説明

滅菌されたナノ粒子グルココルチコステロイド製剤

本発明は、成人および小児患者における喘息ならびに他のアレルギーおよび炎症状態の予防および長期的治療に有用である、グルココルチコステロイドの無菌組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、成人および小児患者における喘息の予防および慢性的治療において、ならびに成人および小児患者におけるアレルギー性結膜炎および季節性アレルギー性鼻炎の症状の緩和において有用な無菌組成物に関する。本無菌組成物は、グルココルチコステロイドを含有する。本発明は、様々な炎症およびアレルギー状態の治療のための非経口、吸入、および局所投与に同じく有用である薬学的組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
A. グルココルチコステロイドに関する背景
グルココルチコステロイドは、予防療法としての喘息の維持治療に、成人および小児患者における季節性および通年性のアレルギー性および非アレルギー性鼻炎の鼻症状の管理に、ならびに季節性アレルギー性結膜炎の徴候および症状の緩和に有効であることが示されている。
【0003】
Karlssonらの米国特許第6,392,036号「グルココルチコイドの乾熱滅菌(Dry Heat Sterilization of Glucocorticosteroid)」は、グルココルチコステロイドを含有する乾燥粉末の滅菌プロセスに関する。このプロセスは、100〜130℃の温度で粉末を乾熱処理することを含む。このプロセスは、ブデソニド粉末の滅菌、それに続く液体および賦形剤の無菌添加による、製品Pulmicort Respulesの調製について開示している。この特許は、水存在下での滅菌(すなわち湿熱滅菌)が、粒子凝集のために許容される滅菌法ではないことも開示している。さらにエチレンオキシドは、毒性残留物の生成のために、許容される滅菌プロセスではない。さらにマイクロ粒子化されたブデソニドの滅菌プロセスとしてのβ線およびγ線照射は、低い放射線曝露レベルでの重大な化学的破壊を明らかにした。
【0004】
Berniniらの米国特許第6,464,958号「吸入送達のための薬物粒子懸濁物の調製法(Process for the Preparation of Suspensions of Drug Particles for Inhalation Delivery)」は、γ線照射の結果としての、治療的に許容される無菌のマイクロ粒子化されたジプロピオン酸ベクロメタゾンの製造プロセスに関する。この参考文献は、ジプロピオン酸ベクロメタゾンは、特定の条件下で2〜9KGyのγ線照射が供された場合に、化学的に安定であり続けることを開示している。この照射は、空気を窒素で置き換え、かつ二重の防酸素材料Polikemバッグ内に密封された、ポリエチレン容器内で実行される。滅菌されマイクロ粒子化されたジプロピオン酸ベクロメタゾンは、その中で水性内容物および賦形剤が蒸気ジャケットを使用する蒸気滅菌により先に滅菌されるターボ乳化装置を用い、無菌様式で加工処理される。
【0005】
Gentileらの欧州特許出願第EP1454636号A1「肺送達のためのグルココルチコイド薬物粒子の滅菌(Sterilization of Glucocorticoid Drug Particles for Pulmonary Delivery)」は、マイクロ粒子化されたグルココルチコステロイドおよび水の混合物を100〜130℃の温度範囲で加熱することを含む、グルココルチコステロイドの蒸気滅菌のプロセスを開示している。グルココルチコステロイド/水比は、3:100〜10:100の範囲から選択される。好ましいグルココルチコステロイドは、ベクロメタゾンまたはジプロピオン酸ベクロメタゾンである。好ましい滅菌は、121℃で20分間である。この発明の滅菌されたグルココルチコステロイド懸濁剤の不純度プロファイルは、滅菌されないグルココルチコステロイドのプロファイルとは大きく異ならない。
【0006】
Govindらの米国特許第6,039,932号「ブデソニド含有薬用吸入エアゾル製剤(Medicinal Inhalation Aerosol Formulations Containing Budesonide)」は、噴射剤ベースのグルココルチコステロイド製剤を開示している。特許請求された好ましい界面活性剤は、オレイン酸、オレイン酸ソルビタン、およびレシチンを含む。
【0007】
Waldrepら国際公開公報第98/00111号「高用量リポソームエアゾル製剤(High Dose Liposomal Aerosol Formulations)」は、ジラウロイルホスファチジルコリン最大約187.5mg/ml中に、ブデソニド最大約12.5mg/mlを含有する、高用量ブデソニド-リポソームエアゾル組成物を開示している。開示されたプロセスの実践において有用なその他のリン脂質は、卵黄ホスファチジルコリン、水素添加大豆ホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、およびジパルミトイルホスファチジルコリンからなる群より選択することができる。
【0008】
Haynesの米国特許第5,091,188号は、「リン脂質被覆式微結晶:水不溶性薬物の注射用製剤(Phospholipid-coated microcrystals: injectable formulations of water-insoluble drugs)」は、膜を形成する両親媒性脂質(リン脂質)の層で被覆された、約50nm〜約10,000nm程度の水に不溶性の薬学的活性物質の固形粒子の懸濁剤からなる、注射器で注射可能な薬学的組成物の調製を開示している。この組成物は、吸入および眼内投与についても開示されている。原薬は、リン脂質の存在下での音波処理または高剪断が関与するプロセスにより、粒径が低下される。
【0009】
McAfferらの米国特許6,863,865号「医薬品滅菌(Sterilization of pharmaceuticals)」は、高温への急激な上昇と維持、それに続く周囲温度への急激な回復を使用する、成功したグルココルチコステロイド(ブデソニド)製剤の滅菌(高温短時間滅菌「HTST滅菌」とも記される)を開示している。HTST滅菌サイクルは、ブデソニド製剤中の不純物レベルの上昇は生じず、かつこの製剤の物理的特性は変更しなかった。
【0010】
Verrecchiaの米国特許第6,139,870号「無菌条件下で濾過可能な安定化されたナノ粒子(Stabilized nanoparticles which are filterable under sterile conditions)」は、リン脂質およびオレイン酸塩を含有する水相中に乳化された、疎水性、水不溶性および水非分散性のポリマーまたはコポリマーを一種含有する、ナノ粒子懸濁剤の滅菌濾過のプロセスを開示している。このナノ粒子は、薬学的作用物質を含有し、これは「タキソイドファミリー」および注射用組成物に焦点を合わせている。
【0011】
Parikhらの米国特許第5,922,355号「水不溶性物質のマイクロ粒子調製のための組成物および方法(Composition and method of preparing microparticles of water-insoluble substances)」は、水難溶性薬物が、天然または合成のリン脂質と一緒に、1種類または複数の表面改質剤または界面活性剤と組み合わせられた場合に、ミクロン下の粒径で調製される、プローブソニケーター技術を開示している。表面改質剤または界面活性剤およびリン脂質の組み合わせ法は、最終粒径をリン脂質単独を使用する場合に得られるものと比べ、少なくとも半分よりも小さくする。リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾリン脂質、卵または大豆のリン脂質(天然、部分的にまたは完全に水素添加された)であってよい。
【0012】
Mullerらの米国特許第5,858,410号「増大した飽和溶解度および溶解速度を伴うシステムとしての医薬品投与のための薬用ナノ懸濁剤(Pharmaceutical nanosuspensions for medicament administration as systems with increased saturation solubility and rate of solution)」は、粒径範囲が10〜1000nmである少なくとも1種類のやや溶けにくい治療的化合物を含有する、薬物担体粒子の調製を開示している。天然の界面活性剤は、リン脂質(レシチン、リン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール、卵レシチン、大豆レシチン、および水素添加レシチンは、他の分散安定化物質(例えばポロキサマー、モノおよびジグリセリド、ポロキサミン、糖アルコール、アルキルフェノール)と一緒に、このシステムを安定化するために利用される。)を含む。この特許に開示された医薬品は、コルチコイド(例えば、アルドステロン、トリアムシノロン、およびデキサメタゾン)を含む。小型粒子を製造するためにMullerにより利用される装置は、ジェット気流中で液体の高剪断を生じるプロセスである、MicrofluidizerまたはNanojetである。
【0013】
Snellらの米国特許第5,993,781号「噴霧可能なプロピオン酸フルチカゾン製剤(Fluticasone Propionate Nebulizable Formulations)」は、蒸気により滅菌されたプロピオン酸フルチカゾンのバルク懸濁剤を開示する。
【0014】
Santessonらの欧州特許出願第EP1310243号A1「新規製剤(Novel Formulation)」は、ブデソニド32μgを含有する計量式単位投与量を開示しており、ここでブデソニドは、pHが3.5〜5.0の範囲の水性媒体中に懸濁される細かい粒子として製造される。この製剤は、キレート剤EDTAを約0.005〜0.1%w/w含有することが好ましい。
【0015】
Otterbeckらの米国特許第5,914,122号「安定したブデソニド溶液、その調製法、並びに浣腸調製物および医薬用泡剤としてのこれらの溶液の使用(Stable Budesonide Solutions, Method of Preparing Them and Use of These Solutions As Enema Preparations And Pharmaceutical Foams)」は、ブデソニド溶液の安定性は、pH(pH<6を請求)に決定的に依存することを開示している。ブデソニド安定性は、EDTAまたはシクロデキストリンの存在下で増強される。
【0016】
Fraserらの米国特許出願公開第2002/0037257号A1「ブデソニド粒子およびそれらを含有する薬学的組成物(Budesonide Particles and Pharmaceutical Compositions Containing Them)」は、BET値が1〜4.5m2/gである「平滑表面」を有する、結晶性ブデソニド粒子の重要性を強調している。開示されたプロセスは、超臨界液を使用する。
【0017】
B. ナノ粒子組成物に関する背景
米国特許第5,145,684号(「'684特許」)に最初に開示されたナノ粒子組成物は、非架橋の表面安定剤の表面上に吸着された、または表面と会合された、難溶性治療薬または診断薬からなる粒子である。
【0018】
ナノ粒子組成物の製造法は、例えば米国特許第5,518,187号および第5,862,999号、両方とも「医薬物質粉砕法(Method of Grinding Pharmaceutical Substances)」;米国特許第5,718,388号「医薬物質粉砕連続法(Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances)」;および米国特許第5,510,118号「ナノ粒子含有治療組成物調製法(Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles)」に開示されている。
【0019】
ナノ粒子組成物は同じく、例えば、米国特許第5,298,262号「滅菌時の粒子凝集を防ぐためのイオン曇点変更剤の使用(Use of Ionic Cloud Point Modifiers to Prevent Particle Aggregation During Sterilization)」;第5,302,401号「凍結乾燥時の粒径成長の低下法(Method to Reduce Particle Size Growth During Lyophilization)」;第5,318,767号「医学画像に有用なX線造影組成物(X-Ray Contrast Compositions Useful in Medical Imaging)」;第5,326,552号「高分子量非イオン性界面活性剤を使用するナノ粒子X線血液プール造影剤のための新規製剤(Novel Formulation For Nanoparticulate X-Ray Blood Pool Contrast Agents Using High Molecular Weight Non-ionic Surfactants)」;第5,328,404号「ヨウ素化芳香族プロパンジオエートを使用するX線造影法(Method of X-Ray Imaging Using Iodinated Aromatic Propanedioates)」;第5,336,507号「ナノ粒子凝集を低下させるための帯電リン脂質の使用(Use of Charged Phospholipids to Reduce Nanoparticle Aggregation)」;第5,340,564号「粒子凝集を防止し安定性を増大するためのOlin 10-G含有製剤(Formulations Comprising Olin 10-G to Prevent Particle Aggregation and Increase Stability)」;第5,346,702号「滅菌時のナノ粒子凝集を最小化するための非イオン性曇点変更剤の使用(Use of Non-Ionic Cloud Point Modifiers to Minimize Nanoparticulate Aggregation During Sterilization)」;第5,349,957号「非常に小さい磁気-デキストラン粒子の調製および磁気特性(Preparation and Magnetic Properties of Very Small Magnetic-Dextran Particles)」;第5,352,459号「滅菌時の粒子凝集を防止するための精製した表面改質剤の使用(Use of Purified Surface Modifiers to Prevent Particle Aggregation During Sterilization)」;第5,399,363号および第5,494,683号、両方とも「表面修飾した抗癌ナノ粒子(Surface Modified Anticancer Nanoparticles)」;第5,401,492号「磁気共鳴増強剤としての水不溶性非磁気マンガン粒子(Water Insoluble Non-Magnetic Manganese Particles as Magnetic Resonance Enhancement Agents)」;第5,429,824号「ナノ粒子安定剤としてのTyloxapolの使用(Use of Tyloxapol as a Nanoparticulate Stabilizer)」;第5,447,710号「高分子量非イオン性界面活性剤を使用するナノ粒子X線血液プール造影剤の製造法(Method for Making Nanoparticulate X-Ray Bloos Pool Contrast Agents Using High Molecular Weight Non-ionc Surfactants)」;第5,451,393号「医学画像において有用であるX線造影組成物(X-Ray Contrast Compositions Useful in Medical Imaging)」;第5,466,440号「医薬として許容されるクレイと併用する経口胃腸診断用X線造影剤の製剤(Formulations of Oral Gastrointestinal Diagnostic X-Ray Contrast Agents in Combination with Pharmaceutically Acceptable Clays)」;第5,470,583号「凝集を低下させるための帯電リン脂質を含有するナノ粒子組成物の調製法(Method of Preparing Nanoparticle Compositions Containing Charged Phospholipids to Reduce Aggregation)」;第5,472,683号「血液プールおよびリンパ系画像のためのX線造影剤としてのナノ粒子診断用混合カルバミン酸無水物(Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carbamic Anhydrides as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging)」;第5,500,204号「血液プールおよびリンパ系画像のためのX線造影剤としてのナノ粒子診断用二量体(Nanoparticulate Diagnostic Dimers as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging)」;第5,518,738号「ナノ粒子NSAID製剤(Nanoparticulate NSAID Formulations)」;第5,521,218号「X線造影剤として使用するナノ粒子イオドジパミド誘導体(Nanoparticulate Iododipamide Derivatives for Use as X-Ray Contrast Agents)」;第5,525,328号「血液プールおよびリンパ系画像のためのナノ粒子診断用ジアトリゾキシエステルX線造影剤(Nanoparticulate Diagnostic Diatrizoxy Ester X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging)」;第5,543,133号「ナノ粒子含有するX線造影組成物の調製法(Process of Preparing X-Ray Contrast Compositions Containing Nanoparticles)」;第5,552,160号「表面改質したNSAIDナノ粒子(Surface Modified NSAID Nanoparticles)」;第5,560,931号「可消化油または脂肪酸中のナノ粒子分散剤としての化学物質製剤(Formulations of Compounds as Nanoparticulate Dispersions in Digestible Oils or Fatty Acids)」;第5,565,188号「ナノ粒子の表面改質剤としてのポリアルキレンブロックコポリマー(Polyalkylene Block Copolymers as Surface Modifiers for Nanoparticles)」;第5,569,448号「ナノ粒子組成物の安定剤コーティングとしての硫酸化された非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤(Sulfated Non-ionic Block Copolymer Surfactant as Stabilizer Coatings for Nanoparticle Compositions)」;第5,571,536号「可消化油または脂肪酸中のナノ粒子分散剤としての化学物質製剤(Formulations of Compounds as Nanoparticulate Dispersions in Digestible Oils or Fatty Acids)」;第5,573,749号「血液プールおよびリンパ系画像のためのX線造影剤としてのナノ粒子診断用混合カルボン酸無水物(Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carboxylic Anydrides as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging)」;第5,573,750号「診断画像X線造影剤(Diagnostic Imaging X-Ray Contrast Agents)」;第5,573,783号「保護用オーバーコートを伴う再分散可能なナノ粒子フィルムマトリックス(Redispersible Nanoparticulate Film Matrices With Protective Overcoats)」;第5,580,579号「高分子量線状ポリ(エチレンオキシド)ポリマーにより安定化されたナノ粒子を使用する胃腸管内位置指定接着(Site-specific Adhesion Within the GI Tract Using Nanoparticles Stabilized by High Molecular Weight, Linear Poly(ethylene oxide) Polymers)」;第5,585,108号「医薬として許容されるクレイと併用する経口消化管治療薬の製剤(Formulations of Oral Gastrointestinal Therapeutic Agents in Combination with Pharmaceutically Acceptable Clays)」;第5,587,143号
「ナノ粒子組成物のための安定剤コーティングとしてのブチレンオキシド-エチレンオキシドブロックコポリマー界面活性剤(Butylene Oxide-Ethylene Oxide Block Copolymers Surfactants as Stabilizer Coatings for Nanoparticulate Compositions)」;第5,591,456号「分散安定剤としてヒドロキシプロピルセルロースを含む摩砕されたナプロキセン(Milled Naproxen with Hydroxypropyl Cellulose as Dispersion Stabilizer)」;第5,593,657号「非イオン性およびアニオン性安定剤により安定化された新規バリウム塩製剤(Novel Barium Salt Formulations Stabilized by Non-ionic and Anionic Stabilizers)」;第5,622,938号「ナノ結晶のための糖ベースの界面活性剤(Sugar Based Surfactant for Nanocrystals)」;第5,628,981号「経口胃腸管診断用X線造影剤および経口胃腸管治療薬の改良製剤(Improved Formulations of Oral Gastrointestinal Diagnostic X-Ray Contrast Agents and Oral Gastrointestinal Therapeutic Agents)」;第5,643,552号「血液プールおよびリンパ系画像のためのX線造影剤としてのナノ粒子診断用混合カルボン酸無水物(Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carbonic Anhydrides as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging)」;第5,718,388号「医薬物質粉砕の連続法(Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances)」;第5,718,919号「イブプロフェンR(-)エナンチオマーを含有するナノ粒子(Nanoparticles Containing the R(-)Enantiomer of Ibuprofen)」;第5,747,001号「ベクロメタゾンナノ粒子分散剤を含有するエアゾル(Aerosols Containing Beclomethasone Nanoparticle Dispersions)」;第5,834,025号「静脈内投与されたナノ粒子製剤が誘導した有害な生理反応の低下(Reduction of Intravenously Administered Nanoparticulate Formulation Induced Adverse Physiological Reactions)」;第6,045,829号「セルロース表面安定剤を使用するヒト免疫不全ウィルス(HIV)プロテアーゼ阻害剤のナノ結晶製剤(Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus (HIV) Protease Inhibitors Using Cellulosic Surface Stabilizers)」;第6,068,858号「セルロース表面安定剤を使用するヒト免疫不全ウィルス(HIV)プロテアーゼ阻害剤のナノ結晶製剤の製造法(Methods of Making Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus (HIV) Protease Inhibitors Using Cellulosic Surface Stabilizers)」;第6,153,225号「ナノ粒子ナプロキセン注射用製剤(Injectable Formulations of Nanoparticulate Naproxen)」;第6,165,506号「ナノ粒子ナプロキセンの新規固形剤形(New Solid Dose Form of Nanoparticulate Naproxen)」;第6,221,400号「ヒト免疫不全ウィルス(HIV)プロテアーゼ阻害剤のナノ結晶製剤を使用する哺乳類治療法(Methods of Treating Mammals Using Nanocrystalline Formulations of Human Immuondeficiency Virus (HIV) Protease Inhibitors)」;第6,264,922号「ナノ粒子分散剤を含有する噴霧用エアゾル剤(Nebulized Aerosols Containing Nanoparticle Dispersions)」;第6,267,989号「ナノ粒子組成物の結晶成長および粒子凝集の防止法(Methods for Preventing Crystal Growth and Particle Aggregation in Nanoparticle Compositions)」;第6,270,806号「ナノ粒子組成物の表面安定剤としてのPEG-誘導体化された脂質の使用(Use of PEG-Derivatized Lipids as Surface Stabilizers for Nanoparticulate Compositions)」;第6,316,029号「迅速に崩壊する固形経口剤形(Rapidly Disintegrating Solid Oral Dosage Form)」;第6,375,986号「ポリマー表面安定剤およびスルホコハク酸ジオクチルナトリウムの相乗組み合わせを含有する固形剤形ナノ粒子組成物(Solid Dose Nanoparticulate Compositions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate)」;第6,428,814号「カチオン性表面安定剤を有する生体接着ナノ粒子組成物(Bioadhesive Nanoparticulate Compositions Having Cationic Surface Stabilizers)」;第6,431,478号「小型スケールミル(Small Scale Mill)」;および第6,432,381号「上位および/または下位消化管の薬物送達標的化法(Methods for Targeting Drug Delivery to the Upper and/or Lower Gastrointestinal Tract)」;第6,592,903号「ポリマー表面安定剤およびスルホコハク酸ジオクチルナトリウムの相乗組み合わせを含有するナノ粒子分散剤(Nanoparticulate Dispersions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate)」;第6,582,285号「サニタリー湿式ミル装置(Apparatus for sanitary wet milling)」;第6,656,504号「非晶質シクロスポリンを含有するナノ粒子組成物(Nanoparticulate Compositions Comprising Amorphous Cyclosporine)」;第6,742,734号「材料を摩砕するシステムおよび方法(System and Method for Milling Materials)」;第6,745,962号「小型スケールミルおよびその方法(Small Scale Mill and Method Thereof)」;第6,811,767号「ナノ粒子薬物の液滴エアゾル(Liquid droplet aerosols of nanoparticulate drugs)」;および第6,908,626号「即時放出および放出制御の特性の組み合わせを有する組成物(Compositions having a combination of immediate release and controlled release characteristics)」;第6,969,529号「表面安定剤としてビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーを含有するナノ粒子組成物(Nanoparticulate compositions comprising copolymers of vinyl pyrrolidone and vinyl acetate as surface stabillizers)」、第6,976,647号「材料を摩砕するシステムおよび方法(System and Method for Milling Materials)」;第6,991,191号「小型スケールミル使用法(Method of Using a Small Scale Mill)」;第7,101,576号「ナノ粒子Megestrol製剤(Nanoparticulate Megestrol Formulation)」であり、これらは全て本明細書において参照により具体的に組み入れられる。
【0020】
加えて、米国特許出願公開第20060246142号「ナノ粒子キナゾリン誘導体製剤(Nanoparticulate quinazoline derivative formulations)」、米国特許出願公開第20060246141号「ナノ粒子リパーゼ阻害剤製剤(Nanoparticulate lipase inhibitor formulations)」、米国特許出願公開第20060216353号「ナノ粒子コルチコステロイドおよび抗ヒスタミン製剤(Nanoparticulate corticosteroid and antihistamine formulations)」、米国特許出願公開第20060210639号「ナノ粒子ビスホスホネート組成物(Nanoparticulate bisphosphonate compositions)」、米国特許出願公開第20060210638号「ナノ粒子免疫抑制化合物の注射用組成物(Injectable compositions of nanoparticulate immunosuppressive compounds)」、米国特許出願公開第20060204588号「ナノ粒子フィナステリド、デュタステリドまたはタムスロシン塩酸塩およびそれらの混合物の製剤(Formulations of a nanoparticulate finasteride, dutasteride or tamsulosin hydrochloride, and mixtures thereof)」、米国特許出願公開第20060198896号「ナノ粒子ベンゾジアゼピンのエアゾルおよび注射用製剤(Aerosol and injectable formulations of nanoparticulate bennzodiazepine)」、米国特許出願公開第20060193920号「マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼ阻害剤のナノ粒子組成物(Nanoparticulate Compositions of Mitogen-Activated (MAP) Kinase Inhibitors)」、米国特許出願公開第20060188566号「ドセタキセルおよびそのアナログのナノ粒子製剤(Nanoparticulate formulations of docetaxel and analogues thereof)」、米国特許出願公開第20060165806号「ナノ粒子カンデサルタン製剤(Nanoparticulate candesartan formulations)」、米国特許出願公開第20060159767号「ナノ粒子ビカルタミド製剤(Nanoparticulate bicalutamide formulations)」、米国特許出願公開第20060159766号「ナノ粒子タクロリムス製剤(Nanoparticulate tacrolimus formulations)」、米国特許出願公開第20060159628号「ナノ粒子ベンゾチオフェン製剤(Nanoparticulate benzothiophene formulations)」、米国特許出願公開第20060154918号「注射用ナノ粒子オラザピン製剤(Injectable nanoparticulate olanzapine formulations)」、米国特許出願公開第20060121112号「トピラメート薬学的組成物(Topiramate pharmaceutical composition)」、米国特許出願公開第20020012675号A1「放出制御ナノ粒子組成物(Controlled Release Nanoparticulate Compositions)」、米国特許出願公開第20040195413号A1「摩砕物質の組成物および方法(Compositoins and method for milling materials)」、米国特許出願公開第20040173696号A1「ナノ粒子候補化合物のマイクログラム量の摩砕(Milling microgram quantities of nanoparticulate candidate compounds)」、米国特許出願公開第20050276974号「ナノ粒子線維性製剤(Nanoparticulate Fibrate Formulations)」;米国特許出願公開第20050238725号「表面安定剤としてペプチドを有するナノ粒子組成物(Nanoparticulate Compositions Having a Peptide as a Surface Stabilizer)」;米国特許出願公開第20050233001号「ナノ粒子メゲストロール製剤(Nanoparticulate Megestrol Formulations)」;米国特許出願公開第20050147664号「抗体含有組成物およびナノ粒子活性物質送達の標的化のためのその使用法(Compositions Comprising Antibodies and Methods of Using the Same for Targeting Nanoparticulate Active Agent Delivery)」;米国特許出願公開第20050063913号「新規メタキサロン組成物(Novel Metaxalone Compositions)」;米国特許出願公開第20050042177号「新規シルデナフィル遊離塩基組成物(Novel Compositions of Sildenafil Free Base)」;米国特許出願公開第20050031691号「ゲル安定化されたナノ粒子活性物質組成物(Gel Stabilized Nanoparticulate Active Agent Compositions)」;米国特許出願公開第20050019412号「新規グリピジド組成物(Novel Glipizide Compositions)」;米国特許出願公開第20050004049号「新規グリセオフルビン組成物(Novel Griseofulvin Compositions)」;米国特許出願公開第20040258758号「ナノ粒子トピラメート製剤(Nanoparticulate Topiramate Formulations)」;米国特許出願公開第20040258757号「安定したナノ粒子活性物質の液体用量組成物(Liquid Dosage Compositions of Stable Nanoparticulate Active Agents)」;米国特許出願公開第20040229038号「ナノ粒子メロキシカム製剤(Nanoparticulate Meloxicam Formulations)」;米国特許出願公開第20040208833号「新規フルチカゾン製剤(Novel Fluticasone Formulations)」;米国特許出願公開第20040156895号「プルラン含有固形剤形(Solid Dosage Forms Comprising Pullulan)」;米国特許出願公開第20040156872号「新規ニメスリド組成物(Novel Nimesulide Compositions)」;米国特許出願公開第20040141925号「新規トリアムシノロン組成物(Novel Triamcinolone Compositions)」;米国特許出願公開第20040115134号「新規ニフェジピン組成物(Novel Nifedipine Compositions)」;米国特許出願公開第20040105889号「低粘度液体剤形(Low Viscosity Liquid Dosage Forms)」;米国特許出願公開第20040105778号「固形ナノ粒子活性物質のγ線照射(Gamma Irradiation of Solid Nanoparticulate Active Agents)」;米国特許出願公開第20040101566号「新規過酸化ベンゾイル組成物(Novel Benzoyl Peroxide Compositions)」;米国特許出願公開第20040057905号「ナノ粒子ジプロピオン酸ベクロメタゾン組成物(Nanoparticulate Beclomethasone Dipropionate Cpmoisitoins)」;米国特許出願公開第20040033267号「血管新生阻害剤のナノ粒子組成物(Nanoparticulate Compositions of Angiogenesis Inhibitors)」;米国特許出願公開第20040033202号「ナノ粒子ステロール製剤および新規ステロールの組み合わせ(Nanoparticulate Sterol Formulations and Novel Sterol Combinations)」;米国特許出願公開第20040018242号「ナノ粒子ナイスタチン製剤(Nanoparticulate Nystatin Formulations)」;米国特許出願公開第20040015134号「薬物送達システムおよび方法(Drug Delivery Systems and Methods)」;米国特許出願公開第20030232796号「ナノ粒子ポリコサノール製剤および新規ポリコサノール組み合わせ(Nanoparticulate Polycosanol Formulations & Novel Polycosanol Combinations)」;米国特許出願公開第20030215502号「脆弱性が低下した即時溶解剤形(Fast Dissolving Dosage Forms Having Reduced Friability)」;米国特許出願公開第20030185869号「表面安定剤としてリゾチームを有するナノ粒子組成物(Nanoparticulate Compositions Having Lysozyme as a Surface Stabilizer)」;米国特許出願公開第20030181411号「マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼ阻害剤のナノ粒子組成物(Nanoparticulate Compositions of Mitogen-Activated Protein (MAP) Kinase Inhibitors)」;米国特許出願公開第20030137067号「即時放出および制御放出特性の組み合わせを有する組成物(Compositions Having a Combination of Immediate Release and Controlled Release Characteristics)」;米国特許出願公開第20030108616号「表面安定剤としてビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーを含有するナノ粒子組成物(Nanoparticulate Compositions Comprising Copolymers of Vinyl Pyrrolidone and Vinyl Acetate as Surface Stabilizers)」;米国特許出願公開第20030095928号「ナノ粒子インスリン(Nanoparticulate Insulin)」;米国特許出願公開第20030087308号「小型ミルまたはマイクロフルイディスクを使用するハイスループットスクリーニング法(Method for High Through-put Screening Using a Small Scale Mill or Microfluidics)」;米国特許出願公開第20030023203号「薬物送達システムおよび方法(Drug Delivery Systems & Methods)」;米国特許出願公開第20020179758号「摩砕物質のシステムおよび方法(System and Method for Milling Materials);および米国特許出願公開第20010053664号「サニタリー湿式ミル装置(Apparatus for Sanitary Wet Milling)」は、ナノ粒子活性物質組成物を開示し、かつこれらは本明細書において参照により具体的に組み入れられる。
【0021】
非晶質小型粒子組成物は、例えば、米国特許第4,783,484号「粒子組成物および抗微生物薬としてのそれらの使用(Particulate Composition and Use Thereof as Antimicrobial Agent);第4,826,689号「水溶性有機化合物からの均一サイズ粒子の製造法(Method for Making Uniformly Sized Particles from Water-Insoluble Organic Compounds)」;第4,997,454号「不溶性化合物からの均一サイズ粒子の製造法(Method for Making Uniformly-Sized Particles From Insoluble Compounds)」;第5,741,522号「その中に気泡を閉じ込めるための均一サイズの超小型非凝集多孔質粒子および方法(Ultrasmall, Non-aggregated Porous Particles of Uniform Size for Entrapping Gas Bubbles Within and Methods)」;および第5,776,496号「超音波後方散乱を増強する超小型多孔質粒子(Ultrasmall Porous Particles for Enhancing Ultrasound Back Scatter)」に開示されている。
【0022】
ナノ粒子グルココルチコステロイドは、例えば、米国特許第6,264,922号「ナノ粒子分散剤を含有するエアゾル剤(Aerosols Containing Nanoparticulate Dispersions)」;米国特許第5,747,001号「ベクロメタゾンナノ粒子分散剤を含有するエアゾル剤(Aerosols Containing Beclomethasone Nanoparticles Dispersions)」;HoveyらのU.S. 20040208833 A1「新規フルチカゾン製剤(Novel fluticasone formulations)」、WoodらのUS 20040057905 A1「ナノ粒子ジプロピオン酸ベクロメタゾン組成物(Nanoparticulate beclomethasone dipropionate compositions)」、BoschらUS 20040141925「新規トリアムシノロン組成物(Novel triamcinolone compositions)」、およびBoschらUS 20030129242「表面安定剤としてチロキサポール含有するブデソニドおよびベクロメタゾンの滅菌濾過したナノ粒子製剤(Sterile filtered nanoparticulate formulations of budesonide and beclomethasone having tyloxapol as a surface stabilizer)」に開示されている。
【0023】
C. ナノ粒子活性物質組成物の滅菌に関係する背景
薬学製品を滅菌するいくつかの利用可能な方法、加熱滅菌、滅菌濾過、エチレンオキシド曝露、およびγ線照射が存在する。
【0024】
1. ナノ粒子活性物質組成物の加熱滅菌
