説明

漏出センサ付き回転フィードスルー

【課題】回転機械部品に流体を供給する回転フィードスルー内に収集される漏出流体の監視を可能にする。
【解決手段】ハウジング(1,2)内に回転可能に支持されており、かつ第1のスライド表面(29)を有する中空シャフト(3)と、ハウジング(1,2)内に回転に関して固定された態様で中空シャフト(3)と同軸に配置されており、かつ第1のスライド表面(29)と接触するための第2のスライド表面(30)を有するシールブッシング(31)と、ハウジング(1,2)内に配置されており、かつそれらの2つのスライド表面(29,30)の間において漏れ出した漏出流体を収集するための機能を提供する収集チャンバ(27)とを備え、検出チャンネル(26,33,34,37,39,47)が収集チャンネルに接続され、検出チャンネルは漏出流体を漏出センサ(41)に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械部品に流体を供給する回転フィードスルーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回転する機械部分に流体を供給するためのこのタイプの回転フィードスルーは、特許文献1から周知である。この回転フィードスルーは、ハウジング内に回転可能に支持されており、かつ第1のスライド表面を有する中空シャフト、ハウジング内に回転に関して固定された態様で中空シャフトと同軸に配置されており、かつ中空シャフトのスライド表面と接触するための第2のスライド表面を有するシールブッシング、およびハウジング内に配置されており、かつ回転する中空シャフトのスライド表面と、回転に関して固定されたシールブッシングのスライド表面の間において漏れ出した漏出流体を収集することのできる収集チャンバを備える。この収集チャンバは、漏出開口に接続されており、それを通して収集チャンバ内に収集される漏出流体を排出することができる。2つのスライド表面の間の境界面において、通常は回転フィードスルーを通って運ばれる流体のわずかな量しか漏れ出さないことから、一般に収集チャンバ内に収集された漏出流体を時折排出するか、あるいは対応するラインを介して常時排出することで充分である。しかしながら、動作間の特定の情況においては、より多くの量の漏出流体が漏れ出す可能性もある。これは、収集チャンバ内に漏出流体があふれ、その結果、回転フィードスルーがダメージを受けるリスクに関連付けされる。
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10225272号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、回転フィードスルー内に収集される漏出流体を監視することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、特許請求の範囲の請求項1の特徴を伴う回転フィードスルーを用いて達成される。本発明の実用的な実施態様ならびに有利な追加の開発については、従属項に開示されている。
【0006】
本発明の回転フィードスルーにおいては、ハウジング内に備えられる独立した検出チャンネルが収集チャンバに接続されており、漏出流体を測定するための漏出センサを含んでいる。この検出チャンネルは、収集チャンバから分かれ、従来的な収集チャンバおよび対応する漏出開口を介して漏出流体が適切に排出されない場合、あるいは機能障害、たとえばねじれまたは詰まり等が排出ライン内に生じた場合にそれが検出チャンネルだけを通って正常に流れるような方法で実現される。漏出流体は、収集チャンバ内にそれがあふれると、追加の検出チャンネルを通ってだけ流れ、その端部において、その場所に配置された漏出センサによって検出される。これは、回転フィードスルーの機能的な臨界状態を検出することを可能にし、回転フィードスルーへのダメージを防止する。
【0007】
1つの好ましい実施態様においては、漏出センサがフローセンサの形式で実現され、好ましくはそれが熱量測定原理に従って動作し、温度補償回路を備える。これは、水性流体だけでなく、たとえば鉱物油等の無極性流体の検出も可能にする。当然のことながら、このほかの適切なセンサの使用も可能となる。
【0008】
漏出センサは、好ましくはハウジング内に配置される評価回路を伴ったプリント回路基板と接続される。全体のセンサ構成および評価回路は、このようにハウジング内に組み込まれ、したがって非常に良好に汚損および電磁障害からシールドされる。
【0009】
本発明の特に好都合な1つの実施態様においては、検出チャンネルが、回転フィードスルーのハウジングを通って迷路の形式で延び、中空シャフトに沿って延びる内側漏出チャンネルをはじめ、その内側漏出チャンネルに関して半径方向にオフセットされた少なくとも1つの外側漏出チャンネルを備える。
【0010】
