説明

滝、谷川等の流水を利用した水力発電装置

【課題】簡単に設置でき、また設置費用も低額で所望の発電量が得られ、かつ必要に応じて蓄電可能な山野の高速流水を利用した簡易水力発電装置の提供。
【解決手段】本発明の山野の高速流水を利用した簡易水力発電装置は、取付部を有する固定台3に設置された水車2より大きい落差を有する滝の流水1中に、前記水車2を設置し、該水車2の回転軸4に増速機7を介して発電装置6を有し、更に電圧安定装置13及び蓄電器14を接続したことを特徴とする。前記水車2の両側に有する回転軸4にそれぞれ発電装置6が接続されている。前記水車2の回転軸4と増速機7の間に手動クラッチ8を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山野にある滝、谷川、流れの速い河川等(以下、滝等ともいう。)の流水を利用した水力発電装置に関するものであり、また本発明は、蓄電装置に蓄電可能な簡易水力発電装置に関するものである。更に詳しくは水車のより大きい高速流水の落差を有する滝等に簡単に設置して利用できる簡易水力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水力発電には、山間地にダムを構築して、水の落差を利用して発電機を回転して発電しているが、近年、環境問題などで大規模なダムを構築することは難しく、また火力発電では、二酸化炭素の環境への影響が大きく、更には原子力発電においては地震などによる安全性が問題になり、立地環境が厳しくなっている。このような中で、日本は、国土の75%が山地であることを考慮すると、小規模水力発電に最も適した地域であるといえる。この利点を生かしていくつかの水力発電技術が開発されている。例えば、山間地等の集落に供給できる程度の電力を得ることができる水力発電設備を、地元の山間傾斜並びに山間の沢、谷を流れる水を利用して設置できるようにした連続人工滝状構築物を形成し、高効率に発電するシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また先行技術の公開公報の図1に示されているように、設置場所の地形的な制約を受けることが少なく、しかもその建設工事が容易且低コストであり、さらに自然環境及び自然景観を損なうことも少ない水力発電装置を提供するために、公報の図1に示されているように、河川の上流側に止水堰を設置し、高水位部の直下の地下に、その内部を水車と発電機を有する機械室としたコンクリート製の地下構造体を埋設し、かつ管から供給した水で水車を回して発電し、発電後の水は、サイホン効果を利用して排水する水力発電装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−120053(段落0003、図1、図4)
【特許文献2】特開平11−81288号公報(段落0005、段落0022〜段落0026、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の如く特許文献1に開示されている水力発電装置は、人工的に落差のある水の滝状構築物を山地の傾斜面に形成し、その水を、中継管を介して水車管に導入して、その流水の落差によって発電するもので、このように滝状構築物を形成すると共に中継管及び水車管などの人工管部材などを使用する点で、高額な建設費用がかかり、コスト面で問題がある。また特許文献2は、河川の上流部や高所の沼などの水を利用した発電装置であり、河川や沼などの下部に発電装置を内蔵したコンクリート構築物を形成し、落水管を通して水車を回し発電するものであるが、これら河川や沼の下部をサイドから掘り進み、河川や沼の下部で発電装置を内蔵したコンクリート構築物を形成又は導入するので、建設費用が嵩み、小規模発電用としては不向きである。
【0006】
そこで、本発明者は、日本国内には小さな滝等が数多くあることに着眼し、このような滝等に発電設備を設置することができ、また所望の発電規模を得るために、種々検討したところ、これらの滝等に簡単かつ容易に発電設備を設置して発電することを見出した。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、簡単に設置することができ、また設置費用も低額で所望の発電量が得られ、かつ必要に応じて蓄電することができる山野の高速流水を利用した簡易水力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の各発明によって、前記の課題を解決したものである。
(1)取付部を有する固定台に設置された水車より大きい落差を有する高速流水中に、前記水車を設置し、該水車の回転軸に増速機を介して発電装置を有し、更に電圧安定装置及び蓄電器を接続したことを特徴とする山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置。
(2)前記高速流水は、滝、谷川、流れの速い河川又はダムから選択された高速流水が用いられることを特徴とする前記第1項に記載の山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置。
(3)前記水車の両側に有する回転軸にそれぞれ発電装置が接続されていることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置。
(4)前記水車の回転軸と増速機の間に手動クラッチを有することを特徴とする前記第1項乃至第3項のいずれかに記載の山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明において、(1)前記第1項に記載された山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置は、取付部を有する固定台に設置された水車より大きい落差を有する高速流水中に、前記水車を設置し、該水車の回転軸に増速機を介して発電装置を有し、更に電圧安定装置及び蓄電器を接続したことを特徴とするもので、水車を取付部を有する固定台に設置するので、滝等の近傍の岩盤などの固定可能な場所に簡単に取り付けることができ、取り付け費用が安価であるという優れた効果を奏するものである。また水車より大きい落差を有する滝の流水を利用するので、十分な発電量を得ることができるという優れた効果を奏するものである。更に水車の回転軸に増速機を介して発電装置を有し、電圧安定装置及び蓄電器を接続したので、発電量を大きくし、かつ品質の安定した電力を長期間蓄積できるという優れた効果を奏するものである。したがって、本発明の滝を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置は、前記第1項記載の取り付けが簡単にでき、取り付け費用が安価であり、十分な発電量を得ることができると共に、発電量を大きくし、かつ品質の安定した電力を長期間蓄積できるという優れた効果を奏するものである。
【0010】
(2)前記第1項に記載の山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置、前記高速流水は、滝、谷川、流れの速い河川又はダムから選択された高速流水が用いられることにより、十分な発電能力を備えている。