ナノ粒子活性物質組成物の加熱滅菌時に遭遇し得る問題点の1つは、成分の活性物質粒子の可溶化とそれに続く再結晶である。このプロセスは、活性物質粒子のサイズ分布の増加を生じる。ナノ粒子活性物質製剤が、滅菌温度(一般に約121℃)よりも低い曇点を有する表面安定剤を含有する場合、この表面安定剤は、滅菌温度またはそれよりも低い温度で、ナノ粒子活性物質表面から脱離または解離し、かつ溶液から沈殿しうる。従って一部のナノ粒子活性物質製剤は、加熱滅菌プロセス時に、上昇した温度への曝露後の粒子凝集も示す。
【0025】
ナノ粒子活性物質調製における結晶成長および粒子凝集は、いくつかの理由で非常に望ましくない。ナノ粒子活性物質組成物中の大きい結晶の存在は、特に調製物が注射用製剤中である場合に、望ましくない副作用を引き起こすことがある。このことは、注射用製剤は約250nmを上回る有効平均粒径を有することが好ましいので、粒子凝集にもあてはまる。2ミクロンを上回るサイズを有する粒子のような、粒子凝集および再結晶から形成された大型粒子は、血流を妨害し、肺塞栓症および死亡を引き起こし得る。
【0026】
加えて注射用製剤および経口用製剤の両方により、大型結晶の存在、従って変動する粒径、および/または粒子凝集は、投与された活性物質の薬物動態プロファイルを変更し得る。より大きい凝集体またはより大きい結晶粒子よりもより小さい粒子はより迅速に溶解するので、経口用製剤に関して、大型結晶または凝集体の存在は、可変性の生体利用能プロファイルを生じる。より迅速な溶解速度は、より大きい生体利用能に関連し、およびより遅い溶解速度は、より低い生体利用能に関連している。これは、生体利用能が、投与された薬物の表面積に比例し、従って生体利用能は、分散された物質の粒径の低下と共に増加するからである(米国特許第5,662,833号参照)。
【0027】
広く変動する粒径を有する組成物により、生体利用能は、高度に可変性で一貫性がないものとなり、用量決定は困難となる。さらにそのような結晶成長および粒子凝集は制御できずかつ予測できないために、ナノ粒子組成物の品質は一貫しない。静脈注射された粒子製剤に関して、大きい結晶または凝集体の存在は、先に説明した塞栓作用に加えて免疫系の反応を誘導し、マクロファージ細胞により肝臓または脾臓へ輸送され代謝される、より大きい粒子を生じる。
【0028】
粒径は、薬物動態プロファイルに加え、送達部位を決定するので、水難溶性治療薬に関する吸入された粒子組成物についても粒径は重要である。肺への薬物送達は、口および咽喉を通るエアゾル剤の吸入により達成される。約5ミクロンを上回る空気動力学的直径(aerodynamic diameter)を有する粒子は一般に、肺臓に到達せず;代わりに、これらは咽喉の裏側に影響を及ぼす傾向があり、嚥下されかつ経口吸収される可能性がある。直径約2〜約5ミクロンを有する粒子は、上部-から中央部-肺領域(誘導気道)に到達するのに十分な程小さいが、肺胞に到達するには余りにも大きい。さらにより小さい粒子、すなわち約0.5〜約2ミクロンは、肺胞領域に到達することが可能である。約0.5ミクロンよりも小さい直径を有する粒子も、沈積により肺胞領域に付着することができるが、非常に小さい粒子は排気されることがある。
【0029】
US 20020102294 A1に開示されたように、従来の技術は、様々な理由で、作用物質を肺臓へ送達するには極めて非効率的である。例えば、不溶性薬物粒子を表しているフルオレセインおよびラテックス薬物球を含有する懸濁剤の超音波噴霧化は、これらの粒子のわずかに1%のエアゾル化を生じるのに対し、エアジェット噴霧化は、一部の粒子のエアゾル化を生じるのみであることが報告されている。Susan L. Tiano、「Functionality Testing Used to Rationally Assess Performance of a Model Respiratory Solution or Suspension in a Nebulizer」、Dissertation Abstracts International, 56/12-B, pp. 6578 (1995)。液体製剤の噴霧化が遭遇する別の問題点は、長い時間(4〜20分間)が、治療量の投与に必要であることであった。噴霧化のための従来のまたは非ナノ粒子液体製剤は、マイクロ粒子化された原薬の非常に希薄な液体または懸濁剤であるので、長い投与時間が必要である。長引く投与時間は、患者の服薬遵守をより低下させ、かつ特に小児患者の場合、投与される投与量を制御することを困難にするので、これらは望ましくない。最後に、肺胞領域に到達するために必要な小滴(0.5〜2ミクロン)は、典型的には直径が2〜3ミクロンもしくはそれを上回る、マイクロ粒子化された薬物結晶を収容するには余りにも小さいので、マイクロ粒子化された薬物のエアゾル製剤では、水不溶性化合物の深部肺臓送達は実行可能ではない。
【0030】
従来の加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)も、原薬の肺臓への送達には不充分である。ほとんどの場合、pMDIは、クロロフルオロカーボン(CFC)またはヒドロフルオロアルカン(HFA)のようなハロゲン化炭化水素中のマイクロ粒子化された原薬の懸濁剤からなる。pMDIの作動は、薬物および噴射剤の計測された投与量の送達を生じ、噴射剤圧力のために、これらは両方とも高速で装置から出て行く。薬物粒子の高い速度および運動量は、高度な口腔咽頭の衝撃(impaction)に加え、作用物質の送達に使用される装置の損害を生じる。これらの損害は、治療的物質レベルの変動および治療的管理の不良につながる。加えて誘導気道への局所投与が意図された薬物(コルチコステロイドなど)の口腔咽頭付着は、全身吸収につながり得、結果としての望ましくない副作用を伴う。加えて純粋な原薬の従来のマイクロ粒子化(エアジェット摩砕)は、薬物粒径を、約2〜3ミクロン未満に低下させることはできない。従って典型的にはpMDIにおいて使用されるマイクロ粒子化された材料は、肺胞領域への送達には本質的には適さず、肺臓の中心細気管支領域の下側に付着することは期待できない。
【0031】
マイクロ粒子化された原薬を利用する乾燥粉末の肺臓への送達も、問題が多い。乾燥粉末型において、マイクロ粒子化された物質は、実質的な粒子間静電気引力を有する傾向があり、この引力は、粉末が滑らかに流動することを妨害し、かつ一般にこれらが分散することを困難にする。従って乾燥粉末の肺送達への2つの重要な挑戦は、意図された投与量を実際に定量する装置の能力、およびマイクロ粒子化された粒子を完全に分散させる装置の能力である。多くの装置および製剤に関して、分散の程度は、患者の吸気速度によって決まるが、これはそれ自体が変動しかつ送達される投与量の変動につながり得る。
【0032】
鼻粘膜への薬物送達も、水性噴射剤ベースの製剤、または乾燥粉末製剤により実現される。しかし水難溶性薬物の吸収は、付着した粒子を鼻粘膜から咽喉へ輸送し、そこで嚥下される粘膜線毛クリアランスのために、問題が多い。完全なクリアランスは一般に、約15〜20分以内に生じる。従ってこの時間枠内に溶解しない、水難溶性薬物は、局部または全身活性のいずれにも利用できない。
【0033】
加熱時のナノ粒子活性物質組成物の凝集は、表面安定剤の曇点を上回る温度での、表面安定剤の沈殿に直接関係している。この時点で、結合した表面安定剤分子は、恐らくナノ粒子から解離し、沈殿し、無保護のナノ粒子を残すと考えられる。その後、無保護のナノ粒子は、粒子のクラスターに凝集する。曇点変更因子または結晶成長変更因子のナノ粒子活性物質組成物への添加、および表面安定剤の精製を含む、加熱滅菌後のそのような結晶成長および粒子凝集を防止するいくつかの方法が、先行技術において示唆されている。例えば米国特許第5,298,262号は、ナノ粒子活性物質組成物中の陰イオン性または陽イオン性曇点変更因子の使用を開示し、かつ米国特許第5,346,702号は、非イオン性表面安定剤および非イオン性曇点変更因子を有するナノ粒子活性物質組成物を開示している。曇点変更因子は、得られる粒子の凝集を低下させながらの、ナノ粒子活性物質組成物の加熱滅菌を可能にする。米国特許第5,470,583号は、非イオン性表面安定剤および曇点変更因子として帯電したリン脂質を有するナノ粒子活性物質組成物を開示している。
【0034】
先行技術は同じく、結晶成長変更因子を添加することにより、ナノ粒子活性物質組成物において、結晶成長を制限する方法を開示している(米国特許第5,662,883号および第5,665,331号参照)。加えて米国特許第5,302,401号は、ポリビニルピロリドン(PVP)を表面安定剤として、およびショ糖を凍結防止剤として(ナノ粒子の凍結乾燥を可能にする)を有するナノ粒子活性物質組成物を開示している。これらの組成物は、凍結乾燥後に最小の粒子凝集を示す。
【0035】
本発明以前に公知の滅菌時にナノ粒子活性物質組成物の粒子凝集または結晶成長を制限する別の方法は、精製された表面安定剤の使用である。米国特許第5,352,459号は、精製された表面安定剤(不純物15%未満を有する)および曇点変更因子を有するナノ粒子活性物質組成物を開示している。表面安定剤の精製は、高価であり、かつ時間がかかり、その結果安定したナノ粒子活性物質組成物を生成するためのそのような安定剤を必要とし、組成物の製造経費を著しく上昇する。
【0036】
2. 滅菌濾過
0.2ミクロンフィルターは、本質的に全ての細菌が除去されるのに十分であるので、濾過は、メンブレンフィルター孔サイズが約0.2ミクロン(200nm)以下である場合には、均質溶液を滅菌する有効な方法である。滅菌濾過は通常、ミクロンサイズの薬物粒子の通常の懸濁剤の滅菌には使用されず、その理由はこれらの原薬粒子はメンブレン孔を通過するには余りにも大きいからである。原則として、0.2μm濾過を、ナノ粒子活性物質組成物の滅菌に使用することができる。しかしナノ粒子活性物質組成物にはサイズに幅があるので、平均粒径200nmを有する典型的ナノ粒子活性物質組成物の粒子の多くは、200nmを上回るサイズを有することがある。そのようなより大きい粒子は、滅菌フィルターを詰まらせる傾向がある。従って非常に小さい平均粒径を有するナノ粒子活性物質組成物のみ、滅菌濾過することができる。
【0037】
3. エチレンオキシド法
エチレンオキシド法は、製品または成分が熱に不安定である懸濁剤/分散剤製品について広範に使用される滅菌法である。現在市販されている製品のほとんどは、この技術を利用し、これにより個々の成分が、この方法を用いて滅菌され、その後無菌的に加工処理または一緒に集成される。しかしこの技術は、残留エチレンオキシドの製品からの排除を必要とするが、これは時間がかかり、かつ困難なプロセスであり、残留エチレンオキシドが最終薬物製品を汚染する可能性を伴う。
【0038】
4. γ線照射
LeeらのUS 2004105778 A1「固形剤形ナノ粒子活性物質のγ線照射(Gamma Irradiation of Solid Dose Nanoparticulate Active Agents)」は、固形型のナノ粒子活性物質組成物のγ線照射による末期滅菌法に関する。ナノ粒子活性物質は、滅菌のために固形型に混入される前に、約2ミクロン未満の有効平均粒径を有する。得られる滅菌された組成物は、優れた再分散性、均一性、および均質性を示す。開示された方法により製造された組成物、およびそのような組成物を使用し動物およびヒトを治療する方法も包含されている。
【0039】
Boschらの国際公開公報第2004/105809号「ナノ粒子活性物質の分散剤のγ線照射による滅菌(Sterilization of Dispersions of Nanoparticulate Active Agents with Gamma Radiation)」は、γ線照射による1種類または複数のナノ粒子活性物質の分散剤の滅菌法および入手可能な薬学的組成物に関する。
【0040】
増大した薬学的有効性を示す無菌の安定したグルココルチコステロイド組成物の必要性が当技術分野において残っている。本発明はこの必要性を満たすものである。
【発明の開示】
【0041】
発明の概要
本発明は、両親媒性脂質が滅菌加工処理段階前にこの組成物に添加されるならば、1種類または複数の非イオン性表面安定剤の存在下、粒径または化学純度の実質的変化を生じずに、グルココルチコステロイドが容易に加熱滅菌され得るという予想外の発見に関する。
【0042】
本発明は、加熱滅菌されたグルココルチコステロイド水性分散剤または懸濁剤を含有する薬物組成物に関する。そのような薬物組成物は、喘息の維持治療に、成人および小児患者における季節性および通年性アレルギー性および非アレルギー性鼻炎患者の鼻の症状の管理のための予防療法として、ならびに季節性アレルギー性結膜炎の徴候および症状の緩和のために有効であることが公知である。この分散剤は、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤および少なくとも1種類の両親媒性脂質を含有する水性媒質中に懸濁されたグルココルチコステロイド粒子の無菌の薬学的組成物として製剤化される。グルココルチコステロイド粒子は、約2000nm未満の有効平均粒径を有する。従って本発明の1つの態様において、組成物は、(a)約2000nm未満の有効平均粒径を有する、少なくとも1種類のグルココルチコステロイドの粒子;(b)少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤;および(c)少なくとも1種類の両親媒性脂質を含有する無菌組成物を包含している。
【0043】
本発明の1つの態様において、本組成物は、湿熱滅菌により滅菌することができる。滅菌温度の例は、約110℃〜約135℃である。
【0044】
本発明の組成物は、グルココルチコステロイド(例えばブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、およびジプロピオン酸ベクロメタゾン)ならびに少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤(例えばポリソルベート80、チロキサポール、またはルトロール(Lutrol)F127 NF)および両親媒性脂質(例えば、大豆または卵レシチンホスファチド、これは主要構成物質ホスファチジルコリンに加え、負帯電されたホスファチド、例えばホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、および対応するリゾホスファチドなども含まなければならない)の水性懸濁剤を含む。好ましい両親媒性脂質は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、および対応するリゾホスファチドなどの、負帯電されたリン脂質中に優先的に濃厚化されているような、ホスファチドである。しかし正帯電されたリン脂質中に濃厚化された両親媒性脂質も、特許請求する発明において有用である。この組成物は任意に、非経口、吸入、または局部投与用の無菌の薬学的製剤の調製に適している、1種類または複数の賦形剤(例えば、緩衝剤、等張性調節剤、キレート剤、および抗酸化剤)を含んでよい。
【0045】
グルココルチコステロイドの例は、ブデソニド、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、モメタゾン、モメタゾンフロエート、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾンジプロピオネート、デキサメタゾン、トリアミンシノロン(triamincinolone)、ベクロメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルニソリド半水和物、モメタゾンフロエート一水和物、クロベタゾール、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明の1つの態様において、グルココルチコステロイドの化学純度は、約99%を上回ってもよい。別の態様において、グルココルチコステロイドの化学純度は、約99.5%を上回ってもよい。
【0047】
本発明の組成物中に存在しうるグルココルチコステロイドの量の例は、濃縮型で、または薬学的に許容される媒質中への希釈後に、約0.01重量%〜約20重量%を含むが、これらに限定されるものではない。
【0048】
非イオン性表面安定剤の例は、ソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポロキサマー、ポリソルベート、スパン、ソルビタンオレイン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノラウレート、ポリエチレンオキシド鎖を含む界面活性剤、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポロキサマー407、Pluronic(登録商標)F68、Pluronic(登録商標)F108、Pluronic(登録商標)F127、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのランダムコポリマー、デキストラン、コレステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、マクロゴールエーテル、セトマクロゴール1000、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコール、Carbowax 3550(登録商標)、Carbowax 934(登録商標)、ポリオキシエチレンステアレート、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルアルコール、チロキサポール、ポロキサマー、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、C18H37CH2C(O)N(CH3)-CH2(CHOH)4(CH2OH)2;デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイル(noyl)β-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンE、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の1つの態様において、組成物中に存在する非イオン性表面安定剤の濃度は、グルココルチコステロイドと表面安定剤とを組み合わせた総乾燥重量を基に、約0.01重量%〜約90重量%、約0.1重量%〜約50重量%、または約1重量%〜約10重量%である。
【0050】
本発明の別の態様において、非イオン性表面安定剤は、ポロキサマー407、ポリソルベート80、ポリソルベート60、チロキサポール、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーでありうる。例えば、非イオン性表面安定剤は、Pluronic(登録商標)F68、Pluronic(登録商標)F108、またはPluronic(登録商標)F127でありうる。
【0051】
本発明の1つの態様において、両親媒性脂質は、少なくとも1種類の負帯電したリン脂質を含有するリン脂質でありうる。そのようなリン脂質の例は、陰イオン性ホスファチド、レシチンNF、合成レシチンNF、合成リン脂質、部分的に精製された水素添加レシチン、水素添加レシチン、部分的に精製されたレシチン、陰イオン性ホスファチドを含む大豆レシチンホスファチド、陰イオン性ホスファチドを含む卵レシチンホスファチド、陰イオン性ホスファチドを含む水素添加大豆レシチン、陰イオン性ホスファチドを含む水素添加卵レシチン、陰イオン性ホスファチドを含むレシチン、合成ホスファチジルグリセロール、合成ホスファチジン酸、合成ホスファチジルイノシトール、合成ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセロール、ジステアリルホスファチジルグリセロール、ジステアリルホスファチジルイノシトール、ジステアリルホスファチジルセリン、ジステアリルホスファチジン酸、ジステアリルリゾホスファチジルグリセロール、ジステアリルリゾホスファチジルイノシトール、ジステアリルリゾホスファチジルセリン、ジステアリルリゾホスファチジン酸、ジパルミチルホスファチジルイノシトール、ジパルミチルホスファチジルセリン、ジパルミチルホスファチジン酸、ジパルミチルホスファチジルグリセロール、ジパルミチルリゾホスファチジルイノシトール、ジパルミチルリゾホスファチジルセリン、ジパルミチルリゾホスファチジン酸、ジパルミチルリゾホスファチジルグリセロール、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。1つの態様において、リン脂質はレシチンであり、およびレシチンは90%未満のホスファチジルコリンを含有する。さらに別の態様において、リン脂質はレシチンであり、レシチンは、実質的に水素添加ホスファチジルコリンからなり、残りの組成は、主に水素添加陰イオン性ホスファチドで構成される。
【0052】
1つの態様において、本発明の組成物は、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸のカルシウム塩、またはそれらの組み合わせをさらに含みうる。例えば、本発明の組成物中に存在するエチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩および/またはカルシウム塩は、約0.0001%〜約5%、約0.001〜約1%、または約0.01%〜約0.1%である。
【0053】
本発明の組成物は、1種類または複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含有することができる。加えて本発明の組成物は、(a)吸入、注射、耳内、経口、直腸内、肺内、眼内、結腸内、非経口、槽内、膣内、腹腔内、局部、口腔、鼻内、または局所投与用に;(b)粉末、凍結乾燥粉末、噴霧乾燥粉末、噴霧造粒粉末、固形ロゼンジ、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、液体分散剤、ゲル剤、エアゾル剤、軟膏、またはクリームに;(c)制御放出製剤、固形剤形速溶製剤(solid dose fast melt formulation)、制御放出製剤、速溶製剤、凍結乾燥製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、および即時放出と制御放出の混合型製剤からなる群より選択される剤形に;または(d)それらの任意の組み合わせに製剤化することができる。本発明の1つの態様において、組成物は、鼻用スプレーに製剤化される。別の態様において、組成物は、肺用エアゾル剤に製剤化される。
【0054】
本発明の組成物は、無菌製剤が好ましいかまたはそれを規制官庁が必要とする場合、吸入用、鼻用、または眼用製剤に製剤化することができる。吸入用製剤は、無菌分散剤または懸濁剤の形であり、ここで本発明の組成物は、ネブライザーにより肺系(pulmonary system)(例えば気管支系および肺臓)へ、グルココルチコステロイドを含有する水性小滴を送達するための液体である。吸入に関して、本発明の組成物の無菌分散剤または懸濁剤は、他の液体および賦形剤ならびに任意に定量噴霧吸入器(MDI)による肺系への送達のための噴射剤と組み合わせて利用されてよいことも想起される。吸入に関して、本発明の組成物の無菌分散剤または懸濁剤は、他の液体または賦形剤と共に利用され、および乾燥粉末吸入器(DPI)による肺系への送達のために乾燥粉末のみに転換されてよいことも、さらに想起される(例えば、BoschらUS 20020102294 A1「ナノ粒子薬を含有するエアゾル剤(Aerosols Comprising Nanoparticle Drugs)」参照のこと)。無菌鼻用製剤は、必要に応じ追加の賦形剤および表面安定剤を伴う、好適な液相中の本発明の組成物の溶液の形でありうる。眼用製剤は、必要に応じて追加の賦形剤および表面安定剤を伴う、好適な液相中の本発明の組成物の溶液の形であってもよい。
【0055】
さらに本発明の別の局面は、吸入および/または鼻用スプレーのための水性懸濁剤を含む薬学的グルココルチコステロイドナノ粒子組成物に関する。薬学的ナノ粒子組成物は、治療的有効量のナノ粒子グルココルチコステロイド(例えば、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン)組成物を、1種類または複数の表面安定剤および両親媒性脂質と一緒に含有する。
【0056】
本発明の1つの態様において、本発明の組成物は、水性エアゾル剤に製剤化され、かつ約0.015mg/mLから最大約600mg/mLのグルココルチコステロイドを含有する。別の態様において、組成物は、水性エアゾル剤に製剤化され、かつグルココルチコステロイド濃度は、約10mg/mLもしくはそれよりも多い、約100mg/mLもしくはそれよりも多い、約200mg/mLもしくはそれよりも多い、約400mg/mLもしくはそれよりも多い、または約600mg/mLである。
【0057】
本発明は、エアゾル剤の小滴が約100ミクロン以下;約0.1〜約10ミクロン;約2〜約6ミクロン;約2ミクロン未満;約5〜約100ミクロン;または約30〜約60ミクロンの空気動力学的中央粒子径(mass median aerodynamic diameter)を有する、水性エアゾル剤に製剤化された本発明の組成物も包含している。
【0058】
本発明は、エアゾル剤に製剤化され、かつ多回投与用吸入器からの同時投与用に1種類または複数の溶媒および/または非水性溶液中に溶解した噴射剤をさらに含有する本発明の組成物も包含している。
【0059】
本発明の別の態様において、本発明の組成物は、少なくとも1種類の非グルココルチコステロイド活性物質をさらに含有する。このような非グルココルチコステロイド活性物質は、喘息、アレルギー性結膜炎、季節性アレルギー性鼻炎、またはグルココルチコステロイドが従来使用されるその他の炎症もしくはアレルギー状態を治療するのに有用な活性物質でありうる。そのような非グルココルチコステロイド活性物質の例は、長期作用型β-アゴニスト、ロイコトリエン変更因子、テオフィリン、ネドクロミル、クロモリン、短期作用型β-アゴニスト、臭化イプラトロピウム、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、サルメテロール、フォルモテロール、モノロイカスト(monoleukast)、ザフィルルカスト、ジロイトン、アルブテロール、レバルブテロール、ビトルテロール、ピルブテロール、およびテルブタリンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0060】
さらに別の態様において、本発明の組成物は、(a)水性エアゾル剤の各小滴が、少なくとも1個のナノ粒子グルココルチコステロイド粒子を本質的に含み;(b)エアゾル剤の小滴が、約100ミクロン以下の空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有し;(c)グルココルチコステロイドが、フルチカゾン、ブデソニド、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、モメタゾン、モメタゾンフロエート、プロピオン酸フルチカゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、デキサメタゾン、トリアミンシノロン、ベクロメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルニソリド半水和物、フルニソリド、モメタゾンフロエート一水和物、クロベタゾール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;(d)グルココルチコステロイドが、約0.015mg/mLから最大約600mg/mLの濃度で存在し;(e)非イオン性安定剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり;および(f)両親媒性脂質がリン脂質である、水性エアゾル剤に製剤化することができる。
【0061】
本発明のさらに別の局面は、治療的有効量の本発明のナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を哺乳類へ投与することを含む、グルココルチコステロイド(例えば、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン)が適応される状態に罹患した哺乳類を治療する方法に関する。
【0062】
本発明はさらに、本発明の滅菌されたナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を製造する方法を開示している。このような方法は、ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を提供するのに十分な時間および条件下、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤を、グルココルチコステロイドに接触させることを含む。1種類または複数の非イオン性表面安定剤は、グルココルチコステロイドのサイズ低下の前、途中、または後のいずれかに、グルココルチコステロイドと接触させることができる。滅菌前に、少なくとも1種類の両親媒性脂質が、この組成物へ添加される。その後この組成物は滅菌される。両親媒性脂質は、グルココルチコステロイドのサイズ低下の前、途中、または後のいずれかに添加することができる。加えて分散剤は、滅菌前に乾燥粉末に製剤化することができる。
【0063】
例えば本発明の1つの態様において、(a)約2000nm未満の有効平均粒径を有する、少なくとも1種類のグルココルチコステロイドの粒子;(b)少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤;および(c)少なくとも1種類の両親媒性脂質を含有する無菌組成物を製造する方法が包含されており、ここでこの方法は、(i)粒子の有効平均粒径を約2000nm未満に低下させるための時間および条件下、グルココルチコステロイドの粒子を、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤に接触させる段階;(ii)粒径低下の前、途中、または後のいずれかに、少なくとも1種類の両親媒性脂質を、グルココルチコステロイド組成物に添加する段階;ならびに(iii)約115℃〜約135℃の温度に組成物を蒸気加熱する段階を含む。
【0064】
本発明は、本発明の滅菌されたナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を用いる治療法にも関する。1つの態様において、本発明は、(a)約2000nm未満の有効平均粒径を有する、少なくとも1種類のグルココルチコステロイドの粒子;(b)少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤;および(c)少なくとも1種類の両親媒性脂質を含有する無菌組成物の治療的有効量を対象へ投与することを含む、その必要がある対象を治療する方法を包含している。
【0065】
そのような治療は、炎症疾患に対してでありうる。別の態様において、治療は、喘息、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、気腫、呼吸窮迫症候群、慢性気管支炎、後天性免疫不全症候群に関連した呼吸器疾患、および目の炎症状態、皮膚の炎症状態、耳の炎症状態、目のアレルギー状態、皮膚のアレルギー状態、アレルギー性結膜炎、および季節性アレルギー性鼻炎に対してでありうる。
【0066】
さらに別の態様において、本発明の組成物のエアゾル投与のための患者への送達時間は、約15秒間から最大約15分間でありうる。
【0067】
前述の一般的説明および以下の詳細な説明は両方とも、例証的および説明的であり、特許請求する本発明の更なる説明を提供することが意図されている。他の目的、利点および新規特徴は、以下の本発明の詳細な説明から当業者には容易に明らかになると考えられる。
【0068】
発明の詳細な説明
本発明は、滅菌される組成物が追加的に少なくとも1種類の両親媒性脂質を含有する場合に、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤を含有するナノ粒子グルココルチコステロイド組成物が首尾よく湿熱滅菌され得るという、驚くべき予想外の発見に関する。グルココルチコステロイド粒子は、約2000nm未満の有効平均粒径を有する。下記実施例に示されたように、本発明は驚くべきことに、異なる化学構造を有するグルココルチコイド(例えば、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、およびプロピオン酸フルチカゾンが例示される)、異なる構造を有しならびに低分子量および高分子量の両方の非イオン性表面安定剤(ポリソルベート-80、チロキサポール、およびルトロールF127 NFが例示される)、ならびに異なる構造を有する両親媒性脂質(レシチンNF、部分的に精製された水素添加レシチン(リポイドS75-3)、部分的に精製されたレシチン(リポイドS45)、ジステアリルホスファチジルグリセロール(リポイドPG 18:0/18:0)、およびジパルミチルホスファチジン酸(リポイドPA 16:0/16:0)が例示される)に適用可能である。様々な薬物、非イオン性表面安定剤、および両親媒性脂質は全て、著しいグルココルチコステロイド粒径の成長を生じることなく湿熱滅菌され得るナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を生じることが首尾よく示されている。
【0069】
次にナノ粒子グルココルチコステロイドの滅菌された分散剤は、経口、肺内、鼻内、非経口、直腸内、局部、口腔、または局所投与用の剤形を含む、固形、半固形、または液体の剤形などの任意の好適な剤形へ製剤化され得る。本発明は、注射用剤形、エアゾル剤形、または眼内投与用剤形などの、夾雑を促す(conducive)ことができる水性剤形、または耳内投与用の液体剤形に特に有用である。滅菌された分散剤は、ナノ粒子活性物質分散剤の凍結乾燥粉末、噴霧乾燥粉末、または噴霧造粒粉末などの乾燥粉末に製剤化することができる。この剤形は、制御放出製剤、固形剤形速溶製剤、エアゾル剤、凍結乾燥製剤、錠剤、固形ロゼンジ、カプセル剤、粉末、眼用製剤、耳内投与用の製剤、または注射用液体でありうる。
【0070】
加熱滅菌プロセスは、微生物、マイコプラズマ、酵母、ウイルス、および糸状菌などの、分散剤中の微生物およびウイルスの夾雑を実質的に全て消失させる。消失されるべき微生物夾雑は一般に、細菌、マイコプラズマ、酵母および糸状菌の夾雑である。湿熱滅菌段階は、(1)貯蔵時に、もし増加したとしてもグルココルチコステロイド粒径の増加が最少であり、(2)ナノ粒子グルココルチコステロイドの化学的完全性を維持し、かつ(3)加熱滅菌後に、グルココルチコステロイド組成物の不純物濃度は一般に許容される濃度を示す。湿熱滅菌プロセスは、グルココルチコステロイドを著しく分解しないか、またはグルココルチコステロイドの有効性を低下させない。本発明は、製品が、活性物質を損なうことなく、無菌製品のcGMPの必要要件に合致することを可能にする。
【0071】
驚くべきことに、滅菌後、1種類または複数のナノ粒子グルココルチコステロイドの分散剤は、無菌性(sterility)に関するcGMPの必要要件に合致しながら、予想外の全体の安定性を示し、予め滅菌された物理的および化学的特性を維持する。1種類または複数のナノ粒子グルココルチコステロイドの分散剤の湿熱滅菌は、1種類または複数のグルココルチコステロイドの粒径を著しく変更しないことは、特に予想外である。このことは滅菌された製品が凝集体または大きい結晶を形成した場合、分散剤は、ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物へ製剤化されることによりもたらされる恩恵を失うので、重要である。
【0072】
水性および乾燥粉末の両方の本発明の無菌組成物は、喘息、気腫、呼吸窮迫症候群、慢性気管支炎、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、後天性免疫不全症候群に関連した呼吸器疾患などの呼吸器関連疾患、ならびに真皮(皮膚)(例えば乾癬)、目および耳の炎症およびアレルギー状態の治療に特に有用である。これらの製剤および方法は、投与された本発明の組成物による、適用部位(例えば、肺臓、鼻、目、耳など)の改善された被覆表面積をもたらす。
【0073】
無菌剤形は、新生児、小児、高齢者、および免疫力が低下した患者などの、感染症のリスクのある対象にとって、さらには感染症リスクのある部位(例えば、目、耳、口、肺臓、鼻腔)へ投与されるべき剤形にとって、特に望ましい。無菌剤形に関するこの必要性はまた、無菌となるべき吸入製品が必要とする指針の米国食品医薬品局による最新の発令により明らかにされている。加熱滅菌は成分薬物粒子の可溶化およびそれに続く再結晶を生じ得るので、無菌性に関する必要要件は、ナノ粒子薬物の製剤について問題が多い。さらに、水性媒体への溶解に適した薬物は、化学分解に対しても不安定である。このプロセスは、薬物粒子のサイズ分布の増加を生じる。加えて一部のナノ粒子製剤は、加熱滅菌のための上昇した温度への曝露後、粒子凝集も示す。
【0074】
ナノ粒子調製における結晶成長および粒子凝集は、いくつかの理由で大いに望ましくない。ナノ粒子組成物中の大きい結晶の存在は、特に調製が注射用製剤中で行われる場合に、望ましくない副作用を引き起こし得る。これは、粒子凝集についても当てはまる。粒子凝集および再結晶により形成されたより大きい粒子は、血流と干渉し、肺塞栓症および死亡を引き起こす。
【0075】
加えて大きい結晶の存在、その結果の粒径の変動、および/または粒子凝集は、投与された薬物の薬物動態プロファイルを変更することがある。経口用製剤に関して、より小さい粒子は、より大きい凝集体またはより大きい結晶粒子よりも、より迅速に溶解するので、大きい結晶または凝集体の存在は、可変性の生体利用能プロファイルを生じる。より迅速な溶解速度は、より大きい生体利用能に関連し、より遅い溶解速度は、より低い生体利用能に関連している。これは、生体利用能は、投与された薬物の表面積に比例し、従って生体利用能は、分散された物質の粒径の減少と共に増加するからである(米国特許第5,662,833号参照)。広く変動する粒径を有する組成物により、生体利用能は、高度に可変性となり、かつ一貫せず、用量決定は困難になる。さらにそのような結晶成長および粒子凝集は制御できずかつ予測できないので、ナノ粒子組成物の品質は一貫しない。静脈内注射された粒子製剤に関して、大きい結晶または凝集体の存在は、先に説明した塞栓性作用に加えて免疫系の反応を誘導することがあり、マクロファージ細胞により肝臓または脾臓に輸送されて代謝される、より大きい粒子を生じる。
【0076】
加熱時のナノ粒子組成物の凝集は、表面安定剤の曇点を上回る温度での表面安定剤の沈殿に直接関係している。この時点で、結合した表面安定剤分子は恐らく、ナノ粒子から解離し、沈殿し、無保護のナノ粒子を残すと考えられる。無保護のナノ粒子はその後、粒子のクラスターに凝集する。少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤および少なくとも1種類の両親媒性脂質と組み合わせたグルココルチコステロイドは、首尾よく加熱滅菌され、グルココルチコステロイドは最少の分解かまたは分解されずに、有効平均粒径が約2000nm未満の無菌組成物を生じうることが、予想外のことに発見された。このような粒径成長は、活性のより迅速な開始(特に喘息およびアレルギー状態の治療時に重要)、毒性低下、および活性物質のより低い用量などの、ナノ粒子剤形中の活性物質の製剤によりもたらされる薬学的恩恵の喪失を生じる。
【0077】
A. 定義
本発明は、以下に示したようにかつ本出願を通じ、いくつかの定義を用い、本明細書において説明される。
【0078】
本明細書において使用される「有効平均粒径」とは、例えば、沈降場流動分画法、光子相関分光法、光散乱法、ディスク遠心法、およびその他の当業者に公知の技術により測定された場合に、重量、容量、数で、または他の好適な測定技術により、グルココルチコステロイド粒子の少なくとも50%(すなわち「D50」)が有効平均未満の粒径(例えば、約2000nm、1900nm、1800nm未満など)を有することを意味する。
【0079】
本明細書において使用される「約」は、当業者に理解されるものであり、かつそれが使用される状況に応じてある程度変動する。使用される状況において当業者に明確でない条件(term)が使用される場合、「約」は、特定の条件の±10%までを意味すると考えられる。
【0080】
本明細書において使用される安定したグルココルチコステロイド粒子に関して、これは、以下のパラメータの1つまたは複数の意味を持つが、これらに限定されない:(1)グルココルチコステロイド粒子は、粒子間引力による感知できるほどの綿状沈殿または凝集を起こさないか、もしくはそうでなければ経時的な粒径の著しい増加を起こさない;(2)グルココルチコイド粒子は、安定剤もしくは両親媒性脂質の添加時、または続く湿熱処理時のいずれかで、感知できるほどに可溶化しない;(3)グルココルチコステロイド粒子の物理的構造は、非晶質相から結晶相への転換などによる経時的な変化を起こさない;(4)グルココルチコステロイド粒子は化学的に安定している;および/または(5)グルココルチコステロイドは、本発明のナノ粒子の調製において、グルココルチコステロイドの融点でのまたはそれを上回る温度での加熱段階に供されない。
【0081】
用語「従来の活性物質」または「非ナノ粒子活性物質」とは、可溶化されるか、または約2000nmを上回る有効平均粒径を有する活性物質を意味するものである。本明細書において定義されたナノ粒子活性物質は、約2000nm未満の有効平均粒径を有する。
【0082】
本明細書において使用される語句「水難溶性薬物」とは、水への溶解度が約30mg/ml未満、好ましくは約20mg/ml未満、好ましくは約10mg/ml未満、または好ましくは約1mg/ml未満のような薬物を意味する。
【0083】
本明細書において使用される語句「治療的有効量」とは、そのような治療を必要とする著しい数の対象において、薬物の投与による特定の薬理学的反応を提供する薬物用量を意味するものである。特定の状況において特定の対象に投与される薬物の治療的有効量は、たとえそのような用量が、当業者により治療的有効量であるとみなされたとしても、本明細書に説明された状態/疾患の治療において常に有効ではないことは強調されるべきである。
【0084】
B. 組成物
提唱されたプロセスに従う湿熱処理に対して化学的に不安定でない水難溶性グルココルチコステロイドを、本発明の組成物において使用することができる。グルココルチコステロイドは、アレルギー性および非アレルギー性/刺激原媒介型炎症に関連した、複数の細胞型(例えば、マスト細胞、好酸球、好中球、マクロファージ、およびリンパ球)ならびにメディエーター(例えば、ヒスタミン、エイコサノイド、ロイコトリエン、およびサイトカイン)に対し広範な阻害活性を有することが示されている。コルチコイドは、ヒスタミンが関連した即時型反応(20分間)よりも、アレルゲンチャレンジに対する遅延型(6時間)反応に影響を及ぼす。
【0085】
グルココルチコステロイドの例は、ブデソニド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、モメタゾン、モメタゾンフロエート、フルニソリド、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ベクロメタゾン、ベクロメタゾンジプロピオネート、デキサメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルニソリド、フルニソリド半水和物、モメタゾンフロエート一水和物、クロベタゾール、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。好ましいグルココルチコステロイドは、ブデソニド、フルチカゾン、トリアムシノロン、モメタゾン、ベクロメタゾン、およびそれらの組み合わせである。グルココルチコステロイドの量は、濃縮型で、または薬学的に許容される媒質中への希釈後に、典型的には約0.01重量%〜約20重量%の範囲にわたるが、他のグルココルチコステロイド濃度も本発明において想起されている。
【0086】
本発明の1つの態様において、グルココルチコステロイドは、99%を上回る化学純度を有する。本発明の別の態様において、グルココルチコステロイドは、99.5%を上回る化学純度を有する。
【0087】
本発明の滅菌されたグルココルチコステロイド製剤は、少なくとも1種類の非架橋の低分子量または高分子量の非イオン性表面安定剤をさらに含有する。本明細書において有用な非イオン性表面安定剤は、ナノ粒子グルココルチコステロイドの表面上に物理的に接着するが、グルココルチコステロイド粒子またはそれ自体とは化学的に反応しない。表面安定剤の個々の分子は好ましくは、分子間架橋を本質的に含まない。本明細書において使用される「非イオン性」表面安定剤は、その化合物の極性基が電気的に帯電していない安定剤である。一般に表面安定剤は、炭化水素尾部(tail)、およびその酸素原子が水分子と吸引し、かつ頭部(head)を水溶性とするが、イオン電荷は持たないような極性頭部を有する。
【0088】
