがその受入位置にあるときに、受入開口の開口周縁部が供給タンクに設けられたタンク荷重受け部(例えば、供給タンクの切出弁の外側にこの切出弁を取り囲むように設けられるリング状の底壁や、供給タンクの底部に設けられた支持フレーム等)に当接するように構成し、また、切出弁操作部材としての前記スペーサ部材の長さ寸法については、固体原料の粒径や流動性等により決まる切出弁の開閉ストロークの大きさと、前記投入カップの受入位置と降下位置との間の移動距離とを考慮し、「切出弁の開閉ストローク」≦「投入カップの移動距離」の関係を概ね保つように設定するのがよい。これによって、前記投入弁操作桿が、前記投入カップの下端に設けられて閉じた状態の投入弁の投入弁体と、受入位置に移動して受入開口の開口周縁部が供給タンクの荷重受け部に当接した投入カップとを介して、前記投入カップ上の供給タンクの荷重を支持することができ、装置外部から前記投入弁操作桿のみの操作により、装置全体の吊上げ操作に加えて、切出弁及び投入弁の弁開閉操作の全てを賄うことができる。なお、供給タンクの切出開口と投入カップの投入開口の連通連結状態、切出弁の開閉状態、及び投入弁の開閉状態の間の三者の関係は、これら切出弁及び投入弁の弁開閉操作を行って小分けして投入する操作が坩堝内の融液面の上方で行われるので、必ずしも厳密に操作される必要はなく、切出弁の切出弁体、投入カップ、及び投入弁の投入弁体の動作途中であれば、供給タンクの切出開口と投入カップの投入開口との間の連通連結が完了していない状態で、切出弁と投入弁とが同時に開いている状態が一時的に存在してもよい。
【0040】
そして、更に前記切出弁操作部材については、前記スペーサ部材に加えて、供給タンク内中央部にステーを介して取り付けられ、上端が供給タンクの上部上方に延びると共に下端が供給タンク内に延びる両端開口パイプ状の弁操作案内管と、下端が前記切出弁の切出弁体に連結されていると共に上端が前記弁操作案内管内に上下方向移動可能に延び、かつ、内部には前記投入弁操作桿が上下方向移動可能に貫通する切出弁制御管とを設けるのがよく、これによって、装置全体を吊り上げて前記投入弁操作桿の下端に連結された投入弁の投入弁体により装置全体の荷重が支持された際に、装置上部が傾いて、固体原料を小分けして投入する小分け投入操作に支障をきたし、また、投入弁体に偏った荷重が作用してこの投入弁体が損傷する等の問題が発生するのを未然に防止することができる。なお、前記弁操作案内管の上端には、この弁操作案内管の内壁と投入弁操作桿との間に切出弁制御管の肉厚と略等しい隙間ができ、この隙間内に固体原料あるいはその粉砕粉末が侵入して投入弁操作桿や切出弁制御管の上下方向の移動を妨げる虞があるので、弁操作案内管の上端と投入弁操作桿との間を投入弁操作桿が摺動可能なように密閉するシール部材を設けるのが望ましい。
【0041】
本発明において、必要により設けられる前記投入案内についても、それが固体原料を坩堝内の中心位置に投入することができるものであれば、特に制限されるものではないが、好ましくは、その上部が少なくとも前記投入カップより大きくてこの投入カップを収容する垂直筒状の直胴部に形成されていると共に下部が前記直胴部の開口よりも小さい下端開口を有するロート部に形成するのがよい。また、前記投入カップの周壁外面には、前記直胴部内を上下方向に移動する位置決めアームを設け、この位置決めアームが下方に移動した際に前記ロート部の上端部に当接し、これによって投入カップの降下位置が規定されるようにするのがよい。
【0042】