半径方向に内側となる漏出チャンネルは、好ましくは、中空シャフトの内側エンド上に配置されたクランプブッシングとハウジング内に配置されたシールスリーブの間の第1の環状ギャップ、回転中空シャフトを支持するためのベアリングの外側リングと内側リングの間の流路、中空シャフトの環状カラーとハウジングの間の第2の環状ギャップ、およびベアリングに面する環状カラーの面上のラジアルギャップによって形成される環状チャンネルの形式で実現される。1つの好ましい実施態様においては、収集チャンネルと内側漏出チャンネルの間の流体接続が、クランプブッシングのエンドフランジとシールスリーブの後面の間のラジアルギャップの形式で実現される。
【0011】
半径方向に外側となる漏出チャンネルは、好ましくは、前方ハウジング内において中空シャフトと平行に延びる少なくとも1つの軸方向ボアおよび後方ハウジング内の、軸方向ボアに接続される受けボアによって形成される。内側漏出チャンネルと外側漏出チャンネルの間の流体接続は、回転フィードスルーの前方領域内に配置されるラジアルチャンネルの形式で具体化される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、回転フィードスルー内に収集される漏出流体を監視することを可能にするこという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のこのほかの特徴ならびに利点については、以下の図面を参照した1つの好ましい実施態様の説明の中に開示されている。
【0014】
図1および2に略図的に例示されている回転フィードスルーは、図の右側に配置されている前方ハウジング部分1および前方ハウジング部分と緊密に接続される後方ハウジング部分2を伴うハウジングを含む。中心のスルーチャンネル4を伴う中空シャフト3が、前方ハウジング部分1内に、いくつかの連続して配置されたベアリング5、6、および7によって中心軸8周りに回転可能に支持されている。内側のねじ山10が備えられたクランプブッシング12およびエンドフランジ11が、ハウジング部分1内に配置された中空シャフト3の内側端部上の外側のねじ山9の上に螺合されている。このクランプブッシング12は、ベアリング5、6、および7に、ハウジング部分1の内側の環状ステップ13に対する圧縮応力を与える。たとえば、機械ツールのワークスピンドルに組み込まれたツールテンショナの中空テンションロッドを、図の右側になる中空シャフト3の外側端部において、半径方向にシールされた態様でスルーチャンネル4内に挿入することができる。外側に通じる漏出開口15を伴うリングチャンネル14が、中空シャフト3の内側端部の領域内において、前方ハウジング部分1の内壁上に備えられている。
【0015】
後方ハウジング部分2は、中心のスルーチャンネル16および、そのスルーチャンネルをU字形態様で取り囲み、カバー18によって閉じることの可能な受けチャンバ17を含む。たとえば冷却潤滑剤を機械ツールのワークスピンドルに供給するための流体供給ラインを、スルーチャンネル16の後端上のねじ山付きボア19を使って、動かない後方ハウジング部分2に接続することができる。後方ハウジング部分2は、前方ハウジング部分1を向く面上に、ラジアルスルー開口20が備えられた中空の円筒状突起21を備え、その突起が前方ハウジング部分1内に突き出ており、ラジアルシール22が備えられたシールスリーブ24および圧縮応力印加スプリング23をベアリング5に対して加圧する。段付きのシールスリーブ24の後面とクランプブッシング12のエンドフランジ11の前側の間にはラジアルギャップ25が形成されており、シールスリーブ24の内壁とクランプブッシング12の外壁の間には第1の環状ギャップ26が形成されている。収集チャンバ27は、後方ハウジング部分2の中空の円筒状突起21内に形成されており、ラジアルスルー開口20を介してリングチャンネル14および漏出開口15と接続されている。
【0016】
中空シャフト3の後端に挿入された第1のシールブッシング28は、回転に関して固定された態様で当該中空シャフト内に接続されており、それとともに回転する。このシールブッシングは、中空シャフト3の後端において広げられたスルーチャンネル4の部分に挿入される。シールブッシング28は、その後面上に、後方ハウジング部分2内に回転に関して固定された態様で配置される第2のシールブッシング31の前面上のスライド表面30と接触するスライド表面29を備える。第2のシールブッシング31は、供給チャンネル16の前端上に配置されており、後方ハウジング部分2を通って延び、図示していない加圧スプリングによって第1のシールブッシング28に対して軸方向に加圧される。これら2つのシールブッシング28および31は、好ましくはたとえばセラミック等の摩耗耐性があり、かつ熱的に安定した材料からなる。2つのスライド表面29および30の領域内に配置される収集チャンバ27は、これらのシールブッシング28および31の2つのスライド表面29および30の間における漏出流体の形式で漏れ出すことの可能な流体を収集するための機能を提供する。収集チャンバ27内に収集された漏出流体は、ラジアルスルー開口20、リングチャンネル14、および漏出開口15を経由して排出することが可能である。
【0017】