非イオン性表面安定剤の例は、ソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、すなわちポリソルベート80、ポリソルベート60;ポロキサマー(例えばポロキサマー407、ならびにエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーであるPluronic(登録商標)F68、F108、およびF127)、ポリソルベート、スパン、および他のソルビトールエステル、ソルビタンオレイン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、グリセリルモノオレエートおよびグリセリルモノラウレート、さらには、ポリエチレンオキシド鎖を含むもののような、性質上ポリマーまたはコポリマーである他の界面活性剤ならびにそれらの混合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのランダムコポリマー、デキストラン、コレステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000のようなマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコール(例えば、Carbowax 3550(登録商標)および934(登録商標)(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアレート、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシドとホルムアルデヒドとの4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン(superione)およびトリトンとしても公知)、ポロキサマー(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーであるPluronic F68(登録商標)およびPluronic F108(登録商標))、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、Olin-1OG(登録商標)としても公知(Olin Chemicals, Stamford, CT);ならびにC18H37CH2C(O)N(CH3)-CH2(CHOH)4(CH2OH)2である、SA9OHCO(Eastman Kodak Co.);デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイル(noyl)β-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンEなどを含むが、これらに限定されるものではない。有用な非イオン性表面安定剤は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、特にTween 80として市販されているポリソルベート80である。
【0089】
本発明の滅菌されたグルココルチコステロイド製剤に混入される両親媒性脂質は、様々なリン脂質の1つから選択されてよいが、但しこの組成物は一部負帯電したリン脂質を含むことを条件とする。リン脂質の例は、レシチンNFグレードまたはレシチンNFを含有する合成リン脂質、精製されたレシチン(リポイドS45)、水素添加レシチン(リポイドS75-3)、例えばホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールなどの陰イオン性ホスファチドの混合物を含む大豆または卵レシチンホスファチド、対応するリゾホスファチド、合成ホスファチジルグリセロール(リポイドPG 18:0/18:0)、合成ホスファチジン酸およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。本発明において使用することができる追加のリン脂質は、陰イオン性ホスファチド、レシチンNF、合成レシチンNF、合成リン脂質、部分的に精製され水素添加レシチン、部分的に精製されたレシチン、陰イオン性ホスファチドを含む大豆レシチンホスファチド、陰イオン性ホスファチドを含む卵レシチン、陰イオン性ホスファチドを含む水素添加大豆レシチン、陰イオン性ホスファチドを含む水素添加卵レシチン、陰イオン性ホスファチドを含むレシチン、合成ホスファチジルグリセロール、合成ホスファチジン酸、合成ホスファチジルイノシトール、合成ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセロール、ジステアリルホスファチジルグリセロール、ジステアリルホスファチジルイノシトール、ジステアリルホスファチジルセリン、ジステアリルホスファチジン酸、ジステアリルリゾホスファチジルグリセロール、ジステアリルリゾホスファチジルイノシトール、ジステアリルリゾホスファチジルセリン、ジステアリルリゾホスファチジン酸、ジパルミチルホスファチジルイノシトール、ジパルミチルホスファチジルセリン、ジパルミチルホスファチジン酸、ジパルミチルホスファチジルグリセロール、ジパルミチルリゾホスファチジルイノシトール、ジパルミチルリゾホスファチジルセリン、ジパルミチルリゾホスファチジン酸、ジパルミチルリゾホスファチジルグリセロール、およびそれらの混合物を含む。
【0090】
本発明の1つの態様において、両親媒性脂質はレシチンであり、このレシチンは、90%未満のホスファチジルコリンを含む。本発明のさらに別の態様において、両親媒性脂質はレシチンであり、このレシチンは実質的に水素添加ホスファチジルコリンからなり、残りの組成は主に水素添加陰イオン性ホスファチドで構成される。
【0091】
本発明の滅菌されたグルココルチコステロイド製剤は追加的に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはエチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)などのキレート剤を含有し、これらは滅菌段階の直前に製剤に添加される。好ましくは、グルココルチコステロイド製剤に添加されるEDTAまたはEGTAの量は、表面安定剤として添加される両親媒性脂質の量に応じて決まる。より多くの量の両親媒性脂質が添加されると、より多くの量のEDTAまたはEGTAが添加され、反対に、逆も同様であり、より少ない両親媒性脂質が添加されると、より少ないEDTAまたはEGTAが添加される。従って本発明の1つの態様において、この組成物は、EDTAまたはEGTAのナトリウム塩またはカルシウム塩、もしくはそれらの組み合わせを含む。本発明の別の態様において、EDTAまたはEGTAのナトリウム塩および/またはカルシウム塩の量は、約0.0001%〜約5%、約0.001〜約1%、および約0.01%〜約0.1%の範囲にわたってもよい。
【0092】
本発明の組成物は、いずれか好適な剤形に製剤化することができる。例えば、本発明の組成物は、注射、耳内、経口、直腸内、肺内、眼内、結腸内、非経口、槽内、膣内、腹腔内、局部、口腔、鼻内、または局所投与用に製剤化することができ;本発明の組成物は、粉末、凍結乾燥粉末、噴霧乾燥粉末、噴霧造粒粉末、固形ロゼンジ、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、液体分散剤、ゲル剤、エアゾル剤、軟膏、またはクリームに製剤化することができ;本発明の組成物は、制御放出製剤、固形剤形速溶製剤、制御放出製剤、速溶製剤、凍結乾燥製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、および即時放出と制御放出の混合型製剤などの剤形に製剤化することができ;またはそれらの任意の組み合わせに製剤化することができる。好ましくは無菌の剤形は、鼻内送達もしくは肺送達のためのエアゾル剤形、注射用剤形、および眼内剤形を含むが、これらに限定されるものではない。
【0093】
1. 水性エアゾル剤
鼻内、肺(肺臓上部)、肺臓(肺臓深部)、口内、眼内、または耳内送達のためのナノ粒子グルココルチコステロイド分散剤の1つの態様は、エアゾル剤(例えば、鼻用エアゾル剤、舌(口)用エアゾル剤、または吸入用エアゾル剤)である。本発明の水性製剤は、エアジェットまたは超音波ネブライザーを使用しエアゾル化される、水性媒質中の水難溶性ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物のコロイド状分散剤からなる。このような水性エアゾル剤使用の利点は、本発明のナノ粒子および従来のマイクロ粒子化されたグルココルチコステロイド組成物のサイズを、従来のネブライザーにより作製された液滴のサイズと比較することにより最も良く理解することができる。従来のマイクロ粒子化された物質は一般に、直径が約2〜約5ミクロンまたはそれよりも大きく、医療用ネブライザーにより作製された液滴サイズとほぼ同じサイズである。対照的に、2ミクロンまたはそれ未満のサイズを有するナノ粒子グルココルチコステロイド組成物は、そのようなエアゾル剤内の小滴と同等かまたはより小さい。従って本発明のナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を含有するエアゾル剤は、薬物送達効率を改善する。そのようなエアゾル剤は、1単位投与量当たりにより多数のナノ粒子を含むこともでき、各々本発明の活性組成物を含有するエアゾル化されたグルココルチコステロイド小滴を生じる。
【0094】
従って、本発明の組成物の同じ用量の投与により、気管支肺または鼻咽頭の組織表面積のより多くが、ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を含有するエアゾル製剤により被覆される。
【0095】
これらの水性エアゾル剤を使用する別の利点は、これらは本発明の水難溶性組成物を、水性製剤により肺臓深部へ送達することを可能にする点である。従来のマイクロ粒子化された原薬は、ネブライザーにより作製された小滴のサイズにかかわらず、肺臓辺縁部に到達するには余りにも大きい。本発明の組成物で構成された水性エアゾル剤は、ネブライザーが、非常に小さい(約0.5〜約2ミクロン)水性小滴を作製し、ナノ粒子の形で、本発明の水に不溶性の組成物を肺胞へ送達することを可能にする。そのような装置の一例は、Circular(商標)エアゾル(Westmed Corp., Tucson, Ariz.)である。
【0096】
水性グルココルチコステロイドエアゾル剤のさらに別の利点は、超音波ネブライザーを使用し、本発明の水難溶性組成物を肺臓へ送達することができることである。従来のマイクロ粒子化された本発明の組成物とは異なり、ナノ粒子の形の本発明の組成物は、容易にエアゾル化され、良好なインビトロ沈着特性を示す。これらの水性グルココルチコステロイドエアゾル剤の具体的利点は、本発明の組成物で構成されたナノ粒子が、エアゾル化された小滴のサイズを制御するよう非常に細いオリフィスを通過する必要がある超音波ネブライザーによって、水難溶性グルココルチコステロイド組成物のエアゾル化が可能になることである。従来の薬物材料はこの孔を塞ぐと予想されるのに対し、そのようなナノ粒子は、はるかに小さく、難なくこの孔を通過することができる。
【0097】
水性エアゾル製剤に関して、本発明のナノ粒子グルココルチコステロイド組成物は、約0.001mg/mLから最大約600mg/mLの濃度で存在する。本発明の別の態様において、グルココルチコステロイドは、約0.015mg/mLから最大約3mg/mL;約10mg/mLもしくはそれを上回る、約100mg/mLもしくはそれを上回る、約200mg/mLもしくはそれを上回る、約400mg/mLもしくはそれを上回る、または約600mg/mLの濃度で存在しうる。本発明のグルココルチコステロイド組成物の乾燥粉末エアゾル剤も、本発明に包含されている。乾燥粉末エアゾル製剤に関して、本発明の組成物は、所望の用量に応じて、約0.001mg/gから最大約990mg/gの濃度で存在する。本発明の組成物を水性グルココルチコステロイドエアゾル製剤について約0.015mg/mLから最大約3mg/mL、または約10mg/mLから最大約600mg/mL、および乾燥粉末エアゾル製剤について約0.015mg/gから最大約3mg/g、または約10mg/gから最大約990mg/gの濃度で含有すると規定された、濃厚化されたナノ粒子エアゾル剤は、本発明に具体的に包含される。このような製剤は、従来の肺ネブライザー療法において認められる最大4〜20分間の投与時間と比べ、短い投与時間で、すなわち約15秒未満で、口、肺臓、または鼻腔の適当な領域への有効な送達を提供する。本発明の別の態様において、このエアゾル剤は、約10秒間から最大約30分間、約10秒間から最大約25分間、約10秒間から最大約20分間、約10秒間から最大約15分間、約10秒間から最大約10分間、約10秒間から最大約9分間、約10秒間から最大約8分間、約10秒間から最大約7分間、約10秒間から最大約6分間、約10秒間から最大約5分間、約10秒間から最大約4分間、約10秒間から最大約3分間、約10秒間から最大約2分間、約10秒間から最大約1分間の時間で投与することができる。本発明のさらに別の態様において、本発明のエアゾル剤は、約10秒間もしくはそれよりも長い、約15秒間もしくはそれよりも長い、約20秒間もしくはそれよりも長い、約25秒間もしくはそれよりも長い、約30秒間もしくはそれよりも長い、約35秒間もしくはそれよりも長い、約40秒間もしくはそれよりも長い、約45秒間もしくはそれよりも長い、約50秒間もしくはそれよりも長い、もしくは約55秒間もしくはそれよりも長い、または約20秒間から最大約8分間などのそれらの任意の組み合わせの時間で投与することができる。
【0098】
本発明の1つの態様において、エアゾル剤の小滴は、約100ミクロン未満またはこれと等しい空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する。本発明の別の態様において、このエアゾル剤の小滴は、(1)約0.1〜約10ミクロン;(2)約2〜約6ミクロン;(3)約2ミクロン未満;(4)約5〜約100ミクロン;または(5)約30〜約60ミクロンの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する。本発明の別の態様において、水性エアゾル剤の各小滴は、少なくとも1個のナノ粒子グルココルチコステロイド粒子を本質的に含む。
【0099】
2. 乾燥粉末エアゾル製剤
乾燥粉末吸入用製剤は、本発明の組成物の水性ナノ粒子グルココルチコステロイド分散剤の噴霧乾燥により作製することができる。あるいは本発明のナノ粒子組成物を含有する乾燥粉末は、ナノ粒子分散剤のフリーズドライにより作製することができる。噴霧乾燥およびフリーズドライ済みのナノ粒子粉末の組み合わせは、DPIおよびpMDIにおいて使用することができる。乾燥粉末エアゾル製剤に関して、本発明のナノ粒子組成物は、約0.015mg/gから最大約990mg/gの濃度で存在してよい。
【0100】
乾燥粉末吸入器(DPI)は、乾燥粉末の非凝集(de-aggregation)およびエアゾル製剤が関与しているが、これは通常薬用量を送達するためにユニットを通じて引き込まれる吸気の破裂(burst)に頼っている。このような装置は、例えば吸入段階および噴出段階を有する空気圧粉末エジェクターを開示し、その全内容が本明細書において参照により組み入れられる米国特許第4,807,814号;軸方向空気流チューブを備える携帯型粉末分散装置を説明している、SU 628930(要約);ベンチュリ制限の上流に軸方向の吸気口を有するベンチュリ排出装置を説明している、Foxらの「Powder and Bulk Engineering」33-36頁(1988年3月);折りたたみ式拡大チャンバーを備える携帯型粉末分散装置を開示している、欧州特許第347779号;ならびに薬物の乾燥粉末送達装置を開示している、米国特許第5,785,049号に開示されており、それらの全内容は本明細書において参照により組み入れられる。
【0101】
乾燥粉末吸入用製剤は、エアゾル製剤により送達することもできる。これらの粉末は、本発明のナノ粒子組成物の吸入可能な凝集体、または少なくとも1つの内蔵された(embedded)本発明の組成物を含む希釈物の吸入可能な粒子からなりうる。本発明のナノ粒子組成物を含有する粉末は、噴霧乾燥または凍結乾燥(フリーズドライ)によって水を除去することにより、ナノ粒子の水性分散剤から調製することができる。噴霧乾燥は、フリーズドライに比べ、費やす時間が短く、かつ安価であり、従ってより費用効率がよい。
【0102】
乾燥粉末エアゾル剤送達装置は、本発明の組成物の意図された量を精密に、正確におよび反復して送達することができなければならない。さらにそのような装置は、乾燥粉末を、呼吸可能なサイズの個々の粒子に完全に分散させることができなければならない。従来の直径2〜3ミクロンのマイクロ粒子化された薬物粒子は、このような粉末内で固有の静電気的凝集力のため、少量を計量しかつ分散させることが困難であることが多い。これらの困難さは、送達装置への原薬の喪失に加え、不完全な粉末分散および肺臓への最適でない送達につながり得る。多くの薬物化合物は、肺臓深部への送達および全身吸収が意図されている。従来調製された乾燥粉末の平均粒径は通常2〜3ミクロンの範囲であるので、実際に肺胞領域に到達する物質の割合は、極めて小さいことがある。従ってマイクロ粒子化された乾燥粉末の肺臓への、特に肺胞領域への送達は、粉末それ自体の特性のために、一般に非常に効率が悪い。
【0103】
本発明のナノ粒子組成物を含む乾燥粉末エアゾル剤は、同等のマイクロ粒子化された原薬よりもより小さく作製することができ、従って肺臓深部への効率的送達に適している。さらに本発明のナノ粒子組成物の凝集体は、形状は球形であり、良好な流動特性を有し、これにより投与量の計量および投与された組成物の肺臓または鼻腔への沈着を助ける。
【0104】
乾燥ナノ粒子組成物は、DPIおよびpMDIの両方において使用することができる。(本発明の状況において、「乾燥」とは、約5%未満の水を有する組成を意味する。)ナノ粒子エアゾル製剤は、Boschらの米国特許第6,811,767号に開示されており、これは具体的に本明細書において参照により組み入れられる。
【0105】
鼻用製剤は、好適な溶媒中の本発明の組成物の溶液、または液相および安定剤および乾燥粉末中の本発明の組成物の分散剤もしくは懸濁剤の形でありうる。溶液は、本発明の組成物および好適な溶媒および任意に1種類または複数の共溶媒で構成される。水は典型的な溶媒である。しかし本発明の組成物は、水単独中には溶けないことがあり、この場合は溶液を形成するために、1種類または複数の共溶媒が使用されてよい。好適な共溶媒は、短鎖アルコール、特にエタノールを含むが、これらに限定されるものではない。
【0106】
鼻用製剤は、分散剤または懸濁剤の形であってもよい。この種の製剤の場合、本発明の組成物は、1種類または複数の懸濁化剤を伴うかまたは伴わない水中に分散または懸濁された、グルココルチコステロイドナノ粒子の形でありうる。本発明のナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を含む吸入療法(すなわち投与量吸入器)およびpMDI(加圧式定量噴霧吸入器)は、個別のナノ粒子および表面安定剤、ナノ粒子および表面安定剤の凝集体、または溶媒および/もしくは噴射剤中に内蔵された薬物のナノ粒子もしくは溶液もしくは組み合わせを含む輸送性(motive)希釈剤粒子のいずれかを含む。pMDIは、鼻腔、肺臓の誘導気道、または肺胞の標的化に使用することができる。吸入されたナノ粒子は、従来のマイクロ粒子化された材料(<2ミクロン)よりも小さく、かつマイクロ粒子化された薬物と比べより大きい粘膜または肺胞の表面積に分布するので、従来の製剤と比べ、本発明は、肺臓深部領域への送達の増大をもたらす。
【0107】
a. グルココルチコステロイドナノ粒子を含有する噴霧乾燥粉末
本発明のナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を含有する粉末は、本発明の凝集ナノ粒子組成物からなる乾燥粉末を形成するために、ナノ粒子組成物および表面安定剤の水性分散剤の噴霧乾燥により作製することができる。これらの凝集体は、肺臓深部への送達に適している約1〜約2ミクロンのサイズを有しうる。この凝集体粒径は、噴霧乾燥した分散剤中の本発明の組成物の濃度を増加することによるか、または噴霧乾燥機により作製された小滴サイズを増大することにより、上部気管支領域または鼻粘膜のような別の送達部位を標的化するために増大させてもよい。
【0108】
あるいは、本発明のナノ粒子グルココルチコステロイド組成物および表面安定剤の水性分散剤は、溶解された希釈剤、例えば乳糖またはマンニトールを含有することができ、噴霧乾燥された場合に吸入可能な希釈剤粒子を形成し、その各々は、本発明の少なくとも1つの内蔵されたグルココルチコステロイドナノ粒子、非イオン性表面安定剤、および両親媒性脂質を含む。内蔵されたグルココルチコステロイドナノ粒子を伴う希釈剤粒子は、肺臓深部送達に適した粒径約1〜約2ミクロンを有しうる。加えて希釈剤粒径は、噴霧乾燥前に水性分散剤中に溶解した希釈剤の濃度を増加することによるか、または噴霧乾燥機により作製された小滴サイズを増大することにより、上部気管支領域または鼻粘膜のような別の送達部位を標的化するために増大させてもよい。
【0109】
噴霧乾燥粉末は、単独で、またはフリーズドライナノ粒子粉末と組み合わせてのいずれかで、DPIまたはpMDIにおいて使用することができる。加えて本発明のナノ粒子組成物を含有する噴霧乾燥粉末は、再構成され、かつ各小滴が少なくとも1つの本発明のナノ粒子組成物を含むような、呼吸可能な小滴サイズを有する水性分散剤を作製するために、ジェットまたは超音波ネブライザーのいずれかにおいて使用することができる。濃縮ナノ粒子分散剤も、本発明のこれらの局面において使用することができる。
【0110】
b. 本発明のナノ粒子組成物を含有するフリーズドライ粉末
ナノ粒子グルココルチコステロイド分散剤の形の本発明のナノ粒子グルココルチコステロイド組成物は、鼻内送達または肺送達に適した粉末を得るために、フリーズドライを施してもよい。このような粉末は、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤および少なくとも1種類の両親媒性脂質を有する、本発明の凝集ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を含んでよい。このような凝集体は、呼吸可能な範囲内、すなわち約2〜約5ミクロンのサイズを有してよい。鼻粘膜のような別の送達部位を標的化するために、より大きい凝集体粒径を得てもよい。
【0111】
適当な粒径のフリーズドライ粉末は、追加的に乳糖またはマンニトールのような溶解された希釈剤を含有する本発明の組成物の水性分散剤をフリーズドライにかけることにより得ることもできる。これらの場合、フリーズドライ粉末は、希釈剤の呼吸可能な粒子からなり、その各々は、少なくとも1つの内蔵された本発明のナノ粒子組成物を含む。
【0112】
フリーズドライ粉末は、単独で、または噴霧乾燥ナノ粒子粉末と組み合わせてのいずれかで、DPIまたはpMDIにおいて使用することができる。加えて本発明のナノ粒子組成物を含有するフリーズドライ粉末は、再構成され、かつ各小滴が少なくとも1つの本発明のナノ粒子組成物を含むような、呼吸可能な小滴サイズを有する水性分散剤を作製するために、ジェットまたは超音波ネブライザーのいずれかにおいて使用することができる。濃縮ナノ粒子分散剤も、本発明のこれらの局面において使用することができる。
【0113】
3. 粒径
本発明の組成物は、約2000nm(すなわち2ミクロン)未満の有効平均粒径を有するナノ粒子グルココルチコステロイド粒子を含む。本発明の別の態様において、グルココルチコステロイド粒子は、光散乱法、顕微鏡、または他の適当な方法により測定された、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約990nm未満、約980nm未満、約970nm未満、約960nm未満、約950nm未満、約940nm未満、約930nm未満、約920nm未満、約910nm未満、約900nm未満、約890nm未満、約880nm未満、約870nm未満、約860nm未満、約850nm未満、約840nm未満、約830nm未満、約820nm未満、約810nm未満、約800nm未満、約790nm未満、約780nm未満、約770nm未満、約760nm未満、約750nm未満、約740nm未満、約730nm未満、約720nm未満、約710nm未満、約700nm未満、約690nm未満、約680nm未満、約670nm未満、約660nm未満、約650nm未満、約640nm未満、約630nm未満、約620nm未満、約610nm未満、約600nm未満、約590nm未満、約580nm未満、約570nm未満、約560nm未満、約550nm未満、約540nm未満、約530nm未満、約520nm未満、約510nm未満、約500nm未満、約490nm未満、約480nm未満、約470nm未満、約460nm未満、約450nm未満、約440nm未満、約430nm未満、約420nm未満、約410nm未満、約400nm未満、約390nm未満、約380nm未満、約370nm未満、約360nm未満、約350nm未満、約340nm未満、約330nm未満、約320nm未満、約310nm未満、約300nm未満、約290nm未満、約280nm未満、約270nm未満、約260nm未満、約250nm未満、約240nm未満、約230nm未満、約220nm未満、約210nm未満、約200nm未満、約190nm未満、約180nm未満、約170nm未満、約160nm未満、約150nm未満、約140nm未満、約130nm未満、約120nm未満、約110nm未満、約100未満、約75nm未満、または約50nm未満の有効平均粒径を有する。
【0114】
「約2000nm未満の有効平均粒径」とは、前述の技術により測定した場合に、重量、容量、数で、または他の好適な測定技術により、グルココルチコステロイド粒子の少なくとも50%(すなわち「D50」)が有効平均(この場合2ミクロン)未満の粒径を有することを意味する。本発明の別の態様において、本発明の組成物のグルココルチコステロイド粒子の「有効平均粒径」は、グルココルチコステロイド粒子の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%が、先に説明した有効平均未満、すなわち、約2000nm、1900nm、1800nm、1700nm未満・・・約1000nm未満、約990nm未満、約980nm未満、約970nmなどの粒径を有することと定義される(同じくD60、D70、D80、D90、D95、およびD99粒径とも称される)。本発明の別の態様において、先に説明した「有効平均粒径」は、組成物の平均粒径である(すなわち本発明は、約2000nm未満・・・約1000nm未満、約990nm未満、約980nm未満、約970nm未満などの平均粒径を有する組成物を包含している。)。
【0115】
本発明において、ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物のD50値は、重量、容量、数で、またはいずれか他の好適な測定技術により、グルココルチコステロイド粒子の50%が、それ以下に収まる粒径である。同様にD90は、重量、容量、数で、またはいずれか他の好適な測定技術により、グルココルチコステロイド粒子の90%が、それ以下に収まる粒径である。
【0116】
4. グルココルチコステロイド、非イオン性表面安定剤、および両親媒性脂質の濃度
グルココルチコステロイド、1種類または複数の非イオン性表面安定剤、および少なくとも1種類の両親媒性脂質の相対量は、広範に変動してよい。個々の成分の最適量は、例えば、選択された特定のグルココルチコステロイド、選択された特定の非イオン性表面安定剤、選択された特定の両親媒性脂質、親水親油バランス(HLB)、融点、および非イオン性表面安定剤の水溶液の表面張力などに左右され得る。
【0117】
1つの態様において、グルココルチコステロイドの濃度は、グルココルチコステロイド、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤、および少なくとも1種類の両親媒性脂質を組み合わせ、他の賦形剤は含まない総重量を基に、約99.5重量%〜約0.001重量%、約95重量%〜約0.1重量%、または約90重量%〜約0.5重量%を変動してよい。
【0118】
別の態様において、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤の濃度は、グルココルチコステロイド、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤、および少なくとも1種類の両親媒性脂質を組み合わせ、他の賦形剤は含まない総重量を基に、約0.01重量%〜約99重量%、約0.1重量%〜約50重量%、および約1重量%〜約10重量%を変動してよい。
【0119】
別の態様において、少なくとも1種類の両親媒性脂質の濃度は、グルココルチコステロイド、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤、および少なくとも1種類の両親媒性脂質を組み合わせ、他の賦形剤は含まない総重量を基に、約0.01重量%〜約99重量%、約0.1重量%〜約50重量%、約1重量%〜約10重量%を変動してよい。
【0120】
本発明の例証的態様において、ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物は、総グルココルチコステロイド濃度の約5〜10%を構成する非イオン性表面安定剤と接触して、約10〜30%w/wの濃度のグルココルチコステロイドを含有する。
【0121】
5. 組み合わせ組成物
滅菌されるべき分散剤は、複数のグルココルチコステロイド、複数の粒径を有する1種類または複数のグルココルチコステロイドの組成物、またはそれらの組み合わせを含みうる。例えば、分散剤は以下を含む:(1)ナノ粒子グルココルチコステロイドAおよびナノ粒子グルココルチコステロイドB;(2)ナノ粒子グルココルチコステロイドAおよびマイクロ粒子グルココルチコステロイドA;(3)ナノ粒子グルココルチコステロイドAおよびマイクロ粒子グルココルチコステロイドB;(3)有効平均粒径250nmを有するナノ粒子グルココルチコステロイドAおよび有効平均粒径800nmを有するナノ粒子グルココルチコステロイドA、またはそれらの組み合わせ。
【0122】
a. マイクロ粒子活性物質を含有する組成物
滅菌されたマイクロ粒子グルココルチコステロイド粒子は、滅菌前または後のいずれかに、1種類または複数のナノ粒子グルココルチコステロイド粒子の滅菌された分散剤と組み合わせ、持続放出または制御放出組成物を提供することができる。このような滅菌されたマイクロ粒子グルココルチコステロイド粒子は、粉末または他の乾燥剤形へ加工処理されている滅菌された分散剤と組み合わせることもできる。
【0123】
比較的大きい活性物質粒子、すなわちマイクロ粒子化されたグルココルチコステロイド粒子と組み合わせられた、非常に小さいグルココルチコステロイド粒子、すなわちナノ粒子グルココルチコステロイド粒子の組み合わせは、グルココルチコステロイド成分の即時放出(IR)および制御放出(CR)の同時提示を得ることが可能である。マイクロ粒子化されたグルココルチコステロイド粒子およびナノ粒子グルココルチコステロイド粒子は、同じグルココルチコステロイドであっても、または異なるグルココルチコステロイドであってもよい。
【0124】
本発明の目的に関して、「ナノ粒子」活性物質は、約2ミクロン未満の有効平均粒径を有し、およびマイクロ粒子化された活性物質は、約2ミクロンより大きい有効平均粒径を有する。マイクロ粒子化された活性物質粒子は、ナノ粒子活性物質粒子と同時に、または好適な滅菌法を使用する別のプロセスにおいて、滅菌され得る。
【0125】
IR成分を表しているナノ粒子グルココルチコステロイド粒子は、それらの小さいサイズおよび付随する大きい比表面のために、迅速なインビボ溶解をもたらす。CR成分を表しているマイクロ粒子化されたグルココルチコステロイド粒子は、比較的大きい粒径および付随する小さい比表面のために、より遅いインビボ溶解をもたらす。
【0126】
広範なインビボ溶解速度(および以後、吸収のためのインビボ投入速度)を表すIRおよびCR成分は、グルココルチコステロイド粒径の正確な制御により、操作することができる。従ってこれらの組成物は、粒子の各集団が正確な放出速度と相関する規定されたサイズを有する、ナノ粒子グルココルチコステロイド粒子の混合物を含むことができ、ならびにこれらの組成物は、粒子の各集団が正確な放出速度と相関する規定されたサイズを有する、マイクロ粒子グルココルチコステロイド粒子の混合物を含みうる。
【0127】
b. 複数のナノ粒子粒径を含む組成物
本発明のさらに別の態様において、所望の薬物動態プロファイルを提供する第一のナノ粒子グルココルチコステロイドの分散剤は、望ましい異なる薬物動態プロファイルを生じるナノ粒子グルココルチコステロイドの少なくとも1種類の他の分散剤と組み合わせられた。2種類よりも多いナノ粒子グルココルチコステロイド分散剤を組み合わせることができる。第一のグルココルチコステロイド分散剤は、ナノ粒子粒径を有するのに対し、追加の1種類または複数のグルココルチコステロイドは、可溶化されるナノ粒子であってもよく、または通常のマイクロ粒子粒径を有してもよい。
【0128】
第二、第三、第四などのグルココルチコステロイド分散剤は、例えば、(1)グルココルチコステロイドの有効平均粒径において、または(2)グルココルチコステロイドの用量において、第一のものと異なり、かつ互いに異なりうる。
【0129】
好ましくは、「即効」製剤および「長期持続」製剤の同時投与が望ましい場合、これら2つの製剤は、単独の組成物内で、例えばデュアル放出組成物において組み合わせることができる。
【0130】
6. 他の活性物質と併用されるグルココルチコステロイド組成物
本発明のグルココルチコステロイド組成物は、喘息、アレルギー性結膜炎および季節性アレルギー性鼻炎、ならびにグルココルチコステロイドが従来使用されている他の炎症およびアレルギー状態の治療に有用な化合物を追加的に1種類または複数含有しうる。本発明の組成物は、そのような他の活性物質と同時製剤化してもよく、または本発明の組成物は、そのような活性物質と一緒に同時投与もしくは連続投与してもよい。
【0131】
喘息またはアレルギー状態の治療に有用であり、かつ本発明の組成物と併用することができる活性物質の例は、長期作用型β-アゴニスト 、例えばサルメテロール(Serevent(登録商標))およびフォルモテロール(Foradil(登録商標));ロイコトリエン変更因子、例えばモノロイカスト(monoleukast)(Singulair(登録商標))、ザフィルルカスト(Accolate(登録商標))、およびジロイトン(Zyflo(登録商標));テオフィリン(Aerolate(登録商標)、Choledyl(登録商標)、Elixophyllin(登録商標)、Quibron(登録商標)、Slo-bid(登録商標)、Theochron(登録商標)、T-Phyl(登録商標)、およびUniphyl(登録商標));ネドクロミル(Tilade(登録商標));クロモリン(Intal(登録商標));短期作用型β-アゴニスト(同じく「気管支拡張薬」として公知)、例えばアルブテロール(Airet(登録商標)、Proventil(登録商標)、およびVentolin(登録商標))、レバルブテロール(Xopenex(登録商標))、ビトルテロール(Tornalate(登録商標))、ピルブテロール(Maxair(登録商標))、およびテルブタリン(Brethaire(登録商標));臭化イプラトロピウム(Atrovent(登録商標));プレドニゾン(Deltasone(登録商標)およびOrasone(登録商標));プレドニゾロン(Prelone(登録商標)およびPediapred(登録商標));ならびにメチルプレドニゾロン(Medrol(登録商標))を含むが、これらに限定されるものではない。
【0132】
7. 追加の表面安定剤
本発明の1つの態様において、組成物は、低分子量または高分子量の、および性質上ポリマーまたはコポリマーである、1種類または複数のイオン性(陽イオン性および陰イオン性を含む)、陰イオン性、または両性イオン性表面安定剤も含みうる。そのような表面安定剤が本発明の組成物において利用される場合、これらは、組成物の湿熱滅菌後に添加されることが好ましい。有用なイオン性、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、または両性イオン性表面安定剤の例は、公知の有機および無機の薬学的賦形剤を含むが、これらに限定されるものではない。このような賦形剤は、様々なポリマー、コポリマー、低分子量オリゴマー、天然の生成物、および界面活性剤を含む。1種類よりも多い表面安定剤の組み合わせを、本発明において使用することができる。
【0133】
イオン性、陽イオン性、陰イオン性、または両性イオン性表面安定剤の代表例は、非限定的にヒト血清アルブミンおよびウシアルブミンを含むアルブミン、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチル、ゼラチン、カゼイン、アカシアゴム、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、マグネシウムアルミニウムシリケート、トリエタノールアミン、ポロキサミン(例えば、Tetronic 908(登録商標)、Poloxamine 908(登録商標)としても公知、これはプロピレンオキシドとエチレンオキシドのエチレンジアミンへの逐次付加から誘導される四官能性ブロックコポリマーである(BASF Wyandotte Corporation, Parsippany, N.J.));Tetronic 1508(登録商標)(T-1508)(BASF Wyandotte Corporation)、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTritons X-200(登録商標)(Dow);ショ糖ステアリン酸およびショ糖ジステアリン酸の混合物であるCrodestas F-110(登録商標)(Croda Inc.);Crodestas SL-40(登録商標)(Croda, Inc.);リゾチーム、PVPとPVAのランダムコポリマー(例えば、Plasdone(登録商標)S630)などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0134】
有用な陽イオン性表面安定剤の例は、ポリマー、バイオポリマー、多糖、セルロース誘導体、アルジネート、リン脂質、および非高分子化合物、例えば両性イオン性安定剤、ポリ-n-メチルピリジニウム、アンスリルピリジニウムクロリド、陽イオン性リン脂質、キトサン、ポリリシン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミドブロミド(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDMAB)、およびポリビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチル硫酸を含むが、これらに限定されるものではない。その他の有用な陽イオン性安定剤は、陽イオン性脂質、スルホニウム、ホスホニウム、および第4級アンモニウム化合物、例えばステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナツトリメチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、C12-15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロリドまたはブロミド、N-アルキル(C12-18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C14-18)ジメチル-ベンジルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N-アルキルおよび(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハライド、アルキル-トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル-ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化されたアルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩および/またはエトキシル化されたトリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N-ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、N-アルキル(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリドおよびドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12,C15,C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルアンモニウムハロゲニド(halogenide)、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド(ALIQUAT 336(商標))、POLYQUAT 10(商標)、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル(例えば脂肪酸のコリンエステル)、塩化ベンザルコニウム、ステアラルコニウムクロリド化合物(例えばステアリルトリモニウムクロリドおよびジ-ステアリルジモニウムクロリド)、セチルピリジニウムブロミドまたはクロリド、4級化されたポリオキシエチルアルキルアミンのハライド塩、MIRAPOL(商標)およびALKAQUAT(商標)(Alkaril Chemical Company)、アルキルピリジニウム塩;アミン、例えばアルキルアミン、ジアルキルアミン、アルカノールアミン、ポリエチレンポリアミン、N,N-ジアルキルアミノアルキルアクリレート、およびビニルピリジンなど、アミン塩、例えばラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、アルキルピリジニウム塩、およびアルキルイミダゾリウム塩など、ならびにアミンオキシド;イミドアゾリニウム塩;プロトン化された第4級アクリルアミド;メチル化された第4級ポリマー、例えばポリ[ジアリルジメチルアンモニウムクロリド]およびポリ-[N-メチルビニルピリジニウムクロリド]など;ならびに陽イオン性グアーを含むが、これらに限定されるものではない。
【0135】
このような陽イオン性表面安定剤および他の有用な陽イオン性表面安定剤の例は、J. Cross and E. Singer, Cationic Surfactants: Analytical and Biological Evaluation (Marcel Dekker, 1994);P. and D. Rubingh(編集), Cationic Surfactants: Physical Chemistry (Marcel Dekker, 1991);およびJ. Richmond, Cationic Surfactants: Organic Chemistry, (Marcel Dekker, 1990)に説明されている。
【0136】
特に好ましい非ポリマー性第1級安定剤は、任意の非ポリマー性化合物、例えば塩化ベンザルコニウム、カルボニウム化合物、ホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、ハロニウム化合物、陽イオン性有機金属化合物、第4級リン化合物、ピリジニウム化合物、アニリニウム化合物、アンモニウム化合物、ヒドロキシルアンモニウム化合物、式NR1R2R3R4(+)の、第1級アンモニウム化合物、第2級アンモニウム化合物、第3級アンモニウム化合物、および第4級アンモニウム化合物である。式NR1R2R3R4(+)の化合物に関しては、
(i)R1-R4はCH3ではない;
(ii)R1-R4の1つはCH3である;
(iii)R1-R4の3つはCH3である;
(iv)R1-R4 は全てCH3である;
(v)R1-R4の2つはCH3であり、R1-R4の1つはC6H5CH2であり、かつR1-R4の1つは7個以下の炭素原子のアルキル鎖である;
(vi)R1-R4の2つはCH3であり、R1-R4の1つはC6H5CH2であり、かつR1-R4の1つは19個以上の炭素原子のアルキル鎖である;
(vii)R1-R4の2つはCH3であり、かつR1-R4の1つは基C6H5(CH2)nであり、n>1である;
(viii)R1-R4の2つはCH3であり、R1-R4の1つはC6H5CH2であり、かつR1-R4の1つは少なくとも1個のヘテロ原子を含む;
(ix)R1-R4の2つはCH3であり、R1-R4の1つはC6H5CH2であり、かつR1-R4の1つは少なくとも1個のハロゲンを含む;
(x)R1-R4の2つはCH3であり、R1-R4の1つはC6H5CH2であり、かつR1-R4の1つは少なくとも1個の環状断片を含む;
(xi)R1-R4の2つはCH3であり、かつR1-R4の1つはフェニル環である;または
(xii)R1-R4の2つはCH3であり、かつR1-R4の2つは純粋な脂肪族断片である。
【0137】