本発明の原料供給装置を用いることにより、前記供給タンクに固体原料を装入した後にこの供給タンクを前記投入カップと共に坩堝上に移動させ、次いで、前記切出弁及び投入弁の弁開閉操作により、供給タンク内に装入された固体原料を切出弁から小分けして投入カップに装填した後に、投入カップの投入弁を開いてこの投入カップ内に装填された固体原料を坩堝内に投入する小分け投入操作を複数回繰り返して行い、供給タンク内の固体原料の全量を坩堝内の融液面上に投入することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の溶解炉への原料供給装置及び原料供給方法によれば、供給タンク内に追加チャージやリチャージで必要な固体原料の全量(必要により、複数に分割された分割投入量の全量)を搭載し、これを坩堝上の原料投入位置まで移送し、この原料投入位置から坩堝内の融液面上への投入に際しては、供給タンク内から投入カップ内に少量ずつ小分けしながら、この投入カップから多数回に亘って投入することができるので、それだけ追加チャージやリチャージに必要な固体原料を坩堝上の原料投入位置まで移送する移送時間を短縮することができ、これによって原料投入に伴って発生する坩堝内外面間の温度差を必要な範囲内に抑制しつつ原料の投入を行う少量投入操作を効率良く行うことができる。
【0044】
また、本発明の溶解炉への原料供給装置及び原料供給方法によれば、溶解炉が真空・減圧雰囲気下に又は不活性ガス雰囲気下に操業される場合には、前記固体原料移送時間の短縮に加えて、固体原料を搭載した原料供給装置を予備排気室に導入して行う雰囲気置換操作の操作回数を格段に減少させることができるので、この予備排気室内での雰囲気置換操作に要する時間を顕著に短縮することができ、これによって原料投入に伴って発生する坩堝内外面間の温度差を必要な範囲内に抑制しつつ原料の投入を行う少量投入操作を効率良く行うことができる。
【0045】
更に、本発明の溶解炉への原料供給装置及び原料供給方法によれば、これまで比較的多量の固体原料を追加チャージ又はリチャージする際に必要とされていたリチャージ管の本数を減少することができ、それだけ固体原料を数多く小分けにして充填する手間や負担が軽減され、溶解炉の操業性(生産性)を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の原料供給装置を説明するための断面説明図である。
【図2】図2は、図1の原料供給装置の供給タンク内に固体原料を装入する際の状態を説明するための断面説明図である。
【0047】
【図3】図3は、シリコン精製装置に採用された図1の原料供給装置について、供給タンク内に固体原料が装入された後の原料供給装置全体を吊り上げて予備排気室内に引き込む際の状態を示す説明図である。
【0048】
【図4】図4は、シリコン精製装置に採用された図1の原料供給装置について、図4(a)が真空溶解炉上の予備排気室内に引き込まれた状態を示す説明図であり、図4(b)が予備排気室内での雰囲気置換操作終了後に真空溶解炉の坩堝上の原料投入位置に移動した状態を示す説明図である。
【0049】
【図5A】図5Aは、シリコン精製装置に採用された図1の原料供給装置について、坩堝上の原料投入位置に移動した後に切出弁及び投入弁の弁開閉操作により小分け投入操作を行う方法を説明するための説明図であり、図5A(a)が吊り下げられた原料供給装置が真空溶解炉側に設けられた装置支持部にセットされる直前の状態を示す説明図であり、図5A(b)が吊り下げられた原料供給装置が真空溶解炉側に設けられた装置支持部にセットされた後に切出弁で少量の固体原料を投入カップ内に切り出して小分けした後の状態を示す説明図である。
【0050】
【図5B】また、図5Bは、図5A(b)に引き続いて小分け投入操作を行う方法を説明するための説明図であり、図5B(c)が投入弁操作桿により投入弁を開いて投入カップ内に小分けされた固体原料を坩堝内の融液面上に投入する状態を示す説明図であり、図5B(d)が投入カップ内に小分けされた固体原料を坩堝内の融液面上に投入した後の状態を示す説明図であり、図5B(e)が供給タンクから固体原料を小分けして投入カップ内に切り出す準備ができた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[溶解炉への原料供給装置について]
以下、添付図面に示す本発明の実施例に基づいて、シリコン精製装置の真空溶解炉の坩堝内にシリコン原料(固体原料)を供給するために採用された本発明の原料供給装置の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【0052】