図2は、特に、ハウジング部分1の前方領域内のベアリング7の正面に配置される環状カラー32を備えた中空シャフト3を示している。狭いラジアルギャップ33が、環状カラー32のベアリング側を向く面上の、ベアリング7と環状カラー32のその面の間に形成されている。第2の環状ギャップ34が、環状カラー32の外側とハウジング部分1の間に形成されている。この場合にはラジアルボアの形式で実現され、ハウジング部分1の外側においてねじ山付きのピンの形式のプラグ36によってシールされるラジアルチャンネル35が、この第2の環状ギャップ34に通じている。このラジアルチャンネル35は、ベアリング5〜7の半径方向外側において中空シャフト3と平行に、前方ハウジング部分1の全長にわたって延びる軸方向ボア37に接続されている。軸方向ボア37は、漏出開口15と正反対側のハウジング1内に配置される。
【0018】
軸方向ボア37は、これも図2において右側の前端にあるねじ山付きのピンの形式で実現されているプラグ38を用いてシールされており、その反対側の後端において、後方ハウジング部分2内のラジアル排出開口40を伴う、広げられた受けボア39に通じている。この場合においてはフローセンサの形式で実現される漏出センサ41が、受けボア39内に突き出ており、後方ハウジング部分2内の受けチャンバ17内に収容されるプリント回路基板42に接続されている。漏出センサ41によって獲得された信号を評価するための対応する評価エレクトロニクスを、このプリント回路基板42上に配置することができる。プリント回路基板42からソケット44に、評価エレクトロニクスを外部コントロールまたはディスプレイデバイスに接続するためのライン43がつながっている。
【0019】
中空シャフトに沿って延びる内側漏出チャンネルが、中空シャフト3の内側エンド上に配置されたクランプブッシング12とシールスリーブ24の間の第1の環状ギャップ26、ベアリング5〜7の外側リング45と内側リング46の間の流路47、中空シャフト3の環状カラー32とハウジング部分1の間の第2の環状ギャップ34、および環状ギャップ33によって形成されているが、それにおいてこの内側漏出チャンネルは、クランプブッシング12のエンドフランジ11とシールスリーブ24の後面の間のラジアルギャップ25を介して収集チャンバ27に接続される。図2は、ベアリング5だけが断面の形式で例示されていることから簡略化されている。ほかの2つのベアリング6および7も対応する流路47を備える。外側漏出チャンネルは、軸方向ボア37および受けボア39によって形成され、ラジアルチャンネル35を経由して内側漏出チャンネルと接続されている。
【0020】
以上述べた回転フィードスルー内の収集チャンバ27内に漏出流体があふれると、それがラジアルギャップ25を経由して内側漏出チャンネルに、そこからラジアルチャンネル35を通って外側漏出チャンネルに流れ、その端部において漏出センサ41によって検出される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】回転フィードスルーを通る第1の縦方向断面図である。
【図2】図1の示す回転フィードスルーを通る第2の縦方向断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 前方ハウジング部分、2 後方ハウジング部分、3 中空シャフト、4 スルーチャンネル、5,6,7 ベアリング、8 中心軸、9,10 ねじ山、11 エンドフランジ、12 クランプブッシング、13 環状ステップ、14 リングチャンネル、15 漏出開口、16 スルーチャンネル、17 受けチャンバ、18 カバー、19 ねじ山付きボア、20 ラジアルスルー開口、21 円筒状突起、22 ラジアルシール、23 圧縮応力印加スプリング、24 シールスリーブ、25,33 ラジアルギャップ、26 第1の環状ギャップ、27 収集チャンバ、28 第1のシールブッシング、29,30 スライド表面、31 第2のシールブッシング、32 環状カラー、34 第2の環状ギャップ、35 ラジアルチャンネル、36,38 プラグ、37 軸方向ボア、39 受けボア、40 ラジアル排出開口、41 漏出センサ、42 プリント回路基板、43 ライン、44 ソケット、45 外側リング、46 内側リング、47 流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1,2)内に回転可能に支持されており、かつ第1のスライド表面(29)を有する中空シャフト(3)と、
前記ハウジング(1,2)内に回転に関して固定された態様で前記シャフト(3)と同軸に配置されており、かつ前記第1のスライド表面(29)と接触するための第2のスライド表面(30)を有するシールブッシング(31)と、
前記ハウジング(1,2)内に配置されており、かつ前記2つのスライド表面(29,30)の間において漏れ出した漏出流体を収集するための機能を提供する収集チャンバ(27)と、を備え、回転機械部品に流体を供給する回転フィードスルーにおいて、