そのような化合物は、塩化ベヘンアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベヘントリモニウム、塩化ラウラルコニウム、塩化セタルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化セトリモニウム、フッ化水素セチルアミン、クロルアリルメテナミンクロリド(クオタニウム-15)、ジステアリルジモニウムクロリド(クオタニウム-5)、ドデシルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリド(クオタニウム-14)、クオタニウム-22、クオタニウム-26、クオタニウム-18ヘクトライト、ジメチルアミノエチルクロリドヒドロクロリド、システインヒドロクロリド、ジエタノールアンモニウムPOE(10)オレイルエーテルホスフェート、ジエタノールアンモニウムPOE(3)オレイルエーテルホスフェート、タロウアルコニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、ステアラルコニウムクロリド、臭化ドミフェン、安息香酸デナトニウム、ミリストアルコニウムクロリド、ラウルトリモニウムクロリド(laurtrimonium chloride)、エチレンジアミンジヒドロクロリド、グアニジンヒドロクロリド、ピリドキシンHCl、イオフェタミンヒドロクロリド、メグルミンヒドロクロリド、塩化メチルベンゼトニウム、ミルトリモニウムブロミド、オレイルトリモニウムクロリド、ポリクオタニウム-1、プロカインヒドロクロリド、ココベタイン、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトナイト、ステアリルトリヒドロキシエチルプロピレンジアミンジヒドロフルオリド、タロウトリモニウムクロリド、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含むが、これらに限定されるものではない。
【0138】
これらの表面安定剤のほとんどは、公知の薬学的賦形剤であり、具体的に参照により組み入れられる、米国薬剤師会と英国薬剤師会から共同出版された「Handbook of Pharmaceutical Excipients」において詳細に説明されている(The Pharmaceutical Press, 2000)。これらの表面安定剤は、市販されているか、および/または当技術分野において公知の技術により調製することができる。
【0139】
8. 他の薬学的賦形剤
本発明の薬学的組成物は、1種類または複数の結合剤、充填剤滑沢剤、懸濁化剤、甘味料、矯味矯臭剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤を含有してもよい。このような賦形剤は当技術分野において公知である。
【0140】
充填剤の例は、乳糖一水和物、乳糖無水物、および様々なデンプンであり;結合剤の例は、様々なセルロースおよび架橋したポリビニルピロリドン、微晶質セルロース、例えばAvicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102、微晶質セルロース、およびシリカ化微晶質セルロース(SMCC)である。
【0141】
圧縮される粉末の流動性に作用する物質を含む、好適な滑沢剤は、コロイド状二酸化ケイ素、例えばAerosil(登録商標)200;タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルである。
【0142】
甘味料の例は、天然または人工の甘味料、例えばショ糖、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルタム、およびアセスルファームがある。矯味矯臭剤の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、バブルガム香料、および果実香料などがある。
【0143】
保存剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、ブチルパラベンなどのその他のパラヒドロキシ安息香酸のエステル、エチルアルコールもしくはベンジルアルコールなどのアルコール、フェノールなどのフェノール系化合物、または塩化ベンザルコニウムなどの第4級化合物である。
【0144】
好適な希釈剤は、薬学的に許容される不活性充填剤、例えば微晶質セルロース、乳糖、リン酸水素カルシウム、サッカライド、および/または前述のいずれかの混合物を含む。希釈剤の例は、Avicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102などの微晶質セルロース;乳糖一水和物、乳糖無水物、およびPharmatose(登録商標)DCL21などの乳糖;Emcompress(登録商標)のようなリン酸水素カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;ショ糖;およびグルコースを含む。
【0145】
好適な崩壊剤は、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、メイズデンプン、および改質デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロス-ポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、およびそれらの混合物を含む。
【0146】
発泡剤の例は、有機酸とカーボネートまたはバイカーボネートのような発泡剤の組み合わせである。好適な有機酸は、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、およびアルギン酸ならびに無水物ならびに酸性塩(acid salt)を含む。好適なカーボネートおよびバイカーボネートは、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、L-リシンカーボネート、およびアルギニンカーボネートを含む。あるいは、発泡剤組み合わせの酸成分のみが存在してもよい。
【0147】
非経口注射に好適な組成物は、生理的に許容される無菌の水性または非水性の溶液、分散剤、懸濁剤、またはエマルション、ならびに無菌の注射用溶液または分散剤に再構成するための無菌粉末を含みうる。好適な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒、または媒質の例は、水、エタノール、塩化ナトリウム、リンゲル液、乳酸加リンゲル液、安定化溶液、張度増強剤(ショ糖、デキストロース、マンニトールなど)、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレン-グリコール、グリセロールなど)、それらの好適な混合物、植物油(例えばオリーブ油)および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含む。好適な流体は、「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」17版、Mack Publishing Co.出版、1543頁に例示されている。
【0148】
D. 本発明の組成物の製造法
本発明の別の局面において、本発明のナノ粒子グルココルチコステロイド製剤の調製法が提供される。この方法は、以下の方法の一つを含む:摩砕または摩滅(湿式摩砕を含むが、これらに限定されるものではない)、ホモジナイゼーション、沈殿、凍結、テンプレートエマルション技術(template emulsion technique)、超臨界流体技術、ナノ-エレクトロスプレー技術、またはそれらの任意の組み合わせ。ナノ粒子組成物の製造法の例は、米国特許第5,145,684号に開示されている。ナノ粒子組成物の製造法は、米国特許第5,518,187号「医薬物質粉砕法(Method of Grinding Pharmaceutical Substances)」;米国特許第5,718,388号「医薬物質粉砕連続法(Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances)」;米国特許第5,862,999号「医薬物質粉砕法(Method of Grinding Pharmaceutical Substances)」;米国特許第5,665,331号「ナノ粒子医薬品の結晶成長修飾剤との同時微小沈殿(Co-Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents with Crystal Growth Modifiers)」;米国特許第5,662,883号「ナノ粒子医薬品の結晶成長修飾剤との同時微小沈殿(Co-Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents with Crystal Growth Modifiers)」;米国特許第5,560,932号「ナノ粒子医薬品の微小沈殿(Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents)」;米国特許第5,543,133号「ナノ粒子含有X腺造影剤の調製法(Process of Preparing X-Ray Contrast Compositions Containing Nanoparticles)」;米国特許第5,534,270号「安定した薬物ナノ粒子調製法(Method of Preparing Stable Drug Nanoparticles)」;米国特許第5,510,118号「ナノ粒子含有治療組成物調製法(Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles)」;および米国特許第5,470,583号「凝集低下のために帯電リン脂質を含有するナノ粒子組成物の調製法(Method of Preparing Nanoparticle Compositions Containing Charged Phospholipids to Reduce Aggregation)」に開示されており、これらの特許は全て本明細書において参照により組み入れられる。
【0149】
摩砕、ホモジナイゼーション、沈殿などの後、得られるナノ粒子グルココルチコステロイド組成物は、滅菌することができ、その後投与に適した剤形で利用される。
【0150】
好ましくは、サイズ低下プロセスにおいて使用される分散媒は、水性である。しかしその中にグルココルチコステロイドが溶けにくくかつ分散可能であるあらゆる媒体を、分散媒として使用することができる。非水性の分散媒の例は、水性塩溶液、ベニバナ油、ならびにエタノール、t-ブタノール、ヘキサンおよびグリコールなどの溶媒を含むが、これらに限定されるものではない。
【0151】
グルココルチコステロイドの粒径低下のために機械的力を提供する有効な方法は、ボールミル粉砕、媒体ミル粉砕、およびホモジナイゼーション、例えばMicrofluidizer(登録商標)(Microfluidics Corp.)によるものを含む。ボールミル粉砕は、摩砕媒体、薬物、安定剤および液体を使用する、低エネルギーの摩砕プロセスである。これらの材料は、媒体が連続的に流れ落ち(cascade)かつ衝撃(impaction)により薬物粒径を低下させるように最適速度で回転するミリング容器内に配置される。粒子縮小のためのエネルギーは、摩耗媒体の重力および質量により提供されるため、使用される媒体は高い密度を有さなければならない。
【0152】
1. 粒径低下のためのグルココルチコステロイドの摩砕
摩砕に関して、本発明の組成物の粒子は、本発明の組成物の粒径を所望の有効平均粒径へ低下させるために、粒子が溶けにくい液体分散媒中に分散され、かつ破砕媒体の存在下で機械的手段が適用される。これらの粒子は、1種類または複数の非イオン性表面安定剤の存在下でサイズを低下させることができる。あるいは、これらの粒子は、摩砕後、1種類または複数の非イオン性表面安定剤と接触させることができる。希釈剤のような他の化合物は、このサイズ低下プロセスの間に、この組成物へ添加することができる。分散剤は、連続してまたはバッチ様式で製造することができる。
【0153】
媒体による摩砕は、高エネルギー摩砕プロセスである。薬物、安定剤、および液体を、貯蔵容器に入れ、媒体および回転シャフト/インペラを備えているチャンバー内を再循環させた。回転シャフトは媒体を攪拌し、これは薬物に衝撃および剪断力を供し、これにより薬物粒径を低下させる。
【0154】
摩砕に関して、本発明の組成物は、プレミックスを形成するために、本質的に不溶性である液体媒体に添加することができる。液体媒体中の本発明の組成物の濃度は、約5〜約60%、約15〜約50%(w/v)、および約20〜約40%を変動してよい。非イオン性表面安定剤は、プレミックス中に存在するか、または粒径低下後、薬物の分散剤へ添加することができる。非イオン性表面安定剤の濃度は、約0.1〜約50重量%、約0.5〜約20重量%、および約1〜約10重量%を変動してよい。
【0155】
このプレミックスは、分散剤中の本発明の組成物の平均粒径を約2000nm未満に低下させるために、これを機械的手段に供することにより、直接使用することができる。ボールミルが摩砕に使用される場合に、プレミックスが直接使用されることが好ましい。あるいは、本発明の組成物および表面安定剤は、Cowles型ミキサーのような、好適な攪拌を用い、その中に裸眼で視認可能な大きい凝集塊が存在しない均質な分散剤が認められるまで、液体媒体中に分散させることができる。再循環媒体ミルが摩砕に使用される場合、プレミックスは、そのような予備摩砕分散段階に供されることが好ましい。
【0156】
本発明の組成物の粒径を低下させるために適用される機械的手段は、好都合なことに、分散ミルの形をとることができる。好適な分散ミルは、ボールミル、摩砕ミル、振動ミル、ならびにサンドミルおよびビーズミルなどの媒体ミルを含む。媒体ミルは、所望の粒径の低下を提供するために必要である摩砕時間が比較的短いために、好ましい。媒体ミル粉砕に関して、プレミックスのみかけ粘度は、好ましくは約100〜約1,000センチポアズであり、ボールミル粉砕に関して、プレミックスのみかけ粘度は、約1から最大約100センチポアズである。このような範囲は、有効粒径低下と媒体浸蝕の間に最適な平衡をもたらす傾向がある。
【0157】
摩砕時間は、非常に広範であり、特定の機械的手段および選択された処理条件によって主に決定される。ボールミルに関して、最大5日間またはそれよりも長い処理時間が必要であることがある。あるいは、1日よりも短い処理時間(1分から最大数時間の滞留時間)が、高剪断の媒体ミルの使用により可能である。
【0158】
2. 非水性非加圧式摩砕システム
非水性非加圧式摩砕システムにおいては、室温での蒸気圧約1atmまたはそれ未満を有し、かつその中に本発明の組成物が本質的に不溶性である非水性液体が、本発明のナノ粒子組成物を作製するための湿式ミル粉砕媒体として使用される。このようなプロセスにおいて、本発明の組成物で構成されるスラリーは、非水性媒体中で摩砕され、本発明のナノ粒子組成物を作製し、続いて湿熱滅菌される。好適な非水性媒体の例は、エタノール、トリクロロモノフルオロメタン(CFC-11)、およびジクロロテトラフルオロエタン(CFC-114)を含む。CFC-11を使用する利点は、これは室温よりごくわずかに低い温度で取り扱うことができる点であり、対して、CFC-114は、蒸発を避けるためにより制御された条件を必要とする。摩砕の完了時に、この組成物は滅菌されてよく、液体媒体は、真空または加熱下で除去されかつ回収され、本発明の組成物で構成された乾燥ナノ粒子組成物を生じうる。あるいは、液体媒体の除去後に、乾燥組成物を滅菌してもよい。次に乾燥組成物は、好適な容器に満たされ、最終の噴射剤と共に充填される。理想的には塩素化された炭化水素を含有しない、最終製品の噴射剤の例は、HFA-134a(テトラフルオロエタン)およびHFA-227(ヘプタフルオロプロパン)である。非塩素化噴射剤は、環境上の理由から好ましいが、塩素化噴射剤も、本発明のこの局面において使用することができる。
【0159】
非水性加圧式ミル粉砕システムにおいて、室温で1atmよりも著しく大きい蒸気圧を有する非水性液体媒体は、本発明のナノ粒子組成物で構成された組成物を作製するための、摩砕プロセスにおいて使用される。次にこの組成物は滅菌される。摩砕媒体が好適なハロゲン化された炭化水素噴射剤である場合、得られる分散剤は、好適なpMDI容器に直接満たされてよい。あるいは、摩砕媒体が、真空または加熱下で除去されかつ回収され、本発明のナノ粒子組成物で構成された乾燥組成物を生じる。この組成物はその後、滅菌され、適当な容器に満たされ、pMDIにおいて使用するのに適した噴射剤が充填される。
【0160】
3. 粉砕媒体
破砕媒体は、好ましくは本質的にポリマー系またはコポリマー系樹脂からなる、実質的に形が球状である粒子、例えばビーズを含みうる。あるいは、破砕媒体は、その上に接着したポリマー系またはコポリマー系樹脂のコーティングを有するコアを含みうる。
【0161】
一般に、好適なポリマー系またはコポリマー系樹脂は、化学的および物理的に不活性であり、実質的に金属、溶媒、およびモノマーを含まず、破砕時にそれらがチッピングまたは破砕されるのを避けるのに十分な硬度および摩損度(friability)のものである。好適なポリマー系またはコポリマー系樹脂は、架橋したポリスチレン、例えばジビニルベンゼンで架橋したポリスチレン;スチレンコポリマー;ポリカーボネート;ポリアセタール、例えばDelrin(商標)(E.I. du Pont de Nemours and Co.);塩化ビニルポリマーおよびコポリマー;ポリウレタン;ポリアミド;ポリ(テトラフルオロエチレン)、例えばTeflon(登録商標)(E.I. du Pont de Nemours and Co.)、および他のフルオロポリマー;高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;セルロースエーテルおよびエステル、例えば酢酸セルロース;ポリヒドロキシメタクリレート;ポリヒドロキシエチルアクリレート;ならびにシリコーン含有ポリマー、例えばポリシロキサンなどを含む。このポリマーは、生分解性でありうる。生分解性ポリマーまたはコポリマーの例は、ポリ(ラクチド)、ラクチドとグリコリドのポリ(グリコリド)コポリマー、ポリ無水物、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(N-アシルヒドロキシプロリン)エステル、ポリ(N-パルミトイルヒドロキシプロリン)エステル、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、およびポリ(ホスファゼン)を含む。生分解性ポリマーまたはコポリマーに関して、媒体それ自体からの夾雑物は有利には、インビボにおいて、体から排出されうる生物学的に許容される生成物に代謝されうる。
【0162】
破砕媒体のサイズは好ましくは、約0.01〜約3mmの範囲である。細かい破砕に関して、破砕媒体のサイズは好ましくは、約0.02〜約2mm、およびより好ましくは約0.03〜約1mmである。
【0163】
ポリマー系またはコポリマー系樹脂は、密度約0.8〜約3.0g/cm3を有しうる。
【0164】
好ましい破砕プロセスにおいて、粒子は連続して製造される。このような方法は、本発明の組成物を摩砕チャンバーへ連続して導入する段階、チャンバー内で本発明の組成物の粒径を低下させるために、本発明の組成物を破砕媒体と接触させる段階、および摩砕チャンバーから本発明ナノ粒子のナノ粒子組成物を連続して取り出す段階を含む。
【0165】
破砕媒体は、単純な濾過、メッシュフィルターもしくはスクリーンを通る篩分けなどによるような、二次的プロセスにおいて、従来の分離技術を用い、本発明ナノ粒子の摩砕されたナノ粒子組成物から分離される。遠心分離のような他の分離技術も使用することができる。
【0166】
4. 粒径低下のためのグルココルチコステロイドのホモジナイゼーション
ホモジナイゼーションは、摩砕媒体を使用しない技術である。薬物、非イオン性表面安定剤、および液体(または薬物および粒径低下後に添加された非イオン性表面安定剤を伴う液体)は、Microfluidizer(登録商標)においては相互作用チャンバー(Interaction Chamber)と称される加工処理ゾーンへと噴射されるプロセスストリームを構成する。処理される生成物は、ポンプへ誘導され、その後強制的に排出される。Microfluidizer(登録商標)の点火バルブは、空気をポンプの外へ一掃する。一旦ポンプが生成物で満たされたならば、点火バルブは閉鎖され、生成物は強制的に相互作用チャンバーへ送られる。相互作用チャンバーの形状は、粒径低下に寄与する剪断、衝撃、およびキャビテーションの強力な力を生じる。具体的には、相互作用チャンバーの内側で、加圧された生成物は、2つのストリームに分けられ、極めて高速に加速される。その後これらの形成されたジェットは、互いに向かい合い、相互作用ゾーン内で衝突する。得られる生成物は、非常に細かくかつ均一な粒子または小滴サイズであり、従ってこれは滅菌に適している。Microfluidizer(登録商標)は、生成物の冷却を可能にする熱交換器も備える。米国特許第5,510,118号は、ナノ粒子の粒子を生じるMicrofluidizer(登録商標)を使用するプロセスを開示し、これは具体的に本明細書において参照により組み入れられる。
【0167】
5. 本発明のナノ粒子組成物を得るための沈殿
所望のナノ粒子グルココルチコステロイド分散剤を形成する別法は、微小沈殿によるものである。これは、微量の毒性溶媒または可溶化された重金属不純物を含まず、1種類または複数の非イオン性表面安定剤および1種類または複数のコロイド状安定性を増強する表面活性物質の存在下で、本発明の組成物のナノ粒子の安定した分散剤を調製する方法である。このような方法は、例えば、(1)本発明の組成物を、好適な溶媒中に、混合により溶解する段階;(2)少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤を含有する溶液に、段階(1)由来の配合物を混合しながら添加し、透明な溶液を形成する段階;ならびに(3)好適な非溶媒を用いて混合することにより、段階(2)由来の配合物を沈殿させる段階を含む。この方法は、塩が存在する場合には、透析またはダイアフィルトレーションによる、形成された塩の除去、ならびに通常の手段による分散剤の濃縮を続けることができる。得られた本発明のナノ粒子分散剤のナノ粒子組成物は、滅菌することができ、その後例えば、液体ネブライザー中で使用するか、またはDPIもしくはpMDIにおいて使用するための乾燥粉末を形成するように処理することができる。
【0168】
6. ナノ粒子を作製する超臨界流体法
ナノ粒子組成物は、超臨界流体を利用する方法で作製することもできる。このような方法において、グルココルチコステロイドは、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤も含みうる溶液または媒質中に溶解される。この溶液および超臨界流体は次に、粒子形成槽(vessel)へ同時に導入される。非イオン性表面安定剤が予め媒質へ添加されていない場合、これは粒子形成槽へ添加されうる。媒質の分散および抽出が、超臨界流体の作用により実質的に同時に生じるように、その温度および圧力は制御される。超臨界流体として有用であることが説明されている化学物質は、二酸化炭素、亜酸化窒素、六フッ化硫黄、キセノン、エチレン、クロロトリフルオロメタン、エタン、およびトリフルオロメタンを含む。
【0169】
ナノ粒子を製造する公知の超臨界法の例は、1997年4月24日に公開されたPaceらの国際公開公報第97/144407号に開示されており、これは化合物を溶液中に溶解し、その後この溶液を、適当な表面安定剤の存在下で、圧縮ガス、液体、または超臨界流体中に噴霧することにより調製された、平均サイズ100nm〜300nmを有する、水に不溶性の生物学的に活性のある化合物の粒子に関する。この発明に関して利用される表面安定剤は、非イオン性表面安定剤である。
【0170】
同様に、Cooperらの米国特許第6,406,718号は、超臨界流体と、溶液または懸濁剤中に少なくともプロピオン酸フルチカゾンを含有する媒質とを、粒子形成槽に同時に導入することを含む、粒子プロピオン酸フルチカゾン製品を形成する方法を開示している。この粒子形成槽は、媒質の分散および抽出が超臨界流体の作用により実質的に同時に生じるように、その中の温度および圧力が制御される。超臨界流体として有用であることが説明された化学物質は、二酸化炭素、亜酸化窒素、六フッ化硫黄、キセノン、エチレン、クロロトリフルオロメタン、エタン、およびトリフルオロメタンを含む。超臨界流体は任意に、1種類または複数の変更因子(modifier)、例えばメタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、またはそれらの混合物を含んでよい。超臨界流体変更因子(または共溶媒)は、超臨界流体へ添加された場合に、臨界点でまたはその近傍で、超臨界流体に固有の特性を変更する化学物質である。Cooperらによると、超臨界流体を用いて製造されたプロピオン酸フルチカゾン粒子は、粒径範囲1〜10ミクロン、好ましくは1〜5ミクロンを有する。
【0171】
7. ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を得るための極低温法
所望のナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を形成する別法は、液体への噴霧凍結(「SFL」)によるものである。この技術は、液体窒素のような極低温液体へ射出される安定剤を伴う、グルココルチコステロイドの有機または有機水性(organoaqueous)溶液を含む。グルココルチコステロイド溶液の小滴は、結晶化および粒子成長を最小化するのに十分な速度で凍結し、その結果ナノ構造のグルココルチコステロイド粒子を形成する。選択した溶媒システムおよび加工処理条件に応じて、ナノ粒子グルココルチコステロイド粒子は、変動する粒子形態を有しうる。単離段階において、窒素および溶媒は、グルココルチコステロイド粒子の凝集または熟成(ripening)を避ける条件下で除去される。
【0172】
SFLへの相補的な技術として、超急速凍結(「URF」)も使用することができ、大きく増大した表面積を持つ、同等のナノ構造のグルココルチコステロイド粒子を作製することができる。URFは、極低温基板(substrate)上に安定剤と共にグルココルチコステロイドの有機または有機水性溶液を含む。
【0173】
8. ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を得るためのエマルション法
所望のナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を形成する別法は、テンプレートエマルションによるものである。テンプレートエマルションは、制御された粒径分布および急激溶解性能を伴う、ナノ構造のグルココルチコステロイド粒子を形成する。この方法は、調製され、その後グルココルチコステロイドおよび安定剤を含有する非水溶液により膨潤された、水中油型エマルションを含む。グルココルチコステロイド粒子の粒径分布は、グルココルチコステロイドを負荷する前の、エマルション小滴のサイズの直接の結果であり、グルココルチコステロイドの特性がこのプロセスにおいて制御されかつ最適化される。さらに溶媒および安定剤の選択された使用により、エマルション安定性は、オストワルド熟成を伴わないかまたはこれを抑制して実現される。続いて、溶媒および水は除去され、安定化したナノ構造のグルココルチコステロイド粒子が回収される。様々なグルココルチコステロイド粒子の形態は、加工処理条件を適宜制御することにより実現されうる。
【0174】
9. ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物を得るために使用されるナノ-エレクトルスプレー技術
エレクトロスプレーイオン化において、液体は、非常に小さく帯電された、通常金属製のキャピラリーを通して推し進められる。この液体は、通常検体よりもはるかに揮発性である大量の溶媒中に溶解された望ましい物質、例えばグルココルチコステロイド(または「検体」)を含有する。揮発性の酸、塩基、または緩衝液が、この溶液にさらに添加されることが多い。検体は、溶液中に、プロトン化された形または陰イオンとしてのいずれかで、イオンとして存在する。同様の電荷は反発するので、液体はそれ自体をキャピラリーの外側へ推し進め、直径約10μmの小型の小滴のミストまたはエアゾルを形成する。このエアゾル小滴のジェットは、テイラーコーン(Taylor cone)の形成およびこの円錐の先端からのジェットに関連しているプロセスにより、少なくとも部分的には作製される。窒素ガスのような中性のキャリヤガスは、液体の噴霧化を助け、かつ小さい小滴中の中性溶媒の蒸発を補助するために、時折使用される。小さい小滴は蒸発し、大気中に懸濁されるので、帯電した検体分子は、強制的に互いに密になる。同様に帯電した分子が互いに密になりかつ小滴は一旦再度破壊されるので、この液滴は不安定になる。このことは、それを駆動する帯電した検体分子間の反発的なクローン力であるので、クローン分裂(Coulombic fission)と称される。このプロセスは、検体が溶媒非含有となり、孤立イオンとなるまで、それ自体を繰り返す。
【0175】
ナノ技術において、エレクトロスプレー法は、例えばグルココルチコステロイド粒子の表面上の、単独の粒子の沈着を利用することができる。これは、コロイドの噴霧により実現され、平均して小滴1個あたり1個よりも多い粒子は存在しないことを確実にする。続く周囲の溶媒の乾燥は、所望の型の単独の粒子のエアゾルストリームを生じる。従ってこのプロセスのイオン化特性は、適用には重要ではないが、これらの粒子の静電気沈殿に使用することができる。
【0176】
10. 例証的グルココルチコステロイド組成物製造法
例証的方法において、グルココルチコステロイドおよび非イオン性表面安定剤を含有するナノ粒子組成物は、水により、約5〜20%(w/w)グルココルチコステロイドおよび約0.25%〜約2.0%(w/w)非イオン性表面安定剤に希釈される。いくつかの陰イオン性ホスファチドを含むレシチンホスファチドが、グルココルチコステロイド濃度の約1%未満〜約5%(w/w)未満を示す濃度で、この希釈したナノ粒子グルココルチコステロイド組成物に添加される。従って約0.05%〜約1%(w/w)のレシチンホスファチドは、グルココルチコステロイドナノ粒子を作製する。
【0177】
加熱滅菌プロセス時のグルココルチコステロイドの化学的保護に有用な追加の賦形剤または成分(例えば、EDTA、抗酸化剤、窒素)も、ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物に添加されてよい。
【0178】
その後このナノ粒子グルココルチコステロイド組成物は、可能性のある細菌、酵母、および糸状菌夾雑物に対する滅菌サイクルを実現するために、適当な期間、温度約116℃〜約130℃、最適には温度121℃で、蒸気加熱オートクレーブに供される。
【0179】
滅菌されたナノ粒子グルココルチコステロイド組成物は希釈され、さらに肺、鼻、眼、および耳系の炎症およびアレルギー状態の治療などの、炎症およびアレルギー状態の治療に適した、許容される無菌の薬学的組成物を実現するために、無菌条件下で配合される。追加の配合は、緩衝剤および等張化剤などの賦形剤を含んでもよい。
【0180】
最終の薬学的組成物の例は、濃度が約0.00125%〜約0.05%のグルココルチコステロイド、濃度が約0.000625%〜約0.005%の非イオン性表面安定剤、および濃度が約0.0000125%〜約0.0025%の両親媒性脂質からなりうる。蒸気加熱オートクレーブ後の最終の薬学的組成物は、有効平均粒径が約2000nm未満のグルココルチコステロイドナノ粒子を示し、グルココルチコステロイド化学物質分解産物は、総グルココルチコステロイドレベルの1%未満を占める。
【0181】
11. エアゾル製剤の製造法
エアゾル投与用の本発明のナノ粒子組成物は、例えば、(1)本発明のナノ粒子組成物の水性分散剤の噴霧化;(2)本発明のナノ粒子組成物の凝集体の乾燥粉末のエアゾル化(エアゾル化された組成物は希釈剤を追加的に含有してよい);または(3)非水性噴射剤中の本発明の組成物のナノ粒子凝集体の懸濁剤のエアゾル化により作製することができる。希釈剤を追加的に含有してよい本発明のナノ粒子組成物の凝集体は、加圧されないまたは加圧された非水性システムにおいて作製することができる。濃縮エアゾル製剤も、このような方法により作製されうる。
【0182】
a. 噴霧乾燥粉末のエアゾル製剤
噴霧乾燥は、液体媒体中の本発明のナノ粒子組成物で構成された組成物の粒径低下後に、ナノ粒子薬物粒子を含有する粉末を得るために使用されるプロセスである。一般に、噴霧乾燥は、液体媒体が室温で約1atm未満の蒸気圧を有する場合に使用される。噴霧乾燥機は、液体蒸発および粉末収集を可能にする装置である。溶液または懸濁剤のいずれかの液体試料は、スプレーノズルに供給される。ノズルは、直径が約20〜約100μm(「ミクロン」)の範囲内の試料の小滴を作製し、これは次にキャリヤガスにより乾燥チャンバーへ輸送される。キャリヤガス温度は、典型的には約80〜約200℃である。小滴は、急速液体蒸発に供され、後に乾燥粒子を残し、これはサイクロン装置の真下の特別な貯蔵容器内に収集される。
【0183】
この液体試料が、本発明の組成物のナノ粒子の水性分散剤からなる場合、収集された生成物は、本発明の組成物で構成されたナノ粒子の球形凝集体からなると考えられる。液体試料が、その中に不活性希釈物質を溶解した(乳糖またはマンニトールなど)ナノ粒子の水性分散剤で構成される場合、収集された生成物は、内蔵された本発明のナノ粒子組成物を含む希釈剤(例えば、乳糖またはマンニトール)粒子からなると考えられる。収集された生成物の最終サイズは、制御され、かつ液体試料中の本発明のナノ粒子組成物および/または希釈剤の濃度、さらには噴霧乾燥機ノズルにより作製された小滴サイズによって決まる。肺臓深部送達に関しては、収集された生成物のサイズが直径約2ミクロン未満であることが望ましく、誘導気道送達に関しては、収集された生成物のサイズが直径約2〜約6ミクロンであることが望ましく、ならびに鼻内送達に関しては、収集された生成物のサイズが直径約5〜約100μmであることが好ましい。眼内、耳内、または局所送達のための組成物は、グルココルチコステロイド粒径を変動させてもよい。収集された生成物はその後、肺または鼻内送達のために通常のDPIにおいて使用するか、pMDIにおいて使用するために噴射剤中に分散させるか、またはこれらの粒子は、ネブライザーにおいて使用するために水中で再構成させてもよい。
【0184】
場合によっては、最終製品の計量特性を改善するために、不活性担体を、噴霧乾燥物質へ添加することが望ましいことがある。これは特に、噴霧乾燥粉末が非常に小さい(約5ミクロン未満)場合、または意図された投与量が極めて小さく、これにより投与量計量が困難になる場合である。一般に、そのような担体粒子(増量剤としても公知)は、肺臓へ送達されるには余りにも大きく、かつ口および咽喉に単純に衝撃を与え(simply impact)、かつ嚥下される。そのような担体は典型的には、乳糖、マンニトール、またはトレハロースなどの糖類からなる。多糖およびセルロース誘導体を含むその他の不活性物質も、担体として有用でありうる。
【0185】
本発明のナノ粒子組成物を含有する噴霧乾燥粉末は、pMDIにおいて使用するために噴射剤中に分散され、通常のDPIにおいて使用するか、またはネブライザーで使用するために液体媒体中に再構成されうる。
【0186】
b. フリーズドライナノ粒子組成物
フリーズドライまたは凍結乾燥としても公知である昇華も、乾燥粉末のナノ粒子組成物を得るために使用することができる。昇華は、特に生物学的製品に関して、本発明の組成物の貯蔵安定性を増大することがある。フリーズドライ粒子も、再構成され、ネブライザーにおいて使用することができる。本発明の組成物のフリーズドライナノ粒子の凝集体は、鼻内送達または肺送達のいずれかのために、DPIおよびpMDIにおいて、乾燥粉末中間体と共に配合されても、または単独で使用されてもいずれであってもよい。
【0187】
昇華は、生成物の凍結および試料を強力な真空条件に供することが関係する。これは、形成された氷に関して、固体状態から気体状態へ直接変換される。このようなプロセスは、高度に有効であり、その結果噴霧乾燥よりもより大きい収率を提供する。得られるフリーズドライ生成物は、本発明の組成物を含む。本発明のこの組成物は、典型的には凝集された状態で存在し、DPIもしくはpMDIにおいて、吸入単独で(肺または鼻のいずれか)、希釈物質(乳糖、マンニトールなど)と一緒に使用してもよく、またはネブライザーにおいて使用するために再構成してもよい。
【0188】
E. ナノ粒子グルココルチコステロイド組成物の使用法
本発明は、グルココルチコステロイドの無菌剤形の投与を必要とする、ヒトを含む哺乳類の治療法を提供する。この方法は、本発明の無菌組成物の有効量を対象へ投与することを含む。
【0189】
本発明の無菌組成物は、吸入、経口、直腸内、眼内、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下)、耳内、槽内、肺内、膣内、腹腔内、局部(例えば粉末、軟膏、または点眼剤)、または口腔もしくは鼻内用のスプレーを含むが、これらに限定されない任意の通常の手段により、対象へ投与することができる。本明細書において使用される用語「対象」は、動物、好ましくはヒトまたは非ヒトを含む哺乳類を意味するように使用される。用語患者および対象は、互換的に使用することができる。
【0190】
水性および乾燥粉末の両方の本発明の無菌組成物は、呼吸関連疾患、例えば喘息、気腫、呼吸窮迫症候群、慢性気管支炎、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、後天性免疫不全症候群に関連した呼吸器疾患、ならびに真皮(皮膚)、眼および耳の炎症およびアレルギー状態の治療に特に有用である。この製剤および方法は、本発明の組成物を投与することにより、適用部位(例えば、口、肺臓、鼻、眼、耳など)の被覆表面積の改善をもたらす。
【0191】
グルココルチコステロイドの吸入による投与は、経口投与と比べ、全身の副作用のリスクを低下させる。副作用のリスク低下は、投与様式から生じる。その理由はグルココルチコステロイドは、局所で高度の活性があり、全身的には弱い活性のみを有し、これにより下垂体-副腎皮質系、皮膚および眼に対する作用が最小化されるためである。吸入療法に関連した副作用は、主に口腔咽頭カンジダ症および発声障害(喉頭筋の萎縮に起因した)である。経口グルココルチコステロイドは、薄い皮膚、線条、および斑状出血を伴う真皮の萎縮を引き起こすが、吸入されたグルココルチコステロイドは、気道に同様の変化を引き起こさない。
【0192】
吸入の経口投与に勝るその他の利点は、気道へのステロイドの直接沈着を含み、一般により予測可能な投与を提供する。適切な制御に必要な経口投与量は、実質的に変動するが、吸入されたグルココルチコステロイドは通常より狭い範囲で有効である。しかし吸入されたグルココルチコステロイドの利用能に影響する多くの要因が存在する:気道炎症の程度;肺代謝の程度;消化管において嚥下されかつ代謝される薬物の量;医薬品の放出および吸気を協調させる患者の能力;グルココルチコステロイドの種類;および送達システム。
【0193】
非経口注射に適した組成物は、生理学的に許容される無菌の水性または非水性の溶液、分散剤、懸濁剤、またはエマルション、および無菌注射用溶液もしくは分散剤への再構成のための無菌粉末を含んでよい。水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒、または媒質の例は、水、エタノール、塩化ナトリウム、リンゲル液、乳酸加リンゲル液、安定剤溶液、張度増強剤(ショ糖、デキストロース、マンニトールなど)、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレン-グリコール、グリセロールなど)、それらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。
【0194】
ナノ粒子活性物質の組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤も含みうる。微生物の増殖の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの、様々な抗菌薬および抗真菌薬により確実にすることができる。糖類、塩化ナトリウムなどの等張化剤を含むことも望ましい。注射用薬学的形状の持続吸収は、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンなどの、吸収遅延剤の使用によりもたらすことができる。
【0195】
経口投与用の固形剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒剤を含むが、これらに限定されるものではない。このような固形剤形において、活性物質は、以下の少なくとも1種類と混合される:(a)1種類または複数の不活性賦形剤(または担体)、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム;(b)充填剤または増量剤、例えばデンプン、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトール、およびケイ酸;(c)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、およびアカシアゴム;(d)保湿剤、例えばグリセロール;(e)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合シリカ、および炭酸ナトリウム;(f)溶液遅滞剤、例えばパラフィン;(g)吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;(h)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート;(i)吸着媒、例えばカオリンおよびベントナイト;ならびに(j)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物。カプセル剤、錠剤、および丸剤に関して、これらの剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0196】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含む。活性物質に加え、液体剤形は、水または他の溶媒などの、当技術分野において常用される不活性希釈剤、可溶化剤、および乳化剤を含んでもよい。乳化剤の例は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類、例えば綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油など、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物などを含む。
【0197】
この組成物は、そのような不活性希釈剤に加え、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、矯味矯臭剤、および香料などの補助剤も含みうる。
【0198】
当業者は、活性物質の有効量を経験的に決定することができ、かつ純粋な形で、または薬学的に許容される塩、エステル、もしくはプロドラッグの形が存在する場合は、そのような形で使用することができることを理解すると考えられる。本発明のナノ粒子組成物中の活性物質の実際の用量レベルは、特定の組成物および投与法に関して所望の治療的反応を得るために有効である活性物質の量を得るために変動してよい。従って選択される用量レベルは、所望の治療的作用、投与経路、投与される活性物質の効能、所望の治療期間、および他の要因により左右される。
【0199】
投与単位組成物は、一日量を作製するために使用することができるようなそれらの約数の量を含みうる。しかし特定の患者のための特定の投与量レベルは、実現される細胞反応または生理学的反応の種類および程度;使用される特定の作用物質または組成物の活性;使用される特定の作用物質または組成物;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、および食事;作用物質の投与時間、投与経路、および排泄率;治療期間;特定の作用物質と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;ならびに医学分野において周知のそのような要因などの、様々な要因により左右されることは理解されると考えられる。
【0200】
前述の一般的な説明および詳細な説明は両方共、例証および説明のためであり、以下の実施例は、特許請求する本発明の更なる説明を提供することを意図している。その他の目的、利点、および新規特徴は、本発明のグルココルチコステロイド製剤をいかにして調製および使用するかをより具体的に説明するために提供される以下の実施例から、当業者には容易に明らかになると考えられる。しかし、これらは例証のみを目的とし、特許請求の範囲に引用される本発明の精神および範囲の限定とみなされることを意図するものではないことは留意されなければならない。
【0201】
実施例1
本実施例の目的は、両親媒性脂質レシチンの存在および不在の両方における、非イオン性表面安定剤としてポリソルベート80を有するブデソニドのナノ粒子分散剤の粒径を評価することである。
【0202】
ブデソニドは、下記式を有する。