図1及び図2において、本発明の実施例に係る原料供給装置Sが示されている。この原料供給装置Sは、上部が垂直筒状に形成された直胴部1aと下部がロート状に形成されたホッパー部1bとを有すると共に、このホッパー部1b下端に形成された切出開口1cに切出弁5を備え、シリコン原料10が装入される供給タンク1と、この供給タンク1の下方に配設され、上端側に受入開口2aと下端側に投入開口2bとを有すると共に下端には投入弁6を備え、前記供給タンク1の切出弁5から小分けに切り出されたシリコン原料10が装填される投入カップ2と、前記切出弁5の弁開閉操作を行う切出弁操作部材(弁操作手段)3と、前記投入カップ2をその降下位置と受入位置との間で移動させると共に投入カップ2の投入弁6の弁開閉操作を行うロッド状の投入弁操作桿(弁操作手段の投入弁操作部材)4とを備えている。
【0053】
この実施例において、前記供給タンク1には、その直胴部1aの周壁上部外側に、装置Sを図示外の台車に搭載する際や真空溶解炉の坩堝内に固体原料の投入する際に、台車の装置支持部や真空溶解炉の炉体の一部にこの装置Sを係止するための係止アーム9が設けられているほか、そのホッパー部1b下端の切出弁5の外側に、前記切出開口1cを形成すると共に前記切出弁5を取り囲むように、リング状の底壁部1dが取り付けられており、この底壁部1dが装置全体を吊り下げた際におけるタンク荷重受け部として機能するようになっている。
【0054】
また、この実施例においては、前記切出弁5は、供給タンク1のホッパー部1b下端に形成された切出開口1cの開口部周縁から上方に向けてリング状に突出した開口周縁部を切出弁座5aとしており、また、その切出弁体5bはその上部が円錐形状で下部が逆円錐形状の略々算盤玉形状に形成されており、この切出弁体5bの下部の逆円錐面がリング状に突出した切出弁座5aに着座して切出弁5を閉じた際にはこれら切出弁座5aと切出弁体5bとの間が実質的に線接触により接触するようになっている。この切出弁5の構造によれば、リング状に突出した切出弁座5aにより、供給タンク1内のシリコン原料10を小分けして投入カップ2内に切り出す際に切出弁5を通過して流れるシリコン原料10の流れを規制し、切出弁5が完全に開くまではシリコン原料10が一気に流れ落ちるのを防止することができ、また、切出弁座5aと切出弁体5bとが実質的に線接触により接触するので、シリコン原料10の所定量を投入カップ2に切り出す際にシリコン原料10が滑り落ちるホッパー部1bの逆円錐面と切出弁体5bの下部円錐面との間に滞留するシリコン原料10を可及的に減少せしめることができ、更に、切出弁5の切出弁体5bの上部円錐面により、供給タンク1内のシリコン原料10を供給タンク1内に残留させることなく、確実に最後まで切り出すことができる。
【0055】
更に、この実施例では、前記投入カップ2は、その記受入開口2aが供給タンク1の開口した切出開口1cに連通する受入位置と前記切出開口1cから離れた降下位置との間で移動可能になっており、また、この投入カップ2の投入弁6は、前記投入開口2aの開口周縁部を投入弁座6aとし、この投入弁座6aに着座し、また、投入弁座6aから離れて投入開口2aを開閉する投入弁体6bとで構成されている。そして、この投入カップ2には、その周壁外面に、後述する投入案内8との関係でこの投入カップ2の降下位置を規定する位置決めアーム2cが設けられている。
【0056】
更にまた、この実施例においては、前記投入カップ2の下方位置に下端開口8cを有する投入案内8が設けられている。この投入案内8は、その上部が前記投入カップ2よりも大きくてこの投入カップ2を収容することができる垂直筒状の直胴部8aに形成され、この直胴部8aの上端が前記供給タンク1の底壁部1dに固着されていると共に、その下部には前記直胴部8aの開口よりも小さい下端開口8cを有するロート部8bが形成されており、投入カップ2から投入されたシリコン原料10が後述する真空溶解炉の坩堝内の中心位置に確実に投入されるようになっている。