前記ハウジング(1,2)内に備えられる検出チャンネル(26,33,34,37,39,47)が、前記収集チャンバ(27)に接続され、かつ漏出センサ(41)を含むこと
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項2】
請求項1に記載の回転フィードスルーであって、
前記検出チャンネル(26,33,34,37,39,47)は、
中空シャフト(3)に沿って延びる内側漏出チャンネル(26,33,34,47)と、
前記内側漏出チャンネルに対して半径方向にオフセットされた少なくとも1つの外側漏出チャンネル(37,39)と、を包含すること
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項3】
請求項2に記載の回転フィードスルーであって、
前記内側漏出チャンネル(26,33,34,47)は、
前記中空シャフト(3)の内側エンド上に配置されたクランプブッシング(12)とハウジング(1,2)内に配置されたシールスリーブ(24)との間の第1の環状ギャップ(26)と、
前記回転中空シャフト(3)を支持するためのベアリング(5,6,7)の外側リングと内側リング(45,46)の間の流路(47)と、
前記中空シャフト(3)の環状カラー(32)と前記ハウジング(1,2)との間の環状ギャップ(34)と、
前記ベアリング(5,6,7)に面する前記環状カラー(32)の面上のラジアルギャップ(33)と、によって形成されること
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項4】
請求項2または3に記載の回転フィードスルーであって、
前記外側漏出チャンネル(37,39)は、
前方ハウジング部分(1)内において前記中空シャフト(3)と平行に延びる少なくとも1つの軸方向ボア(37)と、
前記ハウジング(1,2)の後方ハウジング部分(2)内の、前記軸方向ボア(37)に接続される受けボア(39)と、によって形成されること、
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項5】
請求項4に記載の回転フィードスルーであって、
前記軸方向ボア(37)は、前記前方ハウジング部分(1)内において、前記収集チャンバ(27)の漏出開口(15)と正反対側に配置されること
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の回転フィードスルーであって、
前記内側漏出チャンネル(26,34,47)が、前記クランプブッシング(12)のエンドフランジ(11)と前記シールスリーブ(24)の後面の間のラジアルギャップ(25)を介して前記収集チャンバ(27)と接続されること
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の回転フィードスルーであって、
前記内側漏出チャンネル(26,34,47)は、ラジアルチャンネル(25)を介して前記外側漏出チャンネル(37,39)と接続されること
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載の回転フィードスルーであって、
前記漏出センサ(41)は、前記後方ハウジング部分(2)の前記受けボア(39)内に突き出ていること
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の回転フィードスルーであって、
前記漏出センサ(41)は、フローセンサの形式で実現され、好ましくはそれが熱量測定原理に従って動作すること
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の回転フィードスルーであって、
前記漏出センサ(41)は、前記ハウジング(1,2)内に配置される評価エレクトロニクスを伴うプリント回路基板(42)と接続されること
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項11】
請求項10に記載の回転フィードスルーであって、
前記プリント回路基板(42)が、前記ハウジング(1,2)の後方ハウジング部分(2)の受けチャンバ(17)内に収容されること
を特徴とする回転フィードスルー。
【請求項12】
請求項10または11に記載の回転フィードスルーであって、
前記プリント回路基板(42)が、ライン(43)を介してソケット(44)に接続されること
を特徴とする回転フィードスルー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−51775(P2007−51775A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214311(P2006−214311)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(502153226)オーテーテー ジェイコブ ゲーエムベーハー ウント コンパニー スパンテクニック カーゲー (3)
【Fターム(参考)】