(3)前記第1項又は第2項に記載された山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置は、前記水車の両側に有する回転軸にそれぞれ発電装置が接続されていることにより、よりいっそう大きな発電量を得ることができるという優れた効果を奏するものである。
(4)前記第1項乃至第3項のいずれかに記載された山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置は、前記水車の回転軸と増速機の間に手動クラッチを有することにより、発電を停止したり、または発電量を時間帯により調整することができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の滝を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置を示す略図である。
【図2】本発明における水車に蓄電可能な簡易水力発電装置を接続した側面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態である滝の内側に設けた空洞部分に水力発電装置を設置したところを示す側面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について、発明の実施の形態を図面で説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の滝を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置を示す略図である。図
2は、水車に蓄電可能な簡易水力発電装置を接続した側面図である。図3は、本発明の他の実施の形態である滝の内側に設けた空洞部分に水力発電装置を設置したところを示す側面略図である。図1及び図2において、本発明の蓄電可能な簡易水力発電装置は、滝1の流水の前面に水車2が配置され、その羽根5が流水を受ける形で接触している。羽根5の数は、特に制限されるものではないが、愚数枚が好ましく、具体的には、4枚〜12枚がよく、好ましくは6枚あるいは8枚である。水車2は固定台3に有しており、この固定台3は簡単に滝の近傍にある岩や岸壁又は岩盤に取り付けることができる。また水車2には羽根5を回転させるための回転軸を有し、この回転軸には軸受9を介してクラッチ8が接続されている。このクラッチ8は、手動クラッチが好ましいが、後述の如く滝の内側の岸壁をくり抜いて設置された水力発電装置の場合には自動クラッチを用いるのが好ましい。更に手動クラッチ8は、カップリング(接続部)12を介して増速機7に接続され、発電装置6がカップリング(接続部)11を介して接続されている。これらの各機器は、直列に配置されて結合されている。更にまたこの発電装置6には電圧安定装置13や蓄電器を有するが、蓄電可能な簡易水力発電装置に用いられる各部品又は機器は、市販され、それらの構造は周知のものである。
【0014】
前記の蓄電可能な簡易水力発電装置の使用方法は、特に限定されるものではないが、水量が比較的豊富な滝であれば、設置可能であるが、水車より大きい落差を有する滝が好ましい。本発明の簡易水力発電装置は、水車の回転のみで発電することができるが、発電装置の回転数を上げることにより、より多くの発電が可能となるので、そのために増速機7が設けられる。クラッチ8は水車2の動力から切り離して発電装置6を停止したり、発電量の増減を調節するために設けられる。また水車の歯車が受ける水量を増減するために、水力発電装置をスライド可能に設置することもできる。この場合には固定台3の下部にスライド可能にレール等を設置することにより、水車(水力発電装置)を前後に移動させて歯車が受ける水量を調節し、水車の回転の増減によって発電量の調節を行うこともできる。このような操作は、日照が続き、滝の水量が減少した時、また雨量が多く、したがって滝の水量が増加した時などにより水量を調節することができる。
【実施例2】
【0015】
図3において、本発明の蓄電可能な簡易水力発電装置は、滝の美観を考慮する場合には、滝の内側に設けることができる。この場合には、滝の内側の岩壁又は岩盤10をくり抜き、得られた空洞部分15に蓄電可能な簡易水力発電装置を設置する。滝の流水と水車、発電装置との関係は、図1及び図2において説明した関係と同様である。また発電装置の固定台3は板状のものでよいが、岩盤10の土台に強固に取り付ける。本発明の具体的な例としては、滝の場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、滝のほか、山野にある谷川、特に山地の流れの速い河川又は渓流、ダムなどに設置して用いることができる。特にダムにおいては、ダムの流水の一部を利用することもできるばかりでなく、河川から落差のある箇所にダム、いわゆる貯水池を設け、この貯水池から落下する流水に発電装置を設置して発電することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、山野の高速流水を利用することを前提として、小規模の滝等に設置した発電装置であり、化石燃料を使用する火力発電による環境問題を解決した水力発電装置であり、小規模で簡単に設置でき、地の利を生かした水力発電の技術分野において、使用効率に優れたものであり、今後この技術分野において極めて有用である。
【符号の説明】
【0017】
1 滝
2 水車
3 固定台
4 回転軸
5 羽根
6 発電装置
7 増速機
8 クラッチ
9 軸受
10 岸壁又は岩盤
11、12 カップリング(接続部)
13 電圧安定装置
14 蓄電器
15 空洞部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部を有する固定台に設置された水車より大きい落差を有する高速流水中に、前記水車を設置し、該水車の回転軸に増速機を介して発電装置を有し、更に電圧安定装置及び蓄電器を接続したことを特徴とする山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置。
【請求項2】
前記高速流水は、滝、谷川、流れの速い河川又はダムから選択された高速流水が用いられることを特徴とする請求項1に記載の山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置。
【請求項3】
前記水車の両側に有する回転軸にそれぞれ発電装置が接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置。
【請求項4】
前記水車の回転軸と増速機の間に手動クラッチを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の山野の高速流水を利用した蓄電可能な簡易水力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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