【0057】
この投入案内8は、前記投入カップ2が前記直胴部8a内を上下方向に移動する際に、前記投入カップ2の位置決めアーム2cが投入案内8の下部に形成されたロート部8bの上端部に当接し、これによって投入カップ2の降下位置が規定されるようになっている。
【0058】
そして、この実施例においては、前記投入弁操作桿4が、供給タンク1をその上方から下方に貫通すると共に前記切出弁5の切出弁体5bを移動可能に貫通し、上端が後述する昇降手段に連結されていると共に下端が投入カップ2の投入弁6の投入弁体6bの上部中心位置に連結されており、また、前記切出弁操作部材3が、前記投入弁操作桿4を介して操作され、投入カップ2がその受入位置にあるときに切出弁5の切出弁体5bを切出弁座5aから離して切出開口1cを開き、また、投入カップ2がその降下位置にあるときに切出弁5の切出弁体5bを切出弁座5aに着座させて切出開口1cを閉じるスペーサ部材3aで構成されている。そして、前記投入弁操作桿4は、装置全体が吊り下げられた際には、前記投入カップ2の下端に設けられて閉じた状態の投入弁の投入弁体6bと、受入位置に移動して受入開口2aの開口周縁部が供給タンク1のタンク荷重受け部(底壁部1d)に当接した投入カップ2とを介して、前記投入カップ2上の供給タンク1の荷重を支持するようになっている。
【0059】
また、前記切出弁操作部材3は、前記スペーサ部材3aに加えて、供給タンク1内中央部に3本のステー3dを介して取り付けられ、上端が供給タンク1の上部上方に延びると共に下端が供給タンク1内に延びるパイプ状の弁操作案内管3bと、下端が前記切出弁5の切出弁体5bに連結されていると共に上端が前記弁操作案内管3b内に上下方向移動可能に延び、かつ、内部には前記投入弁操作桿4が上下方向移動可能に貫通する切出弁制御管3cとを備えており、これによって、投入弁操作桿4により装置全体を吊り下げた際に、装置上部が傾いて小分け投入操作に支障をきたすことがなく、また、投入弁体6bに偏った荷重が作用してこの投入弁体6bが損傷するのを未然に防止することができる。
【0060】
なお、この実施例においては、前記弁操作案内管3bの上端に投入弁操作桿4との間を投入弁操作桿4が摺動可能なように密閉するシール部材3eが設けられており、また、装置全体を吊り上げて坩堝上の原料投入位置に移動させる昇降手段として、吊下げ装置7が採用されており、この吊下げ装置7は、後述するシリコン精製装置の予備排気室の上部に設けられたワイヤ巻取り具7bと、このワイヤ巻取り具7bから延びて前記投入弁操作桿4の上端に連結された吊下げワイヤ7aとで構成されておいる。
【0061】
[溶解炉への原料供給方法について]
次に、図2〜図5Bに基づいて、この実施例に係る原料供給装置Sを用いて、シリコン精製装置11において融液10aを貯留する真空溶解炉12の坩堝13内にシリコン原料10を供給(リチャージ)する原料供給方法について説明する。
【0062】
先ず、図2に示すように、原料供給装置Sをその係止アーム9により台車の装置支持部15にセットしてシリコン原料装入位置に移動し、この位置で吊下げ装置7により投入弁操作桿4を下方に移動させ、切出弁5を閉じてその供給タンク1内に所定量のシリコン原料10を装入する。この時、切出弁5は、その切出弁体5bがシリコン原料10の重量により下方に押し圧され、完全に閉じた状態になる。
【0063】
この状態で供給タンク1内へのシリコン原料10の装入が終了した後、装置Sをシリコン精製装置11の予備排気室14のところまで移動させ、図3に示すように、シリコン精製装置11の予備排気室14の上部に設けられた吊下げ装置7の吊下げワイヤ7aの先端を投入弁操作桿4の上端に連結し、ワイヤ巻取り具7bにより吊下げワイヤ7aを巻き上げて装置全体を釣り上げる。
【0064】