【0203】
ブデソニドは、化学的にブトラアルデヒドを伴う、(RS)-11,16,17,21-テトラヒドロキシ-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン環状16,17-アセタールと指定される。ブデソニドは、2つのエピマー(22Rおよび22S)の混合物として提供される。ブデソニドの実験式はC25H34O6であり、その分子量は430.5である。
【0204】
ブデソニドは、性質上水およびヘプタンに溶けず、エタノール中にやや溶けにくく、クロロホルムに溶けやすい、白色から帯黄白色の無臭の粉末である。
【0205】
30%(w/w)ブデソニドおよび1.5%(w/w)ポリソルベート-80を含有する水性コロイド状分散剤(NCD)を、ポリソルベート-80 10gを、注射用滅菌水(Abbott Labs)456.7gおよびブデソニド(Farmabios)200gに添加することにより、調製した。その後このスラリーを、PolyMill(商標)-500(Dow Inc.)ポリマー性摩砕媒体593gと一緒にし、NanoMill(登録商標)-1摩砕システムの1215mLチャンバーに充填した。スラリーを、1000rpmで45分間摩砕した。摩砕の完了時に、得られた摩砕されたブデソニド/ポリソルベート-80分散剤を、ステンレス鋼製スクリーンを通して収集した。Horiba LA-910粒径分析装置(Irvine, CA)を使用するブデソニド/ポリソルベート-80分散剤の粒径分析は、平均粒径205nm、D50 192nmおよびD90 291nmを示した。次にブデソニド30%、ポリソルベート-80分散剤1.5%の一部を、さらに注射用滅菌水に希釈し、各々、ポリソルベート-80 1%(w/w)、0.5%(w/w)、および0.25%(w/w)を含有する、ブデソニド20%(w/w)、10%(w/w)、および5%(w/w)を作製した。
【0206】
表Iに関して、30%ブデソニド、1.5%ポリソルベート-80分散剤の別の部分を、さらに配合し、以下の調製のために希釈した:
(#1) 20%(w/w)ブデソニド、0.33%(w/w)レシチンNF(リポイド)、1%(w/w)ポリソルベート-80、
(#2) 10%(w/w)ブデソニド、0.05%(w/w)レシチンNF、0.5%(w/w)ポリソルベート-80、または
(#3) 5%(w/w)ブデソニド、0.25%(w/w)レシチンNF、0.25%(w/w)ポリソルベート80。
【0207】
レシチンNFは、大豆に由来し、多くの成分、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、および他の脂質成分で構成される。得られたブデソニド分散剤は全て、ガラスバイアル内に入れ、アルミニウムクリンプキャップを付けた(crimped)ゴム栓で密封し、次にFedagariオートクレーブにおいて、アルミニウムクリンプキャップを付けて116℃で48.5分間蒸気加熱した。
【0208】
オートクレーブ加熱処理後に、試料を、Horiba LA-910粒径分析装置において、ブデソニド粒径について試験し、結果を表Iに示した。
【0209】
(表I)オートクレーブ加熱処理後のブデソニド分散剤の粒径:ポリソルベート-80単独またはポリソルベート-80とレシチン-NFの作用