装置全体が投入弁操作桿4を介して吊上げられると、図3及び図5A(a)に示すように、投入弁操作桿4の下端に取り付けられた投入カップ2の投入弁6はその投入弁体6bが投入弁座6aに着座して閉じ、次いで投入カップ2が引き上げられてその受入開口2aの開口周縁部が供給タンク1の底壁部(タンク荷重受け部)1dに当接し、投入カップ2はその受入位置まで上昇する。投入カップ2がその受入位置に到達した後、装置全体が完全に釣り上げられると、供給タンク1の切出弁5は、切出弁操作部材3のスペーサ部材3aにより切出弁体5bが上昇して開いた状態となり、供給タンク1の切出開口1cと投入カップ2の受入開口2aとが連通し、供給タンク1内のシリコン原料10がその自重により供給タンク1のホッパー部1b内面に沿って切出弁5を通過し、投入カップ2内に装填される。この際の切出弁5を通過するシリコン原料10の流れは、投入カップ2内が満杯になることにより停止する。
【0065】
次に、装置Sは、吊下げ装置7により吊り下げられた状態で予備排気室14内に引き込まれ、次いで、装置Sを収容した予備排気室14がシリコン精製装置11の真空溶解炉12に向けて移動し、図4(a)に示すように、この真空溶解炉12の炉体上に閉状態のゲートバルブ12aを介してセットされる。その後、装置Sが予備排気室14内で吊下げられたままの状態で、この予備排気室14内の空気を図示外の真空ポンプ16等により排気し、真空乃至不活性ガスに置換する雰囲気置換が行われ、真空溶解炉12の雰囲気と一致させた後にゲートバルブ12aを開き、吊下げ装置7により装置Sを炉内に降下させ、その係止アーム9により炉体の装置支持部12bに係止し、装置Sを坩堝13内の融液10a面の上方にセットする。
【0066】
装置Sの真空溶解炉12の炉体へのセットが終了した後、図5A(b)に示すように、吊下げ装置7により投入弁操作桿4を降下させ、供給タンク1の切出弁5を閉じて供給タンク1内から投入カップ2内に所定量のシリコン原料10を切り出し、投入カップ2をその降下位置まで降下させる。投入カップ2がその降下位置まで降下した後、更に引き続いて吊下げ装置7により投入弁操作桿4を降下させ、図5B(c)及び(d)に示すように、投入カップ2の投入弁6を開き、この投入カップ2内に小分けして切り出された所定量のシリコン原料10を坩堝13内の融液10a面上に投入する。
【0067】
投入カップ2内のシリコン原料10の投入が終了した後、図5B(d)及び(e)に示すように、吊下げ装置7により投入弁操作桿4を上昇させて投入弁6を閉じ、更に引き続き吊下げ装置7により投入弁操作桿4を投入カップ2の受入開口2aが供給タンク1の底壁部1dに当接するまで上昇させ、図5A(a)に示すように、再び切出弁5を開いて供給タンク1の切出開口1cと投入カップ2の受入開口2aとを連通させ、供給タンク1内のシリコン原料10の所定量を小分けし切り出して投入カップ2内に装填する。
【0068】
このような供給タンク1内のシリコン原料10の所定量を小分けし切り出し、投入カップ2から坩堝13内の融液10a面上に投入するシリコン原料10の小分け投入操作は、供給タンク1内のシリコン原料10が完全になくなるまで行われ、その後に、装置Sを真空溶融炉12の炉体上にセットした際の手順と逆の手順により、装置Sを予備排気室14内に収め、ゲートバルブ12aを閉じてからこの予備排気室14内に不活性ガスを導入して大気圧まで戻す雰囲気置換を行い、次いで真空溶融炉12の炉体上から移動させて台車の装置支持部15にセットし、原料供給装置Sの1回の作業の全てが終了する。
【0069】
このような原料供給装置Sによる固体原料の供給操作は、真空溶融炉12の坩堝13内への追加チャージあるいはリチャージに必要な固体原料の供給量と供給タンク1の内容積とを勘案し、複数基の装置Sを用意して実施してもよく、また、1基の装置Sで複数回の供給操作を繰り返してもよい。
【0070】
[適用例]
更に、本発明の溶解炉への原料供給装置を用いて、シリコン精製装置における真空溶解炉の坩堝内に400kgのシリコン原料をリチャージする場合を例にして、従来のリチャージ管を用いた場合と比較し、本発明の原料供給方法による効果の確認をする。
【0071】
先ず、従来のリチャージ管を用いて400kgのシリコン原料をリチャージする際に坩堝内外の温度差を200℃以内とするためには、10本のリチャージ管が必要になり、各リチャージ管には、1本目と2本目に10kg、3本目と4本目に20kg、5本目に30kg、6本目に40kg、7本目に50kg、8本目に60kg、9本目と10本目に80kgの割合でシリコン原料を充填する。
【0072】
ここで、リチャージに要する時間には、リチャージ管を予備排気室に入れ、この予備排気室内の雰囲気置換を行って炉内圧(3000Pa減圧状態)に調整した後に炉本体と連結し、シリコン原料を坩堝内に投入するまで40分、更に予備排気室内を不活性ガスで大気圧に戻し、リチャージ管を炉本体から取り出すまでに20分が必要であって、両者を合わせて機械操作に1時間が必要であり、一方、坩堝内に投入されたシリコン原料が融液中に溶解する時間も必要である。後者の溶解に要する時間は溶解量によって変わるが、前記リチャージに要する時間は、これら機械操作時間と溶解時間のいずれか長い方に律速される。
【0073】
この適用例においては、最大の原料投入量80kgの場合で溶解に要する時間は1時間であった。そして、1本目から8本目までは、原料投入量が80kgより少ないので、原料溶解・温度回復の時間は1時間以内に完了するが、原料投入操作の時間には1時間かかり、また、1本目の原料投入操作前までに40分を要するので、全体では40分+各1時間×10本であって、合計10時間40分が必要である。
【0074】
これに対して、本発明の原料供給装置を用いた場合には、各装置の供給タンク1内に200kgのシリコン原料を充填することができるので、2基の装置を必要とし、1基目の装置の原料投入操作前までに40分を要し、また、原料投入量80kgの場合で原料溶解・温度回復の時間が約1時間なので、その後は原料溶解・温度回復の時間が律速になり、全体では40分+{(200kg÷80kg)×1時間}+20分+40分+{(200kg÷80kg)×1時間}+20分であって、合計7時間が必要である。
この結果、本発明の場合には、従来のリチャージ管を用いた場合と比較して、3時間40分の節約になる。
【符号の説明】
【0075】
1…供給タンク、1a…直胴部、1b…ホッパー部、1c…切出開口、1d…底壁部(タンク荷重受け部)、2…投入カップ、2a…受入開口、2b…投入開口、2c…位置決めアーム、3…切出弁操作部材(弁操作手段)、3a…スペーサ部材、3b…弁操作案内管、3c…切出弁制御管、3d…ステー、3e…シール部材、4…投入弁操作桿(弁操作手段の投入弁操作部材)、5…切出弁、5a…切出弁座(開口周縁部)、5b…切出弁体、5c…下部逆円錐面、6…投入弁、6a…投入弁座、6b…投入弁体、6c…円錐面、7…吊下げ装置(昇降手段)、7a…吊下げワイヤ、7b…ワイヤ巻取り具、8…投入案内、8a…直胴部、8b…ロート部、8c…下端開口、9…係止アーム、10…シリコン原料(固体原料)、10a…融液、11…シリコン精製装置、12…真空溶解炉、12a…ゲートバルブ、12b…炉体の装置支持部、13…坩堝、14…予備排気室、15…台車の装置支持部、16…真空ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融液を貯留する溶解炉の坩堝内に固体原料を供給する原料供給装置であり、
下端に切出弁を備えると共に前記坩堝内に供給される固体原料が装入される供給タンクと、この供給タンクの下方に配設され、下端に投入弁を備えると共に前記供給タンクの切出弁から小分けに切り出された固体原料が装填される投入カップと、前記切出弁及び投入弁の弁開閉操作を行う弁操作手段とを備え、
前記供給タンクから坩堝内への固体原料の供給時には、前記弁操作手段が、供給タンク内に装入された固体原料を小分けして投入カップに切り出し、次いで投入カップ内に装填された固体原料を坩堝内に投入する弁開閉操作を行うことを特徴とする溶解炉への原料供給装置。