【0210】
これらの結果は、両親媒性脂質の存在は、オートクレーブ熱処理後に認められるブデソニドの粒径成長を低下させることを明らかにしている。両親媒性脂質を含有するブデソニド製剤の平均粒径は、両親媒性脂質を欠いているブデソニド製剤の平均粒径の約半分以下であった。さらになおより劇的な結果が、D90粒径の測定において認められ、両親媒性脂質の存在は、熱処理後大きいブデソニド結晶の成長を効果的に排除したことを明らかにしている。
【0211】
実施例2
本実施例の目的は、オートクレーブ熱処理後の、様々な量の非イオン性表面安定剤および両親媒性脂質の、ナノ粒子ブデソニド分散剤の粒径への作用を決定することであった。
【0212】
実施例1に説明した30%ブデソニド、1.5%ポリソルベート-80の摩砕された分散剤の別の部分を、さらに希釈し、変動するレベルの注射用滅菌水(SWFI)、レシチンNF、およびポリソルベート-80の添加により配合し、オートクレーブ熱処理後の、ポリソルベート-80およびレシチンNFの異なる割合の、ブデソニド粒径に対する作用を試験した。様々なオートクレーブ曝露温度の作用も、表IIに例示した(「API」は活性のある薬学的構成成分、またはブデソニドである)。表II全ての百分率は、重量%である。
【0213】
(表II)オートクレーブ熱処理後のブデソニド分散剤の粒径:様々な割合のポリソルベート-80およびレシチンNFの作用