【請求項2】
前記供給タンク、投入カップ、及び弁操作手段に加えて、装置全体を吊り上げて坩堝上の原料投入位置に移動させる昇降手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項3】
前記供給タンク、投入カップ、及び弁操作手段に加えて、前記投入カップの下方位置に下端開口を有する投入案内が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項4】
前記供給タンクは、その上部が垂直筒状の直胴部に形成されていると共に下部がロート状のホッパー部に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項5】
前記切出弁は、供給タンクのホッパー部下端に形成された切出開口の開口周縁部を切出弁座とし、この切出弁座に着座し、また、切出弁座から離れて切出開口を開閉する切出弁体を有すると共に、前記切出開口の閉塞時には前記切出弁座と切出弁体との間が実質的に線接触により接触することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項6】
前記切出弁の切出弁座は、供給タンクのホッパー部下端の切出開口の開口部周縁から上方に向けてリング状に突出しており、供給タンク内の固体原料を小分けして投入カップ内に切り出す際に切出弁を通過して流れる固体原料の流れを規制することを特徴とする請求項5に記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項7】
前記切出弁の切出弁体は、上部が円錐形状で下部が逆円錐形状に形成されており、この切出弁体の下部逆円錐面が切出弁座に着座することを特徴とする請求項5又は6に記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項8】
前記投入カップは、その上端側に前記供給タンクの切出開口よりも大きな開口の受入開口を有すると共に下端側に投入開口を有し、また、前記受入開口が供給タンクの開口した切出開口に連通する受入位置と、前記切出開口から離れて投入弁の弁開閉操作が行われる降下位置との間で上下方向移動可能になっており、また、この投入カップの投入弁は、前記投入開口の開口周縁部を投入弁座とし、この投入弁座に着座し、また、投入弁座から離れて投入開口を開閉する投入弁体を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項9】
前記投入弁の投入弁体は、円錐形状に形成されてその円錐面が投入弁座に着座することを特徴とする請求項8に記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項10】
前記弁操作手段は、供給タンクの切出弁の弁開閉操作を行う切出弁操作部材と、投入カップをその降下位置と受入位置との間で移動させると共に投入カップの投入弁の弁開閉操作を行う投入弁操作部材とを有しており、
前記供給タンクから坩堝内への固体原料の供給時には、前記切出弁操作部材により、供給タンクの切出弁を開いて固体原料を小分けしながら投入カップに切り出し、また、前記投入弁操作部材により、投入カップをその降下位置と受入位置との間で移動させると共に、降下位置で投入カップの投入弁を開いて固体原料を坩堝内に投入することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項11】
前記投入弁操作部材が、供給タンクをその上方から下方に貫通すると共に前記切出弁の切出弁体を移動可能に貫通し、上端が前記昇降手段に連結されていると共に下端には投入カップの投入弁の投入弁体が設けられた投入弁操作桿であり、また、前記切出弁操作部材が、前記投入弁操作桿を介して操作され、切出弁の切出弁体と投入弁の投入弁体との間の間隔を規定し、投入カップがその受入位置にあるときに切出弁の切出弁体を切出弁座から離して切出開口を開き、また、投入カップがその降下位置にあるときに切出弁の切出弁体を切出弁座に着座させて切出開口を閉じるスペーサ部材であり、