【0214】
このデータは、より高い割合のポリソルベート-80は、より低い割合のポリソルベート-80と比べ、オートクレーブ熱処理時の粒径成長がより大きくなることを示している。より高い割合のレシチンNFは、より小さいオートクレーブ後粒径の作製に恩恵があることが示されている。
【0215】
実施例3
本実施例の目的は、ホスファチドの種類の、オートクレーブ熱処理後のブデソニド粒径に対する作用を決定することであった。
【0216】
ブデソニド30%(w/w)およびポリソルベート-80 1.5%(w/w)の水性分散剤を、ポリソルベート-80 12gを注射用滅菌水(Abbott Labs)548gおよびブデソニド(Farmabios)240gに添加することにより調製した。その後このスラリーを、PolyMill(商標)-500(Dow Inc)ポリマー性摩砕媒体474.3gと一緒にし、NanoMill(登録商標)-1摩砕システムの1215mLチャンバーに充填した。スラリーを、1200rpmで95分間摩砕した。摩砕の完了時に、得られたナノ粒子ブデソニド/ポリソルベート80分散剤を、ステンレス鋼製スクリーンを通して収集した。Horiba LA-910粒径分析装置(Irvine, CA)を使用するブデソニド/ポリソルベート-80分散剤の粒径分析は、平均粒径197nm、D50 185nm、およびD90 277nmを示した。
【0217】
次に得られたブデソニド/ポリソルベート-80分散剤を、注射用滅菌水で希釈し、さらにEDTA二ナトリウムおよび多種多様なホスファチドの1つと配合した。次に、試料10gを、20ccのガラスバイアルへ投入し、アルミニウムクリンプキャップを付けたゴム栓で密封し、Fedagariオートクレーブで121℃で15分間蒸気加熱した。製剤作業中で試験した様々なホスファチドは、レシチンNF、および部分的に精製されたレシチン(リポイドS45)、部分的に精製され水素添加レシチン(リポイドS75-3)、精製されたレシチン(リポイドS100-3)を含むLipoid社から購入した例、ジステアリルホスファチジルエタノールアミン(PE 18:0/18:0)、ジステアリルホスファチジルグリセロール(PG 18:0/18:0)およびジパルミチルホスファチジン酸(PA 16:0/16:0)を表した。
【0218】
蒸気加熱オートクレーブサイクルの後、粒径決定を、Horiba LA-910を用いて行い、結果を表IIIに示した。
【0219】
(表III)オートクレーブ熱処理後のブデソニド分散剤の粒径:様々なホスファチドの種類の作用

【0220】
これらの結果は、ホスファチドの不純な混合物(すなわち、レシチンNF、リポイドS45、またはリポイドS75-3)およびこれらの水溶液中で負帯電したホスファチド(すなわち、リポイドPG 18:0/18:0およびリポイドPA 16:0/16:0)のみが、オートクレーブサイクル時の高温への曝露後の、小さい粒径の維持および粒径成長の防止に有効であることを指摘している。対照的に、水溶液中で負帯電していないホスファチド、例えばホスファチジルコリン(リポイドS100-3)またはリポイドPE 16:0/16:0などとポリソルベート-80との組み合わせは、オートクレーブ熱処理への曝露後の顕著な粒径成長につながっていた。
【0221】
実施例4
本実施例の目的は、ナノ粒子ブデソニド分散剤のブデソニドの熱が誘導した分解に対する抵抗を決定すること、およびEDTAがそのような分解に対する追加の保護を提供することができるかどうかを決定することであった。
【0222】
オートクレーブ熱処理後のブデソニド分散剤の化学的安定性を調べるために、実施例3に説明されたNCDを、EDTAを伴うまたは伴わずに、レシチンNFとさらに配合した。試料50gを、121℃で、15、25、および35分間、オートクレーブにかけ、得られる粒径および全部のブデソニド関連分解産物のレベルの両方を決定した。表IVは、オートクレーブ熱処理の3つの期間について、HPLCにより試験したブデソニド分解産物の合計レベルをまとめている。
【0223】
(表IV)熱が誘導した化学分解に対するブデソニド分散剤の抵抗:EDTAの存在の追加的保護

【0224】
これらの結果は、EDTAを伴うまたは伴わない各製剤のブデソニド化学分解に対する抵抗を示している。しかしEDTAの存在は、全ブデソニド分解産物のレベル低下が認められた点で、わずかな利点を提供している。滅菌しない対照は、全分解産物レベル0.12%を有した。
【0225】
実施例5
この実施例の目的は、グルココルチコステロイド分散剤の、吸入製品として治療用途のために適した濃度レベルへの希釈および更なる配合は、グルココルチコステロイドの粒径に作用を及ぼすかどうかを決定することであった。
【0226】
30%(w/w)ブデソニドおよび1.5%(w/w)ポリソルベート-80を含有する水性ナノ粒子ブデソニド分散剤(NCD)は、ポリソルベート-80 12gを、注射用滅菌水(Abbott Labs)548gおよびブデソニド(Farmabios)240gへ添加することにより調製した。その後このスラリーを、PolyMill(商標)-500(Dow Inc)ポリマー性摩砕媒体474.3gと一緒にし、NanoMill(登録商標)-1摩砕システムの1215mLチャンバーに充填した。スラリーを、1200rpmで95分間摩砕した。摩砕の完了時に、得られたNCDを、ステンレス鋼製スクリーンを通して収集した。Horiba LA-910粒径分析装置(Irvine, CA)を使用するブデソニド/ポリソルベート-80分散剤の粒径分析は、平均粒径197nm、D50 185nm、およびD90 277nmを示した。
【0227】
次に得られたNCDを、注射用滅菌水、レシチンNF、およびEDTA二ナトリウムで希釈し、10%(w/w)ブデソニド、0.5%(w/w)ポリソルベート-80、0.5%(w/w)レシチンNF、および0.002%(w/w)EDTAを含有する製剤を調製した。この製剤の10gアリコートを、20ccのガラスバイアルに投入し、アルミニウムクリンプキャップを付けたゴム栓で密封し、Fedagariオートクレーブで、121℃で15分間蒸気加熱した。オートクレーブ熱処理後、10%(w/w)ブデソニド分散剤の各々を、水、クエン酸、クエン酸ナトリウム、および追加のポリソルベート-80およびEDTA二ナトリウムで希釈し、0.1%ブデソニドまたは0.0125%ブデソニドのいずれか、ならびに可変レベルのポリソルベート-80およびレシチンNFを含有する分散剤を作製した。
【0228】
希釈しかつ配合された試料を、室温で7日間貯蔵し、その後Horiba LA-910粒径分析装置を用い、粒径を測定した。結果を、下記表Vに示す。
【0229】
(表V)吸入製品としての治療的使用レベルへのブデソニドNCDの希釈および配合:小さい分散剤粒径の維持

【0230】
これらの結果は、ナノ粒子ブデソニド分散剤は、分散剤の粒径の顕著な変化を伴わずに、治療用吸入製品として使用するために予想されるレベルに希釈および配合することができることを示している。
【0231】
実施例6
この実施例の目的は、オートクレーブ熱処理後のナノ粒子ブデソニド分散剤の無菌性を評価することであった。
【0232】
FedagariモデルFOB2-3またはGetinge GEV-6613のいずれかにおいて、121℃で可変時間オートクレーブ熱処理サイクルに曝露された選択されたNCD調製物を、6454 USP/EP Sterility by Direct Transfer with Transferを使用し、無菌性について評価した。無菌性試験の結果を、表VIにまとめ、これは最新の米国薬局方(USP)<71>無菌性試験および最新欧州薬局方(EP)w.6.1無菌性に概説された必要要件と合致した。インキュベーション期間の完了時に、微生物増殖の証拠はなかった。NCDオートクレーブ製剤の組成は以下であった:
(1) R&D製剤#1:5%(w/w)ブデソニド、0.25%(w/w)ポリソルベート-80、0.25%(w/w)リポイドS75-3、0.001%(w/w)EDTA、94.5%(w/w)水
(2) R&D製剤#3:10%(w/w)ブデソニド、0.5%(w/w)ポリソルベート-80、0.5%(w/w)リポイドS75-3、0.001%(w/w)EDTA、89%(w/w)水
(3) R&D製剤#4:5%(w/w)ブデソニド、0.25%(w/w)ポリソルベート-80、0.25%(w/w)リポイドS75-3、0.001%EDTA、94.5%(w/w)水
(4) GMP製剤#5:5%(w/w)ブデソニド、0.25%(w/w)ポリソルベート-80、0.25%(w/w)リポイドS75-3、0.001%(w/w)EDTA、94.5%(w/w)注射用滅菌水。
【0233】
(表VI)オートクレーブ熱処理後のブデソニド分散剤の無菌性

【0234】
実施例7
この実施例の目的は、両親媒性脂質リポイド45またはリポイドS75-3の存在および不在下の両方での、非イオン性表面安定剤としてポリソルベート-80を有するジプロピオン酸ベクロメタゾンナノ粒子分散剤の粒径を評価することであった。
【0235】
ジプロピオン酸ベクロメタゾンは、下記構造式を有する。

これは、分子量521.25の白色粉末であり、水にごくわずか溶ける。
【0236】
10%(w/w)ジプロピオン酸ベクロメタゾンおよび0.5%(w/w)ポリソルベート-80を含有する水性ナノ粒子ブデソニド分散剤(NCD)は、PolyMill(商標)-500(Dow Inc)ポリマー性摩砕媒体を利用するDynoMill(登録商標)Systemにおいて40分間摩砕することにより、摩砕し調製した。Horiba LA-910粒径分析装置(Irvine, CA)を使用するジプロピオン酸ベクロメタゾン/ポリソルベート-80分散剤の粒径分析は、凝集を示し、平均粒径は30503nmであった。ポリソルベート-80の添加は、この製剤にスパイク(spike)を与え、10%(w/w)ジプロピオン酸ベクロメタゾンおよび1.0%ポリソルベート-80(w/w)を生じた。その後摩砕を、5分間再開し、粒径を再度分析し、平均粒径272nm、D50 254nmおよびD90 386nmを示した。
【0237】
次に得られたナノ粒子ジプロピオン酸ベクロメタゾン/ポリソルベート-80分散剤を希釈し、3つの個別の製剤、すなわち以下を調製した:
(1) 5%(w/w)ジプロピオン酸ベクロメタゾン、0.5%(w/w)ポリソルベート-80、および0.5%(w/w)リポイドS45;
(2) 5%(w/w)ジプロピオン酸ベクロメタゾン、0.5%(w/w)ポリソルベート-80、および0.25%(w/w)リポイドS75-3;ならびに
(3) 5%(w/w)ジプロピオン酸ベクロメタゾン、0.5%(w/w)ポリソルベート-80、および0.5%(w/w)リポイドS75-3。
【0238】
得られたNCD試料は全て、ガラスバイアルに投入し、ゴム栓およびアルミニウムクリンプキャップで密封し、その後Fedagariオートクレーブで121.1℃で10分間オートクレーブ熱処理した。オートクレーブ熱処理後、試料を、Horiba LA-910粒径分析装置を使用し、粒径について試験し、結果を表VIIに示した。
【0239】
(表VII)オートクレーブ熱処理後のジプロピオン酸ベクロメタゾン分散剤の粒径:ポリソルベート-80単独およびポリソルベート-80+リポイドS75-3の作用

【0240】
実施例8
この実施例の目的は、非イオン性表面安定剤チロキサポール単独の、チロキサポールと両親媒性脂質との組み合わせと比較した、オートクレーブ熱処理後の、ジプロピオン酸ベクロメタゾンの粒径への作用を決定することであった。
【0241】
10%(w/w)ジプロピオン酸ベクロメタゾンおよび1.0%(w/w)チロキサポールを有するジプロピオン酸ベクロメタゾンの水性ナノ粒子分散剤(NCD)は、PolyMill(商標)-500(Dow Inc)ポリマー性摩砕媒体を利用するDynoMill(登録商標)Systemにおいて30分間摩砕することにより、摩砕し調製した。Horiba LA-910粒径分析装置(Irvine, CA)を使用するジプロピオン酸ベクロメタゾン/チロキサポール分散剤の粒径分析は、平均粒径146nmを示し、D50 141nmおよびD90 201nmであった。
【0242】
次に得られたNCDを希釈し、4種の個別の製剤、すなわち以下を調製した:
(1)5%(w/w)ジプロピオン酸ベクロメタゾン、0.5%(w/w)チロキサポール;
(2)5%(w/w)ジプロピオン酸ベクロメタゾン、0.5%(w/w)チロキサポール、および0.5%(w/w)レシチンNF;
(3)5%(w/w)ジプロピオン酸ベクロメタゾン、0.5%(w/w)チロキサポール、および0.25%(w/w)レシチンNF;ならびに
(4)5%(w/w)ジプロピオン酸ベクロメタゾン、0.5%(w/w)チロキサポール、および0.25%(w/w)リポイドS75-3。
【0243】
全ての試料を、クリンプキャップを付けたゴム栓したバイアル内に投入し、121.1℃で10分間蒸気滅菌した。滅菌後の粒径を、下記表VIIIに示した。
【0244】
(表VIII)オートクレーブ熱処理後のジプロピオン酸ベクロメタゾン分散剤の粒径:チロキサポール単独またはチロキサポール+ホスファチドの作用

【0245】
実施例9
この実施例の目的は、両親媒性脂質と組み合わせた非イオン性表面安定剤の、オートクレーブ熱処理後の、グルココルチコステロイドプロピオン酸フルチカゾンの粒径への作用を決定することであった。
【0246】
プロピオン酸フルチカゾンは、化学名S-(フルオロメチル)6a,9-ジフルオロ-111b,17-ジヒドロキシ-16a-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17b-カルボチオエート,17-プロピオネート、および下記化学構造を有する。

プロピオン酸フルチカゾンは、分子量500.6、および実験式C25H31F3O5Sを有する、白色から帯黄白色粉末である。これは性質上水に溶けない。
【0247】
10%(w/w)プロピオン酸フルチカゾンおよび0.5%(w/w)ポリソルベート-80(w/w)を有するプロピオン酸フルチカゾンの水性ナノ粒子分散剤(NCD)は、25分間、PolyMill(商標)-500(Dow Inc)ポリマー性摩砕媒体を利用するDynoMill(登録商標)Systemにおいて摩砕することにより調製した。Horiba LA-910粒径分析装置(Irvine, CA)を使用する、プロピオン酸フルチカゾン/ポリソルベート-80分散剤の粒径分析は、凝集を示し、平均粒径23145nmであった。
【0248】
追加のポリソルベート-80を、この製剤にスパイクし、10%(w/w)プロピオン酸フルチカゾンおよび1.0%ポリソルベート-80(w/w)を生じた。摩砕を、5分間継続し、その後再度分析し、これは大きい粒径(D平均20675nm)の分散を継続した。
【0249】
レシチンNFを、この製剤にスパイクし、10%(w/w)プロピオン酸フルチカゾン、1.0%(w/w)ポリソルベート-80、および0.5%(w/w)レシチンNFを生じた。摩砕を10分間継続した。最終の平均粒径は171nmであり、D50 164nmおよびD90 232nmであった。
【0250】
次に得られたNCDを、5%(w/w)プロピオン酸フルチカゾン、0.5%(w/w)ポリソルベート-80、および0.5%(w/w)レシチンNFに希釈した。両方の試料を、アルミニウムクリンプキャップを付けたゴム栓したバイアルに投入し、Fedagariオートクレーブで121.1℃で10分間蒸気加熱した。滅菌後の粒径を、下記表IXに示した。
【0251】
(表IX)オートクレーブ熱処理後のプロピオン酸フルチカゾン分散剤の粒径:ポリソルベート-80とレシチンNFの作用

【0252】
実施例10
この実施例の目的は、非イオン性表面安定剤ルトロールF127 NFの、ルトロールF127 NFと両親媒性脂質レシチンNFまたはリポイドS75-3との組み合わせと比較した、オートクレーブ熱処理後のブデソニド粒径への作用を決定することであった。
【0253】
10%(w/w)ブデソニドおよび1.0%(w/w)ルトロールF127 NFを有するブデソニドの水性ナノ粒子分散剤(NCD)は、40分間、PolyMill(商標)-500(Dow Inc)ポリマー性摩砕媒体を利用するDynoMill(登録商標)Systemにおいて摩砕することにより調製した。Horiba LA-910粒径分析装置(Irvine, CA)を使用する、ブデソニド/ルトロールF127 NF分散剤の粒径分析は、平均粒径221nm、D50 202nmおよびD90 324nmを示した。次に得られたNCDを希釈し、3つの個別の製剤、すなわち以下を調製した:
(1) 5%(w/w)ブデソニド、0.5%(w/w)ルトロールF127 NF、および0.5%(w/w)レシチンNF;
(2) 5%(w/w)ブデソニド、0.5%(w/w)ルトロールF127 NF、0.25%(w/w)レシチンNF;ならびに
(3) 5%(w/w)ブデソニド、0.5%(w/w)ルトロールF127 NF、0.25%(w/w)リポイドS75-3。
【0254】
全ての試料を、アルミニウムクリンプキャップを付けたゴム栓したバイアルに投入し、Fedagariオートクレーブで121.1℃で10分間蒸気加熱した。滅菌後の粒径を、下記表Xに示した。
【0255】
(表X)オートクレーブ熱処理後のブデソニド分散剤の粒径:ルトロールF127 NFおよびルトロールF127 NF+レシチンNFの作用

【0256】
これらの結果は、オートクレーブ熱処理時の両親媒性脂質の存在は、ブデソニド分散剤の粒径を有意に低下させることを示している。
【0257】
実施例11
この実施例の目的は、チロキサポールの、チロキサポールとレシチンNFの組み合わせと比較した、オートクレーブ熱処理後のブデソニド粒径への作用を決定することであった。
【0258】
10%(w/w)ブデソニドおよび1.0%(w/w)チロキサポールを有するブデソニドの水性ナノ粒子分散剤(NCD)は、30分間、PolyMill(商標)-500(Dow Inc)ポリマー性摩砕媒体を利用するDynoMill(登録商標)Systemにおいて摩砕することにより調製した。Horiba LA-910粒径分析装置(Irvine, CA)を使用する、ブデソニド/チロキサポール分散剤の粒径分析は、平均粒径159nm、D50 152nmおよびD90 221nmを示した。次に得られたNCDを希釈し、4種の個別の製剤、すなわち以下を調製した:
(1) 5%(w/w)ブデソニドおよび0.5%(w/w)チロキサポール;
(2) 5%(w/w)ブデソニド、0.5%(w/w)チロキサポール、および1.0%(w/w)レシチンNF;
(3) 5%(w/w)ブデソニド、0.5%(w/w)チロキサポール、および0.5%(w/w)レシチンNF;ならびに
(4) 5%(w/w)ブデソニド、0.5%(w/w)チロキサポール、および0.25%(w/w)レシチンNF。
【0259】
全ての試料を、アルミニウムクリンプキャップを付けたゴム栓したバイアルに投入し、Fedagariオートクレーブで121.1℃で10分間蒸気加熱した。オートクレーブをかけた後の粒径を、下記表XIに示した。
【0260】
(表XI)オートクレーブ熱処理後のブデソニド分散剤の粒径:チロキサポールおよびチロキサポール+レシチンNFの作用

【0261】
これらの結果は、非イオン性表面安定剤と組み合わせた両親媒性脂質の存在が、加熱滅菌されたグルココルチコステロイドの粒径を劇的に低下させることを示している。
【0262】
本発明の精神または範囲から逸脱しない限り、本発明の方法および組成物に様々な修飾および変更を行うことができることは当業者には明らかになると考えられる。従って、本発明の修飾および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内であるならば、本発明は修飾および変更を網羅すると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約2000nm未満の有効平均粒径を有する、少なくとも1種類のグルココルチコステロイドの粒子;
(b)少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤;および
(c)少なくとも1種類の両親媒性脂質
を含む、無菌組成物。
【請求項2】
湿熱滅菌により滅菌される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
滅菌温度が約110℃〜約135℃である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
グルココルチコステロイドが、ブデソニド、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、モメタゾン、モメタゾンフロエート、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾンジプロピオネート、デキサメタゾン、トリアミンシノロン(triamincinolone)、ベクロメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルニソリド半水和物、モメタゾンフロエート一水和物、クロベタゾール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
非イオン性表面安定剤が、ソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポロキサマー、ポリソルベート、スパン、ソルビタンオレイン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノラウレート、ポリエチレンオキシド鎖を含む界面活性剤、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポロキサマー407、Pluronic(登録商標)F68、Pluronic(登録商標)F108、Pluronic(登録商標)F127、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのランダムコポリマー、デキストラン、コレステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、マクロゴールエーテル、セトマクロゴール1000、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコール、Carbowax 3550(登録商標)、Carbowax 934(登録商標)、ポリオキシエチレンステアレート、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルアルコール、チロキサポール、ポロキサマー、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、C18H37CH2C(O)N(CH3)-CH2(CHOH)4(CH2OH)2;デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイル(noyl)β-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンE、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
非イオン性表面安定剤が、ポロキサマー407、ポリソルベート80、ポリソルベート60、チロキサポール、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーからなる群より選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
非イオン性表面安定剤が、Pluronic(登録商標)F68、Pluronic(登録商標)F108、およびPluronic(登録商標)F127からなる群より選択される、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
両親媒性脂質が、少なくとも1種類の負帯電したリン脂質を含むリン脂質である、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
リン脂質が、陰イオン性ホスファチド、レシチンNF、合成レシチンNF、合成リン脂質、部分的に精製された水素添加レシチン、水素添加レシチン、部分的に精製されたレシチン、陰イオン性ホスファチドを含む大豆レシチンホスファチド、陰イオン性ホスファチドを含む卵レシチンホスファチド、陰イオン性ホスファチドを含む水素添加大豆レシチン、陰イオン性ホスファチドを含む水素添加卵レシチン、陰イオン性ホスファチドを含むレシチン、合成ホスファチジルグリセロール、合成ホスファチジン酸、合成ホスファチジルイノシトール、合成ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセロール、ジステアリルホスファチジルグリセロール、ジステアリルホスファチジルイノシトール、ジステアリルホスファチジルセリン、ジステアリルホスファチジン酸、ジステアリルリゾホスファチジルグリセロール、ジステアリルリゾホスファチジルイノシトール、ジステアリルリゾホスファチジルセリン、ジステアリルリゾホスファチジン酸、ジパルミチルホスファチジルイノシトール、ジパルミチルホスファチジルセリン、ジパルミチルホスファチジン酸、ジパルミチルホスファチジルグリセロール、ジパルミチルリゾホスファチジルイノシトール、ジパルミチルリゾホスファチジルセリン、ジパルミチルリゾホスファチジン酸、ジパルミチルリゾホスファチジルグリセロール、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
リン脂質がレシチンであり、かつレシチンが90%未満のホスファチジルコリンを含む、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
レシチンが、実質的に水素添加ホスファチジルコリンからなり、かつ残りの組成が、主に水素添加陰イオン性ホスファチドで構成される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
グルココルチコステロイドの化学純度が99%を上回る、請求項1〜11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
グルココルチコステロイドの化学純度が99.5%を上回る、請求項1〜13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
グルココルチコステロイドの量が、濃縮型で、または薬学的に許容される媒質への希釈後に、約0.01重量%〜約20重量%の範囲にわたる、請求項1〜13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸のカルシウム塩、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩および/またはカルシウム塩の量が、約0.0001%〜約5%、約0.001〜約1%、および約0.01%〜約0.1%の範囲にわたる、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
非イオン性表面安定剤の濃度が、グルココルチコステロイドと表面安定剤とを組み合わせた総乾燥重量を基に約0.01重量%〜約90重量%、約0.1重量%〜約50重量%、および約1重量%〜約10重量%からなる群より選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の組成物。
【請求項18】
グルココルチコステロイド粒子の有効平均粒径が、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、および約50nm未満からなる群より選択される、請求項1〜17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項19】
グルココルチコステロイド粒子の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%が、有効平均未満の粒径を有する、請求項1〜18のいずれか一項記載の組成物。
【請求項20】
1種類または複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
(a)吸入、注射、耳内、経口、直腸内、肺内、眼内、結腸内、非経口、槽内、膣内、腹腔内、局部、口腔、鼻内、または局所投与用に製剤化された剤形;
(b)粉末、凍結乾燥粉末、噴霧乾燥粉末、噴霧造粒粉末、固形ロゼンジ、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、液体分散剤、ゲル剤、エアゾル剤、軟膏、またはクリームに製剤化された剤形;
(c)制御放出製剤、固形剤形速溶製剤(solid dose fast melt formulation)、制御放出製剤、速溶製剤、凍結乾燥製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、および即時放出と制御放出の混合型製剤からなる群より選択される剤形に製剤化された剤形;または
(d)それらの任意の組み合わせの剤形
である、請求項1〜20のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
鼻用スプレーに製剤化される、請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物。
【請求項23】
肺用エアゾル剤に製剤化される、請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物。
【請求項24】
水性エアゾル剤に製剤化され、かつ約0.015mg/mLから最大約600mg/mLのグルココルチコステロイドを含む、請求項1〜23のいずれか一項記載の組成物。
【請求項25】
グルココルチコステロイド濃度が、約10mg/mL以上、約100mg/mL以上、約200mg/mL以上、約400mg/mL以上、および約600mg/mLからなる群より選択される、請求項24記載のエアゾル組成物。
【請求項26】
水性エアゾル剤に製剤化される組成物であって、
エアゾル剤の小滴が、約100ミクロン以下;約0.1〜約10ミクロン;約2〜約6ミクロン;約2ミクロン未満;約5〜約100ミクロン;および約30〜約60ミクロンからなる群より選択される空気動力学的中央粒子径(mass median aerodynamic diameter)を有する、
請求項1〜25のいずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
エアゾル剤に製剤化され、かつ多回投与用吸入器からの同時投与用に1種類または複数の溶媒および/または非水性溶液中に溶解した噴射剤をさらに含む、請求項1〜26のいずれか一項記載の組成物。
【請求項28】
少なくとも1種類の非グルココルチコステロイド活性物質をさらに含む、請求項1〜27のいずれか一項記載の組成物。
【請求項29】
少なくとも1種類の非グルココルチコステロイド活性物質が、喘息、アレルギー性結膜炎、季節性アレルギー性鼻炎、またはグルココルチコステロイドが従来使用されるその他の炎症もしくはアレルギーの状態を治療するのに有用である、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
非グルココルチコステロイド活性物質が、長期作用型β-アゴニスト、ロイコトリエン変更因子、テオフィリン、ネドクロミル、クロモリン、短期作用型β-アゴニスト、臭化イプラトロピウム、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、サルメテロール、フォルモテロール、モノロイカスト(monoleukast)、ザフィルルカスト、ジロイトン、アルブテロール、レバルブテロール、ビトルテロール、ピルブテロール、およびテルブタリンからなる群より選択される、請求項28記載の組成物。
【請求項31】
水性エアゾル剤に製剤化される組成物であって、
(a)水性エアゾル剤の各小滴が、少なくとも1個のナノ粒子グルココルチコステロイド粒子を本質的に含み;
(b)エアゾル剤の小滴が、約100ミクロン以下の空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有し;
(c)グルココルチコステロイドが、フルチカゾン、ブデソニド、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、モメタゾン、モメタゾンフロエート、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、デキサメタゾン、トリアミンシノロン、ベクロメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルニソリド半水和物、フルニソリド、モメタゾンフロエート一水和物、クロベタゾール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;
(d)グルココルチコステロイドが、約0.015mg/mLから最大約600mg/mLの濃度で存在し;
(e)非イオン性安定剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり;かつ
(f)両親媒性脂質がリン脂質である、
請求項1〜30のいずれか一項記載の組成物。
【請求項32】
(a)約2000nm未満の有効平均粒径を有する、少なくとも1種類のグルココルチコステロイドの粒子;
(b)少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤;および
(c)少なくとも1種類の両親媒性脂質
を含む無菌組成物の製造法であって、
(i)粒子の有効平均粒径を約2000nm未満に低下させるための時間および条件下、グルココルチコステロイドの粒子を、少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤に接触させる段階;
(ii)粒径低下の前、途中、または後のいずれかに、少なくとも1種類の両親媒性脂質を、グルココルチコステロイド組成物に添加する段階;ならびに
(iii)約115℃〜約135℃の温度に組成物を蒸気加熱する段階
を含む、方法。
【請求項33】
(a)約2000nm未満の有効平均粒径を有する、少なくとも1種類のグルココルチコステロイドの粒子;
(b)少なくとも1種類の非イオン性表面安定剤;および
(c)少なくとも1種類の両親媒性脂質
を含む無菌組成物の治療的有効量を対象へ投与する段階を含む、その必要がある対象を治療する方法。
【請求項34】
組成物が少なくとも1種類の薬学的賦形剤または担体を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
治療が炎症疾患に対してである、請求項33または請求項34記載の方法。
【請求項36】
治療が、喘息、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、気腫、呼吸窮迫症候群、慢性気管支炎、後天性免疫不全症候群に関連した呼吸器疾患、および目の炎症状態、皮膚の炎症状態、耳の炎症状態、目のアレルギー状態、皮膚のアレルギー状態、アレルギー性結膜炎、および季節性アレルギー性鼻炎に対してである、請求項33〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
組成物が鼻用または肺用エアゾル剤により投与される、請求項33〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
エアゾル剤投与のための患者への送達時間が、約15秒間から最大約15分間である、請求項37記載の方法。

【公表番号】特表2009−524665(P2009−524665A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552375(P2008−552375)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/001851
【国際公開番号】WO2007/089490
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(508260304)エラン ファーマ インターナショナル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】