供給タンクへの原料装入時には、前記昇降手段により投入弁操作桿を下方に移動させて前記切出弁を閉じ、また、装置全体の吊上げ時には、前記昇降手段により投入弁操作桿を上方に移動させて前記投入弁を閉じ、次いで、投入カップをその受入位置に移動させて前記切出弁を開くと共に、供給タンクの切出開口と投入カップの受入開口とを連通連結させて供給タンク内の固体原料を投入カップ内に装填し、更に、坩堝内への原料投入時には、前記昇降手段により投入弁操作桿を下方に移動させることにより切出弁を閉じて固体原料を小分けし、次いで、投入弁を開いて小分けされた固体原料を坩堝内に投入することを特徴とする請求項10に記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項12】
前記投入弁操作桿は、前記投入カップの下端に設けられて閉じた状態の投入弁の投入弁体と、受入位置に移動して受入開口の開口周縁部が供給タンクのタンク荷重受け部に当接した投入カップとを介して、前記投入カップ上の供給タンクの荷重を支持することを特徴とする請求項11に記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項13】
前記切出弁操作部材は、前記スペーサ部材に加えて、供給タンク内中央部にステーを介して取り付けられ、上端が供給タンクの上部上方に延びると共に下端が供給タンク内に延びるパイプ状の弁操作案内管と、下端が前記切出弁の切出弁体に連結されていると共に上端が前記弁操作案内管内に上下方向移動可能に延び、かつ、内部には前記投入弁操作桿が上下方向移動可能に貫通する切出弁制御管とを備えていることを特徴とする請求項11又は12に記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項14】
投入案内は、その上部に少なくとも前記投入カップより大きくてこの投入カップを収容する垂直筒状の直胴部が形成されていると共に、その下部に前記直胴部の開口よりも小さい下端開口を有するロート部が形成されており、また、前記投入カップの周壁外面には前記直胴部内を上下方向に移動し、前記ロート部の上端部に当接して投入カップの降下位置を規定する位置決めアームが設けられていることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の溶解炉への原料供給装置。
【請求項15】
原料供給装置を用いて融液を貯留する溶解炉の坩堝内に固体原料を供給するに際し、前記原料供給装置には下端に切出弁を有する供給タンクと、下端に投入弁を有すると共に前記供給タンクの下方に位置する投入カップとを設け、前記供給タンクに固体原料を装入した後にこの供給タンクを前記投入カップと共に坩堝上に移動させ、次いで、前記切出弁及び投入弁の弁開閉操作により、供給タンク内に装入された固体原料を切出弁から小分けして投入カップに装填した後に、投入カップの投入弁を開いてこの投入カップ内に装填された固体原料を坩堝内に投入する小分け投入操作を複数回繰り返して行い、供給タンク内の固体原料の全量を坩堝内の融液面上に投入することを特徴とする溶解炉への原料供給方法。
【請求項16】
溶解炉への原料供給を請求項2〜14のいずれかに記載された原料供給装置を用いて行う請求項15に記載の溶解炉への原料供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2012−6775(P2012−6775A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142635(P2010−142635)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【出願人】(510096049)NSソーラーマテリアル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】